説明

一酸化炭素による感染症の処置

本発明は、感染症を処置するための一酸化炭素(CO)の使用に関する。本発明はまた、新規な一酸化炭素放出分子(CORM)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症を処置するための一酸化炭素の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
診断と治療の著しい進歩にもかかわらず、感染症は世界中で罹患率および死亡率の主要な原因であり続けている。積極的な管理を行っても、多くの重篤な感染症や敗血症の患者は合併症を発症し、幾人かは死亡する。敗血症は米国において毎年200,000人の命を奪う(Angus, D. C. & Wax, R. S. (2001) Crit Care Med 29, S109-16)。感染症の負の健康効果は、感染症に対する新しい処置法の同定についての強い動機を提供する。
【0003】
一酸化炭素(CO)は、主として、ヘムオキシゲナーゼ(HO)酵素によって触媒されるヘムの酸化により、ヒトの身体で内因的に産生される。HOの誘発およびその結果のCO産生の増加は、血管緊張低下および免疫系における神経伝達において、重要な生理学的役割を果たす。COガスおよびCO放出分子(CORM)の外因性投与は、血管効果を誘発し、哺乳類細胞の低酸素−再酸素化障害を軽減することが示された。特に、その抗炎症、抗アポトーシス、および抗増殖特性により、COは、臓器や細胞の移植中に虚血再還流障害を抑制し、強力な細胞保護効果を提供する。これらの、哺乳類におけるCOの生理学および生物学に関する所見にもかかわらず、感染症を引き起こす細菌などの微生物に対するCOの作用については、何も知られていない。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、COが、特に有機金属CORMを介して送達された場合に、3種の細菌、すなわち大腸菌(E. coli)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、およびヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)(H. pylori)の細胞死を引き起こすとの驚くべき発見に基づく。これらの所見は、COを抗感染症剤として使用可能であることの証拠を提供する。
いかなる特定のメカニズムまたは理論に束縛されることを意図することなく、COは、微生物(例えば細菌)中の遷移金属含有タンパク質に結合することができ、その生物学的機能の構造的修飾および変化を生じさせ、これがおそらく、微生物に対するCOの毒性効果を説明すると考えられている。
【0005】
したがって、本発明は、1つの側面において、感染症を処置するためにCOを対象に投与することを含む。感染症の処置のための医薬の製造における、COの使用もまた意図される。COは溶解ガスの形態でもあってもよく、担体錯体中に捕捉されていてもいなくてもよい。いくつかの好ましい態様においては、COを、CO放出分子(CORM)などのプロドラッグの形態で投与する。多数のCORMが本明細書に記載されており、これらは本発明の実践に好適である。本発明はまた、1つの側面において、物質の新規な組成物を含む。
本発明の1つの側面により、感染症を有するか、有するリスクのある対象を処置する方法が提供される。本方法は、かかる処置が必要な対象に対して、感染症を処置するためのCOの有効量を投与することを含む。いくつかの重要な態様において、COは、CORMなどのプロドラッグの形態である。重要な態様において、CORMは有機金属化合物または有機化合物である。
【0006】
本発明の他の側面において、感染症を処置する方法が提供される。方法は、感染症を有するかまたは有するリスクのある対象に、該感染症の処置の目的で、COの有効量を摂取するよう指示することを含む。対象は、COの有効量を、CORMの形態で摂取するように指示されてもよい。いくつかの態様において、対象はさらに、CO以外の抗感染症剤を摂取するように指示される。
本発明の他の態様により、感染症を有するかまたは発症するリスクのある対象を処置する方法が提供される。方法は、前記対象に対してCORMを含むパッケージを提供すること、および前記対象に対して、CORMが、感染症を処置するためであることを指示する表示を提供することを含む。いくつかの態様において、表示は、CORMを含むバイアルの上にある。いくつかの態様において、表示は、CORMを含むパッケージに付随している。
【0007】
さらに他の態様において、医療処置用製品が提供される。製品は、CORMおよび、CORMが感染症の処置用であることを指示する表示を含むパッケージを含む。いくつかの態様において、CORMはビン内にある。表示は、ビンの上のラベル上にあってよい。いくつかの態様において、パッケージは、CORM以外の抗感染症剤をさらに含む。
本発明の他の態様により、CORMの、感染症の処置用の医薬の製造における使用が提供される。
本発明のさらに他の態様により、構造:
【化1】

を有する化合物、またはその塩が提供される。
【0008】
本発明のさらに他の態様により、構造:
【化2】

を有する化合物、またはその塩が提供される。
【0009】
本発明のさらに他の態様により、構造:
【化3】

を有する化合物、またはその塩が提供される。
【0010】
本発明の他の態様により、医薬組成物が提供される。医薬組成物は、式Iの化合物、式IIの化合物、または式IIIの化合物、および薬学的に許容し得る担体を含む。医薬組成物はさらに、式Iの化合物および/または式IIの化合物および/または式IIIの化合物以外の、1種または2種以上の剤を含んでよい。いくつかの態様において、剤は、感染症を処置する剤(例えば、抗感染症剤)であってよい。いくつかの態様において、感染症は細菌により引き起こされる。いくつかの態様において、細菌はピロリ菌である。ピロリ菌感染は、胃炎、十二指腸潰瘍、胃潰瘍、胃癌、または非潰瘍性消化不良を引き起こしうる。
いくつかの態様において、剤は、抗生物質、Hブロッカー、プロトンポンプ阻害剤、細胞保護剤、またはこれらの組合せである。抗生物質は、メトロニダゾール、テトラサイクリン、アモキシシリン、クラリトロマイシン、フラゾリドン、シプロフラキシン、リファブチン、またはレボフラキシンであってよい。
【0011】
ブロッカーの例は、シメチジン、ファモチジン、ニザチジン、ラニチジン、およびラニチジンビスマスを含む。プロトンポンプ阻害剤は、オメプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾール、パントプラゾール、またはラベプラゾールを含んでよい。細胞保護剤は、次サリチル酸ビスマス、次クエン酸ビスマス、次硝酸ビスマス、コロイド状ビスマスサブシトレート、またはスクラルファートを含んでよい。いくつかの態様において、剤は、ヘリダック、プレブパック、またはピレラである。
本発明のさらに他の側面により、ピロリ菌感染症を有するかまたはこれを発症するリスクのある対象を処置する方法が提供される。方法は、かかる処置を必要とする対象に対して、感染症を処置するために、式Iの化合物、式IIの化合物、または式IIIの化合物、および薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物の有効量を投与することを含む。ピロリ菌感染症は、胃炎、十二指腸潰瘍、胃潰瘍、胃癌、または非潰瘍性消化不良を引き起こすことができる。
【0012】
以下の態様は、他の規定がない限り、本明細書に記載の発明の種々の側面に均等に適用される。
いくつかの好ましい態様において、対象は感染症を有する。いくつかの態様において、対象は、他の点ではCOによる処置を必要とする兆候を有さない。
いくつかの態様において、COはCORMとして投与される。CORMは、有機金属化合物または有機化合物であってよい。いくつかの態様において、CORMはアルギン酸溶液である薬学的に許容し得る担体中に製剤化される。
CORMは、経口、舌下、口腔内、鼻腔内、静脈内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、皮下、経皮、局所、直腸内、膣内、滑液嚢内、または硝子体内に投与してよい。いくつかの好ましい態様において、CORMは、経口、静脈内、筋肉内、または局所的に投与される。
【0013】
いくつかの態様において、CORMは、構造:
【化4】

を有する化合物、もしくはその塩、または構造:
【化5】

を有する化合物、もしくはその塩、または構造:
【化6】

を有する化合物、もしくはその塩、または構造:
【0014】
【化7】

を有する化合物、もしくはその塩、または構造:
【化8】

を有する化合物、もしくはその塩、または構造:
【化9】

を有する化合物、もしくはその塩、または構造:
【化10】

を有する化合物、もしくはその塩である。
【0015】
感染症は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、抗酸菌、スピロヘータ、放線菌、ウイルス、真菌、寄生虫、ウレアプラズマ種、マイコプラズマ種、クラミジア種、またはニューモシスティス種により引き起こされるものであってよい。
グラム陽性菌は、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、炭疽菌、コリネバクテリウム種、類ジフテリア種、リステリア種、エリジペロスリックス属種、またはクロストリジウム種であってよい。
グラム陰性菌は、ヘリコバクターピロリ、ナイセリア属種、ブランハメラ属種、大腸菌種、エンテロバクター種、パスツレラ属種、プロテウス属種、シュードモナス種、クレブシエラ種、サルモネラ種、赤痢菌種、セラチア種、アシネトバクター種、ヘモフィルス種、ブルセラ種、エルシニア種、フランシセラ属種、パスツレラ属種、コレラ菌種、フラボバクテリウム種、シュードモナス種、カンピロバクター種、バクテロイデス種、フゾバクテリウム種、カリマトバクテリウム属種、ストレプトバシラス属種、またはレジオネラ種であってよい。
【0016】
抗酸菌は、マイコバクテリウム属種であってよい。スピロヘータの例は、トレポネーマ属種、ボレリア種、およびレプトスピラ種を含む。
ウイルスは、レトロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、サイトメガロウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス、カリシウイルス、トガウイルス、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス、フラビウイルス、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、水疱性口炎ウイルス、狂犬病ウイルス、フィロウイルス、エボラウイルス、パラミクソウイルス、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス、オルソミクソウイルス、インフルエンザウイルス、ハンタウイルス、ブニヤウイルス、フレボウイルス、ナイロウイルス、アレナウイルス、出血熱ウイルス、レオウイルス、オルビウイルス、ロタウイルス、ビルナウイルス、ヘパドナウイルス、B型肝炎ウイルス、パルボウイルス、パポバウイルス、パピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、イリドウイルス、アフリカ豚コレラウイルス、デルタ肝炎ウイルス、非A非B型肝炎ウイルス、C型肝炎、ノーウォークウイルス、アストロウイルス、または未分類のウイルスであってよい。
【0017】
真菌の例は、クリプトコッカス種、ヒストプラズマ種、コクシジオイデス種、パラコクシジオイデス種、ブラストミセス種、クラミジア種、カンジダ種、スポロトリクス属種、アスペルギルス種、およびムコール症の真菌を含む。
寄生虫は、プラスモディウム種、トキソプラズマ種、バベシア属種、リーシュマニア属種、またはトリパノソーマ属種であってよい。
いくつかの好ましい態様において、感染症は、大腸菌、黄色ブドウ球菌、またはピロリ菌により引き起こされる。
【0018】
本発明の限定の各々は、本発明の種々の態様を包含することができる。したがって、任意の1つの要素または要素の組合せを含む本発明の限定の各々は、本発明の各側面に含むことができると予想される。本発明は、他の態様も可能であり、種々の方法において実践され、実施されることが可能である。また、本明細書で用いる言語表現および専門用語は、説明目的のためであり、限定するものとみなされるべきではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する」、「含む、含有する(containing)」、「関与する」、およびこれらの変形は、その後に挙げられた項目およびその均等物、ならびに追加の項目を包含することが意図される。
本発明のこれらおよび他の側面は、本発明の詳細な説明と関連して以下にさらに詳細に記載される。
この出願に同定される全ての文書は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1はCOガスの、大腸菌および黄色ブドウ球菌の生存度(viability)に対する効果を示す図である。
【図2】図2は例1で用いたCORMの化学構造を示す図である。
【図3】図3はCORM−2の、大腸菌および黄色ブドウ球菌細胞の生存度に対する効果を示す図である。
【図4】図4はCORM−3の、大腸菌および黄色ブドウ球菌細胞の生存度に対する効果を示す図である。
【図5】図5は大腸菌の、式IVの化合物および式Vの化合物への感受性を示す図である。
【図6】図6は黄色ブドウ球菌の、式IVの化合物および式Vの化合物への感受性を示す図である。
【図7】図7はCORM−2のピロリ菌の生存に対する殺菌効果を示すヒストグラムである。
【図8】図8は式IIの化合物および式IIIの化合物の、ピロリ菌生存に対する殺菌効果を示すヒストグラムである。
【0020】
図1は、COガスの、大腸菌および黄色ブドウ球菌の生存度(viability)に対する効果を示す。(A)大腸菌および黄色ブドウ球菌の生存を示すヒストグラム。細胞は、それぞれMSおよびLB培地中、微好気性条件下で増殖させ、COガス流に15分間暴露した。(例1の材料および方法を参照)。(B)COガス(+)または窒素ガス(−)に4時間暴露後に収集した培養物の、表示された連続希釈物をプレートすることにより、感受性試験を実施した。
図2は、例1で用いたCORMの化学構造を示す。
図3は、CORM−2の、大腸菌および黄色ブドウ球菌細胞の生存度に対する効果を示す。(A)大腸菌および黄色ブドウ球菌の生存を示すヒストグラム。大腸菌細胞は、MS中、好気性および嫌気性条件下で増殖させ、250μMのCORM−2で処置した。黄色ブドウ球菌細胞は、好気的および微好気的にLB培地中で増殖させ、250μMのCORM−2に暴露した。(B)CORM−2に対する培養物の感受性の試験結果(例1の材料および方法を参照)。培養物の表示された希釈物は、CORM−2(+;250μM)で処置するか、または処置なし(−)で、Hbの不在下または存在下で試験した。
【0021】
図4は、CORM−3の、大腸菌および黄色ブドウ球菌細胞の生存度に対する効果を示す。(A)大腸菌および黄色ブドウ球菌の生存を示すヒストグラム。大腸菌細胞は、MS培地中に、好気的または嫌気的に増殖させ、400μMのCORM−3で処置した。黄色ブドウ球菌細胞は、好気的または微好気的に、LB培地中で増殖させ、これにそれぞれ500または400μMのCORM−3を加えた。(B)感受性試験は、例1の材料および方法に記載のようにして増殖させた培養物の希釈物を、Hbの不在下または存在下で、CORM−3(+)に暴露するかまたは処置なし(−)の後に、プレートすることにより行った。用いたCORM−3の濃度は、図Aの凡例に示したものと同じである。
図5は、大腸菌の、式IVの化合物および式Vの化合物への感受性を示す。大腸菌細胞は、好気性または嫌気性条件下で増殖させ、それぞれ500または200μMの式IVの化合物、および50μMの式Vの化合物で(例1の材料および方法を参照)、Hbの不在下または存在下で処置した。CORM(+)に暴露したか、または暴露しなかった(−)培養物の表示された希釈物を、感受性試験に供した。
【0022】
図6は、黄色ブドウ球菌の、式IVの化合物および式Vの化合物への感受性を示す。黄色ブドウ球菌細胞は、好気性または微好気性条件下で増殖させ、600μMの式IVの化合物、および50μMの式Vの化合物で処置した。CORM(+)に暴露したか、または暴露しなかった(−)培養物の指定の希釈物は、例1の材料および方法に記載のようにして、Hbの不在下または存在下で感受性試験に供した。
図7は、CORM−2のピロリ菌の生存に対する殺菌効果を示すヒストグラムである。紙製のディスクに200mMのCORM−2を吸収させ、等量のDMSOを対照プレートに加えた。
図8は、式IIの化合物および式IIIの化合物の、ピロリ菌生存に対する殺菌効果を示すヒストグラムである。紙製のディスクに、150mMの各化合物を吸収させ、対照プレートには等量の水を加えた。
【0023】
発明の詳細な説明
本明細書に記載の発明は、部分的に、COの、感染症の処置に対する使用に関する。本発明はまた、物質の新規な組成物も提供する。
本発明は、対象において感染症を処置する方法であって、該対象に対して感染症を処置するためのCOの有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。好ましくは、方法は、哺乳類などの対象における、ある感染症を抑制するために用いられる。本発明の方法はまた、アッセイシステムにおける使用に、例えば、細菌の複製およびその増殖および特性をアッセイすること、および感染症を引き起こす微生物に影響を及ぼす化合物を同定することにおける使用にも、容易に適合することができる。
【0024】
本明細書において用いる用語「対象」とは、処置が必要となるであろう、任意の哺乳類を意味する。対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、げっ歯類例えばマウス、ハムスター、およびラットなどを含むが、これに限定されない。好ましい対象はヒト対象である。
対象は、感染症を有することが知られているか、感染症に暴露されていることが疑われるか、または暴露されるリスクを有するか、またはこれに暴露された対象である。いくつかの好ましい態様において、対象は感染症を有する。COは、対象において感染症を処置するのに有効な量で、投与される。
【0025】
いくつかの態様において、対象は、COによる処置に対する兆候を有さない。CO(およびCORM)は、炎症および/または虚血/再かん流傷害に関連する疾患の処置または予防について記載されている。
用語「処置」または「処置する」とは、感染症の予防、改善、防止、または治療を含むことを意図する。
本明細書において用いる場合、「感染」または「感染症」とは、宿主への、感染性微生物による、表面的、局所的、または全身的な侵入から引き起こされる疾患を意味する。感染性微生物の例は、細菌、ウイルス、寄生虫、真菌、および原生動物を含む。
【0026】
細菌は、グラム陰性菌およびグラム陽性菌を含む。グラム陽性菌の例は、以下を含む:パスツレラ属種;黄色ブドウ球菌を含むブドウ球菌種;A群化膿連鎖球菌、ビリダンス型連鎖球菌、Streptococcus agalactiaeB群、Streptococcus bovis、Streptococcus嫌気性種、肺炎連鎖球菌、および糞便連鎖球菌を含むブドウ球菌種;炭疽菌を含むバシラス属種;ジフテリア菌、好気性コリネバクテリウム種および嫌気性コリネバクテリウム種を含むコリネバクテリウム種;類ジフテリア種;リステリア菌を含むリステリア種;豚丹毒菌を含むエリジペロスリックス属種;ウェルシュ菌、破傷風菌、およびClostridium difficileを含むクロストリジウム種。
【0027】
グラム陰性菌は以下を含む:淋菌および髄膜炎菌を含むナイセリア属種;カタル球菌を含むブランハメラ属種;大腸菌を含む大腸菌種;エンテロバクター種;Proteus mirabilisを含むプロテウス属種;緑膿菌、Pseudomonas malleiおよび偽鼻疽菌を含むシュードモナス種;肺炎桿菌を含むクレブシエラ種、サルモネラ種、赤痢菌種、セラチア種、アシネトバクター種;インフルエンザ菌およびデュクレー菌を含むヘモフィルス種;ブルセラ種;ペスト菌およびエンテロコリチカ菌を含むエルシニア種;野兎病菌を含むフランシセラ属種;Pasteurella multocidaを含むパスツレラ属種;コレラ菌;フラボバクテリウム種、メニンゴセプチカム;Campylobacter jejuniを含むカンピロバクター種;Bacteroides fragilisを含むバクテロイデス種(口、咽頭);Fusobacterium nucleatumを含むフゾバクテリウム種;肉芽種カリマトバクテリウム;Streptobacillus moniliformisを含むストレプトバシラス属種;レジュネラ・ニューモフィラを含むレジオネラ種。
【0028】
他の種類の細菌は、抗酸菌、スピロヘータ、および放線菌を含む。
抗酸菌の例は、結核菌およびライ菌を含むマイコバクテリウム属種を含む。
スピロヘータの例は、梅毒トレポネーマ、フランベジアトレポネーマを含むトレポネーマ属種、ライム病ボレリア(ライム病)および回帰熱ボレリアを含むボレリア種、およびレプトスピラ種を含む。
放線菌の例は、Actinomyces israeliiを含む放線菌、Nocardia asteroidesを含むノカルジア種を含む。
【0029】
ウイルスの例は、限定することなく以下を含む:レトロウイルス;HIV−1、HDTV−III、LAVE、HTLV−III/LAV、HIV−III、HIV−LPを含むヒト免疫不全ウイルス;サイトメガロウイルス(CMV)、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス、カリシウイルス、トガウイルス、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス、フラビイルス、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、水疱性口炎ウイルス、狂犬病ウイルス、フィロウイルス、エボラウイルス、パラミクソウイルス、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、オルソミクソウイルス、インフルエンザウイルス、ブニヤウイルス、ハンタウイルス、フレボウイスルおよびナイロウイルス、アレナウイルス、出血熱ウイルス、レオウイルス、オルビウイルス、ロタウイルス、ビルナウイルス、ヘパドナウイルス、B型肝炎ウイルス、パルボウイルス、パポバウイルス、パピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス1および2を含むヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、イリドウイルス、アフリカ豚コレラウイルス、デルタ肝炎ウイルス、非A非B型肝炎ウイルス、C型肝炎、ノーウォークウイルス、アストロウイルス、および未分類のウイルス。
【0030】
真菌の例は、限定することなく、以下を含む:クリプトコッカス・ネオフォルマンスを含むクリプトコッカス種、ヒストプラズマ・カプスラーツムを含むヒストプラズマ種、Coccidiodes immitisを含むコクシジオイデス種、ブラジルパラコクシジオイデスを含むパラコクシジオイデス種、ブラストミセス・デルマティティディスを含むブラストミセス種、トラコーマクラミジアを含むクラミジア種、カンジダアルビカンスを含むカンジダ種、Sporothrix schenckiiを含むスポロトリクス属種、アスペルギルス種、およびムコール症の真菌。
他の感染性微生物は、寄生虫を含む。寄生虫は、熱帯熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、および三日熱マラリア原虫を含むプラスモディウム種など、およびトキソプラズマ種を含む。血液感染性および/または組織寄生虫には、プラスモディウム種、babesia microtiおよびbabesia divergensを含むバベシア属種、熱帯リーシュマニア、リーシュマニア属種、ブラジルリーシュマニア、ドノバン・リーシュマニアを含むリーシュマニア属種、およびガンビア・トリパノソーマ、ローデシア・トリパノソーマ(アフリカ睡眠病)、およびクルーズトリパノソーマ(シャガス病)を含むトリパノソーマ属種であってよい。
【0031】
他の医学的に関連する微生物は、文献に広範囲に記載されており、例えば、C.G.A Thomas, Medical Microbiology, Bailliere Tindall, Great Britain 1983を参照のこと;これの内容全体は、本明細書に参照として組み込まれる。
COの投与については、種々の方法が当分野に知られている。COは、例えばガスとして、液体中に溶解したか、または担体中に捕捉されたガスとして、または一酸化炭素放出分子(CORM)として投与されてよい。いくつかの態様において、COはCORMとして投与される。
【0032】
ガスとして投与されるCOは、例えばWO 2003/000114 A3、US 2002/0155166 A1、WO 2004/043341 A2、US 2004/0052866 A1、WO 2003/072024 A2、US 2003/0219496 A1、WO 2003/103585 A2およびUS 2005/0048133 A1に記載されている。
本明細書において、CORMは、in vivoで一酸化炭素を放出する能力を有する分子を意味する。かかる分子の例はCOを含有する分子であり、COから構成される分子を含む。CORMの他の例は、COを発生する能力のある分子である。COは、一定の条件において放出されることができる(例えば、標的とされた部位での酸化条件)。CORMによるCOの治療的送達は、WO 2005/013691 A1、US 2003/068387A1、WO 2004/0445599、WO 2003/066067A2、US 2004/067261A1および米国特許第7,011,854号に記載されている。担体タンパク質を含有するヘムによるCOの治療的送達は、WO9422482に記載されている。
【0033】
いくつかの態様において、CORMは、構造:
【化11】

を有する化合物、もしくはその塩、または構造:
【化12】

を有する化合物、もしくはその塩、または構造:
【化13】

を有する化合物、もしくはその塩、または構造:
【0034】
【化14】

を有する化合物、もしくはその塩、または構造:
【化15】

を有する化合物、もしくはその塩、または構造:
【化16】

を有する化合物、もしくはその塩、または構造:
【化17】

を有する化合物、もしくはその塩である。
【0035】
CORMの例は、次のクラスの1つからの化合物を含む:
クラス1−CO含有の有機金属錯体。かかる化合物は、生理学的に適合する支持体中に溶解することができる。
クラス2−少なくとも他の薬学的に重要な分子に結合した、CO含有有機金属錯体。例えば、前記薬学的に重要な分子は、担体または薬物である。さらに、CO含有有機金属錯体と少なくとも他の薬学的に重要な分子は、任意に適切なスペーサーにより結合されている。
クラス3−CO含有有機金属錯体から作られた超分子集合体であって、任意に、例えばシクロデキストリン宿主および/または他の適切な無機もしくは有機支持体中に封入されているもの。
【0036】
クラス4−例えば多座リガンドなどのリガンドを含むCO含有無機錯体であって、可逆的CO担体として機能するNおよび/またはSドナーを含むもの。
クラス5−例えば多座リガンドなどのリガンドを含むCO含有無機錯体であって、可逆的CO担体として機能するNおよび/またはSドナーを含み、少なくとも別の薬学的に重要な分子に結合しているもの。例えば、薬学的に重要な分子は、担体または薬物である。さらに、CO含有無機錯体と少なくとも別の薬学的に重要な分子は、任意に適切なスペーサーにより結合されている。
【0037】
クラス6−COを、酵素過程または脱カルボニル化により放出する有機物質。かかる化合物は、生理学的に適合可能な支持体に溶解できる。
クラス7−COを酵素過程または脱カルボニル化により放出する有機物質、例えばジクロロメタンであって、シクロデキストリン宿主および/または他の適切な無機もしくは有機支持体中に任意に封入されているもの。
【0038】
クラス1−生理学的に適合可能な支持体中に溶解された、CO含有の有機金属錯体
このクラスの化合物は、生理学的媒体中へのその溶解性を、または膜および生体分子もしくは組織とのその適合性を改善するために設計された、単純な18個電子の有機金属カルボニル錯体またはその修飾物を含む。用いることのできる金属は、COリガンドを適切に結合する、生物学的に活性な第1列遷移金属(V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu)および第2列(Mo、Ru、Rh、Pd)および第3列元素(W、Re、Pt、Au)である。これらの化合物の多くは、シクロペンタジエニルリガンド(Cp)またはその誘導体(インデニル、CpR5など)を含み、ここではCpR(X)と略すが、これは上記の修飾を可能とし、金属中心に、対応するより高い反応性の制御と共にいくらかの立体保護を賦与する。ほとんどの錯体における金属の酸化状態は、生物学的条件下において通常見られるものと似ており、これによってCO放出後の代謝を促進する。
【0039】
以下に続いて挙げた例において、用語「擬似ハロゲン化物」とは、ハロゲン化物と等電性のモノアニオン性リガンドに与えられた一般名称であり、例えば、チオシアネート、シアネート、シアン化物、アジドなどである。用語「ヒドロカルビル鎖」とは、脂肪族CHおよび/または芳香族残基を含む炭化水素基の一般名称であり、例えば(CH、n=2、3など、または(CH、(C、CCHなどである。アルキルは、脂肪族炭化水素鎖の基に与えられた一般名称であり、例えばメチル、エチルなどである。アリールは、芳香環の基に与えられた一般名称であり、例えばフェニル、トリル、キシリルなどである。
【0040】
例:
【化18】

【0041】
【化19】

【0042】
【化20】

【0043】
【化21】

【0044】
より高い生物学的適合性および溶解性に改善するために、いくつかの修飾が考えられる。1つの好ましい可能性は、カルボン酸、ペプチド、または糖誘導体を、シクロペンタジエニル部分に結合することである。例では、1つのMn錯体について示す;同様の誘導体を、他の金属を含む化合物、およびインデニルおよび他のCpR(X)誘導体について、作製することができる。
【化22】

【0045】
クラス1の化合物のさらなる態様は、以下を含む:
[Mo(CO)Y]Q
式中、Yは臭化物、塩化物またはヨウ化物であり;および
Qは、[NR1〜4であり、
この式中、R、R、R、およびRは互いに独立してアルキルである。
本明細書で用いる場合、用語「アルキル」は、C〜C12飽和炭化水素鎖を意味し、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、またはn−ドデシルである。1つの態様において、アルキルはC〜CまたはC〜C飽和炭化水素鎖である。
【0046】
クラス1の化合物の他の態様は、以下を含む:
[Mo(CO)Y]Q
式中、Yは臭化物、塩化物またはヨウ化物であり;および
Qは、[NRであり、遊離であるか、または1つの環式ポリエーテル分子または1もしくは2以上の非環式ポリエーテル分子と錯体化しており、または、
Na、K、Mg2+、Ca2+またはZn2+であり、ここで各々は、遊離であるか、または1つの環式ポリエーテル分子または1もしくは2以上の非環式ポリエーテル分子と錯体化しており、
式中、各Rは独立してHまたはアルキルである。
【0047】
環式ポリエーテル分子はクラウンエーテルを含むが、これに限定されない。いくつかの態様において、環式ポリエーテルは、18−クラウン−6系または15−クラウン−5系のクラウンエーテルを含む。1または2以上の非環式ポリエーテルは、ポリエチレングリコール型のもの、および式RO(CHCHO)(式中、RおよびRは、各々独立してHまたはアルキルであり、nは1以上である)のものである。非環式ポリエーテル分子は、薬学的に許容し得るグリコール、またはモノ−もしくはジアルキルポリエチレングリコールの範囲にある。
【0048】
Qが遊離である場合、Qは、モリブデン錯体または静電力(イオン力)によるモリブデン錯体以外の任意の分子構造とは関連しない。Qが1つの環式ポリエーテル分子と錯体化する場合、または1もしくは2以上の非環式ポリエーテル分子と錯体化する場合、これらの錯体化カチオン性実体は、静電力結合により1または2以上のモリブデンアニオン錯体と関連する。Qが非環式ポリエーテルと錯体化する場合、イオン構造は、1つのモリブデン錯体または複数のモリブデン錯体と、非環式ポリエーテルとNRもしくは金属カチオンとの間に形成される錯体との間の相互作用から生じる。NRまたは金属カチオンは、可変数であるが確定した制御可能な数の、非共有結合の非環式ポリエーテル分子を有し、異なる同質異象または溶媒和物を生じさせる。1つの態様において、NRまたは金属カチオンは、12個までの非環式ポリエーテル分子を同時に非共有結合的に結合する。
【0049】
本明細書で用いる場合、用語「アルキル」は、C〜C12飽和炭化水素鎖を意味し、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、またはn−ドデシルである。1つの態様において、アルキルはC〜CまたはC〜CまたはC〜C飽和炭化水素鎖である。
いくつかの態様においては、Qは1つの環式ポリエーテル分子と錯体化するか、1もしくは2以上の非環式ポリエーテル分子と錯体化する。いくつかの態様において、1つの環式ポリエーテル分子は、18−クラウン−6系または15−クラウン−5系のクラウンエーテルを含む。他の態様において、Qは、エチレングリコールまたはポリエチレングリコール型鎖の4〜12個の酸素原子からなる配位圏における、1または2以上の非環式ポリエーテルにより錯体化される。さらに他の態様において、Qは、6個、8個、または12個の非環式ポリエーテル分子により錯体化される。他の態様において、Qは、3個の非環式ジエーテルにより錯体化される。さらなる態様において、Qは、1、2、または3個のポリエーテル分子と共に錯体化される。
【0050】
いくつかの態様において、Qは、式RO(CHCHO)(式中、RおよびRは、各々独立してHまたはアルキルであり、nは1以上である)の、1つより多い非環式ポリエーテル分子と共に錯体化され、ポリエーテル分子は、薬学的に許容し得るポリエチレングリコール、またはモノ−もしくはジアルキルポリエチレングリコールの範囲にある。さらなる態様において、Qが式RO(CHCHO)の1より多いエーテルと錯体化する場合、ポリエーテル分子のRおよびRの各々は、独立してHまたはアルキルであり、したがって式RO(CHCHO)のポリエーテルの各々は異なっていてもよく、およびRまたはRの各々は、他のポリエーテル分子内のRまたはRと異なっていてもよい。
【0051】
さらなる態様において、特定の非環式エーテルは、モノグライム、ジグライム、トリグライム、PEG400、PEG1000、PEG2000、PEG3000およびPEG4000、およびメチルPEG4000を含むが、これに限定されない。
前述の化合物の例は以下を含む:
【化23】

【0052】
【化24】

【0053】
クラス2−他の薬学的に重要な分子に結合したCO含有有機金属錯体。
このクラスの化合物は、両者が有益な効果を有する2つの生物学的に活性な分子の組合せから生じる、相乗効果を活用する。かかる薬物−薬物複合体の例は、米国特許第6,051,576号に記載されている。
概念図
【化25】

【0054】
上記のスペーサーは、次の仕様のもとで種々の機能を含む:直線状の炭化水素鎖における「n」の値は整数であり、より具体的には1、2、3、4である:Xは芳香環における置換基についての一般記号であり、すなわち、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲン原子、チオラートであり;「ぺプチド鎖」は、1〜4の範囲の天然アミノ酸の短鎖を示し;「糖」とは、適切な保護により保護または修飾された単糖類、二糖類、または多糖類を用いて、親油性の増加および/または薬物−薬物複合分子の化学的安定性を保証することを意味し、例えばエステル、アセタール、およびシリル誘導体などの保護基である。
【0055】
前の節で与えられたXの定義は、次のスキームに示す例のいくつかのように、Xが直接金属に結合している場合には、カルボン酸塩およびアミノ酸に拡張可能である。
例:
【化26】

【0056】
【化27】

【0057】
【化28】

【0058】
【化29】

【0059】
【化30】

【0060】
化合物の第2グループは、金属に直接結合した生物活性分子を含み、これらはいくつかの異なる様式で実現可能であり、これについては、例えばいくつかの鉄およびモリブデンシクロペンタジエニルカルボニルの場合について、以下に概略が示されている。用語「ヒドロカルビル鎖」は、脂肪族CHおよび/または芳香族残基、例えば(CH、n=2、3など、または(CH、(C、CCHなどを含む炭化水素基の一般名称である。
【0061】
【化31】

【0062】
【化32】

【0063】
クラス3:CO含有有機金属錯体から作られた、封入超分子集合体。
生体内への薬物の制御送達は重要な問題であり、特に、全身的または高い局所濃度にて存在する場合に望ましくない毒性作用を有する薬物の場合は重要である。COの放出は高濃度で毒性となり得るため、潜在的な問題である(上記参照)。ある用途に対しては、血液または特定の標的組織へのCOのゆっくりした放出が望ましい。毒性でない宿主分子内への封入は、生体内での活性薬物の持続放出を実現する1つの方法である。この戦略は、潜在的に毒性である薬物の、濃度および/または利用可能性の急激な増加から生じ得る、望ましくない効果を最小化する。
【0064】
シクロデキストリンは、多くの薬物および有機分子に対するよく知られた宿主であり、近年、有機金属分子を収容するよう適用され、生理学的障壁または膜を通過してのそれらの送達を増強した。この点に関して、シクロデキストリンは、親油性薬物の皮膚の障壁における送達を増加するのに有益であることが見出された[T. Loftsson, M. Masson, Int. J. Pharm. 2001, 225, 15]。シクロデキストリン媒介性の超分子配列は、有機金属分子を長時間保護し、その反応性をマスクし、それにより特定試薬に対するその選択性を増加させる。上記クラス1の例などの、カルボニル錯体の疎水性部分は、β−もしくはγ−シクロデキストリンまたは類似の構造内に適合し、ここでそのCO基が反応媒体に向き、有機リガンドがキャビティ内に埋め込まれた様式となる。結果としての反応性の低下は、治療的CO放出錯体の範囲を、カチオン性およびアニオン性のものにまで拡張することを可能とする。かかるチャージされた錯体はより反応性であり、保護されていない場合には、中性のものよりも早くCOを失う。
【0065】
リポソームおよび他の高分子ナノ粒子凝集体もまた、CO放出有機金属錯体の送達を標的化するための、有用な担体であり、シクロデキストリンとかかる凝集体を組み合わせた使用は、薬物放出の非常に期待できる可能性と考えられている[D. Duchene, G. Ponchel, D. Wouessidjewe, Adv. Drug Delivery Rev. 1999, 36, 29]。
概念的例
【化33】

【0066】
実際の例としては、次のような有機金属分子を含む:(C6−x)M(CO)(M=Cr、Mo、W);(CpR)M(CO)X(M=Cr、Mo、W);(CpR)M(CO)X(M=Fe、Ru);(CpR)M(CO)(M=Co、Rh)、この式中、RはH、アルキル、または他の小官能基、例えばメトキシド、ハロゲン化物、カルボン酸エステルなどである。
メソ多孔体は、良好に規定された孔径の空洞やチャネルを生成する原子の無限配列を有する、化学的に不活性な3次元分子である。これらの分子は、それらの孔内に有機または有機金属分子を収容するのに好適である。生体液の存在のもとで、孔の内壁と酸−塩基および/または極性相互作用を行う小さな分子は、含有された薬物をゆっくりと移動させ、活性成分の制御送達をもたらす。かかる凝集体は、M41S材料から上記系1で示したものなどの有機金属分子を用いて調製される。例としては、MCM−41(線形チューブ)およびMCM−48(空洞および孔)を含む。
【0067】
クラス4−可逆的CO担体として機能するNおよび/またはSドナーを含むリガンドを有する、CO含有無機錯体。
大環状リガンドを正8面体配位圏の赤道面上に有する古典的な無機錯体は、ヘモグロビンと同様の様式で、COを可逆的に結合することが知られている。COを結合する能力の向きを、COに対してトランスである大環状および補助リガンドの両方の性質により「逆転させる」ことができる。同様の挙動が、ポルフィリン大環よりもはるかに単純なリガンドであって、ヘモグロビンおよび他のヘム含有タンパク質におけるCOアクセプター部位である前記リガンドを有する、他のFe(II)錯体についても報告されている。好適なCO送達薬物を開発するために、後者の種類の非ヘム錯体が、生物学的ヘム担体との干渉、ヘム代謝、およびヘムもしくはヘム様分子の潜在的毒性などを避けるために選択された。選択された錯体は、2座のNドナー(ジアミン、ジグリオキシム)または、アミノチオールもしくはシステインなどの、生物学的に重要な2座のN、Sドナーを有する。補助リガンドは、これも生物学的に重要なNドナーであり、例えばイミダゾール、ヒスチジンその他である。錯体は、水性媒体中に溶解する。
【0068】
次の例においては、ピリジンの用語は、CN環(ピリジン)の誘導体であって、アルキル(R)、アルコキシ(OR)、カルボキシ(C(O)OR)、ニトロ(NO)、ハロゲン(X)、C5炭素環(例えばCHN、ONCN)の1または2以上の位置に直接結合する置換基を有する、前記誘導体を指す。アミノ−チオールは、炭化水素骨格(例えばHNCHCHSH、1,2−C(NH)(OH))に結合するNH(アミノ)およびSH(チオール)官能基の両方を有する化合物を指す。同様の定義をアミノアルコールに適用でき、これにより、SH官能基を、OH(アルコール)官能基で置き換える。アミノ酸の用語は、模式的に示すように、NHおよびCOO官能基により2座の様式において配位結合された、天然の単一のアミノ酸を意味する。
【0069】
グリオキシムは、2座のNドナーであって、2個のN原子を結合する炭素鎖上にアルキルまたはアリール置換基を有するものを意味し、これはジアリールグリオキシムについての次の最初の例に示すとおりである。ジイミンは、ジグリオキシムのOH基がアルキルまたはアリール基により置き換えられている、類似の構造を示す。このリガンドのファミリーの拡張には、2,2’−ビピリジン、例えば2,2’−ジピリジルおよびフェナントロリンを含む。
【0070】
例:
【化34】

【0071】
【化35】

【0072】
クラス5−可逆的CO担体として機能するNおよび/またはSドナーを含むリガンドを有する、CO含有無機錯体であって、他の薬学的に重要な分子への結合により修飾されているもの。
上記のクラス2の化合物について概説されたアイディアに従って、クラス4として記載された新しいCO担体の種類であって、ただし、適切なスペーサーを介して生物学的に活性な他の分子にリガンドを結合することにより修飾されているものが、記載される。
例:
【化36】

【0073】
【化37】

【0074】
クラス6−酵素過程または脱カルボニル化のどちらかによりCOを放出する有機物質
脱カルボニル化は、有機化学における非常に一般的な種類の反応ではないという事実にも関わらず、いくつかの有機物質は、その性質に応じて塩基、酸、またはラジカル開始剤のいずれかによる処置で、COを遊離することが知られている。これらの物質は次のグループに分類される:酸性条件化において、一般形態CHX’4−(n+y)(Xおよび/またはX’=F、Cl、Br、I)のポリハロメタン、トリクロロ酢酸およびその塩、その有機および無機エステルおよびスルフィン酸塩、トリアリールカルボン酸、ギ酸、シュウ酸、α−ヒドロキシ酸およびα−ケト酸、そのエステルおよび塩;酸性触媒のもとで、トリアルキルおよびトリアルコキシベンズアルデヒド;例えば過酸化物または光などのラジカル開始剤による脂肪族アルデヒド。ポリハロメタンについて、nおよびyの値は次のように変化する:n=0に対してy=1、2、3、4;n=1に対してy=1、2、3;n=2に対してy=1、2;n=3に対してy=1。上記の例において、用語「塩」は、所与のプロトン酸、すなわちカルボン酸塩と、主族元素イオン、すなわちNa、Kとの共役塩基のイオン性誘導体に適用される。アルキルは、脂肪族炭化水素鎖基に与えられた一般名称であり、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル等である。アルキル基は、分枝または直鎖であることができる。アリールは、芳香環基に与えられた一般名称であり、例えばフェニル、トリル、キシリル等である。アリール基は、典型的には約6個〜約10個の炭素原子を有する。エステルは、官能基−C(O)OR(式中R=アルキル、アリール)に与えられた一般名称である。
【0075】
初めの2つの分類はジクロロカルベンを生成し、これは、生理学的条件下でCOに代謝される。ジクロロメタンの場合、チトクロームP−450が、in vivoでの遊離化に役割を果たすことが示された。
第3グループの化合物は、酸性触媒のもとでCOを放出し、アリール置換パターンに感受性である。これはまた、第4のグループにもあてはまる可能性が高く、これには、トリアルキルおよびトリアリール置換アルデヒドを含む。アリール環の強く活性化された基は、COの遊離化を酸性条件下で生じさせる可能性が高い。より重要なことには、酸化物または光による誘発される、ラジカルが開始する脂肪族アルデヒドの分解は、非常にマイルドな条件下でCOを生成する。芳香環上の置換基(アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ)の数である「n」の値は0〜5の間で変化し、好ましくは1、2または3である。
【0076】
例:
【化38】

【0077】
CORMアルデヒドの他の例は、式VI:
【化39】

で表わされる化合物を含み、
式中、R、RおよびRは互いに独立して、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリル、置換アルキルヘテロシクリル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルメルカプト、アリールオキシ、置換アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、アルコキシカルボニル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、F、Cl、Br、NO、およびシアノから選択され;または、R、RおよびRの2個または3個以上は、一緒になって置換または非置換の炭素環式または複素環式環構造を形成する。
【0078】
「アルキル」とは、20個までの炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素基を意味し、「置換アルキル」とは、以下から選択される1または2以上の置換基を有するアルキル基を意味する:アミノ、アルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、アリール、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、F、Cl、Br、NO、シアノ、スルホニル、スルフィニル、および当業者に知られている類似の置換基。「シクロアルキル」とは、1または2以上の環を含み、3〜12個の範囲の炭素原子を有する、飽和ヒドロカルビル基を意味し、「置換シクロアルキル」とは、上記の1または2以上の置換基をさらに有する、シクロアルキル基を意味する。「ヘテロシクリル」とは、1または2以上の環であって、1または2個以上のヘテロ原子(例えばN、OまたはS)を含む1または2以上の環を環構造の一部として含み、3〜12個の範囲の環原子を有する、環状基を意味し、「置換ヘテロシクリル」とは、上記の1または2以上の置換基をさらに有する、ヘテロシクリル基を意味する。「アルキルヘテロシクリル」とは、アルキル置換ヘテロシクリル基を意味し、「置換アルキルヘテロシクリル」とは、上記の1または2以上の置換基をさらに有する、アルキルヘテロシクリル基を意味する。
【0079】
「アルケニル」とは、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有し、および2〜20個の範囲の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖ヒドロカルビル基を意味し、および「置換アルケニル」とは、上記の1または2以上の置換基をさらに有する、アルケニル基を意味する。「アリール」とは、6個から約14個までの範囲の炭素原子を有する芳香族基を意味し、および「置換アリール」とは、上記の1または2以上の置換基をさらに有する、アリール基を意味する。「ヘテロアリール」とは、1または2個以上のヘテロ原子(例えばN、OまたはS)を環構造の一部として含み、および5個から約13個までの範囲の炭素原子を有する、芳香族基を意味し、および「置換ヘテロアリール」とは、上記の1または2以上の置換基をさらに有する、ヘテロアリール基を意味する。「アルキルアリール」とは、アルキル置換アリール基を意味し、および「置換アルキルアリール」とは、上記の1または2以上の置換基をさらに有する、アルキルアリール基を意味する。
【0080】
「ヒドロキシ」とは、基OHを意味する。「アルコキシ」とは、基−ORを意味し、式中、Rは上記定義のアルキル基である。「アミノ」とは、基NHを意味する。「アルキルアミノ」とは、基−NHRまたは−NRR’を意味し、式中RおよびR’は、独立して上記定義のアルキルまたはシクロアルキル基から選択される。「メルカプト」とは、基SHを意味する。「アルキルメルカプト」とは、基S−Rを意味し、式中、Rは上記定義のアルキルまたはシクロアルキル基を表わす。「アリールオキシ」とは、基−OArを意味し、式中、Arは上記定義のアリール基であり、および「置換アリールオキシ」とは、上記の1または2以上の置換基をさらに有する、アリールオキシ基を意味する。「ヘテロアリールオキシ」とは、基−OHtを意味し、式中、Htは上記定義のヘテロアリール基であり、および「置換ヘテロアリールオキシ」とは、上記の1または2以上の置換基をさらに有する、ヘテロアリールオキシ基を意味する。「アルコキシカルボニル」とは、基−C(O)−ORを意味し、式中、Rは上記定義のアルキル基である。
【0081】
「アシル」とは、基−C(O)−Rを意味し、式中、Rは、上記定義のH、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールである。「アシルオキシ」とは、基−O−C(O)−Rを意味し、式中、Rは、上記定義のH、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールである。「アシルアミノ」とは、基−NR’C(O)Rを意味し、式中、RおよびR’は、各々独立して、上記定義のH、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールから選択される。「アルキルスルホニル」とは、基−S(O)Rを意味し、式中、Rは、上記定義のアルキルまたはシクロアルキル基を表わす。「アルキルスルフィニル」とは、基−S(O)Rを意味し、式中、Rは、上記定義のアルキルまたはシクロアルキル基を表わす。
【0082】
一般式VIのアルデヒドの非限定的な例には、以下が含まれる:
【化40】

【0083】
【化41】

【0084】
アルデヒドの脱カルボニル化について知られている最も一般的な反応は、厳しい条件、例えば強い酸性または塩基性条件、高温と共に紫外線、ラジカル開始剤、および/または金属触媒の存在(Jerry March, Advanced Organic Chemistry, Reactions, Mechanisms and Structure, John Wiley & Sons, 4th Ed., 1992)などを必要とする。しかし、高度に分枝状のアルデヒドは、紫外線による照射の場合には室温で脱カルボニル化されることが観察された(Berman et al., J. Am. Chem. Soc., 85:4010-4013 (1963); Conant et al., J. Am. Chem. Soc. 51:1246-1255 (1929))。第三級アルデヒドからの一酸化炭素の損失は、第三級ラジカルを導き、これは、超共役による共鳴安定化のために、第一級または第二級ラジカルよりも安定である。超共役は、隣接する空の(または部分的に充填された)p−軌道またはπ−軌道とのσ−結合(通常、C−HまたはC−C)における、電子の相互作用から生じる安定化を含み、これは系の安定性を高める拡張された分子軌道を与える。したがって、脱カルボニル化は、第一級または第二級アルデヒドに比べて第三級アルデヒドにおいて好都合である。
【0085】
任意の特定の理論に束縛されることなく、以下の式1は、第三級アルデヒドの脱カルボニル化に対して提唱された活性酸素種によるメカニズムを示し(トリメチルアセトアルデヒド(化合物1)による例)、一酸化炭素および安定化第三級ラジカルを生成する:
【化42】

【0086】
したがって、ある態様において、アルデヒドは第三級アルデヒドである。かかる態様において、アルデヒドは上記式VIで表される化合物であって、式中、R、RおよびRは互いに独立して、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリル、置換アルキルヘテロシクリル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルメルカプト、アリールオキシ、置換アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、アルコキシカルボニル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、F、Cl、Br、NO、およびシアノから選択され;または、R、RおよびRの2個または3個以上は、一緒になって置換または非置換の炭素環式または複素環式環構造を形成する。
【0087】
いくつかの場合において、例えば、治療用アルデヒドのin vivo安定性、バイオアベイラビリティ、または薬学動態的特性を改善するために、アルデヒドを誘導体の形態またはその保護形態において投与する。誘導体は、in vivoで遊離または未修飾のアルデヒドの給源として作用し、および/またはin vivoでCOそれ自体を放出する。ある態様において、プロドラッグとして作用するアルデヒド誘導体が生成され、これは薬理学的に不活性な化学的実体であり、動物中で化学的に変換または代謝されると、薬理学的に活性な物質に変換される。プロドラッグからの治療的に有効な分子(すなわちアルデヒド)の発生は、体内の作用部位に到達する前、その間、またはその後に起こる(Bundgaard et al., Int. J. Pharm. 13:89-98 (1983))。プロドラッグからのアルデヒドの放出は、一般に、身体系における化学的または酵素的不安定性(lability)を、またはその両方を介して生じる。
【0088】
化学的に不安定なアルデヒドプロドラッグの例は、限定することなく、以下を含む:生理学的媒体中に平衡状態で存在する非環状鎖化合物、例えばマンニッヒ塩基誘導体、イミン、オキシム、アミジン、ヒドラゾンおよびセミカルバゾン(WO 2006/012215; Herrmann et al., Chem. Commun. 2965-2967 (2006); Deaton et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 16:978-983 (2006))、および例えば1,3−X,N−複素環(X=O、S、NR)などの環状鎖互変異性プロドラッグであって(Valters et al., Adv. Heterocycl. Chem 64:251-321 (1995); Valters et al., Adv. Heterocycl. Chem. 66:1-71 (1996))、二官能性化合物とアルデヒドとの反応から調製されるもの。これら誘導体の環状鎖平衡から、開形態は加水分解を受けて生活性分子を生じる。両方の場合において、これらの系の平衡に関与する種の割合は、置換基の立体的および電子的特性に強く影響される。
【0089】
代替的戦略は、酵素過程により薬理学的に活性な化合物に変換されるプロドラッグを生成することである(Bernard Testa & Joachim M. Mayer, Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Chemistry, Biochemistry and Enzymology WILEY-VCH, 2003)。数種類の化学群があり、例えば、エステル、アミド、硫酸塩およびリン酸塩であり、これらはそれぞれ、エステラーゼ、アミナーゼ、スルファターゼ、およびホスファターゼにより容易に切断される。薬理学的に活性なアルデヒドは、アシルオキシアルキルエステル、N−アシルオキシアルキル誘導体、N−マンニッヒ塩基誘導体、N−ヒドロキシメチル誘導体等を含む種々の化合物上で、エステラーゼおよびアミダーゼの反応によって放出される。いくつかの場合において、プロドラッグがアルデヒド生成酵素について劣等な基質である場合には加水分解を促進するために、担体を電子求引性または電子供与性基で修飾する。
【0090】
当業者に認識されているように、有機アルデヒドは、アルデヒドを化学的に保護する種々の反応を受ける。非限定的例により、種々の態様において、有機アルデヒドを、対応する次の物質に変換することにより保護する:アセタール、ヘミアセタール、アミノカルビノール、アミナール、イミン、エナミノン、イミデート、アミジン、イミニウム塩、亜硫酸水素ナトリウム付加物、ヘミメルカプタール、ジチオアセタール、1,3−ジオキセパン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキサラン、1,3−ジオキセタン、α−ヒドロキシ−1,3−ジオキセパン、α−ヒドロキシ−1,3−ジオキサン、α−ヒドロキシ−1,3−ジオキサラン、α−ケト−1,3−ジオキセパン、α−ケト−1,3−ジオキサン、α−ケト−1,3−ジオキサラン、α−ケト−1,3−ジオキセタン、大環状エステル/イミン、大環状エステル/ヘミアセタール、オキサゾリジン、テトラヒドロ−1,3−オキサジン、オキサゾリジノン、テトラヒドロ−オキサジノン、1,3,4−オキサジアジン、チアゾリジン、テトラヒドロ−1,3−チアジン、チアゾリジノン、テトラヒドロ−1,3−チアジノン、イミダゾリジン、ヘキサヒドロ−1,3−ピリミジン、イミダゾリジノン、テトラヒドロ−1,3−ピリミジノン、オキシム、ヒドラゾン、カルバゾン、チオカルバゾン、セミカルバゾン、セミチオカルバゾン、アシルオキシアルキルエステル誘導体、O−アシルオキシアルキル誘導体、N−アシルオキシアルキル誘導体、N−マンニッヒ塩基誘導体、またはN−ヒドロキシメチル誘導体。次の式2〜12における例示のスキームはまた、どれだけのかかるプロドラッグが、活性アルデヒドをin vivoで(例えば、加水分解または酵素加水分解により)放出するかを示す。
【0091】
ある態様において、保護有機アルデヒドはイミンである。当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えばDeaton et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 16: 978-983 (2006)、またはWO2006/012215に記載の方法により、式2に示すように有機アルデヒドとアミンとの反応によって得ることを認識する。
【化43】

この式中、R、RおよびRは独立して、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリル、置換アルキルヘテロシクリル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルメルカプト、アリールオキシ、置換アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、アルコキシカルボニル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、F、Cl、Br、NO、およびシアノから選択され;または、R、RおよびRの2個または3個以上は、一緒になって置換または非置換の炭素環式または複素環式環構造を形成し;および
【0092】
R’は、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールから選択される。
他の態様において、保護有機アルデヒドはイミニウム塩である。当業者は、かかる誘導体を種々の方法により、例えばPaukstelis et al., J. Org. Chem. 28:3021-3024 (1963)に記載の方法により、式3に示すように有機アルデヒドと二級アミン塩との反応によって得られることを認識する。
【化44】

この式中、R、R、RおよびR’の各々は、式2について上で定義されたとおりであり;
R”は、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールから選択され;
およびXは、任意の好適な薬学的に許容し得る対アニオンを表し、例えば塩化物、臭化物、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、または任意の他の非毒性の生理学的に適合可能なアニオンである。
【0093】
他の態様において、保護有機アルデヒドはヒドラゾンである。当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えば米国特許第6,518,269号および4,983,755号に開示された方法により、式4に示すように有機アルデヒドとヒドラジンとの反応によって調製されることを認識する。
【化45】

この式中、R、R、RおよびR’の各々は、式2について上で定義されたとおりである。
さらに他の態様において、保護有機アルデヒドはカルバゾンである。当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えばHerrmann et al., Chem. Commun. 2965-2967 (2006)に記載された方法により、式5に示すように有機アルデヒドとヒドラジド(またはアシルヒドラジン)との反応によって得られることを認識する。
【化46】

この式中、R、R、RおよびR’の各々は、式2について上で定義されたとおりである。
【0094】
他の態様において、保護有機アルデヒドはセミカルバゾンまたはチオセミカルバゾンである。当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えばDeaton et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 16:978-983 (2006)に記載された方法により、または米国特許第6,458,843号に開示された方法により、例えば式6におけるように有機アルデヒドとセミカルバジンまたはチオセミカルバジンとの反応によって得られることを認識する。
【化47】

この式中、R、R、R、R’およびR”の各々は、式2および3について上で定義されたとおりである。
【0095】
さらに他の態様において、保護有機アルデヒドはオキシムである。当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えばReymond et al., Org. Biomol. Chem. 2:1471-1475 (2004)または米国特許出願第2006/0058513号に記載された方法により、式7に示すように有機アルデヒドとオキソアミンとの反応によって得られることを認識する。
【化48】

この式中、R、R、RおよびR’の各々は、式2について上で定義されたとおりである。
【0096】
他の態様において、保護有機アルデヒドはアセタールまたはヘミアセタールである。当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えば、式8に示すようにアルデヒドと1または2以上のアルコールとの反応によって調製できることを認識する。
【化49】

この式中、R、R、RおよびR’の各々は、式2について上で定義されたとおりである。
【0097】
さらに他の態様において、保護有機アルデヒドはα−ヒドロキシ−1,3−ジオキセパン(またはα−ヒドロキシ−1,3−ジオキサンまたはα−ヒドロキシ−1,3−ジオキサラン)である。当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えばWO03/082850に開示された方法により、式9に示すようにヒドロキシ置換有機アルデヒドと他のアルデヒドとの反応によって得られることを認識する。
【化50】

この式中、R、RおよびRの各々は、式2について上で定義されたとおりであり;RおよびRの各々は独立して、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリル、置換アルキルヘテロシクリル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルメルカプト、アリールオキシ、置換アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、アルコキシカルボニル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、F、Cl、Br、NO、およびシアノから選択され;または、RおよびRは、一緒になって置換または非置換の炭素環式または複素環式環構造を形成し;およびnは1、2または3である。
【0098】
式9に示す反応は、化合物が一緒に(1:1)室温まで冷却された時に自然に起きる、エネルギー的に有利な環化(二量化)である。加熱されると(例えば生理学的温度に)、これらは再度分離する。化合物4は、室温に冷却すると二量体を形成する化合物の例である。
さらに他の態様において、保護有機アルデヒドはα−ケト−1,3−ジオキセパン(またはα−ケト−1,3−ジオキサン、α−ケト−1,3−ジオキサランまたはα−ケト−1,3−ジオキセタン)である。当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えばXu et al., Tet. Lett., 46:3815-3818 (2005)または Krall et al., Tetrahedron 61:137-143 (2005)に記載された方法により、式10に示すように、有機アルデヒドとヒドロキシ酸との反応により、保護アルデヒドを形成して得られることを認識する。
【化51】

この式中、R、RおよびRの各々は、式2について上で定義されたとおりであり;およびnは0、1、2、または3である。
【0099】
他の態様において、保護有機アルデヒドは大環状エステル/イミンである。当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えば米国特許第6,251,927号に記載された方法により、式11に示すように、ヒドロキシ置換有機アルデヒドと式HOOC−(CH−NHの化合物との反応により、保護アルデヒドを形成して得られることを認識する。
【化52】

この式中、RおよびRは、式2について上で定義されたとおりであり;およびnは0、1または2であり;およびmは1または2である。
【0100】
式11で形成された化合物の加水分解は、イミンを介した化学的加水分解により、またはエステル基を介した酵素加水分解により生じる。
他の態様において、保護有機アルデヒドは大環状エステル/ヘミアセタールである。当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えば米国特許第6,251,927号に記載された方法により、式12に示すように、ヒドロキシ置換有機アルデヒドと式HOOC−(CH−OHの構造を有するヒドロキシ酸との反応により、保護アルデヒドを形成して得られることを認識する。
【化53】

この式中、R、R、mおよびnは、式11について上で定義されたとおりである。
【0101】
式12で形成された化合物の加水分解は、ケタールを介した化学的加水分解により、またはエステル基を介した酵素加水分解により生じる。
さらに他の態様において、保護有機アルデヒドはチアゾリジンまたはテトラヒドロ−1,3−チアジンである。当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えばJellum et al., Anal. Biochem. 31:339-347 (1969)、Nagasawa et al., J. Biochem. Mol. Tox. 16:235-244 (2002)、Roberts et al., Chem. Res. Toxicol. 11:1274-82 (1998)または米国特許第5,385,922号に記載された方法を用いて得られることを認識する。本明細書に記載のようにして用いることが意図される、あるチアゾリジンおよびテトラヒドロ−1,3−チアジンは、式VII:
【化54】

により表され、この式中、R、R、RおよびRの各々は独立して、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリル、置換アルキルヘテロシクリル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、メルカプト、アルキルメルカプト、アリールオキシ、置換アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、アルコキシカルボニル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、F、Cl、Br、NO、およびシアノから選択され;または、R、RおよびRの1個または2個以上は、一緒になって置換または非置換の炭素環式または複素環式環構造を形成し;
【0102】
Aは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルキルアリール、置換アルキルアリール、アルコキシカルボニル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルキルスルホニルおよびアルキルスルフィニルから選択され;およびnは1または2である。
他の態様において、保護有機アルデヒドはオキサゾリジンまたはテトラヒドロ−1,3−オキサジンである。当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えばBundgaard et al., Int. J. Pharma. Chem. 10:165-175 (1982)、Selambarom et al., Tetrahedron 58:9559-9556 (2002)または米国特許第7,018,978号に記載された方法を用いて得られることを認識する。本明細書に記載のようにして用いることが意図される、あるオキサゾリジンおよびテトラヒドロ−1,3−オキサジンは、式VIII:
【化55】

により表され、この式中、R、R、R、RおよびAおよびnの各々は、式VIIについて上に記載されたとおりである。
【0103】
さらに他の態様において、保護有機アルデヒドはイミダゾリジンまたは1,3−ヘキサヒドロ−ピリミジンである。当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えばLambert, J. Org. Chem. 52:68-71 (1987)またはFueloep, J. Org. Chem. 67:4734-4741 (2002)に記載された方法を用いて得られることを認識する。本明細書に記載のようにして用いることが意図される、あるイミダゾリジンおよび1,3−ヘキサヒドロ−ピリミジンは、式IX:
【化56】

により表され、この式中、R、R、R、R、n、およびAの各々は(それぞれの場合に独立して選択され)、式VIIについて上に記載されたとおりである。
【0104】
さらに他の態様において、保護有機アルデヒドはイミダゾリジノンである。当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えばBundgaard et al., Int. J. Pharma. Chem. 23:163-173 (1985)に記載された方法を用いて得られることを認識する。本明細書に記載のようにして用いることが意図される、あるイミダゾリジノンは、式X:
【化57】

により表され、この式中、R、R、RおよびAの各々は(それぞれの場合に独立して選択され)、式VIIについて上に記載されたとおりである。
【0105】
他の態様において、保護有機アルデヒドはアシルオキシアルキルエステルまたはO−アシルオキシアルキル誘導体である。当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えばNudelman et al., Eur J. Med. J. Chem. 36: 63-74 (2001)、Nudelman et al., J. Med. Chem. 48:1042-1054 (2005)またはスウェーデン特許第SE9301115号に記載された方法を用いて得られることを認識する。本明細書に記載のようにして用いることが意図される、あるアシルオキシアルキルエステルは、式XI:
【化58】

により表され、この式中、R、R、およびRの各々は、式VIIについて上に定義されたとおりであり、およびR’およびR”の各々は独立して、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールから選択される。ある態様において、代謝加水分解によりin vivoで活性なアルデヒドを放出することに加えて、アシルオキシアルキルエステル誘導体はまた、酪酸も放出する。酪酸プロドラッグは、水溶性の増加および細胞膜に渡る透過性の増加を提供することが報告されている(Nudelman et al., Eur J. Med. J. Chem. 36: 63-74 (2001))。
【0106】
他の態様において、保護有機アルデヒドはN−アシルオキシアルキル誘導体である。当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えばBundgaard et al., Int. J. Pharm. 22:454-456 (1984)およびBundgaard et al., Int. J. Pharm. 13:89-98 (1983)に記載された方法を用いて得られることを認識する。本明細書に記載のようにして用いることが意図される、あるN−アシルオキシアルキル誘導体は、式XII:
【化59】

により表され、この式中、R、R、R、R’およびR”の各々は、式VIIおよびIXについて上に記載されたとおりであり;R”’は、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールから選択される。
【0107】
他の態様において、保護有機アルデヒドはN−アシルオキシアルキル誘導体の塩である。当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えばBodor et al., J. Med. Chem. 23:469-474 (1980)または米国特許第3,998,815号に記載された方法を用いて得られることを認識する。本明細書に記載のようにして用いることが意図される、あるN−アシルオキシアルキル誘導体は、式XIII:
【化60】

により表され、この式中、R、R、R、R’、R”およびR”’の各々は、式Xについて上に定義されたとおりであり;
【0108】
R””は、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリールから選択され;および
Xは、式3について上に記載したように、好適な薬学的に許容し得る対アニオンを表す。
さらに他の態様において、保護有機アルデヒドは5−オキサゾリジノンである。
【0109】
当業者は、かかる誘導体は種々の方法で、例えばBundgaard et al., Int. J. Pharma. Chem. 46:159-167 (1988)またはIshai-Ben, J. Am. Chem. Soc. 79:5736-38 (1957)に記載された方法を用いて得られることを認識する。本明細書に記載のようにして用いることが意図される、ある5−オキサゾリジノンは、式XIV:
【化61】

により表され、この式中、R、R、R、およびAの各々は、式VIIについて上に記載されたとおりである。
【0110】
クラス7−COを酵素過程または脱カルボニル化により放出する封入有機物質
この系は、クラス6で記載されたものと同一の分子を含むが、ただしそれらを、ナノカプセル封入薬物送達製品を作製することができる宿主(ホスト)−ゲスト超分子、リポソーム、シクロデキストリン、および他の高分子材料などの中に封入したものである。
COのその他の給源は以下を含む:トリカルボニルジクロロルテニウム(II)二量体、CORM−2(Sigma);トリカルボニルクロロ(グリシネート)ルテニウム(II)、CORM−3(Johnson, T. R. et al. Dalton Trans, 1500-8 (2007));ブロモ(ペンタカルボニル)マンガン(Herrmann-Brauer. Synthetic Methods of Organometallic and Inorganic Chemistry (ed. Herrmann, W. A.) (Stuttgart, 1997))およびテトラエチルアンモニウムモリブデンペンタカルボニルブロミド(Burgmayer, S. J. N. & L., T. J. Inorganic Chemistry 24, 2224-2230 (1985))。
【0111】
COは、単独で、医薬組成物中で、または他の治療法と組み合わせて投与してよい。COおよび他の治療剤(単数または複数)は、同時にまたは順番に投与してよい。他の治療剤を同時に投与する場合、それらは同じ製剤において、または別の製剤において投与することができるが、しかし同時に投与される。他の治療剤とCOの投与が時間的に離れている場合は、他の治療剤は、互いにまたCOと、順番に投与してよい。これら化合物の投与間の時間における分離は、分単位またはそれより長くてよい。他の治療剤には、抗感染症剤(単数または複数)を含むが、これに限定されない。抗感染症剤(単数または複数)の例は、抗細菌剤(単数または複数)、抗ウイルス剤(単数または複数)、抗真菌剤(単数または複数)または抗原虫剤(単数または複数)を含む。
【0112】
「抗感染症剤」、「抗細菌剤」、「抗ウイルス剤」、「抗真菌剤」、「抗寄生虫剤」および「寄生虫駆除剤」などの句は、当業者にとってよく確立された意味を有し、標準の医学テキストに定義されている。簡潔に述べると、抗細菌剤は細菌の増殖または機能を殺傷するかまたは抑制する。抗細菌剤は、抗生物質および、類似の機能を有する他の合成または天然の化合物を含む。抗生物質は典型的には、例えば微生物などの細胞により二次代謝物として産生される、低分子量分子である。一般に抗生物質は、微生物に特異的であって宿主細胞には存在しない、1または2以上の細菌の機能または構造を妨害する。
【0113】
抗細菌剤の大きなクラスは、抗生物質である。広範囲の細菌を殺傷または阻害するのに有効な抗生物質は、広域スペクトル抗生物質と呼ぶ。他の種類の抗生物質は、グラム陰性またはグラム陽性クラスの細菌に対して主に有効である。これらの種類の抗生物質は、狭域スペクトル抗生物質と呼ぶ。単一の微生物または疾患に対して有効で、他の種類の細菌には有効でない他の抗生物質は、限定スペクトル抗生物質と呼ぶ。抗細菌剤は時にはそれらの主な作用形態に基づいて分類される。一般に抗細菌剤は、細胞壁合成阻害剤、細胞膜阻害剤、タンパク質合成阻害剤、核酸合成または核酸機能阻害剤、および競合阻害剤である。
【0114】
抗細菌剤は、アミノグリコシド、β−ラクタム剤、セファロスポリン、マクロリド、ペニシリン、キノロン、スルホンアミド、およびテトラサイクリンを含むが、これに限定されない。抗細菌剤の例は、限定することなく以下を含む:アセダプソン、アセトスルホンナトリウム、アラメシン(Alamecin)、アレキシジン、アムジノシリン、クラブラン酸カリウム、アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アミサイクリン、アミフロキサシン(Amifloxacin)、アミフロキサシンメシラート、アミカシン、アミカシンスルフェート、アミノサリチル酸、アミノサリチル酸ナトリウム、アモキシシリン、アンホマイシン、アンピシリン、アンピシリンナトリウム、アパルシリンナトリウム、アプラマイシン、アスパルトシン、硫酸アストロミシン、アビラマイシン、アボパルシン、アジスロマイシン、アズロシリン、アズロシリンナトリウム、塩酸バカンピシリン、バシトラシン、バシトラシンメチレンジサリチル酸塩、バシトラシン亜鉛、バンベルマイシン(Bambermycins)、ベンゾイルパスカルシウム、ベリスロマイシン(Berythromycin)、硫酸ベタマイシン、ビアペネム、ビニラマイシン(Biniramycin)、塩酸ビフェナミン、ビスピリチオンマグスルフェクス(Bispyrithione Magsulfex)、ブチカシン(Butikacin)、硫酸ブチロシン、硫酸カプレオマイシン、カルバドックス、カルベニシリン二ナトリウム、カルベニシリンインダニルナトリウム、カルベニシリンフェニルナトリウム、カルベニシリンカリウム、カルモナムナトリウム、セファクロール、セファドロキシル、セファマンドール、セファマンドールナファート、セファマンドールナトリウム、セファパロール、セファトリジン、
【0115】
セファザフルナトリウム、セファゾリン、セファゾリンナトリウム、セフブペラゾン、セフジニル、セフジトレンピボキシル、セフェピム、塩酸セフェピメ、セフェテコール、セフィキシム、塩酸セフメノキシム、セフメタゾール、セフメタゾールナトリウム、セフォニシド一ナトリウム、セフォニシドナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、セフォラニド、セフォタキシム、セフォタキシムナトリウム、セフォテタン、セフォテタン二ナトリウム、塩酸セフォチアム、セフォキシチン、セフォキシチンナトリウム、セフピミゾール、セフピミゾールナトリウム、セフピラミド、セフピラミドナトリウム、硫酸セフピロム、セフポドキシムプロキセチル、セフプロジル(Cefprozil)、セフロキサジン、セフスロジンナトリウム、セフタジジム、セフタジジムナトリウム、セフチブテン、セフチゾキシムナトリウム、セフトリアキソンナトリウム、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、セフロキシムピボキセチル、セフロキシムナトリウム、セファセトリルナトリウム、セファレキシン、塩酸セファレキシン、セファログリシン、セファロリジン、セファロチンナトリウム、セファピリンナトリウム、セフラジン、塩酸セトサイクリン、セトフェニコール、クロラムフェニコール、パルミチン酸クロラムフェニコール、
【0116】
パントテン酸クロラムフェニコール錯体、コハク酸クロラムフェニコールナトリウム、クロルヘキシジンホスファニラート、クロロキシレノール、二硫酸クロルテトラサイクリン、塩酸クロルテトラサイクリン、シラスタチン、シノキサシン、シプロフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン、シロレマイシン、クラリスロマイシン、クラブラン酸カリウム、塩酸クリナフロキサシン、クリンダマイシン、クリンダマイシンデキストロース、塩酸クリンダマイシン、バルミチン酸クリンダマイシン塩酸塩、リン酸クリンダマイシン、クロファジミン、クロキサシリンベンザチン、クロキサシリンナトリウム、クロキシキン、コリスチメサート、コリスチメサートナトリウム、硫酸コリスチン、クメルマイシン、クメルマイシンナトリウム、シクラシリン、シクロセリン、ダルフォプリスチン、ダプソン、ダプトマイシン、デメクロサイクリン、塩酸デメクロサイクリン、デメサイクリン、デノフンギン(Denofungin)、ジアベリジン(Diaveridine)、ジクロキサシリン、ジクロキサシリンナトリウム、硫酸ジヒドロストレプトマイシン、ジピリチオン、ジリスロマイシン、ドキシサイクリン、ドキシサイクリンカルシウム、ドキシサイクリンホスファテックス(Fosfatex)、ドキシサイクリンヒクラート、ドキシサイクリン一水和物、ドロキサシンナトリウム、エノキサシン、エピシリン、塩酸エピテトラサイクリン、エルタペネム、エリスロマイシン、エリスロマイシンアシストラート、エリスロマイシンエストラート、エリスロマイシンエチルスクシネート、グルセプト酸エリスロマイシン、ラクトビオン酸エリスロマイシン、
【0117】
プロピオン酸エリスロマイシン、ステアリン酸エリスロマイシン、塩酸エタンブトール、エチオナミド、フレロキサシン、フロキサシリン、フルダラニン、フルメキン、ホスホマイシン、ホスホマイシントロメタミン、フモキシシリン、塩化フラゾリウム、酒石酸フラゾリウム、フシジン酸ナトリウム、フシジン酸、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、硫酸ゲンタマイシン、グロキシモナム(Gloximonam)、グラミシジン、ハロプロジン、ヘタシリン、ヘタシリンカリウム、ヘキセジン、イバフロキサシン、イミペネム、イソコナゾール、イセパマイシン(Isepamicin)、イソニアジド、ジョサマイシン、硫酸カナマイシン、キタサマイシン、レボフロキサシン、レボフラルタドン、レボプロピルシリンカリウム、レキシスロマイシン、リノマイシン、塩酸リノマイシン、リネゾリド、ロメフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、ロメフロキサシンメシラート、ロラカルベフ、マフェナイド、メクロサイクリン、スルホサリチル酸メクロサイクリン、リン酸メガロマイシンカリウム、メキドクス(Mequidox)、メロペネム、メタサイクリン、塩酸メタサイクリン、メテナミン、馬尿酸メテナミン、マンデル酸メテナミン、メチシリンナトリウム、メチオプリム(Metioprim)、塩酸メトロニダゾール、リン酸メトロニダゾール、メズロシリン、メズロシリンナトリウム、ミノサイクリン、塩酸ミノサイクリン、塩酸ミリンカマイシン、
【0118】
モネンシン、モネンシンナトリウム、塩酸モキシフロキサシン、ナフシリンナトリウム、ナリジクス酸ナトリウム、ナリジクス酸、ナタマイシン、ネブラマイシン、パルミチン酸ネオマイシン、硫酸ネオマイシン、ウンデシレン酸ネオマイシン、硫酸ネチルマイシン、ニュートラマイシン、ニフラデン、ニフラルデゾン、ニフラテル、ニフラトロン、ニフルダジル、ニフリミド、ニフルピリノール、ニフルキナゾール、ニフルチアゾール、ニトロサイクリン、ニトロフラントイン、ニトロミド、ノルフロキサシン、ノボビオシンナトリウム、オフロキサシン、オルメトプリム、オキサシリンナトリウム、オキシモナム、オキシモナムナトリウム、オキソリン酸、オキシテトラサイクリン、オキシテトラサイクリンカルシウム、塩酸オキシテトラサイクリン、パルジマイシン、パラクロロフェノール、パウロマイシン、ペフロキサシン、ペフロキサシンメシラート、ペナメシリン、ベンザチンペニシリンG、ペニシリンGカリウム、プロカインペニシリンG、ペニシリンGナトリウム、ペニシリンV、ベンザチンペニシリンV、ヒドラバミンペニシリンV、ペニシリンVカリウム、ペンチジドンナトリウム、アミノサリチル酸フェニル、ピペラシリン、ピペラシリンナトリウム、ピルベニシリンナトリウム、ピリジシリンナトリウム、塩酸ピルリマイシン、塩酸ピバンピシリン、ピバンピシリンパモエート、ピバンピシリンプロベネート、硫酸ポリミキシンB、ポルフィロマイシン、プロピカシン、ピラジンアミド、ピリチオン亜鉛;酢酸キンデカミン、キヌプリスチン、ラセフェニコール、ラモプラニン、ラニマイシン(Ranimycin)、
【0119】
レロマイシン、レプロマイシン、リファブチン、リファメタン、リファメキシル、リファミド、リファンピン、リファペンチン、リファキシミン、ロリテトラサイクリン、硝酸ロリテトラサイクリン、ロサラマイシン、酪酸ロサラマイシン、プロピオン酸ロサラマイシン、リン酸ロサラマイシンナトリウム、ステアリン酸ロサラマイシン、ロソキサシン、ロキサルソン、ロキシスロマイシン、サンサイクリン、サンフェトリネム(Sanfetrinem)ナトリウム、サルモキシシリン、サルピシリン(Sarpicillin)、スコパフンギン、シソマイシン、硫酸シソマイシン、スパルフロキサシン、塩酸スペクチノマイシン、スピラマイシン、塩酸スタリマイシン(Stallimycin)、ステフィマイシン、無菌チカルシリン二ナトリウム、硫酸ストレプトマイシン、ストレプトニコジド、スルバクタムナトリウム、スルファベンズ、スルファベンザミド、スルファセトアミド、スルファセトアミドナトリウム、スルファシチン、スルファジアジン、スルファジアジンナトリウム、スルファドキシン、スルファレン、スルファメラジン、スルファメータ、スルファメタジン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファモノメトキシン、スルファモキソール、スルファニル酸亜鉛、スルファニトラン、スルファサラジン、スルファソミゾール、スルファチアゾール、スルファザメト、スルフィソキサゾール、スルフィソキサゾールアセチル、スルフィソキサゾールジオラミン、スルホミキシン、スロペネム、スルタミシリン、スンシリン(Suncillin)ナトリウム、塩酸タランピシリン、タゾバクタム、テイコプラニン、塩酸テマフロキサシン、テモシリン、テトラサイクリン、塩酸テトラサイクリン、リン酸テトラサイクリン錯体、テトロキソプリム、チアンフェニコール、チフェンシリンカリウム、チカルシリンクレシルナトリウム、チカルシリン二ナトリウム、チカルシリン一ナトリウム、チクラトン、塩化チオドニウム(Tiodonium)、トブラマイシン、硫酸トブラマイシン、トスフロキサシン、トリメトプリム、硫酸トリメトプリム、トリスルファピリミジン、トロレアンドマイシン、硫酸トロスペクトマイシン、トロバフロキサシン、チロスリシン、バンコマイシン、塩酸バンコマイシン、バージニアマイシン、ゾルバマイシン。
【0120】
抗ウイルス剤は、天然源から単離するか、合成することができ、ウイルスの増殖または機能を殺傷するか阻害するのに有用である。抗ウイルス剤は、細胞のウイルス感染または細胞内でのウイルス複製を防ぐ化合物である。抗ウイルス剤により遮断または阻害することができるウイルス感染のプロセスには、いくつかのステージがある。これらのステージは、ウイルスの宿主細胞への付着(免疫グロブリンまたは結合ペプチド)、ウイルスのアンコーティング(例えばアマンタジン)、ウイルスmRNAの合成または翻訳(例えばインターフェロン)、ウイルスRNAまたはDNAの複製(例えばヌクレオチド類自体)、新しいウイルスたんぱく質の成熟(例えばプロテアーゼ阻害剤)、およびウイルスの出芽および放出を含む。
【0121】
本発明において有用な抗ウイルス剤は、免疫グロブリン、アマンタジン、インターフェロン、ヌクレオチド類自体、およびプロテアーゼ阻害剤を含むが、これに限定されない。抗ウイルス剤の具体的な例は、以下を含むがこれに限定されない:アセマンナン;アシクロビル;アシクロビルナトリウム;アデフォビル;アルブジン;アルビルセプトスドトックス;塩酸アマンタジン;アラノチン;アリルドン;アテビルジンメシラート;アビリジン;シドフォビル;シパムフィリン;塩酸シタラビン;デラビリジンメシラート;デスシクロビル;ジダノシン;ジソキサリル;エドクスジン;エンビラデン;エンビロキシム;ファムシクロビル;塩酸ファモチン;フィアシタビン;フィアルリジン;フォサリラート;ホスカルネットナトリウム;ホスホネットナトリウム;ガンシクロビル;ガンシクロビルナトリウム;イドクスウリジン;ケトキサール;ラミブジン;ロブカビル;塩酸メモチン;メチサゾン;ネビラピン;ペンシクロビル;ピロダビル;リバビリン;塩酸リマンタジン;サキナビルメシラート;塩酸ソマンタジン;ソリブジン;スタトロン;スタブジン;塩酸チロロン;トリフルリジン;塩酸バラシクロビル;ビダラビン;リン酸ビダラビン;ビダラビンナトリウムホスファート;ビロキシム;ザルシタビン;ジドブジン;およびジンビロキシム。
【0122】
ヌクレオチド類似体は、ヌクレオチドに似ているが、不完全であるかまたは異常なデオキシリボースまたはリボース基を有する、合成化合物である。ヌクレオチド類似体が一旦細胞内に存在すると、これらはリン酸化され、ウイルスDNAまたはRNAへの組み込みについて正常なヌクレオチドと競合する、三リン酸塩を産生する。ヌクレオチド類似体の三リン酸塩形態が増殖する核酸鎖に組み込まれると、これはウイルスポリメラーゼと非可逆的な関連を引き起こし、したがって鎖の終結が生じる。ヌクレオチド類似体は、アシクロビル(単純ヘルペスウイルスおよび水痘帯状疱疹ウイルスの処置に用いる)、ガンシクロビル(サイトメガロウイルスの処置に有用である)、イドクスウリジン、リバビリン(呼吸器合胞体ウイルスの処置に有用である)、ジデオキシイノシン、ジデオキシシチジン、ジドブジン(アジドチミジン)、イミキモド、およびレシミキモド(resimiquimod)を含むが、これに限定しない。
【0123】
インターフェロンは、ウイルス感染細胞および免疫細胞が分泌するサイトカインである。インターフェロンは感染細胞近傍の細胞上の特定の受容体に結合することにより機能し、細胞内に変化を引き起こし、これが該細胞をウイルス感染から保護する。αおよびβインターフェロンはまた、感染細胞の表面上でクラスIおよびクラスIIのMHC分子の発現を誘発し、宿主免疫細胞認識に対する抗原提示の増加をもたらす。αおよびβインターフェロンは、組み換え形態で入手可能であり、慢性のB型およびC型肝炎感染の処置に用いられてきた。抗ウイルス治療に有効な用量において、インターフェロンは、熱、倦怠感、体重減少などの重い副作用を有する。
【0124】
抗真菌剤は、表面の真菌感染症、および日和見性および原発性の全身性真菌感染症の処置に用いられる。抗真菌剤は感染性真菌の処置および予防に有用である。抗真菌剤は、その作用メカニズムによって分類されることがある。いくつかの抗真菌剤は、例えばグルコースシンターゼを阻害することにより、細胞壁阻害剤として機能する。これらにはバシウンギン(basiungin)/ECBが挙げられるがこれらに限定されない。他の抗真菌剤は、膜の完全性を不安定化することによって機能する。これには、イミダゾール、例えば、クロトリマゾール、セルタコンゾール(sertaconzole)、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾールおよびボリコナコール、ならびにFK463、アムホテリシンB、BAY38−9502、MK991、プラジミシン、UK292、ブテナフィンおよびテルビナフィンが挙げられるがこれらに限定されない。他の抗真菌剤は、キチン(例えば、キチナーゼ)または免疫抑制(501クリーム)を破壊することによって機能する。
抗寄生虫剤は、寄生虫を殺傷または阻害する。抗寄生虫剤の例はまた、ヒト投与に有用な殺寄生虫薬とも呼ばれ、これにはアルベンダゾール、アムホテリシンB、ベンズニダゾール、ビチオノール、クロロキンHCl、クロロキンホスフェート、クリンダマイシン、デヒドロエメチン、ジエチルカルバマジン、ジロキサニドフロエート、エフロルニチン、フラゾリドン、グルココルチコイド、ハロファントリン、ヨードキノール、イベルメクチン、メベンダゾール、メフロキン、メグルミンアンチモニエート、メラルソプロール、メトリホネート、メトロニダゾール、ニクロサミド、ニフルチモックス、オキサムニキン、パロモマイシン、ペンタミジンイセチオネート、ピペラジン、プラジカンテル、プリマキンホスフェート、プログアニル、ピランテルパモエート、ピリメタミン−スルホンアミド、ピリメタミン−スルファドキシン、キナクリンHCl、硫酸キニーネ、グルコン酸キニジン、スピラマイシン、スチボグルコネートナトリウム(グルコン酸アンチモンナトリウム)、スラミン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、チアベンダゾール、チニダゾール、トリメトロプリム(trimethroprim)−スルファメトキサゾール、およびトリパルサミドが挙げられるがこれらに限定されず、そのうちのいくつかは単独でまたは他と組み合わせて用いられる。
【0125】
製剤:本発明の実践に有用な組成物は、薬学的に許容し得る担体と共に医薬組成物として、非経口投与または経腸投与、または局所もしくは局在性投与のために製剤化することができる。例えば、本発明の実践に有用な組成物は、経口製剤として固体または液体形態で、または静脈内、筋肉内、皮下、経皮、または局所製剤として、投与することができる。経口製剤が好ましい。
【0126】
組成物は一般に、薬学的に許容し得る担体と共に投与される。本明細書において用いる場合、用語「薬学的に許容し得る担体」とは、1または2種以上の、適合性の固体、もしくは半固体もしくは液体の増量剤、希釈剤、またはカプセル封入物質であって、ヒトまたは他の哺乳類、例えばイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、もしくはヤギなどへの投与に好適な物質を意味する。用語「担体」とは、有機または無機の天然または合成成分であって、その活性成分が組み合わさって用途を促進するものを表す。担体は、本発明の調製物と、および相互に、所望の薬学的有効性または安定性を実質的に損なう相互作用が生じない様式で、混合することができる。経口、皮下、静脈内、筋肉内等の製剤に好適な担体は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Paに見出すことができる。
【0127】
経口投与のために薬学的に許容し得る担体は、カプセル、錠剤、ピル、散剤、トローチ、および顆粒を含む。固体剤形の場合、担体は、スクロース、ラクトースまたはデンプンなどの不活性希釈剤を少なくとも1種含むことができる。かかる担体はまた、通常の実践におけるのと同様に、希釈剤以外の追加の物質、例えばステアリン酸マンガンなどの潤滑剤も含むことができる。カプセル、錠剤、トローチおよびピルの場合、担体はまた、緩衝剤も含むことができる。錠剤、ピル、および顆粒などの担体は、錠剤、ピル、または顆粒の表面上のコーティングと共に調製することができ、これにより、胃腸管での医薬組成物の放出の時期および/または位置を制御する。いくつかの態様において、担体はまた、活性組成物を胃腸管の特定領域に標的化し、また、当分野で知られているように、活性成分を特定の領域に保持することもできる。代替的に、被覆された化合物は、錠剤、ピル、または顆粒に押圧することができる。薬学的に許容し得る担体は、経口投与用の液体剤形、例えば乳濁液、液体、懸濁液、シロップ、エリキシル剤であって、水などの当分野で一般に用いられている不活性希釈剤を含有するものを含む。かかる不活性希釈剤に加えて、組成物はまた、アジュバントを含むことができ、例えば湿潤剤、乳化剤、および懸濁剤、および甘味剤、香味剤などである。
【0128】
本発明の医薬調製物は、粒子として提供してもよい。本明細書で用いる場合、粒子とは、ナノ粒子または微小粒子(またはいくつかの例ではそれより大きい粒子)であって、本明細書に記載のCOまたはCORMまたは他の治療剤(単数または複数)によって、その全体またはその一部が構成されているものである。粒子は、限定することなく腸溶コーティングを含むコーティングにより囲まれたコアの中に、治療剤(単数または複数)を含むことができる。治療剤(単数または複数)はまた、粒子全体に分散されていてもよい。治療剤(単数または複数)はまた、粒子内に吸着されていてもよい。粒子は任意次数の放出動態力学のものであってよく、0次放出、1次放出、2次放出、遅延放出、持続放出、即時放出、およびこれらの任意の組合せを含む。粒子は、治療剤(単数または複数)に加えて、薬学および医学の分野で日常的に用いられている任意の材料を含むことができ、これには、侵食可能な、非侵食の、生分解性の、もしくは非生分解性の材料またはこれらの組合せを含むが、これに限定されない。粒子は、溶液中の、または半固体状態のアンタゴニストを含むマイクロカプセルであってよい。粒子は、実質的に任意の形状であってよい。
【0129】
非生分解性および生分解性の両方の高分子材料を、治療剤(単数または複数)を送達するための粒子の製造において用いることができる。かかるポリマーは、天然または合成ポリマーであってよい。ポリマーは、放出が望まれる時間に基づいて選択される。特に興味ある生体接着ポリマーとしては、H.S. Sawhney, C.P. Pathak and J.A. Hubell in Macromolecules, (1993) 26:581-587に記載の生侵食可能なヒドロゲルを含み、この教示は本明細書に組み込まれる。これらは以下を含む:ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリアンヒドリド、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、チトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、およびポリ(オクタデシルアクリレート)。
【0130】
本発明は、本発明の医薬組成物の経口投与のための方法を提供する。経口固体剤形は、一般にRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., 1990 (Mack Publishing Co. Easton Pa. 18042)の第89章に記載されている。経口投与のための固体剤形は、カプセル、錠剤、ピル、散剤、トローチまたはロゼンジ、カシェ剤、ペレット剤、および顆粒を含む。また、リポソームまたはプロテイノイドカプセル封入も、本組成物を製剤化するのに用いることができる(例えば、米国特許第4,925,673号に報告されているプロテイノイド微小球のように)。リポソームカプセル封入は、種々のポリマーで誘導体化されたリポソームを含む(例えば、米国特許第5,013,556号)。一般に製剤は、本発明の化合物と、胃での分解を防ぎ生物学的活性材料を腸内で放出可能とする不活性成分とを含む。
【0131】
かかる固体剤形において、活性化合物を、少なくとも1種の不活性な、薬学的に許容し得る賦形剤または担体と混合するか、またはこれを含むように化学的に修飾する。賦形剤または担体は、(a)タンパク質分解の阻害、および(b)胃または腸から血流中への取り込みを可能とするのが好ましい。もっとも好ましい態様において、賦形剤または担体は、化合物の取り込み、化合物の全体的な安定性、および/または体内での化合物の循環時間を増加させる。賦形剤または担体は、例えば以下を含む:クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または(a)増量剤(filler)または増量剤(extender)、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、セルロース、修飾デキストラン、マンニトール、およびケイ酸、および無機塩類、例えばカルシウム三リン酸、炭酸マグネシウム、および塩化ナトリウム、および市販の希釈剤、例えばFAST-FLO(登録商標)、EMDEX(登録商標)、STA-RX 1500(登録商標)、EMCOMPRESS(登録商標)、およびAVICEL(登録商標)、(b)結合剤、例えばメチルセルロースエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ガム(例えばアルギン酸塩、アカシア)、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、およびスクロース、(c)湿潤剤、例えばグリセロール、(d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、炭酸ナトリウム、デンプンベースの市販の崩壊剤を含むデンプン、EXPLOTAB(登録商標)、グリコール酸ナトリウムデンプン、AMBERLITE(登録商標)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、超ミロペクチン(ultramylopectin)、ゼラチン、オレンジピール、カルボキシメチルセルロース、天然スポンジ、ベントナイト、不溶性陽イオン交換樹脂、および粉末ガム、例えば寒天、カラヤ、またはトラガカント;(e)溶液遅延剤、例えばパラフィン、(f)吸収促進剤、例えば四級アンモニア化合物および、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸をふくむ脂肪酸、(g)湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート、陰イオン洗浄用界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、およびジオクチルスルホン酸ナトリウム、陽イオン性洗浄剤、例えば塩化べンズアルコニウムまたは塩化ベンゼトニウム、非イオン性洗浄剤、例えばラウロマクロゴール400、ポリオキシル40ステアリン酸、ポリオキシエチレン水素化キャスターオイル10、50、および60、グリセロールモノステアレート、ポリソルベート40、60、65、および80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース;(h)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイト粘土、(i)潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液体パラフィン、植物油、ワックス、CARBOWAX(登録商標)4000、CARBOWAX(登録商標)6000、ラウリル硫酸マグネシウム、およびこれらの混合物;(j)製剤化の間の薬物の流動特性を改善し、圧縮中に再配列を支援する流動促進剤、例えばデンプン、タルク、焼成シリカ、および水和シリコアルミネート。カプセル、錠剤、およびピルの場合、剤形はまた、緩衝剤を含むことができる。
【0132】
類似の種類の固体組成物もまた、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルとして、ラクトースまたは乳糖、および高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、用いることができる。
錠剤、糖衣錠、カプセル、ピルおよび顆粒剤は、腸溶コーティングおよび薬学製剤分野で知られた他のコーティングなどの、コーティングおよびシェルと共に調製することができる。これらは乳白剤を含むことができ、また活性成分(単数または複数)を腸管部分のみにおいて、または腸管部分に選択的に、任意に遅延様式で放出する組成物とすることができる。例としての材料は、pH感受性の溶解性を有するポリマー、例えばEUDRAGIT(登録商標)として入手可能な材料である。用いることのできる包埋組成物の例は、高分子物質およびワックスである。
【0133】
経口投与用の液体剤形は、薬学的に許容し得る乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤を含む。活性化合物に加えて、液体剤形は以下を含むことができる:当分野で一般に用いられる不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、溶解剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングルコール、ジメチルホルムアミド、油類(特に綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物。
【0134】
不活性希釈剤に加えて、経口組成物はまた、アジュバントを、例えば湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、着色剤、香味剤、および香料剤を含むことができる。経口組成物を製剤化して、例えば飲料などの食用製品をさらに含むことができる。
活性化合物に加えて、懸濁液は、懸濁剤を、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、トラガカント、およびこれらの混合物を含むことができる。
酸性形態で用いる場合、本発明の化合物は、酸の薬学的に許容し得る塩の形態において用いることができる。溶媒、水、緩衝液、アルカノイル、シクロデキストリンおよびアラルカノールなどの担体を用いることができる。他の助剤、非毒性剤も含んでよく、例えば、ポリエチレングリコールまたは湿潤剤である。
【0135】
本発明に記載の薬学的に許容し得る担体および化合物は、患者への投与のための単位剤形に製剤化される。単位用量における、活性成分(すなわち本発明の化合物)の用量レベルは、投与の所望の方法に従って治療効果を達成する有効な活性成分の量を得るために、変化させることができる。したがって、選択された用量レベルは、活性成分の性質、投与経路、および処置の所望の期間に主に依存する。必要に応じて、単位用量は、活性成分に対する毎日の必要量が1用量であってもよく、または1日当たり例えば2〜4回などの投与のために、複数用量に分割することができる。
【0136】
本発明の化合物はまた、リポソームの形態で投与可能である。当分野で知られているように、リポソームは一般にリン脂質または他の脂質物質に由来する。リポソームは、水性媒体中に分散された、モノ−またはマルチ−ラメラ水和液晶により形成される。リポソームを形成可能な、任意の非毒性で生理学的に許容し得る、代謝可能な脂質を用いることができる。リポソーム形態における本組成物は、本発明の化合物に加えて、安定剤、保存剤、賦形剤などを含むことができる。好ましい脂質は、天然および合成両方の、リン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成するための方法は当分野に知られている。例えばPrescott, Ed., Methods in Cell Biology, Volume XIV, Academic Press, New York, N.Y. (1976), p. 33以下を参照のこと。
【0137】
本発明の化合物の局所投与用の剤形は、本明細書に記載のように、粉末、スプレー、軟膏、および吸入剤を含む。活性化合物を、無菌条件下で、薬学的に許容し得る担体および、任意の必要な保存剤、緩衝剤、または必要であれば噴射剤と混合する。眼科用の製剤、眼軟膏、粉末、および溶液もまた、本発明の範囲内であることが意図される。
非経口注射用の本発明の医薬組成物は、薬学的に許容し得る無菌の水性または非水性溶液、分散液、懸濁液、または乳濁液、および、使用の直前に無菌の注射用溶液または分散液に再構成可能な無菌の粉末を含む。好適な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルは、水エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングルコールなど)、およびこれらの好適な混合物、植物油(例えばオリーブ油)、および注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルを含む。適切な流動性は、例えば、レクチンなどのコーティング材料の使用により、分散液の場合は必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0138】
これらの組成物はまた、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含むことができる。微生物の作用の妨害は、種々の抗菌および抗真菌剤を含有することにより保証でき、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などである。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことも望ましい場合がある。注射可能薬学形態の長期の吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる剤を含有することにより、実現することができる。
静脈内投与用の薬学的に許容し得る担体としては、薬学的に許容し得る塩または糖を含有する溶液が挙げられる。筋肉内または皮下注射用の薬学的に許容し得る担体としては、塩、油または糖が挙げられる。
【0139】
いくつかの場合において、薬物の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることが望ましい。これは、水への溶解性が低い結晶または非晶質材料の液体懸濁物の使用により実現できる。そこでの薬物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、次に、結晶サイズおよび結晶形状に依存し得る。代替的に、非経口投与薬物の吸収の遅延は、薬物を油ビヒクルに溶解または懸濁させることにより、達成される。
注射可能なデポー剤形態は、薬物のマイクロカプセル封入マトリクスを、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマーに形成することにより作製される。薬物のポリマーに対する比率および、用いる特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出の速度は制御可能である。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(アンヒドリド)を含む。デポー剤注射製剤はまた、薬物を、身体組織と適合的なリポソームまたはマイクロエマルション中に閉じ込めることにより、調製される。
【0140】
注射用製剤は、細菌またはウイルス保持フィルターを通してろ過することにより、または、使用の直前に無菌水または他の無菌の注射媒体中に溶解可能または分散可能な、無菌の固体組成物形態の滅菌剤を組み込むことにより、滅菌することができる。
本明細書で意図するのは、本発明の化合物の、肺への送達である。化合物は、吸息の間に哺乳類の肺に送達され、これによって肺上皮層の血流への横断(traversal)を促進する。以下を参照のこと:Adjei et al., Pharmaceutical Research 7:565-569 (1990)、Adjei et al., International Journal of Pharmaceutics 63:135-144 (1990)(酢酸ロイプロリド)、Braquet et al., Journal of Cardiovascular Pharmacology 13 (suppl.5): s.143-146 (1989)(エンドセリン−1)、Hubbard et al., Annals of Internal Medicine 3:206-212 (1989)(α1−抗トリプシン)、Smith et al., J. Clin. Invest. 84:1145-1146 (1989)(α1−プロテイナーゼ)、Oswein et al., "Aerosolization of Proteins," Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Delivery II, Keystone, Colorado, March, 1990(組換えヒト成長ホルモン)、Debs et al., The Journal of Immunology 140:3482-3488 (1988)(インターフェロン−γおよび腫瘍壊死因子α)およびPlatz et al., 米国特許第5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子)。
【0141】
本発明の実践における使用が意図されるのは、治療用産物の肺への送達のために設計された、広範囲の機械装置であり、これらには、噴霧器、計量式吸入器、および粉末吸入器などが含まれるが、それには限定されず、これらの全ては当業者によく知られている。
本発明の実践に好適な市販の装置のいくつかの具体例は、Mallinckrodt, Inc., St. Louis, MO 製造のULTRAVENT(登録商標)噴霧器;Marquest Medical Products, Englewood, CO.製造のACORN II(登録商標)噴霧器;Glaxo Inc., Research Triangle Park, N.C.製造のVENTOL(登録商標)計量式吸入器;およびFisons Corp., Bedford, MA製造のSPINHALER(登録商標)粉末吸入器である。
【0142】
全てのかかる装置は、本発明の化合物を分散させるのに好適な製剤の使用を必要とする。典型的には、各製剤は、用いる装置の種類に特定的であり、治療に有用な希釈剤、アジュバント、および/または担体に加えて、適切な噴霧剤の使用を伴う。
組成物は粒子形態に調製され、好ましくは平均粒径が10μm未満であり、末梢の肺への効率的な送達のために、最も好ましくは0.5〜5μmである。
担体としては、トレハロース、マンニトール、キシリトール、スクロース、ラクトースおよびソルビトールなどの炭水化物を含む。製剤において用いる他の成分としては、脂質、例えばDPPC、DOPE、DSPCおよびDOPCなど、天然および合成の界面活性剤、ポリエチレングリコール(阻害剤それ自体を誘導体化するためのその使用は別として)、デキストラン、例えばシクロデキストラン、胆汁塩、および他の関連するエンハンサー、セルロースおよびセルロース誘導体、およびアミノ酸を含んでよい。
【0143】
リポソーム、マイクロカプセルまたは微小球、包含複合体、または他の種類の担体の使用も意図される。
ジェット噴霧器または超音波噴霧器との使用に好適な製剤は、一般に、水中に溶解した本発明の化合物を、1mLの溶液当たり約0.1〜25mgの生物学的に活性なタンパク質の割合で含む。製剤はまた、緩衝液および単糖を含むことができる(例えばタンパク質の安定化および浸透圧の調節のため)。噴霧器製剤はまた、界面活性剤を含有して、エアロゾル形成中に溶液の噴霧化によって引き起こされる、阻害剤組成物の表面誘発性凝集を低減または予防することができる。
【0144】
計量式吸入器と共に用いるための製剤は、一般に、界面活性剤の支援により噴霧剤中に懸濁させた阻害剤化合物を含有する、微粉を含む。噴霧剤は、この目的で用いられる任意の従来材料であってよく、例えば、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、またはヒドロカーボンであり、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、および1,1,1,2−テトラフルオロエタン、またはこれらの組合せを含む。好適な界面活性剤は、三オレイン酸ソルビタンおよび大豆レシチンを含む。オレイン酸はまた、界面活性剤として用いることができる。
粉末吸入器から分散させるための製剤は、阻害剤を含む微粉乾燥粉末を含み、これは、例えばラクトース、ソルビトール、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはキシリトールなどの増量剤を、装置からの粉末の分散を促進する量で、例えば製剤の重量の50〜90%で含む。
【0145】
本発明の化合物および組成物の経鼻送達も意図される。経鼻送達は、化合物または組成物が、治療産物を鼻に投与した直後に肺において産物が沈積される必要なしに、血流に通過することを可能とする。経鼻送達用の製剤は、デキストランまたはシクロデキストランを有するものを含む。別の粘膜に渡る輸送を介した送達も意図される。
直腸または膣内投与のための組成物は、好ましくは座剤であり、これは本発明の化合物を、好適な非刺激性の賦形剤または担体、例えばココアバター、ポリエチレングリコール、もしくは座剤ワックスなどと混合することにより調製され、これらの担体等は、室温では固体であるが、体温では液体であり、したがって直腸または膣腔で溶解して、活性組成物を放出する。
【0146】
細胞および/または核膜にわたる化合物の送達を促進するため、比較的疎水性の高い組成物が好ましい。化合物は、疎水性を増加させるような様式で修飾可能であり、または、化合物は、疎水性担体または溶液中に封入することができ、これにより、疎水性の増加がもたらされる。
【0147】
本発明の化合物および医薬組成物は、対象に対して、任意の好適な経路で投与可能である。例えば組成物は、舌下を含む経口的に、直腸内、非経口的、嚢内、膣内、腹腔内、局所的、および経皮的(粉末、軟膏、またはドロップによる)、口腔内、または経鼻的に投与可能である。本明細書において用いる場合、用語「非経口」投与とは、胃腸管を通す以外の投与方法を指し、これには、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内(intrasternal)、乳房内(intramammary)、眼球内、眼球後、肺内、くも膜下腔内、皮下、および関節内注射および注入を含む。外科的移植も意図され、これには例えば、本発明の組成物を体内に、例えば脳内に、腹腔内に、脾膜下に、脳内に、または角膜内に包埋することを含む。いくつかの好ましい態様において、化合物は、経口的、局所的、静脈内、または筋肉内に投与する。
【0148】
好ましくは、化合物は経口投与する。好ましい用量レベルは、代表的な化合物について動物において決定される。本発明において記載される全てのCORM化合物は、身体への投与後にCOを発生する。発生されたCOは、赤血球中のヘモグロビンに結合する。したがって、用量設定試験は、最初は、血液中のカルボキシヘモグロビン(COHb)レベルの測定により誘導される。血液中のCOHbレベルの測定方法はよく知られており、診断研究所において定期的に用いられている。健康なヒトの正常COHbレベルは、健康な非喫煙者で約0.5%から喫煙者での9%までである。本発明に記載の化合物の好ましい用量レベルは、COHbレベルの重大な上昇が観察されないレベルである。しかし、いくつかの用途においては、10%までの一時的なCOHbレベルの上昇も耐容することができる。このCOHbレベルは、任意の症状と関連するものではない。
【0149】
代表的な例として、クラス1〜4の化合物は、CO含有化合物の性質およびそのモルCO含量に依存して、5〜25mmol/日の範囲の用量において投与される。CO含有化合物の同一範囲の用量が、クラス3化合物にも適用される。クラス2および5の複合体(conjugate)については、用量は低い5mg/日から1日10gまで変化することができ、好ましい値は成人に対して1g/日である。これらは、CO担体分子断片の性質に依存した、指標となる値であり、薬物または剤の用量の通常範囲に適合する。ポリハロメタンおよびクラス6の類似の化合物、例えばジクロロメタンについては、用量範囲はos当たり0.01〜10mmol/kgであり、好ましい用量レベルは0.1mmol/kgである。活性成分の同じ用量範囲が、クラス7の化合物にも適用される。
一般に、用量は所望の薬物レベルを、局所的または全身的に達成するために適切に調節される。対象における応答がかかる用量では不十分な場合は、より高い用量(または、別のより局所的な送達経路による効果的な高い用量)を、患者の耐容が許容するまでの範囲で用いることができる。
【0150】
本発明の医薬調製物は、それのみで、または他の剤と共に用いられる場合、治療有効量で投与される。治療有効量とは、ヒト対象などの対象を処置するのに有効な薬物(単数または複数)のレベルを確立する量である。有効量とは、その用量のみで、または複数用量で、感染症の発症を遅延させる、その進行を完全に抑制または弱める、または発症もしくは進行を止めるのに必要な量である。これは、当業者に知られた日常の診断方法によりモニタリング可能である。対象に対して投与された場合、有効量は、当然ながら、エンドポイントとして選択された特定の副作用;状態の重篤度;個々の患者の、年齢、身体的条件、サイズおよび重量を含むパラメータ;同時に行う処置;処置の頻度;および投与方法などに依存する。これらの要因は当業者によく知られており、日常の実験の範囲で対処することができる。
【0151】
有効量を決定するのに関連する要因は当業者に知られており、日常の実験の範囲で対処することができる。一般に、本発明の医薬剤(単独でまたは他の治療剤と組み合わせて)の最大用量を用いるのが好ましく、すなわち、合理的な医学的判断に従った最大安全用量である。しかし当業者には、患者が医学的理由、精神的理由、または実質的に任意の他の理由により、より低い用量または耐容可能な用量を主張し得ることを理解する。
本発明の他の側面により、医療用製品が提供される。医療用製品はCORMを含有するバイアル、および任意に、他の剤(例えば抗感染症剤)を含有するバイアルを含む。医療用製品はまた、CORMが感染症を抑制するためであることを示す表示も含む。表示は、CORMを含有するバイアル上に添付されたラベル、またはCORMを含有するバイアルを含むパッケージ内のラベルであってよい。
【0152】
本発明の方法は、患者の処置に対して、および新しい治療法の臨床的開発に対しても、重要な意義を有する。臨床研究者は現在、本方法を、臨床試験におけるヒト対象についての参加基準を決定するために用いることが期待される。医療従事者は、対象に対して期待される純便益に基づいて、処置用の治療計画を選択する。純便益は、リスク対効果比から導出される。
本明細書で引用された任意の特許または刊行された出願の開示の全体は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
本発明は以下の例により例示され、本明細書において、感染症の一定種類の処置を参照して説明される。これらの例示の処置において、標準の最新技術モデルが用いられる。
【0153】

例1
緒言:
一酸化炭素(CO)は無色無臭の二原子気体であり、化学的に不活性で、有機物の酸化または燃焼の産物として自然に存在する。高濃度で存在する場合のその致死効果のために、COは長年、自動車排気物質による大気汚染で生じる環境毒性物質としてのみ、考えられてきた。ヒト身体が少量のCOを産生することができるという知識および、ヘムオキシゲナーゼ活性に由来するCOが重要な細胞内機能に寄与するという証拠は、COが致死的毒素であるとの認識を修正して、その有益な効果を含めるようにさせた(15、16、22)。その結果、COガスまたはCO放出分子(CORM)の応用が、医療における新しい治療戦略として出現してきた(10、13、18)。毒物から哺乳類において重要性を有する分子としてのCOの進化は、他の二原子気体である酸化窒素(NO)にも平行して見出されている(17)。NOは、身体中で酸化窒素シンターゼにより産生され、COと多くの下流シグナル経路および調節機能を共有し、特に溶解性グアニリルシクラーゼの活性化に関与する(7、8、12)。
【0154】
さらに、2つの分子間には相互作用があり、なぜならば、COは酸化窒素シンターゼのモジュレーターであり(10、22)、NOはヘムオキシゲナーゼを上方調節し(19、20)、これは次に、遊離のヘムをビリベルジンに酸化分解し、同時に鉄およびCOを放出する。NOはまた、哺乳類免疫系が病原体と闘うための武器の1つを構成する(3、4)。NOの殺菌機能は、病原体中に引き起こされる有害効果、例えば鉄中心(iron center)のニトロシル化に依存する。COは半減期の長い安定で中性の分子であるが、これはNOと、ヘムタンパク質の鉄に対する高い親和性を共有し、これがその毒性のべースである。こうして、我々は細菌増殖速度に対するCOの潜在的作用を探索する。この目的のために、我々は、気体形態における、またはCORMの処置を介して、COの大腸菌および黄色ブドウ球菌に対する生物活性を試験した。これらの細菌は、コミュニティにおいて広く蔓延している主要なヒトの病原体であり、院内感染症に関連して、懸念すべき程度の抗生物質耐性を示しているものである。
【0155】
材料および方法
試薬:COについての異なる給源または参照は以下である:トリカルボニルジクロロルテニウム(II)二量体(CORM−2)、Sigma;トリカルボニルクロロ(グリシネート)ルテニウム(II)(CORM−3)、参照6;ブロモ(ペンタカルボニル)マンガン(式VIの化合物)、参照5;およびテトラエチルアンモニウムモリブデンペンタカルボニルブロミド(式Vの化合物)、参照2。全ての化合物は、ジメチルスルホキシド、純蒸留水、またはメタノール中に溶解することにより10mMの原液として新たに調製した。
【0156】
細菌株および増殖条件:大腸菌K−12 ATCC23716および黄色ブドウ球菌NCTC8325を、それぞれ、最小塩(MS)培地中(1.3%[wt/vol]NaHPO、0.3%[wt/vol]KHPO、0.05%[wt/vol]NaCl、および0.1%[wt/vol]NHClに、20mMのグルコース、2mMのMgSO、100μMのCaCl、および0.25%[wt/vol]カサミノ酸を補足したもの)、Luria Bertani(LB)培地中(1%[wt/vol]トリプトン、0.5%[wt/vol]酵母抽出物、および1%[wt/vol]NaCl)で、異なる酸素供給条件下で増殖させた。好気性実験は、その容積の5分の1まで充填したフラスコを用いて行い、微好気性試験は、その容積の5分の1まで充填した閉じたフラスコを用いて行い、嫌気的条件は、一度培地を充填して閉じたゴム密封のフラスコ中に、窒素ガスを多量に流して作製した。
【0157】
COガスおよびCORM処置:大腸菌または黄色ブドウ球菌を、それぞれLBまたはトリプシン大豆ブロス中で増殖させた一晩培養物を用いて、新鮮なMS培地(大腸菌)またはLB培地(黄色ブドウ球菌)に播種し、新鮮培地上の培養物を37℃で必要な通気条件下でインキュベートして、600nmでの光学密度が0.3になるようにした。この時点で、細胞をCOガス流に15分間、またはCORMに暴露した。未処置の細胞を窒素ガスで泡立たせるか、または用いた溶媒によりジメチルスルホキシド、水もしくはメタノールで処置してCORMを溶解した。式Vの化合物の不活性形態を、閉じたフラスコ内の20%メタノールと2〜3時間激しく混合することにより調製した。式Vの化合物の対イオン、テトラエチルアンモニウムブロミド、および式V分解化合物の産物の1つ、モリブデン酸ナトリウムを、式Vの化合物の濃度と同じ濃度で用いた(50μM)。
【0158】
生存度アッセイ:生細胞の数を、種々の培養物の連続希釈物を寒天プレート上にプレートして、1ミリメーター当たりのCFUを測定することにより評価した。生存パーセントを、処置培養物に由来するコロニーの数を、未処置培養物のプレーティングで形成されたコロニー数で割って算出した。感受性試験は、培養物の5μlの連続希釈物を4時間増殖させCORMで処置したものを、COスカベンジャーヘモグロビン(Hb[20μMで用いたウシ形態;Sigma])の存在または不在において、寒天上にプレートして行った。実験は、最小で3回の独立した培養物を用いて行い、結果は1標準偏差を表わすエラーバー付きで平均値で示す。
【0159】
MICおよび最少殺菌濃度(MBC)の検討を、管希釈試験により行った。簡潔に述べると、2.5mlの最少培地を、大腸菌または黄色ブドウ球菌の一晩培養物と共に播種して、600nmでの光学密度を0.005〜0.01とした。150μMおよび2mMの間の異なる濃度のCORM−2を、24ウェルプレート内の希釈懸濁液に加え、プレートを少なくとも18時間、37℃および90rpmでインキュベートした。連続希釈物中に目に見える増殖の徴候のない、第1ウェルのCORM−2の濃度を、MICとして報告した。細胞増殖を示さない全ての培養物を次に、いかなる薬物もない寒天上に続いてプレートした。37℃で24時間のインキュベーション後、増殖のない培養物中のCORM−2の最低濃度をMBCと仮定した。
【0160】
CO放出動態:CORMを、密封管内でMS培地またはLB培地と混合し、管を室温で一定に撹拌しつつ、光から保護してインキュベートした。気体試料を30分後に収集し、CTRIカラム(Alltech)および熱伝導度検出器を装備したガスクロマトグラフィ(Thermo Finnigan Trace)で手動で分析した。放出されたCOは、反応コース前に記録した較正曲線を用いて定量化した。
誘導結合プラズマ質量分析法:MS培地中で50μMの式Vの化合物の存在または不在で培養した大腸菌細胞を、1時間の培養後に収集して、ペルチェインパクトビーズ噴霧室および同心マインハード(Meinhard)噴霧器を備えた四重極誘導結合プラズマ質量分析装置(X series; Thermo Elemental)で分析した。実験パラメータは以下である:790Wの正電力、ピークジャンピングモード、および各反復毎に150回の掃引(滞留時間、10ms;不動時間、30ns)。1〜100μg/Lの範囲での7点較正を用いて、金属濃度を定量化した。金属含量の決定用の変動計数(n=5)は、0.5〜2%の範囲であった。金属濃度測定値の精度および正確度は、参照金属(カナダ国家研究会議からのTORT−1、TORT−2、DORM−2およびDORM−3)の反復分析を通して、インジウムを内部標準として用いて決定し、これは1〜2%の範囲であった。手続きブランク(procedural blank)は常に、試料中の全モリブデン濃度の1%未満であった。
【0161】
結果および考察
細菌の生存度に対するCOの効果を、まずCOガスの直接送達により検討した。COガスの投与、増殖する培養物に流すことは、大腸菌および黄色ブドウ球菌の増殖の著しい障害をもたらす(図1)。CORMの可能性を評価するために、図2に示す化合物を選択した。CORM−2およびCORM−3は、種々のCO媒介性生物学的過程において、in vitroおよびin vivoの両方で活性である(9)。
【0162】
第1のシリーズの実験において、CORM−2から放出されるCOの、大腸菌および黄色ブドウ球菌の増殖に対する効果を、異なるレベルの酸素供給の元で培養された細菌を用いて試験した。CORM−2への暴露後短時間で、生存する細胞のパーセンテージは大幅に減少した(図3)。水溶性CORM−3を用いた実験は、その化学的組成のためにCORM−2よりも高い濃度が必要であるにも関わらず、CORM−3化合物も、大腸菌および黄色ブドウ球菌細胞の生存を大幅に低下させた(図4)。しかし、CORM−3の添加は大腸菌細胞の増殖を強力に阻害する一方で、黄色ブドウ球菌はCORM−3に対してより耐性が高く(図4A)、特に好気性条件下で高い。一般にこれら2つの化合物の作用は迅速であって長時間にわたるが、それは、細胞が続く4時間の間(図3および4)、または8時間(データ示されず)、増殖を開始しないためである。
CORMの殺菌効果がCOによるものであるかどうかを試験するために、CORMを用いた細胞増殖実験を、高親和性COスカベンジャーであるHbの存在下で行った。全ての場合において、大腸菌および黄色ブドウ球菌に対する殺菌効果は完全に失われ(図3Bおよび4B)、したがって、CORMの抗菌作用は、そのCO放出によることが示された。
殺菌活性は、MBCのMICに対する比が<4であると定義されている(14)。大腸菌および黄色ブドウ球菌に対するCORM−2のMBC/MIC比が、それぞれ1.5および1.0と決定されたことは、CORM−2の殺菌特性を明らかにした。
【0163】
COの殺菌効果を検討するために用いた2種の他のCORM、すなわち、式IVのマンガンカルボニル化合物および式Vのモリブデンカルボニル化合物もまた、大腸菌および黄色ブドウ球菌の生存度を強力に減少させ得ることが示された(図5および6)。再度、Hbの添加は式IVの化合物および式Vの化合物の、2種の細菌に対する有害作用を完全に消滅させた(図5および6)。さらに、式Vの化合物の活性に対して、その分解産物が関与しないことを確認するために、臭化テトラエチルアンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、および式Vの不活性化合物溶液の、CO放出停止後に得られる細菌増殖に対する効果を試験した(材料および方法を参照)。これらの化合物のいずれもが、殺菌特性または増殖動態の変化をもたらさなかった(データ示されず)。したがって、式Vの化合物の殺菌効果は、そのCOを放出する能力のためである。
【0164】
CORM−2またはCORM−3のどちらもが、用いた培地中に溶解された場合には、我々の実験で用いた濃度より高い濃度であっても、COガスを放出しないことは言及されるべきである(表1)。さらに、式IVの化合物および式Vの化合物が培地中に溶解された場合にCOガスを放出しても、実験の時間スケール内において少量のみを放出する(表1)。しかし、式Vの化合物と共にインキュベートされた大腸菌細胞の誘導結合プラズマ質量分析により、対照細胞(2.5μg/g)におけるのと比較して、Mo含量の非常に大きな増加(155μg/g)が示され、これにより、式Vの化合物からのMoは大腸菌細胞内に蓄積され、そこで細胞標的に向けてCOを放出することが確認された。
【0165】
表1.CORMαにより培地中に放出されるCO
【表1】

αCOの量は、CO当量として表わす(CORM分子当たり放出されたCO基の数)
【0166】
CORMの殺菌効果は、COガスの細胞外培地への放出を必要としないため(表1)、COはCO−RMから直接細胞標的へと送達されると結論づけた。殺菌活性な(CO負荷された)式Vの化合物からのMoが、細胞内に迅速に蓄積することが見出されたため、これがCOを輸送し、細胞内腔へと送達し、そこでCOは細胞標的に到達して、細菌細胞の生存度の減少を引き起こす。Hbが培地中に存在する場合、HbのCOへの高い親和性が、活性COのCORMから(またはガスから)タンパク質ヘムへの迅速な移送をもたらし、COをCOHbとして効果的に排除する。これらの条件下で、COは細胞内送達に利用可能ではなく、細胞は生存し続ける。
【0167】
いくらかの小さな偏りはあるが、我々の結果の一般パターンは、CORMの毒性が、低い酸素濃度下で増殖が起こる場合に増強されることを示す。例えば、式IVの化合物は、嫌気的に増殖した大腸菌細胞(200μMの式IVの化合物)の生存度を、好気的に増殖した細胞(500μMの式IVの化合物)よりもより効率的に減少させる。低い酸素濃度でのCOの効果の増加は、COのヘムタンパク質の第1鉄形態への優先的結合により説明することができ、これは、還元環境下において優勢である。より重要なことは、CORMの嫌気性条件下での殺菌効果は、増殖の阻害が、好気性条件下でのこれらの化合物の殺菌活性に寄与すると考えられる、COのチトクロームオキシダーゼへの結合による呼吸反応連鎖の障害に限定されないことを示す。この事実は、病原体のコロニー形成が嫌気性に近い環境において起こり、また多くの病原体が嫌気性生物であるために、非常に重要である。一方、細菌細胞壁の種類も、CORMの作用を妨害しないようであり、これは同じくCORM処置によってグラム陽性(黄色ブドウ球菌)およびグラム陰性(大腸菌)種について観察される、同様の細胞生存度の減少から判断されるものである。したがって、CORMは、細胞壁の種類および酸素増殖要件に依存することなく、広範囲の微生物に対する殺菌剤として、および抗感染症剤として用いられる可能性を有する。
【0168】
溶解分子性COガスとCORMの作用の、程度の差は非常に大きい。ガスとして投与された場合、殺菌剤として効果的であるためには、COはかなり高い濃度(約1mM)で存在しなければならない。CORMの、CO放出前に細菌細胞内で蓄積する能力は、これらの化合物を細菌標的に対する高度に効果的なCOドナーとし、これにより、COの殺菌効果を大きく増加させる。事実、この試験で用いたCORMは、COをHbへと移送してCOHbを形成することができるが、このことは、Hbソレー帯を413から418nmへとシフトさせることから(データ示されず)、および図3B、4B、5および6に示した結果から判断される。したがって、CORMは、ミオグロビンのCORM−3による迅速なカルボニル化により前に示したように、COをヘム含有分子へと送達することができる(11)。同様に、CORM−2およびCORM−3によるHbのカルボニル化は混合時間中に生じ、一方、式IVの化合物および式Vの化合物によるカルボニル化は、15分以内に生じる。
【0169】
COの哺乳類細胞に対する生物学的効果は、主にその鉄含有タンパク質との、例えば上記のチトクロームオキシダーゼとの相互作用によることは、よく知られている。ヘムタンパク質およびセンサーに加えて、COはほとんど全ての遷移金属含有タンパク質に結合することができる。いかなる特定の機構または理論に束縛されることを意図することなく、COは、微生物中(例えば細菌)の遷移金属含有タンパク質に結合可能であると考えられており、これによって構造的修飾およびそれらの生物学的機能の変化をもたらし、おそらく、本研究により明らかにされたCOの微生物への毒性効果を説明するであろう。
【0170】
COを医療に用いることへの期待の増加に関わらず(10、13、18)、今日までCOの殺菌化合物としての役割についての研究は行われていなかった。しかし、1970年代初めに、COを大腸菌の好気性培養物に加えると、DNA複製の低下が引き起こされることが報告された(21)。しかしこの研究の著者らは、グルコースで嫌気的に増殖する細胞に対するCOの効果を観察しなかったため、好気的条件下で増殖する細胞におけるDNA合成の阻害は、複製装置への直接的効果のためではなく、ATPまたはデオキシヌクレオシド三リン酸欠乏などの間接的効果から生じる(21)と結論付けた。さらに近年には、いくつかの社会的関心にも関わらず、COは食品産業において、肉類および魚の暗筋肉組織に明るい赤色を生成するために用いられており、これは、ミオグロビンのFe(II)結合部位に対するCOの大きな親和性から生じる。興味深いことには、異なる包装システムの肉類の保存への影響を試験した最近の研究により、COガスを添加した包装は、他の包装より細菌の増殖が少ないことが示された。これらの結果は、COが、微生物の増殖を阻害するのに役割を果たす包装ガスの1つとなり得ることを示唆する(1)。我々は、COおよび、特にCORMが、好気性および嫌気性条件下で細菌を殺傷する能力を有することを示した。我々はCORMが、COを感染の標的へと送達し、赤血球によるin vivoでのCO排出を避けるのに用いることができる、抗感染(例えば抗細菌)分子の新規なクラスを構成することを提唱した(10)。特に、非全身性抗感染症剤(例えば抗菌剤)は、CORMの比較的容易な用途となり得る。全く新しい概念に基づく抗感染症剤(例えば抗菌剤)は、薬剤耐性細菌病原体の出現および広がりが、現在利用可能な抗生物質の有効性低下の懸念を明らかにしているために、緊急に必要とされている。
【0171】
参考文献:
【表2】

【0172】
【表3】

【0173】
【表4】

【0174】
例2
CORMのピロリ菌(H. pylori)に対する殺菌効果を、拡散ディスクを用いて、阻害ハロー(inhibition halo)を測定することにより評価した。簡潔に述べると、H. pylori26695を血液寒天プレート上37℃で24時間、微好気的条件下で増殖させた(Genbox microaer, BioMerieux)。細菌をプレートから取り出し、3mlのブルセラブロス(BB)中に再懸濁させ、この懸濁液200μlを血液寒天プレートに播種した。次に紙製ディスクを播種プレートの中心に置き、各々15μlのCORMを加えた。このアッセイに用いたCORMは、CORM−2および2種の別の水溶性CORM:式IIの化合物および式IIIの化合物であった。プレートを、記載の同じ条件下で24〜36時間インキュベートした。その後、阻害ハローを測定し、アッセイを少なくとも2回繰り返して、平均値を報告した。図7および8は、CORM−2、式IIの化合物およい式IIIの化合物がピロリ菌に対して殺菌効果を有することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染症を有するかまたは有するリスクのある対象を処置する方法であって、
かかる処置を必要とする対象に対して、感染症を処置するために一酸化炭素(CO)の有効量を投与すること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
COをCORMとして投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象が感染症を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
対象が、他の点ではCOによる処置を必要とする兆候を有さない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
CORMが、有機金属化合物または有機化合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
CORMが、アルギン酸溶液である薬学的に許容し得る担体中に製剤化されている、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
CORMが、経口的、静脈内、筋肉内または局所的に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
感染症が、グラム陽性菌、グラム陰性菌、抗酸菌、スピロヘータ、放線菌、ウイルス、真菌、寄生虫、ウレアプラズマ種、マイコプラズマ種、クラミジア種、またはニューモシスティス種により引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
感染症が、ヘリコバクターピロリ、大腸菌、または黄色ブドウ球菌により引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
感染症の処置の方法であって、
感染症を有するかまたは有するリスクのある対象に、該感染症の処置の目的で、COの有効量を摂取するよう指示することを含む、前記方法。
【請求項11】
対象に対し、COの有効量をCORMの形態で摂取するように指示する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
対象に対し、CORMを経口で摂取するように指示する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
感染症を有するかまたは有するリスクのある対象を処置する方法であって、
前記対象に対してCORMを含むパッケージを提供すること、および
前記対象に対して、CORMが、感染症を有するかまたは有するリスクのある対象を処置するためであることを指示する表示を提供すること、
を含む、前記方法。
【請求項14】
表示が、CORMを含むバイアルの上にある、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
表示が、CORMを含むパッケージに付随している、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
CORMと、CORMが感染症の処置用であることを指示する表示とを含むパッケージを含む、医療処置用製品。
【請求項17】
CORMがビン内にある、請求項16に記載の製品。
【請求項18】
表示が、ビンの上のラベル上にある、請求項17に記載の製品。
【請求項19】
感染症の処置用の医薬の製造における、CORMの使用。
【請求項20】
CORMが、有機金属化合物または有機化合物である、請求項19に記載の製品。
【請求項21】
構造:
【化1】

を有する化合物、またはその塩。
【請求項22】
構造:
【化2】

を有する化合物、またはその塩。
【請求項23】
構造:
【化3】

を有する化合物、またはその塩。
【請求項24】
請求項21〜23のいずれかに記載の化合物および薬学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物。
【請求項25】
1種または2種以上の剤をさらに含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
ヘリコバクターピロリ感染症を有する対象を処置する方法であって、
かかる処置が必要な対象に対して、請求項24または25のいずれかに記載の組成物の、ヘリコバクターピロリ感染症を処置するための有効量を投与すること含む、前記方法。
【請求項27】
ヘリコバクターピロリ感染症が、胃炎、十二指腸潰瘍、胃潰瘍、胃癌、または非潰瘍性消化不良である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
組成物を経口投与する、請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−525055(P2010−525055A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506110(P2010−506110)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際出願番号】PCT/PT2008/000017
【国際公開番号】WO2008/130261
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(509296270)アルファーマ−インベスティガシオ エ デセンボルビメント デ プロデュトス ファルマセウティコス エレデア. (2)
【氏名又は名称原語表記】ALFAMA − INVESTIGACAO E DESENVOLVIMENTO DE PRODUTOS FARMACEUTICOS LDA.
【住所又は居所原語表記】Taguspark − Nucleo Central 267, 2740−122 Porto Salvo Portugal
【Fターム(参考)】