説明

一成分型湿分硬化性組成物

【課題】 一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のウレタン結合、カーボネート結合、エステル結合からなる群より選ばれる結合を有する有機重合体を原料ポリマーとする一成分型湿分硬化性組成物の貯蔵安定性を維持しつつ、耐熱性を改善する。
【解決手段】 金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒の共存下、加熱により架橋性ケイ素基縮合触媒の金属原子に作用する活性硫黄種を生成し得る化合物を金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒に対して特定量配合する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐熱性の改善された、架橋性ケイ素基を有する有機重合体の一成分型湿分硬化性組成物に関する。詳しくは耐熱性の改善された、一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のウレタン結合、カーボネート結合、エステル結合からなる群より選ばれる結合を有する有機重合体の一成分型湿分硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有する有機重合体は、水分あるいは空気中の湿分により硬化し得るので、建築用あるいは工業用シーリング材、接着剤、粘着剤、塗料、コーティング材などの原料ポリマーとして、種々の添加剤が配合された硬化性組成物の形態で広く用いられている。中でも空気中の水分により架橋硬化できるように梱包された一成分型湿分硬化性組成物はその簡便さから特に広く用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有する有機重合体はその製造法によって種々のものが製造可能であるが、一分子中に少なくとも1個のウレタン結合、カーボネート結合、エステル結合からなる群より選ばれる結合を有する重合体とこれらの結合を全く有さない重合体とに分類できる。一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有する有機重合体を硬化させる際には、硬化速度や硬化物物性を制御するため、一般に金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒が用いられている。しかしこの一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のウレタン結合、カーボネート結合、エステル結合からなる群よりより選ばれる結合を有する有機重合体を、金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒を用いて硬化させたその硬化物は、これらの結合を有さないものと比較して高温に長時間曝された場合に機械物性が低下する(耐熱性に劣る)という問題がある。
【0004】一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有する有機重合体を主成分とする硬化性組成物は、主剤と硬化剤を別々に貯蔵しておき施工直前に両者を混合することにより硬化させるニ成分型硬化性組成物をはじめとする多成分型硬化性組成物と水分あるいは湿分の供給があれば硬化できるように配合物中の水分量を制御して梱包された一成分型湿分硬化性組成物に分類される。一成分型湿分硬化性組成物の場合、多成分型硬化性組成物の場合と異なって、硬化の直前まで反応性の添加剤を別々に保存することが困難であり、配合剤選択の制約が大きいことが知られている。このためニ成分型硬化性組成物で使用可能なものでも一成分型湿分硬化性組成物では貯蔵中の反応により、硬化触媒への作用により硬化遅延を引き起こしたり、効果の発現が不十分になり使用不可能なものもある。
【0005】一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有するポリエーテルに対して硫黄原子を有する化合物を添加することにより接着性向上を図る硬化性組成物が特開昭58−13655号公報に開示されている。また一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有する有機重合体と硬化触媒に硫黄原子を有する化合物を添加することにより耐候性向上を図る硬化性組成物が特開昭63−193953号公報に開示されている。これらの公報では一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有する有機重合体の一例として一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のウレタン結合を有する有機重合体が使用可能であることが開示されているが、ウレタン結合、カーボネート結合、エステル結合からなる群よりより選ばれる結合を一分子中に少なくとも1個有する硬化性組成物が、これらの結合を有さないものと比較して耐熱性に劣ること、硬化触媒と特定の硫黄原子を有する化合物を特定の範囲で配合することにより一成分型硬化性組成物において耐熱性が改善されることに関する開示はない。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記事情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のウレタン結合、カーボネート結合、エステル結合からなる群より選ばれる結合を有する有機重合体を、金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒により架橋硬化させる一成分型湿分硬化性組成物において、金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒の共存下、加熱により架橋性ケイ素基縮合触媒の金属原子に作用する活性硫黄種を生成し得る化合物を特定量配合することにより、一成分型湿分硬化性組成物の貯蔵安定性を確保しつつ耐熱性の改善ができることを見出し、本発明に到達した。
【0007】すなわち、本発明は(A)一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のウレタン結合、カーボネート結合、エステル結合からなる群より選ばれる結合を有する有機重合体、(B)金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒、及び(C)(B)成分である金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒の共存下、50℃以上の加熱により(B)成分の金属原子に作用する活性硫黄種を生成し得る化合物を含有し、(C)成分の配合量が、配合した(C)成分の化合物から生成し得る活性硫黄種のモル数rと、配合した(B)成分中の金属原子が反応し得る活性硫黄種のモル数sの比(r/s)として0.4以上1.6以下であることを特徴とする一成分型湿分硬化性組成物に関する。
【0008】好ましい実施態様としては、(C)成分の化合物が、下記一般式(1)〜(5)で表わされる群より選ばれる少なくとも1個である、前記記載の一成分型湿分硬化性組成物に関する。
一般式(1):R12N−C(=X)−Sa−C(=X)−NR34 (1)
(式中、R1、R2、R3およびR4は同一もしくは異なる炭素数1〜20の一価の炭化水素基を示す。XはOあるいはSを示す。aは1〜2の整数を示す。)、一般式(2):
【0009】
【化2】


(式中、bおよびb’は2以上の整数でありbとb’は同一であってもよく異なっていてもよい。Xおよびaは前記に同じ。)、一般式(3):R5NH−C(=S)−NR67 (3)
(式中、R5、R6およびR7は同一もしくは異なる炭素数1〜20の一価の炭化水素基を示す。)、一般式(4):(R12N−C(=X)−S−)pM (4)
(式中、R1、R2およびXは前記に同じ。MはZn(II)、Na(I)、Cu(II)、Fe(III)、Se(IV)、Te(IV)からなる群より選ばれる1又は2以上の金属原子を示す。pは金属Mの原子価を示す。)、一般式(5):R8O−C(=S)−S−Zn−S−C(=S)−OR9 (5)
(式中、R8およびR9は同一もしくは異なる炭素数1〜20の一価の炭化水素基を示す。)更に好ましい実施態様としては、(C)成分の化合物が、下記一般式(6)で表わされるチウラムジスルフィド系化合物および下記一般式(7)で表される芳香族系チオウレア化合物からなる群より選ばれる少なくとも1個である、前記いずれか記載の一成分型湿分硬化性組成物に関する。
一般式(6):R12N−C(=S)−S2−C(=S)−NR34 (6)
(式中、R1、R2、R3およびR4は前記に同じ。)
一般式(7):R10NH−C(=S)−NHR11 (7)
(式中、R10およびR11は同一もしくは異なる炭素数6〜20の一価の芳香族系炭化水素基を示す。)
更に好ましい実施態様としては、(B)成分の金属を有する架橋性ケイ素基縮合触媒が4価のスズ化合物である前記いずれか記載の一成分型湿分硬化性組成物に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の(A)成分である有機重合体は、分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のウレタン結合、カーボネート結合、エステル結合からなる群より選ばれる結合を有するものであれば特に限定されない。一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のウレタン結合、カーボネート結合、エステル結合からなる群より選ばれる結合を有する有機重合体の数平均分子量は6,000〜50,000が好ましく、8,000〜30,000がより好ましい。数平均分子量が6,000より低いと硬化物のゴム的性質が不十分であり、50,000を越えると取扱いに困難をきたす。
【0011】本発明における架橋性ケイ素基は、少なくとも1個の水酸基または水との反応により水酸基を生成し得る加水分解性基が結合したケイ素基であれば特に限定されないが、下記一般式(8)で表される基が好ましい。
−(Si(R122-d)(Yd)O)mSi(R133-c)Yc (8)
(式中、R12およびR13 は同一もしくは異なる炭素数1から20の炭化水素基、またはR’3SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R12またはR13が二個以上存在するとき、それらはそれぞれ同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。ここでR’は炭素数1から20の一価の炭化水素基であり3個のR’は同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、加水分解性基はYが二個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。cは0、1、2または3を、dは0、1、または2をそれぞれ示す。またm個の−Si(R122-d)(Yd)O−基におけるdについて、それらは同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。mは0から19の整数を示す。但し、c+Σd≧1を満足するものとする)
上記Yのうちの加水分解性基は特に限定されず、従来公知の加水分解性基であれば良い。具体的には例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの内では、加水分解性が穏やかで取り扱いやすいという点でメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基が好ましい。
【0012】この架橋性基は1個のケイ素原子に1〜3個結合することができ、(c+Σd)は1から5であるのが好ましい。架橋性基が2個以上存在する場合には、それらは同一であっても良く、あるいは異なっていてもよい。
【0013】架橋性ケイ素基中のケイ素原子の数は1個でもよく2個以上でもよいが、シロキサン結合等によりケイ素原子の連結された架橋性ケイ素基の場合には20個程度でもよい。
【0014】上記一般式(8)で表される基は、入手が容易であるため下記一般式(9)で表される基が好ましい。
−Si(R133-e)Ye (9)
(式中eは1、2または3を示し、R13、Yは前記と同じ。)
上記一般式(9)で表される基は、反応性および入手性の点からトリメトキシ基、トリエトキシ基、メチルジメトキシ基、メチルジエトキシ基からなる群より選ばれる基であることがより好ましい。
【0015】一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のウレタン結合、カーボネート結合、エステル結合からなる群より選ばれる結合を有する有機重合体の製造方法としては、特公昭45−36319号公報、特公昭46−12154号公報、特公昭46−30711号公報、特公昭48−36960号公報、特公昭49−32673号公報、特開昭54−6096号公報、特開昭54−60399号公報、特開昭57−164123号公報、特公昭57−46446号公報、特開昭58−29818号公報、特開昭61−57616号公報、特開昭62−283123号公報、特開昭63−112614号公報、特開平3−157424号公報、特開平3−47825号公報、特開平5−43679号公報、特開平6−172648号公報、特開平8−53528号公報、特開2000−119365号公報、特開2000−169544号公報、米国特許3,627,722号公報、米国特許4,645,816号公報、特表平11−511748号公報、WO98−58007号公報等が例示できるがこれらに限定されない。
【0016】一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のウレタン結合を有する有機重合体の製造方法としては、下記(a)〜(e)の方法が好ましい。
(a)一分子中に少なくとも1個の水酸基を有する有機重合体と一分子中にイソシアネート基と架橋性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法、(b)一分子中に少なくとも1個のイソシアネート基を有する有機重合体と一分子中に活性水素基と架橋性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法、(c)一分子中にイソシアネート基と架橋性ケイ素基を有する有機重合体と一分子中に少なくとも1個の活性水素基を有する化合物を反応させる方法、(d)一分子中に水酸基と架橋性ケイ素基を有する有機重合体と一分子中に少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物とを反応させる方法、(e)一分子中に少なくとも1個の不飽和結合を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のウレタン結合を有する有機重合体と一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法。
【0017】(a)の製造法における、一分子中に少なくとも1個の水酸基を有する有機重合体としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、水酸基末端(水添)ポリブタジエンなどのポリオール類;目的分子量より低分子量の上述のポリオール類とイソシアネート基を複数有する化合物を水酸基が過剰になるように反応させることにより得られたウレタン結合を有するポリオール類;等が好ましい。ポリオール類としてはポリエーテルポリオールが好ましく、ポリオキシアルキレンポリオールがより好ましく、ポリオキシプロピレンポリオールが更に好ましい。分子量4,000を越えるポリオキシプロピレンポリオールを用いる場合は末端の水酸基含有量の高くできる、有機配位子を有するヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体などを含む複金属シアン化物錯体触媒を用いて製造されたポリオキシプロピレンポリオールを用いることが好ましい。イソシアネート基を複数有する化合物としてはトリレンジイソシアネート類、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系イソシアネート類;キシリレンジイソシアネート等のアラルキル系イソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族系イソシアネート類;等が例示できるがこれらの中にはジイソシアネート類と低分子量ポリオールとの付加体、イソシアヌレート体、ビゥレット体等のトリイソシアネート類も含まれる。一分子中にイソシアネート基と架橋性ケイ素基を有する化合物としては、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルジメトキシメチルシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルジエトキシメチルシラン、特表平11−507399号公報に開示される2級アミノアルコキシシランとイソシアネート基を複数有する化合物との反応物等が例示できるがこれらに限定されない。
【0018】(b)の製造法における、一分子中に少なくとも1個のイソシアネート基を有する有機重合体としては、前述のポリオール類と前述のイソシアネート基を複数有する化合物とをイソシアネート基が過剰になるように反応させることにより得られる重合体が例示できる。一分子中に活性水素基と架橋性ケイ素基を有する化合物としては、特表平11−511748号公報に開示されるヒドロキシカルバモイルシラン等の一分子中に水酸基と架橋性ケイ素基を有する化合物;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等の1級アミノ基と架橋性ケイ素基を有する化合物;3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノイソブチルトリメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノイソブチルメチルジメトキシシラン等のN−アリールアミノアルキルシラン類、上記1級アミノ基と架橋性ケイ素基を有する化合物とα,β−不飽和カルボニル化合物あるいはマレイン酸ジエステル等と反応させることにより得られる2級アミノ基と架橋性ケイ素基を有する化合物;等が例示できる。(c)の製造法における、一分子中にイソシアネート基と架橋性ケイ素基を有する有機重合体としては、例えば特開平5−125175号公報、特開平5−125176号公報に開示される一分子中にイソシアネート基と架橋性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体が例示できる。一分子中に少なくとも1個の活性水素基を有する化合物としては、アルコール類、アミン類が例示できる。アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジプロピレングリコール、テトラメチレングリコール等のポリオール類が、アミン類としてはプロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン等の1級アミン類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のポリアミン類が好ましい。(d)の製造法における、一分子中に水酸基と架橋性ケイ素基を有する有機重合体としては、一分子中に水酸基と不飽和基を有する有機重合体と一分子中にSi−H基と架橋性ケイ素基を有する化合物をヒドロシリル化反応させることにより得られるものが例示できる。一分子中に水酸基と不飽和基を有する有機重合体としては片末端がアリルエーテル化されたポリオキシプロピレンモノエーテルが好ましく、上述した複金属シアン化物錯体触媒を用いて製造された数平均分子量2,000以上のものがより好ましい。一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基を有する化合物としてはトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシランが好ましい。一分子中に少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物としては上述のイソシアネート基を複数有する化合物が例示でき、脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。(e)の製造法における、一分子中に少なくとも1個の不飽和結合を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のウレタン結合を有する有機重合体としては、一分子中に少なくとも1個の不飽和結合を有し、かつ一分子中に少なくとも1個の水酸基を有する有機重合体を上述したイソシアネート基を複数有する化合物と反応させることにより得られる有機重合体、あるいは一分子中に少なくとも1個の水酸基を有する有機重合体と一分子中に不飽和基とイソシアネート基を有する化合物を反応させることにより得られる有機重合体等が例示できる。一分子中に少なくとも1個の不飽和結合を有し、かつ一分子中に少なくとも1個の水酸基を有する有機重合体を上述したイソシアネート基を複数有する化合物と反応させることにより得られる有機重合体が好ましく、一分子中に少なくとも1個の不飽和結合を有し、かつ一分子中に少なくとも1個の水酸基を有する有機重合体としては片末端がアリルエーテル化されたポリオキシプロピレンモノエーテルが好ましく、上述した複金属シアン化物錯体触媒を用いて製造された数平均分子量2,000以上のものがより好ましい。一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基を有する化合物は上述のものを用いることができる。
【0019】一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のカーボネート結合を有する有機重合体の製造方法としては、下記(f)〜(h)の製造方法が好ましい。
(f)一分子中に少なくとも1個のアリルカーボネート基を有する有機重合体と一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法、(g)一分子中に水酸基と架橋性ケイ素基を有する有機重合体とカーボネート化合物とを反応させる方法、(h)一分子中に少なくとも1個の不飽和結合を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のカーボネート結合を有する有機重合体と一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法。
【0020】(f)の製造方法における、一分子中に少なくとも1個のアリルカーボネート基を有する有機重合体は、例えば特開昭56−133246号公報、特公平5−26812号公報等に開示される上述のポリオール類とアリルエチルカーボネートやジアリルカーボネート等のアリル基含有カーボネート化合物を反応させることにより製造できる。用いるポリオール類としてはポリエーテルポリオールが好ましく、ポリオキシアルキレンポリオールがより好ましく、ポリオキシプロピレンポリオールが更に好ましい。分子量4,000を越えるポリオキシプロピレンポリオールを用いる場合は末端の水酸基含有量の高くできる、有機配位子を有するヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体などを含む複金属シアン化物錯体触媒を用いて製造されたポリオキシプロピレンポリオールを用いることが好ましい。また一分子中に水酸基と不飽和基を有する有機重合体を用いても良い。この場合、片末端がアリルエーテル化されたポリオキシプロピレンモノエーテルが好ましく、上述した複金属シアン化物錯体触媒を用いて製造された数平均分子量2,000以上のものがより好ましい。(g)の製造法における、一分子中に水酸基と架橋性ケイ素基を有する有機重合体は上述のものが使用でき、カーボネート化合物としてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジアリルカーボネート、ジフェニルカーボネート等を用いることができる。(h)の製造法における、一分子中に少なくとも1個の不飽和結合を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のカーボネート結合を有する有機重合体は、一分子中に少なくとも1個の不飽和結合を有し、かつ一分子中に少なくとも1個の水酸基を有する有機重合体を上述したアリルカーボネート基を有する化合物と反応させることにより得られる有機重合体が例示できる。一分子中に少なくとも1個の不飽和結合を有し、かつ一分子中に少なくとも1個の水酸基を有する有機重合体としては片末端がアリルエーテル化されたポリオキシプロピレンモノエーテルが好ましく、上述した複金属シアン化物錯体触媒を用いて製造された数平均分子量2,000以上のものがより好ましい。
【0021】一分子中に水素−ケイ素結合と架橋性ケイ素基を有する化合物は上述のものを用いることができる。
【0022】一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のエステル結合を有する有機重合体の製造方法としては、下記(i)の製造方法が好ましい。
(i)一分子中に水酸基と架橋性ケイ素基を有する有機重合体と多価カルボン酸類とを反応させる方法。
【0023】(i)の製造法における、一分子中に水酸基と架橋性ケイ素基を有する有機重合体は上述のものが使用でき、多価カルボン酸類としては、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸等の多価カルボン酸;無水フタル酸、無水マレイン酸等の多価カルボン酸無水物;コハク酸ジエチル、テレフタル酸ジエチル、フマル酸ジクロリド等の多価カルボン酸誘導体;などを用いることができる。
【0024】(B)成分の金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒は、水分あるいは湿分の存在下、(A)成分の架橋性ケイ素基をシロキサン結合の生成により架橋硬化させる反応の触媒機能を有する化合物であれば特に限定されない。
【0025】金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒としては、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のアルキルチタン酸塩;有機ケイ素チタン酸塩;オクチル酸スズ、ラウリン酸スズ、ステアリン酸スズ等の2価のスズ化合物;ジブチルスズジアセトキシド、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジステアレート、ジブチルスズビスアセチルアセトナート、ジブチルスズビス(o−フェニルフェノキサイド)、ジブチルスズオキシドとフタル酸エステルとの反応物、ジブチルスズビストリエトキシシリケート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジバーサテートなどの4価のスズ化合物;ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシドなどの有機ジルコニウム化合物;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテートなどの有機アルミニウム化合物;などが例示できる。硬化性の点から、4価のスズ化合物が好ましく、ジブチルスズジアセトキシド、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジステアレート、ジブチルスズビスアセチルアセトナート、ジブチルスズオキシドとフタル酸エステルとの反応物、ジブチルスズビストリエトキシシリケートなどの4価のスズ化合物がより好ましい。
【0026】(B)成分中の金属原子1モルが反応し得る活性硫黄種のモル数は、金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒中の金属原子の原子価から金属原子に結合する金属−炭素結合の数を減じた数で表わされる。従って例えばジブチルスズジラウレートの場合スズの原子価4からアルキル基の数2を減じた2となる。
【0027】(B)成分の金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒の配合量は、(A)成分中の架橋性ケイ素基の種類および硬化性組成物の使用目的によって調整可能であるが、架橋性ケイ素基を有する有機重合体100重量部に対して0.01から10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。配合量が少なすぎると十分な硬化速度が得られなくなり、多すぎると物性等に悪影響を与える場合があると共に(C)成分の配合量も増量する必要があり、好ましくない。
【0028】(B)成分の金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒は単独で用いても良いが、オクチル酸等のカルボン酸類;オクチルアミン、ラウリルアミン等のアミン類;等と共に用いても良く、また予め反応させて用いても良い。
【0029】(C)成分の化合物は、(B)成分の金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒共存下、50℃以上の加熱により(B)成分の金属原子に作用する活性硫黄種を生成し得る化合物であれば特に限定されない。(C)成分の化合物から生成し得る活性硫黄種とは、(B)成分中の金属原子と金属−硫黄結合の生成が可能な活性種である。
【0030】(B)成分の金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒共存下、(C)成分の化合物が(B)成分の金属原子に作用する活性硫黄種を生成し得る温度は、好ましくは50℃以上90℃以下、より好ましくは55℃以上90℃以下、更に好ましくは60℃以上90℃以下である。(B)成分の金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒共存下、50℃未満の加熱により(B)成分の金属原子に作用する活性硫黄種を生成する化合物では、反応性が高すぎて貯蔵後の硬化性の低下(硬化遅延)など一成分型湿分硬化性組成物として問題があり不適当である。また90℃を超える温度でしか活性硫黄種を生成しない化合物では、ウレタン結合、カーボネート結合、エステル結合の分解開裂が先行してしまい、耐熱性の改善効果が小さい。
【0031】(C)成分の配合量は、配合された(C)成分から生成し得る活性硫黄種のモル数rと、配合された(B)成分中の金属原子が反応し得る活性硫黄種のモル数sの比(r/s)として0.4以上1.6以下が必要であり、0.5以上1.2以下が好ましく、0.5以上1.0以下がより好ましい。r/sが0.4未満では硬化物の耐熱性改善効果が不十分であり、1.6を超えると貯蔵後の硬化性の低下(硬化遅延)や着色など一成分型湿分硬化性組成物として問題になる場合がある。
【0032】このような(B)成分である金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒の共存下、50℃以上の加熱により(B)成分の金属原子に作用する活性硫黄種を生成する(C)成分の化合物は、下記一般式(1)〜(5)で表わされる群より選ばれる少なくとも1個である化合物が好ましい。
一般式(1):R12N−C(=X)−Sa−C(=X)−NR34 (1)
(式中、R1、R2、R3およびR4は同一もしくは異なる炭素数1〜20の一価の炭化水素基を示す。XはOあるいはSを示す。aは1〜2の整数を示す。)、一般式(2):
【0033】
【化3】


(式中、bおよびb’は2以上の整数でありbとb’は同一であってもよく異なっていてもよい。Xおよびaは前記に同じ。)、これらの化合物1モルあたりの生成し得る活性硫黄種のモル数はaである。
【0034】このような化合物の中ではXがSであるチウラム系化合物が好ましく、チウラム系化合物としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド等のチウラムモノスルフィド系化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド系化合物等が例示できる。
【0035】これらの中では、貯蔵安定性と熱履歴による物性の改善効果の点から、下記一般式(6)で表わされるチウラムジスルフィド系化合物が好ましい。
一般式(6):R12N−C(=S)−S2−C(=S)−NR34(6)
(式中、R1、R2、R3およびR4は前記に同じ。)
チウラムジスルフィド系化合物としてはテトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド等が例示できる。
一般式(3):R5NH−C(=S)−NR67 (3)
(式中、R5、R6およびR7は同一もしくは異なる炭素数1〜20の一価の炭化水素基を示す。)、これらの化合物1モルあたりの生成し得る活性硫黄種のモル数は1である。
【0036】このようなチオウレア系化合物としては、ジフェニルチオウレア、ジオルトトリルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア等が例示できる。
【0037】これらの中では、貯蔵安定性と熱履歴による物性の改善効果の点から下記一般式(7)で表される芳香族系チオウレア化合物が好ましい。
一般式(7):R10NH−C(=S)−NHR11(7)
(式中、R10およびR11は同一もしくは異なる炭素数6〜20の一価の芳香族系炭化水素基を示す。)
このような芳香族系チオウレア化合物としては、ジフェニルチオウレア、ジオルトトリルチオウレア等が例示できる。
一般式(4):(R12N−C(=X)−S−)pM (4)
(式中、R1、R2およびXは前記に同じ。MはZn(II)、Na(I)、Cu(II)、Fe(III)、Se(IV)、Te(IV)からなる群より選ばれる1又は2以上の金属原子を示す。pは金属Mの原子価を示す。)、これらの化合物1モルあたりの生成し得る活性硫黄種のモル数はpである。
【0038】このような化合物のうちXがSであるジチオカルバミン酸塩系化合物としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等が例示できる。
一般式(5):R8O−C(=S)−S−Zn−S−C(=S)−OR9 (5)
(式中、R8およびR9は同一もしくは異なる炭素数1〜20の一価の炭化水素基を示す。)
これらの化合物1モルあたりの生成し得る活性硫黄種のモル数は2である。
【0039】このようなキサントゲン酸塩系化合物としては、ブチルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、エチルキサントゲン酸亜鉛等が例示できる。
【0040】本発明の硬化性組成物は、水分あるいは湿分の供給があれば(A)成分の架橋性ケイ素基がシロキサン結合を生成することにより硬化できるように配合物中の水分量を制御して梱包された一成分型湿分硬化性組成物である。一成分型湿分硬化性組成物の製造法としては、予め各種配合剤の水分量を制御しておくことにより製造可能であるが、各種配合剤の混練時に加熱、減圧等により水分量を制御しても良い。貯蔵中の顕著な増粘を抑制するためには、一成分型硬化性組成物の製造直後の水分量が500ppm以下であることが好ましい。
【0041】本発明の一成分型硬化性組成物は、建築用あるいは工業用シーリング材、接着剤、粘着剤、塗料、コーティング材などとして好適であるが、さらに必要であれば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、充填材、タレ防止剤、脱水剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、シリル化剤などの反応性ケイ素基含有化合物、表面特性改良剤、難燃剤等の配合剤を添加することが可能である。
【0042】充填材としては、フュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラックのような補強性充填材;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華およびシラスバルーンなどのような充填材;石綿、ガラス繊維およびフィラメントのような繊維状充填材が使用できる。これら充填材で強度の高い硬化物を得たい場合には、主にヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、膠質炭酸カルシウム、焼成クレー、クレーおよび活性亜鉛華などから選ばれる充填材用いることが好ましい。また、低強度で伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、重質炭酸カルシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛およびシラスバルーンなどから選ばれる充填材を用いることが好ましく、これら充填材は1種類で使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。
【0043】
【実施例】以下に本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
(製造例)
一分子中にアリル基と水酸基を有するポリオキシプロピレン系重合体の製造オートクレーブに、エポキシド重合触媒としてヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体0.40g、重合開始剤として平均分子量1,500の一分子中にアリル基と水酸基とを有するポリオキシプロピレン(日本油脂株式会社製ユニセーフPKA−5014 0.706mmol−OH/g)1500g、触媒活性化のためのプロピレンオキシド193gを仕込み、100℃に加熱することにより重合反応をおこなった。誘導期を経た後、反応成分温は急激に上昇し、その後に降下した。反応成分温の降下を確認した後、追加のプロピレンオキシド3200gを約5時間かけて滴下し、内温を100〜110℃に保った。滴下終了後さらに1時間加熱を続け、続いて減圧脱揮により微量の未反応モノマーを除去した。これにより約80ppmのヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有する、一分子中にアリル基と水酸基を有するポリオキシプロピレン系重合体を得た。得られた重合体のヨウ素価滴定で求めた不飽和基当量は0.186mmol/g、水酸基価滴定により求めた水酸基当量は0.239mmol/g、数平均分子量は約5,000であった。
一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基を有するポリオキシプロピレン系重合体の製造上記で得られたヘキサシアノコバルト酸亜鉛グライム錯体を含有し、一分子中にアリル基と水酸基を含有するポリオキシプロピレン系重合体4660g(不飽和基量867mmol)に、無水コハク酸0.4gを添加し、窒素雰囲気で100℃/0.5時間加熱溶解した後、80℃まで冷却し、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金重量で10ppm)、ジメトキシメチルシラン74g(ポリオキシプロピレン中のアリル基に対して0.80当量)を順に添加した。80℃で2時間反応を行ない、減圧脱揮することにより一分子中に架橋性ケイ素基と水酸基を有するポリオキシプロピレン系重合体を得た。1H−NMRから求めたヒドロシリル化収率は73%(アリル基基準)であり、GPCの測定ではヒドロシリル化反応の前後で分子量分布はほとんど変化なかった。
一分子中に架橋性ケイ素基とウレタン結合を有するポリオキシプロピレン系重合体の製造上記で得られた一分子中に架橋性ケイ素基とウレタン結合を有するポリオキシプロピレン系重合体3960g(水酸基量950mmol)に対して、ヘキサメチレンジイソシアネート78.4g(イソシアネート基930mmol;水酸基に対して0.98当量)、ジブチルスズビスオクチルチオグリコレート0.43mg(110ppm)を室温で添加し、100℃で6時間加熱した。IR分析より求めたイソシアネート基未反応率は5%であった。メタノール65gを添加し、0.5時間攪拌し、IR分析でイソシアネートの吸収のないことを確認し、減圧脱揮した。
【0044】こうして得られた、一分子中に架橋性ケイ素基とウレタン結合を有するポリオキシプロピレン系重合体100重量部に対して、オクチル酸スズ3重量部、ラウリルアミン0.5重量部の混合物により硬化させた。JIS3号ダンベルを打ち抜き、力学特性を測定した。100%伸長時モジュラス0.16MPa、引張破断強度0.26MPa、引張破断時伸び200%であった。
(実施例1)(A)成分として製造例で製造した一分子中に架橋性ケイ素基とウレタン結合を有するポリオキシプロピレン系重合体100重量部に対してジオクチルフタレート90重量部、膠質炭酸カルシウム(商品名:白艶華CCR、白石工業製)160重量部、重質炭酸カルシウム(商品名:ホワイトンSB、白石カルシウム製)55重量部、酸化チタン(商品名:タイペークR−820、石原産業製)20重量部、ポリアミドワックス(商品名:ディスパロン6500、楠本化成製)2重量部、紫外線吸収剤(商品名:チヌビン327、チバスペシャルティ製)1重量部、光安定化剤(商品名:サノールLS770、三共製)1重量部をプラネタリーミキサーで100℃に加熱混練しながら減圧し、水分量が500ppm以下であることを確認した。50℃以下に冷却した後、(C)成分としてテトラブチルチウラムジスルフィド(TBTとも略す)1重量部、ビニルトリメトキシシラン3重量部、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン3重量部、(B)成分としてジブチルスズビスアセチルアセトナート2重量部を混練して、カートリッジに封入し、一成分型湿分硬化性組成物を作製した。この組成物においては、配合した(C)成分の化合物から生成し得る活性硫黄種のモル数rと配合した(B)成分中の金属原子が反応し得る活性硫黄種のモル数sの比r/sは0.6である。
【0045】カートリッジの養生は、室温で10日あるいは50℃オーブンで10日、20日、38日の4水準を行なった。加熱養生したものについては室温に戻してから開封し、厚さ3mmのシートを作製、硬化性の指標としてのタックフリータイム(シートを指触した時に、組成物成分が指に付着しなくなる時間)を23〜25℃湿度55〜70%の環境下で測定した。また室温10日の養生品および50℃オーブン10日および20日養生品については、厚さ3mmのシートを23℃湿度湿度60%で3日間養生により硬化させ、更に50℃オーブンで4日間養生した。室温に戻した後、JIS3号ダンベルを打ち抜き、引張り速度200mm/minにおける100%伸張時応力(M100)をオートグラフで測定した。また打ち抜いたダンベルを90℃オーブンで2週間養生、同様にして100%伸張時応力(M100)を測定、加熱養生前後のM100を比較して耐熱性の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】


(参考例1)実施例1における一分子中に架橋性ケイ素基とウレタン結合を有するポリオキシプロピレン系重合体のかわりに、複金属シアン化物錯体触媒を用いて製造した数平均分子量約10000の両末端水酸基のポリオキシプロピレングリコール(ウレタン結合、カーボネート結合、エステル結合を含まない)の末端水酸基をアリル基に変換後、メチルジメトキシシランをヒドロシリル化反応させることにより製造した一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有するポリオキシプロピレン系重合体(重合体100重量部に対して、オクチル酸スズ3重量部、ラウリルアミン0.5重量部の混合物により硬化させたJIS3号ダンベルの100%伸長時モジュラス0.14MPa、引張破断強度0.25MPa、引張破断時伸び225%)を用い、テトラブチルチウラムジスルフィドを用いないことを除いては実施例1と同様の方法で、一成分型湿分硬化性組成物を作製した。カートリッジは室温7日の養生あるいは50℃オーブン14日、28日の養生を行なった。加熱養生したものについては室温に戻してから開封し、厚さ3mmのシートを作製、硬化性の指標としてのタックフリータイムの測定と耐熱性の評価を実施例1と同様の方法で行なった。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】


(比較例1)テトラブチルチウラムジスルフィドを添加しないことを除いては実施例1と同様の方法で、一成分型湿分硬化性組成物を作製した。カートリッジは室温7日の養生あるいは50℃オーブン28日の養生を行なった。加熱養生したものについては室温に戻してから開封し、厚さ3mmのシートを作製、硬化性の指標としてのタックフリータイムを測定した。また室温で7日の養生品については、実施例1と同様の方法で耐熱性の評価を行なった。結果を表3に示す。
【0048】
【表3】


(実施例2〜3)テトラブチルチウラムジスルフィド(TBT)1重量部のかわりに2重量部(実施例2)あるいは3重量部(実施例3)に増量したことを除いては実施例1と同様の方法で、一成分型湿分硬化性組成物を作製した。カートリッジは室温7日の養生あるいは50℃オーブン20日の養生を行なった。加熱養生したものについては室温に戻してから開封し、厚さ3mmのシートを作製、硬化性の指標としてのタックフリータイムを測定した。また室温で7日の養生品については、実施例1と同様の方法で耐熱性の評価を行なった。結果を表4に示す。
【0049】
【表4】


(比較例2〜3)テトラブチルチウラムジスルフィド(TBT)1重量部のかわりに0.5重量部に減量(比較例2)、4重量部に増量(比較例3)したことを除いては実施例1と同様の方法で、一成分型湿分硬化性組成物を作製した。カートリッジは室温で7日の養生あるいは50℃オーブンで20日の養生を行なった。加熱養生したものについては室温に戻してから開封し、厚さ3mmのシートを作製、硬化性の指標としてのタックフリータイムを測定した。また室温で7日の養生品については、実施例1と同様の方法で耐熱性の評価を行なった。結果を表5に示す。
【0050】
【表5】


参考例および比較例1より明らかな様に、一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のウレタン結合を有する有機重合体を、金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒を用いて硬化させたその硬化物は、ウレタン結合を有さないものと比較して耐熱性に劣る。実施例1〜3、および比較例2〜3より明らかな様に、(C)成分の添加により硬化物の耐熱性は改善されるが、r/s=0.3ではその効果は不十分であり、一方でr/sが1.6を超えると貯蔵中の熱履歴により硬化遅延の影響が大きくなる。特開昭63−193953号公報の実施例4(2価スズ使用)および実施例7(4価スズ使用)は一成分型湿分硬化性組成物ではないが、r/sはそれぞれ0.2および1.9に相当する。
(比較例4〜5)テトラブチルチウラムジスルフィド(TBT)1重量部のかわりにジペンタエチレンチウラムテトラスルフィド(TRA)を0.7重量部(比較例4)、1重量部(比較例5)添加した他は、実施例1と同様の方法で、一成分型湿分硬化性組成物を作製した。カートリッジは室温7日の養生あるいは50℃オーブン20日の養生を行なった。加熱養生したものについては室温に戻してから開封し、厚さ3mmのシートを作製、硬化性の指標としてのタックフリータイムを測定した。また室温で7日の養生品については、実施例1と同様の方法で耐熱性の評価を行なった。結果を表6に示す。
【0051】
【表6】


チウラムテトラスルフィドは、硬化物の耐熱性を向上させる効果はあるものの、金属を有する架橋性ケイ素基縮合触媒との反応性が高いため一成分型硬化性組成物とした場合、加熱貯蔵後の硬化遅延が起こった。50℃未満の加熱により(B)成分の金属原子に作用する活性硫黄種を生成するチウラムテトラスルフィド類は、(C)成分としては不適当である。特開昭58−13655号公報の実施例2はTRAと2価スズを使用しており一成分型湿分硬化性組成物ではないが、r/Sは0.7に相当する。
(実施例4〜5)テトラブチルチウラムジスルフィド(TBT)1重量部のかわりにジフェニルチオウレア(C)を1.1重量部(実施例4)、2.1重量部(実施例5)配合した他は、実施例1と同様の方法で、一成分型湿分硬化性組成物を作製した。カートリッジは室温7日の養生あるいは50℃オーブン20日の養生を行なった。加熱養生したものについては室温に戻してから開封し、厚さ3mmのシートを作製、硬化性の指標としてのタックフリータイムを測定した。また室温で7日の養生品については、実施例1と同様の方法で耐熱性の評価を行なった。結果を表7に示す。
【0052】
【表7】


(実施例6)(A)成分として製造例で製造した一分子中に架橋性ケイ素基とウレタン結合を有するポリオキシプロピレン系重合体100重量部に対してPPG(3000)55重量部、膠質炭酸カルシウム(商品名:白艶華CCR、白石工業製)120重量部、酸化チタン(商品名:タイペークR820、石原産業製)20重量部、ポリアミドワックス(商品名:ディスパロン6500、楠本化成製)2重量部、紫外線吸収剤(商品名:チヌビン327、チバスペシャルティ製)1重量部、光安定化剤(商品名:サノールLS770、三共製)1重量部をプラネタリーミキサーで100℃に加熱混練しながら減圧し、水分量が500ppm以下であることを確認した。50℃程度に冷却した後、(C)成分としてテトラエチルチウラムジスルフィド(TETとも略す)0.7重量部、ビニルトリメトキシシラン3重量部、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン3重量部、(B)成分としてジブチルスズビスアセチルアセトナート2重量部を混練して、カートリッジに封入し、一成分型湿分硬化性組成物を作製した。
【0053】カートリッジの養生は、室温で7日あるいは50℃オーブンで14日、28日の3水準を行なった。加熱養生したものについては室温に戻してから開封し、厚さ3mmのシートを作製、硬化性の指標としてのタックフリータイムを23〜25℃湿度55〜70%の環境下で測定した。また室温7日の養生品については、厚さ3mmのシートを23℃湿度湿度60%で3日間養生により硬化させ、更に50℃オーブンで4日間養生した。室温に戻した後、JIS3号ダンベルを打ち抜き、引張り速度200mm/minにおける100%伸張時応力(M100)をオートグラフで測定した。また打ち抜いたダンベルを90℃オーブンで2週間養生、同様にして100%伸張時応力(M100)を測定、加熱養生前後のM100を比較して耐熱性の評価を行なった。結果を表8に示す。
【0054】
【表8】


(実施例7)テトラエチルチウラムジスルフィド(TET)0.7重量部の添加順序を加熱脱水後から加熱脱水前に変更することを除いては実施例6と同様の方法で一成分型湿分硬化性組成物を作製し、物性評価を行なった。結果を表9に示す。
【0055】
【表9】


実施例7より(B)成分である金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒の共存下でなければ(C)成分の50℃以上の加熱を行なっても効果に大きな差はないことがわかる。
【0056】
【発明の効果】本発明によれば、一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のウレタン結合、カーボネート結合、エステル結合からなる群より選ばれる結合を有する有機重合体を、金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒により架橋硬化させる一成分型湿分硬化性組成物において、金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒の共存下、加熱により架橋性ケイ素基縮合触媒の金属原子に作用する活性硫黄種を生成し得る化合物を特定量配合することにより、一成分型湿分硬化性組成物の貯蔵安定性を確保しつつ耐熱性の改善ができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)一分子中に少なくとも1個の架橋性ケイ素基を有し、かつ一分子中に少なくとも1個のウレタン結合、カーボネート結合、エステル結合からなる群より選ばれる結合を有する有機重合体、(B)金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒、及び(C)(B)成分である金属原子を有する架橋性ケイ素基縮合触媒の共存下、50℃以上の加熱により(B)成分の金属原子に作用する活性硫黄種を生成し得る化合物を含有し、(C)成分の配合量が、配合した(C)成分の化合物から生成し得る活性硫黄種のモル数rと、配合した(B)成分中の金属原子が反応し得る活性硫黄種のモル数sの比(r/s)として0.4以上1.6以下であることを特徴とする一成分型湿分硬化性組成物。
【請求項2】 (C)成分の化合物が、下記一般式(1)〜(5)で表わされる群より選ばれる少なくとも1個である、請求項1記載の一成分型湿分硬化性組成物。
一般式(1):R12N−C(=X)−Sa−C(=X)−NR34 (1)
(式中、R1、R2、R3およびR4は同一もしくは異なる炭素数1〜20の一価の炭化水素基を示す。XはOあるいはSを示す。aは1〜2の整数を示す。)、一般式(2):
【化1】


(式中、bおよびb’は2以上の整数でありbとb’は同一であってもよく異なっていてもよい。Xおよびaは前記に同じ。)、一般式(3):R5NH−C(=S)−NR67 (3)
(式中、R5、R6およびR7は同一もしくは異なる炭素数1〜20の一価の炭化水素基を示す。)、一般式(4):(R12N−C(=X)−S−)pM (4)
(式中、R1、R2およびXは前記に同じ。MはZn(II)、Na(I)、Cu(II)、Fe(III)、Se(IV)、Te(IV)からなる群より選ばれる1又は2以上の金属原子を示す。pは金属Mの原子価を示す。)、一般式(5):R8O−C(=S)−S−Zn−S−C(=S)−OR9 (5)
(式中、R8およびR9は同一もしくは異なる炭素数1〜20の一価の炭化水素基を示す。)
【請求項3】 (C)成分の化合物が、下記一般式(6)で表わされるチウラムジスルフィド系化合物および下記一般式(7)で表される芳香族系チオウレア化合物からなる群より選ばれる少なくとも1個である、請求項1記載の一成分型湿分硬化性組成物。
一般式(6):R12N−C(=S)−S2−C(=S)−NR34 (6)
(式中、R1、R2、R3およびR4は前記に同じ。)
一般式(7):R10NH−C(=S)−NHR11 (7)
(式中、R10およびR11は同一もしくは異なる炭素数6〜20の一価の芳香族系炭化水素基を示す。)
【請求項4】 (B)成分の金属を有する架橋性ケイ素基縮合触媒が4価のスズ化合物である請求項1記載の一成分型湿分硬化性組成物。

【公開番号】特開2002−201368(P2002−201368A)
【公開日】平成14年7月19日(2002.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−399760(P2000−399760)
【出願日】平成12年12月28日(2000.12.28)
【出願人】(000000941)鐘淵化学工業株式会社 (3,932)
【Fターム(参考)】