説明

一次硬化後の脱型が可能な繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物

【課題】一次硬化後の脱型が可能な繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物、及び該エポキシ樹脂組成物を用いてなる繊維強化複合材料を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される液状エポキシ樹脂と液状芳香族アミン硬化剤、硬化促進剤を必須成分とする、60℃〜100℃で8時間未満の1次硬化後に脱型が可能であり、100℃〜200℃の二次硬化で変形しない繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。


−X−は−SO−乃至は−C(CH−を示す。全−X−を100モル%としたときに−X−が−SO−である比率が10モル%〜50モ式中、ル%である。nは0〜5の整数を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材などの繊維強化複合材料に好適に用いられるエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は接着性、耐熱性、成形性に優れていることから電子部品、電気機器、自動車部品、繊維強化複合材料、スポーツ用品など広範囲に使用されている。特に繊維強化複合材料用途には、優れた耐熱性、弾性率、耐薬品性を有し、かつ硬化収縮が小さいことからエポキシ樹脂が大量に使用されており、エポキシ樹脂複合材料は、強度や剛性、耐衝撃性などの機械物性に優れるため、航空機部材、宇宙機部材、人工衛星部材、自動車部材、鉄道車両部材、船舶部材、スポーツ用具部材などの数多くの分野に応用されている。
【0003】
繊維強化複合材料としての成形方法としては、強化繊維にエポキシ樹脂組成物を含浸したプリプレグを所望の形状に積層し、加熱することによって成形物を得る方法がある。しかし、この方法は少量生産には向いているが、大量生産するにはプリプレグの作成、積層などの複数のプロセスがあり生産性に問題があった。また、あらかじめ強化繊維を型内に入れ、液状のエポキシ樹脂組成物を注入して含浸し、加熱硬化して成形物を得るRTM(Resin Transfer Molding)法、更に型内を真空にしてエポキシ樹脂組成物を注入するVaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)法がある。これらの方法であれば型を用意することでプリプレグ作成工程を介さずに短時間で成形でき、且つ複雑な形状のものでも容易に成形が可能という利点もある。
【0004】
しかし、型に注入し含浸するにはエポキシ樹脂組成物は低粘度でなければならず、特許文献1には反応性希釈剤、特に、粘度150ポイズ(25℃)以下のモノエポキシ化合物、ジエポキシ化合物を用いて、低粘度化した技術が開示されている。しかし、反応性希釈剤を使用すると、注入時の作業性や含浸性は改良されるものの、硬化物の耐熱性が低くなり問題となっていた。また、初期粘度の低下と脆性改善を両立する方法として特許文献2にはビスフェノール型エポキシ樹脂とTgの低い脂肪族エポキシ樹脂および特定のアミノ基含有硬化剤を用いることによって、樹脂組成物の初期粘度を最適化する方法も開示されている。しかし、一般的に脂肪族エポキシ樹脂を併用すると、硬化物のTgが低下したり、一次硬化後の成形体の機械的強度が低下するという問題もあった。
【0005】
ここでRTM法による生産性を改良する方法として一次硬化を行った後、脱型を行うことで、更に生産性を高めることが可能となるが、注入時の作業性と硬化物の耐熱性、靭性、一次脱型による生産性の全てを満足するエポキシ樹脂組成物はこれまで見出されていなかった。
【特許文献1】特公平05−080945号公報
【特許文献2】特開2001−323048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、注入時の作業性と硬化物の耐熱性、靭性の両立が図れ、RTM法において生産性に優れる一次硬化後に脱型が可能なエポキシ樹脂組成物を提供するものである。また、一次硬化とは、温度が40℃〜100℃、脱型可能時間が8時間以内の比較的低温短時間で行なう硬化条件を示し、金型からの脱型時に成形品の割れや欠けが無く、タックが無い状態を脱型が可能な一次硬化の終点とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、繊維強化複合材の製造及び生産性の課題に対し鋭意検討した結果、特定のエポキシ樹脂、特定の硬化剤、硬化促進剤を用いることにより注入作業性、含浸性、硬化物の耐熱性、靭性に優れており、且つ一次硬化後に脱型が可能なエポキシ樹脂組成物を見出し本発明を完成したものである。すなわち、本発明は、一般式(1)で表される液状エポキシ樹脂と液状芳香族アミン硬化剤、硬化促進剤を必須成分とする繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物である。このエポキシ樹脂組成物は、RTM法において60℃〜100℃で8時間未満の1次硬化後に脱型が可能であり、100℃〜200℃の二次硬化で変形しない繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物として有用である。
【0008】
【化1】

式中、−X−は−SO−乃至は−C(CH−を示すが、液状エポキシ樹脂を構成する成分として、n=0成分の場合は−X−は−SO−又は−C(CH−であり、n=1以上の成分の場合は−X−は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、全−X−を100モル%としたときに−X−が−SO−である比率が10モル%〜50モル%である。nは0〜5の整数を示す。
【0009】
また、本発明は、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の40℃における粘度が10,000mPa・s以下である前述の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物であり、ビスフェノールAとビスフェノールSの混合物とエピハロヒドリンを反応して得られるエポキシ当量が190g/eq〜350g/eqであり、25℃の粘度が400,000mPa・s以下である液状エポキシ樹脂を用いることを特徴とする前記記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物は低粘度であることから注入作業性、含浸性に優れており、硬化物の耐熱性、靭性にも優れた繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を提供することが出来る。更に、RTM法において一次硬化後に脱型が可能であり、二次硬化で変形しないことから生産性を飛躍的に向上することが出来る繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のエポキシ樹脂組成物は一般式(1)で表される液状エポキシ樹脂と液状芳香族アミン硬化剤、硬化促進剤を必須成分とするものである。
【0012】
【化2】

式中、−X−は−SO−乃至は−C(CH−を示すが、液状エポキシ樹脂を構成する成分として、n=0成分の場合は−X−は−SO−又は−C(CH−であり、n=1以上の成分の場合は−X−は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、全−X−を100モル%としたときに−X−が−SO−である比率が10モル%〜50モル%である。nは0〜5の整数を示す。
【0013】
本発明の一般式(1)で表される液状エポキシ樹脂はビスフェノールA(BPA)とビスフェノールS(BPS)とを所定の範囲のモル比で配合し、エピハロヒドリンを反応して得られるエポキシ樹脂である。この様なエポキシ樹脂は特開平02−142818号公報、特開平06−263842号公報、特開2001−226450号公報に開示されており、耐熱性、靭性に優れた硬化物が得られることが開示されている。しかし、本発明の液状エポキシ樹脂はBPA骨格とBPS骨格においてBPS骨格を10モル%〜50モル%、より好ましくは15モル%〜40モル%更に好ましくは20モル%〜30モル%の範囲であり、液状エポキシ樹脂であることが重要である。配合するビスフェノール類のフェノール性水酸基1個に対してエピハロヒドリンを1.5モル以上、より好ましくは2.0モル以上更に好ましくは2.5モル以上の条件で反応することにより液状エポキシ樹脂が得られる。エピハロヒドリンの配合量が多いほど低粘度の液状エポキシ樹脂を得ることができるが、生産性が低下するため、得られるエポキシ樹脂の粘度とのバランスをとる必要がある。
【0014】
また、反応時の溶解性を改良する目的などのため、必要に応じて溶剤を使用することも出来る。使用できる溶剤としてはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等を使用する事ができる。
【0015】
反応はアルカリ金属水酸化物を添加して行う。アルカリ金属水酸化物としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。これらは固形で用いても水溶液で用いてもよく、これらに限定されるものではなく、また、2種類以上併用しても良い。
【0016】
本発明の液状芳香族アミン硬化剤は液状でベンゼン環にアミノ基が付加した構造を持つものであれば特に制限は無く、ジアミノトルエン、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ビス(メチルチオ)トルエンジアミン、ジイソプロピルジメチルメチレンジアニリン、テトライソプロピルメチレンジアニリン、ポリオキシテトラメチレンビス(アミノベンゾエート)ジエチルジアミノフェニルメタンなどがありアルベマール社製エタキュアー、日本化薬社製カヤハードなどとして市販されているが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、また、2種類以上使用しても良い。
【0017】
なお、本発明に用いられる芳香族アミン系硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1に対して0.7以上1.1以下、好ましくは0.8以上1.0以下にすることが好ましい。
【0018】
本発明の硬化促進剤としては通常エポキシ樹脂の硬化に使用されるものであれば特に制限は無く、ホスフィン類、ホスホニウム塩類、三級アミン類、二級アミン類、イミダゾール類、第四アンモニウム塩類、有機酸金属塩類、ルイス酸アミン錯体などが挙げられがこれらに限定されるものではなく、また、2種類以上使用しても良い。但し、多量に使用しすぎると注入時に粘度が高くなり、作業性を悪化するばかりではなく、高い耐熱性の硬化物も得られない場合がある。少なすぎると脱型可能となる時間が長くなり生産性に影響を及ぼす。本発明においてエポキシ樹脂組成物中に5%以下より好ましくは3%以下、更に好ましくは1.5%以下である。
【0019】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに任意の成分として、界面活性剤、内部離型剤、染料、顔料などの添加剤を含むことができる。
【0020】
強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維、あるいはこれらを組合せたものなどが使用される。なかでも、軽量化、高強度化が求められる用途においては、優れた比強度、比弾性率を有する炭素繊維が好ましく使用される。
【0021】
強化繊維基材の形態は特に限定されず、例えば、強化繊維の織物、ブレイド、マットなどでもよく、これらを積層、賦形し、結着剤やステッチなどの手段で形態を固定したものを用いても良い。
【0022】
型の構造および材料についても特に制限はないが、一次硬化温度に耐えうるものであること、VaRTM法の場合は、減圧下で注入できることが求められる。
【0023】
エポキシ樹脂組成物の注入にも特に制限は無いが、注入温度は100℃以下、より好ましくは60℃以下、もっとも好ましくは40℃以下にて行われる。温度が高いと流動性が高く注入しやすいが、硬化反応が進行しやすく、注入途中で粘度が高くなり流れなくなってしまう。
【0024】
一次硬化温度は40℃〜100℃で行われ、脱型可能時間は8時間以内、より好ましくは6時間以内、更に好ましくは4時間以内である。
【0025】
二次硬化は100℃以上で行われ、好ましくは得られる成形物のガラス転移温度とほぼ同等の温度に維持できることが好ましい。加熱時間は8時間以内、より好ましくは6時間以内、更に好ましくは4時間以内である。
【0026】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料は、注入時の作業性が優れ、硬化物の耐熱性、靭性が良好であり、一次硬化後の脱型が可能なことから生産性に優れており、航空機の胴体、主翼、尾翼、動翼、フェアリング、カウル、ドアなど、宇宙機のモーターケース、主翼など、人工衛星の構体、自動車のシャシー、鉄道車両の構体などに好適に用いることができる。
【実施例】
【0027】
以下に本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0028】
合成例1
攪拌機、温度計、窒素導入管、油水分離器付コンデンサーを装備したガラス製セパラブルフラスコにBPS−P(日華化学株式会社製 ビスフェノールS)37.5部、BPA(新日鐵化学株式会社製 ビスフェノールA)193.8部及びエピクロルヒドリン555.0部を仕込み、窒素雰囲気下50℃まで攪拌しながら昇温して溶解した。次に水酸化ナトリウム8.0部を仕込み50〜70℃で1時間反応を行った。次に内温を95℃まで昇温し、95〜98℃の還流下に49%水酸化ナトリウム水溶液146.9部を2時間かけて滴下した。滴下中、油水分離器で還流したエピクロルヒドリン/水共沸分を分離して、上層の水を系外に除去、下層のエピクロルヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、30分同温度で反応を行った。熟成反応後、150℃5torr以下の減圧下に過剰のエピクロルヒドリンを除去した。メチルイソブチルケトンを400部仕込み溶解したのち、水400部を加えて水洗分液を行った。10%水酸化ナトリウム水溶液25部を添加して80℃で2時間反応を行った。反応終了後、250部の水で水洗を行い、燐酸により中和水洗、更に水洗を行った。その後、115℃まで昇温して還流脱水を行った。得られたエポキシ樹脂溶液を濾過し、150℃×1torrの減圧下にメチルイソブチルケトンを除去してエポキシ当量193g/eq、加水分解性塩素0.15%、粘度131,000mPa・sの液状のエポキシ樹脂を得た。なお、BPSのモル比は15モル%であった。
【0029】
合成例2
BPS−P62.5部、BPA171.0部、とした以外は合成例1と同様な操作を行い、エポキシ当量206g/eq、加水分解性塩素0.16%、粘度280,000mPa・sの液状のエポキシ樹脂を得た。なお、BPSのモル比は25モル%であった。
【0030】
合成例3
BPS−P125.0部、BPA114.0部、エピクロルヒドリン833部とした以外は合成例1と同様な操作を行い、エポキシ当量250g/eq、加水分解性塩素0.18%、粘度371,100mPa・sの液状のエポキシ樹脂を得た。なお、BPSのモル比は50モル%であった。
【0031】
合成例4
BPS−P340.0部、BPA54.7部、エピクロルヒドリン592部、水酸化ナトリウム12.8部、49%水酸化ナトリウム水溶液235.1部、メチルイソブチルケトンを680部とした以外は合成例1と同様な操作を行い、エポキシ当量312g/eq、加水分解性塩素0.25%、軟化点64℃のエポキシ樹脂を得た。なお、BPSのモル比は85モル%であった。
【0032】
実施例1〜4および比較例1〜5
合成例1〜4で得られたエポキシ樹脂およびエポトートYD−128(東都化成株式会社製ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂 エポキシ当量187g/eq、加水分解性塩素0.02%、粘度13,000mPa・s)、エポトートYDF−170(東都化成株式会社製ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂 エポキシ当量170g/eq、加水分解性塩素0.02%、粘度3,500mPa・s)、エポトートZX−1658(東都化成株式会社製 シクロヘキサンジメタノール型液状エポキシ樹脂 エポキシ当量141g/eq、加水分解性塩素0.02%、粘度10mPa・s)および、硬化剤としてエタキュアー100(アルべマール社製 ジエチルトルエンジアミン 活性水素当量45g/eq、粘度45mPa・s)および硬化促進剤として2E4MZ(四国化成株式会社製 2 - エチル - 4 - メチルイミダゾール)を表1に示す処方によって配合した。配合数値は部を表す。
【0033】
混合後の粘度はHAAKE社製RheoStress600にてコーン35/1゜、サンプル量0.2ml、測定温度40℃の条件で測定した。一次硬化は80℃とし、1時間ごとに脱型を行い、金型からの割れ、欠けが無くタックが無い状態である時間を一次硬化脱型可能時間とした。一次硬化脱型後のサンプルの曲げ強度を株式会社島津製作所製オートグラフAGS−JにてJIS−K−6911に準拠して測定した。一次硬化脱型後のサンプルのガラス転移温度をSIIナノテクノロジー株式会社製DMS120により、幅10mm・厚さ4mm・長さ20mmのサンプルを用い、振幅10μm、周波数10Hz、温度20℃〜230℃、昇温条件2℃/minにて昇温を行い、曲げモード試験測定を行った時のE’(貯蔵弾性率)の変曲点の値で示した。二次硬化は150℃にて2時間で行った。二次硬化後の変形については、1次硬化後試験片に対して、二次硬化後試験片の流れ、角の丸まり、ソリの有無を目視確認し、変形の有無を判定した。また、二次硬化後のガラス転移温度もSIIナノテクノロジー株式会社製DMS120により同様な条件で測定を行い、E’の変曲点の値で示した。結果を表1にまとめる。
【0034】
【表1】

【0035】
合成例1〜3で得られた本発明の範囲である特定の液状エポキシ樹脂と液状の芳香族アミン、硬化促進剤を必須成分とする実施例1〜4においてはエポキシ樹脂組成物としての粘度が低いことから、RTM法において樹脂組成物の注入が容易であり、一次硬化後に脱型が可能であった。また、二次硬化において硬化物の変形も無く、高い耐熱性を持つ硬化物を得ることが出来る。これに対して、従来から使用されているビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂を使用した比較例1,2ではエポキシ樹脂組成物の粘度が低い為、注入は容易であるが、8時間一次硬化を行っても脱型の際に割れや欠け、タックがあり脱型は出来なかった。また、二次硬化後に得られた硬化物の耐熱性も低かった。更に合成例4で得られたエポキシ樹脂はビスフェノールS骨格の濃度が高く、エポキシ樹脂は固形であった。比較例2では合成例4で得られたエポキシ樹脂を単独で使用してエポキシ樹脂組成物を配合しようとしたが、粘度が高く混合出来なかった。そこで、比較例4で、合成例4で得られたエポキシ樹脂とビスフェノールA型エポキシ樹脂を混合した。ビスフェノールS骨格の濃度を合成例2で得られたエポキシ樹脂と同様に調整したが、比較例4のエポキシ樹脂組成物の粘度が高く注入出来なかった。更に、比較例5では低粘度二官能液状エポキシ樹脂であるZX−1658を配合して低粘度なエポキシ樹脂混合物とした。注入は容易に出来たが、一次硬化後の脱型はできなかった。これは3種類のエポキシ樹脂の反応性が異なることからタックが残ることによるものと思われる。また、耐熱性も著しく低下した。以上の様に特定の液状エポキシ樹脂と液状の芳香族アミン、硬化促進剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は注入時の作業性が優れ、硬化物の耐熱性、靭性が良好であり、一次硬化後の脱型が可能なことから生産性に優れており、繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される液状エポキシ樹脂と液状芳香族アミン硬化剤、硬化促進剤を必須成分とする、60℃〜100℃で8時間未満の1次硬化後に脱型が可能であり、100℃〜200℃の二次硬化で変形しない繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【化1】

−X−は−SO−乃至は−C(CH−を示すが、液状エポキシ樹脂を構成する成分として、n=0成分の場合は−X−は−SO−又は−C(CH−であり、n=1以上の成分の場合は−X−は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、全−X−を100モル%としたときに−X−が−SO−である比率が10モル%〜50モル%である。nは0〜5の整数を示す。
【請求項2】
40℃の粘度が10,000mPa・s以下である請求項1記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
ビスフェノールAとビスフェノールSの混合物とエピハロヒドリンを反応して得られるエポキシ当量が190g/eq〜350g/eqであり、25℃の粘度が400,000mPa・s以下である液状エポキシ樹脂を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−59281(P2010−59281A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225014(P2008−225014)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000221557)東都化成株式会社 (53)
【Fターム(参考)】