説明

一般的な感染症への耐性改善用のラクトバシラス・カゼイを含む組成物

一般的な感染症に対する、特に呼吸器系の一般的な感染症に対するタバコ使用者の耐性 を改善するための、及び呼吸器系の一般的な感染症の場合に、個体の細胞性免疫応答を 改善するための、ラクトバシラス・カゼイ株の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な感染症への耐性改善用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
下気道感染症、上気道感染症及び胃腸炎として定義される一般的な感染症(CID)は、一般住民に固有であり、相当な苦痛の原因となる。
【0003】
各々のカテゴリにおける種々のタイプの一般的な感染症及び診断に用いられるそれらに主に付随する症状を、下記の表1に要約する。
【0004】
【表1】

【0005】
2002年において、普通の感冒は、仕事及び学校に行けない数百万日についての原因であり、米国における2億7000万回の医師の訪問の原因であり(Greenberg 2002)、Feeneyは、呼吸器系障害及び胃腸炎が、ロンドンにおける全連続休暇の50〜60%についての原因であることを示した(Feeney Aら、1998)。
【0006】
更に、上気道感染症は、小児及び成人の両方において、不適切な抗生物質の使用の主な理由であり、抗生物質への耐性の拡散の増加をもたらす。最後に、ライノウイルスによって誘導される普通の感冒のような、いくつかの感染症について、抗ウイルス剤が認可されていない(Greenberg 2002)。然るに、一般的な感染症は、公衆衛生の観点から、社会経済学的重要性を伴う大きな関心事である。
【0007】
ストレスは、免疫系へのその作用が原因で、感染するリスクの増加に作用できる要因の1つである。実際、心理的なストレスが、種々のシグナルの制御不全を引き起こすことによって、免疫応答をダウンレギュレートできることを示している研究がある。
【0008】
心理的なストレスを受けて免疫系を調節するいくつかの「経路」が証明されている。例えば、自律神経系による一次リンパ節組織及び二次リンパ節組織の直接的な神経支配がある。これらの「経路」は、免疫系の細胞性構成要素と相互作用し、影響を与える生物学的媒介物質を産生することによって機能する(Yang EV & Glaser R. 2000)。したがって、Yang及びGlaserは、心理的なストレサーが、細胞性免疫応答を調節する能力を有し、感染性の病原体への個体の感度の増加をもたらすことができると証明した(Yang EV & Glaser R. 2000)。
【0009】
いくつかの状況及び活動がストレスを生むことができ、そのうち労働活動は特別な関心事である。実際、業務上ストレスの多い状況の感染症への影響は、特にシフトワーカーにおいて行われた研究によって証明されている。流行病学の研究は、普通の感冒、インフルエンザ様疾病及び胃腸炎の発生が、種々の労働スケジュールの従業者間で異なっていることを証明した。シフトワークは、3つの一般的な感染症すべてについて、高い発病率と著しく関連していた(Mohren DCら、2002)。数例の研究は、シフトワークに関連して免疫機能が抑制されることを報告しており、このことにより、感染症への感度が増加することが説明され得る(Curti Rら、1982;Kobayashi Fら、1997)。
【0010】
一般的な感染症に対して潜在的に活性な製品のうち、プロバイオティクスは、特に成人労働者において、興味深い効果を示している。例えば、ラクトバシラス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)ATCC55730は、呼吸器系又は胃腸の感染症によって引き起こされる病気による短期休暇を減少させること、したがって、労働現場の健康の改善を示している(Tubeliusら、2005)。他の研究では、プロバイオティクスの抗感染性効果が、免疫のパラメータの調節と相関している。成人において、プロバイオティクスの混合物(すなわち、ラクトバシラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)PA 16/8、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)SP 07/3及びビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)MF 20/5)は、普通の感冒感染症の重篤度及び継続期間、並びに付随する発熱の日数を減少させることが報告された。この研究では、疾患の結果の改善が、プロバイオティクスを消費したグループにおいて、細胞傷害性CD8 T細胞及びサプレッサーCD8 T細胞の著しい増加に関連した(De Vreseら、2005)。
【0011】
DANONEは、ラクトバシラス・カゼイ(Lactobacillus casei)DN‐114 001及び特徴的なヨーグルト培養物(ラクトバシラス・ブルガリクス(Lactobacillus burgaricus)及びストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus))を含むプロバイオティクスの乳飲料であるアクチメル(登録商標)を開発している。
【0012】
アクチメル(登録商標)の消費は、胃腸の疾患の結果への有益な効果を有すると報告された。デイケアセンターに通う小児において、アクチメル(登録商標)を補給すると、ヨーグルトを補給した対照グループに比べて、急性の下痢の発病率が減少した(Pedoneら、2000)。同様の食事管理で、急性の下痢の継続期間の著しい減少も、小児において見られた(Pedoneら、1999、Agarwalら、2001)。
【0013】
別の研究(Cobo Sanzら、2006)では、20週間アクチメルを1日2回摂取した3〜12歳の小児が、いくつかの感染性障害、特に下気道感染症(気管支炎又は肺炎)の継続期間及び発病率を減少させる傾向にあることを示した。
【0014】
研究は、高齢者の集団においても行われた。胃腸及び呼吸器系の両方の冬季感染症の発病率、継続期間及び付随する発熱に対する3週間のアクチメル(登録商標)の消費の効果が調査された。この研究では、アクチメル(登録商標)の消費は、対照グループと比べて、疾患の継続期間を減少させた(Turchetら、2003)。
【0015】
アクチメル(登録商標)は、ストレスを受けた被験者を含むいくつかの集団におけるいくつかの免疫細胞の数又は活性を調節することも示された。アクチメルの消費は、大学の試験のストレスに付された18〜23歳の患者において、いくつかの免疫のパラメータ(全リンパ球、CD56+細胞、すなわち、ナチュラルキラー+T細胞傷害性)を増加させるか、又はその減少を阻害する(Marcosら、2004)。同様に、身体的な活動が、急性又は慢性的な免疫系への影響を有する、高度に訓練されたアスリートのモデルでは、NK細胞の数の減少が、乳の消費後よりも、アクチメル(登録商標)の消費後に、著しく低かった(Pujolら、2000)。8週間の製品の消費で、中年成人の集団(51〜58歳)において行われた他の研究は、アクチメル(登録商標)が、NK細胞の細胞傷害活性(Parraら、2004a;Parraら、2004b)及び単球の酸化的破裂活性(Parraら、2004b)の両方を増加させることを示した。したがって、それらの結果は、アクチメル(登録商標)が、免疫細胞の部分集合のサイズ又は特定の活性の両方を増加させることによって、細胞性免疫、特に先天性のものを調節できることを示した。
【0016】
インフルエンザウイルスに感染した仔マウス(Yasuiら、2004)、及びヒトの被験者、喫煙常習者(Morimotoら、2005)、及び健常な被験者(Nagaoら、2000;Takedaら、2007)におけるNK細胞活性の調節は、ラクトバシラス・カゼイ株Shirotaについても報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明者らは、今回、一般的な感染症に対する成人の耐性へのアクチメル(登録商標)の効果を、特にストレスの多い状況で働いており、免疫能力のある65歳未満の成人において調査した。下記の実験の部分において示されるように、本発明者らは、アクチメル(登録商標)の消費の効果が、非喫煙者においてよりも、タバコ使用者においてより大きいことを示した。更に、本発明者らは、一般住民において、アクチメル(登録商標)の規則的な摂取が、CIDの場合に、NK細胞及び好中球性白血球の両方が作用するために、より強い免疫応答をもたらすことを示している。
【課題を解決するための手段】
【0018】
それゆえ、本発明は、一般的な感染症、特に呼吸器系の一般的な感染症に対する、タバコ使用者、特に喫煙者の耐性を改善するための組成物の製造のための、ラクトバシラス・カゼイ株の使用に関する。それは、呼吸器系の一般的な感染症、例えば鼻咽頭炎又は咽頭炎の場合に、個体の細胞性免疫応答、特にNK細胞の応答及び/又は好中球性白血球を改善するための組成物の製造のための、ラクトバシラス・カゼイ株の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】
【発明を実施するための形態】
【0020】
好ましくは、前記組成物は、65歳未満の患者に投与されることを意図される。
【0021】
本発明の好ましい実施態様によれば、前記ラクトバシラス・カゼイ株は、ラクトバシラス・カゼイ亜種パラカゼイ(Lactobacillus casei ssp. paracasei)株、好ましくは、例えばEP0794707又はEP1283714に記載される整理番号I‐1518の下でCNCMに寄託された株である。
【0022】
有利には、前記組成物は、少なくとも1×105c.f.u./ミリリットルの前記ラクトバシラス・カゼイ株、より好ましくは、少なくとも1×107c.f.u./ミリリットルの前記ラクトバシラス・カゼイ株を含む。該株は、ラクトバシラス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属及びビフィドバクテリウム属から選択される1以上の他の乳酸菌とともに用いることができ、好ましい乳酸菌は、ラクトバシラス・ヘルベチクス(Lactobacillus herveticus)、ラクトバシラス・デルブルエッキ亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subspecies bulgaricus)、ラクトバシラス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバシラス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)及び/又はビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)を含む群から選択されるものである。特に好ましい実施態様では、前記ラクトバシラス・カゼイ株は、ラクトバシラス・ブルガリクス及び/又はストレプトコッカス・サーモフィラスのバクテリアとともに用いられる。
【0023】
前記組成物は、特に食物又は食品サプリメントの形態にあることができる。好ましくは、前記組成物は、発酵乳組成物である。
【0024】
本発明は、一般的な感染症に対する耐性を改善させるためのラクトバシラス・カゼイを含む組成物の特性を説明する実施例について言及する以下の更なる記載によって更に説明される。
【実施例】
【0025】
実施例1:材料及び方法
1.1:研究された集団
人口統計学:
研究の集団の特徴は、下記の表2及び表3に要約される。
【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
除外及び早期の研究の離脱
ITTの集団において、合計で38名の被験者(4%)は、研究の終了前に離脱した。一方で、PP集団に含まれた全ての被験者は、(規定によって)研究を完了した。
【0029】
【表4】

【0030】
1.2.研究用製品の素性
製品の特徴
この研究中に与えられた製品は、新規な乳製品のファミリーに属する。本研究は、活性製品としてアクチメル(登録商標)を用いることによって行われた。
表5は、活性製品及び対照製品の組成を提供する。
二重盲目の方法を維持するために、活性製品及び対照製品の外観、包装及び風味は同一とした。
活性製品(アクチメル(登録商標))は、加糖され、着香された発酵乳飲料である。
対照製品は、加糖され、着香された非発酵酸性乳飲料である。
【0031】
【表5】

【0032】
1.3.研究計画
研究計画の記載
研究は、1施設で行われ、活動のタイプによる層化でランダム化され、二重盲目で、2つの対比グループ:「アクチメル(登録商標)製品」対「対照製品」によって制御された。
図1は、研究工程の時間調整(*:「血液の生物学的パラメータ」についてのサブグループの参加に依存する)を示す。
【0033】
スクリーニングフェーズ(V1〜V2)の後に、実験フェーズを、2つの部:製品消費フェーズ(V2〜V5:12週間)と、製品を消費しない追跡(follow-up)フェーズ(V5〜V6:4週間)とに分ける。
各被験者について、合計の研究期間は、4.5か月(2週間の食事制限、12週間の製品消費、4週間の追跡)であった。
【0034】
評価基準
研究の一次評価基準は、12週間の製品消費期間中に被験者によって報告された全てのCIDの数であった。この研究では、CIDは3つの主な感染症のカテゴリとして規定した:
・上気道感染症(URTI):鼻咽頭炎、咽頭炎、副鼻腔炎、耳炎
・下気道感染症(LRTI):気管支炎、肺炎など
・胃腸管の感染症(GITI)。
【0035】
一次評価変数
一次:
研究製品消費の12週間に報告された全てのCIDの数のグループ間での比較。
二次:
‐4週間の追跡中及び全研究フェーズ[消費フェーズ+追跡]中に報告された全てのCIDの数のグループ間での比較
‐12週間の研究製品消費中、4週間の追跡中及び全研究フェーズ[消費フェーズ+追跡]中の、URTI又はLRTI又はGITI又は各タイプのCIDの数のグループ間での比較
‐12週間の研究製品消費中、4週間の追跡中及び全研究フェーズ[消費フェーズ+追跡]中に、少なくとも1つのCID(任意のタイプ)、又は1つのURTI若しくはLRTI若しくはGITI、又は1つのタイプのCID(例えば:鼻咽頭炎又は咽頭炎)を罹患する被験者の数のグループ間での比較。
‐12週間の研究製品消費中、4週間の追跡中及び全研究フェーズ[消費フェーズ+フォローアップ]中の、及びCID(任意のタイプ)、又はURTI若しくはLRTI若しくはGITI、又は各タイプのCIDの場合の、各グループにおいての数回の計画された訪問でのヘモグラムの進展のグループ間の比較。
‐12週間の研究製品消費中の、4週間の追跡中及び全研究フェーズ[消費フェーズ+追跡]中の、全てのCID(任意のタイプ)、又はURTI若しくはLRTI若しくはGITI、又は各タイプのCID中の発熱の日数のグループ間の比較。
‐12週間の研究製品消費中、4週間の追跡中及び全研究フェーズ[消費フェーズ+追跡]中の、全てのCID(任意のタイプ)、又はURTI若しくはLRTI若しくはGITI、又は各タイプのCIDの場合の(被験者の一部について)数回の計画された訪問及び補足的な訪問における、免疫系の血液のパラメータの各グループの進展のグループ間の比較。
【0036】
1.4.統計的方法
統計及び分析の計画
統計的分析計画を査読(Blind Review)の前に立案した。
統計的分析は、欧州医薬評価局(ICH Topic E9‐step 4‐5 February 1998)の推奨を組み込んだ。
【0037】
サンプルサイズの決定
サンプルサイズの決定を一次結果(製品消費の3か月以内に起こる累積CID数)に基づいて行った。種々の感染症の併発(例えば上気道感染症及び胃腸炎)の複数の事象は、たとえそれらが同一の感染性症状の発現において生じたとしても、別々に計上して加算した。
【0038】
所与の時間内でのシフトワーカーの間の一般的な感染症の正確な発生率は、季節状況によって大いに変動し得るため、容易に予測できなかった。しかしながら、対照グループにおいて、平均1.5の事象数が観察できると推定した。アクチメル(登録商標)グループ(例えば期待された平均事象数がアクチメル(登録商標)のランダム化されたグループにおいて1.275であった)において、15%の相対的減少を予測した。感染症の累積事象数の分布は、過分散ポワソン分布であると推定した;いくらかの過分散が予測された。なぜなら、被験者において事象の発生が独立でないからである。
【0039】
対照グループにおいて3か月間で1.5の予測される事象の割合で、かつ中程度の過分散(1.1のスケールパラメータ)を推定して5%のαレベルでのポワソン回帰両側検定を用いて、3か月の研究に残っているそれぞれの部門の約450名の被験者が、少なくとも80%の検出力で15%の減少率を検出することが必要であると予測した。5%の被験者のドロップアウト率を推定し、したがって、それぞれの部門に約500名の被験者を含むことが必要であった。したがって、合計で1000名の被験者をランダム化した。
【0040】
実施例2:臨床結果
2.1:喫煙者亜集団における全てのCIDの数
表6に示されるように、アクチメル(登録商標)グループに有益な、研究製品消費フェーズ中の全てのCIDの数への、統計的に有意な製品の効果が、喫煙者亜集団においてみられたが(アクチメル(登録商標)について、平均=0.6 対 対照について0.8;ITT集団についてp=0.033)、この効果は、非喫煙者集団においては観察されなかった(ITT集団についてp=0.687)(表7)。
【0041】
【表6】

【0042】
【表7】

【0043】
2.2:製品消費フェーズ中のCIDの発生
【0044】
【表8】

【0045】
実施例3:生物学的結果
全ての生物学的データについて下記に示される結果は、共分散解析から来る。より正確には、統計的解析は、(ICHの推奨に従って)ベースライン値に調整されたベースラインからの変化である。顕著な変化を:各被験者について計算したCIDについての生物学的値‐ベースラインにおける生物学的値として表し、統計モデルを入手可能なデータに適用する。更に、ベースラインの記載は、CIDを伴うITT集団全体についての情報を提供する。
【0046】
3.1.ナチュラルキラー細胞:NK細胞CD16+/56+/3‐は、CIDの場合に、ベースラインから変化する(パラメータ=NK細胞CD16+/56+/3‐の絶対数)
臨床的に重要で、統計的に有意により高いNK細胞CD16+/56+/3‐の絶対数は、ITT集団において、全てのCID(ベースラインからの変化=アクチメル(登録商標)について+45.048細胞/μl 対 対照について‐14.500細胞/μl;p<0.001)、URTI(p=0.016)、LRTI(p=0.009)、鼻咽頭炎(p=0.011)及び咽頭炎(p=0.032)について、CIDの場合の製品消費フェーズ中のアクチメル(登録商標)グループにおいて見られた(表9)。
【0047】
【表9】

【0048】
本発明者らは:
・CIDの場合のアクチメル(登録商標)グループにおいて、ITT集団において製品消費フェーズ(ベースラインからの変化=アクチメル(登録商標)について+1.95% 対 対照について+0.08%;p=0.007、ベースライン値について=アクチメル(登録商標)について10.35+/‐4.67 対 対照について9.56+/‐4.29)中に全てのCIDについて、及び全研究フェーズ(p=0.008)中にLRTIについて、臨床的に重要で統計的により高いNK細胞CD16+/56+/3‐のパーセンテージ、
【0049】
・CIDの場合のアクチメル(登録商標)グループにおいて、ITT集団において製品消費フェーズ(基礎活性についてp=0.047;IL‐2で刺激された活性についてp=0.013)中に咽頭炎について、統計的に有意により高い溶菌活性
も観察した(データは示さず)。
【0050】
それゆえ、NK細胞(CD16+/56+/3‐)の絶対数は、グループ間で統計的に異なり、CIDの場合にベースラインからの変化によりアクチメル(登録商標)グループでより高くなっているようである。これは、全てのCID、URTI及びLRTI、並びに鼻咽頭炎及び咽頭炎について、製品消費フェーズ中に見られた。全ての結果は、CID中に回収されたサンプルだけが考慮されるときに観察された(全て有意なPを有する)。
【0051】
3.2.CIDの場合の製品消費フェーズ中の白血球及び好中球のベースラインからの変化
臨床的に重要で、統計的に有意により高い白血球の絶対数は、ITT集団において、CIDの場合に、全てのCID(p=0.034)及び鼻咽頭炎(p=0.002)について、製品消費フェーズ中のアクチメル(登録商標)グループ[ベースラインからの変化=アクチメル(登録商標)について+1248細胞/μl 対 対照について+165細胞/μl]において見られた。
【0052】
【表10】

【0053】
本発明者らは、CIDの場合に、全てのCIDについて全研究フェーズ(p=0.037)中の、及びITT集団において、鼻咽頭炎について製品消費フェーズ(p=0.002)中の、臨床的に重要で、統計的に有意により高い好中球の絶対数 対 アクチメル(登録商標)グループ[アクチメル(登録商標)について+1050細胞/μl 対 対照について+210細胞/μl]におけるベースラインも観察した。鼻咽頭炎の場合、平均変化値は、それぞれ3740及び3800のベースライン値について、アクチメル(登録商標)グループにおいて+1279細胞/μl及び対照グループにおいて‐231細胞/μlであった(表11)。
【0054】
臨床的に重要で、統計的に有意により高い好中球のパーセンテージは、CIDの場合に、全てのCIDについて全研究フェーズ(p=0.038)中の、及びITT集団において、鼻咽頭炎(p=0.017)について製品消費フェーズ中のアクチメル(登録商標)グループ[ベースラインからの変化=アクチメル(登録商標)について+5.3% 対 対照について+1.5%]において見られた(表12)。前記白血球数の変動は、ヘモグラム解析において他のどの細胞の部分集合も著しく変更されなかったことから、したがって、好中球数の変更に起因する。
【0055】
【表11】

【0056】
【表12】

【0057】
結論
喫煙者のような呼吸器系感染症に対して感受性が高い亜集団において、アクチメル(登録商標)は全てのCIDの数を減少させた。全体的な研究集団において、統計的に有意な差(表8)も、研究製品消費フェーズ中(ITT集団及びPP集団の両方において)のCIDの発生に、アクチメル(登録商標)に有利に観察された。
【0058】
CIDの場合、アクチメル(登録商標)の消費は、感染症の最初の発生までの時間も増加させ、付随する発熱の累積期間を減少させた(発熱については全研究フェーズ中のみ)。
【0059】
これらの臨床効果は、アクチメル(登録商標)が血液の白血球数、好中球数及びNK細胞数を著しく増加させたために、いくつかの免疫細胞のサブセットへのアクチメル(登録商標)の効果に関連する。
【0060】
免疫パラメータへのアクチメル(登録商標)の効果は、CIDの場合に臨床結果を改善するその観察された能力と一致しており、このことは、アクチメル(登録商標)の作用機序を更に調査するための興味深い基礎となる結果を構成し得る。
【0061】
【表13】

【0062】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タバコ喫煙者における呼吸器系の一般的な感染症の治療又は予防のための組成物の製造のための、ラクトバシラス・カゼイ株の使用。
【請求項2】
前記タバコ喫煙者が65歳未満である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
呼吸器系の一般的な感染症を罹患する個体のナチュラルキラー細胞の応答を刺激するための組成物の製造のための、ラクトバシラス・カゼイ株の使用。
【請求項4】
前記個体が65歳未満である請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記呼吸器系の一般的な感染症が、鼻咽頭炎又は咽頭炎である請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記ラクトバシラス・カゼイ株が、ラクトバシラス・カゼイ亜種パラカゼイ株である請求項1〜5のいずれか1項の使用。
【請求項7】
前記ラクトバシラス・パラカゼイ株が、寄託番号I‐1518の下でCNCMに寄託された株である請求項6の使用。
【請求項8】
前記組成物が、ミリリットル当たり少なくとも1×105c.f.u.の前記ラクトバシラス・カゼイ株を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記組成物が、ミリリットル当たり少なくとも1×107c.f.u.の前記ラクトバシラス・カゼイ株を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
組成物が、ラクトバシラス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属及びビフィドバクテリウム属から選択される少なくとも1つのバクテリアを更に含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記組成物が、ラクトバシラス・ブルガリクス及び/又はストレプトコッカス・サーモフィラスのバクテリアを含む請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記組成物が、食品の形態にある請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記組成物が、発酵乳組成物である請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2011−530578(P2011−530578A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522566(P2011−522566)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006840
【国際公開番号】WO2010/018461
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(507394503)
【氏名又は名称原語表記】COMPAGNIE GERVAIS DANONE
【住所又は居所原語表記】17,Bd Haussmann,F−75009 Paris,FRANCE
【Fターム(参考)】