一重項酸素消去剤ならびにこれを含有する皮膚外用剤および化粧料
【課題】良好な一重項酸素消去能を長期的に維持することができ、一重項酸素によって引き起こされる様々な反応を抑制し得る一重項酸素消去剤を提供すること。
【解決手段】ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を有効成分として含有する一重項酸素消去剤ならびにこの一重項酸素消去剤を含有する皮膚外用剤および化粧料。
【解決手段】ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を有効成分として含有する一重項酸素消去剤ならびにこの一重項酸素消去剤を含有する皮膚外用剤および化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、新規な一重項酸素消去剤ならびにそれを有効成分として含有する皮膚外用剤および化粧料に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、広義の活性酸素種として、スーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素及び一重項酸素が知られており、これらと金属や脂質との反応生成物が知られている。しかし、活性酸素種の中には、例えば、基底状態酸素とは電子の数が異なる、スーパーオキサイド、過酸化水素及びヒドロキシラジカル等の還元分子種もあれば、基底状態酸素と電子の数は同じであるが励起状態にある、励起分子種である一重項酸素もあり、その電子状態の違いに基づく、活性酸素種という枠組みでは捉えられない固有の特性をそれぞれ有する。
【０００３】
また、従来、活性酸素種の検出には、電子スピン共鳴（ＥＳＲ）が広く利用されているが（例えば特許文献１）、ＥＳＲは、スーパーオキサイドやヒドロキシラジカル等のラジカル種の検出には有効であっても、ラジカル種でない一重項酸素を検出することはできない。更に、一重項酸素の水中における寿命は約４μ秒と短く、感度、特異性を兼ね備えた検出方法は限られている（例えば特許文献２）。従って、従来、広義に活性酸素種が関与している反応と報告されているものや、活性酸素種の捕獲に有効な剤と報告されているものも、その検出方法等を検討すると、一重項酸素については明確ではないものがほとんどである。
【０００４】
近年、活性酸素種それぞれの反応性が研究され、対象分子に対してそれぞれ特異な反応性を示すことがわかってきた。例えば、スーパーオキサイドやヒドロキシラジカルは、タンパク質と反応して容易にその断片化を引き起こすのに対し、一重項酸素はタンパク質に架橋を形成し、タンパク質を重合させるという、スーパーオキサイド等とは全く異なる特異な反応性を示すことが報告されている（例えば、非特許文献１）。また、一重項酸素が、紫外線の照射により健康な皮膚表面に発生し、様々な皮膚トラブルの原因となる皮脂の過酸化を引き起していることも明らかとなった（例えば、非特許文献２）。
【０００５】
この様な背景の下、従来、単に広く活性酸素種が関与しているといわれていた疾病や老化についても、具体的な個々の活性酸素種の役割が重要視されつつあり、このことは、一重項酸素についても同様である。従って、一重項酸素を（選択的あるいは特異的に）消去し得る剤があれば、一重項酸素が関与する疾病や老化の防止に有効である。
【０００６】
従来より、一重項酸素消去剤としていくつかの化合物が知られているが（特許文献５）、多くはそれら自体の化学的安定性が悪いために、保存中に経時的に劣化し、一重項酸素消去能が低下するものが多く、効果の持続性の点で優れた一重項酸素消去剤が少ないというのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】特開２００１−１０９５４号公報（５頁、実施例９）
【特許文献２】特開平７−１５９３２５号公報
【特許文献３】特開２００６−２４９０１８
【特許文献４】ＷＯ２００５／０７２７５６
【特許文献５】特開２００１−２８８０３５
【非特許文献】
【０００８】
【非特許文献１】"J.Soc.Cosmet.Chem.Japan." Vol.28, No.2 1994, p.163-171
【非特許文献２】「日本香粧品科学会誌」、第１９巻、第１号（１９９５）、 第１〜６頁
【非特許文献３】J.Jpn.Cosmet.Sci.Soc.Vol.26, 2002, p.79-85
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
従って本発明の課題は、良好な一重項酸素消去能を長期的に維持することができ、一重項酸素によって引き起こされる様々な反応を抑制し得る一重項酸素消去剤を提供することである。
【００１０】
また本発明の別の課題は、皮膚に適用することによって、一重項酸素が関与する反応が一因となって起こる、皮膚の老化、皮膚の黒化及び皮膚の損傷等を防止し得る皮膚外用剤を提供することである。
【００１１】
さらに本発明の他の別の課題は、有効成分である脂質、たんぱく質、ビタミン類の一重項酸素による劣化を抑え、これらを安定に配合した組成物を提供することである。
【００１２】
また更に本発明の別の課題は、皮膚の老化防止、美白または美肌や、にきびの予防または改善を目的とする化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１３】
本発明者らは、前記課題を解決するため、多くの天然由来成分について、その一重項酸素消去能および安定性について検索を行っていたところ、天然由来であり、抗老化剤や美白剤の成分として知られているブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物（特許文献３、４参照）が、優れた一重項酸素消去能および安定性を具備することを見出し、本発明を完成した。
【００１４】
すなわち本発明は、ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を有効成分として含有する一重項酸素消去剤である。
【００１５】
また本発明は、上記一重項酸素消去剤を含有する皮膚外用剤および化粧料である。
【発明の効果】
【００１６】
本発明によれば、良好な一重項酸素消去能を長期的に維持する一重項酸素消去剤が提供され、一重項酸素によって引き起こされる様々な反応を抑制し得る。
【００１７】
そして、本発明の一重項酸素消去剤を利用した皮膚外用剤や化粧料を皮膚に適用することによって、一重項酸素が関与する反応が一因となって起こる、皮膚の老化、皮膚の黒化、にきび及び皮膚の損傷等を防止し得ることができる。
【００１８】
さらに、有効成分として脂質、たんぱく質、ビタミン類を含有する皮膚外用剤や化粧料に上記一重項酸素消去剤を配合することによって、皮膚外用剤や化粧料中のこれら有効成分の劣化を防止した皮膚外用剤や化粧料とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【００１９】
本発明の一重項酸素消去剤の有効成分は、ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物である。
【００２０】
このブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を得るための原料として用いられるブナ科（Fagaceae）コナラ属（Quercus sp）植物としては、例えば、ミズナラ（学名：Quercus mongolica Fisch. ex Turcz. var. grosseserrata (Bl.) Rehd. et Wils.）、カシワ（学名：Quercus dentata Thunb）、コナラ（学名：Quercus serrata Thunb ）、クヌギ（学名：Quercus acutissima Carruth）、シラカシ（学名：Quercus myrsinaefolia Bl.）、ホワイトオーク（学名：Quercus alba L.）、コモンオーク（リムーザンオーク、フレンチオークまたはスパニッシュオークとも呼ばれる。学名：Quercus robur L.）、セシルオーク（学名：Quercus petraea (Mattuschka)Lieblein）、コルクオーク（学名：Quercus suber L.）等が挙げられる。これらの属に属する植物は、その多くが古来、ウイスキー等の製造、貯蔵用の樽の原料として用いられてきた植物である。
【００２１】
本発明では、これらブナ科コナラ属植物の中でも、オーク類と称される植物を用いるのが好ましい。このオーク類とは、ブナ科コナラ属の植物のうち、ウイスキー等の製造、貯蔵用の樽の原料として用いられた植物群をいう。本発明においてはこのオーク類を好適に用いることができるが、中でも、ホワイトオーク、コモンオーク、セシルオークやミズナラを特に好適に用いることができる。
【００２２】
これらの植物について、原料として用いる部位は特に制限されるものではなく、幹、葉、枝、樹皮、花、実などを用いることができる。また、それらは採取直後に用いてもよいし、乾燥させた後に用いてもよい。必要により、例えば粉砕、切断、細切、成形等の加工をして用いることもできる。例えば、前記植物の木材から得られるチップ、木粉、樽等の加工品を用いることができる。樽を利用する場合は溶媒抽出に使用する前に内面を焼く等の加熱処理をするのが好ましい。
【００２３】
一方、溶媒抽出物を得るために用いる抽出溶媒は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、アルコール、水、これらの混合溶媒などの公知の溶媒であってよいが、好ましくは低級アルコール、または低級アルコールと水との混合溶媒である。ここで低級アルコールとしては、例えば、炭素数１〜４のアルコール（例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等）が挙げられる。
【００２４】
溶媒中の低級アルコールの濃度は、一重項酸素消去作用の強い抽出物が得られる濃度とすることが肝要であり、具体的には、通常約１０〜１００容量％、好ましくは約３０〜９９容量％である。また、最終的に飲食品等にも配合することを考慮すると、安全性の観点から、抽出溶媒はエタノールと水との混合溶媒であるのがよい。
【００２５】
例えば低級アルコールとしてエタノールを用いる場合、抽出溶媒としてのエタノールと水との混合溶媒は、工業的な試薬級のエタノールを水と混合したものであってもよいし、あるいは、各種アルコール製品やその仕掛品であってもよい。アルコール製品やその仕掛品としては、例えばウイスキー、焼酎、日本酒、ビール、発泡酒、スピリッツ、ウオッカまたはそれらの仕掛品などが挙げられる。これらの製造方法は常法に従えばよい。
【００２６】
なお、前記混合溶媒には、低級アルコールと水のほか、抽出効率を大きく損わない範囲で他の成分が含まれていてもよい。例えば、所望により糖類、塩類またはアミノ酸などの水溶性成分や各種他の溶媒（例えば酢酸エチル、アセトン）が含まれていてもよい。
【００２７】
ブナ科コナラ属植物の溶媒による抽出方法としては、特に限定されるものではなく、溶媒を上記植物原料と接触させることにより行われる。例えば、溶媒中に植物原料を浸漬させる方法、溶媒中に植物原料を加え加熱還流する方法、あるいは、植物原料を用いて樽等の容器を成形し、その中に溶媒を注入する方法等が挙げられる。
【００２８】
上記方法のうち、植物原料で樽を成形し、その中に溶媒を注入する方法で抽出を行う場合には、溶媒として、エタノール含有物を蒸留したものを好適に用いることができる。ここでいう、エタノール含有物を蒸留したものとは、エタノールを含有する液を蒸留して得られる蒸留物をいう。前記蒸留物は、麦芽、米、ブドウ等を原料の一部としてとして糖化、醗酵させて得られるエタノール含有物を、単式蒸留または複式蒸留することにより得られる。前記蒸留物としては、例えば、焼酎、ウオッカ、ウイスキー貯蔵前原酒（モルトウイスキーの原酒のニューポット、グレンウイスキーの原酒のニューメイク）などが挙げられる。これらの中でも、前記蒸留物として、ウイスキー貯蔵前原酒を好適に用いることができる。これらの製造方法は常法に従えばよい。
【００２９】
上記のようにして溶媒と植物原料とを接触させた後は、接触状態のまま静置保存して抽出してもよいし、加熱還流や浸漬抽出などの抽出を行ってもよい。抽出は公知手段によって行えばよく、抽出条件などについては所望に応じて適宜設定することができる。また、前記の抽出は常温で行われても加温で行われてもよい。抽出温度は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、所望に応じて適宜に設定されるが、操作上、溶媒の沸点以下であるのが好ましい。抽出に要する時間は、温度条件や抽出方法にもよるが、通常約３０分〜３０年程度であるが、溶媒として前記の蒸留物を用いる場合には、約０．５年以上、より具体的には約０．５〜３０年程度が好ましい。
【００３０】
前記抽出後、自体公知の手段に従って、ブナ科コナラ属植物（その処理物または加工品を含む）を、一重項酸素消去成分を含有する抽出液と分離に当たっては、例えば遠心分離、ろ過などの公知の分離手段が挙げられる。この分離により得られた抽出液はさらに濃縮してもよいし、また濃縮乾固してもよく、これらの濃縮は常圧または減圧下に行われる。特に濃縮乾固は、抽出液から溶媒を好ましくは減圧下に蒸発させることによって行われ、乾固物が得られる。また、濃縮により濃縮液を得る場合は、抽出液の容積が約５〜７０容量％、好ましくは約１０〜５０容量％にまで減少する程度で行うのがよい。
【００３１】
本発明の溶媒抽出物には、上記抽出物やその濃縮物の他、抽出によって得られた抽出物を更に例えばカラムクロマトグラフィー等で分画精製したものが含まれる。このカラムクロマトグラフィー等も、常法に従って行うことができる。
【００３２】
本発明の一重項酸素消去剤は、上記のようにして得られた溶媒抽出物、すなわち抽出操作の完了した抽出液、抽出液の溶媒を部分的に除去した濃縮物または溶媒を全部除去した乾燥物、カラムクロマトグラフィー精製品等を、そのまま、あるいは適当な成分と組み合わせることにより製造することができる。溶媒抽出物と組み合わせることのできる成分としては、例えば酸化チタン、炭酸カルシウム、蒸留水、乳糖、デンプンをはじめ、後記実施例で記載する具体例で示されるような種々の液体または固体の賦形剤または増量剤が挙げられる。
【００３３】
また、本発明の一重項酸素消去剤中の溶媒抽出物の混合割合は、特に限定されないが、抽出物の性状（抽出液、濃縮物、または乾燥物）にもよるが、例えば、約０.０１〜１００質量％の範囲で適宜設定できる。
【００３４】
本発明の一重項酸素消去剤は、その一重項酸素消去率が０.５ｍｇ／ｍＬで１０％以上あるものが好ましく、２０％以上あるものがより好ましい。さらに１.０ｍｇ／ｍＬで２０％以上あるものが好ましく、３０％以上あるものが特に好ましい。なお、本明細書において、「一重項酸素消去率」とは、一重項酸素の遷移に伴う発光の強度低下率のことをいう。
【００３５】
具体的に一重項酸素消去率（Ｅ）は、一重項酸素を恣意的に発生させ、一重項酸素の遷移に伴う発光が観測される系に、一重項酸素消去剤を種々の濃度で添加し、その発光強度（Ｉ）と、加えなかった時の発光強度（Ｉ0）を測定し、これらの測定値を用いて、下記式から算出される。
【００３６】
Ｅ＝（Ｉ0−Ｉ）／Ｉ0×１００
【００３７】
なお、本発明の一重項酸素消去剤の形態については、前記ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を含む限り、特に制限はなく、液状、ペースト状、クリーム状、ゲル状等いずれの形態で用いることもでき、更にスプレードライ等により乾燥させて粉末として用いることもできる。
【００３８】
本発明の一重項酸素消去剤は、一重項酸素が存在することによって引き起こされる又は促進される反応を抑制する用途に利用することができる。例えば、一重項酸素は、真皮構成成分であるコラーゲンを架橋させることが知られており（非特許文献１）、コラーゲンの架橋は、皮膚の弾力性及び柔軟性を低下させ、皮膚の老化の一因となる。従って、本発明の一重項酸素消去剤を皮膚に適用することにより、コラーゲンの架橋が形成されることを抑制することができ、皮膚の老化を防止し、若々しい皮膚を維持することができる。即ち、本発明の一重項酸素消去剤は、コラーゲン架橋抑制剤として利用することができる。
【００３９】
また、例えば、一重項酸素は、ＵＶ−Ａの照射によって皮膚表面に多く発生し、ドーパの酸化により非酵素的に起こる即時黒化に関与していること、及び皮表脂質の過酸化に関与していることが知られている（非特許文献２）。従って、本発明の一重項酸素消去剤を皮膚に適用することにより、皮膚の即時黒化や皮表脂質の過酸化を抑制することができる。さらには、にきびの予防または改善することが可能である（特許文献５）。
【００４０】
なお、本発明の一重項酸素消去剤を、即時黒化抑制剤として使用する場合は、一重項酸素消去剤の一重項酸素消去率がドーパより大きいものを利用することがより好ましい。また、例えば、一重項酸素は、生体内反応を担っている数多くの酵素の失活を引き起こす又は促進することが知られている。従って、本発明の一重項酸素消去剤は、酵素失活抑制剤として利用することができる。なお、本発明の一重項酸素消去剤を、酵素の失活抑制剤として利用する場合は、一重項酸素消去剤の一重項酸素消去率が、その酵素の一重項酸素消去率より大きいことがより好ましい。
【００４１】
一方、我々は、生体の老化現象を捉えるために細胞老化評価系を用い、細胞老化に一重項酸素が関与していることを報告している(非特許文献３)。つまり、細胞を一重項酸素に曝露させると細胞寿命の短縮という特徴的な老化現象がみられたのである。そして、この現象は一重項酸素消去物質であるヒスチジンを細胞に与えることにより抑制された。すなわち、一重項酸素消去物質は、細胞老化を抑制し、その結果生体の老化を遅らせる効果があることを示唆しているので、本発明の一重項酸素消去剤も細胞老化抑制剤として利用することができる。
【００４２】
また、一重項酸素は、化粧料や食品等に配合されている植物エキス等の色素の褪色や変色を引き起こしたり、促進することが知られている。また、褪色や変色を伴わない場合であっても、一重項酸素の存在によって皮膚用化粧料等に配合される薬効剤例えば、有効成分としての脂質、たんぱく質、ビタミン類の分解を引き起したり、促進する場合がある。本発明の一重項酸素消去剤を配合すると、一重項酸素消去能及びこれに付随する上記効果が得られるのみならず、共に配合されている他の剤の分解を抑制するという効果も得られる。即ち、本発明の一重項酸素消去剤は、色素褪色防止剤として利用することができ、また褪色のみならず脂質、たんぱく質、ビタミン類の他の薬効剤の保存剤として利用することもできる。
【００４３】
本発明の一重項酸素消去剤は、上記のような作用・効果を奏するので、医薬品、医薬部外品、化粧料、食品等の種々の目的に利用することができる。すなわち、一重項酸素は、常に酸素に接触し、紫外線に暴露されている皮膚表面上に多く存在するので、本発明の一重項酸素消去剤を含有する組成物は、皮膚外用剤としてより有用である。また、一重項酸素の消去によって抑制される反応は、皮膚の老化、皮膚の黒化、にきび、皮膚の損傷の一因となる反応であるので、その様な反応を抑制できる本発明の一重項酸素消去剤を有効成分として含有する組成物は、皮膚の老化防止、美白、にきび用、美肌を目的とする皮膚用化粧料として特に有用である。
【００４４】
本発明の一重項酸素消去剤を単独で、又は１種以上の公知の外用医薬用添加剤又は皮膚化粧料用添加剤とともに常法に従って配合することによって、皮膚用外用剤ないし化粧料を調製することができる。本発明の一重項酸素消去剤の配合量は、外用剤ないし化粧料の剤形、使用目的等の他、一重項酸素消去剤の一重項酸素消去能によっても異なるが、一般的には、最終組成物中にブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物が好ましくは、乾燥固形分で０.０００００１〜１質量％（以下、単に「％」と記す）であり、好ましくは０.００００１〜５％、より好ましくは０.００１〜３％である。この範囲内であれば、ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物をより安定に配合することができ、優れた薬効を発揮することができる。
【００４５】
本発明の一重項酸素消去剤は単独で皮膚外用剤として用いることができ、又は１種又は２種以上の添加剤と混合することによって皮膚外用剤あるいは化粧料を調製することもできる。必要に応じて添加される添加剤としては、皮膚用化粧料や外用医薬品の製剤に一般的に用いられる、水（精製水、温泉水、海洋深層水等）、アルコール、油剤、界面活性剤、金属セッケン、ゲル化剤、粉体、アルコール類、水溶性高分子、皮膜形成剤、樹脂、紫外線防御剤、包接化合物、抗菌剤、香料、消臭剤、塩類、ｐＨ調整剤、清涼剤、動物・微生物由来抽出物、植物抽出物、血行促進剤、収斂剤、抗脂漏剤、美白剤、抗炎症剤、本発明の一重項酸素消去剤以外の活性酸素消去剤、細胞賦活剤、保湿剤、キレート剤、角質溶解剤、酵素、ホルモン類、ビタミン類等が挙げられる。皮膚外用剤の調製は、常法に従って行うことができ、前記添加剤の配合量も本発明の効果を損なわない範囲で、常法に従って決定することができる。
【００４６】
前記皮膚用外用剤あるいは化粧料の形態については限定されず、乳液、クリーム、化粧水、美容液、パック、洗顔料、メーキャップ化粧料等の皮膚用化粧料に属する形態；シャンプー、ヘアートリートメント、ヘアースタイリング剤、養毛剤、育毛剤等の頭髪化粧料に関する形態；及び分散液、軟膏、エアゾール、貼付剤、パップ剤、リニメント剤等の外用医薬品の形態のいずれであってもよい。
【実施例】
【００４７】
以下、実施例および製造例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等により何ら制約されるものではない。
【００４８】
製 造 例 １
ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物の調製（１）：
原料植物として、オーク材（スパニッシュオーク）を用いた。工業用エタノールを水と混合して、６０容量％エタノール水溶液を調製し、このエタノール水溶液３０００ｍｌに上記オーク材のチップ（１×１×２ｃｍ）２４０ｇを添加し、８５℃で５分間加熱した後、２４時間室温で放置し、再度８５℃で５分間加熱した。得られた溶液を濾過し、４０容量％エタノール水溶液のオーク材エキス（オーク Ｕ１５９、オーク Ｕ１６０およびオーク Ｕ１６１）を得た。
【００４９】
製 造 例 ２
ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物の調製（２）：
ウイスキーの貯蔵用原酒として用いられるニューポットを調製した。すなわち、発芽した大麦（麦芽）を粉砕し、これを温水と混合し、糖化させた。糖化後の糖液を濾過し、濾過後の糖液に酵母を加え発酵させ、アルコール度数が７．０〜７．５容量％の醪（もろみ）を得た。醪を銅製のポットスチル（単式蒸留器）に入れて二度蒸留し、アルコール濃度６０容量％の組成物（ニューポット）を得た。次にウイスキー製造用の樽（ホワイトオーク、スパニッシュオークの樽）を用い、これらの樽に上記ニューポットを入れて栓をし、貯蔵庫にて１５、１８年間保存し、ウイスキー（スパニッシュ１８年、ホワイト１８年、ホワイト１５年）を得た。
【００５０】
実 施 例 １
一重項酸素消去定数の測定：
製造例１および２で調製したオーク材エキスおよびウイスキーの一重項酸素消去率を以下の様にして測定した。一重項酸素の検出は、特許第３３５６５１７号公報（詳細は同公報の［００２６］欄）に記載の装置を用いた。この装置のフローセル中に、ローズベンガルの５０μＭの５０％エタノール溶液を、２０ｍｌ／分の速度で循環させた。このセルに、ローズベンガルの吸収波長である５１４.５ｎｍの波長のレーザーを照射すると、一重項酸素の遷移に伴う発光が観察され、その発光ピークは波長１２６８ｎｍであった。溶媒のみの波長１２６８ｎｍでの発光強度（Ｉ０）をまず測定し、次いで、オーク材エキスまたはウイスキーを表１の濃度で添加した場合の波長１２６８ｎｍでの発光強度（Ｉ）を測定した。これらの測定値に基づき、下記式から一重項酸素消去率（Ｅ）を算出した。なお、比較としては、バクガ根１００ｇに水１０Ｌを加え、室温にて抽出し、その後、抽出液をろ過して得られたろ液であるバクガ根エキス（活性酸素消去能を有する）を用いた。この結果を表１に示す。
Ｅ＝（Ｉ0−Ｉ）／Ｉ0×１００）
【００５１】
【表１】
【００５２】
この結果より、オーク材エキスおよびウイスキーは、優れた一重項酸素消去能を示すことが実証された。一方、バクガ根エキスは活性酸素消去能を有しているにもかかわらず、その一重項酸素消去能は低いことが明らかになった。
【００５３】
実 施 例 ２
化 粧 水 ：
下記成分および製造方法により、化粧水を調製した。
【００５４】
（ 成 分 ） （質量％）
１ グリセリン ５．０
２ １，３−ブチレングリコール ５．０
３ 乳酸 ０．０５
４ 乳酸ナトリウム ０．１
５ モノオレイン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン １．２
６ エタノール ８．０
７ パラオキシ安息香酸メチル ０．１
８ 香料 ０．０５
９ ウイスキー（製造例２（スパニッシュ１８年）） ０．０５
１０ 精製水 残 量
【００５５】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（５）、（７）、(８)と（６）の７／８を混合溶解する。
Ｂ ： 成分（１）〜（４）、(９)〜（１０）および残部の（６）を混合溶解する。
Ｃ ： ＢにＡを添加混合し、化粧水を得た。
【００５６】
実 施 例 ３
乳 液 ：
下記成分および製造方法により、乳液を調製した。
【００５７】
（ 成 分 ） （質量％）
１ モノステアリン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン １．０
２ トリオレイン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン ０．５
３ グリセリルモノステアレート １．０
４ ステアリン酸 ０．５
５ ベヘニルアルコール ０．５
６ スクワラン ８．０
７ カルボキシビニルポリマー ０．１
８ パラオキシ安息香酸メチル ０．１
９ 水酸化ナトリウム ０．０５
１０ エタノール ５．０
１１ ウイスキー（製造例２（ホワイト１８年）） ０．１
１２ 精製水 残 量
１３ 香料 ０．０５
１４ 精製水 ５．０
【００５８】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（１２）に成分（７）〜（９）を加えて７０℃で均一に混合する。
Ｂ ： 成分（１）〜（６）を７０℃で均一に混合する。
Ｃ ： ＡにＢを加えて乳化し、室温まで冷却する。
Ｄ ： （１０）、（１１）、（１３）、（１４）を加えて均一に混合し、乳液を得た
。
【００５９】
実 施 例 ４
リキッドファンデーション（水中油型クリーム状）：
下記成分および製造方法により、リキッドファンデーションを調製した。
【００６０】
（ 成 分 ） （質量％）
１ アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合物（注１） ０．５
２ トリエタノールアミン １．５
３ 精製水 残 量
４ グリセリン ５
５ パラオキシ安息香酸エチル ０．１
６ １，３−ブチレングリコール ５
７ 水素添加大豆リン脂質 ０．５
８ 酸化チタン ５
９ ベンガラ ０．１
１０ 黄酸化鉄 １
１１ 黒酸化鉄 ０．０５
１２ ステアリン酸 ０．９
１３ モノステアリン酸グリセリン ０．３
１４ セトステアリルアルコール ０．４
１５ モノオレイン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン ０．２
１６ トリオレイン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン ０．２
１７ パラメトキシケイ皮酸２―エチルヘキシル ５
１８ ウイスキー（製造例２（ホワイト１５年）） ０．５
１９ 香料 ０．０２
（注１）ペミュレンＴＲ−２（ＮＯＶＥＯＮ社製）
【００６１】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（６）〜（１１）を分散する。
Ｂ ： Ａに成分（１２）〜（１７）を加え７０℃で均一に混合する。
Ｃ ： 成分（１）〜（５）を７０℃で均一に混合する。
Ｄ ： ＣにＢを加え乳化し、室温まで冷却する。
Ｅ ： Ｄに成分（１８）〜（１９）を添加し均一に混合して水中油型クリーム状
リキッドファンデーションを得た。
【００６２】
実 施 例 ５
日焼け止め化粧料（油中水型クリーム状）：
下記成分および製造方法により、日焼け止め化粧料を調製した。
【００６３】
（ 成 分 ） （質量％）
１ モノラウリン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン ０．２
２ ＰＯＥ（６０）硬化ヒマシ油 ０．１
３ 精製水 残 量
４ ジプロピレングリコール １０
５ 硫酸マグネシウム ０．５
６ アスコルビルリン酸マグネシウム ３
７ シリコーン化合物（注２） ３
８ デカメチルシクロペンタシロキサン ２０
９ イソノナン酸イソトリデシル ５
１０ パラメトキシケイ皮酸２−エチルヘキシル ８
１１ ウイスキー（製造例２（スパニッシュ１８年）） ０．３
１２ ジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト １．２
（注２）ＫＦ−６０２８（信越化学工業社製）
【００６４】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（１）〜（６）を均一に分散する。
Ｂ ： 成分（７）〜（１１）を均一に分散する。
Ｃ ： Ｂを攪拌しながら徐々にＡを加えて乳化し、油中水型クリーム状日焼け止め
化粧料を得た。
【００６５】
実 施 例 ６
軟 膏 剤 ：
下記成分および製造方法により、軟膏剤を調製した。
【００６６】
（ 成 分 ） （質量％）
１ ステアリン酸 １８．０
２ セタノール ４．０
３ トリエタノールアミン ２．０
４ グリセリン ５．０
５ グリチルリチン酸ジカリウム（注３） ０．５
６ ウイスキー（製造例２（ホワイト１８年）） ０．５
７ 酢酸ｄｌ−α―トコフェロール（注４） ０．２
８ パラオキシ安息香酸メチル ０．１
９ 精製水 残 量
（注３）和光純薬工業社製
（注４）エーザイ社製
【００６７】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（３）、（４）および（９）の一部を加熱混合し、７５℃に保つ。
Ｂ ： 成分（１）、（２）、（６）〜（８）を加熱混合し、７５℃に保つ。
Ｃ ： ＡにＢを徐々に加え、これを冷却しながら成分（９）の残部で溶解した（５）
を加え、軟膏剤を得た。
【００６８】
実 施 例 ７
ローション剤：
下記成分および製造方法により、ローション剤を調製した。
【００６９】
（ 成分 ） （質量％）
１ グリセリン ５．０
２ １，３−ブチレングリコール ６．５
３ ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタンモノラウリン酸 １．２
エステル
４ エタノール ８．０
５ ウイスキー（製造例２（ホワイト１５年）） ０．０５
６ パラオキシ安息香酸メチル ０．２
７ 精製水 残 量
【００７０】
（ 製造方法 ）
Ａ．成分（３）〜（６）を混合溶解する。
Ｂ．成分（１）、（２）、（７）を混合溶解する。
Ｃ．ＡとＢを混合して均一にし、ローション剤を得た。
【００７１】
実 施 例 ８
化 粧 水 ：
下記成分および製造方法により、化粧水を調製した。
【００７２】
（ 成分 ） （質量％）
１ グリセリン ５．０
２ １，３−ブチレングリコール ５．０
３ 乳酸 ０．０５
４ 乳酸ナトリウム ０．１
５ モノオレイン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン １．２
６ エタノール ７．０
７ パラオキシ安息香酸メチル ０．１
８ 香料 ０．０５
９ オ−ク材エキス（製造例１（Ｕ１５９）） ０．０５
１０ エタノール １．０
１１ 精製水 残 量
【００７３】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（５）〜(８)を混合溶解する。
Ｂ ： 成分（１）〜（４）及び(９)〜（１１）を混合溶解する。
Ｃ ： ＢにＡを添加混合し、化粧水を得た。
【００７４】
実 施 例 ９
乳 液 ：
下記成分および製造方法により、乳液を調製した。
【００７５】
（ 成分 ） （質量％）
１ モノステアリン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン １．０
２ トリオレイン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン ０．５
３ グリセリルモノステアレート １．０
４ ステアリン酸 ０．５
５ ベヘニルアルコール ０．５
６ スクワラン ８．０
７ カルボキシビニルポリマー ０．１
８ パラオキシ安息香酸メチル ０．１
９ 水酸化ナトリウム ０．０５
１０ エタノール ５．０
１１ オ−ク材エキス（製造例１（Ｕ１６０）） ０．１
１２ 精製水 残 量
１３ 香料 ０．０５
１４ 精製水 ５．０
【００７６】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（１２）に成分（７）〜（９）を加えて７０℃で均一に混合する。
Ｂ ： 成分（１）〜（６）を７０℃で均一に混合する。
Ｃ ： ＡにＢを加えて乳化し、室温まで冷却する。
Ｄ ： （１０）、（１１）、（１３）、（１４）を加えて均一に混合し、乳液を得た
。
【００７７】
実 施 例 １０
リキッドファンデーション（水中油型クリーム状）：
下記成分および製造方法により、リキッドファンデーションを調製した。
【００７８】
（ 成分 ） （質量％）
１ アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体（注１） ０．５
２ トリエタノールアミン １．５
３ 精製水 残 量
４ グリセリン ５
５ パラオキシ安息香酸エチル ０．１
６ １，３−ブチレングリコール ５
７ 水素添加大豆リン脂質 ０．５
８ 酸化チタン ５
９ ベンガラ ０．１
１０ 黄酸化鉄 １
１１ 黒酸化鉄 ０．０５
１２ ステアリン酸 ０．９
１３ モノステアリン酸グリセリン ０．３
１４ セトステアリルアルコール ０．４
１５ モノオレイン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン ０．２
１６ トリオレイン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン ０．２
１７ パラメトキシケイ皮酸２―エチルヘキシル ５
１８ オ−ク材エキス（製造例１（Ｕ１６１）） ０．５
１９ 香料 ０．０２
（注１）ペミュレンＴＲ−２（ＮＯＶＥＯＮ社製）
【００７９】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（６）〜（１１）を分散する。
Ｂ ： Ａに成分（１２）〜（１７）を加え７０℃で均一に混合する。
Ｃ ： 成分（１）〜（５）を７０℃で均一に混合する。
Ｄ ： ＣにＢを加え乳化し、室温まで冷却する。
Ｅ ： Ｄに成分（１８）〜（１９）を添加し均一に混合して水中油型クリーム状リ
キッドファンデーションを得た。
【００８０】
実 施 例 １１
日焼け止め化粧料（油中水型クリーム状）：
下記成分および製造方法により、日焼け止め化粧料を調製した。
【００８１】
（ 成分 ） （質量％）
１ モノラウリン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン ０．２
２ ＰＯＥ（６０）硬化ヒマシ油 ０．１
３ 精製水 残 量
４ ジプロピレングリコール １０
５ 硫酸マグネシウム ０．５
６ アスコルビルリン酸マグネシウム ３
７ シリコーン化合物（注２） ３
８ デカメチルシクロペンタシロキサン ２０
９ イソノナン酸イソトリデシル ５
１０ パラメトキシケイ皮酸２−エチルヘキシル ８
１１ オ−ク材エキス（製造例１（Ｕ１５９）） ０．３
１２ ジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト １．２
（注２）ＫＦ−６０２８（信越化学工業社製）
【００８２】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（１）〜（６）を均一に分散する。
Ｂ ： 成分（７）〜（１２）を均一に分散する。
Ｃ ： Ｂを攪拌しながら徐々にＡを加えて乳化し、油中水型クリーム状日焼け止め
化粧料を得た。
【００８３】
実 施 例 １２
軟 膏 剤 ：
下記成分および製造方法により、軟膏剤を調製した。
【００８４】
（ 成分 ） （質量％）
１ ステアリン酸 １８．０
２ セタノール ４．０
３ トリエタノールアミン ２．０
４ グリセリン ５．０
５ グリチルリチン酸ジカリウム（注３） ０．５
６ オ−ク材エキス（製造例１（Ｕ１６０）） ０．５
７ 酢酸ｄｌ−α―トコフェロール（注４） ０．２
８ パラオキシ安息香酸メチル ０．１
９ 精製水 残 量
（注３）和光純薬工業社製
（注４）エーザイ社製
【００８５】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（３）、（４）および（９）の一部を加熱混合し、７５℃に保つ。
Ｂ ： 成分（１）、（２）、（６）〜（８）を加熱混合し、７５℃に保つ。
Ｃ ： ＡにＢを徐々に加え、これを冷却しながら成分（９）の残部で溶解した
（５）を加え、軟膏剤を得た。
【００８６】
実 施 例 １３
ローション剤：
下記成分および製造方法により、ローション剤を調製した。
【００８７】
（ 成分 ） （質量％）
１ グリセリン ５．０
２ １，３−ブチレングリコール ６．５
３ ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタンモノラウリン酸 １．２
エステル
４ エタノール ８．０
５ オ−ク材エキス（製造例１（Ｕ１６１）） ０．０５
６ パラオキシ安息香酸メチル ０．２
７ 精製水 残 量
【００８８】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（３）〜（６）を混合溶解する。
Ｂ ： 成分（１）、（２）、（７）を混合溶解する。
Ｃ ： ＡとＢを混合して均一にし、ローション剤を得た。
【００８９】
上記各実施例で調製した化粧水、乳液、リキッドファンデーション、日焼け止め化粧料、軟膏剤、ローション剤は、いずれも変色・変臭および沈殿物などがなく、安定であり、皮膚に適用可能であった。これらの化粧料は一重項酸素を消去することにより、一重項酸素が関与する様々な反応を抑制するのに利用することができ、コラーゲン架橋形成抑制、皮膚の即時黒化抑制、酵素失活抑制、脂質過酸化抑制、細胞老化抑制、抗アクネに有用である。
【産業上の利用可能性】
【００９０】
本発明の一重項酸素消去剤は、優れた一重項酸素消去作用を有するので、一重項酸素が存在することによって引き起こされたり、促進される反応を抑制する用途に利用することができる。
【００９１】
従って、このものを含有する皮膚外用剤や化粧料を皮膚に適用することによって、一重項酸素が関与する反応が一因となって起こる、皮膚の老化、皮膚の黒化及び皮膚の損傷等を防止することが可能となる。
【００９２】
また、本発明の一重項酸素消去剤を、有効成分として脂質、たんぱく質、ビタミン類等を含有する組成物中に配合すれば、これら有効成分の一重項酸素による劣化を抑え、これらを安定に配合した組成物とすることができる。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、新規な一重項酸素消去剤ならびにそれを有効成分として含有する皮膚外用剤および化粧料に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、広義の活性酸素種として、スーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素及び一重項酸素が知られており、これらと金属や脂質との反応生成物が知られている。しかし、活性酸素種の中には、例えば、基底状態酸素とは電子の数が異なる、スーパーオキサイド、過酸化水素及びヒドロキシラジカル等の還元分子種もあれば、基底状態酸素と電子の数は同じであるが励起状態にある、励起分子種である一重項酸素もあり、その電子状態の違いに基づく、活性酸素種という枠組みでは捉えられない固有の特性をそれぞれ有する。
【０００３】
また、従来、活性酸素種の検出には、電子スピン共鳴（ＥＳＲ）が広く利用されているが（例えば特許文献１）、ＥＳＲは、スーパーオキサイドやヒドロキシラジカル等のラジカル種の検出には有効であっても、ラジカル種でない一重項酸素を検出することはできない。更に、一重項酸素の水中における寿命は約４μ秒と短く、感度、特異性を兼ね備えた検出方法は限られている（例えば特許文献２）。従って、従来、広義に活性酸素種が関与している反応と報告されているものや、活性酸素種の捕獲に有効な剤と報告されているものも、その検出方法等を検討すると、一重項酸素については明確ではないものがほとんどである。
【０００４】
近年、活性酸素種それぞれの反応性が研究され、対象分子に対してそれぞれ特異な反応性を示すことがわかってきた。例えば、スーパーオキサイドやヒドロキシラジカルは、タンパク質と反応して容易にその断片化を引き起こすのに対し、一重項酸素はタンパク質に架橋を形成し、タンパク質を重合させるという、スーパーオキサイド等とは全く異なる特異な反応性を示すことが報告されている（例えば、非特許文献１）。また、一重項酸素が、紫外線の照射により健康な皮膚表面に発生し、様々な皮膚トラブルの原因となる皮脂の過酸化を引き起していることも明らかとなった（例えば、非特許文献２）。
【０００５】
この様な背景の下、従来、単に広く活性酸素種が関与しているといわれていた疾病や老化についても、具体的な個々の活性酸素種の役割が重要視されつつあり、このことは、一重項酸素についても同様である。従って、一重項酸素を（選択的あるいは特異的に）消去し得る剤があれば、一重項酸素が関与する疾病や老化の防止に有効である。
【０００６】
従来より、一重項酸素消去剤としていくつかの化合物が知られているが（特許文献５）、多くはそれら自体の化学的安定性が悪いために、保存中に経時的に劣化し、一重項酸素消去能が低下するものが多く、効果の持続性の点で優れた一重項酸素消去剤が少ないというのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】特開２００１−１０９５４号公報（５頁、実施例９）
【特許文献２】特開平７−１５９３２５号公報
【特許文献３】特開２００６−２４９０１８
【特許文献４】ＷＯ２００５／０７２７５６
【特許文献５】特開２００１−２８８０３５
【非特許文献】
【０００８】
【非特許文献１】"J.Soc.Cosmet.Chem.Japan." Vol.28, No.2 1994, p.163-171
【非特許文献２】「日本香粧品科学会誌」、第１９巻、第１号（１９９５）、 第１〜６頁
【非特許文献３】J.Jpn.Cosmet.Sci.Soc.Vol.26, 2002, p.79-85
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
従って本発明の課題は、良好な一重項酸素消去能を長期的に維持することができ、一重項酸素によって引き起こされる様々な反応を抑制し得る一重項酸素消去剤を提供することである。
【００１０】
また本発明の別の課題は、皮膚に適用することによって、一重項酸素が関与する反応が一因となって起こる、皮膚の老化、皮膚の黒化及び皮膚の損傷等を防止し得る皮膚外用剤を提供することである。
【００１１】
さらに本発明の他の別の課題は、有効成分である脂質、たんぱく質、ビタミン類の一重項酸素による劣化を抑え、これらを安定に配合した組成物を提供することである。
【００１２】
また更に本発明の別の課題は、皮膚の老化防止、美白または美肌や、にきびの予防または改善を目的とする化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１３】
本発明者らは、前記課題を解決するため、多くの天然由来成分について、その一重項酸素消去能および安定性について検索を行っていたところ、天然由来であり、抗老化剤や美白剤の成分として知られているブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物（特許文献３、４参照）が、優れた一重項酸素消去能および安定性を具備することを見出し、本発明を完成した。
【００１４】
すなわち本発明は、ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を有効成分として含有する一重項酸素消去剤である。
【００１５】
また本発明は、上記一重項酸素消去剤を含有する皮膚外用剤および化粧料である。
【発明の効果】
【００１６】
本発明によれば、良好な一重項酸素消去能を長期的に維持する一重項酸素消去剤が提供され、一重項酸素によって引き起こされる様々な反応を抑制し得る。
【００１７】
そして、本発明の一重項酸素消去剤を利用した皮膚外用剤や化粧料を皮膚に適用することによって、一重項酸素が関与する反応が一因となって起こる、皮膚の老化、皮膚の黒化、にきび及び皮膚の損傷等を防止し得ることができる。
【００１８】
さらに、有効成分として脂質、たんぱく質、ビタミン類を含有する皮膚外用剤や化粧料に上記一重項酸素消去剤を配合することによって、皮膚外用剤や化粧料中のこれら有効成分の劣化を防止した皮膚外用剤や化粧料とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【００１９】
本発明の一重項酸素消去剤の有効成分は、ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物である。
【００２０】
このブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を得るための原料として用いられるブナ科（Fagaceae）コナラ属（Quercus sp）植物としては、例えば、ミズナラ（学名：Quercus mongolica Fisch. ex Turcz. var. grosseserrata (Bl.) Rehd. et Wils.）、カシワ（学名：Quercus dentata Thunb）、コナラ（学名：Quercus serrata Thunb ）、クヌギ（学名：Quercus acutissima Carruth）、シラカシ（学名：Quercus myrsinaefolia Bl.）、ホワイトオーク（学名：Quercus alba L.）、コモンオーク（リムーザンオーク、フレンチオークまたはスパニッシュオークとも呼ばれる。学名：Quercus robur L.）、セシルオーク（学名：Quercus petraea (Mattuschka)Lieblein）、コルクオーク（学名：Quercus suber L.）等が挙げられる。これらの属に属する植物は、その多くが古来、ウイスキー等の製造、貯蔵用の樽の原料として用いられてきた植物である。
【００２１】
本発明では、これらブナ科コナラ属植物の中でも、オーク類と称される植物を用いるのが好ましい。このオーク類とは、ブナ科コナラ属の植物のうち、ウイスキー等の製造、貯蔵用の樽の原料として用いられた植物群をいう。本発明においてはこのオーク類を好適に用いることができるが、中でも、ホワイトオーク、コモンオーク、セシルオークやミズナラを特に好適に用いることができる。
【００２２】
これらの植物について、原料として用いる部位は特に制限されるものではなく、幹、葉、枝、樹皮、花、実などを用いることができる。また、それらは採取直後に用いてもよいし、乾燥させた後に用いてもよい。必要により、例えば粉砕、切断、細切、成形等の加工をして用いることもできる。例えば、前記植物の木材から得られるチップ、木粉、樽等の加工品を用いることができる。樽を利用する場合は溶媒抽出に使用する前に内面を焼く等の加熱処理をするのが好ましい。
【００２３】
一方、溶媒抽出物を得るために用いる抽出溶媒は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、アルコール、水、これらの混合溶媒などの公知の溶媒であってよいが、好ましくは低級アルコール、または低級アルコールと水との混合溶媒である。ここで低級アルコールとしては、例えば、炭素数１〜４のアルコール（例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等）が挙げられる。
【００２４】
溶媒中の低級アルコールの濃度は、一重項酸素消去作用の強い抽出物が得られる濃度とすることが肝要であり、具体的には、通常約１０〜１００容量％、好ましくは約３０〜９９容量％である。また、最終的に飲食品等にも配合することを考慮すると、安全性の観点から、抽出溶媒はエタノールと水との混合溶媒であるのがよい。
【００２５】
例えば低級アルコールとしてエタノールを用いる場合、抽出溶媒としてのエタノールと水との混合溶媒は、工業的な試薬級のエタノールを水と混合したものであってもよいし、あるいは、各種アルコール製品やその仕掛品であってもよい。アルコール製品やその仕掛品としては、例えばウイスキー、焼酎、日本酒、ビール、発泡酒、スピリッツ、ウオッカまたはそれらの仕掛品などが挙げられる。これらの製造方法は常法に従えばよい。
【００２６】
なお、前記混合溶媒には、低級アルコールと水のほか、抽出効率を大きく損わない範囲で他の成分が含まれていてもよい。例えば、所望により糖類、塩類またはアミノ酸などの水溶性成分や各種他の溶媒（例えば酢酸エチル、アセトン）が含まれていてもよい。
【００２７】
ブナ科コナラ属植物の溶媒による抽出方法としては、特に限定されるものではなく、溶媒を上記植物原料と接触させることにより行われる。例えば、溶媒中に植物原料を浸漬させる方法、溶媒中に植物原料を加え加熱還流する方法、あるいは、植物原料を用いて樽等の容器を成形し、その中に溶媒を注入する方法等が挙げられる。
【００２８】
上記方法のうち、植物原料で樽を成形し、その中に溶媒を注入する方法で抽出を行う場合には、溶媒として、エタノール含有物を蒸留したものを好適に用いることができる。ここでいう、エタノール含有物を蒸留したものとは、エタノールを含有する液を蒸留して得られる蒸留物をいう。前記蒸留物は、麦芽、米、ブドウ等を原料の一部としてとして糖化、醗酵させて得られるエタノール含有物を、単式蒸留または複式蒸留することにより得られる。前記蒸留物としては、例えば、焼酎、ウオッカ、ウイスキー貯蔵前原酒（モルトウイスキーの原酒のニューポット、グレンウイスキーの原酒のニューメイク）などが挙げられる。これらの中でも、前記蒸留物として、ウイスキー貯蔵前原酒を好適に用いることができる。これらの製造方法は常法に従えばよい。
【００２９】
上記のようにして溶媒と植物原料とを接触させた後は、接触状態のまま静置保存して抽出してもよいし、加熱還流や浸漬抽出などの抽出を行ってもよい。抽出は公知手段によって行えばよく、抽出条件などについては所望に応じて適宜設定することができる。また、前記の抽出は常温で行われても加温で行われてもよい。抽出温度は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、所望に応じて適宜に設定されるが、操作上、溶媒の沸点以下であるのが好ましい。抽出に要する時間は、温度条件や抽出方法にもよるが、通常約３０分〜３０年程度であるが、溶媒として前記の蒸留物を用いる場合には、約０．５年以上、より具体的には約０．５〜３０年程度が好ましい。
【００３０】
前記抽出後、自体公知の手段に従って、ブナ科コナラ属植物（その処理物または加工品を含む）を、一重項酸素消去成分を含有する抽出液と分離に当たっては、例えば遠心分離、ろ過などの公知の分離手段が挙げられる。この分離により得られた抽出液はさらに濃縮してもよいし、また濃縮乾固してもよく、これらの濃縮は常圧または減圧下に行われる。特に濃縮乾固は、抽出液から溶媒を好ましくは減圧下に蒸発させることによって行われ、乾固物が得られる。また、濃縮により濃縮液を得る場合は、抽出液の容積が約５〜７０容量％、好ましくは約１０〜５０容量％にまで減少する程度で行うのがよい。
【００３１】
本発明の溶媒抽出物には、上記抽出物やその濃縮物の他、抽出によって得られた抽出物を更に例えばカラムクロマトグラフィー等で分画精製したものが含まれる。このカラムクロマトグラフィー等も、常法に従って行うことができる。
【００３２】
本発明の一重項酸素消去剤は、上記のようにして得られた溶媒抽出物、すなわち抽出操作の完了した抽出液、抽出液の溶媒を部分的に除去した濃縮物または溶媒を全部除去した乾燥物、カラムクロマトグラフィー精製品等を、そのまま、あるいは適当な成分と組み合わせることにより製造することができる。溶媒抽出物と組み合わせることのできる成分としては、例えば酸化チタン、炭酸カルシウム、蒸留水、乳糖、デンプンをはじめ、後記実施例で記載する具体例で示されるような種々の液体または固体の賦形剤または増量剤が挙げられる。
【００３３】
また、本発明の一重項酸素消去剤中の溶媒抽出物の混合割合は、特に限定されないが、抽出物の性状（抽出液、濃縮物、または乾燥物）にもよるが、例えば、約０.０１〜１００質量％の範囲で適宜設定できる。
【００３４】
本発明の一重項酸素消去剤は、その一重項酸素消去率が０.５ｍｇ／ｍＬで１０％以上あるものが好ましく、２０％以上あるものがより好ましい。さらに１.０ｍｇ／ｍＬで２０％以上あるものが好ましく、３０％以上あるものが特に好ましい。なお、本明細書において、「一重項酸素消去率」とは、一重項酸素の遷移に伴う発光の強度低下率のことをいう。
【００３５】
具体的に一重項酸素消去率（Ｅ）は、一重項酸素を恣意的に発生させ、一重項酸素の遷移に伴う発光が観測される系に、一重項酸素消去剤を種々の濃度で添加し、その発光強度（Ｉ）と、加えなかった時の発光強度（Ｉ0）を測定し、これらの測定値を用いて、下記式から算出される。
【００３６】
Ｅ＝（Ｉ0−Ｉ）／Ｉ0×１００
【００３７】
なお、本発明の一重項酸素消去剤の形態については、前記ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を含む限り、特に制限はなく、液状、ペースト状、クリーム状、ゲル状等いずれの形態で用いることもでき、更にスプレードライ等により乾燥させて粉末として用いることもできる。
【００３８】
本発明の一重項酸素消去剤は、一重項酸素が存在することによって引き起こされる又は促進される反応を抑制する用途に利用することができる。例えば、一重項酸素は、真皮構成成分であるコラーゲンを架橋させることが知られており（非特許文献１）、コラーゲンの架橋は、皮膚の弾力性及び柔軟性を低下させ、皮膚の老化の一因となる。従って、本発明の一重項酸素消去剤を皮膚に適用することにより、コラーゲンの架橋が形成されることを抑制することができ、皮膚の老化を防止し、若々しい皮膚を維持することができる。即ち、本発明の一重項酸素消去剤は、コラーゲン架橋抑制剤として利用することができる。
【００３９】
また、例えば、一重項酸素は、ＵＶ−Ａの照射によって皮膚表面に多く発生し、ドーパの酸化により非酵素的に起こる即時黒化に関与していること、及び皮表脂質の過酸化に関与していることが知られている（非特許文献２）。従って、本発明の一重項酸素消去剤を皮膚に適用することにより、皮膚の即時黒化や皮表脂質の過酸化を抑制することができる。さらには、にきびの予防または改善することが可能である（特許文献５）。
【００４０】
なお、本発明の一重項酸素消去剤を、即時黒化抑制剤として使用する場合は、一重項酸素消去剤の一重項酸素消去率がドーパより大きいものを利用することがより好ましい。また、例えば、一重項酸素は、生体内反応を担っている数多くの酵素の失活を引き起こす又は促進することが知られている。従って、本発明の一重項酸素消去剤は、酵素失活抑制剤として利用することができる。なお、本発明の一重項酸素消去剤を、酵素の失活抑制剤として利用する場合は、一重項酸素消去剤の一重項酸素消去率が、その酵素の一重項酸素消去率より大きいことがより好ましい。
【００４１】
一方、我々は、生体の老化現象を捉えるために細胞老化評価系を用い、細胞老化に一重項酸素が関与していることを報告している(非特許文献３)。つまり、細胞を一重項酸素に曝露させると細胞寿命の短縮という特徴的な老化現象がみられたのである。そして、この現象は一重項酸素消去物質であるヒスチジンを細胞に与えることにより抑制された。すなわち、一重項酸素消去物質は、細胞老化を抑制し、その結果生体の老化を遅らせる効果があることを示唆しているので、本発明の一重項酸素消去剤も細胞老化抑制剤として利用することができる。
【００４２】
また、一重項酸素は、化粧料や食品等に配合されている植物エキス等の色素の褪色や変色を引き起こしたり、促進することが知られている。また、褪色や変色を伴わない場合であっても、一重項酸素の存在によって皮膚用化粧料等に配合される薬効剤例えば、有効成分としての脂質、たんぱく質、ビタミン類の分解を引き起したり、促進する場合がある。本発明の一重項酸素消去剤を配合すると、一重項酸素消去能及びこれに付随する上記効果が得られるのみならず、共に配合されている他の剤の分解を抑制するという効果も得られる。即ち、本発明の一重項酸素消去剤は、色素褪色防止剤として利用することができ、また褪色のみならず脂質、たんぱく質、ビタミン類の他の薬効剤の保存剤として利用することもできる。
【００４３】
本発明の一重項酸素消去剤は、上記のような作用・効果を奏するので、医薬品、医薬部外品、化粧料、食品等の種々の目的に利用することができる。すなわち、一重項酸素は、常に酸素に接触し、紫外線に暴露されている皮膚表面上に多く存在するので、本発明の一重項酸素消去剤を含有する組成物は、皮膚外用剤としてより有用である。また、一重項酸素の消去によって抑制される反応は、皮膚の老化、皮膚の黒化、にきび、皮膚の損傷の一因となる反応であるので、その様な反応を抑制できる本発明の一重項酸素消去剤を有効成分として含有する組成物は、皮膚の老化防止、美白、にきび用、美肌を目的とする皮膚用化粧料として特に有用である。
【００４４】
本発明の一重項酸素消去剤を単独で、又は１種以上の公知の外用医薬用添加剤又は皮膚化粧料用添加剤とともに常法に従って配合することによって、皮膚用外用剤ないし化粧料を調製することができる。本発明の一重項酸素消去剤の配合量は、外用剤ないし化粧料の剤形、使用目的等の他、一重項酸素消去剤の一重項酸素消去能によっても異なるが、一般的には、最終組成物中にブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物が好ましくは、乾燥固形分で０.０００００１〜１質量％（以下、単に「％」と記す）であり、好ましくは０.００００１〜５％、より好ましくは０.００１〜３％である。この範囲内であれば、ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物をより安定に配合することができ、優れた薬効を発揮することができる。
【００４５】
本発明の一重項酸素消去剤は単独で皮膚外用剤として用いることができ、又は１種又は２種以上の添加剤と混合することによって皮膚外用剤あるいは化粧料を調製することもできる。必要に応じて添加される添加剤としては、皮膚用化粧料や外用医薬品の製剤に一般的に用いられる、水（精製水、温泉水、海洋深層水等）、アルコール、油剤、界面活性剤、金属セッケン、ゲル化剤、粉体、アルコール類、水溶性高分子、皮膜形成剤、樹脂、紫外線防御剤、包接化合物、抗菌剤、香料、消臭剤、塩類、ｐＨ調整剤、清涼剤、動物・微生物由来抽出物、植物抽出物、血行促進剤、収斂剤、抗脂漏剤、美白剤、抗炎症剤、本発明の一重項酸素消去剤以外の活性酸素消去剤、細胞賦活剤、保湿剤、キレート剤、角質溶解剤、酵素、ホルモン類、ビタミン類等が挙げられる。皮膚外用剤の調製は、常法に従って行うことができ、前記添加剤の配合量も本発明の効果を損なわない範囲で、常法に従って決定することができる。
【００４６】
前記皮膚用外用剤あるいは化粧料の形態については限定されず、乳液、クリーム、化粧水、美容液、パック、洗顔料、メーキャップ化粧料等の皮膚用化粧料に属する形態；シャンプー、ヘアートリートメント、ヘアースタイリング剤、養毛剤、育毛剤等の頭髪化粧料に関する形態；及び分散液、軟膏、エアゾール、貼付剤、パップ剤、リニメント剤等の外用医薬品の形態のいずれであってもよい。
【実施例】
【００４７】
以下、実施例および製造例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等により何ら制約されるものではない。
【００４８】
製 造 例 １
ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物の調製（１）：
原料植物として、オーク材（スパニッシュオーク）を用いた。工業用エタノールを水と混合して、６０容量％エタノール水溶液を調製し、このエタノール水溶液３０００ｍｌに上記オーク材のチップ（１×１×２ｃｍ）２４０ｇを添加し、８５℃で５分間加熱した後、２４時間室温で放置し、再度８５℃で５分間加熱した。得られた溶液を濾過し、４０容量％エタノール水溶液のオーク材エキス（オーク Ｕ１５９、オーク Ｕ１６０およびオーク Ｕ１６１）を得た。
【００４９】
製 造 例 ２
ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物の調製（２）：
ウイスキーの貯蔵用原酒として用いられるニューポットを調製した。すなわち、発芽した大麦（麦芽）を粉砕し、これを温水と混合し、糖化させた。糖化後の糖液を濾過し、濾過後の糖液に酵母を加え発酵させ、アルコール度数が７．０〜７．５容量％の醪（もろみ）を得た。醪を銅製のポットスチル（単式蒸留器）に入れて二度蒸留し、アルコール濃度６０容量％の組成物（ニューポット）を得た。次にウイスキー製造用の樽（ホワイトオーク、スパニッシュオークの樽）を用い、これらの樽に上記ニューポットを入れて栓をし、貯蔵庫にて１５、１８年間保存し、ウイスキー（スパニッシュ１８年、ホワイト１８年、ホワイト１５年）を得た。
【００５０】
実 施 例 １
一重項酸素消去定数の測定：
製造例１および２で調製したオーク材エキスおよびウイスキーの一重項酸素消去率を以下の様にして測定した。一重項酸素の検出は、特許第３３５６５１７号公報（詳細は同公報の［００２６］欄）に記載の装置を用いた。この装置のフローセル中に、ローズベンガルの５０μＭの５０％エタノール溶液を、２０ｍｌ／分の速度で循環させた。このセルに、ローズベンガルの吸収波長である５１４.５ｎｍの波長のレーザーを照射すると、一重項酸素の遷移に伴う発光が観察され、その発光ピークは波長１２６８ｎｍであった。溶媒のみの波長１２６８ｎｍでの発光強度（Ｉ０）をまず測定し、次いで、オーク材エキスまたはウイスキーを表１の濃度で添加した場合の波長１２６８ｎｍでの発光強度（Ｉ）を測定した。これらの測定値に基づき、下記式から一重項酸素消去率（Ｅ）を算出した。なお、比較としては、バクガ根１００ｇに水１０Ｌを加え、室温にて抽出し、その後、抽出液をろ過して得られたろ液であるバクガ根エキス（活性酸素消去能を有する）を用いた。この結果を表１に示す。
Ｅ＝（Ｉ0−Ｉ）／Ｉ0×１００）
【００５１】
【表１】
【００５２】
この結果より、オーク材エキスおよびウイスキーは、優れた一重項酸素消去能を示すことが実証された。一方、バクガ根エキスは活性酸素消去能を有しているにもかかわらず、その一重項酸素消去能は低いことが明らかになった。
【００５３】
実 施 例 ２
化 粧 水 ：
下記成分および製造方法により、化粧水を調製した。
【００５４】
（ 成 分 ） （質量％）
１ グリセリン ５．０
２ １，３−ブチレングリコール ５．０
３ 乳酸 ０．０５
４ 乳酸ナトリウム ０．１
５ モノオレイン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン １．２
６ エタノール ８．０
７ パラオキシ安息香酸メチル ０．１
８ 香料 ０．０５
９ ウイスキー（製造例２（スパニッシュ１８年）） ０．０５
１０ 精製水 残 量
【００５５】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（５）、（７）、(８)と（６）の７／８を混合溶解する。
Ｂ ： 成分（１）〜（４）、(９)〜（１０）および残部の（６）を混合溶解する。
Ｃ ： ＢにＡを添加混合し、化粧水を得た。
【００５６】
実 施 例 ３
乳 液 ：
下記成分および製造方法により、乳液を調製した。
【００５７】
（ 成 分 ） （質量％）
１ モノステアリン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン １．０
２ トリオレイン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン ０．５
３ グリセリルモノステアレート １．０
４ ステアリン酸 ０．５
５ ベヘニルアルコール ０．５
６ スクワラン ８．０
７ カルボキシビニルポリマー ０．１
８ パラオキシ安息香酸メチル ０．１
９ 水酸化ナトリウム ０．０５
１０ エタノール ５．０
１１ ウイスキー（製造例２（ホワイト１８年）） ０．１
１２ 精製水 残 量
１３ 香料 ０．０５
１４ 精製水 ５．０
【００５８】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（１２）に成分（７）〜（９）を加えて７０℃で均一に混合する。
Ｂ ： 成分（１）〜（６）を７０℃で均一に混合する。
Ｃ ： ＡにＢを加えて乳化し、室温まで冷却する。
Ｄ ： （１０）、（１１）、（１３）、（１４）を加えて均一に混合し、乳液を得た
。
【００５９】
実 施 例 ４
リキッドファンデーション（水中油型クリーム状）：
下記成分および製造方法により、リキッドファンデーションを調製した。
【００６０】
（ 成 分 ） （質量％）
１ アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合物（注１） ０．５
２ トリエタノールアミン １．５
３ 精製水 残 量
４ グリセリン ５
５ パラオキシ安息香酸エチル ０．１
６ １，３−ブチレングリコール ５
７ 水素添加大豆リン脂質 ０．５
８ 酸化チタン ５
９ ベンガラ ０．１
１０ 黄酸化鉄 １
１１ 黒酸化鉄 ０．０５
１２ ステアリン酸 ０．９
１３ モノステアリン酸グリセリン ０．３
１４ セトステアリルアルコール ０．４
１５ モノオレイン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン ０．２
１６ トリオレイン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン ０．２
１７ パラメトキシケイ皮酸２―エチルヘキシル ５
１８ ウイスキー（製造例２（ホワイト１５年）） ０．５
１９ 香料 ０．０２
（注１）ペミュレンＴＲ−２（ＮＯＶＥＯＮ社製）
【００６１】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（６）〜（１１）を分散する。
Ｂ ： Ａに成分（１２）〜（１７）を加え７０℃で均一に混合する。
Ｃ ： 成分（１）〜（５）を７０℃で均一に混合する。
Ｄ ： ＣにＢを加え乳化し、室温まで冷却する。
Ｅ ： Ｄに成分（１８）〜（１９）を添加し均一に混合して水中油型クリーム状
リキッドファンデーションを得た。
【００６２】
実 施 例 ５
日焼け止め化粧料（油中水型クリーム状）：
下記成分および製造方法により、日焼け止め化粧料を調製した。
【００６３】
（ 成 分 ） （質量％）
１ モノラウリン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン ０．２
２ ＰＯＥ（６０）硬化ヒマシ油 ０．１
３ 精製水 残 量
４ ジプロピレングリコール １０
５ 硫酸マグネシウム ０．５
６ アスコルビルリン酸マグネシウム ３
７ シリコーン化合物（注２） ３
８ デカメチルシクロペンタシロキサン ２０
９ イソノナン酸イソトリデシル ５
１０ パラメトキシケイ皮酸２−エチルヘキシル ８
１１ ウイスキー（製造例２（スパニッシュ１８年）） ０．３
１２ ジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト １．２
（注２）ＫＦ−６０２８（信越化学工業社製）
【００６４】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（１）〜（６）を均一に分散する。
Ｂ ： 成分（７）〜（１１）を均一に分散する。
Ｃ ： Ｂを攪拌しながら徐々にＡを加えて乳化し、油中水型クリーム状日焼け止め
化粧料を得た。
【００６５】
実 施 例 ６
軟 膏 剤 ：
下記成分および製造方法により、軟膏剤を調製した。
【００６６】
（ 成 分 ） （質量％）
１ ステアリン酸 １８．０
２ セタノール ４．０
３ トリエタノールアミン ２．０
４ グリセリン ５．０
５ グリチルリチン酸ジカリウム（注３） ０．５
６ ウイスキー（製造例２（ホワイト１８年）） ０．５
７ 酢酸ｄｌ−α―トコフェロール（注４） ０．２
８ パラオキシ安息香酸メチル ０．１
９ 精製水 残 量
（注３）和光純薬工業社製
（注４）エーザイ社製
【００６７】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（３）、（４）および（９）の一部を加熱混合し、７５℃に保つ。
Ｂ ： 成分（１）、（２）、（６）〜（８）を加熱混合し、７５℃に保つ。
Ｃ ： ＡにＢを徐々に加え、これを冷却しながら成分（９）の残部で溶解した（５）
を加え、軟膏剤を得た。
【００６８】
実 施 例 ７
ローション剤：
下記成分および製造方法により、ローション剤を調製した。
【００６９】
（ 成分 ） （質量％）
１ グリセリン ５．０
２ １，３−ブチレングリコール ６．５
３ ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタンモノラウリン酸 １．２
エステル
４ エタノール ８．０
５ ウイスキー（製造例２（ホワイト１５年）） ０．０５
６ パラオキシ安息香酸メチル ０．２
７ 精製水 残 量
【００７０】
（ 製造方法 ）
Ａ．成分（３）〜（６）を混合溶解する。
Ｂ．成分（１）、（２）、（７）を混合溶解する。
Ｃ．ＡとＢを混合して均一にし、ローション剤を得た。
【００７１】
実 施 例 ８
化 粧 水 ：
下記成分および製造方法により、化粧水を調製した。
【００７２】
（ 成分 ） （質量％）
１ グリセリン ５．０
２ １，３−ブチレングリコール ５．０
３ 乳酸 ０．０５
４ 乳酸ナトリウム ０．１
５ モノオレイン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン １．２
６ エタノール ７．０
７ パラオキシ安息香酸メチル ０．１
８ 香料 ０．０５
９ オ−ク材エキス（製造例１（Ｕ１５９）） ０．０５
１０ エタノール １．０
１１ 精製水 残 量
【００７３】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（５）〜(８)を混合溶解する。
Ｂ ： 成分（１）〜（４）及び(９)〜（１１）を混合溶解する。
Ｃ ： ＢにＡを添加混合し、化粧水を得た。
【００７４】
実 施 例 ９
乳 液 ：
下記成分および製造方法により、乳液を調製した。
【００７５】
（ 成分 ） （質量％）
１ モノステアリン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン １．０
２ トリオレイン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン ０．５
３ グリセリルモノステアレート １．０
４ ステアリン酸 ０．５
５ ベヘニルアルコール ０．５
６ スクワラン ８．０
７ カルボキシビニルポリマー ０．１
８ パラオキシ安息香酸メチル ０．１
９ 水酸化ナトリウム ０．０５
１０ エタノール ５．０
１１ オ−ク材エキス（製造例１（Ｕ１６０）） ０．１
１２ 精製水 残 量
１３ 香料 ０．０５
１４ 精製水 ５．０
【００７６】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（１２）に成分（７）〜（９）を加えて７０℃で均一に混合する。
Ｂ ： 成分（１）〜（６）を７０℃で均一に混合する。
Ｃ ： ＡにＢを加えて乳化し、室温まで冷却する。
Ｄ ： （１０）、（１１）、（１３）、（１４）を加えて均一に混合し、乳液を得た
。
【００７７】
実 施 例 １０
リキッドファンデーション（水中油型クリーム状）：
下記成分および製造方法により、リキッドファンデーションを調製した。
【００７８】
（ 成分 ） （質量％）
１ アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体（注１） ０．５
２ トリエタノールアミン １．５
３ 精製水 残 量
４ グリセリン ５
５ パラオキシ安息香酸エチル ０．１
６ １，３−ブチレングリコール ５
７ 水素添加大豆リン脂質 ０．５
８ 酸化チタン ５
９ ベンガラ ０．１
１０ 黄酸化鉄 １
１１ 黒酸化鉄 ０．０５
１２ ステアリン酸 ０．９
１３ モノステアリン酸グリセリン ０．３
１４ セトステアリルアルコール ０．４
１５ モノオレイン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン ０．２
１６ トリオレイン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン ０．２
１７ パラメトキシケイ皮酸２―エチルヘキシル ５
１８ オ−ク材エキス（製造例１（Ｕ１６１）） ０．５
１９ 香料 ０．０２
（注１）ペミュレンＴＲ−２（ＮＯＶＥＯＮ社製）
【００７９】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（６）〜（１１）を分散する。
Ｂ ： Ａに成分（１２）〜（１７）を加え７０℃で均一に混合する。
Ｃ ： 成分（１）〜（５）を７０℃で均一に混合する。
Ｄ ： ＣにＢを加え乳化し、室温まで冷却する。
Ｅ ： Ｄに成分（１８）〜（１９）を添加し均一に混合して水中油型クリーム状リ
キッドファンデーションを得た。
【００８０】
実 施 例 １１
日焼け止め化粧料（油中水型クリーム状）：
下記成分および製造方法により、日焼け止め化粧料を調製した。
【００８１】
（ 成分 ） （質量％）
１ モノラウリン酸ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタン ０．２
２ ＰＯＥ（６０）硬化ヒマシ油 ０．１
３ 精製水 残 量
４ ジプロピレングリコール １０
５ 硫酸マグネシウム ０．５
６ アスコルビルリン酸マグネシウム ３
７ シリコーン化合物（注２） ３
８ デカメチルシクロペンタシロキサン ２０
９ イソノナン酸イソトリデシル ５
１０ パラメトキシケイ皮酸２−エチルヘキシル ８
１１ オ−ク材エキス（製造例１（Ｕ１５９）） ０．３
１２ ジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト １．２
（注２）ＫＦ−６０２８（信越化学工業社製）
【００８２】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（１）〜（６）を均一に分散する。
Ｂ ： 成分（７）〜（１２）を均一に分散する。
Ｃ ： Ｂを攪拌しながら徐々にＡを加えて乳化し、油中水型クリーム状日焼け止め
化粧料を得た。
【００８３】
実 施 例 １２
軟 膏 剤 ：
下記成分および製造方法により、軟膏剤を調製した。
【００８４】
（ 成分 ） （質量％）
１ ステアリン酸 １８．０
２ セタノール ４．０
３ トリエタノールアミン ２．０
４ グリセリン ５．０
５ グリチルリチン酸ジカリウム（注３） ０．５
６ オ−ク材エキス（製造例１（Ｕ１６０）） ０．５
７ 酢酸ｄｌ−α―トコフェロール（注４） ０．２
８ パラオキシ安息香酸メチル ０．１
９ 精製水 残 量
（注３）和光純薬工業社製
（注４）エーザイ社製
【００８５】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（３）、（４）および（９）の一部を加熱混合し、７５℃に保つ。
Ｂ ： 成分（１）、（２）、（６）〜（８）を加熱混合し、７５℃に保つ。
Ｃ ： ＡにＢを徐々に加え、これを冷却しながら成分（９）の残部で溶解した
（５）を加え、軟膏剤を得た。
【００８６】
実 施 例 １３
ローション剤：
下記成分および製造方法により、ローション剤を調製した。
【００８７】
（ 成分 ） （質量％）
１ グリセリン ５．０
２ １，３−ブチレングリコール ６．５
３ ポリオキシエチレン（２０Ｅ．Ｏ．）ソルビタンモノラウリン酸 １．２
エステル
４ エタノール ８．０
５ オ−ク材エキス（製造例１（Ｕ１６１）） ０．０５
６ パラオキシ安息香酸メチル ０．２
７ 精製水 残 量
【００８８】
（ 製造方法 ）
Ａ ： 成分（３）〜（６）を混合溶解する。
Ｂ ： 成分（１）、（２）、（７）を混合溶解する。
Ｃ ： ＡとＢを混合して均一にし、ローション剤を得た。
【００８９】
上記各実施例で調製した化粧水、乳液、リキッドファンデーション、日焼け止め化粧料、軟膏剤、ローション剤は、いずれも変色・変臭および沈殿物などがなく、安定であり、皮膚に適用可能であった。これらの化粧料は一重項酸素を消去することにより、一重項酸素が関与する様々な反応を抑制するのに利用することができ、コラーゲン架橋形成抑制、皮膚の即時黒化抑制、酵素失活抑制、脂質過酸化抑制、細胞老化抑制、抗アクネに有用である。
【産業上の利用可能性】
【００９０】
本発明の一重項酸素消去剤は、優れた一重項酸素消去作用を有するので、一重項酸素が存在することによって引き起こされたり、促進される反応を抑制する用途に利用することができる。
【００９１】
従って、このものを含有する皮膚外用剤や化粧料を皮膚に適用することによって、一重項酸素が関与する反応が一因となって起こる、皮膚の老化、皮膚の黒化及び皮膚の損傷等を防止することが可能となる。
【００９２】
また、本発明の一重項酸素消去剤を、有効成分として脂質、たんぱく質、ビタミン類等を含有する組成物中に配合すれば、これら有効成分の一重項酸素による劣化を抑え、これらを安定に配合した組成物とすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を有効成分として含有する一重項酸素消去剤。
【請求項２】
溶媒抽出物が、低級アルコールまたは低級アルコールと水との混合溶媒による抽出物である請求項１記載の一重項酸素消去剤。
【請求項３】
溶媒抽出物が、１０〜１００容量％の濃度の低級アルコールによる抽出物である請求項１または２に記載の一重項酸素消去剤。
【請求項４】
低級アルコールがエタノールである請求項２または３に記載の一重項酸素消去剤。
【請求項５】
溶媒抽出物が、エタノール含有物を蒸留したものによる抽出物である請求項１ないし４の何れかの項に記載の一重項酸素消去剤。
【請求項６】
溶媒抽出物が、エタノール含有物の蒸留物をオーク樽中でオーク樽材と接触させることにより得られるものである請求項１ないし５の何れかの項に記載の一重項酸素消去剤。
【請求項７】
エタノール含有物の蒸留物が、ウイスキー貯蔵前原酒である請求項６に記載の一重項酸素消去剤。
【請求項８】
オーク樽材との接触期間が０.５年以上である請求項６または７に記載の一重項酸素消去剤。
【請求項９】
ブナ科コナラ属植物がオーク類である請求項１ないし８の何れかに記載の一重項酸素消去剤。
【請求項１０】
ブナ科コナラ属植物が、オーク類木材からなるチップまたはウイスキー熟成用樽の形態である請求項１ないし９の何れかに記載の一重項酸素消去剤。
【請求項１１】
溶媒抽出物が、溶媒抽出液、該抽出液の濃縮物または該抽出液の乾燥物の形態である請求項１ないし１０の何れかの項記載の一重項酸素消去剤。
【請求項１２】
溶媒抽出物が、ウイスキーまたはその濃縮物あるいは乾燥物である請求項１ないし１１の何れかの項記載の一重項酸素消去剤。
【請求項１３】
一重項酸素消去率が０.５ｍｇ／ｍＬで１０％以上である請求項１ないし１２の何れかの項記載の一重項酸素消去剤。
【請求項１４】
請求項１ないし１３の何れかに記載の一重項酸素消去剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項１５】
皮膚の即時黒化防止剤または皮表脂質の過酸化抑制剤である請求項１４記載の皮膚外用剤。
【請求項１６】
皮膚の即時黒化防止剤であり、利用する一重項酸素消去剤の一重項酸素消去率がドーパより大きいものである請求項１４または１５記載の皮膚外用剤。
【請求項１７】
最終組成物中にブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を乾燥固形分として０.００００１〜１０質量％含有する請求項１４ないし１６の何れかの項記載の皮膚外用剤。
【請求項１８】
請求項１ないし１３の何れかに記載の一重項酸素消去剤と、有効成分としての脂質、たんぱく質またはビタミン類を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項１９】
請求項１ないし１３の何れかに記載の一重項酸素消去剤を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項２０】
皮膚の老化防止、美白または美肌を目的とする皮膚用化粧料である請求項１９記載の化粧料。
【請求項２１】
にきびの予防または改善を目的とするものである請求項１９記載の化粧料。
【請求項２２】
最終組成物中にブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を乾燥固形分として０.００００１〜１０質量％含有する請求項１９ないし２１の何れかの項記載の化粧料。
【請求項２３】
請求項１ないし１３の何れかに記載の一重項酸素消去剤と、有効成分としての脂質、たんぱく質またはビタミン類を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項１】
ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を有効成分として含有する一重項酸素消去剤。
【請求項２】
溶媒抽出物が、低級アルコールまたは低級アルコールと水との混合溶媒による抽出物である請求項１記載の一重項酸素消去剤。
【請求項３】
溶媒抽出物が、１０〜１００容量％の濃度の低級アルコールによる抽出物である請求項１または２に記載の一重項酸素消去剤。
【請求項４】
低級アルコールがエタノールである請求項２または３に記載の一重項酸素消去剤。
【請求項５】
溶媒抽出物が、エタノール含有物を蒸留したものによる抽出物である請求項１ないし４の何れかの項に記載の一重項酸素消去剤。
【請求項６】
溶媒抽出物が、エタノール含有物の蒸留物をオーク樽中でオーク樽材と接触させることにより得られるものである請求項１ないし５の何れかの項に記載の一重項酸素消去剤。
【請求項７】
エタノール含有物の蒸留物が、ウイスキー貯蔵前原酒である請求項６に記載の一重項酸素消去剤。
【請求項８】
オーク樽材との接触期間が０.５年以上である請求項６または７に記載の一重項酸素消去剤。
【請求項９】
ブナ科コナラ属植物がオーク類である請求項１ないし８の何れかに記載の一重項酸素消去剤。
【請求項１０】
ブナ科コナラ属植物が、オーク類木材からなるチップまたはウイスキー熟成用樽の形態である請求項１ないし９の何れかに記載の一重項酸素消去剤。
【請求項１１】
溶媒抽出物が、溶媒抽出液、該抽出液の濃縮物または該抽出液の乾燥物の形態である請求項１ないし１０の何れかの項記載の一重項酸素消去剤。
【請求項１２】
溶媒抽出物が、ウイスキーまたはその濃縮物あるいは乾燥物である請求項１ないし１１の何れかの項記載の一重項酸素消去剤。
【請求項１３】
一重項酸素消去率が０.５ｍｇ／ｍＬで１０％以上である請求項１ないし１２の何れかの項記載の一重項酸素消去剤。
【請求項１４】
請求項１ないし１３の何れかに記載の一重項酸素消去剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項１５】
皮膚の即時黒化防止剤または皮表脂質の過酸化抑制剤である請求項１４記載の皮膚外用剤。
【請求項１６】
皮膚の即時黒化防止剤であり、利用する一重項酸素消去剤の一重項酸素消去率がドーパより大きいものである請求項１４または１５記載の皮膚外用剤。
【請求項１７】
最終組成物中にブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を乾燥固形分として０.００００１〜１０質量％含有する請求項１４ないし１６の何れかの項記載の皮膚外用剤。
【請求項１８】
請求項１ないし１３の何れかに記載の一重項酸素消去剤と、有効成分としての脂質、たんぱく質またはビタミン類を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項１９】
請求項１ないし１３の何れかに記載の一重項酸素消去剤を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項２０】
皮膚の老化防止、美白または美肌を目的とする皮膚用化粧料である請求項１９記載の化粧料。
【請求項２１】
にきびの予防または改善を目的とするものである請求項１９記載の化粧料。
【請求項２２】
最終組成物中にブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を乾燥固形分として０.００００１〜１０質量％含有する請求項１９ないし２１の何れかの項記載の化粧料。
【請求項２３】
請求項１ないし１３の何れかに記載の一重項酸素消去剤と、有効成分としての脂質、たんぱく質またはビタミン類を含有することを特徴とする化粧料。
【公開番号】特開２０１０−２３５４８４（Ｐ２０１０−２３５４８４Ａ）
【公開日】平成２２年１０月２１日（２０１０．１０．２１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−８３８５３（Ｐ２００９−８３８５３）
【出願日】平成２１年３月３１日（２００９．３．３１）
【出願人】（０００１４５８６２）株式会社コーセー (734)
【出願人】（３０９００７９１１）サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年１０月２１日（２０１０．１０．２１）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年３月３１日（２００９．３．３１）
【出願人】（０００１４５８６２）株式会社コーセー (734)
【出願人】（３０９００７９１１）サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Ｆターム（参考）】
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