説明

三方活栓

【課題】第1の円筒体から第3の円筒体の全てが連通した状態、及び第1の円筒体と第3の円筒体のみを連通した状態において薬液が滞留することを防止することができる三方活栓を提供する。
【解決手段】三方活栓10は、本体12、第1の円筒体14、第2の円筒体16、第3の円筒体18、及び円柱体24とを備え、本体12の内周面には、第3の円筒体18と第1の円筒体14とを連通する本体連通溝32が形成され、円柱体24の外周面には、薬液が滞留しないように、第1の円筒体14から第3の円筒体18の全てが連通する状態と第3の円筒体18と第1の円筒体14のみが連通する状態に回転して切換可能であるように円柱体連通溝34が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状に形成されている本体とこの本体の内部に設けられている円柱体により本体と第1の円筒体、第2の円筒体、及び第3の円筒体の連通状態を変更可能である三方活栓に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状の本体の前方と後方に円筒状の第1の円筒体及び第2の円筒体を形成し、本体の側部であって第1の円筒体及び第2の円筒体の間に円筒状の第3の円筒体を突設し、本体の内部に栓体の切換部を装着し、外部に栓体のハンドル部を形成し、切換部は、断面が矩形の軸部を有し、軸部の側部に弓状の封鎖部を形成した平面視で略T字状に形成した三方活栓が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
上記従来技術によれば、第1の円筒体から第3の円筒体を全て連通した場合に、第2の円筒体から本体に流入した薬液は、切換部の軸部により本体から第3の円筒体に流入すると共に、第3の円筒体から第1の円筒体に流出するため、薬液が第3の円筒体で滞留することを防止することができるとされている。
【特許文献1】実用新案登録第3120790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術では、第1の円筒体と第3の円筒体のみを連通した場合に、本体の第3の円筒体側においては、薬液が第3の円筒体から第1の円筒体に滞留することなく流れるものの、本体の第3の円筒体に対向する側においては、本体の内壁と切換部の軸部間で薬液が滞留するという問題がある。
【0005】
本発明は、第1の円筒体から第3の円筒体の全てが連通した状態、及び第1の円筒体と第3の円筒体のみを連通した状態において薬液が滞留することを防止することができる三方活栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の三方活栓は、円筒状に形成されている本体と、前記本体と連通可能であり前記本体の外周面から一方向に所定の距離延びる円筒状に形成されている第1の円筒体と、前記本体と連通可能であり前記本体の外周面から他方向に所定の距離延びる円筒状に形成されている第2の円筒体と、前記本体と連通可能であり前記本体の外周面から前記一方向と前記他方向の間の方向に所定の距離延びる円筒状に形成されている第3の円筒体と、前記本体の内部に液密であり回転自在である円柱状に形成されている円柱体とを備え、前記本体の内周面には、前記第3の円筒体と前記第1の円筒体とを連通する本体連通溝が形成され、前記円柱体の外周面には、前記第1の円筒体から前記第3の円筒体の全てが連通する状態と前記第3の円筒体と前記第1の円筒体のみが連通する状態に回転して切換可能であるように円柱体連通溝が形成され、前記円柱体連通溝は、前記第1の円筒体から前記第3の円筒体の全てが連通する状態にある場合に、前記第2の円筒体から前記第3の円筒体に向かう方向の後端面が前記第2の円筒体の径の範囲内に位置し、前記第2の円筒体から前記第3の円筒体に向かう方向の先端面が前記第3の円筒体の径の範囲内に位置して前記第3の円筒体の軸方向に向けて形成されている共に、前記第3の円筒体と前記第1の円筒体のみが連通する状態にある場合に、前記後端面が、前記第3の円筒体の径の範囲内に位置し、前記先端面が、前記第1の円筒体の径の範囲内に位置するように形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、本体連通溝が第3の円筒体と第1の円筒体とを連通するように形成され、円柱体連通溝は、第1の円筒体から第3の円筒体の全てが連通する状態にある場合に、第2の円筒体から第3の円筒体に向かう方向の後端面が第2の円筒体の径の範囲内に位置し、第2の円筒体から第3の円筒体に向かう方向の先端面が第3の円筒体の径の範囲内に位置して第3の円筒体の軸方向に向けて形成されている。従って、円柱体により第1の円筒体から第3の円筒体の全てが連通する状態にした場合に、第2の円筒体から第3の円筒体において円柱体の後端面から先端面まで薬液が流れ込み、先端面で薬液が第3の円筒体の方向に流路を変えるため第3の円筒体の内部まで薬液が流れ込む。そして、第3の円筒体から第1の円筒体には、本体連通路と円柱体の外周面の間を通って薬液が流れる。従って、第3の円筒体内で薬液が滞留することがなく、第2の円筒体から第1の円筒体まで薬液が滞留することを防止することができる。
【0008】
また、本体連通溝が第3の円筒体と第1の円筒体とを連通するように形成され、円柱体連通溝は、第3の円筒体と第1の円筒体のみが連通する状態にある場合に、後端面が、第3の円筒体の径の範囲内に位置し、先端面が、第1の円筒体の径の範囲内に位置するように形成されている。従って、円柱体により第3の円筒体と第1の円筒体のみが連通する状態にした場合に、第3の円筒体から第1の円筒体に薬液が滞留することなく流れ込み、第3の円筒体から第1の円筒体まで薬液が滞留することを防止することができる。
【0009】
本発明の三方活栓において、前記円柱体連通溝は、前記第1の円筒体から前記第3の円筒体の全てが連通する状態にある場合に、前記後端面が、前記第2の円筒体の前記第3の円筒体に対して遠位位置の端部に位置し、前記先端面が、前記第3の円筒体の中心に位置していることが好ましい。
【0010】
この好ましい形態によれば、第2の円筒体から第3の円筒体に流れる薬液の流路を広く確保することができる。また、先端面が第3の円筒体の中心に位置しているため、薬液が第3の円筒体の中心を境にUターンするので、薬液を円滑に第3の奥まで誘導することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明に係る三方活栓の一例を示す平面図である。三方活栓10は、円筒状に形成されている本体12を有している。本体12には、本体12と連通可能であり本体12の外周面から右方向に所定の距離延びる円筒状に形成されている導出管(第1の円筒体)14が延設されている。また、本体12には、本体12と連通可能であり本体12の外周面から左方向に所定の距離延びる円筒状に形成されている第1の導入管(第2の円筒体)16が延設されている。また、本体12には、本体12と連通可能であり本体12の外周面から下方向に所定の距離延びる円筒状に形成されている第2の導入管(第3の円筒体)18が延設されている。本体12の軸線と導出管14、第1の導入管16、及び第2の導入管18は直交している。
【0012】
導出管14は、薬液を本体12から人体側に流出するためのものである。導出管14の右端部には、右方向に向かって縮径する雄ルアー部20が形成されている。雄ルアー部20を有する導出管14には、雌ルアー部を左端に有するコネクタが接続される。
【0013】
第1の導入管16は、薬液が本体12に流入するようにするためのものである。第1の
導入管16の左端には雄ねじ22が形成されている。雄ねじ22を有する第1の導入管16には、右端に雄ルアー部を有するコネクタの雌ねじが螺合する。
【0014】
第2の導入管18は、薬液が本体12に流入するようにするためのものである。第2の導入管18は、シリンジ等により第2の導入管18に第1の導入管16から流入する薬液と異なる薬液を流入して混合液を導出管14から流出するために用いられる。第2の導入管18の下端には雄ねじ24が形成されている。雄ねじ24有する第2の導入管18には、上端に雄ルアー部を有するコネクタの雌ねじが螺合する。尚、第2の導入管18の入口には、有底円筒状で底部の中央部にスリットを形成した弾性体25が装着されているため、第1の導入管16から本体12に流入した薬液が第2の導入管18から流出することが防止されている。
【0015】
本体12の内部には、液密であり回転自在である円柱状に形成されている円柱体26が挿設されている。円柱体26は、回転して本体12と導出管14、第1の導入管16、及び第2の導入管18の連通状態を変更するものである。円柱体26の上部には、円柱体26を回転するためのT字状の操作部28が設けられている。操作部28の上面には、薬液が流入又は流出する方向を示す矢印30が設けられている。
【0016】
図2は、図1の横断面図である。本体12の内周面には、第2の導入管18と導出管14とを連通する本体連通溝32が設けられている。円柱体26の外周面には、第1の導入管16と第2の導入管18とが連通する状態と第2の導入管18と導出管14とが連通する状態に回転して切換可能であるように円柱体連通溝34が形成されている。
【0017】
円柱体連通溝34は、図2に示すように、導出管14、第1の導入管16、及び第2の導入管18の全てが連通する状態にある場合に、第1の導入管16から第2の導入管18に向かう方向の後端面34aが第1の導入管16の径の範囲内に位置し、第1の導入管16から第2の導入管18に向かう方向の先端面34bが第2の導入管18の径の範囲内に位置して第2の導入管18の軸方向に向けて形成されている。
【0018】
図3は、図1の三方活栓において導出管と第2の導入管とを連通状態した場合を示す平面図である。図4は、図3の横断面図である。図1の三方活栓において操作部28を左回りに90°回転すると導出管14と第2の導入管18とが連通する。
【0019】
円柱体連通溝34は、図4に示すように、第2の導入管18と導出管14のみが連通する状態にある場合に、後端面が34a、第2の導入管18の径の範囲内に位置し、先端面34bが、導出管14の径の範囲内に位置するように形成されている。
【0020】
次に、本実施形態における三方活栓の使用方法について説明する。第1の導入管16から本体12に薬液を流入して本体12から導出管14に薬液が流出するようにしたい場合、及び第1の導入管16及び第2の導入管18から本体12に薬液を流入して本体12から導出管14に薬液を流出するようにしたい場合には、三方活栓10の操作部28を、図1のように矢印30が導出管14、第1の導入管16、及び第2の導入管18の方向に向くように回転操作する。
【0021】
この状態では、内部の流路は図2のような状態となり、第1の導入管16から流入する薬液は、第1の導入管16の開口部から円柱体連通溝34を介して第2の導入管18に流入する。このとき、先端面34bは第2の導入管18の中心にあるので第2の導入管18の奥まで流入してUターンし、第2の導入管18の開口に戻る。その後、薬液は、円柱体26の外周面と本体連通溝32の間を通って導出管14から外部に流出される。
【0022】
第2の導入管18から本体12に薬液を流入して本体12から導出管14に薬液を流出するようにしたい場合には、三方活栓10の操作部28を、図3のように矢印30が導出管14及び第2の導入管18の方向に向くように回転操作する。
【0023】
この状態では、内部の流路は図4のような状態となり、第2の導入管18から流入する薬液は、第2の導入管18の開口部から本体連通溝32及び円柱体連通溝34を介して導出管14に流入する。
【0024】
以上、本実施形態によれば、本体連通溝32が第2の導入管18と導出管14とを連通するように形成され、円柱体連通溝34は、導出管14、第1の導入管16、及び第3の導入管18の全てが連通する状態にある場合に、第1の導入管16から第2の導入管18に向かう方向の後端面34aが第1の導入管16の径の範囲内に位置し、第1の導入管16から第2の導入管18に向かう方向の先端面34bが第2の導入管18の径の範囲内に位置して第2の導入管18の軸方向に向けて形成されている。従って、円柱体26により導出管14、第1の導入管16、及び第3の導入管18の全てが連通する状態にした場合に、第1の導入管16から第2の導入管18において円柱体26の後端面34aから先端面34bまで薬液が流れ込み、先端面34bで薬液が第2の導入管18の方向に流路を変えるため第2の導入管18の内部まで薬液が流れ込む。そして、第2の導入管18から導出管14には、本体連通路32と円柱体26の外周面の間を通って薬液が流れる。従って、第2の導入管18で薬液が滞留することがなく、第1の導入管16から導出管14まで薬液が滞留することを防止することができる。
【0025】
また、本体連通溝32が第2の導入管18と導出管14とを連通するように形成され、円柱体連通溝34は、第2の導入管18と導出管14のみが連通する状態にある場合に、後端面34aが、第2の導入管18の径の範囲内に位置し、先端面34bが、導出管14の径の範囲内に位置するように形成されている。従って、円柱体26により第2の導入管18と導出管14のみが連通する状態にした場合に、第2の導入管16から導出管14に薬液が滞留することなく流れ込み、第2の導入管18から導出管14まで薬液が滞留することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る三方活栓の一例を示す平面図である。
【図2】図1の横断面図である。
【図3】図1の三方活栓において導出管と第2の導入管とを連通状態した場合を示す平面図である。
【図4】図3の横断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10…三方活栓、12…本体、14…導出管、16…第1の導入管、18…第2の導入管、20…雄ルアー部、22…雄ねじ、24…雄ねじ、25…弾性体、26…円柱体、28…操作部、30…矢印、32…本体連通溝、34…円柱体連通溝、34a…後端面、34b…先端面。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成されている本体と、
前記本体と連通可能であり前記本体の外周面から一方向に所定の距離延びる円筒状に形成されている第1の円筒体と、
前記本体と連通可能であり前記本体の外周面から他方向に所定の距離延びる円筒状に形成されている第2の円筒体と、
前記本体と連通可能であり前記本体の外周面から前記一方向と前記他方向の間の方向に所定の距離延びる円筒状に形成されている第3の円筒体と、
前記本体の内部に液密であり回転自在である円柱状に形成されている円柱体とを備え、
前記本体の内周面には、前記第3の円筒体と前記第1の円筒体とを連通する本体連通溝が形成され、
前記円柱体の外周面には、前記第1の円筒体から前記第3の円筒体の全てが連通する状態と前記第3の円筒体と前記第1の円筒体のみが連通する状態に回転して切換可能であるように円柱体連通溝が形成され、前記円柱体連通溝は、前記第1の円筒体から前記第3の円筒体の全てが連通する状態にある場合に、前記第2の円筒体から前記第3の円筒体に向かう方向の後端面が前記第2の円筒体の径の範囲内に位置し、前記第2の円筒体から前記第3の円筒体に向かう方向の先端面が前記第3の円筒体の径の範囲内に位置して前記第3の円筒体の軸方向に向けて形成されていると共に、前記第3の円筒体と前記第1の円筒体のみが連通する状態にある場合に、前記後端面が、前記第3の円筒体の径の範囲内に位置し、前記先端面が、前記第1の円筒体の径の範囲内に位置するように形成されていることを特徴とする三方活栓。
【請求項2】
前記円柱体連通溝は、前記第1の円筒体から前記第3の円筒体の全てが連通する状態にある場合に、前記後端面が、前記第2の円筒体の前記第3の円筒体に対して遠位位置の端部に位置し、前記先端面が、前記第3の円筒体の中心に位置していることを特徴とする請求項1記載の三方活栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−110572(P2010−110572A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288111(P2008−288111)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】