説明

一次元搬送路ユニット

【課題】一次元方向に延在する搬送路の上面を構成する天板と、搬送路の側面との密着性を向上させ、空気漏れを抑えた搬送路を含む一次元搬送路ユニットを提供する。
【解決手段】搬送物を一次元方向に搬送する一次元搬送路ユニットであって、一次元方向の両端と、底面及び上面と、2つの側面とによって画成された、一次元方向に延在する搬送路と、搬送路を画成する2つの側面を挟んで両側にそれぞれ設けられ、底面及び上面と、4つの側面とによって画成された2つの空洞部と、2つの空洞部の底面に設けられた開口部から真空排気する真空排気部と、搬送路の上面を構成すると共に、2つの空洞部の上面を構成し、搬送路と2つの空洞部とにわたって覆う天板と、を備え、真空排気部から2つの空洞部内を真空排気することによって、搬送路を画成する側面及び2つの空洞部を画成する側面を天板に密着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微少な物体、特に、セラミックコンデンサ等の搬送物を一次元方向に搬送するための搬送路を含む一次元搬送路ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高性能であって微細な積層型セラミックコンデンサ(MLCC)が開発され、利用されている。この積層型セラミックコンデンサは、略正方形断面の直方体形状を呈しており、例えば、短辺0.5mm、長辺1mmのサイズから、さらに微細な短辺0.1mm、長辺0.2mmのサイズのものまで作成されている。しかし、直方体形状であるため、搬送が容易でなかった。また、微細かつ軽量であるため安定した把持、載置、案内等が困難であり、個々の積層型セラミックコンデンサごとの搬送も容易ではなかった。さらに、一つ一つの積層型セラミックコンデンサの欠陥を調べる必要があるが、そのための一つの積層型セラミックコンデンサの各面ごとの外観検査も容易ではなかった。
【0003】
そこで、多数の積層型セラミックコンデンサを整列搬送しながら各積層型セラミックコンデンサの4つの側面を検査する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この検査装置では、多数の対象物を、供給装置から勾配付き空間(実質的に水平な空間)に移動させ、その後、一次元方向のトンネルに移動させて搬送しながら側面を検査している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−216698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記検査装置では、一次元のトンネルの上面を取り外し可能な可動部111、121、131、141によって構成し、複数の留め具113、123、133、143によって下側部分112、122、132、142に押し付けている。このため、複数の留め具113、123、133、143の締め付け力がアンバランスな場合及び留め具の締め付け力がかかっていない部分には可動部111、121、131、141と下側部分112、122、132、142との接触が十分でなくなり、両者の間で構成されるトンネル内の空気パルスによる対象物の移動が滑らかに行われないおそれがある。これは、可動部111、121、131、141と下側部分112、122、132、142との接触が十分でなく、隙間が生じて、空気パルスが漏れるためと思われる。
【0006】
本発明の目的は、一次元方向に延在する搬送路の上面を構成する天板と、搬送路の側面との密着性を向上させ、空気漏れを抑えるとともに、留め具を廃止して着脱を容易にした搬送路を含む一次元搬送路ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る搬送物を一次元方向に搬送する一次元搬送路ユニットであって、
一次元方向の両端と、底面及び上面と、2つの側面とによって画成された、一次元方向に延在する搬送路と、
前記搬送路を画成する前記2つの側面を挟んで両側にそれぞれ設けられ、底面及び上面と、4つの側面とによって画成された2つの空洞部と、
前記2つの空洞部の前記底面に設けられた排気用開口部から真空排気する真空排気部と、
前記搬送路の上面を構成すると共に、前記2つの空洞部の上面を構成し、前記搬送路と前記2つの空洞部とにわたって覆う天板と、
を備え、
前記真空排気部から2つの前記空洞部内を真空排気することによって、前記搬送路を画成する前記側面及び前記2つの空洞部を画成する前記側面を前記天板に密着させる。
【0008】
また、
前記搬送路の両端の一端の底面に設けられた送気用開口部から送気する送気部と、
前記搬送路の前記両端の他端の底面に設けられた吸気用開口部から吸気する吸気部と、
を備えていてもよい。
【0009】
さらに、前記搬送路は、搬送方向に垂直な断面形状が、搬送物の搬送方向に垂直な断面形状と相似形状であってもよい。また、前記搬送路は、搬送方向に垂直な断面形状が矩形形状であってもよい。
【0010】
またさらに、前記搬送路は、搬送する前記搬送物の側面との平均間隔が前記搬送物の大きさの5%以上であってもよい。
【0011】
また、前記搬送路として、複数の搬送路を含んでもよい。
【0012】
さらに、天板は、透明体であってもよい。
【0013】
またさらに、一次元搬送路ユニット群は、複数の前記一次元搬送路ユニットを、前記搬送路が一次元方向にそれぞれ連続するように直列接続して構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る一次元搬送路ユニットによれば、真空排気部から2つの空洞部内を真空排気することによって、搬送路を画成する側面及び2つの空洞部を画成する側面を天板に密着させることができる。この一次元搬送路ユニットでは、搬送路による搬送物の搬送にあたって、一次元方向に延在する搬送路の上面を構成する天板と、搬送路の側面との密着性を向上させ、搬送路からの空気漏れを抑えることができる。また、ねじ留め等の留め具を用いることなく搬送路の上面の天板を真空排気によって吸引し、保持しているので、真空排気を止めるだけで天板を取り外すことができる。このため、搬送路中の詰まりを容易に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は、実施の形態1に係る一次元搬送路ユニットの構成を示す平面図であり、(b)は、(a)のA−A’線による断面図であり、(c)は、(a)のB−B’線による断面図である。
【図2】実施の形態2に係る一次元搬送路ユニットの構成を示す平面図である。
【図3】実施の形態3に係る一次元搬送路ユニット群の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係る一次元搬送路ユニットについて、添付図面を用いて説明する、なお、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0017】
(実施の形態1)
図1(a)は、実施の形態1に係る一次元搬送路ユニット20の全体的な構成を示す平面図である。図1(b)は、(a)のA−A’線についての断面図である。図1(c)は、(a)のB−B’線についての断面図である。この一次元搬送路ユニット20は、一次元方向の両端と、底面及び上面と、2つの側面とによって画成された、一次元方向に延在する搬送路2と、搬送路2を画成する2つの側面を挟んで両側にそれぞれ設けられ、底面及び上面と、4つの側面とによって画成された2つの空洞部3a、3bと、2つの空洞部3a、3bの底面に設けられた排気用開口部13から排気管14を介して真空排気する真空排気部15と、搬送路2の上面を構成すると共に、2つの空洞部3a、3bの上面を構成し、搬送路2と2つの空洞部3a、3bとにわたって覆う天板4と、を備える。上記構成により、真空排気部15から2つの空洞部3a、3b内を真空排気することによって、搬送路2を画成する側面6a及び2つの空洞部3a、3bを画成する側面6bを天板4に密着させることができる。
これによって、この一次元搬送路ユニット20では、搬送路2による搬送物1の搬送にあたって、一次元方向に延在する搬送路2の上面を構成する天板4と、搬送路の側面6aとの密着性を向上させ、搬送路2からの空気漏れを抑えることができる。また、この一次元搬送路ユニット20では、ねじ留め等の留め具を用いることなく搬送路2の上面の天板4を真空排気によって吸引し、保持することを特徴とする。そのため、真空排気を止めるだけで天板4を容易に取り外すことができる。このため、天板4を取り外して搬送路2中の詰まりを容易に取り除くことができる。
【0018】
この一次元搬送路ユニット20は、図1(b)及び(c)に示すように、基板5と、基板5の上に画成された一次元方向に延在する搬送路2及び空洞部3a、3bと、さらに搬送路2を画成する側面6a及び空洞部3a、3bを画成する側面6bの上に配置された天板4と、を備える。
【0019】
以下に、この一次元搬送路ユニット20を構成する各構成部材について説明する。
【0020】
<基板>
基板5は、必須の構成ではないが、一次元搬送路ユニット20の全体を安定して配置するために設けてもよい。基板5としては、例えば、金属、ガラス、プラスチック等を用いることができる。
【0021】
<搬送路>
図1(a)に示されているように、搬送路2は、少なくとも一つの一次元方向に延在する搬送路である。なお、搬送路2の本数は1本に限られず、2本以上であってもよい。
【0022】
搬送路2は、一次元方向の両端と、底面及び上面と、2つの側面とによって画成されている。また、搬送路2の底面と、2つの側面6aとは同一の部材によって形成されている。搬送路2の底面及び2つの側面6aは、例えば、金属、ガラス、プラスチック等で形成できる。一方、上面は、天板4によって構成されている。
【0023】
また、搬送路2は、搬送方向に垂直な断面積の大きさが搬送物1を一次元方向に搬送可能な大きさを有する。具体的には、搬送方向に垂直な断面積の大きさが搬送物1の搬送方向に対する断面積より大きいことが必要条件である。さらに、搬送路2は、その断面形状において、搬送する搬送物1の側面との平均間隔を搬送物1の大きさの5%以上とすることが好ましい。
【0024】
また、搬送路2の搬送方向に垂直な断面の形状は、円形形状、矩形形状、三角形状、多角形形状のいずれであってもよい。搬送路2の搬送方向に垂直な断面形状は、搬送物1の搬送方向に垂直な断面形状と相似形状であることが好ましい。搬送路2の断面形状を搬送物1の断面形状と相似にすることによって、搬送物1と搬送路2の各面を対応させることができる。なお、搬送物1が直方体形状である場合には、搬送路2の搬送方向に垂直な断面形状は直方形形状とすることが好ましい。これにより、直方体形状の搬送物1の側面と搬送路2の各平面とを対応させて搬送することができ、搬送物1の各側面を検査しやすくできる。
【0025】
さらに、一次元搬送路ユニット20は、搬送路2の両端の一端の底面に設けられた送気用開口部7から送気管8を介して送気する送気部9と、搬送路2の両端の他端の底面に設けられた吸気用開口部10から吸気管11を介して吸気する吸気部12と、を備えてもよい。送気用開口部7から送気管8を介して送気し、吸気用開口部10から吸気管11を介して吸気することによって、送気用開口部7が設けられた一端から吸気用開口部10が設けられた他端に向かって搬送物1を移動させることができる。この送気及び吸気は、連続的あるいはパルス的のいずれで行ってもよい。
【0026】
<空洞部>
2つの空洞部3a、3bは、搬送路2を構成する両側の側面6aを挟んでそれぞれ設けられている。空洞部3a、3bは、底面及び上面と、4つの側面とによって画成されている。また、空洞部3a、3bの底面と4つの側面は同一の部材によって形成されている。空洞部3a、3bの底面と4つの側面は、例えば、金属、ガラス、プラスチック等で形成できる。一方、上面は、天板4によって構成されている。なお、4つの側面6bのうち、搬送路2と隣接する側面は共通の部材で形成してもよい。この空洞部3a、3bの底面には、少なくとも一つの排気用開口部13が設けられている。なお、排気用開口部13は、好ましくは複数個設けられる。この排気用開口部13から真空排気管14を介して真空排気部15によって真空排気される。真空排気部15から2つの空洞部3a、3b内を真空排気することによって、搬送路2を画成する側面6a及び2つの空洞部3a、3bを画成する側面6bを天板4に密着させることができる。
【0027】
<天板>
天板4は、搬送路2の上面と、2つの空洞部3a、3bの上面とにわたって覆って、両端以外の各面が囲まれた搬送路2を画成すると共に、各面が囲まれた空洞部3a、3bを画成する。天板4としては、ガラス、プラスチック、金属等のいずれであってもよい。なお、搬送路2内を上方から視認できるように、天板4を透明体で構成することが好ましい。また、天板4は、搬送路2の上面と、2つの空洞部3a、3bの上面とにわたって覆うために平面を有することが好ましい。なお、天板4は、少なくとも側面6a、6bの上に接する箇所について平面を有することが好ましい。また、面6a、6b上に突出させた凸部を設け、凸部に対応する天板4の箇所に開口部を設けて、天板4の開口部に側面6a、6b上の凸部をはめ込むことにより互いの相対位置を固定してもよい。
【0028】
(実施の形態2)
図2は、実施の形態2に係る一次元搬送路ユニット20aの全体的な構成を示す平面図である。この一次元搬送路ユニット20aでは、実施の形態1に係る一次元搬送路ユニットと比較すると、1本の搬送路ではなく、3本の搬送路2a、2b、2cを備えている点で相違する。なお、ここでは3本の搬送路2a、2b、2cとしたが、例えば、2本又は4本以上の複数の搬送路とすることもできる。
【0029】
また、3本の搬送路2a、2b、2cに設けられた送気用開口部7a、7b、7cと、吸気用開口部10a、10b、10cとによって、実施の形態1の場合と同様に、それぞれの搬送路2a、2b、2cに送気及び吸気を行って搬送物1を搬送する。この場合に、それぞれの搬送路2a、2b、2cについて同期させて送気及び吸気を行ってもよく、あるいは、各搬送路2a、2b、2cで別々に送気及び吸気を制御してもよい。
【0030】
(実施の形態3)
図3は、実施の形態3に係る一次元搬送路ユニット群30の構成を示す平面図である。この一次元搬送路ユニット群30は、実施の形態1に係る複数個の一次元搬送路ユニット20を直列に接続したものである。具体的には、各一次元搬送路ユニット20の搬送路2が一次元方向に連続するように直列に接続している。
これによって、一つの一次元搬送路ユニットの搬送路2の長さよりも長い一次元方向に延在する搬送路2を実現できる。
【0031】
なお、各一次元搬送路ユニット20の搬送路2ごとに送気及び吸気を行って搬送物1を順に搬送してもよく、あるいは、全ての一次元搬送路ユニット20の搬送路2で同時に送気及び吸気を行って、連続している搬送路2の一端から他端に連続して搬送してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る一次元搬送路ユニットによれば、この一次元搬送路ユニット20では、搬送路2による搬送物1の搬送にあたって、一次元方向に延在する搬送路2の上面を構成する天板4と、搬送路の側面6aとの密着性を向上させ、搬送路2からの空気漏れを抑えることができる。そこで、本発明に係る一次元搬送路ユニットは、例えば、積層型セラミックコンデンサを一次元方向に搬送するための一次元搬送路ユニットとして有用である。
【符号の説明】
【0033】
1 搬送物
2、2a、2b、2c 搬送路
3a、3b 空洞部
4 天板
5 基板
6a、6b 側面
7、7a、7b、7c 送気用開口部
8 送気管
9 送気部
10、10a、10b、10c 吸気用開口部
11 吸気管
12 吸気部
13 排気用開口部
14 排気管
15 真空排気部
20、20a 一次元搬送路ユニット
30 一次元搬送路ユニット群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を一次元方向に搬送する一次元搬送路ユニットであって、
一次元方向の両端と、底面及び上面と、2つの側面とによって画成された、一次元方向に延在する搬送路と、
前記搬送路を画成する前記2つの側面を挟んで両側にそれぞれ設けられ、底面及び上面と、4つの側面とによって画成された2つの空洞部と、
前記2つの空洞部の前記底面に設けられた排気用開口部から真空排気する真空排気部と、
前記搬送路の上面を構成すると共に、前記2つの空洞部の上面を構成し、前記搬送路と前記2つの空洞部とにわたって覆う天板と、
を備え、
前記真空排気部から2つの前記空洞部内を真空排気することによって、前記搬送路を画成する前記側面及び前記2つの空洞部を画成する前記側面を前記天板に密着させる、一次元搬送路ユニット。
【請求項2】
前記搬送路の両端の一端の底面に設けられた送気用開口部から送気する送気部と、
前記搬送路の前記両端の他端の底面に設けられた吸気用開口部から吸気する吸気部と、
をさらに備える、請求項1に記載の一次元搬送路ユニット。
【請求項3】
前記搬送路は、搬送方向に垂直な断面形状が、搬送物の搬送方向に垂直な断面形状と相似形状である、請求項1又は2に記載の一次元搬送路ユニット。
【請求項4】
前記搬送路は、搬送方向に垂直な断面形状が正方形形状である、請求項1から3のいずれか一項に記載の一次元搬送路ユニット。
【請求項5】
前記搬送路は、搬送する前記搬送物の側面との平均間隔が前記搬送物の大きさの5%以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の一次元搬送路ユニット。
【請求項6】
前記搬送路として、複数の搬送路を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の一次元搬送路ユニット。
【請求項7】
前記天板は、透明体である、請求項1から6のいずれか一項に記載の一次元搬送路ユニット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の複数の前記一次元搬送路ユニットを、前記搬送路が一次元方向にそれぞれ連続するように直列接続して構成した、一次元搬送路群ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−1540(P2013−1540A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136417(P2011−136417)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)