説明

三環式カルバペネムおよび抗生物質の抗菌的組み合わせ

発明は、純粋なジアステレオ異性体の形態および純粋な幾何異性体の形態の一般式(I)


(I)
の三環式カルバペネムのエチレン誘導体、またはその塩誘導体、エステル誘導体もしくはアミド誘導体および抗生物質を含む医薬組成物、ならびに広域スペクトルβ-ラクタマーゼ阻害剤としての本組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規抗菌薬の分野に関し、特にβ-ラクタマーゼの広域スペクトル阻害剤としての、式(I)の三環式カルバペネムのエチリデン誘導体、またはその医薬的に許容しうる塩、エステルもしくはアミドの使用に関する。本発明は、抗生物質、特にβ-ラクタマーゼによる分解に感受性がある抗生物質と組み合わせた式(I)の三環式カルバペネムのエチリデン誘導体、またはその医薬的に許容しうる塩、エステルもしくはアミドを含む医薬組成物および動物用医薬組成物、ならびに細菌によって引き起こされるヒトまたは動物においての感染の治療のためのそれぞれの医薬組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
細菌の抗生物質耐性の劇的な増加は、現代医療にとって最も重大な世界的脅威の1つとなっている。細菌は、抗生物質の致死作用から逃れるためのいくつかの戦略を発達させてきたが、β-ラクタム抗生物質に対する菌耐性の最も一般的でしばしば最も効果的なメカニズムは、β-ラクタマーゼの発現である。細菌のβ-ラクタマーゼ酵素は、β-ラクタムファミリーの抗生物質、例えばペニシリン、セファロスポリン、モノバクタム、カルバペネムを加水分解し、β-ラクタム結合を加水分解することによって不活性生成物にする。この型の耐性はプラスミドによって水平に伝達しうるが、プラスミドは同じ菌株の他のメンバーにだけではなく、他の種にさえも耐性を急速に伝播することができる。β-ラクタマーゼの多様性は、抗菌療法の最も重大な側面である。現在、β-ラクタマーゼスーパーファミリーには550を超えるメンバーが存在し、その多くは単一アミノ酸のみが異なる。アミノ酸配列類似性に基づいて、β-ラクタマーゼは4つの分子クラス、A、B、CおよびDに大きく分類されている。[Bush K; et al; Antimicrob. Agents Chemother. 1995, 39 (6): 1211-1233; Thomson KS; et al; Microbes and Infections 2000, 2: 1225-1235]。
【0003】
菌耐性の世界的出現を克服するための重要な戦略は、β-ラクタマーゼ阻害剤の投与であるが、β-ラクタマーゼ阻害剤は、それら自身は抗生物質活性を欠き、それゆえ抗生物質と共に投与される。クラブラン酸カリウム、スルバクタムおよびタゾバクタムなどの市販のβ-ラクタマーゼ阻害剤は、遍在し、蔓延しているTEM-1およびSHV-1クラスAβ-ラクタマーゼを産生する細菌に対する相乗混合物においてうまく用いられてきた。しかしながら、クラスCおよびクラスB酵素に対する活性は、ほとんどまたは全く観察されなかった。さらに、そのような組み合わせに対する細菌感受性は、市販のメカニズムに基づく不活性化剤(mechanism-based inactivators)に耐性があるTEMファミリーの新規β-ラクタマーゼの自然出現によって近年検証されてきた。誘導AmpCβ-ラクタマーゼ(クラスC)を有するいかなる生物も脱抑制突然変異体を分離することができ、いかなるTEM、SHVまたはCTX-M産生株もESBL(広域スペクトルβ-ラクタマーゼ)変異体を分離することができる。[Livermore, DM. J. Antimicrob. Chemother. 1998, 41(D), 25-41; Livermore, DM. Clinical Microbiology Reviews 1995, 8 (4), 557-584; Helfand MS; et al; Curr. Opin. Pharmacol. 2005, 5: 452-458]。
【0004】
β-ラクタマーゼ阻害剤の開発を通じて上記の問題に取り組む試みは、これまでにほんのわずかしか成功していなかった。しかしながら、周知のβ-ラクタムの結合メカニズムおよび相互作用の詳細知識は、この防御メカニズムを回避するであろう新規β-ラクタムの設計を促進するであろう。
【0005】
アルキリデンペネムおよび2β-置換ペナムスルホン、オキサペネム、セファロスポリン誘導化合物、環状アシルホスホン酸、ならびに非β-ラクタム化合物が潜在的なβ-ラクタマーゼ阻害剤として現在開発中であるが、その臨床応用にはまだ至っていない[Buynak JD. Curr. Med. Chem. 2004, 11, 1951-1964; Bonnefoy A et al, J. Am. Chem. Soc. 2004, 54, 410-417; Weiss WJ et al; Antimicrob. Agents Chemother. 2004, 48, 4589-4596, Phillips OA at al; J. Antibiot. 1997, 50, 350-356; Jamieson CE et al; Antimicrob. Agents Chemother. 2003, 47, 1652-1657]。
【0006】
それゆえ、本発明の一の対象は、酵素-阻害剤複合体の安定性の改善およびβ-ラクタマーゼによる不活性化に耐性がある効果的な化合物(高アシル化速度および低脱アシル化速度)の設計である。本発明の別の対象は、最も蔓延している臨床的に意義のある耐性菌に対して、効力およびスペクトルを示す新規医薬組み合わせを提供することである。
【0007】
驚いたことに、WO 98/27094に記載され、β-ラクタマーゼ阻害剤として用いられる式(I)の三環式カルバペネムのエチリデン誘導体、およびその塩、エステルまたはアミドも、クラスA、クラスCおよびクラスDβ-ラクタマーゼにおける新生の菌耐性に対抗するのに適切であり、院内抗生物質貯蔵庫に不可欠な追加を提供することが明らかになっている。これらの第2世代β-ラクタマーゼ阻害剤およびβ-ラクタム抗生物質の組み合わせは、細菌によって引き起こされる感染の治療に適切な医薬組成物を提供することも明らかになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえ、本発明は、WO98/27094に記載された式(I)の三環式カルバペネムのエチリデン誘導体、およびその塩、エステルまたはアミドの使用に向けられている。これらの化合物は、天然物および現在入手可能な半合成β-ラクタマーゼ阻害剤と構造的に無関係であるが、いくつかの細菌に対するβ-ラクタム抗生物質の有効性を劇的に著しく増加させ、それゆえ、広域スペクトルβ-ラクタマーゼ阻害剤、特にクラスA、クラスCおよびクラスDβ-ラクタマーゼ阻害剤として用いられうる。
【0009】
発明は、上記の化合物および抗生物質、特にβ-ラクタム抗生物質を含む医薬組成物にも向けられている。これらの医薬組成物は、医薬的に許容しうる担体および/または医薬的に許容しうる賦形剤をさらに含んでよい。これらの医薬組成物は、細菌、特に相当量のβ-ラクタマーゼを産生する細菌によって引き起こされるヒトまたは動物においての感染の治療に特に適切である。
【0010】
発明は、細菌増殖を抑制するための方法も提供する。発明の方法は、発明のβ-ラクタマーゼ阻害剤を、抗生物質、好ましくはβ-ラクタム抗生物質と組み合わせて細菌の細胞培養液に、または細菌に感染した細胞培養液、組織、もしくは生物に投与することを含む。
【0011】
発明の詳細な説明
式(I)の三環式カルバペネムのエチリデン誘導体、またはその塩誘導体、エステル誘導体もしくはアミド誘導体は、インビトロのβ-ラクタマーゼの酵素活性を抑制し、細菌の細胞培養液内の抗生物質剤の効力を増強し、ヒトおよび動物においての感染の治療に有用である。他の周知のカルバペネム抗生物質と対照的に、式(I)の三環式カルバペネムのエチリデン誘導体は、有意な内因性の抗生物質活性を有しない。
【0012】
それゆえ、本発明は、式(I)
【化1】

(I)
[式中、
3位および4位にて基本カルバペネム核に縮合した符号Cが付いた環は、5員環、6員環または7員環であり、
i)符号Cが付いた環内の1またはそれ以上の炭素原子は、置換基で一置換または二置換されてよく、置換基は同一または異なっていてよく、下記を意味してよい:
a)水素原子、
b)1〜20個の炭素原子を有する飽和アルキル鎖であり、飽和アルキル鎖は直鎖状(メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチルなど)またはいずれかの位置にて分枝した分枝鎖状(イソプロピル、s-ブチル、イソブチル、イソアミル、tert-ブチルなど)であってよく、各鎖員はハロ(フルオロメチル、トリトルオロメチル(tritluoromethyl)、2-クロロエチルなど)、ヒドロキシ(ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチルなど)、(C1-C4)-アルキルオキシ(メトキシメチル、2-メトキシエチルなど)、メルカプトおよび(C1-C4)-アルキルメルカプト(メルカプトメチル、2-メチルメルカプトエチルなど)、(C1-C4)-アルカンスルホニル(メタンスルホニルメチルなど)、アミノ、(C1-C4)-アルキルアミノおよびジ(C1-C4)-アルキルアミノ(2-アミノエチル、2-メチルアミノエチル、2-ジメチルアミノエチルなど)、アルキレンアミノ(2-(1-ピペリジニル)エチル、1-ピロリジニルメチルなど)、グアニジノ(グアニジノメチルなど)、非置換N1-モノ、N3-モノ、N1,N3-ジおよびN3,N3-ジ-(C1-C4)-ホルムアミジノ(イミノメチルアミノメチル、2-(ジメチルアミノメチレンアミノ)エチルなど)、芳香族もしくはヘテロ芳香族5員環または6員環(フェニル、フリル、2-ピリジルなど)、(C1-C4)-アルキルオキシカルボニル(カルボエトキシメチル(carbethoxymethyl)など)、シアノ(2-シアノエチルなど)、オキソ(アセチル、プロピオニル、2-オキソプロピルなど)などの置換基で一置換または二置換されてよく、
c)1〜20個の炭素原子を有する不飽和アルキル鎖であり、不飽和アルキル鎖は二重結合もしくは三重結合を有する直鎖状(ビニル、プロペニル、アリル、エチニル、プロパルギルなど)または二重結合もしくは三重結合を有するいずれかの位置にて分枝した分枝鎖状(2-プロペニルなど)であってよく、各鎖員はハロ、ヒドロキシ、(C1-C4)-アルキルオキシ、チオおよび(C1-C4)-アルキルチオ、(C1-C4)-アルカンスルホニル、アミノ、(C1-C4)-アルキルアミノおよびジ-(C1-C4)-アルキルアミノ、芳香族もしくはヘテロ芳香族5員環または6員環(フェニル、フリル、2-ピリジルなど)、(C1-C4)-アルキルオキシカルボニル、シアノ、オキソなどの置換基で一置換または二置換されてよく、
d)3〜7員を有する飽和または部分的不飽和シクロアルキルラジカル(シクロプロピルラジカルからシクロヘプチルラジカル、シクロへクス-1-エニルラジカルなど)であり、環は1またはそれ以上の酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでよく(2-テトラヒドロフラニル、1-ピペリジニル、1-ピロリジニルなど)、各環員はハロ、ヒドロキシ、(C1-C4)-アルキルオキシ、チオおよび(C1-C4)-アルキルチオ)、(C1-C4)-アルカンスルホニル、アミノ、(C1-C4)-アルキルアミノおよびジ-(C1-C4)-アルキルアミノ、(C1-C4)-アルキルオキシカルボニル、シアノ、オキソなどの置換基で一置換または二置換されてよく、
e)芳香族もしくはヘテロ芳香族5員環または6員環(フェニル、フリル、2-ピリジルなど)、
f)ヒドロキシ、(C1-C10)-アルキルオキシ(メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ、シクロヘキシルオキシなど)、一置換または二置換(C1-C10)-アルキルオキシ(2-ヒドロキシエチルオキシなど)、2,3-ジヒドロキシプロプ-1-イルオキシ、2-メトキシエチルオキシ、フルオロメチルオキシ、アミノエチルオキシ、2-ジメチルアミノエチルオキシ)、アシルオキシ(ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、アリルオキシカルボニルオキシなど)、モノ、ジまたはトリ-(C1-C4)-アルキルシリルオキシ(トリメチルシリルオキシ、tert-ブチルジメチルシリルオキシなど)基、
g)メルカプト、(C1-C10)-アルキルメルカプト(メチルイネルカプト(methylinercapto)、エチルメルカプトなど)、一置換または二置換(C1-C10)-アルキルメルカプト(2-ヒドロキシエチルメルカプト、2,3-ジヒドロキシプロプル-イルメルカプト、2-メトキシエチルイネルカプト(2-methoxyethylinercapto)、2-メルカプトエチルメルカプト、2-メチルメルカプトエチルメルカプト、2-アミノエチルメルカプト、2-ジメチルアミノエチルメルカプトなど)、アシルメルカプト(アセチルイメルカプト(acetylimercapto)など)基、
h)アミノ、(C1-C4)-アルキルアミノおよびジ-(C1-C4)-アルキルアミノ(メチルアミノ、ジメチルアミノ、2-ヒドロキシエチルアミノ、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ、アミノエチルオキシ、2-ジメチルアミノエチルオキシ、2-アミノエチルアミノ、2-ピペリジノエチルアミノなど)、アセチルアミノ、アリルオキシカルボニルアミノ、イミノメチルアミノ、N-メチルアミノメチレンアミノ、N,N-ジメチルアミノメチレンアミノ、グアニジノ、シアノグアニジノ、メチルグアニジノ基、
i)ハロ原子(フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードなど)、
j)アジド、ニトロ、シアノ、(C1-C4)-アルキルオキシカルボニル(カルボメトキシ、カルボエトキシ(carbethoxy)など)基、
k)(C1-C4)-アルカンスルホニル基(メタンスルホニル、エタンスルホニルなど);
ii)符号Cが付いた環内の1またはそれ以上の炭素原子は、置換アルキル鎖または非置換アルキル鎖で置換されてよく、アルキル鎖は>C*=CR1R2の形態にて二重結合を通じて符号Cが付いた環と結合し、C*は符号がついた環内の炭素原子を意味し、C=は環外の二重結合を意味し、置換基R1およびR2は同一または異なってよく、下記を意味してよい:
a)水素原子であり、置換基はメチレンとなり、
b)1〜20個の炭素原子を有する非置換飽和アルキル鎖であり、非置換飽和アルキル鎖は直鎖状(エチリデン、n-プロピリデン、n-ブチリデン、イソプロピリデンなど)またはいずれかの位置にて分枝した分枝鎖状(2,2-ジメチルプロピリデンなど)であってよく、
c)1〜20個の炭素原子を有する非置換不飽和アルキル鎖であり、非置換不飽和アルキル鎖は二重結合もしくは三重結合を有する直鎖状または分枝鎖状(ビニリデン、アリリデンなど)であってよく、
d)3〜7員を有する非置換飽和もしくは部分的不飽和シクロアルキルまたはヘテロアリール(シクロプロピルメチレンからシクロヘプチルメチレンの基に含まれる)、
e)芳香族もしくはヘテロ芳香族5員環または6員環(ベンジリデン、ジフェニルメチレンなどの基に含まれる)、
f)置換飽和もしくは部分的不飽和アルキル鎖または置換3〜7員炭素環であり、鎖内または環内のいずれかの炭素原子は、ハロ、ヒドロキシ、(C1-C4)-アルキルオキシ、(C1-C4)-アルキルチオ、(C1-C4)-アルカンスルホニル、アミノ、(C1-C4)-アルキルアミノ、ジ-(C1-C4)-アルキルアミノ、(C1-C4)-アルキルオキシカルボニル、シアノ、オキソなどの置換基で一置換または二置換されてよく、ヒドロキシエチリデン、メトキシエチリデンなどの基に含まれ、
g)ヒドロキシ、(C1-C4)-アルキルオキシ、アシルオキシ、メルカプト、(C1-C4)-アルキルメルカプト、アミノ、(C1-C4)-アルキルアミノ、ジ-(C1-C4)-アルキルアミノおよびアシルアミノ基であり、ヒドロキシメチレン、メトキシメチレン、ジメトキシメチレン、ジメチルアミノメチレン、アセチルアミノメチレン基などの基に含まれ、
h)ニトロ、シアノ、(C1-C4)-アルキルオキシカルボニル基であり、置換基はジシアノメチレン、ビス(カルボメトキシ)メチレン、カルボエトキシメチレン(carbethoxymethylene)となり;
置換基R1およびR2は閉環した連結アルキレン鎖(CH2)n(n=2〜7)も意味してよく、いずれかのメチレン(-CH2-)員は、オキサ(-O-)、チア(-S-)、イミノ(-NH-)または(C1-C4)-アルキルイミノ基に置換されてよく、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、2-(1,3-ジオキサシクロペンチリデン)などの群に含まれる;
iii)符号Cが付いた環内の1またはそれ以上の炭素原子は、二重結合を通じてヘテロ原子で置換されてよく(オキソ、チオキソ、ヒドロキシイミノ、(C1-C4)-アルキルイミノ、アシルイミノなど);
iv)符号Cが付いた環内の1またはそれ以上の炭素原子は、閉環した置換基で二置換されてスピロ化合物を得てよく、炭素原子に加えて、環員は酸素原子、硫黄原子および窒素原子であってもよく(エチレン、1,3-プロピレン、1,5-ペンチレン、エチレンジオキシなど);
v)符号Cが付いた環内の1またはそれ以上の炭素原子は、酸素原子に置換されてよく;
vi)符号Cが付いた環内の1またはそれ以上の炭素原子は、硫黄原子で置換されてよく、硫黄原子はモノ酸化またはジ酸化されてスルホキシドまたはスルホンを得てよく;
vii)符号Cが付いた環内の1またはそれ以上の炭素原子は、窒素原子で置換されてよく、窒素原子は>N*-R3の形態にて置換されてよく、N*は符号Cが付いた環内の窒素原子を意味し、R3は下記を意味してよい:
a)1〜20個の炭素原子を有する飽和アルキル鎖であり、非置換飽和鎖は直鎖状(メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチルなど)またはいずれかの位置にて分枝した分枝鎖状(イソプロピル、s-ブチル、イソブチル、イソアミル、tert-ブチルなど)であってよく、各鎖員はハロ(フルオロメチル、トリフルオロメチル、2-クロロエチルなど)、ヒドロキシ(2-ヒドロキシエチルなど)、(C1-C4)-アルキルオキシ(2-メトキシエチルなど)、(C1-C4)-アルキルチオ(メチルメルカプトエチルなど)、(C1-C4)-アルカンスルホニル(メタンスルホニルメチルなど)、アミノ、(C1-C4)-アルキルアミノ、ジ-(C1-C4)-アルキルアミノ(2-アミノエチル、2-メチルアミノエチル、2-ジメチルアミノエチルなど)、芳香族もしくはヘテロ芳香族5員環または6員環(フェニル、フリル、2-ピリジルなど)、(C1-C4)-アルキルオキシカルボニル(カルボエトキシメチル(carbethoxymethyl)など)、シアノ(シアノエチルなど)、オキソ(アセチル、プロピオニル、2-オキソプロピルなど)、イミノ(イミノメチル、アミノイミノメチル、アミノシアノイミノメチルなど)などの置換基で1回または数回置換されてよく、
b)1〜20個の炭素原子を有する非置換不飽和アルキル鎖であり、この非置換不飽和アルキル鎖は二重結合を有する直鎖状(ビニル、プロペニル、アリルなど)もしくは三重結合を有する直鎖状(エチニル、プロパルギルなど)または二重結合もしくは三重結合を有するいずれかの位置にて分枝した分枝鎖状(2-プロペニルなど)であってよく、
c)3〜7員を有する非置換飽和もしくは部分的不飽和シクロアルキルラジカルまたはヘテロアリールラジカル(シクロプロピルラジカルからシクロヘプチルラジカル、シクロへクス-1-エニルラジカル、4-ピペリジニルラジカルなど)、
d)非置換芳香族もしくはヘテロ芳香族5員環または6員環(フェニル、フリル、2-ピリジルなど)、
e)シアノ、(C1-C4)-アルキルオキシカルボニル(カルボメトキシ、カルボエトキシなど)、アミノカルボニル、(C1-C4)-アルキルアミノカルボニル、(C1-C4)-アルキルスルホニル(メタンスルホニル)などの基;
式中、Xは下記を意味してよい:
i. 水素原子であり、その場合、式(I)の化合物はカルボン酸となる;C1において、分子の塩基中心の場合、水素原子はプロトンとしてそれと結合し、カルボキシル基はカルボン酸塩としてアニオン型にあり、式(I)の化合物は双性イオンの形態にあり、
ii. アルカリ金属であり、式(I)の化合物はアルカリ金属塩(カルボン酸リチウム、カルボン酸ナトリウム、カルボン酸カリウムなど)であり、
iii. アルカリ土類金属であり、式(I)の化合物はアルカリ土類金属塩であり、一の2価金属イオンについて二のカルボン酸アニオン(ジカルボン酸カルシウムなど)があり、
iv. アンモニウムイオン、モノ置換、ジ置換もしくはトリ置換非環状もしくは環状脂肪族アミンのプロトン化型または他の窒素塩基のプロトン化型、
式(I)の化合物はこの場合、カルボン酸およびアンモニアの塩、またはアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、2-ピペリジニルなど)、アミジン(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、3,3,6,9,9-ペンタジメチル-2,10-ジアザビシクロ[4.4.0]デス-1-エンなど)、グアニジン(グアニジン、シアノグアニジンなど)もしくは他の窒素塩基(4-ジメチルアミノピリジン、イミダゾールなど)。
v. 四級化アンモニウムイオンであり、式(I)の化合物は対応する第四級カルボン酸アンモニウム(カルボン酸テトラブチルアンモニウムなど)であり、
vi. ラジカルR4であり、式(I)の化合物はエステル型にあり、ラジカルR4は下記であってよい:
a)(C1-C20)-アルキル(メチルエチル、tert-ブチルなど)、(C1-C20)-アルケニル(アリルなど)、置換アルキル((C1-C4)-アルコキシアルキル、(C1-C4)-アルキルチオアルキル、フェネチル、2,2,2-トリクロロエチル、2-オキソ-5-メチル-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル、ベンジル、p-メトキシベンジル、p-ニトロベンジル、o-ニトロベンジル、ビス(メトキシフェニル)メチル、3,4-ジメトキシベンジル、ベンズヒドリル、トリチル、2-トリメチルシリルエチルなど)、置換シリル(トリメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリルなど)、フタリジルなどを含む群から選択され、
b)下記の形態にて示されうるラジカル
【化2】

[式中、
R5は水素または1〜4個の炭素原子を有する低級アルキルを表し、
R6は水素、アルキ(alky)、シクロアルキル、アルコキシ、シクロアルコキシ、シクロアルキルアルキル、アルケニルオキシ、フェニルを表す]

の三環式カルバペネムのエチリデン誘導体、またはその塩誘導体、エステル誘導体もしくはアミド誘導体に関する。
【0013】
さらに、本発明は、純粋なジアステレオ異性体の形態および純粋な幾何異性体の形態の、一般式(I)の三環式カルバペネムのエチレン誘導体に関する。式(I)の化合物のカルバペネム環の6位のエチリデン置換基におけるメチル基が二重結合の周りに(Z)または(E)として形成される場合、式(I)の化合物は少なくとも二の純粋な幾何異性体を含み、4位の新たなキラル中心は新たな環との結合点にて形成され、(R)または(S)として形成されうるため、少なくとも二の純粋なジアステレオ異性体を含む。
【0014】
スキーム1および全てのさらなるスキームにおいて、太字の結合は紙面の水準よりも上の位置を表し、破線は紙面の水準よりも下の位置を表す。符号(R)または(S)は、符号Cが付いた環の種類および符号Cが付いた環に結合した置換基に依存し、カーン・インゴルド・プレローグ則(Cahn-Ingold-Prelog rule)(Calin et al., Experientia 12, (1956) 81)に従って決定される。
【0015】
一般式(I)の化合物の4環および5環の結合点における5位の立体配置は常に同一であり、常に紙面の水準よりも下にあり、符合(R)または(S)は上記のカーン・インゴルド・プレローグ則に従って決定される。
【0016】
スキーム1:純粋な幾何異性体の形態および純粋なジアステレオ異性体の形態の、新規三環式カルバペネムのエチリデン誘導体。
【化3】

【0017】
本発明は、広域スペクトルβ-ラクタマーゼ阻害剤としての、治療的に有効な量の上記で定義した式(I)の三環式カルバペネムのエチリデン誘導体、またはその塩誘導体、エステル誘導体もしくはアミド誘導体の使用にも向けられている。
【0018】
下記の式(I)の化合物は、酵素β-ラクタマーゼの作用の阻害剤としておよび/または抗生物質として特に重要である:
(8S,9R)-10-((E)-エチリデン)-11-オキソ-l-アザトリシクロ[7.2.0.03,8]ウンデス-2-エン-2-カルボン酸、その医薬的に許容しうる塩またはエステル、
(8R,9R)-10-((E)-エチリデン)-11-オキソ-l-アザトリシクロ[7.2.0.03,8]ウンデス-2-エン-2-カルボン酸、その医薬的に許容しうる塩またはエステル、
(8S,9R)-10-((E)-エチリデン)-11-オキソ-l-アザ-6-チアトリシクロ[7.2.0.03,8]ウンデス-2-エン-2-カルボン酸、その医薬的に許容しうる塩またはエステル、
(8R,9R)-10-((E)-エチリデン)-11-オキソ-l-アザ-6-チアトリシクロ[7.2.0.03,8]ウンデス-2-エン-2-カルボン酸、その医薬的に許容しうる塩またはエステル。
(4S,8S,9R)-4-メトキシ-10-((E)-エチリデン)-11-オキソ-1-アザトリシクロ[7.2.0.03,8]ウンデス-2-エン-2-カルボン酸、その医薬的に許容しうる塩またはエステル、(以後「LK-157」と呼ぶ)、
(4R,8R,9R)-4-メトキシ-10-((E)-エチリデン)-11-オキソ-1-アザトリシクロ[7.2.0.03,8]ウンデス-2-エン-2-カルボン酸、その医薬的に許容しうる塩またはエステル、
(4S,8S,9R)-4-メトキシメチル-10-((E)-エチリデン)-11-オキソ-1-アザトリシクロ[7.2.0.03,8]ウンデス-2-エン-2-カルボン酸、その医薬的に許容しうる塩またはエステル、
(4R,8R,9R)-4-メトキシメチル-10-((E)-エチリデン)-11-オキソ-1-アザトリシクロ[7.2.0.03,8]ウンデス-2-エン-2-カルボン酸、その医薬的に許容しうる塩またはエステル。
【0019】
式(I)の化合物は、抗生物質と組み合わせて、好ましくはβ-ラクタム抗生物質と組み合わせて用いると、クラスA、クラスCおよびクラスD産生生物に対して抗菌活性の増加(相乗的効果)をもたらすであろうことも明らかになっている。
【0020】
それゆえ、発明は、少なくとも式(I)によって定義した化合物またはその医薬的に許容しうる塩誘導体、エステル誘導体もしくはアミド誘導体、および抗生物質を含む医薬組成物にも関する。
【0021】
本明細書で用いられている「抗生物質」という用語は、微生物の生存率を低下させる、もしくは微生物の増殖もしくは生殖を抑制する化合物または組成物を表す。「増殖もしくは生殖を抑制する」は、世代周期を少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも100倍、最も好ましくは全細胞死など無制限に増加させることを意味する。抗生物質は、さらに抗菌剤、静菌剤、または殺菌剤を含むことを意図している。本発明の有用な抗生物質の限定されない例は、ペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシド、スルホンアミド、マクロライド、テトラサイクリン、リンコシド、キノロン、クロラムフェニコール、バンコマイシン、メトロニダゾール、リファンピン、イソニアジド、スペクチノマイシン、トリメトプリム、スルファメトキサゾールなどを含む。
【0022】
発明の好ましい実施態様では、抗生物質はβ-ラクタム抗生物質である。
【0023】
本明細書で用いられている「β-ラクタム抗生物質」という用語は、β-ラクタム官能性を含む抗生物質特性を有する化合物を示す。
【0024】
一般に、当業者に周知の全てのβ-ラクタム抗生物質は、本発明の医薬組成物の範囲内での使用に適切であり、例えばペニシリン、セファロスポリン、ペネム、カルバペネム、およびモノバクタムである。
【0025】
それゆえ、本発明の好ましい実施態様は、β-ラクタム抗生物質がセファロスポリン、ペニシリン、モノバクタムまたはカルバペネムからなる群から選択される上記の医薬組成物に向けられている。
【0026】
発明の薬物における使用のための適切なβ-ラクタム抗生物質の例は、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、アズトレオナム、セファゾリン、セフタジジム、セフロキシム、セファクロル、セフォタキシム、セフトリアキソン、セフチザキシム(ceftizaxime)、セフォペラゾン、セフェピム、セフピロム、セフメノキシム、セフォキシチン、セフィキシム、セフポドキシム、セフチブテン、セフプロジル、セファレキシン、セファロリジン、エルタペネム、イミペネム、メシリナム、メロペネム、メチシリン、モキソラクタム、オキサシリン、パニペネム、ペニシリンGまたはペニシリンV、ピペラシリンおよびチカルシリンを含む。
【0027】
特に、セフェピム、セフピロム、セフタジジムまたはセフォタキシムは、グラム陽性病原体およびグラム陰性病原体に対する広域スペクトルの活性を示す。
【0028】
それゆえ、本発明は、β-ラクタム抗生物質セファロスポリンがセフタジジム、セフォタキシム、セフェピムまたはセフピロムからなる群から選択され、セフタジジム、セフォタキシム、または特に好ましくはセフェピムからなる群から選択されるβ-ラクタム抗生物質との組み合わせからも選択される、上記で定義した医薬組成物にも関する。
【0029】
本発明のさらなる実施態様は、β-ラクタム抗生物質ペニシリンがピペラシリンである、上記の医薬組成物に向けられている。
【0030】
本発明の別の好ましい実施態様は、β-ラクタム抗生物質モノバクタムがアズトレオナムである、上記の医薬組成物に向けられている。
【0031】
本発明のさらなる好ましい実施態様の範囲内では、β-ラクタム抗生物質カルバペネムはメロペネムである。
【0032】
発明の化合物は、化合物をいずれかの従来の無毒性の医薬的に許容しうる担体、アジュバントまたはビヒクルと組み合わせることによって、医薬組成物に製剤化される。
【0033】
それゆえ、本発明は、式(I)の三環式カルバペネム、またはその塩誘導体、エステル誘導体もしくはアミド誘導体、抗生物質、好ましくはβ-ラクタム抗生物質、および医薬的に許容しうる担体を含む医薬組成物にも向けられている。
【0034】
本明細書で用いられている「医薬的に許容しうる」という用語は、有効成分の生物活性の有効性を妨げない無毒性物質を意味する。「生理学的に許容しうる」という用語は、細胞、細胞培養液、組織、または生物などの生物システムと適合する無毒性物質を示す。
【0035】
「医薬的に許容しうる担体」という用語は、抗生物質、好ましくはβ-ラクタム抗生物質と組み合わせて本発明の化合物と共に患者に投与され得、その薬理学的活性を損なわない無毒性担体を示す。
【0036】
一般に、それぞれの当業者に周知の全ての担体は、本医薬組成物の範囲内での使用に適切である。通常は、好ましい担体の特徴は、それぞれの医薬組成物の投与経路に依存する。
【0037】
本発明で使用可能な固体担体は、例えばタルク、粘土、微結晶性セルロース、シリカ、アルミナなどの微細固体である。有用な液体担体は、水、アルコールもしくはグリコールまたは水-アルコール/グリコール混合液を含み、その中で本化合物は、場合によっては無毒性界面活性剤の助けにより効果的な水準で溶解されまたは分散されうる。香料および付加的な抗菌剤などのアジュバントも、それぞれの使用の特性を最適化するために加えられうる。結果として生じる液体医薬組成物は、吸収パッドから適用され得、包帯および他の包帯剤に浸透させるために用いられ得、またはポンプ式もしくはエアロゾル噴霧器を用いて患部に噴霧されうる。
【0038】
局所投与については、皮膚科学的に許容しうる担体と組み合わせて、組成物または製剤として本化合物を皮膚に投与することが一般的に望ましいであろうが、担体は固体または液体であってよい。局所投与は、疎水性塩基もしくは親水性塩基などの担体内で製剤化されて軟膏、クリーム、ローションを形成し得、水溶性、油性もしくはアルコール性の液体内で製剤化されて塗布剤を形成し得、または乾燥希釈剤内で製剤化されて粉末剤を形成しうる。使用者の皮膚に直接投与するために、合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステル、脂肪アルコール、変性セルロースまたは変性無機物質などの増粘剤も液体担体と共に利用され得、広げられるペースト剤、ゲル、軟膏、セッケンなどを形成する。薬物用に用いられうるクリーム製剤または軟膏製剤は、当該技術分野で周知の従来の製剤である。
【0039】
さらに、本発明は、上記で定義した式(I)の三環式カルバペネム、またはその塩、エステルもしくはアミド、抗生物質、好ましくはβ-ラクタム抗生物質および場合によっては医薬的に許容しうる賦形剤を含む医薬組成物に言及する。
【0040】
一般に、当業者に周知の全ての賦形剤は、本発明の範囲内で適切である。そのような賦形剤の例は、炭酸カルシウム、カオリン、炭酸水素ナトリウム、ラクトース、D-マンニトール、デンプン、結晶性セルロース、タルク、グラニュー糖、多孔性物質などである。
【0041】
本発明の式(I)の化合物、またはその塩誘導体、エステル誘導体もしくはアミド誘導体は、原体自体として用いられてもよいが、普通の方法に従って、適切な量の「医薬品用担体」と共に通常は医薬品に製剤化される。
【0042】
さらに、「医薬品用担体」は、例えば上記で定義した賦形剤、結合剤(例えば、デキストリン、ガム、α-デンプン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルランなど)、増粘剤(例えば、天然ガム、セルロース誘導体、アクリル酸誘導体など)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、部分α-デンプンなど)、溶剤(例えば、注射用蒸留水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、コーン油など)、分散剤(例えば、Tween 80、HCO60、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなど)、可溶化剤(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなど)、懸濁剤(例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロースなど)、痛軽減剤(例えば、ベンジルアルコールなど)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、グリセリンなど)、緩衝剤(例えば、リン酸、酢酸、炭酸、クエン酸など)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、デンプン、安息香酸ナトリウムなど)、着色剤(例えば、タール色素、カラメル、三二酸化鉄、酸化チタン、リボフラビンなど)、味付け剤(例えば、甘味料、香味料など)、安定剤(例えば、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸など)、防腐剤(例えば、パラベン、ソルビン酸など)などを含む。
【0043】
発明の組成物および方法は、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、および当該技術分野で周知の他の物質もさらに含んでよい。
【0044】
本発明の医薬組成物は、β-ラクタマーゼおよび/またはDD-ペプチダーゼの抑制を増強する他の活性因子および/または活性薬剤も含んでよい。
【0045】
本発明のそれぞれの医薬組成物は、β-ラクタマーゼを産生しない細菌に対して効果的であるが、相当量のβ-ラクタマーゼを産生する細菌に対しても特に効果的である。それゆえ、本発明の医薬組成物は、インビボの細菌感染水準を制御し、疾患を治療しまたは細菌によって媒介される効果の進行もしくは重症度を軽減するのに一般的に有用である。
【0046】
本発明の製剤の投与についての適切な対象は、哺乳類、霊長類、人類、および他の動物を含む。通常は、動物対象は哺乳類であり、一般的に家畜(例えばウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギなど)またはペット(例えばネコ、イヌなど)である。感受性細菌性生物に感染した哺乳類に組成物が投与される場合、インビトロの抗菌活性はインビボの活性を予測するものとなる。
【0047】
投与経路
上記の医薬組成物の好ましい投与方法は、経口ならびに非経口、例えば静脈内注入(i.v. infusion)、静脈内ボーラス(i.v. bolus)および筋肉内注射(i.m. injection)を含むが、これらは単位用量が各有効成分の治療的に有効な量またはその約数量(some submultiples)を含むように製剤化される。
【0048】
化合物は、粉末形態もしくは結晶形態にて、溶液にて、または懸濁液にて利用されてよい。これらの化合物は、当該技術分野で周知のいずれかの方法によって製剤化され得、いずれかの経路による投与のために調製されうる。例えば、非経口、経口、舌下、吸入噴霧による、経皮、局所、鼻腔内、気管内、直腸内、点眼液または軟膏を通じて、直腸内、経鼻的、口腔的、経膣的または埋め込みリザーバーを通じての投与を含み、また制限はない。本明細書で用いられている非経口という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病巣内および頭蓋内注射法または注入法を含む。
【0049】
注射用医薬組成物は、本発明の好ましい送達経路であるが、アンプル内、または多用量容器内で単位用量形態にて調製されうる。対象への注射による送達を目的とする場合、組成物は一般的に滅菌済およびパイロジェンフリー(pyrogen-free)であろう。注射用組成物は、油性ビヒクルまたは水溶性ビヒクル中にて懸濁液、溶液、または乳濁液などの形態をとってよく、さまざまな製剤化剤を含んでよい。あるいは、有効成分は、滅菌水などの適切なビヒクルでの送達時に、再構成のために粉末(凍結乾燥したまたは凍結乾燥していない)形態にあってよい。
【0050】
本発明の注射用医薬組成物に適切な担体は、通常、滅菌水、生理食塩水または別の注射用液体、例えば筋肉内注射用ピーナッツ油を含む。また、さまざまな緩衝剤、防腐剤などが含まれうる。有効成分は、滅菌培地に非経口的に投与されてもよい。用いるビヒクルおよび濃度に依存して、薬物はビヒクル中に懸濁されまたは溶解されうる。有利なことに、局所麻酔薬、防腐剤および緩衝剤などのアジュバントは、ビヒクル中に溶解されうる。例えば、リポソームの形成によって、分散の場合は必要粒径の維持によって、または界面活性剤の使用によって、適切な流動性が維持されうる。微生物の作用の阻止は、さまざまな抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされうる。等張剤、例えば、糖、緩衝液、または塩化ナトリウムなどを含むことも好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物にて使用することによってもたらされうる。静脈内注入は、本発明で用いられる化合物についての別の可能な投与経路である。
【0051】
経口的に投与可能な本発明の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、甘味入り錠剤、液体製剤またはゲル製剤の形態にあってよく、例えば経口、局所、もしくは無菌非経口溶液または懸濁液などであってよい。経口組成物は、従来の製剤化剤などの担体を利用してよく、急速送達形態のみならず徐放特性も含んでよい。そのような組成物および製剤は、少なくとも0.1%の活性化合物を含むであろう。組成物および製剤の割合は、当然ながら変化してよく、特定の単位用量形態の重量の約2%〜約60%の間に都合よくあってよい。そのような治療的に有用である組成物における活性化合物の量は、効果的な用量水準が得られるであろう量である。
【0052】
経口投与用の錠剤およびカプセル剤は、単位用量表示型とすることができ、従来の賦形剤、例えば、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガント、もしくはポリビニルピロリドンなどの結合剤;例えば、ラクトース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトールもしくはグリシンなどの充填剤;例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコールもしくはシリカなどの錠剤の潤滑剤;例えば、バレイショデンプンなどの崩壊剤、またはラウリル硫酸ナトリウムなどの許容しうる湿潤剤なども含んでよい。錠剤は、当業者に周知の方法に従ってコーティングされてもよい。経口液体製剤は、例えば、水溶性もしくは油性懸濁液、溶液、乳濁液、シロップもしくはエリキシル剤の形態にあってよく、または使用前に水もしくは他の適切なビヒクルでの再構成のための乾燥生成物として存在してよい。そのような液体製剤は、従来の添加剤、例えば、ソルビトール、シロップ、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン 水素化食用脂などの懸濁剤;例えば、レシチン、ソルビタンモノオレエート、もしくはアカシアなどの乳化剤;例えば、アーモンド油、ヤシ油、グリセリンなどの油性エステル、プロピレングリコール、もしくはエチルアルコールなどの非水溶性ビヒクル(食用油を含んでよい);例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはp-ヒドロキシ安息香酸プロピル、もしくはソルビン酸などの防腐剤、および必要であれば従来の香味剤または着色剤などを含んでよい。
【0053】
本発明の医薬組成物は、鼻および咽喉または気管支組織の粘膜を通じての吸収に適切な形態にも調製され得、都合よく粉末の、もしくは液体の噴霧剤または吸入剤、甘味入り錠剤、咽喉塗布剤などの形態をとってよい。眼または耳の薬物療法については、製剤は液体もしくは半固体形態にて単一のカプセル剤として存在してよく、または液滴などとして用いられてよい。
【0054】
動物用医薬品については、組成物は、例えば、長時間作用性塩基または速放性塩基のいずれかにて乳房内製剤として製剤化されてよい。
【0055】
広域スペクトルβ-ラクタマーゼ阻害剤としての阻害剤の使用
発明は、天然物および現在市場で入手可能な半合成β-ラクタマーゼ阻害剤と構造的に無関係である上記式(I)の新規β-ラクタマーゼ阻害剤も提供する。これら新規阻害剤の特定の実施態様も細菌のDD-ペプチダーゼを結合し、それゆえ、β-ラクタマーゼ阻害剤および抗生物質剤の両方として潜在的に作用しうる。
【0056】
式(I)の化合物は、治療への応用のためのβ-ラクタマーゼ阻害剤として特に適切である。それらは、抗生物質耐性のメカニズムを調べるための、他の治療用抗生物質剤もしくはβ-ラクタマーゼ阻害剤を同定するのに役立てるための、特定の微生物によってどのβ-ラクタマーゼが発現されているかを同定するための、または微生物内の1もしくはそれ以上のβ-ラクタマーゼを選択的に阻害するための、インビトロまたはインビボ研究のための薬理学的道具としても有用である。
【0057】
それゆえ、本発明は、広域スペクトルβ-ラクタマーゼ阻害剤としての、治療的に有効な量の上記で定義した式(I)の三環式カルバペネムのエチリデン誘導体、またはその塩誘導体、エステル誘導体もしくはアミド誘導体の使用にも関する。
【0058】
好ましい実施態様によると、β-ラクタマーゼ阻害剤は、クラスA、クラスCおよびクラスDβ-ラクタマーゼの広域スペクトル阻害剤である。それは、ほとんどの臨床的に意義があり、蔓延しているTEM型およびSHV型酵素(クラスA)、AmpC(クラスC)ならびにOXA型酵素(クラスD)を効果的に阻害する。
【0059】
β-ラクタマーゼ阻害剤の広域スペクトルおよびβ-ラクタム抗生物質の慎重な選択の組み合わせは、現在の治療上の選択肢よりも優れている。
【0060】
細菌増殖の抑制
さらなる態様では、本発明は細菌増殖を抑制する方法を提供し、そのような方法は、式(I)のβ-ラクタマーゼ阻害剤を抗生物質、好ましくは上記で定義したβ-ラクタム抗生物質と組み合わせて、細菌の細胞培養液に、または細菌に感染した細胞培養液、組織、もしくは生物に投与することを含む。
【0061】
特定の組み合わせへの応答は株特異的であり得、単に組み合わせの特異的メンバーに対する感受性/耐性の水準に関連しているだけではないことは周知である。それゆえ、本発明の組み合わせは、本明細書で言及していないものを含む全ての細菌株に有用であることを意図している。
【0062】
好ましくは、発明のβ-ラクタマーゼ阻害剤の投与によって抑制される細菌は、β-ラクタム抗生物質に耐性がある細菌である。より好ましくは、抑制される細菌は、β-ラクタム抗生物質に高度に耐性があるβ-ラクタマーゼ陽性株である。「耐性がある」および「高度に耐性がある」という用語は、当業者に周知である。
【0063】
複数菌感染は、β-ラクタマーゼ酵素を産生する病原体をしばしば含む。これらの酵素は通常、ペニシリンおよびセファロスポリンに耐性をもたらす。治療をしなければ、患者に深刻な、または重篤な結果をもたらしながら、これらの微生物はスムーズに増殖し、発育するだろう。
【0064】
それゆえ、本発明は、細菌の抗生物質耐性を克服するための医薬組成物および方法にも関する。
【0065】
治療方法
本発明の方法は、さまざまな状況で細菌増殖を抑制するのに有用である。本発明の好ましい実施態様では、上記で定義した式(I)の化合物は、β-ラクタム耐性菌増殖を防ぐために、インビトロの実験用細胞培養液に投与される。別の好ましい実施態様では、上記で定義した式(I)の化合物は、インビボのβ-ラクタム耐性菌増殖を防ぐために、ヒトを含む動物に投与される。この実施態様の方法は、治療的に有効な量の発明のβ-ラクタマーゼ阻害剤を、治療的に有効な期間、ヒトを含む動物に投与することを含む。
【0066】
それゆえ、本発明は、β-ラクタマーゼを、有効な量の上記で定義した式(I)の三環式カルバペネムのエチリデン誘導体の化合物、またはその塩誘導体、エステル誘導体もしくはアミド誘導体と接触させることを含む、β-ラクタマーゼを阻害する方法にも向けられている。
【0067】
さらなる実施態様によると、本発明はヒトまたは動物対象における細菌感染の治療方法を提供するが、方法はそれを必要とする対象に、治療的に有効な量の上記で定義した式(I)の三環式カルバペネムのエチリデン誘導体、またはその塩誘導体、エステル誘導体もしくはアミド誘導体、および抗生物質、好ましくはβ-ラクタム抗生物質を投与することを含む。
【0068】
それゆえ、本発明は、細菌によって引き起こされるヒトまたは動物においての感染の治療のための上記の医薬組成物の使用にも向けられている。
【0069】
異なるクラスの患者のための、および異なる病状のための安全で効果的な用量は、当該技術分野で必要な臨床試験によって決定されるであろう。いずれかの特定の患者のための特異的用量および治療計画は、利用される特異的化合物の活性、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与期間、投与経路および投与頻度、排出率、薬物の組み合わせ、選択された特定の化合物に対する病原体の感受性、感染の病原性、疾患の重症度および経過、ならびに疾患に対する患者の性質を含むさまざまな要因に依存するであろう。しかしながら、そのような事項は、抗菌薬の技術分野における周知の治療の原則に従って、医師の所定の裁量に委ねられる。
【0070】
「治療的に有効な量」および「治療的に有効な期間」という用語は、周知の治療を有意な患者利益、すなわち細菌感染および/または細菌の薬物耐性と関連する疾患の治癒を示すために有効な用量および期間で表示するために用いられている。好ましくは、そのような投与は、非経口、経口、舌下、経皮、局所、鼻腔内、気管内、または直腸内であろう。全身的に投与される場合、少なくとも約100 μg/mL、より好ましくは約1 mg/mL、さらに好ましくは約10 mg/mLの阻害剤の血中濃度を達成するために、治療用組成物は好ましくは十分な用量が投与される。局所投与については、これよりもかなり低い濃度が有効であり得、かなり高い濃度が許容されうる。
【0071】
上記で定義した式(I)の化合物、またはその塩誘導体、エステル誘導体もしくはアミド誘導体と抗生物質、最も好ましくはβ-ラクタム抗生物質との同時投与の場合、化合物の量対抗生物質の量、最も好ましくはβ-ラクタム抗生物質の量の比は、広範囲で変化してよい。
【0072】
β-ラクタム抗生物質対β-ラクタマーゼ阻害剤の比は、1:1〜100:1の間で変化してよい。好ましくは、β-ラクタム抗生物質対β-ラクタマーゼ阻害剤の比は、10:1未満である。
【0073】
ヒト用の本発明の新規医薬組成物は、単位用量当たりの送達量は、液体であっても固体であっても、約0.01%〜約99%の式(I)の三環式カルバペネムのエチリデン誘導体、またはその誘導体、例えば塩、エステルもしくはアミドなどを含む。本明細書で議論したような1またはそれ以上の他の抗生物質の好ましい範囲は、約10〜60%および約1%〜約99.99%であり、好ましくは約40%〜約90%である。
【0074】
医薬組成物は、一般的に、約50 mg〜約2.0 gの式(I)の三環式カルバペネムのエチリデン誘導体、またはその誘導体、例えば塩、エステルもしくはアミドなどを含むであろう。しかしながら、一般に、本明細書で議論した他の抗生物質は、約250 mg〜1000 mgおよび約50 mg〜約5 g、好ましくは約250 mg〜約2000 mgの範囲にて投与量を使用することが好ましい。
【0075】
非経口投与では、単位用量は滅菌水溶液中の、または溶液用の可溶性粉末の形態にある純粋な式(I)の化合物を通常は含むであろうが、これらは中性のpHおよび等張に調整されうる。小児用には、体重の約5〜25 mg/kgの用量を1日当たり2回、3回、または4回与えることが好ましい;10 mg/kgの用量が通常は推奨される。
【0076】
本発明の使用方法の特別な実施態様では、発明のβ-ラクタマーゼ阻害剤は抗生物質と、好ましくはβ-ラクタム抗生物質と同時投与される。
【0077】
本発明の目的のために、「同時投与される」という用語は、同時投与または連続的投与を意味するために用いられる。好ましくは、そのような同時投与は相乗的な効果を生じる。本明細書で利用されている「相乗効果」および「相乗的な効果」という用語は、二またはそれ以上の薬物が同時投与される場合に生じる効果が、化合物が個別に投与される場合に生じる効果に基づいて予想されるよりも大きいことを示す。
【0078】
本発明のβ-ラクタマーゼ阻害剤は、β-ラクタム抗生物質の分解を防ぐために作用し、それによってその有効性を高め、相乗的な効果を生じる。それゆえ、本発明の特別な実施態様によると、同時投与される抗生物質はβ-ラクタム抗生物質である。
【0079】
本発明の別の特別な実施態様によると、上記で定義したβ-ラクタマーゼ阻害剤は、セファロスポリン、ペニシリン、モノバクタムまたはカルバペネムからなる群から選択される抗生物質と同時投与される。
【0080】
本発明のさらなる特別な実施態様では、本医薬組成物の化合物は、セファロスポリン、例えば、セフェピム、セフピロム、セフタジジムまたはセフォタキシムなどと静脈内に同時投与される。
【0081】
本医薬組成物の化合物は、β-ラクタム抗生物質より前に、β-ラクタム抗生物質と同時に、またはβ-ラクタム抗生物質の後で提供されてよい(「同時投与」)。必要であれば、二の有効成分は、異なる経路によって別々に投与されてよい。
【0082】
本発明のさらなる特別な実施態様では、二の活性薬剤は、同一の経路によって、および好ましくは単一組成物にて投与され、それらが対象へ同時に与えられることを確かにするであろう。
【発明を実施するための形態】
【0083】
発明は、下記の限定されない実施例に関連してさらに説明される。
【実施例1】
【0084】
材料および方法
阻害剤についてのIC50測定:
IC50値は、遊離酵素の活性の50%減少をもたらすために必要な阻害剤の濃度を表す。β-ラクタマーゼ産生についての標準検査は、発色性セファロスポリン、ニトロセフィンの使用を含む。この化合物は、β-ラクタム環内のアミド結合がβ-ラクタマーゼによって加水分解されるにしたがって、黄色(λ 390 nmでpH 7.0での最大OD)から赤色(λ 486 nmでpH 7.0での最大OD)へ急速な特有の色変化を示す。
【0085】
均一に精製されたエシェリキア・コリ由来のクラスAβ-ラクタマーゼTEM-1およびSHV-1、ならびにエンテロバクター・クロアカ由来のクラスC酵素AmpCをアッセイにて利用した。
【0086】
化合物は、DMSO中の50 mMストックとして調製し、緩衝液P1(50 mMリン酸、pH 7)で終濃度10% DMSOまで希釈した。全てのさらなる希釈は、P2(10% DMSOを有するP1)を用いて行った。酵素および化合物希釈物は、37℃で10分間プレインキュベートし、反応は、予め温められた(37℃)ニトロセフィン(レポーター基質)を終濃度50 mMで添加することから開始した。SPECTRAMAX 384 PLUSマイクロプレートリーダー(モレキュラー・デバイセズ(Molecular Devices)、サニーベイル(Sunnyvale)、カリフォルニア)内で、96ウェルプレートを用いて、37℃で10分間、30秒間隔で490 nmでの吸収の変化を追跡した。PRISM 4.0ソフトウェア(グラフパッド・ソフトウェア社(Graphpad Software Inc.)、サンディエゴ、カリフォルニア)で、非線形回帰分析およびS字状用量反応分析を用いて、初速度を決定し、IC50値を計算した。IC50データは、μMとして表し、少なくとも二の独立した実験から計算した。
【0087】
上記の方法と同様の方法を用いる相対的IC50分析によって、代表的な式(I)の化合物は、エシェリキア・コリ由来のTEM-1およびSHV-1(クラスA、ペニシリナーゼ)、ならびにエンテロバクター・クロアカ由来のP-99(クラスC、セファロスポリナーゼ)のβ-ラクタマーゼ阻害剤としても評価された。データは、下記の第1表に示す。
【0088】
第1表:クラスA(TEM-1およびSHV-1)ならびにクラスC(AmpC)β-ラクタマーゼに対する式(I)の1a〜1hの三環式カルバペネムのインビトロIC50活性、および分配係数の計算値。
【表1】

【化4】

【0089】
LK-157は、新規化合物(4S,8S,9R)-4-メトキシ-10-((E)-エチリデン)-11-オキソ-1-アザトリシクロ[7.2.0.03,8]ウンデス-2-エン-2-カルボン酸(化合物1a)、その医薬的に許容しうる塩またはエステルである(以後「LK-157」と呼ぶ)。
【0090】
それは、選択されたβ-ラクタム抗生物質と同時投与されるβ-ラクタマーゼ阻害剤の有望な候補として、一連の新規三環式カルバペネムのエチリデン誘導体から選択された。
【実施例2】
【0091】
β-ラクタマーゼ阻害剤の存在下および非存在下でのMIC測定:
抗生物質
三の異なるβ-ラクタム抗生物質(セフトリアキソン、セフタジジムおよび、セフォタキシム)、ならびに式(I)のβ-ラクタマーゼ阻害剤の、一定の濃度比率(2:1)での組み合わせを検査し、セファロスポリン単独およびタゾシン(Tazocin(登録商標))と比較した。
【0092】
細菌株
全ての検査した菌株および臨床分離株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)または社内カンパニー・カルチャー・コレクションから購入した。検査した菌株は、純粋に説明の例の目的のために用いたが、それらは決して発明を実施するために必須ではない。
【0093】
検査生物の培養および維持
ATCCによって推奨される方法、または通常用いられる方法に従って菌株を処理した。凍結細菌ストックを室温まで解凍し、数滴を適切なプレート上に置いた;チョコレート寒天培地をヘモフィラス・インフルエンザ用に用い、血液寒天培地を他の全てについて用いた。翌日、新鮮なミューラーヒントン(Mueller-Hinton)寒天培地プレート(MHA)上で培養を継代培養し、継代培養を再び一晩インキュベートした。
【0094】
接種
2 mLの無菌生理食塩水中で、血液寒天培地プレートからの1コロニーのほんの一部を懸濁させることによって、0.5マクファーランド標準(McFarland standard)濁度と等しい濁度の細菌懸濁液を調製した。懸濁液を陽イオン調整ミューラーヒントンブロス(cation adjusted Mueller Hinton Broth(CAMHB))でさらに希釈し、最終接種5×105 CFU/mLを得た。
【0095】
微量液体希釈法
96ウェルマイクロタイタープレート内で、CAMHBを用いて、MIC実験を2回繰り返して行った。各抗生物質単独の、または各抗生物質と一定の濃度比のβ-ラクタマーゼ阻害剤(2:1)を組み合わせた物の連続2倍希釈物を、CAMHB中にて調製した。最終接種105 CFU/mLの細菌懸濁液を、抗菌物質を含む検査培地へ移した。96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルにて、50 μLの細菌接種、50 μLの抗生物質希釈物(または検査化合物非存在下の抗生物質のMIC測定用培地)を組み合わせた。各プレートは、細菌接種を伴わない4ウェル(ネガティブコントロール)、ならびに検査化合物および抗生物質を共に有さない4ウェル(ポジティブコントロール)を含んだ。プレートを35℃で24時間インキュベートした。最終接種濃度が常に5×105 CFU/mLに非常に近くなることを確実にするために、各接種懸濁液についての純度チェックおよびコロニー計数を行った。さらに、標準抗生物質を検査し、それぞれの菌株についてMIC値が推奨される範囲内にあることを確実にすることによって、アッセイを常にモニターする。
【0096】
全ての分離株についての最小発育阻止濃度(MIC)は、肉眼によって検出される生物の増殖を完全に抑制する抗菌剤の最低濃度として定義された。この検査は、抗生物質単独の存在下での細菌増殖と、抗生物質および新規(検査)化合物の両方の存在下での細菌増殖との間で比較することを可能にする。代表的な結果を第2表に示す。
【0097】
第2表 セフタジジム、セフトリアキソン、セフォタキシム、ならびにそれぞれの組み合わせ、セフタジジム/LK-157、セフトリアキソン/LK-157およびセフォタキシム/LK-157のMIC値。
【表2】

【0098】
エンテロバクター・クロアカATCC 23355菌株およびエンテロバクター・アエロゲネスATCC 29751菌株は、第3世代セファロスポリンに感受性があり、誘導型セファロスポリナーゼを産生することは周知である。LK-157と組み合わせると、さらなるMICの低下が観察された。
【0099】
AmpC様酵素(1型β-ラクタマーゼ)を産生するエンテロバクター・クロアカの1つの臨床分離株は、セファロスポリンに感受性があり、別の3つは、耐性があった。また、脱抑制AmpCβ-ラクタマーゼを産生する3つの菌株は、耐性があると考えられた。市販のβ-ラクタマーゼ阻害剤は、一般的に、脱抑制された生物に対して、そのパートナーのペニシリンを増強する十分な阻害活性を有さない。一定の濃度比率(2:1)のLK-157を組み合わせた場合、MICは、セフトリアキソンおよびセフォタキシムと組み合わせて明らかに減少し、タゾシン(Tazocin(登録商標))よりも明らかに優れていた。しかしながら、検査した菌株の中で、セフタジジムでは効果は観察されなかった。
【0100】
セフタジジム耐性広域スペクトルβ-ラクタマーゼ(MIC 32〜64 mg/L)を産生するクレブシエラ・オキシトカATCC 51983菌株は、セフトリアキソンおよびセフォタキシム(MIC 2〜8 mg/L)に対して感受性がある。LK-157と全てのセファロスポリンとを組み合わせた場合、MICは0.25〜2 mg/Lの範囲でかなり低下した。
【0101】
SHV-18を産生するクレブシエラ・ニューモニエATCC 700603菌株は、セフタジジムに耐性があったが、セフトリアキソンおよびセフォタキシムに感受性があった。LK-157とセファロスポリンを組み合わせた場合、MICは1〜4 mg/Lの範囲で著しく減少した。
【0102】
SHV-10(IRT)およびSHV-12を産生するクレブシエラ・ニューモニエATCC 51503菌株は、全てのセファロスポリンに耐性があった。LK-157と第3世代のセファロスポリンを組み合わせた場合、MICはセフタジジムと組み合わせる以外は、著しく減少した。セフォタキシムのMICは、LK-157との組み合わせで0.5 mg/Lまで低下した。
【0103】
ESBL(2be型β-ラクタマーゼ;n=8)を産生するクレブシエラ・ニューモニエの全ての検査した臨床分離株は、セフタジジムに耐性があると認識された。ESBLは、一般的に、β-ラクタマーゼ阻害剤 クラブラン酸カリウム、スルバクタムおよびタゾバクタムによって阻害されるが、我々の研究では、ほとんどの検査したクレブシエラ・ニューモニエは耐性があるままであり、これは複合酵素、阻害剤耐性TEMβ-ラクタマーゼ(IRT)の産生、または非β-ラクタマーゼメカニズム(ポーリン減少)で説明されうる。セファロスポリンおよびESBL産生株についての主要な問題の1つは、接種効果である。例外的に大量のまたは少量の酵素を有する分離株は、特にβ-ラクタマーゼ阻害剤と組み合わせると、異常に振る舞いうる。
【0104】
全ての検査した組み合わせに耐性があるままである3つの菌株があった。しかしながら、全てのセファロスポリンと組み合わせてMIC50は明らかに減少し、クレブシエラ・ニューモニエの6つの分離株に対して、セフトリアキソンおよびセフォタキシムで効果は再び最も明白であった。それらのMICは、明らかにタゾシン(Tazocin(登録商標))よりも優れている。
【0105】
CTX-M型ESBLを産生するシトロバクター・フロインデイB318に対するLK-157と組み合わせたセファロスポリンのMICは、1〜2 mg/Lの範囲でかなり低下し、タゾシン(Tazocin(登録商標))よりも優れていた。
【0106】
AmpC産生シトロバクター・フロインデイの3つの臨床分離株は、第3世代セファロスポリンに感受性があると認識され、LK-157と組み合わせて、MICのさらなる低下は観察されなかった。4つの耐性シトロバクター・フロインデイ菌株のMIC値も、かなり減少した。2つの菌株は耐性があるままであったが、一方で他の2つは感受性を付与された。
【実施例3】
【0107】
クラスAβ-ラクタマーゼ陽性細菌株に対して検査した場合の、β-ラクタマーゼ阻害剤の相乗的な効果:
固定濃度(4 μg/mL)の代表的な式(I)の化合物を、アモキシシリン、セフタジジム、ピペラシリン、セフォタキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフピロムおよびアズトレオナムと組み合わせたいくつかの相乗作用検査を行い(第3表)、市販のβ-ラクタマーゼ阻害剤 クラブラン酸、アゾバクタム(azobactam)およびスルバクタムと比較した。
【0108】
抗生物質
検査化合物のストック溶液およびコントロール抗生物質を、NCCLSガイドライン[好気的に生育する細菌についての希釈抗菌試験方法(Methods for dilution antimicrobial tests for bacteria that grow aerobically). NCCLS document M7-A5; 2000; vol. 19. 米国臨床検査標準協議会(National Committee for Clinical Laboratory Standards), ビラノーバ(Villanova), ペンシルベニア]に従って蒸留水中で調製した。全ての薬物重量を塩形態用に補正し、純粋な原薬を示す。低水溶性の化合物を最初にDMSO(ジメチルスルホキシド、20%)に溶解し、水またはミューラーヒントンブイヨン(Mueller Hinton Bouillon(MHB))でさらに希釈した。
【0109】
細菌株
全ての検査した菌株および臨床分離株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、または社内カンパニー・カルチャー・コレクションから購入した。
【0110】
培地
35℃で18〜22時間、撹拌することなく生育したブロス培養液からストック培養液を調製し、続いて抗凍結剤として5% DMSO(v/v、終濃度)を加え、液体窒素中で凍結保存した。検査方法について、ミューラーヒントンIIブロス(Mueller-Hinton II broth(MHBII))(BBL、コッキーズビル(Cockeysville)、メリーランド)を用いた。
【0111】
アッセイ方法
抗生物質のインビトロ活性を、CLSIガイドラインによって推奨されているように微量液体希釈法および寒天希釈法によって決定した。MIC実験は、MHBを用いて96ウェルマイクロタイタープレート内にて2回繰り返して行った。各抗生物質単独の、または一定量(4 μg/mL)のβ-ラクタマーゼ阻害剤と組み合わせた各抗生物質の連続2倍希釈物を、MHBIIブロス中にて調製した。各ウェルの内容物を混合するために、滅菌ピペットチップを用いた(同一カラム内の低濃度から高濃度まで1つのチップを用いた)。最終接種105 CFU/mLの細菌懸濁液を、マルチポイントイノキュレーター(ダイナテック(Dynatech)、シャンティリー(Chantilly)、バージニア、米国)によって抗菌物質を含む検査培地へ移した。次いで、プレートを35℃で24時間インキュベートした。
【0112】
モラクセラ・カタラーリスのBRO型酵素およびスタフィロコッカス・アウレウスのペニシリナーゼのみならず、TEM型、SHV型広域スペクトルβ-ラクタマーゼ(ESBL)およびさまざまな腸内細菌科の非ESBL酵素を含むセリンベースクラスAβ-ラクタマーゼに対して、代表的な式(I)の化合物を評価した。
【0113】
第3表 クラスAβ-ラクタマーゼ産生細菌に対する、セフタジジム(CAZ)またはピペラシリン(PIP)と組み合わせた、一定濃度(4 μg/mL)の代表的な式(I)の化合物、クラブラン酸(CLA)、スルバクタム(SUL)およびタゾバクタム(TZB)の相乗効果。
【表3】

【0114】
全LK-157は、クラスAβ-ラクタマーゼ産生菌株のパネルに対して、CAZおよびPIPと組み合わせて、タゾバクタムと類似の活性スペクトルを示した。それらのMICは、β-ラクタム抗生物質単独と比較して著しく減少した。CAZと組み合わせたそれらのMICは、PIPと組み合わせるよりも明らかに低かったが、これは部分的に、検査した菌株に対する抗生物質単独のより良い活性のためである。
【0115】
菌株を示している腸内細菌科由来のTEM型およびSHV型ESBL、ならびに他の特徴づけられていないESBLに対して、CAZと組み合わせたLK-157のインビトロ活性は、CAZ/クラブラン酸およびCAZ/タゾバクタムと同様の範囲内にあった。
【0116】
モラクセラ・カタラーリスのBRO-1およびBRO-2β-ラクタマーゼに対して、ならびにスタフィロコッカス・アウレウス(MSSA)のペニシリナーゼ(PC型)に対して、LK-157は他の検査したβ-ラクタマーゼ阻害剤よりも活性があった。
【実施例4】
【0117】
クラスCβ-ラクタマーゼ陽性細菌株に対して検査した場合の、β-ラクタマーゼ阻害剤の相乗的な効果:
下記の方法は、実施例3に記載された方法と同一であり、β-ラクタム抗生物質に高度に耐性があるクラスCβ-ラクタマーゼ陽性細菌株に対して、代表的な式(I)の化合物を、その抗生物質の有効性を増強する能力について検査した。クラスC酵素は、エンテロバクター・クロアカおよびシトロバクター・フロインデイのAmpCβ-ラクタマーゼを含んだ。代表的な結果を第4表に示す。
【0118】
第4表 クラスAおよびクラスCβ-ラクタマーゼ産生細菌に対する、セフォタキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフピロム、セフタジジムおよびアズトレオナムと組み合わせた、一定濃度(4 μg/mL)の代表的な式(I)の化合物およびタゾバクタム(TZB)の相乗効果。
【表4】

【0119】
クラスAおよびクラスCβ-ラクタマーゼ産生細菌に対して、セフォタキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフピロム、セフタジジムおよびアズトレオナムと組み合わせて、一定濃度(4 μg/mL)の代表的な式(I)の化合物およびタゾバクタム(TZB)を用いた。
【0120】
全LK-157は、クラスAβ-ラクタマーゼ産生菌株に対して、β-ラクタム抗生物質と組み合わせて、タゾバクタムと類似の活性スペクトルを示した。用いた全ての組み合わせにおいて、その活性は、クラスCβ-ラクタマーゼ(AmpC)産生菌株に対して、タゾバクタムよりも優れていた。いくつかの耐性菌において、パートナーのβ-ラクタム抗生物質の減弱した活性が回復した。
【0121】
最低MICは、LK-157とセフェピムおよびセフピロムの組み合わせで観察された。
【実施例5】
【0122】
下記の方法は、実施例2に記載された方法と同一であり、β-ラクタム抗生物質に高度に耐性がある特徴づけられたクラスA、クラスCおよびクラスDβ-ラクタマーゼ陽性細菌株に対して、代表的な式(I)の化合物を、その抗生物質の有効性を増強する能力について、セフォタキシム、セフタジジムまたはセフェピムと組み合わせてのみならず、単剤として検査した。それらのMICを、セフォタキシム、セフォタキシム/タゾバクタム、セフタジジム、セフタジジム/タゾバクタム、セフェピム、セフェピム/タゾバクタム、およびピペラシリン/タゾバクタムのMICと比較した。
【0123】
代表的な結果を、それぞれ第5表、第6表および第7表に示す。
【0124】
第5表 特徴づけられたクラスA、クラスCおよびクラスDβ-ラクタマーゼ産生菌株に対する、セフェピムと組み合わせた一定濃度(4 μg/mL)の代表的な式(I)の化合物の減少したMIC値(μg/mL)。
【表5】

【0125】
第6表 特徴づけられたクラスA、クラスCおよびクラスDβ-ラクタマーゼ産生菌株に対する、セフォタキシムと組み合わせた、一定濃度(4 μg/mL)の代表的な式(I)の化合物の減少したMIC値(μg/mL)。
【表6】

【0126】
第7表 特徴づけられたクラスA、クラスCおよびクラスDβ-ラクタマーゼ産生菌株に対する、代表的な式(I)の化合物をセフタジジムと一定の濃度比(2:1)で組み合わせた場合の、減少したMIC値(μg/mL)。
【表7】

【0127】
LK-157と組み合わせたセフェピム、セフォタキシムおよびセフタジジムは、特徴づけられたβ-ラクタマーゼを産生する55種の実験室株に対して、優れたインビトロ活性を示した。LK-157それ自体は、検査した菌株に対して抗生物質活性を示さなかった。それゆえ、観察されたMICの有意な減少は、それぞれのβ-ラクタマーゼの抑制によるものであった。最も明白なのは、TEM型およびSHV型酵素に対する活性であった。上記で示された結果は、クラスA、クラスCおよびクラスDβ-ラクタマーゼに対する活性の広域スペクトルを示し、活性のスペクトルは明らかに最高基準(golden standard)としてのタゾシン(Tazocin(登録商標))よりも優れている。
【0128】
本発明は、本明細書に記載された特定の実施態様によって範囲が制限されない。実際、本明細書に記載された修正に加えて、さまざまな発明の修正が前述の説明および添付の図から当業者に明らかになるであろう。そのような修正は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることを意図している。
【0129】
特許、特許出願、プロトコルおよびさまざまな出版物を含む多数の参考文献を本発明の説明に引用し、議論している。そのような参考文献の引用および/または議論は、単に本発明の説明を明らかにするために提供され、いずれかのそのような参考文献が本明細書に記載された発明に対する「先行技術」であることを認めるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬的に有効な量の式(I)
【化1】

(I)
[式中、
3位および4位にて基本カルバペネム核に縮合した符号Cが付いた環は、5員環、6員環または7員環であり、
i)符号Cが付いた環内の1またはそれ以上の炭素原子は、置換基で一置換または二置換されてよく、置換基は同一または異なっていてよく、下記を意味してよい:
a)水素原子、
b)1〜20個の炭素原子を有する飽和アルキル鎖であり、飽和アルキル鎖は直鎖状(メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチルなど)またはいずれかの位置にて分枝した分枝鎖状(イソプロピル、s-ブチル、イソブチル、イソアミル、tert-ブチルなど)であってよく、各鎖員はハロ、ヒドロキシ、(C1-C4)-アルキルオキシ、メルカプトおよび(C1-C4)-アルキルメルカプト、(C1-C4)-アルカンスルホニル、アミノ、(C1-C4)-アルキルアミノおよびジ(C1-C4)-アルキルアミノ、アルキレンアミノ、グアニジノ、非置換N1-モノ、N3-モノ、N1,N3-ジおよびN3,N3-ジ-(C1-C4)-ホルムアミジノ、芳香族もしくはヘテロ芳香族5員環または6員環、(C1-C4)-アルキルオキシカルボニル、シアノ、オキソなどの置換基で一置換または二置換されてよく、
c)1〜20個の炭素原子を有する不飽和アルキル鎖であり、不飽和アルキル鎖は二重結合もしくは三重結合を有する直鎖状、または二重結合もしくは三重結合を有するいずれかの位置にて分枝した分枝鎖状であってよく、各鎖員はハロ、ヒドロキシ、(C1-C4)-アルキルオキシ、チオおよび(C1-C4)-アルキルチオ、(C1-C4)-アルカンスルホニル、アミノ、(C1-C4)-アルキルアミノおよびジ-(C1-C4)-アルキルアミノ、芳香族もしくはヘテロ芳香族5員環または6員環、(C1-C4)-アルキルオキシカルボニル、シアノ、オキソなどの置換基で一置換または二置換されてよく、
d)3〜7員を有する飽和または部分的不飽和シクロアルキルラジカルであり、環は1もしくはそれ以上の酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでよく、各環員はハロ、ヒドロキシ、(C1-C4)-アルキルオキシ、チオおよび(C1-C4)-アルキルチオ、(C1-C4)-アルカンスルホニル、アミノ、(C1-C4)-アルキルアミノおよびジ-(C1-C4)-アルキルアミノ、(C1-C4)-アルキルオキシカルボニル、シアノ、オキソなどの置換基で一置換または二置換されてよく、
e)芳香族もしくはヘテロ芳香族5員環または6員環、
f)ヒドロキシ、(C1-C10)-アルキルオキシ、一置換または二置換(C1-C10)-アルキルオキシ、アシルオキシ、モノ、ジまたはトリ-(C1-C4)-アルキルシリルオキシ基、
g)メルカプト、(C1-C10)-アルキルメルカプト、一置換または二置換(C1-C10)-アルキルメルカプト、アシルメルカプト基、
h)アミノ、(C1-C4)-アルキルアミノおよびジ-(C1-C4)-アルキルアミノ、アセチルアミノ、アリルオキシカルボニルアミノ、イミノメチルアミノ、N-メチルアミノメチレンアミノ、N,N-ジメチルアミノメチレンアミノ、グアニジノ、シアノグアニジノ、メチルグアニジノ基、
i)ハロ原子、
j)アジド、ニトロ、シアノ、(C1-C4)-アルキルオキシカルボニル基、
k)(C1-C4)-アルカンスルホニル基;
ii)符号Cが付いた環内の1またはそれ以上の炭素原子は、置換アルキル鎖または非置換アルキル鎖で置換されてよく、アルキル鎖は>C*=CR1R2の形態にて二重結合を通じて符号Cが付いた環と結合し、C*は符号がついた環内の炭素原子を意味し、C=は環外の二重結合を意味し、置換基R1およびR2は同一または異なってよく、下記を意味してよい:
a)水素原子、
b)1〜20個の炭素原子を有する非置換飽和アルキル鎖であり、非置換飽和アルキル鎖は直鎖状またはいずれかの位置にて分枝した分枝鎖状であってよく、
c)1〜20個の炭素原子を有する非置換不飽和アルキル鎖であり、非置換不飽和アルキル鎖は二重結合もしくは三重結合を有する直鎖状または分枝鎖状であってよく、
d)3〜7員を有する非置換飽和もしくは部分的不飽和シクロアルキルまたはヘテロアリール、
e)芳香族もしくはヘテロ芳香族5員環または6員環、
f)置換飽和もしくは部分的不飽和アルキル鎖または置換3〜7員炭素環であり、鎖内または環内のいずれかの炭素原子は、ハロ、ヒドロキシ、(C1-C4)-アルキルオキシ、(C1-C4)-アルキルチオ、(C1-C4)-アルカンスルホニル、アミノ、(C1-C4)-アルキルアミノ、ジ-(C1-C4)-アルキルアミノ、(C1-C4)-アルキルオキシカルボニル、シアノ、オキソなどの置換基で一置換または二置換されてよく、
g)ヒドロキシ、(C1-C4)-アルキルオキシ、アシルオキシ、メルカプト、(C1-C4)-アルキルメルカプト、アミノ、(C1-C4)-アルキルアミノ、ジ-(C1-C4)-アルキルアミノおよびアシルアミノ基、
h)ニトロ、シアノ、(C1-C4)-アルキルオキシカルボニル基;
置換基R1およびR2は閉環した連結アルキレン鎖(CH2)n(n=2〜7)も意味してよく、いずれかのメチレン(-CH2-)員は、オキサ(-O-)、チア(-S-)、イミノ(-NH-)または(C1-C4)-アルキルイミノ基に置換されてよい;
iii)符号Cが付いた環内の1またはそれ以上の炭素原子は、二重結合を通じてヘテロ原子で置換されてよい;
iv)符号Cが付いた環内の1またはそれ以上の炭素原子は、閉環した置換基で二置換されてスピロ化合物を得てよく、炭素原子に加えて、環員は酸素原子、硫黄原子および窒素原子であってもよい;
v)符号Cが付いた環内の1またはそれ以上の炭素原子は、酸素原子に置換されてよい;
vi)符号Cが付いた環内の1またはそれ以上の炭素原子は、硫黄原子で置換されてよく、硫黄原子はモノ酸化またはジ酸化されてよい;
vii)符号Cが付いた環内の1またはそれ以上の炭素原子は、窒素原子で置換されてよく、窒素原子は>N*-R3の形態にて置換されてよく、N*は符号Cが付いた環内の窒素原子を意味し、R3は下記を意味してよい:
a)1〜20個の炭素原子を有する飽和アルキル鎖であり、非置換飽和鎖は直鎖状(メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチルなど)またはいずれかの位置にて分枝した分枝鎖状であってよく、各鎖員はハロ、ヒドロキシ、(C1-C4)-アルキルオキシ、(C1-C4)-アルキルチオ、(C1-C4)-アルカンスルホニル、アミノ、(C1-C4)-アルキルアミノ、ジ-(C1-C4)-アルキルアミノ、芳香族もしくはヘテロ芳香族5員環または6員環、(C1-C4)-アルキルオキシカルボニル、シアノ、オキソ、イミノなどの置換基で1回または数回置換されてよく、
b)1〜20個の炭素原子を有する非置換不飽和アルキル鎖であり、この非置換不飽和アルキル鎖は二重結合もしくは三重結合を有する直鎖状または二重結合もしくは三重結合を有するいずれかの位置にて分枝した分枝鎖状であってよく、
c)3〜7員を有する非置換飽和もしくは部分的不飽和シクロアルキルラジカルまたはヘテロアリールラジカル、
d)非置換芳香族もしくはヘテロ芳香族5員環または6員環、
e)シアノ、(C1-C4)-アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、(C1-C4)-アルキルアミノカルボニル、(C1-C4)-アルキルスルホニルなどの基;
式中、Xは下記を意味してよい:
i.水素原子、
ii.アルカリ金属、
iii.アルカリ土類金属、
iv.アンモニウムイオン、モノ置換、ジ置換もしくはトリ置換非環状もしくは環状脂肪族アミンのプロトン化型または他の窒素塩基のプロトン化型、
v.四級化アンモニウムイオン、
vi.ラジカルR4であり、下記であってよい:
a)(C1-C20)-アルキル、(C1-C20)-アルケニル、置換アルキルフタリジルを含む群から選択される、
b)下記の形態にて示されうるラジカル
【化2】

[式中、
R5は水素または1〜4個の炭素原子を有する低級アルキルを表し、
R6は水素、アルキ(alky)、シクロアルキル、アルコキシ、シクロアルコキシ、シクロアルキルアルキル、アルケニルオキシ、フェニルを表す]

の三環式カルバペネムのエチリデン誘導体、またはその塩誘導体、エステル誘導体もしくはアミド誘導体、および抗生物質を含む医薬組成物。
【請求項2】
抗生物質がβ-ラクタム抗生物質である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
β-ラクタム抗生物質がセファロスポリン、ペニシリン、モノバクタムまたはカルバペネムからなる群から選択される、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
セファロスポリンがセフタジジム、セフォタキシム、セフェピムまたはセフピロムからなる群から選択される、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
ペニシリンがピペラシリンである、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項6】
モノバクタムがアズトレオナムである、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項7】
カルバペネムがメロペネムである、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項8】
医薬組成物が医薬的に許容しうる担体をさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
医薬組成物が医薬的に許容しうる賦形剤をさらに含む、請求項1〜8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
広域スペクトルβ-ラクタマーゼ阻害剤としての使用のための、治療的に有効な量の請求項1で定義した式(I)の三環式カルバペネムのエチリデン誘導体、またはその塩誘導体、エステル誘導体もしくはアミド誘導体。
【請求項11】
β-ラクタマーゼ阻害剤がクラスA、クラスCおよびクラスDのβ-ラクタマーゼ阻害剤である、請求項10記載の使用。
【請求項12】
細菌によって引き起こされるヒトまたは動物においての感染の治療における使用のための、請求項1〜9のいずれかに記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2010−518142(P2010−518142A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549406(P2009−549406)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051724
【国際公開番号】WO2008/098955
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(504359293)レツク・フアーマシユーテイカルズ・デー・デー (60)
【Fターム(参考)】