説明

一酸化窒素デバイス、ならびに創傷の治癒、皮膚障害および微生物感染症の治療の方法

本開示は、バリア表面および接触表面を備えるケーシングと、一酸化窒素ガス前駆体、および一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換するための、もしくは一酸化窒素ガス前駆体の一酸化窒素ガスへの変換を引き起こす触媒を生成させる活性を基質に対して有する、単離された酵素、もしくは内因性酵素を発現する生細胞を有する、該ケーシング中の組成物とを具備するデバイスを提供する。本開示はさらに、創傷、微生物感染症および皮膚障害を治療するための、ならびに肉製品を保存するための方法および使用も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一酸化窒素を用いて、創傷、皮膚障害および微生物感染症を治療するための方法、デバイスおよび組成物に関する。詳細には、本開示は、一酸化窒素を局所投与するための方法、デバイスおよび組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷治癒は、多数の制御機構、事象および因子の統合に大きく依存する複雑な過程である。炎症細胞、ケラチン生成細胞、線維芽細胞および内皮細胞、ならびに多くの酵素および成長因子は、正常な治癒過程が生じるように切れ目なく相互作用しなければならない(Blackytnyら、2006)。血塊形成、炎症、再上皮化、血管新生、肉芽形成、収縮、瘢痕形成および組織リモデリングの過程の間、このような因子が共に作用して、適切な創傷治癒を確実にすることになる。糖尿病および静脈鬱血などいくつかの病態は分子レベルでのいくつかの変化を伴い、こうした変化は、最終的に、正常な創傷治癒を中断させ、慢性創傷の形成の原因となることがある(Blackytnyら、2006)。
【0003】
このような変化の1つは、創傷治癒過程の間の一酸化窒素(NO)の調節の病理学的変化である(Blackytnyら、2006)。内皮由来弛緩因子(EDRF)は実際にはNOであることが1987年に発見されて以来、NOは非常に広範に分布しており多機能な細胞メッセンジャーであることが明らかにされてきた(Palmerら、1988)。通常、NOは、アミノ酸L-アルギニン由来の酵素である一酸化窒素合成酵素(NOS)により生成される。NOは、血圧の調節および血小板凝集の制御に関与する一過性のフリーラジカルであり(Mollaceら、1990)、免疫複合体の組織堆積が原因で生じる血管損傷に関与していると考えられる(Mulliganら、1991)。正常な治癒の間、NOラジカルの生成は非常にはっきりした経時変化を示し、最初は細菌感染の阻害および除去に役立つ高濃度の、次いで、正常な創傷治癒過程が行われることを可能にする、より低レベルのフリーラジカルが生成される(Blackytnyら、2006)。外傷に対する体の自然な応答は、細菌数の減少、死細胞の除去および治癒の促進には、最初は高いNO濃度を伴うと考えられる。こうして創傷床が準備された数日後、体は、さらなる治癒を促進するための新しい低いNOレベルを生成する(Stenzlerら、2006)。しかし、創傷が治癒できず、または感染した際には、体は循環NOを高レベルで維持し、これにより創傷は自身の治癒を妨げる悪循環に陥る(Stenzlerら、2006)。
【0004】
感染創傷は、慢性創傷、非治癒性の潰瘍、さらには手術後の健康な創傷を治療する創傷看護の専門家に対し、特別で重大な問題を提起する。典型的には、このような創傷は、壊死組織切除のための毎日のwet-to-dryドレッシング(wet-to-dry dressing)交換、および感染症治療のための局所用または全身性の抗生物質を用いる看護師、内科医、形成外科医および感染性疾患の専門医により治療されている。しかし、全身性および局所用の抗生物質、ならびにコロイド状銀、ポリミキシンまたは色素化合物など他の局所用抗微生物剤は、一般的な病原体に対して徐々に効果が薄れてきている。抗微生物剤の導入以来、細菌の薬物耐性株が世界的に増加していることから、これは広く認められる傾向であることが実証されている。GorwitzおよびAnsteadらは両方とも、皮膚および軟部組織におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus)(MRSA)感染症を最近概説し、その出現を、地域社会および病院施設の両方における小児および成人の感染症の共通原因として記載している(Ansteadら、2007; Gorwitz、2008)。Linares、2001は、感染に対抗する薬物および戦略がほとんど存在しないバンコマイシン中間体耐性黄色ブドウ球菌(vancomycin intermediate resistant Staphylococcus aureus)(VISA)および糖ペプチド中間体黄色ブドウ球菌(glycopeptides-intermediate S. aureus)(GISA)の出現について、最近概説している。さらに、Nordmannらは、エンテロコッカス・ファシウム(Enterococcus faecium)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)など、院内感染および市中感染病原体の間で出現している新しい耐性の問題を最近概説している(Nordmannら、2007)。緑膿菌感染症はとりわけ問題であるが、その理由は、患者が免疫抑制されていることが多いか、または身体障害が重く人工呼吸を受けているからである。したがって、一般的な抗微生物剤が効かなくなり始めると、従来の抗生物質に頼らない代替治療が必要になる。
【0005】
慢性の感染創傷を全身性の抗生物質で治療する際の別の問題は、そのような創傷は局部および局所循環の低下を伴う場合が多いことである。静脈鬱血潰瘍患者は、静脈に血栓が形成されており、循環が低下し局所血流が乏しく、糖尿病性足潰瘍患者は、グルコースの堆積および循環の低下により微小循環が不十分である。全身性の抗生物質は、毛細血管および小血管の収縮が原因で創傷への血流がさらに減少し抗微生物剤の送達量が減少することから、この問題を悪化させる場合がある。局所剤は、抗微生物剤を創傷部位に集中させる際にはより有効であることが多いが、循環が再度低下することを含め他の理由から、感染症を排除する際には比較的効果が低い場合が多い。したがって、伝統的な療法では、感染創傷が治療されないまま、患者の四肢または生命が危険な状態に置かれていることが多い。
【0006】
循環不良および耐性感染症に加え、多くの慢性創傷は、毎日の創傷看護、または高度な創傷看護療法を用いた治療の際、簡単には治癒しない。糖尿病性足潰瘍および静脈鬱血潰瘍は、患者および臨床家にとって同様に大きな困難をもたらす。患者は、末梢循環および微小循環に影響する慢性的で広範囲のアテローム性硬化症、静脈鬱血またはII型糖尿病により、非治癒性の創傷を患うことが多い。ほとんどの場合、この状態は運動不足および不適切な食習慣が原因で生じる。こうした患者は、下肢の創傷に負担がかからないようにしている間に寝たきりで動けなくなり衰弱するため、体を動かさない生活を送る問題は悪化する一方である。臨床家は、動脈にバイパス術を行うか、または創傷を外科的に被覆するよう外科医に頻繁に訴えるが、患者は、複数の併存疾患を有する場合が多く、栄養状態があまり良好ではなく、外科手術の対象としてふさわしくない。これにより、患者および臨床家には、時間がかかり高価で比較的効果の低い治療法である毎日のドレッシング交換で慢性創傷を治療する選択肢しか残されていないままである。現在の治療法は、慢性創傷を毎日のwet-to-dryドレッシング交換で治療し、創傷が完治するまで創傷を清潔かつ保護された状態に保つことである。しかし、コンプライアンス不足、循環不良、栄養不良、無菌的でない状態、およびこの方式で創傷を治癒するには単純に時間がかかることから、創傷は、何年も、さらには何十年もの間開いたままであることが多い。
【0007】
非治癒性の慢性創傷などの創傷にNOガス(「gNO」)を局所暴露することが、治癒を促進するうえで、また、治療および回復用の創傷床を準備するうえで有益である可能性があることが最近示されている(Stenzlerら、2006)。外因性のガスを施用すると、微生物感染症が減少し、炎症を抑えることにより滲出物および分泌物が管理され、内因性コラゲナーゼの発現が上方調節されて創傷が局所的に創面切除され、コラーゲンの形成が調節されることが示されている(Stenzlerら、2006)。さらに、NOgを用いた慢性創傷の治療用レジメンが提案されており、このレジメンでは、微生物量および炎症をまず低下させ、コラゲナーゼ発現を増加させて壊死組織を創面切除してから、NOのバランスを回復し、創傷閉鎖を助けるコラーゲン発現を誘導する、高レベルおよび低レベルでの治療期間をそれぞれ細かく指定する(Stenzlerら、2006)。実際、ケーススタディーでは、2年の非応答性、非治癒性の静脈鬱血潰瘍を閉鎖することができたとの、外因性のgNO施用による当該治療の有効性が示されている(Stenzlerら、2006)。しかし、NO送達デバイスは、エアポンプシステム、gNO源シリンダー、内圧センサー、圧力調節機、および患者の下肢を被覆するための膨らまし方式のカフが付いたプラスチック製フットブーツなど、かさばるうえ高価な多くの部品を利用するものであった(Stenzlerら、2006)。gNOの送達に伴うもう1つの欠点は、NOは、酸素(02)の存在下では急速に酸化して、低レベルであっても非常に有毒なNO2を形成することである。NO送達用のデバイスは、無酸素のもので、NOが酸化して有毒なNO2になるのを防ぎ、所望の治療効果に必要なNOの減少を防ぐものでなければならない(Stenzlerら、2006)。したがって、NOは02と反応してNO2に変換するものであるため、gNOと外部環境との間の接触を最低限にすることが望ましい。
【0008】
NOの抗微生物効果は、さまざまな観察により示唆されている(例えば、Ghaffariら、2006)。第一に、誘導型NO合成酵素によるNO生成は、IFNγ、TNF-α、IL-1およびIL-2などの炎症促進性サイトカインにより、ならびにリポ多糖(LPS)またはリポ酸のようないくつかの微生物生成物により刺激されている(Fang、1997)。ヒトおよび実験動物の感染症は、尿および血漿中の硝酸が上昇していることにより証明されるように、全身性のNO生成を誘発した。第二に、動物モデルにおけるNOの発現上昇は、宿主が感染病原体に対抗する能力を高め、微生物増殖を阻害し、宿主応答を全体に向上させた(Antseyら、1996、Evansら、1993)。第三に、in-vitro試験により、NO合成酵素を阻害すると、サイトカインが介在する食細胞の活性化が弱まり、殺菌活性および静菌活性が低下することが実証された(Adamsら、1990)。さらに第四に、in-vitroでのNO-供与体化合物の直接投与により、微生物の静止および死が誘導された。重要なことに、NO依存性の抗微生物活性は、ウイルス、細菌、真菌および寄生虫において実証されている(DeGrooteおよびFang、1995)。
【0009】
NOの抗微生物活性の妥当と思われる機序の1つに、このフリーラジカル(および活性窒素中間体)が、過酸化水素(H2O2)およびスーパーオキシド(02-)などの活性酸素中間体と相互作用してさまざまな抗微生物性の分子種を形成することがある。このような抗微生物性の反応性誘導体としては、NO自身に加え、過酸化亜硝酸(OONO-)、S-ニトロソチオール(RSNO)、二酸化窒素(NO2)、三酸化二窒素(N2O3)および四酸化二窒素(N2O4)が挙げられる。こうした反応中間体は、DNAを標的にして、脱アミノ化、ならびに脱塩基部位、鎖切断および他のDNA変性などの酸化的損傷を引き起こすことが示されている(Juedesら、1996)。活性窒素中間体は、活性チオール、ヘム基、鉄-イオウクラスター、フェノール酸もしくは芳香族アミノ酸の残基またはアミンを介してタンパク質とも反応できる(Ischiropoulosら、1995)。過酸化亜硝酸およびNO2は、異なる部位でタンパク質を酸化できる。加えて、NOは、メタロ酵素から鉄を放出して鉄枯渇を生じさせることがある。代謝酵素のNO介在性の阻害は、NO誘導性の細胞性塞栓の重要な機序を構成すると考えられる。さらに、遊離チオール基のニトロシル化は、代謝酵素の失活の原因となると考えられる(Fang、1997)。
【0010】
NOの抗微生物効果のいくつかの例が文献に記載されている。NOの抗ウイルス活性は、Kawanishi(Kawanishi、1995)によりin-vitroでの細胞培養物実験において記載されているが、この実験では、NO供与体は、過酸化亜硝酸形成の結果として、エプスタイン・バーウイルスの後期タンパク質合成、ウイルス複製を防止するDNAの増幅を阻害した。
【0011】
加えて、NOと、マクロファージにより生成されたスーパーオキシドとは、リーシュマニア症のマウスモデルにおいて過酸化亜硝酸が関与する抗寄生虫効果をもたらし(Augusto、1996)、局所的なNO供与体である三硝酸グリセリルが、皮膚リーシュマニア症を治療するために首尾よく使用された(Zeinaら、1997)。
【0012】
さらに、最近の観察から、マウスのマクロファージは過酸化亜硝酸合成によりカンジダに対する抗真菌薬活性を発揮することが示唆されている(Vasquez-Torresら、1996)。
【0013】
NOの抗菌作用は、S-ニトロソチオール介在によるセレウス菌(Bacillus cereus)の芽胞増殖の阻害などさまざまな機序により示され(Morris、1981)、窒素活性種のいくつかのタンパク質標的が、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)において見出されている(DeGroote、1995)。
【0014】
多くの皮膚障害には、局所的なNO療法も適用しやすい。多くの場合、皮膚および基底組織の疾患は多因子性であり、局所的に、または傷害性病原体を取り除くことにより治療できる。多くの場合、疾患の機序またはその病態生理は、表皮、真皮、関連の幹細胞、細胞外マトリックス、神経構造および血管構造、複雑な細胞情報伝達ならびに炎症の細胞メディエーターの間の複雑な相互作用と関連がある。他の場合、疾患は、生物活性化合物により除去、排除または制圧可能な傷害性病原体に直接関連がある。
【0015】
一酸化窒素は、かつて内皮細胞弛緩因子(ECRF)として知られていたもので、血管を裏打ちする細胞を局所的に弛緩させて細動脈の口径を増加させるように作用する。
【0016】
さらに、NOは、免疫調節およびTリンパ球応答性に関与している。一酸化窒素は、Tリンパ球の機能的成熟を調節することが示されており、その活性化を向上させることができる(McInnesおよびLiew、1999; Gracieら、1999)。哺乳動物の細胞アッセイにおいて、NOは、抗原に対するT-ヘルパー1(Th-1)クローン増殖を主に阻害することが示されている。成熟した表現型は、特定の濃度のNOと組み合わさると、NOがヒトT細胞に及ぼす調節作用に影響することが示されている。NOは、モノカイン産生の調節にも関与し、異なる種類の感染症への免疫応答の調節に寄与する因子としても関与している(McInnesおよびLiew、1999)。
【0017】
加えて、NOは、炎症促進剤および抗炎症剤として作用することが示されている。NOの内因的な合成は、炎症促進性サイトカインの産生と関連がある場合が多い。この効果は、健康な皮膚における、ランゲルハンス細胞の限局的な喪失およびケラチン生成細胞のアポトーシスなどの炎症促進効果を有することが示されているNO放出剤を用いた短期の局所治療により再現できる(Cals-GriersonおよびOrmerod、2004)。NOの内因性合成を遮断すると、NOの炎症促進効果は低下する。一方、NOは、ICAM1などの内皮細胞接着分子の下方調節により、炎症促進細胞の動員を低下させることが示されている(Cals-GriersonおよびOrmerod、2004)。一酸化窒素合成酵素2(NOS2)によるNO合成は、NO誘導性の転写因子NF-κB不活性化により部分的に自己調節される(Cals-GriersonおよびOrmerod、2004)。
【0018】
NOは、酸化ストレスを防御することにより、アポトーシスを防御することもできる。NOは、活性酸素種(ROS)を除去するように直接作用することにより、脂質過酸化などのROS介在性の細胞傷害、および結果として生じるアポトーシスを低下させることができる。NOは、チオレドキシン発現の誘導による酸化ストレスが原因で生じるアポトーシスの低下にも寄与する。NOは、cGMPに依存する様式で、TNFα誘導性のアポトーシスから細胞を保護することが実証されている(Cals-GriersonおよびOrmerod、2004)。Bcl-2発現の誘導およびカスパーゼ活性化の抑制は、NOがアポトーシスから細胞を保護することができる別の機序であることを示唆する証拠もある(Cals-GriersonおよびOrmerod、2004)。
【0019】
NOS2発現の調節異常は、皮膚炎におけるバリア機能不全と関連がある場合が多い。このNOは、角質層を形成することになるケラチン生成細胞における末端の分化事象を阻害するとの仮説が立てられる(Cals-GriersonおよびOrmerod、2004)。NOは、角質化に必須のいくつかの末端分化タンパク質の転写を阻害し、他を不活性化することが示されている。外因性のNOを実験的に加えると、この効果は増幅されない(Cals-GriersonおよびOrmerod、2004)。
【0020】
酸化的損傷は、酸素の存在下で鉄に錆が形成されるのに似た時間依存性の過程である。生物に関連のあるフリーラジカルは活性酸素種(ROS)と呼ばれるが、その理由は、生物学的に意味のあるほとんどの分子は酸素が中心にあるからである。植物および下等生物は、ROSに対処しその形成を阻止するための酸化防止物質を作る生化学的機構を進化させてきた。そのような酸化防止物質としては、親油性および親水性の外層構成物を保護するために使用されるビタミンEおよびビタミンCが挙げられる。残念ながら、ヒトは、特定の遺伝子の突然変異により、皮膚中の有力な酸化防止物質であるビタミンCを作る能力を失っている。ビタミンCおよび他の酸化防止物質は、炎症反応により内因的に、または環境の酸化ストレス(UV、オゾンなど)により外因的に形成されたROSから、生体膜など細胞の外層およびDNAを保護するように働く。
【0021】
そのような酸化防止物質は、酵素的および非酵素的な酸化防止物質、ならびに親水性のものおよび親油性のものに分けることができる。一酸化窒素は、生物学的に利用可能であることからROSの作用を防止するために使用できる、最も多く天然に存在する還元剤である。ROSの病態生理としては、生体膜、DNA、酵素への、および細胞外マトリックスタンパク質への傷害が挙げられる。皮膚のこうした生物学的構成要素は、皮膚の正常な形態および機能にとって不可欠である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Altschul, S.F.、Gish, W.、Miller, W.、Myers, E.W. & Lipman, D.J.、(1990)、「Basic local alignment search tool.」、J. Mol. Biol.、215、403〜410頁
【非特許文献2】Gish, W. & States, D.J.、(1993)、「Identification of protein coding regions by database similarity search.」、Nature Genet.、3、266〜272頁
【非特許文献3】Madden, T.L.、Tatusov, R.L. & Zhang, J.、(1996)、「Applications of network BLAST server」、Meth. Enzymol.、266、131〜141頁
【非特許文献4】Altschul, S.F.、Madden, T.L.、Schaffer, A.A.、Zhang, J.、Zhang, Z.、Miller, W. & Lipman, D.J.、(1997)、「Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search programs.」、Nucleic Acids Res.、25、3389〜3402頁
【非特許文献5】Zhang, J. & Madden, T.L.、(1997)、「PowerBLAST: A new network BLAST application for interactive or automated sequence analysis and annotation.」、Genome Res.、7、649〜656頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
要約すると、いくつかのグループが、NO生成パッチ、または複雑で高価な放出デバイスに由来するNOgを保持するプラスチック製の封じ込めデバイスを開発している。しかし、これは、かさばる「ガス希釈式送達システム」および「使い捨て用プラスチックブーツ」を用いる高価な解決法である。化学反応を利用してガスを生成させる他のデバイスは、費用および利便性の問題については解決したと考えられるが、経時的に一定の濃度を供給することはできない。NOを生成させて創傷、微生物感染症および皮膚障害を治療するための実用的なデバイスおよび組成物が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らは、遊離型の酵素、または成長培地と組み合わせた細菌が、有効量の一酸化窒素ガス(gNO)を連続して生成するように基質上で作用する、組成物およびデバイスを開発した。この組成物は、典型的には、時間放出型の組成物である。基質上で作用してgNOを生成する細菌または酵素単離物を含有する組成物およびデバイスは、創傷、微生物感染症および/または皮膚障害の治療において有効である。
【0025】
本発明者らは、制御された量の一酸化窒素(NO)を持続的に生成させるための微生物を使用するデバイスを設計した。硝酸からの脱窒経路を経るNOの生合成は微生物においては周知の機序であり、本出願は、そのようなガスを使用した創傷、微生物感染症および/または皮膚障害の医学的治療の方法を最初に開示するものである。乳酸桿菌によっては、嫌気条件下で、硝酸(NO3-)を亜硝酸(NO2-)およびNOに還元するものがある(硝酸還元酵素)(Wolfら、1990)。他の微生物は、嫌気条件下の成長培地においてL-アルギニン(NOS酵素)による硝酸の代謝によりNOを生成する(Xu & Verstraete、2001)。
【0026】
固定化した細菌または遊離酵素は、前駆体基質の存在下では、所望の治療時間にわたり、また、治療上妥当なレベルで、NOを生成できる。細菌または酵素の治療能力は、それらが十分な栄養分を有し、過剰な不要物に囲まれておらず、治療用ガスの生成に際し生化学的に有効であるために必要な基質および補因子を有する期間にわたり、維持される。
【0027】
したがって、本出願は、局所に由来する一酸化窒素を使用して創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するための方法、組成物およびデバイスを開示する。
【0028】
一態様では、本出願は、一酸化窒素ガスを罹患組織に局所送達するための組成物を提供する。一実施形態では、本出願は、一酸化窒素ガスを罹患組織に送達するための組成物であって、(a)(i)一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換する活性を有するか、もしくは(ii)一酸化窒素ガス前駆体の一酸化窒素ガスへの変換を引き起こす触媒を生成させる活性を基質に対して有する、単離された酵素、もしくは内因性酵素を発現する生細胞、または(b)一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換するための触媒を生成する生細胞と、担体とを含む組成物を提供する。一実施形態では、一酸化窒素ガス前駆体は、対象の組織上に、例えば、汗から生成された硝酸の形態で存在する。別の実施形態では、この組成物は、一酸化窒素ガス前駆体をさらに含む。また別の実施形態では、担体はマトリックスを備える。
【0029】
別の態様では、本出願は、一酸化窒素ガスを罹患組織に局所送達するためのデバイスを提供する。一実施形態では、本出願は、一酸化窒素ガスを罹患組織に送達するためのデバイスであって、バリア表面および一酸化窒素ガス透過性の接触表面を有するケーシングと、i)一酸化窒素ガス前駆体、およびii)(a)(1)一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換する活性を有するか、もしくは(2)一酸化窒素ガス前駆体の一酸化窒素ガスへの変換を引き起こす触媒を生成させる活性を基質に対して有する、単離された酵素、もしくは内因性酵素を発現する生細胞、または(b)一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換するための触媒を生成する生細胞を含む、該ケーシング中の組成物とを備えるデバイスを提供する。
【0030】
一実施形態では、罹患組織は、創傷、微生物感染組織、および/または皮膚障害に罹患している対象の組織を含む。一実施形態では、罹患組織は皮膚であり、このケーシングは皮膚への局所投与に適している。
【0031】
別の実施形態では、このデバイスは、一酸化窒素ガス濃縮剤をさらに備える。
【0032】
また別の実施形態では、ケーシングは複数の層を備える。一実施形態では、この層は、バリア層、接触層および活性層を備える。別の実施形態では、活性層は組成物を備え、バリア層はバリア表面を備え、接触層は接触表面を備える。さらなる一実施形態では、ケーシングは貯蔵層も備える。一実施形態では、貯蔵層は一酸化窒素ガス前駆体を備える。また別の実施形態では、ケーシングはトラップ層も備える。一実施形態では、トラップ層は一酸化窒素ガス濃縮剤を備える。
【0033】
別の態様では、本出願は、その必要がある対象における創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するための本出願のデバイスまたは組成物の方法および使用を提供する。
【0034】
一態様では、本出願は、その必要がある対象における創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するための方法であって、
罹患組織を、活性化の際に反応して一酸化窒素ガスを生成する複数の不活性剤を含有する一酸化窒素ガス透過性のケーシングと接触させることと、
該不活性剤を活性化させて一酸化窒素ガスを生成させることと
を含み、
該一酸化窒素ガスが、ケーシングを介して連通し、罹患組織と接触して、その必要がある対象における創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療する方法を提供する。
【0035】
別の態様では、本出願は、その必要がある対象における創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療する方法であって、
罹患組織を、活性化の際に反応して一酸化窒素ガスを生成する複数の不活性剤を含有する一酸化窒素ガス放出組成物と接触させることと、
該不活性剤を活性化させて一酸化窒素ガスを生成させることと
を含み、
該一酸化窒素ガスが、その必要がある対象における創傷、微生物感染症または皮膚障害を治療するように罹患組織に接触する方法を提供する。
【0036】
一実施形態では、不活性剤は分かれており、不活性剤の活性化は、分かれている作用剤を混合することにより、分かれている作用剤を圧力または温度を加えた後でのみ一緒に合わせることを含む。別の実施形態では、不活性剤は脱水された作用剤であり、不活性剤の活性化は水和を含む。
【0037】
別の実施形態では、不活性剤は、i)一酸化窒素ガス前駆体と、ii)(a)一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換する活性を有するか、もしくは一酸化窒素ガス前駆体の一酸化窒素ガスへの変換を引き起こす触媒を生成させる活性を基質に対して有する、単離された酵素、もしくは内因性酵素を発現する生細胞、または(b)一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換するための触媒を生成する生細胞とを含む。
【0038】
また別の態様では、本開示は、その必要がある対象における創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するための方法であって、罹患組織を本出願のデバイスまたは組成物に暴露させることを含み、該デバイスまたは組成物により生成されたNOが、該対象または健康な組織に対し毒性を誘導することなく治療期間にわたり該罹患組織に接触する方法を提供する。治療期間は、使用するデバイスまたは組成物の種類に依存すると考えられる。例えば、本明細書に記載のデバイスの場合、治療期間は、典型的には約1〜24時間、好ましくは約6〜10時間、より好ましくは約8時間である。パッチ中に含有される組成物の場合、治療期間は、典型的には約1〜8時間である。クリーム組成物の場合、クリームは典型的には1日1〜3回施用する。マスク組成物の場合、治療期間は、典型的には約1〜8時間であり、1〜2時間であってもよい。
【0039】
またさらなる一実施形態では、NOは、デバイスまたは組成物により特定の用途に適した量で生成され、1〜1000体積百万分率(ppmv)の範囲であってもよい。一実施形態では、創傷用のデバイスまたは組成物により生成されるNOは、約1〜1000ppmvである。別の実施形態では、感染症用のデバイスまたは組成物により生成されるNOは、約150〜1000ppmvである。また別の実施形態では、皮膚障害用のデバイスまたは組成物により生成されるNOは、約5〜500ppmvである。
【0040】
別の態様では、その必要がある対象における創傷の治療の方法であって、
第1に、該創傷を本出願のデバイスに暴露させて、対象または健康な組織に対し毒性を誘導することなく第1の治療期間にわたり該創傷に接触する高濃度の一酸化窒素ガスを生成させることと、
第2に、該創傷を本出願の第2のデバイスに暴露させて、第2の治療期間にわたり該創傷に接触する低濃度の一酸化窒素ガスを生成させることと
を含む方法が提供される。
【0041】
さらなる一態様では、本開示は、赤身肉製品の貯蔵寿命、保存状態または外見を改善する方法であって、赤身肉製品を、NOが赤身肉製品と接触する本出願のデバイスに暴露させることを含む方法を提供する。
【0042】
本開示の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなろう。しかし、この詳細な説明および具体例は、本開示の好ましい実施形態を示すものではあるが例証目的でのみ記載するものであり、その理由は、この詳細な説明から、本開示の精神および範囲内で多様な変形および改変形が当業者には明らかになると考えられるからであることは理解されるべきである。
【0043】
次に、図面に関して、本開示の実施形態を記載することとする。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)(ATCC11976)を培養する、いくつかの濃度のNaNO2を添加したMRS寒天により放出された一酸化窒素ガス(gNO)の濃度を示すグラフである。40cm2のNitro-Dur0.8mg/時ニトログリセリン経皮パッチ(GTN)(Key Pharmaceuticals)を添加した、ラクトバチルス・ファーメンタム(ATCC11976)を培養するMRS培地により生成されたgNOの濃度も示す。測定は、37℃で20時間培養した後、震盪せずに行った。
【図2】示してある濃度のNaNO2を添加したラクトバチルス・ファーメンタム(ATCC11976)または示してある補因子を添加した大腸菌(Escherichia coli)BL21(pnNOS)(pGroESL)を培養する培地により放出された一酸化窒素ガス(gNO)を示すグラフである。測定は、37℃で20時間培養した後、震盪せずに行った。
【図3A】ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)LP80、ラクトバチルス・ファーメンタム(ATCC11976)、ラクトバチルス・ファーメンタム(NCIMB2797)またはラクトバチルス・ファーメンタム(LMG18251)のいずれかを培養する、示してある濃度のKNO3またはNaNO2を添加した培地により放出された一酸化窒素ガスを示すグラフである。測定は、37℃で20時間培養した後、震盪せずに行った。
【図3B】ラクトバチルス・プランタルムLP80、ラクトバチルス・ファーメンタム(ATCC11976)、ラクトバチルス・ファーメンタム(NCIMB2797)またはラクトバチルス・ファーメンタム(LMG18251)のいずれかを培養する、示してある濃度のKNO3またはNaNO2を添加した培地により放出された亜硝酸を示すグラフである。測定は、37℃で20時間培養した後、震盪せずに行った。
【図3C】ラクトバチルス・プランタルムLP80、ラクトバチルス・ファーメンタム(ATCC11976)、ラクトバチルス・ファーメンタム(NCIMB2797)またはラクトバチルス・ファーメンタム(LMG18251)を培養する、示してある濃度のKNO3またはNaNO2を添加した培地により放出された硝酸を示すグラフである。測定は、37℃で20時間培養した後、震盪せずに行った。
【図4A】ラクトバチルス・ファーメンタム(ATCC11976)を培養する、示してある濃度のNaNO2および20g/L(グルコース追加なし)または100g/L(グルコース追加)のグルコースを添加した培地のpHを示すグラフである。測定は、37℃での示してある長さの時間が経過した後、震盪せずに行った。
【図4B】ラクトバチルス・ファーメンタム(ATCC11976)を培養する、示してある濃度のNaNO2および20g/L(グルコース追加なし)または100g/L(グルコース追加)のグルコースを添加した培地の光学密度を示すグラフである。測定は、37℃で3時間、4時間、5時間、6時間および20時間が経過した後、震盪せずに行った。
【図4C】ラクトバチルス・ファーメンタム(ATCC11976)を培養する、示してある濃度のNaNO2および20g/L(グルコース追加なし)または100g/L(グルコース追加)のグルコースを添加した培地により放出された一酸化窒素ガスを示すグラフである。測定は、37℃での示してある長さの時間が経過した後、震盪せずに行った。
【図5】曲線下面積で表される、MRS培地中で37℃にて20時間培養したラクトバチルス・ファーメンタム株により生成された一酸化窒素ガス(NOg)の相対量のグラフ表示である。
【図6】曲線下面積で表される、MRS培地中で37℃にて20時間培養したラクトバチルス・ファーメンタム株により生成された一酸化窒素ガス(NOg)の相対量の繰返し測定データを示すグラフである。
【図7】MRS培地中で37℃にて20時間ラクトバチルス・ファーメンタム株を培養した容器中のヘッドガス圧(kPa)を示すグラフである。
【図8】MRS培地中で37℃にて20時間培養したラクトバチルス・ファーメンタム株により生成された硝酸(NO3)を示すグラフである。
【図9】MRS培地中で37℃にて20時間培養したラクトバチルス・ファーメンタム株により生成された亜硝酸(NO2)を示すグラフである。
【図10】ニトログリセリンの1/2パッチの存在下(最初の4カラム)、またはP450もしくはグルタチオン-S-転移酵素阻害薬を添加したニトログリセリンの1/2パッチの存在下(最後の3カラム)でラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)(NCIMB701359)、ラクトバチルス・ロイテリ(LabMet)およびラクトバチルス・ファーメンタム(ATCC11976)により生成された一酸化窒素ガスを示すグラフである。
【図11】多層式の一酸化窒素生成医療デバイスを示す図である。
【図12】簡単な単層式医療デバイスを示す図である。
【図13】別の簡単な層式医療デバイスを示す図である。
【図14】また別の簡単な層式医療デバイスを示す図である。
【図15】gNO生成パッチが大腸菌に及ぼす殺菌効果を示すグラフである。細菌数は、対照(四角)では8時間の処置後安定し続けていたが、gNOの存在下では、6時間後、コロニーは検出されなかった(菱形)(左のパネル)。活性パッチ(菱形)または対照(四角)により生成されたgNOのレベルを1時間毎にモニターした(右のパネル)。
【図16】gNO生成パッチが黄色ブドウ球菌に及ぼす殺菌効果を示すグラフである。細菌数、は対照(四角)では8時間の処置後安定し続けていたが、gNOの存在下では、6時間後、コロニーは検出されなかった(菱形)(左のパネル)。活性パッチ(菱形)または対照(四角)により生成されたgNOのレベルを1時間毎にモニターした(右のパネル)。
【図17】gNO生成パッチが緑膿菌に及ぼす殺菌効果を示すグラフである。細菌数は、対照(四角)では8時間の処置後安定し続けていたが、gNOの存在下では、6時間後、コロニーは検出されなかった(菱形)(左のパネル)。活性パッチ(菱形)または対照(四角)により生成されたgNOのレベルを1時間毎にモニターした(右のパネル)。
【図18】gNO生成パッチがアシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)に及ぼす殺菌効果を示すグラフである。細菌数は、対照(四角)では6時間の処置後安定し続けていたが、gNOの存在下では、同じ長さの期間の後では、10未満のコロニーが検出された(菱形)(左のパネル)。活性パッチ(菱形)または対照(四角)により生成されたgNOのレベルを1時間毎にモニターした(右のパネル)。
【図19】gNO生成パッチがトリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)に及ぼす殺真菌効果を示すグラフである。真菌の成長は、対照(灰色)では8時間の処置後一定を保ったが、gNOの存在下では、8時間後、コロニーは検出されなかった(黒)。活性パッチ(黒)または対照(灰色)により生成されたgNOのレベルを1時間毎にモニターした。
【図20】gNO生成パッチがトリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)に及ぼす殺真菌効果を示すグラフである。真菌の成長は、対照(灰色)では8時間の処置後一定を保ったが、gNOの存在下では、6時間後、コロニーは検出されなかった(黒)。活性パッチ(黒)または対照(灰色)により生成されたgNOのレベルを1時間毎に7時間にわたりモニターした。
【図21】gNO生成パッチがメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に及ぼす殺菌効果を示すグラフである。細菌の成長は、対照(灰色)では6時間の処置後一定を保ったが、gNOの存在下では、6時間後、コロニーは検出されなかった(黒)。活性ドレッシング(黒)または対照(灰色)により生成されたgNOのレベルを1時間毎に6時間にわたりモニターした。
【図22】gNO生成パッチが大腸菌に及ぼす静菌効果を示すグラフである(左)。gNO生成パッチでの大腸菌プレート処置では、対照パッチと比較してコロニーの成長が阻害された。図22(中央)は、gNO生成パッチが黄色ブドウ球菌に及ぼす静菌効果を示すグラフである。gNO生成パッチで黄色ブドウ球菌プレートを処置した際には、対照パッチと比較してコロニーの成長は低下した。図22(右)は、gNO生成パッチが緑膿菌に及ぼす静菌効果を示すグラフである。gNO生成パッチで緑膿菌プレートを処置した際には、対照パッチと比較してコロニーの成長は低下した。
【図23】4つの実験条件においてビヒクル対照と比較した場合のgNO処置の効果を、創傷の形態計測分析により毎日見られるとおりに示すグラフである。創傷治癒を毎日モニターし、形態計測分析用に写真記録を保存した。面の傾斜角(plane inclination)を補正するために最長の測定によりコンピューターソフトウェアを使用して、各創傷、および直径6mmの基準(緑または赤のステッカー)の直径を定量した。直径6mmの円に相当する面積に創傷直径の二乗対基準直径の二乗の比率を掛けることにより、創傷の面積を計算した。
【図24】手術後1日目、13日目および20日目の感染創傷の外見を示す写真である。虚血性の創傷は「I」により示し、非虚血性の創傷は「N」により示す。創傷治癒を毎日モニターし、形態計測分析用に写真記録を保存した。手術当日に開始して、各耳の創傷の写真を撮影した。4つの創傷全てが写っている集合写真を最初に、次いで、各創傷の写真を撮影した。
【図25】処置創傷対非処置創傷を比較するCox比例ハザード回帰を示すグラフである。CDC製のEpiInfoソフトウェアを用いてデータをグラフ化した。データは、パイロット研究において生じ処置した全創傷についての、事象(創傷閉鎖)までの時間を表す。濃い線はgNO処置創傷(16創傷)であり、灰色の線は非処置(16創傷)である。Table 7(表7)も参照。
【図26】パイロット研究で得られた創傷治癒データのカプラン・マイヤープロットである。CDC製のEpiInfoソフトウェアを用いてデータをグラフ化した。データは、パイロット研究において生じ処置した全創傷についての、事象(創傷閉鎖)までの時間を表す。濃い線はgNO処置創傷(16創傷)であり、灰色の線は非処置(16創傷)である。Table 8(表8)も参照。
【図27】ブタの肝臓エステラーゼ、亜硝酸ナトリウムおよび多様なエステル基質の存在下で1時間毎に測定したgNOの発生を示すグラフである。最小目標生成濃度は、経路活性化後1時間で達成された。基質(トリアセチン)も酵素も存在しない対照を用いた際には、gNOは検出されなかった。ブタの肝臓エステラーゼにとって最良の基質は、トリアセチンおよび酢酸エチルである。
【図28】カンジダ・ルゴサ(candida rugosa)リパーゼ(「CRL」)、亜硝酸ナトリウムおよび多様なエステル基質の存在下で1時間毎に測定したgNOの発生を示すグラフである。200ppmVの最小目標のgNO生成濃度は、基質としてトリアセチンを用いた際に、反応が開始した1時間後に達成された。
【図29】トリアセチン、亜硝酸ナトリウムおよび多様な酵素の存在下で1時間毎に測定したgNOの発生を示すグラフである。基質または酵素の不在下では、gNOの生成は観察されなかった。カンジダ・ルゴサリパーゼおよびブタの肝臓エステラーゼは、トリアセチンにとって最良の酵素である。
【図30】亜硝酸ナトリウム、ブタの肝臓エステラーゼおよびさまざまな濃度のトリアセチンの存在下で分析したgNOの発生を示すグラフである。酵素または基質(トリアセチン)の不在下では、gNOの生成は観察されなかった。
【図31】トリアセチン、CRL、アルギネートマイクロビーズおよび硝酸ナトリウムを含有する4種のパッチにおいて1時間毎に評価したgNOの発生を示すグラフである。200ppmV超の目標生成濃度のgNOは、パッチ活性化後2時間で達成され、最大30時間持続した。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本出願は、一酸化窒素を継続的に生成することが可能な局所用デバイスおよび局所用組成物、ならびに一酸化窒素を投与して創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するためのその方法および使用を提供する。
【0046】
組成物およびデバイス
一態様では、本開示は、(a)一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換する活性を有するか、もしくは一酸化窒素ガス前駆体の一酸化窒素ガスへの変換を引き起こす触媒を生成させる活性を基質に対して有する、単離された酵素、もしくは内因性酵素を発現する生細胞、または(b)一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換するための触媒を生成する生細胞を含む局所用組成物を提供する。一実施形態では、一酸化窒素ガス前駆体は、組織上に存在し、例えば、汗の中で生成された硝酸に由来する。別の実施形態では、この組成物は、一酸化窒素ガス前駆体をさらに含む。
【0047】
用語「局所用組成物」は、本明細書中で使用する場合、酵素、生細胞または触媒、場合により一酸化窒素前駆体を含む任意の物質を指し、罹患組織に直接または局所的に施用でき、罹患組織に局所的に作用する。罹患組織は皮膚であってもよい。一実施形態では、この局所用組成物は、クリーム、スラブ、ゲル、ヒドロゲル、可溶性フィルム、スプレー、ペースト、乳剤、パッチ、リポソーム、バーム、粉末もしくはマスクまたはそれらの組合せである。別の実施形態では、この組成物は2つの別々の部分である。
【0048】
一実施形態では、この組成物はマトリックスをさらに備える。当業者であれば、局所施用に適したマトリックスを容易に決定できる。マトリックスとしては、限定するものではないが、場合により、アルギネート、キトサン、ゼラチン、セルロース、アガロース、イナゴマメガム、ペクチン、デンプン、ジェラン、キサンタンおよびアガロペクチンなどの天然ポリマー;ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリルアミド、ポリ乳酸(PLA)、熱活性化ポリマー(thermoactivated polymer)および生体接着ポリマーなどの合成ポリマー;ワセリン、Intrasite、およびラノリンまたは水がベースのゲルなどのゲルまたはヒドロゲル;ヒドロキシエチルセルロースおよびエチレングリコールジグリシジルエーテル(EDGE);ヒドロキシメチルセルロースなどの可溶性フィルムポリマー;マイクロカプセルまたはリポソーム;ならびに脂質ベースのマトリックスが挙げられる。Intrasiteは無色透明の水性ゲルであり、典型的には、変性カルボキシメチルセルロース(CMC)ポリマーを、湿潤剤および保存剤としてのプロピレングリコールと共に、場合により、変性カルボキシメチルセルロース(CMC)ポリマー2.3%をプロピレングリコール(20%)と共に含有する。罹患組織と接触させて配置した際、包帯は過剰な滲出物を吸収して、組織の浸軟を引き起こすことなく、組織の表面に湿った環境を作り出す。
【0049】
他のマトリックス成分としては、限定するものではないが、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、酸化亜鉛、フェルラ酸、コーヒー酸、グリコール酸、乳酸、酒石酸、サリチル酸、ステアリン酸、炭酸水素ナトリウム、塩、海塩、アロエベラ、ヒアルロン酸、グリセリン、シリル化シリカ、ポリソルベート、精製水、マンサク、補酵素、ダイズタンパク質(加水分解したもの)、加水分解されたコムギタンパク質、メチル/プロピルパラベン、アラントイン、炭化水素、ワセリン、ローズフラワーオイル(ロザ・ダマセンス(rosa damascens))、ラベンダー、ならびに当技術分野で公知の他の典型的な保湿剤、軟化剤、酸化防止剤、抗炎症剤、ビタミン、蘇生剤(revitalizing agent)、湿潤剤、着色剤および/または香料が挙げられる。
【0050】
一実施形態では、この組成物は、絆創膏、包帯または衣類に施用される。
【0051】
別の態様では、本出願は、本明細書に記載の組成物を備えるデバイスを提供する。一実施形態では、このデバイスは、バリア表面および一酸化窒素ガス透過性の接触表面を備え、バリア表面と接触表面との間に配置される本明細書に記載の組成物を備えるケーシングを具備する。バリア表面は、バリア表面と接触表面とが、該組成物が配置される空洞を画定するように、接触表面に場合により連結されている。典型的には、バリア表面は、接触表面の周辺部に最も近い接触表面に連結することから、バリア表面がその周辺部を取り囲むことにより、NOガスは接触表面を通してのみ放出されることが必要になる。一実施形態では、本出願は、一酸化窒素ガスを罹患組織に送達するためのデバイスであって、
バリア表面および一酸化窒素ガス透過性の接触表面を備えるケーシングと、
i)一酸化窒素ガス前駆体、およびii)(a)一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換する活性を有するか、もしくは一酸化窒素ガス前駆体の一酸化窒素ガスへの変換を引き起こす触媒を生成させる活性を基質に対して有する、単離された酵素、もしくは内因性酵素を発現する生細胞、または(b)一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換するための触媒を生成する生細胞を含む、該ケーシング中の組成物と
を具備するデバイスを提供する。
【0052】
一実施形態では、ケーシングは組成物を組織と隔て、ケーシングは組成物を透過させない。
【0053】
用語「罹患組織」は、本明細書中で使用する場合、創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を有する任意の組織、場合により皮膚を指す。例えば、罹患組織は、異常な組織または損傷を受けた組織、すなわち、正常な組織とは病理学的、組織学的、形態学的または分子的に異なり、NO治療が有益であると考えられる組織を包含する。
【0054】
用語「ケーシング」は、本明細書中で使用する場合、組成物を保持し、組成物を完全または部分的に覆う外殻を意味する。一実施形態では、ケーシングは、一連または複数の層(複数可)、例えば、柔軟性のある、および/または硬い薄層である。別の実施形態では、ケーシングは袋または容器である。用語「ケーシング中に」は、本明細書中で使用する場合、組成物が組織と隔てられるように、組成物を完全または部分的に覆い保持することを意味する。
【0055】
用語「接触表面」は、本明細書中で使用する場合、組織と直接相互作用し、非密封性の包帯など任意の適当な材料からできていてもよいケーシングの表面を意味する。
【0056】
用語「バリア表面」は、本明細書中で使用する場合、組織と直接接触しないケーシングの表面、すなわち、組織と直接接触する接触面以外の、ケーシングの全表面を意味する。バリア表面は、酸素透過性であっても不透過性であってもよい。バリア表面は、プラスチックなど任意の適当な材料でできていてもよい。別の実施形態では、バリア表面は、罹患組織を取り巻く組織に接着する接着層を備える。特定の一実施形態では、バリア表面は酸素透過性であり、組織または皮膚を保護し、組織または皮膚に接着する。
【0057】
別の実施形態では、ケーシングの層は、バリア層、接触層および活性層を備える。特定の一実施形態では、活性層は組成物を備え、バリア層はバリア表面を備え、接触層は接触表面を備える。別の実施形態では、ケーシングは貯蔵層をさらに備える。一実施形態では、活性層は細胞または酵素を備え、貯蔵層は一酸化窒素ガス前駆体を備える。
【0058】
さらなる一実施形態では、ケーシングはトラップ層をさらに備える。一実施形態では、トラップ層は、一酸化窒素ガスまたはラジカル濃縮用物質を備える。
【0059】
用語「一酸化窒素ガス」または「gNO」または「NOg」は、本明細書中で使用する場合は化学化合物NOを指し、一般的には一酸化窒素ラジカルとも呼ばれる。
【0060】
用語「酵素」は、本明細書中で使用する場合、直接的か、または一酸化窒素ガス前駆体の一酸化窒素ガスへの変換を生じさせる触媒の生成を経由するか、そのいずれかで、一酸化窒素前駆体を一酸化窒素ガスに変換させることが可能な任意の酵素またはその断片を包含することを意図したものである。
【0061】
一実施形態では、酵素は、グルタチオンS-転移酵素(GST)またはチトクロムP450系(P450)である。
【0062】
別の実施形態では、酵素は、一酸化窒素合成酵素(NOS)または一酸化窒素還元酵素(NiR)である。一実施形態では、酵素は、NOS活性を有する一酸化窒素合成酵素の全部または一部である。特定の一実施形態では、NOSは、配列番号1または表1に示すアミノ酸配列を備える。別の実施形態では、酵素は、NIR活性を有する一酸化窒素還元酵素の全部または一部である。特定の一実施形態では、NiRは、配列番号2〜5または表1に示すアミノ酸配列を有するいくつかのサブユニットを備える。酵素は、細胞から単離されたタンパク質画分中に含有されていてもよい。
【0063】
用語「触媒」または「一酸化窒素ガス前駆体還元剤」は、本明細書中で使用する場合、場合により不均化反応により一酸化窒素ガス前駆体の一酸化窒素ガスへの変換を生じさせる物質を意味する。さらに、触媒は、酵素と基質との反応により容易に生成する。別の実施形態では、触媒は、乳酸、酢酸、硫酸、塩酸または比較的弱い他の有機酸である。特定の一実施形態では、触媒は乳酸である。別の実施形態では、触媒はプロトンを含む。一実施形態では、プロトンは、酵素と基質との反応生成物である。用語「反応生成物」は、本明細書中で使用する場合、酵素反応の生成物および/または副生成物を両方とも包含する。
【0064】
一実施形態では、触媒を生成する酵素は、場合によりパイナップルからの抽出物であるブロメライン溶液に由来するか、または遺伝子操作されたブロメラインプロテアーゼ酵素である。ブロメラインは、本明細書中で使用する場合、パイナップル(ブロメリア科のアナナス・コモサス・メール(Ananas comosus Merr.)、主にカイエン(Cayenne)種)の茎および未熟な果実に由来する水性の粗抽出物、中でも、異なるチオールエンドペプチダーゼ、およびホスファターゼ、グルコシダーゼ、ペルオキシダーゼ、セルラーゼ、糖タンパク質および炭水化物など他の未だに完全に特徴付けられていないものとの著しく複雑な混合物を構成するものを指す。加えて、ブロメラインは、いくつかのプロテアーゼ阻害物質を含有する。一実施形態では、触媒を生成する酵素および基質は、酵素および基質を両方とも含有するブロメライン、ブロメラインおよびタンパク質(ゼラチンなど)を含む。
【0065】
別の実施形態では、触媒を生成する酵素および基質は、リパーゼおよび脂質(例えばトリグリセリド)、プロテアーゼおよびタンパク質、トリプシンおよびタンパク質、キモトリプシンおよびタンパク質、エステラーゼおよびエステル、リパーゼおよびエステル、またはエステラーゼおよびトリグリセリドを含む。一実施形態では、酵素は、リパーゼまたはエステラーゼ、場合により、カンジダ・ルゴサリパーゼ、ブタの肝臓エステラーゼ、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)エステラーゼまたはブタの膵臓リパーゼである。別の実施形態では、基質は、トリグリセリドまたはエステル、場合により、トリアセチン、トリプロピリン(tripropyrin)、トリブチリン、酢酸エチル、酢酸オクチル、酢酸ブチルまたは酢酸イソブチルである。別の実施形態では、触媒を生成する酵素および基質は、乳糖デヒドロゲナーゼおよび乳糖、パパインおよびタンパク質、ペプシンおよびタンパク質、またはパンクレアチンおよびダイズタンパク質を含む。
【0066】
用語「一酸化窒素ガス前駆体」は、本明細書中で使用する場合、一酸化窒素ガスに変換できる任意の基質を意味する。したがって、一実施形態では、一酸化窒素ガス前駆体は、一酸化窒素の酵素的生成のための基質である。一実施形態では、一酸化窒素ガス前駆体はL-アルギニンである。別の実施形態では、一酸化窒素ガス前駆体は、硝酸、または硝酸カリウム、硝酸ナトリウムもしくは硝酸アンモニウムもしくは他の硝酸塩など、その塩である。一実施形態では、硝酸は、汗から生成される硝酸である。また別の実施形態では、一酸化窒素ガス前駆体は、亜硝酸、または亜硝酸カリウムもしくは亜硝酸ナトリウムなど、その塩である。一実施形態では、1〜50mmolの亜硝酸ナトリウムを使用する。別の実施形態では、30mmolの亜硝酸ナトリウムを使用する。また別の実施形態では、一酸化窒素ガス前駆体は一酸化窒素供与体、場合によりニトログリセリンまたは硝酸イソソルビドである。一実施形態では、酵素はNiRを含み、一酸化窒素ガス前駆体は亜硝酸カリウムを含むか、または酵素はNOSを含み、一酸化窒素前駆体はL-アルギニンを含む。別の実施形態では、酵素は硝酸還元酵素を含み、一酸化窒素ガス前駆体は硝酸塩である。また別の実施形態では、一酸化窒素ガス前駆体は、パッチなど経皮的な溶出系中に配置されたニトログリセリン、または硝酸である。さらなる一実施形態では、酵素はグルタチオンS-転移酵素(GST)またはチトクロムP450系(P450)であり、一酸化窒素ガス前駆体は、ニトログリセリン、二硝酸ニトロソルビドまたは硝酸である。
【0067】
酵素または触媒の活性は、一酸化窒素ガス生成物を測定するアッセイにより容易に定量される。好ましいNOアッセイは、化学発光アッセイである。一酸化窒素を含有する試料を多量のオゾンと混合する。一酸化窒素はオゾンと反応して、酸素および二酸化窒素を生成する。この反応は光(化学発光)も生成し、この光は光検出器で測定できる。生成した光の量は、試料中の一酸化窒素の量に比例する。
【0068】
本開示は、それぞれ配列番号1および配列番号2〜5との配列同一性が少なくとも約20%超、約25%超、約28%超、約30%超、約35%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超または約90%超、より好ましくは少なくとも約95%超、99%超または99.5%超の、NOSおよびNIRの変性ポリペプチドも包含する。変性ポリペプチド分子については追って論考する。
【0069】
当技術分野で公知の方法により、同一性を計算する。配列同一性は、最も好ましくは、BLASTバージョン2.1プログラムの詳細検索(前述のとおりのパラメーター)により評価する。BLASTは、米国国立衛生研究所の国立生物工学情報センター(NCBI)からオンラインで入手できる一連のプログラムである。詳細なBLAST検索は、初期設定のパラメーターに設定されている。(すなわち、マトリックスBLOSUM62、ギャップ存在コスト11、1残基当たりのギャップコスト1、ラムダ率0.85の初期設定)。
【0070】
BLAST検索の参考文献は以下のとおりである: Altschul, S.F.、Gish, W.、Miller, W.、Myers, E.W. & Lipman, D.J.、(1990)、「Basic local alignment search tool.」、J. Mol. Biol.、215、403〜410頁; Gish, W. & States, D.J.、(1993)、「Identification of protein coding regions by database similarity search.」、Nature Genet.、3、266〜272頁; Madden, T.L.、Tatusov, R.L. & Zhang, J.、(1996)、「Applications of network BLAST server」、Meth. Enzymol.、266、131〜141頁; Altschul, S.F.、Madden, T.L.、Schaffer, A.A.、Zhang, J.、Zhang, Z.、Miller, W. & Lipman, D.J.、(1997)、「Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search programs.」、Nucleic Acids Res.、25、3389〜3402頁; Zhang, J. & Madden, T.L.、(1997)、「PowerBLAST: A new network BLAST application for interactive or automated sequence analysis and annotation.」、Genome Res.、7、649〜656頁。
【0071】
好ましくは、約1、約2、約3、約4、約5、約6〜約10、約10〜約25、約26〜約50、または約51〜約100、または約101〜約250個のヌクレオチドまたはアミノ酸を改変する。本開示は、当該突然変異によりポリペプチドの活性が増減するように、活性化に関与していないポリペプチドの一部におけるアミノ酸変性、または活性化に関与しているポリペプチドの一部におけるアミノ酸変性を生じさせる突然変異を有するポリペプチドを包含する。
【0072】
一実施形態では、酵素は、動物、植物、真菌または細菌に由来する。
【0073】
別の実施形態では、組成物は酵素補因子をさらに含む。このデバイスにおいて有用な酵素補因子としては、テトラヒドロビオプテリン(H4B)、カルシウムイオン(Ca2+)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、フラビンモノヌクレオチド(FMN)、還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、分子酸素O2およびカルモジュリンが挙げられる。
【0074】
本明細書に記載の組成物およびデバイスは、一酸化窒素を正常に消費する活性酸素種(ROS)と反応する生物活性分子を加えることにより、有効性を高めることができる。低分子量(LMWT)で酵素的な、生物活性のある酸化防止剤は、ROSによるNOの消費を防止できる(Serarslanら、2007)。NOとROSとの間の反応により、NOを無能にし、その正常な生理作用を妨げる過酸化亜硝酸(ONO2-)が形成される。純粋な状態で添加されるか、または細胞もしくは酵素単離物および基質との間のin-situ反応において生じるかいずれかの酸化防止剤を使用すると、ROSによるNOの消費が防止され、改良された局所施用用NO送達調合物を得ることができる。
【0075】
したがって、別の実施形態では、この組成物は、還元環境を維持するための酸化防止剤をさらに含む。酸化防止剤は、生細胞により発現されてもよく、または第2の酵素(生細胞により加えられるか、または発現されるかのいずれか)と酸化防止剤前駆体との間の反応において生成されてもよい。一実施形態では、酸化防止剤は、コーヒー酸、フェルラ酸またはクロロゲン酸である。別の実施形態では、酸化防止剤は、亜ジチオン酸塩、メタキノンまたはユビキノンである。また別の実施形態では、酸化防止剤は、ビタミン、場合によりビタミンK、ビタミンEまたはビタミンCである。
【0076】
用語「生細胞」は、本明細書中で使用する場合、作用部位で一酸化窒素前駆体を一酸化窒素に変換することが可能な任意の種類の細胞を意味する。一実施形態では、この細胞は、ヒト、細菌または酵母の細胞である。別の実施形態では、この細胞は、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteria)属、ペジオコッカス(Pediococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属またはロイコノストック(Leuconostoc)属のプロバイオティック微生物である。一実施形態では、この細胞は、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ファーメンタム、ペジオコッカス・アシジラクチシ(Pediococccus acidilactici)またはロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)である。別の実施形態では、この細胞は、トルラ(Torula)種、パン酵母、醸造用酵母、サッカロミセス(Saccharomyces)種、場合によりS.セレビシエ(S. cerevisiae)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)種、ピチア(Pichia)種、場合によりピチア・パストリス(Pichia pastotis)、カンジダ種、ハンゼヌラ(Hansenula)種、場合によりハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、およびクルイベロミセス(Kluyveromyces)種、場合によりクルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)のうち1つまたは複数から成る群から選択される酵母細胞である。一実施形態では、この細胞は、乳酸、酢酸、リンゴ酸および酒石酸を非限定的に含む弱酸を生成する細菌である。また別の実施形態では、この細胞は、乳酸菌(LAB)、またはアセトバクター・パスツリアヌス(acetobacter pasteurianus)などのアセトバクターである。
【0077】
さらなる一実施形態では、この細胞は、一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換することが可能な酵素を発現する、遺伝子操作された細胞である。一実施形態では、この細胞は、NOSまたはNiR酵素を発現する遺伝子操作された酵母である。別の実施形態では、この細胞は、NOSまたはNiR酵素を発現する遺伝子操作された細菌である。また別の実施形態では、この細胞は、大腸菌BL21(nNOSpCW)、細菌の亜硝酸還元酵素、場合により、アルカリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)S-6に由来する銅依存性の亜硝酸還元酵素を発現する大腸菌またはラクトバチルス株、または緑膿菌由来のチトクロムcd1亜硝酸還元酵素を発現する大腸菌またはラクトバチルス株である。
【0078】
当業者であれば、細胞または酵素により発生したNOの量を定量化することができるであろう。例えば、Kikuchiらは、溶液中の西洋ワサビペルオキシダーゼを使用したNOの定量化の方法を記載している(Kikuchiら、1996)。Archerらは、生体系におけるNOの測定を精査して、化学発光アッセイが、検出閾がおよそ20pmolの最も感受性が高い手法であることを見出した(Archer、1993; Michelakis & Archer、1998)。
【0079】
別の実施形態では、この細胞はマイクロカプセル化されている。一実施形態では、マイクロカプセルは、アルギネート/ポリ-l-リシン/アルギネート(APA)、アルギネート/キトサン/アルギネート(ACA)、またはアルギネート/ゲニピン/アルギネート(AGA)の膜を備える。別の実施形態では、マイクロカプセルは、アルギネート/ポリ-l-リシン/ペクチン/ポリ-l-リシン/アルギネート(APPPA)、アルギネート/ポリ-l-リシン/ペクチン/ポリ-l-リシン/ペクチン(APPPP)、アルギネート/ポリ-L-リシン/キトサン/ポリ-l-リシン/アルギネート(APCPA)、アルギネート-ポリメチレン-co-グアニジン-アルギネート(A-PMCG-A)、アクリル酸ヒドロキシメチル-メタクリル酸メチル(HEMA-MMA)、多層HEMA-MMA-MAA、ポリアクリロニトリルビニルクロリド(PAN-PVC)、アクリロニトリル/メタリルスルホン酸ナトリウム(AN-69)、ポリエチレングリコール/ポリペンタメチルシクロペンタシロキサン/ポリジメチルシロキサン(PEG/PD5/PDMS)またはポリN,N-ジメチルアクリルアミド(PDMAAm)の膜を備える。さらなる一実施形態では、マイクロカプセルは、アルギネート、中空繊維、硝酸セルロース、ポリアミド、脂質複合体型のポリマー、脂質ベシクル、シリカ封入物(siliceous encapsulate)、硫酸セルロース/アルギン酸ナトリウム/ポリメチレン-co-グアニジン(CS/A/PMCG)、酢酸フタル酸セルロース、アルギン酸カルシウム、k-カラギーナン-イナゴマメガムゲルビーズ、ジェラン-キサンタンビーズ、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、カラギーナン、ポリ無水デンプン、ポリメタクリル酸デンプン、ポリアミノ酸または腸溶コーティングポリマーを備える。
【0080】
別の実施形態では、この組成物の細胞または酵素は、スラブなどの貯蔵部中で固定化されている。一実施形態では、貯蔵部またはスラブはポリマーを含む。特定の一実施形態では、このポリマーは、アルギネート、キトサン、アガロース、アガロペクチンまたはセルロースなどの天然ポリマーである。
【0081】
また別の実施形態では、この組成物は、細胞用の成長培地をさらに含む。典型的な成長培地としては、MRSブロス、LBブロス、グルコースまたは炭素源を含有する成長培地が挙げられる。成長培地の選択は、本出願のデバイスの組成物の特定の細胞の必要性に依存する。
【0082】
さらなる一実施形態では、還元剤が加えられる。一実施形態では、還元剤により化学量論的組成が改善され、さらにNOが生成される。一実施形態では、還元剤はヨウ化ナトリウム(NaI)である。
【0083】
さらなる一実施形態では、このデバイスは、一酸化窒素ガスまたはラジカル濃縮剤をさらに備える。用語「一酸化窒素ガスまたはラジカル濃縮剤」は、本明細書中で使用する場合、罹患組織に施用するための一酸化窒素ガスを収集し濃縮することができる任意の物質を包含することを意図している。
【0084】
一実施形態では、一酸化窒素ガスまたはラジカル濃縮剤は、脂質または脂質様分子を含む。用語「脂質および脂質様分子」は、本明細書中で使用する場合、脂肪溶解性の物質を意味する。脂質様分子の一例は、共有結合により連結される脂質/炭水化物分子であるリポ多糖である。
【0085】
別の実施形態では、一酸化窒素ガスまたはラジカル濃縮剤は、炭化水素または炭化水素様分子を含む。用語「炭化水素」は、本明細書中で使用する場合、水素および炭素を含有し、炭素「骨格」および結合した水素、イオウまたは窒素(不純物)または官能基を有する化合物を意味する。用語「炭化水素様分子」は、炭素骨格を有し水素を含有する分子を指すが、この分子は、複雑で高度に結合しているかまたは置換された構造を有していてもよい。炭化水素および炭化水素様分子は両方とも脂質溶解性である。
【0086】
また別の実施形態では、一酸化窒素ガスまたはラジカルの濃縮剤は、スペーサー、ガス用のセルを有する構造またはスポンジを備える。
【0087】
一態様では、一酸化窒素ガス前駆体と、生細胞、酵素または触媒を含む組成物とは、使用まで隔てられている。したがって、本出願の組成物の一実施形態では、一酸化窒素ガス前駆体と、生細胞、酵素または触媒を含む組成物とは、別々の状態に保たれ、使用直前に混合される。このデバイスの一実施形態では、活性層と貯蔵層とはセパレーターにより隔てられる。このセパレーターは、場合によりプラスチックまたは他の適当な材料で作られ、活性層の内容物と貯蔵層の内容物とが合わさることを防止する、典型的には活性層と貯蔵層との間の物理的なバリアである。別の実施形態では、ケーシングは、活性層と貯蔵層とをつなぐ少なくとも1つの弁をさらに備え、この弁は、細胞または酵素が前駆体と隔てられている最初の閉位置、および活性層と貯蔵層とが流体連通しており、細胞または酵素前駆体が層間で流れることができるようになる開位置を有する。別の実施形態では、この弁は一方向弁を備え、開位置では酵素または細胞または前記前駆体のいずれかが層間で流れることができるようになる。別の実施形態では、この弁は、デバイスに加圧、場合により手で加圧することにより閉位置から開位置に作動できる圧力作動弁を備える。またさらなる一実施形態では、この組成物は、単独で、またはデバイス中で脱水され、水和されるまでは不活性である。
【0088】
方法および使用
別の態様では、本出願は、その必要がある対象における創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するための本出願のデバイスまたは組成物の使用を提供する。別の実施形態では、本出願は、本出願のデバイスまたは組成物を使用する、その必要がある対象における創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するための方法を提供する。さらなる一実施形態では、本出願は、その必要がある対象における創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するための本出願の組成物またはデバイスの使用を提供する。また別の実施形態では、本出願は、創傷、微生物感染症および/または皮膚障害の治療に使用するための本出願の組成物またはデバイスを提供する。またさらなる一実施形態では、本出願は、創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するための医薬の調製における本出願の組成物の使用を提供する。
【0089】
用語「創傷の治療」は、本明細書中で使用する場合、傷ついた組織の治療または予防を意味し、以下の結果のうち少なくとも1つを促進することを非限定的に含む:創傷の細菌細胞量の減少、創傷のサイズの低下、筋線維芽細胞による創傷収縮の増加、ケラチン生成細胞による上皮化の増加、細胞遊走の増加、血管新生の増加、繊維増殖の増加、コラーゲン堆積の増加、フィブロネクチン堆積の増加、肉芽組織形成の増加およびコラーゲンリモデリングの増加。
【0090】
用語「創傷」は、本明細書中で使用する場合、皮膚などの組織が、刺され、裂け、切れ、または他の形で開いている外傷を指し、皮膚、結合組織、血管、神経、骨、関節または臓器に関わるものであってもよい。創傷の種類は当技術分野で公知であり、上皮創傷を非限定的に含む。簡潔に言えば、静脈鬱血潰瘍は、脚の静脈の機能不全によるものである。糖尿病性足潰瘍は、糖尿病患者における微小循環不良によるものであり、高血糖および感覚の欠如を伴う。仙骨潰瘍は、ベッドの中に仙骨を下にして動かない状態で横になり、ベッドと皮膚との間の圧力が増加することにより局所循環が損なわれた際に生じる潰瘍化である。転子潰瘍(trochanteric ulcer)は、仙骨潰瘍と同じ病因を有するが、臀部の圧迫点(ベッドと、大腿骨の大転子との間)に生じる。虚血性皮弁は、血管が血管新生の過程を経て成熟するには時間がかかるか、またはチアノーゼになり酸素供給不足により壊死することになる、血管形成および上皮化の乏しい軟部組織である。普通の創傷は、上皮が裂け、切れまたは穿刺されている外傷(裂傷、切開、擦過傷、発砲など)による軟部組織の欠損であり、外皮、表皮、真皮、皮下脂肪、血管、神経、筋肉、さらには骨または臓器に関与するものであってもよい。慢性創傷は、完全には治癒しない外傷である。したがって、一実施形態では、創傷は、慢性創傷、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍、仙骨潰瘍、臀部潰瘍、転子潰瘍、褥瘡性潰瘍、水疱性潰瘍(blister ulcer)、静脈瘤性脚潰瘍(varicose leg ulcer)、指潰瘍、虚血性皮弁または通常の創傷である。別の実施形態では、創傷は、細菌に感染しているか、または炎症を起こしている。
【0091】
一実施形態では、対象は、治療がなされない場合に創傷治癒を遅らせるかまたは不完全な創傷治癒の原因となる二次的状態を有する。典型的な二次的状態は、糖尿病、静脈鬱血、循環不全および刺激である。特定の一実施形態では、二次的状態は糖尿病である。
【0092】
別の実施形態では、創傷は、炎症性の、自己免疫および感染性の皮膚状態を非限定的に含む皮膚状態の結果である。
【0093】
用語「微生物感染症の治療」は、本明細書中で使用する場合、微生物感染組織の治療または予防を意味し、以下の結果のうち少なくとも1つを非限定的に含む:微生物量の減少、炎症の軽減、白血球数の減少、体液排出量の減少、においの改善、血流および酸素供給の改善。
【0094】
用語「微生物感染症」は、本明細書中で使用する場合、微生物による感染症、または微生物により生じる状態を指す。一実施形態では、微生物は、細菌、真菌、寄生虫またはウイルスの微生物であり、感染症は、細菌、真菌、寄生虫またはウイルスによる感染症である。細菌感染症としては、グラム陰性桿菌、グラム陽性桿菌、グラム陽性球菌、ナイセリアおよびミコバクテリアにより生じる感染症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
グラム陰性桿菌としては、バルトネラ、ブルセラ症、カンピロバクター、コレラ、大腸菌、ヘモフィルス、クレブシエラ、エンテロバクター、セラチア、レジオネラ、類鼻疸、百日咳、ペスト、エルシニア、プロテウス族、シュードモナス、サルモネラ、細菌性赤痢および野兎病が挙げられるが、これらに限定されない。グラム陽性桿菌としては、炭疸菌、ジフテリア、エリジペロスリックス症、リステリア症およびノカルジア症の生物が挙げられるが、これらに限定されない。グラム陽性球菌としては、肺炎球菌、ブドウ球菌、連鎖球菌および腸球菌を起源とする生物が挙げられるが、これらに限定されない。ナイセリアとしては、アシネトバクター、キンゲラ、髄膜炎菌、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)およびオリゲラを起源とする生物が挙げられるが、これらに限定されない。ミコバクテリアとしては、ハンセン病、結核、および結核に似たミコバクテリアの生物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
寄生虫感染症としては、アフリカトリパノソーマ症、バベシア症、シャーガス病、アメーバ、リーシュマニア症、マラリアおよびトキソプラズマ症の原因病原体から非限定的に選択される原生動物により生じる感染症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
真菌感染症としては、足白癬、爪真菌症、アスペルギルス症、ブラストミセス症、カンジダ症、コクシジオイデス真菌症、クリプトコッカス症、ヒストプラズマ症、日和見性の真菌、菌腫、パラコクシジオイデス真菌症、色素性真菌およびスポロトリクム症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
文献中にはほとんど証拠が存在しないが、アデノウイルス科、ピコルナウイルス科、ヘルペスウイルス科、ヘパドナウイルス科、フラビウイルス科、レトロウイルス科、トガウイルス科、ラブドウイルス科、パピローマウイルス科、パラミクソウイルス科およびオルトミクソウイルス科に由来するウイルスは、核酸に及ぼすNOの効果、および感染症の潜伏期の維持におけるNOの活性から、gNOの抗微生物特性を受けやすいはずであると予想される。したがって、ウイルス感染症としては、アデノウイルス科、ピコルナウイルス科、ヘルペスウイルス科、ヘパドナウイルス科、フラビウイルス科、レトロウイルス科、トガウイルス科、ラブドウイルス科、パピローマウイルス科、パラミクソウイルス科およびオルトミクソウイルス科のウイルスより生じる感染症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
微生物より生じる状態としては、皮膚および軟部組織の感染症、骨および関節の感染症、外科手術による感染症および院内感染症が挙げられるが、これらに限定されない。これらの状態は、持続性感染症および/または細胞内感染症であってもよい。そのような感染症は、本明細書に記載の場合、慢性もしくは外科的創傷などの創傷の一部、または皮膚障害における結果であってもよい。
【0100】
一実施形態では、感染症の原因となる微生物は薬物耐性のものである。別の実施形態では、微生物は、バンコマイシンまたはメチシリン耐性のものである。
【0101】
用語「皮膚障害の治療」は、本明細書中で使用する場合、皮膚障害により罹患する組織の治療または予防を意味し、以下の結果のうち少なくとも1つを非限定的に含む:障害の症状の軽減、障害の症状の排除、障害の症状の緩和、障害の源の排除。
【0102】
層流体(laminar fluid)についてのポアズイユの法則により説明されるように、血管上皮細胞を弛緩させると、毛細血管の血流(Q)が増加する。動脈血流が増加すると、組織への栄養分の輸送が増加し、組織から排出される代謝産物の輸送が増加し、それにより、皮膚疾患を助長する多くの因子が改善されると考えられる。酸素供給の向上、pH調節の向上、皮膚の水和の向上、免疫メディエーターとの接触増加および血管を有する皮膚層の厚さの増加は、全て、進行中の病態の改善に寄与すると考えられる。NOが細動脈の血管細胞を弛緩させるように作用し血流を増加させるのと同じ方式で、同様に、NOが血管の平滑筋を拡張するように作用することにより血管性水腫が促進されることがある。さらに、この過程は、免疫メディエーターとの接触増加を可能にすることができる。
【0103】
さらに、iNOSの上方調節により、より多量のNOが生成でき、このNOは、皮膚障害における原因病原体であることが多い哺乳動物の微生物感染症に直接作用することができる。しかし、一酸化窒素は、宿主の免疫応答の調節を通じ、微生物感染症の根絶を間接的に支持することもできる。さらに、このような方式の1つは、Th1応答の調節、およびサイトカインレベルの調節を介したものである。多くの皮膚障害は病態生理に対する免疫的な要素を有するので、こうした障害は、免疫系を調節するための外因性の一酸化窒素を供給するレジメンにより治療できる。
【0104】
一酸化窒素は、真皮、表皮、神経構造および血管構造の失われた構成要素を置き換えるだけでなく、正常な皮膚の形成および機能ならびに正常な修復に必要な適切な細胞外マトリックスを供給するために使用できる幹細胞の動員のための情報伝達分子であることも見出されている。
【0105】
前述のように、一酸化窒素は、細菌、ウイルス、寄生虫および真菌に対する強力な抗微生物剤である。多くの障害と同様、皮膚障害は、感染症で始まる病因を有することがあり、またはこの障害が感染症を引き起こす場合もある。前者の場合、感染病原体は、正常な宿主細胞の活性、代謝または成長を変質させ、変性細胞の分化を引き起こし(多様な癌)、代謝を変化させ、または疣贅(いぼ)の場合と同様に増殖することがある。
【0106】
さらに、持続的なNOS2上方調節と、スティーブンス・ジョンソン症候群などの炎症性の皮膚状態との間の相関に照らせば、外因性のNOを用いた治療は、罹患部位への炎症促進細胞の動員減少を通じ、また、NOS発現の正常なフィードバック阻害の再構築により、その両方で利益があるであろうということは十分考えられる。
【0107】
加えて、皮膚炎などの皮膚障害におけるNOSの調節異常によるバリア機能不全も、外因性のNOを用いてNOの病理学的な調節異常を破壊することにより回復させることができる。加えて、酸化的損傷の阻害は多くの皮膚障害において有益である可能性がある。
【0108】
したがって、皮膚障害は、本明細書中で使用する場合、皮膚の正常な機能、ならびに毛髪および汗腺などその付属器官の障害を指し、尋常性座瘡などのざ瘡、口囲皮膚炎、酒さ、そう痒症、蕁麻疹、蜂巣炎、皮膚の膿瘍、丹毒、紅色陰癬、毛包炎、せつおよび癰、化膿性汗腺炎、膿痂疹、膿瘡、リンパ節炎、リンパ管炎、良性腫瘍、皮膚線維腫、表皮嚢腫、ケロイド、角化棘細胞腫、脂肪腫、異型のほくろ、脂漏性角化症、血管病変、乳児性血管腫、火炎状母斑、単純性血管腫、クモ状母斑、化膿性肉芽腫、リンパ管奇形、水疱性疾患、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、後天性表皮水疱症、線状免疫グロブリンA疾患(linear immunoglobulin A disease)、落葉状天疱瘡、尋常性天疱瘡、皮膚の癌、基底細胞癌、ボーエン病、カポジ肉腫、メラノーマ、パジェット病、扁平上皮癌、角質化障害、たこ、魚鱗癬、乾皮症、毛孔性角化症、原因不明の皮膚炎、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、剥脱性皮膚炎、手足の皮膚炎、慢性単純性苔癬、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、うっ滞性皮膚炎、皮膚糸状菌症、皮膚糸状菌疹反応、間擦疹、癜風、脱毛症、円形脱毛症、多毛症、須毛部仮性毛包炎、急性熱性好中球性皮膚疾患、多形性紅斑、結節性紅斑、環状肉芽腫、皮下脂肪組織炎、壊疽性膿皮症、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、爪甲色素線条(nail melanonychia striata)、爪甲鉤弯症、爪甲剥離症、爪甲損傷癖、粗造爪、打撲後に残る変色または打撲後に残るトリコヒレン(trichohylane)顆粒などの外傷、感染症が原因の爪真菌症、爪囲炎、慢性爪囲炎、シラミ、疥癬、皮膚幼虫移行症、自己免疫色素沈着障害、白斑、圧迫性潰瘍、虚血性静脈性潰瘍、落屑疾患(scaling disease)、扁平苔癬、硬化性苔癬、類疥癬、苔癬状粃糠疹、バラ色粃糠疹、毛孔性紅色粃糠疹、乾癬、光線角化症、皮膚癌、日光蕁麻疹、多形日光疹、臭汗症、多汗症、乏汗症、汗疹、伝染性軟属腫、いぼ、爪周囲の難治性人畜共通感染症(periungual refractory zoonotic disease)、伝染性膿瘡を非限定的に含む任意の皮膚障害であってもよい。
【0109】
用語「対象」は、本明細書中で使用する場合、動物を意味し、哺乳動物、典型的にはヒトであってもよい。
【0110】
一態様では、このデバイスまたは組成物は、例えば、一酸化窒素ガス前駆体と、生細胞、酵素または触媒を含む組成物とを、2つのクリームまたはゲルなど離れた状態に保つことにより、または粉末組成物もしくは可溶性フィルムを用いるなどして使用するまで組成物を脱水することにより、このデバイスまたは組成物を組織に施用する時点まで不活性な状態で保たれる。したがって、一実施形態では、本出願は、その必要がある対象における創傷、微生物感染症および/または皮膚障害の組織を治療する方法であって、
該組織を、活性化の際に反応して一酸化窒素ガスを生成する複数の不活性剤を含有する、一酸化窒素ガス透過性のケーシングと接触させることと、
該不活性剤を活性化させて一酸化窒素ガスを生成させることと
を含み、
該一酸化窒素ガスが、該ケーシングを介して連通し(すなわち通過し)、該組織と接触して、その必要がある対象における創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療する方法を提供する。
【0111】
本出願は、創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するための、一酸化窒素ガス透過性のケーシングの使用であって、該ケーシングが、活性化の際に反応して一酸化窒素ガスを生成する複数の不活性剤を含有する使用も提供する。本出願は、創傷、微生物感染症および/または皮膚障害の治療に使用するための一酸化窒素ガス透過性のケーシングであって、活性化の際に反応して一酸化窒素ガスを生成する複数の不活性剤を含有するケーシングをさらに提供する。
【0112】
別の実施形態では、本出願は、その必要がある対象における創傷、微生物感染症または皮膚障害を治療する方法であって、活性化の際に反応して一酸化窒素ガスを生成する不活性剤を供給することと、該不活性剤を活性化させて一酸化窒素ガスを生成させることと、該対象の組織に該活性化された作用剤を施用することとを含む方法を提供する。本出願は、さらに、創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するための、活性化の際に反応して一酸化窒素ガスを生成する不活性剤の使用も提供する。本出願は、創傷、微生物感染症および/または皮膚障害の治療に使用するための、活性化の際に反応して一酸化窒素ガスを生成する不活性剤をさらに提供する。本出願は、創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するための医薬の調製のための、活性化の際に反応して一酸化窒素ガスを生成する不活性剤の使用もまたさらに提供する。
【0113】
一実施形態では、不活性剤は、i)一酸化窒素ガス前駆体と、ii)(a)一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換する活性を有するか、もしくは一酸化窒素ガス前駆体の一酸化窒素ガスへの変換を引き起こす触媒を生成させる活性を基質に対して有する、単離された酵素、もしくは内因性酵素を発現する生細胞、または(b)一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換するための触媒を発現する生細胞とを含む。
【0114】
別の実施形態では、不活性剤は、分かれた作用剤を含み、不活性剤を活性化させることは、この分かれた作用剤を合わせることを含む。一実施形態では、分かれた作用剤は、圧力または温度をデバイスに加えることにより合わされる。また別の実施形態では、不活性剤は、脱水された作用剤を含み、不活性剤を活性化することは水和を含む。
【0115】
また別の実施形態では、その必要がある対象における創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療する方法であって、
組織を、(i)硝酸を一酸化窒素ガスに変換する活性を有するか、もしくは(ii)(a)硝酸の一酸化窒素ガスへの変換を引き起こす触媒を生成させる活性を基質に対して有する、単離された酵素、もしくは内因性酵素を発現する生細胞、または(b)硝酸を一酸化窒素ガスに変換するための触媒を発現する生細胞を含む一酸化窒素ガス放出組成物またはデバイスと接触させること
を含み、
該組成物が、組織上で汗中の硝酸と反応して、その必要がある対象における創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するための一酸化窒素ガスを生成する方法が提供される。
【0116】
さらなる一実施形態では、このデバイスまたは組成物は、治療期間にわたり、対象または組織に対し毒性を誘導することなく組織に施用される。治療期間は、使用されるデバイスまたは組成物の種類に依存することになる。例えば、本明細書に記載のデバイスの場合、治療期間は、典型的には、約1〜24時間、好ましくは約6〜10時間、より好ましくは約8時間である。クリーム組成物の場合、クリームは、典型的には1日1〜3回施用される。マスク組成物の場合、治療期間は、典型的には約1〜8時間であり、1〜2時間であってもよい。
【0117】
またさらなる一実施形態では、NOは、このデバイスまたは組成物により特定の用途に適した量で生成され、1〜1000百万体積率(ppmv)の範囲であってもよい。一実施形態では、創傷用のデバイスまたは組成物により生成されるNOは、約1〜1000ppmvである。別の実施形態では、感染症用のデバイスまたは組成物により生成されるNOは、約150〜1000ppmvである。また別の実施形態では、皮膚障害用のデバイスまたは組成物により生成されるNOは、約5〜500ppmvである。
【0118】
第1ステップは高濃度、第2ステップは低濃度の2段階で一酸化窒素を施用すると創傷治癒が促進されることは公知である。したがって、別の態様では、本出願は、その必要がある対象における創傷の治癒を促進する方法であって、
第1に、創傷を本出願のデバイスに暴露させて、第1の治療期間にわたり創傷と接触する高濃度の一酸化窒素ガス/ラジカルを生成させることと、
第2に、創傷を本出願の第2のデバイスに暴露させて、第2の治療期間にわたり創傷と接触する低濃度の一酸化窒素ガス/ラジカルを生成させることと
を含む方法を提供する。一酸化窒素ガスの高濃度は約100〜400ppmであり、一酸化窒素ガスの低濃度は約1ppm〜50ppmである。一実施形態では、高濃度は約200ppmである。別の実施形態では、低濃度は約5ppmである。
【0119】
一酸化窒素は、食肉産業において赤身肉製品の改善に際しても使用される。したがって、一実施形態では、本出願は、赤身肉製品の貯蔵寿命、保存状態または外見を改善するための本出願のデバイスの使用を提供する。このデバイスの使用の方法には、NOが赤身肉製品と接触するように、赤身肉製品をデバイスに暴露させることが含まれる。特定の一実施形態では、改善された外見は、赤みが増加し茶色、緑、黒または虹色が減少した、改善された色を含む。別の実施形態では、一酸化窒素は、肉における酸化過程を阻害する。
【0120】
前述の開示内容により、本出願は全般的に説明されている。より完全な理解は、以下の具体的な実施例を参照することにより得ることができる。これらの実施例は、単に例示の目的で記載されており、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。状況により示唆されまたは好都合になると考えられるとおりに、形態を変更し等価物を代用することが企図される。本明細書においては特定の用語を用いてはいるが、そのような用語は説明的な意味であることを意図しており、限定を目的としたものではない。
【0121】
以下の非限定的な実施例は、本開示を例示するものである。
【0122】
(実施例)
(実施例1)
結果
Table 2〜4(表2〜4)は、前駆体から一酸化窒素を生成する反応を示すものである。結果から、生細菌は、MRS培養培地および亜硝酸またはニトログリセリンパッチのいずれかを添加したアガロースのスラブ様小片中で固定化されると一酸化窒素ガス(gNO)を生成できることも示される(図1)。図2の結果は、示してある補因子を添加した培地で培養すると生細菌は一酸化窒素ガスを生成できることを示すものである。理論に拘束されることを望むものではないが、亜硝酸からの一酸化窒素生成の最も可能性の高い機序は、代謝活性のある細菌により生成される乳酸により塩がgNOに還元されることである。ニトログリセリンからのgNO生成の最も可能性の高い機序は、生物は、ニトログリセリンを亜硝酸に還元する乳酸を生成して、その結果生じる亜硝酸が乳酸により再度一酸化窒素に還元されることである。この方式では、固定化された細菌は、医療デバイスまたは組成物から、また、罹患組織上に、一定の期間にわたり、且つ、その代謝活性に比例してgNOを放出することが可能である。
【0123】
亜硝酸塩は、いくつかの異なる乳酸生成菌(LAB)によりgNOに還元でき、生成されるgNOの量は、亜硝酸基質の濃度と、細菌の酸生成能力とに依存する(図3A)。ラクトバチルス・ファーメンタム(ATCC11976)などいくつかの細菌は硝酸還元能力を有することから、こうした細菌によりgNOを生成するための基質として硝酸カリウムなどの硝酸を使用できる。硝酸基質は亜硝酸に変換することができ、次いで亜硝酸を、細菌により生成された乳酸によりgNOに還元することができる(図3B)。さらに、この実施例は、硝酸、亜硝酸またはいくつかの他の一酸化窒素供与体を基質として、罹患組織を治療するための医療デバイスまたは組成物中の生細胞または酵素と共に使用することを実証するものである。
【0124】
LABを含有する培養培地にグルコースを添加すると、時間の経過と共に培養培地の酸性度が増す(pHが低下する)。グルコースを添加すると、ラクトバチルス・ファーメンタム(ATCC11976)を用いた際に、時間の経過と共により低いpH値が達成される(図4A)。培養培地に亜硝酸を添加すると、より多くの基質をgNOの生成に利用できるようにはなるが、OD600値が低下していることからわかるように、細菌の成長が阻害された(図4B)。グルコースを添加した培地においては乳酸の濃度が増す(pH値が低下する)ことが観察され、より高い濃度の亜硝酸では細菌の成長が阻害されるにもかかわらず、グルコースおよび亜硝酸を両方とも添加した培養培地においては、細菌により還元能力が増し、より多くのgNOが生成された(図4C)。gNO濃度の増減についてはあるパターンが見られた。LAB、培養培地、グルコース、NO基質、NOおよび乳酸の間の相互作用により、創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するための有用な治療系が得られる。固定化またはマイクロカプセル化された生細胞または酵素により、治療が継続する全期間にわたりgNOを連続して放出することは、この細胞/酵素ベースの技術にとって非常に有利である。
【0125】
この結果からは、いくつかのラクトバチルス株はMRSブロス中で成長させた際に一酸化窒素を生成することが可能であることも示される(図5および図6)。細菌株を培養した容器の中のヘッドガス圧も測定した(図7)。本発明者らは、培地中での20時間の培養の後、細菌株が硝酸および亜硝酸を生成できることも示した(図8および9)。一酸化窒素は、ニトログリセリンパッチの使用により、乳酸菌からも生成される(図10)。
【0126】
図11〜14は、一酸化窒素源を罹患組織へ供給するために使用されるデバイスの例を示すものである。
【0127】
図11は、一酸化窒素が環境から罹患組織に進む際の、バリア層(10)、貯蔵層(15)、活性層(20)およびトラップ層(25)から成る多層式の一酸化窒素生成医療デバイス(5)を示すものである。バリア層(10)は、罹患組織を保護しパッチを接着している間、調節可能な酸素透過性を維持する。貯蔵層(15)は、活性層中の酵素に対する基質(亜硝酸カリウムまたはアルギニンなど)を含有する。活性層(20)は、一酸化窒素生成用の酵素生成微生物または遊離酵素および補因子を含有する。一酸化窒素ラジカルを罹患組織の最も近くに集中させるためのトラップ層(25)は、脂質または炭化水素から成る。
【0128】
図12は、NOを生成して創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するための、ポリマースラブまたは生体マトリックス(10)中に固定化されたNO生成菌を有する単層式デバイス(5)を示すものである。NOの生成は、固定化された細胞により維持され、固定化された細菌上の不透過性の接着膜(15)によりO2との接触から保護される。さらに、他の生体材料の透過物は、ガス透過性膜(20)により、罹患組織と接触しないようにすることができる。
【0129】
図13は、NOを生成して創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するための、スラブ(15)中に固定化されたNOS酵素上のスラブ中または貯蔵部(10)中に固定化されたL-アルギニンを有する簡単な層式医療デバイス(5)を示すものである。NOの生成は、固定化された細胞により維持され、固定化された細菌上の不透過性の接着膜(20)によりO2との接触から保護される。さらに、他の生体材料の透過物は、ガス透過性膜(25)により、罹患組織と接触しないようにすることができる。
【0130】
図14は、NOを生成して創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するための、アルギネートスラブ(15)中に固定化されたNOS生成菌上のスラブ中または貯蔵部(10)中に固定化されたL-アルギニンを有する簡単な層式医療デバイス(5)を示すものである。NOの生成は、固定化された細胞により維持され、固定化された細菌上の不透過性の接着膜(20)によりO2との接触から保護される。さらに、他の生体材料の透過物は、ガス透過性膜(25)により、罹患組織と接触しないようにすることができる。
【0131】
触媒を生成する活性を有する生細胞または酵素
膵酵素(5%パンクレアチン)の粗抽出物を、タンパク質/脂質含有基質(1%ダイズタンパク質単離物)および一酸化窒素供与体の塩(NaNO2)を加えたアルギネート(2%アルギン酸、ピロリン酸ナトリウム、硫酸カルシウム、水)の低速ゲル化ヒドロポリマー中で場合により固定化する。あるいは、ヨウ化ナトリウム(NaI)などの還元剤を場合により使用して、反応の化学量論を改善し、ヨウ素ガスの殺菌効果を加える。このデバイスまたはパッチを、典型的には凍結乾燥させ、追って使用するために保管する。水の添加により活性化され、ガス不透過性で場合により接着性のある裏打ちと、ガス透過性だが組織を保護する接触面(または接触表面)とを有するものは、高いまたは低い治療レベルの一酸化窒素ガスを生成させるために有用である。NOガスは、創傷、皮膚障害、変性疾患の局所的な臨床療法および一定の外科的用途を非限定的に含む療法において有用である。そのような使用としては、抗微生物剤、瘢痕形成阻害薬としての使用、慢性創傷治癒における使用、血管拡張による外科用皮弁の生着向上のための使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
材料および方法:
さまざまな条件下での固定化された細菌によるNOガス生成(図1)
隔壁付きのPTFEキャップで栓をしたWheatonボトル(Fisher scientific)中でMRS寒天(Fisher scientific)をオートクレーブした。一旦寒天を冷却するが、さらに液体、亜硝酸ナトリウム(Sigma-Aldrich)を加えて、滅菌済みの1Mストックから所望の最終濃度にした。あるいは、経皮的なニトログリセリンパッチNitro-Dur0.8(Key pharmaceuticals)をボトル中に導入した。ラクトバチルス・ファーメンタム(ATCC11976)の一晩培養物(OD600=2)を使用して、寒天に無菌的に播種して1:50希釈物とした。寒天を放置して室温で30分間固めてから、37℃で20時間インキュベートした。100μL注射器(Hamilton)を使用してヘッドスペースからガスを取り出し、これを化学発光NO分析装置(Sievers(登録商標)、GE analytical)の注入ポート中に注入した。所定の変換係数を用いて、各注入についての曲線下面積を記録し、体積百万分率値を計算した。
【0133】
ラクトバチルス・ファーメンタム(ATCC11976)の培養(図2)
隔壁付きのPTFEキャップで栓をしたWheatonボトル(Fisher scientific)中でMRSブロス(Fisher scientific)をオートクレーブした。亜硝酸ナトリウム(Sigma-Aldrich)を加えて、滅菌済みの1Mストックから所望の最終濃度にした。ラクトバチルス・ファーメンタム(ATCC11976)の一晩培養物(0D600=2)を使用して、ブロスに無菌的に播種して1:50希釈物とした。37℃で20時間経過した後、100μL注射器(Hamilton)を使用してヘッドスペースからガスを取り出し、これを化学発光NO分析装置(Sievers(登録商標)、GE analytical)の注入ポート中に注入した。所定の変換係数を用いて、各注入についての曲線下面積を記録し、体積百万分率値を計算した。
【0134】
大腸菌BL21(pnNOS)(pGroESL)の培養(図2)
ラット神経細胞の一酸化窒素合成酵素をコードするプラスミド(pnNOS)とシャペロンタンパク質をコードするプラスミド(pGroESL)とを有する大腸菌株を1ml当たりアンピシリン100μgおよび1ml当たりクロラムフェニコール10μgを含有するLB中で20時間培養した。1mMアルギニンを加え、培養物の1つに、神経細胞の一酸化窒素合成酵素活性に必要な補因子(12μM BH4、120μM DTTおよび0.1mM NADPH)を加えた。ヘッドガスのサンプリングを前述のとおり実施した。
【0135】
さまざまな条件下での細菌による一酸化窒素生成(図3)
隔壁付きのPTFEキャップで栓をしたWheatonボトル(Fisher scientific)中でMRSブロス(Fisher scientific)をオートクレーブした。亜硝酸ナトリウム(Sigma-Aldrich)を加えて、滅菌済みの1Mストックから所望の最終濃度にした。ラクトバチルス・ファーメンタム(ATCC11976)、ラクトバチルス・プランタルムLP80、ラクトバチルス・ファーメンタムNCIMB2797またはラクトバチルス・ファーメンタム(LMG18251)の一晩培養物(OD600=2)を使用して、ブロスに無菌的に播種して1:50希釈物とした。37℃で20時間経過した後、100μL注射器(Hamilton)を使用してヘッドスペースからガスを取り出し、これを化学発光NO分析装置(Sievers(登録商標)、GE analytical)の注入ポート中に注入した。所定の変換係数を用いて、各注入についての曲線下面積を記録し、体積百万分率値を計算した。
【0136】
亜硝酸の測定(図3)
氷酢酸3mlおよび50mM KI 1mlを含有する化学発光NO分析装置(Sievers(登録商標)、GE analytical)の反応槽中に培養培地1mlを注入することにより、亜硝酸レベルを測定した。亜硝酸を酸およびKIと反応させるとNOガスが放出され、これを分析装置により次々に検出する。
【0137】
硝酸の測定(図3)
1M HCl 3mlおよび50mM VCl3を含有する化学発光NO分析装置(Sievers(登録商標)、GE analytical)の反応槽中に培養培地1mlを注入することにより、硝酸レベルを測定した。加熱用の水浴およびポンプを用いて反応槽を95℃に加熱し、95℃で反応を実施した。試料中の硝酸を酸およびVCl3と反応させるとNOガスが放出され、これを分析装置により次々に検出する。
【0138】
亜硝酸およびグルコースの存在下での、細菌による経時的な一酸化窒素生成(図4)
隔壁付きのPTFEキャップで栓をしたWheatonボトル(Fisher scientific)中で、必要量のグルコース(20g/Lまたは100g/L)を添加したMRSブロス(Fisher scientific)をオートクレーブした。亜硝酸ナトリウム(Sigma-Aldrich)を加えて、滅菌済みの1Mストックから所望の最終濃度にした。ラクトバチルス・ファーメンタム11976の一晩培養物(OD600=2)を使用して、ブロスに無菌的に播種して1:50希釈物とした。震盪せずに37℃で必要な長さの時間にわたり培養した後、27G 1.25"針を備えた1ml注射器を使用して隔壁を穿刺し、培地0.7mlを取り出した。このアリコートを使用して、pH(図4A)および分光光度法による(図4B)測定を実施した。次に、100μL注射器(Hamilton)を用いて隔壁を穿刺してヘッドスペースからガスを取り出し、これを化学発光NO分析装置(Sievers(登録商標)、GE analytical)の注入ポート中に注入した。所定の変換係数を用いて、各注入についての曲線下面積を記録し、体積百万分率値を計算した(図4C)。
【0139】
ラクトバチルス・ファーメンタムによる一酸化窒素生成(図5〜9)
MRSブロス20mlを含有する隔壁付きのボトル中でラクトバチルス・ファーメンタム(NCIMB、スコットランド)株を20時間培養した。隔壁を穿刺するための針を備えた圧力計(Fisher scientific)を用いて、ガス生成の結果生じるボトル内圧力を測定した。ヘッドガス1mlを抜き出して一酸化窒素分析装置(Seivers、General Electric)中に注入し、ヘッドスペース中に存在する一酸化窒素ガスの相対量を表すものとして曲線下面積を報告した。続いて培地10μlを抜き出し、注入チャンバー中に存在する氷酢酸および過剰なヨウ化ナトリウムを有する分析装置中に注入した。この結果、亜硝酸が一酸化窒素ガスに変換され、次いで分析装置によりこれを測定し、培養培地中の亜硝酸の相対量として報告した。培地中の硝酸を一酸化窒素ガスに変換させるための1M HClおよび過剰な塩化バナジウムが注入チャンバー中に存在することを除き、培養培地中の硝酸の測定について同じプロセスを繰り返した。それにより、分析装置により測定されたガスから、培養培地中の硝酸の量の相対測定値が得られた。
【0140】
ニトログリセリンパッチによる乳酸菌により生成された一酸化窒素(図10)
隔壁付きのPTFEキャップで栓をしたWheatonボトル(Fisher scientific)中でMRS寒天(Fisher scientific)をオートクレーブした。一旦寒天を冷却するが、さらに液体、経皮的なニトログリセリンパッチNitro-Dur0.8(Key pharmaceuticals)をボトル中に導入した。ラクトバチルス・ロイテリ(NCIMB701359)、ラクトバチルス・ロイテリ(LabMet)またはラクトバチルス・ファーメンタム(ATCC11976)の一晩培養物(OD600=2)を使用して、寒天に無菌的に播種して1:50希釈物とした。P450酵素の阻害薬であるプロアジフェン(SKS-525A)を加えて、水中の64mMストックから最終濃度50μMにし、グルタチオン-S-転移酵素の阻害薬であるスルホブロモフタレインを加えて、水中の30mMストックから1mMの濃度にした。寒天を室温で30分間放置して固めてから、37℃で20時間インキュベートした。100μL注射器(Hamilton)を使用してヘッドスペースからガスを取り出し、これをSievers NO分析装置(GE analytical)の注入ポート中に注入した。所定の変換係数を用いて、各注入についての曲線下面積を積分して記録し、体積百万分率値を計算した。
【0141】
(実施例2)
結果
gNO生成パッチは、大腸菌(図15)、黄色ブドウ球菌(図16)、緑膿菌(図17)、A.バウマンニ(図18)およびMRSA(図21)に対する殺菌効果を示した。gNO生成パッチは、T.ルブルム(図19)およびT.メンタグロフィテス(図20)に対する殺真菌効果を示した。gNO生成パッチは、大腸菌(図22(左))、黄色ブドウ球菌(図22(中央))および緑膿菌(図22(右))に対する静菌効果も示した。
【0142】
材料および方法
パッチの調製:長方形のガス透過性膜(Tegaderm)の3面を、ヒートシール可能なプラスチックフィルムでヒートシールすることにより、一方通行のガス透過性のポケットを創出した。その結果得られるポケットに、アルギネートを固定化したL.ファーメンタムウェファーおよびグルコース/NaNO2溶液を満たし、ポケットの4つめの面をヒートシールした。アルミメッキされた1層のテープをプラスチックフィルムに貼って、ガスの損失を回避した。NO供与体であるNaNO2を含有しないグルコース溶液を用いて、対照パッチを作製した。
【0143】
殺菌アッセイ:gNO生成パッチの殺菌効果を具体的に試験するために、液体を含有する6mlの円筒形の空洞とガスサンプリングポートとから成るアッセイチャンバーを設計した。このチャンバーに、生理食塩水中の細菌懸濁液3ml(およそ105CFU/ml)を満たし、対照またはgNO生成パッチで密封した。液体ポートから2時間毎に液体試料を得て、段階希釈物を培養培地/寒天上に載せた。37℃で一晩インキュベートした後、コロニーを計数した。
【0144】
gNOの測定:Hamilton注射器を用いてアッセイチャンバーのガスポートから既知体積のガスを1時間毎にサンプリングし、化学発光分析装置(Sievers)でgNO含有量を測定した。
【0145】
静菌性アッセイ:培養培地/寒天ブロスで満たしたペトリ皿におよそ30〜100コロニーCFUの細菌を播種し、gNO生成パッチまたは対照パッチを皿の蓋の上に載せた。皿を密封し、37℃のインキュベーター中に上下逆さにして一晩載せた。翌日、コロニーを計数した。
【0146】
(実施例3)
前臨床のパイロット研究
パイロット研究を実施して、一酸化窒素が創傷治癒を改善する能力についての情報を得た。モデルは、有効性が十分確認された虚血性創傷モデルである、ウサギの虚血性耳モデルを使用する。虚血の構築には、耳への小規模な外科手術が含まれ、治癒の特徴は、肉芽組織の発生および再上皮化が必要である点でヒトの治癒に似ている。
【0147】
結果
このパイロット研究から、一酸化窒素生成ドレッシングの有効性および安全性についての非常に有望なデータが得られた。処置を施した虚血性創傷は対照より早く治癒し、創傷の組織学的評価においても改善を見ることができることが見出された。
【0148】
非虚血性創傷は、感染の有無にかかわらず、手術後10〜15日の間に閉鎖することが見出された。非虚血性創傷をgNOで処置すると、ビヒクル対照と比較して治癒がわずかに加速した(図23、右のパネルを参照)。さらに、虚血性創傷をgNOで処置した結果、ビヒクル対照で処置した創傷と比較して感染および非感染創傷の両方の閉鎖が目に見えて改善した(図23、左のパネルを参照)。gNO処置した虚血性の非感染創傷は全て、手術後15日までに閉鎖し、gNO処置した虚血性の感染創傷の75%は、20日までに閉鎖した(図23)。これに対し、ビヒクル対照で処置した虚血性創傷は全体に不十分な治癒を示し、感染創傷においては悪化が観察された(図24)。
【0149】
カプラン・マイヤー曲線(生存曲線とも言う)は、時間の経過に伴う生存の可能性を表すもので、時間の経過に伴う創傷閉鎖の可能性を表すために使用した。各創傷が閉鎖するまでの時間を用いてデータをカプラン・マイヤーグラフ上に別々にプロットし、パイロット研究において存在する2つの変数:閉鎖までの時間および処置を用いて統計分析を実施した。処置群対非処置群についてハザード比の有意な減少が観察され、これにより、処置創傷は非処置創傷と比較して治癒する可能性が有意に高いことが示された。データのカプラン・マイヤープロットおよびCox比例ハザード回帰プロットをプロットし、これを図25および26、ならびにTable 7および8(表7および8)に示す。統計分析から、治療群の閉鎖までの時間の有意な改善が示される。
【0150】
ビヒクル対照、またはgNOを生成する創傷用ドレッシングで処置したウサギの耳の虚血性創傷の組織学的評価を実施した(Table 5(表5))。結果は、成熟度の増加、ならびに肥厚化、存在する痂皮/滲出物の減少および炎症/浸潤の低下の両方において、創傷の治癒が改善される全体的傾向を示している。試験群のサイズが小さい(NOで処置した虚血性の耳2つ、およびビヒクル対照で処置した虚血性の耳2つ)ことから、この結果は、統計的に有意ではない。
【0151】
毒物学データを収集したので、Table 6(表6)にまとめる。ウサギの直接観察からは、動物は全般的に健康であり、gNO生成ドレッシングに関連する苦痛の兆候は示さなかったことから、gNOに対する明らかな毒性の兆候は一切得られなかった。処置動物とビヒクル対照動物との間で顕著な変化は観察されなかった。21日の処置期間の最後には、体重減少が測定された。外部の研究室により、血液形態学的試験および血液学的試験を実施した。ADVIA120分析装置を用いて血液学的分析を実施した。以下のパラメーターを評価した:赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、平均赤血球体積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、血小板数、白血球(WBC)、WBC分画、細胞形態および網状赤血球数。形態を評価するために、血液塗抹標本も調製した。日立911分析装置を用い、血液化学試験を内部で実施した。改変型のEvelyn-Mallow法によりメトヘモグロビン定量化を実施した(Hegeshら、1970)。
【0152】
材料および方法
前臨床試験設計:4つの異なる実験条件下でのgNO生成デバイスの効果をビヒクル対照と比較した:a)虚血性の非感染創傷、b)虚血性の感染創傷、c)非虚血性の非感染創傷およびd)非虚血性の感染創傷。感染創傷治癒の評価の写真によるまとめを図27に示す。
【0153】
組織病理学的評価:組織試料を放置して、ホルマリン中で少なくとも24時間固定し、試料を二分してカセット中に置き、パラフィンに加工してから、切片をおよそ5μmの薄片とし、スライドガラス上に載せてヘマトキシリン・エオシン(H&E)およびMassonのトリクロム染料で染色した。半定量的な分類系を用い、AccelLAB Inc.の病理学者により、染色した試料の固定、標本化、染色および分析を実施した。
【0154】
毒物学的評価:4匹のウサギそれぞれについてgNO処置の毒性を評価した。試験中および試験後に毒物学情報を収集した。外部の研究室により血液学的評価および血液形態学的試験を実施する一方、日立911血液分析装置を用いて血液化学的試験を実施した。
【0155】
(実施例4)
酵素(エステル、エステラーゼまたはリパーゼ)およびNaNO3を用いたgNOの発生
エステルまたはトリグリセリドのいずれかの加水分解の結果、酸およびアルコールが生成された。本発明においては、NO供与体(亜硝酸でもよい)の不均化を触媒し、示してある長さの期間にわたり少なくとも200ppmVのgNOを放出するために最大48時間持続的に酸が発生するように、エステルの加水分解を用いることを提案する。エステルの加水分解を触媒する酵素の中では、基質の選択性により、エステラーゼとリパーゼとの間に違いがある。各酵素の特異性は相当異なる可能性があるものの、エステラーゼは低分子量のエステルに対する親和性の方が高いのに対し、リパーゼは、主に脂肪酸のトリグリセリドを認識する。
【0156】
材料および方法
gNOの酵素的発生:水、酢酸エステル(酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸オクチル)、またはトリアセチン(三酢酸グリセリル)などのトリグリセリド、亜硝酸ナトリウムと、エステラーゼ(ブタの肝臓エステラーゼ、リゾプス・オリゼエステラーゼ)またはリパーゼ(ブタの膵臓リパーゼ、カンジダ・ルゴサリパーゼ)とを合わせることにより、反応溶液200μlを調製した。次に、2mlバイアルにこの溶液を加え、バイアルを隔壁キャップでしっかり閉めた。gNO濃度を定量するために、反応物を含有するバイアルからヘッドガスを1時間毎にサンプリングした。
【0157】
パッチの調製:長方形のガス透過性膜(Tegaderm)の3面を、ヒートシール可能なプラスチックフィルムでヒートシールすることにより、一方通行のガス透過性のポケットを創出した。その結果得られるポケットに、トリアセチン/カンジダ・ルゴサリパーゼ/NaNO2溶液を満たしてから、ポケットの4つめの面をヒートシールした。アルミメッキされた1層のテープをプラスチックフィルムに貼って、ガスの損失を回避した。デバイスの安定性または物性を高めるために、いくつかのパッチ中の溶液に、凍結乾燥したアルギネートマイクロビーズを加えた。
【0158】
gNOの測定:Hamilton注射器を用いてアッセイチャンバーのガスポートから既知体積のガスを1時間毎にサンプリングし、化学発光分析装置(Sievers)でgNO含有量を測定した。
【0159】
結果および考察
エステル結合の加水分解についてはいくつかの酵素が使用できる。エステルまたはトリグリセリドの加水分解を利用する利点は、この反応の結果、比較的無害な副生成物および弱酸が得られることである。適切な酵素を適切な基質と共に使用すれば、毒性のリスクが最小限の、一酸化窒素生成ドレッシングを作製することが可能である。可能性のある最良の基質と同様、どの酵素を使用することができるかを決定するために試験を実施した。図27は、以下の4つの基質:酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸オクチルおよびトリアセチンに対してブタの肝臓エステラーゼを用いた実験の結果を表すものである。4つの基質は全て、酵素により加水分解した際に酸を生成し、これにより一酸化窒素が生成された。基質のうち3つは、生物に関連のある一酸化窒素生成をもたらし、1時間で200ppmVに達した。トリアセチンは、加水分解後の最強の酸生成物質であり、6時間の実験にわたり350ppmV超をもたらした。
【0160】
カンジダ・ルゴサリパーゼは、トリグリセリド基質に限定されるものの、エステル結合を加水分解できるもう1つの酵素である。この酵素を4つの基質に対して試験したところ、単純なトリグリセリドであるトリアセチンのみが、多量の一酸化窒素を生成できることが見出された(図28)。エステラーゼまたはリパーゼによりトリアセチンを加水分解するとグリセロールおよび酢酸が生成されるが、これらはいずれも、創傷治癒用ドレッシング、または微生物感染症もしくは皮膚障害を治療するためのドレッシングにおいて許容できる無害の化合物である。
【0161】
図29は、トリアセチンに対する3つの異なるエステラーゼまたはリパーゼを試験する実験を表すものである。この比較から、ブタの肝臓エステラーゼは1時間以内に200ppmV超に達するが、リパーゼはそれよりわずかに長い時間がかかることが示される。カンジダ・ルゴサリパーゼおよびリゾプス・オリゼエステラーゼも、両方とも200ppmVに達したが、4〜5時間かかった。但し、酵素の濃度は、一酸化窒素の最大生成濃度に達するのに必要な時間だけでなく生成の継続期間にも影響するであろうことに注意することは重要である。酵素により生成される一酸化窒素のレベルを変化させるもう1つの要素は、アッセイの基質濃度である。トリアセチンの濃度を変化させると、一酸化窒素の生成が制御される(図30)。生成濃度は、アッセイにおいて1%トリアセチンを使用した際には最大250ppmVに達することができるが、0.5%を使用した際には生成濃度は200ppmVに止まることになる。酵素と基質との間のこうした相互作用により、創傷治癒用ドレッシング、または微生物感染症もしくは皮膚障害を治療するためのドレッシングの創出にとって重要な側面である生成レベルを細かく調節することが可能になる。
【0162】
非密封性のドレッシングTegaderm(3M)、ポリエチレン膜、およびガス不透過性の上層である接着性アルミニウムで構成されるドレッシングにおいて、gNOの酵素的生成を試験した。このドレッシングは、エステラーゼとしてカンジダ・ルゴサリパーゼを、トリグリセリド基質としてトリアセチンを使用することを基本にした。図31は、一酸化窒素の生成が、目標の200ppmVに迅速に到達し、200ppmV超の生物活性レベルで30時間維持されたことを示すものである。この調合物は、慢性創傷、微生物感染症または皮膚障害を治療するためのドレッシングの作製に使用できる。
【0163】
好ましい実施例であると現時点で考えられることを参照して本開示を説明してきたが、本開示は、開示された実施例に限定されるものではないことは理解されたい。逆に、本開示は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に包含される多様な改変形および等価な構成を網羅することを意図するものである。
【0164】
全ての出版物、特許および特許出願は、各個々の出版物、特許または特許出願が、参照によりその全体が組み込まれると具体的且つ個別に示されている場合と同程度に、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0165】
【表1A】

【0166】
【表1B】

【0167】
【表1C】

【0168】
【表2】

【0169】
【表3】

【0170】
【表4】

【0171】
【表5】

【0172】
【表6】

【0173】
【表7】

【0174】
【表8】

【0175】
(参考文献)



【符号の説明】
【0176】
図11
(10) バリア層
(15) 貯蔵層
(20) 活性層
(25) トラップ層
図12
(10) スラブまたは生体マトリックス
(15) 不透過性接着膜
(20) ガス透過性膜
図13、14
(10) スラブまたは貯蔵部
(15) スラブ
(20) 不透過性接着膜
(25) ガス透過性膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)(i)一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換する活性を有するか、もしくは(ii)一酸化窒素ガス前駆体の一酸化窒素ガスへの変換を引き起こす触媒を生成させる活性を基質に対して有する、単離された酵素、もしくは内因性酵素を発現する生細胞、またはb)一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換するための触媒を生成する生細胞と、担体とを含む組成物。
【請求項2】
一酸化窒素ガス前駆体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記担体がマトリックスを備える、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記マトリックスが、天然ポリマー、合成ポリマー、ヒドロゲル、天然ゲル、可溶性フィルム、複数部分を有するかまたは層状の可溶性フィルム、マイクロカプセルおよびリポソームから選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記天然ポリマーが、アルギネート、キトサン、ゼラチン、セルロース、アガロース、イナゴマメガム、ペクチン、デンプン、ジェラン、キサンタンおよびアガロペクチンから選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記合成ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリルアミド、ポリ乳酸(PLA)、熱活性化ポリマーおよび生体接着ポリマーから選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記ヒドロゲルが、ヒドロキシエチルセルロースおよびEDGEから選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記天然ゲルが、ラノリンベースのゲルおよび水ベースのゲルから選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記可溶性フィルムが、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびポリ乳酸フィルムから選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
前記マトリックスが、炭化水素ベースのマトリックスまたはワセリンである、請求項3に記載の組成物。
【請求項11】
クリーム、スラブ、ゲル、ヒドロゲル、可溶性フィルム、スプレー、ペースト、乳剤、パッチ、リポソーム、バームまたはマスクである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項12】
一酸化窒素ガスを罹患組織に送達するためのデバイスであって、バリア表面および一酸化窒素ガス透過性の接触表面を備え、前記バリア表面と前記接触表面との間に配置される請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物を含有するケーシングを具備するデバイス。
【請求項13】
一酸化窒素ガスを罹患組織に送達するためのデバイスであって、
バリア表面および一酸化窒素ガス透過性の接触表面を備えるケーシングと、
i)一酸化窒素ガス前駆体、および
ii)a)1)前記一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換する活性を有するか、もしくは2)一酸化窒素ガス前駆体の一酸化窒素ガスへの変換を引き起こす触媒を生成させる活性を基質に対して有する、単離された酵素、もしくは内因性酵素を発現する生細胞、または
b)前記一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換するための触媒を生成する生細胞
を含む、前記ケーシング中の組成物と
を具備するデバイス。
【請求項14】
前記ケーシングが前記組成物を前記組織と隔て、前記ケーシングが前記組成物を透過させない、請求項12または13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記罹患組織が、傷ついた皮膚を含み、前記ケーシングまたは組成物が前記皮膚への局所投与に適している、請求項1から14のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項16】
前記罹患組織が、微生物に感染した皮膚を含み、前記ケーシングまたは組成物が前記皮膚への局所投与に適している、請求項1から14のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項17】
前記罹患組織が、皮膚障害に罹患している皮膚を含み、前記ケーシングまたは組成物が前記皮膚への局所投与に適している、請求項1から14のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項18】
前記酵素が一酸化窒素還元酵素(NiR)または一酸化窒素合成酵素(NOS)を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項19】
前記酵素が、NiR活性を有する前記一酸化窒素還元酵素(NiR)の全部または一部を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項20】
前記酵素が、NOS活性を有する前記一酸化窒素合成酵素(NOS)の全部または一部を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項21】
前記NOSが、配列番号1に示すアミノ酸配列を備える、請求項18または20に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項22】
前記NiRが、配列番号2〜5のうち1つまたは複数に示すアミノ酸配列を有するいくつかのサブユニットを備える、請求項18または19に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項23】
前記酵素が、硝酸還元酵素(NiR)、亜硝酸還元酵素、一酸化窒素合成酵素(NOS)、グルタチオンS-転移酵素(GST)またはチトクロムP450系(P450)である、請求項1から17のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項24】
前記触媒がプロトンを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項25】
前記プロトンが、前記酵素反応の生成物または副生成物である、請求項24に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項26】
前記酵素の供給源が、動物、植物、真菌または細菌である、請求項1から25のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項27】
前記酵素および基質が、リパーゼおよびトリグリセリド、エステラーゼおよびエステル、リパーゼおよびエステル、エステラーゼおよびトリグリセリド、プロテアーゼおよびタンパク質、トリプシンおよびタンパク質、キモトリプシンおよびタンパク質を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項28】
前記酵素が、リパーゼまたはエステラーゼ、場合により、カンジダ・ルゴサリパーゼまたはブタの肝臓エステラーゼまたはリゾプス・オリゼエステラーゼまたはブタの膵臓リパーゼである、請求項1から17のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項29】
前記基質が、トリグリセリドまたはエステル、場合により、トリアセチン、トリプロピリン、トリブチリン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルまたは酢酸オクチルである、請求項1から17のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項30】
前記酵素および基質が、乳糖デヒドロゲナーゼおよび乳糖、パパインおよびタンパク質、ペプシンおよびタンパク質、ブロメライン単独、ブロメラインおよびタンパク質、またはパンクレアチンおよびダイズタンパク質を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項31】
還元剤が加えられる、請求項1から30のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項32】
前記還元剤がNaIである、請求項31に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項33】
前記バリア表面が酸素不透過性である、請求項12から32のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項34】
前記バリア表面が酸素透過性である、請求項12から32のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項35】
前記バリア表面が、前記組織または皮膚に接着する接着層を備える、請求項12から34のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項36】
前記バリア表面が、酸素透過性であり、前記組織または皮膚を保護し、前記組織または皮膚に接着する、請求項12から32のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項37】
前記組成物が酵素補因子をさらに含む、請求項1から36のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項38】
前記補因子が、H4B、Ca2+、FAD、FMN、NADPH、O2またはカルモジュリンを含む、請求項37に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項39】
前記酵素が、細胞から単離されたタンパク質画分中に含有される、請求項1から38のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項40】
前記細胞が、ヒト細胞、細菌細胞または酵母細胞である、請求項1から39のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項41】
前記細胞が、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属、ペジオコッカス属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属またはロイコノストック属のプロバイオティック微生物である、請求項1から39のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項42】
前記細胞が、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ファーメンタム、ペジオコッカス・アシジラクチシまたはロイコノストック・メセンテロイデスである、請求項1から39のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項43】
前記細胞が、トルラ種、パン酵母、醸造用酵母、サッカロミセス種、場合によりS.セレビシエ、シゾサッカロミセス種、ピチア種、場合によりピチア・パストリス、カンジダ種、ハンゼヌラ種、場合によりハンゼヌラ・ポリモルファ、およびクルイベロミセス種、場合によりクルイベロミセス・ラクチスのうち1つまたは複数から成る群から選択される酵母細胞である、請求項1から39のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項44】
前記細胞が、NOSまたはNiR酵素を発現する遺伝子操作された酵母である、請求項40に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項45】
前記細胞が、NOSまたはNiR酵素を発現する遺伝子操作された細菌である、請求項40に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項46】
前記細胞が、大腸菌BL21(nNOSpCW)、細菌の亜硝酸還元酵素、場合により、アルカリゲネス・フェカリスS-6に由来する銅依存性の亜硝酸還元酵素を発現する大腸菌もしくはラクトバチルス株、または緑膿菌からチトクロムcd1亜硝酸還元酵素を発現する大腸菌もしくはラクトバチルス株である、請求項40に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項47】
前記細胞がマイクロカプセル化されている、請求項40から46のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項48】
前記マイクロカプセルが、アルギネート/ポリ-l-リシン/アルギネート(APA)、アルギネート/キトサン/アルギネート(ACA)、またはアルギネート/ゲニピン/アルギネート(AGA)の膜を備える、請求項47に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項49】
前記マイクロカプセルが、アルギネート/ポリ-l-リシン/ペクチン/ポリ-l-リシン/アルギネート(APPPA)、アルギネート/ポリ-l-リシン/ペクチン/ポリ-l-リシン/ペクチン(APPPP)、アルギネート/ポリ-L-リシン/キトサン/ポリ-l-リシン/アルギネート(APCPA)、アルギネート-ポリメチレン-co-グアニジン-アルギネート(A-PMCG-A)、アクリル酸ヒドロキシメチル-メタクリル酸メチル(HEMA-MMA)、多層HEMA-MMA-MAA、ポリアクリロニトリルビニルクロリド(PAN-PVC)、アクリロニトリル/メタリルスルホン酸ナトリウム(AN-69)、ポリエチレングリコール/ポリペンタメチルシクロペンタシロキサン/ポリジメチルシロキサン(PEG/PD5/PDMS)またはポリN,N-ジメチルアクリルアミド(PDMAAm)の膜を備える、請求項47に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項50】
前記マイクロカプセルが、アルギネート、硝酸セルロース、ポリアミド、脂質複合体型のポリマー、脂質ベシクル、シリカ封入物、硫酸セルロース/アルギン酸ナトリウム/ポリメチレン-co-グアニジン(CS/A/PMCG)、酢酸フタル酸セルロース、アルギン酸カルシウム、k-カラギーナン-イナゴマメガムゲルビーズ、ジェラン-キサンタンビーズ、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、カラギーナン、ポリ無水デンプン、ポリメタクリル酸デンプン、ポリアミノ酸または腸溶コーティングポリマーを含む、請求項47に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項51】
前記細胞または酵素が、貯蔵部、場合によりスラブ中で固定化されている、請求項1から50のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項52】
前記貯蔵部またはスラブがポリマーを備える、請求項51に記載のデバイス。
【請求項53】
前記ポリマーが、アルギネート、キトサン、アガロース、アガロペクチンまたはセルロースなどの天然ポリマーを含む、請求項52に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項54】
前記組成物が、MRSブロス、LBブロス、グルコースまたは他の炭素源を含有する成長培地などの細胞用の成長培地をさらに含む、請求項1から53のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項55】
前記一酸化窒素ガス前駆体が、一酸化窒素の酵素的生成のための基質である、請求項1から54のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項56】
i)前記酵素がNiRを含み、前記一酸化窒素ガス前駆体が亜硝酸カリウムを含むか、またはii)前記酵素がNOSを含み、前記一酸化窒素前駆体がL-アルギニンを含む、請求項55に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項57】
前記一酸化窒素ガス前駆体が、経皮的な溶出系、場合によりパッチ中に配置された、一酸化窒素供与体、場合によりニトログリセリン、二硝酸イソソルビドまたは他の硝酸である、請求項55に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項58】
前記一酸化窒素ガス前駆体がL-アルギニンである、請求項55に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項59】
前記一酸化窒素ガス前駆体が硝酸またはその塩である、請求項55に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項60】
前記硝酸が、硝酸カリウム、硝酸ナトリウムまたは硝酸アンモニウムを含む、請求項59に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項61】
前記一酸化窒素ガス前駆体が、亜硝酸、場合により亜硝酸ナトリウムもしくは亜硝酸カリウム、またはその塩である、請求項55に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項62】
前記一酸化窒素ガス前駆体が、一酸化窒素供与体、場合によりニトログリセリン(NTG)または二硝酸イソソルビド(ISDN)である、請求項55に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項63】
一酸化窒素ガス濃縮用物質をさらに含む、請求項1から62のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項64】
前記一酸化窒素ガス濃縮用物質が、前記一酸化窒素ガスを濃縮するための脂質または脂質様分子を含む、請求項63に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項65】
前記一酸化窒素ガス濃縮用物質が、前記一酸化窒素ガスを濃縮するための炭化水素または炭化水素様分子を含む、請求項64に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項66】
前記一酸化窒素ガス濃縮用物質が、前記一酸化窒素ガスを回収するための、スペーサー、ガス用のセルを有する構造またはスポンジを備える、請求項64に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項67】
前記ケーシングが複数の層を備える、請求項12から66のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項68】
前記層が柔軟性を有する、請求項67に記載のデバイス。
【請求項69】
前記層が硬い、請求項67に記載のデバイス。
【請求項70】
前記層が薄層を備える、請求項67に記載のデバイス。
【請求項71】
前記層が、
a)バリア層と、
b)接触層と、
c)活性層と
を備える、請求項67から70のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項72】
前記活性層が前記組成物を備え、前記バリア層が前記バリア表面を備え、前記接触層が前記接触表面を備える、請求項71に記載のデバイス。
【請求項73】
貯蔵層をさらに備える、請求項71または72に記載のデバイス。
【請求項74】
前記活性層が前記細胞または酵素を備え、前記貯蔵層が前記一酸化窒素ガス前駆体を備える、請求項73に記載のデバイス。
【請求項75】
前記活性層と前記貯蔵層との間にセパレーターをさらに備える、請求項74に記載のデバイス。
【請求項76】
前記活性層と前記貯蔵層とをつなぐ少なくとも1つの弁をさらに備え、前記弁が、前記細胞または酵素が前記前駆体と隔てられている最初の閉位置、および前記活性層と貯蔵層とが流体連通しており、前記細胞または酵素前駆体が前記層間で流れることができるようになる開位置を有する、請求項74に記載のデバイス。
【請求項77】
前記弁が一方向弁を備え、前記開位置では前記酵素または細胞または前記前駆体のいずれかが前記層間で流れることができるようになる、請求項76に記載のデバイス。
【請求項78】
前記弁が、前記デバイスに加圧、場合により手で加圧することにより前記閉位置から前記開位置に作動できる圧力作動弁を備える、請求項76に記載のデバイス。
【請求項79】
トラップ層をさらに備える、請求項12から78のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項80】
前記トラップ層が前記一酸化窒素ガス濃縮用物質を備える、請求項79に記載のデバイス。
【請求項81】
前記一酸化窒素(NO)が、前記活性層中の乳酸生成菌(LAB)により生成される酸と前記貯蔵層中のNO含有基質との間の化学反応において生成される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項82】
前記デバイスが、不活性な組成状態および活性な組成状態を有し、前記不活性な組成状態では、前記組成物は脱水されており、前記前駆体は前記酵素または触媒と相互作用してNOガスを生成することはなく、前記活性な組成状態では、前記組成物は水和されて前記前駆体が前記酵素または触媒によりNOガスに変換される、請求項1から81のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物。
【請求項83】
その必要がある対象における創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するための、請求項1から82のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物の使用。
【請求項84】
その必要がある対象における罹患組織を治療する方法であって、
a)前記罹患組織を、活性化の際に反応して一酸化窒素ガスを生成する複数の不活性剤を含有する一酸化窒素ガス透過性のケーシングと接触させるステップと、
b)前記不活性剤を活性化させて一酸化窒素ガスを生成させるステップと
を含み、
前記一酸化窒素ガスが、前記ケーシングを介して連通し、前記罹患組織と接触して、その必要がある前記対象における創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療する方法。
【請求項85】
その必要がある対象における創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療する方法であって、
罹患組織を、活性化の際に反応して一酸化窒素ガスを生成する複数の不活性剤を含有する一酸化窒素ガス放出組成物と接触させるステップと、
前記不活性剤を活性化させて一酸化窒素ガスを生成させるステップと
を含み、
前記一酸化窒素ガスが、その必要がある前記対象における創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療するように前記罹患組織と接触する方法。
【請求項86】
前記不活性剤が、i)一酸化窒素ガス前駆体と、ii)(a)1)前記一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換する活性を有するか、もしくは2)前記一酸化窒素ガス前駆体の一酸化窒素ガスへの変換を引き起こす触媒を生成させる活性を基質に対して有する、単離された酵素、もしくは内因性酵素を発現する生細胞、または(b)一酸化窒素ガス前駆体を一酸化窒素ガスに変換するための触媒を生成する生細胞とを含む、請求項84または85に記載の方法。
【請求項87】
前記不活性剤が、分かれた作用剤を含み、前記分かれた作用剤を活性化するステップが、前記分かれた作用剤を合わせるステップを含む、請求項84から86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記分かれた作用剤が、ステップ(b)において、圧力または温度を前記デバイスまたは組成物に加えることにより、前記分かれた作用剤を混合することによって活性化される、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記不活性剤が脱水された作用剤であり、前記不活性剤を活性化するステップが前記作用剤を水和するステップを含む、請求項84から86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
その必要がある対象における創傷、微生物感染症および/または皮膚障害を治療する方法であって、
前記組織を一酸化窒素ガス放出組成物またはデバイスと接触させるステップであって、前記組成物またはデバイスが、(i)硝酸を一酸化窒素ガスに変換する活性を有するか、もしくは(ii)(a)硝酸の一酸化窒素ガスへの変換を引き起こす触媒を生成させる活性を基質に対して有する、単離された酵素、もしくは内因性酵素を発現する生細胞、または(b)硝酸を一酸化窒素ガスに変換するための触媒を発現する生細胞を含むステップ
を含み、
前記組成物が前記組織上の汗の中の硝酸と反応して、前記その必要がある対象における美容のための一酸化窒素ガスを生成させる方法。
【請求項91】
前記デバイスまたは組成物が、1〜24時間の治療期間にわたり罹患組織に施用される、請求項84から90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
その必要がある対象における罹患組織の治療の方法であって、前記罹患組織を請求項1から82のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物に暴露させるステップを含み、前記デバイスにより生成されるNOが前記罹患組織と接触する方法。
【請求項93】
その必要がある対象における創傷の治療の方法であって、
第1に、前記創傷を請求項1から82のいずれか一項に記載のデバイスまたは組成物に暴露させて、第1の治療期間にわたり前記創傷と接触する高濃度の一酸化窒素ガスを生成させるステップと、
第2に、前記創傷を請求項1から82のいずれか一項に記載の第2のデバイスまたは組成物に暴露させて、第2の治療期間にわたり前記創傷と接触する低濃度の一酸化窒素ガスを生成させるステップと
を含む方法。
【請求項94】
前記創傷が、慢性創傷、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍、仙骨潰瘍、臀部潰瘍、転子潰瘍、褥瘡性潰瘍、水疱性潰瘍、静脈瘤性脚潰瘍、指潰瘍、虚血性皮弁または通常の創傷である、請求項84から93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記対象が、創傷治癒を遅らせるかまたは不完全な創傷治癒の原因となる二次的状態を有する、請求項84から94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記二次的状態が糖尿病である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記対象がヒトである、請求項84から96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記創傷が、細菌に感染しているか、または炎症を起こしている、請求項84から97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記微生物感染症が、細菌、真菌、寄生虫またはウイルスによる感染症である、請求項84から92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記細菌感染症が、グラム陰性桿菌、グラム陽性桿菌、グラム陽性球菌、ナイセリアまたはミコバクテリアにより生じる、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記グラム陰性桿菌が、バルトネラ、ブルセラ症、カンピロバクター、コレラ、大腸菌、ヘモフィルス、クレブシエラ、エンテロバクター、セラチア、レジオネラ、類鼻疸、百日咳、ペスト、エルシニア、プロテウス族、シュードモナス、サルモネラ、細菌性赤痢および野兎病から選択される、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記グラム陽性桿菌が、炭疸菌、ジフテリア、エリジペロスリックス症、リステリア症およびノカルジア症の生物から選択される、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
前記グラム陽性球菌が、肺炎球菌、ブドウ球菌、連鎖球菌および腸球菌を起源とする生物から選択される、請求項100に記載の方法。
【請求項104】
前記ナイセリアが、アシネトバクター、キンゲラ、髄膜炎菌、モラクセラ・カタラーリスおよびオリゲラを起源とする生物から選択される、請求項100に記載の方法。
【請求項105】
前記ミコバクテリアが、ハンセン病、結核、および結核に似たミコバクテリアの生物から選択される、請求項100に記載の方法。
【請求項106】
前記寄生虫の感染症が、アフリカトリパノソーマ症、バベシア症、シャーガス病、アメーバ、リーシュマニア症、マラリアおよびトキソプラズマ症から選択される原生動物により生じる、請求項99に記載の方法。
【請求項107】
前記真菌感染症が、足白癬、爪真菌症、アスペルギルス症、ブラストミセス症、カンジダ症、コクシジオイデス真菌症、クリプトコッカス症、ヒストプラズマ症、日和見性の真菌、菌腫、パラコクシジオイデス真菌症、色素性真菌およびスポロトリクム症から選択される、請求項99に記載の方法。
【請求項108】
前記ウイルス感染症が、アデノウイルス、ピコルナウイルス、ヘルペスウイルス、ヘパドナウイルス、フラビウイルス、レトロウイルス、トガウイルス、ラブドウイルス、パピローマウイルス、パラミクソウイルスおよびオルトミクソウイルスから選択される科のウイルスにより生じる、請求項99に記載の方法。
【請求項109】
前記微生物感染症が、皮膚および軟部組織の感染症、骨および関節の感染症、外科手術による感染症および院内感染症から選択される状態により生じる、請求項84から92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記状態が、持続性感染症および/または細胞内感染症である、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記微生物感染症が薬物耐性のものである、請求項84から92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記微生物感染症がバンコマイシンまたはメチシリン耐性のものである、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記皮膚障害が、尋常性座瘡などのざ瘡、口囲皮膚炎、酒さ、そう痒症、蕁麻疹、蜂巣炎、皮膚の膿瘍、丹毒、紅色陰癬、毛包炎、せつおよび癰、化膿性汗腺炎、膿痂疹、膿瘡、リンパ節炎、リンパ管炎、良性腫瘍、皮膚線維腫、表皮嚢腫、ケロイド、角化棘細胞腫、脂肪腫、異型のほくろ、脂漏性角化症、血管病変、乳児性血管腫、火炎状母斑、単純性血管腫、クモ状母斑、化膿性肉芽腫、リンパ管奇形、水疱性疾患、水疱性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、後天性表皮水疱症、線状免疫グロブリンA疾患、落葉状天疱瘡、尋常性天疱瘡、皮膚の癌、基底細胞癌、ボーエン病、カポジ肉腫、メラノーマ、パジェット病、扁平上皮癌、角質化障害、たこ、魚鱗癬、乾皮症、毛孔性角化症、原因不明の皮膚炎、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、剥脱性皮膚炎、手足の皮膚炎、慢性単純性苔癬、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、うっ滞性皮膚炎、皮膚糸状菌症、皮膚糸状菌疹反応、間擦疹、癜風、脱毛症、円形脱毛症、多毛症、須毛部仮性毛包炎、急性熱性好中球性皮膚疾患、多形性紅斑、結節性紅斑、環状肉芽腫、皮下脂肪組織炎、壊疽性膿皮症、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、爪甲色素線条、爪甲鉤弯症、爪甲剥離症、爪甲損傷癖、粗造爪、打撲後に残る変色または打撲後に残るトリコヒレン顆粒などの外傷、感染症が原因の爪真菌症、爪囲炎、慢性爪囲炎、シラミ、疥癬、皮膚幼虫移行症、自己免疫色素沈着障害、白斑、圧迫性潰瘍、虚血性静脈性潰瘍、落屑疾患、扁平苔癬、硬化性苔癬、類疥癬、苔癬状粃糠疹、バラ色粃糠疹、毛孔性紅色粃糠疹、乾癬、光線角化症、皮膚癌、日光蕁麻疹、多形日光疹、臭汗症、多汗症、乏汗症、汗疹、伝染性軟属腫、いぼ、爪周囲の難治性人畜共通感染症、伝染性膿瘡から選択される、請求項84から92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
前記対象が動物である、請求項84から113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
前記動物がヒトである、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
赤身肉製品の貯蔵寿命、保存状態または外見を改善する方法であって、NOが前記赤身肉製品と接触する請求項1から81のいずれか一項に記載のデバイスに前記赤身肉製品を暴露させるステップを含む方法。
【請求項117】
前記改善された外見が、赤みが増加し茶色、緑、黒または虹色が減少した、改善された色を含む、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記一酸化窒素が、肉における酸化過程を阻害する、請求項116に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公表番号】特表2011−525116(P2011−525116A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515032(P2011−515032)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000858
【国際公開番号】WO2009/155689
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(510337791)マイクロファーマ・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】