説明

一段階被覆法を用いて作製された着香味遮蔽製薬製剤

本発明は、ミクロスフェアなどの複数の製薬的に許容できるコアを含む着香味遮蔽製薬組成物を包含し、前記製薬的に許容できるコアはエトリコキシブを含み、前記製薬的に許容できるコアは便利な一段階法により着香味遮蔽被覆溶液を用いて被覆される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、便利な一段階法によって作製できる新規な着香味遮蔽製薬製剤を提供する。錠剤を嚥下できない小児患者および老齢患者のために、液体懸濁剤または経口用顆粒製剤などの代替製剤が、薬物を投与するために利用できる。しかしながら、有効成分が不快な味を有する場合、重大な欠点が存在し得る。この問題を処理するための味遮蔽製剤は、当業界によく知られているが、それら自体が快適な味を有さないことが多い。一般に、味の改善は、結合剤の助けと共に、増量剤、着香剤および甘味剤と共に味遮蔽有効製薬成分(API)またはAPI含有粒子を凝集させる顆粒化法により提供される。この方法の不利な点は、1)工程ステップの追加;および2)特に工程のスケールアップの際に用量均質性問題の危険性を増大させる顆粒化における増量剤の使用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明は、これらの欠点を、1)味遮蔽被覆法を拡大し(方法のステップ数を減じる);2)増量剤の量を減じ;および3)賦形剤を、APIまたはAPI含有コアにスプレーする、利点を有する着香味および味遮蔽のための一段階法の使用により処理する。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、ミクロスフェアなどの複数の製薬的に許容できるコアを含む着香味遮蔽製薬組成物を包含し、前記製薬的に許容できるコアは、エトリコキシブ(etoricoxib)を有する有効製薬成分を含み、前記製薬的に許容できるコアは、便利な一段階法で着香味遮蔽被覆溶液により被覆される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
本発明は、複数の製薬的に許容できるコアを含む着香味遮蔽製薬組成物を包含し、前記製薬的に許容できるコアはエトリコキシブを含み、前記製薬的に許容できるコアは一段階被覆法により着香味遮蔽被覆溶液を用いて被覆され、前記着香味遮蔽被覆溶液は、以下の成分:
(a)少なくとも1種の味遮蔽剤および
(b)少なくとも1種の甘味剤または少なくとも1種の着香剤または双方のうちの少なくとも1種
を含む。
【0005】
本発明の実施形態では、前記着香味遮蔽被覆溶液は、
(a)少なくとも1種の増量剤、および
(b)少なくとも1種の滑剤
をさらに含む製薬組成物を包含する。
【0006】
本発明の他の実施形態では、前記前記製薬的に許容できるコアがミクロスフェアである製薬組成物を包含する。
【0007】
本発明の他の実施形態では、前記着香味遮蔽被覆溶液は、以下の成分:
(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、
(b)ポリメタクリレート、
(c)マンニトール、
(d)アスパルテーム、
(e)人工サクランボ着香剤、
(f)モノグリセリド、および
(g)水
を含む製薬組成物を包含する。
【0008】
本発明の他の実施形態は、複数のミクロスフェアを含む着香味遮蔽製薬組成物を包含し、前記ミクロスフェアはエトリコキシブを含み、前記ミクロスフェアは一段階被覆法により着香味遮蔽被覆溶液を用いて被覆され、前記着香味遮蔽被覆溶液は、以下の成分:
(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、
(b)ポリメタクリレート、
(c)マンニトール、
(d)アスパルテーム、
(e)人工サクランボ着香剤、
(f)モノグリセリド、および
(g)水
を含む。
【0009】
この実施形態では、前記着香味遮蔽溶液中の成分は、以下の量で存在する製薬組成物を包含する。
【0010】
【表4】

【0011】
本発明の他の実施形態は、
(1)以下の成分:
(a)少なくとも1種の味遮蔽剤、および
(b)少なくとも1種の甘味剤または少なくとも1種の着香剤または双方のうちの少なくとも1種
を組み合わせることにより着香味遮蔽被覆溶液を調製すること、
(2)前記製薬的に許容できるコアを、一段階被覆法により着香味遮蔽被覆溶液を用いて被覆すること
を含む方法により調製される製薬組成物を包含する。この実施形態では、前記着香味遮蔽被覆溶液を調製するためのステップ1)は、以下の成分:
(a)少なくとも1種の増量剤、および
(b)少なくとも1種の滑剤
をさらに含む製薬組成物を包含する。
【0012】
この実施形態では、前記製薬的に許容できるコアは、ミクロスフェアである製薬組成物を包含する。また、この実施形態では、前記着香味遮蔽被覆溶液は、以下の成分:
(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、
(b)ポリメタクリレート、
(c)マンニトール、
(d)アスパルテーム、
(e)人工サクランボ着香剤、
(f)モノグリセリド、および
(g)水
を組み合わせることにより調製される上記製薬組成物を包含する。
【0013】
また、この実施形態では、前記着香味遮蔽被覆溶液は、
(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを脱イオン水に溶解させること、
(b)ポリメタクリレートを添加し、均質化させること、および
(c)マンニトール、アスパルテーム、人工サクランボ香料およびモノグリセリドを添加し、均質化させること
により調製される上記製薬組成物を包含する。また、この実施形態では、前記着香味遮蔽溶液中の成分は、以下の量を有する溶液を生成するために組み合わされる上記製薬組成物を包含する。
【0014】
【表5】

【0015】
また、この実施形態では、前記製薬用コアは、流動床システムを用いて被覆される製薬組成物を包含する。この実施形態では、前記製薬用コアは、ミクロスフェアである。
【0016】
本発明の他の実施形態は、複数のミクロスフェアを含む着香味遮蔽製薬組成物を包含し、前記ミクロスフェアはエトリコキシブを含み、前記ミクロスフェアは一段階被覆法により着香味遮蔽被覆溶液を用いて被覆され、前記着香味遮蔽被覆溶液は、以下の成分:
(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、
(b)ポリメタクリレート、
(c)マンニトール、
(d)アスパルテーム、
(e)人工サクランボ着香剤、
(f)モノグリセリド、および
(g)水
を含む。
【0017】
前記製薬組成物は、
(1)前記着香味遮蔽被覆溶液を、
(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを脱イオン水に溶解させること;
(b)ポリメタクリレートを添加し、均質化させること、および
(c)マンニトール、アスパルテーム、人工サクランボ香料およびモノグリセリドを添加し、均質化させること
により調製すること;および
(2)前記ミクロスフェアを、一段階被覆法により前記着香味遮蔽被覆溶液を用いて被覆すること
を含む方法により調製される。
【0018】
前記着香味遮蔽溶液中の成分は、以下の量を有する溶液を生成するために組み合わされる。
【0019】
【表6】

【0020】
用語の「製薬的に許容できるコア」とは、結晶、粒子、顆粒およびミクロスフェアなどの被覆に適切な任意の製薬的に許容できるコアを意味する。製薬的に許容できるコアを作製する方法は、当業界によく知られている。例えば、ミクロスフェアは、1998年12月15日に付与された米国特許第5,849,223号に教示された方法に従って作製できる。
【0021】
用語の「複数の製薬的に許容できるコア」とは、上記に定義された1つ以上の製薬的に許容できるコアを意味する。
【0022】
エトリコキシブは、種々の病態における感染症および疼痛を治療するために有用なシクロオキゲナーゼ−2の選択的阻害剤である。エトリコキシブは、1999年1月19日に付与された米国特許第5,861,419号に教示されている。エトリコキシブを作製する方法は、2000年3月21日に付与された米国特許第6,040,319号に教示されている。
【0023】
用語の「味遮蔽剤」とは、例えば、ポリメタクリレート(EUDRAGIT)、ヒドロプロピルメチルセルロース(HMPC)、ヒドロキシプロピルセルロース、(HPC)およびビニルピロリドン−ビニルアセテートコポリマー(PLASDONE)を意味する。
【0024】
用語の「甘味剤」とは、例えば、糖およびアスパルテームを意味する。
【0025】
用語の「着香剤」とは、例えば、人工サクランボ着香剤などの人工着香剤を意味する。
【0026】
用語の「増量剤」とは、例えば、マンニトール、乳糖、澱粉およびリン酸カルシウムを意味する。
【0027】
用語の「滑剤」とは、潤滑剤、例えば、モノグリセリド類、タルク、二酸化シリコンおよびステアリン酸マグネシウムを意味する。
【0028】
本発明の被覆された製薬的に許容できるコアは、経口用顆粒製剤、迅速溶解錠剤、および咀嚼錠などの種々の最終剤形で投与できる。
【0029】
本明細書中の教示から考えて、当業者は、記載された「着香味遮蔽被覆溶液」を容易に作製することができる。この溶液は、流動床システムなどの種々の応用を用いて製薬的に許容できるコア上に被覆できる。製薬的に許容できるコアを被覆するための流動床システムは、例えば、下記の実施例に記載されるように、Wursterコーティングインサートおよび適切なエア拡散プレートを具備したGlatt GCPG1流動床(Glatt Air Techniques社、ニュージャージー州ラムセイ所在)が当業界でよく知られている。
【0030】
本明細書の目的のために、着香味遮蔽被覆溶液の組成物を記載するために用いられた用語の「約」とは、±5%、好ましくは±2%およびより好ましくは±1%を意味する。
【0031】
本発明の例証としては、以下の非限定的実施例がある。
【実施例1】
【0032】
エトリコキシブの経口用顆粒製剤化
【0033】
【表7】

【0034】
着香味遮蔽被覆溶液の調製
好適な容器中、一定の攪拌下でHPMCを脱イオン水に溶解する。次にEUDRAGIT(30%ポリメタクリレート分散液)分散液を、HPMC溶液に加え、一定の攪拌下で均質化する。次いでこの混合物に、マンニトール、アスパルテーム、人工サクランボ着香剤およびモノグリセリド類を連続して加え、均質分散液が得られるまで連続攪拌する。被覆懸濁液は、ポリメタクリレート対HPMCが5:1比で35%の固体を含有する。
【0035】
味遮蔽被覆法
被覆法を評価するために、被覆に好適な500gのAPI含有コアを、Wursterコーティングインサートおよび適切なエア拡散プレートを具備したGlatt GCPG1流動床(Glatt Air Techniques社、ニュージャージー州ラムセイ所在)に装填する。Wursterの中心仕切りを、7.5mmの高さに設定する。スプレーランスに、#12液体インサート(1.2mm)および#3位置に2mmエアキャップ(フラッシュ設定)により組み立てられた二進ノズル(Schlick#940)を取り付ける。流動化エア温度を30℃に設定し、3m/sの初発速度で予備加熱被覆ユニットに導入する。エア速度を、被覆法の進行中に4.5m/sまで徐々に増加させる。被覆溶液を、2バールの噴霧圧および2.5g/分に設定されたスプレー速度で流動床上にスプレーする。終末時に、初発のAPI含有コアの20重量%増加に相当する、288gの被覆溶液を前記床に塗布する。次いでこの生成物を、流動化運転で3分間乾燥させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製薬的に許容できるコアを含む着香および味遮蔽製薬組成物であって、前記製薬的に許容できるコアは、エトリコキシブを含み、前記製薬的に許容できるコアは、一段階被覆法により着香味遮蔽被覆溶液を用いて被覆され、前記着香味遮蔽被覆溶液は、以下の成分:
(a)少なくとも1種の味遮蔽剤および
(b)少なくとも1種の甘味剤または少なくとも1種の着香剤または双方のうちの少なくとも1種
を含む、製薬組成物。
【請求項2】
前記着香味遮蔽被覆溶液が、
(a)少なくとも1種の増量剤、および
(b)少なくとも1種の滑剤
をさらに含む請求項1に記載の製薬組成物。
【請求項3】
前記製薬的に許容できるコアが、ミクロスフェアである請求項1に記載の製薬組成物。
【請求項4】
前記着香味遮蔽被覆溶液が、以下の成分:
(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、
(b)ポリメタクリレート、
(c)マンニトール、
(d)アスパルテーム、
(e)人工サクランボ着香剤、
(f)モノグリセリド、および
(g)水
を含む請求項1に記載の製薬組成物。
【請求項5】
複数のミクロスフェアを含む請求項1に記載の着香味遮蔽製薬組成物であって、前記ミクロスフェアが、エトリコキシブを含み、前記ミクロスフェアが、一段階被覆法により着香味遮蔽被覆溶液を用いて被覆され、前記着香味遮蔽被覆溶液が、以下の成分:
(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、
(b)ポリメタクリレート、
(c)マンニトール、
(d)アスパルテーム、
(e)人工サクランボ着香剤、
(f)モノグリセリド、および
(g)水
を含む製薬組成物。
【請求項6】
前記着香味遮蔽溶液中の成分が、以下の量で存在する請求項5に記載の製薬組成物。
【表1】

【請求項7】
(1)以下の成分:
(a)少なくとも1種の味遮蔽剤、および
(b)少なくとも1種の甘味剤または少なくとも1種の着香剤または双方のうちの少なくとも1種
を組み合わせることにより着香味遮蔽被覆溶液を調製すること、
(2)前記製薬用コアを、一段階被覆法により着香味遮蔽被覆溶液を用いて被覆すること
を含む方法により調製した請求項1に記載の製薬組成物。
【請求項8】
前記着香味遮蔽被覆溶液を調製するためのステップ1)が、以下の成分:
(a)少なくとも1種の増量剤、および
(b)少なくとも1種の滑剤
の添加をさらに含む請求項7に記載の製薬組成物。
【請求項9】
前記製薬用コアが、ミクロスフェアである請求項7に記載の製薬組成物。
【請求項10】
前記着香味遮蔽被覆溶液が、以下の成分:
(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、
(b)ポリメタクリレート、
(c)マンニトール、
(d)アスパルテーム、
(e)人工サクランボ着香剤、
(f)モノグリセリド、および
(g)水
を組み合わせることにより調製される請求項7に記載の製薬組成物。
【請求項11】
前記着香味遮蔽被覆溶液が、
(a)ヒドロプロピルメチルセルロースを脱イオン水に溶解すること、
(b)ポリメタクリレートを添加し、均質化すること;および
(c)マンニトール、アスパルテーム、人工サクランボ着香剤およびモノグリセリドを添加し、均質化すること
により調製される請求項10に記載の製薬組成物。
【請求項12】
前記着香味遮蔽溶液中の成分が、以下の量を有する溶液を生成するように組み合わされている請求項11に記載の製薬組成物。
【表2】

【請求項13】
前記製薬用コアが、流動床システムを用いて被覆されている請求項7に記載の製薬組成物。
【請求項14】
前記製薬用コアが、ミクロスフェアである請求項13に記載の製薬組成物。
【請求項15】
(1)前記着香味遮蔽被覆溶液を、
(a)ヒドロプロピルメチルセルロースを脱イオン水に溶解すること、
(b)ポリメタクリレートを添加し、均質化すること、および
(c)マンニトール、アスパルテーム、人工サクランボ着香剤およびモノグリセリドを添加し、均質化すること
により調製すること;および
(2)前記ミクロスフェアを、一段階被覆法により前記着香味遮蔽被覆溶液を用いて被覆すること
を含む方法により調製された請求項5に記載の製薬組成物。
【請求項16】
前記着香味遮蔽溶液中の成分が、以下の量を有する溶液を生成するように組み合わされている請求項15に記載の製薬組成物。
【表3】


【公表番号】特表2007−501810(P2007−501810A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522860(P2006−522860)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【国際出願番号】PCT/CA2004/001483
【国際公開番号】WO2005/013944
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(305042057)メルク フロスト カナダ リミテツド (99)
【Fターム(参考)】