説明

一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤、それを用いて防湿絶縁処理された実装回路板、及びその実装回路板の製造方法

【課題】 電気・電子部品を搭載した実装回路板の防湿絶縁処理剤として有用な一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤の提供。
【解決手段】 (a)有機ポリイソシアネート、(b)数平均分子量500〜3000からなるポリカーボネートジオール、(c)炭素数6〜12のアルキレン基を有するジオールモノマーを構成単位とする数平均分子量1000〜5000のポリエステルポリオール、及び(d)数平均分子量1000〜15000のシロキサン変性ポリオールを、(a)/[(b)+(c)+(d)]のNCO/OH比が1.8〜2.3となるように反応させて得られる一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤。(b)ポリカーボネートジオール、(c)ポリエステルポリオール、(d)ポリシロキサン変性ポリオールの水酸基モル数比が、(90/5/5)〜(60/20/20)であると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に実装回路板の防湿絶縁処理剤として用いられる、防湿絶縁性、作業性に優れ、また実装材の熱伸縮に伴って発生する負荷応力で、実装回路板等が損傷するのを低減した一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤、及びそれを用いて防湿絶縁処理された実装回路板、及びその実装回路板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の電気・電子部品は、小型軽量化及び高性能化が進み、実装回路板に高密度実装されるようになってきている。実装回路板は、湿気、ほこり等から保護する目的で、アクリル樹脂、シリコーン樹脂塗料による保護コーティングやウレタン樹脂、エポキシ樹脂等による注型封止処理がなされている(特許文献1、2参照)。このような実装回路板は、過酷な環境下、特に高温湿度化で使用され、例えば洗濯機、自動車の機器に搭載されて使用されている。しかし前記塗料による保護コーティングでは、過酷な環境では耐湿性が劣り、硬化が遅いため生産性に劣る等の問題がある。また、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂による注型処理では、優れた絶縁性、耐湿熱性を有するが、材料が二液型であり扱いづらく、また、注型、硬化共に大型の設備が必要である等の問題がある。
【0003】
一方、反応性ホットメルト樹脂であれば、優れた絶縁性、耐湿熱性の特長を有すると共に、一液型で、加熱塗布後は速やかに固化するため生産性が優れる。さらに硬化のために設備を必要とせず上記問題を解決できる。しかし、このような反応性ホットメルト樹脂は結晶性が高く硬化樹脂が硬くなるため、温度変化の激しい条件では、しばしば実装材の熱伸縮に伴って発生する負荷応力で、実装後の回路板等に損傷を与える問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開平11−49947号公報
【特許文献2】特開2003−335936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決し、防湿絶縁等に適すると共に、実装回路板に発生する負荷応力による損傷を防止した低弾性硬化物を形成しうる一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤、防湿絶縁処理された信頼性の高い実装回路板及びその実装回路板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、防湿絶縁等に適すると共に、シロキサン変性ポリオールを導入する事で、低弾性硬化物を形成し、実装回路板に発生する負荷応力による損傷を防止することができる。
本発明は、[1](a)有機ポリイソシアネート、(b)数平均分子量500〜3000のポリカーボネートジオール、(c)炭素数6〜12のアルキレン基を有するジオールモノマーを構成単位とする数平均分子量1000〜5000のポリエステルポリオール、及び(d)数平均分子量1000〜15000のシロキサン変性ポリオールを、(a)/[(b)+(c)+(d)]のNCO/OH比が1.8〜2.3となるように反応させて得られる一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤である。
また、本発明は、[2](b)ポリカーボネートジオール、(c)ポリエステルポリオール、(d)ポリシロキサン変性ポリオールの水酸基モル数比が(90/5/5)〜(60/20/20)である上記[1]に記載の一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤である。
さらに、本発明は、[3]上記[1]及び上記[2]に記載の一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤を用いて防湿絶縁処理された実装回路板と、[4]上記[1]及び上記[2]に記載の一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤を実装回路板に塗布し、硬化する防湿絶縁処理された実装回路板の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤は各種電気・電子部品に使用される実装回路板の防湿絶縁等に適し、作業性に優れると共に、激しい温度変化による実装材の熱伸縮に伴って発生する負荷応力に対しても、硬化樹脂の低弾性化により実装回路板への損傷を防止する高い信頼性の防湿絶縁処理された実装回路板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いる(a)成分である有機ポリイソシアネートは、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、テトライソシアネート化合物等のポリイソシアネート、及びこれらをウレタン変性させたポリイソシアネートを用いることができる。ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、3−イソシアネートエチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、3−イソシアネートエチル−3,5,5−トリエチルシクロヘキシルイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、シクロヘキシリレンジイソシアネート、3,3’−ジイソシアネートジプロピルエーテル、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
また、これらをウレタン変性させたポリイソシアネートとしては、前述したイソシアネートと、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリールなどの脂環式ジオール、キシリレングリールなどの芳香族ジオールなどを用いてウレタン結合を形成させた、分子量300〜1000程度のウレタン変性イソシアネートが挙げられ、これらを単独で、または2種以上組合せて使用することができる。
【0009】
(b)成分の数平均分子量500〜3000のポリカーボネートジオールは、例えばカーボネート化合物とジオールとを反応させて得ることができる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネートなどを用いることができる。
ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリールなどの脂環式ジオール、キシリレングリールなどの芳香族ジオールなどの一種もしくは二種以上の混合物が用いられるが、なかでも脂肪族ジオールとりわけブタンジオール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、メチルオクタンジオール、ノナンジオールなどの炭素鎖長が4〜9の脂肪族ジオールの二種以上の混合物が好適な例として挙げられる。
また、カーボネートジオールの数平均分子量は500〜3000である必要がある。この値が500未満だと回路板との接着性が劣り、3000を超えるとコーティング剤の粘度が高くなり作業性が低下する。
【0010】
(c)成分の炭素数6〜12のアルキレン基を有するジオールモノマーを構成単位とする、数平均分子量1000〜5000のポリエステルポリオールは、例えば二塩基酸とジオールとを反応させて得ることができる。
二塩基酸としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ブラシル酸のごとき脂肪族二塩基酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族二塩基酸の、一種またはそれらの組合せで用いることができる。なかでも脂肪族二塩基酸が、とりわけグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、などのメチレン鎖長が3〜8の二塩基酸がさらに好適に用いられる。
ジオールとしては炭素数6〜12、好ましくは炭素数8〜12のアルキレン基を有するジオールモノマーを用いる必要がある。このようなモノマーの例としては、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリールなどの脂環式ジオール、キシリレングリールなどの芳香族ジオールなどの一種もしくは二種以上の混合物が用いられるが、導入するジオールについて、アルキレン基の炭素数が6未満であると、結晶化しにくくなり、固化時間が長くなり、12を超えると高粘度化により作業性の低下や塗布素材への密着性の低下を招く。
さらに、ポリエステルポリオールの数平均分子量は、1000〜5000である必要がある。この値が1000未満だと、結晶化しにくく固化時間が長くなり、5000を超えるとコーティング剤の粘度が高くなり作業性が低下する。
【0011】
(d)成分であるシロキサン変性ポリオールは、例えばシロキサン骨格を構成単位とした両末端ヒドロキシル基変性ポリシロキサン化合物、または片末端ジヒドロキシル基変性のシロキサン化合物で、数平均分子量が1000〜15000のジオールを示し、これらを単独で、または2種以上組合せて使用することができる。この値が1000未満だと結晶化しにくく固化時間が長くなり、15000を超えると得られる被膜が脆くなり、耐衝撃性の低下を生じる。
【0012】
本発明における(a)成分の有機ポリイソシアネート化合物と[(b)+(c)+(d)]成分のポリオール混合物のNCO/OH比((a)/[(b)+(c)+(d)])は、1.8〜2.3の範囲となるよう決定される。1.8未満では、得られるプレポリマーの粘度が高くなり過ぎ、作業性の悪化を招き、硬化性および耐湿性が劣る傾向があり、2.3を超えると得られる被膜が脆くなり、耐衝撃性の低下を生じるという欠点があるためである。
【0013】
また、ポリオール混合物の(b)ポリカーボネートジオール、(c)ポリエステルポリオール、及び(d)シロキサン変性ポリオールの水酸基モル数比は、90/5/5〜60/20/20(ポリカーボネートジオール/ポリエステルポリオール/シロキサン変性ポリオール)が好ましい。ポリエステルポリオールの比率が5未満では固化時間が長くなり、20を超えると耐湿熱性が低下する。また、シロキサン変性ポリオールの比率が5未満では、十分な低弾性特性が発現せず、20を超えると得られる被膜が脆くなり、耐衝撃性の低下を生じる。
【0014】
上記有機ポリイソシアネート化合物とポリオール混合物からプレポリマーを得る方法は特に限定されるものではないが、例えば、加熱および脱泡可能な混合機を用いて、50〜130℃の範囲で窒素ガスをパージする等の方法で空気を遮断しつつ数時間加熱、反応させる。
【0015】
本発明では、必要に応じて、熱可塑性ポリマー(ポリウレタン、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体、塩化ビニル系共重合体、アクリル共重合体、スチレン−共役ジエンブロック共重合体等の各種ゴム等)、粘着付与樹脂(ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペン樹脂、石油樹脂、水添石油樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂等の各種樹脂系)等を、さらに触媒(ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクテート、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリオクチルアミン等)、顔料または染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、充填剤等を適量配合しても良い。
【0016】
本発明になる一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤を用いて防湿絶縁処理される実装回路板には、電気・電子部品としてマイコン、トランジスタ、コンデンサ、抵抗、リレー、トランス等が、搭載されている。更にこれら電気・電子部品に接合されるリード線、ハーネス、フィルム基板等も含むことができる。また、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、有機エレクトロルミネッセンスパネル、フィールドエミッションディスプレイパネル等のフラットパネルディスプレイパネルの信号入力部等もこの実装回路板の例として挙げられる。
【0017】
本発明になる一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤を用いて防湿絶縁処理される実装回路板の製造法としては、例えば一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤を加熱、溶融させた状態で上記電気・電子部品を搭載した実装回路板上に塗布し、放冷により固化させた後、空気中の水分により硬化させれば良い。
【実施例】
【0018】
以下に実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明し、表1にこれら具体例の結果を示すが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0019】
検討例1(比較例1)
予め真空乾燥機により脱水処理した1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタジオールを主成分とするポリカーボネートジオール(旭化成ケミカル株式会社製T5652、官能基数 2.0、数平均分子量2000)とセバチン酸と1,6−ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(日立化成ポリマー株式会社製A−48、官能基数 2.0、数平均分子量5000)、の水酸基モル数比を90/10としたポリオール成分100重量部とウレタン変性ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成ケミカル株式会社製 D−201、官能基数 2.0 数平均分子量532)47.4重量部(NCO/OH比は2.05)を加熱、脱泡攪拌可能な反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気中で混合撹拌しながら、110℃で2時間反応させた後、更に110℃で2時間減圧脱泡攪拌し、一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤(粘度:10.1Pa・s/120℃)を得た。
【0020】
検討例2(比較例2)
予め真空乾燥機により脱水処理した1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタジオールを主成分とするポリカーボネートジオール(旭化成ケミカル株式会社製T5652、官能基数 2.0、数平均分子量2000)とセバチン酸と1,6−ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(日立化成ポリマー株式会社製A−48,官能基数 2.0、数平均分子量5000)、及びポリシロキサン(シリコーン)変性ポリオール(チッソ株式会社製FM4411、官能基数2.0、数平均分子量1000)の水酸基モル数比を92/5/3としたポリオール成分100重量部と、ウレタン変性ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成ケミカル株式会社製 D−201、官能基数 2.0 数平均分子量532)51.4重量部(NCO/OH比は2.05)を加熱、脱泡攪拌可能な反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気中で混合撹拌しながら、110℃で2時間反応させた後、更に110℃で2時間減圧脱泡攪拌し、一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤(粘度:9.2Pa・s/120℃)を得た。
【0021】
検討例3(実施例1)
予め真空乾燥機により脱水処理した1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタジオールを主成分とするポリカーボネートジオール(旭化成ケミカル株式会社製T5652、官能基数 2.0、数平均分子量2000)とセバチン酸と1,6−ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(日立化成ポリマー株式会社製A−48,官能基数 2.0、数平均分子量5000)、及びポリシロキサン変性ポリオール(チッソ株式会社製FMDA26、官能基数2.0、数平均分子量15000)の水酸基モル数比を90/5/5としたポリオール成分100重量部と、ウレタン変性ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成ケミカル株式会社製 D−201、官能基数 2.0 数平均分子量532)39.0重量部(NCO/OH比は2.05)を加熱、脱泡攪拌可能な反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気中で混合撹拌しながら、110℃で2時間反応させた後、更に110℃で2時間減圧脱泡攪拌し、一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤(粘度:12.5Pa・s/120℃)を得た。
【0022】
検討例4(実施例2)
予め真空乾燥機により脱水処理した1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタジオールを主成分とするポリカーボネートジオール(旭化成ケミカル株式会社製T5652、官能基数 2.0、数平均分子量2000)とセバチン酸と1,6−ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(日立化成ポリマー株式会社製A−48、官能基数 2.0、数平均分子量5000)、及びポリシロキサン変性ポリオール(チッソ株式会社製FM4411、官能基数2.0、数平均分子量1000)の水酸基モル数比を80/5/15としたポリオール成分100重量部とウレタン変性ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成ケミカル株式会社製 D−201、官能基数 2.0 数平均分子量532)54.5重量部(NCO/OH比は2.05)を加熱、脱泡攪拌可能な反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気中で混合撹拌しながら、110℃で2時間反応させた後、更に110℃で2時間減圧脱泡攪拌し、一液湿気硬化型コーティング剤(粘度:6.1Pa・s/120℃)を得た。
【0023】
検討例5(実施例3)
予め真空乾燥機により脱水処理した1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタジオールを主成分とするポリカーボネートジオール(旭化成ケミカル株式会社製T5652、官能基数 2.0、数平均分子量2000)とセバチン酸と1,6−ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(日立化成ポリマー株式会社製A−48,官能基数 2.0、数平均分子量5000)、及びポリシロキサン変性ポリオール(チッソ株式会社製FMDA11、官能基数2.0、数平均分子量1000)の水酸基モル数比を75/5/20としたポリオール成分100重量部と、ウレタン変性ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成ケミカル株式会社製 D−201、官能基数 2.0 数平均分子量532)55.9重量部(NCO/OH比は2.05)を加熱、脱泡攪拌可能な反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気中で混合撹拌しながら、110℃で2時間反応させた後、更に110℃で2時間減圧脱泡攪拌し、一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤(粘度:12.2Pa・s/120℃)を得た。
【0024】
検討例6(比較例3)
予め真空乾燥機により脱水処理した1,6−ヘキサンジオールと1,5−ペンタジオールを主成分とするポリカーボネートジオール(旭化成ケミカル株式会社製T5652、官能基数 2.0、数平均分子量2000)とセバチン酸と1,6−ヘキサンジオールを主成分とするポリエステルポリオール(日立化成ポリマー株式会社製A−48,官能基数 2.0、数平均分子量5000)、及びポリシロキサン変性ポリオール(チッソ株式会社製FM4425、官能基数2.0、数平均分子量10000)の水酸基モル数比を55/5/40としたポリオール成分100重量部と、ウレタン変性ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成ケミカル株式会社製 D−201、官能基数 2.0 数平均分子量532)20.4重量部(NCO/OH比は2.05)を加熱、脱泡攪拌可能な反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気中で混合撹拌しながら、110℃で2時間反応させた後、更に110℃で2時間減圧脱泡攪拌し、一液湿気硬化型コーティング剤(粘度:18.2Pa・s/120℃)を得た。
【0025】
検討例3、4、5(各々実施例1、2、3)で得た本発明の一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤と検討例1、2、6(各々比較例1、2、3)で得た一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤を用いて以下の試験を行った。
【0026】
(作業性)
ガラス板(大きさ:75mm×75mm×3mm)の両端にポリエステルテープ(幅:10mm、厚み:約50μm)を3枚重ねたものを作製し、120℃で1〜2時間放置した上記一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤をガラス棒で厚みが約300μmになるように調整しながら塗工し、コーティング剤の作業性を評価した。コーティングが容易なものを「○」、コーティングが可能なものを「△」、コーティングが困難なものを「×」として評価した。
【0027】
(固化時間)
20℃雰囲気中でPETシート(厚み:30μm)の上に120℃で1〜2時間放置した上記一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤をヘラでビード状(幅約2mm×高さ約2mm)に塗工し、放置したときに指にコーティング剤がついてこなくなるまでの時間を固化時間として測定した。
【0028】
(硬さ:ショアーA)
120℃に加温した樹脂を金属製の鋳型に流し込み130×130×1.6mmの樹脂シートを成型した。作製した樹脂シートを十分に硬化させた後、127×12.7×1.6mmに切り取った。この硬化樹脂を、厚みが約16mmとなる様に積み重ねた後、ショアーA硬さ測定器(株式会社上島製作所製 HD−101N)を使用して硬さ測定を行い、低弾性化の評価とした。
【0029】
(弾性率)
表面をシリコーン処理したポリエチレンフィルム上に、120℃に加温した樹脂を垂らし、ガラス棒を用いて膜厚が100μmとなる様に樹脂を引き伸ばした。作製した樹脂膜を十分に硬化させた後、60×10×0.1mmの大きさに切り取り試験片とした。これらを引張り速度:50mm/min、つかみ間距離:20mmの条件で、オートグラフ IM−1000N(株式会社島津製作所製)を使用して引張り弾性率を測定した。
これらの測定結果をまとめて表1に示した。
【0030】
【表1】

*樹脂が脆く評価不能
**樹脂が脆く試験片作製不能
【0031】
表1の結果より、シロキサン変性ポリオールを全く配合していない検討例1(比較例1)では作業性は良好ながら、固化時間が長く、硬さ、弾性率の値が高い。シロキサン変性ポリオールを3重量%配合した検討例2(比較例2)では、固化時間が長く、硬さの値が高いが、弾性率の値が低減した。一方、シロキサン変性ポリオールを5重量%配合した検討例3(実施例1)、15重量%配合した検討例4(実施例2)、20重量%配合した検討例5(実施例3)では、固化時間が短く、シロキサン変性ポリオールの配合比の増加に伴い硬さ、弾性率の値が大きく低減した。しかし、シロキサン変性ポリオールの配合率40重量%を配合した検討例6(比較例3)では、樹脂が脆く、硬さ評価が不能であると共に、弾性率を評価する試験片の作製ができなかった。以上により、本発明のシロキサン変性ポリオールを配合した一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤、特にシロキサン変性ポリオールを5〜20重量%配合した一液湿気硬化型コーティング剤は、各種電気・電子部品を搭載する実装回路板の防湿絶縁等に適し、作業性に優れると共に、激しい温度変化によって生じる実装材の伸縮に対しても、硬化樹脂の低弾性化により実装回路板にかかる応力を低減する事ができる。
【0032】
(実施例4)
実施例1、2、3で得られた一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤を、4層多層板にLSI、コンデンサ、チップ抵抗を両面に実装した実装回路板に、120℃の温度で約0.5mm厚みとなるように塗布し、室温で3日放置し硬化させた。電子部品と多層板の隙間をコーティング剤が十分に埋めており、これを50℃、95%RHの雰囲気に24時間放置してもクラック、剥離が発生せず、信頼性に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有機ポリイソシアネート、(b)数平均分子量500〜3000のポリカーボネートジオール、(c)炭素数6〜12のアルキレン基を有するジオールモノマーを構成単位とする数平均分子量1000〜5000のポリエステルポリオール、及び(d)数平均分子量1000〜15000のシロキサン変性ポリオールを、(a)/[(b)+(c)+(d)]のNCO/OH比が1.8〜2.3となるように反応させて得られる一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤。
【請求項2】
(b)ポリカーボネートジオール、(c)ポリエステルポリオール、(d)ポリシロキサン変性ポリオールの水酸基モル数比が、(90/5/5)〜(60/20/20)である請求項1に記載の一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤を用いて防湿絶縁処理された実装回路板。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の一液湿気硬化型ポリウレタンコーティング剤を実装回路板に塗布し、硬化する防湿絶縁処理された実装回路板の製造方法。

【公開番号】特開2008−156501(P2008−156501A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347730(P2006−347730)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000233170)日立化成ポリマー株式会社 (75)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】