説明

三叉神経疼痛のための薬物送達のための治療手順

【課題】三叉神経疼痛のための薬物送達のための治療手順を提供すること。
【解決手段】本明細書においては、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬の有効量を個体に投与することを含み、該記投与が該三叉神経系を標的とし、特に身体のその他の部位における鎮痛効果に比べて、顔面又は頭部領域に対して鎮痛を優先的にもたらす、方法が提供される。本発明の幾つかの態様には、三叉神経に関連する疼痛が、慢性、慢性、急性及び手技関連疼痛及びそれらの組み合わせからなる群から選択される方法が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国仮特許出願第60/711,950号(2005年8月26日出願)および米国仮特許出願第60/794,004号(2006年4月21日出願)に関し、かつこれらの出願の優先権を主張する。これらの出願の全内容は、本明細書中でその全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は一般的に、疼痛を処置するための方法及び組成物に関する。更に具体的には、本発明は、三叉神経系に鎮痛薬を投与及び標的送達することにより、局所的な疼痛をもたらし、中枢神経系への有害作用又は全身性副作用を最小限にすることによって、三叉神経に関連する急性、慢性及び手技関連疼痛を処置又は予防する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
皮膚及び特定の内部組織中の疼痛受容体を構成する自由神経終末が、機械的、熱的、化学的又はその他の有害刺激にさらされると、疼痛を経験する。疼痛受容体(侵害受容体)は、求心性ニューロンに沿って、中枢神経系、次いで脳へシグナルを伝達する。疼痛の原因には、炎症、外傷、疾患、筋痙攣、並びに神経障害性事象又は症候群の発症が含まれる可能性がある。効果のない疼痛の処置は、機能を制限し、移動性を減少させ、睡眠を困難にし、生活の質を劇的に妨げることによって、疼痛を経験する人を意気消沈させる。
【0004】
知覚三叉神経(求心性神経)は、神経を刺激し、顔面及び前頭部からの知覚シグナルの殆どを脳に伝達する。三叉神経及び神経節に関与する疼痛は、種々の医学的状態において生じ、疼痛治療の専門家及び医師に固有の問題をもたらす。三叉神経痛、非定型顔面痛、有痛性感覚脱失、ヘルペス後神経痛、頭頸部癌、偏頭痛、及び顎関節痛等の症候群に起因する慢性疼痛は、全てが三叉神経系に関与し、この神経分布に特有の臨床的課題をもたらす、極めて異なる疼痛症候群の例である。慢性的な疼痛状態の他にも、歯槽膿漏、頭痛、或いは裂傷又は火傷等の顔面及び/又は頭部の直接外傷といった急性外傷に顔面及び頭部の疼痛が関連する、臨床的状態もある。更に、通常の歯科治療、顔面形成及び/又は美容整形等の医学的手技は、相当な疼痛、並びに不快感及び不安を誘発する場合がある。
【0005】
顔面痛に関連付けられる症候群には、最も衰弱させる顔面痛症候群の1種である三叉神経痛(「三叉神経痛(tic duloreaux)」とも呼ばれる)がある。通常40歳以降に発症する三叉神経痛は、女性の方が若干発症する割合が高く、100,000人に約4〜5人の割合で発症する(非特許文献1)。三叉神経痛の最初の症状として、通常は前兆がなく、激しく鋭い顔面疼痛が突然発症する。疼痛の突然の発症は、「電撃的ボルト様」、「マシンガン様」又は「電気ショック様」と説明される。一般的に疼痛は、顔面の片側に現れ、突発的に発生し、数秒間の短い症状が1日中何度も繰り返し発生する場合がある。三叉神経痛は1種以上の三叉神経枝に関与し、原因は様々に異なる。薬物治療には、カルバマゼピン(テグレトール、カルバトロール)、フェニトイン(ジランチン)、クロナゼパム(クロノピン)、ガバペンチン(ニューロンチン)及びラムトリグニン(ラミクタール)等の抗発作薬、アミトリプチリン(エラヴィル)等の三環系抗うつ薬、並びにバクロフェン等の筋弛緩薬が含まれる。これらの治療は一般的に効果が限られており、多くの患者は最終的に侵襲性の手技を受けている。手技による介入は、三叉神経節の直接触診を伴うことが多く、これには、微小血管減圧術、疼痛繊維の破壊を目的としたアルコール注入、疼痛伝達繊維の選択的な破壊を目的としたグリセロール注入、経皮的高周波神経根切断術、高周波パルス及びγナイフが含まれる。これらの手技の鎮痛は、これらの患者の一定の割合で成功している場合があるが、その鎮痛効果は短く、しばしば顔面疼痛が再発する。又、有意な手技の疼痛及び長期の病的状態も、このような処理に関連する場合がある。
【0006】
非定型顔面痛(ATFP)は、顔面痛の問題の広範な群を包含する症候群である。ATFPは多くの異なる原因を有するが、症状は全て同じである。火傷、うずき又は筋痙攣として表現される顔面痛は、顔面の片側、しばしば三叉神経痛の領域で発症し、上頸部又は頭皮後部に拡張することがある。三叉神経痛ほど重症なことは滅多にないが、顔面痛は、たとえ寛解の期間があっても、ATFP患者には連続して継続する。幾つかの研究では、ATFPが三叉神経痛の初期の形態であると提案されているが、現時点において意見の一致は見られない。ATFPの薬物治療は、効果が限られる抗発作薬及び三環系抗うつ薬を含めた三叉神経痛について規定される処置と同様のものである。
【0007】
有痛性感覚脱失は、脳神経外科の最も恐れられる合併症の1つであり、不可逆的であると考えられている。有痛性感覚脱失の2つの主な症状は、顔面麻痺(歯科用麻酔注射による知覚麻痺に酷似)と絶え間ない疼痛である。この疼痛は通常、焼けるような、引っ張るような、突き刺すような疼痛であるが、鋭い、針で刺すような、撃たれたような、又は電気的な疼痛も含むことがある。圧力及び「重み」も、疼痛症候群の一部に含まれることがあり、しばしば眼の疼痛を伴う。寒さは、知覚麻痺の感覚を増大させ、顔が凍るような感覚を覚えることがある。手術、身体外傷により、又は三叉神経痛等の病態を直す手術の合併症として三叉神経が損傷すると、有痛性感覚脱失が発症する。幾つかの事例で局所投与のクロニジンが試験され、単独の処置ではこの病状の疼痛を全て解消できないことが判明しているが、カプサイシンを使用した局所処置が、疼痛及び不快感の管理の補助として使用されている。
【0008】
ヘルペス後神経痛は、帯状疱疹(帯状ヘルペス)からの発疹が治癒後に残る疼痛である。帯状疱疹は、水疱瘡を引き起こすウイルスと同じ水痘帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる神経の感染症である。帯状疱疹を患った人の約3分の1がヘルペス後神経痛を患う。ヘルペス後神経痛の疼痛は絶え間なく、刺されるような、うずく、又は燃えるような、疼痛であり、帯状疱疹の発生の後、1ヶ月〜1年の間持続し得る。
【0009】
今年は、約65,000人の米国人が頭頸部癌と診断されると予想され、これは、米国において全ての癌診断の約3%に相当する(米国癌協会)。約60%の頭頸部癌患者は、最大25%の中程度の、又は激しい疼痛を有する長期の疼痛を報告している。三叉神経及び神経節は、これらの患者において、殆どの頭部及び顔面痛を媒介すると思われ、時々、癌性増殖によって直接影響を受ける。中程度から重症の疼痛を有する殆どの癌患者のための推奨される処置は、ヒドロコドン、コデイン、オキシコドン、モルヒネ、フェンタニル及びヒドロモルホン等のオピオイド療法である。疼痛刺激の部位から離れた全身的作用を含む多くの問題を有する。更に、オピオイドは非常に習慣性であり、薬物に対する耐性が増加した患者は、投与される量が急速に高くなる。
【0010】
偏頭痛は、米国において2950万人以上の人に影響を及ぼしている。典型的な偏頭痛は、拍動性であり、1〜2時間を超えて増強し、数時間から1日間持続する。疼痛の強度は中程度から重症であり、衰弱し、しばしば吐き気及び嘔吐を引き起こす。偏頭痛を研究している臨床医の特有の興味は、上方の三叉神経区域(superior trigeminal division)(眼区域)である。この区域は、額、眉毛、眼瞼、前頭皮、鼻及び眼窩の成分を神経支配し、従って、偏頭痛と共に発症する視覚的な前兆に加え、疼痛の局在化について説明する。偏頭痛の通常の処置には、プロプラノロール(インデラル)及びアテノロール等のβ遮断薬、三環系抗うつ薬、トリプタン類、エルゴタミン類、抗発作薬及びカルシウムチャンネルブロッカーが含まれる。これらの薬物の多くは全身性副作用を有し、限界のある有効性を有する。
【0011】
急性顔面痛は、抜糸、根管手術及び人工歯根及び人工器官のための手術等の通常の歯科的処置を受ける患者において発生し得る。予定された歯科的処置から別々に発生する、歯槽膿漏又は細菌感染外傷等の他の病状の歯/歯肉の疾患からも発生し得る。多くの歯科医は、簡単な処置のため、又は局所麻酔の注射の前に、種々の領域を麻酔するためにベンゾカイン、オイゲノール等の表面麻酔薬を使用する。多くの処置のため、歯科医は、リドカイン、キシロカイン及びマーカイン等の局所麻酔薬を注射して、歯科医の作業に必要な部位又はその周辺を神経遮断する。局所麻酔薬はそれらが注射された部位を麻痺させ、殆どの処置の急性的な疼痛を消失させる。投与の疼痛に加え、特に通常の歯科的処置についての局所麻酔の他の主な不都合は、歯科的処置が終了した後、通常は数時間持続する顔の領域における知覚麻痺及び感覚の損失である。
【0012】
顔面形成術は非常に一般的な手術となり、米国で毎年数百万の手術が実施されている。手術は、裂傷又は骨折等の損傷の修復に必要なものから顔のしわ取り、鼻形成術、皮膚の若返り等の選択できる美容整形まで広がっている。これらの手術の多くのために、歯科的処置と同様に局所麻酔が使用され(患者は全身麻酔下でない)、局所麻酔は投与するために痛く、手術が終わった後数時間持続する長引く知覚麻痺の問題を含む。更に、実施される手術に依存し、患者は、麻酔が消失した後の様々なレベルの手術後痛に悩まされる。
【0013】
殆どのあらゆるタイプの疼痛の処置には、通常、鎮痛薬又は鎮痛薬の幾つかの形態が含まれる。鎮痛薬は、通常3グループ、即ち、非オピオイド鎮痛薬、オピオイド鎮痛薬、及びアジュバントとしても知られる補助鎮痛薬に分類される。非オピオイド鎮痛薬には、アセトアミノフェン、及び非ステロイド性抗炎症剤又はNSAIDが含まれる。しばしば「麻薬」と呼ばれるオピオイドには、モルヒネ等の天然物質、及び半合成及び合成物質等の物質が含まれる。補助鎮痛薬は、主に疼痛寛解以外の用途を有するが、ある種の疼痛の状態のために鎮痛をもたらす薬物である。
【0014】
オピオイド鎮痛薬は、通常は疼痛を寛解するために使用される。しかし、それらの有用性には、慢性的処置に通常発現する耐性及び依存性によって限界がある。モルヒネ等のオピオイド鎮痛薬は、習慣性であり得、呼吸及び心臓抑制及び眠気等の中枢神経系媒介性の副作用が発現し得る。更に、オピオイド鎮痛薬は、吐き気、嘔吐及び便秘等の頻繁な副作用に苦しめられる。
【0015】
治療薬は、例えば、経口投与、静脈注射、筋肉内注射及び皮下注射を含む、多くの経路によって送達される。手技による三叉神経に関連する急性又は慢性の疼痛を患う患者にとって、鎮痛薬を使用した通常の薬物送達のための主な問題の1つは、薬剤の全身への分布による局所的な疼痛の寛解を欠くことである。所望の部位で薬物の有効投与量を達成するために投与する必要がある投与量はしばしば多くなってしまう。高濃度の鎮痛薬を使用した場合、薬剤の全身への分布による、望ましくない副作用の増加に関連して効果が制限されるという更なる問題が存在する。局所的であるが、三叉神経に対する直接的な侵襲性の処置を含む処置は、選択性の欠如及び/又は処置の可逆性のための重大な不都合、及びそれらの処置が、それ自身により、有痛性感覚脱失を含む、更なる顔面神経の問題を引き起こし、知覚麻痺及び神経求心路遮断が持続するという事実を有する。特に侵襲的処置を伴う、三叉神経関連の疼痛の従来の処置に伴う更なる問題は、医療チームにより必要とされる、高レベルの技能、訓練及び設備であり、これらは処置を高価にし、広範囲の使用にとって非現実的である。
鼻腔投与は、例えば、インシュリン、チロイド刺激ホルモン遊離ホルモン及びバソプレシン等の幾つかの治療剤の全身的投与に使用される。治療薬の全身送達のための鼻腔又はその他の経粘膜経路の使用は、容易な投与、及び治療薬の腸内での分解及び初回通過肝代謝を迂回する能力を可能にする。治療薬の全身への分布をさせないか、治療薬の局所又は局地的な領域を標的とするのが望ましい時がある。例えば、鼻腔薬物送達は、血液脳関門を迂回し薬剤を中枢神経系(CNS)及び脳に送達するために使用される。ポリペプチド、ペプチド、オリゴヌクレオチド又はDNAプラスミド等の高分子は、軸索及び神経周囲の血管及び/又は嗅覚のリンパ経路、及び三叉神経等の鼻部内の特定の摂取経路によりCNSに直接送達することができる(非特許文献2;非特許文献3)。しかし、種々の治療薬が鼻腔経路によって脳に送達され、該治療薬が神経周囲の経路を進むという証拠はあるが、三叉神経路に関連する疼痛を患う個体における局所又は局地的鎮痛のための三叉神経系を特に標的とするためにそれらの経路を利用する方法は知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】KhoramiおよびTotah(2001)eMedicine Journal,Vol.2
【非特許文献2】Frey II(2002)Drug Delivery Technology,2:46−49
【非特許文献3】Thorne,ら(2004)Neuroscience,127:481−496
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
処置の広い範囲にもかかわらず、種々の形態及び状態において三叉神経が関連する疼痛は、多くの人々に影響し続けている。鎮痛薬をにより三叉神経系を直接標的とし、最小限の中枢神経系への作用又は全身性副作用を伴う、顔面又は頭部領域に鎮痛薬を送達する、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する新規の方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の簡潔な要旨)
本明細書においては、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬の有効量を個体に投与することを含み、該記投与が該三叉神経系を標的とし、特に身体のその他の部位における鎮痛効果に比べて、顔面又は頭部領域に対して鎮痛を優先的にもたらす、方法が提供される。本発明の幾つかの態様には、三叉神経に関連する疼痛が、慢性、慢性、急性及び手技関連疼痛及びそれらの組み合わせからなる群から選択される方法が含まれる。例によっては、慢性の疼痛が、三叉神経痛、非定型顔面痛、有痛性感覚脱失、ヘルペス後神経痛、頭頸部癌、偏頭痛、及び顎関節痛からなる群から選択される。例によっては、手技関連疼痛が、歯科、医学、外科又は美容の手技により生じる疼痛である。更に他の例においては、急性疼痛は、裂傷、火傷、骨折、外傷、頭痛、歯槽膿漏、歯科疾患、細菌感染、又は静脈洞感染により生じる疼痛である。
【0019】
本明細書においては、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬の有効量を該個体に投与することを含み、該投与が該三叉神経系を標的とし、最小限の中枢神経系への作用又は全身性副作用をもたらし、顔面又は頭部領域に対して鎮痛を優先的にもたらし、前記鎮痛薬が粘膜及び/又は経皮投与により投与される、方法が提供される。例によっては、前記鎮痛薬が、鼻腔的に投与される。その他の例においては、前記鎮痛薬は頬又は舌下投与により投与される。その他の例においては、前記鎮痛薬は、結膜、又は眼の周囲の他の粘膜組織に投与される。更に他の例においては、前記鎮痛薬は、皮膚又は真皮表面に投与される。例によっては、前記鎮痛薬が1種以上の経路により投与される。
【0020】
本明細書においては、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬の有効量を該個体に投与することを含み、該投与が該三叉神経系を標的とし、顔面又は頭部領域に対して局所的な鎮痛を優先的にもたらす、方法が提供される。本発明の幾つかの態様には、前記鎮痛薬には、ペプチド、アミノ酸、ポリペプチド、アヘン剤、又は鎮痛性能を有する低分子化合物が含まれるがこれらに限定されない方法が含まれる。例によっては、前記鎮痛薬が、エンケファリン、エンドルフィン、ジノルフィン、エンドモルフィン、カソモルフィン、デルモルフィン、オキシトシン、及びそれらの類似体及び誘導体からなる群から選択されるオピオイドペプチドである。例によっては、前記鎮痛薬が、ペプチド作動性酵素を阻害するペプチドである。その他の例においては、前記鎮痛薬は、ペプチド作動性受容体アゴニストである。更に他の例においては、前記鎮痛薬は、ペプチド作動性受容体アンタゴニストである。更なる例においては、前記鎮痛薬は、エンドセリン、神経成長因子、血管作用性小腸ポリペプチド(VIP)又は脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド等の前駆体発痛抗原(proalgesic antigens)に対する抗体である。例によっては、前記鎮痛薬が、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、コレシストキニン(CCK)、サブスタンスP又はガラニンに対する抗体である。その他の例においては、前記鎮痛薬は、N−メチル−D−アスパラギン酸塩受容体遮断薬、非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド性抗炎症剤、イオンチャンネル遮断薬、抗うつ薬又は抗発作薬である。例によっては、前記鎮痛薬がオピオイドである。
【0021】
本発明の幾つかの態様には、前記鎮痛薬が薬学的組成物として投与される方法が含まれる。従って、本明細書においては、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬を含む薬学的組成物の有効量を該個体に投与することを含み、該投与が該三叉神経系を標的とし、顔面又は頭部領域に対して鎮痛を優先的にもたらす、方法が提供される。本発明の幾つかの態様には、前記薬学的組成物が、粉末、液体、ゲル、軟膏、液剤、懸濁液、フィルム、フォイル、クリーム又は生体接着剤からなる群から選択される製剤において投与される方法が含まれる。本発明の幾つかの態様には、薬学的組成物が、プロテアーゼ阻害剤、吸収促進剤、血管収縮剤又はそれらの組み合わせも更に含む方法が含まれる。例によっては、前記プロテアーゼ阻害剤が、アンチパイン、アルファメニンA及びB、ベンザミジンHCl、AEBSF、CA−074、カルパイン阻害剤I及びII、カルペプチン、ペプスタチンA、アクチノニン、アマスタチン、ベスタチン、クロロアセチル−HOLeu−Ala−Gly−NH、DAPT、ジプロチンA及びB、エベラクトンA及びB、フォロキシミチン、ロイペプチン、ペプスタチンA、ホスホラミドン、アプロチニン、BBI、大豆トリプシン阻害剤、フッ化フェニルメチルスルホニル、E−64、キモスタチン、1,10−フェナントロリン、EDTA及びEGTAからなる群から選択される。その他の例においては、吸収促進剤は、界面活性剤、胆汁酸塩、生体接着剤、リン脂質添加剤、混合型ミセル、リポソーム、又は担体、アルコール、エナミン、カチオン性ポリマー、NO供与体化合物、長鎖両親媒性分子、低分子の疎水性浸透促進剤、ナトリウム又はサリチル酸誘導体、アセト酢酸のグリセロールエステル、シクロデキストリン又はβ−シクロデキストリン誘導体、中鎖脂肪酸、キレート剤、アミノ酸又はその塩、N−アセチルアミノ酸又はその塩、粘液溶解剤、選択された膜成分を特異的に標的とする酵素、脂肪酸合成阻害剤、及びコレステロール合成阻害剤からなる群から選択される。
【0022】
本明細書においては、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、i)鎮痛薬及びii)血管収縮剤を含む薬学的組成物の有効量を、個体に投与することを含み、該投与が該三叉神経系を標的とし、顔面又は頭部領域に対して鎮痛を優先的にもたらし、該血管収縮剤の投与によって該鎮痛薬の全身への分布が減少する、方法が提供される。例によっては、血管収縮剤が、塩酸フェニレフリン、塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸トラマゾリン、エンドセリン−1、エンドセリン−2、エピネフリン、ノルエピネフリン及びアンギオテンシンからなる群から選択される。例によっては、血管収縮剤が、薬学的組成物の投与の前に投与される。その他の例においては、血管収縮剤は、薬学的組成物と同時に投与される。例によっては、血管収縮剤が、鎮痛薬の有効投与量の減少をもたらす。
【0023】
本明細書においては、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬を含む薬学的組成物の有効量を該個体に投与することを含み、ペプチドが、口腔への頬又は舌下投与により投与され、薬物が、主に三叉神経系内のオピオイド受容体と結合し、顔面又は頭部領域に対して鎮痛を優先的にもたらす、方法が提供される。幾つかの態様は、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬を含む薬学的組成物の有効量を該個体に投与することを含み、ペプチドが、経皮投与により皮膚に投与され、薬物が、主に三叉神経系内のオピオイド受容体と結合し、顔面又は頭部領域に対して鎮痛を優先的にもたらす、方法が提供される。
【0024】
本明細書においては、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬を含む薬学的組成物の有効量を該個体に投与することを含み、薬物が鼻腔投与により鼻腔に投与され、薬物が、主に三叉神経系内のオピオイド受容体と結合し、顔面又は頭部領域に対して鎮痛を優先的にもたらす、方法が提供される。例によっては、投与が、鼻腔の下3分の2に向けられる。その他の例においては、投与は、嗅部から離れて鼻腔の下3分の2に向けられる。
本明細書においては、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬の有効量を該個体に投与することを含み、該投与が該三叉神経系を標的とし、特に身体のその他の部位における鎮痛効果に比べて、顔面又は頭部領域に対して鎮痛を優先的にもたらす、方法が提供される。例によっては、鎮痛薬、又は鎮痛薬を含む組成物が、30%以上のVASにおける疼痛の評価の低下をもたらす。その他の例においては、鎮痛薬、又は鎮痛薬を含む組成物は、50%以上のVASにおける疼痛の評価の低下をもたらす。
【0025】
本明細書に開示されるあらゆる方法を実施するためのキットが提供される。キットは、三叉神経に関連する疼痛の処置において使用されるために提供される。本発明のキットは、適切な輸送容器中に少なくとも1種の鎮痛薬を含む。キットは、血管収縮剤、少なくとも1種のプロテアーゼ阻害剤、及び/又は少なくとも1種の吸収促進剤を更に含んでもよい。キットは、鼻腔投与用のデバイスが含まれるがこれに限定されない、送達デバイスを含んでもよい。キットは、使用者に対する情報を提供する取扱説明書及び/又は本明細書に開示されるあらゆる方法を実施するための医療従事者を更に含んでもよい。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬の有効量を前記個体に投与することを含み、前記投与が前記三叉神経系を標的とし、身体のその他の部位における鎮痛効果に比べて、顔面又は頭部領域に対して鎮痛を優先的にもたらす、方法。
(項目2)
前記投与が、最小限のCNS又は全身性副作用をもたらす、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記投与が、30%以上のVASにおいて疼痛評価の低下をもたらす、項目1又は2に記載の方法。
(項目4)
前記鎮痛薬が経粘膜投与により投与され、経粘膜投与が、鼻腔投与、口腔投与、舌下投与及び結膜投与を含む、項目1〜3の何れか1項に記載の方法。
(項目5)
前記鎮痛薬が経皮投与により投与され、経皮投与が、顔面、額、眼瞼、鼻、頬、顎、頭皮、側頭の領域の皮膚、又はそれらの組み合わせに前記薬剤を投与することを含む、項目1〜3の何れか1項に記載の方法。
(項目6)
前記鎮痛薬が鼻腔投与により投与される、項目1〜4の何れか1項に記載の方法。
(項目7)
前記鎮痛薬が、口腔又は舌下投与により投与される、項目1〜4の何れか1項に記載の方法。
(項目8)
前記鎮痛薬が、結膜投与により、又は眼の周囲のその他の組織を介して投与される、項目1〜4の何れか1項に記載の方法。
(項目9)
前記鎮痛薬がペプチドを含む、項目1〜8の何れか1項に記載の方法。
(項目10)
前記ペプチドが、少なくとも1種の追加の薬剤と組み合わせて投与される、項目1〜9の何れか1項に記載の方法。
(項目11)
前記ペプチドが、エンケファリン、エンドルフィン、ジノルフィン、エンドモルフィン、カソモルフィン、デルモルフィン、オキシトシン、及びそれらの類似体及び誘導体からなる群から選択される、項目9又は10に記載の方法。
(項目12)
前記鎮痛薬が、ペプチド作動性チャンネルモジュレーター、ペプチド作動性酵素阻害剤、鎮痛性酵素、栄養因子、ペプチド作動性受容体アゴニスト、ペプチド作動性受容体アンタゴニスト、アミノ酸受容体アゴニスト、N−メチル−D−アスパラギン酸塩受容体遮断薬、NSAID、ステロイド性抗炎症薬、イオンチャンネル遮断薬、抗うつ薬、抗発作薬、ニコチン作動薬、オピオイド、前駆体発痛抗原に対する抗体、及びその他の神経ペプチドに対する抗体からなる群から選択される薬剤を含む、項目1〜11の何れか1項に記載の方法。
(項目13)
少なくとも2種の鎮痛薬を投与することを含む、項目1〜12の何れか1項に記載の方法。
(項目14)
前記三叉神経に関連する疼痛が、慢性、急性及び手技関連疼痛、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目1〜13の何れか1項に記載の方法。
(項目15)
前記慢性疼痛が、三叉神経痛、非定型顔面痛、有痛性感覚脱失、ヘルペス後神経痛、頭頸部癌、頸部疼痛、偏頭痛、及び顎関節痛からなる群から選択される、項目1〜14の何れか1項に記載の方法。
(項目16)
前記手技関連疼痛が、歯科、医学、外科又は美容の手技により生じる疼痛である、項目1〜14の何れか1項に記載の方法。
(項目17)
前記急性疼痛が、裂傷、火傷、骨折、頭痛、歯科疾患、細菌感染、歯槽膿漏、又は静脈洞感染により生じる疼痛である、項目1〜14の何れか1項に記載の方法。
(項目18)
前記鎮痛薬が薬学的組成物として投与される、項目1〜17の何れか1項に記載の方法。
(項目19)
前記薬学的組成物が、粉末、ゲル、軟膏、液剤、懸濁液、クリーム又は生体接着剤として投与される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記薬学的組成物が、少なくとも1種のプロテアーゼ阻害剤、又は少なくとも1種の吸収促進剤も更に含む、項目18又は19に記載の方法。
(項目21)
前記薬学的組成物が、少なくとも1種のプロテアーゼ阻害剤、及び少なくとも1種の吸収促進剤も更に含む、項目18又は19に記載の方法。
(項目22)
血管収縮剤を投与することも更に含む、項目1〜21の何れか1項に記載の方法。
(項目23)
前記血管収縮剤が前記鎮痛薬の前に投与される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記血管収縮剤が前記鎮痛薬と同時に投与される、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記血管収縮剤の投与によって、前記鎮痛薬の全身への分布が減少する、項目22、23又は24の何れか1項に記載の方法。
(項目26)
全身への分布が減少することによって、鎮痛を達成するのに有効な前記鎮痛薬の投与量が減少する、項目25に記載の方法。
(項目27)
少なくとも1種のプロテアーゼ阻害剤、及び少なくとも1種の吸収促進剤を投与することも更に含む、項目1〜26の何れか1項に記載の方法。
(項目28)
少なくとも1種のプロテアーゼ阻害剤、及び少なくとも1種の吸収促進剤、及び血管収縮剤を投与することも更に含む、項目1〜27の何れか1項に記載の方法。
(項目29)
前記プロテアーゼ阻害剤が、アンチパイン、アルファメニンA及びB、ベンザミジンHCl、AEBSF、CA−074、カルパイン阻害剤I及びII、カルペプチン、ペプスタチンA、アクチノニン、アマスタチン、ベスタチン、クロロアセチル−HOLeu−Ala−Gly−NH、DAPT、ジプロチンA及びB、エベラクトンA及びB、フォロキシミチン、ロイペプチン、ペプスタチンA、ホスホラミドン、アプロチニン、BBI、大豆トリプシン阻害剤、フッ化フェニルメチルスルホニル、E−64、キモスタチン、1,10−フェナントロリン、EDTA及びEGTAからなる群から選択される、項目20、21、27又は28の何れか1項に記載の方法。
(項目30)
前記吸収促進剤が、界面活性剤、胆汁酸塩、生体接着剤、リン脂質添加剤、混合型ミセル、リポソーム、又は担体、アルコール、エナミン、カチオン性ポリマー、NO供与体化合物、長鎖両親媒性分子、低分子の疎水性浸透促進剤;ナトリウム又はサリチル酸誘導体、アセト酢酸のグリセロールエステル、シクロデキストリン又はβ−シクロデキストリン誘導体、中鎖脂肪酸、キレート剤、アミノ酸又はその塩、N−アセチルアミノ酸又はその塩、粘液溶解剤、選択した膜成分を特異的に標的とする酵素、脂肪酸合成阻害剤、及びコレステロール合成阻害剤からなる群から選択される、項目20、21、27又は28の何れか1項に記載の方法。
(項目31)
前記血管収縮剤が、塩酸フェニレフリン、塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸トラマゾリン、エンドセリン−1、エンドセリン−2、エピネフリン、ノルエピネフリン及びアンギオテンシンからなる群から選択される、項目22〜28の何れか1項に記載の方法。
(項目32)
個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬の有効量を前記個体に投与することを含み、前記薬剤が、経粘膜又は経皮投与により投与され、顔面又は頭部領域に対して鎮痛を優先的にもたらす、方法。
(項目33)
個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬の有効量を前記個体に投与することを含み、前記投与が前記三叉神経系を標的とし、顔面又は頭部領域に対して局所的な鎮痛を優先的にもたらし、最小限の中枢神経系への作用又は全身性副作用をもたらす、方法。
(項目34)
個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、前記個体の鼻腔に鎮痛薬の有効量を投与することを含み、前記投与が前記三叉神経系を標的とし、顔面又は頭部領域に対して局所的な鎮痛を優先的にもたらす、方法。
(項目35)
血管収縮剤を投与することも更に含む、項目32、33又は34の何れか1項に記載の方法。
(項目36)
前記投与が、鼻腔の下3分の2に向けられる、項目1〜4又は9〜35の何れか1項に記載の方法。
(項目37)
前記投与が、嗅部から離れて鼻腔の下3分の2に向けられる、項目1〜4又は9〜36の何れか1項に記載の方法。
(項目38)
少なくとも1種の鎮痛薬、及び項目1〜37の何れか1項に記載の方法に使用するための取扱説明書を含む、三叉神経に関連する疼痛の処置に使用するためのキット。
(項目39)
更に送達デバイスも含む、項目38に記載のキット。
(項目40)
更に血管収縮剤も含む、項目38又は39に記載のキット。
(項目41)
個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する医薬品の製造における鎮痛薬の使用であって、前記医薬品が前記三叉神経系への投与に導入され、前記投与が、身体のその他の部位における鎮痛効果に比べて、顔面又は頭部領域に対して鎮痛を優先的にもたらす、使用。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、met−エンケファリンの鼻腔内投与後のラットモデルにおける耳又は後足に対する侵害的熱刺激後の回避潜時を証明するデータを示す。パネルAは、ベースライン、及び耳に対する熱的刺激後の処理された回避潜時を示す。パネルBは、ベースライン、及び後足に対する熱的刺激後の処理された回避潜時を示す。ベースライン回避潜時を測定した後、ラットに10nmol/kgのmet−エンケファリンを鼻腔内投与し、回避潜時を再試験した。各バーは、セット開始後の特定の時間における刺激に対する、4匹の動物の離脱の平均を表わす。従って、各グラフにおける最初の白いバーはベースライン試験装置の開始における反応を表わし、最初の黒いバーは、met−エンケファリン投与の約5分後における反応を表わす。それぞれの連続するバーは、前のバーの約15分後における反応を表わす。
【図2】図2は、ラットモデルにおける顔面に対する侵害的レーザーパルスに対する反応における三叉神経インパルスにおけるオキシトシンの鼻腔内投与の効果を示す。処理の前及び処理後の顔に対する侵害的レーザーパルス後の平均的神経インパルスを証明するデータが示される。
【図3A】図3は、三叉神経尾状核ワイドダイナミックレンジニューロンの電気的刺激誘導性反応におけるオキシトシンの鼻腔内投与の効果を示す。図3Aは、オキシトシン投与の前後のラット顔面の反復的刺激に対する反応を示す。
【図3B】図3は、三叉神経尾状核ワイドダイナミックレンジニューロンの電気的刺激誘導性反応におけるオキシトシンの鼻腔内投与の効果を示す。図3Bは、電気的刺激をラット顔面に投与した近似部位(黒い点)を示す。
【図3C】図3は、三叉神経尾状核ワイドダイナミックレンジニューロンの電気的刺激誘導性反応におけるオキシトシンの鼻腔内投与の効果を示す。図3Cは、オキシトシン投与前の電気的刺激時に記録した生データを示す。
【図3D】図3は、三叉神経尾状核ワイドダイナミックレンジニューロンの電気的刺激誘導性反応におけるオキシトシンの鼻腔内投与の効果を示す。図3Dは、オキシトシンの鼻腔内投与30分後の電気的刺激時に記録した生データを示す。
【図4】図4は、三叉神経尾状核ワイドダイナミックレンジニューロンの長パルスレーザー誘導性反応におけるオクトレオチドの鼻腔内投与の効果を示す。図4Aは、オクトレオチドの投与前のベースライン反応を示す。図4Bは、オクトレオチドの投与5分後の反応を示す。図4Cは、オクトレオチド投与10分後の反応を示す。図4Dは、オクトレオチド投与25分後の反応を示す。図4Eは、電気的刺激をラット顔面に投与した近似部位を示す(黒い点)。
【図5】図5は、電気的刺激誘導性ウィンドアップにおけるオクトレオチドの鼻腔内投与の効果を示す。図5Aは、電気的刺激をラット顔面に投与した近似部位を示す(黒い点)。図5Bは、オクトレオチドの鼻腔内投与の前(黒四角)、及び10分後(白三角)の反応を示す。図5C及び5Dは、オクトレオチド投与前の1回目及び15回目の刺激に対する反応を示す。図5E及び5Fは、オクトレオチド投与10分後の1回目及び15回目の刺激に対する反応を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
本明細書に開示される発明は、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法である。一般的に、前記方法は、分子が神経周囲経路に沿って、三叉神経及び脳まで進み得るという発見に基づく。理論に束縛されることを望まないが、鎮痛薬は三叉神経系を標的とすることができ、薬剤の投与が、急性、慢性又は手技による顔面又は頭痛を患う個体に、鎮痛及び疼痛の寛解をもたらし得ると信じられている。更に、三叉神経系に送達される標的とされる薬物は、鎮痛薬の全身への分布を制限することができ、望ましくない、中枢神経系(CNS)への作用又は全身性副作用を減少又は消失することができると信じられている。特に、標的部位における高濃度の鎮痛薬は、個体に対する、より低い濃度の鎮痛薬の投与を可能とする。
【0028】
本明細書に開示される方法は、三叉神経に関連する疼痛の処置のために、個体に種々の鎮痛薬を投与することを含む。一般的に、前記方法は、顔面又は頭痛の予防又は処置のために鎮痛薬を三叉神経に投与することができる。主に局所的な鎮痛効果を標的とする鎮痛薬の投与は、局所麻酔薬と比較して知覚麻痺なしで疼痛の予防又は軽減をもたらすことができる。三叉神経は、顔面及び頭部の知覚シグナルの殆どを伝達するので、三叉神経を標的とする鎮痛薬の投与は、特に、身体のその他の部位における鎮痛効果に比べて、鎮痛効果を顔面及び頭部の領域に局在化することができる。
【0029】
標的とされた送達は、鎮痛効果を達成するために個体に投与される薬剤の量を減少することができ、多くの鎮痛薬の望ましくないCNS又は全身性副作用を減少することができる。三叉神経への鎮痛薬の更に効果的又は効率的な送達は、三叉神経に関連する疼痛を患う対象に投与される薬物の全投与量を減少することができる。三叉神経への鎮痛薬の効率的な標的とされた送達は、薬剤の全身への分布を減少させることができ、CNSへの作用又は全身性副作用は最小限に低減されるか、又は消失する。
【0030】
本発明の幾つかの態様においては、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬を該個体に投与することを含み、該投与が該三叉神経系を標的とし、顔面又は頭部領域に対して鎮痛を優先的にもたらす、方法が含まれる。例によっては、鎮痛薬が、ペプチド、特にオピオイドペプチドであってもよい。オピオイドペプチドは、エンケファリン、エンドルフィン、α−ネオエンドルフィン、ジノルフィン、エンドモルフィン、カソモルフィン、デルトルフィン、デルモルフィン、オキシトシン、及びそれらの類似体及び誘導体からなる群から選択することができる。例によっては、ペプチドが、三叉神経におけるオピオイド受容体を標的とすることができる。その他の例においては、1種以上のオピオイドペプチドを投与することができる。例によっては、鎮痛薬が、アミノ酸、ポリペプチド、アヘン剤、又は低分子量の化合物等の非ペプチドであってもよい。
【0031】
(定義)
本明細書で使用される「処置」又は「疼痛を処置する」という用語は、特に指定しない限り、対象薬剤を個体に投与し、薬剤が、対象が処置されるための症状を軽減又は予防することを意味する。三叉神経に関連する疼痛の処置は、三叉神経に関連する疼痛の軽減又は予防を意味する。
【0032】
本明細書で使用される「中枢神経系」又は「CNS」は、脳及び脊髄を含む神経系の一部を意味する。CNSは、神経系の2種の主要な区画の1つである。他方は、脳及び脊髄の外側であり、三叉神経がメンバーである脳神経を含む末梢神経系である。
【0033】
本明細書で使用される、最も厳格な感覚における鎮痛は疼痛のないことであるが、「鎮痛」は、一般的な知覚麻痺を起こすことなく、個体によって知覚される疼痛の強度の減少を意味する。
【0034】
本明細書で使用される「無痛覚剤」、「鎮痛薬」、又は「鎮痛薬」は、疼痛を軽減又は予防するあらゆる生体分子を意味する。
【0035】
本明細書で使用される「鎮痛性ペプチド」は、疼痛を軽減又は予防するペプチド分子を意味する。
本明細書で使用される「オピオイドペプチド」は、オピオイド受容体結合部分、及びオピオイド受容体と結合する能力を有するペプチドを意味する。オピオイドペプチドは、天然の内在性ペプチド、その断片、類似体又は誘導体であってもよい。オピオイドペプチドは又、非内因性ペプチド、その断片、類似体又は誘導体であってもよい。
【0036】
本明細書で使用される「類似体及び誘導体」は、ペプチド中の1個以上のアミノ酸が置換、欠失又は挿入されている天然のオピオイドペプチドに対するあらゆるペプチド類似物を意味する。本用語は又、1個以上のアミノ酸が例えば化学的修飾によって修飾されているあらゆるペプチドをも意味する。一般的に、本用語は、オピオイド受容体に結合し、オピオイド活性を示すが、所望であれば、異なる効力又は薬理学的プロフィールを有する、全てのペプチドを網羅する。
【0037】
本明細書で使用される「急性疼痛」は、一定期間持続する、特定の原因(外傷、感染、炎症等)に由来する、突然の激しい疼痛を意味する(慢性の疼痛に対立するものとして)。本明細書で使用される「慢性の疼痛」は、疼痛の原因を容易に取り除くことができない、持続する疼痛の状態を意味する。慢性の疼痛は、しばしば、長期間不治又は難治の医学的状態又は疾患と関連する。本明細書で使用される「手技による疼痛」は、医学、歯科、又は外科的手技に由来して発生し、手技が、通常は急性の外傷に関連して計画される、疼痛を意味する。
【0038】
本明細書で使用される「全身性副作用」には、末梢血管拡張、末梢抵抗の低下、及び圧受容体の阻害を含む心血管系の副作用;そう痒症(かゆみ)、顔面紅潮及び眼の充血を含む皮膚の副作用;吐き気及び嘔吐、胃の運動性の減少、胆汁、膵臓及び腸の分泌物の減少、小腸における食物消化の遅延、便秘、胃部不快感又は胆管における胆石仙痛に寄与する大腸における蠕動の減少を含む胃腸感系の副作用;呼吸数の減少を含む呼吸系の副作用;尿意逼迫、及び排尿困難を含む泌尿器の副作用及び末梢四肢重感が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用される「中枢神経系への作用」又は「CNSへの作用」には、麻酔、眠気、無気力、精神病性表象、精神的混乱、情緒の変動、体温低下、リラックスした気持ち、不安(不安、うつ又は心配により特徴付けられる感情の状態)、吐き気及び嘔吐(髄質内の化学受容体の直接刺激によって引き起こされる)が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用される「粘膜投与」又は「経粘膜的に投与」は、鼻、鼻通路、鼻腔の粘膜表面;歯肉(歯ぐき)、口腔底、頬、唇、下、歯を含む口腔の粘膜表面;結膜、涙腺、鼻涙管、を含む眼又はその周囲の粘膜表面、上下眼瞼及び眼の粘膜の表面を意味する。
【0041】
本明細書で使用される「鼻腔投与」又は「鼻腔的に投与」は、噴霧、滴下、粉末、ゲル、吸入又はその他の手段による鼻、鼻通路又は鼻腔への送達を意味する。
【0042】
鼻腔は、鼻腔内で生成される鼻甲介骨を含み、通常3つの領域に分けられる。本明細書で使用される「鼻腔の下3分の2」は、中部及び下部鼻甲介骨を生成する鼻腔の部分を意味し、三叉神経系による神経支配される鼻腔の領域である。鼻腔の上3分の1は、嗅部が位置する上鼻甲介骨である。
【0043】
本明細書で使用される「経皮投与」又は「経皮的投与」は、顔、頸部、頭皮又はそれらの組み合わせの皮膚への投与を意味する。
【0044】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」又は「適切な担体」は、薬剤の保存、投与、及び/又は治癒効果を促進するために当該技術分野において通常使用される担体を意味する。
【0045】
本明細書で使用される「治療有効投与量」、「治療有効量」又は「有効量」は、疼痛の処置に有用な鎮痛薬の量を意味する。
【0046】
本明細書で使用される「視覚アナログ尺度(VAS)」は、疼痛評価において通常使用される尺度を意味する。これは、各末端に、”no pain(疼痛なし)”及び”pain as bad as it could be(想像できる最悪な疼痛)”等のワードアンカーを有する10cmの水平又は垂直の線である。対象又は患者は、疼痛の強度を表現するために線に印を付けるように求められる。この印は、”no pain”アンカーからのcm又はmmの何れかの距離に変換され、0〜10cm又は0〜100mmに分類することのできる疼痛スコアが得られる。VASは、0が”no pain”で10が”pain as bad as it could be”である疼痛の11ポイントの数的標的尺度を意味する。
【0047】
特に指示がない限り、”a”、”an”及び”the”の単数形は、複数形を包含することに留意しなければならない。更に、本明細書で使用される「含む」という用語及びその同族語は、包括的な意味で使用され、即ち、「包含する」及びその関連同族語と同等である。
【0048】
(鎮痛薬)
多くの異なるクラスの分子が、疼痛の処置のために三叉神経系を標的とする投与に潜在的に有用である。特定の分子的及び生物学的特性は、ある治療薬、及び経皮的及び/又は経粘膜投与による標的送達のための良好な候補を、全身投与のために特に魅力のないものとする。1つの特性は、幾つかの全身的に適用される分子の良好でない生物学的利用能、及び選択される標的、即ち三叉神経系に到達する能力の欠如である。第二の特性は、全身循環におけるある分子の短い半減期、及び所望の標的、即ち三叉神経系における結果として生じる生物学的利用能の欠如である。短い半減期は一般的に、酵素による分子の急速な分解、急速な摂取、及び腎臓及び/又は肝臓における代謝回転、又は肺による排泄による。経皮的及び/又は経粘膜的投与による標的送達は、これらの問題の幾つかを回避することができる。しかし、標的送達はこれらの特性を有する分子に限定されず、むしろ、これらの特性は、三叉神経系への標的送達を可能にし、他の投与経路(例えば、全身)による化合物の有用性を制限する。
【0049】
オピオイドは、中程度から重症の疼痛の処置のために通常使用される鎮痛薬のクラスの1つである。これらの化合物には、植物由来及び合成アルカロイドの両方が含まれ、哺乳動物及び下等動物に見られる内因性ペプチドが含まれる。オピオイド性鎮痛薬の具体例には、コデイン、アヘン、オキシドコン、ロペラミド、メペリジン(Demoerol)、ジフェノキシレート、プロポキシフェン(Darvon)、フェンタニル、4−メチルフェンタニル、ヒドロコドン、モルヒネ、ジアセチルモルヒネ、ジヒドロコデイン、ヒドロモルホン(Dilaudid)、メサドン、レボルファノール、(Levo−Dromoran)、デキストロメトルファン、オキシモルホン(Numorphan)、ヘロイン、レミフェンタニル、ブトルファノール(Torbugesic)、フェナゾシン、ペンタゾシン、ピミノジン、アニレリジン、ブプレノルフィン(Suboxone)、スフェンタニル、カルフェンタニル、アルフェンタニル及び非定型鎮痛薬、トラマドール及びタペンタドールが含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
天然の内因性オピオイドペプチドは、一般的に「エンドルフィン」(内因性モルヒネ)と呼ばれ、β−エンドルフィン、エンドモルフィン、エンケファリン、ジノルフィン、デルトルフィン、カソモルフィン、デルモルフィン及びオキシトシンが含まれる。
【0051】
鎮痛活性は、中枢神経系、及び身体の全体にわたる末梢神経細胞内に見出されるオピエート受容体によって媒介される。オピオイドペプチドは、麻酔性オピオイド薬物と同じオピエート受容体と結合する。内因性オピオイドペプチド及び麻酔性モルヒネ様鎮痛薬の両方は、有害な、即ち有痛性の刺激に対して感受性の求心性神経からの神経伝達物質の中心的遊離を変化することができる。受容体との結合の後、オピオイド薬物又はペプチドは、種々の生化学的及び生理学的続発(sequence)を開始又は遮断するように作用することができる。
【0052】
幾つかの主要なオピオイド受容体の分類、mu(μ)、カッパ(κ)、デルタ(δ)及びエプシロン(ε)が知られている。一般的に、muの受容体は、鎮痛、幸福感、呼吸及び身体機能の低下、縮瞳、胃腸の運動性の低下、δ受容体が媒介する鎮痛、不安、精神異常及び呼吸硬化及びκ−受容体が媒介する鎮痛、鎮静、縮瞳、呼吸抑制及び不安を媒介する。CNS及び末梢神経系の全体にわたって神経のオピエート受容体が特異的に分布している。特に、mu及びδオピオイド受容体は、三叉神経内の侵害受容器において見られるが、鼻腔内の嗅覚神経線維には見られない。オピオイド受容体の特異的な分布は、三叉神経内の受容体に対するオピオイドペプチドの標的化投与を可能にし、嗅覚神経及び脳への送達を最小限にする。
【0053】
本明細書に開示される方法に使用されるペプチドは、天然又は合成の治療的又は予防的に活性なペプチド断片、ペプチド類似体、及び活性ペプチドの化学的修飾誘導体又は塩であってもよい。種々のペプチド類似体及び誘導体が利用可能であり、他のものが本発明において使用されることができ、既知の方法に従って製造し、生物学的活性を試験することができる。本発明において使用されるペプチドは、自然の又は天然のペプチド配列内におけるアミノ酸の部分置換、添加又は欠失により得られるペプチドであり得る。ペプチドは、例えば、カルボキシル末端のアミド化(−NH)、ペプチド中でのDアミノ酸の使用、低分子の非ペプチド部分の導入、及びアミノ酸自身の修飾(例えば、側鎖のR−基のアルキル化又はエステル化)等により化学的に修飾することができる。このような類似体、誘導体及び断片は、元のペプチドの所望の生物学的活性を実質的に保持するか増強されるべきである。
【0054】
本明細書に開示され、及び/又は意図される全てのペプチドは、当該技術分野において通常知られている、自動化又は手動の固相合成技術を使用して化学的合成により製造することができる。ペプチドは、当該技術分野において既知の技術を使用して、組換えにより調製することもできる。
【0055】
表1にペプチドの一覧が含まれるが、当業者はこの一覧が完全でないことを知っており、当業者は、更なるペプチド、類似体及び誘導体を意図し、製造することができる。エンケファリンは哺乳動物の脳から単離され、5位に存在するアミノ酸においてのみ異なる2種のペンタペプチドの混合物であると思われる。2種のペンタペプチドは、メチオニンエンケファリン(met−enk又はmet−エンケファリンとしても知られる)及びロイシンエンケファリン(leu−enk又はleu−エンケファリンとしても知られる)である。met−エンケファリンは、Tyr−Gly−Gly−Phe−Metのアミノ酸配列を有し、leu−エンケファリンは、Tyr−Gly−Gly−Phe−Leuのアミノ酸配列を有し、Tyr、Met及びLeu残基は全てL−アミノ酸である。チロシン部分は活性のために重要であり、モルヒネ分子の3−ヒドロキシル基に相当する。プロエンケファリンAは、met−エンケファリン、leu−エンケファリン、及びある種の他の大きなペプチドの前駆体である。プロエンケファリンAの構造は、ヘプタペプチド(met−enk−Arg−Phe)及びオクタペプチド(met−enk−Arg−Gly−Leu)と一緒に、4コピーのmet−エンケファリン及び1コピーのleu−エンケファリンを含む。N−末端にmet−エンケファリンを含む一連のペプチドは、オピオイド活性をも有し、ペプチドF及びペプチドEを含む。ペプチドFは、各末端に2個のmet−エンケファリン配列を含むが、ペプチドEは、N−末端にmet−エンケファリンを、C−末端にleu−エンケファリンを含む。
【0056】
天然のエンケファリンに加え、例えば、異なるタイプのオピエート受容体に特異的である誘導体及び類似体等の、エンケファリン類似体及び誘導体が当該技術分野で既知である(Hruby and Gehrig(1989)Medicinal Research Reviews 9:343−401)。更に、エンケファリンペプチドは、特定のアミノ酸の置換及び/又は修飾により修飾することができ、このような修飾が加水分解の速度、プロテアーゼによるエンケファリンの分解速度を減少させることが当該技術分野で既知である。
【0057】
β−エンドルフィンは、大きい前駆体、プロ−オピオ−メラノコルチンから形成される31個のアミノ酸からなるペプチドである。β−エンドルフィンは、エンケファリンペプチドに対して共通であるテトラペプチド配列(Tyr−Gly−Gly−Phe)を含み、このテトラペプチド配列は、これらのペプチドの機能に必須であると思われる。α−エンドルフィンは、前駆体プロ−オピオメラノコルチンから形成される16個のアミノ酸からなるペプチドである。
【0058】
ジノルフィンは、中枢神経系において多形で存在する、他のクラスの内因性オピオイドである。ジノルフィンは前駆体プロジノルフィン(プロエンケファリンB)に由来する。ジノルフィンA1−17としても知られるジノルフィンは、配列Tyr−Gly−Gly−Phe−Leu−Arg−Arg−Ile−Arg−Pro−Lys−Leu−Lys−Trp−Asp−Asn−Glnを有する周知のオピオイドペプチドである。ジノルフィンA1−8等の小さいペプチド及び3個のleu−エンケファリンは、プロエンケファリンBにも含まれ、脳下垂体の神経葉中に豊富に含まれる。ジノルフィンA1−13は、線条体黒質経路中に見出され、線条体におけるドーパミン作用を制御するフィードバックメカニズムを提供する。
【0059】
エンドモルフィンはテトラペプチドをアミド化し、他の内因性オピオイドペプチドとは構造的に無関係である。2種のペプチド、エンドモルフィン−1及びエンドモルフィン−2が哺乳動物の脳から単離された。両方のペプチドは熱刺激、機械的刺激及び炎症及び神経障害性の疼痛に対する鎮痛を含む、類似の特性を有する(Zadina, et al. (1997) Nature 386:499−502;Hackler, et al. (1997) Peptides 18:1635−1639)。
【0060】
カソモルフィンペプチドは、カゼインに由来する、新規のオピオイドペプチドである。β−カソモルフィンは、食用タンパク質のタンパク質分解の破壊から得られる、広範に研究されているオピオイドペプチドである。β−カソモルフィンペプチド、Tyr−Pro−Phe−Pro−Gly−Pro−Ileは、元々ウシβ−カゼインから単離され、ヒツジ及び野牛のβ−カゼインから後に得られたペプチドと同じ配列であることが確認された。ヒトβ−カソモルフィンが同定され(Tyr−Pro−Phe−Val−Glu−Pro−Ile)、ウシの配列とは2個のアミノ酸配列が異なる。β−カソモルフィン1−3、β−カソモルフィン1−4、β−カソモルフィン1−5、及びβカソモルフィン1−8を含めたその他の幾つかのカソモルフィンペプチドが単離されている。
【0061】
デルモルフィンは、元々Phylomedusa sauvageiカエルの皮膚から単離された、7個のアミノ酸からなるペプチドである。それは、muオピオイド受容体に高親和性で結合し、鎮痛、内分泌調節、免疫調節、K+伝導性の上昇、活動電位の阻害を含む、多くの生物学的役割を有するリガンドである。
【0062】
オキシトシンは、脳下垂体後葉から遊離し、分娩時に子宮の平滑筋の収縮を促進し、育児の際に胸からの乳の遊離を促進する、9個のアミノ酸からなる環状ペプチドホルモンである。研究は、オキシトシンが侵害受容作用においても重要な役割を果たし得ることを示した。mu受容体及びオキシトシン受容体は、オキシトシンにより結合する有力な受容体であり、それらは両方ともオキシトシンの生理学的効果に関与していると思われる(Wang, et al. (2003) Regul. Pept., 115:153−159;Zubrzycka, et al. (2005) Brain Res. 1035:67−72)。
【0063】
従って、本発明の幾つかの態様において、鎮痛薬は、leu−エンケファリン、met−エンケファリン、met−enk−Arg−Phe、met−enk−Arg−Gly−Leu、ペプチドE、ペプチドF、β−エンドルフィン、α−エンドルフィン、ジノルフィンA1−17、ジノルフィンB、β−ネオエンドルフィン、α−ネオエンドルフィン、ジノルフィンA1−8、ジノルフィンA1−13、エンドモルフィン−1、エンドモルフィン−2、β−カソモルフィン、β−カソモルフィン1−3、β−カソモルフィン1−4、β−カソモルフィン1−5、β−カソモルフィン1−8、デルモルフィン、デルトルフィンI、デルトルフィンII、デルメンケファリン、モルフィセプチン、オキシトシン及びそれらの類似体及び誘導体からなる群から選択されるオピオイドペプチドであり得る。例によっては、1種以上のペプチドが投与される。その他の実施例においては、オピオイドペプチドは第二の薬剤と組み合わせて投与される。例によっては、オピオイドペプチドが、1種以上の追加の薬剤と組み合わせて投与される。
【0064】
【表1−1】

【0065】
【表1−2】

その他の鎮痛薬又は潜在性鎮痛薬には、オピオイド、アミノ酸、非オピオイドペプチド、ポリペプチド、非ペプチド性化合物及び低分子量化合物が含まれる。それらの薬剤は、オピエート受容体、非オピエート受容体及び/又はイオンチャンネルと相互作用することにより鎮痛効果を有する。それらの薬剤には、ペプチド作動性チャンネルモジュレーター、ペプチド作動性酵素阻害剤、鎮痛性酵素、栄養素、ペプチド作動性受容体アゴニスト、ペプチド作動性受容体アンタゴニスト、アミノ酸受容体アゴニスト、N−メチル−D−アスパラギン酸塩受容体遮断薬、ニコチン作動薬、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、ステロイド性抗炎症剤、イオンチャンネル遮断薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、前駆体発痛抗原に対する抗体及びその他の神経ペプチドに対する抗体が含まれるが、これらに限定されない。チャンネルモジュレーターには、ω−コノトキシンMVIIA等のカタツムリ毒及びそれらの誘導体、サキシトキシン及びテトロドトキシンが含まれる。酵素阻害剤には、サイクロスポリンA、ベスタチン、ベスタチン類似体Z4212(N−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−(4−3.メチルスルホニル−フェニル)−l−オキソブチル]−1−アミノシクロペンタンカルボキシル)及びベスタチン類似体Z1796((2S)−N−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−(4−メチルスルホニル−フェニル)−l−オキソブチル]−L−ロイシン)が含まれる。鎮痛性酵素には、エンドセリン−1ペプチダーゼが含まれる。栄養素には、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)及び脳由来神経栄養因子(BDNF)が含まれる。ペプチド作動性受容体アゴニストには、ソマトスタチン及びその合成類似体オクトレオチド、ノシスタチン、ガラニン及び神経ペプチドYが含まれる。ペプチド受容体アンタゴニストには、カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体アンタゴニストCGRP(8−37)、Tyr−(D)Phe−Gly−(D)Trp−NMeNle−Asp−Phe−NH又はPD134308等のコレシストキニン(CCK)受容体アンタゴニスト、スパンチドII((D)− NicLysl,3−Pal3,D−C12Phe5,Asn6,D−Trp7.9,NIe11−サブスタンスP)等のニューロキニン−1受容体(サブスタンスP受容体)アンタゴニスト、(Ac−Try1,D−Phe2)−GRF−(l−29)(ここで、GRFは成長ホルモン放出因子である)等の血管作用性小腸ペプチド(VIP)受容体アンタゴニスト、及びRWJ−57408等のガラニン受容体アンタゴニストが含まれる。アミノ酸受容体アゴニストには、γ−アミノ酪酸(GABA)及びグリシンが含まれる。N−メチル−D−アスパラギン酸塩(NMDA)受容体遮断薬には、ケタミン及びデキストロメトルファンが含まれる。疼痛を軽減する抗発作薬には、ガバペンチン、ラモトリギン、チアガビン、トピラメート、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、クロナゼパム、バルプロ酸及びフェニトインが含まれる。ニコチン作動薬にはニコチン及びエピバチジンが含まれる。典型的及び異型の非ステロイド性抗炎症剤には、アスピリン、アセトアミノフェン、サリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸コリン、セレコキシブ、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ミソプロストールを含むジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトロラック、ケトプロフェン、サリチル酸マグネシウム、メクロフェナメイトナトリウム、メフェナム酸塩、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、サルサレート、サリチル酸ナトリウム、スリンダク、トルメチンナトリウム、バルデコキシブが含まれる。ステロイド性抗炎症剤には、プレドニゾン及びデキサメタゾンが含まれる。イオンチャンネル遮断薬には、TrpVl、TrpV2、Navl.3、Navl.7、Navl.8、Navl.9及びASICs(酸検出イオンチャンネル)、及びジコノチド等のP、Q、及びN型カルシウムチャンネル、メキシレチン、リドカイン、コカイン、メピバカイン、プリロカイン、ブピバカイン及びエイドカイン等の非特異的ナトリウムチャンネル遮断薬が含まれる。抗うつ薬には、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、デシプラミン、パロキセチン、シタロプラム、ベンラファキシン、クロミプラミン、及びブプロピオンが含まれる。前駆体発痛抗原に対する抗体には、エンドセリン、神経成長因子、血管作用性小腸ペプチド(VIP)及び脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)が含まれる。その他の神経ペプチドに対する抗体には、CGRP、CCK、サブスタンスP及びガラニンが含まれる。その他の化合物には、SNC80、DPI−125、クロニジン、デクスメデトミジン、カルシトニン、バクロフェン、d−サイクロセリン、エルゴタミン、セロトニンアゴニスト及び5HT薬物が含まれるが、これらに限定されない。当業者は、この一覧が完全でないことを知っており、鎮痛性能を有する、追加のペプチド、ポリペプチド、非ペプチド性化合物、低分子量化合物、それらの類似体及び誘導体を意図し、製造することができると思われる。
【0066】
従って、本発明の幾つかの態様においては、鎮痛薬は、アミノ酸、非オピオイドペプチド、ポリペプチド、非ペプチド性化合物、又は低分子化合物である。例によっては、2種の薬剤が組み合わせて投与される。その他の実施例においては、2種以上の薬剤が組み合わせて投与される。薬剤は、同時に投与されても、又は異なる時間に投与されてもよい。
【0067】
(投与)
三叉神経系と関連する慢性、急性又は手技による疼痛は、多くの症候群および疾患において経験され、これらとしては、三叉神経痛、非定型顔面痛、有痛性感覚脱失、ヘルペス後神経痛、頭頸部癌、偏頭痛、他のタイプの頭痛、側頭下顎関節疼痛、顔面及び/又は頭部に対する傷害、歯の傷害又は感染、通常の歯科治療、美容整形等の顔面手術が含まれるが、これらに限定されない。鎮痛薬は三叉神経系を標的とすることができ、この方向付けられた投与は、急性、慢性又は手技による顔面又は頭部の疼痛を患う個体のための鎮痛及び疼痛の軽減をもたらすことができると思われる。
【0068】
三叉神経(第五の脳神経又はCNV)は、12個の脳神経の中で最も大きく、頭部、特に顔に対して重要な一般的な知覚神経、咀嚼の筋肉に対する運動神経である。三叉神経は、哺乳動物(例えば、ヒト)の、顔面及び頭皮の皮膚、口腔組織及び眼の組織及び周囲を含む頭部の組織を神経支配する。三叉神経は、3つの主要な分枝及び区域、即ち眼、上顎、及び下顎区域を有する。従って、本発明の幾つかの態様には、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬を該個体に投与することを含み、該鎮痛薬の投与が、眼、上顎及び下顎を含めた三叉神経の3個の主要な区域の1つ以上を標的とする、方法が含まれる。
【0069】
眼の区域は三叉神経の上の区域であり、3つの区域の中で一番小さく、全体的に感覚に関する。眼神経は、額、上眼瞼及び鼻の皮膚への感覚の供給に関与する鼻毛様体神経、前頭神経、涙腺神経として知られる3つの区域を有する。鼻毛様体神経は、更に前篩骨神経及び滑車下神経に分けられ、前頭神経は、滑車上神経及び眼窩上神経に分けられる。滑車上神経は額の中央部分を供給し、眼窩上神経は外側部及び頭皮の前部分を供給する。涙腺神経は、涙腺、及び上眼瞼の側面部を供給する。従って、幾つかの態様においては、本発明の方法は、鼻毛様体神経、前頭神経、涙腺神経、前篩骨神経、滑車下神経、滑車上神経及び眼窩上神経を含む眼の神経由来の1種以上の神経区域に鎮痛薬を投与することを必要とする。
【0070】
上顎区域は、三叉神経の中間の区域である。上顎区域は、3種の皮膚区域:即ち、感覚の供給に関与する眼窩下神経:頬骨を超えて顔の皮膚を供給する頬骨顔面神経;及び側頭部を超えて皮膚を供給する頬骨側頭神経に分けられる。従って、幾つかの態様においては、本発明の方法は、眼窩下、頬骨頬骨顔面及び頬骨側頭神経を含む上顎神経由来の1種以上の神経区域への鎮痛薬の投与を含む。
【0071】
下顎区域は三叉神経の下部区域である。下顎区域は、3種の感覚区域を有し、頬神経は頬筋を超えて頬の皮膚を供給する。それは、頬の内側を覆う粘膜及び歯肉(歯ぐき)の頬側面の後の部分をも供給する。耳介側頭神経は、耳介の一部、外耳道、鼓膜(鼓膜)及び側頭領域内の皮膚を供給する。下歯槽神経は、更に切歯神経及びオトガイ神経に分けられる。切歯神経は、切歯、隣接する歯肉及び下唇の粘膜を供給し、オトガイ神経は、顎の皮膚、下唇の皮膚及び粘膜及び歯肉を供給する。舌神経は、舌の前の部分3分の2への一般的な知覚線維、口腔底、及び下顎歯の歯肉を供給する。従って、幾つかの態様においては、本発明の方法は、頬、耳介側頭、下歯槽、切歯、オトガイ及び舌神経を含む下顎神経由来の1種以上の神経区域への鎮痛薬の投与を含む。
【0072】
従って、本発明の幾つかの態様には、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬を該個体に、口腔内、眼内又は周囲、又は皮膚の粘膜組織又は上皮細胞へ投与することを含む、方法が含まれる。前記方法には、鎮痛薬が、三叉神経区域、例えば下顎区域に神経支配される粘膜組織を標的とする、口腔組織への薬剤の投与が含まれる。口腔粘膜組織には、歯肉(歯ぐき)、口腔底、頬、唇、舌、歯又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。前記方法は、結膜又は眼の周囲の他の粘膜組織への薬剤の投与を含み、鎮痛薬は、三叉神経区域、例えば、眼又は上顎区域に神経支配される粘膜組織又は上皮組織を標的とする。前記組織又は上皮細胞には、結膜、涙腺、鼻涙管、上眼瞼及び下眼瞼の粘膜、眼、又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。結膜に投与されるが、結膜粘膜を通して完全に吸収されない薬剤は、鼻涙管を通って鼻中に排出され、鼻腔内の三叉神経に神経支配される粘膜組織によって吸収され得る。本発明には、鎮痛薬が三叉神経区域の1種に神経支配される組織を標的とする、顔面又は頭部の皮膚に薬剤を投与することが含まれる。薬物は、顔の皮膚、頭皮又は側頭区域に投与することができる。適切な顔の皮膚には、顎、上唇、下唇、額、鼻、頬の皮膚、眼の周囲の皮膚、上眼瞼、下眼瞼、又はそれらの組み合わせが含まれる。適切な頭皮の皮膚には、頭皮の前部、側頭区域の上の頭皮、頭皮の側面部分、又はそれらの組み合わせが含まれる。適切な側頭区域の皮膚には、側頭区域の側頭及び頭皮、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0073】
鼻腔内で、三叉神経は主に鼻粘膜の下3分の2を神経支配しているが、嗅神経は、鼻粘膜の上3分の1を神経支配している。三叉神経中に、接触、温度、固有感覚(位置感覚)及び疼痛を含む、頭蓋顔面の体性感覚情報を許容する主要な求心性体性感覚神経線維がある。疼痛(痛覚)に関与するものは、「侵害受容器」と命名される。対照的に、嗅覚及びフェロモンの検出の感覚があてられる嗅覚神経には、侵害受容器又はその他の体性感覚の主要な求心神経がない。鼻毛様体神経の区画である、前篩骨神経は、他の組織の中で、篩骨洞及び鼻中隔の前側の部分及び鼻腔の側壁を含む鼻粘膜の下3分の2の領域を神経支配する。上顎の区画は、鼻口蓋神経、大口蓋神経、後上歯槽神経、中上歯槽神経、前上歯槽神経を含む鼻腔及び血脈等を神経支配する幾つかの区画を有する。上顎洞は、後上歯槽神経、中上歯槽神経、前上歯槽神経に神経支配されている。鼻中隔の粘膜は、鼻口蓋神経によって供給され、鼻腔の側壁は大口蓋神経によって供給される。
【0074】
従って、本発明の幾つかの態様には、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬を該個体の鼻腔内の粘膜組織に投与することを含む、方法が含まれる。例によっては、前記方法が、鼻腔の下3分の2への鎮痛薬の投与が含まれ、前記鎮痛薬が、三叉神経によって神経支配される粘膜組織を標的とし、嗅神経から離れている。例によっては、前記方法が、鼻腔の下3分の2への投与が含まれ、鎮痛薬は、三叉神経内のオピオイド受容体と選択的に結合する。例によっては、前記方法が、鼻腔の下3分の2への鎮痛薬の投与をも含み、前記鎮痛薬は、三叉神経内の非オピオイド受容体と選択的に結合する。従って、本発明の幾つかの態様において、本方法は、鼻口蓋、大口蓋、後上歯槽神経、中上歯槽神経、前上歯槽神経を含む鼻腔を神経支配する上顎区画から分枝した1種以上の神経への鎮痛薬の投与を含む。
【0075】
鼻腔内薬物送達は、長年にわたり研究開発のテーマとなってきたが、物質の効果を送達する搬送システムが工夫されてきたのは、ここ10年程にすぎない(Sayani and Chien (1996) Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 13:85−184)。
【0076】
鎮痛薬の鼻腔内送達は、比較的高い生物学的利用能、吸収の急速な動力学、及び肝臓の初回通過効果の回避を含む、多くの有利な特徴を有する。患者の服薬率及び使いやすさに関しては、鼻腔内投与は、簡便、急速及び非侵襲性の作用機序の応用である。特に、三叉神経に関連する疼痛を処置又は予防するために、鼻腔内送達は鼻腔及び三叉神経系への鎮痛薬の標的化送達を可能にする。更に、三叉神経系、好ましくは嗅覚領域でない、標的化送達は、CNS又は全身循環に入る薬物の量を減少することができ、それによってCNSへの作用及び全身性副作用を軽減又は消失することができる。三叉神経系への標的化送達は、顔面及び頭部領域における鎮痛を達成するのに必要な有効投与量を減少することができ、より低い有効投与量は、CNS又は全身性副作用を更に減少するであろう。
【0077】
従って、本発明の幾つかの態様には、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鼻腔的に投与することにより、鎮痛薬を該個体に投与することを含み、該投与が該三叉神経系を標的とし、特に身体のその他の部位における鎮痛効果に比べて、顔面及び頭部領域に優先的に鎮痛をもたらす、方法が含まれる。前記方法は、嗅神経への送達を最小限にして三叉神経系への送達を促進するために、個体の鼻腔、特に鼻腔の下3分の2に鎮痛薬を投与することができる。
【0078】
口腔内において、頬又は舌下による送達経路は、それらが使いやすく非侵襲的であるので、薬物送達のために便利な選択である。幾つかの利点には、i)他の経路の比較し、口腔内においてタンパク質分解酵素活性が低く、それ故ペプチド及びタンパク質薬物の酵素的分解の問題を回避できる、ii)肝臓の初回通過効果を回避できることが含まれる。特に、頬又は舌下送達は、三叉神経に関連する疼痛を処置又は予防するために、口腔粘膜及び口腔粘膜を神経支配する三叉神経区画への鎮痛薬の標的化送達を可能にする。三叉神経区画への標的化送達は、顔面又は頭部領域における鎮痛を達成するのに必要な有効量を減少することができ、より低い有効投与量は、CNSへの作用又は全身性副作用を更に減少するであろう。
【0079】
従って、本発明の幾つかの態様には、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、頬又は舌下投与により鎮痛薬を該個体に投与することを含み、該投与が三叉神経区画を標的とし、顔面及び頭部領域への選択的な鎮痛をもたらす、方法が含まれる。前記方法は、全身への分布を最小限にし、三叉神経への送達を促進する個体の口腔への鎮痛薬の投与を含む。
【0080】
眼の周囲の粘膜組織、又は結膜への薬物送達は、非侵襲性である別の好都合な薬物送達オプションである。特に、眼瞼、結膜又は涙器系細胞の粘膜又は上皮細胞への投与は、三叉神経が関連する疼痛を処置又は予防するために三叉神経区画により神経支配される粘膜及び組織への鎮痛薬の標的化送達を可能にする。三叉神経区画への標的化送達は、顔面又は頭部領域における鎮痛を達成するのに必要な有効量を減少することができ、より低い有効投与量は、CNSへの作用又は全身性副作用を更に減少するであろう。
【0081】
従って、本発明の幾つかの態様には、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、結膜又は眼の周囲の他の粘膜組織に鎮痛薬の有効量を該個体に投与することを含み、該投与が三叉神経区画を標的とし、顔面及び頭部領域への選択的な鎮痛をもたらす、方法が含まれる。
【0082】
皮膚に対する、治療薬の経皮的薬物送達又は投与は、過去20年間にわたる技術によって証明された。経皮的薬物送達は患者に対する薬物の制御された放出をもたらし、経皮パッチは使いやすく、便利であり、疼痛がなく、患者の服薬率の向上を通常もたらす複数日投与をもたらす。経皮送達による皮膚への投与は、顔面又は頭部領域における三叉神経が関連する疼痛を処置するために、三叉神経区画の何れか1種又はそれらの組み合わせにより神経支配される皮膚への鎮痛薬の標的化送達を可能にする。
【0083】
従って、本発明の幾つかの態様には、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、顔面、頭部の皮膚又は頭皮に鎮痛薬の有効量を該個体に投与することを含み、該投与が三叉神経区画を標的とし、顔面又は頭部領域への選択的な鎮痛をもたらす、方法が含まれる。例によっては、鎮痛薬が、特定の三叉神経区画への送達を促進するために、顔又は頭皮の特定の部位に鎮痛薬が投与される。
【0084】
本発明の幾つかの態様においては、鎮痛薬の全身への分布を減少させるために血管収縮剤が使用される。血管収縮剤は、鎮痛薬の全身への分布を減少させるために、薬学的組成物中に含まれ得る。又、血管収縮剤は、薬学的組成物から、粘膜又は上皮細胞に別々に送達され得る。血管収縮剤は、血管及び毛細血管を狭窄し、血流を減少する化合物である。それらは、鎮痛薬の血流への移動を阻害し、それにより薬剤の全身への分布を減少させることによって、所望の部位で薬剤濃度を増加させるために使用することができる。血管収縮剤は、鎮痛薬の全身への分布を限定し、三叉神経内で薬剤を濃縮することにより鎮痛を達成するための必要な薬剤の有効投与量を低下させるために使用することができる。血管収縮剤は、鎮痛薬の投与前に投与することができ、又は鎮痛薬と同時に投与することができる。血管収縮剤には、塩酸フェニレフリン、塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸トラマゾリン、エンドセリン−1、エンドセリン−2、エピネフリン、ノルエピネフリン及びアンギオテンシンが含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
本発明の幾つかの態様において、本方法は、鎮痛薬の口腔投与前の、個体の口腔への血管収縮剤の投与を含み、血管収縮剤の投与は、鎮痛薬の全身への分布を減少し、それにより、CNSへの作用又は全身性副作用を最小限にする。その他の実施例において、本方法は、個体の口腔への血管収縮剤及び鎮痛薬の投与を含む。血管収縮剤は、鎮痛薬の前に、又は同時に個体の口腔へ投与してもよく、血管収縮剤の投与は、鎮痛薬の全身への分布を減少し、それによって、顔面又は頭部領域における鎮痛を達成するのに必要な鎮痛薬の有効投与量を減少する。
【0086】
本発明の幾つかの実施例において、本方法は、鎮痛薬を鼻腔に投与する前に、個体の鼻腔に血管収縮剤を投与することを伴い、該血管収縮剤の投与によって、鎮痛薬の全身への分布が減少し、それによって望ましくないCNSへの作用又は全身性副作用を最小限にする。前記方法は、血管収縮剤と鎮痛薬とを個体の鼻腔に同時に投与してもよく、血管収縮剤の投与は、鎮痛薬の全身への分布を減少し、それにより、望ましくない、CNS又は全身性副作用を最小限にする。前記方法は、血管収縮剤は、鎮痛剤投与の前に、又は同時に個体の鼻腔内に投与してよく、血管収縮剤の投与は、鎮痛剤の全身への分布を減少させ、それによって顔面又は頭部領域における鎮痛を達成するのに必要な鎮痛剤の有効量を減少させる。
【0087】
(薬学的組成物)
鎮痛薬を単独で投与することが可能であるが、薬学的組成物の一部として存在することが有利である場合がある。従って、本発明の幾つかの態様においては、鎮痛薬は薬学的組成物として投与される。薬学的組成物は、1種以上の薬学的に許容される担体及びその他の任意の成分と共に鎮痛薬を治療有効量含む。適切な担体は、耐えられない副作用を引き起こさないが、鎮痛薬が身体においてその薬理学的活性を維持することを可能にするものである。担体は、薬剤の望ましくない副作用を軽減することもできる。適切な担体は安定、即ち、製剤中で他の成分と反応する能力がない。適切な担体は、最小の臭い又は香りを有するか、好ましい(心地よい)香りを有するべきである。適切な担体は、粘膜、上皮細胞、基礎的な神経を刺激せず、健康上のリスクをもたらすべきでない。皮膚の角質層に効率的に浸透することのできる担体は、粘膜に浸透するのみでなく、粘膜下組織、髄鞘及び神経内への薬剤の急速な吸収を可能にするのに極めて効果的でなければならないため、許容される経皮的又は経皮吸収の担体又は媒体であってもよい。
【0088】
適切な無毒の薬学的に許容される担体は、製剤処方の分野における当業者に明らかであろう。又、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Lippincott,Williams & Wilkins (2000)を参照されたい。通常の薬学的に許容される担体には、マンニトール、尿素、デキストラン、乳糖、ジャガイモ及びトウモロコシデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物性油脂、ポリアルキレングリコール、エチルセルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、炭酸カルシウム、キトサン、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、炭酸ナトリウム、ゼラチン、炭酸カリウム、ケイ酸、及びその他の通常使用される許容される担体が含まれるが、これらに限定されない。その他の担体には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン及びスフィンゴミエリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
適切な担体の選択は、所望の特定の製剤の正確な性質、例えば、薬剤が溶液内(例えば、ドロップ剤として、スプレー又は鼻タンポンに染みこませて、又はその他の薬剤含浸固体としての使用)、懸濁液、軟膏又はゲルで製造されるかどうかににより異なるであろう。所望であれば、持続放出性組成物、例えば、持続放出性ゲル、経皮パッチ等が容易に調製することができる。特定の製剤は、投与経路によっても異なる。薬剤は、粉末、顆粒、溶液、フィルム、クリーム、スプレー、ゲル、軟膏、輸液、ドロップ又は持続放出性組成物として鼻腔に投与することができる。頬からの投与のために、組成物は、通常の様式において製剤化される錠剤又は薬用キャンディーの形態をとることができる。舌下投与のために、組成物は、舌に塗布又は舌に入れる生体接着剤、スプレー、塗布剤又は綿棒の形態をとることができる。結膜又は眼の周囲の他の粘膜組織への投与のために、組成物は軟膏、溶液又はドロップとして適用することができる。皮膚への投与のために、組成物は、局所軟膏、局所ゲル、クリーム、ローション、溶液、スプレー、塗布剤、フィルム、ホイル、化粧品、パッチ又は生体接着剤として適用することができる。
【0090】
液状担体には、水、食塩水、水性デキストロース、及び特に溶液用グリコール(等張の場合)が含まれるが、これらに限定されない。担体は又、石油、動物油、植物油脂又は合成起源の油を含む種々の油(例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ごま油等)から選択することもできる。適切な薬学的賦形剤には、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、粉乳、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリセロール、水、エタノール等が含まれるが、これらに限定されない。組成物は、滅菌等の通常の薬学的賦形剤に曝すことができ、保存剤、安定剤、還元剤、酸化防止剤、キレート剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、ゲル化剤、浸透圧を調節するための塩、緩衝剤等の通常の薬学的添加剤を含むことができる。担体が液状である場合、担体は体液より低浸透圧又は等張であり、4.5〜8.5の範囲のpHを有することが好ましい。担体が粉末形態である場合、担体は許容される無毒のpH範囲内であることが好ましい。ペプチド及び/又はタンパク質をベースとする組成物、特に薬学的組成物の調製における添加剤の使用は当該技術分野で既知である。
【0091】
これらの担体及び添加剤の一覧は決して完全でなく、当業者は、医薬品製剤において許容されており、局所的及び非経口製剤において一般的に許容されている、GRAS(安全であると広く考えられている)化学物質の一覧からの賦形剤を選択することができる(Wang, et al. (1980) J. Parent. Drug Assn., 34:452−462;Wang, et al. (1988) J. Parent. Sci and Tech., 42:S4−S26を参照)。
【0092】
投与のための組成物の他の形態には、エマルジョン、リポソーム等の粒子の懸濁液、又は薬学的活性物質の個体内における存在を延長するための持続放出性形態が含まれる。薬学的組成物の粉末又は顆粒剤形態は、溶液、及び希釈剤、分散剤又は界面活性剤と組み合わせてもよい。投与のための更なる組成物には、投与部位に薬剤を維持するための、例えば、粘膜又は上皮細胞への塗布のためのスプレー、塗布剤、又は綿棒の形態の生体接着剤が含まれる。生体接着剤は、天然又は合成の親水性ポリマーを意味し、親水性の意味によって水溶性であるか膨潤性での何れかであり得、薬学的組成物と相溶性がある。このような接着剤料は、口腔又は鼻腔の粘膜組織へ製剤を接着させるように機能する。このような接着剤料には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ガーゴム、ポリビニルピロリドン、ペクチン、デンプン、ゼラチン、カゼイン、アクリル酸ポリマー、アクリル酸エステルのポリマー、アクリル酸コポリマー、ビニルポリマー、ビニルコポリマー、ビニルアルコールのポリマー、アルコキシポリマー、ポリエチレンオキシドポリマー、ポリエーテル、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。組成物は、投与前に溶液、懸濁液又はエマルジョンに変化し得る凍結乾燥粉末の形態であってもよい。薬学的組成物は、膜ろ過により滅菌することが好ましく、密封したガラス瓶又はアンプル等の単一投与又は複数回投与容器中に保存される。
【0093】
薬学的組成物は、処置される個体内における活性成分の存在を延長するために、持続放出性形態で製剤化することができる。多くの持続放出性製剤の製造方法が当該技術分野で既知であり、Remington’s Pharmaceutical Sciences(前記)に開示されている。一般的に、薬剤を固体の疎水性ポリマーの半浸透性基質中に含ませることができる。基質は、フィルム又はマイクロカプセルに形成することができる。基質には、ポリエステル、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸とのコポリマー、ポリ乳酸塩、ポリ酢酸塩、ポリクリコール酸塩、ヒドロゲル、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、ヒアルロン酸ゲル、及びアルギン酸懸濁液が含まれるが、これらに限定されない。適切なマイクロカプセルには、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン及びポリ−メチルメタクリレートが含まれる。リポソーム及びアルブミン小球体等のマイクロエマルジョン又はコロイド性薬物送達システムも使用することができる。幾つかの持続放出性組成物は、投与部位において薬剤を維持するために生体接着剤を使用することができる。
【0094】
鎮痛薬を含む薬学的組成物の粘膜送達を更に向上させるために、酵素阻害剤、特にプロテアーゼ阻害剤を製剤に含ませることができる。プロテアーゼ阻害剤には、アンチパイン、アルファメニンA及びB、ベンザミジンHCl、AEBSF、CA−074、カルパイン阻害剤I及びII、カルペプチン、ペプスタチンA、アクチノニン、アマスタチン、ベスタチン、ボロロイシン、カプトプリル、クロロアセチル−HOLeu−Ala−Gly−NH、DAPT、ジプロチンA及びB、エベラクトンA及びB、フォロキシミチン、ロイペプチン、ペプスタチンA、ホスホラミドン、アプロチニン、ピューロマイシン、BBI、大豆トリプシン阻害剤、フッ化フェニルメチルスルホニル、E−64、キモスタチン、1,10−フェナントロリン、EDTA及びEGTAが含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
粘膜表面の中及び全域への送達及び/又は鎮痛剤を含む薬学的組成物の吸収を向上させるために、吸収促進剤を製剤に含ませることができる。これらの吸収促進剤は、組成物の放出又は溶解度(例えば、製剤送達媒体からの)、拡散速度、浸透能力及び時間、摂取、残留時間、安定性、有効半減期、ピーク又は持続濃度レベル、クリアランス及びその他の所望の粘膜送達特性(例えば、送達部位における測定のような)を向上することができる。従って、粘膜送達の向上は、種々のあらゆるメカニズム、例えば、鎮痛薬の拡散、輸送、残留性又は安定性の向上、膜流動性の向上、細胞内又は傍細胞浸透性を調節するカルシウム及びその他のイオンの有効性又は作用の調節、粘膜膜成分(例えば、脂質)の可溶化、粘膜組織における非タンパク及びタンパク性スルフヒドリルレベルの変化、粘膜表面の全域にわたる水分流動性の向上、上皮性結節部生理機能(epithelial junctional physiology)の修飾、粘膜上皮細胞上に横たわる粘液の粘度の減少、粘膜洗浄クリアランス率の減少、及びその他のメカニズムによって起こり得る。
【0096】
粘膜吸収を増強する化合物には、界面活性剤、胆汁酸塩、ジヒドロフシジン酸塩、生体接着剤、リン脂質添加剤、混合ミセル、リポソーム、又は担体、アルコール、エナミン、カチオン性ポリマー、NOドナー化合物、長鎖両親媒性分子、低分子疎水性浸透促進剤;サリチル酸ナトリウム又は誘導体、アセト酢酸のグリセロールエステル、シクロデキストリン又はβ−シクロデキストリン誘導体、中鎖脂肪酸、キレート剤、アミノ酸又はその塩、N−アセチルアミノ酸又はその塩、粘液溶解剤、選択した膜成分を特異的に標的とする酵素、脂肪酸生合成阻害剤及びコレステロール生合成阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0097】
これらの追加の薬剤及び化合物は、鎮痛薬と同時に投与されるか、又は組み合わせて製剤化することができる。従って、本発明の幾つかの態様には、プロテアーゼ阻害剤、吸収促進剤、血管収縮剤又はそれらの組み合わせを含む薬学的組成物として、鎮痛薬が投与される方法が含まれる。薬学的組成物は、鼻腔、口腔、結膜又は眼の周囲の他の粘膜組織又は皮膚に投与することができる。薬学的組成物は、鼻腔投与によって投与することができる。薬学的組成物は、頬又は舌下経路により投与することができる。薬学的組成物は経皮経路により投与することができる。薬学的組成物には、少なくとも1種のプロテアーゼ阻害剤、少なくとも1種の吸収促進剤、少なくとも1種の血管収縮剤又はそれらの組み合わせが含まれてもよい。薬学的組成物は血管収縮剤と同時に投与することができ、又は血管収縮剤が送達された後に投与することができる。
【0098】
(送達システム)
鎮痛薬、又は鎮痛薬を含む薬学的組成物は、急速溶解錠剤、液体充填カプセル、液体スプレー又は薬用ドロップを含むが、これらに限定されない多くの異なる製剤又は投与形態において頬又は舌下表面に投薬することができる。又、薬学的組成物は、例えば、ゲル、軟膏、ドロッパー又は生体接着細片又はパッチと共に口の中に直接配置することにより、口腔の粘膜に送達することができる。
【0099】
本発明の幾つかの態様においては、前記方法は、口腔の頬及び/又は舌下粘膜表面への投与が送達デバイスによる、個体への薬学的組成物の投与を含む。送達デバイスには、単位投与容器、ポンプスプレー、ドロッパー、スクイズボトル、エアレス及び保存剤のないスプレー、ネブライザー、定量吸入器及び加圧投与吸入器が含まれるが、これらに限定されない。送達デバイスは、正確な有効投与量(後述するような)を口腔に投与するために測定され得る。幾つかの態様においては、正確な有効投与量が、口腔内に直接配置されるカプセル、錠剤、薬用ドロップ、又は生体接着パッチ中に含まれる。
【0100】
鎮痛薬又は薬学的組成物は、液状ドロップ、ゲル、軟膏又は生体接着パッチ又は細片等の多くの異なる製剤内で、結膜又は眼の周囲の他の粘膜組織に投与することができる。従って、本発明の幾つかの態様においては、前記方法は、投与が結膜又は眼の周囲の他の粘膜組織へ直接的である、個体への薬学的組成物の投与を含む。幾つかの態様においては、有効投与量は、眼の周囲の粘膜組織に直接配置されるドロップ、ゲル、軟膏又は生体接着パッチ中に含まれる。
【0101】
鎮痛薬又は薬学的組成物は、液剤、スプレー、ゲル、軟膏又は生体接着パッチ又は細片等の多くの異なる製剤内で、皮膚又は頭皮に投与することができる。従って、本発明の幾つかの態様においては、前記方法は、投与が顔面又は頭皮の皮膚へ直接的である、個体への薬学的組成物の投与を含む。幾つかの態様においては、正確な有効投与量は、皮膚に直接配置されるドロップ、ゲル、軟膏又は生体接着パッチ中に含まれる。
【0102】
鎮痛薬又は薬学的組成物は、粉末又は液状鼻腔スプレー、懸濁液、点鼻薬、ゲル又は軟膏として鼻腔投与、管又はカテーテルを通して注射器により、パックテイルにより、綿球(小さい平らな吸収パッド)により、鼻タンポン又は粘膜下輸液により投与され得る。鼻腔薬物送達は、単位投与容器、ポンプスプレー、ドロッパー、スクイズボトル、エアレス及び保存剤のないスプレー、ネブライザー(液状薬剤をエアゾール微粒子形態に変換するために使用されるデバイス)、測定投与量吸入器、及び加圧測定投与吸入器が含まれるがこれらに限定されないデバイスを使用して実施することができる。送達デバイスは、薬剤を汚染及び化学的分解から保護することが重要である。デバイスは、浸出及び吸収を回避すると共に、適切な保存環境を提供するべきである。それぞれの薬剤は、どの鼻腔薬物送達システムが最も適切であるかを決定するために評価される必要がある。鼻腔送達システムは当該技術分野で既知であり、幾つかは市販されている。
【0103】
組成物は、加圧されたパック、又はネブライザー、及びジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、炭化水素、圧縮空気、窒素又は二酸化炭素等が含まれるが、これらに限定されない適切な噴霧剤を使用して、エアゾールスプレーの形態で都合よく送達することができる。エアゾールシステムは、薬学的組成物に対して不活性な噴霧剤を必要とする。圧縮されたエアゾールの場合、投与単位は、測定量を正確に送達するためのバルブを供給することによって制御することができる。
【0104】
鎮痛薬を、粉末として鼻腔に送達する手段は、鼻腔的吸入デバイス(ガス、粉末又は蒸気を身体の空洞に吹き込むデバイス)又は圧縮エアゾール容器により送達されるミクロスフェア等の形態であってもよい。吸入デバイスは、乾燥粉末又はミクロスフェアの微粉化した濁りを生成する。吸入デバイスは、薬学的組成物の十分に測定した量の投与を確実にするためのデバイスを提供する。粉末又はミクロスフェアは、乾燥した、空気不要な形態で投与されるべきである。粉末又はミクロスフェアは、粉末又はミクロスフェアのための瓶又は容器を提供する吸入デバイスを使用して直接的に使用することができる。又、粉末又はミクロスフェアは、ゼラチンカプセル等のカプセル、又は鼻腔投与に適合する他の単一投与デバイス中に充填することができる。吸入デバイスは、粉末状の組成物の噴流が鼻腔に送達されるための穴を提供するために、カプセル又はその他のデバイスを壊して開けるための針等の手段を有することができる。
【0105】
鼻腔送達デバイスは、組成物が、主に鼻腔の下3分の2に送達される薬学的組成物を投与するために構築され、又は修飾され得る。例えば、ネブライザー又は吸入器等の送達デバイスからの分散の角度は、薬学的組成物が鼻腔の下3分の2に機械的に向き、好ましくは鼻腔の上領域から離れるようにセットされる。又、薬学的組成物は、例えばゲル、軟膏、鼻タンポン、ドロッパー又は生体接着細片を使用して、鼻腔内に組成物を直接配置することにより、鼻腔の下3分の2に送達することができる。
【0106】
従って、本発明の幾つかの態様においては、前記方法は、鼻への投与が鼻腔送達デバイスによる、個体への薬学的組成物の投与を含む。鼻腔送達デバイスには、単位投与容器、ポンプスプレー、ドロッパー、スクイズボトル、エアレス及び保存剤のないスプレー、ネブライザー、定量吸入器、加圧投与吸入器、吸入器、及び双方向デバイスが含まれるが、これらに限定されない。鼻送達デバイスは、鼻腔への正確な有効投与量(後述するような)を投与するために測定され得る。鼻腔送達デバイスは、単回送達又は複数回送達であってもよい。本発明の幾つかの態様においては、鼻腔送達デバイスは、薬学的組成物の投与の角度が、鼻腔の下3分の2に機械的に向き、その結果、嗅覚領域への送達が最小限にするように構築することができる。鼻腔送達デバイスは、薬学的組成物の投与の角度が、鼻腔の下3分の2に機械的に向き、その結果、三叉神経内のオピオイド受容体への薬剤送達が最大になるように構築することができる。本発明の幾つかの態様においては、薬学的組成物は、ゲル、クリーム、軟膏、鼻タンポン内での含浸、又は生体接着細片であり、それにより、組成物が鼻腔の下3分の2に位置する。本発明の幾つかの態様においては、前記方法は、投与が、薬剤が鼻腔の下3分の2に機械的に向く角度を有する鼻腔投与デバイスを使用し、鎮痛薬が血管収縮剤の後に投与される鎮痛薬の鼻腔投与を含む。本発明の幾つかの態様においては、前記方法は、投与が、薬剤が鼻腔の下3分の2に機械的に向く角度を有する鼻腔投与デバイスを使用し、鎮痛薬が血管収縮剤と同時に投与される鎮痛薬の鼻腔投与を含む。
【0107】
(投与量)
鎮痛薬は、三叉神経に関連する疼痛を患う個体の顔面又は頭部領域に対して鎮痛がもたらす治療有効量を三叉神経系に提供するのに十分な量で投与される。特に、鎮痛薬は、最小のCNSへの作用又は全身性副作用を有し、顔面又は頭部領域に対する鎮痛をもたらす濃度で投与することができる。鎮痛薬は、身体のその他の部位における鎮痛効果に比べて、主に顔面又は頭部領域で鎮痛がもたらされる濃度で投与することができる。鎮痛薬の治療有効量は、経験的に、及び鎮痛薬、疼痛のタイプ及び重症度、投与経路、疾患の進行状態、及び患者の大きさ/体重及び全般的な健康状態に依存して決定することができる。特に、CNSへの作用又は全身性副作用が最小で局所的な鎮痛をもたらす鎮痛薬の治療有効量は、経験的に、及び前記パラメータに依存して決定することができる。
【0108】
単一用量として投与される鎮痛薬の量は、投与される薬学的組成物のタイプ、例えば、溶液、懸濁剤、ゲル、エマルジョン、粉末又は持続放出性製剤等により異なる。標的送達が、三叉神経における鎮痛薬のより濃縮されたレベルを可能にするので、一般的に有効投与量は、鎮痛薬の経口、静脈、筋肉又は皮下投与に必要な用量よりも少ない。有効投与量は、例えばモルヒネ等の他の一般的なオピオイド鎮痛薬について一般的に使用される投与量よりも少ない。所望の用量量を送達するのに必要な投与量は、組成物中の鎮痛薬の濃度により異なる。それらの決定は、当業者の技術範囲内に含まれる。
【0109】
本発明の方法において使用される薬学的組成物における鎮痛薬の治療用量は、選択された特定の鎮痛薬、選択された投与経路による生物学的利用能、その効果、及び製剤の所望の単回投与量と組み合わせた投与の所望の投与回数等の多くの因子等により異なる。特に、鎮痛薬の投与量は、顔面及び頭部領域に対する鎮痛効果を最大にし、CNSへの作用又は全身性副作用を最小限にするように選択される。このような薬理学的データは動物モデル及び正常なヒトの志願者、又は三叉神経に関連する疼痛を患った患者の臨床試験から、当業者が得ることができる。
【0110】
薬剤の鎮痛活性を試験するための実験モデルは、当該技術分野で既知である。動物モデルには、疼痛受容器の活性が酢酸、フェニルキノン、ホルマリン又はカプサイシン等の化合物により、又はホットプレート又はレーザー等の熱活性因子により誘導される、酢酸ライジング、フェニルキノンライジング、テールフリック、手足離脱(paw withdrawal)及び耳又は顔離脱(ear or face withdrawal)が含
まれるが、これらに限定されない。特に、カプサイシンの口腔顔面送達、ホルマリンの口腔顔面送達、又は顔又は耳の疼痛等の三叉神経が支配する組織への熱の送達等の試験に使用される、顔面又は頭部の疼痛のためのモデルが利用可能である。モデルは、三叉神経へ送達される鎮痛薬が全身部位、即ち手足における鎮痛が最小で、顔面又は頭部領域における鎮痛効果をもたらす最適な投与量範囲を決定するために使用することができる。更に、モデルは、特定の送達経路、例えば、鼻腔内により鎮痛薬を投与し、耳及び後ろ足における鎮痛効果を試験することができる。従って、1つのモデルは、薬学的組成物を三叉神経に投与した後の鎮痛薬の鎮痛活性を試験するために使用することができる。耳又は顔における離脱の潜在性は、局所的な鎮痛を検出し、後ろ足における離脱の潜在性は、全身への分布及び鎮痛を検出するであろう。
【0111】
前述の通り、鎮痛薬の有効量は、前記方法に使用される鎮痛薬により異なる。好ましくは、三叉神経に経粘膜的又は経皮的に投与される鎮痛薬の有効量は、薬剤がその他の経路(例えば、経口、静脈注射、筋肉内又は皮下注射)により送達される場合に使用される投与量よりも少ない。エンケファリンペプチドの投与に使用される投与量には、約0.01ng/体重kg〜約50μg/体重1g、又は0.1ng/体重kg〜約50μg/体重kg、又は1ng/体重kg〜約50μg/体重kg、又は約10ng/体重kg〜約50μg/体重kg、又は約0.1μg/体重kg〜50μg/体重kg、又は約1μg/体重kg〜約50μg/体重kgの範囲内の有効量が含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
エンドルフィンペプチドの投与に使用される投与量には、約0.4μg/体重kg〜約4mg/体重kg、又は4μg/体重kg〜約400μg/体重kg、又は4μg/体重kg〜約200μg/体重kg、又は10μg/体重kg〜約100μg/体重kgの範囲内の有効量が含まれるが、これらに限定されない。
【0113】
エンドモルフィンペプチドの投与に使用される投与量には、約0.15nmol/体重kg〜約1.5μmol/体重kg、又は1.5nmol/体重kg〜約150nmol/体重kg、又は1nmol/体重kg〜約100nmol/体重kg、又は1nmol/体重kg〜約50nmol/体重kgの範囲内の有効量が含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
ジノルフィンペプチドの鼻腔内投与に使用される投与量には、約10nmol/体重kg〜約100μmol/体重kg、又は100nmol/体重kg〜約50μmol/体重kg、又は250nmol/体重kg〜約25μmol/体重kg又は0.5μmol/体重kg〜約5μmol/体重kgの範囲内の有効量が含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
オキシトシンペプチドの投与に使用される投与量には、約0.1IU〜約150IU、又は1IU〜約100IU、又は10IU〜約80IU、又は約25IU〜約50IU、又は約1IU〜約40IU、又は約1IU〜約30IU、又は約4IU〜約16IU、又は約4IU〜約24IUの範囲内の有効量が含まれるが、これらに限定されない。
【0116】
オクトレオチドの投与に使用される投与量には、約0.1mg〜約200mg、又は0.1mg〜約100mg、又は0.5mg〜約100mg、又は約0.5mg〜約75mg、又は約1mg〜約50mg、又は約1mg〜約25mg、又は約1mg〜約20mg、又は約1mg〜約10mgの範囲内の有効量が含まれるが、これらに限定されない。
【0117】
投与量は、単回用量又は複数回用量で投与することができ、例えば、投与量は、鎮痛薬、及び処置する疼痛の種類によって、1日に2、3、4、10回以下で投与することができる。投与量は、鎮痛薬の投与回数を少なく、例えば週6回、週5回、週4回、週3回、週2回、又は週1回にすることができる持続放出性製剤で投与することができる。
【0118】
従って、本発明の幾つかの態様は、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬の有効量を該個体に投与することを含み、該投与が該三叉神経系を標的とし、CNSへの作用又は全身性副作用を最小限にし、顔面又は頭部領域に対して鎮痛を優先的にもたらす、方法を含む。鎮痛薬は、投与量範囲が約0.01ng/体重kg〜約50μg/体重kg、0.1ng/体重kg〜約50μg/体重kg、又は1ng/体重kg〜約50μg/体重kg、又は約10ng/体重kg〜約50μg/体重kg、又は約0.1μg/体重kg〜約50μg/体重kg、又は約1μg/体重kg〜約50μg/体重kgである、エンケファリンであってもよい。鎮痛薬は、投与量範囲が、約0.4μg/体重kg〜約4mg/体重kg、又は4μg/体重kg〜約400μg/体重kg、又は4μg/体重kg〜約200μg/体重kg、又は10μg/体重kg〜約100μg/体重kgである、エンドルフィンであってもよい。鎮痛薬は、投与量範囲が、約0.1IU〜約150IU、又は1IU〜約100IU、又は10IU〜約80IU、又は約25IU〜約50IU、又は約1IU〜約40IU、又は約1IU〜30IU、又は約4IU〜約16IU、又は約4IU〜約24IUである、オキシトシンであってもよい。
【0119】
鎮痛薬の治療効果を決定するために、「視覚アナログ尺度(VAS)」が、疼痛の減少又は軽減を評価するために使用される場合がある。VASは、各末端に、”no pain”及び”pain as bad as it could be”等のワードアンカーを有する10cmの水平又は垂直の線である。対象又は患者は、疼痛の強度を表現するために線に印を付けるように求められる。この印は、”no pain”アンカーからのcm又はmmの何れかの距離に変換され、0〜10cm又は0〜100mmに分類することのできる疼痛スコアが得られる。VASは、0が”no pain”で、10が”pain as bad as it could be”である疼痛の11ポイントの数的標的尺度として設定される。VASを使用して、約30%以上の変化、例えば、9〜7又は5〜3.5への変化がある場合、薬剤が鎮痛効果を有すると考えられる。
【0120】
(治療上の用途)
顔面及び頭部領域における慢性疼痛は、神経障害性の疼痛、頭痛、TMJ、癌及び/又は癌の処置による疼痛を含むが、これらに限定されない種々の病状から発生し得る。これらの疼痛症候群は、しばしば現在の医薬又は侵襲性の介入では効果的に処置できず、顔面及び頭部領域における局所的な鎮痛を可能にする新規の方法が必要である。従って、本発明の幾つかの態様は、鎮痛薬の投与によって、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、該投与が該三叉神経系を標的とし、特に身体のその他の部位における鎮痛効果に比べて、顔面又は頭部領域に対して鎮痛を優先的にもたらす、方法を含む。三叉神経痛、異型顔面神経痛及びヘルペス後神経痛を含むが、これらに限定されない神経障害の疼痛を患う患者に鎮痛薬を投与することができる。例えば、偏頭痛又は群発性頭痛等の頭痛を患う個体に鎮痛薬を投与することができる。頭部又は顔面癌により生じる、又は頭部又は顔面癌の前処置から派生する慢性疼痛を患う個体に鎮痛薬を投与することができる。
【0121】
局所麻酔は、手技が短時間持続し、作業が歯、顔面又は頭部から離れている、殆どの医学、歯科又は美容の手技において使用される。麻酔は一般的に、感覚、特に、触感の全身的又は部分的喪失として定義され、通常、麻酔薬化合物の使用によって誘導される。投与の疼痛に加え、局所麻酔の他の主要な不都合は、感覚の喪失が、しばしば手技よりも著しく長く持続する知覚麻痺をもたらすことである。従って、医学、歯科又は美容の手技を受ける患者が、歯、顔面又は頭部領域の短時間の局所的な鎮痛から利益を受ける状況がある。ある手技は、他の鎮痛薬又はあらゆる血管収縮剤を潜在的に必要とせず、知覚麻痺のない状態での麻酔の時間の長さは、麻酔によってもたらされる顔面麻痺の必要以上の時間の長さより重要でない。このような、医学、歯科及び美容の手技には、微小の皮膚剥離、ボトックス注射、光線力学療法、又はその他の皮膚腫瘍の切除、脱毛(電気分解、レーザー、脱毛等を含む)、一般の顔面レーザー処置(色素除去、血管病変を含む)、皮膚及び皮下への注入可能な充填材(コラーゲン、ヒアルロン酸、メチルメタクリレート、ヒドロキシアパタイト等を含む)、化学的又はレーザー適用によるフェイシャルピール、フォトフェイシャル、コラーゲン収縮手技(高周波、HIFU、高輝度光、レーザー等)、通常の歯科的手技、入れ墨、入れ墨の除去、ピアスの穴開け、及びステロイド注射による瘢痕、ケロイド等の処置が含まれるが、これらに限定されない。
【0122】
従って、本発明の幾つかの態様は、医学、歯科又は美容の手技により生じる、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬を投与することを含み、該投与が該三叉神経系を標的とし、顔面又は頭部領域に対して鎮痛を優先的にもたらす、方法を含む。前記方法は、医学、歯科及び美容からなる群から選択される手技を受けた個体に、鎮痛薬を投与することを含む。前記方法には、微小の皮膚剥離、ボトックス注射、光線力学療法、又はその他の皮膚腫瘍の切除、脱毛(電気分解、レーザー、脱毛等を含む)、一般の顔面レーザー処置(色素除去、血管病変を含む)、皮膚及び皮下への注入可能な充填材(コラーゲン、ヒアルロン酸、メチルメタクリレート、ヒドロキシアパタイト等を含む)、化学的又はレーザー適用によるフェイシャルピール、フォトフェイシャル、コラーゲン収縮手技(高周波、HIFU、高輝度光、レーザー等)、歯科的手技、入れ墨、入れ墨の除去、ピアスの穴開け、及びステロイドの注射による瘢痕、ケロイド等の処置からなる群から選択される、医学、歯科又は美容の手技が含まれる。鎮痛薬は、鎮痛効果が手技の期間にわたり持続する手技を受けた患者に投与することができる。鎮痛薬は、手技及び鎮痛に必要な時間が30分未満、45分未満、50分未満又は90分未満である手技を受ける患者に投与することができる。鎮痛薬は、手技及び鎮痛に必要な時間が90分を超える手技を受ける患者に投与することができる。
【0123】
更に広範であり、長時間を要する医学、歯科又は美容の手技では、患者の眠気を誘うために、通常局所麻酔薬が鎮痛薬と併用される。場合によっては、手技に依存し、患者は全身麻酔下に置かれる。局所又は全身麻酔薬の使用は、手術後の疼痛を効果的に和らげることはなく、殆どの場合は手技の完了後に鎮痛薬が患者に送達される。
【0124】
手術の疼痛管理における概念の進化は、先手を取る鎮痛薬の使用である。手術によってもたらされる疼痛及び炎症は、通常、プロスタグランジンの産生及び感覚を増強する。手術前に鎮痛薬を投与する場合、感覚の量は、減少又は抑制され、手術後の疼痛の程度及び持続性は減少する場合がある。従って、医学、歯科又は美容の手技を受ける患者は、手術前、手術中及び手術後に、局所的な三叉神経又は顔面の鎮痛の利益を享受する。幾つかの手術は、通常、例えば、美容整形手術前の血管収縮剤の使用により、切開部位における出血が減少する利益を受ける。従って、顔面の鎮痛に由来する利益の1つのレベルは血管収縮剤の注射と関連する疼痛の除去であり、鎮痛に必要な時間は10分未満である。手術開始前に顔面の鎮痛が開始する場合、利益の他のレベルは、手術の全体にわたって持続し、手術後も継続し、手術後数時間又は数日にわたり継続する。歯科手技の例には、歯周部の手術、再建術、口蓋の手術、抜糸、根管手術等の主要な歯科の手術が含まれるが、これらに限定されない。美容又は医学手術の例には、美容整形、眼瞼形成術、睫毛挙上、鼻形成術、チークインプラント、顎インプラント、脂肪注入、病変除去、切採生検、モース手術(皮膚癌のための顕微鏡手術)、歯肉再構築、顎矯正(顎の変形の矯正)、眼及び眼形成(眼の整形手術)、植毛手術、広範なレーザーリサーフェシング、裂傷の修復、鼻骨骨折の修復、顔面骨骨折の修復等の外傷、火傷による壊死組織切除及び傷口の洗浄が含まれるが、これらに限定されない。
【0125】
従って、本発明の幾つかの態様は、医学、歯科又は美容の手技により生じる、個体の三叉神経に関連する疼痛を処置する方法であって、鎮痛薬を投与することを含み、該投与が該三叉神経系を標的とし、顔面、頭部又は歯の局所的な鎮痛をもたらす、方法を含む。前記方法は、手術の期間、局所的な鎮痛が持続し、手術後に継続する有効投与量を含み得る。前記方法には、歯周部の手術、再建術、口蓋の手術、抜糸、根管手術、美容整形、眼瞼形成術、睫毛挙上、鼻形成術、チークインプラント、顎インプラント、脂肪注入、病変除去、切採生検、モース手術、歯肉再構築、顎矯正、眼の手術、眼の形成術、植毛手術、広範なレーザーリサーフェシング、裂傷の修復、鼻骨骨折の修復、顔面骨骨折の修復等の外傷、火傷による壊死組織切除及び傷口の洗浄からなる群から選択される、医学、歯科又は美容の手技が含まれる。鎮痛薬は、顔面又は頭部への血管収縮剤の注射の前に、医学的手技を受ける患者に投与することができる。鎮痛薬は、医学的手技を受ける患者に投与することができ、鎮痛が手技の期間を超えて持続し、手術後も継続する。鎮痛薬は、鎮痛が医学的手技の終了後1時間〜数日持続する医学的手技を受ける患者に投与することができる。
【0126】
(キット)
本明細書に記載の方法の何れかを実施するのに使用するキットが、本明細書で示される。キットは、三叉神経に関連する疼痛の処置に使用するために提供される。本発明のキットは、好適な容器に少なくとも1種の鎮痛薬を含む。キットは更に、血管収縮剤、少なくとも1種のプロテアーゼ阻害剤及び/又は少なくとも1種の吸収促進剤を含んでもよい。キットは更に、鼻腔内投与のためのデバイスを含むがこれに限定されない送達デバイスを含んでもよい。キットは更に、本明細書に記載の方法を実施するための情報を使用者及び/又は医療従事者に提供するための取扱説明書を含んでもよい。
【0127】
単一成分を含むキットは、一般的に容器(例えば、瓶、アンプル、又はその他の適切な保存容器)に含まれる成分を有する。同様に、1種以上の成分を含むキットは、容器内に追加の試薬を含んでいてもよい(別個又は混合)。
【0128】
キットの使用に関する取扱説明書は一般的に、キットの成分が、本発明の方法を実施するためにどのように使用されるかを記載している。本発明のキットに供給される取扱説明書は、通常、ラベル又は添付文書上の取扱説明書(例えば、キット内に同梱される紙のシート)に記載されるが、機械読み取り可能な形式の取扱説明書(例えば、磁気又は光学記憶ディスクに保存される取扱説明書)も許容される。
【実施例】
【0129】
(実施例1)
ラットのモデルにおける鎮痛薬の活性を試験するための1つの方法は、通常、耳、顔又は後足を使用して、皮膚の侵害的加熱に対する反応における離脱症状の待ち時間(時間)における、処置が誘導する変化による。従って、耳、顔又は後足に対する干渉性又は非干渉性(非レーザー)放射熱の適用は、急速な離脱行動を誘発する。鎮痛が、離脱症状の待ち時間を増大させるように、離脱の待ち時間は、鎮痛薬処理に対して感受性であることを証明した。三叉神経に関連する疼痛を軽減するための三叉神経に対する鎮痛薬の経粘膜又は経皮投与は、局所的及び/又は全身的鎮痛について試験することができる。ラットの耳の頭側の外側部分は、下顎神経の分枝、三叉神経の分枝自身によって神経支配されており、その結果、処置後の離脱症状の待ち時間の増加は局所的な鎮痛を示す。後足の離脱症状の持ち時間の変化は、全身性の鎮痛効果があるかどうかを示し、即ち、離脱症状の待ち時間に変化がないことは全身性効果がないことを示すが、離脱症状の待ち時間の増加は全身性効果を示す。
【0130】
ラットを、12/12時間の明/暗環境に収容し、随意に食餌及び水を与えた。不快を最小限にし、使用する動物の数の減少を最小限にする努力をした。ラットをウレタンで麻酔し、それらの体温を37℃に維持するために加温マット上に最小限に拘束して置いた。両耳の頭側の外側部分に対して、光ファイバーケーブルによりレーザービームを向けた。レーザー照射に対する特徴的な反応は、レーザーによる熱刺激後に1〜3秒間刺激された耳の反応又は離脱症状である。組織の損傷を防止するために、刺激された耳の反応後、又は30秒間の最大反応(カットオフ)時間後に、レーザー刺激を急速に終了する。
【0131】
耳に対する離脱反応時間のベースライン試験のために、三叉神経に神経支配されている各耳の一部分に3パルスを適用する。同じ耳における2回の刺激時に少なくとも2分間の余裕を持たせる各パルスの後に刺激部位を変える。後足に対する潜時回避反応のベースライン試験のために、後足に3パルスを適用する。同じ後足における2回の刺激時に少なくとも2分間の余裕を持たせる各パルスの後に刺激部位を変える。反応のオフライン解析のために、試験セッションをビデオに録画する。オフライン解析は、レーザー刺激に対する潜時回避反応を決定し、処置群に関する予備知識のない研究者によって実施される。
【0132】
ベースライン時間の測定後、鎮痛薬を鼻腔内投与する。これは、合計50μLについて、20分以上かけ、ピペットにより鼻に各10μLを5回投与することを必要とする。潜時反応に対する種々の濃度の薬剤(例えば、10nmol/kgのmet−エンケファリン)の効果を調べる。局所的な鎮痛効果を評価するため、薬剤投与後の種々の時点における耳の潜時反応を試験する。全身性鎮痛効果を評価するため、薬剤投与後の種々の時点における後足の潜時反応を試験する。
【0133】
(実施例2)
Sprague−Dawleyラット(Charles River Laboratories)を、ウレタンを使用して軽く麻酔し、体温を37℃に維持するため、加温パッド上に最小限に拘束して置いた。前述の通り、両耳の頭側の外側部分、又は後足に対して、光ファイバーケーブルによりレーザービームを当てた。各刺激時の約15分間の休み時間を取り、4回の別個の刺激によりベースライン回避潜時を測定した。50μLのリン酸緩衝生理食塩水中のmet−エンケファリンを、10nmol/体重kgの投与量で、各10μLを5回、鼻腔内に投与した。met−エンケファリンの最終投与の5分後に、両耳及び後足についての回避潜時を試験した。前述の通り、試験のセッションをビデオで録画して解析した。結果は、この投与量におけるmet−エンケファリンの鼻腔内投与が、後足の全身性鎮痛効果なしで(図1B)、頭部領域において局所的な鎮痛効果(図1A)を達成することを証明した。
【0134】
(実施例3)
正常なヒトの志願者
鼻腔内送達による鎮痛薬の投与後の顔面領域における局所鎮痛は、正常な対象において試験することができる。研究の参加者は、組み入れ/除外基準、病歴、健康診断、研究室実験、及びその他の習慣的な手順に基づいて選択された。疼痛を誘起するための温度閾値及び/又は最大の疼痛耐性の温度を評価し、ベースラインを確立することができるように、熱痛反応を、顔、特に頬、及び健康な正常志願者の手に誘発する。増加した濃度の鎮痛薬を対象に投与し、用量反応曲線を各刺激部位について計算する。発症した顔面及び全身の疼痛における所望用量の鎮痛薬の効果を決定することができるように、2箇所の部位における熱痛閾値及び耐性の変化を比較することができる。
【0135】
鎮痛薬を、定量ネブライザーにより鼻腔内に対象に送達する。例えば、鼻のパフ塗布(puff application)により、0.1mLの生理食塩水中の0.01μg/kg用量のオキシトシンを対象に投与する。それぞれの鼻のパフ塗布により、0.1mLの生理食塩水のみを対照となる対象に投与する。三叉神経に投与された鎮痛薬の投与のどのような投与量が、全身分布及び末梢部位(即ち、手)における鎮痛効果が最小限であるか、又は鎮痛効果がない、顔面領域(即ち、頬)における局所的な鎮痛を達成するために効果的であるかを決定する。
【0136】
(実施例4)ヒト患者
顔の美容手術を受けた患者は、通常、手術後の著しい疼痛を経験する。手術の終了時に、定量ネブライザーにより、鼻腔内に投与される鎮痛薬で患者を処理する。患者は、0.1mLの正常な生理食塩水中の試験薬剤(例えば、0.01μg/kgのオキシトシン)の投与を受けるか、又は生理食塩水のみのプラセボの投与を受ける。次いで、患者の顔面疼痛の評価を、視覚アナログ尺度(VAS)により、10分間隔で2時間測定する。手に同様の手術を受けた第二のセットの患者は、試験薬剤又はプラセボ食塩水の鼻腔内投与を受ける。次いで、患者の手の疼痛の評価を、視覚アナログ尺度(VAS)により、10分間隔で2時間測定する。
【0137】
(実施例5)
Sprague−Dawleyラット(Charles River Laboratories)をイソフルオランで麻酔し、白金電極を三叉神経節内に経頭蓋的に挿入した。ラットの顔に対する侵害的レーザーパルスの適用に対する反応における三叉神経節内の単一の疼痛を感じる神経細胞に由来する神経インパルス(活動電位)を記録した。幾つかの同一のレーザーパルスに対する反応を記録した後、10モルのオキシトシンをラットの鼻に塗布した。その後、同一のレーザーパルスを、もう一度適用し記録した。
【0138】
図2は、オキシトシン処理の前後についてのレーザーパルスに対する平均神経インパルスを示す。オキシトシンは、動物の顔に適用された侵害的レーザーパルスに対するニューロン反応を有意に減少する(P<0.05)。これらのデータは、オキシトシンの経鼻的投与の鎮痛効果の少なくとも一部が、三叉神経におけるニューロンの直接阻害によることを示した。
【0139】
(実施例6)
オスのSprague−Dawleyラット(Charles River Laboratories)をイソフルランで麻酔し、以下の実験に使用した。麻酔したラットにおいて、定電流双極性電気刺激により同側の顔の皮膚を刺激しながら、三叉神経尾状核において、単一ユニットの細胞外記録法を実施した。エポキシレート絶縁タングステン微小電極(10MΩ)を、定位的な協調的調節下で使用した。
【0140】
図3は、オキシトシンの鼻腔内電気刺激誘導性の三叉神経尾側のワイドダイナミックレンジ(WDR)ニューロンの反応の効果を証明する。オキシトシン投与前(pre−oxytocin)にラット顔面の反復的刺激に対する反応(活動電位/刺激30回)を示す。約0.1IUのオキシトシンの投与後、反応を5分おきに65分間記録した。同じ投与量でオキシトシンの2回目の投与を、最初の投与の70分後に実施した。電気刺激を投与した近似部位は、ラット顔面の図に黒い点で示す(図3B)。図3Cは、オキシトシン投与前の電気刺激時に記録した生データを示す。図3Dはオキシトシンの鼻腔内投与後の電気刺激時に記録した生データを示す。
【0141】
オキシトシン処理は、最初の投与の10分後に開始する反応における有意な減少を引き起こし、反応が増加し始める場合、処理後50分まで持続した(図3A)。最初の処理の約70分後に、第二の用量のオキシトシンを投与した。10分以内に、第二のオキシトシン処理は、反応における有意な減少を引き起こした。これらのデータは、オキシトシンの鼻腔内投与が大きな効果(即ち、活動電位の低下)を引き起こすだけでなく、効果は短時間で再現可能であることを証明した。
【0142】
(実施例7)
オスのSprague−Dawleyラット(Charles River Laboratories)をイソフルランで麻酔し、以下の実験に使用した。麻酔したラットにおいて、ダイオードレーザー又は定電流双極性電気刺激により同側の顔の皮膚を刺激しながら、三叉神経尾状核において、単一ユニットの細胞外記録法を実施した。エポキシレート絶縁タングステン微小電極(10MΩ)を、定位的な協調的調節下で使用した。
【0143】
図4は、鼻腔内のオクトレオチドの長パルスレーザー誘導性の三叉神経尾側のワイドダイナミックレンジ(WDR)ニューロンの反応の効果を証明する。ラットの顔の図上の黒い点(図4E)により示される側に対する、8秒間持続する425mA強度のレーザー刺激に対する反応(活動電位/秒)を示す。図4Aは処理前のベースライン反応を示す(オクトレオチド投与前)。図4Bは、オクトレオチド投与(0.05mg/mLを0.025mL)の5分後における反応を示す。図4Cは、オクトレオチド投与10分後における反応を示す。図4Dは、オクトレオチド投与25分後における反応を示す。
【0144】
オクトレオチド投与5分後における反応においては、検出可能な減少はなかったが、処理10分後における反応は、42スパイクから5スパイクに減少し、88%の減少が見られた。反応は処理25分後までに回復した。これらのデータは、オクトレオチドの鼻腔内投与が、三叉神経系における疼痛伝達ニューロンの反応を減少することができることを示す。
【0145】
(実施例8)
オスのSprague−Dawleyラット(Charles River Laboratories)をイソフルランで麻酔し、以下の実験に使用した。図5は、電気刺激が誘導するウィンドアップ(windup)における鼻腔内オクトレオチドの効果を証明する。ウィンドアップは、ニューロンによるより大きな反応により進行的に誘起される一定強度の電気刺激の複数の、連続した最大上刺激による減少であり、中枢神経興奮性を試験するための良好なモデルである。針電極を、図5Aにおいてラット頭部上の黒い点で示す部位に皮下に挿入し、皮膚を0.66Hzで2秒間刺激し、3倍のC繊維は25秒を超えるしきい値とする。オクトレオチド(0.05mg/mLを0.025mL)の鼻腔内投与前(黒四角)、及び10分後(白三角)における25回の刺激に対する反応(スパイク/刺激)を示す。
【0146】
刺激時の活動電位の総数は、オクトレオチド投与前の506からオクトレオチド投与10分後の408まで減少し、19.4%減少した。図5C〜5Fは、同じ記録期間及び電気刺激時の生データ曲線を示す。図5C及び5Dは、オクトレオチド投与前の1回目及び15回目の刺激に対する反応を示し、図5E及び5Fは、オクトレオチド投与10分後の1回目及び15回目の刺激に対する反応を示す。このデータは、オクトレオチドが三叉神経尾状核において二次ニューロンの神経細胞の興奮性を修飾することができることを証明する。
【0147】
以上において、理解を明確にするために例示及び実施例を交えながら、前述の発明を幾分詳しく説明してきたが、本発明から逸脱することなく、特定の変更及び改変が行われる場合があることは、当業者に明らかである。従って、詳細な説明及び実施例は、本発明の適用範囲を限定するものとして解釈してはならない。
【0148】
本明細書で引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、全体が参考として本明細書で援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三叉神経に関連する慢性の頭部疼痛または顔面疼痛を処置する必要がある個体において三叉神経に関連する慢性の頭部疼痛または顔面疼痛を処置するための組成物であって、オキシトシンペプチドを含み、
該組成物は、鼻腔投与されることを特徴とし
該オキシトシンペプチドの投与は、該慢性の頭部疼痛または顔面疼痛の減少をもたらす、
組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記慢性の頭部疼痛または顔面疼痛は、三叉神経痛、非定型顔面痛、癌、感染、外傷、火傷、裂傷、骨折、歯痛、顎関節症(TMJ)または手術から生じる、組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物であって、前記慢性の頭部疼痛または顔面疼痛は、三叉神経痛から生じる、組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の組成物であって、前記慢性の頭部疼痛または顔面疼痛は、TMJから生じる、組成物。
【請求項5】
請求項に記載の組成物であって、前記慢性の頭部疼痛または顔面疼痛は、歯科手術、医学的な外科手術または美容手術から生じる、組成物。
【請求項6】
請求項1〜のうちのいずれか1項に記載の組成物であって、前記オキシトシンペプチドが鼻腔の下3分の2に投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項7】
薬学的処方物として投与される、請求項1〜のうちのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記薬学的処方物が、散剤、ゲル、フィルム、軟膏、液体、懸濁剤、クリーム剤もしくは生体接着剤として投与される、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
前記有効用量が、0.1IU〜150IUである、請求項1〜のうちのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記有効用量が、1IU〜100IUである、請求項1〜のうちのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記有効用量が、10IU〜80IUである、請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記有効用量が、4IU〜24IUである、請求項1〜のうちのいずれか1項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図4】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−60464(P2013−60464A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−286456(P2012−286456)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2008−528248(P2008−528248)の分割
【原出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(503115205)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (69)
【出願人】(510227470)ヘルスパートナーズ リサーチ アンド エデュケイション (2)
【出願人】(510227160)トライジェミナ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】