説明

三枚構造の射出成形金型、射出成形装置及び射出成形方法

【課題】ラックアンドピニオン機構を用いた三枚構造の射出成形金型、射出成形装置及び射出成形方法において、高品質な成形品を得ることができる三枚構造の射出成形金型、射出成形装置及び射出成形方法を提供する。
【解決手段】ラックアンドピニオン機構20は、ピニオン22を中間金型16に対して型開閉方向に移動可能に支持すると共に、ピニオン22を固定金型12及び可動金型14の少なくとも一方側に押圧し、ピニオン22をラック24、26の歯25、27に押し付け可能なピニオン移動機構30を更に備え、ピニオン移動機構30によりピニオン22をラック24、26の歯25、27に押し付けた状態において、ラックアンドピニオン機構20により中間金型16を型開閉方向に移動可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラックアンドピニオン機構により中間金型の型開閉方向の移動を行なう三枚構造の射出成形金型及び射出成形装置並びにそれを用いて行なう射出成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、固定プラテンに取付けられる固定金型と、可動プラテンに取付けられる可動金型と、固定金型及び可動金型の間に設けられる中間金型とを備えるスタックモールド(三枚構造の射出成形金型)が知られている(特許文献1参照)。特許文献1のスタックモールドには、その側面に一対のラック及びピニオンからなるラックアンドピニオン機構が取付けられ、このラックアンドピニオン機構により、可動金型の型開閉方向の移動に対応して中間金型が型開閉方向に移動するように構成されている。なお、特許文献1に関する記載中の括弧内の構成は、説明の便宜上、括弧直前の先行技術の構成に対応すると考えられる本発明の構成を示したものであり、括弧直前の構成と括弧内の構成とが同一又は類似であることを示唆するものではない。
【0003】
特許文献1のスタックモールドに用いられているような従来のラックアンドピニオン機構は、ラックとピニオンを円滑に噛み合わせ、ピニオンを支障なく回転させるために、図11(a)に示すように、一対のラック110、112の歯111、113とピニオン114の歯115a、115bとの間にバックラッシα、βをそれぞれ設け、ラック110、112の歯111、113に対するピニオン114の歯115a、115bの食い込みを回避するように形成されている。
【0004】
一方、従来から、製品の軽量化及び変形抑制、断熱特性及び吸音特性等の機能化付与並びに材料消費量削減によるコストダウン等を目的として、発泡性溶融樹脂から発泡成形品を成形する発泡成形が行なわれている。このような発泡成形としては、金型キャビティ内へ発泡性溶融樹脂を射出充填させた後に、金型を微少型開きさせて金型キャビティの容積を拡張させ、金型キャビティ内において発泡性溶融樹脂を発泡膨張させることにより、未発泡のスキン層で覆われた内部に発泡セルを有する発泡成形品を成形する拡張発泡成形方法が、発泡制御性及び発泡品質の安定化等の発泡効率が高い成形法として知られている(特許文献2参照)。
【0005】
また、従来から、例えばガラス樹脂化成形品等を成形する射出成形方法として、予めその容積を所定量拡張させた金型キャビティ内に溶融樹脂を射出充填した後、金型キャビティの容積を縮小させて金型キャビティ内の溶融樹脂に型締めプレス力を付与させることにより、成形品の変形を抑制する射出プレス成形方法や、同様の目的で、射出充填させた金型キャビティ内の溶融樹脂圧力により金型キャビティ容積を所定量拡張させた後、金型キャビティの容積を縮小させて金型キャビティ内の溶融樹脂に型締め圧縮力を付与させる射出圧縮成形方法等の成形方法が知られている。これら射出プレス成形方法及び射出圧縮成形方法は、圧縮成形方法と呼称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−315281号公報
【特許文献2】特開2000−351142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のスタックモールドのようなラックアンドピニオン機構を用いた三枚構造の射出成形金型で拡張発泡成形方法や射出プレス成形方法や射出圧縮成形方法を行なうと、バックラッシの影響により高精度の型開き及び型閉じ動作を行なうことができず、高品質な発泡成形品や射出プレス成形品や射出圧縮成形品を得ることができないという問題がある。
【0008】
すなわち、特許文献1のスタックモールド(三枚構造の射出成形金型)では、型開き状態から可動金型及び中間金型が型閉じ方向に移動し、型締めされる過程において、ラックアンドピニオン機構のラック及びピニオンが図11(a)に示す状態になっていると考えられる。これを前提とすると、可動金型及び中間金型の型開き方向への移動において、可動金型が型開き方向に移動し始めてから中間金型が型開き方向に移動し始めるまでは、まず、図11(a)の状態から、図11(b)に示すように、可動側の下側のラック110の歯111がピニオン114の下方側の歯115aと接触するまで(すなわち、図11(a)のバックラッシα分だけ)、下側のラック110が型開き方向に移動する(図11(b)中、白矢印は、下側のラック110の移動方向を示し、黒矢印は、接触箇所を示す)。その後、図11(c)に示すように、可動側の下側のラック110の歯111がピニオン114の下方側の歯115aを型開き方向に押すことにより、ピニオン114の上方側の歯115bが固定側の上側のラック112の歯113と接触するまで(すなわち、図11(b)のバックラッシβ分だけ)ピニオン114が時計回りに回転すると共に、下側のラック110が型開き方向に移動する。そして、このような動作の後に、ピニオン114の上方側の歯115bが、固定され移動しない固定側の上側のラック112の歯113を固定金型の方向に押すことにより、ピニオン114の時計回りの回転が継続され、ピニオン114が回転可能に配置されている中間金型が可動金型の方向(型開き方向)に移動し始める(図11(c)中、白矢印は、下側のラック110の移動方向及びピニオン114の回転・移動方向を示し、黒矢印は、接触箇所を示す)。このように、特許文献1のスタックモールドは、ラックアンドピニオン機構のバックラッシにより、両金型キャビティの型開き量に最大α+β分だけ差異が生じてしまうものであり(図11(c)参照)、また、型閉じ状態から型開きする間、或いは型開き状態から型閉じする間、両金型キャビティ内圧力(例えば、射出充填させた溶融樹脂圧力や拡張発泡成形方法における発泡性溶融樹脂の発泡圧力等)に差異が生じた場合、中間金型にその差異に相当する型開閉方向の力が作用し、ラック及びピニオンの噛合以外に型開閉方向の拘束のない中間金型が、ラック及びピニオン間のバックラッシ分だけ型開閉方向に突発的に移動し、両金型キャビティの型開き量に差異が生じたり、型開き速度や型閉じ速度が不安定になったりする等、高精度の型開き動作及び型閉じ動作を行なうことができないという問題がある。そして、このようなラックアンドピニオン機構のバックラッシの問題は、特に、正確な微少型開き量や微少型開き位置の位置保持、また、安定した型開き速度や型閉じ速度の制御が要求される拡張発泡成形、射出プレス成形及び射出圧縮成形において問題となるものである。
【0009】
そこで、本発明は、ラックアンドピニオン機構を用いた三枚構造の射出成形金型、射出成形装置及び射出成形方法において、高品質な成形品を得ることができる三枚構造の射出成形金型、射出成形装置及び射出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明に係る三枚構造の射出成形金型は、固定金型と、 前記固定金型と対向し、型開閉方向に移動可能に設けられた可動金型と、前記固定金型及び前記可動金型の間において型開閉方向に移動可能に設けられ、前記固定金型との間及び前記可動金型との間においてそれぞれ金型キャビティを形成可能な中間金型と、前記中間金型に設けられたピニオン、並びに、前記固定金型及び前記可動金型にそれぞれ設けられ、前記ピニオンと噛合可能な歯を有するラックを備え、前記可動金型の型開閉方向の移動に対応して前記中間金型を型開閉方向に移動させるラックアンドピニオン機構と、を備える三枚構造の射出成形金型であって、前記ラックアンドピニオン機構は、前記ピニオンを前記中間金型に対して型開閉方向に移動可能に支持すると共に、前記ピニオンを前記固定金型及び前記可動金型の少なくとも一方側に押圧し、前記ピニオンを前記ラックの歯に押し付け可能なピニオン移動機構を更に備え、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記ラックの歯に押し付けた状態において、前記ラックアンドピニオン機構により前記中間金型を型開閉方向に移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る三枚構造の射出成形金型において、前記ピニオン移動機構は、前記固定金型、前記可動金型及び前記中間金型の型開き時に、前記ピニオンを前記固定金型側又は前記可動金型側に押圧し、前記固定金型、前記可動金型及び前記中間金型の型閉じ時に、前記ピニオンを前記可動金型側に押圧するように構成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の第一の例に係る射出成形装置は、上記三枚構造の射出成形金型を備える射出成形装置であって、前記固定金型を取り付け可能な固定盤と、前記固定盤と対向して設けられ、前記固定盤に対して型開閉方向に移動可能で、前記可動金型を取り付け可能な可動盤と、前記可動盤を型開閉方向に移動させ、型締めする型締装置と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第二の例に係る射出成形装置は、固定金型を含む固定部と、前記固定金型と対向する可動金型を含み、前記固定部に対して型開閉方向に移動可能に設けられた可動部と、前記固定金型との間及び前記可動金型との間においてそれぞれ金型キャビティを形成可能な中間金型を含み、前記固定部及び前記可動部の間において型開閉方向に移動可能に設けられた中間部と、前記可動部を型開閉方向に移動させ、型締めする型締装置と、前記中間部に設けられたピニオン、並びに、前記固定部及び前記可動部にそれぞれ設けられ、前記ピニオンと噛合可能な歯を有するラックを備え、前記可動部の型開閉方向の移動に対応して前記中間部を型開閉方向に移動させるラックアンドピニオン機構と、を備える射出成形装置であって、前記ラックアンドピニオン機構は、前記ピニオンを前記中間部に対して型開閉方向に移動可能に支持すると共に、前記ピニオンを前記固定部及び前記可動部の少なくとも一方側に押圧し、前記ピニオンを前記ラックの歯に押し付け可能なピニオン移動機構を更に備え、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記ラックの歯に押し付けた状態において、前記ラックアンドピニオン機構により前記中間部を型開閉方向に移動可能に構成されていることを特徴とする。本発明の第二の例に係る射出成形装置において、前記固定部は、前記固定金型と、前記固定金型を取り付け可能な固定盤とを備え、前記可動部は、前記可動金型と、前記可動金型を取り付け可能な可動盤とを備え、前記ラックは、前記固定盤及び前記可動盤にそれぞれ設けられているとしても良い。
【0014】
本発明の第一の例に係る射出成形方法は、上記射出成形装置を用いて拡張発泡成形を行なう射出成形方法であって、前記固定金型と前記中間金型とを型締めして第1金型キャビティを形成すると共に、前記可動金型と前記中間金型とを型締めして第2金型キャビティを形成する型締め工程と、前記型締め工程後に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの少なくとも一方に発泡性溶融樹脂を射出充填する発泡性樹脂射出充填工程と、前記発泡性樹脂射出充填工程後に、型締め状態を解除する型締め解除工程と、前記型締め解除工程と並行して又はその後に、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧する型開き補正押圧工程と、前記型開き補正押圧工程により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧した状態において、前記可動金型及び前記中間金型を前記固定金型に対して型開閉方向に所定量だけ微少型開きさせ、前記発泡性樹脂射出充填工程において射出充填された発泡性溶融樹脂を前記金型キャビティ内で発泡膨張させる発泡型開き工程とを備えることを特徴とする。本発明の第一の例に係る射出成形方法において、前記発泡性樹脂射出充填工程は、前記型締め工程後に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの両方に発泡性溶融樹脂を射出充填する工程であるとしても良い。
【0015】
また、本発明の第二の例に係る射出成形方法は、上記射出成形装置を用いて射出プレス成形を行なう射出成形方法であって、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧する型閉じ補正押圧工程と、前記型閉じ補正押圧工程により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧した状態において、前記固定金型及び前記中間金型の間並びに前記可動金型及び前記中間金型の間が所定量だけ微少型開きされる位置まで、前記固定金型、前記可動金型及び前記中間金型を型閉じさせ、前記固定金型及び前記中間金型の間に第1金型キャビティを形成すると共に、前記可動金型及び前記中間金型の間に第2金型キャビティを形成する型閉じ工程と、前記型閉じ工程後に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの少なくとも一方に溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記射出充填工程と連動して又は前記射出充填工程後に、前記固定金型、前記可動金型及び前記中間金型を所定の型締めプレス力で型締めし、前記第1金型キャビティ内及び前記第2金型キャビティ内の少なくとも一方の前記溶融樹脂に前記型締めプレス力を付与させる射出プレス工程とを備えることを特徴とする。
【0016】
更に、本発明の第三の例に係る射出成形方法は、上記射出成形装置を用いて射出圧縮成形を行なう射出成形方法であって、前記固定金型、前記可動金型及び前記中間金型を型閉じさせ、前記固定金型及び前記中間金型の間に第1金型キャビティを形成すると共に、前記可動金型及び前記中間金型の間に第2金型キャビティを形成する型閉じ工程と、前記型閉じ工程と並行して又はその後に、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧する型閉じ補正押圧工程及び前記ピニオンを前記固定金型側に押圧する型開き補正押圧工程のいずれか一方の補正押圧工程と、前記型閉じ補正押圧工程及び前記型開き補正押圧工程のいずれか一方の継続中に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの少なくとも一方に溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、前記金型キャビティに射出充填した溶融樹脂圧力により前記可動金型及び前記中間金型を前記固定金型に対して型開閉方向に所定量だけ微少型開きさせる微少型開き工程と、前記微少型開き工程後に、前記固定金型、前記可動金型及び前記中間金型を所定の型締め圧縮力で型締めし、前記第1金型キャビティ内及び前記第2金型キャビティ内の少なくとも一方の前記溶融樹脂に前記型締め圧縮力を付与させる射出圧縮工程とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の第二及び第三の例に係る射出成形方法において、前記射出充填工程は、前記型締め工程後に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの両方に溶融樹脂を射出充填する工程であるとしても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ラックアンドピニオン機構を用いた三枚構造の射出成形金型、射出成形装置及び射出成形方法において、高品質な成形品を得ることができる三枚構造の射出成形金型、射出成形装置及び射出成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る射出成形装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1のA−A´線に沿った概略断面図である。
【図3】本実施形態に係る射出成形装置のピニオン移動機構の概略構成を示す正面図である。
【図4】図3のB−B´線に沿った概略断面図である。
【図5】図3のC−C´線に沿った概略断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る射出成形装置の代替例の概略構成を示す正面図である。
【図7】本実施形態に係る拡張発泡成形方法の工程を説明するための説明図である。
【図8】本実施形態に係る射出成形装置における型開き時のラック及びピニオンの動作を説明するための説明図である。
【図9】本実施形態に係る射出プレス成形方法の工程を説明するための説明図である。
【図10】本実施形態に係る射出圧縮成形方法の工程を説明するための説明図である。
【図11】従来のラックアンドピニオン機構における型開き時のラック及びピニオンの動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1及び図2は、本実施形態に係る射出成形装置の概略構成を示す正面図及び断面図である。図3乃至図5は、本実施形態におけるピニオン移動機構の概略構成を示す正面図及び断面図である。図6は、本発明の一実施形態に係る射出成形装置の代替例の概略構成を示す正面図である。本実施形態に係る射出成形装置1は、概略的には、ベース2に固定された固定盤3及び固定金型12を備える固定部100と、固定部100に対して型開閉方向に移動可能に設けられた可動盤4及び可動金型14を備える可動部102と、固定部100及び可動部102の間において型開閉方向に移動可能に設けられた中間金型16を備える中間部104と、可動部102を型開閉方向に移動させ、型締めする型締装置6と、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27との間に生じるバックラッシをゼロにした状態において、可動部102の型開閉方向の移動に対応して(連動して)中間部104を型開閉方向に移動させるラックアンドピニオン機構20とを備えるものである。以下、本実施形態に係る射出成形装置1の具体的な構成について、図1乃至図6を用いて説明する。
【0021】
本実施形態に係る射出成形装置1は、図1に示すように、ベース2に固定された固定盤3と、固定盤3と対向して設けられ、固定盤3に対して型開閉方向に移動可能に構成された可動盤4と、可動盤4の四隅を貫通するように固定盤3の四隅から突出して設けられ、可動盤4の型開閉方向の移動をガイドするタイバー5と、可動盤4をタイバー5に沿って型開閉方向に移動させ、かつ型締めも可能な型締装置6と、固定盤3及び可動盤4の間に設けられた三枚構造の射出成形金型10と、固定盤3の背面側に設けられ、三枚構造の射出成形金型10により形成される金型キャビティに溶融樹脂を射出する射出ユニット7とを備えている。本実施形態に係る射出成形装置1において、型開閉方向とは、三枚構造の射出成形金型10を型開き及び型閉じする方向、すなわち、後述する固定金型12、可動金型14及び中間金型16が互いに対向する方向をいう。
【0022】
固定盤3は、その背面側(可動盤4と対向する面の反対側)から正面側(可動盤4と対向する面)に亘って射出ユニット7の図示しないノズルが挿入可能な貫通孔(図示せず)が形成されている。射出ユニット7は、固定盤3の背面側において脱着可能に設けられ、溶融樹脂を射出するノズルが固定盤3の貫通孔を介して後述する固定金型12の背面(金型分割面の反対側の面)と接続し、三枚構造の射出成形金型10の樹脂流路を介して三枚構造の射出成形金型10の金型キャビティ内に溶融樹脂を射出充填するように構成されている。
【0023】
三枚構造の射出成形金型10は、図1及び図2に示すように、固定金型12と、固定金型12と対向し、型開閉方向に移動可能に設けられた可動金型14と、固定金型12及び可動金型14の間において型開閉方向に移動可能に設けられた中間金型16と、可動金型14の型開閉方向の移動に対応して(連動して)中間金型16を型開閉方向に移動させるラックアンドピニオン機構20とを備えている。この三枚構造の射出成形金型10は、固定金型12及び可動金型14が固定盤3及び可動盤4に対してそれぞれ取り外し可能な状態で取付けられることにより、固定盤3及び可動盤4間に着脱(交換)可能に取付けられている。本実施形態に係るラックアンドピニオン機構20において、可動金型14の型開閉方向の移動に対応して中間金型16を型開閉方向に移動させるとは、可動金型14に設けられた後述するラック26の型開閉方向の移動によって、中間金型16に設けられた後述するピニオン22が回転し、該ピニオン22が回転しながら固定金型12に設けられた後述するラック24の歯25と噛合しながら直線的に型開閉方向に移動することにより、中間金型16を型開閉方向に移動させることをいう。
【0024】
三枚構造の射出成形金型10は、固定金型12及び中間金型16間並びに可動金型14及び中間金型16間それぞれに金型分割面を有している。固定金型12、可動金型14及び中間金型16の各金型分割面には、それぞれ型合わせされた際に、固定金型12及び中間金型16間並びに可動金型14及び中間金型16間においてそれぞれ、同一形状の金型キャビティ(以下、それぞれ「第1金型キャビティC1」及び「第2金型キャビティC2」という)が形成される。また、これらの金型分割面は、それぞれが微少型開きされた際に、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2に射出充填された樹脂が漏れ出すことがないシェアエッジ構造となっている。このシェアエッジ構造とは、くいきり構造、或いはインロー構造等と呼称され、金型分割面を形成する嵌合部の構造として一般的に知られた構造である。このシェアエッジ構造は、型開閉方向に伸びて、互いに摺動しながら挿脱することのできる嵌合部を、金型の金型分割面間に形成することによって金型キャビティ内に射出充填した樹脂が、所定量、金型を型開きさせても金型外に漏れ出すのを防止することができる構造である。なお、本実施形態に係る三枚構造の射出成形金型10において、各金型分割面は、シェアエッジ構造であるとしたが、これに限定されるものではない。
【0025】
固定金型12及び中間金型16間並びに可動金型14及び中間金型16間には、中間金型16の型開閉方向の移動をガイドするガイドピン18a乃至18d(図1中、奥側のガイドピン18c、18dは、図示せず)が設けられている。すなわち、固定金型12の四隅のうち対角線上の二箇所には、可動金型14及び中間金型16に向けて突出し、中間金型16を貫通する一対のガイドピン18a、18dが設けられている。また、固定金型12の四隅のうち、一対のガイドピン18a、18dが設けられた方と逆の対角線上の二箇所には、可動金型14から突出する一対のガイドピン18b、18cを収納可能な収納孔19a(図1中、奥側の収納孔19aは、図示せず)がそれぞれ形成されている。可動金型14の四隅のうち、固定金型12から突出するガイドピン18a、18dと対向しない対角線上の二箇所には、固定金型12及び中間金型16に向けて突出し、中間金型16を貫通する一対のガイドピン18b、18cが設けられている。また、可動金型14の四隅のうち、一対のガイドピン18b、18cが設けられた方と逆の対角線上の二箇所には、固定金型12から突出する一対のガイドピン18a、18dを収納可能な収納孔19b(図1中、奥側の収納孔19bは、図示せず)がそれぞれ形成されている。
【0026】
ガイドピン18a乃至18dは、三枚構造の射出成形金型10の型開き限位置、すなわち、三枚構造の射出成形金型10を構成する各金型12、14、16間の型開き量が最大となる位置まで中間金型16を支持及びガイド可能で、かつ三枚構造の射出成形金型10の型締め時に、その先端部が固定金型12及び可動金型14の収納孔19a、19bに収納され、固定金型12及び可動金型14の背面側に突出しない程度の長さを有している。中間金型16の脱落防止のために、ガイドピン18a乃至18dには、それぞれ、射出成形装置から取り外して、金型のメンテナンスを行う際等の各金型の分割時には解除され、それぞれの金型を組み合わせた状態で射出成形装置に取り付けて射出成形を行う結合時においては、型開き限位置以上の型開きを防止する図示しない機械的或いは電気的ストッパーが装備されている。ここで、本実施形態に係る三枚構造の射出成形金型10において、ガイドピン18a乃至18dは、固定金型12及び可動金型14の対角線上の二箇所にそれぞれ設けられるとしたが、これに限定されず、例えば固定金型12及び可動金型14のいずれか一方の四隅にガイドピンを設け、他方の四隅にガイドピンを収納可能な収納孔を設ける態様等、種々の態様を採用することができる。
【0027】
固定金型12及び中間金型16には、射出ユニット7から射出された溶融樹脂を中間金型16まで流動させ、中間金型16側から第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2にそれぞれ溶融樹脂を流入させる図示しないホットランナーが形成されている。ここで、ホットランナーとは、金型内の樹脂流路(ランナー)に保温機構や加熱機構を配置させ、常時溶融状態で樹脂を滞留・流動させるものをいう。本実施形態に係る三枚構造の射出成形金型10のように、金型内の樹脂流路そのものをホットランナーとして形成する場合には、ホットランナーとして別部材となるスプルーバーやオフセットスプルーバーを採用する場合と比較して、樹脂流路の配置自由度が高く、金型のキャビティとして使用できる有効体積を大きく確保できるため、例えばドアトリム等の投影面積が大きな部品であっても制約なく成形を行なうことができる。本実施形態に係る三枚構造の射出成形金型10において、溶融樹脂を流動させる各金型の構成は、固定金型12及び中間金型16にホットランナーを形成するほかに、例えばスプルーバーやオフセットスプルーバーを採用する等、周知の構成を採用することができる。また、本実施形態に係る三枚構造の射出成形金型10において、金型内の樹脂流路は、射出ユニット7から射出された溶融樹脂を中間金型16側から第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2にそれぞれ流入させるとしたが、これに限定されず、種々の態様を採用することができる。更に、本実施形態に係る三枚構造の射出成形金型10において、金型内の樹脂流路には、該樹脂流路を開放及び閉鎖可能な樹脂遮断開放切替弁等が設けられるとしても良い。特に、樹脂流路が金型分割面を貫通する場合は、型開きにより分割される金型分割面の樹脂流路端それぞれに樹脂遮断開放切替弁等が設けられる必要がある。これら切替弁等は、電気的制御及び機械的制御のいずれであっても良いが、型開閉に自動的に連動して溶融樹脂の遮断或いは開放が切換えられるものが好ましい。本実施形態に係る射出成形装置1においては、射出ユニット7から射出された溶融樹脂を第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2に流動させるとしたが、これに限定されず、例えば図9や図10に示すように、射出ユニットをもう一台設け、2つの射出ユニットから第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2にそれぞれ溶融樹脂を射出させるようにしても良い。
【0028】
ラックアンドピニオン機構20は、図1乃至図3に示すように、中間金型16の側面に設けられたピニオン22と、固定金型12の側面に設けられた上側のラック24と、可動金型14の側面に設けられた下側のラック26と、ピニオン22を型開閉方向に移動可能に支持すると共に、ピニオン22を型開閉方向に押圧可能なピニオン移動機構30とを備えている。このラックアンドピニオン機構20は、固定金型12、可動金型14及び中間金型16の両側面に取付けられている。
【0029】
上側のラック24は、型開閉方向を長手方向とする長尺な角柱に形成されており、その下面には、ピニオン22と噛合可能な歯25が型開閉方向に連続して形成されている。この上側のラック24は、歯25がピニオン22の上方側と噛合するように、型開閉方向と平行な状態で基端が固定金型12の側面に固定されている。下側のラック26は、型開閉方向を長手方向とする長尺な角柱に形成されており、その上面には、ピニオン22と噛合可能な歯27が型開閉方向に連続して形成されている。この下側のラック26は、歯27がピニオン22の下方側と噛合するように、型開閉方向と平行な状態で基端が可動金型14の側面に固定されている。上側のラック24及び下側のラック26は、各歯25、27の反対側がそれぞれ、ピニオン移動機構30の後述するベース部32上に垂直に立設されたラックホルダ28、29によりガイドされ、上下左右のぶれが防止されている。上側のラック24をガイドするラックホルダ28は、型開閉方向に延び、かつ下方に開口する断面略コ字状に形成されており、該断面略コ字状の内部において上側のラック24をガイドするように形成されている(図5参照)。下側のラック26をガイドするラックホルダ29は、型開閉方向に延び、かつ上方に開口する断面略コ字状に形成されており、該断面略コ字状の内部において下側のラック26をガイドするように形成されている(図5参照)。ピニオン22、上側のラック24及び下側のラック26は、同一の歯先形状を有しており、移動させる中間金型16のサイズ、荷重、移動ストローク等により、適宜好適なものを用いることができる。
【0030】
ピニオン移動機構30は、図3乃至図5に示すように、中間金型16の側面に取付けられる平板状のベース部32と、ピニオン22を保持するピニオンホルダ34と、ピニオンホルダ34をベース部32に対して型開閉方向に移動可能に支持する直動ガイド36と、ピニオンホルダ34をベース部32に対して型開閉方向に押圧するアクチュエータ38とを備えている。
【0031】
ベース部32は、型開閉方向を長手方向とするやや横長の矩形板状に形成されており、一方の面が中間金型16の側面と面接触するように、中間金型16の側面上に取付けられている。以下、中間金型16の側面と面接触するベース部32の一方の面を取付け面といい、他方の面を搭載面という。
【0032】
ピニオンホルダ34は、上面及び下面が開放されたやや型開閉方向に延びる四角筒状に形成されており、その内部にピニオン22を配置した際に、開放された上面及び下面からピニオン22の上方側及び下方側が露出するような形状を有している。ピニオンホルダ34の内部には、ベアリング35、35を介してピニオン22が回転可能に取付けられている。
【0033】
直動ガイド36は、ベース部32の搭載面に取付けられた直動ガイドレール36aと、ピニオンホルダ34に取付けられ、直動ガイドレール36a上をスライド可能な一対の直動ガイドブロック36b、36bとから構成されている。直動ガイドレール36aは、断面I字状に形成されており、型開閉方向に延び、かつベース部32の搭載面に対して垂直に立設されている。一対の直動ガイドブロック36b、36bは、それぞれ、直動ガイドレール36aに向けて開口する断面略コ字状に形成されており、開口側において直動ガイドレール36aにスライド可能に係合すると共に、開口と反対側の面がピニオンホルダ34の背面に固定されている。
【0034】
アクチュエータ38は、油圧で駆動する往復動シリンダ(すわなち、油圧シリンダ)であり、ベース部32の搭載面に固定されたアクチュエータサポート40を介して、ベース部32の搭載面上に取付けられている。このアクチュエータ38は、図示しない圧源より供給される圧力流体によりロッド42を型開閉方向に往復動させ、これによりピニオンホルダ34を型開閉方向に押圧し、ピニオンホルダ34に取付けられたピニオン22を中間金型16に対して型開閉方向に移動させるように構成されている。ロッド42の先端とピニオンホルダ34とは、ある程度の偏心や傾きを許容する(吸収する)ジョイント44により連結されている。このようにロッド42の先端とピニオンホルダ34とをジョイント44により連結することにより、関連する構成部品の製作及び組立許容誤差に起因するピニオンホルダ34の移動抵抗の増大やかじり等を抑制することができ、ピニオンホルダ34をスムーズに移動させることができる。ここで、アクチュエータ38は、油圧シリンダに限定されず、空圧で駆動する往復動シリンダ、電動駆動の往復動ボールネジ機構、スプリング、空圧ダンパ、又は油圧ダンパ等、種々のものを採用することができる。
【0035】
本実施形態に係る射出成形装置1において、ラックアンドピニオン機構20は、可動金型14の型開閉方向の移動に対応して中間金型16を型開閉方向に移動させるものであれば、いかなる態様であっても良い。すなわち、本実施形態に係る射出成形装置1において、ラックアンドピニオン機構20は、固定金型12、可動金型14及び中間金型16の両側面に取付けられているとしたが、これに限定されるものではない。例えば固定金型12、可動金型14及び中間金型16の片側面のみに取付けられる態様や、固定金型12、可動金型14及び中間金型16の上面及び/又は下面に取付けられる態様等、種々の態様を採用することができる。
【0036】
また、本実施形態に係る射出成形装置1において、上側のラック24が固定金型12の両側面に取付けられ、下側のラック26が可動金型14の両側面に取付けられるとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ラック24、26の上下配置が逆の態様(すなわち、下側のラック26が固定金型12の両側面に取付けられ、上側のラック24が可動金型14の両側面に取付けられる態様)や、金型12、14の一の側面と他の側面とでラック24、26の上下配置が逆の態様(すなわち、例えば固定金型12の一の側面に上側のラック24、他の側面に下側のラック26が取付けられ、可動金型14の一の側面に下側のラック26、他の側面に上側のラック24が取付けられる態様)等、種々の態様を採用することができる。この場合において、ラック24、26は、ガイドピン18a乃至18dと上下位置を整合させて設けられることが好ましく、これにより、型開き時の金型側面の開放面積を多く確保することができ、成形品の取り出しを容易にすることができる。
【0037】
更に、本実施形態に係る射出成形装置1において、ラック24、26は、固定金型12及び可動金型14に設けられるとしたが、これに限定されず、図6に示すように、ラック24、26は、固定盤3及び可動盤4に設けられるとしても良い。この場合、本実施形態に係る射出成形装置1は、固定盤3及び可動盤4の間に、中間金型16と同様に複数のガイドピン等により固定盤3及び可動盤4側で支持される、或いは、タイバー5や公知のガイド手段により射出成形装置側で型開閉方向に移動可能に支持される中間盤を設けると共に、該中間盤の固定盤3及び可動盤4と対向する面にそれぞれ中間金型16を取付け、ピニオン22を中間盤の側面に取付けるとしても良い。
【0038】
また更に、本実施形態に係る射出成形装置1において、ピニオン移動機構30は、ピニオン22を固定金型12側及び可動金型14側の双方に押圧可能であるとしたが、これに限定されず、ピニオン22を少なくとも固定金型12側に押圧可能(型開き補正押圧工程)、或いは、ピニオン22を少なくとも可動金型14側に押圧可能(型閉じ補正押圧工程)であれば良い。具体的には、前者は、拡張発泡成形方法のように、型締装置6により、可動金型14及び中間金型16を型閉じ状態から微少型開きさせる微少型開き量の精度を要する成形方法に好適であり、後者は、射出プレス成形方法のように、型開き状態から微少型開き状態まで型閉じさせる微少型開き量の精度を要する成形方法に好適である。また、ピニオン22を固定金型12側及び可動金型14側の双方に押圧可能であれば、これらいずれの成形方法はもちろん、成形工程中に型開閉動作の切換えが必要となる射出圧縮成形方法等に好適である。
【0039】
本実施形態に係る射出成形装置1は、汎用の射出成形装置に用いられている金型と、本実施形態に係る三枚構造の射出成形金型10との交換及びそれに関連する軽微な改造によって得ることができる。
【0040】
次に、図7乃至図10を参照しながら、本実施形態に係る射出成形装置1を用いて行う拡張発泡成形方法、射出プレス成形方法及び射出圧縮成形方法について説明する。図7は、本実施形態に係る拡張発泡成形方法の工程を説明するための説明図であり、図8は、型開き時のラック及びピニオンの動作を説明するための説明図であり、図9は、本実施形態に係る射出プレス成形方法の工程を説明するための説明図であり、図10は、本実施形態に係る射出圧縮成形方法の工程を説明するための説明図である。図7乃至図10において、各構成要素は、概略的に示されており、また、図7、図9及び図10において、例えばラックアンドピニオン機構20やガイドピン18a乃至18d等は、省略されている。また、各金型12、14、16の形状、樹脂流路の態様等は、図示された形状等に限定されるものではない。
【0041】
本実施形態に係る拡張発泡成形方法、射出プレス成形方法及び射出圧縮成形方法において使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の汎用樹脂、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のエンジニアリング樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のスーパーエンジニアリング樹脂、熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系エラストマー(SBC)、ウレタン系エラストマー(TPU)等のエラストマー系樹脂、及びこれらのリサイクル樹脂等を使用することができる。これらの熱可塑性樹脂は単体で使用されるだけではなく、2種以上を混合した状態で使用することもでき、必要に応じて、可塑剤、熱安定助剤、酸化防止剤、潤滑剤、帯電防止剤、着色剤、難燃剤、増量剤等の各種添加剤を添加した状態で使用することもできる。また、成形品の強度や剛性向上のためにガラス繊維、炭素繊維、天然繊維等の強化剤を添加した状態で使用することもできる。これらの熱可塑性樹脂に例えば、重炭酸ナトリウムを主成分とする無機系化学発泡剤やアゾ化合物を主成分とする有機系化学発泡剤を混合(化学発泡成形法)したり、空気、炭酸ガス、窒素ガス等を注入(物理発泡成形法)したりする、周知の方法により得られる発泡性溶融樹脂も拡張発泡成形方法だけではなく、射出プレス成形方法や射出圧縮成形方法においても使用することができる。
【0042】
[拡張発泡成形]
本実施形態に係る拡張発泡成形方法について、図7及び図8を用いて説明する。本実施形態に係る拡張発泡成形方法は、固定金型12及び中間金型16間に形成される第1金型キャビティC1並びに可動金型14及び中間金型16間に形成される第2金型キャビティC2において、同時に、拡張発泡成形方法により発泡成形品を成形する方法である。本拡張発泡成形方法においては、射出ユニット7から射出された発泡性溶融樹脂を中間金型16まで流動させ、中間金型16側から第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2にそれぞれ発泡性溶融樹脂を流入させる樹脂流路の態様について説明するが、これに限定されるものではない。
【0043】
まず、図7(a)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び中間金型16を型閉じ方向に移動させ、固定金型12、可動金型14及び中間金型16を型締めさせる(型締め工程)。具体的には、型締装置6によって可動盤4及びこれに取付けられた可動金型14を型閉じ位置まで移動させると共に、ラックアンドピニオン機構20によって、この可動金型14の型閉じ方向の移動に対応して中間金型16を型閉じ位置まで移動させ、すべての金型を型合わせさせる。そして、すべての型合わせが完了した後、型締装置6によって固定金型12、可動金型14及び中間金型16を型締めさせる。これにより、固定金型12及び中間金型16間に第1金型キャビティC1が形成され、可動金型14及び中間金型16間に第2金型キャビティC2が形成される。
【0044】
また、この型締め工程において、ピニオン移動機構30によりピニオン22を可動金型14側に所定圧1で押圧し、ラック24、26の複数の歯25、27のうち、ピニオン22の歯と可動金型14側で対向する歯25、27の面A、B(以下、それぞれ「可動金型14側の面A」及び「可動金型14側の面B」という)に、ピニオン22を押し付ける(型閉じ補正押圧工程)。このときのピニオン22及びラック24、26の状態を図8(a)に示す(図8(a)中、白矢印は、ピニオン22への押圧方向を示し、黒矢印は、接触箇所を示す)。この型閉じ補正押圧工程は、後述する本来の目的(バックラッシをゼロにする)ではなく、型締め状態における型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために行なわれるものである。その理由は、ピニオン22が型開閉方向に移動可能なので、中間金型16の両側面に取り付けられているピニオン22の、型開閉方向に直交する軸位置が一致していない場合、すなわち、ピニオン22それぞれの回転軸が、型開閉方向に直交する同軸上になく偏心している場合、その偏心の程度によっては、可動側のラック26の型開閉方向の移動により、中間金型16の両側面のピニオン22それぞれの回転軸を介して中間金型16に作用する型開閉方向の力のバランスが崩れ、ラックアンドピニオン機構20に不要な負荷がかかるおそれがあるからである。この型閉じ補正押圧工程により、ピニオン22と、ラック24、26の複数の歯25、27のうち、ピニオン22の歯と固定金型12側で対向する歯25、27の面C、D(以下、それぞれ「固定金型12側の面C」及び「固定金型12側の面D」という)との間に生じるバックラッシα、βは最大となる。この型締め工程において、ピニオン22の、型開閉方向に直交する軸位置が略一致している場合、或いは、偏心の程度が小さい場合は、この型閉じ補正押圧工程は、必ずしも行なう必要はない。また、この型閉じ補正押圧工程におけるピニオン移動機構30の所定圧1は、ピニオン22を型開閉方向に移動可能な程度であれば良く、後述する型開き補正押圧工程における所定圧2と同一であっても良い。
【0045】
型締め工程後、型閉じ補正押圧工程が行なわれる場合は型閉じ補正押圧工程の継続中に、型閉じ補正押圧工程が行なわれない場合は適宜好適なタイミングで、図7(b)に示すように、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2に、固定金型12及び中間金型16に形成された樹脂流路50を介して射出ユニット7から発泡性溶融樹脂を射出充填させる(発泡性樹脂射出充填工程)。この発泡性樹脂射出充填工程において、発泡性樹脂射出充填工程が完了するまで、型締め状態を維持させて、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の容積を一定に保持させて拡張させないか、発泡性樹脂射出充填工程が完了する前に、後述する型締め解除工程及び型開き補正押圧工程を経て発泡型開き工程を開始させて、これら金型キャビティの容積を拡張させるかは、使用する樹脂や発泡剤との組合せや、製品形状及び製品の要求品質等に応じて適宜選択されれば良い。
【0046】
発泡性樹脂射出充填工程後に、型締装置6による型締め力を減少させ、型締め状態を解除する(型締め解除工程)。この型締め解除工程により、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2内の発泡性溶融樹脂の樹脂圧力を低下させ、発泡セル空隙の基点となる発泡核形成を行わせる。この発泡核形成において、型締め力を単位時間当りどの程度低下させるか(型締め力の低下速度)は、使用する樹脂や発泡剤との組合せや、製品形状及び製品の要求品質等に応じて適宜選択されれば良い。また、この型締め解除工程と並行して、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を可動金型14側から固定金型12側に切換え、ピニオン22を固定金型12側に、型締め力よりも弱い所定圧2で押圧する(型開き補正押圧工程)。このときのピニオン22及びラック24、26の状態を図8(b)に示す(図8(b)中、白矢印は、ピニオン22への押圧方向を示し、黒矢印は、接触箇所を示す)。この段階では、ピニオン22への押圧力(所定圧2)が型締め力よりも小さいため、ピニオン22は、固定金型12側に移動しない。その後、型締装置6による型締め力が徐々に減少し、この型締め力よりもピニオン移動機構30による所定圧2が大きくなった段階で、ピニオン22が固定金型12側にバックラッシα、β分だけ移動し、ピニオン22がラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dに所定圧2で押し付けられ、型閉じ補正押圧工程から型開き補正押圧工程への切換えが完了する。このときのピニオン22及びラック24、26の状態を図8(c)に示す(図8(c)中、白矢印は、ピニオン22への押圧方向及び下側のラック26の移動方向を示し、黒矢印は、接触箇所を示す)。この型開き補正押圧工程は、本来の目的である、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dとの間に生じるバックラッシをゼロにするために行なわれるものである。図8(d)に示すように、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dとの間に生じるバックラッシをゼロにした状態(型開き補正押圧工程)で、下側のラック26を型開き方向に移動させれば、同ラックの歯27の固定金型12側の面Dにおいて、同歯27がピニオン22の下側の歯に型開き方向の力を作用させ、ピニオン22が時計周りに回転する。このピニオン22の時計周りの回転により、ピニオン22の上側の歯が、固定され移動しない上側のラック24の歯25の固定金型12側の面Cにおいて、同ラックの歯25から型開き方向の反力を受ける。この反力によりピニオン22に型開き方向の力が作用し、その側面にピニオン移動機構30を介してピニオン22が取り付けられた中間金型16を型開き方向に移動させる。これらの動作が同時に行われるため、下側のラック26の型開き方向への移動動作に遅れることなく、中間金型16を型開き方向に移動させることができる。また、先に説明したように、この型開き補正押圧工程は、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるためのものであることも言うまでもない。なお、後述する型閉じ補正押圧工程は、ピニオン22を可動金型14側に押圧し、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間に生じるバックラッシをゼロにした状態で、下側のラック26を型閉じ方向に移動させ、中間金型16を型閉じ方向に移動させるものである。この型閉じ補正押圧工程の継続中における中間金型16の型閉じ方向への移動動作については、先に説明した型開き補正押圧工程の継続中における中間金型16の型開き動作が逆になるだけなので説明は省略する。また、この型開き補正押圧工程は、型締め解除工程が完了した後に行なうとしても良く、この場合、図8(b)に示す段階が省略されることとなる。
【0047】
次に、型開き補正押圧工程の継続中に、図7(c)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び中間金型16を型開き方向に所定量aだけ微少型開きさせる(発泡型開き工程)。このときのピニオン22及びラック24、26の状態を図8(d)に示す(図8(d)中、白矢印は、ピニオン22への押圧方向、下側のラック26の移動方向及びピニオン22の回転方向を示し、黒矢印は、接触箇所を示す)。この発泡型開き工程により、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の容積が拡張されるため、先に、型締め解除工程で、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2内に射出充填されている発泡性溶融樹脂に形成させた発泡核が発泡セル空隙へと拡張(成長)され、発泡性溶融樹脂が発泡膨張し、発泡成形品52、52が成形される。この発泡核の発泡セル空隙への拡張(成長)において、発泡型開き工程の微少型開き動作をどのように行うか(型開き速度、複数回に分割させた型開き動作等)は、使用する樹脂や発泡剤との組合せや、製品形状及び製品の要求品質(発泡セル空隙の分散性)等に応じて適宜選択されれば良い。また、後述する射出プレス成形方法や射出圧縮成形方法のように、この発泡型開き工程後、微少型開きにより拡張させたこれら金型キャビティの容積を所定量だけ縮小させ、発泡成形品への意匠の最終的な転写性及び成形精度等の確保を図る場合もある。
【0048】
この発泡型開き工程の継続中及び完了後においても、型開き補正押圧工程を継続することが好ましい。例えば、型開き補正押圧工程の継続中、この発泡型開き工程時に、第1金型キャビティC1或いは第2金型キャビティC2において、不適切な樹脂流路の配置や、不適切な成形条件の設定等に起因する発泡性溶融樹脂の発泡圧力の突発的な上昇や低下により、両金型キャビティの発泡圧力に差異が生じる可能性がある。そのため、第2金型キャビティC2の発泡圧力よりも第1金型キャビティC1の発泡圧力の方が高い場合、その差異分だけ中間金型16には型開き方向の力(可動金型14側)が作用する。この型開き方向の力は、継続している型開き補正押圧工程の、ピニオン移動機構30によりピニオン22を固定金型12側(型閉じ方向)に押圧する所定圧2と逆方向に作用するため、例えば、この型開き方向の力が所定圧2よりも大きい場合、ピニオン移動機構30は、中間金型16の側面に固定されているため、中間金型16は、ピニオン22とラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間のバックラッシα及びβに相当する分、型開き方向(可動金型14側)に移動してしまう(図8(c)参照)。そこで、この中間金型16に作用する型開き方向の力、すなわち、金型キャビティ内の発泡性溶融樹脂の発泡圧力に対抗して、所定圧2を、想定される発泡性溶融樹脂の最大発泡圧力以上(好ましくは、最大発泡圧力より大)にすれば、中間金型16は、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、D側に位置保持され、発泡型開き工程の継続中においては、ラックアンドピニオン機構20による型開き方向への移動量以上に、また、発泡型開き工程の完了後においては、設定された微少型開き量以上に型開き方向に移動することはない。逆に、第1金型キャビティC1の発泡圧力よりも第2金型キャビティC2の発泡圧力の方が高い場合、その差異分だけ中間金型16には型閉じ方向の力(固定金型12側)が作用する。この型閉じ方向の力は、継続している型開き補正押圧工程の、ピニオン移動機構30によりピニオン22を固定金型12側(型閉じ方向)に押圧する所定圧2と同じ方向に作用するため、例えば、この型閉じ方向の力が所定圧2よりも大きい場合、ピニオン22はこの型閉じ方向の力で固定金型12側に押圧され、この型閉じ方向の力が所定圧2よりも小さい場合、ピニオン22は所定圧2で固定金型12側に押圧され、いずれの場合においても型開き補正押圧工程は維持される。この場合においては、所定圧2を、想定される発泡性溶融樹脂の最大発泡圧力以上にする必要はないが、発泡膨張中の発泡性溶融樹脂の発泡圧力は一定ではなく変動することから、型開き補正押圧工程を装置制御の下に確実に継続するために、所定圧2を、想定される発泡性溶融樹脂の最大発泡圧力以上にすることが好ましい。すなわち、両金型キャビティの発泡圧力に差異が生じた場合でも、所定圧2を、想定される発泡性溶融樹脂の最大発泡圧力以上(好ましくは最大発泡圧力より大)にすることにより、中間金型16は、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、D側に位置保持され、発泡型開き工程の継続中においては、ラックアンドピニオン機構20による型開き方向への移動量以上に、また、発泡型開き工程の完了後においては、設定された微少型開き量以上に型開き方向に移動することはない。
【0049】
所定の冷却固化時間経過後、型開き補正押圧工程が行なわれる場合は型開き補正押圧工程の継続中に、型開き補正押圧工程が行なわれない場合は適宜好適なタイミングで、図7(d)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び中間金型16を製品取出し位置まで型開き方向に移動させる(型開き工程)。その後、固定金型12及び中間金型16間(第1金型キャビティC1)並びに可動金型14及び中間金型16間(第2金型キャビティC2)においてそれぞれ成形された発泡成形品52、52が、図示しない製品取出装置により取り出される(製品取り出し工程)。この型開き工程時においては、発泡成形品52、52を固定金型12、中間金型16及び可動金型14のいずれの金型に保持させても良い。このようにして、以後、図7(a)の状態から図7(d)の状態に至る成形サイクルを繰り返すことにより、発泡成形品52、52が同時に、連続的に成形される。
【0050】
これら型開き工程及び製品取り出し工程においては、型開きの精度が要求されないため、ピニオン移動機構30による固定金型12側へのピニオン22への押圧(型開き補正押圧工程)を行なう必要はないが、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために、次サイクルのための型閉じ動作まで、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧を行なうことが好ましい。ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧は、型開き時においては、固定金型12の方向(型開き補正押圧工程)に行うことが好ましいが、型開き状態においては、可動金型14側及び固定金型12側のいずれであっても良い。
【0051】
本実施形態に係る拡張発泡成形方法において、溶融樹脂が例えばエラストマー等の軟らかい樹脂である場合には、発泡型開き工程又は型開き工程に続いて、再型締め工程を行なうことが好ましい。この再型締め工程は、発泡層が形成された後、再度所定の型締め力を付与させて、意匠の最終的な転写性及び成形精度等を確保するためのものである。再型締め工程は、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を可動金型14側(型閉じ補正押圧工程)に切換えて、ピニオン22をラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bに押し付けた状態で行なわれることが好ましい。このようにピニオン22をラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bに押し付けた状態(型閉じ補正押圧工程)で再型締めを行なうことにより、型閉め動作におけるバックラッシの影響を完全に排除することができ、これにより、型締め動作の型締め量及び型締め速度の精度を向上させ、再型締め力を第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2内の発泡成形体に素早くかつ均等に付与させることができる。また、再型締めの継続中においても、ピニオン22をラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bに押し付けた状態(型閉じ補正押圧工程)を維持することが好ましい。再型締め工程後に行われる型開き工程及び製品取り出し工程においても、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧を行なうことが好ましいが、これら型開き工程及び製品取り出し工程においては、型開きの精度が要求されないため、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向は、可動金型14側及び固定金型12側のいずれであっても良い。
【0052】
このように、本実施形態に係る拡張発泡成形方法においては、ピニオン22をラック24、26の歯25、27に押し付けた状態、すなわち、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dとの間に生じるバックラッシをゼロにした状態(型開き補正押圧工程)において発泡型開き工程(型締め状態からの微少型開き動作)を行なうため、バックラッシの影響を完全に排除し、発泡型開き工程の継続中及び完了後において、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の微少型開き量を均一にすることができると共に、発泡圧力等の外乱要因があっても、バックラッシをゼロにした状態を維持させることができるため、微少型開き位置の位置保持や発泡型開き工程における微少型開き速度を安定させ、高品質な発泡成形品を得ることができる。
【0053】
本実施形態に係る拡張発泡成形方法は、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2における成形条件が同一である必要がある発泡成形品、例えば左右対称のドアトリム等の成形に特に適している。すなわち、ドアトリム等は、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2において同一の成形条件で成形する必要があり、また、製品の投影面積が大きいため、成形サイクルを短縮するためには、左右ドアトリム両方を成形できる大きな金型を使用して、大きな成形装置で拡張発泡成形する必要がある。しかしながら、本実施形態に係る射出成形装置1であれば、三枚構造の射出成形金型10を用いているため、大きな成形装置や大きな型締め力が必要なく、また、ラックアンドピニオン機構20にバックラッシを排除可能なピニオン移動機構30が設けられているため、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の微少型開き量及び微少型開き速度を含めた成形条件を全く同じにすることができる。
【0054】
本実施形態に係る拡張発泡成形方法においては、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の双方において同一の成形条件で、同時に、拡張発泡成形方法により同一種類の発泡成形品52、52を成形するとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、本実施形態に係る拡張発泡成形方法は、例えば、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2のそれぞれにおいて、異なる溶融樹脂から異なる種類の発泡成形品を成形するとしても良い。具体的には、第1金型キャビティC1と第2金型キャビティC2とでキャビティ形状が異なる三枚構造の射出成形金型10を用いると共に、射出ユニット7の他に可動金型14側の第2金型キャビティC2に射出充填可能な射出ユニットをもう一台設け(図9等参照)、2つの射出ユニットから第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2にそれぞれ発泡性溶融樹脂を射出充填させるようにすることができる。このように第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2において異なる発泡成形品を成形する場合には、両成形品の投影面積が異なり、発泡圧力及び発泡状態の差異が顕著となるが、本実施形態に係る拡張発泡成形方法によれば、中間金型16の両側の金型キャビティの発泡圧力に差異が生じた場合でも、微少型開き時における中間金型16が、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、D側に確実に位置保持されるため、問題なく高品質な発泡成形品を成形することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る拡張発泡成形方法は、第1及び第2金型キャビティC1、C2の双方において同時に、拡張発泡成形方法により発泡成形品を成形する態様(拡張発泡成形−拡張発泡成形の態様)としたが、これに限定されず、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の少なくとも一方において拡張発泡成形方法により発泡成形品を成形するものであれば良い。すなわち、例えば、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2のいずれか一方側のみにおいて拡張発泡成形方法により発泡成形品を成形し、他方側の金型キャビティにおいては通常の成形方法(すなわち、成形工程中に金型キャビティ容積を変化させない一般的な射出成形方法)により未発泡成形品を成形する態様(拡張発泡成形−未発泡成形の態様)や、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2のいずれか一方側のみにおいて拡張発泡成形方法により発泡成形品を成形し、他方側の金型キャビティにおいては何も成形しない態様(拡張発泡成形−成形無しの態様)であっても良い。前者の拡張発泡−未発泡の態様においては、具体的には、まず、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2のいずれか一方側、例えば第1金型キャビティC1のみに発泡性溶融樹脂を射出充填させ、冷却固化させる。後述するように、固定金型12に接続する第2射出ユニットを設ける場合は、第1金型キャビティC1のみに非発泡性溶融樹脂を射出充填させても良い。その後、第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2の他方側、すなわち第2金型キャビティC2に発泡性溶融樹脂を射出充填させ、冷却固化させる前に第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2を拡張させ、第2金型キャビティC2の発泡性溶融樹脂のみを拡張発泡成形させる。このように、最初に第1金型キャビティC1内に射出充填させた発泡性溶融樹脂或いは非発泡性溶融樹脂を冷却固化させた後に両方の金型キャビティの容積を拡張させるため、第1金型キャビティC1においては、非発泡性溶融樹脂はもちろん、発泡性溶融樹脂も発泡膨張せず、未発泡成形品を成形することができる。第1金型キャビティC1及び第2金型キャビティC2に対してそれぞれ別々に溶融樹脂を射出充填させるためには、射出ユニット7の他に可動金型14や中間金型16、或いは、固定金型12に接続する射出ユニットをもう一台設けるか、若しくは樹脂流路に、樹脂流路を開放及び閉鎖可能な樹脂遮断開放切替弁等を設けることが好ましいが、これらに限定されるものではない。なお、後者の拡張発泡成形−成形無しの態様については、これまでの拡張発泡成形方法から容易に理解できるため、説明を省略する。
【0056】
更に、本実施形態に係る拡張発泡成形方法は、シェアエッジ構造ではない、型開閉方向に直交する平面のみで構成される金型分割面を有する一般的な構造の金型であっても実施することができる。具体的には、金型内部に配置された可動中子等の可動部分を可動させて金型キャビティの容積を拡張させたり、発泡型開き工程における微少型開き量を溶融樹脂が漏れ出さない程度の微少量としたり、金型キャビティ内に射出充填された溶融樹脂と金型キャビティ内面との接触部において、溶融樹脂が冷却固化されて形成されるスキン層を、金型の温度調節等により金型を微少型開きさせても溶融樹脂が漏れ出さない程度に厚く形成させたりする等の公知の方法で発泡成形品を成形するとしても良い。
【0057】
[射出プレス成形]
次に、本実施形態に係る射出プレス成形方法について、図9を用いて説明する。本実施形態に係る射出プレス成形方法は、固定金型12及び中間金型16間に形成される第1金型キャビティC1並びに可動金型14及び中間金型16間に形成される第2金型キャビティC2において、同時に、射出プレス成形方法により射出プレス成形品を成形する方法である。本射出プレス成形方法においては、固定金型12側に設けられた第1射出ユニット7の他に、可動金型14側に設けられた第2射出ユニット8を用いて説明するが、これに限定されるものではない。ここで、射出プレス成形方法とは、簡単には、予め、金型キャビティに射出充填させる溶融樹脂圧力による型開き力よりも強い型締め力で可動金型14を微少型開き状態で位置保持させ、その微少型開きにより、型締め時よりその容積を拡張させた金型キャビティに溶融樹脂を射出充填させ、射出充填途中或いは射出充填完了後に可動金型14を所定の型締めプレス力で型締めさせ、金型キャビティ容積を型締め時まで縮小させる(射出プレス工程)ことにより、金型キャビティ内の溶融樹脂に所定の型締めプレス力を作用させた状態で冷却固化させる方法である。この射出プレス成形方法は、歪みや変形を特に抑える必要がある成形品、例えばCD、DVD等の光学ディスクや、ガラス代替品としての自動車等の樹脂ガラス製品等の成形に特に適している。なお、本実施形態に係る射出プレス成形方法において、ラック24、26及びピニオン22の動作は、上記拡張発泡成形方法におけるラック24、26及びピニオン22の動作を示す図8から容易に理解できるため、その説明図面を省略する。
【0058】
まず、固定金型12、可動金型14及び中間金型16の型開き状態(図1参照)において、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を固定金型12側から可動金型14側に切換え、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間に生じるバックラッシをゼロにするために型閉じ補正押圧工程を行う。この型閉じ補正押圧工程において、ピニオン移動機構30によりピニオン22を可動金型14側に押圧する所定圧1は、ピニオン22を型開閉方向に移動可能な程度であれば良い。
【0059】
次に、ピニオン22がラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bに押し付けられている状態(型閉じ補正押圧工程)において、図9(a)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び中間金型16を完全に型合わせされない位置まで型閉じ方向に移動させ、可動金型14及び中間金型16を微少型開き状態で位置保持させる(型締め工程)。これにより、固定金型12及び中間金型16間に、型締め時よりも所定量bだけ型開閉方向に拡張された第1金型キャビティC1´が形成され、可動金型14及び中間金型16間に、型締め時よりも所定量bだけ型開閉方向に拡張された第2金型キャビティC2´が形成される。
【0060】
型締め工程後、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図9(b)に示すように、第1金型キャビティC1´及び第2金型キャビティC2´に、固定金型12及び可動金型14に形成された樹脂流路50´、50´´を介して第1射出ユニット7及び第2射出ユニット8からそれぞれ溶融樹脂を射出充填させる(射出充填工程)。
【0061】
この射出充填工程の継続中及び完了後においても、型閉じ補正押圧工程を継続することが好ましい。例えば、型閉じ補正押圧工程の継続中、この射出充填工程時に、第1金型キャビティC1´及び第2金型キャビティC2´において、不適切な樹脂流路の配置や、不適切な射出条件等により、両金型キャビティの溶融樹脂圧力に差異が生じる可能性がある。そのため、第2金型キャビティC2´の溶融樹脂圧力よりも第1金型キャビティC1´の溶融樹脂圧力の方が高い場合、その差異分だけ中間金型16には型開き方向(可動金型14側)の力が作用する。この型開き方向の力は、継続している型閉じ補正押圧工程の、ピニオン移動機構30によりピニオン22を可動金型14側(型開き方向)に押圧する所定圧1と同じ方向に作用するため、この型開き方向の力が所定圧1よりも大きい場合、ピニオン22はこの型開き方向の力で可動金型14側に押圧され、この型開き方向の力が所定圧1よりも小さい場合、ピニオン22は所定圧1で可動金型14側に押圧され、いずれの場合においても型閉じ補正押圧工程は維持される。よって、射出充填工程の継続中及び完了後において、型閉じ補正押圧工程(図8(a)参照)を継続しさえすれば良く、所定圧1を、第1金型キャビティC1´及び第2金型キャビティC2´に射出充填させる溶融樹脂圧力以上にする必要はない。逆に、第1金型キャビティC1´の溶融樹脂圧力よりも第2金型キャビティC2´の溶融樹脂圧力の方が高い場合、その差異分だけ中間金型16には型閉じ方向(固定金型12側)の力が作用する。この型閉じ方向の力は、継続している型閉じ補正工程の、ピニオン移動機構30によりピニオン22を可動金型14側(型開き方向)に押圧する所定圧1と逆方向に作用するため、この型閉じ方向の力が所定圧1よりも大きい場合、ピニオン移動機構30は、中間金型16の側面に固定されているため、中間金型16はピニオン22とラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dとの間のバックラッシα及びβに相当する分、型閉じ方向(固定金型12側)に移動してしまう(図8(a)参照)。そこで、この中間金型16に作用する型閉じ方向の力、すなわち、第2金型キャビティC2´に射出充填させる溶融樹脂圧力に対抗して、所定圧1を、この型閉じ補正押圧工程の最初から、或いは、射出充填工程の前に、この溶融樹脂圧力以上(好ましくは、溶融樹脂圧力より大)とすれば、中間金型16は、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、B側に位置保持され、微少型開き状態の型締め工程の完了後においては、設定された微少型開き量以下に、また、後述する射出プレス工程(型閉じ方向への移動動作)の継続中においては、ラックアンドピニオン機構20による型閉じ方向への移動量以上に型閉じ方向に移動することはない。
【0062】
また、この射出充填工程と連動させて、又は射出充填工程後、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図9(c)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び中間金型16を型閉じ方向に移動させ、固定金型12、可動金型14及び中間金型16を所定の型締めプレス力で型締めさせる(射出プレス工程)。この射出プレス工程により、第1金型キャビティC1´内及び第2金型キャビティC2´内の溶融樹脂に所定の型締めプレス力を作用させ、射出プレス成形品54、54が成形される。型締め状態においては、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧(型閉じ補正押圧工程)を行なう必要はないが、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために、押圧を継続することが好ましい。
【0063】
所定の冷却固化時間経過後、図9(d)に示すように、拡張発泡成形方法と同様に、型開き工程び製品取り出し工程を行うことにより、固定金型12及び中間金型16間並びに可動金型14及び中間金型16間においてそれぞれ成形された射出プレス成形品54、54が、図示しない製品取出装置により取り出される。この型開き工程時においては、射出プレス成形品54、54を固定金型12、中間金型16及び可動金型14のいずれの金型に保持させても良い。このようにして、以後、図9(a)の状態から図9(d)の状態に至る成形サイクルを繰り返すことにより、射出プレス成形品54、54が同時に、連続的に成形される。
【0064】
これら型開き工程及び製品取り出し工程においては、型開きの精度が要求されないため、ピニオン移動機構30による固定金型12側へのピニオン22への押圧(型開き補正押圧工程)を行なう必要はないが、拡張発泡成形方法と同様に、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧を行なうことが好ましい。
【0065】
このように、本実施形態に係る射出プレス成形方法においては、ピニオン22をラック24、26の歯に押し付けた状態、すなわち、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間に生じるバックラッシをゼロにした状態(型閉じ補正押圧工程)において、射出充填工程及び射出プレス工程(微少型開き状態からの型閉じ・型締め動作)を行なうため、バックラッシの影響を完全に排除し、射出充填工程の継続中及び完了後において、第1金型キャビティC1´及び第2金型キャビティC2´の微少型開き量を均一にすることができると共に、溶融樹脂圧力等の外乱要因があっても、バックラッシをゼロにした状態を維持させることができるため、微少型開き位置の位置保持や射出プレス工程における型締め速度を安定させ、高品質な射出プレス成形品を得ることができる。
【0066】
本実施形態に係る射出プレス成形方法においては、第1金型キャビティC1´及び第2金型キャビティC2´の双方において、同一の成形条件で、同時に、射出プレス成形方法により同一種類の射出プレス成形品54、54を成形するとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、本実施形態に係る射出プレス成形方法は、例えば、拡張発泡成形方法と同様に、第1金型キャビティC1´及び第2金型キャビティC2´のそれぞれにおいて、異なる溶融樹脂から異なる種類の射出プレス成形品を成形するとしても良い。
【0067】
また、本実施形態に係る射出プレス成形方法は、第1及び第2金型キャビティC1´、C2´の双方において同時に射出プレス成形方法により射出プレス成形品を成形する態様(射出プレス成形−射出プレス成形の態様)としたが、これに限定されず、拡張発泡成形方法と同様に、射出プレス成形−未射出プレス成形の態様や、射出プレス成形−成形無しの態様であっても良い。前者の射出プレス成形−未射出プレス成形の態様においては、具体的には、まず、微小型開き状態の第1金型キャビティC1´及び第2金型キャビティC2´のいずれか一方側のみに溶融樹脂を射出充填させ、その後、上述した方法で射出プレス工程を行う。その後、型締め状態の第1金型キャビティC1´及び第2金型キャビティC2´の他方側に溶融樹脂を射出充填させ、第1金型キャビティC1´及び第2金型キャビティC2´の双方の溶融樹脂を冷却固化させる。これにより、第1金型キャビティC1´及び第2金型キャビティC2´のいずれか一方側においては、射出プレス成形品を、他方側においては、未射出プレス成形品を成形することができる。なお、後者の射出プレス成形−成形無しの態様については、これまでの射出プレス成形方法から容易に理解できるため、説明を省略する。
【0068】
更に、本実施形態に係る射出プレス成形方法においては、固定金型12の背面側に設けられた第1射出ユニット7により第1金型キャビティC1´に溶融樹脂を射出充填させ、可動金型14側に設けられた第2射出ユニット8により第2金型キャビティC2´に溶融樹脂を射出充填させるとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、本実施形態に係る射出プレス成形方法は、例えば、拡張発泡成形方法と同様に、可動金型14側の第2射出ユニット8を設けず、第1射出ユニット7のみから射出させた溶融樹脂を中間金型16まで流動させ、中間金型16側から第1金型キャビティC1´及び第2金型キャビティC2´にそれぞれ溶融樹脂を流入させる構成としても良い(図7参照)。また、この場合、樹脂流路には、樹脂流路を開放及び閉鎖可能な樹脂遮断開放切替弁等を設けるとしても良い。
【0069】
[射出圧縮成形]
次に、本実施形態に係る射出圧縮成形方法について、図10を用いて説明する。本実施形態に係る射出圧縮成形方法は、固定金型12及び中間金型16間に形成される第1金型キャビティC1並びに可動金型14及び中間金型16間に形成される第2金型キャビティC2において、同時に、射出圧縮成形方法により射出圧縮成形品を成形する方法である。本射出圧縮成形方法においては、固定金型12側に設けられた第1射出ユニット7の他に、可動金型14側に設けられた第2射出ユニット8を用いて説明するが、これに限定されるものではない。ここで、射出圧縮成形方法とは、簡単には、予め、金型キャビティに射出充填させる溶融樹脂圧力による型開き力よりも弱い型締め力で可動金型14を型締めさせ、次に、金型キャビティに射出充填させた溶融樹脂圧力により可動金型14を微少型開きさせ、その微少型開きにより、型締め時よりその容積を拡張させた金型キャビティに溶融樹脂を射出充填させ、射出充填途中或いは射出充填完了後に可動金型14を所定の型締め圧縮力で型締めさせ、金型キャビティ容積を型締め時まで縮小させる(射出圧縮工程)ことにより、金型キャビティ内の溶融樹脂に所定の型締め圧縮力を作用させた状態で冷却固化させる方法である。この射出圧縮成形方法は、射出プレス成形方法と同様に、歪みや変形を特に抑える必要がある成形品、例えばCD、DVD等の光学ディスクや、ガラス代替品としての自動車等の樹脂ガラス製品等の成形に特に適している。なお、本実施形態に係る射出圧縮成形方法において、ラック24、26及びピニオン22の動作は、上記拡張発泡成形方法におけるラック24、26及びピニオン22の動作を示す図8から容易に理解できるため、その説明図面を省略する。
【0070】
まず、上述した射出プレス成形方法と同様に、固定金型12、可動金型14及び中間金型16の型開き状態(図1参照)において、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を固定金型12側から可動金型14側に切換え、ピニオン22ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間に生じるバックラッシをゼロにするために型閉じ補正押圧工程を行う。なお、この型閉じ補正押圧工程は、必ずしもこの段階で行なう必要はなく、後述する型締め工程から射出充填工程の開始前までに行えば良い。
【0071】
次に、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図10(a)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び中間金型16を型閉じ方向に移動させ、固定金型12、可動金型14及び中間金型16を型締めさせる(型締め工程)。これにより、固定金型12及び中間金型16間に第1金型キャビティC1´´が形成され、可動金型14及び中間金型16間に第2金型キャビティC2´´が形成される。ここで、型閉じ工程における型締装置6の型締め力は、第1金型キャビティC1´´及び第2金型キャビティC2´´に射出充填される溶融樹脂圧力よりも小さくなるように設定されている。
【0072】
型締め工程後、型閉じ補正押圧工程の継続中に、図10(b)に示すように、第1金型キャビティC1´´及び第2金型キャビティC2´´に、固定金型12及び可動金型14に形成された樹脂流路51´、51´´を介して第1射出ユニット7及び第2射出ユニット8からそれぞれ溶融樹脂を射出充填させる(射出充填工程)。
【0073】
この射出充填工程において、第1金型キャビティC1´´及び第2金型キャビティC2´´に射出充填させた溶融樹脂圧力により、図10(c)に示すように、可動金型14及び中間金型16が固定金型12に対して型開き方向に所定量cだけ微少型開きされる(微少型開き工程)。具体的には、型締め工程における型締装置6の型締め力は、先に説明したように、第1金型キャビティC1´´及び第2金型キャビティC2´´に射出充填させる溶融樹脂圧力よりも小さくなるように設定されているため、型締装置6の型締め力と射出充填させる溶融樹脂圧力による型開き方向の力との差異分だけ可動金型14及び中間金型16には型開き方向の力が作用し、可動金型14及び中間金型16を固定金型12から微少型開きさせる。ここで、予め、可動金型14及び中間金型16を微少型開き状態で位置保持させ(型締め工程)、型締め時よりも所定量bだけ型開閉方向に拡張された第1金型キャビティC1´及び第2金型キャビティC2´に溶融樹脂を射出充填させる射出プレス成形方法と異なり、本射出圧縮成形方法においては、この射出充填工程時に、第1金型キャビティC1´´及び第2金型キャビティC2´´に生じる溶融樹脂圧力の差異により、それぞれの場合の微少型開き動作のメカニズムが相違する。
【0074】
まず、第2金型キャビティC2´´の溶融樹脂圧力よりも第1金型キャビティC1´´の溶融樹脂圧力の方が高い場合の微少型開き動作のメカニズムを説明する。可動金型14には、型締装置6の型締め力と第2金型キャビティC2´´に射出充填させた溶融樹脂圧力による型開き方向の力との差異分だけ型開き方向の力が作用する。また、中間金型16には、第1金型キャビティC1´´及び第2金型キャビティC2´´に射出充填させた溶融樹脂圧力の差異による型開き方向の力が作用し、この型開き方向の力の方が可動金型14に作用する型開き方向の力よりも大きい。すなわち、この場合、可動金型14は中間金型16に作用する型開き方向の力によりラックアンドピニオン機構20を介して微少型開きされる。具体的には、この型開き方向の力は中間金型16を介して可動金型14にも作用し、可動金型14が中間金型16から微少型開きされるきっかけとなる。可動金型14が中間金型16から型開き方向に離間した後は、中間金型16に作用する型開き方向の力がラックアンドピニオン機構20を介して可動金型14にも作用し、中間金型16の微少型開き動作に連動して、可動金型14を微少型開きさせる。すなわち、拡張発泡成形方法の発泡型開き工程の際行われる型開き補正押圧工程ではなく、逆の、型閉じ補正押圧工程、すなわち、ピニオン22がラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bに押し付けられている状態において、中間金型16の型開き方向への移動に伴いピニオン22も型開き方向に移動し、下側のラック26の歯27の可動金型14側の面Bにおいて、ピニオン22の下側の歯により、同ラックの歯27に型開き方向の力を作用させる。このとき、ピニオン22はその下側の歯を介して反時計周り(型閉じ方向)の反力を受けるが、同時にピニオン22の上側の歯が、固定され移動しない上側のラック24の歯25の可動金型14側の面Aにおいて、時計回り(型開き方向)の反力を受けるため、ピニオン22は反時計周りには回転せず、中間金型16の型開き方向への移動に伴い、時計回りに回転しながら下側のラック26を型開き方向に移動させ、可動金型14を型開き方向に移動させる(図8(a)参照)。このとき、型締装置6は、ラックアンドピニオン機構20を介して中間金型16から可動金型14に作用する溶融樹脂圧力による型開き方向の力に対抗して、可動金型14の微少型開き量及び微少型開き速度を制御するように型締め力を作用させるが、可動金型14に型開き方向の力を作用させることはない。ここで、型閉じ補正押圧工程ではなく、型開き補正押圧工程、すなわち、ピニオン22がラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dに押し付けられている状態(図8(c)参照)において、この微少型開き工程を行わせた場合、先に説明したように、可動金型14及び中間金型16が型合わせ状態の微少型開き工程の初期段階においては、可動金型14は中間金型と共に型開き方向に移動されるが、可動金型14が中間金型16から型開き方向に離間した後は、中間金型16のみが、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、B側にバックラッシα、β分だけ移動し、第1金型キャビティC1´´及び第2金型キャビティC2´´の微少型開き量に差異が生じてしまう。
【0075】
また、第2金型キャビティC2´´の溶融樹脂圧力よりも第1金型キャビティC1´´の溶融樹脂圧力の方が高い場合、中間金型16に作用するこの型開き方向の力(可動金型14側)は、継続している型閉じ補正押圧工程の、ピニオン移動機構30によりピニオン22を可動金型14側(型開き方向)に押圧する所定圧1と同じ方向に作用するため、この型開き方向の力が所定圧1よりも大きい場合、ピニオン22はこの型開き方向の力で可動金型14側に押圧され、この型開き方向の力が所定圧1よりも小さい場合、ピニオン22は所定圧1で可動金型14側に押圧され、いずれの場合においても型閉じ補正押圧工程は維持される。この所定圧1は、第1金型キャビティC1´´に射出充填させる溶融樹脂圧力以上にする必要はないが、射出充填中の溶融樹脂圧力は一定ではなく変動することから、型閉じ補正押圧工程を装置制御の下に確実に継続するために、第1金型キャビティC1´´に射出充填させる溶融樹脂圧力以上にすることが好ましい。このように、この型閉じ補正押圧工程により、中間金型16は、ラック24、26の歯25、27の可動金型側の面A、B側に位置保持され、微少型開き工程の継続中においては、ラックアンドピニオン機構20による型開き方向への移動量以上に、また、微少型開き工程の完了後においては、設定された微少型開き量以上に型開き方向に移動することはない。更に、後述する射出圧縮工程においても、このまま型閉じ補正押圧工程を継続すれば、設定された微少型開き位置からの型閉じ方向の移動動作の継続中のバックラッシをゼロにすることできる。
【0076】
一方、第1金型キャビティC1´´の溶融樹脂圧力よりも第2金型キャビティC2´´の溶融樹脂圧力の方が高い場合においても、可動金型14には、型締装置6の型締め力と第2金型キャビティC2に射出充填させた溶融樹脂圧力による型開き方向の力との差異分だけ型開き方向の力が作用する。また、中間金型16には、第1金型キャビティC1´´及び第2金型キャビティC2´´に射出充填させた溶融樹脂圧力の差異による型閉じ方向の力が作用し、この型閉じ方向の力の方が可動金型14に作用する型開き方向の力よりも小さい。すなわち、この場合、中間金型16は可動金型14に作用する型開き方向の力によりラックアンドピニオン機構20を介して微少型開きされる。これは、型締装置6により可動盤4及び可動金型14を型開き方向へ移動させ、ラックアンドピニオン機構20により中間金型16を型開き方向に移動させる拡張発泡成形方法の発泡型開き工程と同じ状態である。そのため、先に説明した、第2金型キャビティC2´´の溶融樹脂圧力よりも第1金型キャビティC1´´の溶融樹脂圧力の方が高い場合における型閉じ補正押圧工程ではなく、型開き補正押圧工程を行うことが好ましい。
【0077】
また、第1金型キャビティC1´´の溶融樹脂圧力よりも第2金型キャビティC2´´の溶融樹脂圧力の方が高い場合、中間金型16に作用するこの型閉じ方向の力(固定金型12側)は、継続している型閉じ補正工程の、ピニオン移動機構30によりピニオン22を可動金型14側(型開き方向)に押圧する所定圧1と逆方向に作用するため、この型閉じ方向の力が所定圧1よりも大きい場合、ピニオン移動機構30は、中間金型16の側面に固定されているため、中間金型16はピニオン22とラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dとの間のバックラッシα及びβに相当する分、型閉じ方向(固定金型12側)に移動してしまう(図8(a)参照)。そこで、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dとの間に生じるバックラッシをゼロにするために、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧方向を切換えて、型開き補正押圧工程(図8(c)参照)を行う。これにより、中間金型16に作用する型閉じ方向の力は、ピニオン移動機構30によりピニオン22を固定金型12側(型閉じ方向)に押圧する所定圧2と同じ方向に作用するため、この型閉じ方向の力が所定圧2よりも大きい場合、ピニオン22はこの型閉じ方向の力で固定金型12側に押圧され、この型閉じ方向の力が所定圧2よりも小さい場合、ピニオン22は所定圧2で固定金型12側に押圧され、いずれの場合においても型開き補正押圧工程は維持される。この所定圧2は、第2金型キャビティC2´´に射出充填させる溶融樹脂圧力以上にする必要はないが、射出充填中の溶融樹脂圧力は一定ではなく変動することから、型開き補正押圧工程を装置制御の下に確実に継続するために、第2金型キャビティC2´´に射出充填させる溶融樹脂圧力以上にすることが好ましい。このように、型開き補正押圧工程により、中間金型16は、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、D側に位置保持され、微少型開き工程の継続中においては、ラックアンドピニオン機構による型開き方向への移動量以上に、また、微少型開き工程の完了後においては、設定された微少型開き量以上に型開き方向に移動することはない。また、射出充填工程(微少型開き工程)の完了後、この型開き補正押圧工程を、再び、適切なタイミングで型閉じ補正押圧工程に切換えることにより、設定された微少型開き位置からの型閉じ方向の移動動作の継続中のバックラッシをゼロにすることできる。
【0078】
このように、射出充填工程時に、第1金型キャビティC1´´及び第2金型キャビティC2´´に射出充填させた溶融樹脂圧力の差異により、必要に応じて、ピニオン移動機構30によるピニオン22の押圧方向を切換えて、適切な型開き/型閉じ補正押圧工程を行うことにより、中間金型16は、ラック24、26の歯25、17の可動金型14の面A、B側、あるいは、固定金型12の面C,D側のいずれか適切な側に位置保持され、微少型開き工程の継続中においては、ラックアンドピニオン機構20による型開き方向への移動量以上に、また、微少型開き工程の完了後においては、設定された微少型開き量以上に型開き方向に移動することはない。
【0079】
本実施形態に係る射出圧縮成形方法において、微少型開き量及び微少型開き速度を高精度に制御するために、射出充填工程と連動して、可動金型14及び中間金型16の微少型開き量をモニタして型締装置6による型締め力をフィードバック制御するフィードバック工程を更に備えることが好ましい。このフィードバック工程は、具体的には、第1金型キャビティC1´´及び第2金型キャビティC2´´へ溶融樹脂が射出充填されている状態において、可動金型14及び中間金型16の微少型開き量をモニタし、可動金型14及び中間金型16の微少型開き量が所定量cに到達したときに、その可動金型14及び中間金型16の位置が保持されるように型締装置6の型締め力を増大させる型締制御により行うことができる。なお、本実施形態に係る射出圧縮成形方法において、このフィードバック工程は、必ずしも行なう必要はなく、フィードバック工程に変えて、例えば、可動金型14及び中間金型16の微少型開き量が所定量cに到達した時又はその後(微少型開き工程後)に、後述する射出圧縮工程に移行するとしても良い。
【0080】
微少型開き工程後、型閉じ補正押圧工程の継続中に、或いは、型開き補正押圧工程の継続中であれば型閉じ補正押圧工程に切り替えた後、図10(d)に示すように、型締装置6及びラックアンドピニオン機構20によって可動金型14及び中間金型16を型閉じ方向に移動させて、固定金型12、可動金型14及び中間金型16を所定の型締め圧縮力で型締めさせる(射出圧縮工程)。この射出圧縮工程により、第1金型キャビティC1´´内及び第2金型キャビティC2´´内の溶融樹脂に型締め圧縮力を作用させ、射出圧縮成形品55、55が成形される。この射出圧縮工程は、射出充填工程と連動して行われるとしても良いし、射出充填工程後に行われるとしても良い。型締め状態においては、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧(型閉じ補正押圧工程)を行なう必要はないが、型開閉方向に直交するピニオン22の軸位置を一致させるために、押圧を継続することが好ましい。
【0081】
所定の冷却固化時間経過後、図10(e)に示すように、拡張発泡成形方法と同様に、型開き工程及び製品取り出し工程を行うことにより、固定金型12及び中間金型16間並びに可動金型14及び中間金型16間においてそれぞれ成形された射出圧縮成形品55、55が、図示しない製品取出装置により取り出される。このようにして、以後、図10(a)の状態から図10(e)の状態に至る成形サイクルを繰り返すことにより、射出圧縮成形品55、55が同時に、連続的に成形される。
【0082】
これら型開き工程及び製品取り出し工程においては、型開きの精度が要求されないため、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧(型開き補正押圧工程)を行なう必要はないが、拡張発泡成形方法及び射出プレス成形方法と同様に、ピニオン移動機構30によるピニオン22への押圧を行なうことが好ましい。
【0083】
このように、本実施形態に係る射出圧縮成形方法によれば、ピニオン22をラック24、26の歯に押し付けた状態、すなわち、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間に生じるバックラッシをゼロにした状態(型閉じ補正押圧工程)或いは、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の固定金型12側の面C、Dとの間に生じるバックラッシをゼロにした状態(型開き補正押圧工程)において、射出充填工程を行い、金型キャビティに射出充填させた溶融樹脂圧力により、可動金型14及び中間金型16を微少型開きさせ、ピニオン22と、ラック24、26の歯25、27の可動金型14側の面A、Bとの間に生じるバックラッシをゼロにした状態(型閉じ補正押圧工程)において、射出圧縮工程(微少型開き状態からの型閉じ・型締め動作)を行なうため、バックラッシの影響を完全に排除し、射出充填工程の継続中及び完了後において、第1金型キャビティC1´´及び第2金型キャビティC2´´の微少型開き量及び型閉じ量を均一にすることができると共に、溶融樹脂圧力等の外乱要因があっても、バックラッシをゼロにした状態を維持させることができるため、微少型開き位置の位置保持や微少型開き工程における型開き速度及び射出圧縮工程における型締め速度を安定させ、高品質な射出圧縮成形品を得ることができる。
【0084】
本実施形態に係る射出圧縮成形方法においては、第1金型キャビティC1´´及び第2金型キャビティC2´´の双方において、同一の成形条件で、同時に、射出圧縮工程方法により同一種類の単層の射出圧縮成形品55、55を成形するとしたが、これに限定されず、拡張発泡成形方法と同様に、例えば、第1金型キャビティC1´´及び第2金型キャビティC2´´のそれぞれにおいて、異なる溶融樹脂から異なる種類の射出圧縮成形品を成形するとしても良い。
【0085】
また、本実施形態に係る射出圧縮成形方法は、第1及び第2金型キャビティC1´´、C2´´の双方において同時に射出圧縮成形方法により単層の射出圧縮成形品を成形する態様(射出圧縮成形−射出圧縮成形の態様)としたが、これに限定されず、拡張発泡成形方法と同様に、射出圧縮成形−未射出圧縮成形の態様や、射出圧縮成形−成形無しの態様であっても良い。
【0086】
更に、本実施形態に係る射出圧縮成形方法においては、固定金型12の背面側に設けられた第1射出ユニット7により第1金型キャビティC1´´に溶融樹脂を射出充填させ、可動金型14の側面側に設けられた第2射出ユニット8により第2金型キャビティC2´´に溶融樹脂を射出充填させるとしたが、これに限定されず、拡張発泡成形方法と同様に、可動金型14側の第2射出ユニット8を設けず、第1射出ユニット7のみから射出された溶融樹脂を中間金型16まで流動させ、中間金型16側から第1金型キャビティC1´´及び第2金型キャビティC2´´にそれぞれ溶融樹脂を流入させる構成としても良い。また、この場合、樹脂流路には、樹脂流路を開放及び閉鎖可能な樹脂遮断開放切替弁等を設けるとしても良い。
【0087】
以上のように、本実施形態に係る三枚構造の射出成形金型、射出成形装置及び射出成形方法は、ピニオン移動機構30によって、ピニオン22を型開閉動作と逆方向、すなわち、可動盤(型締装置)による型開き時においては、ピニオン22を固定金型12側(型開き補正押圧工程)に所定圧2で押圧し、型閉じ時においては、ピニオン22を可動金型14側(型閉じ補正押圧工程)に所定圧1で押圧し、射出圧縮成形方法等、金型キャビティ内に射出充填させる溶融樹脂圧力による型開き時においては、射出充填させる溶融樹脂圧力の差異により、必要に応じて、ピニオン移動機構30によるピニオン22の押圧方向を切換えて、適切な型開き/型閉じ補正押圧工程を行うことにより、可動金型14の型開閉動作及び金型キャビティに射出充填させる溶融樹脂圧力により中間金型16の型開閉動作を行わせるラックアンドピニオン機構20におけるバックラッシα、βの影響を完全に排除することができるため、高品質な発泡成形品、射出プレス成形品及び射出圧縮成形品を得ることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 射出成形装置、3 固定盤、4 可動盤、6 型締装置、10 三枚構造の射出成形金型、12 固定金型、14 可動金型、16 中間金型、20 ラックアンドピニオン機構、22 ピニオン、24、26 ラック、25、27 ラックの歯、30 ピニオン移動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と、
前記固定金型と対向し、型開閉方向に移動可能に設けられた可動金型と、
前記固定金型及び前記可動金型の間において型開閉方向に移動可能に設けられ、前記固定金型との間及び前記可動金型との間においてそれぞれ金型キャビティを形成可能な中間金型と、
前記中間金型に設けられたピニオン、並びに、前記固定金型及び前記可動金型にそれぞれ設けられ、前記ピニオンと噛合可能な歯を有するラックを備え、前記可動金型の型開閉方向の移動に対応して前記中間金型を型開閉方向に移動させるラックアンドピニオン機構と、
を備える三枚構造の射出成形金型であって、
前記ラックアンドピニオン機構は、前記ピニオンを前記中間金型に対して型開閉方向に移動可能に支持すると共に、前記ピニオンを前記固定金型及び前記可動金型の少なくとも一方側に押圧し、前記ピニオンを前記ラックの歯に押し付け可能なピニオン移動機構を更に備え、
前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記ラックの歯に押し付けた状態において、前記ラックアンドピニオン機構により前記中間金型を型開閉方向に移動可能に構成されている
ことを特徴とする三枚構造の射出成形金型。
【請求項2】
前記ピニオン移動機構は、前記固定金型、前記可動金型及び前記中間金型の型開き時に、前記ピニオンを前記固定金型側又は前記可動金型側に押圧し、前記固定金型、前記可動金型及び前記中間金型の型閉じ時に、前記ピニオンを前記可動金型側に押圧するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の三枚構造の射出成形金型。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の三枚構造の射出成形金型を備える射出成形装置であって、
前記固定金型を取り付け可能な固定盤と、
前記固定盤と対向して設けられ、前記固定盤に対して型開閉方向に移動可能で、前記可動金型を取り付け可能な可動盤と、
前記可動盤を型開閉方向に移動させ、型締めする型締装置と、
を備えることを特徴とする射出成形装置。
【請求項4】
固定金型を含む固定部と、
前記固定金型と対向する可動金型を含み、前記固定部に対して型開閉方向に移動可能に設けられた可動部と、
前記固定金型との間及び前記可動金型との間においてそれぞれ金型キャビティを形成可能な中間金型を含み、前記固定部及び前記可動部の間において型開閉方向に移動可能に設けられた中間部と、
前記可動部を型開閉方向に移動させ、型締めする型締装置と、
前記中間部に設けられたピニオン、並びに、前記固定部及び前記可動部にそれぞれ設けられ、前記ピニオンと噛合可能な歯を有するラックを備え、前記可動部の型開閉方向の移動に対応して前記中間部を型開閉方向に移動させるラックアンドピニオン機構と、
を備える射出成形装置であって、
前記ラックアンドピニオン機構は、前記ピニオンを前記中間部に対して型開閉方向に移動可能に支持すると共に、前記ピニオンを前記固定部及び前記可動部の少なくとも一方側に押圧し、前記ピニオンを前記ラックの歯に押し付け可能なピニオン移動機構を更に備え、
前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記ラックの歯に押し付けた状態において、前記ラックアンドピニオン機構により前記中間部を型開閉方向に移動可能に構成されている
ことを特徴とする射出成形装置。
【請求項5】
前記固定部は、前記固定金型と、前記固定金型を取り付け可能な固定盤とを備え、
前記可動部は、前記可動金型と、前記可動金型を取り付け可能な可動盤とを備え、
前記ラックは、前記固定盤及び前記可動盤にそれぞれ設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の射出成形装置。
【請求項6】
請求項3乃至5いずれか1項に記載の射出成形装置を用いて拡張発泡成形を行なう射出成形方法であって、
前記固定金型と前記中間金型とを型締めして第1金型キャビティを形成すると共に、前記可動金型と前記中間金型とを型締めして第2金型キャビティを形成する型締め工程と、
前記型締め工程後に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの少なくとも一方に発泡性溶融樹脂を射出充填する発泡性樹脂射出充填工程と、
前記発泡性樹脂射出充填工程後に、型締め状態を解除する型締め解除工程と、
前記型締め解除工程と並行して又はその後に、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧する型開き補正押圧工程と、
前記型開き補正押圧工程により前記ピニオンを前記固定金型側に押圧した状態において、前記可動金型及び前記中間金型を前記固定金型に対して型開閉方向に所定量だけ微少型開きさせ、前記発泡性樹脂射出充填工程において射出充填された発泡性溶融樹脂を前記金型キャビティ内で発泡膨張させる発泡型開き工程とを備える
ことを特徴とする射出成形方法。
【請求項7】
前記発泡性樹脂射出充填工程は、前記型締め工程後に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの両方に発泡性溶融樹脂を射出充填する工程である
ことを特徴とする請求項6記載の射出成形方法。
【請求項8】
請求項3乃至5いずれか1項に記載の射出成形装置を用いて射出プレス成形を行なう射出成形方法であって、
前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧する型閉じ補正押圧工程と、
前記型閉じ補正押圧工程により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧した状態において、前記固定金型及び前記中間金型の間並びに前記可動金型及び前記中間金型の間が所定量だけ微少型開きされる位置まで、前記固定金型、前記可動金型及び前記中間金型を型閉じさせ、前記固定金型及び前記中間金型の間に第1金型キャビティを形成すると共に、前記可動金型及び前記中間金型の間に第2金型キャビティを形成する型閉じ工程と、
前記型閉じ工程後に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの少なくとも一方に溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、
前記射出充填工程と連動して又は前記射出充填工程後に、前記固定金型、前記可動金型及び前記中間金型を所定の型締めプレス力で型締めし、前記第1金型キャビティ内及び前記第2金型キャビティ内の少なくとも一方の前記溶融樹脂に前記型締めプレス力を付与させる射出プレス工程とを備える
ことを特徴とする射出成形方法。
【請求項9】
請求項3乃至5いずれか1項に記載の射出成形装置を用いて射出圧縮成形を行なう射出成形方法であって、
前記固定金型、前記可動金型及び前記中間金型を型閉じさせ、前記固定金型及び前記中間金型の間に第1金型キャビティを形成すると共に、前記可動金型及び前記中間金型の間に第2金型キャビティを形成する型閉じ工程と、
前記型閉じ工程と並行して又はその後に、前記ピニオン移動機構により前記ピニオンを前記可動金型側に押圧する型閉じ補正押圧工程及び前記ピニオンを前記固定金型側に押圧する型開き補正押圧工程のいずれか一方の補正押圧工程と、
前記型閉じ補正押圧工程及び前記型開き補正押圧工程のいずれか一方の継続中に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの少なくとも一方に溶融樹脂を射出充填する射出充填工程と、
前記金型キャビティに射出充填した溶融樹脂圧力により前記可動金型及び前記中間金型を前記固定金型に対して型開閉方向に所定量だけ微少型開きさせる微少型開き工程と、
前記微少型開き工程後に、前記固定金型、前記可動金型及び前記中間金型を所定の型締め圧縮力で型締めし、前記第1金型キャビティ内及び前記第2金型キャビティ内の少なくとも一方の前記溶融樹脂に前記型締め圧縮力を付与させる射出圧縮工程とを備える
ことを特徴とする射出成形方法。
【請求項10】
前記射出充填工程は、前記型閉じ工程後に、前記第1金型キャビティ及び前記第2金型キャビティの両方に溶融樹脂を射出充填する工程である
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−95069(P2013−95069A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240561(P2011−240561)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【出願人】(592174154)和光技研工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】