説明

一時染毛料

【課題】耐水性、乾燥性に優れると共に、低粘度で、多彩な発色性を有する一時染毛料、この一時染毛料を用いる一時的な染毛方法、並びに、一時染毛料塗布具が提供する。
【解決手段】少なくとも、(A)酸性染料0.5〜2.0質量%と、(B)(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー0.2〜5.0質量%と、(C)エタノール40〜80質量%と、(D)水とを含有し、前記(A)酸性染料と前記(B)(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマーとの含有比〔(A)/(B)〕が質量基準で0.5以下であって、25℃の測定において、pHを4.0〜7.0、粘度を10mPa・s以下としたことを特徴とする一時染毛料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料を毛髪の表面に付着させて一時的に毛髪を着色する一時染毛料に関し、更に詳しくは、耐水性、乾燥性に優れると共に、低粘度で、多彩な発色性を有する、特に中綿式の染毛料塗布具に好適に用いることができる一時染毛料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、染料、顔料等の着色剤を毛髪の表面に付着させて一時的に毛髪を着色する一時染毛料は、その手軽さから多くの消費者に受け入れられ、利用されている。
一時染毛料の着色剤としては、目的とする色相、用途に応じて種々の顔料、染料が用いられている。
【0003】
顔料を用いた一時染毛料としては、例えば、重量平均分子量5000〜1000000のアミンオキシド基含有樹脂、顔料及び親水性溶媒を含有する毛髪一時着色料組成物(例えば、特許文献1参照)が知られている。
しかしながら、この顔料を用いた一時染毛料では、被接触物である衣服やタオルに顔料が付着したり、汗や水で顔料が流れ落ちて皮膚や衣服を汚染する二次付着が欠点であり、また、比重が大きいことから、染毛料中で顔料の沈殿や凝集が起こり、製品安定性が低下したり、着色がムラになったりすることがあり、更に、顔料の沈降が生じ易いので、中綿式容器を有する塗布具では使用できないという課題がある。
【0004】
一方、染料を用いた一時染毛料等としては、例えば、(A)ニトロ染料、アントラキノン染料、酸性染料、油溶性染料、塩基性染料及び分散染料から選ばれる直接染料と、(B)アミンオキシド基含有樹脂と、更に(C)特定物性の芳香族エーテル化合物とを含有する一時染毛料(例えば、特許文献2参照)が知られている。
しかしながら、この一時染毛料では、耐水性が劣り、雨に濡れたり、汗をかいたときに色が落ちるなどの課題がある。なお、上記特許文献2の比較例4には、酸性染料(黒色401号)0.3質量%、ベタイン型両性ポリマー1質量%、エタノール50質量%、乳酸0.5質量%、乳酸ナトリウム0.1質量%、精製水48.1質量%を含有する一時染毛料が開示されているが、その評価結果では染着性、二次付着性などに劣ることが記載され、目的の一時染毛効果を示さず、好ましくないものである。
【0005】
他方、水溶性染料の少なくとも1種0.1〜3質量%と、両性アルカリ樹脂0.01〜2.4質量%と、ベンジルアルコールなどの染毛助剤2〜20質量%と、低級アルコール20〜80質量%とを含有し、粘度を2.6〜15mPa・sに、かつ、pHを2〜5に調整してなることを特徴とする累積染毛性を有する染毛料(例えば、本出願人による特許文献3参照)や、酸性染料0.0001〜0.2質量%、1,2−オクタンジオールなどのアルカンジオール0.01〜10質量%及び酸を含有し、pHが1.5〜4.5であることを特徴とする洗い流さないタイプの酸性染毛剤組成物(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献3の染毛料では、ベンジルアルコールなどの染毛助剤(浸透助剤)を用いることにより、累積染毛性を有することを目的としているので、耐水性、乾燥性が犠牲になってしまうものであり、かつ、本発明とはその目的、技術思想が相違するものである。
また、上記特許文献4記載の酸性染毛剤組成物は、洗い流さないタイプの酸性染毛剤組成物とするために、酸性染料の含有量が0.0001〜0.2質量%と少ないものであっても、アルカンジオールの浸透助剤を用いて染毛するものであり、耐水性に劣るものであり、しかも、本発明の浸透助剤を用いない一時染毛料とは染毛性に劣り、かつ、本発明とはその目的、技術思想が相違するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−75737号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2005−232021号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2007−302677号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2009−191040号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状に鑑み、これを解消しようとするものであり、ベンジルアルコール、アルカンジオールなどの染毛助剤を含有しないので着色剤として酸性染料を用いても累積染毛性を有しない一時染毛料であって、耐水性、乾燥性に優れると共に、低粘度で、多彩な発色性を有する、特に中綿式の染毛料塗布具に好適に用いることができる一時染毛料、一時的な染毛法、並びに、一時染毛料塗布具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記従来の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、少なくとも、酸性染料と、(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマーと、エタノールと、水とを特定量含有せしめると共に、前記酸性染料と(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマーとの含有比を質量基準で特定値以下とし、25℃の測定において、pHと粘度範囲をそれぞれ特定の範囲とすることにより、上記目的の一時染毛料などが得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0010】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(4)に存する。
(1) 少なくとも、(A)酸性染料0.5〜2.0質量%と、(B)(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー0.2〜5.0質量%と、(C)エタノール40〜80質量%と、(D)水とを含有し、前記(A)酸性染料と前記(B)(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマーとの含有比〔(A)/(B)〕が質量基準で0.5以下であって、25℃の測定において、pHを4.0〜7.0、粘度を10mPa・s以下としたことを特徴とする一時染毛料。
(2) 更に、酸を含有することを特徴とする上記(1)に記載の一時染毛料。
(3) 上記(1)又は(2)の何れか1項に記載の一時染毛料を用いることを特徴とする一時的な染毛方法。
(4) 上記(1)又は(2)の何れか1項に記載の染毛料を充填してなることを特徴とする一時染毛料塗布具。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐水性、乾燥性に優れると共に、低粘度で、多彩な発色性を有する一時染毛料、この一時染毛料を用いる一時的な染毛方法、並びに、一時染毛料塗布具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す一時染毛料塗布具の側面態様の縦断面図である。
【図2】図1の一時染毛料塗布具の正面態様の縦断面図である。
【図3】本発明の実施形態の他例を示す一時染毛料塗布具の側面態様の縦断面図である。
【図4】(a)は、図3の毛髪用塗布具の斜視図、(b)はキャップ体を外した状態を示す斜視図である。
【図5】図3の毛髪用塗布具の分解斜視図である。
【図6】本発明の実施形態の他例を示す一時染毛料塗布具の側面態様の縦断面図である。
【図7】(a)は、図6の組み立てられた一時染毛料塗布具の斜視図、(b)はその一時染毛料塗布具の底部から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の一時染毛料は、少なくとも、(A)酸性染料0.5〜2.0質量%と、(B)(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー0.2〜5.0質量%と、(C)エタノール40〜80質量%と、(D)水とを含有し、前記(A)酸性染料と前記(B)(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマーとの含有比〔(A)/(B)〕が質量基準で0.5以下であって、25℃の測定において、pHを4.0〜7.0、粘度を10mPa・s以下としたことを特徴とするものである。
【0014】
本発明に用いる(A)成分となる酸性染料は、通常染毛料に用いられている水溶性のものであれば、特に限定されない。
酸性染料の具体例としては、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、赤色201号、赤色206号、赤色227号、赤色230号、赤色231号、赤色232号、橙色205号、橙色207号、黄色202号、黄色203号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、青色202号、青色203号、青色205号、褐色201号、褐色201号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、橙色403号、黄色402号、黄色403号の(1)、黄色406号、黄色407号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、黒色401号などの少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下、同様)が挙げられる。
また、上記各酸性染料を水性トナーにして調製した精製水性酸性染料も用いることができる。
【0015】
これらの(A)成分の含有量は、一時染毛料全量に対して、0.5〜2.0質量%(以下、単に「%」という)である。
この(A)成分の含有量が0.5%未満であると、染毛効果が十分に発揮されず、一方、2.0%を越えると、耐水性が悪くなったり、沈降が生じ易くなり、好ましくない。
【0016】
本発明に用いる(B)成分の(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマーは、耐水性、乾燥性を向上させるために含有するものである。
用いる(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマーは、メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタインとメタクリル酸アルキルとのコポリマーであり、このコポリマーを水に溶かす場合、系のpHが酸性側でも溶解し、また、添加物の影響を受けにくく、特にその水溶液に電解質を添加してもポリマーが析出しにくいなどの特性を有するものである。
用いることができる(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマーとしては、市販のRAMレジン1000、2000、3000、4000(いずれも30%エタノール液)、(以上、大阪有機化学工業社製)、ユカフォーマ−SM、202、510(以上、三菱化学社製)などの少なくとも1種が挙げられる。
【0017】
本発明における上記(B)成分の含有量は、固形分換算で一時染毛料全量に対して、0.2〜6.0%とすることが必要である。
この(B)成分の含有量が0.2%未満では、耐水性が弱くなり、また、6.0%を越えると、粘度が上昇することとなり、好ましくない。
【0018】
本発明において、上記(A)成分の酸性染料と上記(B)成分の(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマーは、上記各含有量の範囲で用いることができるが、上記(A)成分と(B)成分の含有比〔(A)/(B)〕は、耐水性 および常温・低温安定性の点から、質量基準で0.5以下とすることが必要であり、好ましくは、0.03〜0.5とすることが望ましい。
この含有比〔(A)/(B)〕が質量基準で0.5を超えるものであると、安定性の悪化、若しくは、沈降が生じ易くなったり、また、耐水性が悪化したりし、好ましくない。
【0019】
本発明に用いる(C)成分のエタノールは、乾燥性、酸性染料の溶解性の向上の点から含有するものである。
この(C)成分の含有量は、一時染毛料全量に対して、40〜80%とすることが必要である。
このエタノールの含有量が40%未満であると、乾燥性が低下し、一方、80%を越えると、染毛効果が十分に発揮されないこととなり、好ましくない。
【0020】
本発明における一時染毛料の残部は、(D)成分となる水で調整され、例えば、精製水、イオン交換水、純水、超純水、蒸留水等を使用でき、その含有量としては、一時染毛料全量に対して、20〜55%とすることが望ましい。
この(D)成分の含有量が20%未満であると、染毛効果が低下することとなり、また、55%を越えると、乾燥性が低下し、好ましくない。
【0021】
本発明の一時染毛料のpH(25℃)は、一時染毛性、耐水性、安定性を高度に両立する点から、4.0〜7.0に調整することが必要であり、好ましくは、一時染毛性を損なうことなく、弱酸性域において耐水性が更に良好となる点から、4.0〜6.5とすることが望ましい。
この染毛料のpHが4.0未満であると、一時染毛性を損なったり、皮膚への刺激がある場合があり、また、pHが7.0を越えると、耐水性や安定性が悪化することとなり、好ましくない。
本発明において、pHの調整は、上記(A)成分〜(D)成分の他に、酸を含有することにより調整することができ、例えば、乳酸、ギ酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸等の有機酸、塩酸などの無機酸又はその塩、場合によってはアルカリを用いて行うことができる。
【0022】
本発明の一時染毛料の粘度は、液垂れもなく、頭髪への塗布を容易に行う点、特に吸蔵体等の中綿式の塗布具で使用する場合に、更なる塗布具からの流出性、塗布性の点から、温度25℃でのELD型粘度計による粘度測定において、10mPa・s以下とすることが必要であり、好ましくは、1〜10mPa・sとすることが望ましい。
この一時染毛料の粘度が10mPa・sを越えると、塗布性に劣ることとなり、中綿式の塗布具で使用できないなどの不都合を生じ、好ましくない。
なお、上記粘度値以下とするためには、一時染毛料に含有せしめる上記(A)成分〜(D)成分などを上記各含有量の範囲、並びに、上記(A)/(B)成分の含有比の範囲で好適に組み合わせることなどにより調製することができる。
【0023】
本発明の一時染毛料は、本発明の効果や、系の安定性を損なわない範囲でその他の任意成分を適宜含有することができる。例えば、各種界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、還元防止剤、キレート剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、油性成分、シリコーン誘導体、香料、動植物抽出物、公知のポリマー成分等が挙げられる。
【0024】
本発明における一時染毛料は、上記(A)成分〜(D)成分などの各成分を上記各含有量の範囲等で混合分散機、例えば、ビーズミル、ホモミキサー、プロペラミキサー、ディスパー、アトライター、ボールミル、サンドグラインダー等で混合分散することで調製される。
このように構成される本発明の一時染毛料では、一時染毛(一時着色)性に優れると共に、夏季などの高温多湿期による汗、雨などに対しても優れた耐水性を有するものが得られるものとなる。また、本発明の一時染毛料は、黒髪用一時染毛料、白髪用一時染毛料などとして好適に用いることができる。
【0025】
このように構成される本発明の一時染毛料を使用に供するにあたっては、一時染毛料塗布具を用いるものであるが、用いる一時染毛料塗布具の形状、構造等は特に限定されるものではないが、好ましくは、毛髪への塗布性、塗布部位に含ませる液量のコントロール性、衣服、皮膚、家具などの汚損の発生も少ない点、また、使用性の点から、内部に本発明の一時染毛料を吸蔵する中綿(吸蔵体)を有する塗布具本体部と、該塗布具本体部の先端部に設けたブラシ体、ペン体、櫛体などの塗布部とを備え、上記一時染毛料を吸蔵した中綿より先端の塗布部に本発明の一時染毛料を毛細管作用等により流出させて毛髪に一時染毛料を塗布する一時染毛料塗布具が挙げられる。
【0026】
例えば、図1は、本発明の一時染毛料を用いた一時染毛料塗布具の実施形態の一例を示す塗布具Aである。
この塗布具Aは、図1及び図2に示されるように、塗布具本体をなす軸体30の内部に上記構成となる本発明の一時染毛料を吸蔵した吸蔵体31を染毛料貯留部30aに収容し、複数の毛細管作用を有する塗布用の櫛態様となる芯体32を直線状の列の配置で軸体30の先端部に固定して、芯体32の後端部を吸蔵体31に接続すると共に、芯体32の先端部を軸体30の前方へ突出させ、芯体32の側部には、櫛部33を設け、軸体30の先端部には、キャップ本体40を螺合により着脱自在とし、芯体32の先端部が接触するフェルトなどの芯先端受け部材41を取り付けると共に、その側部に櫛部33の先端部を収容する凹部42を設けた中キャップ43をキャップ本体40の内部に軸方向に移動自在で、かつ円周方向に回動自在に配して、中キャップ43をスプリング部材44によりキャップ本体40の開口方向へ付勢状態としたものである。
【0027】
このような構成となる一時染毛料塗布具Aでは、上記貯留部30aに本発明の上記構成の一時染毛料を吸蔵した吸蔵体31より、塗布部となる芯体32の先端部まで必要な染毛料を供給しつつも、「たれ落ち」や不本意な液体の吐出を生じることがなく、持ち運びやハンドリング性に優れると共に、使用性、耐水性、一時染毛性に優れる一時染毛料塗布具とすることができる。
【0028】
図3〜図5は、本発明の一時染毛料を用いた一時染毛料塗布具の実施形態の他例を示す塗布具Bである。
この一時染毛料塗布具Bは、図1及び図2に示した一時染毛料塗布具Aの変形例であり、図3〜図5に示されるように、塗布具本体をなす軸体50の内部に上記構成となる本発明の一時染毛料を吸蔵した吸蔵体51を染毛料貯留部50aに収容し、複数の毛細管作用を有する塗布用の櫛態様となる芯体52を直線状の列の配置で軸体50の先端部に着脱自在に固定して、芯体52の後端部を吸蔵体51に接続すると共に、芯体52の先端部を軸体50の前方へ突出させ、芯体52の側部には、櫛部53を着脱自在に設け、軸体50の先端部には、キャップ本体54を螺合により着脱自在とし、芯体52の側部に櫛部53の先端部を収容する中キャップ55をキャップ本体54の内部に軸方向に移動自在で、かつ円周方向に回動自在に配して、中キャップ55をスプリング部材56によりキャップ本体54の開口方向へ付勢状態としたものである。なお、57はキャップ本体54と中キャップ55間に配置される外筒部材であり、58及び59は、軸体50の後端部を止蓋する中蓋部材、後蓋部材である。
【0029】
このような構成となる一時染毛料塗布具Bでは、上記貯留部50aに本発明の上記構成の一時染毛料を吸蔵した吸蔵体51より、塗布部となる芯体52の先端部まで必要な染毛料を供給しつつも、「たれ落ち」や不本意な液体の吐出を生じることがなく、持ち運びやハンドリング性に優れると共に、使用性、耐水性、一時染毛性に優れると共に、櫛態様となる芯体52及び櫛部53を着脱自在に設けることができるので、組み立て性も容易となる一時染毛料塗布具とすることができる。
【0030】
図6〜図7は、本発明の一時染毛料を用いた一時染毛料塗布具の実施形態の他例を示す毛髪用塗布具Cである。
この毛髪用塗布具Cは、図6及び図7に示されるように、塗布具の操作部となる台座体60と、該台座体60の上部面60aに取り付けられる受板部61aとスプリング部材からなる弾性部材61bとを有する収納受け部材61と、受板部材62と、染毛料収容体63と、該染毛料収容体63に収容される本発明の一時染毛料を吸蔵した吸蔵体64と、周縁に櫛部65a,65a…を有する櫛本体65と、蓋部材66とを有し、櫛本体65内に一時染毛料を吸蔵した吸蔵体64を収容した染毛料収容体63が収納されたものである。
このような構成となる一時染毛料塗布具Cでは、上記周縁櫛部65a…の内部に本発明の上記構成の一時染毛料を吸蔵した塗布体となる吸蔵体64があるので、髪の毛を櫛部65a…で梳かしながら簡単かつ確実に染毛できる毛髪用塗布具となるものであり、持ち運びやハンドリング性に優れると共に、使用性、耐水性、一時染毛性に優れると共に、櫛態様となる櫛本体65及び吸蔵体64を着脱自在に設けることができるので、組み立て性も容易となる一時染毛料塗布具とすることができる。
【0031】
このように構成される本発明の一時染毛料では、少なくとも、(A)成分の酸性染料0.5〜2.0質量%と、(B)成分の(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー0.2〜5.0質量%と、(C)成分のエタノール40〜80質量%と、(D)成分の水とを含有し、前記(A)成分と(B)成分の含有比〔(A)/(B)〕を質量基準で0.5以下とし、かつ、25℃の測定において、pHを4.0〜7.0、粘度を10mPa・s以下とすることにより、初めて、耐水性、乾燥性に優れると共に、低粘度で、多彩な発色性を有する一時染毛料とすることができるものとなる。また、本発明の一時染毛料は、従来におけるベンジルアルコール、アルカンジオールなどの染毛助剤(浸透助剤)を用いないので、累積染毛性もなく、シャンプー等で洗い落とすことができる一時染毛料となるものである。
【0032】
本発明の一時染毛料塗布具は、上記耐水性、乾燥性に優れると共に、低粘度で、多彩な発色性を有する一時染毛料を充填しているので、中綿式の塗布具であっても、流出性、塗布性に優れた一時染毛料塗布具が得られるものとなる。
また、本発明の一時的な染毛法は、上記特性となる一時染毛料を用いるので、黒髪用の一時的な染毛法、白髪用の一時的な染毛法などとして有用な一時的な染毛法が得られるものとなる。
【実施例】
【0033】
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例等により制限されるものではない。
【0034】
〔実施例1〜10及び比較例1〜12〕
下記表1に示す配合組成にて汎用のプロペラミキサーにより、均一に攪拌・混合して、各一時染毛料を得た。
上記で得られた実施例1〜10及び比較例1〜12の各一時染毛料について、下記方法により、一時染毛料のpH、粘度を測定すると共に、下記評価法により、一時染毛料の状態、着色性(染毛性)、耐水性、色残り、塗布性能、低温安定性、乾燥性、刺激性、総合評価について評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0035】
(pHの測定方法)
pH(25℃)を堀場製作所社製、pHメーターF14にて測定した。
(粘度の評価方法)
25℃における各粘度をELD型粘度計(TV−30、トキメック社製、50rpm)にて測定した。
【0036】
(一時染毛料の状態の評価方法)
得られた各一時染毛料について目視観察により沈降物の有無を確認し、一時染毛料の状態を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:沈降物が全くない。
△:ごくわずかな沈降物が確認される。
×:はっきりと沈降物が確認される。
【0037】
(着色性の評価方法)
10cm、1.0gの人毛白髪毛束に試料の液0.2gをブラシで塗布し、自然乾燥後に目視観察し、着色性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:市販のヘアマニキュア使用後と同等以上に着色する。
○:市販のヘアマニキュア使用後とほぼ同等に着色する。
△:市販のヘアマニキュア使用後にはおよばないが、着色する。
×:ほとんど、または全く着色しない。
【0038】
(耐水性の評価方法)
10cm、1gの人毛毛束に一時染毛料0.2gをブラシにより塗布してから、30分自然乾燥後、乾かした毛束に水を直接かけ、洗液にどれだけ色移りしたかを、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:全く色移りがない
△:僅かに色移りがある
×:はっきりと色移りがある
【0039】
(色残りの評価方法)
10cm、1.0gの人毛白髪毛束に試料の液0.2gをブラシで塗布し、自然乾燥後、シャンプーで洗浄し、その後目視観察し、色残りを下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:未処理の白髪毛束と並べて比較しても、違いを確認できない。
○:未処理の白髪毛束と並べて比較すれば、わずかな違いを確認できる。
△:わずかに色が毛束に残っている。
×:はっきりと色が毛束に残っている。
【0040】
(塗布性能の評価方法)
図1及び図2に示す下記構成となる塗布具を用いて、塗布性能を下記評価基準で評価した。
塗布具の構成:
芯体:繊維束芯、ポリエステル製
櫛部:ポリプロピレン製の成形物
容器本体(軸体):ポリプロピレン製
吸蔵体:ポリエステル繊維(3デニール)、ポリエチレン製外皮
評価基準:
◎:10人中10人が使いやすいと回答。
○:10人中7〜9人が使いやすいと回答。
△:10人中4〜6人が使いやすいと回答。
×:10人中3人以下が使いやすいと回答。
【0041】
(低温安定性の評価方法)
得られた各一時染毛料20gを蓋付きガラス瓶に充填し、−10℃で、1ヵ月放置後、低温安定性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:沈降物が全くない。
△:ごくわずかな沈降物が確認される。
×:はっきりと沈降物が確認される。
【0042】
(乾燥性の評価方法)
10cm、1gの人毛毛束に染毛料0.2gをブラシにより塗布してから、手で触れても濡れなくなる時間を測定し下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:2分経過してから触っても手に液が付着しなくなった。
○:3分経過してから触っても手に液が付着しなくなった。
△:5分経過してから触っても手に液が付着しなくなった。
×:5分経過してから触っても手に液が付着した。
【0043】
(刺激性の評価方法)
試験者(成人女子)10人が図1に示す各一時染毛料を収容した塗布具を用いて実際に頭髪に使用した際の刺激性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:刺激を感じた人が0人
○:刺激を感じた人が1人
△:刺激を感じた人が2人
×:刺激を感じた人が3人以上
【0044】
(総合評価の評価方法)
上記一時染毛料の状態、着色性(染毛性)、耐水性、色残り、塗布性能、低温安定性、乾燥性、刺激性の8評価を勘案して、下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:8評価中◎が3つ以上、かつ全て○以上の評価
○:8評価中◎が1つ以上 、かつ○と◎との合計が7つ以上
△:8評価中○が6つ以上
×:8評価中○が5つ以下、もしくは○の数に関わらず×が1つ以上
【0045】
【表1】

【0046】
上記表1中の*1〜*3は、以下のとおりである。
*1:大阪有機化学工業社製、(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー
*2:三菱化学社製、(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー
*3:武蔵野化学社製、乳酸(濃度90%)
【0047】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜10は、本発明の範囲外となる比較例1〜12に較べ、一時染毛料の状態、着色性(染毛性)、耐水性、塗布性能、低温安定性、乾燥性、刺激性に優れ、色残りもなく、総合的に優れた一時染毛料であることが判明した。
比較例を個別的に見ると、比較例1、2及び5は一時染毛料のPHが本発明の範囲を外れるものであり、比較例3、8、9及び11は酸性染料と(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマーとの含有比が本発明の範囲を外れるものであり、比較例4及び10は酸性染料の含有量が本発明の範囲を外れるものであり、比較例6はエタノールが多い場合であり、比較例7はエタノールの含有量が少ない場合であり、比較例12は上述の特許文献3(特開2007−302677号公報)の実施例2に相当するものであり、これらの場合は、本発明の効果を発揮できないことが判った。なお、比較例3、5、6、8〜10では、沈降物が確認(評価:×)され、以後の着色性等の評価は省略した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
黒髪用一時染毛料、白髪用一時染毛料等として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
A 一時染毛料塗布具
30 軸体
30a 染毛料貯留部
31 一時染毛料を吸蔵する吸蔵体
32 芯体
33 櫛部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(A)酸性染料0.5〜2.0質量%と、(B)(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー0.2〜6.0質量%と、(C)エタノール40〜80質量%と、(D)水とを含有し、前記(A)酸性染料と前記(B)(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマーとの含有比〔(A)/(B)〕が質量基準で0.5以下であって、25℃の測定において、pHを4.0〜7.0、粘度を10mPa・s以下としたことを特徴とする一時染毛料。
【請求項2】
更に、酸を含有することを特徴とする請求項1に記載の一時染毛料。
【請求項3】
請求項1又は2の何れか1項に記載の一時染毛料を用いることを特徴とする一時的な染毛方法。
【請求項4】
請求項1又は2の何れか1項に記載の染毛料を充填してなることを特徴とする一時染毛料塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−1439(P2012−1439A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134831(P2010−134831)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】