三次元造形装置及び三次元造形方法
【課題】樹脂中に混入した気泡に起因する吐出不良を防止して、造形不良を回避する。
【解決手段】
造形物を載置するための前記造形プレート40と、前記造形材を吐出するための造形材吐出手段と、前記造形材吐出手段を支承するヘッド部20と、前記ヘッド部20を移動させながら、前記造形材吐出手段による前記造形材の吐出を制御する制御手段10と、液体状の造形材と接触させて、該造形材中に含まれる気体を脱気するための脱気モジュール52と、造形材を蓄える交換式の造形材カートリッジ47と、前記造形材カートリッジ47から造形材吐出手段まで連通される液体状の造形材の搬送経路46中に配置され、該造形材中から異物を捕集するための異物捕集フィルタ51と、を備えており、前記脱気モジュール52が、前記異物捕集フィルタ51の後で、かつ造形材吐出手段の前に配置する。
【解決手段】
造形物を載置するための前記造形プレート40と、前記造形材を吐出するための造形材吐出手段と、前記造形材吐出手段を支承するヘッド部20と、前記ヘッド部20を移動させながら、前記造形材吐出手段による前記造形材の吐出を制御する制御手段10と、液体状の造形材と接触させて、該造形材中に含まれる気体を脱気するための脱気モジュール52と、造形材を蓄える交換式の造形材カートリッジ47と、前記造形材カートリッジ47から造形材吐出手段まで連通される液体状の造形材の搬送経路46中に配置され、該造形材中から異物を捕集するための異物捕集フィルタ51と、を備えており、前記脱気モジュール52が、前記異物捕集フィルタ51の後で、かつ造形材吐出手段の前に配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスペンサで立体造形物を作製する三次元造形装置及び三次元造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、造形物の基礎データである3次元データを、コンピュータの画面上で任意の姿勢に設定し、設定された姿勢に基づいて高さ方向に平行な複数の面で切断した各断面毎のデータを生成し、この各層に関する二次元データに基づいて、樹脂を順次積層することよって立体造形を行い、造形物の三次元モデルとなる造形物を生成する装置が知られている。
【0003】
製品開発において試作等に用いられるラピッド・プロトタイピング(Rapid Prototyping:RP)の分野で、三次元造型が可能な積層造形法が利用されている。積層造形法としては、積層造形法は、製品の三次元CADデータをスライスし、薄板を重ね合わせたようなものを製造の元データとして作成し、それに粉体、樹脂、鋼板、紙などの材料を積層して試作品を作成する。このような積層造形法としては、インクジェット法、粉末法、光造形法、シート積層法、押し出し法等が知られている。この内、インクジェット法は、液化した樹脂を噴射した後、紫外光(UV)を照射したり、冷却するなどによって層を硬化させて造形物を形成する。
【0004】
インクジェット法のような樹脂を噴射して積層する方式では、ディスペンサとして、樹脂を吐出する吐出ノズルを備えている。吐出ノズルは、ピエゾ電極を用いて、図14に示すように吐出ノズル先端23aを変形させて樹脂の液滴DLに圧力を印加して吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−535712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ディスペンサから吐出される樹脂中に空気が混入すると、樹脂の吐出に不良が生じる。すなわち、図15に示すように、ピエゾ電極により吐出ノズル先端23aが変形しても、空気の気泡AHが圧縮されてしまうため、樹脂の液滴DLが吐出されない、いわゆる不吐となったり、あるいは本来の液滴よりも小さな液滴の樹脂が吐出されるなど、所定の樹脂を吐出することができない状態となってしまう問題があった。
【0007】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、樹脂中に混入した気泡に起因する吐出不良を防止して、造形不良を回避可能とした三次元造形装置及び三次元造形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る三次元造形装置によれば、造形プレート40上に、造形材を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置であって、造形物を載置するための前記造形プレート40と、前記造形材を吐出するための造形材吐出手段と、前記造形材吐出手段を支承するヘッド部20と、前記ヘッド部20を移動させながら、前記造形材吐出手段による前記造形材の吐出を制御する制御手段10と、液体状の造形材と接触させて、該造形材中に含まれる気体を脱気するための脱気モジュール52と、造形材を蓄える交換式の造形材カートリッジ47と、前記造形材カートリッジ47から造形材吐出手段まで連通される液体状の造形材の搬送経路46中に配置され、該造形材中から異物を捕集するための異物捕集フィルタ51と、を備えており、前記脱気モジュール52が、前記異物捕集フィルタ51の後で、かつ造形材吐出手段の前に配置することができる。これにより、造形材の液中から脱気して、造形材吐出手段からの造形材の不吐や造形物の不良を回避し、精密な造形が実現できる。
【0009】
また第2の側面に係る三次元造形装置によれば、前記脱気モジュール52が、中空糸60で構成されており、前記中空糸60の内部を負圧とすることができる。これによって、負圧の中空糸の表面に造形材を接触させて、内部に気体成分を透過させて造形材の気体成分を効率よく分離できる。
【0010】
さらに第3の側面に係る三次元造形装置によれば、前記中空糸60の一端を閉塞し、他端を開放端としつつ、脱気用負圧発生ポンプ63と接続することができる。これにより、中空糸の内部を効率よく負圧とできる。
【0011】
さらにまた第4の側面に係る三次元造形装置によれば、さらに前記中空糸60の開放された一端を、所定のタイミングで開放するための脱気圧力開放弁62を備えることができる。これによって、中空糸内で気体を停滞させず、定期的な気体の流れを生じさせて、中空糸内部での液化を防止し、脱気率の低下を回避できる。
【0012】
さらにまた第5の側面に係る三次元造形装置によれば、前記異物捕集フィルタ51と脱気モジュール52とを、前記ヘッド部20に設けることができる。これにより、脱気モジュールを異物捕集フィルタの後段に配置することで脱気モジュールの小型化を可能とし、ヘッド部への配置を実現できる。
【0013】
さらにまた第6の側面に係る三次元造形装置によれば、前記異物捕集フィルタ51と脱気モジュール52とをモジュール化することができる。これにより、モジュール化した異物捕集フィルタと脱気モジュールを同時に交換でき、メンテナンス時等の作業性を高めることができる。
【0014】
さらにまた第7の側面に係る三次元造形装置によれば、前記造形材カートリッジ47を複数備えることができる。これにより、造形材を多く蓄えて連続運転時間を長くすると共に、一方の造形材カートリッジの交換中も、安定的に造形材を供給できる。加えて、このような造形材カートリッジの交換時に、大きな気体が造形材に混入することを抑制して、信頼性の高い造形が可能となる。
【0015】
さらにまた第8の側面に係る三次元造形装置によれば、さらに前記造形材を硬化させるための硬化手段24を備えており、前記ヘッド部20で前記硬化手段を支承すると共に、前記制御手段10が、前記ヘッド部20を移動させながら、前記造形材吐出手段による前記造形材の吐出及び硬化手段24による硬化を制御することができる。
【0016】
さらにまた第9の側面に係る三次元造形装置によれば、さらに前記ヘッド部20を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、前記ヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、を備え、前記制御手段10が、前記水平駆動手段で前記ヘッド部20を一方向に往復走査させて、前記造形材吐出手段により前記造形物を前記造形プレート40上に吐出させ、さらに前記硬化手段24により前記造形物を硬化させることができる。
【0017】
さらにまた第10の側面に係る三次元造形装置によれば、造形材が、最終的な造形物となるモデル材MAと、前記モデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAと、を含み、前記造形材吐出手段が、前記モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21、及び前記サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、それぞれ一方向に複数個配列させることができる。
【0018】
さらにまた第11の側面に係る三次元造形方法によれば、造形プレート40上に、造形材を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形方法であって、造形材を蓄える交換式の造形材カートリッジ47から、造形材の搬送経路46に造形材を供給する工程と、前記造形材の搬送経路46上に設けられた異物捕集フィルタ51を通じて、前記造形材中に含まれる異物を補足すると共に、該造形材中に含有される気体成分を粉砕する工程と、前記造形材の搬送経路46上において、前記異物捕集フィルタ51の後段に設けられた脱気モジュール52に造形材を通し、前記脱気モジュール52中に含まれる、内部を負圧とされた中空糸60と造形材とを接触させて、前記中空糸60中に造形材中の気体成分を取り込むことで脱気する工程と、前記脱気された造形材を、該造形材を吐出する造形材吐出手段により前記造形プレート40上に吐出させる工程と、を含むことができる。これにより、造形材の液中から脱気して、造形材吐出手段からの造形材の不吐や造形物の不良を回避し、精密な造形が実現できる。
【0019】
さらにまた第12の側面に係る三次元造形方法によれば、前記脱気モジュール52が、中空糸60で構成されており、前記中空糸60の内部を負圧とすることができる。これによって、負圧の中空糸の表面に造形材を接触させて、内部に気体成分を透過させて造形材の気体成分を効率よく分離できる。
【0020】
さらにまた第13の側面に係る三次元造形方法によれば、前記中空糸60の一端を閉塞し、他端を開放端としつつ、脱気用負圧発生ポンプ63と接続することができる。これにより、中空糸の内部を効率よく負圧とできる。
【0021】
さらにまた第14の側面に係る三次元造形方法によれば、前記中空糸60の開放された一端を、所定のタイミングで開放するための脱気圧力開放弁62を備えることができる。これによって、中空糸内で気体を停滞させず、定期的な気体の流れを生じさせて、中空糸内部での液化を防止し、脱気率の低下を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1に係る三次元造形装置を示すブロック図である。
【図2】変形例に係る三次元造形装置を示すブロック図である。
【図3】ヘッド部がXY方向に移動される様子を示す平面図である。
【図4】ヘッド部の外観を示す斜視図である。
【図5】図4のヘッド部で造形材を吐出する様子を示す平面図である。
【図6】ローラ部で造形材の余剰分を除去する状態を示す斜視図である。
【図7】樹脂の搬送経路を示すブロック図である。
【図8】図4のヘッド部の造形材吐出ノズルを背面から見た斜視図である。
【図9】脱気モジュールの外観を示す斜視図である。
【図10】図9の内部構造を示す斜視図である。
【図11】図10の断面図である。
【図12】図10の中空糸を示す拡大図である。
【図13】実施例2に係る三次元造形装置の搬送経路を示すブロック図である。
【図14】ピエゾ電極を用いてディスペンサから樹脂を吐出する様子を示す模式断面図である。
【図15】図14において樹脂中に気泡が含まれている場合に不吐を生じる様子を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための三次元造形装置及び三次元造形方法を例示するものであって、本発明は三次元造形装置及び三次元造形方法を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施例1)
【0024】
図1に、本発明の実施例1に係る三次元造形システム100のブロック図を示す。ここでは、三次元造形装置の一例として、インクジェット方式の三次元造形装置に適用する例を説明する。この三次元造形システム100は、造形材を流動状態でインクジェット方式によって吐出、硬化させ、これを積層することによって任意の造形物を製造するものである。造形材には、最終的な造形物を構成するモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支えるために造形され、最終的に除去されるサポート材SAとが利用される。
【0025】
図1に示す三次元造形システム100は、三次元造形装置2に造形データならびに造形条件である設定データを送出する設定データ作成装置1(図1ではコンピュータPC)と、三次元造形装置2で構成される。三次元造形装置2は、制御手段10と、ヘッド部20と、造形プレート40とを備える。ヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAを吐出するモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するサポート材吐出ノズル22を備えている。またこれらの吐出された造形材から余剰分を掻き取ることによりその時点での造形物の最上層の厚みの適正化を図ると共に、造形材の表面を平滑化するためのローラ部25と、造形材を硬化させる硬化手段24も、ヘッド部20に備えられる。さらにヘッド部20を水平方向において、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって、造形プレート40上の適切な位置に吐出させるために、往復走査するX方向と、このX方向に直交するY方向に走査させるための水平駆動手段、及びヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段として、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を備えている。ここで、Y方向とはモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズルが有する複数のオリフィスが配列した並び方向であり、X方向は水平面内においてこのY方向と直交する方向である。
【0026】
コンピュータPCは、三次元形状の造形物の基礎データ、例えば三次元CAD等で設計されたモデルデータの入力を外部から受けると、まずこのCADデータを、例えばSTL(Stereo Lithography Data)データに変換し、更にこのSTLデータを複数の薄い断面体にスライスして得られる断面データを生成し、そしてこのスライスデータを、一括又は各スライス層単位にて三次元造形装置2に対して送信を行う設定データ作成装置1として機能する。この際、三次元CAD等で設計されたモデルデータ(実際は、変換後のSTLデータ)の造形プレート40上における姿勢の決定に対応し、この姿勢におけるモデル材MAにて形成されるモデルを支持することが必要な空間又は箇所に対して、サポート材SAを設ける位置の設定が行われ、これらのデータを元に各層に対応するスライスデータが形成される。制御手段10は、ローラ回転速度制御手段12と、吐出制御手段13を備える。ローラ回転速度制御手段12は、ローラ本体26がモデル材MA又はサポート材SAを個別に回収する際に、各吐出ノズルから吐出されるモデル材MA又はサポート材SAの物理的特性に応じて、ローラ本体26の回転速度を変化させることができる。制御手段10は、コンピュータPCからの断面データを取り込み、そのデータに従ってヘッド部20、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を制御する。この制御手段10の制御により、XY方向駆動部31が作動すると共に、ヘッド部20のモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAを、小滴として造形プレート40上の適切な位置に吐出することにより、コンピュータPCから与えられた断面データに基づく断面形状が造形される。そして造形プレート40上に吐出された造形材の一であるモデル材MAは少なくとも硬化されて液体又は流体状態から固体に変化して硬化する。このような動作によって一層分の断面体すなわちスライスが作り出される。なお、スライスデータは、三次元造形装置2側で生成してもよいが、その際においても、各スライス層の厚み等のオペレータが決定しなくてはならない造形パラメータはコンピュータPC側から三次元造形装置2へ送信しなければならない。
(スライス)
【0027】
ここで「スライス」とは、造形物のz方向の積層単位であり、スライス数は高さを積層厚で除算した値となる。実際には、各スライスの厚みを決定する要件としては、各吐出ノズルからの吐出可能な最小限の単位吐出量やローラ部25のローラの上下方向における偏心によるばらつき等によって、設定可能な最小の厚みが決定される。このような観点に基づいて設定された値をスライスの最小値として、後は、ユーザが造形物に対して、求める、例えば、造形精度や造形速度の観点から各スライス量を最終的に決定できる。つまり、ユーザが造形精度を優先することを選択すれば、上述したスライス最小値又はその近傍の値にて各スライス量を決定し、一方造形速度を優先すれば、最低限の造形精度を維持した各スライス量を決定することができる。または、別の方法としては、造形精度と造形速度の比率をユーザに感覚的に選択させる方法や、ユーザに許容可能な最大造形時間を入力させることにより、いくつかの造形時間と造形精度の組み合わせを候補として表示し、その中からユーザが好む条件を選択させることも可能である。
【0028】
また、一つのスライスデータに対する造形行為は、少なくともヘッド部20をX方向(ヘッド部20の主走査方向)に往復動作する際の少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって吐出させ、造形プレート40上に吐出された造形物が未硬化の状態にて、少なくとも往路又は復路にてその未硬化の造形物の表面を平滑化するためにローラ部25を作用させると共に、平滑化された造形物の表面に対して、硬化手段24から特定波長の光を照射することにより、造形物を硬化させる一連のステップを少なくとも一回行うことで行われるが、この回数は、スライスデータの厚みや要求される造形精度によって自動的に変更されることはいうまでもない。なお、造形に用いる造形材料が、所定の温度によって硬化するものであれば、本発明においては硬化手段24を冷却または加熱手段とすることもでき、また自然硬化できる場合には硬化手段を省略することもできる。
【0029】
一方、また少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から吐出され、造形プレート40上に形成される一回の最大の厚みは、吐出された液滴の着弾後の断面形状が略円形を留めることが可能な単位吐出量によって決まる。
(造形プレート40)
【0030】
造形プレート40は、Z方向駆動部32によって昇降自在としている。一スライスが形成されると、制御手段10によってZ方向駆動部32が制御され、造形プレート40は一スライス分の厚さに相当する距離だけ降下する。そして上記と同様な動作を繰り返し行うことにより一スライス目の上側(上表面)に新たなスライスが積層される。このように連続的に作り出された幾層もの薄いスライスが積層されて造形物が造形される。
【0031】
また、造形物がZ方向(つまり高さ方向)において下方に位置する造形部分よりX−Y平面で張り出した、いわゆるオーバーハング形状を有する場合には、コンピュータPCにおいて造形物をデータ化する際に必要に応じてオーバーハング支持部形状が付加される。言い換えれば、オーバーハング形状を有する造形物とは、既に成形されたモデル材のスライスが存在しない部分の上表面に新たなモデル材のスライスが成形される部分(オーバーハング部)を有する造形物である。そして制御手段10は、最終造形物を構成するモデル材MAの造形と同時に、そのオーバーハング支持部形状に基づいて、オーバーハング支持部SBを造形する。具体的には、モデル材MAとは別のサポート材SAを、サポート材吐出ノズル22から小滴として吐出させることにより、オーバーハング支持部SBを形成する。造形後に、オーバーハング支持部SBを構成するサポート材SAを除去することで、目的の三次元造形物を得ることができる。
【0032】
ヘッド部20は、図3の平面図に示すように、ヘッド移動手段30により水平方向、すなわちXY方向に移動される。ヘッド部20は、図において上下にそれぞれ配置された一対のX方向(主走査方向)ガイド機構であるX方向移動レール43に支持される。ヘッド部20を支持する基台側には、X方向への駆動部(図示せず)が、一方のX方向移動レール43に沿って設けられている。また、ヘッド部20をX方向移動レール43上に載置する門型のフレームに、ヘッド部20をY方向(副走査方向)に移動させるためのY方向移動レール44が設けられる。またヘッド部20をY方向移動レール44に沿って駆動するための駆動部(図示せず)が載置される。これらの駆動部によってヘッド部20は、XならびにY方向に移動することが可能となっている。
【0033】
さらに造形プレート40が、図1に示すようにプレート昇降手段(Z方向駆動部32)によって高さ方向、すなわちZ方向に移動される。これによって、ヘッド部20と造形プレート40の相対高さを変更でき、立体的な造形が可能となる。より詳細には、まずヘッド部20は、ヘッド移動手段30によりモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出するために、X方向に往復動作され、各吐出ノズル21、22に各々設けられる複数のY方向に伸びるオリフィスから、モデル材MA及びサポート材SAが吐出される。さらに、図3に示すように、各吐出ノズル21、22のY方向の幅が、造形プレート40上の造形可能なY方向の幅より小さい場合で、且つ造形用のモデルデータのY方向の幅が、Y方向に伸びるオリフィスの全長より大きい場合は、各吐出ノズル21、22の所定の位置におけるX方向の往復動作の後、Y方向に各吐出ノズル21、22を所定量シフトさせ、その位置でのX方向の往復走査と共に、モデル材MA及びサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出させることを繰り返すことにより、設定された全ての造形データに対応した造形物の生成を行う。
【0034】
なお図1の例では、Z方向駆動部32として造形プレート40を昇降させるプレート昇降手段を用いているが、この例に限られず、図2に示す三次元造形装置2’のように、造形プレート40側を高さ方向に固定し、ヘッド部側をZ方向に移動させるZ方向駆動部32’を採用することもできる。また、XY方向への移動も、ヘッド部側を固定して、造形プレート側を移動させてもよい。また、上述したような、ヘッド部20のY方向へのシフトは、各ノズルの幅を、実質的に造形プレート40の造形可能なY方向の幅と同じにすれば、その必要はないが、その際においても、例えばノズルに設けられるオリフィスの間隔で決定される造形物のY方向の解像度を高める目的として、ヘッド部20のY方向へのシフトにより、各オリフィスが、先の造形時におけるオリフィスとオリフィスの間に位置するようにシフトさせてもよい。
(制御手段10)
【0035】
制御手段10は、造形材の吐出パターンを制御する。すなわちモデル材MA及びサポート材SAを、X方向における往復走査の内、少なくとも往路又は復路の一方にて造形材吐出手段により造形プレート40上に吐出させながら、ヘッド部20をX方向に往復走査させて、造形材吐出手段により造形材が造形プレート40上に吐出された後で、且つ往路又は復路の少なくともいずれか一方で、モデル材MA及びサポート材SAに対して硬化手段24で硬化させることにより、スライスを生成し、高さ方向に造形プレート40とヘッド部20の相対位置を移動させて、スライスの積層を繰り返すことにより造形を実行する。なお、詳細は後述するが、ローラ部25による造形材表面の平滑化は、造形材吐出手段により造形材が造形プレート40上に吐出された後で、且つ硬化手段24にて造形材の表面が硬化させる前に、往路又は復路の少なくともいずれか一方で、行われる。
【0036】
この制御手段10は、一回のX方向への往復走査でモデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方の造形材を吐出して、ローラ部25による造形材表面の平滑化と余剰分の除去を行い、更に硬化手段24により硬化させてから、次回以降の往復走査で、吐出されなかった他方の造形材を吐出して、造形材表面の平滑化を行い、硬化させる。これら一連の工程を少なくとも一回行うことにより、一枚のスライスの生成を行う。いうまでもなく、一層のスライスデータに対応した上記一連の工程は、例えばユーザの求める最終的なモデルの表面精度や造形時間に応じて、複数回繰り返すことが含まれる。これにより、モデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方を未硬化の状態でその表面を平滑化し、そして硬化させた後、他方を吐出することで個別に硬化でき、これらモデル材MAとサポート材SAの界面における混合を効果的に回避できる利点が得られる。
【0037】
なお、この例では先にモデル材MAを吐出し、次いでサポート材SAを吐出させる例を説明したが、逆にサポート材を先に吐出させ、次いでモデル材を吐出させてもよい。また、この例ではいずれか一方の造形材をまず吐出して、これを硬化させた後に、他方の造形材を吐出して硬化させるという、モデル材とサポート材を個別に吐出、硬化させて造形する方法を説明した。ただ、この方法に限られず、モデル材とサポート材を同時に吐出させることも可能である。
(造形材)
【0038】
上述の通り、造形材には、最終的な造形物となるモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAが用いられる。
(硬化手段24)
【0039】
モデル材MAには、光硬化樹脂、例えば紫外線硬化樹脂が使用できる。この場合、硬化手段24は少なくともモデル材MAの材料が反応して硬化する特定波長を含む光を照射する光照射手段であり、例えば紫外線ランプ等の紫外線照射手段である。紫外光ランプには、ハロゲンランプや水銀灯、LED等が利用できる。またこの例では、サポート材SAも紫外線硬化樹脂としている。同じ波長の紫外線で硬化する紫外線硬化樹脂を使用する場合は、同じ紫外線照射手段を利用でき、光源を共通化できる利点が得られる。
(モデル材MA)
【0040】
またモデル材MAとして、熱可塑性樹脂を使用することもできる。この場合、硬化手段24は、冷却手段となる。なおモデル材とサポート材にいずれも熱可塑性樹脂を使用する場合は、モデル材の融点をサポート材の融点よりも高いものを採用することにより、積層完了後に造形物をサポート材の融点より高く、モデル材の融点より低い温度に加熱、保温することにより、サポート材を溶融除去することができる。さらに、モデル材とサポート材の一方を光硬化樹脂、他方を熱可塑性樹脂とすることもできる。
【0041】
あるいは、硬化材との化学反応により硬化可能な材料をモデル材に用いることもできる。さらにモデル材は、粘度や表面張力等の噴射特性を調整するために、必要に応じて液体改質剤を混合してもよい。また温度調整によって噴射特性を変更することもできる。モデル材の他の例としては、紫外線フォトポリマー、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン等が挙げられる。
(サポート材SA)
【0042】
サポート材SAは、基本的には、上述したモデル材と同様な材料を用いることができる。ただ、サポート材は最終的に容易に除去できる材料としたいとの観点から、モデル材と類似した材料に更に除去可能な材料を添加することが望ましい。このため、具体的には水膨潤ゲル、ワックス、熱可塑性樹脂、水溶性材料、溶解性材料等が使用できる。サポート材SAの除去には、サポート材の性質に応じて水溶、加熱、化学反応、水圧洗浄等の動力洗浄や電磁波の照射により溶解させる、熱膨張差を利用した分離等の方法が適宜利用できる。
(ヘッド部20)
【0043】
図4に、インクジェット方式の三次元造形装置のヘッド部20の一例を示す。この図に示すヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAとサポート材SAの吐出を個別に行う専用の吐出ノズルを設けている。具体的には、モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、平行に離間させて備えている。各吐出ノズルは、2つのノズル列23を設けており、これらのノズル列23は、図5の平面図に示すように半ノズル分ずらして配置することで、分解能を向上させている。またオフセット状態に配置された各ノズル列23は、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22とで、それぞれ同一ライン上に一致するように配置することで、モデル材とサポート材の分解能を一致させている。
【0044】
ヘッド部20では、左からサポート材吐出ノズル22、モデル材吐出ノズル21、ローラ部25、硬化手段24が設けられている。各吐出ノズルは、圧電素子方式のインクジェットプリントヘッドの要領で、インク状の造形材を吐出する。また造形材は、吐出ノズルから吐出可能な粘度に調整される。
【0045】
図4の例では、ヘッド部20が先にモデル材MAを吐出した後、サポート材SAを吐出している。またヘッド部20は往路(図において左から右)で造形材を吐出し、復路(図において右から左)では造形材の最表面からローラ部25にて余剰樹脂を掻き取り、平滑化を図った後、平滑化された樹脂を硬化手段24で硬化させている。
【0046】
さらに図4の例に示すヘッド部20は、吐出ノズルを設けた吐出ヘッドユニット20Aと、ローラ部及び硬化手段を設けた回収硬化ヘッドユニット20Bとに分割されている。吐出ヘッドユニット20Aと回収硬化ヘッドユニット20Bとの間には、ヘッド部20を移動させるためのY方向移動レール44を通すレールガイド45が設けられている。ヘッド部20は、図3の平面図に示すように、Y方向移動レール44に沿ってY方向に往復移動する。さらにY方向移動レール44の両端は、ヘッド移動手段30で支承されている。ヘッド移動手段30は、造形プレート40を上下方向に跨ぐように、造形プレートの上下に沿って平行に設けた一対のX方向移動レール43に沿ってX方向に往復移動する。これによってヘッド部20は、造形プレート上でXY平面上の任意の位置に移動できる。
(余剰樹脂回収機構)
【0047】
ヘッド部20はさらに、余剰に吐出された樹脂を回収するための余剰樹脂回収機構を備えている。すなわち、インクジェット方式の三次元造型機においては、精度の良い造形を行うために、余分にモデル材やサポート材等の造形材を吐出し、造形プレート40上に吐出された樹脂の余剰分を、余剰樹脂回収機構で回収しながら造形を行っている。このような余剰樹脂回収機構を図6の模式図に示す。この図に示す余剰樹脂回収機構は、吐出されたモデル材MA及びサポート材SAの表面を未硬化の状態で押圧し、造形材の余剰分を除去し、かつ造形材表面を平滑化するためのローラ部25で構成される。図6の例では、吐出されたモデル材MAの表面を、未硬化の状態でローラ本体26で均す状態を示している。
(ローラ部25)
【0048】
ローラ部25は、回転体であるローラ本体26と、ローラ本体26の表面に対して突出するように配置されたブレード27と、ブレード27で掻き取られた造形材を溜めるバス28と、バス28に溜まった造形材を排出する吸引パイプ29とを備えている。ローラ本体26は回転自在に支承されており、未硬化の樹脂を回転しながら押圧することにより、樹脂の表面を均しつつ、余剰分を掻き取って回収する。このローラ本体26はヘッド部20の進行方向に対して逆回転(図6において時計回り)に回転され、未硬化の造形材を掻き上げる。掻き上げられた造形材は、ローラ本体26に付着してブレード27まで運ばれた後、ブレード27で掻き取られてバス28に案内される。このためブレード27は、ローラ本体26が樹脂表面に当接する際の進行方向に対して、ローラ本体26の後方の位置に配置され、バス28に向かって下り勾配の姿勢で固定される。同様に、バス(槽)28もローラ本体26に対してブレート27と同様な側に配置され、且つブレード27の下方に配置されている。また吸引パイプ29はポンプに接続されており、バス28に溜まった造形材を吸引して排出する。この例では、ローラ本体26の外形をφ20mm程度、回転速度を10回転/s程度としている。
【0049】
このローラ部25は、図においてヘッド部20が右から左に進行する際に、掻き取りを行う。換言すると、左から右にヘッド部20が進行しつつ、スライスデータに基づいて、適切な位置にモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から各々モデル材MAとサポート材SAを吐出する際は、ローラ部25は造形材に接触せず、同様に硬化手段24の光源からの照明も行われない。図においてヘッド部20の左から右への主走査方向の例えでは、往路にて少なくとも造形材の吐出が各ノズル21、22から実行された後の右から左方向への復路としての主走査方向において、上述したローラ部25の掻き取り動作が実行されると共に、少なくともモデル材MAを硬化するための光を照射する光源としての硬化手段24も動作することになる。
【0050】
なお硬化手段24の光源は、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22より進行方向に対して前方に配置されるため、光源を点灯していても、吐出され、ローラ部25によって平滑化される前の流動可能な樹脂に照射を行うことはない。その一方で、硬化手段24の光源を積極的に必要なタイミング以外は消灯することはもちろん可能である。また一方で、硬化手段を複数設ける構成としてもよい。例えば、硬化手段として第一硬化手段と第二硬化手段とを設け、吐出後の樹脂に対して第一硬化手段で予備的に硬化を行い、次いで第二硬化手段で樹脂をより一層硬化させる。このように硬化手段を多段構成とすることで、樹脂の硬化能力を十分に発揮させることができる。またこのような場合において、第一硬化手段が予備的な硬化に留まり、第一硬化手段を経ても樹脂に未だ十分な流動性が残っている場合は、第一硬化手段による予備硬化後に、ローラ部で樹脂余剰分の掻き取りを行い、その後に第二硬化手段で硬化を行うように構成してもよい。すなわち、すべての硬化手段がローラ部の次段側に配置されることを必ずしも要しない。
【0051】
図1、図4に示すように、ヘッド部20の進行方向に対してローラ部25は硬化手段24の前方、図において左側に配置されている。この結果、先に未硬化の造形材をローラ部25で掻き取った後、硬化手段24が造形材を硬化させる。このような配置によって、同一のパスで造形材の掻き取りと硬化を行うことができ、効率よく処理できる利点が得られる。
【0052】
なお、X軸方向に沿うサポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出ノズル21、ローラ部25及び硬化手段24の配列の基本的な考え方は、以下の通りである。ヘッド部20の主走査方向の往路方向をベースに考えると、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21は、いずれか一方が他方の前方に位置すればよい。このようなノズルのレイアウトに対して、ローラ部25ならびに硬化手段24は、ローラの作用を往路で行いたい場合は、往路進行方向において、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21の後方にローラ部25、硬化手段24の順で配置し、ローラの作用を復路で行いたい場合は、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21の復路の進行方向において後方にローラ部25、硬化手段24の順で配置すればよい。
【0053】
また、上記実施例においては、ヘッド部20から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行った後、硬化手段24によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためのUV光を照射する方法を採用した。
【0054】
ただ、この構成以外にも、上述の通り硬化手段を多段で構成することもできる。例えばヘッド部20から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、余剰樹脂層を含む最上層に対して、硬化手段24によって一旦光を照射した後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行い、その後再度硬化手段24によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためUV光を照射する方法もある。この場合、硬化手段24は、ヘッド部20において、X方向、つまりヘッド部20の主走査方向で、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21を挟む前後方向に一対の硬化手段を設けることにより、上述のような二度の照射を行うことができる。
【0055】
また、この場合、一度目の照射と二度目の照射を合わせて、最終的に所望する樹脂の硬化の程度を達成するようになるため、一度目の照射後の樹脂は硬化状態ではなく、まだその後のローラ部25による掻き取り動作のために、流動可能な、半硬化状態である。このため、この場合においても、ローラ部25による樹脂の掻き取り前の最上層の状態は、未硬化または流動可能な状態と表現することとする。
(樹脂の経路)
【0056】
図7に、造形材である樹脂の搬送経路46をブロック図で示している。この図に示すように、三次元造形装置は、異物捕集フィルタ51と、造形材カートリッジ47と、脱気圧力開放弁62とを備えている。異物捕集フィルタ51は、樹脂中に含まれる異物を捕集する。このような異物捕集フィルタ51として、例えば10μmメッシュのフィルタを用いることができる。
【0057】
造形材カートリッジ47は、樹脂毎に個別の搬送経路46に接続される。ここでは造形材カートリッジ47は、モデル材用とサポート材用にそれぞれ、モデル材用カートリッジ47Aと、サポート材用カートリッジ47Bが用意されており、モデル材用搬送経路46Aとサポート材用搬送経路46Bにそれぞれ接続されている。また、モデル材用カートリッジ47Aと、サポート材用カートリッジ47Bは、複数本用意することが好ましい。これにより、造形中に一の造形材カートリッジ47が空になっても、速やかに他方の造形材カートリッジ47から樹脂を供給できる。図7の例では、モデル材用カートリッジ47Aと、サポート材用カートリッジ47Bはそれぞれ2本接続されており、各々の造形材カートリッジ47は電磁弁49を介して樹脂搬送経路46と接続される。さらに、各樹脂搬送経路46はそれぞれ、供給ポンプ50と接続されており、供給ポンプ50を介してヘッド部20と接続される。モデル材用搬送経路46Aは、モデル材用供給ポンプ50Aを介して、ヘッド部20のモデル材吐出ノズルと接続される。またサポート材用搬送経路46Bは、サポート材用供給ポンプ50Bを介してサポート材吐出ノズルと接続される。
【0058】
またヘッド部20は、各樹脂毎に異物捕集フィルタ51と脱気モジュール52とリザーブタンク48と吐出ノズルを備えている。図7の例では、ヘッド部20の内、吐出ノズルを設けた吐出ヘッドユニット20Aに、これら異物捕集フィルタ51、脱気モジュール52、リザーブタンク48が配置される。ここでは、モデル材用にモデル材用異物捕集フィルタ51Aと、モデル材用脱気モジュール52Aと、モデル材用リザーブタンク48Aと、モデル材吐出ノズルを設け、またサポート材用にサポート材用異物捕集フィルタ51Bと、サポート材用脱気モジュール52Bと、サポート材用リザーブタンク48Bと、サポート材吐出ノズルを設けている。図においてモデル材は、モデル材用搬送経路46Aを通じて、上から下方向、すなわちモデル材用異物捕集フィルタ51A、モデル材用脱気モジュール52A、モデル材用リザーブタンク48Aを通じて、モデル材吐出ヘッドから吐出される。サポート材も同様に、サポート材用搬送経路46Bを通じて、上から下方向、すなわちサポート材用異物捕集フィルタ51B、サポート材用脱気モジュール52B、サポート材用リザーブタンク48Bを通じて、サポート材吐出ヘッドから吐出される。
(気泡混入対策)
【0059】
樹脂を噴射するディスペンサにおいて、樹脂中に空気が混入していると、液滴を正常に生成することができなくなる。樹脂中に空気が存在すると、本来液を押し出すために用いられるべき圧力が空気を圧縮させる力として作用する結果、正常な液滴を生成することができなくなり、吐出ノズルから全く液滴が出ない不吐となる。また、樹脂中の気泡のみならず、ディスペンサによる液滴生成過程の特徴として、樹脂には負圧がかかり、キャビテーション現象が生じて、樹脂内に溶けている空気が気泡化し不吐を生じさせることもある。
【0060】
一般に、樹脂中に気泡や溶存気体が混入する要因としては、(1)樹脂そのものに既に混入している場合、(2)造形材カートリッジを挿抜する際に混入する場合、(3)樹脂の搬送経路中のチューブを通って混入する場合、の3つが考えられる。よって、それぞれの場合毎に、気泡等の混入対策を講じることが好ましい。
【0061】
まず、(1)樹脂そのものに既に混入している場合については、樹脂製造過程及び造形材カートリッジに樹脂を充填する過程で、それぞれ空気を抜くよう対策を講じることが考えられる。次に、(2)造形材カートリッジを挿抜する際に混入するケースについては、造形材カートリッジの挿抜構造を改良して空気を入り難くすることが考えられる。そして(3)樹脂の搬送経路中のチューブを通って混入する気泡については、樹脂が搬送経路中に長時間滞留することを可能な限り抑制することが考えられる。
【0062】
しかしながら、このような対策を施しても、気泡や溶存気体は樹脂中に残留して、吐出ノズルの不吐を生じて造形不良を引き起こすことがある。このような対策として、樹脂中に気泡が一定の確率で存在することを前提として、造形中に定期的に、吐出ノズル近辺で留まっている空気を樹脂と共に外部へ放出するパージと呼ばれる作業を自動的に行うことが考えられる。具体的にはパージ処理は、各リザーブタンク48Aならびに48Bに接続された図示しないポンプが、造形の途中に定期的に移行するメンテナンスモード時に、各リザーブタンク48A、48B内の圧力を上げることにより、吐出ノズル近辺における溜まっている空気を樹脂と共に外部に放出することにより行われる。しかしながら、パージ作業を頻繁に行うことは樹脂を無駄に排出することとなる。このため、パージを行う時間間隔をできるだけ長くする必要がある。
【0063】
一方で三次元造形装置において、積層される造形材の各層でヘッド部をランダムに走査させることで、仮に吐出ノズルの数本が不吐となっても、その影響が蓄積されないような対策を行うことも考えられる。しかしながら、より造形精度が求められる用途においては、このような数本の吐出ノズルが不吐となっても、造形物の精度に影響を与え、場合によっては不良とみなされる場合もあった。
(脱気モジュール52)
【0064】
これに対して本実施例に係る三次元造形装置は、樹脂中の気体を脱気する脱気モジュール52を、樹脂の搬送経路46中で造形材吐出手段の手前に設けている。これによって、樹脂中から気泡を排除し、気泡に起因する吐出不良から生じる造形不良を低減できる。
(脱気モジュール52の配置位置)
【0065】
この脱気モジュール52は、好ましくは異物捕集フィルタ51の後に配置する。異物捕集フィルタ51は、樹脂中に混入した異物を捕集すると共に、樹脂中に含まれる気泡を細かく分解する作用も有する。よって、この異物捕集フィルタ51の後段に脱気モジュール52を配置することで、異物捕集フィルタ51によって細かく分解された気泡を確実に脱気して、脱気の効果を高めることができる。
【0066】
また脱気モジュール52は、樹脂搬送経路46上であれば、いずれの位置でも配置できるが、上述の通りヘッド部20に設けることが好ましい。造形プレート上をX、Y方向に移動するヘッド部20に脱気モジュール52を搭載することで、上述した気泡混入要因(3)の対策である、樹脂の長時間滞留を抑制することが可能となる。
【0067】
さらに、脱気モジュール52を異物捕集フィルタ51の後に配置することで、気泡混入要因(2)の対策も講じている。本発明者らの研究開発によれば、造形材カートリッジを挿抜する際に混入する気泡は、上記(1)や(3)に比べてサイズが大きいことが明らかとなった。このような大きな気泡を取り除くためには、大型の脱気モジュールが必要となる。しかしながら、大型の脱気モジュールはヘッド部に組み込むことが困難で、装置自体の大型化を招く。一方、樹脂中の気泡は、異物捕集フィルタを通過すると、細かく粉砕されることが判明した。そこで、このような異物捕集フィルタ51の後段に脱気モジュール52を配置することによって、異物捕集フィルタ51で細かく粉砕された気泡を脱気するようにすることで、比較的小型の脱気モジュール52でも気泡を効果的に取り除くことができるようになり、ヘッド部20への搭載を可能としている。
【0068】
図8に、図4のヘッド部20において、造形材吐出ノズルの背面から見た斜視図を示す。この図の例では、ヘッド部20の内部に異物捕集フィルタ51と脱気モジュール52とを、サポート材用とモデル材用にそれぞれ用意し、固定板65に固定している。なお図7のブロック図とは、異物捕集フィルタ51と脱気モジュール52を配置した姿勢が上下逆となっている。これは、異物捕集フィルタ51内に空気が留まるのを極力防止するためである。具体的には、モデル材を搬送するモデル材搬送チューブ66Aに関しては、その流入側から流出側に向かって、モデル材用脱気モジュール52Aとモデル材用異物捕集フィルタ51Aを接続している。同様にサポート材を搬送するサポート材搬送チューブ66Bに関しては、その流入側から流出側に向かって、サポート材用脱気モジュール52Bとサポート材用異物捕集フィルタ51Bを接続している。さらに各モデル材用脱気モジュール52A、サポート材用脱気モジュール52Bはそれぞれ、モデル材用脱気経路57A、サポート材用脱気経路57Bと接続されている。またこれらモデル材用脱気経路57Aとサポート材用脱気経路57Bとは、図7に示すように共通の脱気経路57と接続されている。脱気経路57は、その先端を分岐して、一方を脱気用負圧発生ポンプ63と接続し、他方を脱気圧力開放弁62と接続している。脱気用負圧発生ポンプ63によって脱気経路57を吸引することで、脱気経路57内を負圧とできる。また、定期的に脱気圧力開放弁62を開放することで、脱気経路57内に空気の流れを生じさせている。
(脱気モジュール52の詳細)
【0069】
ここで脱気モジュール52の外観図を図9に、その内部構造を示す斜視図を図10に、その断面図を図11に、また中空糸60の拡大図を図12に、それぞれ示す。これらの図に示す脱気モジュール52は、モデル材用脱気モジュール52Aを示しているが、サポート材用脱気モジュール52Bも同様の構成としている。モデル材用脱気モジュール52Aは、図9等において円筒状の外形を有する脱気モジュール本体ケース53の上面及び下面に、モデル材用搬送経路46Aと接続するための開口部として、それぞれ樹脂流出口55(上面)、樹脂流入口54(下面)を開口している。このモデル材用脱気モジュール52Aは、樹脂流入口54及び樹脂流出口55をモデル材用搬送経路46Aと接続し、図においてモデル材MAをその中心において下方から上方に流しつつ、モデル材MAに含まれる気泡を側面に開口された脱気圧力口56から排出している。
(中空糸60)
【0070】
脱気モジュール本体ケース53内部には、図10に示すように中空糸60がらせん状に配置されている。中空糸60は半透膜で内部を中空状としており、脱気用負圧発生ポンプ63によって負圧とした脱気経路57と連通させている。このような構成によって、中空糸60の外表面に樹脂であるモデル材MAを接触させると、図12に示すように内部圧力を負圧状態とした中空糸60の内面側に、樹脂内部の気泡AHや溶存気体が引き寄せられ、これらの気体成分のみが半透膜を通過して中空糸60内部へ移動することで、モデル材MA中の気泡AHや溶存気体を除去することができる。このように中空糸構造を採用することで、従来の平面状とした膜構造の脱気モジュールに比べて、液体状の樹脂が半透膜と接する面積を格段に増やして、脱気率を向上させることができる。
【0071】
また、中空糸60中の脱気経路57は、単に負圧とするのみならず、その経路内部で空気の流れを生じさせている。特に半透膜を通り抜ける物質には、空気成分のみならず、気化した樹脂成分も含まれている。このため、空気の流れが無い状態を長時間継続すると、中空糸60の内部に液化した樹脂が再度発生する場合がある。すなわち、気化した樹脂成分が、飽和蒸気量を超えると凝集し始める結果、脱気経路の吸気機能が低下して半透膜から十分に気体を移動させることができなくなり、脱気効率が著しく低下する。そこで、本実施例では空気流を脱気経路57内に生じさせることで、気化成分が脱気経路内に長時間滞留しないようにしている。
【0072】
一方、脱気経路内に空気の流れを生じさせるため、例えば常時空気を流す方法も考えられる。しかしながら、この方法では脱気経路が複雑になるという問題がある。そこで本実施例では、空気流を常時生じさせるのでなく、間欠的に脱気経路57を大気圧に開放し、空気の流れを一時的に発生させている。この方法は、脱気経路57中に脱気圧力開放弁62を設けることで、容易に実現できる。図7に示す脱気圧力開放弁62は、中空糸60の開放された一端を一定時間毎、例えば15秒に一回、開放している。
(中間パイプ58)
【0073】
一方で、樹脂流入口54は、脱気モジュール本体ケース53の円筒状の中心軸に沿って中間まで延長された中間パイプ58と連通される。中間パイプ58の端面は閉塞しており、その一方で中間パイプ58の円周側には複数の開口窓58aを設けている。また中間パイプ58の周囲には、らせん状の中空糸60が配置されているため、開口窓58aから脱気モジュール本体ケース53内に放射状に排出されるモデル材MAは、周囲に配置された中空糸60の表面と広い面積で接触される。また中空糸60の一方の端縁も閉塞されており、他方の端縁は開口され、脱気圧力口56と連通している。さらに中空糸60の開口端側は、封止材59によって他端の閉塞端側と隔離されている。これによって、モデル材MAが脱気経路57側に流入することが阻止され、また後述するようにモデル材MAから脱気された気泡AHなどが再度樹脂側に溶出することが回避される。なお、開口窓58aから排出されるモデル材MAが中空糸60に触れることなく直接樹脂流出口55に流れることを阻止するために、開口窓58aの上部から中間パイプ58の閉塞端面にかけて、らせん状の中空糸60の内面との間の空間は第二封止材59Bによって隔離、分断されている。
(脱気経路57)
【0074】
また脱気圧力口56は、図7に示すように脱気経路57と連通されており、その先端は脱気用負圧発生ポンプ63と接続している。脱気用負圧発生ポンプ63によって脱気経路57が吸引されることで、脱気経路57を通じて脱気圧力口56から中空糸60内は負圧となっている。さらに脱気経路57は分岐されて脱気圧力開放弁62と接続されている。
(脱気モジュール52の脱気手順)
【0075】
ここで脱気モジュール52でモデル材MAを脱気する手順を、図11に基づいて説明する。図11において、モデル材MAの流れは実線の矢印で、脱気される空気の流れは破線の矢印で、それぞれ示している。樹脂流入口54より脱気モジュール本体ケース53内の中心に下方から流入されるモデル材MAは、中間部分から側面側に放射状に排出され、らせん状に配置される中空糸60の壁面に接触される。中空糸60の壁面にモデル材MAが触れると、モデル材MAの樹脂中に溶存する気泡AHは、中空糸60の壁面を通過して、中空糸60内に移動する。この結果、中空糸60内に移動した気泡AHは、脱気用負圧発生ポンプ63によって負圧とされた脱気経路57に吸引され、脱気圧力開放弁62から排気される。一方で、脱気されたモデル材MAの樹脂は、中空糸60の隙間から上方の樹脂流出口55に移動して、脱気モジュール52から排出される。このようにして、樹脂を脱気モジュール52の底面中心から流入させつつ、気泡AH等を分離させて気体成分は側面から抜き取り、脱気された樹脂成分のみが上方から排出される。
【0076】
なお、以上の例では半透膜中空糸を用いた脱気モジュールを使用したが、脱気モジュールはこの構成に限定されるものでなく、他の既知の脱気モジュールが適宜利用できる。また脱気方法も、上記の原理を用いた方法に限定されるものでなく、既知の方法が採用できることもいうまでもない。
(実施例2)
【0077】
また、脱気モジュールの配置位置は、上述の例に限られない。異物捕集フィルタ51の後段で造形材吐出ノズルの前段に配置すればよく、例えば、図13に示す実施例2のように、造形材用リザーブタンクであるモデル材用リザーブタンク48Aとサポート材用リザーブタンク48Bの後にそれぞれモデル材用脱気モジュール52A、サポート材用脱気モジュール52Bを設けてもよい。この構成によれば、ノズル吐出口により近い位置に脱気モジュールが配置されているので、空気が流入する可能性のある部位を減らすことができ、ノズルに供給される造形材の脱気効果を更に高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の三次元造形装置及び三次元造形方法は、インクジェット方式で紫外線硬化樹脂を積層した三次元造形に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0079】
100…三次元造形システム
1…設定データ作成装置
2、2’…三次元造形装置
10…制御手段
12…ローラ回転速度制御手段
13…吐出制御手段
20…ヘッド部;20A…吐出ヘッドユニット;20B…回収硬化ヘッドユニット
21…モデル材吐出ノズル
22…サポート材吐出ノズル
23…ノズル列;23a…吐出ノズル先端
24…硬化手段
25…ローラ部
26…ローラ本体
27…ブレード
28…バス
29…吸引パイプ
30…ヘッド移動手段
31…XY方向駆動部
32、32’…Z方向駆動部
40…造形プレート
43…X方向移動レール
44…Y方向移動レール
45…レールガイド
46…搬送経路;46A…モデル材用搬送経路;46B…サポート材用搬送経路
47…造形材カートリッジ;47A…モデル材用カートリッジ;47B…サポート材用カートリッジ
48…リザーブタンク;48A…モデル材用リザーブタンク;48B…サポート材用リザーブタンク
49…電磁弁
50…供給ポンプ;50A…モデル材用供給ポンプ;50B…サポート材用供給ポンプ
51…異物捕集フィルタ
51A…モデル材用異物捕集フィルタ;51B…サポート材用異物捕集フィルタ
52…脱気モジュール
52A…モデル材用脱気モジュール;52B…サポート材用脱気モジュール
53…脱気モジュール本体ケース
54…樹脂流入口
55…樹脂流出口
56…脱気圧力口
57…脱気経路;57A…モデル材用脱気経路;57B…サポート材用脱気経路
58…中間パイプ;58a…開口窓
59…封止材;59B…第二封止材
60…中空糸
62…脱気圧力開放弁
63…脱気用負圧発生ポンプ
65…固定板
66A…モデル材搬送チューブ;66B…サポート材搬送チューブ
MA…モデル材
SA…サポート材
SB…オーバーハング支持部
AH…気泡
DL…液滴
PC…コンピュータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスペンサで立体造形物を作製する三次元造形装置及び三次元造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、造形物の基礎データである3次元データを、コンピュータの画面上で任意の姿勢に設定し、設定された姿勢に基づいて高さ方向に平行な複数の面で切断した各断面毎のデータを生成し、この各層に関する二次元データに基づいて、樹脂を順次積層することよって立体造形を行い、造形物の三次元モデルとなる造形物を生成する装置が知られている。
【0003】
製品開発において試作等に用いられるラピッド・プロトタイピング(Rapid Prototyping:RP)の分野で、三次元造型が可能な積層造形法が利用されている。積層造形法としては、積層造形法は、製品の三次元CADデータをスライスし、薄板を重ね合わせたようなものを製造の元データとして作成し、それに粉体、樹脂、鋼板、紙などの材料を積層して試作品を作成する。このような積層造形法としては、インクジェット法、粉末法、光造形法、シート積層法、押し出し法等が知られている。この内、インクジェット法は、液化した樹脂を噴射した後、紫外光(UV)を照射したり、冷却するなどによって層を硬化させて造形物を形成する。
【0004】
インクジェット法のような樹脂を噴射して積層する方式では、ディスペンサとして、樹脂を吐出する吐出ノズルを備えている。吐出ノズルは、ピエゾ電極を用いて、図14に示すように吐出ノズル先端23aを変形させて樹脂の液滴DLに圧力を印加して吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−535712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ディスペンサから吐出される樹脂中に空気が混入すると、樹脂の吐出に不良が生じる。すなわち、図15に示すように、ピエゾ電極により吐出ノズル先端23aが変形しても、空気の気泡AHが圧縮されてしまうため、樹脂の液滴DLが吐出されない、いわゆる不吐となったり、あるいは本来の液滴よりも小さな液滴の樹脂が吐出されるなど、所定の樹脂を吐出することができない状態となってしまう問題があった。
【0007】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、樹脂中に混入した気泡に起因する吐出不良を防止して、造形不良を回避可能とした三次元造形装置及び三次元造形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る三次元造形装置によれば、造形プレート40上に、造形材を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置であって、造形物を載置するための前記造形プレート40と、前記造形材を吐出するための造形材吐出手段と、前記造形材吐出手段を支承するヘッド部20と、前記ヘッド部20を移動させながら、前記造形材吐出手段による前記造形材の吐出を制御する制御手段10と、液体状の造形材と接触させて、該造形材中に含まれる気体を脱気するための脱気モジュール52と、造形材を蓄える交換式の造形材カートリッジ47と、前記造形材カートリッジ47から造形材吐出手段まで連通される液体状の造形材の搬送経路46中に配置され、該造形材中から異物を捕集するための異物捕集フィルタ51と、を備えており、前記脱気モジュール52が、前記異物捕集フィルタ51の後で、かつ造形材吐出手段の前に配置することができる。これにより、造形材の液中から脱気して、造形材吐出手段からの造形材の不吐や造形物の不良を回避し、精密な造形が実現できる。
【0009】
また第2の側面に係る三次元造形装置によれば、前記脱気モジュール52が、中空糸60で構成されており、前記中空糸60の内部を負圧とすることができる。これによって、負圧の中空糸の表面に造形材を接触させて、内部に気体成分を透過させて造形材の気体成分を効率よく分離できる。
【0010】
さらに第3の側面に係る三次元造形装置によれば、前記中空糸60の一端を閉塞し、他端を開放端としつつ、脱気用負圧発生ポンプ63と接続することができる。これにより、中空糸の内部を効率よく負圧とできる。
【0011】
さらにまた第4の側面に係る三次元造形装置によれば、さらに前記中空糸60の開放された一端を、所定のタイミングで開放するための脱気圧力開放弁62を備えることができる。これによって、中空糸内で気体を停滞させず、定期的な気体の流れを生じさせて、中空糸内部での液化を防止し、脱気率の低下を回避できる。
【0012】
さらにまた第5の側面に係る三次元造形装置によれば、前記異物捕集フィルタ51と脱気モジュール52とを、前記ヘッド部20に設けることができる。これにより、脱気モジュールを異物捕集フィルタの後段に配置することで脱気モジュールの小型化を可能とし、ヘッド部への配置を実現できる。
【0013】
さらにまた第6の側面に係る三次元造形装置によれば、前記異物捕集フィルタ51と脱気モジュール52とをモジュール化することができる。これにより、モジュール化した異物捕集フィルタと脱気モジュールを同時に交換でき、メンテナンス時等の作業性を高めることができる。
【0014】
さらにまた第7の側面に係る三次元造形装置によれば、前記造形材カートリッジ47を複数備えることができる。これにより、造形材を多く蓄えて連続運転時間を長くすると共に、一方の造形材カートリッジの交換中も、安定的に造形材を供給できる。加えて、このような造形材カートリッジの交換時に、大きな気体が造形材に混入することを抑制して、信頼性の高い造形が可能となる。
【0015】
さらにまた第8の側面に係る三次元造形装置によれば、さらに前記造形材を硬化させるための硬化手段24を備えており、前記ヘッド部20で前記硬化手段を支承すると共に、前記制御手段10が、前記ヘッド部20を移動させながら、前記造形材吐出手段による前記造形材の吐出及び硬化手段24による硬化を制御することができる。
【0016】
さらにまた第9の側面に係る三次元造形装置によれば、さらに前記ヘッド部20を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、前記ヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、を備え、前記制御手段10が、前記水平駆動手段で前記ヘッド部20を一方向に往復走査させて、前記造形材吐出手段により前記造形物を前記造形プレート40上に吐出させ、さらに前記硬化手段24により前記造形物を硬化させることができる。
【0017】
さらにまた第10の側面に係る三次元造形装置によれば、造形材が、最終的な造形物となるモデル材MAと、前記モデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAと、を含み、前記造形材吐出手段が、前記モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21、及び前記サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、それぞれ一方向に複数個配列させることができる。
【0018】
さらにまた第11の側面に係る三次元造形方法によれば、造形プレート40上に、造形材を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形方法であって、造形材を蓄える交換式の造形材カートリッジ47から、造形材の搬送経路46に造形材を供給する工程と、前記造形材の搬送経路46上に設けられた異物捕集フィルタ51を通じて、前記造形材中に含まれる異物を補足すると共に、該造形材中に含有される気体成分を粉砕する工程と、前記造形材の搬送経路46上において、前記異物捕集フィルタ51の後段に設けられた脱気モジュール52に造形材を通し、前記脱気モジュール52中に含まれる、内部を負圧とされた中空糸60と造形材とを接触させて、前記中空糸60中に造形材中の気体成分を取り込むことで脱気する工程と、前記脱気された造形材を、該造形材を吐出する造形材吐出手段により前記造形プレート40上に吐出させる工程と、を含むことができる。これにより、造形材の液中から脱気して、造形材吐出手段からの造形材の不吐や造形物の不良を回避し、精密な造形が実現できる。
【0019】
さらにまた第12の側面に係る三次元造形方法によれば、前記脱気モジュール52が、中空糸60で構成されており、前記中空糸60の内部を負圧とすることができる。これによって、負圧の中空糸の表面に造形材を接触させて、内部に気体成分を透過させて造形材の気体成分を効率よく分離できる。
【0020】
さらにまた第13の側面に係る三次元造形方法によれば、前記中空糸60の一端を閉塞し、他端を開放端としつつ、脱気用負圧発生ポンプ63と接続することができる。これにより、中空糸の内部を効率よく負圧とできる。
【0021】
さらにまた第14の側面に係る三次元造形方法によれば、前記中空糸60の開放された一端を、所定のタイミングで開放するための脱気圧力開放弁62を備えることができる。これによって、中空糸内で気体を停滞させず、定期的な気体の流れを生じさせて、中空糸内部での液化を防止し、脱気率の低下を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1に係る三次元造形装置を示すブロック図である。
【図2】変形例に係る三次元造形装置を示すブロック図である。
【図3】ヘッド部がXY方向に移動される様子を示す平面図である。
【図4】ヘッド部の外観を示す斜視図である。
【図5】図4のヘッド部で造形材を吐出する様子を示す平面図である。
【図6】ローラ部で造形材の余剰分を除去する状態を示す斜視図である。
【図7】樹脂の搬送経路を示すブロック図である。
【図8】図4のヘッド部の造形材吐出ノズルを背面から見た斜視図である。
【図9】脱気モジュールの外観を示す斜視図である。
【図10】図9の内部構造を示す斜視図である。
【図11】図10の断面図である。
【図12】図10の中空糸を示す拡大図である。
【図13】実施例2に係る三次元造形装置の搬送経路を示すブロック図である。
【図14】ピエゾ電極を用いてディスペンサから樹脂を吐出する様子を示す模式断面図である。
【図15】図14において樹脂中に気泡が含まれている場合に不吐を生じる様子を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための三次元造形装置及び三次元造形方法を例示するものであって、本発明は三次元造形装置及び三次元造形方法を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施例1)
【0024】
図1に、本発明の実施例1に係る三次元造形システム100のブロック図を示す。ここでは、三次元造形装置の一例として、インクジェット方式の三次元造形装置に適用する例を説明する。この三次元造形システム100は、造形材を流動状態でインクジェット方式によって吐出、硬化させ、これを積層することによって任意の造形物を製造するものである。造形材には、最終的な造形物を構成するモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支えるために造形され、最終的に除去されるサポート材SAとが利用される。
【0025】
図1に示す三次元造形システム100は、三次元造形装置2に造形データならびに造形条件である設定データを送出する設定データ作成装置1(図1ではコンピュータPC)と、三次元造形装置2で構成される。三次元造形装置2は、制御手段10と、ヘッド部20と、造形プレート40とを備える。ヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAを吐出するモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するサポート材吐出ノズル22を備えている。またこれらの吐出された造形材から余剰分を掻き取ることによりその時点での造形物の最上層の厚みの適正化を図ると共に、造形材の表面を平滑化するためのローラ部25と、造形材を硬化させる硬化手段24も、ヘッド部20に備えられる。さらにヘッド部20を水平方向において、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって、造形プレート40上の適切な位置に吐出させるために、往復走査するX方向と、このX方向に直交するY方向に走査させるための水平駆動手段、及びヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段として、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を備えている。ここで、Y方向とはモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズルが有する複数のオリフィスが配列した並び方向であり、X方向は水平面内においてこのY方向と直交する方向である。
【0026】
コンピュータPCは、三次元形状の造形物の基礎データ、例えば三次元CAD等で設計されたモデルデータの入力を外部から受けると、まずこのCADデータを、例えばSTL(Stereo Lithography Data)データに変換し、更にこのSTLデータを複数の薄い断面体にスライスして得られる断面データを生成し、そしてこのスライスデータを、一括又は各スライス層単位にて三次元造形装置2に対して送信を行う設定データ作成装置1として機能する。この際、三次元CAD等で設計されたモデルデータ(実際は、変換後のSTLデータ)の造形プレート40上における姿勢の決定に対応し、この姿勢におけるモデル材MAにて形成されるモデルを支持することが必要な空間又は箇所に対して、サポート材SAを設ける位置の設定が行われ、これらのデータを元に各層に対応するスライスデータが形成される。制御手段10は、ローラ回転速度制御手段12と、吐出制御手段13を備える。ローラ回転速度制御手段12は、ローラ本体26がモデル材MA又はサポート材SAを個別に回収する際に、各吐出ノズルから吐出されるモデル材MA又はサポート材SAの物理的特性に応じて、ローラ本体26の回転速度を変化させることができる。制御手段10は、コンピュータPCからの断面データを取り込み、そのデータに従ってヘッド部20、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を制御する。この制御手段10の制御により、XY方向駆動部31が作動すると共に、ヘッド部20のモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAを、小滴として造形プレート40上の適切な位置に吐出することにより、コンピュータPCから与えられた断面データに基づく断面形状が造形される。そして造形プレート40上に吐出された造形材の一であるモデル材MAは少なくとも硬化されて液体又は流体状態から固体に変化して硬化する。このような動作によって一層分の断面体すなわちスライスが作り出される。なお、スライスデータは、三次元造形装置2側で生成してもよいが、その際においても、各スライス層の厚み等のオペレータが決定しなくてはならない造形パラメータはコンピュータPC側から三次元造形装置2へ送信しなければならない。
(スライス)
【0027】
ここで「スライス」とは、造形物のz方向の積層単位であり、スライス数は高さを積層厚で除算した値となる。実際には、各スライスの厚みを決定する要件としては、各吐出ノズルからの吐出可能な最小限の単位吐出量やローラ部25のローラの上下方向における偏心によるばらつき等によって、設定可能な最小の厚みが決定される。このような観点に基づいて設定された値をスライスの最小値として、後は、ユーザが造形物に対して、求める、例えば、造形精度や造形速度の観点から各スライス量を最終的に決定できる。つまり、ユーザが造形精度を優先することを選択すれば、上述したスライス最小値又はその近傍の値にて各スライス量を決定し、一方造形速度を優先すれば、最低限の造形精度を維持した各スライス量を決定することができる。または、別の方法としては、造形精度と造形速度の比率をユーザに感覚的に選択させる方法や、ユーザに許容可能な最大造形時間を入力させることにより、いくつかの造形時間と造形精度の組み合わせを候補として表示し、その中からユーザが好む条件を選択させることも可能である。
【0028】
また、一つのスライスデータに対する造形行為は、少なくともヘッド部20をX方向(ヘッド部20の主走査方向)に往復動作する際の少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって吐出させ、造形プレート40上に吐出された造形物が未硬化の状態にて、少なくとも往路又は復路にてその未硬化の造形物の表面を平滑化するためにローラ部25を作用させると共に、平滑化された造形物の表面に対して、硬化手段24から特定波長の光を照射することにより、造形物を硬化させる一連のステップを少なくとも一回行うことで行われるが、この回数は、スライスデータの厚みや要求される造形精度によって自動的に変更されることはいうまでもない。なお、造形に用いる造形材料が、所定の温度によって硬化するものであれば、本発明においては硬化手段24を冷却または加熱手段とすることもでき、また自然硬化できる場合には硬化手段を省略することもできる。
【0029】
一方、また少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から吐出され、造形プレート40上に形成される一回の最大の厚みは、吐出された液滴の着弾後の断面形状が略円形を留めることが可能な単位吐出量によって決まる。
(造形プレート40)
【0030】
造形プレート40は、Z方向駆動部32によって昇降自在としている。一スライスが形成されると、制御手段10によってZ方向駆動部32が制御され、造形プレート40は一スライス分の厚さに相当する距離だけ降下する。そして上記と同様な動作を繰り返し行うことにより一スライス目の上側(上表面)に新たなスライスが積層される。このように連続的に作り出された幾層もの薄いスライスが積層されて造形物が造形される。
【0031】
また、造形物がZ方向(つまり高さ方向)において下方に位置する造形部分よりX−Y平面で張り出した、いわゆるオーバーハング形状を有する場合には、コンピュータPCにおいて造形物をデータ化する際に必要に応じてオーバーハング支持部形状が付加される。言い換えれば、オーバーハング形状を有する造形物とは、既に成形されたモデル材のスライスが存在しない部分の上表面に新たなモデル材のスライスが成形される部分(オーバーハング部)を有する造形物である。そして制御手段10は、最終造形物を構成するモデル材MAの造形と同時に、そのオーバーハング支持部形状に基づいて、オーバーハング支持部SBを造形する。具体的には、モデル材MAとは別のサポート材SAを、サポート材吐出ノズル22から小滴として吐出させることにより、オーバーハング支持部SBを形成する。造形後に、オーバーハング支持部SBを構成するサポート材SAを除去することで、目的の三次元造形物を得ることができる。
【0032】
ヘッド部20は、図3の平面図に示すように、ヘッド移動手段30により水平方向、すなわちXY方向に移動される。ヘッド部20は、図において上下にそれぞれ配置された一対のX方向(主走査方向)ガイド機構であるX方向移動レール43に支持される。ヘッド部20を支持する基台側には、X方向への駆動部(図示せず)が、一方のX方向移動レール43に沿って設けられている。また、ヘッド部20をX方向移動レール43上に載置する門型のフレームに、ヘッド部20をY方向(副走査方向)に移動させるためのY方向移動レール44が設けられる。またヘッド部20をY方向移動レール44に沿って駆動するための駆動部(図示せず)が載置される。これらの駆動部によってヘッド部20は、XならびにY方向に移動することが可能となっている。
【0033】
さらに造形プレート40が、図1に示すようにプレート昇降手段(Z方向駆動部32)によって高さ方向、すなわちZ方向に移動される。これによって、ヘッド部20と造形プレート40の相対高さを変更でき、立体的な造形が可能となる。より詳細には、まずヘッド部20は、ヘッド移動手段30によりモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出するために、X方向に往復動作され、各吐出ノズル21、22に各々設けられる複数のY方向に伸びるオリフィスから、モデル材MA及びサポート材SAが吐出される。さらに、図3に示すように、各吐出ノズル21、22のY方向の幅が、造形プレート40上の造形可能なY方向の幅より小さい場合で、且つ造形用のモデルデータのY方向の幅が、Y方向に伸びるオリフィスの全長より大きい場合は、各吐出ノズル21、22の所定の位置におけるX方向の往復動作の後、Y方向に各吐出ノズル21、22を所定量シフトさせ、その位置でのX方向の往復走査と共に、モデル材MA及びサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出させることを繰り返すことにより、設定された全ての造形データに対応した造形物の生成を行う。
【0034】
なお図1の例では、Z方向駆動部32として造形プレート40を昇降させるプレート昇降手段を用いているが、この例に限られず、図2に示す三次元造形装置2’のように、造形プレート40側を高さ方向に固定し、ヘッド部側をZ方向に移動させるZ方向駆動部32’を採用することもできる。また、XY方向への移動も、ヘッド部側を固定して、造形プレート側を移動させてもよい。また、上述したような、ヘッド部20のY方向へのシフトは、各ノズルの幅を、実質的に造形プレート40の造形可能なY方向の幅と同じにすれば、その必要はないが、その際においても、例えばノズルに設けられるオリフィスの間隔で決定される造形物のY方向の解像度を高める目的として、ヘッド部20のY方向へのシフトにより、各オリフィスが、先の造形時におけるオリフィスとオリフィスの間に位置するようにシフトさせてもよい。
(制御手段10)
【0035】
制御手段10は、造形材の吐出パターンを制御する。すなわちモデル材MA及びサポート材SAを、X方向における往復走査の内、少なくとも往路又は復路の一方にて造形材吐出手段により造形プレート40上に吐出させながら、ヘッド部20をX方向に往復走査させて、造形材吐出手段により造形材が造形プレート40上に吐出された後で、且つ往路又は復路の少なくともいずれか一方で、モデル材MA及びサポート材SAに対して硬化手段24で硬化させることにより、スライスを生成し、高さ方向に造形プレート40とヘッド部20の相対位置を移動させて、スライスの積層を繰り返すことにより造形を実行する。なお、詳細は後述するが、ローラ部25による造形材表面の平滑化は、造形材吐出手段により造形材が造形プレート40上に吐出された後で、且つ硬化手段24にて造形材の表面が硬化させる前に、往路又は復路の少なくともいずれか一方で、行われる。
【0036】
この制御手段10は、一回のX方向への往復走査でモデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方の造形材を吐出して、ローラ部25による造形材表面の平滑化と余剰分の除去を行い、更に硬化手段24により硬化させてから、次回以降の往復走査で、吐出されなかった他方の造形材を吐出して、造形材表面の平滑化を行い、硬化させる。これら一連の工程を少なくとも一回行うことにより、一枚のスライスの生成を行う。いうまでもなく、一層のスライスデータに対応した上記一連の工程は、例えばユーザの求める最終的なモデルの表面精度や造形時間に応じて、複数回繰り返すことが含まれる。これにより、モデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方を未硬化の状態でその表面を平滑化し、そして硬化させた後、他方を吐出することで個別に硬化でき、これらモデル材MAとサポート材SAの界面における混合を効果的に回避できる利点が得られる。
【0037】
なお、この例では先にモデル材MAを吐出し、次いでサポート材SAを吐出させる例を説明したが、逆にサポート材を先に吐出させ、次いでモデル材を吐出させてもよい。また、この例ではいずれか一方の造形材をまず吐出して、これを硬化させた後に、他方の造形材を吐出して硬化させるという、モデル材とサポート材を個別に吐出、硬化させて造形する方法を説明した。ただ、この方法に限られず、モデル材とサポート材を同時に吐出させることも可能である。
(造形材)
【0038】
上述の通り、造形材には、最終的な造形物となるモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAが用いられる。
(硬化手段24)
【0039】
モデル材MAには、光硬化樹脂、例えば紫外線硬化樹脂が使用できる。この場合、硬化手段24は少なくともモデル材MAの材料が反応して硬化する特定波長を含む光を照射する光照射手段であり、例えば紫外線ランプ等の紫外線照射手段である。紫外光ランプには、ハロゲンランプや水銀灯、LED等が利用できる。またこの例では、サポート材SAも紫外線硬化樹脂としている。同じ波長の紫外線で硬化する紫外線硬化樹脂を使用する場合は、同じ紫外線照射手段を利用でき、光源を共通化できる利点が得られる。
(モデル材MA)
【0040】
またモデル材MAとして、熱可塑性樹脂を使用することもできる。この場合、硬化手段24は、冷却手段となる。なおモデル材とサポート材にいずれも熱可塑性樹脂を使用する場合は、モデル材の融点をサポート材の融点よりも高いものを採用することにより、積層完了後に造形物をサポート材の融点より高く、モデル材の融点より低い温度に加熱、保温することにより、サポート材を溶融除去することができる。さらに、モデル材とサポート材の一方を光硬化樹脂、他方を熱可塑性樹脂とすることもできる。
【0041】
あるいは、硬化材との化学反応により硬化可能な材料をモデル材に用いることもできる。さらにモデル材は、粘度や表面張力等の噴射特性を調整するために、必要に応じて液体改質剤を混合してもよい。また温度調整によって噴射特性を変更することもできる。モデル材の他の例としては、紫外線フォトポリマー、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン等が挙げられる。
(サポート材SA)
【0042】
サポート材SAは、基本的には、上述したモデル材と同様な材料を用いることができる。ただ、サポート材は最終的に容易に除去できる材料としたいとの観点から、モデル材と類似した材料に更に除去可能な材料を添加することが望ましい。このため、具体的には水膨潤ゲル、ワックス、熱可塑性樹脂、水溶性材料、溶解性材料等が使用できる。サポート材SAの除去には、サポート材の性質に応じて水溶、加熱、化学反応、水圧洗浄等の動力洗浄や電磁波の照射により溶解させる、熱膨張差を利用した分離等の方法が適宜利用できる。
(ヘッド部20)
【0043】
図4に、インクジェット方式の三次元造形装置のヘッド部20の一例を示す。この図に示すヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAとサポート材SAの吐出を個別に行う専用の吐出ノズルを設けている。具体的には、モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、平行に離間させて備えている。各吐出ノズルは、2つのノズル列23を設けており、これらのノズル列23は、図5の平面図に示すように半ノズル分ずらして配置することで、分解能を向上させている。またオフセット状態に配置された各ノズル列23は、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22とで、それぞれ同一ライン上に一致するように配置することで、モデル材とサポート材の分解能を一致させている。
【0044】
ヘッド部20では、左からサポート材吐出ノズル22、モデル材吐出ノズル21、ローラ部25、硬化手段24が設けられている。各吐出ノズルは、圧電素子方式のインクジェットプリントヘッドの要領で、インク状の造形材を吐出する。また造形材は、吐出ノズルから吐出可能な粘度に調整される。
【0045】
図4の例では、ヘッド部20が先にモデル材MAを吐出した後、サポート材SAを吐出している。またヘッド部20は往路(図において左から右)で造形材を吐出し、復路(図において右から左)では造形材の最表面からローラ部25にて余剰樹脂を掻き取り、平滑化を図った後、平滑化された樹脂を硬化手段24で硬化させている。
【0046】
さらに図4の例に示すヘッド部20は、吐出ノズルを設けた吐出ヘッドユニット20Aと、ローラ部及び硬化手段を設けた回収硬化ヘッドユニット20Bとに分割されている。吐出ヘッドユニット20Aと回収硬化ヘッドユニット20Bとの間には、ヘッド部20を移動させるためのY方向移動レール44を通すレールガイド45が設けられている。ヘッド部20は、図3の平面図に示すように、Y方向移動レール44に沿ってY方向に往復移動する。さらにY方向移動レール44の両端は、ヘッド移動手段30で支承されている。ヘッド移動手段30は、造形プレート40を上下方向に跨ぐように、造形プレートの上下に沿って平行に設けた一対のX方向移動レール43に沿ってX方向に往復移動する。これによってヘッド部20は、造形プレート上でXY平面上の任意の位置に移動できる。
(余剰樹脂回収機構)
【0047】
ヘッド部20はさらに、余剰に吐出された樹脂を回収するための余剰樹脂回収機構を備えている。すなわち、インクジェット方式の三次元造型機においては、精度の良い造形を行うために、余分にモデル材やサポート材等の造形材を吐出し、造形プレート40上に吐出された樹脂の余剰分を、余剰樹脂回収機構で回収しながら造形を行っている。このような余剰樹脂回収機構を図6の模式図に示す。この図に示す余剰樹脂回収機構は、吐出されたモデル材MA及びサポート材SAの表面を未硬化の状態で押圧し、造形材の余剰分を除去し、かつ造形材表面を平滑化するためのローラ部25で構成される。図6の例では、吐出されたモデル材MAの表面を、未硬化の状態でローラ本体26で均す状態を示している。
(ローラ部25)
【0048】
ローラ部25は、回転体であるローラ本体26と、ローラ本体26の表面に対して突出するように配置されたブレード27と、ブレード27で掻き取られた造形材を溜めるバス28と、バス28に溜まった造形材を排出する吸引パイプ29とを備えている。ローラ本体26は回転自在に支承されており、未硬化の樹脂を回転しながら押圧することにより、樹脂の表面を均しつつ、余剰分を掻き取って回収する。このローラ本体26はヘッド部20の進行方向に対して逆回転(図6において時計回り)に回転され、未硬化の造形材を掻き上げる。掻き上げられた造形材は、ローラ本体26に付着してブレード27まで運ばれた後、ブレード27で掻き取られてバス28に案内される。このためブレード27は、ローラ本体26が樹脂表面に当接する際の進行方向に対して、ローラ本体26の後方の位置に配置され、バス28に向かって下り勾配の姿勢で固定される。同様に、バス(槽)28もローラ本体26に対してブレート27と同様な側に配置され、且つブレード27の下方に配置されている。また吸引パイプ29はポンプに接続されており、バス28に溜まった造形材を吸引して排出する。この例では、ローラ本体26の外形をφ20mm程度、回転速度を10回転/s程度としている。
【0049】
このローラ部25は、図においてヘッド部20が右から左に進行する際に、掻き取りを行う。換言すると、左から右にヘッド部20が進行しつつ、スライスデータに基づいて、適切な位置にモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から各々モデル材MAとサポート材SAを吐出する際は、ローラ部25は造形材に接触せず、同様に硬化手段24の光源からの照明も行われない。図においてヘッド部20の左から右への主走査方向の例えでは、往路にて少なくとも造形材の吐出が各ノズル21、22から実行された後の右から左方向への復路としての主走査方向において、上述したローラ部25の掻き取り動作が実行されると共に、少なくともモデル材MAを硬化するための光を照射する光源としての硬化手段24も動作することになる。
【0050】
なお硬化手段24の光源は、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22より進行方向に対して前方に配置されるため、光源を点灯していても、吐出され、ローラ部25によって平滑化される前の流動可能な樹脂に照射を行うことはない。その一方で、硬化手段24の光源を積極的に必要なタイミング以外は消灯することはもちろん可能である。また一方で、硬化手段を複数設ける構成としてもよい。例えば、硬化手段として第一硬化手段と第二硬化手段とを設け、吐出後の樹脂に対して第一硬化手段で予備的に硬化を行い、次いで第二硬化手段で樹脂をより一層硬化させる。このように硬化手段を多段構成とすることで、樹脂の硬化能力を十分に発揮させることができる。またこのような場合において、第一硬化手段が予備的な硬化に留まり、第一硬化手段を経ても樹脂に未だ十分な流動性が残っている場合は、第一硬化手段による予備硬化後に、ローラ部で樹脂余剰分の掻き取りを行い、その後に第二硬化手段で硬化を行うように構成してもよい。すなわち、すべての硬化手段がローラ部の次段側に配置されることを必ずしも要しない。
【0051】
図1、図4に示すように、ヘッド部20の進行方向に対してローラ部25は硬化手段24の前方、図において左側に配置されている。この結果、先に未硬化の造形材をローラ部25で掻き取った後、硬化手段24が造形材を硬化させる。このような配置によって、同一のパスで造形材の掻き取りと硬化を行うことができ、効率よく処理できる利点が得られる。
【0052】
なお、X軸方向に沿うサポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出ノズル21、ローラ部25及び硬化手段24の配列の基本的な考え方は、以下の通りである。ヘッド部20の主走査方向の往路方向をベースに考えると、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21は、いずれか一方が他方の前方に位置すればよい。このようなノズルのレイアウトに対して、ローラ部25ならびに硬化手段24は、ローラの作用を往路で行いたい場合は、往路進行方向において、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21の後方にローラ部25、硬化手段24の順で配置し、ローラの作用を復路で行いたい場合は、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21の復路の進行方向において後方にローラ部25、硬化手段24の順で配置すればよい。
【0053】
また、上記実施例においては、ヘッド部20から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行った後、硬化手段24によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためのUV光を照射する方法を採用した。
【0054】
ただ、この構成以外にも、上述の通り硬化手段を多段で構成することもできる。例えばヘッド部20から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、余剰樹脂層を含む最上層に対して、硬化手段24によって一旦光を照射した後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行い、その後再度硬化手段24によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためUV光を照射する方法もある。この場合、硬化手段24は、ヘッド部20において、X方向、つまりヘッド部20の主走査方向で、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21を挟む前後方向に一対の硬化手段を設けることにより、上述のような二度の照射を行うことができる。
【0055】
また、この場合、一度目の照射と二度目の照射を合わせて、最終的に所望する樹脂の硬化の程度を達成するようになるため、一度目の照射後の樹脂は硬化状態ではなく、まだその後のローラ部25による掻き取り動作のために、流動可能な、半硬化状態である。このため、この場合においても、ローラ部25による樹脂の掻き取り前の最上層の状態は、未硬化または流動可能な状態と表現することとする。
(樹脂の経路)
【0056】
図7に、造形材である樹脂の搬送経路46をブロック図で示している。この図に示すように、三次元造形装置は、異物捕集フィルタ51と、造形材カートリッジ47と、脱気圧力開放弁62とを備えている。異物捕集フィルタ51は、樹脂中に含まれる異物を捕集する。このような異物捕集フィルタ51として、例えば10μmメッシュのフィルタを用いることができる。
【0057】
造形材カートリッジ47は、樹脂毎に個別の搬送経路46に接続される。ここでは造形材カートリッジ47は、モデル材用とサポート材用にそれぞれ、モデル材用カートリッジ47Aと、サポート材用カートリッジ47Bが用意されており、モデル材用搬送経路46Aとサポート材用搬送経路46Bにそれぞれ接続されている。また、モデル材用カートリッジ47Aと、サポート材用カートリッジ47Bは、複数本用意することが好ましい。これにより、造形中に一の造形材カートリッジ47が空になっても、速やかに他方の造形材カートリッジ47から樹脂を供給できる。図7の例では、モデル材用カートリッジ47Aと、サポート材用カートリッジ47Bはそれぞれ2本接続されており、各々の造形材カートリッジ47は電磁弁49を介して樹脂搬送経路46と接続される。さらに、各樹脂搬送経路46はそれぞれ、供給ポンプ50と接続されており、供給ポンプ50を介してヘッド部20と接続される。モデル材用搬送経路46Aは、モデル材用供給ポンプ50Aを介して、ヘッド部20のモデル材吐出ノズルと接続される。またサポート材用搬送経路46Bは、サポート材用供給ポンプ50Bを介してサポート材吐出ノズルと接続される。
【0058】
またヘッド部20は、各樹脂毎に異物捕集フィルタ51と脱気モジュール52とリザーブタンク48と吐出ノズルを備えている。図7の例では、ヘッド部20の内、吐出ノズルを設けた吐出ヘッドユニット20Aに、これら異物捕集フィルタ51、脱気モジュール52、リザーブタンク48が配置される。ここでは、モデル材用にモデル材用異物捕集フィルタ51Aと、モデル材用脱気モジュール52Aと、モデル材用リザーブタンク48Aと、モデル材吐出ノズルを設け、またサポート材用にサポート材用異物捕集フィルタ51Bと、サポート材用脱気モジュール52Bと、サポート材用リザーブタンク48Bと、サポート材吐出ノズルを設けている。図においてモデル材は、モデル材用搬送経路46Aを通じて、上から下方向、すなわちモデル材用異物捕集フィルタ51A、モデル材用脱気モジュール52A、モデル材用リザーブタンク48Aを通じて、モデル材吐出ヘッドから吐出される。サポート材も同様に、サポート材用搬送経路46Bを通じて、上から下方向、すなわちサポート材用異物捕集フィルタ51B、サポート材用脱気モジュール52B、サポート材用リザーブタンク48Bを通じて、サポート材吐出ヘッドから吐出される。
(気泡混入対策)
【0059】
樹脂を噴射するディスペンサにおいて、樹脂中に空気が混入していると、液滴を正常に生成することができなくなる。樹脂中に空気が存在すると、本来液を押し出すために用いられるべき圧力が空気を圧縮させる力として作用する結果、正常な液滴を生成することができなくなり、吐出ノズルから全く液滴が出ない不吐となる。また、樹脂中の気泡のみならず、ディスペンサによる液滴生成過程の特徴として、樹脂には負圧がかかり、キャビテーション現象が生じて、樹脂内に溶けている空気が気泡化し不吐を生じさせることもある。
【0060】
一般に、樹脂中に気泡や溶存気体が混入する要因としては、(1)樹脂そのものに既に混入している場合、(2)造形材カートリッジを挿抜する際に混入する場合、(3)樹脂の搬送経路中のチューブを通って混入する場合、の3つが考えられる。よって、それぞれの場合毎に、気泡等の混入対策を講じることが好ましい。
【0061】
まず、(1)樹脂そのものに既に混入している場合については、樹脂製造過程及び造形材カートリッジに樹脂を充填する過程で、それぞれ空気を抜くよう対策を講じることが考えられる。次に、(2)造形材カートリッジを挿抜する際に混入するケースについては、造形材カートリッジの挿抜構造を改良して空気を入り難くすることが考えられる。そして(3)樹脂の搬送経路中のチューブを通って混入する気泡については、樹脂が搬送経路中に長時間滞留することを可能な限り抑制することが考えられる。
【0062】
しかしながら、このような対策を施しても、気泡や溶存気体は樹脂中に残留して、吐出ノズルの不吐を生じて造形不良を引き起こすことがある。このような対策として、樹脂中に気泡が一定の確率で存在することを前提として、造形中に定期的に、吐出ノズル近辺で留まっている空気を樹脂と共に外部へ放出するパージと呼ばれる作業を自動的に行うことが考えられる。具体的にはパージ処理は、各リザーブタンク48Aならびに48Bに接続された図示しないポンプが、造形の途中に定期的に移行するメンテナンスモード時に、各リザーブタンク48A、48B内の圧力を上げることにより、吐出ノズル近辺における溜まっている空気を樹脂と共に外部に放出することにより行われる。しかしながら、パージ作業を頻繁に行うことは樹脂を無駄に排出することとなる。このため、パージを行う時間間隔をできるだけ長くする必要がある。
【0063】
一方で三次元造形装置において、積層される造形材の各層でヘッド部をランダムに走査させることで、仮に吐出ノズルの数本が不吐となっても、その影響が蓄積されないような対策を行うことも考えられる。しかしながら、より造形精度が求められる用途においては、このような数本の吐出ノズルが不吐となっても、造形物の精度に影響を与え、場合によっては不良とみなされる場合もあった。
(脱気モジュール52)
【0064】
これに対して本実施例に係る三次元造形装置は、樹脂中の気体を脱気する脱気モジュール52を、樹脂の搬送経路46中で造形材吐出手段の手前に設けている。これによって、樹脂中から気泡を排除し、気泡に起因する吐出不良から生じる造形不良を低減できる。
(脱気モジュール52の配置位置)
【0065】
この脱気モジュール52は、好ましくは異物捕集フィルタ51の後に配置する。異物捕集フィルタ51は、樹脂中に混入した異物を捕集すると共に、樹脂中に含まれる気泡を細かく分解する作用も有する。よって、この異物捕集フィルタ51の後段に脱気モジュール52を配置することで、異物捕集フィルタ51によって細かく分解された気泡を確実に脱気して、脱気の効果を高めることができる。
【0066】
また脱気モジュール52は、樹脂搬送経路46上であれば、いずれの位置でも配置できるが、上述の通りヘッド部20に設けることが好ましい。造形プレート上をX、Y方向に移動するヘッド部20に脱気モジュール52を搭載することで、上述した気泡混入要因(3)の対策である、樹脂の長時間滞留を抑制することが可能となる。
【0067】
さらに、脱気モジュール52を異物捕集フィルタ51の後に配置することで、気泡混入要因(2)の対策も講じている。本発明者らの研究開発によれば、造形材カートリッジを挿抜する際に混入する気泡は、上記(1)や(3)に比べてサイズが大きいことが明らかとなった。このような大きな気泡を取り除くためには、大型の脱気モジュールが必要となる。しかしながら、大型の脱気モジュールはヘッド部に組み込むことが困難で、装置自体の大型化を招く。一方、樹脂中の気泡は、異物捕集フィルタを通過すると、細かく粉砕されることが判明した。そこで、このような異物捕集フィルタ51の後段に脱気モジュール52を配置することによって、異物捕集フィルタ51で細かく粉砕された気泡を脱気するようにすることで、比較的小型の脱気モジュール52でも気泡を効果的に取り除くことができるようになり、ヘッド部20への搭載を可能としている。
【0068】
図8に、図4のヘッド部20において、造形材吐出ノズルの背面から見た斜視図を示す。この図の例では、ヘッド部20の内部に異物捕集フィルタ51と脱気モジュール52とを、サポート材用とモデル材用にそれぞれ用意し、固定板65に固定している。なお図7のブロック図とは、異物捕集フィルタ51と脱気モジュール52を配置した姿勢が上下逆となっている。これは、異物捕集フィルタ51内に空気が留まるのを極力防止するためである。具体的には、モデル材を搬送するモデル材搬送チューブ66Aに関しては、その流入側から流出側に向かって、モデル材用脱気モジュール52Aとモデル材用異物捕集フィルタ51Aを接続している。同様にサポート材を搬送するサポート材搬送チューブ66Bに関しては、その流入側から流出側に向かって、サポート材用脱気モジュール52Bとサポート材用異物捕集フィルタ51Bを接続している。さらに各モデル材用脱気モジュール52A、サポート材用脱気モジュール52Bはそれぞれ、モデル材用脱気経路57A、サポート材用脱気経路57Bと接続されている。またこれらモデル材用脱気経路57Aとサポート材用脱気経路57Bとは、図7に示すように共通の脱気経路57と接続されている。脱気経路57は、その先端を分岐して、一方を脱気用負圧発生ポンプ63と接続し、他方を脱気圧力開放弁62と接続している。脱気用負圧発生ポンプ63によって脱気経路57を吸引することで、脱気経路57内を負圧とできる。また、定期的に脱気圧力開放弁62を開放することで、脱気経路57内に空気の流れを生じさせている。
(脱気モジュール52の詳細)
【0069】
ここで脱気モジュール52の外観図を図9に、その内部構造を示す斜視図を図10に、その断面図を図11に、また中空糸60の拡大図を図12に、それぞれ示す。これらの図に示す脱気モジュール52は、モデル材用脱気モジュール52Aを示しているが、サポート材用脱気モジュール52Bも同様の構成としている。モデル材用脱気モジュール52Aは、図9等において円筒状の外形を有する脱気モジュール本体ケース53の上面及び下面に、モデル材用搬送経路46Aと接続するための開口部として、それぞれ樹脂流出口55(上面)、樹脂流入口54(下面)を開口している。このモデル材用脱気モジュール52Aは、樹脂流入口54及び樹脂流出口55をモデル材用搬送経路46Aと接続し、図においてモデル材MAをその中心において下方から上方に流しつつ、モデル材MAに含まれる気泡を側面に開口された脱気圧力口56から排出している。
(中空糸60)
【0070】
脱気モジュール本体ケース53内部には、図10に示すように中空糸60がらせん状に配置されている。中空糸60は半透膜で内部を中空状としており、脱気用負圧発生ポンプ63によって負圧とした脱気経路57と連通させている。このような構成によって、中空糸60の外表面に樹脂であるモデル材MAを接触させると、図12に示すように内部圧力を負圧状態とした中空糸60の内面側に、樹脂内部の気泡AHや溶存気体が引き寄せられ、これらの気体成分のみが半透膜を通過して中空糸60内部へ移動することで、モデル材MA中の気泡AHや溶存気体を除去することができる。このように中空糸構造を採用することで、従来の平面状とした膜構造の脱気モジュールに比べて、液体状の樹脂が半透膜と接する面積を格段に増やして、脱気率を向上させることができる。
【0071】
また、中空糸60中の脱気経路57は、単に負圧とするのみならず、その経路内部で空気の流れを生じさせている。特に半透膜を通り抜ける物質には、空気成分のみならず、気化した樹脂成分も含まれている。このため、空気の流れが無い状態を長時間継続すると、中空糸60の内部に液化した樹脂が再度発生する場合がある。すなわち、気化した樹脂成分が、飽和蒸気量を超えると凝集し始める結果、脱気経路の吸気機能が低下して半透膜から十分に気体を移動させることができなくなり、脱気効率が著しく低下する。そこで、本実施例では空気流を脱気経路57内に生じさせることで、気化成分が脱気経路内に長時間滞留しないようにしている。
【0072】
一方、脱気経路内に空気の流れを生じさせるため、例えば常時空気を流す方法も考えられる。しかしながら、この方法では脱気経路が複雑になるという問題がある。そこで本実施例では、空気流を常時生じさせるのでなく、間欠的に脱気経路57を大気圧に開放し、空気の流れを一時的に発生させている。この方法は、脱気経路57中に脱気圧力開放弁62を設けることで、容易に実現できる。図7に示す脱気圧力開放弁62は、中空糸60の開放された一端を一定時間毎、例えば15秒に一回、開放している。
(中間パイプ58)
【0073】
一方で、樹脂流入口54は、脱気モジュール本体ケース53の円筒状の中心軸に沿って中間まで延長された中間パイプ58と連通される。中間パイプ58の端面は閉塞しており、その一方で中間パイプ58の円周側には複数の開口窓58aを設けている。また中間パイプ58の周囲には、らせん状の中空糸60が配置されているため、開口窓58aから脱気モジュール本体ケース53内に放射状に排出されるモデル材MAは、周囲に配置された中空糸60の表面と広い面積で接触される。また中空糸60の一方の端縁も閉塞されており、他方の端縁は開口され、脱気圧力口56と連通している。さらに中空糸60の開口端側は、封止材59によって他端の閉塞端側と隔離されている。これによって、モデル材MAが脱気経路57側に流入することが阻止され、また後述するようにモデル材MAから脱気された気泡AHなどが再度樹脂側に溶出することが回避される。なお、開口窓58aから排出されるモデル材MAが中空糸60に触れることなく直接樹脂流出口55に流れることを阻止するために、開口窓58aの上部から中間パイプ58の閉塞端面にかけて、らせん状の中空糸60の内面との間の空間は第二封止材59Bによって隔離、分断されている。
(脱気経路57)
【0074】
また脱気圧力口56は、図7に示すように脱気経路57と連通されており、その先端は脱気用負圧発生ポンプ63と接続している。脱気用負圧発生ポンプ63によって脱気経路57が吸引されることで、脱気経路57を通じて脱気圧力口56から中空糸60内は負圧となっている。さらに脱気経路57は分岐されて脱気圧力開放弁62と接続されている。
(脱気モジュール52の脱気手順)
【0075】
ここで脱気モジュール52でモデル材MAを脱気する手順を、図11に基づいて説明する。図11において、モデル材MAの流れは実線の矢印で、脱気される空気の流れは破線の矢印で、それぞれ示している。樹脂流入口54より脱気モジュール本体ケース53内の中心に下方から流入されるモデル材MAは、中間部分から側面側に放射状に排出され、らせん状に配置される中空糸60の壁面に接触される。中空糸60の壁面にモデル材MAが触れると、モデル材MAの樹脂中に溶存する気泡AHは、中空糸60の壁面を通過して、中空糸60内に移動する。この結果、中空糸60内に移動した気泡AHは、脱気用負圧発生ポンプ63によって負圧とされた脱気経路57に吸引され、脱気圧力開放弁62から排気される。一方で、脱気されたモデル材MAの樹脂は、中空糸60の隙間から上方の樹脂流出口55に移動して、脱気モジュール52から排出される。このようにして、樹脂を脱気モジュール52の底面中心から流入させつつ、気泡AH等を分離させて気体成分は側面から抜き取り、脱気された樹脂成分のみが上方から排出される。
【0076】
なお、以上の例では半透膜中空糸を用いた脱気モジュールを使用したが、脱気モジュールはこの構成に限定されるものでなく、他の既知の脱気モジュールが適宜利用できる。また脱気方法も、上記の原理を用いた方法に限定されるものでなく、既知の方法が採用できることもいうまでもない。
(実施例2)
【0077】
また、脱気モジュールの配置位置は、上述の例に限られない。異物捕集フィルタ51の後段で造形材吐出ノズルの前段に配置すればよく、例えば、図13に示す実施例2のように、造形材用リザーブタンクであるモデル材用リザーブタンク48Aとサポート材用リザーブタンク48Bの後にそれぞれモデル材用脱気モジュール52A、サポート材用脱気モジュール52Bを設けてもよい。この構成によれば、ノズル吐出口により近い位置に脱気モジュールが配置されているので、空気が流入する可能性のある部位を減らすことができ、ノズルに供給される造形材の脱気効果を更に高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の三次元造形装置及び三次元造形方法は、インクジェット方式で紫外線硬化樹脂を積層した三次元造形に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0079】
100…三次元造形システム
1…設定データ作成装置
2、2’…三次元造形装置
10…制御手段
12…ローラ回転速度制御手段
13…吐出制御手段
20…ヘッド部;20A…吐出ヘッドユニット;20B…回収硬化ヘッドユニット
21…モデル材吐出ノズル
22…サポート材吐出ノズル
23…ノズル列;23a…吐出ノズル先端
24…硬化手段
25…ローラ部
26…ローラ本体
27…ブレード
28…バス
29…吸引パイプ
30…ヘッド移動手段
31…XY方向駆動部
32、32’…Z方向駆動部
40…造形プレート
43…X方向移動レール
44…Y方向移動レール
45…レールガイド
46…搬送経路;46A…モデル材用搬送経路;46B…サポート材用搬送経路
47…造形材カートリッジ;47A…モデル材用カートリッジ;47B…サポート材用カートリッジ
48…リザーブタンク;48A…モデル材用リザーブタンク;48B…サポート材用リザーブタンク
49…電磁弁
50…供給ポンプ;50A…モデル材用供給ポンプ;50B…サポート材用供給ポンプ
51…異物捕集フィルタ
51A…モデル材用異物捕集フィルタ;51B…サポート材用異物捕集フィルタ
52…脱気モジュール
52A…モデル材用脱気モジュール;52B…サポート材用脱気モジュール
53…脱気モジュール本体ケース
54…樹脂流入口
55…樹脂流出口
56…脱気圧力口
57…脱気経路;57A…モデル材用脱気経路;57B…サポート材用脱気経路
58…中間パイプ;58a…開口窓
59…封止材;59B…第二封止材
60…中空糸
62…脱気圧力開放弁
63…脱気用負圧発生ポンプ
65…固定板
66A…モデル材搬送チューブ;66B…サポート材搬送チューブ
MA…モデル材
SA…サポート材
SB…オーバーハング支持部
AH…気泡
DL…液滴
PC…コンピュータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形プレート(40)上に、造形材を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置であって、
造形物を載置するための前記造形プレート(40)と、
前記造形材を吐出するための造形材吐出手段と、
前記造形材吐出手段を支承するヘッド部(20)と、
前記ヘッド部(20)を移動させながら、前記造形材吐出手段による前記造形材の吐出を制御する制御手段(10)と、
液体状の造形材と接触させて、該造形材中に含まれる気体を脱気するための脱気モジュール(52)と、
造形材を蓄える交換式の造形材カートリッジ(47)と、
前記造形材カートリッジ(47)から造形材吐出手段まで連通される液体状の造形材の搬送経路(46)中に配置され、該造形材中から異物を捕集するための異物捕集フィルタ(51)と、
を備えており、
前記脱気モジュール(52)が、前記異物捕集フィルタ(51)の後で、かつ造形材吐出手段の前に配置されてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載される三次元造形装置であって、
前記脱気モジュール(52)が、中空糸(60)で構成されており、
前記中空糸(60)の内部を負圧としてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載される三次元造形装置であって、
前記中空糸(60)の一端を閉塞し、
他端を開放端としつつ、脱気用負圧発生ポンプ(63)と接続してなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項4】
請求項3に記載される三次元造形装置であって、さらに、
前記中空糸(60)の開放された一端を、所定のタイミングで開放するための脱気圧力開放弁(62)を備えることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
前記異物捕集フィルタ(51)と脱気モジュール(52)とを、前記ヘッド部(20)に設けてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項6】
請求項5に記載される三次元造形装置であって、
前記異物捕集フィルタ(51)と脱気モジュール(52)とをモジュール化してなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
前記造形材カートリッジ(47)を複数備えてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、さらに、
前記造形材を硬化させるための硬化手段(24)を備えており、
前記ヘッド部(20)で前記硬化手段を支承すると共に、前記制御手段(10)が、前記ヘッド部(20)を移動させながら、前記造形材吐出手段による前記造形材の吐出及び硬化手段(24)による硬化を制御してなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項9】
請求項8に記載される三次元造形装置であって、さらに、
前記ヘッド部(20)を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、
前記ヘッド部(20)と造形プレート(40)との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、
を備え、
前記制御手段(10)が、前記水平駆動手段で前記ヘッド部(20)を一方向に往復走査させて、前記造形材吐出手段により前記造形物を前記造形プレート(40)上に吐出させ、さらに前記硬化手段(24)により前記造形物を硬化させてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
造形材が、
最終的な造形物となるモデル材(MA)と、
前記モデル材(MA)が張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材(SA)と、
を含み、
前記造形材吐出手段が、
前記モデル材(MA)を吐出するためのモデル材吐出ノズル(21)、及び前記サポート材(SA)を吐出するためのサポート材吐出ノズル(22)を、それぞれ一方向に複数個配列させてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項11】
造形プレート(40)上に、造形材を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形方法であって、
造形材を蓄える交換式の造形材カートリッジ(47)から、造形材の搬送経路(46)に造形材を供給する工程と、
前記造形材の搬送経路(46)上に設けられた異物捕集フィルタ(51)を通じて、前記造形材中に含まれる異物を補足すると共に、該造形材中に含有される気体成分を粉砕する工程と、
前記造形材の搬送経路(46)上において、前記異物捕集フィルタ(51)の後段に設けられた脱気モジュール(52)に造形材を通し、前記脱気モジュール(52)中に含まれる、内部を負圧とされた中空糸(60)と造形材とを接触させて、前記中空糸(60)中に造形材中の気体成分を取り込むことで脱気する工程と、
前記脱気された造形材を、該造形材を吐出する造形材吐出手段により前記造形プレート(40)上に吐出させる工程と、
を含むことを特徴とする三次元造形方法。
【請求項12】
請求項11に記載される三次元造形方法であって、
前記脱気モジュール(52)が、中空糸(60)で構成されており、
前記中空糸(60)の内部を負圧としてなることを特徴とする三次元造形方法。
【請求項13】
請求項12に記載される三次元造形装置であって、
前記中空糸(60)の一端を閉塞し、
他端を開放端としつつ、脱気用負圧発生ポンプ(63)と接続してなることを特徴とする三次元造形方法。
【請求項14】
請求項13に記載される三次元造形装置であって、
前記中空糸(60)の開放された一端を、所定のタイミングで開放するための脱気圧力開放弁(62)を備えることを特徴とする三次元造形方法。
【請求項1】
造形プレート(40)上に、造形材を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置であって、
造形物を載置するための前記造形プレート(40)と、
前記造形材を吐出するための造形材吐出手段と、
前記造形材吐出手段を支承するヘッド部(20)と、
前記ヘッド部(20)を移動させながら、前記造形材吐出手段による前記造形材の吐出を制御する制御手段(10)と、
液体状の造形材と接触させて、該造形材中に含まれる気体を脱気するための脱気モジュール(52)と、
造形材を蓄える交換式の造形材カートリッジ(47)と、
前記造形材カートリッジ(47)から造形材吐出手段まで連通される液体状の造形材の搬送経路(46)中に配置され、該造形材中から異物を捕集するための異物捕集フィルタ(51)と、
を備えており、
前記脱気モジュール(52)が、前記異物捕集フィルタ(51)の後で、かつ造形材吐出手段の前に配置されてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載される三次元造形装置であって、
前記脱気モジュール(52)が、中空糸(60)で構成されており、
前記中空糸(60)の内部を負圧としてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載される三次元造形装置であって、
前記中空糸(60)の一端を閉塞し、
他端を開放端としつつ、脱気用負圧発生ポンプ(63)と接続してなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項4】
請求項3に記載される三次元造形装置であって、さらに、
前記中空糸(60)の開放された一端を、所定のタイミングで開放するための脱気圧力開放弁(62)を備えることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
前記異物捕集フィルタ(51)と脱気モジュール(52)とを、前記ヘッド部(20)に設けてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項6】
請求項5に記載される三次元造形装置であって、
前記異物捕集フィルタ(51)と脱気モジュール(52)とをモジュール化してなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
前記造形材カートリッジ(47)を複数備えてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、さらに、
前記造形材を硬化させるための硬化手段(24)を備えており、
前記ヘッド部(20)で前記硬化手段を支承すると共に、前記制御手段(10)が、前記ヘッド部(20)を移動させながら、前記造形材吐出手段による前記造形材の吐出及び硬化手段(24)による硬化を制御してなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項9】
請求項8に記載される三次元造形装置であって、さらに、
前記ヘッド部(20)を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、
前記ヘッド部(20)と造形プレート(40)との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、
を備え、
前記制御手段(10)が、前記水平駆動手段で前記ヘッド部(20)を一方向に往復走査させて、前記造形材吐出手段により前記造形物を前記造形プレート(40)上に吐出させ、さらに前記硬化手段(24)により前記造形物を硬化させてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
造形材が、
最終的な造形物となるモデル材(MA)と、
前記モデル材(MA)が張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材(SA)と、
を含み、
前記造形材吐出手段が、
前記モデル材(MA)を吐出するためのモデル材吐出ノズル(21)、及び前記サポート材(SA)を吐出するためのサポート材吐出ノズル(22)を、それぞれ一方向に複数個配列させてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項11】
造形プレート(40)上に、造形材を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形方法であって、
造形材を蓄える交換式の造形材カートリッジ(47)から、造形材の搬送経路(46)に造形材を供給する工程と、
前記造形材の搬送経路(46)上に設けられた異物捕集フィルタ(51)を通じて、前記造形材中に含まれる異物を補足すると共に、該造形材中に含有される気体成分を粉砕する工程と、
前記造形材の搬送経路(46)上において、前記異物捕集フィルタ(51)の後段に設けられた脱気モジュール(52)に造形材を通し、前記脱気モジュール(52)中に含まれる、内部を負圧とされた中空糸(60)と造形材とを接触させて、前記中空糸(60)中に造形材中の気体成分を取り込むことで脱気する工程と、
前記脱気された造形材を、該造形材を吐出する造形材吐出手段により前記造形プレート(40)上に吐出させる工程と、
を含むことを特徴とする三次元造形方法。
【請求項12】
請求項11に記載される三次元造形方法であって、
前記脱気モジュール(52)が、中空糸(60)で構成されており、
前記中空糸(60)の内部を負圧としてなることを特徴とする三次元造形方法。
【請求項13】
請求項12に記載される三次元造形装置であって、
前記中空糸(60)の一端を閉塞し、
他端を開放端としつつ、脱気用負圧発生ポンプ(63)と接続してなることを特徴とする三次元造形方法。
【請求項14】
請求項13に記載される三次元造形装置であって、
前記中空糸(60)の開放された一端を、所定のタイミングで開放するための脱気圧力開放弁(62)を備えることを特徴とする三次元造形方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−67115(P2013−67115A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208217(P2011−208217)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】
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