説明

三次元計測装置

【課題】位相シフト法を利用した三次元計測を行うにあたり、より高精度な計測を実現することのできる三次元計測装置を提供する。
【解決手段】基板検査装置1は、プリント基板2に対し縞状の光パターンを照射する照射装置4A,4Bと、これを撮像するカメラ5と、撮像された画像データを基に三次元計測を行う制御装置6とを備えている。制御装置6は、第1照射装置4Aから第1光パターンを照射して得られた画像データを基に第1計測値を取得し、第2照射装置4Bから第2光パターンを照射して得られた画像データを基に第2計測値を取得する。そして、両光パターンが照射される全照射領域に関しては、両計測値から特定される値を当該領域の高さデータとし、いずれか一方のみ照射される一部照射領域に関しては、前記全照射領域の高さデータから算出した補完データを基に当該領域に係る計測値の縞次数を特定し、当該領域に係る高さデータを取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板上に電子部品を実装する場合、まずプリント基板上に配設された所定の電極パターン上にクリームハンダが印刷される。次に、該クリームハンダの粘性に基づいてプリント基板上に電子部品が仮止めされる。その後、前記プリント基板がリフロー炉へ導かれ、所定のリフロー工程を経ることでハンダ付けが行われる。昨今では、リフロー炉に導かれる前段階においてクリームハンダの印刷状態を検査する必要があり、かかる検査に際して三次元計測装置が用いられることがある。
【0003】
近年、光を用いたいわゆる非接触式の三次元計測装置が種々提案されており、例えば、位相シフト法を用いた三次元計測装置に関する技術が提案されている。
【0004】
当該位相シフト法を利用した三次元計測装置においては、光源と正弦波パターンのフィルタとの組み合わせからなる照射手段により、正弦波状(縞状)の光強度分布を有する光パターンを被計測物(この場合プリント基板)に照射する。そして、基板上の点を真上に配置した撮像手段を用いて観測する。撮像手段としては、レンズ及び撮像素子等からなるCCDカメラ等が用いられる。この場合、画面上の点Pの光の強度Iは下式で与えられる。
【0005】
I=e+f・cosφ
[但し、e:直流光ノイズ(オフセット成分)、f:正弦波のコントラスト(反射率)、φ:物体の凹凸により与えられる位相]
このとき、光パターンを移動させて、位相を例えば4段階(φ+0、φ+π/2、φ+π、φ+3π/2)に変化させ、これらに対応する強度分布I0、I1、I2、I3をもつ画像を取り込み、下記式に基づいて変調分αを求める。
【0006】
α=arctan{(I3−I1)/(I0−I2)}
この変調分αを用いて、クリームハンダ等の計測対象上の点Pの3次元座標(X,Y,Z)が求められ、もって計測対象の三次元形状、特に高さが計測される。
【0007】
しかしながら、実際の計測対象には、高いものもあれば低いものもある。例えば、クリームハンダに関して言えば、薄膜状のものもあれば、円錐台状をなして突起しているものもある。そして、これら計測対象のうち最大の高さに合わせて、照射する光パターンの縞の間隔を広くすると、分解能が粗くなってしまい、計測精度が悪化してしまうおそれがある。一方で、縞の間隔を狭くすることで、精度の向上を図ることはできるものの、計測可能な高さレンジが足りなくなってしまう(縞次数が別のものとなってしまう)おそれがある。
【0008】
そこで、周期(縞ピッチ)の異なる光パターン、つまり周期の短い光パターンと、周期の長い光パターンとを組み合わせて計測を行う技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、高さ方向の分解能を落とすことなく、計測可能な高さレンジを広げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−159510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来技術のように光源を1箇所だけに設けた構成では、被計測物(計測対象)に光パターンが照射されない影の部分が生じ得るため、当該部分の適正な計測が行えないおそれがある。
【0011】
これに対し、仮に2つの光源から周期の異なる光パターンをそれぞれ照射する構成としたとしても、一方の周期の光パターンしか照射されない部分が生じ得るため、当該部分に関しては、上述したような広ダイナミックレンジで高分解能の計測を行うことができないおそれがある。
【0012】
なお、上記課題は、必ずしもプリント基板上に印刷されたクリームハンダ等の高さ計測に限らず、他の三次元計測装置の分野においても内在するものである。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、位相シフト法を利用した三次元計測を行うにあたり、より高精度な計測を実現することのできる三次元計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0015】
手段1.縞状の光強度分布を有しかつ周期の異なる複数の光パターンをそれぞれ異なる位置から被計測物に対し照射可能な複数の照射手段と、
前記各光パターンの照射された前記被計測物を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像データに基づき三次元計測を行う画像処理手段とを備えた三次元計測装置であって、
前記画像処理手段は、
複数通りに位相変化させた前記各光パターンをそれぞれ照射して前記撮像手段により撮像された前記各光パターンに係る複数通りの画像データに基づき、位相シフト法により三次元計測を行い、当該計測値を前記各光パターンに係る計測値として取得する計測値取得手段と、
前記複数の光パターンが全て照射される全照射領域に関して、前記複数の光パターンに係る前記計測値から特定される高さデータを、当該全照射領域に係る高さデータとして取得する第1高さデータ取得手段と、
前記全照射領域に係る高さデータに基づき、前記複数の光パターンのうちの一部のみが照射される一部照射領域に関する補完データを取得する補完データ取得手段と、
前記補完データを基に、前記一部照射領域に係る前記計測値の縞次数を特定し、当該縞次数の計測値に対応する高さデータを、当該一部照射領域に係る高さデータとして取得する第2高さデータ取得手段とを備えたことを特徴とする三次元計測装置。
【0016】
上記手段1によれば、周期の異なる複数の光パターンをそれぞれ異なる位置から被計測物に対し照射して得られた複数通りの画像データに基づき、位相シフト法により三次元計測を行い、当該計測値を各光パターンに係る計測値として取得する。そして、複数の光パターンに係る計測値から特定される高さデータを、被計測物の高さデータとして取得する。これにより、長い周期の光パターンを利用するメリットである計測可能な高さレンジを大きくできること、及び、周期の短い光パターンを利用するメリットである分解能の高い高精度な計測を実現できることの双方の効果を得ることができる。結果として、広ダイナミックレンジで高分解能の計測を行うことができ、より高精度な計測を実現することができる。
【0017】
但し、複数の光パターンに係る計測値を基に被計測物の高さデータを特定するため、複数の光パターンのうちの一部のみしか照射されない一部照射領域に関しては、データの欠落部分が生じる。
【0018】
そこで、本手段では、複数の光パターンが全て照射される全照射領域に関しては、複数の光パターンに係る計測値から特定される高さデータを、当該全照射領域に係る高さデータとして取得する一方、複数の光パターンのうちの一部のみが照射される一部照射領域に関しては、前記全照射領域に係る高さデータに基づき補完データを算出した後、これを基に、前記一部照射領域に係る計測値の縞次数を特定し、当該縞次数の計測値に対応する高さデータを、当該一部照射領域に係る高さデータとして取得する。
【0019】
これにより、複数の光パターンが全て照射される全照射領域に関しては勿論のこと、複数の光パターンのうちの一部のみが照射される一部照射領域に関しても、より高精度な高さデータを取得することができる。
【0020】
尚、仮に一部照射領域に含まれる形状が比較的平坦な形状であれば、線形補完等して得た補完データをそのまま、当該一部照射領域に係る高さデータとして採用することも考えられるが、クリームハンダなど計測対象の一部照射領域が必ずしもこのような形状のものばかりではなく、例えば比較的起伏のある凹凸形状となっていることも考えられるため、当該一部照射領域に関しても、実測値(所定の縞次数の計測値に対応する高さデータ)をそのまま採用する方が、より真の値に近い値を得ることができる点において好ましい。
【0021】
手段2.縞状の光強度分布を有する第1周期の第1光パターンを第1位置から被計測物に対し照射可能な第1照射手段と、
縞状の光強度分布を有しかつ前記第1周期よりも長い第2周期の第2光パターンを前記第1位置とは異なる第2位置から被計測物に対し照射可能な第2照射手段と、
前記光パターンの照射された前記被計測物を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像データに基づき三次元計測を行う画像処理手段とを備えた三次元計測装置であって、
前記画像処理手段は、
複数通りに位相変化させた前記第1光パターンを照射して前記撮像手段により撮像された複数通りの画像データに基づき、位相シフト法により三次元計測を行い、当該計測値を第1計測値として取得する第1計測値取得手段と、
複数通りに位相変化させた前記第2光パターンを照射して前記撮像手段により撮像された複数通りの画像データに基づき、位相シフト法により三次元計測を行い、当該計測値を第2計測値として取得する第2計測値取得手段と、
前記第1光パターン及び前記第2光パターンが共に照射される全照射領域に関して、前記第1計測値及び前記第2計測値から特定される高さデータを、当該全照射領域に係る高さデータとして取得する第1高さデータ取得手段と、
前記全照射領域に係る高さデータに基づき、前記第1光パターン又は前記第2光パターンの一方のみが照射される一部照射領域に関する補完データを取得する補完データ取得手段と、
前記補完データを基に、前記一部照射領域に係る前記第1計測値又は前記第2計測値の縞次数を特定し、当該縞次数の第1計測値又は第2計測値に対応する高さデータを、当該一部照射領域に係る高さデータとして取得する第2高さデータ取得手段とを備えたことを特徴とする三次元計測装置。
【0022】
上記手段2によれば、複数通りに位相変化させた第1周期の第1光パターンを第1位置から被計測物に照射して得られた複数通りの画像データに基づき、位相シフト法により三次元計測を行い、当該計測値を第1計測値として取得する。併せて、複数通りに位相変化させた第2周期の第2光パターンを第2位置から被計測物に照射して得られた複数通りの画像データに基づき、位相シフト法により三次元計測を行い、当該計測値を第2計測値として取得する。そして、第1計測値及び第2計測値から特定される高さデータを、被計測物の高さデータとして取得する。これにより、長い周期の第2光パターンを利用するメリットである計測可能な高さレンジを大きくできること、及び、周期の短い第1光パターンを利用するメリットである分解能の高い高精度な計測を実現できることの双方の効果を得ることができる。結果として、広ダイナミックレンジで高分解能の計測を行うことができ、より高精度な計測を実現することができる。
【0023】
但し、第1計測値及び第2計測値を基に被計測物の高さデータを特定するため、第1光パターン又は第2光パターンの一方のみしか照射されない一部照射領域に関しては、データの欠落部分が生じる。
【0024】
そこで、本手段では、両光パターンが共に照射される全照射領域に関しては、第1計測値及び第2計測値から特定される高さデータを、当該全照射領域に係る高さデータとして取得する一方、第1光パターン又は第2光パターンの一方のみが照射される一部照射領域に関しては、前記全照射領域に係る高さデータに基づき補完データを算出した後、これを基に、前記一部照射領域に係る第1計測値又は第2計測値の縞次数を特定し、当該縞次数の第1計測値又は第2計測値に対応する高さデータを、当該一部照射領域に係る高さデータとして取得する。
【0025】
これにより、第1光パターン及び第2光パターンの両者が照射される全照射領域に関しては勿論のこと、両光パターンのうち一方のみが照射される一部照射領域に関しても、より高精度な高さデータを取得することができる。
【0026】
尚、仮に一部照射領域に含まれる形状が比較的平坦な形状であれば、線形補完等して得た補完データをそのまま、当該一部照射領域に係る高さデータとして採用することも考えられるが、クリームハンダなど計測対象の一部照射領域が必ずしもこのような形状のものばかりではなく、例えば比較的起伏のある凹凸形状となっていることも考えられるため、当該一部照射領域に関しても、実測値(所定の縞次数の第1計測値又は第2計測値に対応する高さデータ)をそのまま採用する方が、より真の値に近い値を得ることができる点において好ましい。
【0027】
手段3.前記第1照射手段及び前記第2照射手段は、前記撮像手段の撮像方向(略鉛直方向)に沿って視た平面視において、前記被計測物を挟んで相対向する位置に配置されていることを特徴とする手段2に記載の三次元計測装置。
【0028】
上記手段3によれば、第1光パターン及び第2光パターンのいずれも照射されない影の部分が生じるおそれを低減し、上記手段2の作用効果をより確実に奏することができる。
【0029】
手段4.前記第1照射手段及び前記第2照射手段をそれぞれ2つ備えると共に、前記撮像手段の撮像方向に沿って視た平面視において、前記被計測物を中心に、前記第1照射手段及び前記第2照射手段が90°間隔で交互に配置されていることを特徴とする手段2に記載の三次元計測装置。
【0030】
上記手段4によれば、例えば上記手段3のように相対向する第1照射手段及び第2照射手段を2組備え、当該各照射手段を、被計測物を中心に90°間隔で配置した構成に比べ、第1光パターン又は第2光パターンのいずれか一方しか照射されない一部照射領域の割合を極力減らすことができる。結果として、より精度の高い計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】基板検査装置を模式的に示す概略斜視図である。
【図2】基板検査装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】各光パターンによる分解能や計測される高さデータ等との関係を示す図である。
【図4】クリームハンダに対し各照明装置から各光パターンを照射した状態を示す側面模式図である。
【図5】各光パターンが照射された状態のクリームハンダ及びその周辺部を示す平面模式図である。
【図6】図5のK−K線断面における全照射領域の高さデータをプロットした図である。
【図7】図5のK−K線断面における一部照射領域に関する補完データをプロットした図である。
【図8】図7に示す補完データを基に特定した一部照射領域に係る高さデータをプロットした図である。
【図9】図5のK−K線断面における高さデータをプロットした図である。
【図10】別の実施形態に係る照明装置の配置構成を示す平面模式図である。
【図11】別の実施形態に係る照明装置の配置構成を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1は、本実施形態における三次元計測装置を具備する基板検査装置1を模式的に示す概略構成図である。同図に示すように、基板検査装置1は、計測対象たるクリームハンダH(図4等参照)の印刷されてなる被計測物としてのプリント基板2を載置するための載置台3と、プリント基板2の表面に対し斜め上方から所定の光パターンを照射するための2つの照明装置(第1照射手段としての第1照明装置4A、及び、第2照射手段としての第2照明装置4B)と、プリント基板2上の前記照射された部分を撮像するための撮像手段としてのカメラ5と、基板検査装置1内における各種制御や画像処理、演算処理を実施するための制御装置6とを備えている。制御装置6が本実施形態における画像処理手段を構成する。
【0034】
各照明装置4A,4Bは、公知の液晶光学シャッターを備えており、プリント基板2に対し、斜め上方から4分の1ピッチづつ位相変化する縞状の光パターンを照射可能となっている。本実施形態では、光パターンが、矩形状のプリント基板2の一対の辺と平行にX軸方向に沿って照射されるよう設定されている。つまり、光パターンの縞が、X軸方向に直交し、かつ、Y軸方向に平行に照射される。
【0035】
また、各照明装置4A,4Bは、カメラ5の撮像方向である略鉛直方向(Z軸方向)に沿って視た平面視(X−Y平面)において、プリント基板2を挟んで相対向する位置に配置されている。ここで、第1照明装置4Aが配置された位置が本実施形態における第1位置に相当し、第2照明装置4Bが配置された位置が第2位置に相当する。
【0036】
尚、本実施形態の各照明装置4A,4Bは、それぞれ縞ピッチ(周期)の異なる光パターンを照射可能な構成となっている。より詳しくは、第1照明装置4Aは、周期が600μmの第1光パターンを照射し、第2照明装置4Bは、周期が800μmの第2光パターンを照射する構成となっている。本実施形態では、600μmが第1周期に相当し、800μmが第2周期に相当する。
【0037】
これにより、第1光パターンによっては、図3に示すように、計測対象点を例えば「−300(μm)」、「−200(μm)」、「−100(μm)」・・・といったように、「−300(μm)」〜「+300(μm)」の範囲内にある高さを、「100(μm)」刻みの精度で計測できる。尚、「+300(μm)」は1つ上の縞次数における「−300(μm)」に相当する。
【0038】
一方、第2光パターンによっては、計測対象点を例えば「−400(μm)」、「−300(μm)」、「−200(μm)」・・・といったように、「−400(μm)」〜「+400(μm)」の範囲内にある高さを、「100(μm)」刻みの精度で計測できる。尚、「+400(μm)」は1つ上の縞次数における「−400(μm)」に相当する。
【0039】
尚、各照明装置4A,4Bにおいて、図示しない光源からの光は光ファイバーにより一対の集光レンズに導かれ、そこで平行光にされる。その平行光が、液晶素子を介して恒温制御装置内に配置された投影レンズに導かれる。そして、投影レンズから4つの位相変化する光パターンが照射される。このように、各照明装置4A,4Bに液晶光学シャッターが使用されていることによって、縞状の光パターンを作成した場合に、その照度が理想的な正弦波に近いものが得られ、これにより、三次元計測の計測分解能が向上するようになっている。また、光パターンの位相シフトの制御を電気的に行うことができ、制御系のコンパクト化を図ることができるようになっている。
【0040】
載置台3には、モータ15,16が設けられており、該モータ15,16が制御装置6により駆動制御されることによって、載置台3上に載置されたプリント基板2が任意の方向(X軸方向及びY軸方向)へスライドさせられるようになっている。
【0041】
カメラ5は、レンズや撮像素子等からなる。撮像素子としては、CCDセンサを採用している。勿論、撮像素子はこれに限定されるものではなく、例えばCMOS等を採用してもよい。
【0042】
次に、制御装置6の電気的構成について説明する。図2に示すように、制御装置6は、基板検査装置1全体の制御を司るCPU及び入出力インターフェース21、キーボードやマウス、あるいは、タッチパネルで構成される「入力手段」としての入力装置22、CRTや液晶などの表示画面を有する「表示手段」としての表示装置23、カメラ5による撮像に基づく画像データを記憶するための画像データ記憶装置24、各種演算結果を記憶するための演算結果記憶装置25、各種情報を予め記憶しておく設定データ記憶装置26を備えている。なお、これら各装置22〜26は、CPU及び入出力インターフェース21に対し電気的に接続されている。
【0043】
以下、制御装置6にて実行される三次元計測の処理内容を説明する。制御装置6は、まずモータ15,16を駆動制御してプリント基板2を移動させ、カメラ5の視野をプリント基板2上の所定の検査エリアEに合わせる。なお、検査エリアEは、カメラ5の視野の大きさを1単位としてプリント基板2の表面を予め分割しておいた中の1つのエリアである。
【0044】
ここで、制御装置6は、第1照明装置4Aを駆動制御して第1光パターン(周期600μm)の照射を開始させると共に、この第1光パターンの位相を4分の1ピッチずつシフトさせて4種類の照射を順次切換制御する。さらに、制御装置6は、このようにして第1光パターンの位相がシフトする照明が行われている間に、カメラ5を駆動制御して、これら各照射ごとに検査エリアE部分を撮像し、4画面分の画像データを得る。
【0045】
制御装置6は、取得した4画面分の各画像データに基づいて各種画像処理を行い、背景技術においても説明した公知の位相シフト法に基づき、各座標(画素)毎の高さ計測を行い、当該計測値を第1計測値として記憶する。当該処理が本実施形態における第1計測値取得手段の機能を構成する。
【0046】
続いて、制御装置6は、第2照明装置4Bを駆動制御して第1光パターンよりも周期の長い第2光パターン(周期800μm)の照射を開始させると共に、この第2光パターンの位相を4分の1ピッチずつシフトさせて4種類の照射を順次切換制御する。さらに、制御装置6は、このようにして第2光パターンの位相がシフトする照明が行われている間に、カメラ5を駆動制御して、これら各照射ごとに検査エリアE部分を撮像し、4画面分の画像データを得る。
【0047】
制御装置6は、取得した4画面分の各画像データに基づいて各種画像処理を行い、上記同様、公知の位相シフト法に基づき、各座標(画素)毎の高さ計測を行い、当該計測値を第2計測値として記憶する。当該処理が本実施形態における第2計測値取得手段の機能を構成する。
【0048】
次に、制御装置6は、検査エリアEのうち、第1光パターン及び第2光パターンが共に照射され、上記第1計測値及び第2計測値の両者を取得できた全照射領域WA1,WA2(図4,5参照)に関して、当該第1計測値及び第2計測値から特定される高さデータを、当該全照射領域WA1,WA2に係る高さデータとして取得する。当該処理が本実施形態における第1高さデータ取得手段の機能を構成する。図4は、計測対象となるクリームハンダHに対し各照明装置4A,4Bから各光パターンを照射した状態を示す側面模式図であり、図5は、各光パターンが照射された状態のクリームハンダH及びその周辺部を示す平面模式図である。
【0049】
図3に例示した対応表からも明らかなように、所定の計測対象点に関し、第1計測値として得られた値が例えば「+100(μm)」であった場合には、当該計測対象点の高さデータの候補は、縞次数[1]の「+100(μm)」、縞次数[2]の「+700(μm)」、又は縞次数[3]の「+1300(μm)」となる。
【0050】
ここで、同一の計測対象点につき、第2計測値として得られた値が例えば「−100(μm)」であった場合には、当該計測対象点の高さデータは「+700(μm)」と特定される。
【0051】
但し、上記検査エリアEのうち、第1光パターンのみ照射される(第2光パターンが照射されない)一部照射領域WB1、及び、第2光パターンのみ照射される(第1光パターンが照射されない)一部照射領域WB2に関しては、それぞれデータの欠落部分となる(図6のA−A´間,B−B´間参照)。図6は、図5のK−K線断面における全照射領域WA1,WA2の高さデータをプロットした図である。
【0052】
次に、上記全照射領域WA1,WA2に係る高さデータに基づき、上記一部照射領域WB1,WB2に関する補完データを取得する。当該処理が本実施形態における補完データ取得手段の機能を構成する。
【0053】
本実施形態では、第1光パターン又は第2光パターンの平面視照射方向(図5の左右方向)における一部照射領域WB1(データ欠落部分)の両端にあたる全照射領域WA1,WA2の高さデータA,A´、及び、一部照射領域WB2の両端にあたる全照射領域WA1,WA2の高さデータB,B´をそれぞれ結ぶように線形補完が行われる(図7参照)。図7は、図5のK−K線断面における一部照射領域WB1,WB2に関する補完データをプロットした図である。
【0054】
続いて、一部照射領域WB1に関する上記補完データを基に、当該一部照射領域WB1に係る第1計測値の縞次数を特定し、当該縞次数の第1計測値に対応する高さデータを、当該一部照射領域WB1に係る高さデータとして取得する(図8参照)。同様に、一部照射領域WB2に関する補完データを基に、当該一部照射領域WB2に係る第2計測値の縞次数を特定し、当該縞次数の第2計測値に対応する高さデータを、当該一部照射領域WB2に係る高さデータとして取得する(図8参照)。これらの処理が本実施形態における第2高さデータ取得手段の機能を構成する。図8は、図7に示す補完データを基に特定した一部照射領域WB1,WB2に係る高さデータをプロットした図である。
【0055】
本実施形態では、所定の計測対象点に係る補完データに最も近い縞次数(補完データを含む範囲の縞次数)が、当該計測対象点に係る縞次数として特定される。
【0056】
例えば、一部照射領域(第1光パターンのみ照射される領域)WB1のうちの所定の計測対象点に係る補完データが「+1050(μm)」であった場合には、当該計測対象点に係る第1計測値の縞次数は[3]と特定される(図3参照)。
【0057】
ここで、例えば、上記計測対象点に関し、第1計測値として得られた値が例えば「−100(μm)」であった場合には、当該計測対象点に係る高さデータは、縞次数は[3]の第1計測値に対応する値である「+1100(μm)」と特定される。
【0058】
上記一連の処理が終了すると、撮像視野全体(検査エリアE全域)についての計測データが完成する(図9参照)。図9は、図5のK−K線断面における高さデータをプロットした図である。
【0059】
このようにして得られた各検査エリアE毎の計測データは、制御装置6の演算結果記憶装置25に格納される。そして、当該検査エリアE毎の計測データに基づいて、基準面より高くなったクリームハンダHの印刷範囲が検出され、この範囲内での各部位の高さを積分することにより、印刷されたクリームハンダHの量が算出される。そして、このようにして求めたクリームハンダHの位置、面積、高さ又は量等のデータが予め設定データ記憶装置26に記憶されている基準データと比較判定され、この比較結果が許容範囲内にあるか否かによって、その検査エリアEにおけるクリームハンダHの印刷状態の良否が判定される。
【0060】
かかる処理が行われている間に、制御装置6は、モータ15,16を駆動制御してプリント基板2を次の検査エリアEへと移動せしめ、以降、上記一連の処理が、全ての検査エリアEで繰り返し行われる。
【0061】
このように、本実施形態の基板検査装置1においては、制御装置6の制御により検査エリアEを移動しながら、順次画像処理を行うことにより、プリント基板2上のクリームハンダHの高さ計測を含む三次元計測を行い、クリームハンダHの印刷状態を高速かつ確実に検査することができるようになっている。
【0062】
以上詳述したように、本実施形態によれば、長い周期の第2光パターンを利用するメリットである計測可能な高さレンジを大きくできること、及び、周期の短い第1光パターンを利用するメリットである分解能の高い高精度な計測を実現できることの双方の効果を得ることができる。結果として、広ダイナミックレンジで高分解能の計測を行うことができ、より高精度な計測を実現することができる。
【0063】
特に、本実施形態では、両光パターンが共に照射される全照射領域WA1,WA2に関しては、第1計測値及び第2計測値から特定される高さデータを、当該全照射領域WA1,WA2に係る高さデータとして取得する一方、第1光パターン又は第2光パターンの一方のみが照射される一部照射領域WB1,WB2に関しては、全照射領域WA1,WA2に係る高さデータに基づき補完データを算出した後、これを基に、一部照射領域WB1,WB2に係る第1計測値又は第2計測値の縞次数を特定し、当該縞次数の第1計測値又は第2計測値に対応する高さデータを、当該一部照射領域WB1,WB2に係る高さデータとして取得する。
【0064】
これにより、第1光パターン及び第2光パターンの両者が照射される全照射領域WA1,WA2に関しては勿論のこと、両光パターンのうち一方のみが照射される一部照射領域WB1,WB2に関しても、より高精度な高さデータを取得することができる。
【0065】
尚、仮に一部照射領域WB1,WB2に含まれる形状が比較的平坦な形状であれば、線形補完等して得た補完データをそのまま、当該一部照射領域WB1,WB2に係る高さデータとして採用することも考えられるが、クリームハンダHの一部照射領域WB1,WB2が必ずしもこのような形状のものばかりではなく、例えば比較的起伏のある凹凸形状となっていることも考えられるため、当該一部照射領域WB1,WB2に関しても、実測値(所定の縞次数の第1計測値又は第2計測値に対応する高さデータ)をそのまま採用する方が、より真の値に近い値を得ることができる点において好ましい。
【0066】
加えて、本実施形態では、各照明装置4A,4Bが、カメラ5の撮像方向である略鉛直方向(Z軸方向)に沿って視た平面視(X−Y平面)において、プリント基板2を挟んで相対向する位置に配置されている。このため、第1光パターン及び第2光パターンのいずれも照射されない影の部分が生じるおそれを低減し、上記作用効果をより確実に奏することができる。
【0067】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0068】
(a)上記実施形態では、三次元計測装置を、プリント基板2に印刷形成されたクリームハンダHの高さを計測する基板検査装置1に具体化したが、これに限らず、例えば基板上に印刷されたハンダバンプや、基板上に実装された電子部品など、他のものの高さを計測する構成に具体化してもよい。
【0069】
(b)上記実施形態では、周期600μmの第1光パターンと、周期800μmの第2光パターンとを組合わせて、高さ1500μmまでの計測を行う場合を例示しているが、勿論、各光パターンの周期や計測範囲はこれに限定されるものではない。例えば、第1光パターンの周期をより短く(例えば400μm)して、第1光パターンの縞次数が4以上となる範囲で計測可能な構成としてもよい。
【0070】
ここで、第1光パターンの周期と、第2光パターンの周期との差をより小さくすることにより、第1光パターンのみ照射される一部照射領域WB1の精度と、第2光パターンのみ照射される一部照射領域WB2の精度との差をより小さくすることができる。
【0071】
(c)上記実施形態では、プリント基板2に対し、周期の異なる2種類の光パターンを2方向から照射する構成となっている。これに限らず、周期の異なる3種類以上の光パターンを3方向以上から照射する構成としてもよい。
【0072】
勿論、1種類1方向のみならず、同種(同周期)の光パターンを複数方向から照射する構成としてもよい。例えば、上記実施形態のように相対向して配置される第1照明装置4A及び第2照明装置4Bを2組備え、当該4つの照明装置4A,4Bを、プリント基板2を中心に90°間隔で配置した構成としてもよい(図10参照)。
【0073】
但し、かかる構成では、第1光パターン又は第2光パターンのいずれか一方しか照射されない一部照射領域(図10の斜線部分参照)が生じてしまうおそれもある。
【0074】
これに対し、例えば第1照明装置4A及び第2照明装置4Bをそれぞれ2つずつ備えると共に、当該第1照明装置4A及び第2照明装置4Bがプリント基板2を中心に90°間隔で交互に配置される構成、つまり2つの第1照明装置4Aが相対向するように配置されると共に、2つの第2照明装置4Bが相対向するように配置された構成としてもよい(図11参照)。
【0075】
かかる構成により、上記図10に例示した構成に比べ、第1光パターン又は第2光パターンのいずれか一方しか照射されない一部照射領域が生じる割合を極力減らすことができる。結果として、より精度の高い計測を行うことができる。
【0076】
(d)上記実施形態では、各光パターンが、矩形状のプリント基板2の一対の辺と平行にX軸方向に沿って照射される。つまり、光パターンの縞が、X軸方向に直交し、かつ、Y軸方向に平行に照射される構成となっている。これに限らず、例えば、光パターンの縞が、矩形状のプリント基板2やカメラ5の撮像視野(検査エリアE)の各辺に対し斜め(例えば平面視斜め45度)に交差するように照射される構成としてもよい。
【0077】
(e)上記実施形態では、複数の照明装置4A,4Bが、プリント基板2を中心に平面視等間隔で配置された構成となっているが、必ずしも複数の照明装置4A,4Bが等間隔に配置されている必要はなく、各照明装置4A,4Bの配置は、プリント基板2の構成等に応じて任意に設定可能である。
【0078】
(f)上記実施形態では、一部照射領域WB1,WB2に関する補完データを取得するにあたり、全照射領域WA1,WA2に係る高さデータに基づき線形補完を行う構成となっている。補完データの取得方法は、これに限定されるものではなく、他の方法により行う構成としてもよい。
【0079】
(g)上記実施形態では、補完データを基に一部照射領域WB1,WB2に係る計測値の縞次数を特定するにあたり、所定の計測対象点に係る補完データに最も近い縞次数(補完データを含む範囲の縞次数)が、当該計測対象点に係る縞次数として特定される構成となっている。一部照射領域WB1,WB2に係る計測値の縞次数を特定する方法は、これに限定されるものではなく、他の方法により行う構成としてもよい。例えば、隣接する複数の計測対象点(画素)からなる所定エリア内の補完データの平均値を算出し、当該平均値に最も近い縞次数(当該平均値を含む範囲の縞次数)が、当該所定エリアに係る縞次数として特定される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…基板検査装置、2…プリント基板、4A…第1照明装置、4B…第2照明装置、5…カメラ、6…制御装置、E…検査エリア、H…クリームハンダ、WA1,WA2…全照射領域、WB1,WB2…一部照射領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縞状の光強度分布を有しかつ周期の異なる複数の光パターンをそれぞれ異なる位置から被計測物に対し照射可能な複数の照射手段と、
前記各光パターンの照射された前記被計測物を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像データに基づき三次元計測を行う画像処理手段とを備えた三次元計測装置であって、
前記画像処理手段は、
複数通りに位相変化させた前記各光パターンをそれぞれ照射して前記撮像手段により撮像された前記各光パターンに係る複数通りの画像データに基づき、位相シフト法により三次元計測を行い、当該計測値を前記各光パターンに係る計測値として取得する計測値取得手段と、
前記複数の光パターンが全て照射される全照射領域に関して、前記複数の光パターンに係る前記計測値から特定される高さデータを、当該全照射領域に係る高さデータとして取得する第1高さデータ取得手段と、
前記全照射領域に係る高さデータに基づき、前記複数の光パターンのうちの一部のみが照射される一部照射領域に関する補完データを取得する補完データ取得手段と、
前記補完データを基に、前記一部照射領域に係る前記計測値の縞次数を特定し、当該縞次数の計測値に対応する高さデータを、当該一部照射領域に係る高さデータとして取得する第2高さデータ取得手段とを備えたことを特徴とする三次元計測装置。
【請求項2】
縞状の光強度分布を有する第1周期の第1光パターンを第1位置から被計測物に対し照射可能な第1照射手段と、
縞状の光強度分布を有しかつ前記第1周期よりも長い第2周期の第2光パターンを前記第1位置とは異なる第2位置から被計測物に対し照射可能な第2照射手段と、
前記光パターンの照射された前記被計測物を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像データに基づき三次元計測を行う画像処理手段とを備えた三次元計測装置であって、
前記画像処理手段は、
複数通りに位相変化させた前記第1光パターンを照射して前記撮像手段により撮像された複数通りの画像データに基づき、位相シフト法により三次元計測を行い、当該計測値を第1計測値として取得する第1計測値取得手段と、
複数通りに位相変化させた前記第2光パターンを照射して前記撮像手段により撮像された複数通りの画像データに基づき、位相シフト法により三次元計測を行い、当該計測値を第2計測値として取得する第2計測値取得手段と、
前記第1光パターン及び前記第2光パターンが共に照射される全照射領域に関して、前記第1計測値及び前記第2計測値から特定される高さデータを、当該全照射領域に係る高さデータとして取得する第1高さデータ取得手段と、
前記全照射領域に係る高さデータに基づき、前記第1光パターン又は前記第2光パターンの一方のみが照射される一部照射領域に関する補完データを取得する補完データ取得手段と、
前記補完データを基に、前記一部照射領域に係る前記第1計測値又は前記第2計測値の縞次数を特定し、当該縞次数の第1計測値又は第2計測値に対応する高さデータを、当該一部照射領域に係る高さデータとして取得する第2高さデータ取得手段とを備えたことを特徴とする三次元計測装置。
【請求項3】
前記第1照射手段及び前記第2照射手段は、前記撮像手段の撮像方向(略鉛直方向)に沿って視た平面視において、前記被計測物を挟んで相対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の三次元計測装置。
【請求項4】
前記第1照射手段及び前記第2照射手段をそれぞれ2つ備えると共に、前記撮像手段の撮像方向に沿って視た平面視において、前記被計測物を中心に、前記第1照射手段及び前記第2照射手段が90°間隔で交互に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の三次元計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−104858(P2013−104858A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251171(P2011−251171)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000106760)CKD株式会社 (627)
【Fターム(参考)】