説明

一重項酸素消去剤ならびにこれを含有する皮膚外用剤および化粧料

【課題】
良好な一重項酸素消去能を長期的に維持することができ、一重項酸素によって引き起こされる様々な反応を抑制し得る一重項酸素消去剤を提供すること。
【解決手段】
オオバコ科オオバコ属セイヨウオオバコ(学名:Plantago major L.)の種子の抽出物を含有する一重項酸素消去剤ならびにこの一重項酸素消去剤を含有する皮膚外用剤および化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な一重項酸素消去剤ならびにこれを有効成分として含有する皮膚外用剤および化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、広義の活性酸素種として、スーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素及び一重項酸素が知られており、これらと金属や脂質との反応生成物が知られている。しかし、活性酸素種の中には、例えば、基底状態酸素とは電子の数が異なる、スーパーオキサイド、過酸化水素及びヒドロキシラジカル等の還元分子種もあれば、基底状態酸素と電子の数は同じであるが励起状態にある、励起分子種である一重項酸素もあり、その電子状態の違いに基づく、活性酸素種という枠組みでは捉えられない固有の特性をそれぞれ有する。
【0003】
また、従来、活性酸素種の検出には、電子スピン共鳴(ESR)が広く利用されているが(例えば特許文献1)、ESRは、スーパーオキサイドやヒドロキシラジカル等のラジカル種の検出には有効であっても、ラジカル種でない一重項酸素を検出することはできない。更に、一重項酸素の水中における寿命は約4μ秒と短く、感度、特異性を兼ね備えた検出方法は限られている(例えば特許文献2)。従って、従来、広義に活性酸素種が関与している反応と報告されているものや、活性酸素種の捕獲に有効な剤と報告されているものも、その検出方法等を検討すると、一重項酸素については明確ではないものがほとんどである。
【0004】
近年、活性酸素種それぞれの反応性が研究され、対象分子に対してそれぞれ特異な反応性を示すことがわかってきた。例えば、スーパーオキサイドやヒドロキシラジカルは、タンパク質と反応して容易にその断片化を引き起こすのに対し、一重項酸素はタンパク質に架橋を形成し、タンパク質を重合させるという、スーパーオキサイド等とは全く異なる特異な反応性を示すことが報告されている(例えば、非特許文献1)。また、一重項酸素が、紫外線の照射により健康な皮膚表面に発生し、様々な皮膚トラブルの原因となる皮脂の過酸化を引き起していることも明らかとなった(例えば、非特許文献2)。この様な背景の下、従来、単に広く活性酸素種が関与しているといわれていた疾病や老化についても、具体的な個々の活性酸素種の役割が重要視されつつあり、このことは、一重項酸素についても同様である。従って、一重項酸素を(選択的あるいは特異的に)消去し得る剤があれば、一重項酸素が関与する疾病や老化の防止に有効である。
【0005】
従来、一重項酸素消去剤としていくつかの化合物が知られているが(例えば、特許文献3)、多くはそれら自体の化学的安定性が悪いために、保存中に経時的に劣化し、一重項酸素消去能が低下するものが多く、効果の持続性の点で優れた一重項酸素消去剤の提供が望まれている。
【0006】
一方、従来皮膚外用剤に配合可能な天然物由来の成分が種々検討されており、例えばオオバコ科オオバコ属セイヨウオオバコの種子については、オオバコ属(Plantago)について8−OHdg産生抑制作用やIgE産生抑制作用等があること(例えば、特許文献4、特許文献5)や、メラニン生成抑制作用があること(例えば、特許文献6)が報告されているが、セイヨウオオバコ及びセイヨウオオバコ種子抽出物についての一重項酸素消去能については、従来知られていない。
【0007】
【特許文献1】特開2001−10954号公報(5頁、実施例9)
【特許文献2】特開平7−159325号公報
【特許文献3】特開2001−288035号公報
【特許文献4】特開2003−002819号公報
【特許文献5】特開2003−002811号公報
【特許文献6】特開平11−116492号公報
【非特許文献1】"J.Soc.Cosmet.Chem.Japan."Vol.28,No.2 1994,p.163-171
【非特許文献2】「日本香粧品科学会誌」、第19巻、第1号(1995)、第1-6頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、良好な一重項酸素消去能を長期的に維持することができ、一重項酸素によって引き起こされる様々な反応を抑制し得る一重項酸素消去剤を提供することである。
【0009】
また本発明の別の課題は、皮膚に適用することによって、一重項酸素が関与する反応が一因となって起こる、皮膚の老化、皮膚の黒化及び皮膚の損傷等を防止し得る皮膚外用剤および化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するため、多くの天然由来成分について、その一重項酸素消去能および安定性について検索を行っていたところ、天然由来であり、オオバコ科オオバコ属セイヨウオオバコ(学名:Plantago major L.)の種子の抽出物が、優れた一重項酸素消去能および安定性を具備することを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、オオバコ科オオバコ属セイヨウオオバコの種子の抽出物(以下、「セイヨウオオバコ種子抽出物」という場合がある)を有効成分として含有する一重項酸素消去剤である。
【0012】
また本発明は、上記一重項酸素消去剤を含有する皮膚外用剤および化粧料である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、良好な一重項酸素消去能を長期的に維持する一重項酸素消去剤が提供され、一重項酸素によって引き起こされる様々な反応を抑制し得る。また、本発明の一重項酸素消去剤を利用した皮膚外用剤や化粧料を皮膚に適用することによって、一重項酸素が関与する反応が一因となって起こる、皮膚の老化、皮膚の黒化、にきび及び皮膚の損傷等を防止し得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
本発明の一重項酸素消去剤の有効成分は、セイヨウオオバコ種子抽出物である。セイヨウオオバコは、学名Plantago major L.のヨーロッパ原産の植物であり、日本でも帰化植物として広く見られる。
【0015】
本発明に用いられるセイヨウオオバコ種子抽出物は、一般的な方法で調製することができる。抽出溶媒としては特に限定されないが、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール等の低級一価アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール;アセトン等のケトン類;エチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類;等の一種又は二種以上を用いることができる。抽出は、前記セイヨウオオバコ種子を室温又は加温下で溶媒中に所定の時間浸漬することによって実施できる。また、抽出前に、乾燥、細切、圧搾又は醗酵等の前処理を行うこともできる。
【0016】
前記セイヨウオオバコ種子抽出物は、調製後、そのまま一重項酸素消去剤として用いることができる。また、所望により、適宜の期間そのまま放置し熟成させた後に、一重項酸素消去剤として用いることもできる。必要ならば、本発明の効果に影響のない範囲で、更に、濾過又はイオン交換樹脂等により、脱臭、脱色等の精製処理を施して用いることもできる。又、液体クロマトグラフィー等の分離手段を用い、活性の高い画分を取り出して用いることもできる。
【0017】
前記セイヨウオオバコ種子抽出物の好ましい調製方法の例としては、セイヨウオオバコの種子をそのまま、或いは乾燥させたもの、又は細切・粉砕したもの等を、水;メタノール、エタノール等の低級一価アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール;等の親水性極性溶媒又はこれらの二種以上の混合溶媒に、加温して又は室温にて浸漬させた後、抽出して得ることができる。但し、抽出法はこれに限定されるものではない。
【0018】
前記セイヨウオオバコ種子抽出物は、液状、ペースト状、ゲル状等いずれの形態であってもよい。すなわち、抽出溶媒を含む液状の抽出液をそのままあるいは濃縮してから用いても良いし、また、抽出液を減圧乾燥、又は凍結乾燥などにより乾固させて固体状とした後に用いることもできる。また、スプレードライ等により乾燥させて粉末として用いることもできる。また更には、これら固体状あるいは粉末の抽出物を適宜溶媒に再溶解して抽出液として用いても良い。
【0019】
本発明は、本発明の一重項酸素消去剤であるセイヨウオオバコ種子抽出物を有効成分として含有する一重項酸素消去用皮膚外用剤および化粧料にも関する。本発明の皮膚外用剤および化粧料は、セイヨウオオバコ種子抽出物の一重項酸素消去作用によって、優れた皮膚の老化、皮膚の黒化、にきび及び皮膚の損傷等の防止効果を奏する。本発明の皮膚外用剤中の前記セイヨウオオバコ種子抽出物の含有量は、純分として、好ましくは0.000001〜1.0質量%(以下単に「%」で示す)であり、より好ましくは0.00001〜0.1%である。この範囲内であれば、前記抽出物を安定に配合することができ、かつ一重項酸素消去剤による優れた皮膚の老化、皮膚の黒化、にきび及び皮膚の損傷等の防止効果を発揮することができる。
【0020】
本発明の一重項酸素消去剤は、その一重項酸素消去率が0.5mg/mLで10%以上あるものが好ましく、20%以上あるものがより好ましい。さらに1.0mg/mLで20%以上あるものが好ましく、30%以上あるものが特に好ましい。なお、本明細書において、「一重項酸素消去率」とは、一重項酸素の遷移に伴う発光の強度低下率のことをいう。具体的に一重項酸素消去率(E)は、一重項酸素を恣意的に発生させ、一重項酸素の遷移に伴う発光が観測される系に、一重項酸素消去剤を種々の濃度で添加し、その発光強度(I)と、加えなかった時の発光強度(I0)を測定し、これらの測定値を用いて、下記式から算出される。
E=(I0−I)/I0×100
【0021】
本発明の一重項酸素消去剤は、一重項酸素が存在することによって引き起こされる又は促進される反応を抑制する用途に利用することができる。例えば、一重項酸素は、真皮構成成分であるコラーゲンを架橋させることが知られており("J.Soc.Cosmet.Chem.Japan."Vol.28,No.2 1994,p.163-171)、コラーゲンの架橋は、皮膚の弾力性及び柔軟性を低下させ、皮膚の老化の一因となる。従って、本発明の一重項酸素消去剤を皮膚に適用することにより、コラーゲンの架橋が形成されることを抑制することができ、皮膚の老化を防止し、若々しい皮膚を維持することができる。即ち、本発明の一重項酸素消去剤は、コラーゲン架橋抑制剤として利用することができる。
【0022】
また、例えば、一重項酸素は、UV−Aの照射によって皮膚表面に多く発生し、ドーパの酸化により非酵素的に起こる即時黒化に関与していること、及び皮表脂質の過酸化に関与していることが知られている(「日本香粧品科学会誌」、第19巻、第1号(1995)、第1-6頁)。従って、本発明の一重項酸素消去剤を皮膚に適用することにより、皮膚の即時黒化や皮表脂質の過酸化を抑制することができる。さらには、にきびの予防または改善することが可能である(特開2003−002811号公報)。
【0023】
なお、本発明の一重項酸素消去剤を、即時黒化抑制剤として使用する場合は、一重項酸素消去剤の一重項酸素消去率がドーパより大きいものを利用することがより好ましい。また、例えば、一重項酸素は、生体内反応を担っている数多くの酵素の失活を引き起こす又は促進することが知られている。従って、本発明の一重項酸素消去剤は、酵素失活抑制剤として利用することができる。なお、本発明の一重項酸素消去剤を、酵素の失活抑制剤として利用する場合は、一重項酸素消去剤の一重項酸素消去率が、その酵素の一重項酸素消去率より大きいことがより好ましい。
【0024】
一方、我々は、生体の老化現象を捉えるために細胞老化評価系を用い、細胞老化に一重項酸素が関与していることを報告している(J. Jpn. Cosmet. Sci. Soc. Vol.26, 2002, p.79-85)。つまり、細胞を一重項酸素に曝露させると細胞寿命の短縮という特徴的な老化現象がみられたのである。そして、この現象は一重項酸素消去物質であるヒスチジンを細胞に与えることにより抑制された。すなわち、一重項酸素消去物質は、細胞老化を抑制し、その結果生体の老化を遅らせる効果があることを示唆しているので、本発明の一重項酸素消去剤も細胞老化抑制剤として利用することができる。
【0025】
また、一重項酸素は、化粧料や食品等に配合されている植物エキス等の色素の褪色や変色を引き起こしたり、促進することが知られている。また、褪色や変色を伴わない場合であっても、一重項酸素の存在によって皮膚用化粧料等に配合される薬効剤例えば、有効成分としての脂質、たんぱく質、ビタミン類の分解を引き起したり、促進する場合がある。本発明の一重項酸素消去剤を配合すると、一重項酸素消去能及びこれに付随する上記効果が得られるのみならず、共に配合されている他の剤の分解を抑制するという効果も得られる。即ち、本発明の一重項酸素消去剤は、色素褪色防止剤として利用することができ、また褪色のみならず脂質、たんぱく質、ビタミン類の他の薬効剤の保存剤として利用することもできる。
【0026】
本発明の一重項酸素消去剤は、上記のような作用・効果を奏するので、医薬品、医薬部外品、化粧料、食品等の種々の目的に利用することができる。すなわち、一重項酸素は、常に酸素に接触し、紫外線に暴露されている皮膚表面上に多く存在するので、本発明の一重項酸素消去剤を含有する組成物は、皮膚外用剤としてより有用である。また、一重項酸素の消去によって抑制される反応は、皮膚の老化、皮膚の黒化、にきび、皮膚の損傷の一因となる反応であるので、その様な反応を抑制できる本発明の一重項酸素消去剤を有効成分として含有する組成物は、皮膚の老化防止、美白、にきび用、美肌を目的とする皮膚用化粧料として特に有用である。
【0027】
本発明の皮膚外用剤および化粧料は、一重項酸素消去剤を常法に従い、種々の形態の基剤に配合して製剤化することにより調製できる。更に、一重項酸素消去剤を他の薬効剤の一種又は二種以上と組み合わせて配合することによって、一重項酸素消去効果をより高めた、もしくは一重項酸素消去効果とともに他の薬効も奏する皮膚外用剤を調製することができる。他の薬効剤の例には、美白剤、紫外線防御剤、抗菌剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、活性酸素除去剤、及び保湿剤などが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0028】
美白剤の例には、アスコルビン酸又はその誘導体、アルブチン、エラグ酸、リノール酸、ビタミンE及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、トラネキサム酸、胎盤抽出物、カミツレ抽出物、カンゾウ抽出物、エイジツ抽出物、オウゴン抽出物、海藻抽出物、クジン抽出物、ケイケットウ抽出物、ゴカヒ抽出物、コメヌカ抽出物、小麦胚芽抽出物、サイシン抽出物、サンザシ抽出物、サンペンズ抽出物、シラユリ抽出物、シャクヤク抽出物、センプクカ抽出物、大豆抽出物、茶抽出物、糖蜜抽出物、ビャクレン抽出物、ブドウ抽出物、ホップ抽出物、マイカイカ抽出物、モッカ抽出物、ユキノシタ抽出物、ローズマリー抽出物等が含まれる。
【0029】
紫外線防御剤としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸ナトリウム、4−t−ブチル−4−メトキシジベンゾイルメタン、2−フェニル−ベンズイミダゾール−5−硫酸、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0030】
抗菌剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール等が挙げられる。
【0031】
抗炎症剤としては、例えば、イオウ及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、アルテア抽出物、アシタバ抽出物、アルニカ抽出物、インチンコウ抽出物、イラクサ抽出物、オウバク抽出物、オトギリソウ抽出物、カミツレ抽出物、キンギンカ抽出物、クレソン抽出物、コンフリー抽出物、サルビア抽出物、シコン抽出物、シソ抽出物、シラカバ抽出物、ゲンチアナ抽出物等が挙げられる。
【0032】
細胞賦活剤の例には、カフェイン、鶏冠抽出物、貝殻抽出物、貝肉抽出物、ローヤルゼリー、シルクプロテイン及びその分解物又はそれらの誘導体、ラクトフェリン又はその分解物、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等のムコ多糖類またはそれらの塩、コラーゲン、酵母抽出物、乳酸菌抽出物、ビフィズス菌抽出物、醗酵代謝抽出物、イチョウ抽出物、オオムギ抽出物、センブリ抽出物、タイソウ抽出物、ニンジン抽出物、ローズマリー抽出物、グリコール酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等が含まれる。
【0033】
活性酸素除去剤は、過酸化脂質生成抑制等の作用を有しており、例えば、スーパーオキサイドディスムターゼ、マンニトール、クエルセチン、カテキン及びその誘導体、ルチン及びその誘導体、ボタンピ抽出物、ヤシャジツ抽出物、メリッサ抽出物、羅漢果抽出物、レチノール及びその誘導体、カロチノイド等のビタミンA類、チアミンおよびその誘導体、リボフラビンおよびその誘導体、ピリドキシンおよびその誘導体、ニコチン酸およびその誘導体等のビタミンB類、トコフェロール及びその誘導体等のビタミンE類、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0034】
保湿剤としては、例えば、エラスチン、ケラチン等のタンパク質またはそれらの誘導体、加水分解物並びにそれらの塩、グリシン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、テアニン等のアミノ酸及びそれらの誘導体、ソルビトール、エリスリトール、トレハロース、イノシトール、グルコース、蔗糖およびその誘導体、デキストリン及びその誘導体、ハチミツ等の糖類、D−パンテノール及びその誘導体、尿素、リン脂質、セラミド、オウレン抽出物、ショウブ抽出物、ジオウ抽出物、センキュウ抽出物、ゼニアオイ抽出物、タチジャコウソウ抽出物、ドクダミ抽出物、ハマメリス抽出物、ボダイジュ抽出物、マロニエ抽出物、マルメロ抽出物等が挙げられる。
【0035】
本発明の皮膚外用剤の用途としては、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、貼付剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤等法等が挙げられる。
【0036】
本発明の化粧料の用途としては、化粧水、乳液、クリーム、アイクリーム、美容液、マッサージ料、パック料、ハンドクリーム、ボディクリーム、日焼け止め化粧料、洗顔料等のスキンケア化粧料や、シャンプー、ヘアートリートメント、ヘアースタイリング剤、養毛剤、育毛剤等の頭髪化粧料パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、化粧用下地化粧料、白粉、コンシーラー、アイシャドウ等のメーキャップ化粧料を例示することができる。
【実施例1】
【0037】
以下、実施例および製造例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等により何ら制約されるものではない。
【0038】
[製造例1:セイヨウオオバコ種子抽出物の調製]
乾燥したオオバコ種子100gを粉砕し、2kgの25重量%エタノール水溶液に入れ、1時間、加熱還流して抽出した。不溶物を濾過後、濾液を減圧下で濃縮してセイヨウオオバコ種子抽出物を得た。また本発明において使用する場合に、このセイヨウオオバコ種子抽出物に精製水を加え、セイヨウオオバコの種子の純分0.1%を含む水溶液として用いた。
【0039】
[一重項酸素消去率の測定]
製造例1で調製したセイヨウオオバコ種子抽出物の一重項酸素消去率を以下の様にして測定した。一重項酸素の検出は、特許第3356517号公報(詳細は同公報の[0026]欄)に記載の装置を用いた。この装置のフローセル中に、ローズベンガルの50μMの水溶液を、20ml/分の速度で循環させた。このセルに、ローズベンガルの吸収波長である514.5nmの波長のレーザーを照射すると、一重項酸素の遷移に伴う発光が観察され、その発光ピークは波長1268nmであった。溶媒のみの波長1268nmでの発光強度(I)をまず測定し、次いで、セイヨウオオバコ種子抽出物を表1の濃度で添加した場合の波長1268nmでの発光強度(I)を測定した。これらの測定値に基づき、下記式から一重項酸素消去率(E)を算出した。なお、比較としては、バクガ根100gに水10Lを加え、室温にて抽出し、その後、抽出液をろ過して得られたろ液であるバクガ根エキス(活性酸素消去能を有する)を用いた。この結果を表1に示す。
E=(I0−I)/I0×100
【0040】
【表1】

【0041】
表1の結果より、セイヨウオオバコ種子抽出物は、優れた一重項酸素消去能を示すことが実証された。一方、バクガ根エキスは活性酸素消去能を有しているにもかかわらず、その一重項酸素消去能は低いことが明らかになった。
【実施例2】
【0042】
化 粧 水 :
( 成 分 ) (%)
1 グリセリン 5.0
2 1,3−ブチレングリコール 5.0
3 乳酸 0.05
4 乳酸ナトリウム 0.1
5 モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 1.2
6 エタノール 7.0
7 パラオキシ安息香酸メチル 0.1
8 香料 0.05
9 セイヨウオオバコ種子抽出物(注1) 0.01
10 エタノール 1.0
11 精製水 残 量
(注1)製造例1で調整したもの(純分濃度0.1%)
【0043】
( 製造方法 )
A:成分(5)〜(8)を混合溶解する。
B:成分(1)〜(4)及び(9)〜(11)を混合溶解する。
C:BにAを添加混合し、化粧水を得た。
【実施例3】
【0044】
乳 液 :
( 成 分 ) (%)
1 モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 1.0
2 トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.5
3 グリセリルモノステアレート 1.0
4 ステアリン酸 0.5
5 ベヘニルアルコール 0.5
6 スクワラン 8.0
7 カルボキシビニルポリマー 0.1
8 パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9 水酸化ナトリウム 0.05
10 エタノール 5.0
11 セイヨウオオバコ種子抽出物(注2) 0.01
12 精製水 残 量
13 香料 0.05
14 精製水 5.0
(注2)アブソレージ(一丸ファルコス社製)
【0045】
( 製造方法 )
A:成分(12)に成分(7)〜(9)を加えて70℃で均一に混合する
B:成分(1)〜(6)を70℃で均一に混合する。
C:AにBを加えて乳化し、室温まで冷却する。
D:(10)、(11)、(13)、(14)を加えて均一に混合し、乳液を得た。
【実施例4】
【0046】
リキッドファンデーション(水中油型クリーム状):
( 成 分 ) (%)
1 アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合物(注3) 0.5
2 トリエタノールアミン 1.5
3 精製水 残 量
4 グリセリン 5.0
5 パラオキシ安息香酸エチル 0.1
6 1,2−ペンタンジオール 1.0
7 水素添加大豆リン脂質 0.5
8 酸化チタン 5.0
9 ベンガラ 0.1
10 黄酸化鉄 1.0
11 黒酸化鉄 0.05
12 ステアリン酸 0.9
13 モノステアリン酸グリセリン 0.3
14 セトステアリルアルコール 0.4
15 モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.2
16 トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.2
17 パラメトキシケイ皮酸2―エチルヘキシル 5.0
18 セイヨウオオバコ種子抽出物(注2) 0.05
19 香料 0.02
(注3)
ペミュレンTR−2(NOVEON社製)
【0047】
( 製造方法 )
A:成分(6)〜(11)を分散する。
B:Aに成分(12)〜(17)を加え70℃で均一に混合する。
C:成分(1)〜(5)を70℃で均一に混合する。
D:CにBを加え乳化し、室温まで冷却する。
E:Dに成分(18)〜(19)を添加し均一に混合して水中油型クリーム状
リキッドファンデーションを得た。
【実施例5】
【0048】
日焼け止め化粧料(油中水型クリーム状):
( 成 分 ) (%)
1 モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.2
2 POE(60)硬化ヒマシ油 0.1
3 精製水 残 量
4 ジプロピレングリコール 10.0
5 硫酸マグネシウム 0.5
6 アスコルビルリン酸マグネシウム 3.0
7 シリコーン化合物(注4) 3.0
8 デカメチルシクロペンタシロキサン 20.0
9 イソノナン酸イソトリデシル 5.0
10 パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 8.0
11 セイヨウオオバコ種子抽出物(注1) 0.2
12 ジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト 1.2
(注4)
KF−6028(信越化学工業社製)
【0049】
( 製造方法 )
A:成分(1)〜(6)を均一に分散する。
B:成分(7)〜(11)を均一に分散する。
C:Bを攪拌しながら徐々にAを加えて乳化し、油中水型クリーム状日焼け止め
化粧料を得た。
【実施例6】
【0050】
軟 膏 剤 :
( 成 分 ) (%)
1 ステアリン酸 18.0
2 セタノール 4.0
3 トリエタノールアミン 2.0
4 グリセリン 5.0
5 グリチルリチン酸ジカリウム(注5) 0.5
6 セイヨウオオバコ種子抽出物(注1) 0.05
7 酢酸dl−α―トコフェロール(注6) 0.2
8 パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9 精製水 残 量
(注5) 和光純薬工業社製
(注6) エーザイ社製
【0051】
( 製造方法 )
A : 成分(3)、(4)および(9)の一部を加熱混合し、75℃に保つ。
B:成分(1)、(2)、(6)〜(8)を加熱混合し、75℃に保つ。
C:AにBを徐々に加え、これを冷却しながら成分(9)の残部で溶解した(5)
を加え、軟膏剤を得た。
【実施例7】
【0052】
ローション剤:
( 成分 ) (%)
1 グリセリン 5.0
2 1,3−ブチレングリコール 6.5
3 ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタンモノラウリン酸 1.2
エステル
4 エタノール 8.0
5 セイヨウオオバコ種子抽出物(注1) 0.05
6 パラオキシ安息香酸メチル 0.2
7 精製水 残 量
【0053】
( 製造方法 )
A:成分(3)〜(6)を混合溶解する。
B:成分(1)、(2)、(7)を混合溶解する。
C:AとBを混合して均一にし、ローション剤を得た。
【実施例8】
【0054】
化 粧 水 :
( 成分 ) (%)
1 グリセリン 5.0
2 1,3−ブチレングリコール 5.0
3 乳酸 0.05
4 乳酸ナトリウム 0.1
5 モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 1.2
6 エタノール 7.0
7 パラオキシ安息香酸メチル 0.1
8 香料 0.05
9 セイヨウオオバコ種子抽出物(注1) 0.05
10 エタノール 1.0
11 精製水 残 量
【0055】
( 製造方法 )
A:成分(5)〜(8)を混合溶解する。
B:成分(1)〜(4)及び(9)〜(11)を混合溶解する。
C:BにAを添加混合し、化粧水を得た。
【実施例9】
【0056】
乳 液 :
( 成分 ) (%)
1 モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 1.0
2 トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.5
3 グリセリルモノステアレート 1.0
4 ステアリン酸 0.5
5 ベヘニルアルコール 0.5
6 スクワラン 8.0
7 カルボキシビニルポリマー 0.1
8 パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9 水酸化ナトリウム 0.05
10 エタノール 5.0
11 セイヨウオオバコ種子抽出物(注1) 0.01
12 精製水 残 量
13 香料 0.05
14 精製水 5.0
【0057】
( 製造方法 )
A:成分(12)に成分(7)〜(9)を加えて70℃で均一に混合する
B:成分(1)〜(6)を70℃で均一に混合する。
C:AにBを加えて乳化し、室温まで冷却する。
D:(10)、(11)、(13)、(14)を加えて均一に混合し、乳液を得た。
【実施例10】
【0058】
リキッドファンデーション(水中油型クリーム状):
( 成分 ) (%)
1 アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(注7) 0.5
2 トリエタノールアミン 1.5
3 精製水 残 量
4 グリセリン 5
5 パラオキシ安息香酸エチル 0.1
6 1,3−ブチレングリコール 5.0
7 水素添加大豆リン脂質 0.5
8 酸化チタン 5.0
9 ベンガラ 0.1
10 黄酸化鉄 1.0
11 黒酸化鉄 0.05
12 ステアリン酸 0.9
13 モノステアリン酸グリセリン 0.3
14 セトステアリルアルコール 0.4
15 モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.2
16 トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.2
17 パラメトキシケイ皮酸2―エチルヘキシル 5.0
18 セイヨウオオバコ種子抽出物(注1) 0.05
19 香料 0.02
(注7)ペミュレンTR−1(NOVEON社製)
【0059】
( 製造方法 )
A:成分(6)〜(11)を分散する。
B:Aに成分(12)〜(17)を加え70℃で均一に混合する。
C:成分(1)〜(5)を70℃で均一に混合する。
D:CにBを加え乳化し、室温まで冷却する。
E:Dに成分(18)〜(19)を添加し均一に混合して水中油型クリーム状リ
キッドファンデーションを得た。
【実施例11】
【0060】
軟 膏 剤 :
( 成分 ) (%)
1 ステアリン酸 18.0
2 セタノール 4.0
3 トリエタノールアミン 2.0
4 グリセリン 5.0
5 グリチルリチン酸ジカリウム(注5) 0.5
6 セイヨウオオバコ種子抽出物(注1) 0.05
7 酢酸dl−α―トコフェロール(注6) 0.2
8 パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9 精製水 残 量
【0061】
( 製造方法 )
A:成分(3)、(4)および(9)の一部を加熱混合し、75℃に保つ。
B:成分(1)、(2)、(6)〜(8)を加熱混合し、75℃に保つ。
C:AにBを徐々に加え、これを冷却しながら成分(9)の残部で溶解した
(5)を加え、軟膏剤を得た。
【実施例12】
【0062】
ローション剤:
( 成分 ) (%)
1 グリセリン 5.0
2 1,2−ペンタンジオール 1.0
3 ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタンモノラウリン酸 1.2
エステル
4 エタノール 8.0
5 セイヨウオオバコ種子抽出物(注1) 0.05
6 パラオキシ安息香酸メチル 0.2
7 精製水 残 量
【0063】
( 製造方法 )
A:成分(3)〜(6)を混合溶解する。
B:成分(1)、(2)、(7)を混合溶解する。
C:AとBを混合して均一にし、ローション剤を得た。
【0064】
上記各実施例で調製した化粧水、乳液、リキッドファンデーション、日焼け止め化粧料、軟膏剤、ローション剤は、いずれも変色・変臭および沈殿物などがなく、安定であり、皮膚に適用可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の一重項酸素消去剤は、優れた一重項酸素消去作用を有するので、一重項酸素が存在することによって引き起こされたり、促進される反応を抑制する用途に利用することができる。
【0066】
従って、このものを含有する皮膚外用剤や化粧料を皮膚に適用することによって、一重項酸素が関与する反応が一因となって起こる、皮膚の老化、皮膚の黒化及び皮膚の損傷等を防止することが可能となる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オオバコ科オオバコ属セイヨウオオバコ(学名:Plantago major L.)の種子の抽出物からなる一重項酸素消去剤。
【請求項2】
請求項1に記載の一重項酸素消去剤を有効成分として含有する皮膚外用剤および化粧料。



【公開番号】特開2011−32182(P2011−32182A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177953(P2009−177953)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】