説明

一組の保持治具及び小型部品保持装置

【課題】多数個の小型電子部品のいずれをも実質的に垂直の状態にしてこれら小型電子部品をゴム弾性部材上に立設することができ、第1のゴム弾性部材上に実質的に垂直の状態に立設した小型電子部品を第2のゴム弾性部材上に実質的に垂直の状態で移設することのできる一組の保持治具及び小型部品保持装置の提供。
【解決手段】基材とその基材の表面に設けられて成るゴム弾性部材のシートとを有する一組の保持治具であって、第1の保持治具における第1のゴム弾性部材と第2の保持治具における第2のゴム弾性部材とは小型電子部品を粘着保持可能な粘着力を備え、かつ第1のゴム弾性部材と第2のゴム弾性部材との粘着力の差が15〜43g/mmであることを特徴とし、さらに好ましくは、一組の保持治具におけるゴム弾性部材それぞれの表面の十点平均粗さRz(JIS B 0601−1994)が5μm以下であり、前記ゴム弾性部材それぞれの表面の硬度(JIS K 6253[デュロメータE])が5〜60である一組の保持治具及び小型部品保持装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は一組の保持治具及び小型部品保持装置に関し、更に詳しくは、多数個の小型電子部品のいずれをも実質的に垂直の状態にしてこれら小型電子部品をゴム弾性部材上に立設することができ、第1のゴム弾性部材上に実質的に垂直の状態に立設した小型電子部品を第2のゴム弾性部材上に実質的に垂直の状態で移設することのできる一組の保持治具及び小型部品保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チップコンデンサ等の小型電子部品を保持する保持治具として、特許文献1に開示された「小型部品の保持治具」がある。
【0003】
この特許文献1に記載された保持治具は、「少なくとも表面部が粘着性を有するゴム弾性材で形成され、その粘着力により小型部品をその弾性材表面において密着保持可能であることを特徴とする(特許文献1の請求項1参照)」。
【0004】
この保持治具においては、軟質のシリコーンゴムは粘着力を有することからこの性質を利用してチップコンデンサ等の小型電子部品が密着保持されるようになっている。
【0005】
ところでチップコンデンサ等の小型電子部品が長軸を有する角柱形又は円柱形等をしている場合に、その長軸方向における両端部に電極を形成するときには、ゴム弾性部材(ゴム弾性材と称されることがある。)の粘着力によりゴム弾性部材の表面に小型電子部品を密着保持するだけでは不十分である。つまり、ゴム弾性部材の表面に粘着保持する小型電子部品の下端面に電極を形成した後に、その小型電子部品を前記ゴム弾性部材から離脱し、次いで電極を形成してなる端面を再びゴム弾性部材の表面に密着保持させる必要がある。
【0006】
この必要に応える発明として、特許文献2に記載された電子部品チップ用ホルダがある。
【0007】
この特許文献2に記載された電子部品チップ用ホルダは、「互いに対向する第1および第2の端面を有する電子部品チップを保持するための電子部品チップ用ホルダにおいて、前記電子部品チップ用ホルダは、第1部材と第2部材とを含み、前記第1部材は、前記電子部品チップを保持するための第1の粘着面を備え、前記第2部材は、前記電子部品チップの前記第2の端面に粘着して前記電子部品チップを保持するための、前記第1の粘着面が与える粘着力よりも強い粘着力を与える第2の粘着面を備えることを特徴とする」(特許文献2の請求項1参照)。
【0008】
この特許文献2には、一方の電子部品チップ用ホルダにおける第2の粘着面の粘着力を、他方の電子部品チップ用ホルダにおける第1の粘着面の粘着力よりも、大きく設定する必要のあることが、開示されている(特許文献2の[0026]及び[0028]欄参照)。
【0009】
しかしながら、例えば第1の粘着面に粘着保持させた多数の小型電子部品を第2の粘着面に移し替えて第2の粘着面に粘着保持させ、しかも第1の粘着面に粘着保持された多数の小型電子部品の全てを第2の粘着面に移し替えるには、単に第1の粘着面の粘着力と第2の粘着面の粘着力とを相違させるだけでは不十分である。
【0010】
例えば小型電子部品が長軸を有する円柱形、角柱形、又は円柱形の長軸に平行な面で縦割りにしてなる円柱縦割り形状等を有している場合には、第1の粘着面及び第2の粘着面が相互のそれらの粘着力が相違するだけでは、第1の粘着面に多数の小型電子部品全てを第1の粘着面に対して実質的に垂直な状態で第1の粘着面に粘着保持することが困難である。実際的には、例えば第1の粘着面に、殆どの小型電子部品を第1の粘着面に対して垂直な状態で立設させることができるにしても、いくつかの小型電子部品が横倒し状態になって第1の粘着面に粘着保持されてしまうことがある。
【0011】
また、多数の小型電子部品全てを、第1の粘着面に対して実質的に垂直の状態で粘着保持させることができるにしても、第1の粘着面から第2の粘着面に全ての小型電子部品を移し替える操作を行うと、いくつかの小型電子部品が第1の粘着面から第2の粘着面に移行せず、又移行するにしても第1の粘着面に垂直に立設していた小型電子部品が第2の粘着面では横倒しになって粘着保持されてしまうという現象がある。
【0012】
【特許文献1】特公平7−93247号公報
【特許文献2】特許第2682250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明の課題は、第1の粘着面に粘着させた多数の小型電子部品を第1の粘着面から離脱して第2の粘着面に殆ど確実に移行させることのできる一組の保持治具及び小型部品保持装置を提供することにある。この発明の他の課題は、第1の粘着面に粘着させた多数の小型電子部品を粘着面に殆ど垂直に立設した状態で粘着保持することができ、しかも第1の粘着面に粘着させた多数の小型電子部品の殆ど全てを第2の粘着面に対して殆ど垂直の状態で、立設移行させることのできる一組の保持治具及び小型部品保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、基材とその基材の表面に設けられて成るゴム弾性部材のシートとを有する一組の保持治具であって、第1の保持治具における第1のゴム弾性部材と第2の保持治具における第2のゴム弾性部材とは小型電子部品を粘着保持可能な粘着力を備え、かつ第1のゴム弾性部材と第2のゴム弾性部材との粘着力の差が15〜43g/mmであることを特徴とする一組の保持治具であり、
請求項2は、一組の保持治具における第1及び第2のゴム弾性部材それぞれの表面の十点平均粗さRz(JIS B 0601−1994)が5μm以下であり、前記第1及び第2のゴム弾性部材それぞれの表面の硬度(JIS K 6253[デュロメータE])が5〜60であることを特徴とする前記請求項1に記載の一組の保持治具であり、
請求項3は、前記第1及び第2のゴム弾性部材が、式(1)で示されるポリオルガノシロキサン(a)と、前記式(1)で示されるポリオルガノシロキサンと架橋反応可能であり、Si原子に結合した水素原子を一分子中に少なくとも2個有するSiH結合含有ポリオルガノシロキサン(b)と、粘着力向上剤(c)と、前記ポリオルガノシロキサン(a)と前記SiH結合含有ポリオルガノシロキサン(b)との架橋反応を促進する触媒である白金化合物(d)とシリカ系充填材(e)とを含有する粘着性組成物を硬化してなる硬化物である前記請求項1又は2に記載の一組の保持治具であり、
請求項4は、前記請求項1〜3のいずれか一項に記載の一組の保持治具を備えた小型部品保持装置である。
【0015】
【化1】

【0016】
[ただし、式(1)において、Rは不飽和結合を有することのない1価の炭化水素基であり、式(1)における複数のRは互いに同一であっても相違していても良い。Xはアルケニル基を含有する有機基であり、式(1)における複数のXは互いに同一であっても相違していても良い。aは0〜3の整数、bは0〜3の整数、mは0以上の整数、nは100以上の整数である。a、b、及びmは同時に0となることがない。]
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る一組の保持治具によると、第1の保持治具における第1のゴム弾性部材の表面に立設された多数の小型電子部品の他端部を、第2の保持治具における第2のゴム弾性部材の表面に、粘着させ、次いで第2の保持治具を第1の保持治具から引き離すと、第1のゴム弾性部材の表面に立設していた殆ど全ての小型電子部品が、第2のゴム弾性部材の表面に粘着保持された状態となって移行し、第1のゴム弾性部材に小型電子部品が残留することが殆どない。
【0018】
この発明の好適な態様であり、かつ請求項2に係る一組の保持治具を採用すると、以下のようにして多数の小型電子部品を第1の保持治具から第2の保持治具へと移行させることができる。すなわち、小型電子部品を移し替える場合、第1の保持治具における第1のゴム弾性部材の表面の十点平均粗さRz(JIS B 0601−1994)が5μm以下であるから、多数の小型電子部品がいずれもゴム弾性部材の表面に実質的に垂直の状態で保持され、しかも第1のゴム弾性部材の硬度(JIS K 6253[デュロメータE])が5〜60であるから多数の小型電子部品がいずれも第1のゴム弾性部材の表面に若干めり込んだ状態で粘着保持されることになるので、多数の小型電子部品がいずれも倒れることなく第1の保持治具における第1のゴム弾性部材に粘着保持されることになる。そして第1の保持治具における第1のゴム弾性部材に粘着保持された多数の小型電子部品を第2の保持治具に移し替える場合、第1の保持治具における第1のゴム弾性部材に粘着保持された多数の小型電子部品に、第2の保持治具における第2のゴム弾性部材を、押し付ける。そうすると、第2の保持治具における第2のゴム弾性部材の表面の十点平均粗さRz(JIS B 0601−1994)が5μm以下であるから、多数の小型電子部品の端部が第2のゴム弾性部材の表面に垂直な状態で接触し、しかも第2の保持治具における第2のゴム弾性部材の硬度(JIS K 6253[デュロメータE])が5〜60であるから、第2の保持治具における小型電子部品の端部が第2のゴム弾性部材に一部めり込むような状態となって粘着する。そして、第2のゴム弾性部材の粘着力が第1のゴム弾性部材の粘着力よりも15〜43g/mmの差分だけ大きいので、第2のゴム弾性部材は第1のゴム弾性部材よりも強固に多数の小型電子部品を粘着保持している。したがって、第2の保持治具を第1の保持治具から引き離すと、第1のゴム弾性部材に粘着保持されていた多数の小型電子部品がその第1のゴム弾性部材の表面から離脱すると共に、第2のゴム弾性部材の表面に多数の小型電子部品が粘着保持された状態となる。
【0019】
したがって、この発明によると、第1のゴム弾性部材に粘着保持させた小型電子部品の全てを、第1のゴム弾性部材の表面に対して実質的に垂直の状態のまま、第2のゴム弾性部材に移行させ、粘着保持させることのできる一組の保持治具及び小型部品保持装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の一例である一組の保持治具は、第1の保持治具と第2の保持治具とを備え、例えば第1の保持治具に粘着保持された小型電子部品を、第2の保持治具に移し替えて第2の保持治具に小型電子部品を粘着保持させる。
【0021】
なおここで、小型電子部品は、例えばコンデンサチップ(これはチップコンデンサとも称されることがある。)、インダクタチップ、抵抗体チップ等の完成品又は未完成品を含み、その寸法は、例えば長さが2.0mm以下、幅が1.2mm以下、及び厚さが1.2mm以下の範囲内にある。この発明に係る一組の保持治具は例えばこのような小型電子部品用として好適である。
【0022】
第1の保持治具は、第1の基材と、この第1の基材の表面に形成された第1のゴム弾性部材とを有する。また、第2の保持治具は、第2の基材と、この第2の基材の表面に形成された第2のゴム弾性部材とを有する。
【0023】
前記第1の基材及び第2の基材は同じ構造を有していても、また、相違する構造を有していても良い。いずれにしても第1の基材及び第2の基材は、その表面に第1又は第2のゴム弾性部材を設けることができる限り、各種の材質で形成することができる。
【0024】
前記第1の基材及び第2の基材を形成することのできる材質として、例えば、ステンレス、およびアルミニウム等の金属製プレート、アルミニウム箔及び銅箔等の金属箔、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリ塩化ビニル等の樹脂フィルム、樹脂板、並びに和紙、合成紙、及びポリエチレンラミネート紙等の紙、並びに布、ガラス繊維及びガラス板等のセラミックス、並びにガラスエポキシ樹脂板等の複合材料等を挙げることができる。更にこの第1の基材及び第2の基材として、シート状物を複数積層してなる積層体を採用することもできる。前記第1の基材及び第2の基材としては、金属、樹脂、又はセラミックスからなる硬質部材で形成されるものが好適である。
【0025】
この第1の基材及び第2の基材の、粘着保持部である第1又は第2のゴム弾性部材を形成する面に、前記第1又は第2のゴム弾性部材との密着性を向上させるために、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理、プラズマ処理等を施しておくことが好ましい。
【0026】
第1の保持治具における第1のゴム弾性部材と第2の保持治具における第2のゴム弾性部材とは小型電子部品を粘着保持することのできる粘着力を備えていることを要し、しかも第1のゴム弾性部材と第2のゴム弾性部材との粘着力の差が15〜43g/mmであり、好ましくは18〜35g/mm、より好ましくは20〜30g/mmである。粘着力の差が大きくなり過ぎると第2のゴム弾性部材からの小型電子部品の離脱容易性が低下することがあり、また粘着性組成物のコストがかかり過ぎることがある。
【0027】
ここで、粘着力は、以下のようにして求める。以下の粘着力の測定方法は、出願人により案出されたので、信越ポリマー法と称する。
【0028】
まず、第1又は第2のゴム弾性部材を水平に固定する吸着固定装置(例えば、商品名:電磁チャック、KET−1530B、カネテック(株)製)、又は真空吸引チャックプレート等と、測定部先端に、直径10mmの円柱をなしたステンレス鋼(SUS304)製の接触子を取り付けたデジタルフォースゲージ(商品名:ZP−50N、(株)イマダ製)とを備えた荷重測定装置を用意する。
【0029】
この試験台上に第1又は第2のゴム弾性部材を固定し、測定環境を21±1℃、湿度50±5%に設定する。次いで、20mm/min.の速度で第1又は第2のゴム弾性部材の被測定部位に接触するまで前記荷重測定装置に取り付けられた前記接触子を下降させ、次いで、この接触子を被測定部位に所定の荷重で被測定部に対して垂直に3秒間押圧する。ここで、前記所定の荷重を、25g/mmに設定する。次いで、180mm/min.の速度で前記接触子を被測定部位から引き離し、このときに前記デジタルフォースゲージにより測定される引き離し荷重を読み取る。この操作を、被測定部位の複数箇所で行い、得られる複数の引き離し荷重を算術平均し、得られる平均値を被測定部の粘着力とする。
【0030】
なお、この測定方法は、手動で行ってもよいが、例えば、テストスタンド(例えば、商品名:VERTICAl MODEL MOTORIZED STAND シリーズ、(株)イマダ製)等の機器を用いて、自動で行ってもよい。
【0031】
第1のゴム弾性部材及び第2のゴム弾性部材は、それぞれ小型電子部品を粘着保持させることのできる粘着力を有する限りその粘着力の程度については制限がないのであるが、通常の場合、第1のゴム弾性部材及び第2のゴム弾性部材はそれぞれ7〜23g/mm、23〜50g/mmの粘着力を有している。第1のゴム弾性部材及び第2のゴム弾性部材それぞれが前記範囲内の粘着力を有していると、小型電子部品を好適に粘着保持することができる。また、第1のゴム弾性部材の粘着力と第2のゴム弾性部材の粘着力との差が前記範囲内にあると、粘着力の弱い方のゴム弾性部材、この場合は第1のゴム弾性部材に粘着保持された多数の小型電子部品を粘着力の強い方のゴム弾性部材、この場合は第2のゴム弾性部材に移し替えて粘着保持することができる。
【0032】
この発明における第1のゴム弾性部材及び第2のゴム弾性部材は、小型電子部品を保持する表面の十点平均粗さRz(JIS B 0601−1994)が5μm以下であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下であるのが好ましい。第1及び第2のゴム弾性部材における小型電子部品を保持する表面の十点平均粗さRzが前記範囲外であると、第1及び第2のゴム弾性部材の表面に載置する小型電子部品が実質的垂直に立設することができないことがあり、第1及び第2のゴム弾性部材の表面に小型電子部品を当初は垂直に立設したとしても振動及びその他の原因により小型電子部品が倒れたり、配置位置のずれを起こしたりしてしまうことがある。
【0033】
この発明における第1のゴム弾性部材及び第2のゴム弾性部材はいずれも、小型電子部品を載置する表面の硬度(JIS K 6253[デュロメータE])が好ましくは5〜60であり、さらに好ましくは15〜45であり、より好ましくは25〜35であるのが望ましい。小型電子部品を載置する第1及び第2のゴム弾性部材の表面が前記硬度の範囲内にあると、第1又は第2のゴム弾性部材の表面に載置された小型電子部品を押圧すると小型電子部品が第1又は第2のゴム弾性部材に若干めり込むこととなり、第1又は第2のゴム弾性部材に若干めり込んだ状態で小型電子部品が第1又は第2のゴム弾性部材の表面に粘着保持されることになる。そうすると、第1又は第2のゴム弾性部材上に立設する小型電子部品は、第1又は第2のゴム弾性部材に若干めり込んだその底部において第1又は第2のゴム弾性部材により保持されることになる。故に、第1又は第2のゴム弾性部材上の小型電子部品は、第1又は第2のゴム弾性部材の粘着力と小型電子部品の底部近傍の周側面が第1又は第2のゴム弾性部材に囲繞保持されることとで、第1又は第2のゴム弾性部材の表面上に確固として保持されることになる。
【0034】
結局、この発明に係る保持治具においては、第1の保持治具における第1のゴム弾性部材の粘着力と第2の保持治具における第2のゴム弾性部材の粘着力との差が特定の範囲内にあることにより、第1のゴム弾性部材に保持された小型電子部品を第2のゴム弾性部材に殆ど確実に移し替えて粘着保持することができると共に第1のゴム弾性部材に殆ど取り残しがなく、より確実なことには、第1の保持治具における第1のゴム弾性部材の粘着力と第2の保持治具における第2のゴム弾性部材の粘着力との差が特定の範囲内にあることと相俟って、第1及び第2のゴム弾性部材の表面の十点平均粗さRz及び硬度が前記所定の範囲内にあることにより、第1又は第2のゴム弾性部材の表面に小型電子部品を殆ど垂直状態で確実に立設保持することができる。
【0035】
この発明における第1及び第2のゴム弾性部材は、前記粘着力の差を有する限り、さらに好ましくは前記粘着力の差と表面についての前記十点平均粗さRz及び硬度を有する限り様々のゴム弾性部材で形成されることができる。好適なゴム弾性部材としては、例えば式(1)で示されるポリオルガノシロキサン((a)成分と称することがある。)と、前記式(1)で示されるポリオルガノシロキサンと架橋反応可能であり、Si原子に結合した水素原子を一分子中に少なくとも2個有するSiH結合含有ポリオルガノシロキサン((b)成分と称することがある。)と、粘着力向上剤((c)成分と称することがある。)と、前記ポリオルガノシロキサン((a)成分)と前記SiH結合含有ポリオルガノシロキサン((b)成分)との架橋反応を促進する触媒である白金化合物((d)成分と称することがある。)と、(e)成分としてのシリカ系充填材とを含有する粘着性組成物を硬化してなる硬化物を挙げることができる。
【0036】
【化2】

【0037】
ただし、式(1)において、Rは不飽和結合を有することのない1価の炭化水素基であり、式(1)における複数のRは互いに同一であっても相違していても良い。Xはアルケニル基を含有する有機基であり、式(1)における複数のXは互いに同一であっても相違していても良い。aは0〜3の整数、bは0〜3の整数、mは0以上の整数、nは100以上の整数である。a、b、及びmは同時に0となることがない。
【0038】
前記Rとしては、炭素数1〜10の飽和炭化水素基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基等を挙げることができ、中でもメチル基等の炭素数が1〜3の低級アルキル基及びフェニル基等のアリール基が好ましい。
【0039】
前記Xとしては、炭素数2〜10のアルケニル基含有有機基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基等の炭素二重結合含有炭化水素基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基、メタクリロイルメチル基等の(メタ)クリロイルアルキル基、シクロヘキセニルメチル基、シクロヘキセニルエチル基、シクロヘキセニルプロピル基等のシクロアルケニルアルキル基等を挙げることができる。
【0040】
この(a)成分は、オイル状、粘土状等の性状を有していても良く、その粘度が25℃において少なくとも50mPa・sであるのが好ましく、特に少なくとも100mPa・sであるのが好ましい。
【0041】
この(a)成分は一種単独で用いることができ、また二種以上を併用することもできる。
【0042】
前記(b)成分は、前記(a)成分と架橋することのできる成分であり、例えば、1分子中にSi原子に結合した水素原子を少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個有するSiH結合含有ポリオルガノシロキサン(以下において、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと称することがある。)を好適例として挙げることができる。
【0043】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、式(2)又は式(3)で示す化合物を挙げることができる。
【0044】
【化3】

【0045】
【化4】

【0046】
ただし、式(2)及び(3)において、Rは前記と同様の意味を有し、複数のRは同一であっても相違していても良い。c及びdは、0〜3の整数であり、x、y及びsは0以上の整数、rは1以上の整数である。c、d、及びxは同時に0となることがなく、xとyとはx+y≧0の関係を満たす。rとsとは、r+s≧3、好ましくは8≧x+y≧3の関係を満たす。
【0047】
好適なオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、オイル状を呈し、25℃における粘度が1〜5000mPa・sである。
【0048】
この(b)成分はその一種単独で使用することもでき、また二種以上を併用することもできる。
【0049】
この(b)成分の配合割合はこの発明の目的を阻害しないように適宜に決定することができる。この(b)成分がオルガノハイドロジェンポリシロキサンである場合には、SiH結合の(b)成分中のモル比が0.5〜20であるのが好ましく、特に1〜15であるのが好ましい。このモル比が前記下限値を下回ると、後述する硬化後の架橋密度が低下し、基材に対するゴム弾性部材の形状を保持することが困難になることがあり、前記モル比が前記上限値を上回ると、ゴム弾性部材の粘着力が低下してその表面に小型電子部品を粘着保持することができなくなることがある。
【0050】
前記(c)成分は、粘着力を向上させる機能乃至粘着力を調整する機能を備える限り各種の物質を採用することができ、例えばポリオルガノシロキサンが、特にRSiO1/2単位(但し、Rは、脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基を示す。)で示されるポリオルガノシロキサンが例示される。
【0051】
ここでRとしては、炭素数1〜10の飽和炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基等を挙げることができる。
【0052】
この(c)成分は、ゴム弾性部材の粘着力を向上させる機能乃至粘着力を調整する機能を有する成分であるから、前記(a)成分及び(b)成分と共に架橋反応を起こさないか、起こすのが困難である物質であるのが、好ましい。
【0053】
このような(c)成分としてポリオルガノシロキサンを採用する場合、(RSiO1/2単位及び/又はRSiO単位)/SiO単位のモル比が0.6〜1.7と成るポリオルガノシロキサンが好適である。このモル比が前記下限値より小さいと、ゴム弾性部材の粘着性が高くなり過ぎることがある。また、このモル比が前記上限値よりも大きくなると、ゴム弾性部材の粘着力が低下することがある。
【0054】
この(c)成分は、Si原子に結合するOH基を含有していても良く、その場合には、OH基含有量が多くとも4モル%にするのが良い。
【0055】
Si原子にOH基を結合するポリオルガノシロキサンを(c)成分として使用する場合には、式(4)に示されるポリオルガノシロキサンと(b)成分とが一部縮合してなる縮合反応物を(a)成分として使用することができる。
【0056】
【化5】

【0057】
ただし、Rは前記と同様の意味を有し、複数のRは同一であっても相違していても良い。YはR又はアルケニル基を含有する有機基である。pは1以上の整数、qは100以上の整数である。
【0058】
前記式(4)で示されるポリオルガノシロキサンと前記(c)成分との縮合反応物は、トルエン等の芳香族有機溶媒に前記式(4)で示されるポリオルガノシロキサンと前記(c)成分との混合物を、アルカリ性触媒の存在下で、室温乃至還流下で反応させることにより、得ることができる。なお、この縮合反応に供される(c)成分は一種であっても二種であっても良い。
【0059】
前記式(4)で示されるポリオルガノシロキサン((a’)成分と称することがある。)と反応させる前記(c)成分は、(a’)成分/(c)成分の質量比として20/80
〜80/20の範囲内で、使用されるのが、好ましい。この範囲外である場合に、前記(c)成分が少ないと粘着力が不足することがあり、一方、多いとゴム弾性部材が硬くなると共に弾性力が強くてゴム弾性部材が変形し難くなり、小型電子部品等の被保持物を粘着保持させるのが困難になることがある。
【0060】
前記(d)成分は前記(a)成分と前記(b)成分との架橋反応を促進する触媒であり、白金化合物からなる。この(d)成分である白金化合物として、ハイドロサレーションの触媒に使用される化合物を挙げることができる。
【0061】
この(d)成分として、例えば塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物などを挙げることができる。
【0062】
この(d)成分の配合割合は、前記(a)成分と前記(c)成分との合計量に対して、白金分として1〜5000ppmとするのが好ましく、特に2〜2000ppmとするのが好ましい。
【0063】
この(d)成分の配合割合が前記範囲よりも少ないとゴム弾性部材の硬化性が低下して架橋密度が低くなって保持力が低下することがある。一方、前記範囲よりも多いと硬化が早まり成形可能時間が短くなるため、成形性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0064】
この発明における(e)成分は、シリカ系充填材であり、シリカ、石英紛、珪藻土等が挙げられるが、好ましくはシリカであり、ゴム弾性部材の機械的強度を向上乃至調整することができ、粘着性を付与する(c)成分をゴム弾性部材中に保持して脱離し難くする。
【0065】
好適なシリカとしては、BET法により測定されるその比表面積が50m/g以上、好ましくは100〜400m/gのシリカを挙げることができる。このような比表面積を有するシリカが(e)成分として粘着性組成物に含まれていると、ゴム弾性部材の引っ張り強度等の機械的強度を向上させることができるとともに粘着性を付与する成分が脱離し難くなり、微細な削りカスやのり残りが生じ難くなる。なお、比表面積が400m/gを超えると、流動特性が悪くなりゴム弾性部材の製造に時間がかかるとともにコストが増大してしまう。
【0066】
前記(e)成分として、例えばヒュームドシリカ、焼成シリカ等の乾式法により合成されたシリカ、沈降シリカ及びシリカゲル等の湿式法により合成されたシリカ等を挙げることができる。前記比表面積を有するシリカを得やすいという理由で、ヒュームドシリカ、沈降シリカが好ましい。
【0067】
この(e)成分としてのシリカはその一種を単独で使用することもできるし、また二種以上を併用することもできる。
【0068】
また、必要に応じてシリカの表面を、例えばオルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等の表面処理剤で処理しておくのも好ましい。
【0069】
この(e)成分の配合割合は、前記(a)成分と(c)成分との合計量100質量部に対して1〜30質量部、特に5〜20質量部とするのが好ましい。この(e)成分の配合割合が前記範囲よりも少ないとゴム弾性部材の粘着強度が低下して充分な粘着力が得られないことがあり、また使用時に微細な削りカスやのり残りが生じ易くなることがあり、前記配合割合が前記範囲を超えると、粘着力が低下することがある。
【0070】
この発明における前記粘着性組成物は、前記(a)成分から(e)成分までの他に、この発明の目的を阻害しない範囲で適宜に任意成分を含有していても良い。
【0071】
この任意成分として、前記(a)成分から(e)成分までの各成分を混合する際に架橋反応を抑制することを目的とする反応制御剤を挙げることができる。この反応制御剤としては、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−へキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ペンチン、3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1−へキシン、1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン等を挙げることができる。
【0072】
このような反応制御剤を使用する場合、その配合割合は、前記(a)成分と(c)成分との合計量100質量部に対して0〜5質量部、特に0.05〜2質量部の範囲とするのが好ましい。この反応制御剤の配合割合が前記範囲の上限値を超えると粘着性組成物の硬化時に硬化が困難になることがある。
【0073】
また前記反応制御剤以外の任意成分としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルジフェニルシロキサン等の非反応性のポリオルガノシロキサン、塗工の際の粘度を下げるための溶剤として、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、オクタン、イソパラフィン等の脂肪族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤、染料、並びに顔料等を挙げることができる。
【0074】
この発明における粘着性組成物は、以上の各成分を混合することにより得ることができる。
【0075】
この発明における第1又は第2のゴム弾性部材は、前記第1又は第2の基材の表面に設けられる。通常の場合、前記第1又は第2のゴム弾性部材は、次のようにして、第1又は第2の基材の表面にシート状に形成される。すなわち、基材の一方の表面に前記粘着性組成物を積層して金型等にてプレス成形し、又は金型内に基材をインサートして粘着性組成物を金型内に注入してシート状に成形する。シート状に形成された粘着性組成物の厚みは、通常、0.2〜10mmである。基材表面に設けられた粘着性組成物の硬化は、例えば80〜130℃に3〜40分加熱することにより達成される。もっとも、粘着性組成物の組成等に応じて、硬化条件としての上記温度及び時間が変更されることがある。
【0076】
第1及び第2のゴム弾性部材の表面における十点平均粗さRz(JIS B 0601−1994)は、金型の製品部形成面のブラスト処理等により調整することができる。
【0077】
この発明に係る一組の保持治具は、例えば、小型電子部品の一例であるチップコンデンサ本体の両端に電極を形成してなるコンデンサを製造するために、例えば小型部品保持装置に組み込まれて以下のように使用される。
【0078】
先ず、図1に示されるように、ゴム弾性部材よりなるシート状の粘着保持部5を上に向けた第1の保持治具2の上に立設配置板10を重ねる。この立設配置板10には、上部開口部に環状のテーパ面12が形成されてなる貫通孔11である複数の配設孔が形成されている。この立設配置板10の上面に複数の例えばチップコンデンサ本体13を乱雑状態に頒布する。この立設配置板10に振動を加えると、チップコンデンサ本体13が前記テーパ面12に案内されるようにして前記配設孔に収まる。この立設配置板10の厚みは、チップコンデンサ本体13の軸線方向長さよりも小さく設計されているので、前記配設孔に収まったチップコンデンサ本体13は、その下端面が粘着保持部5に接触し、上端面が前記立設配置板10の上端面から突出した状態になっている。また、粘着保持部5の十点平均粗さRz(JIS B 0601−1994)が5μm以下に設計されているので、粘着保持部5の表面に対して実質的に垂直の状態となってチップコンデンサ本体13が立設する。
【0079】
次いで、図2に示されるように、平坦なプレス板14で、複数のチップコンデンサ本体13全ての突出頭部を、押圧する。そうすると、配設孔に収容されているチップコンデンサ本体13の下端面が粘着保持部5に僅かにめり込むとともに粘着保持部5の粘着力によりチップコンデンサ本体13の下端部が粘着保持部5に粘着する。この場合、粘着保持部5を形成しているゴム弾性部材の硬度(JIS K 6253[デュロメータE])が低くて、好適には5〜60であるので、チップコンデンサ本体13の下端部が粘着保持部5に僅かにめり込むのである。その後、立設配置板10を除去し、第1の保持治具2を回転させて粘着保持部5を下側に向けると、ゴム弾性部材の粘着力により粘着保持部5の下側面に複数のチップコンデンサ本体13が懸垂保持された状態になる。
【0080】
次いで、複数のチップコンデンサ本体13を粘着保持部5に懸垂保持された状態のまま第1の保持治具2を導電ペースト浴(図示せず。)の上方に平行移動し、その後に導電ペースト浴に向かって第1の保持治具2を下降させる。第1の保持治具2を下降させて導電ペースト浴に、複数のチップコンデンサ本体13の下端部を、浸漬させる。浸漬後に、第1の保持治具2を上昇させる。そうすると、図3に示されるように、粘着保持部5に懸垂保持された各チップコンデンサ本体13の下端部に導電ペーストによる電極15が形成される。
【0081】
次いで、第2のゴム弾性部材を粘着保持層として第2の基材上に有して成る第2の保持治具2を用意する。第2の保持治具2における第2のゴム弾性部材は第1の保持治具2における第1のゴム弾性部材よりもその粘着力が大きく、粘着力の差が15〜43g/mmとなるように調整されてなる。
【0082】
第2の保持治具2をその粘着保持部5を上にした状態で配置し、第2の保持治具2における粘着保持部5の上方に、下端部に電極15を塗設した複数のチップコンデンサ本体13を粘着保持部5に懸垂保持する第1の保持治具2を位置させ、第1の保持治具2を第2の保持治具2に向かって下降させる。
【0083】
図4に示されるように、第1の保持治具2を下降させて第2の保持治具2における粘着保持部5に、第1の保持治具2における粘着保持部5に懸垂保持された複数のチップコンデンサ本体13の、電極15の形成された下端部を、粘着させる。
【0084】
このとき、第2の保持治具におけるゴム弾性部材の十点平均粗さRz(JIS B 0601−1994)が5μm以下であるから、チップコンデンサ本体13の下端部が、ゴム弾性部材である粘着保持部5の表面に対して実質的に垂直になった状態で、粘着保持部5に立設する。しかもこの粘着保持部5であるゴム弾性部材の硬度(JIS K 6253 [デュロメータE])が低くて、好適には5〜60であるから、チップコンデンサ本体13の下端部がゴム弾性部材に若干めり込む状態となって粘着保持部5の表面にチップコンデンサ本体13が粘着保持されることになる。
【0085】
次いで、第1の保持治具2を上昇させると、第2の保持治具2における第2のゴム弾性部材の粘着力が第1の保持治具2における第1のゴム弾性部材の粘着力よりも大きいので、第1の保持治具2における第1のゴム弾性部材からチップコンデンサ本体13が離脱する。
【0086】
図5に示されるように、第2の保持治具2における粘着保持部5である第2のゴム弾性部材に電極15を介してチップコンデンサ本体13をそれが立設した状態で粘着保持している第2の保持治具2を、回転させてチップコンデンサ本体13が懸垂保持された状態にする。
【0087】
複数のチップコンデンサ本体を粘着保持部5に懸垂保持された状態のまま第2の保持治具2を導電ペースト浴の上方に平行移動し、その後に導電ペースト浴に向かって第2の保持治具2を下降させる。第2の保持治具2を下降させて導電ペースト浴に、複数のチップコンデンサ本体13の下端部を、浸漬させる。浸漬後に、第2の保持治具2を上昇させる。そうすると、図6に示されるように、第2の保持治具2における粘着保持部5に懸垂保持された各チップコンデンサ本体13の下端部に導電ペーストによる電極15が形成される。
【0088】
第2の保持治具2の粘着保持部5には、チップコンデンサ本体13の両端部に電極15が形成されてなるチップコンデンサ17が、懸垂された状態で粘着保持されている。そこで、粘着保持部5である第2のゴム弾性部材の下側面にストリッパ16を摺接すると、粘着保持部5に懸垂保持されていたチップコンデンサ17が簡単に離脱し、落下する。
【実施例】
【0089】
(実施例1〜10、比較例1〜2)
前記式(1)で示されるポリオルガノシロキサン((a)成分と称することがある。)と、前記式(a)成分と架橋反応可能であり、Si原子に結合した水素原子を一分子中に少なくとも2個有するSiH結合含有ポリオルガノシロキサン((b)成分と称することがある。)と、粘着力向上剤((c)成分と称することがある。)と、前記(a)成分と前記(b)成分との架橋反応を促進する触媒である白金化合物((d)成分と称することがある。)とを含有する市販の粘着性組成物(信越化学工業株式会社製、商品名:KE1214)に(e)成分としてのシリカ系充填材を配合した組成物に、前記(b)成分であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、前記(c)成分であるポリオルガノシロキサン、又は前記(d)成分である白金化合物を更に添加することにより自作の粘着性組成物を調製し、この自作の粘着性組成物を、金属製基板の表面に塗布し、金型によりプレス成形することにより、図7に示されるような、治具本体4の表面にゴム弾性部材からなる粘着保持部5を有して成る多数の保持治具2を作成した。得られたこれらの保持治具一つ一つについて、これら保持治具におけるゴム弾性部材の粘着力、十点平均粗さRz、硬度を測定した。多数の保持治具の中から、粘着力の差がこの発明で規定する粘着力の差の範囲内にある一組の保持治具を選択した。選ばれた一組の保持治具を実施例用の一組の保持治具と称することがある。これらの実施例用の一組の保持治具それぞれにおける粘着力、十点平均粗さRz及び硬度を表1に示した。また、この発明で規定する粘着力の差の範囲外になる一組の保持治具を選んだ。選ばれた一組の保持治具を比較例用の一組の保持治具と称することがある。これらの比較例用の一組の保持治具それぞれにおける粘着力、十点平均粗さRz及び硬度を表1に示した。
【0090】
なお、粘着力の単位はg/mmである。ゴム弾性部材の粘着力は既述した信越ポリマー法により測定され、ゴム弾性部材の十点平均粗さRzはJIS B 0601−1994に準じて、「表面粗さ形状測定器サーフコム1500DX」(商品名 東京精密株式会社製)を用いて測定され、ゴム弾性部材の表面の硬度はJIS K 6253に準じて、「GS−721N」(商品名 株式会社テクロック製)を用いて測定された。
【0091】
実施例用及び比較例用の一組の保持治具につき、以下のようにして小型電子部品の立設状態及び小型電子部品の移行状態を評価した。
【0092】
<立設状態及び移行状態の評価>
一組の保持治具のうち粘着力の小さいほうの保持治具(弱粘着保持治具と称することがある。また、他方の粘着力の大きい方の保持治具を強粘着保持治具と称することがある。)を選び、図1に示されるように、その粘着保持部5の表面に、立設配置板10を載置した。この立設配置板10の、粘着保持部5が接する面とは反対側の表面に、チップコンデンサ本体13を3000個ばら撒き、この弱粘着保持治具2に振動を加えることにより、立設配置板10に開設されている貫通孔11内にチップコンデンサ本体13を落とし込んだ。次いで、前記立設配置板10を静かに上方に持ち上げて粘着保持部4から前記立設配置板10を取り除いた。この立設配置板10を除去した後においても、粘着保持部4上に保持されているチップコンデンサ本体13の立設状態を観察した。チップコンデンサ本体13の立設状態につき以下のように評価して表1に評価結果を示した。
【0093】
評価内容
◎:倒伏したチップコンデンサ本体13の数が全体に対して0.5%未満であった。
【0094】
○:倒伏したチップコンデンサ本体13の数が全体に対して0.5〜1%であった。
【0095】
×:倒伏したチップコンデンサ本体13の数が全体に対して1%以上であった。
【0096】
次いで、強粘着保持治具における粘着保持部を弱粘着保持治具の上方に位置させ、静かに下降させた。弱粘着保持治具における粘着保持部の表面に立設する多数のチップコンデンサ本体13の上端部に、強粘着保持治具における粘着保持部を接触させた。次いで、接触後3秒が経過してから、強粘着保持治具を上方に180mm/min.の速度で持ち上げて弱粘着保持治具から引き離した。引き離された強粘着保持治具におけるチップコンデンサ本体13の保持状態を観察した。保持状態につき以下のように評価して表1に評価結果を示した。
【0097】
評価内容
◎:弱粘着保持治具に取り残されたチップコンデンサ本体13の数が、全体に対して0.5%未満であった。
【0098】
○:弱粘着保持治具に取り残されたチップコンデンサ本体13の数が、全体に対して0.5%〜1%未満であった。
【0099】
×:弱粘着保持治具に取り残されたチップコンデンサ本体13の数が全体に対して1%以上であった。
【0100】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1はこの発明の一実施例である小型電子部品保持装置における粘着保持部にチップコンデンサ本体を立設状態で粘着させる手順を説明するための概略説明図である。
【図2】図2はこの発明の一実施例である小型電子部品保持装置における粘着保持部にチップコンデンサ本体を立設状態で粘着させるためにプレス板で押圧する状態を示す概略説明図である。
【図3】図3はこの発明の一実施例である小型電子部品保持装置における保持治具によりチップコンデンサ本体を懸垂保持する状態を示す概略説明図である。
【図4】図4はこの発明の一実施例である第1の保持治具に懸垂保持されたチップコンデンサ本体を、第2の保持治具における粘着保持部のゴム弾性部材の表面に、チップコンデンサ本体に形成された電極を接触させるように粘着させている状態を示す概略説明図である。
【図5】図5はこの発明の一実施例である第2の保持治具にチップコンデンサ本体を、電極を下に向けて懸垂保持している状態を示す概略説明図である。
【図6】図6はこの発明の一実施例である第2の保持治具に、両端部に電極を塗設して成るチップコンデンサを懸垂保持する状態を示す概略説明図である。
【図7】図7はこの発明の一実施例である第1の保持治具又は第2の保持治具を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0102】
2 保持治具
4 治具本体
5 粘着保持部
10 立設配置板
11 貫通孔
12 テーパ面
13 チップコンデンサ本体
14 プレス板
15 電極
16 ストリッパ
17 チップコンデンサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とその基材の表面に設けられて成るゴム弾性部材のシートとを有する一組の保持治具であって、第1の保持治具における第1のゴム弾性部材と第2の保持治具における第2のゴム弾性部材とは小型電子部品を粘着保持可能な粘着力を備え、かつ第1のゴム弾性部材と第2のゴム弾性部材との粘着力の差が15〜43g/mmであることを特徴とする一組の保持治具。
【請求項2】
一組の保持治具における第1及び第2のゴム弾性部材それぞれの表面の十点平均粗さRz(JIS B 0601−1994)が5μm以下であり、前記第1及び第2のゴム弾性部材それぞれの表面の硬度(JIS K 6253[デュロメータE])が5〜60であることを特徴とする請求項1に記載の一組の保持治具。
【請求項3】
前記第1及び第2のゴム弾性部材が、式(1)で示されるポリオルガノシロキサン(a)と、前記式(1)で示されるポリオルガノシロキサンと架橋反応可能であり、Si原子に結合した水素原子を一分子中に少なくとも2個有するSiH結合含有ポリオルガノシロキサン(b)と、粘着力向上剤(c)と、前記ポリオルガノシロキサン(a)と前記SiH結合含有ポリオルガノシロキサン(b)との架橋反応を促進する触媒である白金化合物(d)とシリカ系充填材(e)とを含有する粘着性組成物を硬化してなる硬化物である前記請求項1又は2に記載の一組の保持治具。
【化1】

[ただし、式(1)において、Rは不飽和結合を有することのない1価の炭化水素基であり、式(1)における複数のRは互いに同一であっても相違していても良い。Xはアルケニル基を含有する有機基であり、式(1)における複数のXは互いに同一であっても相違していても良い。aは0〜3の整数、bは0〜3の整数、mは0以上の整数、nは100以上の整数である。a、b、及びmは同時に0となることがない。]
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれか一項に記載の一組の保持治具を備えた小型部品保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−242811(P2007−242811A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61704(P2006−61704)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】