説明

三方継手

【課題】 本発明は、車両のウォッシャノズルに使用される三方継手に関し、洗浄液がウォッシャノズルから漏れ出すのを防止すると共に、部品点数の削減によりコストを低減させ、且つ、コンパクトにホースを配設できるようにすることが課題である。
【解決手段】 三方に流路を有するホース用の三方継手であって、前記三方の流路を形成するニップル2,3,4が中央部の弁箱5に連通し、該弁箱には、前記三方の流路に連通する三箇所の開口部6,7,8が設けられるとともに、弁箱内部の閉空間には前記三箇所の開口部を閉蓋するように弾性体9で閉蓋方向に付勢された弁体10が設けられている三方継手1とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のフロントガラス等にウォッシャノズルによって洗浄液を噴射させる装置における、複数個のウォッシャノズルに洗浄液を分配する三方継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図7乃至図8に示すように、自動車等の車両におけるフロントガラス21への洗浄液の噴射装置として、フロントパネル(いわゆるボンネット)22の上に2箇所に備えられたウォッシャノズル23a,23bと、該ウォッシャノズル23の供給用ニップルに接続される洗浄液用ホース24a,24bと、このホース24a,24bの一端側に接続され前記両ウォッシャノズル23a,23bの中間部に配設されるT型継手25と、該T型継手25の中央部継手25aに接続される洗浄液供給用ホース26と、該洗浄液供給用ホース26の一端側に接続される供給用ポンプ27と、この供給用ポンプ27にホース28a等を介して接続される洗浄液貯留用のタンク28とで構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−314792号公報
【特許文献2】特開2000−85545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のウォッシャノズル用のT型継手25においては、ウォッシャノズル23a,23bから洗浄液を噴射して、その後、噴射停止した場合に、前記T型継手25の中央部継手25aに逆流を防止する逆止弁(図示せず)が設けられており、洗浄液が戻らないようにされているが、前記洗浄液用ホース24a,24bにおいては洗浄液が充満しており、且つ、T型継手25を介して互いに連通している。
【0005】
よって、車両が横揺れした場合等には、ウォッシャノズル23a,23bのいずれからの噴射口から前記洗浄液用ホース2a,24b内の洗浄液が溢れ出して、ボンネット22の上面にこぼれ落ちることがある。それにより、ウォッシャノズル23に液漏れが有るとの誤解を生じる不都合がある。また、その液漏れを防ぐために、前記T型継手25の分岐部25b,25cにそれぞれ逆止弁を設けると、確実に液漏れが防げるがその一方でコストの高騰を招く。このように、洗浄液噴射停止時において、ウォッシャノズル23からの液漏れを防ぐと共に、それを低コストにして課題を解決しなければならない。そこで、本発明に係る三方継手は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るY型三方継手の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、三方に流路を有するホース用の三方継手であって、前記三方の流路を形成するニップルが中央部の弁箱に連通し、該弁箱には、前記三方の流路に連通する三箇所の開口部が設けられるとともに、弁箱内部の閉空間には前記三箇所の開口部を閉蓋するように弾性体で閉蓋方向に付勢された弁体が設けられていることである。
【0007】
また、前記三方継手の本体の中央部に凹状の弁箱が形成され、該弁箱における凹状の底部に周方向に均等配置で三箇所に開口部が設けられ、上部の外部に連通する開口部には当該開口部を液密に封止する嵌め殺し蓋が嵌合されること、;
更に、前記弁体がゴム製であり、その弁体の封止作用する端面と反対側の端面から周方向に沿ってフランジが可撓性屈曲部を介して延出し突設され、該フランジは、前記弁体本体の封止作用方向の進出・後退移動を支持すると共に、該フランジの周縁部が弁箱内部の底部若しくは内周壁の途中に設けられた段部と嵌め殺し蓋の嵌合用側壁の端部との間に挟まれて封止作用するものであること、;
前記弾性体は、弁体の一体的な一部であること、;
三方継手の平面視した形状がY字型であること、;
を含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の三方継手によれば、弁箱内部の閉空間において、タンクから供給される高圧洗
浄液がその圧力によって、弾性体の付勢する力に抗して弁体を押し上げ、洗浄液供給側のホースに連通する開口部から前記閉空間の弁体が押し上げられてできた閉空間の内部に浸入する。前記弁体が押し上げられた事で、他の2箇所の開口部も同時に開口される。よって、前記浸入した高圧洗浄液が他の2箇所の開口部から流出して、その2箇所の開口部に連通するウォッシャノズル用ホースを介してそれぞれウォッシャノズルに至り、そこからフロントガラスに向かって高圧洗浄液が噴射される。この状態では、前記ウォッシャノズル用ホースの流路が、前記2箇所の開口部及び弁体が押し上げられてできる閉空間によって、互いに連通する状態になる。
【0009】
その後、洗浄液の噴射が停止されると、高圧洗浄液の供給が停止し、前記弁体を押し上げていた高圧洗浄液の圧力が消勢するので、弾性体によって前記弁体が閉蓋方向に押し下げられ、前記閉空間に連通する3箇所の開口部が同時に閉蓋される。これにより、三方継手により枝分かれしているウォッシャノズル用ホースの流路が、それぞれ前記弁体により開口部において分断されて閉蓋され、互いに連通することがない。よって、車体が横揺れなどして場合でも、前記各々ウォッシャノズル用ホースに残っている洗浄液が、ウォッシャノズルの噴射口から漏れ出すことがないのである。このようにして、2本のウォッシャノズル用ホースに接続されるニップルにそれぞれ逆止弁を設けることなく、低コストにて、ウォッシャノズルからの液漏れを防止することができるものである。
【0010】
また、弁箱が凹状で外部に連通する開口部があることで、弁体と弾性体の組立が容易となり、組立工数の削減となってコスト低減となる。
更に、弁体のフランジが弁箱の閉空間の封止作用をするので、別個に封止用パッキンが不要となり、部品点数が削減され、部品管理も容易になる。
前記弾性体は、前記弁体と別体にした、例えば、コイルスプリングなどであるが、前記弁体の一部とすることで、閉蓋方向に付勢するする作用は同じで、部品点数が減ることになり、コスト低減となると共に、部品管理が容易となる。
このほか、Y字型の三方弁とするとこで、ホースの引き回しが纏めてコンパクトに配置できるようになり、車両内部での高密度部品配置において、狭小スペースの有効利用となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る三方継手1は、図1乃至図3に示すように、三方に流路を有するホース用の三方継手であって、前記三方の流路を形成するニップル2,3,4が中央部の弁箱5に連通し、該弁箱5には、前記三方の流路に連通する三箇所の開口部6,7,8が設けられるとともに、弁箱5内部の閉空間には前記三箇所の開口部6,7,8を閉蓋するように弾性体、例えば、コイルスプリング9によって閉蓋方向に付勢された弁体10が設けられている。
【0012】
また、三方継手1の本体中央部に凹状の弁箱5が形成されていて、該弁箱5における凹状の底部に周方向に均等配置で三箇所に前記開口部6,7,8が設けられ、上部の外部に連通する開口部5aには当該開口部5aを液密に封止する嵌め殺し蓋11が嵌合される。なお、符号12は、ボンネットなどへの取り付けに使用される着脱自在なクリップを示している。このクリップ12は、合成樹脂製であり、前記三方継手の本体中央部の下側外表面に形成された係止突起5bに弾性係止片12a,12bの孔部を係止させて、取り付けるものである。
【0013】
前記弁体10は全体が円形状でゴム製であり、その弁体10の封止作用する端面10aと反対側の端面10bから周方向に沿ってフランジ10cが可撓性屈曲部10dを介して延出し突設されている。
【0014】
該フランジは10c、前記弁体本体10eの封止作用方向aに沿って、進出・後退移動を支持すると共に、該フランジ10cの周縁部が弁箱5内部の底部若しくは内周壁の途中に設けられた段部5cと嵌め殺し蓋11の嵌合用側壁11aの端部11bとの間に挟まれて封止作用するものである。また、前記嵌め殺し蓋11の中央部には、弁体10の前記進出・後退移動の支障と成らないように設けた空気抜き穴11cが設けられている。
【0015】
前記弁箱5の閉空間において、図1及び図3に示すように、段部5cから底部に至るまで内周壁面に周方向に沿って複数個設けたガイド突起5dは、その突出端面が前記弁体10の外側周壁面に摺接して、この弁体10の前記進出・後退移動のガイドをするものであり、摩擦抵抗を減ずるようにして、当該弁体10の動きをスムーズにするものである。
【0016】
前記弾性体のコイルスプリング9は、前記嵌め殺し蓋11の内壁面に反力を取って、前記弁体10を封止作用方向aに常に付勢するするものである。弁体10側には、図4に示すように、コイルスプリング9をはめ込むためのリング状凹溝10fが設けられている。
【0017】
また、この弾性体の他の実施例として、例えば、前記弁体10の一体的な一部であるようにするものである。このように、前記弾性体もゴム製若しくはスポンジ製等の弁体10の一部として一体に形成すれば、部品点数を減らせることができるし、継手の組立も容易になる。
【0018】
このような本発明に係る三方継手1を使用すれば、図5に示すように、弁箱5の開口部7,8が、コイルスプリング9によって閉蓋方向に付勢するされた弁体10の端面10aによって閉蓋されている。よって、左右のウォッシャノズル23a,23b(図7参照)に接続されるウォッシャノズル用ホース24a、24bの流路は、分断されて連通していない。よって、このウォッシャノズル用ホース24a,24b内の洗浄液が、その流路において一方が密閉され外部に通じていないので、自由に移動することができず、ウォッシャノズル23a,23bから漏れ出すことがない。
【0019】
また、図7に示すタンク28から高圧洗浄液が供給され、図3に示すように、洗浄液供給用ホース26に接続されたニップル2の流路の一端側にある開口部6から、前記高圧洗浄液が前記弁体10をコイルスプリング9の付勢する力に抗して押し上げて、弁箱5内に浸入する。
【0020】
そして、図6に示すように、前記弁体10が押し上げられてできる弁箱5の閉空間5eに浸入した前記高圧洗浄液が、同時に開口している開口部7,8へと流入しウォッシャノズル用ホース24a,24bによって左右のウォッシャノズル23a,23b(図7参照)に供給されて噴射口からフロントガラス21に向かって噴射される。なお、高圧洗浄液が前記閉空間5eに浸入した際に、弁体5の上部の開口部5aに対しては、図6に示すように、弁体10のフランジ10cがあることで、液密に封止されて外部に漏れ出すことはない。
【0021】
また、本発明に係る三方継手1が、図3に示すように、上方から平面視して、略Y字型になっているので、左右のウォッシャノズル23a,23bに対しては、ニップル3,4を配置し、高圧洗浄液供給側には前記ニップル3に位置的に近いニップル2を配置することで、前記タンク28及び洗浄液供給用ホース26を車両の側方に纏めてコンパクトに配置することができるようになる。
【0022】
これが、例えば、従来のT字型であると、前記洗浄液供給用ホースが、左右のニップル3,4に対して略直交する方向に有るので、これに繋ぐ洗浄液供給用ホース26が車両の真ん中に引き出されることになって、そこからエンジン室の脇のタンクへと引き回されるのでホースの配線長が長くなり、他の部品のホースや配線等と混ざり合うことにもなって、ハーネスの引き回しの邪魔となる。本発明の三方継手1ではこのような課題が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る三方継手1の分解全体斜視図である。
【図2】同本発明の三方継手1の一部を破断して示す斜視図である。
【図3】同本発明に係る三方継手1であって、弁体10,コイルスプリング9及び嵌め殺し蓋11を取り去った状態の平面図である。
【図4】同本発明に係る三方継手1における、弁体10の一部拡大断面図である。
【図5】本発明に係る三方継手1の使用状態であって、弁体10による閉蓋状態における縦断面図である。
【図6】同本発明に係る三方継手1の使用状態であって、弁体10による開蓋状態における縦断面図である。
【図7】従来例に係る三方継手25の使用状態の説明図である。
【図8】同従来例に係る三方継手25の三方継手の使用状態の概略構成図である。
【符号の説明】
【0024】
1 三方継手、
2,3,4 ニップル、
5 弁箱、
5a 開口部、 5b 係止突起、
5c 段部、 5d ガイド突起、
6,7,8 開口部、
9 コイルスプリング、
10 弁体、 10a,10b 端面、
10c フランジ、 10d 可撓性屈曲部、
10e 弁体本体、 10f リング状凹溝、
11 嵌め殺し蓋、 11a 嵌合用側壁、
11b 端部、 11c 空気抜き穴、
12 クリップ、
12a,12b 弾性係止片、
21 フロントガラス、
22 ボンネット、
23 ウォッシャノズル、
24 ウォッシャノズル用ホース、
25 T字型三方継手、
26 洗浄液供給用ホース
27 ポンプ、
28 タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三方に流路を有するホース用の三方継手であって、前記三方の流路を形成するニップルが中央部の弁箱に連通し、該弁箱には、前記三方の流路に連通する三箇所の開口部が設けられるとともに、弁箱内部の閉空間には前記三箇所の開口部を閉蓋するように弾性体で閉蓋方向に付勢された弁体が設けられていること、
を特徴とする三方継手。
【請求項2】
三方継手の本体中央部に凹状の弁箱が形成され、該弁箱における凹状の底部に周方向に均等配置で三箇所に開口部が設けられ、上部の外部に連通する開口部には当該開口部を液密に封止する嵌め殺し蓋が嵌合されること、
を特徴とする請求項1に記載の三方継手。
【請求項3】
弁体がゴム製であり、その弁体の封止作用する端面と反対側の端面から周方向に沿ってフランジが可撓性屈曲部を介して延出し突設され、該フランジは、前記弁体本体の封止作用方向の進出・後退移動を支持すると共に、該フランジの周縁部が弁箱内部の底部若しくは内周壁の途中に設けられた段部と嵌め殺し蓋の嵌合用側壁の端部との間に挟まれて封止作用するものであること、
を特徴とする請求項2に記載の三方継手。
【請求項4】
弾性体は、弁体の一体的な一部であること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の三方継手。
【請求項5】
三方継手の平面視した形状がY字型であること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の三方継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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