説明

万能把持スティック

【課題】 種々の形状や大きさの対象物を安定して把持することができ、さらには必要に応じて対象物を切断し、そのままこれを保持することができ、部材が入り組んだ場所でも容易に対象物を把持することができ、作業性が向上し、操作性がよく、取り扱い性に優れた万能把持スティックを提供する。
【解決手段】 ロッド本体3と、ロッド本体3の先端に備わる少なくとも2本の爪部材2とを有し、爪部材2の少なくとも1本は根元部を支点に回動可能な可動爪4であって、可動爪4を回動させて爪部材2を閉じることにより把持対象物に対して対向する方向から挟んで把持可能であり、爪部材2はブラケット15を介してロッド本体3に回転自在に取り付けられ、ブラケット15は周縁内側に貫通孔18が複数個形成されたフランジ部17を有し、フランジ部17は、ロッド本体3の先端と貫通孔18を挿通するノブ16を介してロッド本体3に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高圧配電線等の活線作業において、種々の対象物を把持可能な万能把持スティックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧配電線等の活線作業において、碍子や電線、カットアウト等を把持する際、それぞれ専用の工具又は治具を使用していた。そのため、それぞれの部材に応じた専用工具をセットで揃える必要があり、持ち運びが不便であり、保管にもスペースを要し、コスト的にも費用がかかっていた。活線作業において、把持対象物は略円筒形状のものが多く、これらの径の大きさにかかわらず把持できる工具があることが好ましい。
【0003】
種々の形状・大きさの作業対象物を安定して把持し続けるためのホットハンドが特許文献1に開示されている。このホットハンドは、作業対象物を把持する把持具と、先端に固定した把持具を作業位置に位置決めする絶縁性の主操作棒と、先端に接続した把持具を開閉操作する絶縁性の補助操作棒と、補助操作棒の基端に回動可能に接続し梃子の作用で補助操作棒をその長さ方向に往復移動させて保持具を操作するハンドルと、ハンドルの梃子の支点位置に取り付けたころを使用するベアリング状のワンウェイクラッチを軸支する操作用回動軸と、操作用回動軸の回動を任意の位置で固定・開放する係止機構とを有するものである。
【0004】
【特許文献1】特開平7−298436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のホットハンドは、把持具の内側面が湾曲し、先端が直線状で形成されるため、種々の大きさの把持対象物を安定して把持することができない。すなわち、対象物の径の大きさによっては、対向する両把持具の内側面において2点でのみ把持することがあり、不安定となる。さらに、カッター刃が備わっていないので、切断工具として用いることができない。また、把持具の角度調整機構が備わっていないため、電線や碍子が入り組んで配設された装柱状態の電柱の腕金周辺に適用することが困難である。また、把持具の可動機構が主操作棒(ロッド本体)とは別に補助操作棒として形成されるので、工具全体としてかさばるものであり、取り扱い性に優れたものではない。
【0006】
この発明は、上記従来技術を考慮したものであって、種々の形状や大きさの対象物を安定して把持することができ、さらには必要に応じて対象物を切断し、そのままこれを保持することができ、部材が入り組んだ場所でも容易に対象物を把持することができ、作業性が向上し、操作性がよく、取り扱い性に優れた万能把持スティックの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、ロッド本体と、当該ロッド本体の先端に備わる少なくとも2本の爪部材とを有し、当該爪部材の少なくとも1本は根元部を支点に回動可能な可動爪であって、当該可動爪を回動させて前記爪部材を閉じることにより把持対象物に対して対向する方向から挟んで把持可能であり、前記爪部材はブラケットを介して前記ロッド本体に取り付けられ、前記ブラケットは周縁内側に貫通孔が複数個形成されたフランジ部を有し、当該フランジ部は、中央部で前記ロッド本体に回転自在に軸支され、前記ロッド本体の先端と前記貫通孔を挿通するノブを介して前記ロッド本体に固定されることを特徴とする万能把持スティックを提供する。
【0008】
また、請求項2の発明では、前記ノブは、内臓弾性バネに抗してつまみ上げ可能であることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3の発明では、前記爪部材の把持側内側面の先端部分は、内側に凹んで湾曲した凹曲面が形成され、当該凹曲面と連続して外側に膨らんで湾曲した凸曲面が形成されることを特徴としている。
【0010】
また、請求項4の発明では、前記対向する爪部材の把持側内側面の根元部には、それぞれカッター刃が備わることを特徴としている。
【0011】
また、請求項5の発明では、前記それぞれのカッター刃は、前記爪部材が閉じたときに刃先部分が摺接し、前記対向する爪部材の把持側内側面の根元部のカッター刃に相応する位置には、対向方向に突設して前記カッター刃により切断された切断対象物を挟持可能な突条部が形成されることを特徴としている。
【0012】
また、請求項6の発明では、前記ロッド本体は、筒状の外筒と、当該外筒内を摺動可能に備わる中軸とを有し、当該中軸は前記可動爪とリンク機構により接続され、前記中軸を摺動することにより、前記可動爪が回動し、前記外筒と前記中軸の間に、前記外筒に固着された摺動部材が備わり、当該摺動部材と前記中軸の摺動面に、頭部が開いた断面Y字状のパッキン材が配設され、前記頭部は、前記ロッド本体の端部又は継目部分の近いほうを向くように配設され、前記パッキン材と前記中軸は、前記頭部のみで接することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、ノブを挿通する貫通孔を変更することにより、ブラケットをロッド本体に対して回転させることができるため、これに伴い爪部材もロッド本体に対して回転する。これにより、電線や碍子が入り組んで配設された装柱状態の電柱の腕金周辺に差し込みやすいように爪部材を回転させることができ、把持対象物を選ばず、また、適用場所を選ばずに使用可能である。したがって、作業性が向上し、操作性がよく、取り扱い性に優れている。
【0014】
請求項2の発明によれば、ノブが、内臓弾性バネに抗してつまみ上げ可能であるため、容易にノブをつまみ上げて、ノブが挿通する貫通孔を変更することができる。従って、ブラケットの回転操作を簡便に行うことができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、爪部材の把持側内側面が、先端部分の凹曲面とこれと連続する凸曲面で形成されるため、種々の形状、大きさの把持対象物を安定して把持することができる。すなわち、対象物を両側から把持する爪部材の先端部分の内側面が凹曲面となるように形成されるので、対象物と爪部材との接点を爪部材の先端部分とすることができ、対象物が爪部材から抜け落ちることを防止できる。これに加えて、凹曲面と連続して爪部材の内側面に凸曲面が形成されるので、この凸曲面が対象物に当接し、凹曲面と合わせて確実かつ安定して対象物を把持することができる。したがって、作業性が向上し、操作性がよく、取り扱い性に優れている。
【0016】
請求項4の発明によれば、作業工程において対象物を切断する状況が生じた場合でも、対向する爪部材の内側面の根元部に備わるカッター刃を用いて切断することができる。このため、切断作業の際に切断専用の工具を用意すること等を必要とせず、迅速に作業できる。したがって、作業性が向上し、操作性がよく、取り扱い性に優れている。
【0017】
請求項5の発明によれば、カッター刃の摺接動作により対象物が切断されたときに、突条部で切断された対象物を挟持して保持することができる。このため、切断された対象物を挟持した状態で手元まで持ってくることができる。したがって、切断された対象物が落下して下方の物を破損することもなく、かつ作業性が向上し、操作性がよく、取り扱い性に優れている。
【0018】
請求項6の発明によれば、摺動部材と中軸の摺動面に頭部が開いた断面Y字状のパッキン材が配設され、この頭部は、ロッド本体の端部又は継目部分の近いほうを向くように配設される。このため、浸水しやすいロッド本体の端部や継目方向を向いて配設されたパッキン材の頭部が、確実にロッド本体内への浸水を防止する。また、パッキン材と中軸が頭部のみで接するため、中軸を摺動部材に対して摺動させて可動爪を回動させる場合に、摩擦抵抗が少なくなり、スムーズに摺動させることができる。したがって、作業性が向上し、操作性がよく、取り扱い性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明は、ロッド本体と、当該ロッド本体の先端に備わる少なくとも2本の爪部材とを有し、当該爪部材の少なくとも1本は根元部を支点に回動可能な可動爪であって、当該可動爪を回動させて前記爪部材を閉じることにより把持対象物に対して対向する方向から挟んで把持可能であり、前記爪部材はブラケットを介して前記ロッド本体に取り付けられ、前記ブラケットは周縁内側に貫通孔が複数個形成されたフランジ部を有し、当該フランジ部は、中央部で前記ロッド本体に回転自在に軸支され、前記ロッド本体の先端と前記貫通孔を挿通するノブを介して前記ロッド本体に固定され、作業性が向上し、操作性がよく、取り扱い性に優れた万能把持スティックである。
【実施例】
【0020】
図1はこの発明に係る万能把持スティックの断面概略図である。
【0021】
図示したように、この発明に係る万能把持スティック1は、爪部材2と、ロッド本体3で構成される。爪部材2は、根元部を支点に回動可能な可動爪4と、これと対向して設けられた固定爪5で構成される。この可動爪4と固定爪5で対象物9を把持する。ロッド本体3には、可動爪4を回動させるための操作ハンドル6が備わる。図では、操作ハンドル6が握られる前の状態と握られている状態の両方を示している。ロッド本体3は、中空の外筒3aと、操作ハンドル部3bと、外筒3cと、延長外筒3dで構成される。ロッド本体3内には、中軸8が前後方向に摺動可能に配設される。この中軸8が操作ハンドル6と連動してロッド本体3内を摺動し、可動爪4を回動させる。延長外筒3dは、対象物9が高い位置にある場合に適宜取り付けることができる棒状部材である。7は、傘状の安全鍔であり、雨きりの役を果たす。
【0022】
図2及び図3はこの発明に係る万能把持スティックの爪部材近傍の断面概略図であり、図2は径の大きな対象物を把持したときの状態を示し、図3は径の小さな対象物を把持したときの状態を示す。
【0023】
中軸8はリンク部材10及びピストン部材11を介して可動爪4と接続される。中軸8を後側に(図2では下方に)引くと、リンク部材10がピストン部材11を押し下げ(図2では左側へ移動)、これに伴い可動爪4の根元部に備わる軸部材12を支点として可動爪4が固定爪5の方向へ回動し、可動爪4と固定爪5が閉じた状態となる。この中軸8の摺動動作は、操作ハンドル6(図1参照)を握ることにより行われる。これにより、対象物9を爪部材2により把持することができる。可動爪4、固定爪5は絶縁カバー13で覆われる。
【0024】
可動爪4及び固定爪5の把持側内側面の先端部分は、内側に凹んで湾曲した凹曲面4a,5aが形成され、この凹曲面4a,5aと連続して外側に膨らんで湾曲した凸曲面4b,5bが形成される。可動爪4及び固定爪5の内側面をこのような形状とすることにより、図2に示すような径の大きな対象物9を把持する場合、凹曲面4a,5bにより可動爪4と固定爪5は先端で対象物9と当接し、これとともに凸曲面4b,5bが対象物9に当接する。したがって、可動爪4と固定爪5で対象物9を側面視で4点で支持することになり、確実かつ安定して把持することができる。また上述したように、凹曲面4a,5aのように爪部材2(可動爪4、固定爪5)の先端を湾曲させることにより、両爪4,5の開口角度を狭めることができ、対象物9が爪部材2から抜け落ちることを防止できる。したがって、作業性が向上し、操作性がよく、取り扱い性に優れている。
【0025】
また、図3に示すような径の小さな対象物9を把持する場合、凸曲面4b,5bで爪部材2の先端方向へ対象物9を押圧すると同時に、凹曲面4a,5aがこれを受けて対象物9を把持することになる。このため、爪部材2の内側面の対象物9に対する接触面積が広がることになり、確実かつ安定して対象物9を把持することができる。なお、凸曲面4b,5bと連続してさらに凹曲面4c,5cを形成し、ここに径の小さな対象物9を把持可能な形状としてもよい。
【0026】
可動爪4及び固定爪5の内側面の根元部には、それぞれカッター刃14が備わる。これにより、作業工程において対象物9を切断する状況が生じた場合でも、カッター刃14を用いて切断することができる。このため、作業の途中で対象物9の切断を行うことがあっても、切断専用の工具を用意したりすること等を必要とせず、迅速に作業することができる。カッター刃14の爪部材2の先端側には、誤って対象物9をカッター刃14部分に差し込まないための突設部材22が備わる。したがって、作業性が向上し、操作性がよく、取り扱い性に優れている。
【0027】
可動爪4及び固定爪5は、ブラケット15を介して弾圧バネ内蔵型のノブ16によりロッド本体3に取り付けられる。ノブ16は、ブラケット15のフランジ部17に設けられた貫通孔18に挿通される。この貫通孔18は、後述するように(図7)、フランジ部17に複数個設けられる。
【0028】
図4(A)は可動爪の側面図であり、(B)は平面図である。また、図5(A)は固定爪の側面図であり、(B)は底面図である。
【0029】
図4に示すように、可動爪4の根元部は二股に分かれ、カッター刃14を取り付ける側板19aと、突条部20が形成された側板19bで構成される。カッター刃14は、側板19aに形成された溝21に嵌め込まれ、ネジ結合される。突条部20は、対向する側板19aの上面24よりも高くなるように形成される。12aは軸孔である。
【0030】
図5に示すように、固定爪5も可動爪4と同様に、根元部が二股に分かれ、カッター刃14を取り付ける側板23aと、突条部20が形成された側板23bで構成される。突条部20は、対向する側板23aの上面25よりも高くなるように形成される。また、固定爪5の把持部分も二股に分かれて形成される。可動爪4は、この間を通過するように回動する。このように3本の爪部材で対象物9の把持構造を形成することにより、さらに確実かつ安定した把持が可能となる。特に、碍子につきものの多ひだ形の構造物や中実碍子のような複雑な形状物も把持可能である。また、上述した爪部材2(可動爪4、固定爪5)の内側面の形状と相俟って、種々の形状の部材を把持することができ、専用の工具を持ち運ぶことがなく、したがって、作業性が向上し、操作性がよく、取り扱い性に優れている。
【0031】
図6は対象物9を切断した状態を示し、爪部材の根元部の断面概略図である。
【0032】
図示したように、対象物9を可動爪4と固定爪5の根元部まで差し込んで、可動爪4を閉じると、それぞれのカッター刃14,14が摺接して対象物9を切断する。このとき、可動爪4と固定爪5のそれぞれの突条部20,20が対象物9を挟持する。これにより、切断された対象物9を突条部20,20で挟持した状態で手元まで持ってくることができ、PD線等の電線切断作業をより簡単かつ安全に行うことができる。したがって、作業性が向上し、操作性がよく、取り扱い性に優れたものとなる。
【0033】
図7(A)はブラケットの平面図であり、(B)は側面図である。
【0034】
ブラケット15は断面コ字状の取付片26と当該取付片26の一側面に当接したフランジ部17で構成される。取付片26の両側板には、可動爪4及び固定爪5を取り付けるための取付孔27,28が備わる。取付孔27には、軸部材12(図2、図3参照)が挿通され、可動爪4が回動可能に取り付けられる。取付孔28には、皿ネジ(図示省略)により、固定爪5が固定される。フランジ部17は円盤状であり、周縁内側に貫通孔18が中心から所定角度の間隔で複数個設けられる(図では30°間隔で12個)。上述したように、この貫通孔18にノブ16が挿通され、爪部材2はブラケット15を介してロッド本体3に取り付けられる。29はピストン部材11(図2、図3参照)が挿通するための挿通孔である。
【0035】
ブラケット15は、フランジ部17を当接させてロッド本体3のヘッド部に回転自在に取り付けられる。この回転中心に上述した挿通孔29が穿ってあり、ピストン部材11(図2、図3参照)が挿通される。このピストン部材11は、可動爪4の根元部に回転自在に取り付けられている。したがって、ブラケット15及び爪部材2がどの傾きにおいても、操作が可能である。ノブ16をつまみ上げながらブラケット15を回転させて、ノブ16を挿通する貫通孔18を変更することにより、ロッド本体3に対する爪部材2の角度を変えることができる。これにより、電線や碍子が入り組んで配設された装柱状態の電柱の腕金周辺に差し込みやすいように爪部材2を回転させることができ、適用場所を選ばずにこの発明に係る万能把持スティック1を使用可能である。したがって、作業性が向上し、操作性がよく、取り扱い性に優れたものとなる。また、ノブ16は、ノブ16内に内蔵されてノブ16の両端方向に付勢された内臓弾性バネに抗してつまみ上げ可能であるため、容易にノブ16をつまみ上げて、ノブ16が挿通する貫通孔18を変更することができる。従って、ブラケット15の回転操作を簡便に行うことができる。
【0036】
図8はこの発明に係る万能把持スティックの爪部材近傍の底面図である。
【0037】
(A)は、爪部材2をロッド本体3と軸方向に揃えたときの状態を示し、(B)は、爪部材2をロッド本体3に垂直にしたときの状態を示す。また、可動爪4は、固定爪5に対し回転させて閉じた状態である。図示したように、爪部材2はブラケット15とともにロッド本体3に対して回転する。その回転機構は、上述したように、ロッド本体先端のノブ16を挿通する貫通孔18の位置を変更することにより行われる。このように爪部材2を回転させて、把持対象物に対しさまざまな角度から爪部材を接近させることができるので、適用場所が装柱部材で入り組んでいても、ロッド本体3を差し込んで対象物を確実に把持することができる。
【0038】
図9は図1のA部拡大図であり、図10は図1のB部拡大図である。
【0039】
図9に示すように、ロッド本体3の先端側の外筒3a内に、中軸8が摺動可能に配設される。中軸8の先端には連結部材30が取り付けられ、これがリンク部材10(図2、図3参照)と連結される。したがって、中軸8がロッド本体3内を前後方向に摺動することにより、連結部材30、リンク部材10及びピストン部材11を介して可動爪4を回動させる。外筒3aと連結部材30との間には、筒状の摺動部材31が皿ネジ32により固定される。連結部材30は、摺動部材31に摺接する。摺動部材31の連結部材30との摺動面には、環状であってその一端面頭部が開いた断面Y字状のパッキン材33が配設される。このパッキン材33は、頭部が開いているため、頭部側からの浸水防止効果が高いものである。この頭部は外筒3aの先端側に向けて配設される。このため、浸水しやすいロッド本体の先端部からの浸水を効果的に抑制することができる。
【0040】
パッキン材33は、連結部材30と頭部のみで接する。パッキン材33はゴム製等であるため摩擦係数が高いが、連結部材30と頭部のみで接することにより、この摩擦係数を低減することができる。したがって、中軸8をスムーズに摺動させることができる。したがって、作業性が向上し、操作性がよく、取り扱い性に優れている。
【0041】
図10に示すように、外筒3aと操作ハンドル部3bの継目部分、すなわち外筒3aの後端部も、図9で示したような先端部分と同様の構成を備えている。すなわち、外筒3aの内側に摺動部材31が固着され、中軸8に取り付けられた連結部材30との摺動面にはパッキン材33が配設される。このとき、パッキン材33の頭部は操作ハンドル部3b側、すなわち後端部側を向けて配設される。これにより、継目部分からの浸水を効率よく防止することができる。その他の構成、作用、効果は図9と同様である。
【0042】
図11はこの発明に係る万能把持スティックの操作ハンドル近傍の断面概略図であり、図12は操作ハンドルを握ったときの操作ハンドル近傍の断面概略図である。
【0043】
操作ハンドル部3bは、ロッド本体3の外筒3aと外筒3cを連結するカバー本体35と、ラチェット機構34及び操作ハンドル6を備えている。操作ハンドル6は略L字状に形成され、ハンドル軸36によって回動可能に軸支される。ラチェット機構34は、ラチェット37と、その歯に係合するロックレバー38と、このロックレバー38にラチェット37と常時係合する弾圧力を付与するバネ39で構成される。ロックレバー38は、バネ39に抗して浮いたままの状態とすることができる。この操作はレバー43を軸44を支点に回転させることにより行われる。すなわち、レバー43がAの状態では、バネ39が付勢されてロックレバー38はラチェット37に噛合する。一方、レバー43がBの状態では、バネ39の力に抗してロックレバー38を保持し、ラチェット37に係合しない。図はロックレバー38が浮いた状態であるレバー43がBのときを示している。
【0044】
カバー本体35内の操作ハンドル6には、揺動軸40が横架される。この揺動軸40には、連結部材30と連結される可動軸41が遊貫される。したがって、操作ハンドル6を握ると、図12に示すように、揺動軸40とともに中軸8が後側に摺動する。このとき、中軸8の後端部にはバネ受け41aが備わり、これが復帰用圧縮バネ42を押圧して後側に摺動する。操作ハンドル6が握られた状態では、ラチェット37にロックレバー38が係合しているため、復帰用圧縮バネ42により中軸8は前側に摺動しない。中軸8を前側に戻すときは、図11に示すように、ロックレバー38を浮かせて、ラチェット37から離すことにより、復帰用圧縮バネ42の弾圧力で前側に摺動させる。これにより、中軸8の摺動動作が可能となり、可動爪4を回動させて爪部材2を開閉させることができる。
【0045】
以上説明したように、この発明に係る万能把持スティック1は、把持する爪部材2の形状から、種々の形状のものが把持可能である。その対象物としては、油圧カッター、油圧工具(圧縮ヘッド)、碍子、絶縁ロッド操作棒、直線スリーブ、直線スリーブカバー、電線、カットアウト、カットアウト確認治具、カットアウト挿入治具、クリップ、分岐スリーブカバー、ホットプラー、電線保護シート等、多岐にわたる。特に碍子は、碍子の傘の上であっても、軸であっても把持可能である。これは、上述したような可動爪4が1本、固定爪5が2本で形成された爪部材2を用いることにより、可動爪4と固定爪5の1本で碍子の軸を把持し(いずれか1本は碍子の軸の斜面部分を把持)、固定爪5の残りの1本は碍子のひだの側面を爪の側面で支えることになるため、実現できる。また、耐張碍子及びカットアウトについては、ひだを斜め方向よりつかむことにより把持可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明に係る万能把持スティックの断面概略図である。
【図2】この発明に係る万能把持スティックの爪部在近傍の断面概略図である。
【図3】この発明に係る万能把持スティックの爪部在近傍の断面概略図である。
【図4】(A)は可動爪の側面図であり、(B)は平面図である。
【図5】(A)は固定爪の側面図であり、(B)は平面図である。
【図6】対象物を切断した状態を示し、爪部材の根元部の断面概略図である。
【図7】(A)はブラケットの平面図であり、(B)は側面図である。
【図8】この発明に係る万能把持スティックの爪部材近傍の底面図である。
【図9】図1のA部拡大図。
【図10】図1のB部拡大図。
【図11】この発明に係る万能把持スティックの操作ハンドル近傍の断面概略図である。
【図12】この発明に係る万能把持スティックの操作ハンドルを握ったときの操作ハンドル近傍の断面概略図である。
【符号の説明】
【0047】
1:万能把持スティック、2:爪部材2:ロッド本体、3a:外筒、3b:操作ハンドル部、3c:外筒、3d:延長外筒、4:可動爪、4a:凹曲面、4b:凸曲面、4c:凹曲面、5:固定爪、5a:凹曲面、5b:凸曲面、5c:凹曲面、6:操作ハンドル、7:安全鍔、8:中軸、9:対象物、10:リンク部材、11:ピストン部材、12:軸部材、13:絶縁カバー、14:カッター刃、15:ブラケット、16:ノブ、17:フランジ部、18:貫通孔、19a,19b:側板、20:突条部、21:溝、22:突設部材、23a,23b:側板、24:側板19aの上面、25:側板23aの上面、26:取付片、27:取付孔、28:取付孔、29:挿通孔、30:連結部材、31:摺動部材、32:皿ネジ、33:パッキン材、34:ラチェット機構、35:カバー本体、36:ハンドル軸、37:ラチェット、38:ロックレバー、39:バネ、40:揺動軸、41:可動軸、42:復帰用圧縮バネ、43:レバー、44:軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド本体と、
当該ロッド本体の先端に備わる少なくとも2本の爪部材とを有し、
当該爪部材の少なくとも1本は根元部を支点に回動可能な可動爪であって、当該可動爪を回動させて前記爪部材を閉じることにより把持対象物に対して対向する方向から挟んで把持可能であり、
前記爪部材はブラケットを介して前記ロッド本体に取り付けられ、
前記ブラケットは周縁内側に貫通孔が複数個形成されたフランジ部を有し、
当該フランジ部は、中央部で前記ロッド本体に回転自在に軸支され、前記ロッド本体の先端と前記貫通孔を挿通するノブを介して前記ロッド本体に固定されることを特徴とする万能把持スティック。
【請求項2】
前記ノブは、内臓弾性バネに抗してつまみ上げ可能であることを特徴とする請求項1に記載の万能把持スティック。
【請求項3】
前記爪部材の把持側内側面の先端部分は、内側に凹んで湾曲した凹曲面が形成され、当該凹曲面と連続して外側に膨らんで湾曲した凸曲面が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の万能把持スティック。
【請求項4】
前記対向する爪部材の把持側内側面の根元部には、それぞれカッター刃が備わることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の万能把持スティック。
【請求項5】
前記それぞれのカッター刃は、前記爪部材が閉じたときに刃先部分が摺接し、前記対向する爪部材の把持側内側面の根元部のカッター刃に相応する位置には、対向方向に突設して前記カッター刃により切断された切断対象物を挟持可能な突条部が形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の万能把持スティック。
【請求項6】
前記ロッド本体は、筒状の外筒と、当該外筒内を摺動可能に備わる中軸とを有し、
当該中軸は前記可動爪とリンク機構により接続され、
前記中軸を摺動することにより、前記可動爪が回動し、
前記外筒と前記中軸の間に、前記外筒に固着された摺動部材が備わり、
当該摺動部材と前記中軸の摺動面に、頭部が開いた断面Y字状のパッキン材が配設され、
前記頭部は、前記ロッド本体の端部又は継目部分の近いほうを向くように配設され、
前記パッキン材と前記中軸は、前記頭部のみで接することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の万能把持スティック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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