説明

三次元配管組立装置

【課題】斜めの配管に対してもフランジを軸直角に正確に溶接することができ、また、作業者の技量に左右されることなく精度の高い溶接組立作業を1人作業で容易かつ短時間で行うことができる三次元配管組立装置を提供すること。
【解決手段】曲がり管又は枝管付き配管の端部にフランジを取り付けるための三次元配管組立装置において、所定高さで水平に配設した主軸4と、主軸4に軸方向に移動可能に設けられた分度器状の1対の主板5a、5bと、各主板5a、5bに隣接して主軸4に揺動可能に枢支されるとともに、長さ調整可能に設けられた角度調整アーム10a、10bと、角度調整アーム10a、10bの先端に設けられ、配管のフランジ30a、30bを固定するフランジ固定板23a、23bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲がり管や枝管付き配管の端部にフランジを所定角度で正確に取り付けるための三次元配管組立装置に関し、特に、機械装置等における潤滑油配管等に適用して好適な三次元配管組立装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直管又は曲がり管等の配管の端部に、フランジを直角度で正確に取り付けるための三次元配管組立装置として、下記の特許文献1や特許文献2に記載のものがある。
これらは、いずれも配管全体の形状に対するフランジの取付角度が直角の場合を想定したものである。
したがって、フランジが同一平面上に位置している場合や、鉛直方向、水平方向等の三次元配置を想定してはいるが、水平、鉛直方向に対して斜め方向、すなわちある角度を有する場合は想定していない。
【0003】
すなわち、例えば、図5〜図6に示すような三次元的な配管において、端部のフランジを配管の軸線に対し正確な直角度で固定し溶接するためには、一方の端部から順にフランジ溶接用定規や差し金、水準器等を使って、繰り返し測定しながら組立を続行していく必要がある。
この際、極めてわずかな寸法誤差であっても、長い配管の端部に到達した時点では、その誤差が大きな影響を与え、隣接する配管との接続が困難になることもある。
【0004】
従来の三次元の配管組立方法では、水平や鉛直方向の配管に対して正確にフランジを取り付けるには好適であるが、斜め方向の配管に対してフランジを軸直角方向に正確に取り付けるには、(1)フランジ溶接用定規や差し金、水準器等を使っただけでは正確な位置決めができない、(2)分度器のような角度ゲージを使用したとしても、位置と角度を正確に合わせるためには繰り返し測定しながらの作業になるため作業時間がかかる、(3)作業者の技量により精度のばらつきが生じる、(4)長い寸法の配管はフランジ同士の相対的な位置を合致させるのが困難、(5)2人以上の作業者が必要になる等の欠点があった。
【特許文献1】特開平10−34385号公報
【特許文献2】特許第2920830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の三次元配管組立方法が有する問題に鑑み、斜めの配管に対してもフランジを軸直角に正確に溶接することができ、また、作業者の技量に左右されることなく精度の高い溶接組立作業を1人作業で容易かつ短時間で行うことができる三次元配管組立装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の三次元配管組立装置は、曲がり管又は枝管付き配管の端部にフランジを取り付けるための三次元配管組立装置において、所定高さで水平に配設した主軸と、該主軸に軸方向に移動可能に設けられた分度器状の複数の主板と、各主板に隣接して主軸に揺動可能に枢支されるとともに、長さ調整可能に設けられた角度調整アームと、該角度調整アームの先端に設けられ、配管のフランジを固定するフランジ固定板とを備えたことを特徴とする。
【0007】
この場合において、主軸に対する主板の固定位置を確認する目盛を主軸に設けることができる。
【0008】
また、主板に対する角度調整アームの固定角度を確認する目盛を主板に設けることができる。
【0009】
また、角度調整アームの調整長さを確認する目盛を該角度調整アームに設けることができる。
【0010】
また、角度調整アームを、角パイプからなる角度調整アーム本体と、該角度調整アーム本体に摺動可能に内挿される角パイプからなる長さ調整部材とにより構成し、角度調整アーム本体の角部に、長さ調整部材の角部を押圧固定する固定ネジを設けることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の三次元配管組立装置によれば、曲がり管又は枝管付き配管の端部にフランジを取り付けるための三次元配管組立装置において、所定高さで水平に配設した主軸と、該主軸に軸方向に移動可能に設けられた分度器状の複数の主板と、各主板に隣接して主軸に揺動可能に枢支されるとともに、長さ調整可能に設けられた角度調整アームと、該角度調整アームの先端に設けられ、配管のフランジを固定するフランジ固定板とを備えることから、配管の設計値に合わせて主板の位置決めと角度調整アームの角度設定及び長さ設定とを行うとともに、この角度調整アームのフランジ固定板にフランジを固定して配管との溶接を行うことにより、配管が三次元的でかつ斜め方向に屈曲しているような場合であっても、その端部に取り付けるフランジの位置及び角度を容易かつ短時間に調整して取り付けることができ、これにより、作業者の技量に左右されることなく精度の高い溶接組立作業が可能であり、長い寸法の配管であってもフランジ同士の相対的な位置決め作業が容易となり、1人の作業者でも容易に作業が行うことができる。
【0012】
この場合、主軸に対する主板の固定位置を確認する目盛を主軸に設けることにより、フランジの位置や、複数のフランジ同士の間隔の確認を容易に行うことができる。
【0013】
また、主板に対する角度調整アームの固定角度を確認する目盛を主板に設けることにより、フランジの取付角度の確認を容易に行うことができる。
【0014】
また、角度調整アームの調整長さを確認する目盛を該角度調整アームに設けることにより、フランジの主軸中心からの取付距離や位置を容易に確認することができる。
【0015】
また、角度調整アームを、角パイプからなる角度調整アーム本体と、該角度調整アーム本体に摺動可能に内挿される角パイプからなる長さ調整部材とにより構成し、角度調整アーム本体の角部に、長さ調整部材の角部を押圧固定する固定ネジを設けることにより、長さ調整部材の角度調整アーム本体内での固定を簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の三次元配管組立装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1〜図2に、本発明の三次元配管組立装置の第1実施例を示す。
なお、図1は本実施例の三次元配管組立装置の側面図であり、配管50を取り付けた状態を示し、図2は同実施例の正面図である。
この三次元配管組立装置1は、曲がり管又は枝管付き配管の端部にフランジを取り付けるためのもので、所定高さで水平に配設した主軸4と、該主軸4に軸方向に移動可能に設けられた分度器状の1対の主板5a、5bと、各主板5a、5bに隣接して主軸4に揺動可能に枢支されるとともに、長さ調整可能に設けられた角度調整アーム10a、10bと、該角度調整アーム10a、10bの先端に設けられ、配管のフランジ30a、30bを固定するフランジ固定板23a、23bとを備えている。
【0018】
主軸は、床に設置される架台2から立設された1対の支柱3により所定高さで水平に設置されている。
主軸4には主板5a、5bが取り付けられており、主板5a、5bはカラー6a、6bと一体化され、主軸4に対して回動可能に軸支されている。
主板5a、5bは、カラー6a、6bを主板固定ネジ7a、7bで主軸4に固定することにより、主軸4に固定することができる。
この際、主軸4に刻んだ位置目盛8を見ながら行えば、正確な位置に主板5a、5bを固定することができる。
【0019】
角度調整アーム10a、10bは主軸4に回動可能に軸支されている。
この角度調整アーム10a、10bは、それぞれの角度調整アーム固定ネジ11a、11bを、主板5a、5bに設けた円周溝9a、9bを通して、角度調整アーム10a、10bに設けたネジ穴12a、12bに装着して閉めることにより、角度調整アーム10a、10bを主板5a、5bに固定することができる。
この際、主板5a、5bに設けた角度目盛13a、13bを見ながら行うことにより、正確な角度で角度調整アーム10a、10bを主板5a、5bに固定することができる。
【0020】
また、角度調整アーム10a、10bは、図3〜図4に示すように、断面正方形の角パイプからなる角度調整アーム本体と、該角度調整アーム本体に摺動可能に内挿される断面正方形の角パイプからなる長さ調整部材20a、20bとにより構成されており、角度調整アーム本体の角部には、長さ調整部材20a、20bの角部を押圧固定する長さ調整部材固定ネジ21a、21bが設けられている。
長さ調整部材20a、20bの先端にはフランジ固定板23a、23bが軸直角に一体化されており、複数のフランジ固定ネジ24a、24bとナット25a、25bとにより、配管50のフランジ30a、30bをフランジ固定板23a、23bに固定することができる。
【0021】
この場合、図20〜図21に示すように、角度調整アーム10a、10bと長さ調整部材20a、20bとをスライド可能に重合した板棒状に構成することもできる。
長さ調整部材20a、20bは、角度調整アーム10a、10bに対してその長手方向にスライド可能なように配置し、長さ調整部材固定ネジ21a、21bを長さ調整部材20a、20bに設けた開口穴22a、22bを通して角度調整アーム10a、10bに設けた複数のネジ穴12a、12bに装着して締めることにより、長さ調整部材20a、20bを角度調整アーム10a、10bに固定することができる。
この際、角度調整アーム10aに刻んだ位置目盛14aを見ながら行うことにより、正確な位置に長さ調整部材20a、20bを固定することができる。
なお、主板5a、5bの間には、スペーサ35が主軸4に摺動可能に配設されており、主板5a、5bの近接位置を規定している。
【0022】
一方、フランジ30a、30bを取り付ける配管50は、その要素ユニットである直管、曲げ管、枝管を構成するためのT形継手等によりあらかじめ製作し、図1に示すように、ジャッキ等の高さ調整部品40を使用して位置調整を行い、三次元配管組立装置1に装着し、フランジ30a、30bを配管50の直管部51、55にそれぞれ溶接等により固定する。
なお、図2は三次元配管組立装置1のみの説明図であり、図1において配管50を取り付ける前の状態において、主板固定ネジ7a、7bをゆるめ、主軸4に対して主板5a、5bを回転させ、フランジ30a、30bが真下を向いた場合の部分断面図を示したものである。
【0023】
ここで、角度調整アーム10aの主板5aへの固定方法と、長さ調整部材20aの角度調整アーム10a内への固定方法とを、図3〜図4により説明する。
図3は、角度調整アーム10aを主板5aに固定していない状態、及び長さ調整部材20aを角度調整アーム10a内へ挿入しているが、固定していない状態の部分断面図である。
一方、図4は、角度調整アーム固定ネジ11aを角度調整アームのネジ穴12aにねじ込んで、角度調整アーム10aを主板5aに円周溝9aを介して固定している。
さらには、長さ調整部材固定ネジ21aを角度調整アーム10aの角部に設けたネジ穴に螺合して閉めこみ、長さ調整部材20aの角部に押し当てることにより、角度調整アーム10a内に固定することができる。
この際、図1に示すように、長さ調整部材20aに刻んだ位置目盛14aを見ながら行うことにより、正確な位置に長さ調整部材20a、20bを固定することができる。
なお、角度調整アーム10bの主板5bへの固定方法、及び長さ調整部材20bの角度調整アーム10b内への固定方法は同様であるのでその説明を省略する。
【0024】
図5〜図6は、本実施例の三次元配管組立装置によりフランジ30a、30bを取り付けた配管50を示している。
本配管50は、直管51〜55、曲げ管56〜58、T形継手59等により構成されており、フランジ60は直管54に軸直角に固定されている。
フランジ30a、30bは三次元配管組立装置1により正確に位置決めを行い、溶接等により取り付けたものである。
フランジ30a、30b以外の部品は、三次元配管組立装置1に組込んで位置決めした後に溶接してもよいし、別途組立を行った後に本装置1に組込んでフランジ30a、30bを溶接してもよい。
【0025】
図7〜図8は、例えば、圧縮機等の機械装置70に配管50を取り付けた場合の説明図であり、この配管50は機械装置70の軸受等への潤滑油用配管として用いられる。
この場合、フランジ30a、30bはその間隔L1、両者の角度θ1、機械装置70の中心からの距離R1、R2等の値によりその正確な位置が規定される。
フランジ60は図示しない別のフランジ付き配管により図示しない油圧源に配管される。
【0026】
次に、フランジ30a、30bを配管50に正確に位置決めして取り付ける場合の動作を説明する。
まず、配管50をその要素ユニット、すなわち直管51〜55、曲げ管56〜58、T形継手59を用いて製作する。
フランジ60は直管54に対して軸直角に取り付ける。なお、ここまでの製作工程は、以下に述べる図2のような動作を行い、図1のように組込んで製作してもよい。
【0027】
図2に示すように、フランジ30a、30bをそれぞれフランジ固定板23a、23bに、フランジ固定ネジ24a、24b、ナット25a、25bを用いて固定する。
また、主板固定ネジ7aでカラー6aを主軸4に固定することにより、主板5aを主軸4に固定する。
この際、角度目盛13a(角度目盛13bと同様、図1に示した主板5aの左側面に目盛っている)の0位置があらかじめ決められた所定の角度(例えば、水平方向)等になるように配慮する。
【0028】
次に、主軸4の中心とフランジ30aとの距離がR1となるように、長さ調整部材20aを角度調整アーム10aの内部でスライドさせ、長さ調整部材固定ネジ21aにより角度調整アーム10aに固定する。
この際、長さ調整部材20aに刻んだ位置目盛14aを見ながら行うと、正確にR1の値を出すことができる。
【0029】
次に、角度調整アーム10aを主軸4に沿って回転させ、角度調整アーム固定ネジ11aにより所定の角度位置に固定する。
例えば、図1の場合には、角度調整アーム10aが水平になるような角度に固定する。
【0030】
次に、主板固定ネジ7bにより、カラー6bを主軸4に固定することにより、主板5bを主軸4に固定する。
この際、角度目盛13bの0位置があらかじめ決められた所定の角度(例えば、水平方向)になるように配慮するとともに、フランジ30a、30bの間隔がL1となるように配慮する。
この場合、主軸4に刻んだ位置目盛8を見ながら行うとよい。
【0031】
次に、主軸4の中心とフランジ30bとの距離がR2となるように、長さ調整部材20bを角度調整アーム10bの内部でスライドさせ、長さ調整部材固定ネジ21bにより角度調整アーム10bを固定する。
この際、長さ調整部材20bに刻んだ位置目盛(14a相当)を見ながら行うと正確にR2の値を出すことができる。
【0032】
次に、角度調整アーム10bを主軸4を中心に回転させ、角度調整アーム固定ネジ11bにより所定の角度位置に固定する。
図1の場合には、角度調整アーム10bがあらかじめ決められた角度θ1になるように固定する。
【0033】
以上の結果、フランジ30a、30bが所定の間隔L1になるとともに、所定の位置寸法R1、R2、及び角度θ1を保って固定することができる。
そして、配管50を高さ調整部品40を利用して所定の高さ位置に調整し、直管部51、55をフランジ30a、30bに嵌合するように位置決めし、その状態を保って溶接によりフランジ30a、30bを配管の直管部51、55に固定する。
【0034】
このように、本実施例の三次元配管組立装置によれば、三次元的に配置された配管の端部にフランジを正確な直角度で溶接する作業において、フランジ30a、30bの位置を決めるための数値パラメータL1、R1、R2、θ1等を、いずれも単独で変更したり、微調整をしたりすることが可能であるため、配管が三次元的でかつ斜め方向に屈曲しているような場合であっても、機械装置の形状や位置寸法に合わせて正確にフランジを位置決めすることが可能となる。
しかも、溶接前のフランジ位置は、それぞれネジ止めにより調整し固定できるので、作業は短時間で正確に、しかも1人作業で行うことができる。
したがって、作業者の技量に左右されることなく精度の高い溶接組立作業が可能であり、長い寸法の配管であってもフランジ同士の相対的な位置決め作業が容易となり、1人の作業者でもできるようになる等の利点が得られ、その技術的効果には極めて顕著なものがある。
【実施例2】
【0035】
図9に、本発明の三次元配管組立装置の第2実施例を示す。
この実施例では、図2に示すフランジ30aとフランジ30bの距離L1が0の場合を示している。
この場合、主板5bを主板固定ネジ7bにより主軸4に固定するときに、角度調整アーム10a、10b間の距離を0にすることにより簡単に調整することができる。
このような場合を考慮して、フランジ固定板23a、23bは、長さ調整部材20a、20bの先端中央ではなく、角度調整アーム10a、10b同士の間隔が0になったときに両フランジ30a、30bが同位置(L1=0)となるように固定されている。
【0036】
この場合、図22に示すように、角度調整アーム10a、10bと長さ調整部材20a、20bとをスライド可能に重合した板棒状に構成することもできる。
また、主板5a、5bの間には、スペーサ35が主軸4に摺動可能に配設されており、主板5a、5bの近接位置を規定している。
【実施例3】
【0037】
図10〜図11及び図23〜図24に、本発明の三次元配管組立装置の第3実施例を示す。
なお、図1〜図2と同じ機能と動作を示す部品には同じ符号を記している。
この実施例では、図1〜図2に示す第1実施例とはフランジ66を取り付ける向きが異なる。
すなわち、本実施例では、長さ調整部材20bの先端に取り付けたフランジ固定板23bに、フランジ固定板固定ネジ61及びナット62により別のフランジ固定板63を取り付けている。
フランジ固定板63は板材を90度曲げたものであり、90度曲げた部分に複数のフランジ固定ネジ67及びナット68によりフランジ66を取り付ける。
【0038】
図12〜図13に、本実施例の三次元配管組立装置によりフランジ30a、66を取り付けた配管80を示す。
この配管80は、直管51〜54、71〜73、曲げ管56、57、74、75、T形継手59等により構成されており、フランジ60は直管54に軸直角に固定されている。
フランジ30a、66は、図10の三次元配管組立装置1により正確に位置決めを行い、溶接等により取り付けたものである。
【0039】
図14〜図15は、ある機械装置90に配管80を取り付けた場合の説明図であり、この配管80は機械装置90の軸受等への潤滑油用配管として用いられる。
この場合、フランジ30a、66は、その間隔L2、両者の位置角度θ1、機械装置90の中心からの距離R1、R3等の値によりその正確な位置が規定される。
なお、フランジ60は、図示しない別のフランジ付き配管により図示しない油圧源に配管される。
【0040】
次に、フランジ30a、66を配管80に正確に位置決めして取り付ける場合の動作を説明する。
まず、配管80をその要素ユニット、すなわち直管51〜54、71〜73、曲げ管56、57、74、75、T形継手59等を用いて製作する。フランジ60は直管54に対して軸直角に取り付ける。
さらに、図10に示すように、フランジ30a、66をそれぞれフランジ固定板23a、63に、フランジ固定ネジ24a、67、ナット25a、68を用いて固定する。
【0041】
次に、主板固定ネジ7aにより、カラー6aを主軸4に固定することにより、主板5aを主軸4に固定する。
この際、主板5aの側面に設けた角度目盛13aの0位置があらかじめ決められた所定の角度(例えば、水平方向)等になるように配慮する。
【0042】
次に、主軸4の中心とフランジ30aとの距離がR1となるように、長さ調整部材20aをスライドさせ、長さ調整部材固定ネジ21aにより角度調整アーム10aに固定する。
この際、長さ調整部材20aに刻んだ位置目盛14aを見ながら行うと正確にR1の値を出すことができる。
【0043】
次に、角度調整アーム10aを主軸4を中心に回転させ、角度調整アーム固定ネジ11aにより所定の角度位置に固定する。
図10の場合には、角度調整アーム10aが水平になるような角度に固定する。
【0044】
一方、主板固定ネジ7bにより、カラー6bを主軸4に固定することにより、主板5bを主軸4に固定する。
この際、角度目盛13の0位置があらかじめ決められた所定の角度(例えば、水平方向)になるように配慮するとともに、フランジ30a、66の間隔がL2となるように配慮する。
この場合、主軸4に刻んだ位置目盛8を見ながら行うとよい。
【0045】
次に、主軸4の中心とフランジ66間の距離がR3となるように、長さ調整部材20bをスライドさせ、長さ調整部材固定ネジ21bにより角度調整アーム10bに固定する。
この際、長さ調整部材20bに刻んだ図示しない位置目盛(14a相当)を見ながら行うと正確にR3の値を出すことができる。
【0046】
次に、角度調整アーム10bを主軸4を中心に回転させ、角度調整アーム固定ネジ11bにより所定の角度位置に固定する。
図10の場合には、角度調整アーム10bがあらかじめ決められた角度θ1になるように固定する。
以上の結果、フランジ30a、66が所定の間隔L2になるとともに、所定の寸法R1、R3、及び角度θ1を保って固定される。
そして、配管80を高さ調整部品40を利用して所定の高さ位置に調整し、直管部51、73をフランジ30a、66に嵌合するように位置決めし、その状態を保って溶接によりフランジ30a、66を配管の直管部51、73に固定する。
【実施例4】
【0047】
図16〜図18及び図25に、本発明の三次元配管組立装置の第4実施例を示す。
本実施例の三次元配管組立装置は、図16に示すように、図11に示す第3実施例のフランジ固定板63の代りにフランジ固定板100を取り付けたものである。
フランジ固定板100はθ3の角度で曲げた板であり、例えば、図17に示す機械装置101の端部102がθ3の角度の円錐状になっている場合で、図18に示すように、中心からR4、フランジ30aの位置からは角度θ2の角度位置において、機械装置101の端部102に軸直角にフランジ66を取り付ける場合に適用することができる。
【0048】
そして、機械装置101の端部102の角度θ3に合わせて、フランジ固定板100の曲げ角度θ3とすれば、精度よくフランジ66の位置と角度を構成することが可能となる。
この場合、θ3が別の角度になる場合は、それに合わせて曲げ角度θ3としたフランジ固定板100とすればよい。
【実施例5】
【0049】
さらに、図19及び図26に、本発明の三次元配管組立装置の第5実施例を示す。
本実施例の三次元配管組立装置は、図16に示す第4実施例のフランジ固定板100の代りに、フランジ自在固定部品110を取り付けたものである。
フランジ自在固定部品110は、固定ネジ113及びナット114によりフランジ固定板23bに固定されており、球形状の穴111及び自在アーム固定用ネジ112を備えている。
球形状の穴111には、その穴径より小さい球形ボール120が挿入され、球形ボール120は自在アーム121と一体化されており、自在アーム121の先端にはフランジ固定板122が軸直角に固定されている。
フランジ固定板122には、フランジ固定ネジ123とナット124によりフランジ125が固定されている。
【0050】
球形ボール120は、球形状の穴111に合致する大きさで自在に回動可能であり、自在アーム固定用ネジ112を締めることによりこの球形ボール120を固定する。
この自在アーム121の固定により、フランジ125を所望の角度で固定することができる。
この場合のフランジ125の位置は、球形ボール120の位置、すなわちフランジ30aとの間隔L2、主軸4の中心からの距離(半径)R5の値と、自在アーム121の長さ、図示しない角度計等によるフランジ125の取付角度等より算出することができる。
【0051】
このように本実施例によれば、フランジ125がどのような角度や位置であっても自由に調整し固定することができ、したがってフランジ125を図示しない配管等に対して所望の角度と位置に正確に取り付けることができる。
【0052】
かくして、本発明の各実施例の三次元配管組立装置によれば、三次元的に配置された配管の端部にフランジを正確な直角度で溶接する作業において、フランジ30a、30b、66、125の位置を決めるための数値パラメータL1、L2、R1、R2、R3、R4、R5、θ1、θ2、θ3等をいずれも単独で変更、あるいは微調整可能であるため、配管が三次元的でかつ斜め方向に屈曲しているような場合であっても、機械装置の形状や位置寸法に合わせて正確に位置決めすることが可能となる。
しかも、溶接前のフランジ位置はそれぞれネジ止めにより調整し固定できるので、作業は短時間で正確に、しかも1人作業で行うことができる。
したがって、作業者の技量に左右されることなく精度の高い溶接組立作業が可能であり、長い寸法の配管であってもフランジ同士の相対的な位置決め作業が容易となり、1人の作業者でもできるようになる等の利点が得られ、その技術的効果には極めて顕著なものがある。
【0053】
以上、本発明の三次元配管組立装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
例えば、本実施例では、フランジの形状はいずれも円形の場合を示したが、その形状は円形に限らず、矩形であったりその他の形状のフランジであっても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の三次元配管組立装置は、配管が三次元的でかつ斜め方向に屈曲しているような場合であっても、その端部に取り付けるフランジの位置及び角度を容易かつ短時間に調整して取り付けることができるため、精度の高い溶接組立作業が要求されるようなフランジ同士の位置決めをはじめとして、汎用の三次元配管の組立に広く好適に使用することができる。
例えば、機械装置等に潤滑油を給油又は廃油する際に用いる配管のフランジを精度よく取り付ける場合や、その他、原子力配管やエンジンの潤滑油配管等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の三次元配管組立装置の第1実施例を示す側面図である。
【図2】同正面図である。
【図3】同三次元配管組立装置の主板、角度調整アーム及び長さ調整部材の固定前の状態を示す断面図である。
【図4】同三次元配管組立装置の主板、角度調整アーム及び長さ調整部材の固定後の状態を示す断面図である。
【図5】同三次元配管組立装置で製作した配管を示す正面図である。
【図6】同側面図である。
【図7】同配管を取り付けた機械装置の正面図である。
【図8】同機械装置の側面図である。
【図9】本発明の三次元配管組立装置の第2実施例を示す正面図である。
【図10】本発明の三次元配管組立装置の第3実施例を示す側面図である。
【図11】同正面図である。
【図12】同三次元配管組立装置で製作した配管を示す正面図である。
【図13】同側面図である。
【図14】同配管を取り付けた機械装置の正面図である。
【図15】同機械装置の側面図である。
【図16】本発明の三次元配管組立装置の第4実施例を示す正面図である。
【図17】同三次元配管組立装置で製作した配管を取り付けた機械装置の正面図である。
【図18】同機械装置の側面図である。
【図19】本発明の三次元配管組立装置の第5実施例を示す正面図である。
【図20】第1実施例の角度調整アームを変更した例を示す側面図である。
【図21】同正面図である。
【図22】第2実施例の角度調整アームを変更した例を示す正面図である。
【図23】第3実施例の角度調整アームを変更した例を示す側面図である。
【図24】同正面図である。
【図25】第4実施例の角度調整アームを変更した例を示す正面図である。
【図26】第5実施例の角度調整アームを変更した例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 三次元配管組立装置
2 架台
3a、3b 支柱
4 主軸
5a、5b 主板
6a、6b カラー
7a、7b 主板固定ネジ
8 位置目盛
9a、9b 円周溝
10a、10b 角度調整アーム
11a、11b 角度調整アーム固定ネジ
12a、12b ネジ穴
13a、13b 角度目盛
14a、14b 位置目盛
20a、20b 長さ調整部材
21a、21b 長さ調整部材固定ネジ
22a、22b 開口穴
23a、23b フランジ固定板
24a、24b フランジ固定ネジ
25a、25b ナット
30a、30b フランジ
35 スペーサ
40 高さ調整部品
50 配管
51、52、53、54、55 直管
56、57、58 曲げ管
59 T形継手
60 フランジ
61 フランジ固定板固定ネジ
62 ナット
63 フランジ固定板
66 フランジ
67 フランジ固定ネジ
68 ナット
70 機械装置
71、72、73 直管
74、75 曲げ管
80 配管
90 機械装置
100 フランジ固定板
101 機械装置
102 機械装置の端部
110 フランジ自在固定部品
111 球形状の穴
112 自在アーム固定用ネジ
113 固定ネジ
114 ナット
120 球形ボール
121 自在アーム
122 フランジ固定板
123 フランジ固定ネジ
124 ナット
125 フランジ
L1、L2 間隔
θ1、θ2、θ3 角度
R1、R2、R3、R4、R5 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲がり管又は枝管付き配管の端部にフランジを取り付けるための三次元配管組立装置において、所定高さで水平に配設した主軸と、該主軸に軸方向に移動可能に設けられた分度器状の複数の主板と、各主板に隣接して主軸に揺動可能に枢支されるとともに、長さ調整可能に設けられた角度調整アームと、該角度調整アームの先端に設けられ、配管のフランジを固定するフランジ固定板とを備えたことを特徴とする三次元配管組立装置。
【請求項2】
主軸に対する主板の固定位置を確認する目盛を主軸に設けたことを特徴とする請求項1記載の三次元配管組立装置。
【請求項3】
主板に対する角度調整アームの固定角度を確認する目盛を主板に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の三次元配管組立装置。
【請求項4】
角度調整アームの調整長さを確認する目盛を該角度調整アームに設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の三次元配管組立装置。
【請求項5】
角度調整アームを、角パイプからなる角度調整アーム本体と、該角度調整アーム本体に摺動可能に内挿される角パイプからなる長さ調整部材とにより構成し、角度調整アーム本体の角部に、長さ調整部材の角部を押圧固定する固定ネジを設けたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の三次元配管組立装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−90320(P2009−90320A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262969(P2007−262969)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】