説明

一酸化窒素産生抑制剤

【課題】 新規な一酸化窒素産生抑制剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 学名 Andropraphis paniculata インドネシア名(Sambi boto)の全草等のインドネシアにおいて民間伝承薬として用いられている植物からの溶媒抽出物は、優れた一酸化窒素産生抑制作用を有しており、低血圧、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎等の効果を有する食品、飼料、医薬品等への添加物として極めて有用である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特定の植物またはその抽出物を有効成分とする一酸化窒素産生抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】1980年代前半、生体内における窒素酸化物の研究過程で、一酸化窒素( 以下、NOと略す場合がある)が生体内で産生していることが初めて見出された。その発見をきっかけに、NOは多くの研究者の注目を集め、1987年には、NOが血管内皮細胞由来弛緩因子の本体であるとの報告がなされた。そして、現在では、循環、免疫、神経系等広い分野で、NOの生理機能や病態との関連が明らかにされている。そのうち、例えば、体内で常時産生されているNOは、循環動態の恒常性を維持する重要な役割を担っていることが解明されている。また一方、敗血症においては、エンドトキシンにより活性化されたサイトカインの働きにより、大量のNOが産生され、これが内皮細胞障害、心筋収縮力低下等のエンドトキシンショック状態を引き起こすといわれている。
【0003】従来より、血管弛緩および血小板凝集抑制作用を有する内因性生理活性物質としてプロスタサイクリンが知られていたが、それ以外の新たな血管弛緩物質が1980年にFurchgott らにより内皮細胞由来血管拡張因子(Endothelium Derived Relaxing Factor,EDRF)として発見され、これがNOと同一であることが1987年にMoncada らおよびIgnarro らのグループにより証明された(Ignarro,L.J. : Endothelium-derived nitric oxide : actions and properties. FASEB J. 3, 31-36,1989., Knowles,R.G.and Moncada,S.:Nitric oxide asa signal in blood vessels.Trends Biochem.Sci.17, 399-402,1992., Moncada,S., Palmer,R.M.J. and Higgs,E.A. : Nitric oxide: physiology, pathophysiology and pharmacology.Pharmacolog. Rev. 43, 109-142, 1991.) 。
【0004】それ以来、循環器系以外においても、神経系さらに免疫系など生体内の多くの生理機能における情報伝達物質としてのNOの役割が次々に明かにされている。すなわち、神経系では、神経伝達物質として働き、シナプス可塑性( 小脳長期抑圧現象や海馬長期増強現象) の成立に関与しており( 渋木克栄: NOと神経系の可塑性−小脳長期抑圧の調節. 実験医学11,2451-2456,1993.) 、さらに、免疫系では腫瘍細胞や病原体に対する生体防御機構において、エフェクター細胞として働いているマクロファージから産生されるNOの重要性が指摘されている( 滝龍雄、中野昌康: マクロファージにおけるアルギニンおよびその代謝産物による抗菌抗腫瘍作用. 医学のあゆみ156,194-197,1991.)。血管拡張作用に限っても、EDRFとして血管内膜側から作用するだけでなく、非アドレナリン・非コリン作動性の血管拡張神経の伝達物質として外膜側からも作用することが証明されており、NOが複雑なメカニズムにより種々の生理機能の調節を行っていることが指摘されている。
【0005】このように生体内で産生されることが明らかになったNOは、L−アルギニンを基質として一酸化窒素合成酵素(NOS)により生成される。NOSには少なくとも非誘導型(血管内皮型および神経型)および誘導型のアイソザイムが存在する。血管内皮型NOSは、主に血管内皮細胞に存在し、細胞内カルシウム濃度により活性が制御されている。神経型NOSは、中枢神経細胞、末梢神経細胞、または膵島β細胞、消化管神経、副腎髄質、腎臓緻密斑等に存在し、血管内皮型NOSと同様に細胞内カルシウム濃度により活性が制御されている。
【0006】血管内皮型NOSおよび神経型NOS(constitutive NOS、c-NOS と省略される)は細胞内に恒常的に存在し、生理的変化による酵素量の変化はほとんど見られない。誘導型NOS(inducible NOS 、i-NOS と省略される)は、肝実質細胞、好中球、マクロファージ、平滑筋、線維芽細胞、腎メサンギウム細胞、消化管上皮、膵島β細胞、血管平滑筋細胞またはグリア細胞等に存在する。これは通常細胞内で認められず、エンドトキシンや各種サイトカイン等による刺激により誘導される。
【0007】NOSにより生成されるNOの作用は多彩であり、例えば、血管弛緩作用、血小板凝集抑制作用、粘着抑制、白血球粘着・遊走抑制、交感神経活動抑制、エンドトキシンショック、エンドトキシン・サイトカインによる低血圧による障害、神経細胞間の情報伝達物質としての作用、虚血性脳細胞障害、抗腫瘍、殺菌作用、自己免疫疾患、インスリン依存性糖尿病、関節炎、移植後組織障害、拒絶反応等が挙げられる。
【0008】生体内でのNOの生理活性を解析する上で、NO合成酵素阻害剤は有用であり、またショックや虚血性疾患等の治療薬として用いられる可能性があることより、近年種々のNOS阻害剤の開発が現在進められている。例えば、基質競合剤としてアルギニン類似体があり、Nω−モノメチル−L−アルギニン(L−NMMA)、Nω−ニトロ−L−アルギニン(L−NNA)、Nω−アミノ−L−アルギニン(L−NAA)、Nω−イミノエチル−オルニチン(L−NIO)等がそれに当たる。
【0009】しかしながら、上記代表例を含む従来公知のNOS阻害剤は、iNOSだけでなく、cNOSをも阻害してしまうものが殆どであり、之等の治療薬としての利用によれば、恒常的な循環動態の調節までもが抑制されてしまい、血圧上昇、臓器血流減少等の副作用を回避することはできない。更に、之等の利用時には、中枢神経系への影響やインポテンツ等の問題も懸念される。以上のように、従来知られているNOS阻害剤は、医薬品として評価できるものではなく、これらに代わって、iNOSを選択的に阻害することのできるNO産生抑制作用を有する薬剤の開発が求められていた。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、iNOSを選択的に阻害することのできるNO産生抑制作用を有する薬剤を見出すべく鋭意検討を行った結果、特定のインドネシアの民間伝承薬およびその抽出物にNO産生抑制作用があることを見出し本発明を完成した。
【0011】すなわち本発明は、学名: Andrographis paniculata インドネシア名(Sambi boto)学名: Caesalpinia sappan インドネシア名(Kaya secang)学名: Schima wallichii インドネシア名(Buah cangkok)学名: Alstonia scholaris インドネシア名(Babakan pule)学名: Graptophyllum pictum インドネシア名(Daum wungu)学名: Usnea spp. インドネシア名(Akar angin)学名: Rheum officinale インドネシア名(Klembak)学名: Sindora javanica インドネシア名(Saparantu)学名: Vitex trifolia インドネシア名(Legundi)学名: Anacardium occidentale インドネシア名(Daun jambu mete)学名: Gymnopetalum leucosticum インドネシア名(Duri kemarung)学名: Equisetum debile インドネシア名(Greges otot)学名: Kyllinga monocephala インドネシア名(Akar teki)学名: Kyllinga brevifolia インドネシア名(Akar teki)学名: Ardisia fuliginosa インドネシア名(Ajag)学名: Entada phaseoloides インドネシア名(Tariyu)及び学名: Alyxia reinwardti インドネシア名(Kayu polo sari)からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の植物体そのもの、又は植物の溶媒抽出液あるいは炭酸ガスを使用する超臨界抽出法により抽出された抽出物を有効成分として含有することを特徴とするNO産生抑制剤である。本発明はまた、学名: Andrographis paniculata インドネシア名(Sambi boto)の全草学名: Caesalpinia sappan インドネシア名(Kaya secang) の木部学名: Schima wallichii インドネシア名(Buah cangkok)実学名: Alstonia scholaris インドネシア名(Babakan pule)の樹皮学名: Graptophyllum pictum インドネシア名(Daum wungu)の全草学名: Usnea spp. インドネシア名(Akar angin)の全草学名: Rheum officinale インドネシア名(Klembak) の根学名: Sindora javanica インドネシア名(Saparantu) の実学名: Vitex trifolia インドネシア名(Legundi) の葉学名: Anacardium occidentale インドネシア名(Daun jambu mete) の葉学名: Gymnopetalum leucosticum インドネシア名(Duri kemarung) の棘学名: Equisetum debile インドネシア名(Greges otot) の茎学名: Kyllinga monocephala インドネシア名(Akar teki) の全草学名: Kyllinga brevifolia インドネシア名(Akar teki) の全草学名: Ardisia fuliginosa インドネシア名(Ajag)の全草学名: Entada phaseoloides インドネシア名(Tariyu)の茎・葉及び学名: Alyxia reinwardti インドネシア名(Kayu polo sari)の茎からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の植物体そのもの、又は植物の溶媒抽出液あるいは炭酸ガスを使用する超臨界抽出法により抽出された抽出物を有効成分として含有することを特徴とする一酸化窒素産生抑制剤である。本発明はさらに、上記溶媒がクロロホルム、メタノール、エタノール、プロピレングリコール及び1, 3−ブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするNO産生抑制剤である。
【0012】本発明のNO産生抑制に有効であることが示された上述のインドネシア由来の植物は、古くからの民間伝承薬として言い伝えられており、ジャムウ( 中国で言う漢方の様なもの) の構成成分として用いられている。しかし、これらの植物およびその抽出液、また、それらを構成成分とするジャムウが、NO産生抑制作用を有することは全く知られていなかったことである。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
原材料本発明に好ましく用いられる学名: Andrographis paniculata インドネシア名(Sambi boto)の全草 学名: Caesalpinia sappan インドネシア名(Kaya secang) の木部学名: Schima wallichii インドネシア名(Buah cangkok)実学名: Alstonia scholaris インドネシア名(Babakan pule)の樹皮学名: Graptophyllum pictum インドネシア名(Daum wungu)の全草学名: Usnea spp. インドネシア名(Akar angin)の全草学名: Rheum officinale インドネシア名(Klembak) の根学名: Sindora javanica インドネシア名(Saparantu) の実学名: Vitex trifolia インドネシア名(Legundi) の葉学名: Anacardium occidentale インドネシア名(Daun jambu mete) の葉学名: Gymnopetalum leucosticum インドネシア名(Duri kemarung) の棘学名: Equisetum debile インドネシア名(Greges otot) の茎学名: Kyllinga monocephala インドネシア名(Akar teki) の全草学名: Kyllinga brevifolia インドネシア名(Akar teki) の全草学名: Ardisia fuliginosa インドネシア名(Ajag)の全草学名: Entada phaseoloides インドネシア名(Tariyu) の茎・葉学名: Alyxia reinwardti インドネシア名(Kayu polo sari)の乾燥したものは、インドネシアの市場をはじめ他国の市場でも入手できる。
【0014】有効成分の抽出植物をそのまま切裁せずに用いても良いが、抽出操作の前に切裁した植物を用いたほうが抽出時間を短縮できる点でより好ましい。上記原材料からの有効成分の抽出方法として公知の方法が採用でき、例えば炭酸ガスを使用する超臨界抽出法や溶媒による抽出法が挙げられる。溶媒による抽出法としては、例えば、原材料に溶媒を添加して溶媒の還流温度下で加熱処理する方法が挙げられる。この加熱処理は一般に80℃以下の温度で実施することが好ましく、公知の抽出装置を用いて還流下1〜6時間加熱処理することによって抽出液を得ることができる。また、溶媒中に前記原材料の乾燥粉末を温浸することによって抽出液を得ることもできる。超臨界流体は、その溶解力を圧力、温度により容易にしかも広範囲に渡って連続的に制御できるため、この性質を利用した超臨界抽出法は、新たな分離法として期待されている。特に超臨界二酸化炭素(SC−CO2 )は、臨界点(臨界温度304.2K,臨界圧力72.8atm)が比較的低いため、熱的に不安定な物質にも適用可能である。超臨界抽出法と溶媒による抽出法を組み合わせて使用してもよい。これらの抽出操作は、1回目の抽出操作を終えた原料残留物で繰り返して実施することができる。抽出に使用する溶媒の量は、原材料100重量部当たり100〜10, 000重量部が適当であり、さらに好ましくは300〜5, 000重量部である。
【0015】本発明において使用できる抽出溶媒としては、水、低級アルコールであるメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等、あるいはプロピレングリコール、1, 3ブチレングリコール等の多価アルコール、アセトン、ジオキサン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、酢酸エチル、ブチルメチルケトン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、キシレン、トリクロロエチレン、四塩化炭素、ベンゼン、クロロホルム及びトルエン等が挙げられる。特に、クロロホルム、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、1, 3−ブチレングリコールが好ましい。上記の溶媒を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよく、水と有機溶媒を併用してもよい。上記の低級アルコール及び多価アルコールを含水アルコールとして使用する場合は、水分含量50%以下が好ましい。このようにして得られた抽出液を減圧濃縮して、次いで乾燥することによって抽出物を粉末として得ることができる。また、使用する溶媒によっては抽出液をそのままNO産生抑制剤の有効成分として使用することが可能であり、例えばエタノール、プロピレングリコール、1, 3−ブチレングリコール等による抽出液はそのまま溶媒を除去せずに使用してもよい。
【0016】超臨界抽出法は、食品、化学、医薬、化粧品工業など幅広い分野で注目を集めている抽出技術である。特に、抽剤として二酸化炭素を用いた場合は、その臨界点(75kg/cm2 、31℃)が比較的低く安全性が高いため、熱に対して不安定な成分や揮発性の高い成分等を効率よく抽出分離することができる。原料から目的の成分を抽出するためには、二酸化炭素の圧力・温度を臨界点以上に設定することにより達せられる。一般的には、同じ温度であれば圧力が高いほど超臨界二酸化炭素の溶解力は増す。本発明における超臨界二酸化炭素抽出は、自体公知の方法で行うことができる。例えば、超臨界抽出装置を用い、高圧セル部の温度33〜40℃、好ましくは35℃、圧力75〜300atm 、好ましくは150atm とし、二酸化炭素の流量0. 5〜5. 0dm3 /分、好ましくは4. 0dm3 /分の条件下で行うことができる。これにより、NO産生抑制剤を含む抽出物が効率よく回収できる。
【0017】本発明のNO産生抑制剤に、有効成分である上記原材料の抽出物の他に、該抽出物に有害でなく且つ該NO産生抑制剤を利用する製品に不適当でない限り、適宜添加剤を常法に従って配合することが可能であり、また、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、塩化リゾチーム、溶菌酵素、ムタナーゼ、クロルヘキシジン、ソルビン酸、アレキシジン、ヒノキチオール、セチルピリジニウムクロライド、アルキルグリシン、アルキルジアミノエチルグリシン塩、アラントイン、ε−アミノカプロン酸、アズレン、ビタミンE及びその誘導体、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化第1錫、水溶性第1若しくは第2リン酸塩、第4級アンモニウム化合物、塩化ナトリウム等の有効成分を配合することもできる。
【0018】製品への応用本発明のNO産生抑制剤は、好ましくは、学名: Andrographis paniculata インドネシア名(Sambi boto)の全草学名: Caesalpinia sappan インドネシア名(Kaya secang) の木部学名: Schima wallichii インドネシア名(Buah cangkok)実学名: Alstonia scholaris インドネシア名(Babakan pule)の樹皮学名: Graptophyllum pictum インドネシア名(Daum wungu)の全草学名: Usnea spp. インドネシア名(Akar angin)の全草学名: Rheum officinale インドネシア名(Klembak) の根学名: Sindora javanica インドネシア名(Saparantu) の実学名: Vitex trifolia インドネシア名(Legundi) の葉学名: Anacardium occidentale インドネシア名(Daun jambu mete) の葉学名: Gymnopetalum leucosticum インドネシア名(Duri kemarung) の棘学名: Equisetum debile インドネシア名(Greges otot) の茎学名: Kyllinga monocephala インドネシア名(Akar teki) の全草学名: Kyllinga brevifolia インドネシア名(Akar teki) の全草学名: Ardisia fuliginosa インドネシア名(Ajag)の全草学名: Entada phaseoloides インドネシア名(Tariyu) の茎・葉学名: Alyxia reinwardti インドネシア名(Kayu polo sari)の茎より選ばれる1 種または2 種以上のインドネシアの民間伝承薬をそのまま、またはその抽出物を有効成分とし、これを公知の医薬用担体と組み合せて製剤化すればよい。
【0019】本発明のNO産生抑制剤は、経口剤や、注射剤、点滴用剤等の非経口剤のいずれによっても投与することができる。
【0020】医薬用担体は、上記投与形態および剤型に応じて選択することができ、経口剤の場合は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等が利用される。また、経口剤の調製にあたっては、更に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を配合することができる。これらの具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0021】結合剤としては、例えばデンプン、デキストリン、アラビアゴム末、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴールなどが挙げられる。
【0022】崩壊剤としては、例えばデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
【0023】界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート80などが挙げられる。
【0024】滑沢剤としては、例えばタルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0025】流動性促進剤としては、例えば軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0026】また、本発明のNO産生抑制剤は、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エリキシル剤等の経口用の液剤としても投与することができ、これらの各種剤形には、矯味矯臭剤、着色剤を配合することができる。
【0027】一方、非経口剤の場合は、常法に従って製造され、希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、ラッカセイ油、ダイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を用いることができる。さらに必要に応じて、殺菌剤、防腐剤、安定剤を加えてもよい。また、この非経口剤は安定性の点から、バイアル等に充填後冷凍し、通常の凍結乾燥技術により水分を除去し、使用直前に凍結乾燥物から液剤を再調製することもできる。さらに、必要に応じて適宜、等張化剤、安定剤、防腐剤、無痛化剤等を配合することもできる。
【0028】本発明のNO産生抑制剤の投与量は、投与経路、疾患の程度、被投与者の年齢等によって異なるが、一般には経口投与の場合、大人1 日当たり、上記植物より選ばれる1 種または2 種以上の生薬の乾燥エキス量として1 〜10g 程度となる量を1 〜3 回に分けて投与すればよい。
【0029】なお、本発明で用いる各種生薬はジャムウの構成植物としてすでに長い歴史を有し、安全性が確認されたものであるので、安心して使用することができる。例えば、マウスおよびラットに対し、投与限界である15g/kgの経口投与で死亡例も異常所見も認められないことから明らかなように極めて安全性の高いものである。
【0030】本発明のNO産生抑制剤は、食品、飼料等へ常法に従って添加することができ、その添加量は製品の種類に応じて適宜選択することができるが、通常、製品の全重量に対して0. 001〜5重量%が適当であり、さらに0. 005〜2重量%とすることが好ましい。本発明のNO産生抑制剤の適用製品として、具体的には、パスタ、チューインガム、チューイングゼリー、コーヒー飲料等の食品、ドッグフード、キャットフード等の飼料が挙げられる。
【0031】
【実施例】次に製造例および実施例を挙げ本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
製造例1学名:Andrographis paniculata インドネシア名(Sambi boto)の全草乾燥物の破砕物100gに対して、50 v/v%エタノール1,000mlを加え、室温暗所にて7日間攪拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出液を得た。この抽出液と凍結乾燥し抽出物を得た。
製造例2学名:Caesalpinia sappanインドネシア名(Kaya secang) の木部乾燥物の破砕物100gに対して、50 v/v%エタノール1,000mlを加え、室温暗所にて7日間攪拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出液を得た。この抽出液と凍結乾燥し抽出物を得た。
製造例3学名:Schima wallichii インドネシア名(Buah cangkok) 実乾燥物の破砕物100gに対して、50 v/v%エタノール1,000mlを加え、室温暗所にて7日間攪拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出液を得た。この抽出液と凍結乾燥し抽出物を得た。
製造例4学名:Alstonia scholaris インドネシア名(Babakan pule)の樹皮乾燥物の破砕物100gに対して、50 v/v%エタノール1,000mlを加え、室温暗所にて7日間攪拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出液を得た。この抽出液と凍結乾燥し抽出物を得た。
製造例5学名:Graptophyllum pictum インドネシア名(Daum wungu)の全草乾燥物の破砕物100gに対して、50 v/v%エタノール1,000mlを加え、室温暗所にて7日間攪拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出液を得た。この抽出液と凍結乾燥し抽出物を得た。
製造例6学名:Usnea spp. インドネシア名(Akar angin)の全草乾燥物の破砕物100gに対して、50 v/v%エタノール1,000mlを加え、室温暗所にて7日間攪拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出液を得た。この抽出液と凍結乾燥し抽出物を得た。
製造例7学名:Rheum officinale インドネシア名(Klembak) の根乾燥物の破砕物100gに対して、50 v/v%エタノール1,000mlを加え、室温暗所にて7日間攪拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出液を得た。この抽出液と凍結乾燥し抽出物を得た。
製造例8学名: Sindora javanica インドネシア名(Saparantu) の実乾燥物の破砕物100gに対して、50 v/v%エタノール1,000mlを加え、室温暗所にて7日間攪拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出液を得た。この抽出液と凍結乾燥し抽出物を得た。
製造例9学名:Vitex trifolia インドネシア名(Legundi) の葉乾燥物の破砕物100gに対して、50 v/v%エタノール1,000mlを加え、室温暗所にて7日間攪拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出液を得た。この抽出液と凍結乾燥し抽出物を得た。
製造例10学名:Anacardium occidentale インドネシア名(Daun jambu mete) の葉乾燥物の破砕物100gに対して、50 v/v%エタノール1,000mlを加え、室温暗所にて7日間攪拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出液を得た。この抽出液と凍結乾燥し抽出物を得た。
製造例11学名: Gymnopetalum leucosticum インドネシア名(Duri kemarung) の棘乾燥物の破砕物100gに対して、50 v/v%エタノール1,000mlを加え、室温暗所にて7日間攪拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出液を得た。この抽出液と凍結乾燥し抽出物を得た。
製造例12学名: Equisetum debile インドネシア名(Greges otot) の茎乾燥物の破砕物100gに対して、50 v/v%エタノール1,000mlを加え、室温暗所にて7日間攪拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出液を得た。この抽出液と凍結乾燥し抽出物を得た。
製造例13学名: Kyllinga monocephala インドネシア名(Akar teki) の全草乾燥物の破砕物100gに対して、50 v/v%エタノール1,000mlを加え、室温暗所にて7日間攪拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出液を得た。この抽出液と凍結乾燥し抽出物を得た。
製造例14学名: Kyllinga brevifolia インドネシア名(Akar teki) の全草乾燥物の破砕物100gに対して、50v/v %エタノール1,000mlを加え、室温暗所にて7日間攪拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出液を得た。この抽出液と凍結乾燥し抽出物を得た。
製造例15学名:Ardisia fuliginosa インドネシア名(Ajag)の全草乾燥物の破砕物100gに対して、50v/v %エタノール1,000mlを加え、室温暗所にて7日間攪拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出液を得た。この抽出液と凍結乾燥し抽出物を得た。
製造例16学名: Entada phaseoloides インドネシア名(Tariyu)の茎・葉乾燥物の破砕物100gに対して、50 v/v%エタノール1,000mlを加え、室温暗所にて7日間攪拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出液を得た。この抽出液と凍結乾燥し抽出物を得た。
製造例17学名:Alyxia reinwardti インドネシア名(Kayu polo sari)の茎乾燥物の破砕物100gに対して、50 v/v%エタノール1,000mlを加え、室温暗所にて7日間攪拌抽出を行った。これを遠心分離・加圧ろ過し、抽出液を得た。この抽出液と凍結乾燥し抽出物を得た。
【0032】実施例1マクロファージが産生するNO量のin vitro測定マクロファージを誘導することが知られているBCG (弱毒結核菌)1μg/mouse を腹腔内投与し、4日後に誘導腹腔マクロファージを採取した。これを96ウェルプレートにまき、2時間インキュベートしてマクロファージをプレートに付着させ、上清を取り除いた。製造例で得た各植物抽出物を50μg/mlとマクロファージを刺激してNOを産生させるエンドトキシンであるリポポリサッカライド(LPS)10μg /m1の両者を加えて24時間インキュベートした後、培養上清中に産生放出されたNOをGriess試薬を用いて呈色させ、吸光度を測定することによって定量した。
【0033】上記実験を2回に分けて行った。結果を表1および表2に示す。
【0034】
【表1】


【0035】
【表2】


【0036】表1および表2に示すように、学名: Andrographis paniculata インドネシア名(Sambi boto)学名: Caesalpinia sappan インドネシア名(Kaya secang)学名: Schima wallichii インドネシア名(Buah cangkok)学名: Alstonia scholaris インドネシア名(Babakan pule)学名: Graptophyllum pictum インドネシア名(Daum wungu)学名: Usnea spp. インドネシア名(Akar angin)学名: Rheum officinale インドネシア名(Klembak)学名: Sindora javanica インドネシア名(Saparantu)学名: Vitex trifolia インドネシア名(Legundi)学名: Anacardium occidentale インドネシア名(Daun jambu mete)学名: Gymnopetalum leucosticum インドネシア名(Duri kemarung)学名: Equisetum debile インドネシア名(Greges otot)学名: Kyllinga monocephala インドネシア名(Akar teki)学名: Kyllinga brevifolia インドネシア名(Akar teki)学名: Ardisia fuliginosa インドネシア名(Ajag)学名: Entada phaseoloides インドネシア名(Tariyu)の抽出物にマクロファージ細胞に対して強いNO産生抑制作用を認めた。したがって、本発明により明らかにされた植物およびその抽出液は、BCGにより強く活性を受け、エンドトキシン(LPS)によって刺激されたマクロファージから産生されるNOを抑制することが示された。
【0037】実施例2マクロファージが産生するNO量のin vivo 測定BCG誘導マウス腹腔内マクロファージが産生するNO量を、Kondo.Y.,Takano,F.,Hojo H.,Biochem.Pharmacol.,46,1887-1892,1993 に記載された方法に準じて以下のように行った。ICR マウス♂5週令を5日訓化後、各群3匹ずつ用いた。製造例で得た各植物抽出物を水に溶解、懸濁後、50mg/kg/day のdoseで1日1回経口投与した。3日目の投与後、マクロファージを誘導することが知られているBCG(弱毒結核菌)1μg/mouse を腹腔内投与し、4日後に誘導腹腔マクロファージを採取した。これを24ウェルプレートにまき、2時間インキュベートしてマクロファージをプレートに付着させ、上清を取り除いた。マクロファージを刺激してNOを産生させるエンドトキシンであるリポポリサッカライド(LPS)10μg /m1を加えて24時間インキュベートした後、培養上清中に産生放出されたNOをGriess試薬を用いて呈色させ、吸光度を測定することによって定量した。
【0038】上記実験の結果を表3に示す。
【表3】


【0039】表3に示すとおり学名: Andrographis paniculata インドネシア名(Sambi boto)学名: Alstonia scholaris インドネシア名(Babakan pule)学名: Alyxia reinwardti インドネシア名(Kayu polo sari)の抽出物にマクロファージ細胞に対して強いNO産生抑制作用を認めた。したがって、本発明により明らかにされた植物およびその抽出液は、BCGにより強く活性を受け、エンドトキシン(LPS)によって刺激されたマクロファージから産生されるNOを抑制することが示された。
【0040】上記実験例1および実験例2の結果から本発明の有効成分がNO産生抑制作用を有することが証明された。
【0041】応用例1顆粒剤の調製: 製造例1により調製した抽出物の粉末200gを乳糖89gおよびステアリン酸マグネシウム1gと混合し、この混合物を単発式打錠機にて打錠し、直径20mm、重量約2.3gのスラッグ錠を得た。このスラッグ錠をオシレーターで粉砕し、整粒後篩別し、粒径20〜50メッシュの顆粒剤を得た。
【0042】応用例2錠剤の調製: 製造例2で調製した抽出物200mgを微結晶セルロース20およびステアリン酸マグネシウム5gと混合し、この混合物を単発式打錠機にて打錠して直径7mm、重量225mgの錠剤を製造した。本錠剤1錠中には、虎杖根の乾燥エキス粉末を200mg含有する。
【0043】応用例3カプセル剤の調製: 製造例3で調製した抽出物500mgを硬カプセルに充填し、カプセル剤を調製した。
【0044】応用例4コーヒー飲料の製造:常法に従い、下記表4の配合により製造した。
【0045】
【表4】
────────────────────────────────成 分 分量(%)
────────────────────────────────インスタントコーヒー 1. 7グラニュー糖 5. 0製造例4 で得た抽出物 0. 05水(又は湯) 適量────────────────────────────────合計 100. 0────────────────────────────────
【0046】応用例5チューインガムの製造:常法に従い、下記表5の配合により製造した。
【0047】
【表5】
────────────────────────────────成 分 分量(%)
────────────────────────────────ガムベース 31. 6グラニュー糖 62. 5グリセリン 0. 8クエン酸 1. 0ショ糖パルミテート 1. 0リン酸3カルシウム 2. 0製造例5 で得たエタノール抽出物 0. 1香料 1. 0────────────────────────────────合計 100. 0────────────────────────────────
【0048】応用例6ドッグフードの製造:常法に従い、下記表6の配合により製造した。
【0049】
【表6】
────────────────────────────────成 分 分量(%)
────────────────────────────────小麦粉 30. 0コーンフラワー 15. 0大豆粉 15. 0ミートミール 20. 0砂糖 5. 0牛脂 5. 0食塩 1. 0リン酸カルシウム 1. 5ソルビン酸カリウム 0. 3香料 0. 6プロピレングリコール 6. 5────────────────────────────────合計 100. 0────────────────────────────────
【0050】上記配合物100重量部に対し水40重量部を加え150℃、スクリュー圧縮比1:3でエクストルダーにより押し出し成形した。
【0051】
【発明の効果】人体及び動物に対し有害な作用を示さず、きわめて安全性が高い。食品及び飼料等へ配合することにより、マクロファージの一酸化窒素産生を効果的に抑制し、ショック、低血圧、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、虚血性脳障害、腫瘍、インスリン依存性糖尿病等の治療および/又は予防に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 学名: Andrographis paniculata インドネシア名(Sambi boto)学名: Caesalpinia sappan インドネシア名(Kaya secang)学名: Schima wallichii インドネシア名(Buah cangkok)学名: Alstonia scholaris インドネシア名(Babakan pule)学名: Graptophyllum pictum インドネシア名(Daum wungu)学名: Usnea spp. インドネシア名(Akar angin)学名: Rheum officinale インドネシア名(Klembak)学名: Sindora javanica インドネシア名(Saparantu)学名: Vitex trifolia インドネシア名(Legundi)学名: Anacardium occidentale インドネシア名(Daun jambu mete)学名: Gymnopetalum leucosticum インドネシア名(Duri kemarung)学名: Equisetum debile インドネシア名(Greges otot)学名: Kyllinga monocephala インドネシア名(Akar teki)学名: Kyllinga brevifolia インドネシア名(Akar teki)学名: Ardisia fuliginosa インドネシア名(Ajag)学名: Entada phaseoloides インドネシア名(Tariyu)及び学名: Alyxia reinwardti インドネシア名(Kayu polo sari)からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の植物体そのもの、又は植物の溶媒抽出液あるいは炭酸ガスを使用する超臨界抽出法により抽出された抽出物を有効成分として含有することを特徴とする一酸化窒素産生抑制剤。
【請求項2】 学名: Andrographis paniculata インドネシア名(Sambi boto)の全草学名: Caesalpinia sappan インドネシア名(Kaya secang) の木部学名: Schima wallichii インドネシア名(Buah cangkok)実学名: Alstonia scholaris インドネシア名(Babakan pule)の樹皮学名: Graptophyllum pictum インドネシア名(Daum wungu)の全草学名: Usnea spp. インドネシア名(Akar angin)の全草学名: Rheum officinale インドネシア名(Klembak) の根学名: Sindora javanica インドネシア名(Saparantu) の実学名: Vitex trifolia インドネシア名(Legundi) の葉学名: Anacardium occidentale インドネシア名(Daun jambu mete) の葉学名: Gymnopetalum leucosticum インドネシア名(Duri kemarung) の棘学名: Equisetum debile インドネシア名(Greges otot) の茎学名: Kyllinga monocephala インドネシア名(Akar teki) の全草学名: Kyllinga brevifolia インドネシア名(Akar teki) の全草学名: Ardisia fuliginosa インドネシア名(Ajag)の全草学名: Entada phaseoloides インドネシア名(Tariyu) の茎・葉及び学名: Alyxia reinwardti インドネシア名(Kayu polo sari)の茎からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の植物体そのもの、又は植物の溶媒抽出液あるいは炭酸ガスを使用する超臨界抽出法により抽出された抽出物を有効成分として含有することを特徴とする一酸化窒素産生抑制剤。
【請求項3】 溶媒が水、クロロホルム、メタノール、エタノール、プロピレングリコール及び1, 3−ブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の一酸化窒素産生抑制剤。

【公開番号】特開2000−34233(P2000−34233A)
【公開日】平成12年2月2日(2000.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−200543
【出願日】平成10年7月15日(1998.7.15)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】