説明

三座配位子をもつ錯体

本発明は有機発光デバイス(OLED)、より特に、そのようなデバイスで用いられる燐光有機物質に関する。より特には、本発明は、金属中心に結合した少なくとも1つの三座配位子を含み、その三座配位子への結合の少なくとも1つが炭素-金属結合である発光性燐光物質に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2007年10月4日に出願した米国出願番号11/973,265号の一部継続出願であり、これを参照により本願に援用する。
【0002】
本発明は、有機発光デバイス(OLED)に関し、より特に、そのようなデバイスに用いられる燐光有機発光物質に関する。より特に、本発明は、金属中心に結合した少なくとも1つの三座配位子を含み、その三座配位子への結合のうち少なくとも1つが炭素-金属結合である、発光性燐光物質に関する。
【背景技術】
【0003】
有機材料を用いるオプトエレクトロニクスデバイスは、多くの理由によりますます望ましいものとなってきている。そのようなデバイスを作るために用いられる多くの材料はかなり安価であり、そのため有機オプトエレクトロニクスデバイスは、無機デバイスに対して、コスト上の優位性について潜在力をもっている。加えて、有機材料固有の特性、例えばそれらの柔軟性は、それらを柔軟な基材上への製作などの特定用途に非常に適したものにしうる。有機オプトエレクトロニクスデバイスの例には、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池、及び有機光検出器が含まれる。OLEDについては、有機材料は、従来の材料に対して性能上優位性をもちうる。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調節することができる。
【0004】
本明細書で用いるように、「有機」の用語は、有機オプトエレクトロニクスデバイスを製作するために用いることができる、ポリマー物質並びに小分子有機物質を包含する。「小分子(small molecule)」とは、ポリマーではない任意の有機物質をいい、「小分子」は、実際は非常に大きくてもよい。小分子はいくつかの状況では繰り返し単位を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、分子を「小分子」の群から排除しない。小分子は、例えばポリマー主鎖上のペンダント基として、あるいは主鎖の一部として、ポリマー中に組み込まれてもよい。小分子は、コア残基上に作り上げられた一連の化学的殻からなるデンドリマーのコア残基として働くこともできる。デンドリマーのコア残基は、蛍光性又はリン光性小分子発光体であることができる。デンドリマーは「小分子」であることができ、OLEDの分野で現在用いられている全てのデンドリマーは小分子であると考えられる。一般に、小分子は、単一の分子量をもつ明確な化学式をもつが、ポリマーは分子ごとに変わりうる化学式と分子量とを有する。
【0005】
OLEDは、そのデバイスを横切って電圧を印加した場合に光を発する薄い有機膜(有機フィルム)を用いる。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、及びバックライトなどの用途で用いるためのますます興味ある技術となってきている。いくつかのOLEDの材料と構成が、米国特許第5,844,363号明細書、同6,303,238号明細書、及び同5,707,745号明細書に記載されており、これらの明細書はその全体を参照により本願に援用する。
【0006】
OLEDデバイスは一般に(常にではないが)少なくとも1つの電極を通して光を発するように意図され、1つ以上の透明電極が、有機オプトエレクトロニクスデバイスにおいて有用でありうる。例えば、インジウムスズオキシド(ITO)などの透明電極材料は、ボトム電極として用いることができる。米国特許第5,703,436号明細書及び同5,707,745号明細書(これらはその全体を参照により援用する)に開示されているような透明なトップ電極も使用できる。ボトム電極を通してのみ光を発することが意図されたデバイスについては、トップ電極は透明である必要はなく、高い電気伝導度をもつ厚く且つ反射性の金属層からなっていてもよい。同様に、トップ電極を通してのみ光を発することが意図されたデバイスについては、ボトム電極は不透明及び/又は反射性であってよい。電極が透明である必要がない場合は、より厚い層の使用はより良い伝導度をもたらすことができ、反射性電極を用いることは透明電極に向けて光を反射し返すことによって他方の電極を通して放射される光の量を多くすることができる。完全に透明なデバイスも製作でき、この場合は両方の電極が透明である。側方発光OLEDも製作することができ、そのようなデバイスでは1つ又は両方の電極が不透明又は反射性でありうる。
【0007】
本明細書で用いるように「トップ」は、基材から最も遠くを意味する一方で、「ボトム」は基材に最も近いことを意味する。例えば、2つの電極を有するデバイスについては、ボトム電極は基材に最も電極であり、通常、作製する最初の電極である。ボトム電極は2つの表面である、基材に最も近いボトム面と、基材から最も遠いトップ面とをもつ。第一の層が第二の層の「上に配置される」と記載した場合は、第一の層は基材から、より遠くに配置される。第一の層が第二の層と「物理的に接触している」と特定されていない限り、第一の層と第二の層との間に別な層があってよい。例えば、カソードとアノードとの間に様々な有機層があったとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載できる。
【0008】
本明細書で用いるように、「溶液処理(加工)可能」とは、液体媒体中に溶解され、分散され、又は液体媒体中で輸送され、及び/又は溶液もしくは懸濁液の形態にある液体媒体から堆積されうることを意味する。
【0009】
本明細書で用いるように、かつ当業者によって一般に理解されているように、第一の「最高被占軌道」(HOMO)又は「最低空軌道」(LUMO)エネルギー準位は、第一のエネルギー準位が真空のエネルギー準位により近い場合は、第二のHOMO又はLUMOのエネルギー準位よりも大きいか又は高い。イオン化ポテンシャル(IP)は、真空準位に対して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつIP(より小さな負のIP)に相当する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつ電子親和力(EA)(より小さな負のEA)に相当する。従来のエネルギー準位ダイヤグラム上では、上端(トップ)を真空準位とし、物質のLUMOエネルギー準位は、同じ物質のHOMOエネルギー準位よりも上である。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりも、そのようなダイヤグラムの上端(トップ)近くに現れる。
【0010】
カルベン配位子は、有機金属化学において周知であり、広範囲の熱的に安定な触媒物質を作り出すために用いられている。カルベン配位子は、触媒反応に直接関与する活性基として、及び特定の酸化状態又は配位構造において金属を安定化させる役割を担うものとして用いられている。しかし、カルベン配位子の応用は、光化学においては良く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第5,703,436号明細書
【特許文献5】米国特許第6,310,360号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2002-0034656号公報
【特許文献7】米国特許出願公開第2002-0182441号公報
【特許文献8】米国特許出願公開2003-0072964号公報
【特許文献9】国際公開WO02/074015号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Baldoら,「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」, Nature, vol.395, 151〜154頁, 1998
【非特許文献2】Baldoら, 「Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence」, Appl. Phys. Lett., vol.75, No.3, 4〜6頁(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
現在ある有機エレクトロルミネッセンス化合物の多くに伴う問題は、市販のデバイスに用いるためにはそれらが充分には安定でないことである。このことは、スペクトルの青色領域で発光する燐光発光物質において特に事実である。本発明の目的は、改善された安定性を有する一群の有機発光化合物を提供することである。本発明の目的は、安定な仕方で、高いエネルギースペクトル(例えば青)を含めた様々なスペクトルをもつ光を発することができる一群の有機発光化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[本発明のまとめ]
本発明は、少なくとも1つのカルベン-金属結合を介して金属中心に結合した少なくとも1つの三座配位子を有する燐光有機金属発光物質を含む発光層を有する有機発光デバイスを目的としている。好ましい態様では、この発光物質は、金属中心に結合した、同じであるか又は異なっていてもよい2つの三座配位子を含み、その三座配位子の少なくとも1つがカルベン-金属結合を有している。
【0015】
好ましい態様では、本発明は、アノード、カソード、そのアノードとカソードとの間に配置された燐光発光領域を含み、その発光領域が下記式(I)を有する発光物質を含む、有機発光デバイスを目的としている。
【0016】
【化1】

【0017】
上記式中、
Mは、第二又は第三周期の遷移金属であり;
Lは、補助配位子であり;
環Aは以下の
(a)3〜5個の環ヘテロ原子を有する8〜12員ビシクロ基;
(b)3〜6個の環ヘテロ原子を有する11〜18員トリシクロ基;
(c)11〜14員の縮合トリシクロ基;及び
(d)14〜18員の縮合テトラシクロ基、
からなる群から選択され;
各Rは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
aは0〜4であり;
環Bは、5又は6員環基、8〜12員ビシクロ基、11〜18員トリシクロ基、11〜14員縮合トリシクロ基、及び14〜18員縮合テトラシクロ基から選択され;
各Rは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
bは0〜4であり;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
、R、及びRは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
あるいは、R及びR、又はR及びRは、一緒になって、5又は6員環基、8〜10員の縮合ビシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基を形成してもよく、それらの環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成してもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成していてもよく;
各R’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
各R’’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアラルキルから選択され;
nは1又は2であり;且つ
mは0〜3であり、nが1である場合はmは1〜3であり、nが2である場合はmは0である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、別個の電子輸送層、正孔輸送層、及び発光層、並びにその他の層を有する有機発光デバイスを示している。
【図2】図2は、別個の電子輸送層を持たない倒置型有機発光デバイスを示している。
【図3】図3は、デバイス(Device)DA、DB、DC、及びDDのエレクトロルミネッセンススペクトル(EL)(任意の単位)を示している。
【図4】図4は、デバイス(Device)DA、DB、DC、及びDDの外部量子効率(External QuantumEfficiency)対輝度(Luminance)のグラフを示している。
【図5】図5は、デバイス(Device)DA、DB、DC、及びDDの電流密度(Current density)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図6】図6は、デバイス(Device)DA、DB、及びDDの正規化した輝度(Normalized Luminance)対時間(Time[Hours])のグラフを示している。
【図7】図7は、デバイス(Device)CA、CB、CC、CD、CE、及びCFの電流密度(Current density)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図8】図8は、デバイス(Device)CA、CB、CC、CD、CE、及びCFの外部量子効率(E.Q.E)対電流密度(Current density)のグラフを示している。
【図9】図9は、デバイス(Device)CA、CB、CC、CD、CE、及びCFのエレクトロルミネッセンススペクトル(Intensity:強度)を示している。
【図10】図10は、デバイス(Divice)CB、CD、CE、及びCFの正規化した輝度(Normalized Luminance)対時間(Time)を示している。
【図11】図11は、デバイス(Device)CG、CH、CI、CJ、CK、及びCLの電流密度(Current density)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図12】図12は、デバイス(Device)CG、CH、CI、CJ、CK、及びCLの外部量子効率(E.Q.E.)対電流密度(Current density)のグラフを示している。
【図13】図13は、デバイス(Device)CG、CH、CI、CJ、CK、及びCLのエレクトロルミネッセンススペクトル(Intensity:強度, Wavelength:波長)を示している。
【図14】図14は、デバイス(Device)CH及びCKの正規化した輝度(Normalized Luminance)対時間(Time)のグラフを示している。
【図15】図15は、デバイス(Device)AAA及びAABの外部量子効率(Quantum Efficency)対電流密度(Current Density)のグラフを示している。
【図16】図16は、デバイス(Device)AAA及びAABのエレクトロルミネッセンススペクトル(Intensity:強度、Wavelength:波長)を示している。
【図17】図17は、デバイス(Device)AAA及びAABの電流密度(Currrent Density)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図18】図18は、デバイス(Device)AAA及びAABの正規化した輝度(Normalized Luminance)対時間(Time)のグラフを示している。
【図19】図19は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 6% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の電流密度(Current Density)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図20】図20は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 6% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の外部量子効率(External Quantum Efficiency)対輝度(Luminance)のグラフを示している。
【図21】図21は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 6% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の正規化した輝度(Normalized Luminance)対時間(Time)のグラフを示している。
【図22】図22は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 6% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])のエレクトロルミネッセンススペクトル(Intensity:強度、Wavelength:波長)を示している。
【図23】図23は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 10% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の電流密度(Current Density)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図24】図24は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 10% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の外部量子効率(External Quantum Efficiency)対輝度(Luminance)のグラフを示している。
【図25】図25は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 10% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の正規化した輝度(Normalized Luminance)対時間(Time)のグラフを示している。
【図26】図26は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 10% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])のエレクトロルミネッセンススペクトル(Intensity:強度、Wavelength:波長)を示している。
【図27】図27は、デバイス(CuPc [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 6% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の電流密度(Current Density)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図28】図28は、デバイス(CuPc [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 6% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の外部量子効率(External Quantum Efficiency)対輝度(Luminance)のグラフを示している。
【図29】図29は、デバイス(CuPc [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 6% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の正規化した輝度(Normalized Luminance)対時間(Time)のグラフを示している。
【図30】図30は、デバイス(CuPc [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 6% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])のエレクトロルミネッセンススペクトル(Intensity:強度、Wavelength:波長)を示している。
【図31】図31は、デバイス(CuPc [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 10% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の電流密度(Current Density)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図32】図32は、デバイス(CuPc [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 10% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の外部量子効率(External Quantum Efficiency)対輝度(Luminance)のグラフを示している。
【図33】図33は、デバイス(CuPc [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 10% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])のエレクトロルミネッセンススペクトル(Intensity:強度、Wavelength:波長)を示している。
【図34】図34は、デバイス(CuPc [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 10% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の正規化した輝度(Normalized Luminance)対時間(Time)のグラフを示している。
【図35】図35は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 6% [30nm]/CBP [5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の電流密度(Current Density)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図36】図36は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 6% [30nm]/CBP [5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の外部量子効率(External Quantum Efficiency)対輝度(Luminance)のグラフを示している。
【図37】図37は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 6% [30nm]/CBP [5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の正規化した輝度(Normalized Luminance)対時間(Time)のグラフを示している。
【図38】図38は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 6% [30nm]/CBP [5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])のエレクトロルミネッセンススペクトル(Intensity:強度、Wavelength:波長)を示している。
【図39】図39は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 15% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の電流密度(Current Density)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図40】図40は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 15% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の外部量子効率(External Quantum Efficiency)対輝度(Luminance)のグラフを示している。
【図41】図41は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 15% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の正規化した輝度(Normalized Luminance)対時間(Time)のグラフを示している。
【図42】図42は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 15% [30nm]/2,3,6,7,10,11-ヘキサフェニルトリフェニレン[5nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])のエレクトロルミネッセンススペクトル(Intensity:強度、Wavelength:波長)を示している。
【図43】図43は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 6% [30nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の電流密度(Current Density)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図44】図44は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 6% [30nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の外部量子効率(External Quantum Efficiency)対輝度(Luminance)のグラフを示している。
【図45】図45は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 6% [30nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の正規化した輝度(Normalized Luminance)対時間(Time)のグラフを示している。
【図46】図46は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 6% [30nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])のエレクトロルミネッセンススペクトル(Intensity:強度、Wavelength:波長)を示している。
【図47】図47は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 15% [30nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の電流密度(Current Density)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図48】図48は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 15% [30nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の外部量子効率(External Quantum Efficiency)対輝度(Luminance)のグラフを示している。
【図49】図49は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 15% [30nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])の正規化した輝度(Normalized Luminance)対時間(Time)のグラフを示している。
【図50】図50は、デバイス(HIL4 [10nm]/NPD [30nm]/CBP:es-5, 15% [30nm]/Alq [45nm]/LiF [0.5nm]/Al [100nm])のエレクトロルミネッセンススペクトル(Intensity:強度、Wavelength:波長)を示している。
【図51】図51は、デバイスA、B、C、D、E、及びFの外部量子効率(EQE)対電流密度(Current Density)のグラフを示している。
【図52】図52は、デバイスA、B、C、D、E、及びFの電流密度(Current Density)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図53】図53は、デバイスA、B、C、D、E、及びFのエレクトロルミネッセンススペクトル(Intensity:強度、Wavelength:波長)を示している。
【図54】図54は、デバイスA、B、C、D、E、及びFの正規化した輝度(Normalized Luminance)対時間(Time)のグラフを示している。
【図55】図55は、デバイスAA、AB、AC、AD、AE、及びAFの電流密度(Current Density)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図56】図56は、デバイスAA、AB、AC、AD、AE、及びAFの外部量子効率(External Quantum Efficiency)対電流密度(Current Density)のグラフを示している。
【図57】図57は、デバイスAA、AB、AC、AD、AE、及びAFのエレクトロルミネッセンススペクトル(Intensity:強度、Wavelength:波長)を示している。
【図58】図58は、デバイスAA及びABの正規化した輝度(Normalized Luminance)対時間(Time)のグラフを示している。
【図59】図59は、デバイスAG、AH、AI、AJ、及びAKの電流密度(Current Density)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図60】図60は、デバイスAG、AH、AI、AJ、及びAKの外部量子効率(External Quantum Efficiency)対電流密度(Current Density)のグラフを示している。
【図61】図61は、デバイスAG、AH、AI、AJ、及びAKのエレクトロルミネッセンススペクトル(Intensity:強度、Wavelength:波長)を示している。
【図62】図62は、デバイスBA、BB、BC、及びBDの外部量子効率(External Quantum Efficiency)対電流密度(Current Density)のグラフを示している。
【図63】図63は、デバイスBA、BB、BC、及びBDの電流密度(Current Density)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図64】図64は、デバイスBE、BF、BG、及びBHの外部量子効率(E.Q.E.)対電流密度(Current Density)のグラフを示している。
【図65】図65は、デバイスBE、BF、BG、及びBHの電流密度(Current Density)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図66】図66は、デバイスBA、BB、BC、BD、BE、BF、BG、及びBHのエレクトロルミネッセンススペクトル(EL:エレクトロルミネッセンス、Wavelength:波長)を示している。
【図67】図67は、デバイスBC、BF、BE、及びBGの正規化した輝度(Normalized Luminance)対時間(Time)のグラフを示している。
【図68】図68は、化合物es−1、es−2、es−3、及びes−4の構造を示している。
【図69】図69は、化合物es−5、es−6、es−7、及びes−8の構造を示している。
【図70】図70は、例9のデバイス構造を示している。
【図71】図71は、例9のデバイスの外部量子効率(External Quantum Efficiency)対輝度(Luminance)のグラフを示している。
【図72】図72は、例9のデバイスの電力効率(Power Efficacy)(Lm/W)対輝度(Luminance)のグラフを示している。
【図73】図73は、例9のデバイスの輝度(Luminance)対電圧(Voltage)のグラフを示している。
【図74】図74は、例9のデバイスのEL強度(EL Internsity)対波長(Wavelength)のグラフを示している。
【図75】図75は、例9のデバイスの1000nitsにおけるデバイス寿命のグラフ(規格化した輝度(Normalized Luminance)対時間(Time))を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[詳細な説明]
一般にOLEDは、アノードとカソードの間に配置され且つこれらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が流された場合、その有機層(単数又は複数)中にアノードは正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔と電子は、それぞれ反対に帯電した電極に向かって移動する。同じ分子上に電子と正孔が局在した場合、励起エネルギー状態を有する、局在化した電子-正孔対である「励起子」が形成される。この励起子が発光機構によって緩和する時に光が発せられる。ある場合には、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在することもできる。非放射機構、例えば熱緩和も起こることがあるが、通常は好ましくないと考えられている。
【0020】
初期のOLEDでは、例えば、米国特許第4,769,292号明細書(その全体を参照により援用する)に開示されているように、一重項状態から発光する(「蛍光」)発光分子を用いた。蛍光発光は一般に、10ナノ秒未満の時間フレームで起こる。
【0021】
より最近、三重項状態から発光する(「リン光」)発光材料を有するOLEDが実証された。Baldoら,「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」, Nature, vol.395, 151〜154頁, 1998(「Baldo-I」)、および、Baldoら, 「Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence」, Appl. Phys. Lett., vol.75, No.3, 4〜6頁(1999)(「Baldo-II」)(これらはその全体を参照により援用する)。リン光は「禁制」遷移とよばれることがあり、なぜなら、この遷移がスピン状態の変化を必要とし、量子力学はこのような遷移は好ましくないことを示しているからである。結果として、リン光は一般に、少なくとも10ナノ秒を超える時間フレームで起こり、典型的には100ナノ秒を超える。リン光の自然な放射寿命が長すぎると、三重項が非放射機構により減衰して全く光が放出されないということがあり得る。有機リン光は、しばしば、非共有電子対を有するヘテロ原子を含む分子においてもまた、非常に低温で観察される。2,2'-ビピリジンはこのような分子である。非放射減衰機構は、通常、温度に左右されるので、液体窒素温度でリン光を示す有機材料は、通常、室温ではリン光を示さない。しかし、Baldoにより実証されたように、室温で実際にリン光を発するリン光化合物を選択することによってこの問題を解決できる。代表的な発光層には、米国特許第6,303,238号、米国特許第6,310,360号;米国特許出願公開第2002-0034656号;同第2002-0182441号;同2003-0072964号;ならびに国際公開WO02/074015号パンフレットに開示されているようなドープされているか又はドープされていないリン光有機金属材料が含まれる。
【0022】
一般に、OLED内の励起子は、約3:1の比で、すなわち、約75%の三重項と約25%の一重項として生成されると考えられている。Adachiら、「Nearly 100% Internal Phosphorescent Efficiency In An Organic Light Emitting Device」, J. Appl. Phys., 90, 5048頁(2001)(これはその全体を参照により援用する)を参照されたい。多くの場合、一重項励起子は「項間交差」を通じて三重項励起状態に容易にエネルギーを移動できるが、三重項励起子はそれらのエネルギーを一重項励起状態に容易には移動できない。結果として、リン光OLEDで100%の内部量子効率が理論的には可能である。蛍光デバイスにおいては、三重項励起子のエネルギーは、通常、デバイスを昇温させる非放射減衰過程に費やされるので、結果的に内部量子効率はずっと小さくなる。三重項励起状態から発光するリン光材料を用いるOLEDが、例えば、米国特許第6,303,238号明細書(これはその全体を参照により援用する)に開示されている。
【0023】
リン光発光に先立って、三重項励起状態から中間の非三重項状態への遷移が起こり、そこから発光減衰が起こりうる。例えば、ランタニド元素に配位した有機分子は、しばしば、ランタニド金属に局在化した励起状態からリン光を発する。しかし、このような材料は三重項励起状態から直接リン光を発するのでなく、代わりに、ランタニド金属イオンに集中した原子励起状態から発光する。ユーロピウムジケトネート錯体はこれらのタイプの化学種の1つの群を例示する。
【0024】
三重項からのリン光は、有機分子を大きな原子番号の原子のごく近くに好ましくは結合を通じて留めることによって、蛍光を超えて強めることができる。この現象は、重原子効果とよばれ、スピン-軌道カップリングとして知られている機構によって生じる。このようなリン光遷移は、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)などの有機金属分子の励起した金属から配位子への電荷移動(metal-to-ligand charge transfer、MLCT)状態から観察されうる。
【0025】
本明細書で用いるとおり、「三重項エネルギー」という用語は、所定の物質のリン光スペクトル中に認められる最も高いエネルギー的特徴部分に対応するエネルギーをいう。最も高いエネルギー的特徴部分は、必ずしも、リン光スペクトルにおける最大強度を有するピークではなく、例えば、そのようなピークの高エネルギー側の明瞭な肩の極大値であり得る。
【0026】
本明細書で用いるとおり「有機金属」の用語は、当業者によって一般に理解され、例えばGary L. Miessler及びDonald A. Tarrによる「Inorganic Chemistry」(第二版), Prentice Hall(1998)に示されているとおりである。したがって、有機金属の語は、炭素-金属結合を通して金属に結合した有機基を有する化合物をいう。この群は、それ自体は配位化合物を含まず、配位化合物はヘテロ原子からの供与結合のみを有する物質、例えば、アミン、ハロゲン化物(halide)、擬ハロゲン化物(pseudohalide)(CN等)等の金属錯体などである。実際には、有機金属化合物は、一般に、有機種に対する1つ以上の炭素-金属結合に加えて、ヘテロ原子からの1つ以上の供与結合を含む。有機種に対する炭素-金属結合は、金属と有機基、例えば、フェニル、アルキル、アルケニルなどの炭素原子との間の直接結合をいうが、「無機炭素」、例えばCN又はCOの炭素への金属の結合をいわない。
【0027】
図1は有機発光デバイス100を示している。この図は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含み得る。カソード160は、第一導電層162および第二導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記載した層を順次、堆積させることによって作製できる。
【0028】
基板110は所望の構造特性を備えた任意の適切な基板であってよい。基板110は柔軟であっても堅くてもよい。基板110は、透明、半透明、または不透明であり得る。プラスチックおよびガラスは好ましい堅い基板材料の例である。プラスチックおよび金属箔は好ましい柔軟基板材料の例である。基板110は回路の作製を容易にするために、半導体材料であってもよい。例えば、基板110は、続いて基板上に堆積されるOLEDを制御できる回路がその上に作製されているシリコンウェハであってもよい。他の基板を使用してもよい。基板110の材料および厚さは、所望の構造特性および光学特性が得られるように選択されうる。
【0029】
アノード115は、有機層に正孔を輸送するために十分な導電性である任意の適切なアノードであってよい。アノード115の材料は、好ましくは、約4eVより大きい仕事関数を有する(「高仕事関数材料」)。好ましいアノード材料には、導電性金属酸化物、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)およびインジウム亜鉛酸化物(IZO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AlZnO)、ならびに金属が含まれる。アノード115(および基板110)は、ボトム発光デバイスを作るために十分に透明であってよい。好ましい透明基板とアノードの組合せは、ガラスまたはプラスチック(基板)上に堆積された市販のITO(アノード)である。柔軟かつ透明な基板-アノードの組合せは、米国特許第5,844,363号明細書および米国特許第6,602,540号B2明細書(これらはその全体を参照により援用する)に開示されている。アノード115は不透明および/または反射性であってよい。反射性アノード115は、デバイスのトップからの発光量を増加させるために、いくつかのトップ発光デバイスでは好ましいものであり得る。アノード115の材料および厚さは、所望の導電性および光学特性が得られるように選択されうる。アノード115が透明である場合、特定の材料に対して、所望の導電性をもたせるのに十分なだけ厚いが、それでも所望の透明度をもたせるのに十分なだけ薄い、厚さの範囲があり得る。他のアノード材料および構造を用いてもよい。
【0030】
正孔輸送層125には、正孔を輸送できる材料が含まれうる。正孔輸送層130は真性(ドープされていない)であってもドープされていてもよい。ドーピングは導電性を高めるために使用されうる。α-NPDおよびTPDは真性正孔輸送層の例である。p型ドープ正孔輸送層の例は、Forrestらの米国特許出願公開第2002-0071963A1号公報(これはその全体を参照により援用する)に開示されている、50:1(m-MTDATA:F4-TCNQ)のモル比でF4-TCNQでドープされたm-MTDATAである。他の正孔輸送層を用いてもよい。
【0031】
発光層135は、電流がアノード115とカソード160との間に流れたときに発光できる有機材料を含みうる。好ましくは、発光層135はリン光発光材料を含むが、蛍光発光材料も使用されうる。リン光材料が、このような材料に付随するより高いルミネセンス効率のために好ましい。発光層135はまた、電子および/または正孔を輸送できるホスト材料(これは電子、正孔、および/または励起子を捕捉しうる発光材料によりドープされており、それにより励起子が光放出機構によって発光材料から緩和する)を含んでいてもよい。発光層135は、輸送および発光特性を併せもつ単一材料を含んでいてもよい。発光材料がドーパントであるか主成分であるかにかかわらず、発光層135は、発光材料の発光を調整するドーパントなどの他の材料を含みうる。発光層135は、組み合わされて所望の光スペクトルを発光できる複数の発光材料を含んでいてもよい。リン光発光材料の例には、Ir(ppy)3が含まれる。蛍光発光材料の例には、DCMおよびDMQAが含まれる。ホスト材料の例には、Alq、CBPおよびmCPが含まれる。発光材料及びホスト材料の例は、Thompsonらの米国特許第6,303,238号明細書及び米国特許出願公開US-2004-0209116A1号公報(これらそれぞれを、その全体を参照により援用する)に開示されている。発光材料は様々なやりかたで発光層135中に包含されうる。例えば、発光材料は多くのやり方で発光層135に含ませることができる。例えば、発光性の小分子(small molecule)がポリマーに組み込まれてもよい。これは、いくつかのやり方によって、例えば、小分子を、別個の独立した分子種としてポリマーにドープすることによって;あるいは、低分子をポリマー骨格に組み込み、コポリマーを形成させることによって;あるいは、低分子をペンダント基としてポリマーに結合させることによって、実施できる。他の発光層の材料および構造を用いてもよい。例えば、小分子の発光材料は、デンドリマーのコアとして存在してもよい。
【0032】
多くの有用な発光材料は、中心金属に結合した1つまたは複数の配位子を含む。配位子は、それが有機金属発光材料の光活性特性に直接寄与する場合、「光活性」とよぶことができる。「光活性」配位子は、金属と共同で、光子が放出されるときに、電子がそこから移動するエネルギー準位及びそこへ移動するエネルギー準位を提供しうる。他の配位子は「補助」ということができる。補助配位子は、例えば光活性配位子のエネルギー準位をシフトさせることによって分子の光活性特性を改変し得るが、補助配位子は光の放出に直接関与するエネルギー準位を直接提供はしない。1つの分子において光活性である配位子は別の分子においては補助でありうる。光活性および補助のこれらの定義は本発明を限定しない説を意図している。
【0033】
電子輸送層145は電子を輸送できる材料を含みうる。電子輸送層145は、真性(ドープされていない)であっても、またはドープされていてもよい。ドーピングは導電性を高めるために使用されうる。Alqは真性電子輸送層の例である。n型ドープ電子輸送層の例は、Forrestらの米国特許出願公開第2002-0071963号公報(これはその全体を参照により援用する)に開示されている、1:1のモル比でLiによりドープされたBPhenである。他の電子輸送層を用いてもよい。
【0034】
電子輸送層の電荷担体成分は、電子輸送層のLUMO(最低空軌道)エネルギー準位へ、電子がカソードから効率的に注入されうるように選択できる。「電荷担体成分」は、実際に電子を輸送するLUMOエネルギー準位を担う材料である。この成分はベース材料であっても、あるいはそれはドーパントであってもよい。有機材料のLUMOエネルギー準位は一般にその材料の電子親和力によって特徴付けることができ、カソードの相対的電子注入効率は一般にカソード材料の仕事関数によって特徴付けることができる。これは、電子輸送層および隣接するカソードの好ましい特性は、ETL(電子輸送層)の電荷担体成分の電子親和力とカソード材料の仕事関数とによって特定できることを意味する。特に、高い電子注入効率を達成するためには、カソード材料の仕事関数は、電子輸送層の電荷担体成分の電子親和力より、好ましくは約0.75eVを超えては大きくなく、より好ましくは約0.5eVを超えては大きくない。同様の考慮は、電子が注入される如何なる層にも適用される。
【0035】
カソード160は、カソード160が電子を伝導し、且つデバイス100の有機層に電子を注入できるような、当技術分野で知られている如何なる適切な材料または材料の組合せであってもよい。カソード160は透明または不透明であってよく、また反射性であってよい。金属および金属酸化物は適切なカソード材料の例である。カソード160は単層であっても、あるいは複合構造を有していてもよい。図1は、薄い金属層162と、より厚い導電性金属酸化物層164とを有する複合カソード160を示している。複合カソードにおいて、より厚い層164のための好ましい材料には、ITO、IZO、および当技術分野において知られているその他の材料が含まれる。米国特許第5,703,436号、米国特許第5,707,745号、米国特許第6,548,956号B2、および米国特許第6,576,134号B2(これらは全体を参照により援用する)は、スパッタリングにより堆積させた透明で導電性のITO層が上に重なったMg:Agなどの薄い金属層を有する複合カソードを含む、カソードの例を開示している。下にある有機層と接触しているカソード160の部分は、それが単層カソード160、複合カソードの薄い金属層162、または何らかのその他の部分であるかどうかにかかわらず、約4eVより小さい仕事関数を有する材料(「低仕事関数材料」)から作られていることが好ましい。その他のカソード材料および構造を用いてもよい。
【0036】
阻止層(blocking layer)は、発光層から出て行く電荷担体(電子もしくは正孔)および/または励起子の数を減らすために使用できる。電子阻止層130は、電子が発光層135を離れて正孔輸送層125に向かうことを妨害するために、発光層135と正孔輸送層125との間に配置できる。同様に、正孔阻止層140は、正孔が発光層135を離れて電子輸送層145に向かうことを妨害するために、発光層135と電子輸送層145との間に配置できる。阻止層はまた、励起子が発光層から拡散して出て行くのを妨害するためにも使用できる。阻止層の理論と使用は、米国特許第6,097,147号明細書およびForrestらの米国特許出願公開第2003-0071963 A1号公報(これらは全体を参照により援用する)に、より詳細に記載されている。
【0037】
本明細書で用いており、かつ、当業者により理解されているように、「阻止層」という用語は、この層が、デバイスを通っての電荷担体および/または励起子の輸送を著しく抑制するバリアを提供することを意味するが、この層が電荷担体および/または励起子を必ずしも完全に妨害することは示唆していない。デバイス中にこのような阻止層が存在することにより、阻止層のない類似のデバイスと比べて、実質的により高い効率をもたらしうる。また、阻止層は、OLEDの所望の領域に発光を限定するためにも使用できる。
【0038】
一般に、注入層は、一つの層、例えば電極または有機層から、隣接する有機層への電荷担体の注入を向上させうる材料から構成される。注入層は電荷輸送機能も果たしうる。デバイス100において、正孔注入層120は、アノード115から正孔輸送層125への正孔の注入を向上させる如何なる層であってもよい。CuPcは、ITOアノード115、および他のアノードからの正孔注入層として使用されうる材料の例である。デバイス100において、電子注入層150は、電子輸送層145への電子の注入を向上させる如何なる層であってもよい。LiF/Alは、隣接する層から電子輸送層への電子注入層として用いうる材料の例である。他の材料または材料の組合せを注入層に用いてもよい。特定のデバイス構成に応じて、注入層はデバイス100において示されているものとは異なる位置に配置されてもよい。注入層のより多くの例は、Luらの米国特許出願第09/931,948号明細書(これはその全体を参照により援用する)に記載されている。正孔注入層は、スピンコーティングされたポリマー(例えばPEDOT:PSS)などの、溶液によって堆積された材料を含んでいるか、あるいは、それは蒸着された小分子材料(例えば、CuPcまたはMTDATA)であってもよい。
【0039】
正孔注入層(HIL)は、アノードから正孔注入材料への効率的な正孔の注入をもたらすように、アノード表面を平坦化し、または濡らしうる。正孔注入層はまた、HILの一方の側に隣接するアノード層とHILの反対側の正孔輸送層とに都合よく適合するHOMO(最高被占分子軌道)エネルギー準位(本明細書に記載されている相対的イオン化ポテンシャル(IP)エネルギーにより定義されているようなエネルギー準位)を有する電荷担体成分を有することもできる。「電荷担体成分」は、実際に正孔を輸送するHOMOエネルギー準位を担う材料である。この成分はHILのベース材料であるか、あるいは、それはドーパントであってもよい。ドープされたHILを用いることにより、ドーパントをその電気的特性で選択でき、ホストをモルホロジー的特性(例えば、濡れ性、柔軟性、靱性など)によって選択できる。HIL材料の好ましい特性は、正孔がアノードからHIL材料に効率的に注入されることができるということである。特に、HILの電荷担体成分は、好ましくは、アノード材料のIPより約0.7eVを超えない範囲で大きいIPを有する。より好ましくは、電荷担体成分は、アノード材料より約0.5eVを超えない範囲で大きいIPを有する。同様の考慮は、正孔が注入される如何なる層にも適用される。HIL材料は、HIL材料が従来の正孔輸送材料の正孔伝導度よりも実質的に小さい正孔伝導度を有しうるという点で、OLEDの正孔輸送層に通常使用される従来の正孔輸送材料からさらに区別される。本発明のHILの厚さは、アノード層の表面を平坦化し又は濡らすことを助けるために十分に厚くてよい。例えば、10nmほどの薄いHILの厚さでも、非常に滑らかなアノード表面に対しては許容可能でありうる。しかし、アノード表面は非常に粗い傾向があるので、いくつかの場合には最大で50nmまでのHILの厚さが望ましいことがある。
【0040】
保護層は次の製造工程の間、下にある層を保護するために使用できる。例えば、金属または金属酸化物の上部電極(トップ電極)を作製するために用いられる工程は有機層を損傷しうるので、保護層はこのような損傷を減らすか、または無くすために使用されうる。デバイス100において、保護層155は、カソード160の作製中、下にある有機層への損傷を減らすことができる。保護層は、保護層がデバイス100の駆動電圧を著しく増大させないように、それが輸送する担体のタイプ(デバイス100では電子)に対する大きな担体移動度を有することが好ましい。CuPc、BCP、および様々な金属フタロシアニンは、保護層に使用されうる材料の例である。その他の材料または材料の組合せを用いてもよい。好ましくは、保護層155の厚さは、有機保護層155が堆積された後に実施される製造工程によって下にある層への損傷がほとんどまたは全くないように充分に厚いが、デバイス100の駆動電圧を著しく増大させる程には厚くない。保護層155はその導電性を増すためにドープされてもよい。例えば、CuPcまたはBCPの保護層155はLiでドープされうる。保護層のより詳細な説明は、Luらの米国特許出願第09/931,948号明細書(これはその全体を参照により援用する)に見ることができる。
【0041】
図2は倒置型(inverted)OLED200を示している。このデバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は記載した層を順に堆積させることによって製造できる。最も一般的なOLEDの構成はアノードの上方に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有するので、デバイス200を「倒置型」OLEDとよぶことができる。デバイス100に関して記載したものと同様の材料を、デバイス200の対応する層に使用できる。図2は、デバイス100の構造からどのようにいくつかの層を省けるかの1つの例を提供している。
【0042】
図1および2に例示されている簡単な層状構造は非限定的な例として与えられており、本発明の実施形態は多様な他の構造と関連して使用できることが理解される。記載されている具体的な材料および構造は事実上例示であり、その他の材料および構造も使用できる。設計、性能、およびコスト要因に基づいて、実用的なOLEDは様々なやり方で上記の記載された様々な層を組み合わせることによって実現でき、あるいは、いくつかの層は完全に省かれうる。具体的に記載されていない他の層を含むこともできる。具体的に記載したもの以外の材料を用いてもよい。本明細書に記載されている例の多くは単一の材料を含むものとして様々な層を記載しているが、材料の組合せ(例えばホストおよびドーパントの混合物、またはより一般的には混合物)を用いてもよいことが理解される。また、層は様々な副層(sublayer)を有してもよい。本明細書において様々な層に与えられている名称は、厳格に限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し且つ発光層220に正孔を注入するので、正孔輸送層として、あるいは正孔注入層として説明されうる。一実施形態において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして説明できる。この有機層は単一の層を含むか、または、例えば図1および2に関連して記載された様々な有機材料の複数の層をさらに含むこともできる。
【0043】
具体的に記載されていない構造および材料、例えばFriendらの米国特許第5,247,190号明細書(これはその全体を参照により援用する)に開示されているようなポリマー材料で構成されるOLED(PLED)、も使用することができる。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用してもよい。OLEDは、例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号明細書(これはその全体を参照により援用する)に記載されているように、積み重ねられてもよい。OLEDの構造は、図1および2に示されている簡単な層状構造から逸脱していてもよい。例えば、基板は、光取出し(out-coupling)を向上させるために、Forrestらの米国特許第6,091,195号明細書(これはその全体を参照により援用する)に記載されているメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号明細書(これはその全体を参照により援用する)に記載されているピット構造などの、角度の付いた反射表面を含みうる。
【0044】
特に断らないかぎり、様々な実施形態の層のいずれも、何らかの適切な方法によって堆積されうる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着(thermal evaporation)、インクジェット(例えば、米国特許第6,013,982号および米国特許第6,087,196号明細書(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、有機気相成長(organic vapor phase deposition、OVPD)(例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号明細書(その全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびに有機気相ジェットプリンティング(organic vapor jet printing、OVJP)による堆積(例えば、米国特許出願第10/233,470号明細書(これはその全体を参照により援用する)に記載されている)が含まれる。他の適切な堆積方法には、スピンコーティングおよびその他の溶液に基づく方法が含まれる。溶液に基づく方法は、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通しての堆積、圧接(cold welding)(例えば、米国特許第6,294,398号および米国特許第6,468,819号明細書(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連するパターニングが含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される材料は、それらを特定の堆積方法に適合させるために改変されてもよい。例えば、分枝した又は分枝のない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基が、溶液加工性を高めるために、小分子に用いることができる。20個又はそれより多い炭素を有する置換基を用いてもよい、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する材料は対称構造を有するものよりも良好な溶液加工性を有しうるが、これは、非対称材料はより小さな再結晶化傾向を有しうるからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を受ける能力を高めるために用いることができる。
【0045】
本明細書に開示した分子は、本発明の範囲から外れることなく多くの様々なやり方で置換できる。例えば、置換基を、2つ以上の一座、二座、及び/又は三座配位子を有する化合物に付け加え、その置換基を加えた後でその一座、二座、及び/又は三座配位子の1つ以上が一緒に連結されて、例えば、四座又は六座配位子を形成するようにしてもよい。その他のそのような連結も形成できる。この種の連結は、連結のない類似の化合物と比較して安定性を増大させうると考えられ、それは当分野で「キレート効果」として一般に理解されているものによる。
【0046】
本発明の実施形態により製造されたデバイスは多様な消費者製品に組み込むことができ、これらの製品には、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明な(fully transparent)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistant、PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面(large area wall)、映画館またはスタジアムのスクリーン、あるいは標識が含まれる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含めて、様々な制御機構を用いて、本発明にしたがって製造されたデバイスを制御できる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの、人にとって快適な温度範囲において使用することが意図されている。
【0047】
本明細書に記載した材料及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有しうる。例えば、その他のオプトエレクトロニクスデバイス、例えば、有機太陽電池及び有機光検出器は、これらの材料及び構造を用いることができる。より一般には、有機デバイス、例えば、有機トランジスタは、これらの材料及び構造を用いることができる。
【0048】
本発明は、少なくとも1つの炭素−金属結合を通して中心金属(metal center)と結合した少なくとも1つの三座配位子を有する燐光有機金属発光物質を含む発光層を有するデバイスを目的としている。この中心金属は、第二及び第三遷移金属から選択され、好ましくは、Ru、Os、Re、Rh、Ir、Pd、及びPtから選択される。特に好ましい態様では、中心金属Mは、Os及びRuから選択され、さらに好ましい態様ではMはOsである。この発光物質は、中心金属の配位圏を満たすために補助配位子を追加で含んでいてもよい。好ましい態様では、この発光物質は、中心金属に結合した同じか又は異なる2つの三座配位子を有し、その三座配位子のうち少なくとも1つは炭素−金属結合を有している。特に好ましい態様では、中心金属はオスミウム(Os)である。本デバイスは、燐光物質又は蛍光物質であってよい追加の発光物質を含んでいてもよい。
【0049】
本発明の好ましい態様では、発光物質の三座配位子への炭素−金属結合は、カルベン−金属結合である。したがって、この態様においては、発光物質は、少なくとも1つのカルベン−金属結合を通じて中心金属に結合した少なくとも1つの三座配位子を含む。その中心金属への2つのその他の結合は、(i) N、O、S、及びPから選択されるヘテロ原子からの供与結合、(ii) カルベン−金属結合ではない炭素−金属結合、(iii) カルベン−金属結合、あるいはそれらの任意の組み合わせ、から選択できる。
【0050】
本明細書で用いるとおり、「カルベン」の語は、金属に配位子していない場合にはその原子価殻に6個の電子しかもたない二価の炭素原子を有する化合物をいう。ある配位子がカルベン−金属結合を含むか否かを決定するための有用な試験は、その錯体を金属フラグメントと配位子とに分解して考え、次に、金属にその前に結合していた、配位子中の炭素原子が、その分解した状態で中性の二価の炭素原子であるかどうかを確かめることである。好ましい態様の共鳴構造は以下のように示すことができる。
【化2】

カルベンのこの定義は、カルベンから合成される金属−カルベン錯体に限定されることなく、むしろ、金属に結合している炭素原子に関する軌道構造及び電子分配をいうことを意図している。この定義は、「カルベン」はそれが金属に結合している場合には理論的には二価ではなくともよいが、それが金属から分離された場合には二価であることを認めるものである。多くのそのような化合物は、最初にカルベンを合成し、次にそれを金属に結合させることによって合成されるが、この定義は、その他の方法によって合成され、同様の軌道構造及び電子構造を有する化合物を包含することを意図している。Lowry & Richardson, Mechanism and Theory in Organic Chemistry 256 (Harper & Row, 1976)は、「カルベン」を本明細書で用いているやり方と一致するやり方で「カルベン」を定義している。いくつかの文献は、「カルベン」を、金属に対して二重結合を形成する炭素配位子として定義しているかもしれない。この定義は本明細書において用いていないが、これらの2つの定義の間にはいくらかの重なりがありうる。多くの表示法が、そのようなカルベンにおける結合を表すために用いられ、それには、曲線を用いて、カルベン炭素とその隣接ヘテロ原子(1つ又は複数)との間の部分的多重結合を示すものが含まれる。
【0051】
カルベン配位子は、金属−カルベン錯体が示す高い熱安定性により、OLED用途において特に好ましい。電子供与基としてより多く振る舞うカルベンは、一般に金属に強く結合し、したがって、例えば、燐光発光体として用いられているこれまでのシクロメタル化錯体よりもさらに熱に対して安定な錯体を形成すると考えられる。
【0052】
さらに、カルベン−金属結合の性質によって、カルベン−金属結合を含む発光分子は、例えば、非カルベン類似体である化合物と比較して、増大した安定性を有することができると考えられる。さらに、カルベン−金属結合を含む分子の発光スペクトルは、カルベンなしの類似体の発光スペクトルとは異なりうると考えられる。
【0053】
金属−カルベン錯体は、配位子(1又は複数)上の置換基及び/又は化学基を選択することによって、近紫外から可視スペクトル全体にわたって広範囲のスペクトルを放射するように調整することができる。さらに注目すべきことには、約450nmにピーク波長をもつ飽和青色発光を得ることがいまや可能でありうる。発光性化合物を調整することによってその三重項エネルギーを高くすることよりも低くすることのほうが実質的により容易であると考えられるので、そのような高いエネルギーにおける安定な青色発光体を作ることができる可能性は、そのエネルギーを低下させてレッドシフトさせることによって任意の色を得ることを可能にもしうる。
【0054】
カルベン配位子に結合した置換基及び/又は化学基の適切な選択は、温度の上昇に伴う量子効率の損失を最小限にもしうる。室温と低温(例えば、77K)との間での寿命測定における目に見える違いは、燐光発光と競合する非放射性消光に起因すると考えられる。さらにそのような消光メカニズムは熱によって活性化され、したがって、消光によるエネルギーの損失が問題にならない約77Kの低温において、量子効率が約100%になると考えられる。カルベン配位子上の適切な置換基、あるいはより剛性のマトリクス中へのドーピング(例えば、Turro,「Modern Molecular Photochemistry」, University Science Books (1991), 109〜10に記載されている)が、室温における量子効率を高め、したがって、より長い寿命を示すことができると考えられる。
【0055】
いくつかの態様では、このカルベン錯体の三重項エネルギーは、そのスペクトルの深青又は紫外(UV)部分に、対応する波長を有している。いくつかの態様では、本燐光発光化合物は、450nm未満の波長に対応する三重項エネルギーを有している。好ましい態様においては、三重項エネルギーは440nm未満の波長に対応し、なおさらに好ましい態様では、400nm未満の波長に対応し、これはスペクトルのUV領域にあると考えられ、なぜなら、400nmは、スペクトルのUV領域と可視領域との境界を示すと考えられるからである。そのような高い三重項エネルギーは、これらの化合物を、光学的ポンピングダウン変換層(optically pumping down converting layer)において有用にしうる。そのような用途のためには、紫外カルベン化合物の発光スペクトルと、そのダウン変換層の吸収スペクトルとの間に重なりがあることが好ましい。そのデバイスの正規化したエレクトロルミネッセンススペクトルの曲線の積分値の約50%が、約450nmより短い波長におけるものである場合に、ダウン変換層を光学的にポンピングするために充分なエネルギーが存在する。より好ましくは、発光の90%より多くが、本明細書で開示しているように、440nm未満で生じることができる。好ましくは、正規化したエレクトロルミネッセンススペクトルの曲線の積分の50%が、約440nm未満であり、さらにこのましくは約400nm未満である。上述したこの波長の境界は絶対的な限定を意図してはおらず、なぜなら、それらはポンピングされる物質のエネルギーに左右されるからである。さらに、これらの発光は室温で生じうると考えられる。
【0056】
また、この強い金属−炭素結合は、金属カルベン錯体に、より強いスピン−軌道カップリングをもたらすと考えられる。その上、配位したカルベンの三重項エネルギーは、ピリジンアナログよりも顕著に高いことが示されている。発光は、室温でさえ、そのスペクトルの近紫外領域に存在しうる。ここでは、金属カルベン錯体は、カルベン配位子に伴う強い金属−配位子結合によって、同様に高いエネルギーにおいて発光することができると考えられる。
【0057】
金属−カルベン錯体の安定性は、OLEDの燐光発光体として用いることができる配位子及び金属のタイプに、大きな汎用性をもたらすこともできる。強い金属−カルベン結合は、様々な金属がカルベン配位子との有用な燐光錯体を形成し、新規な発光性化合物をもたらすことを可能にしうる。
【0058】
本発明の発光物質は、光活性配位子(photoactive ligand)である三座配位子を含む。配位子は、それが発光物質の光活性に寄与すると考えられるので「光活性」といわれる。発光物質は、補助配位子をさらに含んでいてもよい。この配位子は、それが、その光活性特性に直接寄与するのとは対照的に、その分子の光活性を一部改変しうると考えられるので、「補助」と称される。光活性及び補助のこの定義は、限定されない理論を意図したものである。補助配位子は以下の文献に記載されているものから選択してもよい。
【0059】
米国特許出願公開2002-0034656号公報(K&K 10020/15303)、図11〜50、米国特許出願公開2003-0072964号公報(Thompsonら)、段落7〜132、及び図1〜8;米国特許出願公開2002-0182441号公報(Lamanskyら)、段落13〜165、図1〜9(g)を含む;米国特許第6,420,057B1公報(Uedaら)、第1欄57行〜第88欄17行、化合物I−1〜XXIV−12それぞれを含む;米国特許第6,383,661B1公報 (Kimら)、第2欄9行〜第21欄67行;米国特許出願公開2001-0015432A1号公報 (Igarashiら)、第2〜57段落、化合物(1−1)〜(1−30)を含む;米国特許出願公開2001-0019782A1号公報 (Igarashiら)、第13〜126段落、化合物(1−1)〜(1−70)、及び(2−1)〜(2−20)を含む;米国特許出願公開2002-0024293号公報 (Igarashiら)、第7〜95段落、一般式K−I〜K−VI、及び例示化合物(K−1)〜(K−25)を含む;米国特許出願公開2002-0048689A1号公報 (Igarashiら)、第5〜134段落、化合物1〜81、及び例示化合物(1−1)〜(1−81)を含む;米国特許出願公開2002-0063516号公報 (Tsuboyamaら)、第31〜161段落、1〜16の各化合物を含む;米国特許出願公開2003-0068536号公報 (Tsuboyamaら)、第31〜168段落、表1〜17の各化合物を含み、これはEP-1-239-526-A2に対応する;米国特許出願公開2003-0091862 (Tokitoら)、第10〜190段落、表1〜17の各化合物を含み、これはEP-1-239-526-A2に対応する;米国特許出願公開2003-0096138号公報 (Leclouxら)、第8〜124段落、図1〜5を含む;米国特許出願公開2002-0190250号公報 (Grushinら)、第9〜191段落;米国特許出願公開2002-0121638号公報(Grushinら)、第8〜125段落;米国特許出願公開2003-0068526号公報 (Kamataniら)、第33〜572段落、表1〜23の各化合物を含む;米国特許出願公開2003-0141809号公報 (Furugoriら)、第29〜207段落;米国特許出願公開2003-0162299A1号公報 (Hsiehら)、第8〜42段落;国際公開WO 03/084972号 (Stosselら)、例1〜33;国際公開WO 02/02714A2号 (Petrovら)、第2〜30頁、表1〜5の各化合物を含む;EP 1-191-613 A1 (Takiguchiら)、第26〜87段落、表1〜8の各化合物を含む(米国特許出願公開2002-0064681に対応する);及びEP 1-191-614 A2 (Tsuboyamaら)、第25〜86段落、表1〜7の各化合物を含む;これら全体を参照により本明細書に援用する。
【0060】
好ましい態様では、本発明は、アノード、カソード、及びそのアノード及びカソードの間に配置された燐光発光領域を含み、その発光領域が下記式Iを有する発光物質を含む、有機発光デバイスを目的としている。
【0061】
【化3】

【0062】
上記式I中、
Mは、第二又は第三周期の遷移金属であり;
Lは、補助配位子であり;
環Aは以下の
(a)3〜5個の環ヘテロ原子を有する8〜12員ビシクロ基;
(b)3〜6個の環ヘテロ原子を有する11〜18員トリシクロ基;
(c)11〜14員の縮合トリシクロ基;及び
(d)14〜18員の縮合テトラシクロ基、
からなる群から選択され;
各Rは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
aは0〜4であり;
環Bは、5又は6員環基、8〜12員ビシクロ基、11〜18員トリシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基、及び14〜18員の縮合テトラシクロ基から選択され;
各Rは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
bは0〜4であり;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
、R、及びRは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
あるいは、R及びR、又はR及びRは、一緒になって、5又は6員環基、8〜10員の縮合ビシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基を形成してもよく、それらの環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成してもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成していてもよく;
各R’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
各R’’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアラルキルから選択され;
nは1又は2であり;且つ
mは0〜3であり、nが1である場合はmは1〜3であり、nが2である場合はmは0である。
【0063】
全ての値の範囲(例えば、n及びmに対して与えられたもの)は、その全体の範囲を含む。したがって、例えば、0〜4の範囲は、0、1、2、3、及び4の値を含む。
【0064】
本発明の好ましい態様では、Mは、Ru、Os、Re、Rh、Ir、Pd、及びPtから選択される。特に好ましい態様では、MはOs及びRuから選択され、なおさらに好ましい態様では、MはOsである。特定の好ましい態様では、Osが好ましい金属であり、なぜならそれは比較的容易に酸化されるからである。さらなる好ましい態様では、この発光物質は、フェロセン/フェロセニウムカチオンに対して、約−0.7ボルトよりもより正の側の値、約−0.3ボルトよりもより正の側の値、なおさらに好ましくは0ボルトよりも正の側の値である酸化ポテンシャルを有する。
【0065】
別の好ましい態様では、式Iの化合物は中性の化合物である。中性の化合物はデバイスの製造において加工することが容易であるという利点を有し、なぜなら、それらは昇華法を用いて堆積されうるからである。
【0066】
式Iの化合物が電荷を有する化合物である場合、その化合物はその電荷に釣り合った対イオンを含む。この場合、金属錯体は1〜6、好ましくは1〜3の範囲の正の電荷を有するであろう。対イオンは、デバイス中でのその化合物の機能、例えば発光物質としての機能を妨害しない任意の好適なアニオンから選択してよい。このアニオンは、そのデバイスの駆動電圧範囲にわたって電気化学的に不活性であるように選択される。好ましい対イオンは、典型的には弱い配位性アニオンである。「弱い配位性アニオン」の用語は、それ自体当技術分野で周知であり、一般的には、そのアニオンの負電荷を非局在化できる大きな嵩高いアニオンをいう。好適な弱い配位性アニオンは、その全てが必ずしも嵩高いと考えられるわけではないが、以下のものを含むがこれらに限定されない:PF、BF、SbCl、トリフルオロメタンスルホネート、BAr(Ar=C)、BAr’(Ar’=3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)、など。そのようなアニオン類の弱い配位性は当業者には公知であり、文献に記載されている(S. Straussら, Chem. Rev., 1993, 93, 927)。
【0067】
nが1である本発明の態様では、mは、Mの原子価を満たすように選択された整数であり;複数のLは同じであるか又は異なっていてよく;且つ、(L)はまとめて、6電子供与体の単一の負電荷配位子又は複数配位子の群を構成する。
【0068】
本発明の特定の態様では、環Aは環Bと異なる。本発明の好ましい態様では、環A及び環Bは同じになるように選択される。
【0069】
本発明のさらなる態様では、発光物質は下記式Iを有する。
【0070】
【化4】

【0071】
化I中、
Mは、第二又は第三周期の遷移金属であり;
Lは、補助配位子であり;
環Aは以下の
(a)3〜5個の環ヘテロ原子を有する8〜12員ビシクロ基;
(b)3〜6個の環ヘテロ原子を有する11〜18員トリシクロ基;
(c)11〜14員の縮合トリシクロ基;及び
(d)14〜18員の縮合テトラシクロ基、
からなる群から選択され;
各Rは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
aは0〜4であり;
環Bは以下の
(a)3〜5個の環ヘテロ原子を有する8〜12員ビシクロ基;
(b)3〜6個の環ヘテロ原子を有する11〜18員トリシクロ基;
(c)11〜14員の縮合トリシクロ基;及び
(d)14〜18員の縮合テトラシクロ基、
からなる群から選択され;
各Rは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
bは0〜4であり;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
、R、及びRは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
あるいは、R及びR、又はR及びRは、一緒になって、5又は6員環基、8〜10員の縮合ビシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基を形成してもよく、それらの環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成してもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成していてもよく;
各R’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
各R’’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアラルキルから選択され;
nは1又は2であり;且つ
mは0〜3であり、nが1である場合はmは1〜3であり、nが2である場合はmは0である。
【0072】
式Iの化合物のさらなる好ましい態様では、中心金属は2つの三座配位子(n=2、m=0)と結合して下記式IIを有する化合物をもたらす。
【0073】
【化5】

【0074】
式II中、X、X、X、R、R、M、環A、環B、a、及びbは、式Iの化合物について説明したとおりである。
【0075】
2つの三座配位子を含む本発明の化合物が好ましい。そのような化合物が好ましいのは、そのような配位子構成が、有機発光デバイス中に組み込まれたときのその物質の安定性を向上させうると考えられるからである。さらに、そのような物質は、OVPDなどの好ましい堆積法における昇華に対してより一層安定であるという追加の利点を有しうる。
【0076】
「5又は6員環基」の用語は、5又は6員環をいい、これは飽和、部分的不飽和、又は芳香族であってよく、任意選択で1つ以上の環ヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0077】
環A(特定の態様ではさらに環B)が、(a)3〜5の環ヘテロ原子を有する8〜12員ビシクロ基となるように選択される場合、このビシクロ基の環は任意選択で縮合していてもよい。好ましい態様では、このビシクロ基の環は芳香族である。3〜5の環ヘテロ原子を有する好ましいビシクロ基は、以下の環システムから選択してもよい。
【0078】
【化6】

【0079】
上記式中、RA2は5〜6員環基であり;「subst」は、ハロ、アルキル、CN、COR、C(O)R、NR、環式アミノ、NO、及びORから選択される任意選択で存在してもよい置換基を表す。
【0080】
「8〜10員の縮合ビシクロ基」の語は、8〜10員の環システムであって、それぞれの環が縮合しており(すなわち、その複数の環が2つの隣接環原子を共有する)、かつ、飽和、部分的不飽和、又は芳香族であってよく、かつ、任意選択で1つ以上の環ヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0081】
環A(特定の態様ではさらに環B)が(b)3〜6の環ヘテロ原子を有する11〜18員トリシクロ基であるように選択される場合、そのトリシクロ基の環のうちの2つが任意選択で縮合していてもよい。好ましい態様では、このトリシクロ基の環は芳香族である。3〜5の環ヘテロ原子を有する好ましいトリシクロ基は以下の環システムから選択してもよい。
【0082】
【化7】

【0083】
上記式中、RA2は5〜6員環基であり、RA3は8〜12員ビシクロ基から選択される。
【0084】
「11〜14員の縮合トリシクロ基」の語は11〜14員の環システムをいい、それぞれの環は飽和、部分的不飽和、又は芳香族であってよく、かつ、任意選択で1つ以上の環ヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0085】
特定の態様では、環A(特定の態様ではさらに環B)は(c)11〜14員の縮合トリシクロ基となるように選択される。好ましい11〜14員の縮合トリシクロ基は、以下の環システムから選択してもよい。
【0086】
【化8】

【0087】
「14〜18員の縮合テトラシクロ基」の語は、14〜18員の環システムをいい、それぞれの環は、飽和、部分的不飽和、又は芳香族であってよく、且つ任意選択で1つ以上の環ヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0088】
特定の態様では、環A(特定の態様ではさらに環B)は、(d)14〜18員の縮合テトラシクロ基となるように選択される。好ましい14〜18員の縮合テトラシクロ基は、以下の環システムから選択してもよい。
【0089】
【化9】

【0090】
本発明のさらなる態様では、発光物質は式IIIを有する。
【0091】
【化10】

【0092】
式中、
Mは、第二又は第三周期の遷移金属であり;
Lは、補助配位子であり;
はN及びC-Rから選択され;
はN及びC-Rから選択され;
及びRは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
あるいは、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、8〜10員の縮合ビシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基を形成してもよく、それらの環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
12は、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、及びC(O)R’から選択され;
はN及びC-Rから選択され;
はN及びC-Rから選択され;
及びRは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
あるいは、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、8〜10員の縮合ビシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基を形成してもよく、それらの環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
22は、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、及びC(O)R’から選択され;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
、R、及びRは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
あるいは、R及びR、又はR及びRは、一緒になって、5又は6員環基、8〜10員の縮合ビシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基を形成してもよく、それらの環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成してもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成していてもよく;
各R’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
各R’’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアラルキルから選択され;
nは1又は2であり;且つ
mは0〜3であり、nが1である場合はmは1〜3であり、nが2である場合はmは0である。
【0093】
式IIIの発光物質の特定の好ましい態様では、Y及びYのうち少なくとも1つはNである。特に好ましい態様では、R12はアリール基であるようにさらに選択される。
【0094】
式IIIの発光物質の特定の好ましい態様では、Z及びZのうち少なくとも1つはNである。特に好ましい態様では、R22はアリール基であるようにさらに選択される。
【0095】
式IIIの発光物質のその他の好ましい態様では、Y及びYはそれぞれC-R及びC-Rであり、且つR及びRは一緒になって8〜10員の縮合ビシクロ基、又は11〜14員の縮合トリシクロ基を形成し、これらの基は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0096】
式IIIの発光物質のその他の好ましい態様では、Z及びZはそれぞれC-R及びC-Rであり、且つR及びRは一緒になって8〜10員の縮合ビシクロ基、又は11〜14員の縮合トリシクロ基を形成し、これらの基は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0097】
本発明のさらなる態様では、発光物質は下記式IVを有する。
【0098】
【化11】

【0099】
式IV中、
Mは、第二又は第三周期の遷移金属であり;
点線は任意選択によって場合によっては二重結合を表し;
はC-R又はNであり;
は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
12は、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、及びC(O)R’から選択され;
13及びR14は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
それに加えて又はそれに代えて、R13及びR14は縮合した5又は6員環基を形成してもよく、その縮合環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
22は、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、及びC(O)R’から選択され;
23及びR24は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
それに加えて又はそれに代えて、R23及びR24は、縮合した5又は6員環基を形成してもよく、この縮合環基は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
各R’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
各R’’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアラルキルから選択される。
【0100】
本発明の好ましい態様では、各X、X、及びXは、C-R、C-R、C-Rとなるようにそれぞれ選択される。
【0101】
アリール及びヘテロアリール基の好ましい置換基には、CF、CN、CH、F、及びフェニルが含まれる。好ましい態様では、置換基Rは、CF、CN、CH、F、及びフェニルから選択され、CF及びCNが特に好ましい。
【0102】
本発明の好ましい態様では、上記デバイスはSet1、Set2、又は表Iから選択される発光物質を含む。表1には、本発明の様々な化合物について、HOMO、LUMO、HOMO−LUMOギャップ、一重項エネルギーS1、及び三重項エネルギーT1の予測値を得るための、G98/B31yp/cep-31g basis setを用いた密度関数理論(Density Function Theory (DFT))計算値を示している。
【0103】
【化12】

【0104】
【化13】

【0105】
【化14】

【0106】
【化15】

【0107】
【化16】

【0108】
【化17】

【0109】
【化18】

【0110】
【化19】

【0111】
【化20】

【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
【表3】

【0115】
【表4】

【0116】
【表5】

【0117】
【表6】

【0118】
【表7】

【0119】
【表8】

【0120】
【表9】

【0121】
【表10】

【0122】
【表11】

【0123】
【表12】

【0124】
【表13】

【0125】
【表14】

【0126】
【表15】

【0127】
【表16】

【0128】
【表17】

【0129】
【表18】

【0130】
好ましい態様には、2つの三座配位子を含み、それぞれの配位子がカルベンから及びアニオン性フェニル環からの中心金属への結合を有するオスミウム錯体が含まれる。
【0131】
「ハロ」又は「ハロゲン」の語は本明細書で用いるように、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を含む。
【0132】
「アルキル」の語は本明細書で用いるように、直鎖の及び分枝鎖のアルキル基の両方を意図している。好ましいアルキル基は1〜15の炭素原子を含むものであり、それにはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、などが含まれる。加えて、アルキル基は、ハロ、CN、COR、C(O)R、NR、環式アミノ、NO、及びORから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、各Rは独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択される。
【0133】
「シクロアルキル」の語は本明細書で用いるように、環状のアルキル基を意図している。好ましいシクロアルキル基は3〜7の炭素原子を含むものであり、それには、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれる。さらに、このシクロアルキル基は、任意選択により、ハロ、CN、COR、C(O)R、NR、環式アミノ、NO、及びORから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0134】
「アルケニル」の語は本明細書で用いるように、直鎖の及び分枝鎖のアルケン基の両方を意図している。好ましいアルケニル基は2〜15の炭素原子を含むものである。さらに、このアルケニル基は、任意選択により、ハロ、CN、COR、C(O)R、NR、環式アミノ、NO、及びORから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0135】
「アルキニル」の語は本明細書で用いるように、直鎖の及び分枝鎖のアルキン基の両方を意図している。好ましいアルキニル基は2〜15の炭素原子を含むものである。さらに、このアルキニル基は、任意選択により、ハロ、CN、COR、C(O)R、NR、環式アミノ、NO、及びORから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0136】
「アラルキル」の語は本明細書で用いるように、置換基として芳香族基を有するアルキル基を意図している。さらに、アラルキル基は、任意選択によりそのアリール基が、ハロ、CN、COR、C(O)R、NR、環式アミノ、NO、及びORから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0137】
「ヘテロ環基」の語は本明細書で用いるように、非芳香族環式基を意図している。好ましいヘテロ環基は、少なくとも1つのヘテロ原子を含む3〜7の環原子を含むものであり、これには、環式アミン、例えば、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノなど、及び環式エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどが含まれる。さらに、ヘテロ環基は、任意選択により、ハロ、CN、COR、C(O)R、NR、環式アミノ、NO、及びORから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0138】
「アリール」又は「芳香族基」の語は本明細書で用いるように、単環基及び多環式環システムを意図している。多環式環は2以上の環を有し、その2つの炭素が2つの隣接する環に共通しており(それらの環は「縮合」している)、それらの環のうち少なくとも1つが芳香族であり、例えば、別の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロ環、及び/又はヘテロアリールであることができる。さらに、アリール基は、任意選択により、ハロ、CN、COR、C(O)R、NR、環式アミノ、NO、及びORから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0139】
「ヘテロアリール」の語は本明細書で用いるように、1〜3のヘテロ原子を含みうる単環式ヘテロ芳香族基、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、及びピリミジンなどを意図している。ヘテロアリールの語は、2つ以上の環を有する多環式ヘテロ芳香族システムをも含み、この場合2つの原子が2つの隣接する環に共通しており(これらの環は「縮合」している)、その環のうちの少なくとも1つがヘテロアリールであり、例えば、別の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロ環、及び/又はヘテロアリールであることができ、ヘテロアリールには、例えば、キノリン、イソキノリン、インドール、カルバゾールなどが含まれる。さらに、ヘテロアリール基は、任意選択により、ハロ、CN、COR、C(O)R、NR、環式アミノ、NO、及びORから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0140】
本明細書に記載した様々な態様は例として用いられており、本発明の範囲を限定することを意図していないことが理解される。例えば、本明細書に記載した物質及び構造の多くは、本発明の精神から離れることなく別の物質及び構造と置き換えてもよい。本発明が如何なる理由で機能するかの様々な理論は限定することを意図したものではないことが理解される。例えば、電荷移動に関する理論は、限定することを意図していない。
【0141】
材料の定義
本明細書で用いるように、材料(物質)をいう略語は以下のとおりである。
CBP: 4,4’-N,N-ジカルバゾール-ビフェニル
m-MTDATA: 4,4’,4’’-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン
Alq3: 8-トリス-ヒドロキシキノリンアルミニウム
Bphen: 4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン
n-BPhen: n-ドープ型BPhen(リチウムでドープ)
F4-TCNQ: テトラフルオロ-テトラシアノ-キノジメタン
p-MTDATA: p-ドープ型m-MTDATA(F4-TCNQでドープ)
Ir(ppy)3: トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム
Ir(ppz)3: トリス(1-フェニルピラゾロト,N,C(2’)イリジウム(III)
BCP: 2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン
TAZ: 3-フェニル-4-(1’-ナフチル)-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール
CuPc: 銅フタロシアニン
ITO: インジウムスズオキシド
NPD: N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(1-ナフチル)-ベンジジン
TPD: N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-トリル)-ベンジジン
BAlq: アルミニウム(III)ビス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)4-フェニルフェノラート
mCP: 1,3-N,N-ジカルバゾール-ベンゼン
DCM: 4-(ジシアノエチレン)-6-(4-ジメチルアミノスチリル-2-メチル)-4H-ピラン
DMQA: N,N’-ジメチルキナクリドン
PEDOT:PSS: ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホネート(PSS)の水性分散物
DTB: 3,3-ジ(トリフェニレン-2-イル)ビフェニル
HIL4: fac-トリス[2-(3-メチル-2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)
【実施例】
【0142】
本発明の具体的代表例を以下に記載し、それにはどのようにそのような態様を作りうるかが含まれる。具体的な方法、物質(材料)、条件、プロセスパラメータ、装置などは、本発明の範囲を限定しないことが理解される。
【0143】
〔オスミウムカルベン錯体1(Os1)の合成〕
ステップ1:Os1−A
【化21】

【0144】
三ツ口の1000 mL丸底フラスコに、19.1 gのベンゾイミダゾール、25.0 gの1,3-ジヨードベンゼン、1.46 gのヨウ化銅(I)、44.7 gの炭酸カリウム、2.77 gの1,10-フェナントロリン、及び500 mLの無水N,N-ジメチルホルムアミドを仕込んだ。この反応混合物を窒素下で2日間加熱還流させた。室温に冷却した後、反応物を濾過し、溶媒を濾液からロータリーエバポレーターによって除去した。粗生成物を、95%ジクロロメタン/メタノールを溶離液として用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。所望の物質を含む画分を集め、溶媒をロータリーエバポレーターによって除去した。生成物を、ジクロロメタン/酢酸エチル混合物から再結晶した。生成物(18 g)を白色固体として、減圧濾過によって集めた。
【0145】
ステップ2: Os1−B
【化22】

【0146】
1000 mLの丸底フラスコに、15 gの化合物A、30 gのヨードメタン、及び400 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを仕込んだ。この混合物を約60℃に18時間加熱した。混合物を濾過し、固体を酢酸エチルで洗浄した。この固体を次に400 mLの還流するメタノール中でスラリーにし、冷却し、次に濾過して、20 gの所望の生成物を白色固体として得た。
【0147】
ステップ3: OsH(PPh)
1000 mLの三ツ口丸底フラスコに3.6 gのトリフェニルホスフィンと100 mLのエタノールを仕込んだ。この混合物を加熱還流させ、1.0 gのヘキサクロロオスミウム酸アンモニウムを添加した。50 mLのエタノール中の0.43 gの水素化ホウ素ナトリウムの溶液をつぎに滴下して添加した。反応物を30分間還流させ、次に室温に冷却した。灰白色固体を減圧濾過によって集めた。この固体を、エタノール、水、エタノール、及びヘキサンで順に洗浄した。
【0148】
ステップ4: Os1
【化23】

【0149】
250 mLの三ツ口丸底フラスコに4.0 gの化合物B、3.3 gのOsH(PPh)、及び125 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを仕込んだ。この混合物を20時間、窒素下で加熱還流させた。溶媒をロータリーエバポレーターによって除去し、粗生成物を、溶離液として80%ヘキサン/酢酸エチルを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。所望の生成物を含む画分を集め、溶媒をロータリーエバポレーターによって除去した。生成物を酢酸エチル/ヘキサン混合物から再結晶した。生成物は、マススペクトルと1H NMRによって確認した。
【0150】
室温におけるトルエン中の溶液(脱ガスした)としてのOs1の発光スペクトルを図3に示す。
【0151】
[実施例2]
【化24】

【0152】
〔オスミウムカルベン錯体OS2の合成〕
ステップ1
【化25】

【0153】
無水アセトニトリル(500 mL)中のCuBr(26.8 g, 120 mmole)の溶液に室温で亜硝酸t-ブチル(21.1 mL, 160 mmole)を滴下して添加し、次に3-アミノ-5-ブロモベンゾトリフルオライド(25 g, 104.1 mmole)を滴下して添加した。この混合物を0℃で1.5時間、次に室温で16時間撹拌した。この混合物を次に減圧下でその初めの体積の半分まで濃縮し、次に1N HCl(620 mL)中に注いだ。混合物をエーテル(400 mL)で抽出した。有機層を1N HClで洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物を、溶離液としてヘキサンを用いるシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、18.33 gのOS2−Aを得た(57.8%)。
【0154】
ステップ2
【化26】

【0155】
1000 mLの丸底フラスコに、13.33 gの化合物OS2−A、12.43 gのベンゾイミダゾール、1.668 gのヨウ化銅(I)、3.15 gの1,10-フェナントロリン、59.93 gの炭酸セシウム、及び500 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを仕込んだ。この反応混合物を窒素下で60時間、150℃に加熱した。室温に冷却した後、反応物を濾過し、溶媒を濾液からロータリーエバポレーターによって除去した。粗生成物を、95%ジクロロメタン/酢酸エチル混合物を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。生成物であるOS2−B(10 g, 60%)を白色固体として、減圧濾過によって集めた。
【0156】
ステップ3
【化27】

【0157】
1000 mLの丸底フラスコに、8 gの化合物OS2−C、60 gのヨードメタン、及び500 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを仕込んだ。この混合物を41℃に70時間加熱した。200 mLのトルエンを添加して沈殿を生じさせた。混合物を濾過し、固体をエーテルで洗浄して9 gのOS2−Cを得た(64%)。
【0158】
ステップ4
【化28】

【0159】
50 mLの丸底フラスコに、310 mgの化合物OS2−C、230 mgのOsH(PPh)、及び35 mLのN,N-ジメチルホルムアミドを仕込んだ。この混合物を150℃に3時間、窒素下で加熱した。反応混合物を水(150 mL)中に投入し、エーテルで抽出した。エーテルをロータリーエバポレーターによって除去した。残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO, 80%ヘキサン/酢酸エチル)によって精製してOS2を得た。
【0160】
室温における、トルエン中の溶液としてのOS2の発光スペクトルを図4に示す。
【0161】
[実施例3]
es−4の合成
【0162】
一口の100 mL丸底フラスコに、15 gの2,3-ジアミノナフタレンと30 mLの99%ギ酸を仕込んだ。この混合物を3時間、加熱還流させた。この混合物を、酢酸エチル及び水で抽出した。有機相を捨て、水相を水酸化ナトリウムで中和した。生成した固体を濾過し、水及びイソプロパノールで洗浄した。所望の生成物を減圧蒸留によって生成して、12 gのナフトイミダゾールを白色固体として得た。
【0163】
【化29】

【0164】
三ツ口の500 mL丸底フラスコに、10 gのナフトイミダゾール、8.9 gの1,3-ジヨードベンゼン、0.56 gのヨウ化銅(I)、17.2 gの炭酸カリウム、1.07 gの1,10-フェナントロリン、及び200 mLの無水N,N-ジメチルホルムアミドを仕込んだ。この反応混合物を、窒素下で18時間、加熱還流させた。室温に冷却後、反応物を濾過した。固体を水及びイソプロパノール混合物中でスラリーにした。この混合物を次に濾過し、イソプロパノールで洗浄して10 gの白色固体を得た。所望の生成物は1H NMRで確かめた。
【0165】
【化30】

【0166】
生成物を次に500 mLのNMPに溶かした。約30 gのヨードメタンを添加し、反応物を約80℃に36時間加熱した。混合物を冷却し、固体を濾過し、次に酢酸エチルで洗浄して、13 gの白色固体を得た。
【0167】
【化31】

【0168】
1 Lの三ツ口丸底フラスコに、2.0 gのヘキサクロロオスミウム酸アンモニウム、8.4 gのトリフェニルホスフィン、120 mLの水、及び300 mLのtert-ブチルアルコールを仕込んだ。混合物を窒素下で24時間、加熱還流させた。室温に冷却後、反応混合物を濾過し、固体を水、次にエタノールで洗浄した。緑色固体を風乾して8.4 gのOsCl(PPh)を得た。
【0169】
500 mLの三ツ口丸底フラスコに、5 gの酸化銀、5.0 gのes4i−3、及び約250 mLの無水N,N-ジメチルホルムアミドを仕込んだ。この混合物を60℃に1.5時間、窒素下で加熱した。室温に冷却後、3.75 gのOsCl(PPh)をこのフラスコに添加した。この混合物を100℃に18時間加熱し、次に120℃で6時間加熱した。塩化メチレンを添加し、固体を濾過した。濾液に水を添加し、水層を塩化メチレンで3回抽出した。一緒にした有機画分を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。この物質を、溶離液として30%ヘキサン/塩化メチレンを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。所望の画分を一緒にし、溶媒を除去してes−4を得て、これを次にジクロロメタン/ヘキサンから再結晶した。
【0170】
【化32】

【0171】
[実施例4]
es−7の調製
【0172】
【化33】

【0173】
ステップ1
三ツ口フラスコに、3,5-ジブロモベンゾニトリル(1 g, 3.86 mmol)、Nl-フェニルベンゼン-1,2-ジアミン(1.42 g, 7.72 mmol)、Pd(dba)(530 mg, 0.58 mmol)、(2-ビフェニル)ジ-t-ブチルホスフィン(345.5 mg, 1.158 mmol)、ナトリウムt-ブトキシド(1 g, 10.81 mmol)、及び無水トルエン(70 mL)を仕込んだ。この反応混合物を、窒素下で24時間、室温にて撹拌した。反応混合物を氷浴で0℃に冷却し、1M HCl(10.81 mL)のエーテル溶液を反応混合物中に添加した。反応混合物を濾過し、沈殿物を集め、さらに精製することなく次にステップに用いた。
【0174】
ステップ2
250 mLの丸底フラスコに、ステップ1からの生成物(1.8 g, 3.86 mmol)、オルトギ酸トリエチル(125 mL)、濃HCl(1 mL)、及びギ酸(数滴)を仕込んだ。この反応物を80℃に16時間加熱した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(100%塩化メチレンから、塩化メチレン中13%メタノール)にかけて、所望する配位子塩(1.082 g, 50%)を得た。
【0175】
ステップ3
100 mLの丸底フラスコに、配位子(1.12 g, 2 mmol)、酸化銀(1.39 g, 6 mmol)、(PPh)OsCl(1.048 g, 1 mmol)、及び無水DMF(50 mL)を仕込んだ。反応物を150℃に窒素下で1.5時間加熱した。反応混合物を濾過し、沈殿物を酢酸エチルで洗浄した。濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(SiO2, トリエチルアミンでの前処理, ヘキサン中5% CH2Cl2から、ヘキサン中50%のCH2Cl2)にかけて、es−7(72 mg, 6%)を得た。
【0176】
[実施例5]
es−8の合成
【0177】
【化34】

【0178】
500 mLの丸底フラスコに、3,5-ジブロモベンゾニトリル(10.0 g, 38.3 mmol)、4-アザベンゾイミダゾール(10.96 g, 92.0 mmol)、ヨウ化銅(I)(1.46 g, 7.7 mmol)、1,10-フェナントロリン(1.39 g, 7.7 mmol)、及び炭酸カリウム(11.1 g, 80.4 mmol)、及び無水ジメチルホルムアミド(100 mL)を仕込んだ。これを125℃で20時間撹拌した。混合物を次に常温に冷やし、濾過した。固体を19:1のジクロロメタン-メタノール(50 mL)で洗浄した。濾液を減圧下で濃縮し、粗生成物を19:1:0.1のジクロロメタン-メタノール-水酸化アンモニウムの移動相を用いてクロマトグラフィー(シリカゲル)にかけ、2.00 g(15.5%)の目的化合物を淡桃色固体として得た。1H nmr (DMSO-d6) δ9.10 (s, 2H), 9.09 (t, 1H), 8.64 (s, 2H), 8.47 (d, 2H), 8.25 (d, 2H), 7.44 (dd, 2H). MS (EI+) 337.
【0179】
【化35】

【0180】
250 mLの丸底フラスコに、3,5-ジ(3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)ベンゾニトリル(2.35 g, 6,97 mmol)、無水ジメチルホルムアミド(80 mL)、及びヨウ化n-ヘキシル(15.3 mL, 104.6 mmol)を仕込んだ。これを150℃で20時間撹拌した後、減圧下で濃縮した。酢酸エチル(100 mL)を添加し、固体を濾過し、メタノールから再結晶して3.83 g(72%)の配位子塩を淡黄色粉末として得た。1H nmr (DMF-d7) δ11.0 (s, 2H), 9.50 (t, 1H), 9.03 (m, 3H), 8.92 (m, 2H), 4.93 (t, 4H), 2.20 (m, 4H), 1.56 (m, 4H), 0.88 (t, 6H)。この配位子塩は、es−7を調製するために用いた手順と同様の手順にしたがってes−8に変換した。
【0181】
[実施例6]
es−9の合成
【0182】
【化36】

【0183】
ステップ1
三ツ口フラスコに、3,5-ジブロモベンゾニトリル(50 g, 0.19 mmol)、1,2,4-トリアゾール(26.5 g, 0.38 mmol)、ヨウ化銅(3.62 g, 0.019 mmol)、トランス-N,N’-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン(5.4 g, 0.038 mmol)、リン酸カリウム(無水, 161.3 g, 0.76 mole)、及び無水DMF(600 mL)を仕込んだ。この反応混合物を窒素下で撹拌し且つ110℃に24時間加熱し、次に室温に冷却した。固体を濾過し、DMFで洗浄した。一緒にした濾液と洗浄液を、減圧下で濃縮した。残留固体を酢酸エチルで洗浄し、昇華によって精製して所望の生成物を得た。
【0184】
ステップ2
1リットルの丸底フラスコに、ステップ1からの生成物(16.2 g, 0.068 mole)、1-ヨードヘキサン(144.2 g, 0.68 mole)、及び無水DMF(350 mL)を仕込んだ。この反応混合物をオイルバス中で150℃(バス温)に18時間加熱した。これを次に冷やし、減圧下で濃縮した。残留固体をメタノールから再結晶して配位子を得た(27.6 g, 62%)。
【0185】
ステップ3
500 mLの丸底フラスコに、配位子(11.18g, 16.89 mmole)、酸化銀(7.83 g, 33.78 mmol)、(PPh)OsCl(8.85 g, 8.44 mmole)、及び無水DMF(300 mL)を仕込んだ。反応物を150℃に窒素下で1時間加熱した。反応混合物を濾過し、沈殿物を塩化メチレンで洗浄した。濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(トリエチルアミンで前処理したSiO2, ヘキサン中25%のCH2Cl2からヘキサン中50%のCH2Cl2)にかけて、es−9(910 mg, 22%)を得た。
【0186】
es−4、es−7、es−8、及びes−9について上に示した方法と同様の方法によって、化合物es−1、es−2、es−3、es−5、及びes−6を調製した。
【0187】
[実施例7]
【0188】
【化37】

【0189】
ステップ1:
500 mLの三ツ口丸底フラスコに、1,3-ジヨードベンゼン(10 g, 0.03 mmol)、tert-ブチルカルバゼート(9.5 g, 0.072 mole)、ヨウ化銅(0.57 g, 0.003 mole)、1,10-フェナントロリン(2.16 g, 0.012 mole)、炭酸セシウム(27.36 g, 0.084 mole)、及び400 mLの無水DMFを仕込んだ。この反応混合物を80℃に21時間加熱した。反応混合物を400 mLの水で希釈し、塩化メチレンで抽出した。有機層を乾燥するまで濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって精製して、所望の化合物(11.3 g)を得た。
【0190】
ステップ2:
500 mLの三ツ口丸底フラスコに、アニリン(25.4 g, 0.27 mole)、トリエチルアミン(27.69 g, 0.27 mole)、及び370 mLのTHFを仕込んだ。50 gの2,4,6-トリメチルベンゾイルクロライドを0℃で滴下して添加した。反応混合物を夜通し撹拌し、60 gの所望の生成物を得た。
【0191】
ステップ3:
ステップ2からのアミド2 gを7 mlの塩化チオニルに溶かし、78℃で1時間加熱した。反応混合物を乾燥するまで濃縮し、次のステップで用いた。
【0192】
ステップ4:
ステップ3からのイミドイルクロライドを5 mLのTHFに溶かした。Boc-保護したヒドラジン(1.41 g, 4.179 mmole)とトリエチルアミン(1.16 mL, 8.36 mmole)の溶液を-10℃で滴下して添加した。反応物を次に室温で夜通し撹拌した。反応混合物を塩化メチレンで希釈し、0.1N HCl、及び飽和炭酸ナトリウムで洗浄した。有機層を乾燥するまで濃縮し、カラムクロマトグラフィーにかけて、所望の化合物(1.74 g)を得た。
【0193】
ステップ5:
ステップ4からの中間体1.74 gを、ジオキサン中の4N HClに溶かし、その混合物を室温で2.5時間撹拌した。反応混合物を次に乾燥するまで溶媒留去し、次のステップで用いた。
【0194】
ステップ6:
ステップ5からの中間体を、オルトギ酸トリエチル(40 mL)、HCl(2 ml)、及び数滴のギ酸と混合した。反応混合物を80℃で夜通し加熱した。反応混合物を1/3の体積まで濃縮し、沈殿が生じた。反応混合物を濾過し、所望の生成物(1.1 g)を得た。
【0195】
ステップ7:
ステップ6からの中間体1 gを無水メタノール(40 mL)に溶かし、0.5N ナトリウムメトキシド溶液(6.53 mL, 3.26 mmole)を添加し、生成物を濾別した(950 mg)。
【0196】
ステップ8:
500 mLの三ツ口丸底フラスコに、ステップ7からの配位子(6.64 g, 9.98 mmole)、ClOs(PPh)(2.6 g, 2.49 mmole)、及びm-キシレン(150 mL)を仕込んだ。反応混合物を完全に脱ガスし、夜通し加熱還流させた。反応混合物を濾過し、濾液を乾燥するまで濃縮させた。残留物をカラムクロマトグラフィーにかけて、1.31 gのOs錯体を得た。
【0197】
[実施例8]
本発明の燐光発光物質を含むOLEDは、米国特許出願第11/241,981号においてLinらによって、及び米国特許出願第11/242,025号においてTungらによって記載された方法にしたがって作製できる。
【0198】
出発基板は、80 nmの厚さのインジウムスズオキシド(ITO)でコーティングされ、25オーム/角未満のシート抵抗をもつ、Colorado Concept Coating LLCから購入したガラス基板だった。全ての以下の薄膜は、10-6未満の圧力において、熱蒸着によって堆積させた。カソードは10ÅのLiFと続く1,000ÅのAlからなる。全てのデバイスは、作製後すぐに窒素グローブボックス中(H2O及びO2が1 ppm未満)で、エポキシ樹脂で封止したガラス蓋で密封し、水分吸収剤をそのパッケージ内に組み込んだ。
【0199】
デバイス作製の前に、基板は石鹸溶液中で超音波によって清浄にし、脱イオン水で濯ぎ、イソプロパノール中で煮沸した。清浄化工程後、基板をNフロー下で乾燥させ、次にOプラズマ及びUVオゾン処理を行った。OLEDの有機層は、室温で、10-6 Torr未満の基礎圧力にて、抵抗加熱したアルミナるつぼからの熱蒸発によって、基板上に順次堆積させた。一つの成分層の割合は、基板に近く配置したInficon厚さモニター(Inficon thichness monitor)で調節した。各物質の具体的割合は、以下の表1に示している。2成分の発光層については、ドーパントの割合は、ドーパントの蒸発源の近くに配置した追加の結晶モニターを用いて調節した。この追加のモニターはホストの主な流れに曝されなかった。
【0200】
mCBP及びHPTはそれぞれ以下の構造を有する。
【0201】
【化38】

【0202】
表2に示した以下のデバイス構造を有するデバイスを作製した。ドーパント濃度は質量%で表している。
【0203】
【表19】

【0204】
【表20】

【0205】
表2に示したデバイスについてデバイス特性を測定し、図5〜69に示した。
【0206】
[実施例9]
本発明による実施例7(D356)からの燐光発光物質を含むOLEDを作製した。そのデバイス構造は以下のとおりである。
ITO (80 nm)/ HIL4 (10 nm)/ NPD (30 nm)/ mCP: D356, 9% (30 nm)/ mCP (X nm)/ Alq3 (40 nm)/ LiF/ Al
図70を参照されたい。これらのデバイスのデバイス特性を測定し、図71〜75に示している。
【0207】
本発明を具体例及び好ましい態様について説明したが、本発明はこれらの例及び態様に限定されないことが理解される。特許請求の範囲に記載した本発明は、したがって、本明細書に記載した具体例及び好ましい態様からの変形を含み、このことは当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード;
カソード;及び
前記アノードと前記カソードとの間に配置された燐光発光領域とを含み、
前記発光領域が下記式Iを有する発光物質を含む、有機発光デバイス。
【化1】

上記式I中、
Mは、第二又は第三周期の遷移金属であり;
Lは、補助配位子であり;
環Aは以下の
(a)3〜5個の環ヘテロ原子を有する8〜12員ビシクロ基;
(b)3〜6個の環ヘテロ原子を有する11〜18員トリシクロ基;
(c)11〜14員の縮合トリシクロ基;及び
(d)14〜18員の縮合テトラシクロ基、
からなる群から選択され;
各Rは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
aは0〜4であり;
環Bは、5又は6員環基、8〜12員ビシクロ基、11〜18員トリシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基、及び14〜18員の縮合テトラシクロ基から選択され;
各Rは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
bは0〜4であり;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
、R、及びRは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
あるいは、R及びR、又はR及びRは、一緒になって、5又は6員環基、8〜10員の縮合ビシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基を形成してもよく、それらの環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成してもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成していてもよく;
各R’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
各R’’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアラルキルから選択され;
nは1又は2であり;且つ
mは0〜3であり、nが1である場合はmは1〜3であり、nが2である場合はmは0である。
【請求項2】
Mが、Ru、Os、Re、Rh、Ir、Pd、及びPtから選択される、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
MがOs及びRuから選択される、請求項2記載のデバイス。
【請求項4】
MがOsである、請求項3記載のデバイス。
【請求項5】
前記発光物質が下記式IIを有する、請求項1記載のデバイス。
【化2】

上記式II中、
Mは、第二又は第三周期の遷移金属であり;
環Aは以下の
(a)3〜5個の環ヘテロ原子を有する8〜12員ビシクロ基;
(b)3〜6個の環ヘテロ原子を有する11〜18員トリシクロ基;
(c)11〜14員の縮合トリシクロ基;及び
(d)14〜18員の縮合テトラシクロ基、
からなる群から選択され;
各Rは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
aは0〜4であり;
環Bは、5又は6員環基、8〜12員ビシクロ基、11〜18員トリシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基、及び14〜18員の縮合テトラシクロ基から選択され;
各Rは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
bは0〜4であり;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
、R、及びRは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
あるいは、R及びR、又はR及びRは、一緒になって、5又は6員環基、8〜10員の縮合ビシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基を形成してもよく、それらの環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成してもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成していてもよく;
各R’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
各R’’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアラルキルから選択される。
【請求項6】
MがOsである、請求項5記載のデバイス。
【請求項7】
前記発光物質が下記式IIIを有する、請求項1記載のデバイス。
【化3】

式III中、
Mは、第二又は第三周期の遷移金属であり;
Lは、補助配位子であり;
はN及びC-Rから選択され;
はN及びC-Rから選択され;
及びRは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
あるいは、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、8〜10員の縮合ビシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基を形成してもよく、それらの環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
12は、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、及びC(O)R’から選択され;
はN及びC-Rから選択され;
はN及びC-Rから選択され;
及びRは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
あるいは、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、8〜10員の縮合ビシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基を形成してもよく、それらの環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
22は、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、及びC(O)R’から選択され;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
、R、及びRは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
あるいは、R及びR、又はR及びRは、一緒になって、5又は6員環基、8〜10員の縮合ビシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基を形成してもよく、それらの環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成してもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成していてもよく;
各R’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
各R’’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアラルキルから選択され;
nは1又は2であり;且つ
mは0〜3であり、nが1である場合はmは1〜3であり、nが2である場合はmは0である。
【請求項8】
MがOsである、請求項7記載のデバイス。
【請求項9】
前記発光物質が下記式IVを有する、請求項1記載のデバイス。
【化4】

式IV中、
Mは、第二又は第三周期の遷移金属であり;
点線は任意選択によって場合によっては二重結合を表し;
はC-R又はNであり;
は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
12は、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、及びC(O)R’から選択され;
13及びR14は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
それに加えて又はそれに代えて、R13及びR14は縮合した5又は6員環基を形成してもよく、その縮合環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
22は、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、及びC(O)R’から選択され;
23及びR24は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
それに加えて又はそれに代えて、R23及びR24は、縮合した5又は6員環基を形成してもよく、この縮合環基は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
各R’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
各R’’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアラルキルから選択される。
【請求項10】
MがOsである、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記発光物質が以下のものから選択される、請求項1記載のデバイス。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【請求項12】
下記式Iを有する化合物。
【化10】

上記式I中、
Mは、第二又は第三周期の遷移金属であり;
Lは、補助配位子であり;
環Aは以下の
(a)3〜5個の環ヘテロ原子を有する8〜12員ビシクロ基;
(b)3〜6個の環ヘテロ原子を有する11〜18員トリシクロ基;
(c)11〜14員の縮合トリシクロ基;及び
(d)14〜18員の縮合テトラシクロ基、
からなる群から選択され;
各Rは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
aは0〜4であり;
環Bは、5又は6員環基、8〜12員ビシクロ基、11〜18員トリシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基、及び14〜18員の縮合テトラシクロ基から選択され;
各Rは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
bは0〜4であり;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
、R、及びRは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
あるいは、R及びR、又はR及びRは、一緒になって、5又は6員環基、8〜10員の縮合ビシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基を形成してもよく、それらの環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成してもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成していてもよく;
各R’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
各R’’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアラルキルから選択され;
nは1又は2であり;且つ
mは0〜3であり、nが1である場合はmは1〜3であり、nが2である場合はmは0である。
【請求項13】
Mが、Ru、Os、Re、Rh、Ir、Pd、及びPtから選択される、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
MがOs及びRuから選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
MがOsである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
下記式IIを有する、請求項12に記載の化合物。
【化11】

上記式II中、
Mは、第二又は第三周期の遷移金属であり;
環Aは以下の
(a)3〜5個の環ヘテロ原子を有する8〜12員ビシクロ基;
(b)3〜6個の環ヘテロ原子を有する11〜18員トリシクロ基;
(c)11〜14員の縮合トリシクロ基;及び
(d)14〜18員の縮合テトラシクロ基、
からなる群から選択され;
各Rは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
aは0〜4であり;
環Bは、5又は6員環基、8〜12員ビシクロ基、11〜18員トリシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基、及び14〜18員の縮合テトラシクロ基から選択され;
各Rは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
bは0〜4であり;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
、R、及びRは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
あるいは、R及びR、又はR及びRは、一緒になって、5又は6員環基、8〜10員の縮合ビシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基を形成してもよく、それらの環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成してもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成していてもよく;
各R’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
各R’’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアラルキルから選択される。
【請求項17】
MがOsである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
下記式IIIを有する、請求項12記載の化合物。
【化12】

式III中、
Mは、第二又は第三周期の遷移金属であり;
Lは、補助配位子であり;
はN及びC-Rから選択され;
はN及びC-Rから選択され;
及びRは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
あるいは、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、8〜10員の縮合ビシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基を形成してもよく、それらの環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
12は、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、及びC(O)R’から選択され;
はN及びC-Rから選択され;
はN及びC-Rから選択され;
及びRは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
あるいは、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、8〜10員の縮合ビシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基を形成してもよく、それらの環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
22は、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、及びC(O)R’から選択され;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
はC-R及びNから選択され;
、R、及びRは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
あるいは、R及びR、又はR及びRは、一緒になって、5又は6員環基、8〜10員の縮合ビシクロ基、11〜14員の縮合トリシクロ基を形成してもよく、それらの環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成してもよく;
それに加えて又はそれに代えて、R及びRは一緒になって、5又は6員環基、あるいは8〜10員の縮合ビシクロ基を形成していてもよく;
各R’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
各R’’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアラルキルから選択され;
nは1又は2であり;且つ
mは0〜3であり、nが1である場合はmは1〜3であり、nが2である場合はmは0である。
【請求項19】
MがOsである、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
下記式IVを有する、請求項12記載の化合物。
【化13】

式IV中、
Mは、第二又は第三周期の遷移金属であり;
点線は任意選択によって場合によっては二重結合を表し;
はC-R又はNであり;
は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
12は、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、及びC(O)R’から選択され;
13及びR14は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
それに加えて又はそれに代えて、R13及びR14は縮合した5又は6員環基を形成してもよく、その縮合環は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
22は、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、及びC(O)R’から選択され;
23及びR24は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
それに加えて又はそれに代えて、R23及びR24は、縮合した5又は6員環基を形成してもよく、この縮合環基は任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、O-R’、N(R’)、SR’、C(O)R’、C(O)OR’、C(O)NR’、CN、CF、NO、SOR’、SOR’、SOR’、Si(R’’)、ハロ、アリール、及びヘテロアリールから独立に選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;
各R’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択され;
各R’’は独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアラルキルから選択される。
【請求項21】
MがOsである、請求項20記載の化合物。
【請求項22】
以下の:
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

から選択される構造を有する、請求項12記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【公表番号】特表2010−540656(P2010−540656A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528153(P2010−528153)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/078697
【国際公開番号】WO2009/046266
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(503055897)ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション (61)
【Fターム(参考)】