説明

一斉通信システム、呼制御サーバ

【課題】一斉通信時にデータを受信する第2の端末の数に関わらず、発呼要求から一斉通信の開始までに要する時間を短縮できるようにする。
【解決手段】第1の端末1は、呼制御サーバ3に対して発呼要求を送信する(S201)。発呼要求を受信した呼制御サーバ3は、一斉通信時の受信端末となる複数の第2の端末21,22,23に発呼要求をマルチキャストで送信する(S202)。呼制御サーバ3は、第1の端末1と複数の第2の端末21,22,23との間の通信帯域が確保されていることを示す評価結果が評価部で得られると、そのことをトリガとして、発呼端末としての第1の端末1に対して成功応答を返信する(S203)。第1の端末1は、発呼要求の送信後に、呼制御サーバ3から成功応答の返信があると、一定時間経過後に、複数の第2の端末21,22,23に対して一斉通信によりデータをマルチキャストで送信する(S204)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の端末から複数の第2の端末に対して一斉通信によりデータを一斉に伝送可能な一斉通信システム、呼制御サーバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、集合住宅などにおいて、たとえば管理人室に設置された第1の端末から各住戸に設置された複数の第2の端末に対して、一斉通信により音声情報等のデータを一斉に伝送するための一斉通信システムが導入されている。さらに、近年では、インターネットの普及に伴って、IP(Internet Protocol)ネットワークを用いて一斉通信システムを実現することも提案されている。
【0003】
IPを用いたパケット交換システムにおいては、端末同士で通話を行うために、SIP(Session InitiationProtocol)、H.323、MEGACO(media gatewaycontrol)などの呼制御プロトコルが用いられている。ここで、第1の端末は、標準の呼制御プロトコルを用いて複数の第2の端末にデータを伝送するには、複数の第2の端末全てとの間にセッションを確立する必要がある。具体的には、第1の端末は、SIPサーバ等の呼制御サーバに発呼要求を要求信号として送信し、この発呼要求に対する返信として成功応答を受信すると複数の第2の端末に対して一斉通信を行う。ただし、呼制御サーバは、発呼要求に対して暫定応答や成功応答が第2の端末から返信されてきた場合に初めて第1の端末に成功応答を返信する。そのため、第1の端末は、セッションの確立に時間が掛かり、発呼要求を出した後すぐに一斉通信を開始できないという問題がある。
【0004】
ところで、SIPに従った呼制御を行うシステムにおいて、発呼要求(開始要求)があってから一斉通信(一斉指令放送)が開始されるまでの時間を短縮することを目的とした一斉通信システム(通信指令システム)も提案されている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1では、一斉通信が行われる前にIP通信指令交換機とIP電話機との間に論理チャネルを予め確立し、その論理チャネルを常時接続しておき、指令卓からIP電話機への一斉通信をその論理チャネルを介して行うことで迅速に行えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−177826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の構成によれば、一斉通信時にデータを受信する第2の端末(IP電話機)が少数であれば、発呼要求から一斉通信の開始までの時間を短縮できるものの、第2の端末が多数になると、依然として一斉通信の開始までに時間が掛かる可能性がある。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されており、一斉通信時にデータを受信する第2の端末の数に関わらず、発呼要求から一斉通信の開始までに要する時間を短縮することができる一斉通信システム、呼制御サーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一斉通信システムは、一斉通信時にデータを送信する第1の端末と、前記一斉通信時に前記第1の端末からデータを受信する複数の第2の端末と、前記第1の端末および前記複数の第2の端末との間で通信可能な呼制御サーバとを備え、前記第1の端末は、前記呼制御サーバに発呼要求を要求信号として送信し、当該発呼要求に対する返信として発呼応答を受信すると前記複数の第2の端末に対して前記一斉通信を行う一斉通信処理部を有し、前記呼制御サーバは、前記第1の端末から前記発呼要求を受信したときに、前記複数の第2の端末に前記発呼要求を中継信号としてマルチキャストで送信する要求送信部と、前記第1の端末と前記複数の第2の端末との間の通信帯域の評価を行う評価部と、前記要求送信部から前記発呼要求が送信された後、前記通信帯域が確保されていることを示す前記評価部の評価結果をトリガにして、前記発呼応答を前記第1の端末に返信する応答返信部とを有することを特徴とする。
【0009】
この一斉通信システムにおいて、前記第1の端末は、前記一斉通信を実行後に前記呼制御サーバに切断要求を前記要求信号として送信し、当該切断要求に対する返信として切断応答を受信すると前記複数の第2の端末への前記一斉通信を終了する終了処理部をさらに有し、前記要求送信部は、前記第1の端末から前記切断要求を受信したときに、前記複数の第2の端末に前記切断要求を中継信号としてマルチキャストで送信し、前記応答返信部は、前記要求送信部から前記切断要求が送信された後、前記通信帯域が確保されていることを示す前記評価部の評価結果をトリガにして、前記切断応答を前記第1の端末に返信することが望ましい。
【0010】
この一斉通信システムにおいて、前記評価部は、前記第1の端末と前記第2の端末との少なくとも一方で発生している通信プロセスの数に基づいて前記通信帯域の評価を行うことがより望ましい。
【0011】
この一斉通信システムにおいて、前記評価部は、通信トラフィック量に基づいて前記通信帯域の評価を行うことがより望ましい。
【0012】
この一斉通信システムにおいて、前記評価部は、伝送路のPHYレートに基づいて前記通信帯域の評価を行うことがより望ましい。
【0013】
この一斉通信システムにおいて、前記要求送信部は、前記評価部の評価結果に基づいて定められる回数分だけ、前記中継信号をマルチキャストで繰り返し送信することがより望ましい。
【0014】
この一斉通信システムにおいて、前記呼制御サーバは、前記第1の端末から前記要求信号を受信した時点以降における前記評価部の評価結果に基づいて、前記要求送信部からの前記中継信号の送信回数を決定することがより望ましい。
【0015】
この一斉通信システムにおいて、前記呼制御サーバは複数台設けられており互いに通信可能であって、前記第1の端末は前記複数台の呼制御サーバのうち第1の呼制御サーバと通信可能であって、前記複数の第2の端末のうち少なくとも一部の端末は前記複数台の呼制御サーバのうち第2の呼制御サーバと通信可能であって、前記第1の呼制御サーバの前記要求送信部は、前記第1の端末から前記要求信号を受信すると前記第2の呼制御サーバに前記要求信号を転送し、前記第2の呼制御サーバの前記要求送信部は、前記第1の呼制御サーバから転送された前記要求信号を受信すると、前記第2の呼制御サーバとの間で通信可能な前記第2の端末に対して前記中継信号を送信することがより望ましい。
【0016】
本発明の呼制御サーバは、一斉通信時にデータを送信する第1の端末および前記一斉通信時に前記第1の端末からデータを受信する複数の第2の端末との間で通信可能な呼制御サーバであって、前記第1の端末から発呼要求を受信したときに、前記複数の第2の端末に前記発呼要求をマルチキャストで送信する要求送信部と、前記第1の端末と前記複数の第2の端末との間の通信帯域の評価を行う評価部と、前記要求送信部から前記発呼要求が送信された後、前記通信帯域が確保されていることを示す前記評価部の評価結果をトリガにして、前記一斉通信を開始させるための発呼応答を前記第1の端末に返信する応答返信部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、一斉通信時にデータを受信する第2の端末の数に関わらず、発呼要求から一斉通信の開始までに要する時間を短縮することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係る一斉通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図2】比較例に係る一斉通信システムの構成を示す概略ブロック図である。
【図3】比較例に係る一斉通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図4】実施形態1に係る一斉通信システムの構成を示す概略ブロック図である。
【図5】実施形態2に係る一斉通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図6】実施形態3に係る一斉通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(比較例)
本比較例では、SIP(Session InitiationProtocol)に従った呼制御を行うシステムにおいて、第1の端末から複数の第2の端末に対して一斉通信によりデータを一斉に伝送する一斉通信システムを例示する。この一斉通信システムは、図2に示すように、第1の端末1と、複数の第2の端末21,22,23(以下、各々を区別しない場合にはまとめて「第2の端末2」という)と、第1の端末1および第2の端末2との間で通信可能な呼制御サーバ3とを備えている。ここでは、呼制御サーバ3はSIPサーバであって、第1の端末1と第2の端末2との間でセッションの確立や解放を管理する。
【0020】
以下、図2に示す一斉通信システムにおいて第1の端末1が複数の第2の端末21,22,23に対して一斉通信により一斉放送音声の音声情報(データ)を一斉に伝送する場合の動作について、図3を参照して説明する。
【0021】
一斉通信時の発呼端末となる第1の端末1は、まず呼制御サーバ3に対して発呼要求(SIPでは「INVITE」に相当)を送信する(図3のS101)。発呼要求を受信した呼制御サーバ3は、一斉通信時の受信端末となる第2の端末21,22,23の各々に対してパラレルサーチで発呼要求を送信する(S102〜104)。
【0022】
第2の端末21,22,23は、呼制御サーバ3から発呼要求を受信すると、呼制御サーバ3に対して暫定応答(SIPでは「180 Ringing」に相当)をそれぞれ返信する(S105〜107)。それから、第2の端末21,22,23は、呼制御サーバ3に対して成功応答(SIPでは「200 OK」に相当)をそれぞれ返信する(S108〜110)。呼制御サーバ3は、一斉通信の受信端末となる第2の端末21,22,23の全てから成功応答を受信すると、発呼端末としての第1の端末1に対し成功応答を返信する(S111)。
【0023】
第1の端末1は、発呼要求の送信後に、呼制御サーバ3から成功応答の返信があると、複数の第2の端末21,22,23に対して一斉通信により一斉放送音声の音声情報(データ)をマルチキャストで送信する(S112)。つまり、第1の端末1は、呼制御サーバ3から成功応答が返信されたことをもって、複数の第2の端末21,22,23との間にセッションを確立し、複数の第2の端末21,22,23に対して一斉通信が可能になる。
【0024】
さらに、第1の端末1は、一斉通信を実行後に、呼制御サーバ3に対して切断要求(SIPでは「BYE」に相当)を送信する(S113)。切断要求を受信した呼制御サーバ3は、第2の端末21,22,23の各々に対してパラレルサーチで切断要求を送信する(S114〜116)。
【0025】
第2の端末21,22,23は、呼制御サーバ3から切断要求を受信すると、呼制御サーバ3に対して成功応答(SIPでは「200 OK」に相当)をそれぞれ返信する(S117〜119)。呼制御サーバ3は、一斉通信の受信端末となる第2の端末21,22,23の全てから成功応答を受信すると、発呼端末としての第1の端末1に対し成功応答を返信する(S120)。
【0026】
第1の端末1は、切断要求の送信後に、呼制御サーバ3から成功応答の返信があると、複数の第2の端末21,22,23に対する一斉通信を終了する(S121)。つまり、第1の端末1は、呼制御サーバ3から成功応答が返信されたことをもって、複数の第2の端末21,22,23との間のセッションを解放し、一斉通信を終了する。
【0027】
以上説明した構成では、呼制御サーバ3は、第1の端末1からの発呼要求を受けてから成功応答を返信するまでの間に、一斉通信時の受信端末となる複数の第2の端末2全てを対象に、発呼要求を送信し暫定応答および成功応答の返信を受ける処理が必要である。そのため、受信端末としての第2の端末2が多数になると、第1の端末1は、全ての第2の端末2との間にセッションを確立するのに時間が掛かり、すぐには一斉通信を開始できないという問題がある。
【0028】
セッションの解放時も同様に、呼制御サーバ3は、第1の端末1からの切断要求を受けてから成功応答を返信するまでの間に、複数の第2の端末2全てを対象として、切断要求を送信し成功応答の返信を受ける処理が必要である。そのため、受信端末としての第2の端末2が多数になると、第1の端末1は、全ての第2の端末2との間のセッションを解放するのに時間が掛かり、続けて通信を行う場合でもすぐには次の通信を開始できないという問題がある。
【0029】
(実施形態1)
本実施形態の一斉通信システムは、基本的な構成は上記比較例と同様である。すなわち、本実施形態の一斉通信端末は、図4に示すように、一斉通信時の発呼端末となる第1の端末1と、一斉通信時の受信端末となる複数の第2の端末21,22,23(2)と、これらと通信可能に構成された呼制御サーバ3とを備えている。なお、図4では、3台の第2の端末2が図示されているが、一斉通信時の受信端末として機能する第2の端末2の台数を限定する趣旨ではなく、2台あるいは4台以上の第2の端末2が一斉通信時の受信端末として機能してもよい。
【0030】
本実施形態の一斉通信システムは、通信帯域が管理されており、パケットロスが比較的少ないIP(Internet Protocol)パケット交換システムに適用される。具体的には、一斉通信システムは集合住宅用インターホンシステムに適用されており、第1の端末1は管理人室に設置され、第2の端末2はそれぞれ各住戸内に設置され、呼制御サーバ3は集合住宅の共用部に設置される場合を例として説明する。つまり、第1の端末1は管理端末を構成し、第2の端末2は住戸端末を構成している。また、呼制御サーバ3には、集合住宅の共用玄関(ロビー)に設置されたロビーインターホン(図示せず)なども接続されるが、一斉通信に関係のない装置については説明を省略する。なお、集合住宅用インターホンシステムは一斉通信システムの用途の一例に過ぎず、一斉通信システムの用途は集合住宅用インターホンシステムに限らない。
【0031】
本実施形態の一斉通信システムは、第1の端末1と呼制御サーバ3との間、並びに複数の第2の端末21,22,23の各々と呼制御サーバ3との間はそれぞれ専用の信号線によって接続されている。さらに、この一斉通信システムは、第1の端末1、第2の端末21,22,23、呼制御サーバ3の各々に個別にIPアドレスが割り当てられており、IPネットワークを構成している。
【0032】
第1の端末1は、受信端末として機能する複数の第2の端末21,22,23に対して一斉通信により音声情報等のデータを一斉に伝送する一斉通信処理部101と、複数の第2の端末21,22,23への一斉通信を終了する終了処理部102とを有している。
【0033】
一斉通信処理部101は、呼制御サーバ3に対して発呼要求を要求信号として送信し、この発呼要求に対する返信として呼制御サーバ3から成功応答(発呼応答)を受信すると、複数の第2の端末21,22,23に対して一斉通信を行う。終了処理部102は、一斉通信の実行後に、呼制御サーバ3に対して切断要求を要求信号として送信し、この切断要求に対する返信として呼制御サーバ3から成功応答(切断応答)を受信すると、複数の第2の端末への一斉通信を終了する。
【0034】
呼制御サーバ3は、第1の端末1と第2の端末2との間でセッションの確立や解放を管理する。呼制御サーバ3は、第1の端末1から要求信号(発呼要求または切断要求)を受信し複数の第2の端末21,22,23に後述の中継信号を送信する要求送信部31と、第1の端末1に成功応答を返信する応答返信部32と、後述する評価部33とを有している。ここでは、呼制御サーバ3はマイコン(マイクロコンピュータ)を主構成とし、適宜のプログラムを実行することにより、要求送信部31、応答返信部32、評価部33の機能を実現する。
【0035】
要求送信部31は、第1の端末1から発呼要求を要求信号として受信したときに、複数の第2の端末21,22,23に対して発呼要求を中継信号としてマルチキャストで送信する。また、要求送信部31は、第1の端末1から切断要求を要求信号として受信したときには、複数の第2の端末21,22,23に対して切断要求を中継信号としてマルチキャストで送信する。
【0036】
応答返信部32は、要求送信部31から第2の端末2に発呼要求が送信された後、後述するトリガが発生すると、発呼要求の処理が正しく行われたことを示す発呼応答を成功応答として第1の端末1に返信する。また、応答返信部32は、要求送信部31から第2の端末2に切断要求が送信された後、後述するトリガが発生すると、切断要求の処理が正しく行われたことを示す切断応答を成功応答として第1の端末1に返信する。
【0037】
評価部33は、第1の端末1と複数の第2の端末21,22,23との間の通信帯域の評価を行う機能を備えている。つまり、一斉通信時において発呼端末となる第1の端末1と受信端末となる複数の第2の端末21,22,23との間の通信帯域は、評価部33によって評価されることになる。評価部33の評価結果は応答返信部32に出力されており、応答返信部32は、第1の端末1と複数の第2の端末21,22,23との間の通信帯域が確保されていることを示す評価部33の評価結果をトリガにして、成功応答を第1の端末1に返信する。
【0038】
ここにおいて、評価部33は、第1の端末1と第2の端末2との少なくとも一方で現在発生している通信プロセスの数に基づいて、第1の端末1と複数の第2の端末21,22,23との間の通信帯域を評価する。ここでいう通信プロセスの数とは、たとえば第2の端末2同士の音声のみの通話や、第2の端末2同士の映像付の通話や、第1の端末1から複数の第2の端末2への一斉放送など、一斉通信システム内で発生している通信数(通話数)である。呼制御サーバ3は、一斉通信システム内で現在発生中の通信プロセスの数を監視する機能を有している。たとえば、第2の端末21と第2の端末22との間で映像付の通話が発生し、さらに第1の端末1と第2の端末23との間で音声のみの通話が発生している場合、通信プロセスの数は「2」である。
【0039】
評価部33は、このような通信プロセスの数が少ないほど、第1の端末1と第2の端末2との間の伝送路が空いている、つまり広い通信帯域が確保されていると判断する。反対に、評価部33は、通信プロセスの数が多いほど、第1の端末1と第2の端末2との間の伝送路が混んでいる、つまり通信帯域の空きが少ないと判断する。要するに、評価部33は、現在の通信プロセスの数が予め定められている規定数よりも少なければ、第1の端末1と複数の第2の端末21,22,23との間の通信帯域が確保されていると判断し、この場合に、応答返信部32は第1の端末1に成功応答を返信する。
【0040】
このように応答返信部32は、通信帯域が確保されていることを示す評価結果が評価部33で得られて初めて成功応答を返信するので、評価部33は、通信帯域が確保されていることを示す評価結果が得られるまで繰り返し通信帯域の評価を行う。本実施形態では、呼制御サーバ3は、第1の端末1から要求信号(発呼要求または切断要求)を受信後、中継信号(発呼要求または切断要求)を要求送信部31から第2の端末21,22,23に送信する前に、評価部33にて1回目の通信帯域の評価を行う。ただし、評価部33が1回目の通信帯域の評価を行うタイミングは、この例に限らず、たとえば要求送信部31から第2の端末21,22,23への中継信号(発呼要求または切断要求)の送信後であってもよい。
【0041】
また、評価部33は、呼制御サーバ3が第1の端末1から要求信号を受信したか否かに関わらず、一定周期で定期的に通信帯域の評価を行っていてもよい。この場合、応答返信部32は、呼制御サーバ3が第1の端末1からの要求信号(発呼要求または切断要求)を受信すると、その時点での最新の評価結果に基づいて成功応答を返信するか否かを判断する。それ以降、応答返信部32は、通信帯域が確保されていることを示す評価結果が得られるまで、定期的に得られる通信帯域の評価結果に基づいて成功応答を返信するか否かを判断する。
【0042】
第2の端末2は、呼制御サーバ3から中継信号として発呼要求を受信すると、第1の端末1から一斉通信により送信される音声情報等のデータを受信する受信モードで待機する。また、第2の端末2は、呼制御サーバ3から中継信号として切断要求を受信すると、受信モードを終了する。
【0043】
以下、本実施形態の一斉通信システムにおいて第1の端末1が複数の第2の端末21,22,23に対して一斉通信により一斉放送音声の音声情報(データ)を一斉に伝送する場合の動作について、図1を参照して説明する。
【0044】
一斉通信時の発呼端末となる第1の端末1は、まず呼制御サーバ3に対して発呼要求(SIPでは「INVITE」に相当)を送信する(図1のS201)。発呼要求を受信した呼制御サーバ3は、一斉通信時の受信端末となる複数の第2の端末21,22,23を指定するマルチキャストアドレスを宛先アドレスに指定し、これら複数の第2の端末21,22,23に発呼要求をマルチキャストで送信する(S202)。
【0045】
さらに、呼制御サーバ3は、評価部33にて第1の端末1と複数の第2の端末21,22,23との間の通信帯域を評価する。呼制御サーバ3は、通信帯域が確保されていることを示す評価結果が評価部33で得られると、そのことをトリガとして、応答返信部32から発呼端末としての第1の端末1に対して成功応答(発呼応答)を返信する(S203)。
【0046】
このとき、呼制御サーバ3から発呼要求を受信した第2の端末21,22,23は、比較例と異なり呼制御サーバ3に対して暫定応答(SIPでは「180 Ringing」に相当)や成功応答(SIPでは「200 OK」に相当)の返信を行わない。なお、第2の端末2は、呼制御サーバ3に対して暫定応答や成功応答の返信を行うように構成されていてもよいが、この場合、呼制御サーバ3は、第2の端末2から返信された暫定応答や成功応答は無視し、評価部33での評価結果に基づいて成功応答の返信を行う。
【0047】
第1の端末1は、発呼要求の送信後に、呼制御サーバ3から成功応答の返信があると、一定時間経過後に、複数の第2の端末21,22,23に対して一斉通信により一斉放送音声の音声情報(データ)をマルチキャストで送信する(S204)。つまり、第1の端末1は、呼制御サーバ3から成功応答が返信されたことをもって、複数の第2の端末21,22,23との間にセッションを確立し、複数の第2の端末21,22,23に対して一斉通信が可能になる。
【0048】
また、第1の端末1は、一斉通信を実行後に、呼制御サーバ3に対して切断要求(SIPでは「BYE」に相当)を送信する(S205)。切断要求を受信した呼制御サーバ3は、複数の第2の端末21,22,23を指定するマルチキャストアドレスを宛先アドレスに指定し、これら複数の第2の端末21,22,23に切断要求をマルチキャストで送信する(S206)。
【0049】
さらに、呼制御サーバ3は、評価部33にて第1の端末1と複数の第2の端末21,22,23との間の通信帯域を評価する。呼制御サーバ3は、通信帯域が確保されていることを示す評価結果が評価部33で得られると、そのことをトリガとして、応答返信部32から発呼端末としての第1の端末1に対して成功応答(切断応答)を返信する(S207)。
【0050】
このとき、呼制御サーバ3から切断要求を受信した第2の端末21,22,23は、比較例とは異なり呼制御サーバ3に対して成功応答(SIPでは「200 OK」に相当)の返信を行わない。なお、第2の端末2は、呼制御サーバ3に対して成功応答の返信を行うように構成されていてもよいが、この場合、呼制御サーバ3は、第2の端末2から返信された成功応答は無視し、評価部33での評価結果に基づいて成功応答の返信を行う。
【0051】
第1の端末1は、切断要求の送信後に、呼制御サーバ3から成功応答の返信があると、複数の第2の端末21,22,23に対する一斉通信を終了する(S208)。つまり、第1の端末1は、呼制御サーバ3から成功応答が返信されたことをもって、複数の第2の端末21,22,23との間のセッションを解放し、一斉通信を終了する。
【0052】
以上説明した本実施形態の構成によれば、呼制御サーバ3は、第1の端末1からの発呼要求を受け、評価部33で通信帯域を評価し通信帯域が確保されていると判断されれば、第1の端末1に成功応答を返信して迅速に一斉通信のための環境を整えることができる。
【0053】
すなわち、集合住宅用インターホンシステムのように専用の信号線等が用いられて通信帯域が管理されたIPパケット交換システムでは、概ね通信帯域が確保されているので、呼制御サーバ3は、各第2の端末2からの暫定応答、成功応答の返信を待つ必要はない。そのため、一斉通信システムは、呼制御サーバ3が一斉通信時の受信端末となる複数の第2の端末2全てからの暫定応答、成功応答の返信を待つことなく第1の端末1に対して成功応答を返信するので、比較例に比べて早期にセッションを確立できる。したがって、この一斉通信システムによれば、一斉通信時にデータを受信する第2の端末2の数に関わらず、発呼要求から一斉通信の開始までに要する時間を短縮することができ、第1の端末1は発呼要求の送信後すぐに一斉通信を開始できるという利点がある。
【0054】
しかも、本実施形態の一斉通信システムでは、セッションの解放時にも、呼制御サーバ3は、評価部33で通信帯域を評価し通信帯域が確保されていると判断されれば、第1の端末1に成功応答を返信して迅速に一斉通信を終了することができる。すなわち、一斉通信システムは、呼制御サーバ3が複数の第2の端末2全てからの成功応答の返信を待つことなく第1の端末1に対して成功応答を返信するので、比較例に比べて早期にセッションを解放できる。したがって、この一斉通信システムによれば、一斉通信時にデータを受信する第2の端末2の数に関わらず、切断要求から一斉通信の終了までに要する時間も短縮することができ、第1の端末1は続けて通信を行う場合すぐに次の通信を開始できるという利点がある。
【0055】
さらに、第2の端末2は、中継信号(発呼要求または切断要求)を受けた後、呼制御サーバ3に対して暫定応答や成功応答を返信する必要がないので、暫定応答や成功応答の返信のために通信帯域が占有されることなく、通信帯域の使用量を少なく抑えられる。さらにまた、呼制御サーバ3は、要求送信部31から複数の第2の端末21,22,23に対して中継信号(発呼要求または切断要求)をマルチキャストで送信しているので、要求信号を受けてから一斉通信の開始、終了までの待ち時間をより短縮できる。
【0056】
また、本実施形態においては、評価部33は、第1の端末1と第2の端末2との少なくとも一方で発生している通信プロセスの数に基づいて、通信帯域の評価を行っているので、比較的軽い処理負荷で通信帯域を評価することができる。つまり、評価部33は、一斉通信システム内で現在発生中の通信プロセスの数を監視し、この数を規定数と比較するだけで、通信帯域が確保されているか否かを判断することができる。
【0057】
ところで、評価部33は、上述した通信プロセスの数以外のパラメータを用いて、通信帯域の評価を行う構成であってもよい。
【0058】
たとえば、評価部33は、一斉通信システムにおける現在の通信トラフィック量に基づいて、第1の端末1と複数の第2の端末21,22,23との間の通信帯域を評価する。ここでいう通信トラフィックは、たとえば第2の端末2同士の音声のみの通話や映像付の通話、第1の端末1から複数の第2の端末2への一斉放送、さらにブラウザデータ(HTTP等)、制御データなど、伝送路を流れるあらゆるトラフィックを含む。この場合、呼制御サーバ3は、一斉通信システム内の現在の通信トラフィック量を監視する機能を有する。
【0059】
評価部33は、このような通信トラフィック量が少ないほど、第1の端末1と第2の端末2との間の伝送路が空いている、つまり広い通信帯域が確保されていると判断する。反対に、評価部33は、通信トラフィック量が多いほど、第1の端末1と第2の端末2との間の伝送路が混んでいる、つまり通信帯域の空きが少ないと判断する。要するに、評価部33は、現在の通信トラフィック量が予め定められている規定量よりも少なければ、第1の端末1と複数の第2の端末21,22,23との間の通信帯域が確保されていると判断し、この場合に、応答返信部32は第1の端末1に成功応答を返信する。
【0060】
評価部33は、このように通信トラフィック量に基づいて通信帯域の評価を行う構成では、通信プロセスの数に基づいて通信帯域を評価する構成に比べて、通信帯域を精度よく評価することができる。すなわち、通信プロセスの数が同じであっても、通信プロセスの属性によって通信トラフィック量は異なることがあり、たとえば、音声のみの通話と映像付の通話とでは映像付の通話の方が通信トラフィック量は多くなり、通信帯域の空きが少なくなる。そのため、評価部33は、通信プロセスの数に基づく場合と通信トラフィック量に基づく場合とでは、通信トラフィック量に基づく場合の方が通信帯域を精度よく評価できる。
【0061】
また、評価部33は、伝送路のPHYレート(通信速度)に基づいて、第1の端末1と複数の第2の端末21,22,23との間の通信帯域を評価する構成であってもよい。ここでいうPHYレートは、一斉通信を行う第1の端末1と複数の第2の端末21,22,23との間の伝送路の実際の通信速度を表す。この場合、呼制御サーバ3は、現在のPHYレートを計測する機能を有する。
【0062】
評価部33は、このようなPHYレートが高いほど、第1の端末1と第2の端末2との間の伝送路に対するノイズの影響が小さい、つまり広い通信帯域が確保されていると判断する。反対に、評価部33は、PHYレートが低いほど、第1の端末1と第2の端末2との間の伝送路に対するノイズの影響が大きい、つまり通信帯域の空きが少ないと判断する。要するに、評価部33は、現在のPHYレートが予め定められている規定値よりも高ければ、第1の端末1と複数の第2の端末21,22,23との間の通信帯域が確保されていると判断し、この場合に、応答返信部32は第1の端末1に成功応答を返信する。
【0063】
評価部33は、このように伝送路のPHYレートに基づいて通信帯域の評価を行う構成では、通信プロセスの数や通信トラフィック量に基づいて通信帯域を評価する構成に比べて、通信帯域を精度よく評価することができる。すなわち、通信プロセスの数や属性が同じであっても、伝送路に対するノイズの影響によってPHYレートは異なることがあり、ノイズの影響が大きいほどPHYレートが低くなる。そのため、評価部33は、通信プロセスの数や属性に基づく場合と、PHYレートに基づく場合とでは、PHYレートに基づく場合の方が通信帯域を精度よく評価できる。
【0064】
なお、本実施形態では、一斉通信時には常に第1の端末1が発呼端末となり第2の端末2が受信端末となる場合を説明したが、両者は立場が入れ替わってもよい。つまり、ある端末は、固定的に発呼端末あるいは受信端末として機能するのではなく、あるタイミングでは発呼端末たる第1の端末1として機能し、別のタイミングでは受信端末たる第2の端末2として機能してもよい。
【0065】
(実施形態2)
本実施形態の一斉通信システムは、呼制御サーバ3の要求送信部31が、中継信号(発呼要求または切断要求)をマルチキャストで1ないし複数回送信する点が実施形態1の一斉通信システムと相違する。以下、実施形態1と同様の構成については共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0066】
ここで、要求送信部31は、一斉通信時の受信端末となる複数の第2の端末21,22,23に対して、評価部33の評価結果に基づいて定められる回数分だけ中継信号を繰り返して送信する。要求送信部31が中継信号を複数回繰り返して送信する場合、要求返信部32は、全ての中継信号の送信が終了してから成功応答を第1の端末1に返信する。
【0067】
すなわち、第2の端末2は、要求送信部31から発呼要求が1回送信されただけでは、発呼要求を受信できないために受信モードに移行できず、その後に第1の端末1から一斉通信により送信される音声情報等のデータを受信できない可能性がある。中継信号が切断要求である場合も同様で、第2の端末2は、要求送信部31から切断要求が1回送信されただけでは、切断要求を受信できないために受信モードを終了できず、次の通信を行えなくなる可能性がある。
【0068】
要求送信部31が中継信号(発呼要求または切断要求)を複数回送信すれば、第2の端末2は、中継信号を受信できる確率が高くなるので、受信モードへの移行や受信モードの終了を確実に行うことができる。ただし、呼制御サーバ3は、中継信号を第2の端末2へ送信する回数が増えると、その分だけ成功応答を第1の端末1に返信するのが遅くなり、一斉通信の開始や一斉通信の終了が遅れることになる。
【0069】
そこで、本実施形態では、要求送信部31は、常に中継信号を決まった回数だけ送信するのではなく、評価部33の評価結果に基づく回数だけ中継信号を送信する。ここにおいて、評価部33で通信帯域の空きが少ない(混んでいる)と判断された場合、第2の端末2は要求送信部31からの中継信号を受信しにくい状況にあるので、要求送信部31は、中継信号の送信回数を多くする。一方、評価部33で通信帯域が空いている(混んでいない)と判断された場合、第2の端末2は要求送信部31からの中継信号を受信しやすい状況にあるので、要求送信部31は、中継信号の送信回数を少なくする。
【0070】
具体的に説明すると、評価部33が通信プロセスの数に基づいて通信帯域を評価する場合には、要求送信部31は、通信プロセスの数が多いほど中継信号の送信回数も多くなるように、通信プロセスの数に応じて中継信号の送信回数を決定する。また、評価部33が通信トラフィック量に基づいて通信帯域を評価する場合には、要求送信部31は、通信トラフィック量が多いほど中継信号の送信回数も多くなるように、通信トラフィック量に応じて中継信号の送信回数を決定する。また、評価部33が伝送路のPHYレートに基づいて通信帯域を評価する場合には、要求送信部31は、PHYレートが低いほど中継信号の送信回数が多くなるように、PHYレートに応じて中継信号の送信回数を決定する。
【0071】
本実施形態においては、呼制御サーバ3は、第1の端末1から要求信号(発呼要求または切断要求)を受信した時点以降における評価部33の評価結果に基づいて、要求送信部31からの中継信号の送信回数を決定する。ここで、呼制御サーバ3は、第1の端末1から要求信号を受信後、評価部33にて繰り返し通信帯域の評価を行うが、中継信号の送信回数については1回目の通信帯域の評価結果に基づいて決定する。なお、評価部33は、呼制御サーバ3が第1の端末1から要求信号を受信したか否かに関わらず、一定周期で定期的に通信帯域の評価を行っていてもよい。この場合、呼制御サーバ3は、第1の端末1からの要求信号を受信すると、その時点での最新の評価結果に基づいて中継信号の送信回数を決定する。
【0072】
以下、本実施形態の一斉通信システムにおいて第1の端末1が複数の第2の端末21,22,23に対して一斉通信により一斉放送音声の音声情報(データ)を一斉に伝送する場合の動作について、図5を参照して説明する。ここでは、評価部33が通信プロセスの数に基づいて通信帯域を評価する場合を例に説明する。
【0073】
一斉通信時の発呼端末となる第1の端末1は、まず呼制御サーバ3に対して発呼要求を送信する(図5のS301)。発呼要求を受信した呼制御サーバ3は、一斉通信システム内で現在発生中の通信プロセスの数に基づいて通信帯域を評価し、中継信号としての発呼要求の送信回数を決定する(S302)。図5の例では、この時点(S302)での通信プロセスの数が多く、呼制御サーバ3が中継信号(発呼要求)の送信回数を3回とする場合を想定する。それから、呼制御サーバ3は、決定した送信回数(ここでは3回)分だけ、一斉通信時の受信端末となる複数の第2の端末21,22,23に対して発呼要求をマルチキャストで連送する(S303〜305)。
【0074】
さらに、呼制御サーバ3は、通信帯域が確保されていることを示す評価結果が評価部33で得られると、そのことをトリガとして、応答返信部32から発呼端末としての第1の端末1に対して成功応答(発呼応答)を返信する(S306)。第1の端末1は、発呼要求の送信後に、呼制御サーバ3から成功応答の返信があると、一定時間経過後に、複数の第2の端末21,22,23に対して一斉通信により一斉放送音声の音声情報(データ)をマルチキャストで送信する(S307)。
【0075】
また、第1の端末1は、一斉通信を実行後に、呼制御サーバ3に対して切断要求を送信する(S308)。切断要求を受信した呼制御サーバ3は、一斉通信システム内で現在発生中の通信プロセスの数に基づいて通信帯域を評価し、中継信号としての切断要求の送信回数を決定する(S309)。図5の例では、この時点(S309)での通信プロセスの数が少なく、呼制御サーバ3が中継信号(切断要求)の送信回数を1回とする場合を想定する。それから、呼制御サーバ3は、決定した送信回数(ここでは1回)分だけ、複数の第2の端末21,22,23に対して切断要求をマルチキャストで送信する(S310)。
【0076】
さらに、呼制御サーバ3は、通信帯域が確保されていることを示す評価結果が評価部33で得られると、そのことをトリガとして、応答返信部32から発呼端末としての第1の端末1に対して成功応答(切断応答)を返信する(S311)。第1の端末1は、切断要求の送信後に、呼制御サーバ3から成功応答の返信があると、複数の第2の端末21,22,23に対する一斉通信を終了する(S312)。
【0077】
以上説明した本実施形態の構成によれば、要求送信部31は、評価部33の評価結果に基づく回数分だけ中継信号(発呼要求または切断要求)を繰り返し送信するので、通信トラフィックを必要以上に大きくすることなく確実に中継信号を第2の端末2に送信できる。すなわち、呼制御サーバ3は、評価部33で通信帯域の空きが少ない(混んでいる)と判断された場合には、中継信号の送信回数(連送数)を多くして、第2の端末2で確実に中継信号を受信できるようにする。その一方で、呼制御サーバ3は、評価部33で通信帯域が空いている(混んでいない)と判断された場合、中継信号の送信回数を少なくして、通信帯域を節約することにより、一斉通信の開始や一斉通信の終了の迅速に行うことができる。
【0078】
また、本実施形態では、呼制御サーバ3は、第1の端末1から要求信号(発呼要求または切断要求)を受信した時点以降における評価部33の評価結果に基づいて、中継信号の送信回数を決定している。要するに、呼制御サーバ3は、中継信号を送信する直前の通信帯域の評価結果に基づいて、中継信号の送信回数を決定するので、実際に中継信号を送信する際の通信帯域の状況に応じた回数分だけ、中継信号を送信することができる。
【0079】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0080】
(実施形態3)
本実施形態の一斉通信システムは、呼制御サーバ3が複数台設けられている点で実施形態1の一斉通信システムと相違する。ここでは、第1の呼制御サーバ301と第2の呼制御サーバ302との2台の呼制御サーバ3が設けられている場合を例に説明するが、呼制御サーバ3は3台以上設けられていてもよい。以下、実施形態1と同様の構成については共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0081】
本実施形態では、第1の端末1と、複数の第2の端末21,22,23のうち第2の端末21,22とが、第1の呼制御サーバ301の管理下に属しており、第1の呼制御サーバ301は、これら第1の端末1および第2の端末21,22と通信可能に構成される。また、複数の第2の端末21,22,23のうち残りの第2の端末23は、第2の呼制御サーバ302の管理下に属しており、第2の呼制御サーバ302は、第2の端末23と通信可能に構成される。さらに、第1の呼制御サーバ301と第2の呼制御サーバ302とは互いに通信可能に構成されている。
【0082】
ここにおいて、第1の呼制御サーバ301の要求送信部31は、第1の端末1から要求信号(発呼要求または切断要求)を受信すると、この要求信号を第2の呼制御サーバ302に転送する機能を有している。このとき、第1の呼制御サーバ301の配下に第2の端末(ここでは第2の端末21,22)2があれば、第1の呼制御サーバ301の要求送信部31は、実施形態1と同様にこれらの第2の端末21,22に対し中継信号(発呼要求または切断要求)を送信する。
【0083】
また、第2の呼制御サーバ302の要求送信部31は、第1の呼制御サーバ301から転送された要求信号を受信すると、第2の呼制御サーバ302の配下に属する第2の端末(ここでは第2の端末23)2に対して中継信号を送信する機能を有している。つまり、第2の呼制御サーバ302の要求送信部31は、要求信号を第1の端末1から直接受信しなくても、第1の呼制御サーバ301経由で受信することにより、第2の端末2に対して中継信号を送信する。なお、第2の呼制御サーバ302は、第1の呼制御サーバ301から転送された要求信号を受信しても、応答返信部32による成功応答(発呼応答または切断応答)の返信は行わない。
【0084】
以下、本実施形態の一斉通信システムにおいて第1の端末1が複数の第2の端末21,22,23に対して一斉通信により一斉放送音声の音声情報(データ)を一斉に伝送する場合の動作について、図6を参照して説明する。
【0085】
一斉通信時の発呼端末となる第1の端末1は、まず第1の呼制御サーバ301に対して発呼要求を送信する(図6のS401)。発呼要求を受信した第1の呼制御サーバ301は、第1の端末1からの発呼要求を、他の呼制御サーバ3(ここでは第2の呼制御サーバ302)に対してマルチキャストで転送する(S402)。このとき、第1の呼制御サーバ301は、一斉通信時の受信端末となる複数の第2の端末21,22,23のうち自己の配下に属する第2の端末21,22に対して発呼要求をマルチキャストで送信する(S403)。第2の呼制御サーバ302は、発呼要求を受けると、一斉通信時の受信端末となる複数の第2の端末21,22,23のうち自己の配下に属する第2の端末23に対して発呼要求をマルチキャストで送信する(S404)。
【0086】
さらに、第1の呼制御サーバ301は、通信帯域が確保されていることを示す評価結果が評価部33で得られると、そのことをトリガとして、応答返信部32から発呼端末としての第1の端末1に対して成功応答(発呼応答)を返信する(S405)。第1の端末1は、発呼要求の送信後に、第1の呼制御サーバ301から成功応答の返信があると、一定時間経過後に、複数の第2の端末21,22,23に対して一斉通信により一斉放送音声の音声情報(データ)をマルチキャストで送信する(S406)。
【0087】
また、第1の端末1は、一斉通信を実行後に、第1の呼制御サーバ301に対して切断要求を送信する(S407)。切断要求を受信した第1の呼制御サーバ301は、第1の端末1からの切断要求を、他の呼制御サーバ3(ここでは第2の呼制御サーバ302)に対してマルチキャストで転送する(S408)。このとき、第1の呼制御サーバ301は、複数の第2の端末21,22,23のうち自己の配下に属する第2の端末21,22に対して切断要求をマルチキャストで送信する(S409)。第2の呼制御サーバ302は、切断要求を受けると、複数の第2の端末21,22,23のうち自己の配下に属する第2の端末23に対して切断要求をマルチキャストで送信する(S410)。
【0088】
さらに、第1の呼制御サーバ301は、通信帯域が確保されていることを示す評価結果が評価部33で得られると、そのことをトリガとして、応答返信部32から発呼端末としての第1の端末1に対して成功応答(切断応答)を返信する(S411)。第1の端末1は、切断要求の送信後に、第1の呼制御サーバ301から成功応答の返信があると、複数の第2の端末21,22,23に対する一斉通信を終了する(S412)。
【0089】
以上説明した本実施形態の構成によれば、一斉通信システムは呼制御サーバ3が複数台あるシステムに対応することができ、一斉通信システムを呼制御サーバ3が複数台あるシステムに拡張することができる。これにより、第1の端末1は、より多数台の第2の端末2の台数を受信端末として一斉通信を行うことが可能になる。
【0090】
なお、本実施形態の構成は、実施形態2の構成と組み合わせることも可能である。その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【符号の説明】
【0091】
1 第1の端末
101 一斉通信処理部
102 終了処理部
2,21,22,23 第2の端末
3 呼制御サーバ
31 要求送信部
32 応答返信部
33 評価部
301 第1の呼制御サーバ
302 第2の呼制御サーバ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一斉通信時にデータを送信する第1の端末と、前記一斉通信時に前記第1の端末からデータを受信する複数の第2の端末と、前記第1の端末および前記複数の第2の端末との間で通信可能な呼制御サーバとを備え、
前記第1の端末は、前記呼制御サーバに発呼要求を要求信号として送信し、当該発呼要求に対する返信として発呼応答を受信すると前記複数の第2の端末に対して前記一斉通信を行う一斉通信処理部を有し、
前記呼制御サーバは、前記第1の端末から前記発呼要求を受信したときに、前記複数の第2の端末に前記発呼要求を中継信号としてマルチキャストで送信する要求送信部と、前記第1の端末と前記複数の第2の端末との間の通信帯域の評価を行う評価部と、前記要求送信部から前記発呼要求が送信された後、前記通信帯域が確保されていることを示す前記評価部の評価結果をトリガにして、前記発呼応答を前記第1の端末に返信する応答返信部とを有することを特徴とする一斉通信システム。
【請求項2】
前記第1の端末は、前記一斉通信を実行後に前記呼制御サーバに切断要求を前記要求信号として送信し、当該切断要求に対する返信として切断応答を受信すると前記複数の第2の端末への前記一斉通信を終了する終了処理部をさらに有し、
前記要求送信部は、前記第1の端末から前記切断要求を受信したときに、前記複数の第2の端末に前記切断要求を中継信号としてマルチキャストで送信し、
前記応答返信部は、前記要求送信部から前記切断要求が送信された後、前記通信帯域が確保されていることを示す前記評価部の評価結果をトリガにして、前記切断応答を前記第1の端末に返信することを特徴とする請求項1に記載の一斉通信システム。
【請求項3】
前記評価部は、前記第1の端末と前記第2の端末との少なくとも一方で発生している通信プロセスの数に基づいて前記通信帯域の評価を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の一斉通信システム。
【請求項4】
前記評価部は、通信トラフィック量に基づいて前記通信帯域の評価を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の一斉通信システム。
【請求項5】
前記評価部は、伝送路のPHYレートに基づいて前記通信帯域の評価を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の一斉通信システム。
【請求項6】
前記要求送信部は、前記評価部の評価結果に基づいて定められる回数分だけ、前記中継信号をマルチキャストで繰り返し送信することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の一斉通信システム。
【請求項7】
前記呼制御サーバは、前記第1の端末から前記要求信号を受信した時点以降における前記評価部の評価結果に基づいて、前記要求送信部からの前記中継信号の送信回数を決定することを特徴とする請求項6に記載の一斉通信システム。
【請求項8】
前記呼制御サーバは複数台設けられており互いに通信可能であって、
前記第1の端末は前記複数台の呼制御サーバのうち第1の呼制御サーバと通信可能であって、
前記複数の第2の端末のうち少なくとも一部の端末は前記複数台の呼制御サーバのうち第2の呼制御サーバと通信可能であって、
前記第1の呼制御サーバの前記要求送信部は、前記第1の端末から前記要求信号を受信すると前記第2の呼制御サーバに前記要求信号を転送し、
前記第2の呼制御サーバの前記要求送信部は、前記第1の呼制御サーバから転送された前記要求信号を受信すると、前記第2の呼制御サーバとの間で通信可能な前記第2の端末に対して前記中継信号を送信することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の一斉通信システム。
【請求項9】
一斉通信時にデータを送信する第1の端末および前記一斉通信時に前記第1の端末からデータを受信する複数の第2の端末との間で通信可能な呼制御サーバであって、
前記第1の端末から発呼要求を受信したときに、前記複数の第2の端末に前記発呼要求をマルチキャストで送信する要求送信部と、前記第1の端末と前記複数の第2の端末との間の通信帯域の評価を行う評価部と、前記要求送信部から前記発呼要求が送信された後、前記通信帯域が確保されていることを示す前記評価部の評価結果をトリガにして、前記一斉通信を開始させるための発呼応答を前記第1の端末に返信する応答返信部とを有することを特徴とする呼制御サーバ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−46246(P2013−46246A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182884(P2011−182884)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】