説明

一液型導電性接着剤

【目的】 硬化温度が比較的低温の100℃程度で使用でき、短時間に硬化し、かつポットライフが長く作業性に優れた一液型導電性接着剤を提供する。
【構成】 導電性粒子、エポキシ樹脂、およびマイクロカプセル化したアミン系硬化剤を配合して一液型導電性接着剤とする。100℃の温度を加えるとカプセルが溶け、エポキシ樹脂とアミン系硬化剤が速やかに反応して硬化する。ポットライフは30日であった。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子部品等の電極と印刷配線板等の電極を接続するための導電性接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】導電性接着剤は、樹脂からなる結合剤と導電性粉体とから主として構成されている。この結合剤となる樹脂には、従来、エポキシ樹脂がよく用いられており、そのエポキシ樹脂を硬化するために硬化剤も併用されていた。従来の一液型導電性接着剤は、硬化速度が速いものは、安定性に欠けていた。また、安定性の良いものは、硬化時間がかかっていた。
【0003】このような欠点を改善した一液型導電性接着剤として、(A)導電性粉体、(B)エポキシ樹脂、(C)アミド系硬化剤、(D)尿素系硬化剤を主成分としたものが、例えば、特開昭59−71380号公報に提案された。この組成物の配合割合は重量比で、好ましくは(A):(B)=70:30〜90:10、(A):(C)+(D)=100:20〜50、(C):(D)=100:20〜100の割合で配合されているものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の構成の導電性接着剤においては、アミド系硬化剤、例えば、ジシアンジアミドや、尿素系硬化剤、例えば3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素が、常温では固体の物質で融点が150℃以上の物質であるので、これらの硬化剤を用いた導電性接着剤は150℃以上の高温にしないと硬化しなかった。また、アミド系硬化剤や尿素系硬化剤を用いた接着剤は、内部の発熱反応等でゲル化が進行するため、接着剤を使用環境に置いたときの使用可能な時間(詳細な実験条件は実施例1に説明した。)、すなわち、ポットライフが1〜2日位と短かった。
【0005】本発明は、以上述べた、硬化温度が高い問題点およびポットライフが短いという問題点を除去し、硬化温度が低温で使用でき、短時間で硬化し、かつ、ポットライフが長く作業性に優れた一液型導電性接着剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記した問題点を解決するために、本発明は、導電性を付与する導電性粒子と、主剤であるエポキシ樹脂と、低融点の樹脂でアミン系硬化剤をマイクロカプセル化した硬化剤を配合したことを特徴とする一液型導電性接着剤とするものである。
【0007】導電性粒子は銀粉、銀メッキ銅粉や金メッキしたプラスチック粒などが使用できる。製造された導電性接着剤の粘度を低くするため、付着性を良好にするため、および硬化物の導電性を良好にするために、粒径が20μm以下であることが望ましい。エポキシ樹脂の種類はビスフェノールA型、ノボラック型、グリシジルエステル型などすべての種類が有効である。硬化物の導電性や強度などの諸物性が良好であるためにはエポキシ樹脂の平均分子量が小さいものが望ましく、平均分子量が500以下が好ましい。
【0008】硬化剤は、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンなどのポリアミンまたはN,N′−ビス(ヒドロキシエチル)−ジエチレントリアミンなどのポリアミンと、エチレンオキサイドのアダクトのようなアミン系硬化剤を用いる。このアミン系硬化剤は通常、硬化温度が低く、常温硬化が可能で硬化速度が速く硬化物の諸物性も良好であるという長所を有するが、アミン系硬化剤は発熱反応を起こすためにポットライフ(可使時間)が極端に短いという欠点を有する。そのため、アミン系硬化剤は通常、二液型のエポキシ接着剤用の硬化剤として用いられている。
【0009】そこで、本発明は、アミン系硬化剤の前記した長所である硬化温度が低く、硬化物の諸物性が良好であるという特性を生かし、しかも、アミン系硬化剤の欠点であるポットライフが極端に短いという欠点を次のようにして取り除くものである。すなわち、ポットライフを長くするために、酢酸ビニル樹脂やEVA樹脂などの融点が100℃以下であるような低融点樹脂でアミン系硬化剤を包んでマイクロカプセル化(好ましくは粒径20μ以下)する。このようにすると、エポキシ樹脂中に混合しても硬化反応は起こらない。
【0010】導電性粒子とエポキシ樹脂およびアミン系硬化剤の配合比は重量比で70:30〜85:15が望ましい。導電性粒子が70重量部未満では導電性が発現しない。また、導電性粒子が90重量部を越えると、かえって電気抵抗が高くなる場合がある。エポキシ樹脂とアミン系硬化剤の配合比は重量比で100:15〜100:30が望ましく、アミン硬化剤が15重量部未満では硬化物の諸物性が良好でない、例えば、接着強度や硬度が低くなる。また、アミン硬化剤が30重量部を越えると接着剤の粘度が高くなり、そのため作業性が悪くなったり、諸物性の低下、例えば、接着強度や硬度の低下の原因となる。
【0011】
【作用】本発明の一液型導電性接着剤は、導電性粒子、エポキシ樹脂およびマイクロカプセル化したアミン系硬化剤を配合したので、カプセルが壊れるまでアミン系硬化剤はエポキシ樹脂と硬化反応を起こさないのでポットライフが飛躍的に長くなる。接着剤の使用時には、例えば100℃の温度を加えるとカプセルが融け、エポキシ樹脂とアミン系硬化剤が速やかに反応して硬化する。したがって、本発明の一液型導電性接着剤は、比較的低温で硬化し、しかも硬化速度が速いにもかかわらず、ポットライフのかなり長い一液型導電性接着剤が実現できる。
【0012】
【実施例1】平均粒径5μmの鱗片状の銀粉78〜80重量%、ビスフェノールA型エポキシ樹脂17.5〜18.5重量%、およびマイクロカプセル化アミン系硬化剤としてアミキュアPN−23(味の素株式会社製)2.5〜3.3重量%を混練機にて混練して一液型導電性接着剤を製造した。製造された一液型導電性接着剤の配合例(1)、(2)とその特性を次の表1に示した。また、従来のアミン系硬化剤をマイクロカプセルとしない一液型導電性接着剤を比較例として、その配合例(3)とその特性を示した。比較例の配合例(3)の導電性接着剤は、前述の特開昭59−71380号公報に記載の導電性接着剤に相当するものである。
【0013】ポットライフの測定条件は、初期粘度の2倍になるまでの時間とした。ポットライフ測定のための粘度の測定には、回転型粘度計HBTD型スモールサンプルチャンバー6R(ブルックフィールド社製)を使用し、測定温度を25℃とし、回転数を10r.p.m.とし、回転を始めて1分後の粘度を測定した。
【0014】
【表1】


【0015】表1によれば、本発明の実施例の配合例(1)および(2)からなる一液型導電性接着剤は、比較例の配合例(3)からなる一液型導電性接着剤に比べ、硬化するための温度が低く、しかも硬化時間も短い。また、接着剤としてのポットライフが長い。また、体積抵抗率も低く、接着強度は比較例と同程度である。
【0016】
【発明の効果】本発明によれば、本発明の一液型導電性接着剤は、導電性粒子、エポキシ樹脂およびマイクロカプセル化したアミン系硬化剤を配合したので、100℃程度の比較的低温で硬化し、しかも硬化速度が速く、かつ、ポットライフのかなり長い一液型導電性接着剤となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 導電性粒子、エポキシ樹脂およびマイクロカプセル化したアミン系硬化剤を配合したことを特徴とする一液型導電性接着剤。