三次元造形装置
【課題】硬化後の樹脂にローラ部が接触して樹脂が掻き取られる状態を回避する。
【解決手段】モデル材MA又はサポート材SAが流動可能な状態でこれを上面から押圧して、該モデル材MA又はサポート材SAの余剰分を掻き取るためのローラ部25と、モデル材MA及びサポート材SAを硬化させるための硬化手段24と、造形材吐出手段、ローラ部25及び硬化手段24を備えるヘッド部20と、ヘッド部20を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、ヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、水平駆動手段及び垂直駆動手段の駆動を制御し、かつ造形材吐出手段による造形材の吐出及び硬化手段24による硬化を制御する制御手段10とを備え、ローラ部25の幅が、造形材吐出手段に設けられたモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅よりも狭く形成する。
【解決手段】モデル材MA又はサポート材SAが流動可能な状態でこれを上面から押圧して、該モデル材MA又はサポート材SAの余剰分を掻き取るためのローラ部25と、モデル材MA及びサポート材SAを硬化させるための硬化手段24と、造形材吐出手段、ローラ部25及び硬化手段24を備えるヘッド部20と、ヘッド部20を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、ヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、水平駆動手段及び垂直駆動手段の駆動を制御し、かつ造形材吐出手段による造形材の吐出及び硬化手段24による硬化を制御する制御手段10とを備え、ローラ部25の幅が、造形材吐出手段に設けられたモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅よりも狭く形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式で立体造形物を作製する三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、造形物の基礎データである3次元データを、コンピュータの画面上で任意の姿勢に設定し、設定された姿勢に基づいて高さ方向に平行な複数の面で切断した各断面毎のデータを生成し、この各層に関する二次元データに基づいて、樹脂を順次積層することよって立体造形を行い、造形物の三次元モデルとなる造形物を生成する装置が知られている。
【0003】
製品開発において試作等に用いられるラピッド・プロトタイピング(Rapid Prototyping:RP)の分野で、三次元造型が可能な積層造形法が利用されている。積層造形法としては、積層造形法は、製品の三次元CADデータをスライスし、薄板を重ね合わせたようなものを製造の元データとして作成し、それに粉体、樹脂、鋼板、紙などの材料を積層して試作品を作成する。このような積層造形法としては、インクジェット法、粉末法、光造形法、シート積層法、押し出し法等が知られている。この内、インクジェット法は、液化した材料を噴射した後、紫外光(UV)を照射したり、冷却するなどによって層を硬化させて形成する。この方法によれば、インクジェットプリンタの原理を応用できることから、高精細化が容易となる利点が得られる。
【0004】
樹脂積層方式の三次元造形装置は、最終的な造形物となるモデル材と、モデルを支える基礎部分並びにモデル材の張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材を×Y方向に走査しながら造形プレート上に吐出し、高さ方向に積層していくことにより、造形を行う。モデル材とサポート材は紫外光を照射することにより、硬化する特性を有する樹脂からなり、紫外光を照射する紫外光ランプはモデル材とサポート材を吐出するノズルと共に、×Y方向に走査され、ノズルから吐出されたモデル材およびサポート材に紫外光を照射し、硬化させる。
【0005】
インクジェット方式の三次元造型機においては、ノズルから吐出された樹脂の余剰分を除去する必要がある。図12に、ローラ部で造形材の余剰分を除去する状態の斜視図を示す。この例では、造形プレート40上に吐出された樹脂の表面を、流動可能な状態でローラ本体26で均す状態を示している。ローラ部25は、回転体であるローラ本体26と、ローラ本体26の表面に対して突出するように配置されたブレード27と、ブレード27で掻き取られた造形材を溜めるバス28と、バス28に溜まった造形材を排出する吸引パイプ29とを備えている。ローラ本体26はヘッド部20の進行方向に対して逆回転(図12において時計回り)に回転され、流動可能な造形材を掻き上げる。掻き上げられた造形材は、ローラ本体26に付着してブレード27まで運ばれた後、ブレード27で掻き取られてバス28に案内される。このためブレード27は、バス28に向かって下り勾配の姿勢で固定される。また吸引パイプ29は廃液経路に接続されており、ポンプ等を用いてバス28に溜まった造形材を吸引して、廃液タンク(図示せず)に溜める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2003−535712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような三次元造型機において、吐出幅よりも大きな幅をもつ造形物を作成するためには、同一層を複数の領域に分けて造形することが必要となる。図13の平面図に示す例では、造形物を造形プレート40上において領域R1〜R3の3つの領域に分けて、ヘッド部20を往復させながら走査することで、大面積の造形物を形成している。このような三次元造型機のローラ部25は、吐出された樹脂を確実に回収できるようにするために、製造公差等を考慮して、図14に示すように、ローラ部25の幅Drを吐出幅よりも大きくすることが行われていた。
【0008】
しかしながら、このようなローラ部25では、図15(a)に示すように、造形プレート40上において最初の領域R1を硬化させた後、図15(b)に示すように隣接する領域R2を造形する際、既に作成されている領域R1の端縁(図中、矢印で示す位置)にローラ部25が接触してしまう。この結果、既に硬化された造形物のずれが発生し、造形物の精度が低下する。また硬化済みの樹脂がローラ部25と接触することで、誤って回収される結果、図12に示すように、流動可能な樹脂中に硬化済みの樹脂が混入されるという問題があった。硬化済み樹脂を吸引パイプ29から回収すると、図12において破線で示すように吸引パイプ29内または吸引パイプ29に連通された廃液経路が詰まってしまい、回収した樹脂が廃液タンクに送られず、回収した樹脂がバスであふれてしまい、造形面に流出してしまう状態となる。
【0009】
このような問題に対する対策としては、例えば樹脂同士の結合を強くすることにより、流動可能な樹脂がローラ部に接触してもずれないようにすることが考えられる。また、モデル材とサポート材を混ぜることによりサポート部を堅くして、硬化後樹脂の誤回収を防ぐことも採用されている。しかしながら、これらの方法ではいずれも、サポート材を硬化させて造形物を得た後に、サポート材を造形物から除去することが困難となってしまう問題があった。
【0010】
また一方で、隣接する領域の造形高さを少しずつオフセットすることにより衝突を防ぐ方法も考えられる。しかしながら、この方法では、その高さが積層する樹脂層の1層分の高さよりも小さいという制約があった。このため、ローラ部の振れや傾きがオフセット量よりも大きい場合には意味をなさなくなるので、結局は、ローラ部の振れ、傾きを厳しく作成・調整しなければならないという問題があった。
【0011】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、硬化後の樹脂にローラ部が接触して樹脂が掻き取られる状態を回避可能な三次元造形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る三次元造形装置によれば、造形プレート40上に、造形材として、最終的な造形物となるモデル材MAと、前記モデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAと、を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置であって、造形物を載置するための前記造形プレート40と、前記モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21、及び前記サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、それぞれ一方向に複数個配列させた造形材吐出手段と、前記モデル材MA又はサポート材SAが流動可能な状態でこれを上面から押圧して、該モデル材MA又はサポート材SAの余剰分を掻き取るためのローラ部25と、前記モデル材MA及びサポート材SAを硬化させるための硬化手段24と、前記造形材吐出手段、ローラ部25及び硬化手段24を備えるヘッド部20と、前記ヘッド部20を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、前記ヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、前記水平駆動手段及び垂直駆動手段の駆動を制御し、かつ前記造形材吐出手段による前記造形材の吐出及び硬化手段24による硬化を制御する制御手段10と、を備え、前記ローラ部25の幅が、前記造形材吐出手段に設けられた前記モデル材吐出ノズル21の幅、及び前記サポート材吐出ノズル22の幅よりも狭く形成することができる。これにより、同一層を複数の領域に分けて造形した場合でも、ローラ部が造形物に衝突せず、既に造形した部分への接触を回避して、精度の良い造形が可能となり、また硬化後の樹脂を誤って回収し、吸引パイプを詰まらせる事態を回避できる。
【0013】
また、第2の側面に係る三次元造形装置によれば、前記造形材吐出手段で任意の各スライス層のデータに基づいて各層の形成を行う際、前回のスライスの位置からオフセットさせて印字させることができる。これにより、スライスによってローラ部が印加されない部位を変化させて、未回収の樹脂が残る影響を累積させず、均一にして抑制できる。
【0014】
さらに、第3の側面に係る三次元造形装置によれば、前記モデル材吐出ノズル21が、複数列、オフセット状に配置されてなり、前記ローラ部25の幅が、前記モデル材吐出ノズル21の複数列の和集合の幅よりも、狭く形成することができる。これにより、モデル材吐出ノズルをオフセット配置することで解像度を向上させると共に、オフセット配置されたモデル材吐出ノズルに対してローラ部の幅を短くして、同一層を複数の領域に分けて造形した場合でも、ローラ部を造形物に接触させず、精度の良い造形が可能となる。
【0015】
さらにまた、第4の側面に係る三次元造形装置によれば、前記モデル材吐出ノズル21の幅と前記サポート材吐出ノズル22の幅とを略等しくすることができる。
【0016】
さらにまた、第5の側面に係る三次元造形装置によれば、造形物の走査方向における前記モデル材MAとサポート材SAとが位置するラインにおいて、同一の往復走査で、前記モデル材MAとサポート材SAを同時に吐出させず、いずれか一方の造形材のみを吐出、硬化させることができる。これにより、同一の往復走査で、モデル材とサポート材を同時に吐出せず、いずれか一方のみを吐出、硬化させることで、同一ライン上で隣接するモデル材とサポート材との界面が共に流動状態となって混合される事態を回避でき、界面を綺麗に成形できる利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1に係る三次元造形装置を示すブロック図である。
【図2】変形例に係る三次元造形装置を示すブロック図である。
【図3】ヘッド部がXY方向に移動される様子を示す平面図である。
【図4】モデル材とサポート材で造形された造形物を示す斜視図である。
【図5】図4の断面図である。
【図6】ヘッド部の外観を示す斜視図である。
【図7】ローラ部で造形材の余剰分を除去する状態を示す斜視図である。
【図8】実施例1に係るローラ部の吐出ノズルとローラ本体の幅を示す模式平面図である。
【図9】造形物の同一層を複数の領域に分けて造形した状態を示す模式断面図である。
【図10】図10(a)はローラ部で樹脂の余剰分を回収した直後の理論上の形態、図10(b)は図10(a)の樹脂が自重で変形する様子を示す模式断面図である。
【図11】実施例2に係る方法で複数層を積層する状態を示す模式断面図である。
【図12】ローラ部の構造を示す斜視図である。
【図13】ローラ部で造形プレート上に造形物を複数の領域に分けて造形する様子を示す模式平面図である。
【図14】ローラ部の吐出ノズルとローラ本体の幅を示す模式平面図である。
【図15】図15(a)は図13の領域R1をローラ部で造形する状態、図15(b)は隣接する領域R2を造形する際にローラ部が硬化後の領域R1に接触する状態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための三次元造形装置を例示するものであって、本発明は三次元造形装置を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施例1)
【0019】
図1に、本発明の実施例1に係る三次元造形システム100のブロック図を示す。ここでは、三次元造形装置の一例として、インクジェット方式の三次元造形装置に適用する例を説明する。ただ、本発明は三次元造形装置をインクジェット方式に特定するものでなく、他の方式、例えば粉末法、光造形法、シート積層法、押し出し法等の積層造形法を用いた三次元造形装置に対しても利用できる。この三次元造形システム100は、造形材を流動状態でインクジェット方式によって吐出、硬化させ、これを積層することによって任意の造形物を製造するものである。造形材には、最終的な造形物を構成するモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支えるために造形され、最終的に除去されるサポート材SAとが利用される。
【0020】
図1に示す三次元造形システム100は、三次元造形装置2に造形データならびに造形条件である設定データを送出する設定データ作成装置1(図1ではコンピュータPC)と、三次元造形装置2で構成される。三次元造形装置2は、制御手段10と、ヘッド部20と、造形プレート40とを備える。ヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAを吐出するモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するサポート材吐出ノズル22を備えている。またこれらの吐出された造形材から余剰分を掻き取ることによりその時点での造形物の最上層の厚みの適正化を図ると共に、造形材の表面を平滑化するためのローラ部25と、造形材を硬化させる硬化手段24も、ヘッド部20に備えられる。さらにヘッド部20を水平方向において、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって、造形プレート40上の適切な位置に吐出させるために、往復走査するX方向と、このX方向に直交するY方向に走査させるための水平駆動手段、及びヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段として、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を備えている。ここで、Y方向とはモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズルが有する複数のオリフィスが配列した並び方向であり、X方向は水平面内においてこのY方向と直交する方向である。
【0021】
コンピュータPCは、三次元形状の造形物の基礎データ、例えば三次元CAD等で設計されたモデルデータの入力を外部から受けると、まずこのCADデータを、例えばSTL(Stereo Lithography Data)データに変換し、更にこのSTLデータを複数の薄い断面体にスライスして得られる断面データを生成し、そしてこのスライスデータを、一括又は各スライス層単位にて三次元造形装置2に対して送信を行う設定データ作成装置1として機能する。この際、三次元CAD等で設計されたモデルデータ(実際は、変換後のSTLデータ)の造形プレート40上における姿勢の決定に対応し、この姿勢におけるモデル材MAにて形成されるモデルを支持することが必要な空間又は箇所に対して、サポート材SAを設ける位置の設定が行われ、これらのデータを元に各層に対応するスライスデータが形成される。制御手段10は、コンピュータPCからの断面データを取り込み、そのデータに従ってヘッド部20、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を制御する。この制御手段10の制御により、XY方向駆動部31が作動すると共に、ヘッド部20のモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAを、小滴として造形プレート40上の適切な位置に吐出することにより、コンピュータPCから与えられた断面データに基づく断面形状が造形される。そして造形プレート40上に吐出された造形材の一であるモデル材MAは少なくとも硬化されて液体又は流体状態から固体に変化して硬化する。このような動作によって一層分の断面体すなわちスライスが作り出される。なお、スライスデータは、三次元造形装置2側で生成してもよいが、その際においても、各スライス層の厚み等のオペレータが決定しなくてはならない造形パラメータはコンピュータPC側から三次元造形装置2へ送信しなければならない。
(スライス)
【0022】
ここで「スライス」とは、造形物のz方向の積層単位であり、スライス数は高さを積層厚で除算した値となる。実際には、各スライスの厚みを決定する要件としては、各吐出ノズルからの吐出可能な最小限の単位吐出量やローラ部25のローラの上下方向における偏心によるばらつき等によって、設定可能な最小の厚みが決定される。このような観点に基づいて設定された値をスライスの最小値として、後は、ユーザが造形物に対して、求める、例えば、造形精度や造形速度の観点から各スライス量を最終的に決定できる。つまり、ユーザが造形精度を優先することを選択すれば、上述したスライス最小値又はその近傍の値にて各スライス量を決定し、一方造形速度を優先すれば、最低限の造形精度を維持した各スライス量を決定することができる。または、別の方法としては、造形精度と造形速度の比率をユーザに感覚的に選択させる方法や、ユーザに許容可能な最大造形時間を入力させることにより、いくつかの造形時間と造形精度の組み合わせを候補として表示し、その中からユーザが好む条件を選択させることも可能である。
【0023】
また、一つのスライスデータに対する造形行為は、少なくともヘッド部20をX方向(ヘッド部20の主走査方向)に往復動作する際の少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって吐出させ、造形プレート40上に吐出された造形物が流動可能な状態にて、少なくとも往路又は復路にてその流動可能な造形物の表面を平滑化するためにローラ部25を作用させると共に、平滑化された造形物の表面に対して、硬化手段24から特定波長の光を照射することにより、造形物を硬化させる一連のステップを少なくとも一回行うことで行われるが、この回数は、スライスデータの厚みや要求される造形精度によって自動的に変更されることはいうまでもない。なお、造形に用いる造形材料が、所定の温度によって硬化するものであれば、本発明においては硬化手段24を冷却または加熱手段とすることもでき、また自然硬化できる場合には硬化手段を省略することもできる。
【0024】
一方、また少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から吐出され、造形プレート上に形成される一回の最大の厚みは、吐出された液滴の着弾後の断面形状が略円形を留めることが可能な単位吐出量によって決まる。
(造形プレート40)
【0025】
造形プレート40は、Z方向駆動部32によって昇降自在としている。一スライスが形成されると、制御手段10によってZ方向駆動部32が制御され、造形プレート40は一スライス分の厚さに相当する距離だけ降下する。そして上記と同様な動作を繰り返し行うことにより一スライス目の上側(上表面)に新たなスライスが積層される。このように連続的に作り出された幾層もの薄いスライスが積層されて造形物が造形される。
【0026】
また、造形物がZ方向(つまり高さ方向において)、高さ方向で下方に位置する造形部分よりX−Y平面で張り出した、いわゆるオーバーハング形状を有する場合には、コンピュータPCにおいて造形物をデータ化する際に必要に応じてオーバーハング支持部形状が付加される。言い換えれば、オーバーハング形状を有する造形物とは、既に成形されたモデル材のスライスが存在しない部分の上表面に新たなモデル材のスライスが成形される部分(オーバーハング部)を有する造形物である。そして制御手段10は、最終造形物を構成するモデル材MAの造形と同時に、そのオーバーハング支持部形状に基づいて、オーバーハング支持部SBを造形する。具体的には、モデル材MAとは別のサポート材SAを、サポート材吐出ノズル22から小滴として吐出させることにより、オーバーハング支持部SBを形成する。造形後に、オーバーハング支持部SBを構成するサポート材SAを除去することで、目的の三次元造形物を得ることができる。
【0027】
ヘッド部20は、図3の平面図に示すように、ヘッド移動手段30により水平方向、すなわちXY方向に移動される。ヘッド部20は、図において上下にそれぞれ配置された一対のX方向(主走査方向)ガイド機構であるX方向移動レール43に支持される。ヘッド部20を支持する基台側には、X方向への駆動部(図示せず)が、一方のX方向移動レール43に沿って設けられている。また、ヘッド部20をX方向移動レール43上に載置する門型のフレームに、ヘッド部20をY方向(副走査方向)に移動させるためのY方向移動レール44が設けられる。またヘッド部20をY方向移動レール44に沿って駆動するための駆動部(図示せず)が載置される。これらの駆動部によってヘッド部20は、XならびにY方向に移動することが可能となっている。
【0028】
さらに図4の例に示すヘッド部20は、吐出ノズルを設けた吐出ヘッドユニット20Aと、ローラ部及び硬化手段を設けた回収硬化ヘッドユニット20Bとに分割されている。吐出ヘッドユニット20Aと回収硬化ヘッドユニット20Bとの間には、ヘッド部20を移動させるためのY方向移動レール44を通すレールガイド45が設けられている。ヘッド部20は、図3の平面図に示すように、Y方向移動レール44に沿ってY方向に往復移動する。さらにY方向移動レール44の両端は、ヘッド移動手段30で支承されている。ヘッド移動手段30は、造形プレート40を上下方向に跨ぐように、造形プレートの上下に沿って平行に設けた一対のX方向移動レール43に沿ってX方向に往復移動する。これによってヘッド部20は、造形プレート上でXY平面上の任意の位置に移動できる。
【0029】
さらに造形プレート40が、図1に示すようにプレート昇降手段(Z方向駆動部32)によって高さ方向、すなわちZ方向に移動される。これによって、ヘッド部20と造形プレート40の相対高さを変更でき、立体的な造形が可能となる。より詳細には、まずヘッド部20は、ヘッド移動手段30によりモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出するために、X方向に往復動作され、各吐出ノズル21、22に各々設けられる複数のY方向に伸びるオリフィスから、モデル材MA及びサポート材SAが吐出される。さらに、図3に示すように、各吐出ノズル21、22のY方向の幅が、造形プレート40上の造形可能なY方向の幅より小さい場合で、且つ造形用のモデルデータのY方向の幅が、Y方向に伸びるオリフィスの全長より大きい場合は、各吐出ノズル21、22の所定の位置におけるX方向の往復動作の後、Y方向に各吐出ノズル21、22を所定量シフトさせ、その位置でのX方向の往復走査と共に、モデル材MA及びサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出させることを繰り返すことにより、設定された全ての造形データに対応した造形物の生成を行う。
【0030】
なお図1の例では、Z方向駆動部32として造形プレート40を昇降させるプレート昇降手段を用いているが、この例に限られず、図2に示す三次元造形装置2’のように、造形プレート40側を高さ方向に固定し、ヘッド部側をZ方向に移動させるZ方向駆動部32’を採用することもできる。また、XY方向への移動も、ヘッド部側を固定して、造形プレート側を移動させてもよい。また、上述したような、ヘッド部20のY方向へのシフトは、各ノズルの幅を、実質的に造形プレート40の造形可能なY方向の幅と同じにすれば、その必要はないが、その際においても、例えばノズルに設けられるオリフィスの間隔で決定される造形物のY方向の解像度を高める目的として、ヘッド部20のY方向へのシフトにより、各オリフィスが、先の造形時におけるオリフィスとオリフィスの間に位置するようにシフトさせてもよい。
(制御手段10)
【0031】
制御手段10は、造形材の吐出パターンを制御する。すなわちモデル材MA及びサポート材SAを、X方向における往復走査の内、少なくとも往路又は復路の一方にて造形材吐出手段により造形プレート40上に吐出させながら、ヘッド部20をX方向に往復走査させて、造形材吐出手段により造形材が造形プレート上に吐出された後で、且つ往路又は復路の少なくともいずれか一方で、モデル材MA及びサポート材SAに対して硬化手段24で硬化させることにより、スライスを生成し、高さ方向に造形プレート40とヘッド部20の相対位置を移動させて、スライスの積層を繰り返すことにより造形を実行する。なお、詳細は後述するが、ローラ部25による造形材表面の平滑化は、造形材吐出手段により造形材が造形プレート上に吐出された後で、且つ硬化手段24にて造形材の表面が硬化させる前に、往路又は復路の少なくともいずれか一方で、行われる。
【0032】
この制御手段10は、一回のX方向への往復走査でモデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方の造形材を吐出して、ローラ部25による造形材表面の平滑化と余剰分の除去を行い、更に硬化手段24により硬化させてから、次回以降の往復走査で、吐出されなかった他方の造形材を吐出して、造形材表面の平滑化を行い、硬化させる。これら一連の工程を少なくとも一回行うことにより、一枚のスライスの生成を行う。いうまでもなく、一層のスライスデータに対応した上記一連の工程は、例えばユーザの求める最終的なモデルの表面精度や造形時間に応じて、複数回繰り返すことが含まれる。これにより、モデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方を流動可能な状態でその表面を平滑化し、そして硬化させた後、他方を吐出することで個別に硬化でき、これらモデル材MAとサポート材SAの界面における混合を効果的に回避できる利点が得られる。
【0033】
なお、この例では先にモデル材MAを吐出し、次いでサポート材SAを吐出させる例を説明したが、逆にサポート材を先に吐出させ、次いでモデル材を吐出させてもよい。また、この例ではいずれか一方の造形材をまず吐出して、これを硬化させた後に、他方の造形材を吐出して硬化させるという、モデル材とサポート材を個別に吐出、硬化させて造形する方法を説明した。ただ、この方法に限られず、モデル材とサポート材を同時に吐出させることも可能である。
(造形材)
【0034】
上述の通り、造形材には、最終的な造形物となるモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAが用いられる。図4に、球状のモデル材MAの周囲を直方体状のサポート材SAで覆うようにして造形された造形物の斜視図を、図5にこの断面図を、それぞれ示す。
(硬化手段24)
【0035】
モデル材MAには、光硬化樹脂、例えば紫外線硬化樹脂が使用できる。この場合、硬化手段24は少なくともモデル材MAの材料が反応して硬化する特定波長を含む光を照射する光照射手段であり、例えば紫外線ランプ等の紫外線照射手段である。紫外光ランプには、ハロゲンランプや水銀灯、LED等が利用できる。またこの例では、サポート材SAも紫外線硬化樹脂としている。同じ波長の紫外線で硬化する紫外線硬化樹脂を使用する場合は、同じ紫外線照射手段を利用でき、光源を共通化できる利点が得られる。
(モデル材MA)
【0036】
またモデル材MAとして、熱可塑性樹脂を使用することもできる。この場合、硬化手段24は、冷却手段となる。なおモデル材とサポート材にいずれも熱可塑性樹脂を使用する場合は、モデル材の融点をサポート材の融点よりも高いものを採用することにより、積層完了後に造形物をサポート材の融点より高く、モデル材の融点より低い温度に加熱、保温することにより、サポート材を溶融除去することができる。さらに、モデル材とサポート材の一方を光硬化樹脂、他方を熱可塑性樹脂とすることもできる。
【0037】
あるいは、硬化材との化学反応により硬化可能な材料をモデル材に用いることもできる。さらにモデル材は、粘度や表面張力等の噴射特性を調整するために、必要に応じて液体改質剤を混合してもよい。また温度調整によって噴射特性を変更することもできる。モデル材の他の例としては、紫外線フォトポリマー、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン等が挙げられる。
(サポート材SA)
【0038】
サポート材SAは、基本的には、上述したモデル材と同様な材料を用いることができる。ただ、サポート材は最終的に容易に除去できる材料としたいとの観点から、モデル材と類似した材料に更に除去可能な材料を添加することが望ましい。このため、具体的には水膨潤ゲル、ワックス、熱可塑性樹脂、水溶性材料、溶解性材料等が使用できる。サポート材SAの除去には、サポート材の性質に応じて水溶、加熱、化学反応、水圧洗浄等の動力洗浄や電磁波の照射により溶解させる、熱膨張差を利用した分離等の方法が適宜利用できる。
【0039】
サポート材は、最終的に除去されるため、除去しやすいような特性が求められる。例えば水溶性のサポート材は、造形物が造形された後、水槽に投入することでサポート材を溶融させて除去することができる。一方で、サポート材の可溶性を高めるほど、サポート材の強度が低下し、湿度が高いと潮解し、型崩れしたり垂れる等が起こりやすくなる。サポート材の剛性が不十分になると、モデル材を支持する能力が低下し、サポート材の上面にモデル材を造形することが難しくなり、モデル材の精度が低下するおそれもある。その一方でサポート材の剛性を高めると、最終造形物からサポート材を除去する際に、水に溶出し難くなり、除去に時間がかかる。このようにサポート材には相反する特性が求められる結果、最適な特性を備えるサポート材を得ることが従来は困難であった。
【0040】
そこで本実施例のように、サポート材として例えば、水溶性の材料を用いる場合は、サポート材SAの外殻としてサポート殻SSを形成することにより、造形装置におけるモデルの造形中にサポート材が直接空気に触れることを極力抑制でき、その結果サポート材が空気中の水分を吸収することが抑制できることにより、造形時における、サポート材の変形やサポート材の変形によるモデル材の変形を防止できる。さらに、サポート殻SSの形成により、内部のサポート材が空気中の水分を吸収することを抑制できるため、サポート材の水溶性としての性能を高めることができ、その結果、サポート材除去時に水等の溶液中に浸した場合のサポート材の溶出速度を高めることができる。この構成であれば、十分な剛性を備えつつ、除去の際には最外殻のサポート材SAを破ることで溶出を早め、サポート材の除去を短時間で行える利点が得られる。図4、図5の例では、直方体状の表面に被覆されたサポート殻SSを破断して、内部のサポート材SAを除去する。
(ヘッド部20)
【0041】
図6に、インクジェット方式の三次元造形装置のヘッド部20の一例を示す。この図に示すヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAとサポート材SAの吐出を個別に行う専用の吐出ノズルを設けている。具体的には、モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、平行に離間させて備えている。各吐出ノズルは、2つのノズル列23が設けられている。
【0042】
ヘッド部20では、左からサポート材吐出ノズル22、モデル材吐出ノズル21、ローラ部25、硬化手段24が一体的に設けられている。各吐出ノズルは、圧電素子方式のインクジェットプリントヘッドの要領で、インク状の造形材を吐出する。また造形材は、吐出ノズルから吐出可能な粘度に調整される。
【0043】
図6の例では、ヘッド部20が先にモデル材MAを吐出した後、サポート材SAを吐出している。またヘッド部20は往路(図において左から右)で造形材を吐出し、復路(図において右から左)では造形材の最表面からローラ部25にて余剰樹脂を掻き取り、平滑化を図った後、平滑化された樹脂を硬化手段24で硬化させている。
(ローラ部25)
【0044】
ヘッド部20はさらに、吐出されたモデル材MA及びサポート材SAの表面を流動可能な状態で押圧し、造形材の余剰分を除去することにより、造形材表面を平滑化するためのローラ部25を設けている。このようなローラ部25の動作の様子を、図7の模式図に基づいて説明する。この例では、吐出されたモデル材MAの表面を、流動可能な状態でローラ本体26で均す状態を示している。ローラ部25は、回転体であるローラ本体26と、ローラ本体26の表面に対して突出するように配置されたブレード27と、ブレード27で掻き取られた造形材を溜めるバス28と、バス28に溜まった造形材を排出する吸引パイプ29とを備えている。ローラ本体26は回転自在に支承されており、流動可能な樹脂を回転しながら押圧することにより、樹脂の表面を均しつつ、余剰分を掻き取って回収する。このローラ本体26はローラ本体26で余剰な樹脂を掻き取る際のヘッド部20の進行方向に対して逆回転(図7において時計回り)に回転され、流動可能な造形材を掻き上げる。掻き上げられた造形材は、ローラ本体26に付着してブレード27まで運ばれた後、ブレード27で掻き取られてバス28に案内される。このためブレード27は、ローラ本体26が樹脂表面に当接する際の進行方向に対して、ローラ本体26の後方の位置に配置され、バス28に向かって下り勾配の姿勢で固定される。同様に、バス(槽)28もローラ本体26に対してブレート27と同様な側に配置され、且つブレード27の下方に配置されている。また吸引パイプ29はポンプに接続されており、バス28に溜まった造形材を吸引して排出する。この例では、ローラ本体26の外形をφ20mm程度としている。
【0045】
このローラ部25は、図においてヘッド部20が右から左に進行する際に、掻き取りを行う。換言すると、左から右にヘッド部20が進行しつつ、スライスデータに基づいて、適切な位置にモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から各々モデル材MAとサポート材SAを吐出する際は、ローラ部25は造形材に接触せず、同様に硬化手段24の光源からの照明も行われない。図においてヘッド部20の左から右への主走査方向の例えでは、往路にて少なくとも造形材の吐出が各ノズル21、22から実行された後の右から左方向への復路としての主走査方向において、上述したローラ部25の掻き取り動作が実行されると共に、少なくともモデル材MAを硬化するための光を照射する光源としての硬化手段24も動作することになる。
【0046】
なお硬化手段24の光源は、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22より進行方向に対して前方に配置されるため、光源を点灯していても、吐出され、ローラ部25によって平滑化される前の流動可能な樹脂に照射を行うことはない。その一方で、硬化手段24の光源を積極的に必要なタイミング以外は消灯することはもちろん可能である。また一方で、硬化手段を複数設ける構成としてもよい。例えば、硬化手段として第一硬化手段と第二硬化手段とを設け、吐出後の樹脂に対して第一硬化手段で予備的に硬化を行い、次いで第二硬化手段で樹脂をより一層硬化させる。このように硬化手段を多段構成とすることで、樹脂の硬化能力を十分に発揮させることができる。またこのような場合において、第一硬化手段が予備的な硬化に留まり、第一硬化手段を経ても樹脂に未だ十分な流動性が残っている場合は、第一硬化手段による予備硬化後に、ローラ部で樹脂余剰分の掻き取りを行い、その後に第二硬化手段で硬化を行うように構成してもよい。すなわち、すべての硬化手段がローラ部の次段側に配置されることを必ずしも要しない。
【0047】
図1、図6に示すように、ヘッド部20の進行方向に対してローラ部25は硬化手段24の前方、図において左側に配置されている。この結果、先に流動可能な造形材をローラ部25で掻き取った後、硬化手段24が造形材を硬化させる。このような配置によって、同一のパスで造形材の掻き取りと硬化を行うことができ、効率よく処理できる利点が得られる。
【0048】
なお、X軸方向に沿うサポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出ノズル21、ローラ部25及び硬化手段24の配列の基本的な考え方は、以下の通りである。ヘッド部20の主走査方向の往路方向をベースに考えると、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21は、いずれか一方が他方の前方に位置すればよい。このようなノズルのレイアウトに対して、ローラ部25ならびに硬化手段24は、ローラの作用を往路で行いたい場合は、往路進行方向において、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21の後方にローラ部25、硬化手段24の順で配置し、ローラの作用を復路で行いたい場合は、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21の復路の進行方向において後方にローラ部25、硬化手段24の順で配置すればよい。
【0049】
また、上記実施例においては、ヘッド部20から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行った後、硬化手段24によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためのUV光を照射する方法を採用した。
【0050】
ただ、この構成以外にも、上述の通り硬化手段を多段で構成することもできる。例えばヘッド部20から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、余剰樹脂層を含む最上層に対して、硬化手段24によって一旦光を照射した後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行い、その後再度硬化手段24によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためUV光を照射する方法もある。この場合、硬化手段24は、ヘッド部20において、X方向、つまりヘッド部20の主走査方向で、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21を挟む前後方向に一対の硬化手段を設けることにより、上述のような二度の照射を行うことができる。
【0051】
また、この場合、一度目の照射と二度目の照射を合わせて、最終的に所望する樹脂の硬化の程度を達成するようになるため、一度目の照射後の樹脂は硬化状態ではなく、まだその後のローラ部25による掻き取り動作のために、流動可能な、半硬化状態である。このため、この場合においても、ローラ部25による樹脂の掻き取り前の最上層の状態は、未硬化または流動可能な状態と表現することとする。
(ローラ部25の幅)
【0052】
ここでローラ部25の幅は、造形材吐出手段に設けられたモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅よりも狭く形成している。なお、各ノズルには、ヘッド部20の主走査方向に直交する副走査方向と略平行となるように形成された複数の樹脂吐出用のオリフィスが所定の間隔を持って配列されている。
【0053】
そして、上述した各ノズルの幅とは、各ノズルにおける副走査方向における両端部に位置するオリフィス間の距離を意味している。つまり、ローラ部25の幅が、各ノズルにおける副走査方向における両端部に位置するオリフィス間の距離より狭いことを意味する。
【0054】
なお、ここでのオリフィス間の距離とは、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22の各々に設けられる各々のオリフィスが、ヘッド部20に対して、X方向、つまりヘッド部20の主走査方向において、一直線状に配置されるようになっていることを前提とした定義である。言い換えると、モデル材吐出ノズル21の一つ一つのオリフィスから吐出される主走査方向における位置と、サポート材吐出ノズル22の一つ一つのオリフィスから吐出される主走査方向の位置が全て重なるように、ヘッド部20に対して、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22が位置決めされ、配置されていることを前提としている。
【0055】
また、複数のモデル材吐出ノズル21と複数のサポート材吐出ノズル22を用いると共に、一つのモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に対して、他方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22を副走査方向にオフセットし、ヘッド部20に対して、位置決めして用いられる場合がある。
【0056】
元々、このような複数のモデル材吐出ノズル21、図では二つと複数のサポート材吐出ノズル22を用いる場合の基本的な狙いは、一方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に設けられるオリフィスの副走査方向の位置を、他方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に設けられるオリフィスの副走査方向の位置に対してオフセットさせることにより、モデル材やサポート材のY方向における解像度を向上させることである。
【0057】
つまり、一方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に設けられる二つの隣接するオリフィスの間に、他方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に設けられるオリフィスを副走査方向において配置するような位置決めを行うことである。
【0058】
このような場合、本件発明でのローラ部25の幅を造形材吐出手段に設けられたモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅よりも狭く形成するという意味合いは以下のようになる。
【0059】
複数のモデル材吐出ノズル21を副走査方向にオフセットして配置した場合におけるモデル材吐出ノズル21の幅とは、複数のモデル材吐出ノズル21の中で、副走査方向の一端部において最も外側に配置されるオリフィスの位置から、副走査方向の他端部において最も外側に配置されるオリフィスの位置までの距離より、ローラ部25の幅を狭くするという意味である。これは、同じシステムに採用される複数のサポート材吐出ノズル22においても同様である。また、上述した基本システムと同様に、このシステムにおいても、モデル材吐出ノズル21の一つ一つのオリフィスから吐出される主走査方向における位置と、サポート材吐出ノズル22の一つ一つのオリフィスから吐出される主走査方向の位置が全て重なるように、ヘッド部20に対して、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22が位置決めされ、配置されていることを前提としている。
【0060】
また、上述したローラ部25の幅とは、ローラ部25における軸方向、つまり副走査方向においてローラ部25が持つローラ表面において、余剰樹脂を掻き取る際に用いられる実質的な幅を意味しており、見かけ上の幅がモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅よりも大きくても、実質的にローラ部本来の機能である、掻き取り機能を果たすローラの幅がモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅より狭ければよい。
【0061】
更に、その際ローラの端部に形成される実質的に余剰樹脂を掻き取る機能のないローラ部から実質的に余剰樹脂を掻き取るローラ部へは、段部をつけることによりローラの径を変化させてもよく、またローラの端部に形成される実質的に余剰樹脂を掻き取る機能のないローラ部から実質的に余剰樹脂を掻き取るローラ部に向けて徐々にローラ部の径を連続的に変化させたものであってもよい。
【0062】
図8に、ヘッド部20の底面図の一例を示す。この図に示す例では、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22は、それぞれ吐出ノズルを2列並べてオフセット配置している。各モデル材吐出ノズル21の幅D1とサポート材吐出ノズル22の幅D2は、ほぼ等しくしており、またオフセット量もほぼ等しくしているため、吐出ノズル全体の吐出幅DNもモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22とでほぼ等しくなる。そしてローラ部25の幅DRは、吐出ノズルの吐出幅DNよりも狭くしている。このようにローラ部25の幅を吐出幅DNよりも短くすることにより、図9に示すように同一層(スライス)を複数の領域に分けて造形した場合でも(図9の例では領域R1、R2)、ローラ部25が右側の領域R2を押圧する際に、既に造形した部分(図9において左側の領域R1)に接触せず、精度良く大面積の造形を可能とする。また硬化後の樹脂を誤って回収することがないので、吸引パイプを詰まらせてしまう事態も回避できる。またローラ部の振れ、傾きの調整量は1スライス分の厚み以下で良いことになり、ローラ部の作成、取り付け時の調整の難度を低減させることができる。ここで、ローラ部25の幅はモデル材吐出ノズル及びサポート材吐出ノズルの両端部に位置するオリフィスよりも内側にオリフィス間の間隔の半ピッチ分だけ短く形成される(0.5mm)。例えば、オリフィス間の間隔が1mmである場合は、ローラ部25の幅はモデル材吐出ノズル及びサポート材吐出ノズルの両端部に位置するオリフィスから各0.5mm分ずつ短く形成される。
【0063】
なお、ローラ部25を吐出幅よりも短くすることにより、図9で示す破線で囲んだ部分のように、ローラ部25で樹脂を回収できない部分が存在することになる。ただ、ローラ部25が樹脂の余剰分を回収した直後では、樹脂は液体状であることから、図10(a)に示すような状態には維持されず、自重によって形状を保てない結果、図10(b)に示すようにたれる。この結果、ローラ部25ですべて回収したときとほぼ変わらない造形となり、実用上の問題は殆ど生じない。実際の例においては、造形物の最上表面から掻き取る余剰樹脂の厚みは、例えば数十μm未満の厚み、より好ましくは50μm以下であり、掻き取り残した部分の樹脂の高さもそれと同様の高さとなることからも実用上の問題がないと言える。
【0064】
また、造形材吐出手段で任意の厚みを有するスライスデータに基づいた樹脂の吐出を行う際、前回の副走査方向における樹脂吐出位置から副走査方向にオフセットさせて印字させることもできる。このように、各スライス層毎にローラ部25が印加されない部位を変化させて、未回収の樹脂が残る影響を累積させず、均一にして抑制できる。
【0065】
より詳細には、最初のスライス層を所定の副走査位置にて主走査方向に移動を行いながら樹脂の吐出を行い、その副走査位置を維持してローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行った後、次のスライス層を上述した所定位置から副走査方向に一定距離移動した後、その副走査位置において、主走査方向に移動を行いながら樹脂の吐出を行い、その副走査位置を維持してローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行うこととなる。
【0066】
さらに、図8に示すように、モデル材吐出ノズル21を、複数列、オフセット状に配置した状態では、ローラ部25の幅を、モデル材吐出ノズル21の複数列の和集合の幅よりも狭く形成することが好ましい。これにより、モデル材吐出ノズル21をオフセット配置することで解像度を向上させると共に、オフセット配置されたモデル材吐出ノズル21に対してローラ部25の幅を短くして、同一スライスを複数の領域に分けて造形した場合でも、ローラ部25を造形物に接触させず、精度の良い造形が可能となる。
(実施例2)
【0067】
さらに、ローラ部が印加されない部位をスライスによって変化させることにより、未回収の樹脂が残る影響を累積させないようにすることもできる。すなわち、スライス毎に領域の境目の位置を変化させることで、境界部分のみが高くなる事態を抑制できる。例えば、図11の実施例2では、前段で吐出した領域同士の境界P1の中間に、次段の境界P2が位置するよう、制御手段10で樹脂の吐出位置をオフセットさせている。これにより、前回のスライスの結果、若干高く造形されたとしても、次のスライスでは流動状態の樹脂が盛り上がった分をローラ部25で回収されるため、高さ方向への影響は累積せず、未回収の樹脂が残る問題を回避、抑制できる。
【0068】
このように、上記実施例によれば造形物の吐出に際して同一スライスを複数の領域に分けて造形した場合でも、ローラ部を硬化後の樹脂に衝突させることを回避して、造形物の品質を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の三次元造形装置は、インクジェット方式で紫外線硬化樹脂を積層した三次元造形に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0070】
100…三次元造形システム
1…設定データ作成装置
2、2’…三次元造形装置
10…制御手段
20…ヘッド部;20A…吐出ヘッドユニット;20B…回収硬化ヘッドユニット
21…モデル材吐出ノズル
22…サポート材吐出ノズル
23…ノズル列
24…硬化手段
25…ローラ部
26…ローラ本体
27…ブレード
28…バス
29…吸引パイプ
30…ヘッド移動手段
31…XY方向駆動部
32、32’…Z方向駆動部
40…造形プレート
43…X方向移動レール
44…Y方向移動レール
45…レールガイド
MA…モデル材
SA…サポート材
SS…サポート殻
PC…コンピュータ
SB…オーバーハング支持部
D1…モデル材吐出ノズルの幅
D2…サポート材吐出ノズルの幅
DN…吐出ノズル全体の吐出幅
Dr、DR…ローラ部の幅
P1…前段の境界;P2…次段の境界
R1〜R3…領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式で立体造形物を作製する三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、造形物の基礎データである3次元データを、コンピュータの画面上で任意の姿勢に設定し、設定された姿勢に基づいて高さ方向に平行な複数の面で切断した各断面毎のデータを生成し、この各層に関する二次元データに基づいて、樹脂を順次積層することよって立体造形を行い、造形物の三次元モデルとなる造形物を生成する装置が知られている。
【0003】
製品開発において試作等に用いられるラピッド・プロトタイピング(Rapid Prototyping:RP)の分野で、三次元造型が可能な積層造形法が利用されている。積層造形法としては、積層造形法は、製品の三次元CADデータをスライスし、薄板を重ね合わせたようなものを製造の元データとして作成し、それに粉体、樹脂、鋼板、紙などの材料を積層して試作品を作成する。このような積層造形法としては、インクジェット法、粉末法、光造形法、シート積層法、押し出し法等が知られている。この内、インクジェット法は、液化した材料を噴射した後、紫外光(UV)を照射したり、冷却するなどによって層を硬化させて形成する。この方法によれば、インクジェットプリンタの原理を応用できることから、高精細化が容易となる利点が得られる。
【0004】
樹脂積層方式の三次元造形装置は、最終的な造形物となるモデル材と、モデルを支える基礎部分並びにモデル材の張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材を×Y方向に走査しながら造形プレート上に吐出し、高さ方向に積層していくことにより、造形を行う。モデル材とサポート材は紫外光を照射することにより、硬化する特性を有する樹脂からなり、紫外光を照射する紫外光ランプはモデル材とサポート材を吐出するノズルと共に、×Y方向に走査され、ノズルから吐出されたモデル材およびサポート材に紫外光を照射し、硬化させる。
【0005】
インクジェット方式の三次元造型機においては、ノズルから吐出された樹脂の余剰分を除去する必要がある。図12に、ローラ部で造形材の余剰分を除去する状態の斜視図を示す。この例では、造形プレート40上に吐出された樹脂の表面を、流動可能な状態でローラ本体26で均す状態を示している。ローラ部25は、回転体であるローラ本体26と、ローラ本体26の表面に対して突出するように配置されたブレード27と、ブレード27で掻き取られた造形材を溜めるバス28と、バス28に溜まった造形材を排出する吸引パイプ29とを備えている。ローラ本体26はヘッド部20の進行方向に対して逆回転(図12において時計回り)に回転され、流動可能な造形材を掻き上げる。掻き上げられた造形材は、ローラ本体26に付着してブレード27まで運ばれた後、ブレード27で掻き取られてバス28に案内される。このためブレード27は、バス28に向かって下り勾配の姿勢で固定される。また吸引パイプ29は廃液経路に接続されており、ポンプ等を用いてバス28に溜まった造形材を吸引して、廃液タンク(図示せず)に溜める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2003−535712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような三次元造型機において、吐出幅よりも大きな幅をもつ造形物を作成するためには、同一層を複数の領域に分けて造形することが必要となる。図13の平面図に示す例では、造形物を造形プレート40上において領域R1〜R3の3つの領域に分けて、ヘッド部20を往復させながら走査することで、大面積の造形物を形成している。このような三次元造型機のローラ部25は、吐出された樹脂を確実に回収できるようにするために、製造公差等を考慮して、図14に示すように、ローラ部25の幅Drを吐出幅よりも大きくすることが行われていた。
【0008】
しかしながら、このようなローラ部25では、図15(a)に示すように、造形プレート40上において最初の領域R1を硬化させた後、図15(b)に示すように隣接する領域R2を造形する際、既に作成されている領域R1の端縁(図中、矢印で示す位置)にローラ部25が接触してしまう。この結果、既に硬化された造形物のずれが発生し、造形物の精度が低下する。また硬化済みの樹脂がローラ部25と接触することで、誤って回収される結果、図12に示すように、流動可能な樹脂中に硬化済みの樹脂が混入されるという問題があった。硬化済み樹脂を吸引パイプ29から回収すると、図12において破線で示すように吸引パイプ29内または吸引パイプ29に連通された廃液経路が詰まってしまい、回収した樹脂が廃液タンクに送られず、回収した樹脂がバスであふれてしまい、造形面に流出してしまう状態となる。
【0009】
このような問題に対する対策としては、例えば樹脂同士の結合を強くすることにより、流動可能な樹脂がローラ部に接触してもずれないようにすることが考えられる。また、モデル材とサポート材を混ぜることによりサポート部を堅くして、硬化後樹脂の誤回収を防ぐことも採用されている。しかしながら、これらの方法ではいずれも、サポート材を硬化させて造形物を得た後に、サポート材を造形物から除去することが困難となってしまう問題があった。
【0010】
また一方で、隣接する領域の造形高さを少しずつオフセットすることにより衝突を防ぐ方法も考えられる。しかしながら、この方法では、その高さが積層する樹脂層の1層分の高さよりも小さいという制約があった。このため、ローラ部の振れや傾きがオフセット量よりも大きい場合には意味をなさなくなるので、結局は、ローラ部の振れ、傾きを厳しく作成・調整しなければならないという問題があった。
【0011】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、硬化後の樹脂にローラ部が接触して樹脂が掻き取られる状態を回避可能な三次元造形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る三次元造形装置によれば、造形プレート40上に、造形材として、最終的な造形物となるモデル材MAと、前記モデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAと、を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置であって、造形物を載置するための前記造形プレート40と、前記モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21、及び前記サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、それぞれ一方向に複数個配列させた造形材吐出手段と、前記モデル材MA又はサポート材SAが流動可能な状態でこれを上面から押圧して、該モデル材MA又はサポート材SAの余剰分を掻き取るためのローラ部25と、前記モデル材MA及びサポート材SAを硬化させるための硬化手段24と、前記造形材吐出手段、ローラ部25及び硬化手段24を備えるヘッド部20と、前記ヘッド部20を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、前記ヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、前記水平駆動手段及び垂直駆動手段の駆動を制御し、かつ前記造形材吐出手段による前記造形材の吐出及び硬化手段24による硬化を制御する制御手段10と、を備え、前記ローラ部25の幅が、前記造形材吐出手段に設けられた前記モデル材吐出ノズル21の幅、及び前記サポート材吐出ノズル22の幅よりも狭く形成することができる。これにより、同一層を複数の領域に分けて造形した場合でも、ローラ部が造形物に衝突せず、既に造形した部分への接触を回避して、精度の良い造形が可能となり、また硬化後の樹脂を誤って回収し、吸引パイプを詰まらせる事態を回避できる。
【0013】
また、第2の側面に係る三次元造形装置によれば、前記造形材吐出手段で任意の各スライス層のデータに基づいて各層の形成を行う際、前回のスライスの位置からオフセットさせて印字させることができる。これにより、スライスによってローラ部が印加されない部位を変化させて、未回収の樹脂が残る影響を累積させず、均一にして抑制できる。
【0014】
さらに、第3の側面に係る三次元造形装置によれば、前記モデル材吐出ノズル21が、複数列、オフセット状に配置されてなり、前記ローラ部25の幅が、前記モデル材吐出ノズル21の複数列の和集合の幅よりも、狭く形成することができる。これにより、モデル材吐出ノズルをオフセット配置することで解像度を向上させると共に、オフセット配置されたモデル材吐出ノズルに対してローラ部の幅を短くして、同一層を複数の領域に分けて造形した場合でも、ローラ部を造形物に接触させず、精度の良い造形が可能となる。
【0015】
さらにまた、第4の側面に係る三次元造形装置によれば、前記モデル材吐出ノズル21の幅と前記サポート材吐出ノズル22の幅とを略等しくすることができる。
【0016】
さらにまた、第5の側面に係る三次元造形装置によれば、造形物の走査方向における前記モデル材MAとサポート材SAとが位置するラインにおいて、同一の往復走査で、前記モデル材MAとサポート材SAを同時に吐出させず、いずれか一方の造形材のみを吐出、硬化させることができる。これにより、同一の往復走査で、モデル材とサポート材を同時に吐出せず、いずれか一方のみを吐出、硬化させることで、同一ライン上で隣接するモデル材とサポート材との界面が共に流動状態となって混合される事態を回避でき、界面を綺麗に成形できる利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1に係る三次元造形装置を示すブロック図である。
【図2】変形例に係る三次元造形装置を示すブロック図である。
【図3】ヘッド部がXY方向に移動される様子を示す平面図である。
【図4】モデル材とサポート材で造形された造形物を示す斜視図である。
【図5】図4の断面図である。
【図6】ヘッド部の外観を示す斜視図である。
【図7】ローラ部で造形材の余剰分を除去する状態を示す斜視図である。
【図8】実施例1に係るローラ部の吐出ノズルとローラ本体の幅を示す模式平面図である。
【図9】造形物の同一層を複数の領域に分けて造形した状態を示す模式断面図である。
【図10】図10(a)はローラ部で樹脂の余剰分を回収した直後の理論上の形態、図10(b)は図10(a)の樹脂が自重で変形する様子を示す模式断面図である。
【図11】実施例2に係る方法で複数層を積層する状態を示す模式断面図である。
【図12】ローラ部の構造を示す斜視図である。
【図13】ローラ部で造形プレート上に造形物を複数の領域に分けて造形する様子を示す模式平面図である。
【図14】ローラ部の吐出ノズルとローラ本体の幅を示す模式平面図である。
【図15】図15(a)は図13の領域R1をローラ部で造形する状態、図15(b)は隣接する領域R2を造形する際にローラ部が硬化後の領域R1に接触する状態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための三次元造形装置を例示するものであって、本発明は三次元造形装置を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施例1)
【0019】
図1に、本発明の実施例1に係る三次元造形システム100のブロック図を示す。ここでは、三次元造形装置の一例として、インクジェット方式の三次元造形装置に適用する例を説明する。ただ、本発明は三次元造形装置をインクジェット方式に特定するものでなく、他の方式、例えば粉末法、光造形法、シート積層法、押し出し法等の積層造形法を用いた三次元造形装置に対しても利用できる。この三次元造形システム100は、造形材を流動状態でインクジェット方式によって吐出、硬化させ、これを積層することによって任意の造形物を製造するものである。造形材には、最終的な造形物を構成するモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支えるために造形され、最終的に除去されるサポート材SAとが利用される。
【0020】
図1に示す三次元造形システム100は、三次元造形装置2に造形データならびに造形条件である設定データを送出する設定データ作成装置1(図1ではコンピュータPC)と、三次元造形装置2で構成される。三次元造形装置2は、制御手段10と、ヘッド部20と、造形プレート40とを備える。ヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAを吐出するモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するサポート材吐出ノズル22を備えている。またこれらの吐出された造形材から余剰分を掻き取ることによりその時点での造形物の最上層の厚みの適正化を図ると共に、造形材の表面を平滑化するためのローラ部25と、造形材を硬化させる硬化手段24も、ヘッド部20に備えられる。さらにヘッド部20を水平方向において、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって、造形プレート40上の適切な位置に吐出させるために、往復走査するX方向と、このX方向に直交するY方向に走査させるための水平駆動手段、及びヘッド部20と造形プレート40との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段として、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を備えている。ここで、Y方向とはモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズルが有する複数のオリフィスが配列した並び方向であり、X方向は水平面内においてこのY方向と直交する方向である。
【0021】
コンピュータPCは、三次元形状の造形物の基礎データ、例えば三次元CAD等で設計されたモデルデータの入力を外部から受けると、まずこのCADデータを、例えばSTL(Stereo Lithography Data)データに変換し、更にこのSTLデータを複数の薄い断面体にスライスして得られる断面データを生成し、そしてこのスライスデータを、一括又は各スライス層単位にて三次元造形装置2に対して送信を行う設定データ作成装置1として機能する。この際、三次元CAD等で設計されたモデルデータ(実際は、変換後のSTLデータ)の造形プレート40上における姿勢の決定に対応し、この姿勢におけるモデル材MAにて形成されるモデルを支持することが必要な空間又は箇所に対して、サポート材SAを設ける位置の設定が行われ、これらのデータを元に各層に対応するスライスデータが形成される。制御手段10は、コンピュータPCからの断面データを取り込み、そのデータに従ってヘッド部20、XY方向駆動部31及びZ方向駆動部32を制御する。この制御手段10の制御により、XY方向駆動部31が作動すると共に、ヘッド部20のモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAを、小滴として造形プレート40上の適切な位置に吐出することにより、コンピュータPCから与えられた断面データに基づく断面形状が造形される。そして造形プレート40上に吐出された造形材の一であるモデル材MAは少なくとも硬化されて液体又は流体状態から固体に変化して硬化する。このような動作によって一層分の断面体すなわちスライスが作り出される。なお、スライスデータは、三次元造形装置2側で生成してもよいが、その際においても、各スライス層の厚み等のオペレータが決定しなくてはならない造形パラメータはコンピュータPC側から三次元造形装置2へ送信しなければならない。
(スライス)
【0022】
ここで「スライス」とは、造形物のz方向の積層単位であり、スライス数は高さを積層厚で除算した値となる。実際には、各スライスの厚みを決定する要件としては、各吐出ノズルからの吐出可能な最小限の単位吐出量やローラ部25のローラの上下方向における偏心によるばらつき等によって、設定可能な最小の厚みが決定される。このような観点に基づいて設定された値をスライスの最小値として、後は、ユーザが造形物に対して、求める、例えば、造形精度や造形速度の観点から各スライス量を最終的に決定できる。つまり、ユーザが造形精度を優先することを選択すれば、上述したスライス最小値又はその近傍の値にて各スライス量を決定し、一方造形速度を優先すれば、最低限の造形精度を維持した各スライス量を決定することができる。または、別の方法としては、造形精度と造形速度の比率をユーザに感覚的に選択させる方法や、ユーザに許容可能な最大造形時間を入力させることにより、いくつかの造形時間と造形精度の組み合わせを候補として表示し、その中からユーザが好む条件を選択させることも可能である。
【0023】
また、一つのスライスデータに対する造形行為は、少なくともヘッド部20をX方向(ヘッド部20の主走査方向)に往復動作する際の少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から造形材を液体又は流体状態でインクジェット方式によって吐出させ、造形プレート40上に吐出された造形物が流動可能な状態にて、少なくとも往路又は復路にてその流動可能な造形物の表面を平滑化するためにローラ部25を作用させると共に、平滑化された造形物の表面に対して、硬化手段24から特定波長の光を照射することにより、造形物を硬化させる一連のステップを少なくとも一回行うことで行われるが、この回数は、スライスデータの厚みや要求される造形精度によって自動的に変更されることはいうまでもない。なお、造形に用いる造形材料が、所定の温度によって硬化するものであれば、本発明においては硬化手段24を冷却または加熱手段とすることもでき、また自然硬化できる場合には硬化手段を省略することもできる。
【0024】
一方、また少なくとも往路又は復路にてモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から吐出され、造形プレート上に形成される一回の最大の厚みは、吐出された液滴の着弾後の断面形状が略円形を留めることが可能な単位吐出量によって決まる。
(造形プレート40)
【0025】
造形プレート40は、Z方向駆動部32によって昇降自在としている。一スライスが形成されると、制御手段10によってZ方向駆動部32が制御され、造形プレート40は一スライス分の厚さに相当する距離だけ降下する。そして上記と同様な動作を繰り返し行うことにより一スライス目の上側(上表面)に新たなスライスが積層される。このように連続的に作り出された幾層もの薄いスライスが積層されて造形物が造形される。
【0026】
また、造形物がZ方向(つまり高さ方向において)、高さ方向で下方に位置する造形部分よりX−Y平面で張り出した、いわゆるオーバーハング形状を有する場合には、コンピュータPCにおいて造形物をデータ化する際に必要に応じてオーバーハング支持部形状が付加される。言い換えれば、オーバーハング形状を有する造形物とは、既に成形されたモデル材のスライスが存在しない部分の上表面に新たなモデル材のスライスが成形される部分(オーバーハング部)を有する造形物である。そして制御手段10は、最終造形物を構成するモデル材MAの造形と同時に、そのオーバーハング支持部形状に基づいて、オーバーハング支持部SBを造形する。具体的には、モデル材MAとは別のサポート材SAを、サポート材吐出ノズル22から小滴として吐出させることにより、オーバーハング支持部SBを形成する。造形後に、オーバーハング支持部SBを構成するサポート材SAを除去することで、目的の三次元造形物を得ることができる。
【0027】
ヘッド部20は、図3の平面図に示すように、ヘッド移動手段30により水平方向、すなわちXY方向に移動される。ヘッド部20は、図において上下にそれぞれ配置された一対のX方向(主走査方向)ガイド機構であるX方向移動レール43に支持される。ヘッド部20を支持する基台側には、X方向への駆動部(図示せず)が、一方のX方向移動レール43に沿って設けられている。また、ヘッド部20をX方向移動レール43上に載置する門型のフレームに、ヘッド部20をY方向(副走査方向)に移動させるためのY方向移動レール44が設けられる。またヘッド部20をY方向移動レール44に沿って駆動するための駆動部(図示せず)が載置される。これらの駆動部によってヘッド部20は、XならびにY方向に移動することが可能となっている。
【0028】
さらに図4の例に示すヘッド部20は、吐出ノズルを設けた吐出ヘッドユニット20Aと、ローラ部及び硬化手段を設けた回収硬化ヘッドユニット20Bとに分割されている。吐出ヘッドユニット20Aと回収硬化ヘッドユニット20Bとの間には、ヘッド部20を移動させるためのY方向移動レール44を通すレールガイド45が設けられている。ヘッド部20は、図3の平面図に示すように、Y方向移動レール44に沿ってY方向に往復移動する。さらにY方向移動レール44の両端は、ヘッド移動手段30で支承されている。ヘッド移動手段30は、造形プレート40を上下方向に跨ぐように、造形プレートの上下に沿って平行に設けた一対のX方向移動レール43に沿ってX方向に往復移動する。これによってヘッド部20は、造形プレート上でXY平面上の任意の位置に移動できる。
【0029】
さらに造形プレート40が、図1に示すようにプレート昇降手段(Z方向駆動部32)によって高さ方向、すなわちZ方向に移動される。これによって、ヘッド部20と造形プレート40の相対高さを変更でき、立体的な造形が可能となる。より詳細には、まずヘッド部20は、ヘッド移動手段30によりモデル材吐出ノズル21及びサポート材吐出ノズル22より造形材としてのモデル材MAならびにサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出するために、X方向に往復動作され、各吐出ノズル21、22に各々設けられる複数のY方向に伸びるオリフィスから、モデル材MA及びサポート材SAが吐出される。さらに、図3に示すように、各吐出ノズル21、22のY方向の幅が、造形プレート40上の造形可能なY方向の幅より小さい場合で、且つ造形用のモデルデータのY方向の幅が、Y方向に伸びるオリフィスの全長より大きい場合は、各吐出ノズル21、22の所定の位置におけるX方向の往復動作の後、Y方向に各吐出ノズル21、22を所定量シフトさせ、その位置でのX方向の往復走査と共に、モデル材MA及びサポート材SAをスライスデータに基づいた適切な箇所に吐出させることを繰り返すことにより、設定された全ての造形データに対応した造形物の生成を行う。
【0030】
なお図1の例では、Z方向駆動部32として造形プレート40を昇降させるプレート昇降手段を用いているが、この例に限られず、図2に示す三次元造形装置2’のように、造形プレート40側を高さ方向に固定し、ヘッド部側をZ方向に移動させるZ方向駆動部32’を採用することもできる。また、XY方向への移動も、ヘッド部側を固定して、造形プレート側を移動させてもよい。また、上述したような、ヘッド部20のY方向へのシフトは、各ノズルの幅を、実質的に造形プレート40の造形可能なY方向の幅と同じにすれば、その必要はないが、その際においても、例えばノズルに設けられるオリフィスの間隔で決定される造形物のY方向の解像度を高める目的として、ヘッド部20のY方向へのシフトにより、各オリフィスが、先の造形時におけるオリフィスとオリフィスの間に位置するようにシフトさせてもよい。
(制御手段10)
【0031】
制御手段10は、造形材の吐出パターンを制御する。すなわちモデル材MA及びサポート材SAを、X方向における往復走査の内、少なくとも往路又は復路の一方にて造形材吐出手段により造形プレート40上に吐出させながら、ヘッド部20をX方向に往復走査させて、造形材吐出手段により造形材が造形プレート上に吐出された後で、且つ往路又は復路の少なくともいずれか一方で、モデル材MA及びサポート材SAに対して硬化手段24で硬化させることにより、スライスを生成し、高さ方向に造形プレート40とヘッド部20の相対位置を移動させて、スライスの積層を繰り返すことにより造形を実行する。なお、詳細は後述するが、ローラ部25による造形材表面の平滑化は、造形材吐出手段により造形材が造形プレート上に吐出された後で、且つ硬化手段24にて造形材の表面が硬化させる前に、往路又は復路の少なくともいずれか一方で、行われる。
【0032】
この制御手段10は、一回のX方向への往復走査でモデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方の造形材を吐出して、ローラ部25による造形材表面の平滑化と余剰分の除去を行い、更に硬化手段24により硬化させてから、次回以降の往復走査で、吐出されなかった他方の造形材を吐出して、造形材表面の平滑化を行い、硬化させる。これら一連の工程を少なくとも一回行うことにより、一枚のスライスの生成を行う。いうまでもなく、一層のスライスデータに対応した上記一連の工程は、例えばユーザの求める最終的なモデルの表面精度や造形時間に応じて、複数回繰り返すことが含まれる。これにより、モデル材MA又はサポート材SAのいずれか一方を流動可能な状態でその表面を平滑化し、そして硬化させた後、他方を吐出することで個別に硬化でき、これらモデル材MAとサポート材SAの界面における混合を効果的に回避できる利点が得られる。
【0033】
なお、この例では先にモデル材MAを吐出し、次いでサポート材SAを吐出させる例を説明したが、逆にサポート材を先に吐出させ、次いでモデル材を吐出させてもよい。また、この例ではいずれか一方の造形材をまず吐出して、これを硬化させた後に、他方の造形材を吐出して硬化させるという、モデル材とサポート材を個別に吐出、硬化させて造形する方法を説明した。ただ、この方法に限られず、モデル材とサポート材を同時に吐出させることも可能である。
(造形材)
【0034】
上述の通り、造形材には、最終的な造形物となるモデル材MAと、このモデル材MAが張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材SAが用いられる。図4に、球状のモデル材MAの周囲を直方体状のサポート材SAで覆うようにして造形された造形物の斜視図を、図5にこの断面図を、それぞれ示す。
(硬化手段24)
【0035】
モデル材MAには、光硬化樹脂、例えば紫外線硬化樹脂が使用できる。この場合、硬化手段24は少なくともモデル材MAの材料が反応して硬化する特定波長を含む光を照射する光照射手段であり、例えば紫外線ランプ等の紫外線照射手段である。紫外光ランプには、ハロゲンランプや水銀灯、LED等が利用できる。またこの例では、サポート材SAも紫外線硬化樹脂としている。同じ波長の紫外線で硬化する紫外線硬化樹脂を使用する場合は、同じ紫外線照射手段を利用でき、光源を共通化できる利点が得られる。
(モデル材MA)
【0036】
またモデル材MAとして、熱可塑性樹脂を使用することもできる。この場合、硬化手段24は、冷却手段となる。なおモデル材とサポート材にいずれも熱可塑性樹脂を使用する場合は、モデル材の融点をサポート材の融点よりも高いものを採用することにより、積層完了後に造形物をサポート材の融点より高く、モデル材の融点より低い温度に加熱、保温することにより、サポート材を溶融除去することができる。さらに、モデル材とサポート材の一方を光硬化樹脂、他方を熱可塑性樹脂とすることもできる。
【0037】
あるいは、硬化材との化学反応により硬化可能な材料をモデル材に用いることもできる。さらにモデル材は、粘度や表面張力等の噴射特性を調整するために、必要に応じて液体改質剤を混合してもよい。また温度調整によって噴射特性を変更することもできる。モデル材の他の例としては、紫外線フォトポリマー、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン等が挙げられる。
(サポート材SA)
【0038】
サポート材SAは、基本的には、上述したモデル材と同様な材料を用いることができる。ただ、サポート材は最終的に容易に除去できる材料としたいとの観点から、モデル材と類似した材料に更に除去可能な材料を添加することが望ましい。このため、具体的には水膨潤ゲル、ワックス、熱可塑性樹脂、水溶性材料、溶解性材料等が使用できる。サポート材SAの除去には、サポート材の性質に応じて水溶、加熱、化学反応、水圧洗浄等の動力洗浄や電磁波の照射により溶解させる、熱膨張差を利用した分離等の方法が適宜利用できる。
【0039】
サポート材は、最終的に除去されるため、除去しやすいような特性が求められる。例えば水溶性のサポート材は、造形物が造形された後、水槽に投入することでサポート材を溶融させて除去することができる。一方で、サポート材の可溶性を高めるほど、サポート材の強度が低下し、湿度が高いと潮解し、型崩れしたり垂れる等が起こりやすくなる。サポート材の剛性が不十分になると、モデル材を支持する能力が低下し、サポート材の上面にモデル材を造形することが難しくなり、モデル材の精度が低下するおそれもある。その一方でサポート材の剛性を高めると、最終造形物からサポート材を除去する際に、水に溶出し難くなり、除去に時間がかかる。このようにサポート材には相反する特性が求められる結果、最適な特性を備えるサポート材を得ることが従来は困難であった。
【0040】
そこで本実施例のように、サポート材として例えば、水溶性の材料を用いる場合は、サポート材SAの外殻としてサポート殻SSを形成することにより、造形装置におけるモデルの造形中にサポート材が直接空気に触れることを極力抑制でき、その結果サポート材が空気中の水分を吸収することが抑制できることにより、造形時における、サポート材の変形やサポート材の変形によるモデル材の変形を防止できる。さらに、サポート殻SSの形成により、内部のサポート材が空気中の水分を吸収することを抑制できるため、サポート材の水溶性としての性能を高めることができ、その結果、サポート材除去時に水等の溶液中に浸した場合のサポート材の溶出速度を高めることができる。この構成であれば、十分な剛性を備えつつ、除去の際には最外殻のサポート材SAを破ることで溶出を早め、サポート材の除去を短時間で行える利点が得られる。図4、図5の例では、直方体状の表面に被覆されたサポート殻SSを破断して、内部のサポート材SAを除去する。
(ヘッド部20)
【0041】
図6に、インクジェット方式の三次元造形装置のヘッド部20の一例を示す。この図に示すヘッド部20は、造形材吐出手段として、モデル材MAとサポート材SAの吐出を個別に行う専用の吐出ノズルを設けている。具体的には、モデル材MAを吐出するためのモデル材吐出ノズル21と、サポート材SAを吐出するためのサポート材吐出ノズル22を、平行に離間させて備えている。各吐出ノズルは、2つのノズル列23が設けられている。
【0042】
ヘッド部20では、左からサポート材吐出ノズル22、モデル材吐出ノズル21、ローラ部25、硬化手段24が一体的に設けられている。各吐出ノズルは、圧電素子方式のインクジェットプリントヘッドの要領で、インク状の造形材を吐出する。また造形材は、吐出ノズルから吐出可能な粘度に調整される。
【0043】
図6の例では、ヘッド部20が先にモデル材MAを吐出した後、サポート材SAを吐出している。またヘッド部20は往路(図において左から右)で造形材を吐出し、復路(図において右から左)では造形材の最表面からローラ部25にて余剰樹脂を掻き取り、平滑化を図った後、平滑化された樹脂を硬化手段24で硬化させている。
(ローラ部25)
【0044】
ヘッド部20はさらに、吐出されたモデル材MA及びサポート材SAの表面を流動可能な状態で押圧し、造形材の余剰分を除去することにより、造形材表面を平滑化するためのローラ部25を設けている。このようなローラ部25の動作の様子を、図7の模式図に基づいて説明する。この例では、吐出されたモデル材MAの表面を、流動可能な状態でローラ本体26で均す状態を示している。ローラ部25は、回転体であるローラ本体26と、ローラ本体26の表面に対して突出するように配置されたブレード27と、ブレード27で掻き取られた造形材を溜めるバス28と、バス28に溜まった造形材を排出する吸引パイプ29とを備えている。ローラ本体26は回転自在に支承されており、流動可能な樹脂を回転しながら押圧することにより、樹脂の表面を均しつつ、余剰分を掻き取って回収する。このローラ本体26はローラ本体26で余剰な樹脂を掻き取る際のヘッド部20の進行方向に対して逆回転(図7において時計回り)に回転され、流動可能な造形材を掻き上げる。掻き上げられた造形材は、ローラ本体26に付着してブレード27まで運ばれた後、ブレード27で掻き取られてバス28に案内される。このためブレード27は、ローラ本体26が樹脂表面に当接する際の進行方向に対して、ローラ本体26の後方の位置に配置され、バス28に向かって下り勾配の姿勢で固定される。同様に、バス(槽)28もローラ本体26に対してブレート27と同様な側に配置され、且つブレード27の下方に配置されている。また吸引パイプ29はポンプに接続されており、バス28に溜まった造形材を吸引して排出する。この例では、ローラ本体26の外形をφ20mm程度としている。
【0045】
このローラ部25は、図においてヘッド部20が右から左に進行する際に、掻き取りを行う。換言すると、左から右にヘッド部20が進行しつつ、スライスデータに基づいて、適切な位置にモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22から各々モデル材MAとサポート材SAを吐出する際は、ローラ部25は造形材に接触せず、同様に硬化手段24の光源からの照明も行われない。図においてヘッド部20の左から右への主走査方向の例えでは、往路にて少なくとも造形材の吐出が各ノズル21、22から実行された後の右から左方向への復路としての主走査方向において、上述したローラ部25の掻き取り動作が実行されると共に、少なくともモデル材MAを硬化するための光を照射する光源としての硬化手段24も動作することになる。
【0046】
なお硬化手段24の光源は、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22より進行方向に対して前方に配置されるため、光源を点灯していても、吐出され、ローラ部25によって平滑化される前の流動可能な樹脂に照射を行うことはない。その一方で、硬化手段24の光源を積極的に必要なタイミング以外は消灯することはもちろん可能である。また一方で、硬化手段を複数設ける構成としてもよい。例えば、硬化手段として第一硬化手段と第二硬化手段とを設け、吐出後の樹脂に対して第一硬化手段で予備的に硬化を行い、次いで第二硬化手段で樹脂をより一層硬化させる。このように硬化手段を多段構成とすることで、樹脂の硬化能力を十分に発揮させることができる。またこのような場合において、第一硬化手段が予備的な硬化に留まり、第一硬化手段を経ても樹脂に未だ十分な流動性が残っている場合は、第一硬化手段による予備硬化後に、ローラ部で樹脂余剰分の掻き取りを行い、その後に第二硬化手段で硬化を行うように構成してもよい。すなわち、すべての硬化手段がローラ部の次段側に配置されることを必ずしも要しない。
【0047】
図1、図6に示すように、ヘッド部20の進行方向に対してローラ部25は硬化手段24の前方、図において左側に配置されている。この結果、先に流動可能な造形材をローラ部25で掻き取った後、硬化手段24が造形材を硬化させる。このような配置によって、同一のパスで造形材の掻き取りと硬化を行うことができ、効率よく処理できる利点が得られる。
【0048】
なお、X軸方向に沿うサポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出ノズル21、ローラ部25及び硬化手段24の配列の基本的な考え方は、以下の通りである。ヘッド部20の主走査方向の往路方向をベースに考えると、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21は、いずれか一方が他方の前方に位置すればよい。このようなノズルのレイアウトに対して、ローラ部25ならびに硬化手段24は、ローラの作用を往路で行いたい場合は、往路進行方向において、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21の後方にローラ部25、硬化手段24の順で配置し、ローラの作用を復路で行いたい場合は、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21の復路の進行方向において後方にローラ部25、硬化手段24の順で配置すればよい。
【0049】
また、上記実施例においては、ヘッド部20から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行った後、硬化手段24によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためのUV光を照射する方法を採用した。
【0050】
ただ、この構成以外にも、上述の通り硬化手段を多段で構成することもできる。例えばヘッド部20から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、余剰樹脂層を含む最上層に対して、硬化手段24によって一旦光を照射した後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行い、その後再度硬化手段24によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためUV光を照射する方法もある。この場合、硬化手段24は、ヘッド部20において、X方向、つまりヘッド部20の主走査方向で、サポート材吐出用ノズル22、モデル材吐出用ノズル21を挟む前後方向に一対の硬化手段を設けることにより、上述のような二度の照射を行うことができる。
【0051】
また、この場合、一度目の照射と二度目の照射を合わせて、最終的に所望する樹脂の硬化の程度を達成するようになるため、一度目の照射後の樹脂は硬化状態ではなく、まだその後のローラ部25による掻き取り動作のために、流動可能な、半硬化状態である。このため、この場合においても、ローラ部25による樹脂の掻き取り前の最上層の状態は、未硬化または流動可能な状態と表現することとする。
(ローラ部25の幅)
【0052】
ここでローラ部25の幅は、造形材吐出手段に設けられたモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅よりも狭く形成している。なお、各ノズルには、ヘッド部20の主走査方向に直交する副走査方向と略平行となるように形成された複数の樹脂吐出用のオリフィスが所定の間隔を持って配列されている。
【0053】
そして、上述した各ノズルの幅とは、各ノズルにおける副走査方向における両端部に位置するオリフィス間の距離を意味している。つまり、ローラ部25の幅が、各ノズルにおける副走査方向における両端部に位置するオリフィス間の距離より狭いことを意味する。
【0054】
なお、ここでのオリフィス間の距離とは、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22の各々に設けられる各々のオリフィスが、ヘッド部20に対して、X方向、つまりヘッド部20の主走査方向において、一直線状に配置されるようになっていることを前提とした定義である。言い換えると、モデル材吐出ノズル21の一つ一つのオリフィスから吐出される主走査方向における位置と、サポート材吐出ノズル22の一つ一つのオリフィスから吐出される主走査方向の位置が全て重なるように、ヘッド部20に対して、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22が位置決めされ、配置されていることを前提としている。
【0055】
また、複数のモデル材吐出ノズル21と複数のサポート材吐出ノズル22を用いると共に、一つのモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に対して、他方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22を副走査方向にオフセットし、ヘッド部20に対して、位置決めして用いられる場合がある。
【0056】
元々、このような複数のモデル材吐出ノズル21、図では二つと複数のサポート材吐出ノズル22を用いる場合の基本的な狙いは、一方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に設けられるオリフィスの副走査方向の位置を、他方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に設けられるオリフィスの副走査方向の位置に対してオフセットさせることにより、モデル材やサポート材のY方向における解像度を向上させることである。
【0057】
つまり、一方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に設けられる二つの隣接するオリフィスの間に、他方のモデル材吐出ノズル21やサポート材吐出ノズル22に設けられるオリフィスを副走査方向において配置するような位置決めを行うことである。
【0058】
このような場合、本件発明でのローラ部25の幅を造形材吐出手段に設けられたモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅よりも狭く形成するという意味合いは以下のようになる。
【0059】
複数のモデル材吐出ノズル21を副走査方向にオフセットして配置した場合におけるモデル材吐出ノズル21の幅とは、複数のモデル材吐出ノズル21の中で、副走査方向の一端部において最も外側に配置されるオリフィスの位置から、副走査方向の他端部において最も外側に配置されるオリフィスの位置までの距離より、ローラ部25の幅を狭くするという意味である。これは、同じシステムに採用される複数のサポート材吐出ノズル22においても同様である。また、上述した基本システムと同様に、このシステムにおいても、モデル材吐出ノズル21の一つ一つのオリフィスから吐出される主走査方向における位置と、サポート材吐出ノズル22の一つ一つのオリフィスから吐出される主走査方向の位置が全て重なるように、ヘッド部20に対して、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22が位置決めされ、配置されていることを前提としている。
【0060】
また、上述したローラ部25の幅とは、ローラ部25における軸方向、つまり副走査方向においてローラ部25が持つローラ表面において、余剰樹脂を掻き取る際に用いられる実質的な幅を意味しており、見かけ上の幅がモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅よりも大きくても、実質的にローラ部本来の機能である、掻き取り機能を果たすローラの幅がモデル材吐出ノズル21の幅、及びサポート材吐出ノズル22の幅より狭ければよい。
【0061】
更に、その際ローラの端部に形成される実質的に余剰樹脂を掻き取る機能のないローラ部から実質的に余剰樹脂を掻き取るローラ部へは、段部をつけることによりローラの径を変化させてもよく、またローラの端部に形成される実質的に余剰樹脂を掻き取る機能のないローラ部から実質的に余剰樹脂を掻き取るローラ部に向けて徐々にローラ部の径を連続的に変化させたものであってもよい。
【0062】
図8に、ヘッド部20の底面図の一例を示す。この図に示す例では、モデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22は、それぞれ吐出ノズルを2列並べてオフセット配置している。各モデル材吐出ノズル21の幅D1とサポート材吐出ノズル22の幅D2は、ほぼ等しくしており、またオフセット量もほぼ等しくしているため、吐出ノズル全体の吐出幅DNもモデル材吐出ノズル21とサポート材吐出ノズル22とでほぼ等しくなる。そしてローラ部25の幅DRは、吐出ノズルの吐出幅DNよりも狭くしている。このようにローラ部25の幅を吐出幅DNよりも短くすることにより、図9に示すように同一層(スライス)を複数の領域に分けて造形した場合でも(図9の例では領域R1、R2)、ローラ部25が右側の領域R2を押圧する際に、既に造形した部分(図9において左側の領域R1)に接触せず、精度良く大面積の造形を可能とする。また硬化後の樹脂を誤って回収することがないので、吸引パイプを詰まらせてしまう事態も回避できる。またローラ部の振れ、傾きの調整量は1スライス分の厚み以下で良いことになり、ローラ部の作成、取り付け時の調整の難度を低減させることができる。ここで、ローラ部25の幅はモデル材吐出ノズル及びサポート材吐出ノズルの両端部に位置するオリフィスよりも内側にオリフィス間の間隔の半ピッチ分だけ短く形成される(0.5mm)。例えば、オリフィス間の間隔が1mmである場合は、ローラ部25の幅はモデル材吐出ノズル及びサポート材吐出ノズルの両端部に位置するオリフィスから各0.5mm分ずつ短く形成される。
【0063】
なお、ローラ部25を吐出幅よりも短くすることにより、図9で示す破線で囲んだ部分のように、ローラ部25で樹脂を回収できない部分が存在することになる。ただ、ローラ部25が樹脂の余剰分を回収した直後では、樹脂は液体状であることから、図10(a)に示すような状態には維持されず、自重によって形状を保てない結果、図10(b)に示すようにたれる。この結果、ローラ部25ですべて回収したときとほぼ変わらない造形となり、実用上の問題は殆ど生じない。実際の例においては、造形物の最上表面から掻き取る余剰樹脂の厚みは、例えば数十μm未満の厚み、より好ましくは50μm以下であり、掻き取り残した部分の樹脂の高さもそれと同様の高さとなることからも実用上の問題がないと言える。
【0064】
また、造形材吐出手段で任意の厚みを有するスライスデータに基づいた樹脂の吐出を行う際、前回の副走査方向における樹脂吐出位置から副走査方向にオフセットさせて印字させることもできる。このように、各スライス層毎にローラ部25が印加されない部位を変化させて、未回収の樹脂が残る影響を累積させず、均一にして抑制できる。
【0065】
より詳細には、最初のスライス層を所定の副走査位置にて主走査方向に移動を行いながら樹脂の吐出を行い、その副走査位置を維持してローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行った後、次のスライス層を上述した所定位置から副走査方向に一定距離移動した後、その副走査位置において、主走査方向に移動を行いながら樹脂の吐出を行い、その副走査位置を維持してローラ部25による余剰樹脂の掻き取りを行うこととなる。
【0066】
さらに、図8に示すように、モデル材吐出ノズル21を、複数列、オフセット状に配置した状態では、ローラ部25の幅を、モデル材吐出ノズル21の複数列の和集合の幅よりも狭く形成することが好ましい。これにより、モデル材吐出ノズル21をオフセット配置することで解像度を向上させると共に、オフセット配置されたモデル材吐出ノズル21に対してローラ部25の幅を短くして、同一スライスを複数の領域に分けて造形した場合でも、ローラ部25を造形物に接触させず、精度の良い造形が可能となる。
(実施例2)
【0067】
さらに、ローラ部が印加されない部位をスライスによって変化させることにより、未回収の樹脂が残る影響を累積させないようにすることもできる。すなわち、スライス毎に領域の境目の位置を変化させることで、境界部分のみが高くなる事態を抑制できる。例えば、図11の実施例2では、前段で吐出した領域同士の境界P1の中間に、次段の境界P2が位置するよう、制御手段10で樹脂の吐出位置をオフセットさせている。これにより、前回のスライスの結果、若干高く造形されたとしても、次のスライスでは流動状態の樹脂が盛り上がった分をローラ部25で回収されるため、高さ方向への影響は累積せず、未回収の樹脂が残る問題を回避、抑制できる。
【0068】
このように、上記実施例によれば造形物の吐出に際して同一スライスを複数の領域に分けて造形した場合でも、ローラ部を硬化後の樹脂に衝突させることを回避して、造形物の品質を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の三次元造形装置は、インクジェット方式で紫外線硬化樹脂を積層した三次元造形に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0070】
100…三次元造形システム
1…設定データ作成装置
2、2’…三次元造形装置
10…制御手段
20…ヘッド部;20A…吐出ヘッドユニット;20B…回収硬化ヘッドユニット
21…モデル材吐出ノズル
22…サポート材吐出ノズル
23…ノズル列
24…硬化手段
25…ローラ部
26…ローラ本体
27…ブレード
28…バス
29…吸引パイプ
30…ヘッド移動手段
31…XY方向駆動部
32、32’…Z方向駆動部
40…造形プレート
43…X方向移動レール
44…Y方向移動レール
45…レールガイド
MA…モデル材
SA…サポート材
SS…サポート殻
PC…コンピュータ
SB…オーバーハング支持部
D1…モデル材吐出ノズルの幅
D2…サポート材吐出ノズルの幅
DN…吐出ノズル全体の吐出幅
Dr、DR…ローラ部の幅
P1…前段の境界;P2…次段の境界
R1〜R3…領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形プレート(40)上に、造形材として、
最終的な造形物となるモデル材(MA)と、
前記モデル材(MA)が張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材(SA)と、
を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置であって、
造形物を載置するための前記造形プレート(40)と、
前記モデル材(MA)を吐出するためのモデル材吐出ノズル(21)、及び前記サポート材(SA)を吐出するためのサポート材吐出ノズル(22)を、造形材吐出手段と、
前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)が流動可能な状態でこれを上面から押圧して、該モデル材(MA)又はサポート材(SA)の余剰分を掻き取るためのローラ部(25)と、
前記モデル材(MA)及びサポート材(SA)を硬化させるための硬化手段(24)と、
前記造形材吐出手段、ローラ部(25)及び硬化手段(24)を備えるヘッド部(20)と、
前記ヘッド部(20)を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、
前記ヘッド部(20)と造形プレート(40)との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、
前記水平駆動手段及び垂直駆動手段の駆動を制御し、かつ前記造形材吐出手段による前記造形材の吐出及び硬化手段(24)による硬化を制御する制御手段(10)と、
を備え、
前記ローラ部(25)の幅が、前記造形材吐出手段に設けられた前記モデル材吐出ノズル(21)の幅、及び前記サポート材吐出ノズル(22)の幅よりも狭く形成されてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載される三次元造形装置であって、
前記造形材吐出手段で任意の各スライス層のデータに基づいて各層の形成を行う際、前層前回のスライスの位置からオフセットさせて印字させてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載される三次元造形装置であって、
前記モデル材吐出ノズル(21)が、複数列、オフセット状に配置されてなり、
前記ローラ部(25)の幅が、前記モデル材吐出ノズル(21)の複数列の和集合の幅よりも、狭く形成されてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
前記モデル材吐出ノズル(21)の幅と前記サポート材吐出ノズル(22)の幅とが略等しいことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
造形物の走査方向における前記モデル材(MA)とサポート材(SA)とが位置するラインにおいて、同一の往復走査で、前記モデル材(MA)とサポート材(SA)を同時に吐出させず、いずれか一方の造形材のみを吐出、硬化させてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項1】
造形プレート(40)上に、造形材として、
最終的な造形物となるモデル材(MA)と、
前記モデル材(MA)が張り出した張り出し部分を支え、最終的に除去されるサポート材(SA)と、
を少なくとも一方向に走査しながら吐出させ、かつこれを硬化させる動作を繰り返すことで、高さ方向に所定の厚みを有するスライスを層状に生成し、該スライスを高さ方向に積層していくことにより造形を行う三次元造形装置であって、
造形物を載置するための前記造形プレート(40)と、
前記モデル材(MA)を吐出するためのモデル材吐出ノズル(21)、及び前記サポート材(SA)を吐出するためのサポート材吐出ノズル(22)を、造形材吐出手段と、
前記モデル材(MA)又はサポート材(SA)が流動可能な状態でこれを上面から押圧して、該モデル材(MA)又はサポート材(SA)の余剰分を掻き取るためのローラ部(25)と、
前記モデル材(MA)及びサポート材(SA)を硬化させるための硬化手段(24)と、
前記造形材吐出手段、ローラ部(25)及び硬化手段(24)を備えるヘッド部(20)と、
前記ヘッド部(20)を水平方向に往復走査させるための水平駆動手段と、
前記ヘッド部(20)と造形プレート(40)との高さ方向の相対位置を移動させるための垂直駆動手段と、
前記水平駆動手段及び垂直駆動手段の駆動を制御し、かつ前記造形材吐出手段による前記造形材の吐出及び硬化手段(24)による硬化を制御する制御手段(10)と、
を備え、
前記ローラ部(25)の幅が、前記造形材吐出手段に設けられた前記モデル材吐出ノズル(21)の幅、及び前記サポート材吐出ノズル(22)の幅よりも狭く形成されてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載される三次元造形装置であって、
前記造形材吐出手段で任意の各スライス層のデータに基づいて各層の形成を行う際、前層前回のスライスの位置からオフセットさせて印字させてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載される三次元造形装置であって、
前記モデル材吐出ノズル(21)が、複数列、オフセット状に配置されてなり、
前記ローラ部(25)の幅が、前記モデル材吐出ノズル(21)の複数列の和集合の幅よりも、狭く形成されてなることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
前記モデル材吐出ノズル(21)の幅と前記サポート材吐出ノズル(22)の幅とが略等しいことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載される三次元造形装置であって、
造形物の走査方向における前記モデル材(MA)とサポート材(SA)とが位置するラインにおいて、同一の往復走査で、前記モデル材(MA)とサポート材(SA)を同時に吐出させず、いずれか一方の造形材のみを吐出、硬化させてなることを特徴とする三次元造形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−67119(P2013−67119A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208221(P2011−208221)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]