説明

三次元形状測定システム

【課題】被測定物の測定対象が広範囲である場合における測定の所要時間を短縮できるとともに、製造コストを低減することを可能とする三次元形状測定システムを提供する。
【解決手段】パルス光を生成するパルス光源36と、生成されたパルス光を分配する光分配器64と、分配された各パルス光に基づいて、色が規則的に経時変化するチャープ光パルスを生成する複数のチャープ導入装置84と、生成された各チャープ光パルスをワーク32の各照射領域94に照射し、ワーク32で反射された各チャープ光パルスの各反射光像を取得する複数の反射光像取得部114と、取得された前記各反射光像の二次元情報及び色情報を用いて、ワーク32の三次元情報を取得するカラー二次元検出器106とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の三次元形状を測定する三次元形状測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の三次元形状、例えばワークの塗装面等の表面欠陥やその平滑さを測定する方法の一つとして、パルス光を用いたTOF(Time of Flight)法が挙げられる。
【0003】
パルス光を用いたTOF法とは、パルス光源から照射されたパルス光が、被測定物の表面の照射領域で反射され、検出器により検出されるまでの飛行時間(TOF)と光速度とから、奥行き方向の距離差として換算し、被測定物の三次元形状を測定するものである。
【0004】
例えば、特許文献1には、色が規則的に経時変化するパルス光(いわゆるチャープパルス光)を用い、三次元情報を二次元画像である色付き等高線マップに変換して検出する技術が開示されている。このように構成すれば、被測定物の三次元形状を高精度且つ高速で測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2500379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された装置を用いることにより被測定物の三次元形状を高精度に測定できる反面、その測定精度を確保するために、パルス光の照射領域(面積)を狭小の空間内に設定する必要がある。かかる場合、1回の照射動作で測定可能な領域(測定領域)が限定されるので、被測定物の測定対象が広範囲である場合は測定の所要時間が増加するという問題がある。
【0007】
この問題を解決する一つの手段として、同一構成を有する前記装置を複数台用意して、被測定物表面上の異なる測定箇所を同時に測定することも考えられる。
【0008】
しかしながら、かかる構成では、他の実装部品と比較して高価なパルス光源を前記装置と同数だけ設ける必要があるので、製造コストが高騰するという不都合がある。
【0009】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、被測定物の測定対象が広範囲である場合における測定の所要時間を短縮できるとともに、製造コストを低減することを可能とする三次元形状測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載の発明に係る三次元形状測定システムは、パルス光を生成するパルス光源と、前記パルス光源により生成された前記パルス光を分配する光分配器と、前記光分配器により分配された各パルス光に基づいて、色が規則的に経時変化するチャープ光パルスを生成する複数のチャープ光パルス生成手段と、前記複数のチャープ光パルス生成手段により生成された各チャープ光パルスを被測定物の各照射領域に照射し、該被測定物で反射された前記各チャープ光パルスの各反射光像を取得する複数の反射光像取得手段と、前記複数の反射光像取得手段により取得された前記各反射光像の二次元情報及び色情報を用いて、前記被測定物の三次元情報を取得する三次元情報取得手段とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、パルス光を分配する光分配器を設けたので、分配したパルス光を被測定物の各照射領域に照射することにより前記各照射領域を同時に測定可能となり、被測定物の測定対象が広範である場合での測定の所要時間を短縮できる。また、一つのパルス光源で構成してもよいので、システムの製造コストを低減できる。
【0012】
請求項2に記載の発明に係る三次元形状測定システムは、請求項1記載の三次元形状測定システムにおいて、前記光分配器は、前記パルス光を分配する分配比の変更可能な光分配器であることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、パルス光の分配比を可変にしたので、各測定領域に対して照射するパルス光の光量の多少を変更可能となり、各照射領域を同時に測定可能である測定システムの拡張性を向上することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明に係る三次元形状測定システムは、請求項2記載の三次元形状測定システムにおいて、前記各照射領域に関する測定情報に基づいて、前記パルス光の分配量を決定し、決定された前記分配量に基づいて前記分配比を算出して、算出された前記分配比により前記光分配器を制御するパルス光分配制御手段をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、各照射領域に関する測定情報に基づいて分配比を算出し、この分配比により光分配器を制御するパルス光分配制御装置を設けたので、各照射箇所の測定情報に基づいて適切な分配比を算出・設定可能となり、測定態様や測定部位の特性に応じた被測定物の三次元形状の測定をすることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明に係る三次元形状測定システムは、請求項3記載の三次元形状測定システムにおいて、前記パルス光分配制御手段は、前記測定情報と対応付けられた優先度に基づいて前記分配比を算出することを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、測定情報と対応付けられた優先度に基づいて前記分配比を算出するようにしたので、測定スケジュールの管理が容易となる。
【0018】
請求項5に記載の発明に係る三次元形状測定システムは、請求項4記載の三次元形状測定システムにおいて、前記パルス光分配制御手段は、決定された前記分配量の合計値が所定の値を超えるときに前記優先度の高い前記照射領域から順にパルス光を分配するように前記分配比を算出することを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、決定された分配量の合計値が所定の値を超えるときに優先度の高い前記照射領域から順にパルス光を分配するように分配比を算出したので、測定システム全体としての所要時間をさらに短縮することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明に係る三次元形状測定システムは、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の三次元形状測定システムにおいて、前記複数の反射光像取得手段に関する各三次元位置情報を基準座標から取得する三次元位置取得手段と、前記三次元位置取得手段により取得した前記各三次元位置情報に基づき前記被測定物の三次元情報を合成する三次元情報合成手段と、をさらに備え、前記三次元位置取得手段は、前記各チャープ光パルスに対して非干渉性を備える波を用いて前記各三次元位置情報を取得することを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、各チャープ光パルスに対して非干渉性を備える波を用いて各三次元位置情報を取得する三次元位置取得手段と被測定物の三次元情報を合成する三次元情報合成手段とを設けたので、各照射領域の測定に対して光干渉による悪影響を及ぼすことなく三次元位置情報の取得及び合成が可能となり、被測定物の三次元形状の測定結果を迅速に得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る三次元形状測定システムによれば、パルス光を生成するパルス光源と、生成された前記パルス光を分光する分光器と、分光された前記パルス光から、波長が規則的に経時変化するチャープパルス光を生成するチャープパルス光生成手段と、生成された前記チャープパルス光を被測定物の照射箇所の表面に照射し、前記表面で反射された前記チャープパルス光を切り出し、前記チャープパルス光の反射光像を取得する反射光像取得手段と、取得された前記反射光像の二次元情報及び波長情報を用いて前記被測定物の三次元情報を取得する三次元情報取得手段とを設けるようにしたので、複数の測定箇所に対して分光したパルス光を照射することにより前記複数の測定箇所を略同時に測定可能となり、被測定物の測定対象が広範囲である場合における測定の所要時間を短縮できる。また、一つのパルス光源で構成してもよいので、システムの製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る三次元形状測定システムの概略側面図である。
【図2】本実施形態に係るパルス光発生装置の構成ブロック図である。
【図3】本実施形態に係る三次元形状測定装置の構成ブロック図である。
【図4】図4Aは被測定物の表面の一部省略正面図、図4Bは図4AのIVB−IVB線断面図である。
【図5】図5Aは近距離モードにより取得された照射領域内の撮像信号のプロファイルである。図5Bは遠距離モードにより取得された照射領域内の撮像信号のプロファイルである。
【図6】本実施形態に係る三次元形状測定システムによる複数のタスクを実行する手順を説明するフローチャートである。
【図7】図7Aは、三次元形状測定システムの上位制御装置に登録されたタスクの一覧図である。図7Bは、第1の規則に従って図7Aに示すタスクを実行した場合のタスク実行スケジュールを表す図である。図7Cは、第2の規則に従って図7Aに示すタスクを実行した場合のタスク実行スケジュールを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る三次元形状測定システムについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
先ず、本実施形態に係る三次元形状測定システムについて図1を参照しながら説明する。三次元形状測定システム10は、2台の三次元形状測定装置12a、12cと、パルス光発生装置14と、2本のファイバケーブル16a、16cと、定点カメラ18と、定点カメラ制御装置20と、画像処理装置22と、モニタ24と、上位制御装置26と、ロボット制御装置28とを備える。
【0026】
三次元形状測定装置12a、12cの撮像面30a、30cは、被測定物としてのワーク32の表面34側を指向する。また、各三次元形状測定装置12a、12cは、図示しないロボットのアームに装着されているので、前記ロボット制御装置28による制御下に前記ロボットのアームを駆動することで、上下・左右方向に移動が自在である。
【0027】
パルス光発生装置14は、三次元形状測定装置12a、12cの上方部に固定設置されている。パルス光発生装置14は、各三次元形状測定装置12a、12cとファイバケーブル16a、16cを介して光学的に接続されている。
【0028】
三次元位置取得手段としての定点カメラ18は、三次元形状測定装置12a、12cの左上方部に固定設置されており、各三次元形状測定装置12a、12c側を指向する。
【0029】
定点カメラ制御装置20は、定点カメラ18に電気的に接続されており、定点カメラ18から供給される撮像信号を取得する。
【0030】
画像処理装置22は、各三次元形状測定装置12a、12cに電気的に接続されており、三次元形状測定装置12から供給される撮像信号に対して種々の画像処理を行う。また、三次元情報合成手段としての画像処理装置22は、定点カメラ制御装置20に電気的に接続されており、定点カメラ制御装置20から供給される撮像信号に対して種々の画像処理を行う。
【0031】
モニタ24は、画像処理装置22に接続されており、画像処理装置22により画像処理された画像や測定情報等を表示する。
【0032】
上位制御装置26は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)で構成され、パルス光発生装置14、定点カメラ制御装置20、画像処理装置22や図示しないロボットの駆動制御を行うロボット制御装置28に対して各種の指令を送信する。また、上位制御装置26が備える図示しない操作部から複数の測定モード、例えば、通常モード、近距離モード、又は遠距離モードのうちいずれかを設定可能である。
【0033】
図2は、本実施形態に係るパルス光発生装置14の構成ブロック図である。
【0034】
このパルス光発生装置14は、パルス光を射出するパルス光源36と、該パルス光源36により射出されたパルス光の偏光方向を所定の方向に傾ける第1波長板38と、該第1波長板38により偏光されたパルス光を偏光方向に応じて分割する第1偏光ビームスプリッタ40と、該第1偏光ビームスプリッタ40を透過されたパルス光の偏光方向を所定の方向に傾ける第2波長板42と、該第2波長板42により偏光されたパルス光を偏光方向に応じて分割する第2偏光ビームスプリッタ44と、該第2偏光ビームスプリッタ44を透過されたパルス光をファイバケーブル16aを介して三次元形状測定装置12aに伝送するファイバ結合用レンズ46とを備える。
【0035】
また、光路L1上に、第2偏光ビームスプリッタ44からのパルス光を所定の角度方向に反射する反射ミラー48と、該反射ミラー48からの反射光をファイバケーブル16bを介して三次元形状測定装置12bに伝送するファイバ結合用レンズ50とを備える。
【0036】
さらに、光路L2上に、第1偏光ビームスプリッタ40からのパルス光を所定の角度方向に反射する反射ミラー52と、該反射ミラー52からの反射光の偏光方向を所定の方向に傾ける第3波長板54と、該第3波長板54により偏光されたパルス光を偏光方向に応じて分割する第3偏光ビームスプリッタ56と、該第3偏光ビームスプリッタ56を透過されたパルス光をファイバケーブル16cを介して三次元形状測定装置12cに伝送するファイバ結合用レンズ58とを備える。
【0037】
さらに、光路L3上に、第3偏光ビームスプリッタ56からのパルス光を所定の角度方向に反射する反射ミラー60と、該反射ミラー60からの反射光をファイバケーブル16dを介して三次元形状測定装置12dに伝送するファイバ結合用レンズ62とを備える。
【0038】
上述の第1波長板38、第2波長板42、又は第3波長板54は、図示しない駆動機構により光軸(破線)を中心に矢印方向に回動が自在である。
【0039】
なお、パルス光源36を分配する光分配器64は、第1波長板38と、第1偏光ビームスプリッタ40と、第2波長板42と、第2偏光ビームスプリッタ44と、反射ミラー48と、反射ミラー52と、第3波長板54と、第3偏光ビームスプリッタ56と、反射ミラー60とから構成される。
【0040】
このパルス光発生装置14は、上位制御装置26と電気的に接続され且つ上位制御装置26からのパルス射出指示を受信可能であるI/F66と、パルス光射出制御部68とを備える。
【0041】
また、三次元形状測定システム10に関する測定情報(以下、単に「測定情報」という。)は、上位制御装置26、I/F66を介して、パルス光分配制御部70に供給される。パルス光分配制御部70は、上位制御装置26から供給される測定情報に基づいてパルス光の分配量を決定し、この分配量に基づいて分配比を算出する分配比算出部72と、該分配比算出部72から供給された第1波長板38への分配比により第1波長板38の回動動作を制御する第1波長板制御部74と、該分配比算出部72から供給された第2波長板42への分配比により第2波長板42の回動動作を制御する第2波長板制御部76と、該分配比算出部72から供給された第3波長板54への分配比により第3波長板54の回動動作を制御する第3波長板制御部78とを備える。
【0042】
ここで、測定情報とは、測定モード、ワーク32との距離、照射領域94の大きさ等の測定条件のみならず、撮影数、測定部位、ワーク32の種類も含まれる測定に関する情報をいう。
【0043】
図3は、本実施形態に係る三次元形状測定装置12の構成ブロック図である。ここでは、三次元形状測定装置12a、12b、12c、12dは同一の構成を採るため、所定の構成要素を示す参照数字に付されたアルファベットを省略して説明する。
【0044】
この三次元形状測定装置12は、パルス光発生装置14からのパルス光をファイバケーブル16を介して受光するファイバ結合用レンズ80と、該ファイバ結合用レンズ80により受光されたパルス光を分割するビームスプリッタ82と、該ビームスプリッタ82を透過されたパルス光をチャープすることでチャープ光パルスを生成するチャープ導入装置84と、該チャープ導入装置84により生成されたチャープ光パルスのビーム径を拡大する拡大光学系86と、拡大光学系86によりビーム径が拡大されたチャープ光パルスを偏光方向に応じて分割する偏光ビームスプリッタ88と、該偏光ビームスプリッタ88を透過された前記チャープ光パルスを平行化するコリメートレンズ90と、該コリメートレンズ90により平行化されたチャープ光パルスの偏光方向を所定の方向に傾けるλ/4波長板92と、該λ/4波長板92により偏光されたチャープ光パルスの光束を集光してワーク32の表面34上に焦点像(以下、照射領域94という。)を形成するとともに、図示しない駆動機構によってA方向(ワーク32に対する鉛直方向)に沿って移動自在な対物レンズ96と、を備える。
【0045】
また、光路L4上に、ビームスプリッタ82からのパルス光を所定の角度方向に反射する反射ミラー98と、該反射ミラー98からの反射光を励起光として受光し、その励起光をトリガとしてシャッタの開閉が自在であり、超高速非線形光学シャッタ等から構成されるシャッタ100とを備える。
【0046】
さらに、光路L5上に、偏光ビームスプリッタ88からのチャープ光パルスを所定の角度方向に反射する反射ミラー102と、該反射ミラー102からの反射光を切り出し可能なシャッタ100と、該シャッタ100により切り出されたチャープ光パルスから適切な反射光像を形成する結像光学系104と、該結像光学系104により生成された反射光像を撮像信号に変換するカラー二次元検出器106と、該カラー二次元検出器106により変換された撮像信号を画像処理装置22に送信するI/F108とを備える。
【0047】
さらに、この三次元形状測定装置12は、上位制御装置26により入力された測定モードの設定を画像処理装置22を介して取得するI/F108と、該I/F108により取得された測定モードの設定に基づき焦点位置(対物レンズ96の位置)を補正する焦点位置補正部110と、該焦点位置補正部110により補正された焦点位置に基づいて対物レンズ96をA方向(Z軸方向)に駆動し焦点位置を制御する自動焦点制御部112とを備える。
【0048】
なお、色が規則的に経時変化するチャープ光パルスを生成するチャープ光パルス生成手段は、チャープ導入装置84から構成される。また、ワーク32で反射された光路L5上のチャープ光パルスを所定のタイミングで所定の光量だけ切り出し、前記チャープ光パルスの反射光像を取得する反射光像取得手段としての反射光像取得部114は、偏光ビームスプリッタ88と、コリメートレンズ90と、λ/4波長板92と、対物レンズ96と、反射ミラー102と、シャッタ100と、焦点位置補正部110と、自動焦点制御部112とから構成される。さらに、三次元情報取得手段は、カラー二次元検出器106から構成される。
【0049】
この実施形態に係る三次元形状測定システム10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。
【0050】
先ず、ユーザである作業者は、三次元形状測定システム10によるワーク32の表面34の三次元形状測定の準備を行う。
【0051】
図1に示すように、作業者は、上位制御装置26の図示しない操作部から通常モード、近距離モード、又は遠距離モードのうちいずれかの測定モードを設定する。ここで、通常モードとは、深さ方向(Z軸方向)の空間分解能が高い測定が可能であり、詳細な三次元形状を把握する場合に設定する測定モードである。
【0052】
また、近距離モードとは、撮像面30からワーク32の表面34までの距離(以下、離間距離という。)を通常モードと比較して小さくする測定モードである。このモードは、通常モードと比較して照射領域94(図3参照)は狭くなるが深さ方向(Z軸方向)の空間分解能を向上させることが可能であり、X−Y軸平面に対して微視的な領域についてその三次元形状を詳細に把握したい場合に適切である。
【0053】
さらに、遠距離モードとは、離間距離を通常モードと比較して大きくする測定モードである。このモードは、通常モードと比較して深さ方向(Z軸方向)の空間分解能は低くなるが照射領域94(図3参照)を広くすることが可能であり、X−Y軸平面に対して巨視的な領域についてその三次元形状を大局的に把握したい場合に適切である。
【0054】
このように、作業者による測定モードの設定に従って、照射領域94の大きさの目標値(以下、単に「照射領域94の大きさ」という。)が決定される。上位制御装置26の図示しない操作部を利用して決定された照射領域94の大きさは、画像処理装置22、I/F108(図3参照)を介し、三次元形状測定装置12a、12b側に供給され、図示しない記憶部に記憶される。
【0055】
次いで、上位制御装置26からの指令を受けたロボット制御装置28は、三次元形状測定装置12a、12bが装着されている図示しないロボットのアームを所定の位置・姿勢になるように駆動する。これにより、三次元形状測定装置12a、12cの撮像面30a、30cがワーク32の表面34側に指向し、表面34上の所定の測定箇所に照射領域94(図3参照)が設定される。
【0056】
このようにして、三次元形状測定システム10によるワーク32の表面34の三次元形状測定の準備は完了する。
【0057】
続いて、作業者が上位制御装置26の図示しない操作部から測定開始指示を行うと、ワーク32の表面34上の三次元形状測定が開始される。
【0058】
図2に示すように、上位制御装置26、I/F66、パルス光射出制御部68を介して取得されたパルス射出指示に応じて、パルス光源36からパルス光が射出されると、該パルス光は、第1波長板38により偏光方向を所定の方向だけ傾けられ、第1偏光ビームスプリッタ40を透過され、第2波長板42により偏光方向を所定の方向だけ傾けられ、第2偏光ビームスプリッタ44を透過され、ファイバ結合用レンズ46によりパルス光の光束が集光され、ファイバケーブル16a、三次元形状測定装置12a側に供給される。
【0059】
また、第2波長板42により偏光方向を所定の方向だけ傾けられたパルス光は、第2偏光ビームスプリッタ44により光路L1方向に反射され、反射ミラー48により所定の角度方向に反射され、ファイバ結合用レンズ50によりパルス光の光束が集光され、ファイバケーブル16b、三次元形状測定装置12b側に供給される。
【0060】
さらに、第1波長板38により偏光方向を所定の方向だけ傾けられたパルス光は、第1偏光ビームスプリッタ40により光路L2方向に反射され、反射ミラー52により所定の角度方向に反射され、第3波長板54により偏光方向を所定の方向だけ傾けられ、第3偏光ビームスプリッタ56を透過され、ファイバ結合用レンズ58によりパルス光の光束が集光され、ファイバケーブル16c、三次元形状測定装置12c側に供給される。
【0061】
さらに、第3波長板54により偏光方向を所定の方向だけ傾けられたパルス光は、第3偏光ビームスプリッタ56により光路L3方向に反射され、反射ミラー60により所定の角度方向に反射され、ファイバ結合用レンズ62によりパルス光の光束が集光され、ファイバケーブル16d、三次元形状測定装置12d側に供給される。
【0062】
ここで、パルス光源36からパルス光が射出される前に、三次元形状測定装置12a側に供給されるパルス光を所望の光量になるように予め設定しておく。第1波長板38を所定の角度だけ回動させ、パルス光の偏光方向を調整することにより、第1偏光ビームスプリッタ40の透過率(又は反射率)を自在に制御可能である。同様に、第2波長板42を所定の角度だけ回動させて第2偏光ビームスプリッタ44の透過率(又は反射率)を自在に制御可能であり、第3波長板54を所定の角度だけ回動させて第3偏光ビームスプリッタ56の透過率(又は反射率)を自在に制御可能である。この第1偏光ビームスプリッタ40、第2偏光ビームスプリッタ44、及び第3偏光ビームスプリッタ56の透過率(又は反射率)の組合せについて適切に設定することにより、三次元形状測定装置12a〜12dに供給するパルス光の分配比を任意に設定できる。
【0063】
図3に示すように、パルス光発生装置14から分配されたパルス光は、ファイバケーブル16、ファイバ結合用レンズ80を介して受光され、ビームスプリッタ82により透過され、チャープ導入装置84によりチャープされ、チャープ光パルスが生成される。該チャープ光パルスは、拡大光学系86によりビーム径が拡大された後、偏光ビームスプリッタ88を透過され、コリメートレンズ90により平行化され、λ/4波長板92により直線偏光から円偏光とされ、対物レンズ96により前記チャープ光パルスの光束が集光され、ワーク32の表面34上の照射領域94に照射される。
【0064】
ここで、パルス光発生装置14のパルス光源36からパルス光が射出される前に、照射領域94を所望の大きさになるように予め設定しておく。かかる場合、記憶された照射領域94の大きさ及び離間距離は、図示しない記憶部から読み出され、焦点位置補正部110に供給される。供給された照射領域94の大きさ及び離間距離に基づいて、焦点位置補正部110により対物レンズ96の補正されたZ軸座標、すなわちZ軸変位量が算出される。算出された該Z軸変位量は自動焦点制御部112に供給される。対物レンズ96は、図示しない駆動機構により、A方向(Z軸方向)に沿って前記Z軸変位量だけ移動させられる。
【0065】
Z軸変位量は、拡大光学系86と、コリメートレンズ90と、対物レンズ96と、対物レンズ96の中心位置からワーク32の表面34までの距離との組み合わせによって決定される。
【0066】
このようにして、照射領域94を所望の大きさになるように予め設定できる。
【0067】
図3に示すように、ワーク32の表面34上の照射領域94で反射したチャープ光パルスは、対物レンズ96により集光され、λ/4波長板92により円偏光から直線偏光とされ、コリメートレンズ90により平行化され、偏光ビームスプリッタ88により光路L5方向に反射され、反射ミラー102により所定の角度方向に反射され、シャッタ100により所定のタイミングで所定の光量だけ切り出され、結像光学系104により適切な反射光像が形成され、カラー二次元検出器106により撮像信号に変換される。該撮像信号は、I/F108を介し、外部装置である画像処理装置22に送信される。
【0068】
ファイバ結合用レンズ80を透過されたパルス光は、ビームスプリッタ82により光路L5方向に反射され、反射ミラー98により所定の角度方向に反射され、シャッタ100に照射される。このとき、超高速非線形光学シャッタ等から構成されるシャッタ100は、励起光であるパルス光が到達したときのみ開かれ、ピコ秒〜フェムト秒程度の応答時間を実現できるものである。また、光路L5の光路長を設定することより、シャッタ100の開閉動作は適切なタイミングに制御される。
【0069】
I/F108を介して送信された撮像信号は、画像処理装置22により所望の画像処理が施され、図1に示すモニタ24により可視画像として表示される。この可視画像によって、ワーク32の表面34上の照射領域94内において三次元形状を解析し、把握することができる。
【0070】
このようにして取得した三次元形状に関する撮像画像の階調特性について説明する。図1で定義されるX−Y軸平面上の各位置におけるZ軸方向の奥行きの差は、シャッタ100に到達するチャープ光パルスの飛行時間の差として変換される。この飛行時間の差は、シャッタ100の開閉動作により同時に切り出された光色(波長)の差によって検出され、撮像画像の階調特性(信号値)として表現される。具体的には、前縁である長波長側(赤色)から後縁である短波長側(紫色)まで色が連続的に変化するチャープ光パルスを用いる場合、Z方向の奥行きが大きいX−Y軸平面上の位置において、チャープ光パルスがシャッタ100に到達する時間が遅延する。したがって、カラー二次元検出器106では、チャープ光パルスの先頭の方である長波長側の光色が検出される傾向がある。
【0071】
また、このようにして取得した三次元形状に関する撮像画像の空間分解能について図4A、図4B、図5A及び図5Bを参照しながら説明する。
【0072】
図4Aはワーク32の表面34の一部省略正面図、図4Bは図4AのIVB−IVB線断面図である。
【0073】
図4Aに示すように、ワーク32の表面34上には、平坦部120の略中央部に半球状の凹部122が設けられている(図4B参照)。ここで、遠距離モードによる照射領域は94a、近距離モードによる照射領域は94bとする。照射領域94aの面積は、照射領域94bの面積に対して約9倍に相当する。
【0074】
図5Aは近距離モードにより取得された照射領域94a内の撮像信号のプロファイル、図5Bは遠距離モードにより取得された照射領域94b内の撮像信号のプロファイルである。ここでは、撮像信号が有する画素値が大きいほど表面34は撮像面30に近く、画素値が小さいほど表面34は撮像面30に遠いことを示すものとする。
【0075】
図5Aに示すように、近距離モードは、遠距離モードと比較して照射領域94aは狭くなるが、深さ方向(Z軸方向)の空間分解能が高いため、凹部122の半球形状をほぼ再現している(図4B参照)。したがって、近距離モードは、X−Y軸平面(図4A参照)に対して微視的な領域(照射領域94a)についてその三次元形状を詳細に把握したい場合に適切である。
【0076】
図5Bに示すように、遠距離モードは、近距離モードと比較して深さ方向(Z軸方向)の空間分解能は低いので凹部122の半球形状を再現できないが(図4B参照)、照射領域94bを広くできるため、平坦部120と凹部122との三次元形状の比較が容易である。したがって、遠距離モードは、X−Y軸平面(図4A参照)に対して巨視的な領域(照射領域94b)についてその三次元形状を大局的に把握したい場合に適切である。
【0077】
以上のように、三次元形状測定装置12による1回の撮影によって、上述の階調特性や空間分解能を有する撮像信号を取得する。
【0078】
三次元形状測定装置12により1回の撮影が終了した後、上位制御装置26の指令を受けたロボット制御装置28は、三次元形状測定装置12が装着されている図示しないロボットのアームを所定の位置・姿勢になるように駆動する。これにより、三次元形状測定装置12の撮像面30がワーク32の表面34側に指向し、表面34上の次の測定箇所に照射領域94(図3参照)が設定される。このようにして、三次元形状測定装置12による撮影動作とロボット制御装置28による測定箇所の設定動作とを交互に所定回数(以下、撮影数という。)だけ繰り返すことにより、ワーク32の表面34上の測定部位について全範囲内の測定(以下、タスクという。)が行われる。
【0079】
続いて、上位制御装置26によるタスク管理に従って、4台の三次元形状測定装置12a、12b、12c、12dによる三次元形状測定が並列的に行われる。三次元形状測定システム10による複数のタスクを実行する手順について図6のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0080】
先ず、三次元形状測定システム10の測定情報を取得する(ステップS1)。ここでいう測定情報とは、三次元形状測定装置12による測定のタスク数TN(図3ではTN=4)、各測定モード(通常・近距離・遠距離)、撮影数(ショット数)をいう。説明の便宜のため、1台の三次元形状測定装置12につき1つのタスクが与えられ、測定開始以降、残りタスク数TNは増加しないものとする。
【0081】
次いで、各三次元形状測定装置12に対するパルス光の分配比を算出し、光分配器64に対しその値を設定する(ステップS2)。ここで、パルス光の分配比とは、パルス光源36により生成可能なパルス光の最大光量を100%とするときの分配されるパルス光の割合である。
【0082】
次いで、パルス光が分配された各タスクを実行し(ステップS3)、少なくとも一つのタスクが実行完了となるまで継続する(ステップS4)。各三次元形状測定装置12はそれぞれ反射光像取得部114を備えているので、複数のタスクを実行可能である。また、単一のタスクのみならず、n個(nは自然数)のタスクが同時に完了する場合も含まれる。
【0083】
残りのタスク数TN(TN=TN−n)をカウントし(ステップS5)、残りのタスク数TNが0でない場合は、パルス光の分配比の再算出・再設定を行う(ステップS3)。以下、残りのタスク数TNが0になるまでステップS2〜S6繰り返す。
【0084】
続いて、三次元形状測定システム10によるタスク実行スケジュール、特に図6に示すステップS2の具体例について図7A〜図7Cを参照しながら説明する。
【0085】
図7Aは、三次元形状測定システム10の上位制御装置26に登録されたタスクの一覧図である。4つのタスクM1〜M4が登録されている事例に沿って以下説明する。
【0086】
測定に必要なパルス光量とは、パルス光源36により生成可能なパルス光の最大光量を基準(100%)とするときの各測定に必要なパルス光量をいう。本具体例では、近距離モードでは20%、通常モードでは40、遠距離モードでは60%の光量が推奨値として設定されている。
【0087】
図7Aに示す4つのタスクM1〜M4におけるパルス光量の分配量の合計値は160%であり100%を超えるため、そのまま分配できない。例えば、この分配比を一定にしつつパルス光量を調整する方法が考えられる。具体的には、タスクM1を14%、タスクM2を25%、タスクM3を36%、タスクM4を25%となるように設定できる。
【0088】
しかし、測定に用いるパルス光の光量を減らすと、カラー二次元検出器106が検出する光量が不足するため、撮像信号のS/N比が低下し、電気ノイズ等の影響を受け、測定精度が低下する可能性がある。かかる場合は、各タスクに優先度を予め設け、その優先度に従ってタスクを順次実行する方法が好ましい。
【0089】
図7Bは、第1の規則に従って図7Aに示すタスクを実行した場合のタスク実行スケジュールを表す図である。この第1の規則とは、タスクの登録順によってタスク実行の優先度を決定するものである。初期状態において、タスク実行の優先度が高い順は、図7Aの上から順に、タスクM1、タスクM2、タスクM3、タスクM4である。
【0090】
先ず、1回目の分配比算出時C1において、タスク実行の優先度が高い順は、タスクM1、タスクM2、タスクM3、タスクM4である。残りの4つのタスクにおけるパルス光量の分配量の合計値は160%であり100%を超えるので、タスクM1、タスクM2の2つのタスクが並列に実行される。その後、撮影数50を計上するとタスクM1及びタスクM2の実行が同時に完了する。
【0091】
次いで、2回目の分配比算出時C2において、タスク実行の優先度が高い順は、タスクM3、タスクM4である。残りの2つのタスクにおけるパルス光量の分配量の合計値は100%であり100%を超えないので、タスクM3、タスクM4の2つのタスクが並列に実行される。その後、撮影数100を計上するとタスクM3の実行が完了する。
【0092】
次いで、3回目の分配比算出時C3において、残りの1つのタスクであるタスクM4が実行される。その後、撮影数100を計上するとタスクM4の実行が完了する。
【0093】
このようにして、第1の規則に従って分配比を算出すれば、撮影数250でタスクM1〜タスクM4の全タスクが終了する。
【0094】
図7Cは、第2の規則に従って図7Aに示すタスクを実行した場合のタスク実行スケジュールを表す図である。ここで、第2の規則とは、測定に必要なパルス光量が少ないタスクを優先的に実行し、測定に必要なパルス光量が同じ場合はタスクの登録順によってタスク実行の優先度を決定するものである。初期状態において、タスク実行の優先度が高い順は、図7Aの上から順に、タスクM1、タスクM2、タスクM4、タスクM3である。
【0095】
先ず、1回目の分配比算出時C1において、タスク実行の優先度が高い順は、タスクM1、タスクM2、タスクM4、タスクM3である。残りの4つのタスクにおけるパルス光量の分配量の合計値は160%であり100%を超えるので、タスクM1、タスクM2、タスクM4の3つのタスクが並列に実行される。その後、撮影数50を計上するとタスクM1及びタスクM2の実行が同時に完了する。
【0096】
次いで、2回目の分配比算出時C2において、タスク実行の優先度が高い順は、タスクM4、タスクM3である。残りの2つのタスクにおけるパルス光量の分配量の合計値は100%であり100%を超えないので、タスクM3、タスクM4の2つのタスクが並列に実行される。その後、撮影数100を計上するとタスクM3の実行が完了する。
【0097】
次いで、3回目の分配比算出時C3において、残りの1つのタスクM4が実行される。その後、撮影数50を計上するとタスクM4の実行が完了する。
【0098】
このようにして、第1の規則に従って分配比を算出すれば、撮影数200でタスクM1〜タスクM4の全タスクが終了する。
【0099】
以上のように、予め決められた規則に従って、測定時間を短縮することができる。特に、第2の規則のように、測定モード、撮影数等の測定情報と対応付けられた優先度に基づいてパルス光の分配比を算出すれば、測定スケジュールの管理が容易となる。また、決定された分配量の合計値が所定の値(例えば、パルス光源36により生成可能なパルス光の最大光量である100%)を超えるときに優先度の高い照射領域94から順にパルス光を分配するように分配比を算出すれば、三次元形状測定システム10全体としての測定時間をさらに短縮することができる。
【0100】
最後に、複数の三次元形状測定装置12a〜12dを用いて複数のタスクを実行し得られた撮像信号を合成する。そうすれば、ワーク32の測定時間を大幅に短縮しつつも、単一の三次元形状測定装置12を用いた場合と比較して同等の測定結果(画像表示能)を迅速に得ることができる。
【0101】
定点カメラ18により複数の三次元形状測定装置12a〜12dの位置・姿勢を撮像し、その撮像信号を定点カメラ制御装置20を介して画像処理装置22に送信する。
【0102】
なお、定点カメラ18は、複数の三次元形状測定装置12a〜12dに用いるチャープ光パルスに対して非干渉性を備える波を用いて三次元位置情報を取得することが好ましい。前記波には、例えば、チャープ光パルスの発光波長範囲外の波長を有する電磁波(赤外線、紫外線、マイクロ波、ミリ波等)や超音波を用いることができる。超音波を使用するときは、定点カメラ18を超音波測長器に代替する。
【0103】
複数の三次元形状測定装置12a〜12dからの撮像信号と、定点カメラ18からの撮像信号と、を受信した画像処理装置22は、公知の画像処理技術を用いて、それぞれの撮像座標系で座標表現された三次元形状測定装置12a〜12dからの撮像信号をワールド座標系で座標表現された撮像信号にそれぞれ変換し、ワールド座標系上に各三次元画像を合成することができる。
【0104】
例えば、特開平6−307812号公報に開示される技術のように、物体座標系、撮影座標系、及びワールド座標系を予め設定し、物体座標系において被測定物の表面形状を近似式による第1の曲面として表し、近似された該曲面を撮影座標系に座標変換し第2の曲面を得、撮影座標系において該第2の曲面と所定の直線(被測定物の表面上の注目点と撮影座標系の基準点とを通る直線)との交点を求め、該交点をワールド座標系に座標変換することにより、被測定物の表面上の三次元座標位置を簡単且つ正確に特定することができる。
【0105】
以上のようにして、三次元形状測定システム10によってワーク32の表面34上における三次元形状を測定することができる。本実施形態によれば、光分配器64により分配したパルス光をワーク32の各照射領域94に照射することにより各照射領域94を同時に測定可能となり、ワーク32の測定対象が広範である場合での測定の所要時間を短縮できる。また、一つのパルス光源36で構成してもよいので、三次元形状測定システム10の製造コストを低減できる。
【0106】
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0107】
例えば、本実施形態ではパルス光発生装置14に接続可能な三次元形状測定装置12は最大4台であるが、この接続台数の多少は問わない。
【0108】
また、本実施形態ではパルス光分配制御部70はパルス光発生装置14に組み込まれているが、別の装置(パルス光分配制御装置)として設けてもよい。
【0109】
さらに、本実施形態では投光部としての光学機構(ビームスプリッタ88、コリメートレンズ90、λ/4波長板92、及び対物レンズ96)と、検出部としてのカラー二次元検出器106と、が三次元形状測定装置12に一体的に組み込まれている構成を採っているが、投光部と検出部を別々の装置として構成してもよい。
【0110】
さらに、本実施形態では同一の構成である三次元形状測定装置12を用いているが、測定性能等の異なる複数の三次元形状測定装置12の組合せを用いてもよい。かかる場合には、上述した測定モードの差異に応じて測定に必要なパルス光量が異なる場合(図7A参照)と同様に、本発明を適用することができる。
【0111】
さらに、三次元形状の測定に用いられるチャープ光パルスは、可視領域の光波長に限定されることなく、紫外線や赤外線等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0112】
10…三次元形状測定システム 14…パルス光発生装置
12、12a〜12d…三次元形状測定装置
16、16a〜16d…ファイバケーブル
18…定点カメラ 20…定点カメラ制御装置
22…画像処理装置 26…上位制御装置
30、30a、30c…撮像面 32…ワーク
34…表面 36…パルス光源
38…第1波長板 40…第1偏光ビームスプリッタ
42…第2波長板 44…第2偏光ビームスプリッタ
46、50、58、62、80…ファイバ結合用レンズ
48、52、60、98、102…反射ミラー
54…第3波長板 56…第3偏光ビームスプリッタ
64…光分配器 66、108…I/F
68…パルス光射出制御部 70…パルス光分配制御部
72…分配比算出部 74…第1波長板制御部
76…第2波長板制御部 78…第3波長板制御部
82…ビームスプリッタ 84…チャープ導入装置
86…拡大光学系 88…偏光ビームスプリッタ
90…コリメートレンズ 92…λ/4波長板
94、94a、94b…照射領域 96…対物レンズ
100…シャッタ 104…結像光学系
106…カラー二次元検出器 110…焦点位置補正部
112…自動焦点制御部 114…反射光像取得部
120…平坦部 122…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス光を生成するパルス光源と、
前記パルス光源により生成された前記パルス光を分配する光分配器と、
前記光分配器により分配された各パルス光に基づいて、色が規則的に経時変化するチャープ光パルスを生成する複数のチャープ光パルス生成手段と、
前記複数のチャープ光パルス生成手段により生成された各チャープ光パルスを被測定物の各照射領域に照射し、該被測定物で反射された前記各チャープ光パルスの各反射光像を取得する複数の反射光像取得手段と、
前記複数の反射光像取得手段により取得された前記各反射光像の二次元情報及び色情報を用いて、前記被測定物の三次元情報を取得する三次元情報取得手段と、
を有することを特徴とする三次元形状測定システム。
【請求項2】
請求項1記載の三次元形状測定システムにおいて、
前記光分配器は、前記パルス光を分配する分配比の変更可能な光分配器である
ことを特徴とする三次元形状測定システム。
【請求項3】
請求項2記載の三次元形状測定システムにおいて、
前記各照射領域に関する測定情報に基づいて、前記パルス光の分配量を決定し、決定された前記分配量に基づいて前記分配比を算出して、算出された前記分配比により前記光分配器を制御するパルス光分配制御手段をさらに備える
ことを特徴とする三次元形状測定システム。
【請求項4】
請求項3記載の三次元形状測定システムにおいて、
前記パルス光分配制御手段は、前記測定情報と対応付けられた優先度に基づいて前記分配比を算出する
ことを特徴とする三次元形状測定システム。
【請求項5】
請求項4記載の三次元形状測定システムにおいて、
前記パルス光分配制御手段は、決定された前記分配量の合計値が所定の値を超えるときに前記優先度の高い前記照射領域から順にパルス光を分配するように前記分配比を算出する
ことを特徴とする三次元形状測定システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の三次元形状測定システムにおいて、
前記複数の反射光像取得手段に関する各三次元位置情報を基準座標から取得する三次元位置取得手段と、
前記三次元位置取得手段により取得した前記各三次元位置情報に基づき前記被測定物の三次元情報を合成する三次元情報合成手段と、をさらに備え、
前記三次元位置取得手段は、前記各チャープ光パルスに対して非干渉性を備える波を用いて前記各三次元位置情報を取得する
ことを特徴とする三次元形状測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−7616(P2011−7616A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151157(P2009−151157)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】