説明

三次元温度分布表示装置、テクスチャ作成装置および三次元温度分布表示方法

【課題】 三次元CADデータを備える立体的な測定対象物の表面温度分布を三次元的に簡易に表示する。
【解決手段】測定対象物1の二次元温度分布画像を遠隔的に取得する赤外カメラ2A〜2Cが複数設けられ、パソコン3は、CADデータから測定対象物1の三次元ワイヤフレーム画像を生成し、赤外カメラ2A〜2Cの設置点から見た三次元ワイヤフレーム画像に二次元温度分布画像を重ねて表示し、重ね表示された状態での二次元温度分布画像の各画素と三次元ワイヤフレーム画像を構成する各ポリゴンに対応付けられた二次元テクスチャ画像の各画素との対応関係を確定し、二次元温度分布画像の各画素における温度情報を二次元テクスチャ画像の各画素に付与して当該テクスチャ画像を完成し、完成した二次元テクスチャ画像を、これに対応するポリゴンに貼り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定対象物の表面温度分布を三次元的に表示することができる三次元温度分布表示装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の表面温度分布を表示する表示装置は従来、例えば特許文献1に示されているように、上記表面温度分布を二次元的に表示するものが普通である。
【特許文献1】特開2001−249052
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、測定対象物が奥行きのある立体的なものである場合にその表面温度分布を二次元的に表示しても、奥行きのある実際の分布状態を正確に把握することは難しい。一方、測定対象物が機械部品等である場合には当該測定対象物の精密な三次元CADデータが準備されていることが多い。
【0004】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、三次元CADデータを備える立体的な測定対象物の表面温度分布を三次元的に簡易に表示することができる三次元温度分布表示装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本第1発明に係る三次元温度分布表示装置は、CADデータから測定対象物(1)の三次元ワイヤフレーム画像(4)を生成する画像生成手段(3、ステップ102)と、測定対象物(1)の二次元温度分布画像(6)を遠隔的に取得する温度測定手段(2A〜2C)と、温度測定手段(2A〜2C)の設置点(Fa)から見た三次元ワイヤフレーム画像(4)に二次元温度分布画像(6)を重ねて表示する重ね表示手段(3、ステップ107)と、重ね表示された状態での二次元温度分布画像(6)の各画素(61)と三次元ワイヤフレーム画像(4)を構成する各ポリゴン(41)に対応付けられた二次元テクスチャ画像(5)の各画素(51)との対応関係を確定する対応関係確定手段(3、ステップ108)と、二次元温度分布画像(6)の各画素(61)における温度情報を二次元テクスチャ画像(5)の各画素(51)に付与して当該テクスチャ画像を完成する画像完成手段(3、ステップ109)と、完成した二次元テクスチャ画像(5)を、これに対応するポリゴン(41)に貼り付ける貼付け手段(3,ステップ202)とを具備する。
【0006】
本第1発明においては、三次元ワイヤフレーム画像の各ポリゴンに、二次元温度分布画像の各画素の温度情報を付与されたテクスチャ画像が貼り付けられて、測定対象物の表面温度分布が三次元表示されるから、奥行きのある実際の温度分布状態が正確に示され、温度分布を的確に把握することができる。また、CADデータから生成される三次元ワイヤフレーム画像を利用するから、表面温度分布の三次元表示を簡易に行うことができる。
【0007】
本第2発明では、上記温度測定手段(2A〜2C)は測定対象物(1)の周囲に複数設置され、これら温度測定手段(2A〜2C)によってそれぞれ上記二次元温度分布画像(6)が複数取得される。
【0008】
本第2発明においては、複数の視点から測定対象物の温度分布状況を知ることができるから、温度分布を詳細に検討することができる。
【0009】
本第3発明に係るテクスチャ作成装置は、CADデータから測定対象物の三次元ワイヤフレーム画像を生成する画像生成手段と、測定対象物の二次元温度分布画像を遠隔的に取得する温度測定手段と、温度測定手段の設置点から見た三次元ワイヤフレーム画像に二次元温度分布画像を重ねて表示する重ね表示手段と、重ね表示された状態での二次元温度分布画像の各画素と三次元ワイヤフレーム画像を構成する各ポリゴンに対応付けられた二次元テクスチャ画像の各画素との対応関係を確定する対応関係確定手段と、二次元温度分布画像の各画素における温度情報を二次元テクスチャ画像の各画素に付与して当該テクスチャ画像を完成する画像完成手段とを具備する。
【0010】
本第4発明に係る三次元温度分布表示方法は、CADデータから測定対象物の三次元ワイヤフレーム画像を生成表示し、測定対象物の二次元温度分布画像を遠隔的に取得し、温度測定手段の設置点から見た三次元ワイヤフレーム画像に二次元温度分布画像を重ねて表示し、重ね表示された状態での二次元温度分布画像の各画素と三次元ワイヤフレーム画像を構成する各ポリゴンに対応付けられた二次元テクスチャ画像の各画素との対応関係を確定し、二次元温度分布画像の各画素における温度情報を二次元テクスチャ画像の各画素に付与して当該テクスチャ画像を完成し、完成した二次元テクスチャ画像を、これに対応する前記ポリゴンに貼り付ける。
【0011】
本第5発明に係るテクスチャ作成方法は、CADデータから測定対象物の三次元ワイヤフレーム画像を生成表示し、測定対象物の二次元温度分布画像を遠隔的に取得し、温度測定手段の設置点から見た三次元ワイヤフレーム画像に二次元温度分布画像を重ねて表示し、重ね表示された状態での二次元温度分布画像の各画素とワイヤフレーム画像を構成する各ポリゴンに対応付けられた二次元テクスチャ画像の各画素との対応関係を確定し、二次元温度分布画像の各画素における温度情報を二次元テクスチャ画像の各画素に付与して当該テクスチャ画像を完成する。
【0012】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の三次元温度分布表示装置等によれば、三次元CADデータを備える立体的な測定対象物の表面温度分布を三次元的に簡易に表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1には測定装置の全体構成を示す。図1において、立体的な測定対象物1を囲むようにして三箇所に、上記測定対象物1から放射される赤外線を感知する温度測定手段としての赤外カメラ2A,2B,2Cが設置されている。なお、以下の説明を容易にするために本実施形態では測定対象物1の形状は単純な直方体であるとする。上記各赤外カメラ2A,2B,2Cからの出力画像は信号線21,22,23によって、CPU、メモリ、各種インターフェース等を内蔵しモニタ31やキーボード32を備えたパソコン3に入力されている。測定対象物1および各赤外カメラ2A〜2Cの三次元的な位置は予めパソコン3内に設定されている。測定対象物1の位置はそのほぼ中心の位置が設定されており、一方、各赤外カメラ2A〜2Cの位置としては図2に示す論理的焦点位置Faが設定される。図2において、符号24は赤外カメラ2A〜2Cの対物レンズ、符号25は撮像センサを示し、符号Fbは実際の焦点位置である。論理的焦点位置Faは対物レンズ24に入射する光Lの延長線上の交点である。したがって、赤外カメラ2A〜2Cの視線方向は図3(図は赤外カメラ2Aを例に示してある)に示すように、カメラ位置Faと測定対象物1の位置Pを結ぶ三次元直線ベクトルVで示される。なお、赤外カメラの設置台数は3台に限られるのものではない。
【0015】
以下、パソコン3で実行される処理プログラムの処理手順を図4、図7のフローチャートを参照しつつ説明する。パソコン3のメモリ内には外部のデータベース等から上記測定対象物1のCADデータが取り込まれ(ステップ101)、CADデータから測定対象物1の三次元ワイヤフレーム画像が生成されて(ステップ102)モニタ31上に表示される(ステップ103)。ワイヤフレーム画像はモニタ31上で平行移動、縦回転、横回転、ズームイン、ズームアウトが可能である。上記ワイヤフレーム画像を構成するポリゴンは本実施形態では全て三角形としてあり、これらポリゴンは3次元空間内の3点を直線で結んだ三角形平面である。各ポリゴンには同形の三角形のテクスチャ画像がそれぞれソフト的に予め対応付けられている。すなわち、各テクスチャ画像は二次元のビットマップであり、ポリゴン面上の各点とテクスチャ画像上の各ピクセル(画素)が対応付けられている。
【0016】
各赤外カメラ2A〜2Cで三方向から撮影された測定対象物1の温度分布画像がパソコン3内に取り込まれる(ステップ104)。パソコン3内には温度とこれに対応する色を設定した温度カラーテーブルが予め準備されており、温度カラーテーブルを参照して上記温度分布画像から色分布画像(熱画像)が作成される(ステップ105)。この色分布画像は、カメラ視線方向から見たカメラ広角に応じた四角形の二次元ビットマップである。
【0017】
色分布画像はパソコン3のモニタ31上に表示される(ステップ106)。そして、モニタ31上に表示されている上記ワイヤフレーム画像を平行移動、回転、ズームイン、ズームアウト等させて、上記色分布画像上における測定対象物1(以下、単に色分布画像という)の外形にワイヤフレーム画像の外形を合致させる(ステップ107)。この状態を模式的に図5に示す。図5中、符号4は三次元ワイヤフレーム画像であり、その表面は多数の二次元三角ポリゴン41で構成されている。なお、図は理解を容易にするためにワイヤフレーム画像4の一つの面のポリゴン41のみを、その大きさを誇張して描いてある。符号5はポリゴン41の一つに対応するテクスチャ画像を示す。符号6は色分布画像である。
【0018】
この状態で、赤外カメラ位置Faやワイヤフレーム画像4上の各位置を特定する三次元のオブジェクト座標系Coと、色分布画像6上の各位置を特定する二次元のビューポート座標系Cvがソフト(例えばOpenGL)的に関連付けられる(ステップ108)。したがって、カメラ位置Faと色分布画像6のピクセルの一つ61を指定すると、これに対応するワイヤフレーム画像4のポリゴン41上の点411が決まる。これを図5で模式的に説明すると、カメラ位置Faから色分布画像6上のピクセル61に至る視線の延長線がポリゴン41面に入射する点が上記点411となる。このように、色分布画像6上のピクセル61とポリゴン41面上の点411とは一対一に対応しており、既述のように、ポリゴン41面上の各点411とテクスチャ画像5上の各ピクセル51も対応付けられているから、結局、色分布画像6上の各ピクセル61とテクスチャ画像5上の各ピクセル51が対応している。この対応付けを例えば変換テーブルで予めパソコン3内に準備しておくと、演算が不要であるから処理を高速化することができる。
【0019】
点411に対応するテクスチャ画像5のピクセル51は一又は複数ある。これは色分布画像6とテクスチャ画像5の二次元的な大きさの比較によって決定される。本実施形態では例えば図6に示す四角領域S内の複数ピクセル51が色分布画像6上の一つのピクセル61に対応しており、この四角領域Sに上記ピクセル61の色情報が与えられる。このようにして、色分布画像6の全てのピクセル61について、ワイヤフレーム画像4の各ポリゴン41上の点411に対応するテクスチャ画像5のピクセル51に色情報が与えられて(ステップ109)、ワイヤフレーム画像を構成する全てのポリゴンについてこれらに対応するテクスチャ画像が完成する(ステップ110)。以上の手順は、全ての赤外カメラ2A〜2Cで得られた温度分布画像から変換された各色分布画像6について行われる(ステップ111)。なお、色分布画像に変換することなく、温度分布画像の温度情報を直接各ピクセルに与えてテクスチャ画像を完成させるようにしても良い。
【0020】
測定対象物1の表面温度分布を表示する場合には、図7に示すように、モニタ31上に測定対象物1の三次元ワイヤフレーム画像4を表示し(ステップ201)、その各ポリゴン41に、これに対応する完成したテクスチャ画像5を貼り付ける(テクスチャマッピング、ステップ202)。これにより、測定対象物1の表面温度分布が三次元的に表示される。
【0021】
ここで、図8には測定対象物1たる車両部品についてその温度分布を三次元表示したものを示す。一方、図10には同一車両部品についてその温度分布を従来の二次元表示したものを示す。表面温度分布を三次元表示したものでは、奥行きのある実際の分布状態が正確に示されるから温度分布状況を的確に把握することができる。この際、視点に応じて画面内の測定対象物1の姿勢を変化させると、ポリゴンに貼り付けられたテクスチャ画像も一体に移動するから、視点を変えて温度分布状況を詳細に検討することができる。
【0022】
なお、測定対象物の表面温度分布を表示する際の、パソコン3におけるテクスチャマッピングされるポリゴンの選択は以下のように行う。すなわち、図9に示すように、ワイヤフレーム画像を構成するポリゴンの一つ41Aを選択してこれを対象ポリゴンとし、オブジェクト座標系Coにおける対象ポリゴン41Aの中心412の座標を算出する。この中心412の座標を、ビューポート座標系Cvの色分布画像6上の点62の座標に変換し、カメラ位置Faから上記点62に至る視線の延長線上に他のポリゴン41B,41Cが存在するか否か判定する。そして、対象ポリゴン41Aがカメラ位置Faに一番近い場合のみ当該対象ポリゴン41Aに対するテクスチャマッピングを可能にする。このような判定が全てのポリゴンに対して行なわれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態における、三次元温度分布表示装置のハード構成を示す図である。
【図2】赤外カメラのカメラ位置を説明する概念図である。
【図3】赤外カメラの視線方向を説明する概念図である。
【図4】パソコンで実行される処理プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】赤外カメラの位置、色分布画像、ワイヤフレーム画像の位置関係を示す概念図である。
【図6】テクスチャ画像の概念的拡大図である
【図7】パソコンで実行される処理プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
【図8】車両部品の温度分布をモニタ上に三次元表示した場合の正面図である。
【図9】赤外カメラの位置、色分布画像、ポリゴンの位置関係を示す概念図である。
【図10】車両部品の温度分布をモニタ上に二次元表示した場合の正面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…測定対象物、2A,2B,2C…赤外カメラ(温度測定手段)、3…パソコン、4…ワイヤフレーム画像、41…ポリゴン、5…テクスチャ画像、51…ピクセル(画素)、6…色分布画像(温度分布画像)、61…ピクセル(画素)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CADデータから測定対象物の三次元ワイヤフレーム画像を生成する画像生成手段と、
前記測定対象物の二次元温度分布画像を遠隔的に取得する温度測定手段と、
前記温度測定手段の設置点から見た前記三次元ワイヤフレーム画像に前記二次元温度分布画像を重ねて表示する重ね表示手段と、
重ね表示された状態での前記二次元温度分布画像の各画素と前記三次元ワイヤフレーム画像を構成する各ポリゴンに対応付けられた前記二次元テクスチャ画像の各画素との対応関係を確定する対応関係確定手段と、
前記二次元温度分布画像の各画素における温度情報を前記二次元テクスチャ画像の各画素に付与して当該テクスチャ画像を完成する画像完成手段と、
完成した前記二次元テクスチャ画像を、これに対応する前記ポリゴンに貼り付ける貼付け手段とを具備する三次元温度分布表示装置。
【請求項2】
前記温度測定手段は前記測定対象物の周囲に複数設置され、これら温度測定手段によってそれぞれ前記二次元温度分布画像が複数取得される請求項1に記載の三次元温度分布表示装置。
【請求項3】
CADデータから測定対象物の三次元ワイヤフレーム画像を生成する画像生成手段と、
測定対象物の二次元温度分布画像を遠隔的に取得する温度測定手段と、
前記温度測定手段の設置点から見た前記三次元ワイヤフレーム画像に前記二次元温度分布画像を重ねて表示する重ね表示手段と、
重ね表示された状態での前記二次元温度分布画像の各画素と前記三次元ワイヤフレーム画像を構成する各ポリゴンに対応付けられた前記二次元テクスチャ画像の各画素との対応関係を確定する対応関係確定手段と、
前記二次元温度分布画像の各画素における温度情報を前記二次元テクスチャ画像の各画素に付与して当該テクスチャ画像を完成する画像完成手段とを具備するテクスチャ作成装置。
【請求項4】
CADデータから測定対象物の三次元ワイヤフレーム画像を生成表示し、
測定対象物の二次元温度分布画像を遠隔的に取得し、
前記温度測定手段の設置点から見た前記三次元ワイヤフレーム画像に前記二次元温度分布画像を重ねて表示し、
重ね表示された状態での前記二次元温度分布画像の各画素と前記三次元ワイヤフレーム画像を構成する各ポリゴンに対応付けられた前記二次元テクスチャ画像の各画素との対応関係を確定し、
前記二次元温度分布画像の各画素における温度情報を前記二次元テクスチャ画像の各画素に付与して当該テクスチャ画像を完成し、
完成した前記二次元テクスチャ画像を、これに対応する前記ポリゴンに貼り付ける三次元温度分布表示方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−34279(P2011−34279A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179072(P2009−179072)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(591172054)株式会社明和eテック (24)
【Fターム(参考)】