説明

三環性ピラゾロピリミジン誘導体

【課題】HSP90の作用を阻害する新規化合物の提供。
【解決手段】HSP90のATPase活性を阻害し、抗腫瘍活性を有する、各種置換基を有する式(1)で表されるピラゾロピリミジン化合物。式(1)で表される化合物を含むHSP90阻害剤、式(1)で表される化合物を含む医薬、式(1)で表される化合物を含む抗癌剤、式(1)で表される化合物を含む医薬組成物および式(1)で表される化合物を用いる癌の治療方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱ショック蛋白質90(heat shock protein 90、HSP90)の作用を阻害する三環性ピラゾロピリミジン骨格を有する化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
HSP90は、細胞内の主要なシャペロン蛋白質である。シャペロン蛋白質とは、種々の蛋白質に結合し、結合した蛋白質のフォールディング(folding)を補助する蛋白質である。フォールディングにHSP90を必要とする蛋白質群は、総称してHSP90クライアント蛋白質(HSP90 client protein)と呼ばれている。
【0003】
HSP90によるクライアント蛋白質のフォールディング機構には、HSP90以外にも、コシャペロン(cochaperone)、パートナー蛋白質(partner protein)およびイムノフィリン(Immunophilin)等の複数の蛋白質が関与し、これらが協働してHSP90クライアント蛋白質のフォールディングを補助すると考えられている(非特許文献1)が、その詳細は未だ十分に解明されていない。
【0004】
HSP90クライアント蛋白質は、HSP90やコシャペロン等と複合体を形成し、その後コンフォメーション変化を起こし、成熟型になると考えられており、HSP90等によって正常にフォールディングされなかった場合は、ユビキチン化されプロテアソームにより分解されると考えられている(非特許文献1〜非特許文献4)。
【0005】
近年、HSP90阻害剤は、種々の疾患(例えば、癌、アルツハイマー病等の神経変性疾患、心血管疾患、感染症、自己免疫疾患またはアポトーシスによる細胞傷害が関連する疾患等)の治療剤の候補として期待されている(非特許文献2)。
【0006】
特に、抗癌剤分子標的を含む癌関連蛋白質の多くがHSP90クライアント蛋白質であるので、HSP90阻害剤は、抗癌剤の候補として期待されている。例えば、Her2、Raf、Akt、テロメラーゼなど癌の発生や亢進に関与する複数の蛋白質が、HSP90のクライアント蛋白質として知られている(非特許文献1)。これらの癌関連蛋白質は、HSP90をシャペロン蛋白質として利用することにより、それぞれ、未成熟型から成熟型の蛋白質となり、細胞の癌化に作用するようになると考えられている。HSP90は、癌細胞のみでなく正常細胞にも存在する蛋白質であるが、正常細胞の場合と比較して、癌細胞において、クライアント蛋白質との親和性が高く、そのシャペロン活性に必要なATPase活性も活性化されていることが報告されている(非特許文献1〜3)。従って、HSP90阻害剤は、癌細胞特異的に、複数の癌関連蛋白質を同時に不活化することができると考えられ、強力かつ広範囲な抗腫瘍スペクトルを有する抗癌剤の候補として期待されている。
【0007】
HSP90阻害剤として、ゲルダナマイシン(geldanamycin)、ハービマイシン(herbimycin)、17−アリルアミノゲルダナマイシン(17−allylaminogeldanamycin、17−AAG)等が旧来より知られている(非特許文献1〜非特許文献4)。これらの化合物は、HSP90のN末端側にあるATP結合ポケットに結合し、HSP90とATPの結合を阻害することによってHSP90のシャペロン蛋白質としての機能を阻害する。また、上記以外にもHSP90を阻害する化合物として、種々の化合物が報告されており(特許文献1、特許文献2、特許文献3、非特許文献5および非特許文献6)、三環性ピラゾロピリミジン誘導体の報告もなされている(特許文献4)。
【0008】
また、三環性ピラゾロピリミジン誘導体、および、同様に3つの複素環で構成された縮合環構造を有する化合物については、抗癌関連等の用途に関して複数の報告がなされている(特許文献5〜9、非特許文献7および非特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2005/28434号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008/049105号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2008/093075号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2008/035629号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2004/047755号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2006/015263号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2005/021568号パンフレット
【特許文献8】国際公開第1998/043991号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2008/100447号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Medicinal Research Reviews(2006)Vol.26、No.3、310−338
【非特許文献2】TRENDS in Molecular Medicine(2004)Vol.10、No.6、283−290
【非特許文献3】British Journal of Pharmacology(2005)146、769−780
【非特許文献4】TRENDS in Biochemical Sciences(2006)Mar、31(3)、164−172
【非特許文献5】Journal of Medicinal Chemistry(2005)Vol.48、No.13、4212−4215
【非特許文献6】Journal of Medicinal Chemistry(2006)Vol.49、No.1、381−390
【非特許文献7】Organic & Biomolecular Chemistry(2003)Vol.1、No.23、4166−4172
【非特許文献8】Organic & Biomolecular Chemistry(2006)Vol.4、No.9、1723−1729
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
HSP90阻害剤は、医薬、特に、抗癌剤としての利用が期待されているものの、実際に医薬として使用されるに到った化合物は未だない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、HSP90のATPase活性を阻害し、抗腫瘍活性を有する新規化合物として、下記一般式(1)で表される化合物を見出し、本発明を完成させた。さらに、本発明者らは、本発明の化合物について、in vivoにおける抗腫瘍試験、安全性試験、代謝安定性試験、代謝酵素に対する阻害試験等を実施し、本発明の化合物は医薬に求めらる種々の資質を具備していることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、
[1]一般式(1)
【0014】
【化1】

【0015】
[式(1)中、
は、1〜3個のハロゲン原子を置換基として有していてもよいC〜Cアルキル基または水素原子を示し、
は、ハロゲン原子を示し、
は、C〜Cアルキル基またはC〜Cアルコキシ基を示し、
は、1〜3個のハロゲン原子を置換基として有していてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、
Xは、単結合またはメチレン基を示す。]
で表される化合物またはその塩。
[2]2−{4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−メチルアセタミド。
[3]2−{4−アミノ−2−[(3−ブロモ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−メチルアセタミド。
[4]2−{4−アミノ−2−[(3−ブロモ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−yl}アセタミド。
[5]2−{4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−(2−フルオロエチル)アセタミド。
[6]4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシピリジン−2−イル)メチル]−N−(2,2−ジフルオロエチル)−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−カルボキサミド。
[7][2]から[6]のいずれか1に記載の化合物の臭化水素酸塩。
[8] [2]から[6]のいずれか1に記載の化合物の塩酸塩。
[9] [2]から[6]のいずれか1に記載の化合物のメタンスルホン酸塩。
[10] [2]から[6]のいずれか1に記載の化合物のエタン−1,2−ジスルホン酸塩。
【0016】
[11][1]から[10]のいずれか1に記載の化合物またはその塩を含有するHSP90阻害剤。
[12] [1]から[10]のいずれか1に記載の化合物またはその塩を含有するHSP90のATPase活性阻害剤。
[13] [1]から[10]のいずれか1に記載の化合物またはその塩を含有するHSP90とATPの結合阻害剤。
[14] [1]から[10]のいずれか1に記載の化合物またはその塩を有効成分として含有する医薬。
[15] [1]から[10]のいずれか1に記載の化合物またはその塩を有効成分として含有する抗癌剤。
[16] [1]から[10]のいずれか1に記載の化合物またはその塩、および薬学的に許容し得る担体を含有する医薬組成物。
[17] [1]から[10]のいずれか1に記載の化合物またはその塩を投与することを特徴とする癌の治療方法。
[18] [1]から[10]のいずれか1に記載の化合物またはその塩の、医薬製造のための使用。
[19]癌が、HSP90のクライアント蛋白質が過剰発現している癌である[15]に記載の抗癌剤。
[20]癌が、HSP90のクライアント蛋白質が過剰発現している癌である[17]に記載の癌の治療方法。
[21]癌が、HSP90のクライアント蛋白質の変異がみられる癌である[15]に記載の抗癌剤。
[22]癌が、HSP90のクライアント蛋白質の変異がみられる癌である[17]に記載の癌の治療方法。
[23]癌が、HSP90のクライアント蛋白質の活性化がみられる癌である[15]に記載の抗癌剤。
[24]癌が、HSP90のクライアント蛋白質の活性化がみられる癌である[17]に記載の癌の治療方法。
[25]癌が、HSP90のクライアント蛋白質が属する細胞内シグナル伝達経路の活性化がみられる癌である[15]に記載の抗癌剤。
[26]癌が、HSP90のクライアント蛋白質が属する細胞内シグナル伝達経路の活性化がみられる癌である[17]に記載の癌の治療方法。
[27]癌が、HSP90のクライアント蛋白質に依存している癌である[15]に記載の抗癌剤。
[28]癌が、HSP90のクライアント蛋白質に依存している癌である[17]に記載の癌の治療方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、HSP90阻害活性を有する、上記一般式(1)で表される新規ピラゾロピリミジン誘導体が提供される。本発明の化合物は、抗腫瘍剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において、「熱ショック蛋白質90」、「heat shock protein 90」または「HSP90」は、特に限定しない限り、HSP90ファミリーのいずれかまたは全てを示す。HSP90ファミリーとしては、例えば、HSP90α、HSP90β、94kDa glucose−regulated protein(GRP94)およびHsp75/tumor necrosis factor receptor associated protein 1(TRAP1)が挙げられる。
【0019】
本発明において、「HSP90阻害剤」とは、HSP90の作用を一部もしくは完全に阻害する化合物または組成物をいい、例えば、HSP90の発現を一部もしくは完全に阻害する化合物または組成物、または、HSP90のシャペロン蛋白質としての機能を一部もしくは完全に阻害する化合物または組成物が挙げられる。
【0020】
ここで、「HSP90のシャペロン蛋白質としての機能」とは、HSP90がクライアント蛋白質のフォールディングを補助してクライアント蛋白質をその機能する形態に導くこと、または、HSP90がクライアント蛋白質を安定化させる機能等をいう。
【0021】
従って、HSP90阻害剤として、具体的には、例えば、HSP90の発現を阻害する化合物、HSP90とクライアント蛋白質の結合を阻害する化合物、HSP90とコシャペロンやイムノフィリン類の結合を阻害する化合物、HSP90とATPの結合を阻害する化合物、HSP90のATPase活性を阻害する化合物またはHSP90のコンフォメーション変化を阻害する化合物が挙げられる。HSP90阻害剤は、HSP90の作用に起因する疾患の治療剤として使用することができる。
【0022】
HSP90のクライアント蛋白質としては、Her2、EGFR、c−Kit、c−Met、KDR、Flt3、IGF−1R、PDGF等の増殖因子受容体キナーゼ、PDK1、Akt、Raf、S6、Cdk4、Cdk6、Chk1、PLK1、Src、Aurora B、Bcr−Abl、GSK3β、ERK5等の細胞内キナーゼ、GR、ERα、PR、ARなどのステロイド受容体、その他として、HIF−1、Survivin、Tert、Bcl−6、p53等が挙げられる。
【0023】
本発明において、「HSP90の作用に起因する疾患」としては、例えば、癌、アルツハイマー病等の神経変性疾患、心臓血管疾患、感染症、自己免疫疾患またはアポトーシスによる細胞傷害が関連する疾患等が挙げられる。本発明において、用語「腫瘍」および「癌」は交換可能に使用される。また、本発明において、腫瘍、悪性腫瘍、癌、悪性新生物、癌腫、肉腫等を総称して、「腫瘍」または「癌」と表現する場合がある。
【0024】
以下に、本発明の一般式(1)中の各置換基について説明する。
【0025】
は、1〜3個のハロゲン原子を置換基として有していてもよいC〜Cアルキル基または水素原子を示す。
【0026】
ここで、「1〜3個のハロゲン原子を置換基として有していてもよいC〜Cアルキル基」とは、無置換であるか、または1〜3個のハロゲン原子を置換基として有している炭素数1〜6の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基を意味する。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチルまたはシクロヘキシルエチル基等が挙げられる。アルキル基に置換するハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、置換基の位置はアルキル基上のいずれの炭素原子上であってもよく、複数個の置換基を有する場合、該置換基は同一の炭素上の置換基であっても異なる炭素上の置換基であってもよい。アルキル基に置換するハロゲン原子としては、フッ素原子または臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0027】
としては、無置換のC〜Cアルキル基、フッ素原子を置換基として有するC〜Cアルキル基であるかまたは水素原子であることが好ましくメチル基、エチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基または水素原子であることがより好ましい。
【0028】
は、ハロゲン原子を示す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0029】
としては、フッ素原子、塩素原子または臭素原子が好ましく、塩素原子または臭素原子がより好ましい。
【0030】
は、C〜Cアルキル基またはC〜Cアルコキシ基を示す。
【0031】
ここで、「C〜Cアルキル基」は、上記Rにおける定義と同義である。「C〜Cアルコキシ基」とは、上記「C〜Cアルキル基」をアルキル部分に有するC〜Cアルコキシ基を意味する。
【0032】
としては、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基が好ましく、メチル基、エチル基またはメトキシ基がより好ましい。
【0033】
は、1〜3個のハロゲン原子を置換基として有していてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子または水素原子を示す。
【0034】
ここで、「1〜3個のハロゲン原子を置換基として有していてもよいC〜Cアルキル基」は、上記Rにおける定義と同義である。
【0035】
としては、C〜Cアルキル基、シアノ基、フッ素原子または水素原子が好ましい。
【0036】
Xは、単結合であるか、メチレン基であることが好ましい。
【0037】
本発明の式(1)で表される化合物には、立体異性体あるいは不斉炭素原子に由来する光学異性体が存在することもあるが、これらの立体異性体、光学異性体およびこれらの混合物のいずれも本発明に含まれる。
【0038】
本発明の式(1)で表される化合物は、次に記載の群から選ばれるいずれか1の化合物が特に好ましい。
【0039】
2−{4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−メチルアセタミド、
2−{4−アミノ−2−[(3−ブロモ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−メチルアセタミド、
2−{4−アミノ−2−[(3−ブロモ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−yl}アセタミド、
2−{4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−(2−フルオロエチル)アセタミド、
4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシピリジン−2−イル)メチル]−N−(2,2−ジフルオロエチル)−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−カルボキサミド。
【0040】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、所望により医薬的に許容される塩とすることができる。そのような塩としては、例えば塩酸塩、ヨウ化水素酸塩等のハロゲン化水素酸塩;硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、燐酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩等の低級アルカンスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等のアリ−ルスルホン酸塩;ギ酸、酢酸、りんご酸、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、蓚酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;およびオルニチン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩等のアミノ酸塩;を挙げることができ、ハロゲン化水素酸塩および有機酸塩が好ましく、臭素酸塩、塩酸塩、メタンスルホン酸塩またはエタン−1,2−ジスルホン酸塩がより好ましい。
【0041】
本発明の一般式(1)で表される化合物またはその塩は、遊離体、水和物もしくは溶媒和物として存在することもある。空気中の水分を吸収すること等により水和物、含水塩等として存在することもある。溶媒和物としては、医薬的に許容し得るものであれば特に限定されないが、具体的には、水和物、エタノール和物等が好ましい。また、一般式(1)で表される本発明化合物中に窒素原子が存在する場合にはN−オキシド体となっていてもよく、これら溶媒和物、水和物、含水塩およびN−オキシド体も本発明の範囲に含まれる。
【0042】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、置換基の種類や組み合わせによって、シス体、トランス体等の幾何異性体、互変異性体又はd体、l体等の光学異性体等の各種異性体が存在し得るが、本発明の化合物は、特に限定していない場合はそれら全ての異性体、立体異性体及びいずれの比率のこれら異性体及び立体異性体混合物をも包含するものである。
【0043】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、構成する原子の一つまたは複数で非天然の比率の原子同位体を含むこともある。原子同位体としては、例えば、重水素(H)、トリチウム(H)、ヨウ素−125、(125I)または炭素−14(14C)などが挙げられる。これらの化合物は、治療又は予防剤、研究試薬、例えば、アッセイ試薬、及び診断剤、例えば、インビボ画像診断剤として有用である。一般式(1)で表される化合物のすべての同位体変種は、放射性であるかどうかにかかわらず、本発明の範囲内に含まれる。
【0044】
また、本発明は、生体内における生理条件下で酵素や胃酸等による反応により本発明の医薬組成物の有効成分である化合物(1)に変換される化合物、すなわち、酵素的に酸化、還元、加水分解等を起こして化合物(1)に変化される化合物又は胃酸等により加水分解等を起こして化合物(1)に変化される「医薬的に許容されるプロドラッグ化合物」も本発明に包含する。
【0045】
上記プロドラッグとしては、化合物(1)のアミノ基がアシル化、アルキル化、リン酸化された化合物(例えば、そのアミノ基がエイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化、tert−ブチル化された化合物等である)等を挙げることができる。
【0046】
本発明の化合物のプロドラッグは公知の方法によって化合物(1)から製造することができる。また、本発明の化合物のプロドラッグは、広川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻分子設計163頁〜198頁に記載されているような、生理的条件で化合物(1)に変化するものも含まれる。
【0047】
次に、一般式(1)で表される化合物の代表的な製造方法を説明する。なお、各反応は、必要に応じて、適当な保護基を用いてもよいし、通常の有機化学的反応で所望の変換を用いてもよく、保護基の種類および各置換基の変換順序は、特に限定されない。
【0048】
[主工程1]
一般式(1)中のXが、メチレン基である化合物の製造方法を説明する。
スキーム 1
【0049】
【化2】

【0050】
[各式中、R、R、R3-----およびRは、上記と同様に定義され、Rは、1個または2個の炭素数1〜6個のアルキル基が置換していてもよいメチレン基を示し、Rは、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよい複素環基を示し、Rは、保護基を有するアミノ基を示し、LG1およびLGは脱離基を示す。脱離基LG1およびLGとしては、ハロゲン原子、トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基およびトリフルオロメタンスルホニルオキシ基等が挙げられる。アミノ基の保護基としては、ベンジルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジル基等が挙げられる。]
【0051】
アルデヒド誘導体(1)(市販品として入手可)を溶媒中、アリルブロミドとインジウム粉末で処理することにより化合物(2)を得ることができる。アルケン誘導体(2)は、アルデヒド誘導体(1)とアリルマグネシウムブロミド等のグリニャール試薬を用いても得ることができ、溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフランまたはジメチルスルホキシド等が好ましい。反応温度は、−70℃〜100℃が好ましく、−20℃〜50℃がより好ましい。反応時間は、1時間〜48時間が好ましい。
【0052】
アルケン誘導体(2)の1,2−ジオール化反応を行うことにより、トリオール誘導体(3)を得ることができる。アルケンのジオール化反応としては、過マンガン酸カリウムを用いる反応、水銀塩存在下での水の付加(Kucherov−Deniges法)反応、触媒量の四酸化オスミウムと共酸化剤としてアミンオキシドとを用いるオスミウム酸化反応またはヨウ素を用いるジヒドロキシ化反応(Prevoat法またはWoodward法)等が挙げられる。これらの反応の溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、塩化メチレン、アセトン、t-ブタノール、水もしくはそれらの混合溶媒等が挙げられる。反応温度は、0℃〜100℃であればよく、10℃〜50℃が好ましい。反応時間は、1時間〜72時間が好ましい。
【0053】
トリオール誘導体(3)はN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフランまたはジメチルスルホキシド等の溶媒中、2,2−ジメトキシプロパンと触媒量の酸で処理することにより、あるいはアセトン中、酸触媒で処理することにより、アセタール誘導体(4)に変換することができる。酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、塩化亜鉛に代表されるルイス酸等が挙げられる。反応温度は、0℃〜100℃が好ましく、10℃〜50℃がより好ましい。反応時間は、1時間〜48時間が好ましい。
【0054】
化合物(4)は、適当な酸化反応条件下で処理することによりケトン誘導体(5)に導くことができる。その場合の酸化反応としては、ジメチルスルホキシド等を活性化する向山酸化、Swern酸化、その変法として塩化オキザリルに代えてジシクロヘキシルカルボジイミド、トリフルオロ無水酢酸、無水酢酸もしくは三酸化硫黄ピリジン錯体を用いる方法、または、二酸化マンガンを用いる酸化反応が挙げられる。溶媒としては、ジオキサン、テトラヒドロフランまたは塩化メチレン等が挙げられる。反応温度は、−70℃〜50℃が好ましい。反応時間は、1時間〜48時間が好ましい。
【0055】
ケトン誘導体(5)は、溶媒中、ヒドラジン誘導体(R−R−NHNH)(化合物(A))と処理することにより化合物(6)へと変換することができる。化合物(A)は、J.Am.Chem.Soc.1995,117,4228−4239等に記載されている方法により製造することができる。この反応に用いる溶媒としては、アルコール、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等またはこれらの混合溶媒が挙げられる。反応温度は、−20℃〜50℃が好ましく、0℃〜30℃がより好ましい。化合物(A)に換えてそれらの塩を用いる場合は、塩と当量または過剰量の塩基を用いればよい。塩基としては、トリエチルアミン等が挙げられる。反応時間は、1時間〜48時間が好ましい。
【0056】
化合物(6)の6位アミノ基をベンジルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等の適当な保護基で保護して化合物(7)に変換した後、アセタール誘導体(7)を硫酸、塩酸、酢酸等の酸で処理することによりジオール誘導体(8)を得ることができる。この反応に用いる溶媒としては、アルコール、水、ジオキサン等またはこれらの混合溶媒が挙げられる反応温度は、-10℃〜70℃が好ましく、0℃〜40℃がより好ましい。反応時間は、1時間〜48時間が好ましい。
【0057】
化合物(8)の水酸基を有機化学の通常の知識に基づいて、例えば、塩基存在下に塩化チオニル、臭化チオニル、トルエンスルホニルクロリド、メタンスルホニルクロリドまたはトリフルオロメタンスルホニルクロリド等で処理して、ハロゲン原子、トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基等の脱離基LGに変換して化合物(9)を得ることができる反応温度は、-78℃〜30℃が好ましく、−20℃〜10℃がより好ましい。反応時間は、1時間〜48時間が好ましい。
【0058】
化合物(9)をN,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中で硫化水素ナトリウムと反応させた後、塩基で処理することにより、化合物(10)を得ることができる。または、化合物(9)をN,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中でチオ酢酸カリウムと反応させることによっても、化合物(10)を得ることができる。塩基としては、炭酸カリウムまたは炭酸水素カリウム等が挙げられ、炭酸カリウムが好ましい。反応温度は、−30℃〜100℃であればよく、−10℃〜70℃が好ましい。
【0059】
水酸基のオキソ基への変換(化合物(10)から化合物(11)への変換)方法としては、向山酸化、Swern酸化またはその変法として塩化オキザリルに換えてDCC、トリフルオロ無水酢酸、無水酢酸もしくは三酸化硫黄ピリジン錯体を用いる酸化反応を挙げることができる。それらの方法は日本化学会編第4版実験化学講座23巻,有機合成V(丸善株式会社、1992年)等に記載されている。
【0060】
酢酸エステル誘導体(12)は、所望のR基を得るためにそれぞれ選択された市販の試薬とケトン誘導体(11)とのWittig反応を代表とする増炭素反応により製造ができる。増炭素反応は、公知の反応が好ましく、実験化学講座(第四版、Vol.22.日本化学会編、丸善株式会社)「有機合成I:炭化水素・ハロゲン化合物、P57〜P69」等を挙げることができる。
【0061】
酢酸アミド誘導体(13)は、酢酸エステル誘導体(12)にモノアルキルアミンをアルコール中で直接作用させ導くか、酢酸エステル誘導体(12)を加水分解して酢酸誘導体とした後、各種アミン(市販品として入手可)との縮合反応により導くことができる。エステル加水分解反応は、公知のアルカリ加水分解が好ましく、参考文献としては、実験化学講座(第四版、Vol.22.日本化学会編、丸善株式会社)「有機合成IV:酸・アミノ酸・ペプチド、P6〜P11」等を挙げることができる。アミンとの縮合反応には、ペプチド合成法として一般的に用いられる方法を適用すればよい。ペプチド合成法としては、例えば、アジド法、酸クロリド法、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)法、活性エステル法、カルボニルジイミダゾール法、水溶性カルボジイミドを使用する方法またはジエチルシアノホスフェートを使用する方法等を挙げることができる。これらの方法は、M.Bondansky,Y.S.KlausnerおよびM.A.Ondetti著“Peptide Synthesis”(A Wiley−interscience publication,New York,1976年)、G.R.Pettit著“Synthetic Peptides”(Elsevier Scientific Publication Company,New York,1976年)または日本化学会編第4版実験化学講座22巻,有機合成IV(丸善株式会社、1992年)等に記載されている。各種アミンとの縮合反応に用いる溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ピリジン、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル等またはこれらの混合溶媒を挙げることができる。反応温度は、−20℃〜50℃であればよく、−10℃〜30℃が好ましい。
【0062】
化合物(13)は、そのR−R−基が例えば4−メトキシベンジル基などの保護基である場合には、酸処理、酸化処理または加水素分解した後、保護基を有するアミノ基(R)の保護基に適った脱保護反応条件で処理することにより、化合物(13a)へ変換することができる。保護基に適った脱保護反応条件として、代表的な例を以下に述べる。例えば、保護基で置換されたアミノ基がアルカノイルアミノ基またはアロイルアミノ基である場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはアンモニア等の水溶液を用いて加水分解することによりアミノ基とすることができる。保護基で置換されたアミノ基がtert−ブトキシカルボニルアミノ基またはジ−tert−ブトキシカルボニルアミノ基である場合には、塩酸またはトリフルオロ酢酸等の酸で処理することによりアミノ基とすることができる。
【0063】
化合物(13a)は、溶媒中で塩基の存在下にJ.Med.Chem.1992,35,438−450等に記載されている方法により調製したピリジン誘導体(化合物(B))と処理することにより、化合物(14)へ導くことができる。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフランまたはジメチルスルホキシド等が挙げられる。塩基としては、水素化ナトリウム、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド、水酸化カリウム、炭酸カリウムまたは炭酸セシウム等が挙げられる。反応温度は、0℃〜100℃であればよい。反応時間は、1時間〜48時間であればよい。
【0064】
一方、化合物(13)のR−R−基が保護基ではなく、目的の置換基である場合、保護基を有するアミノ基(R)を上記の脱保護反応条件で処理することにより、化合物(14)を得ることができる。
【0065】
[主工程2]
一般式(1)中のXが単結合である化合物の製造方法を説明する。
スキーム 2
【0066】
【化3】

【0067】
[各式中、R、R、R、R、R、R、RおよびLGは、それぞれ上記と同様に定義される。]
【0068】
ケトン誘導体(11)を無水トリフルオロメタンスルホン酸と塩基存在下で処理することにより、トリフレート体(15)へ変換できる。溶媒としては、塩化メチレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等が好ましく、塩化メチレンがより好ましい。塩基としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、ピリジン、トリエチルアミン、DBU、ジイソプロピルエチルアミン等が好ましく、トリエチルアミンがより好ましい。反応温度は、−80℃〜150℃が好ましく、−10℃〜40℃がより好ましい。
【0069】
トリフレート体(15)は、アルコール中で金属触媒及び塩基の存在下、一酸化炭素とのカップリング反応を行うことにより、エステル体(16)へ変換できる。アルコールとしては、メタノール、エタノールが好ましい。金属触媒としてはパラジウム触媒が好ましく、例えば[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)/ジクロロメタン錯体(1:1)、又はジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等を挙げることができる。金属触媒の使用量としては、トリフレート体(15)に対して0.01〜0.2倍モル当量の範囲が好ましい。塩基としては、例えばリン酸三カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナリウム、炭酸セシウム等の無機塩基類が好ましく、リン酸三カリウム及び炭酸ナリウムがより好ましい。塩基の使用量としては、トリフレート体(15)に対して1〜100倍モル当量の範囲が好ましい。添加剤としては、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、トリフェニルホスフィン等の有機リン化合物が挙げられ、添加剤の使用量としては、トリフレート体(15)に対して0.05〜0.2モル当量の範囲が好ましい。反応温度としては、−10℃〜溶媒の沸点の範囲が好ましく、0℃〜100℃の範囲がより好ましい。反応時間は、通常1〜50時間程度である。
【0070】
以後の工程(化合物(17)から化合物(18)への変換)は、スキーム1で示した方法(化合物(13)から化合物(14)への変換)と同様な処理を行うことにより製造することができる。
【0071】
本発明の化合物またはその塩は、HSP90を阻害するので、HSP90阻害剤、HSP90のATPase活性阻害剤、HSP90とATPの結合阻害剤として用いることができ、本発明の化合物またはその塩を含有する医薬、特に好ましくは抗癌剤として用いることができる。
【0072】
HSP90のATPase活性は、当業者に通常用いられるATPaseアッセイを用いて調べることができる。例えば、HSP90のATPase活性は、下記の試験例1に記載されるように、試験化合物の存在下または非存在下で、組換えHSP90蛋白質およびATPを用いて検出することができる。あるいは、ATPaseアッセイは、例えば、Analytical Biochemistry 327,176−183(2004)あるいはNature 425,407−410(2003)に記載されている方法を実施すればよい。
【0073】
HSP90の発現の阻害は、当業者に通常用いられるノーザンブロッティング、ウェスタンブロッティングまたはELISA等を用いて調べることができる。例えば、試験化合物の存在下または非存在下で培養した細胞からmRNAを回収してノーザンブロッティングを行い、試験化合物の非存在下と比較して試験化合物の存在下で培養した細胞から回収したmRNAにおけるHSP90 mRNA量が減少している場合、該試験化合物をHSP90の発現を阻害する化合物であると同定する。あるいは、例えば、Cancer.Res.65,6401−6408(2005)に記載されている方法でウェスタンブロッティングを実施し、HSP90の蛋白質量を調べればよい。
【0074】
HSP90とクライアント蛋白質の結合の阻害は、例えば、当業者に通常用いられる免疫沈降およびウェスタンブロッティングを用いて調べることができる。免疫沈降およびウェスタンブロッティングは、例えば、J.Biol.Chem.277,10346−10353(2002)に記載されている方法を実施すればよい。
【0075】
HSP90とコシャペロンやイムノフィリン類の結合を阻害する化合物は、例えば、当業者に通常用いられる免疫沈降およびウェスタンブロッティングを用いて調べることができる。例えば、Nature 425,407−410(2003)に記載されている方法を実施し、試験化合物の存在下または非存在下で、HSP90とコシャペロンやイムノフィリン類の結合を調べればよい。
【0076】
HSP90とATPの結合の阻害は、例えば、標識したATPとHSP90との結合試験を用いて調べることができる。例えば、J.Biol.Chem.272,18608−18613(1997)に記載されている方法を実施し、試験化合物の存在下または非存在下で、HSP90と標識ATPの結合を調べればよい。
【0077】
HSP90のコンフォメーション変化の阻害は、例えば、bis−ANS(1,1’−bis(4−anilino−5−naphthalene sulfonic acid)を利用したコンフォメーショナルアッセイ(conformational assay)を用いて調べることができる。コンフォメーショナルアッセイは、例えば、J.Med.Chem.47,3865−3873(2004)に記載されている方法を実施すればよい。
【0078】
細胞の増殖阻害活性は、当業者に通常用いられる増殖阻害試験法を用いて調べることができる。細胞の増殖阻害活性は、例えば、下記の試験例2に記載されるように、試験化合物の存在下または非存在下における細胞(例えば、腫瘍細胞)の増殖の程度を比較することによって実施することができる。増殖の程度は、例えば、生細胞を測定する試験系を用いて調べることができる。生細胞の測定方法としては、例えば、[H]−チミジンの取り込み試験、BrdU法またはMTTアッセイ等が挙げられる。
【0079】
また、in vivoでの抗腫瘍活性は、当業者に通常用いられる抗腫瘍試験法を用いて調べることができる。例えば、マウス、ラット等に各種腫瘍細胞を移植し、移植細胞の生着が確認された後に、本発明の化合物を経口投与、静脈内投与等し、数日〜数週間後に、薬剤無投与群における腫瘍増殖と化合物投与群における腫瘍増殖とを比較することにより本発明のin vivoでの抗腫瘍活性を確認することができる。
【0080】
本発明の化合物は、腫瘍または癌、例えば、肺癌、消化器癌、卵巣癌、子宮癌、乳癌、肝癌、頭頚部癌、血液癌、腎癌、睾丸腫瘍、前立腺癌、多発性骨髄腫、悪性黒色腫等の皮膚癌、肉腫等の治療に使用することができる。
【0081】
本発明の化合物は、HSP90阻害作用を有するので、HSP90依存性が上昇している癌の治療に用いることができる。HSP90への依存性が上昇している癌としては、HSP90クライアント蛋白質に依存している癌、HSP90のクライアント蛋白質が過剰発現している癌、HSP90のクライアント蛋白質の変異がみられる癌等が挙げられ、より具体的には、例えば、Her2、c−Met、Flt3等が過剰発現している癌やc−kit、PDGFR、Raf等の変異がみられる癌が挙げられるがこれらに限定されない。
【0082】
さらには、HSP90クライアント蛋白質が属する細胞内シグナル伝達経路には、癌に関与しているとされる因子群(RAS−MAPK、PI3K、テロメレース等)が多く存在し、HSP90を阻害すれば、これら因子へのシグナル伝達が阻害され、結果として上記細胞内シグナル伝達経路の活性化をも阻害することとなるので、HSP90阻害剤である本発明の化合物は、当該観点からも様々な癌の治療に好適に用いることができる。
【0083】
本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と薬学的に許容し得る担体を含み、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射等の各種注射剤として、あるいは、経口投与または経皮投与等の種々の方法によって投与することができる。薬学的に許容し得る担体とは、本発明の化合物または本発明の化合物を含む組成物を、ある器官または臓器から他の器官または臓器に輸送することに関与する、薬学的に許容される材料(例えば、賦形剤、希釈剤、添加剤、溶媒等)を意味する。
【0084】
製剤の調製方法としては投与法に応じ適当な製剤(例えば、経口剤または注射剤)を選択し、通常用いられている各種製剤の調製法にて調製できる。経口剤としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、または油性ないし水性の懸濁液等を例示できる。経口投与の場合では遊離体のままでも、塩の型のいずれでもよい。水性製剤は薬学的に許容される酸と酸付加物を形成させるか、ナトリウム等のアルカリ金属塩とすることで調製できる。注射剤の場合は製剤中に安定剤、防腐剤または溶解補助剤等を使用することもできる。これらの補助剤等を含むこともある溶液を容器に収納後、凍結乾燥等によって固形製剤として用時調製の製剤としてもよい。また、一回投与量を一の容器に収納してもよく、また複数回投与量を一の容器に収納してもよい。
【0085】
固形製剤としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、またはトローチ剤が挙げられる。これらの固形製剤は、本発明の化合物とともに薬学的に許容し得る添加物を含んでもよい。添加物としては、例えば、充填剤類、増量剤類、結合剤類、崩壊剤類、溶解促進剤類、湿潤剤類または滑沢剤類が挙げられ、これらを必要に応じて選択して混合し、製剤化することができる。
【0086】
液体製剤としては、例えば、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、または懸濁剤が挙げられる。これらの液体製剤は、本発明の化合物とともに薬学的に許容し得る添加物を含んでもよい。添加物としては、例えば、懸濁化剤または乳化剤が挙げられ、これらを必要に応じて選択して混合し、製剤化することができる。
【0087】
本発明の化合物は、哺乳類、特にヒトの癌治療に用いることができる。投与量および投与間隔は、疾患の場所、患者の身長、体重、性別または病歴によって、医師の判断により適宜選択され得る。本発明の化合物をヒトに投与する場合、投与量の範囲は、1日当たり、約0.01mg/kg体重〜約500mg/kg体重、好ましくは、約0.1mg/kg体重〜約100mg/kg体重である。ヒトに投与する場合、好ましくは、1日あたり1回、あるいは2から4回に分けて投与され、適当な間隔で繰り返すのが好ましい。また、1日量は、医師の判断により必要によっては上記の量を超えてもよい。
【0088】
本発明の化合物は他の抗腫瘍剤と併用して用いてもよい。例えば、抗腫瘍抗生物質、抗腫瘍性植物成分、BRM(生物学的応答性制御物質)、ホルモン、ビタミン、抗腫瘍性抗体、分子標的薬、その他の抗腫瘍剤等が挙げられる。
【0089】
より具体的に、アルキル化剤としては、例えば、ナイトロジェンマスタード、ナイトロジェンマスタードN−オキシドもしくはクロラムブチル等のアルキル化剤、カルボコンもしくはチオテパ等のアジリジン系アルキル化剤、ディブロモマンニトールもしくはディブロモダルシトール等のエポキシド系アルキル化剤、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ニムスチンハイドロクロライド、ストレプトゾシン、クロロゾトシンもしくはラニムスチン等のニトロソウレア系アルキル化剤、ブスルファン、トシル酸インプロスルファンまたはダカルバジン等が挙げられる。
【0090】
各種代謝拮抗剤としては、例えば、6−メルカプトプリン、6−チオグアニンもしくはチオイノシン等のプリン代謝拮抗剤、フルオロウラシル、テガフール、テガフール・ウラシル、カルモフール、ドキシフルリジン、ブロクスウリジン、シタラビン若しくはエノシタビン等のピリミジン代謝拮抗剤、メトトレキサートもしくはトリメトレキサート等の葉酸代謝拮抗剤等が挙げられる。
【0091】
抗腫瘍性抗生物質としては、例えば、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ペプロマイシン、ダウノルビシン、アクラルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、THP−アドリアマイシン、4 ’−エピドキソルビシンもしくはエピルビシン等のアントラサイクリン系抗生物質抗腫瘍剤、クロモマイシンA3またはアクチノマイシンD等が挙げられる。
【0092】
抗腫瘍性植物成分としては、例えば、ビンデシン、ビンクリスチン若しくはビンブラスチン等のビンカアルカロイド類、パクリタキセル、ドセタキセル等のタキサン類、またはエトポシドもしくはテニポシド等のエピポドフィロトキシン類が挙げられる。
【0093】
BRMとしては、例えば、腫瘍壊死因子またはインドメタシン等が挙げられる。
【0094】
ホルモンとしては、例えば、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プラステロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、オキシメトロン、ナンドロロン、メテノロン、ホスフェストロール、エチニルエストラジオール、クロルマジノンまたはメドロキシプロゲステロン等が挙げられる。
【0095】
ビタミンとしては、例えば、ビタミンCまたはビタミンA等が挙げられる。
【0096】
抗腫瘍性抗体、分子標的薬としては、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、ニモツズマブ、デノスマブ、ベバシズマブ、インフリキシマブ、メシル酸イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、スニチニブ、ラパチニブ、ソラフェニブ等が挙げられる。
【0097】
その他の抗腫瘍剤としては、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、タモキシフェン、カンプトテシン、イホスファミド、シクロホスファミド、メルファラン、L−アスパラギナーゼ、アセクラトン、シゾフィラン、ピシバニール、プロカルバジン、ピポブロマン、ネオカルチノスタチン、ヒドロキシウレア、ウベニメクスまたはクレスチン等が挙げられる。
【0098】
本発明には、本発明化合物又はその塩を投与することを特徴とする癌の予防方法及び/または治療方法も含まれる。
【0099】
さらに、本発明には、前記医薬を製造するための本発明の化合物、その塩又はそれらの溶媒和物の使用も含まれる。
【0100】
以下に示す実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらはいかなる意味においても限定的に解釈されない。また、本明細書において、特に記載のない試薬、溶媒および出発材料は、市販の供給源から容易に入手可能である。
【実施例】
【0101】
(実施例1)
(1)1−(2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン−5−イル)−3−ブテン−1−オール
【0102】
【化4】

【0103】
市販の2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン−5−カルボアルデヒド(1.92g)とN,N−ジメチルホルムアミド(20ml)からなる混合物に、インジウム粉末(0.23g)と亜鉛粉末(1.31g)を加えた後、室温でヨウ化ナトリウム(0.15g)とアリルブロミド(1.73ml)を加え、3時間撹拌した。反応混合物をセライト濾過し、濾液に酢酸エチルを加え、1N塩酸、飽和食塩水の順で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮し、残渣にヘキサンを加え析出物を濾取し、標題化合物(1.75g)を固体として得た。
H−NMR(DMSO−D)δ:2.55−2.69(2H,m),4.95−5.09(3H,m),5.37(1H,d,J=4.1Hz),5.67−5.77(1H,m),7.42(2H,s).
【0104】
(2)1−(2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン−5−イル)−2−(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)エタン−1−オール
【0105】
【化5】

【0106】
1−(2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン−5−イル)−3−ブテン−1−オール(57.24g)、N−メチルモルホリン−N−オキシド(147.6g)、テトラヒドロフラン(500ml)、アセトン(500ml)、水(500ml)および四酸化オスミウム(62mg)からなる混合物を室温で2日間撹拌した。原料消失を確認した後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(1L)を加え、反応混合物を減圧下で約1.5Lまで濃縮した。残渣に塩化ナトリウムを加えて飽和させ、テトラヒドロフランで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過後、濾液を減圧下で濃縮して溶媒を留去した。得られた残渣にN,N−ジメチルホルムアミド(500ml)、2,2−ジメトキシプロパン(210ml)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(18.61g)を加え、室温にて14時間撹拌した。反応混合物に飽和重曹水(1L)と水(1L)を加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾液を減圧下で約100mlまで濃縮し、残渣にヘキサンを加え析出物を濾取し、標題化合物(53.88g)を固体として得た。
H−NMR(DMSO−D)δ:1.22−1.32(6H,m),1.72−2.23(2H,m),2.50(1H,s),3.50(1H,td,J=14.2,6.9Hz),4.22−3.92(2H,m),5.06−5.36(2H,m),7.43(2H,d,J=12.8Hz).
ESI−MS m/z:308(M+H)
【0107】
(3)1−(2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン−5−イル)−2−(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)エタン−1−オン
【0108】
【化6】

【0109】
氷浴冷却下、1−(2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン−5−イル)−2−(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)エタン−1−オール(74.70g)とジメチルスルホキシド(600ml)からなる混合物に無水酢酸(149ml)を室温で15分かけて滴下し、同温で18時間撹拌した。原料消失を確認した後、反応液を氷水にあけ、析出する固体を濾取し、標題化合物(68.26g)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.37(3H,s),1.42(3H,s),2.98−3.06(1H,m),3.32−3.40(1H,m),3.67−3.72(1H,m),4.25−4.30(1H,m),4.57−4.64(1H,m),5.72(2H,s).
ESI−MS m/z:306(M+H)
【0110】
(4)4−クロロ−3−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル]−1−(4−メトキシベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−6−アミン
【0111】
【化7】

【0112】
氷浴冷却下、1−(2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン−5−イル)−2−(2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イル)エタン−1−オン(61.23g)、米国特許US2003/18197号に記載の方法により製造した(4−メトキシベンジル)−ヒドラジン 塩酸塩(41.50g)およびジクロロメタン(600ml)からなる混合物に、トリエチルアミン(83.68ml)を30分間かけて加えた。徐々に昇温させて17時間撹拌した後、反応混合物に10%クエン酸水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して得られた残渣に5%クエン酸水溶液を加え、析出物を濾取、水で洗浄して、標題化合物(73.84g)を固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.36(3H,s),1.43(3H,s),3.11(1H,dd,J=14.7,8.1Hz),3.43(1H,dd,J=14.7,5.2Hz),3.73−3.78(4H,m),4.08(1H,dd,J=8.1,6.0Hz),4.54−4.61(1H,m),4.77(2H,br s),5.22(2H,s),6.83(2H,d,J=8.5Hz),7.24(2H,d,J=8.5Hz).
ESI−MS m/z:404(M+H)
【0113】
(5)ジ−tert−ブチル {4−クロロ−3−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル]−1−(4−メトキシベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−6−イル}イミドジカーボネート
【0114】
【化8】

【0115】
4−クロロ−3−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル]−1−(4−メトキシベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−6−アミン(72.83g)とテトラヒドロフラン(700ml)からなる混合物に、4−ジメチルアミノピリジン(2.20g)とジ−tert−ブチルジカーボネート(86.59g)を加えた後、室温にて12時間撹拌した。反応混合物を濾過した後、濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)で精製することにより、標題化合物(70.00g)をアモルファスとして得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.37(3H,s),1.40(3H,s),1.44−1.46(18H,m),3.21−3.29(1H,m),3.48−3.55(1H,m),3.74−3.81(4H,m),4.09−4.15(1H,m),4.58−4.66(1H,m),5.48(2H,dd,J=17.3,15.1Hz),6.81(2H,d,J=7.8Hz),7.27−7.30(2H,m).
ESI−MS m/z:604(M+H)
【0116】
(6)ジ−tert−ブチル [4−クロロ−3−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−1−(4−メトキシベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−6−イル]イミドジカーボネート
【0117】
【化9】

【0118】
ジ−tert−ブチル {4−クロロ−3−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル]−1−(4−メトキシベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−6−イル}イミドジカーボネート(53.85g)をアセトニトリル(500ml)に溶かし、塩化銅(II)二水和物(30.39g)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)で精製することにより、標題化合物(37.70g)をアモルファスとして得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.46(18H,s),3.15(1H,d,J=3.7Hz),3.23−3.33(2H,m),3.62−3.82(5H,m),4.26−4.34(1H,m),5.49(2H,t,J=15.9Hz),6.82(2H,d,J=8.1Hz),7.25−7.30(2H,m).
ESI−MS m/z:564(M+H)
【0119】
(7)ジ−tert−ブチル [8−ヒドロキシ−2−(4−メトキシベンジル)−2,7,8,9−テトラヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−4−イル]イミドジカーボネート
【0120】
【化10】

【0121】
氷浴冷却下、ジ−tert−ブチル [4−クロロ−3−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−1−(4−メトキシベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−6−イル]イミドジカーボネート(28.00g)、2,4,6−コリジン(16.53ml)および脱水ジクロロメタン(400ml)からなる混合物に、メタンスルホニルクロリド(4.23ml)を滴下して加えた後、4℃で15時間撹拌した。反応混合物に10%クエン酸水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下濃縮した。得られた残渣をN,N−ジメチルホルムアミド(300ml)に溶解させ、氷浴冷却下、硫化水素ナトリウム一水和物(5.52g)を加えた後、室温で1.5時間撹拌した。反応混合物に炭酸カリウム(10.29mg)を加え、50℃に加熱してさらに5時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチルを加え、10%クエン酸水溶液、飽和食塩水の順に洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)で精製して、標題化合物(20.59g)を固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.45(18H,s),2.39(1H,br s),3.29−3.51(4H,m),4.58(1H,br s),3.76(3H,s),5.42−5.49(2H,m),6.82(2H,d,J=8.6Hz),7.30(2H,d,J=8.6Hz).
ESI−MS m/z:544(M+H)
【0122】
(8)4−[ビス(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−(4−メトキシベンジル)−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル アセテート
【0123】
【化11】

【0124】
窒素雰囲気下、ジ−tert−ブチル [8−ヒドロキシ−2−(4−メトキシベンジル)−2,7,8,9−テトラヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−4−イル]イミドジカーボネート(8.17g)、ジメチルスルホキシド(74ml)およびピリジン(12ml)からなる混合物に無水酢酸(14ml)を氷冷下で滴下し、30分間撹拌した後、室温で15時間撹拌した。原料消失を確認した後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)で精製して、標題化合物(6.15g)をアモルファスとして得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.44(18H,s),2.26(3H,s),3.77(3H,s),3.88(2H,s),5.50(2H,s),6.68(1H,s),6.83(2H,d,J=8.8Hz),7.31(2H,d,J=8.8Hz).
ESI−MS m/z:584(M+H)
【0125】
(9)ジ−tert−ブチル [2−(4−メトキシベンジル)−8−オキソ−2,7,8,9−テトラヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−4−イル]イミドジカーボネート
【0126】
【化12】

【0127】
氷浴冷却下、4−[ビス(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−(4−メトキシベンジル)−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル アセテート(6.15g)、メタノール(200ml)および炭酸カリウム(0.73g)の混合物を1.5時間撹拌した。原料消失を確認した後、反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下で濃縮して標題化合物(5.70g)をアモルファスとして得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.46(18H,s),3.84(2H,s),3.77(3H,s),4.23(2H,s),5.48(2H,s),6.83(2H,d,J=8.6Hz),7.32(2H,d,J=8.6Hz).
ESI−MS m/z:542(M+H)
【0128】
(10)エチル {4−[ビス(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−(4−メトキシベンジル)−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}アセテート
【0129】
【化13】

【0130】
ジ−tert−ブチル [2−(4−メトキシベンジル)−8−オキソ−2,7,8,9−テトラヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−4−イル]イミドジカーボネート(5.19g)、エチル(トリフェニルホスファニリデン)アセテート(3.51g)およびトルエン(300ml)からなる混合物を65℃にて13時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル−へキサン)で精製することにより、標題化合物(3.78g)をアモルファスとして得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.29(3H,t,J=7.1Hz),1.69−1.77(1H,m),2.37−2.40(1H,m),2.46−2.52(1H,m),2.68−2.71(2H,m),4.20(2H,q,J=7.1Hz),5.10−5.13(1H,m),5.20(2H,br s).
ESI−MS m/z:612(M+H)
【0131】
(11)2−(4−アミノ−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル)−N−メチルアセタミド トリフルオロ酢酸塩
【0132】
【化14】

【0133】
エチル {4−[ビス(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−(4−メトキシベンジル)−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}アセテート(2.2g)を40%メチルアミン/メタノール溶液(40ml)に溶解し、室温で2時間撹拌した。反応完結をLC−MSにて確認し、溶媒を減圧留去した。得られた残渣にアニソール(2ml)とトリフルオロ酢酸(40ml)を加え、65℃で15時間撹拌した。反応液を減圧下で濃縮し、残渣にイソプロピルエーテル−エーテル混合液を加え、析出物を濾取し、標題化合物(1.53g)を固体として得た。
ESI−MS m/z:277(M+H)
【0134】
(12)5−クロロ−4−ヒドロキシ−6−メチルニコチニック アシッド
【0135】
【化15】

【0136】
市販の4−ヒドロキシ−6−メチル−ニコチニック アシッド(300mg)をアセトニトリル3mlに懸濁し、N−クロロスクシンイミド(380mg)を加え、室温で30分間撹拌した後、45分間加熱還流した。原料消失を確認した後、反応液を氷冷し、析出物を濾取し標題化合物(324mg)を固体として得た。
H−NMR(CDOD)δ:2.56(3H,s),8.50(1H,s).
ESI−MS m/z:188(M+H)+
【0137】
(13)メチル 4,5−ジクロロ−6−メチルニコチネート
【0138】
【化16】

【0139】
5−クロロ−4−ヒドロキシ−6−メチルニコチニック アシッド(320mg)にオキシ塩化リン(1.13ml)を加え、2時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮し、残渣に氷冷下メタノール(3ml)を滴下し、室温で30分間撹拌した後、減圧濃縮した。残渣に飽和重曹水を氷冷中加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、溶媒を留去して標題化合物の粗体(436mg)を固体として得た。
ESI−MS m/z:220(M+H)+
【0140】
(14)メチル 5−クロロ−4−メトキシ−6−メチルニコチネート
【0141】
【化17】

【0142】
粗メチル 4,5−ジクロロ−6−メチルニコチネート(380mg)をメタノール3mlに溶解し、窒素気流下、氷冷にてナトリウムメトキシド(120mg)を加えた。徐々に室温まで昇温し、18時間撹拌した。原料消失を確認した後、氷冷下、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムにて抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、溶媒を留去してシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)にて精製し標題化合物(210mg)を固体として得た。
1H−NMR(CDCl)δ:2.67(3H,s),3.95(4H,s),4.00(3H,s),8.76(1H,s).
ESI−MS m/z:216(M+H)+
【0143】
(15)(5−クロロ−4−メトキシ−6−メチルピリジン−3−イル)メタノール
【0144】
【化18】

【0145】
メチル 5−クロロ−4−メトキシ−6−メチルニコチネート(1.0g)をメタノール30mlに溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(1.75g)を加え、1時間加熱還流した。氷冷下、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムにて3回抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、溶媒を留去して標題化合物(0.92g)を油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl)δ:2.63(3H,s),4.00(3H,s),4.71(2H,br s),8.33(1H,s)
ESI−MS m/z:188(M+H)+
【0146】
(16)3−クロロ−5−(クロロメチル)−4−メトキシ−2−メチルピリジン
【0147】
【化19】

【0148】
(5−クロロ−4−メトキシ−6−メチルピリジン−3−イル)メタノール(520mg,)をクロロホルム20mlに溶解し、氷冷下、塩化チオニル(0.38ml)を加え、同温で3時間撹拌した。反応液を濃縮し、酢酸エチルを加え、飽和重曹水、水、飽和食塩水の順で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、溶媒を留去してシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)にて精製し、標題化合物(550mg)を油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl)δ:2.64(3H,s),4.05(3H,s),4.61(2H,s),8.35(1H,s).
ESI−MS m/z:206(M+H)+
【0149】
(17)3−クロロ−4−メトキシ−2,5−ジメチルピリジン
【0150】
【化20】

【0151】
3−クロロ−5−(クロロメチル)−4−メトキシ−2−メチルピリジン(550mg)をメタノール10mlに溶解し、10%Pd炭素(50mg)を加え、氷冷下、3時間常圧接触水素添加を行った。触媒を濾別し、メタノールを減圧下留去した。クロロホルムにて抽出し、有機層を飽和重曹水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、溶媒を留去してシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン)にて精製し、標題化合物(365mg)を油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl)δ:2.25(3H,s),2.59(3H,s),3.89(3H,s),8.16(1H,s).
ESI−MS m/z:172(M+H)+
【0152】
(18)3−クロロ−4−メトキシ−2,5−ジメチルピリジン 1−オキシド
【0153】
【化21】

【0154】
3−クロロ−4−メトキシ−2,5−ジメチルピリジン(181mg)をジクロロメタン5mlに溶解し、過酸化尿素(169mg)と無水フタル酸(219mg)を加えた。室温で2.5時間撹拌した。氷冷にて飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで希釈し、水層をクロロホルムで2回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、溶媒を留去して標題化合物(181mg)を固体として得た。
1H−NMR(CDCl)δ:2.24(3H,s),2.62(3H,s),3.87(3H,s),8.07(1H,s).
ESI−MS m/z:188(M+H)+
【0155】
(19)(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メタノール
【0156】
【化22】

【0157】
3−クロロ−4−メトキシ−2,5−ジメチルピリジン 1−オキシド(530mg)をジクロロメタン15mlに懸濁し、氷冷にて無水トリフルオロ酢酸(0.39ml)を加え、室温で3時間撹拌した。クロロホルムで希釈し飽和重曹水で洗浄し、水槽をクロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥した後、溶媒を留去して標題化合物(521mg)を油状物質として得た。
1H−NMR(CDCl)δ:2.29(3H,s),3.93(3H,s),4.29(1H,br s),4.72−4.74(2H,m),8.26(1H,s).
ESI−MS m/z:188(M+H)+

(20)3−クロロ−2−(クロロメチル)−4−メトキシ−5−メチルピリジン 塩酸塩
【0158】
【化23】

【0159】
(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メタノール(530mg)をクロロホルム20mlに溶解し、氷冷下、塩化チオニル(1.03ml)を滴下し、室温で3時間撹拌した。反応液を濃縮し、エーテル−へキサンの混合溶媒洗浄により標題化合物(410mg)を固体として得た。
1H−NMR(CDCl)δ:2.47(3H,s),4.32(3H,s),5.09(2H,s),8.54(1H,s).
ESI−MS m/z:206(M+H)+
【0160】
(21)2−{4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−メチルアセタミド
【0161】
【化24】

【0162】
2−(4−アミノ−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル)−N−メチルアセタミド トリフルオロ酢酸塩(28mg)、3−クロロ−2−(クロロメチル)−4−メトキシ−5−メチルピリジン 塩酸塩(36mg)および炭酸カリウム(69mg)にジメチルホルムアミド(1ml)を加え、60℃で2時間30分撹拌した。不溶物を濾別後、溶媒を窒素気流下留去した。得られた残渣をジメチルスルホキシド(1ml)に溶解して分取逆相HPLCにて精製し、溶媒を減圧留去することにより標題化合物(27.0mg)を固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.24(4H,s),2.82(3H,d,J=4.9Hz),3.27(2H,s),3.80(2H,s),3.91(3H,s),5.21(2H,s),5.65(2H,s),5.87(1H,s),6.70(1H,s),8.16(1H,s).
ESI−MS m/z:446(M+H)
【0163】
(実施例2)
(1)5−ブロモ−2,3−ジメチル−4−ニトロピリジン 1−オキサイド
【0164】
【化25】

【0165】
米国特許US5250527号に記載の方法により製造した5−ブロモ−2,3−ジメチルピリジン 1−オキサイド(4.61g)を濃硫酸(10ml)に溶解し、氷冷撹拌下発煙硝酸(24ml)と発煙硫酸(13ml)の混液を滴下した。そのまま30分撹拌後90℃で1時間撹拌した。反応液を放冷後氷水中に投入し、氷水浴撹拌下、ジクロロメタンを加え、アンモニア水を添加して中和した。ジクロロメタンで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、粗製の標題化合物(4.80g)を固体として得た。
【0166】
(2)5−ブロモ−4−メトキシ−2,3−ジメチルピリジン 1−オキサイド
【0167】
【化26】

【0168】
5−ブロモ−2,3−ジメチル−4−ニトロピリジン 1−オキサイド(4.80g)のメタノール(20ml)溶液に、氷水浴下、1Mナトリウムメトキシド−メタノール溶液(30ml)を加えて、室温にて一晩撹拌した。反応液を濃縮して、残渣をジクロロメタンおよび水に分配して、分液した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、ろ液を濃縮して、粗製の標題化合物(4.91g)を固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.30(3H,s),2.47(3H,s),3.84(3H,s),8.36(1H,s).
ESI−MS m/z:232(M+H)
【0169】
(3)(5−ブロモ−4−メトキシ−3−メチルピリジン−2−イル)メタノール
【0170】
【化27】

【0171】
5−ブロモ−4−メトキシ−2,3−ジメチルピリジン 1−オキサイド(4.91g)をジクロロメタン(60ml)に溶解し、室温にて無水トリフルオロ酢酸(20ml)を加え、一晩撹拌した。反応液を濃縮後、メタノール(50ml)に溶解し、50℃にて1時間撹拌した。反応液を濃縮後、残渣をジクロロメタンに溶解し、飽和重曹水にて洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、ろ液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル)にて精製し、標題化合物(3.43g)を固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.17(3H,s),3.89(3H,s),4.62(2H,s),8.50(1H,s).
ESI−MS m/z:232(M+H)
【0172】
(4)5−ブロモ−2−({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−4−メトキシ−3−メチルピリジン
【0173】
【化28】

【0174】
(5−ブロモ−4−メトキシ−3−メチルピリジン−2−イル)メタノール(500mg)をジクロロメタン(10ml)に溶解し、氷水浴下、t−ブチルジメチルシリルクロリド(487mg)、トリエチルアミン(0.48ml)、ジメチルアミノピリジン(30mg)を加えて、室温にて一晩撹拌した。反応液をジクロロメタンにて希釈して、飽和重曹水にて洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、ろ液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル)にて精製し、標題化合物(743mg)を油状物質として得た。
H−NMR(CDCl)δ:0.07(6H,s),0.89(9H,s),2.37(3H,s),3.87(3H,s),4.77(2H,s),8.43(1H,s).
【0175】
(5)2−({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−5−フルオロ−4−メトキシ−3−メチルピリジン
【0176】
【化29】

【0177】
5−ブロモ−2−({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−4−メトキシ−3−メチルピリジン(734mg)をテトラヒドロフラン(30ml)に溶解し、−110℃にてブチルリチウム(1.59M溶液、2.42ml)を滴下した。そのまま1時間撹拌後、同温にてN−フルオロベンゼンスルホンイミド(3.03g)のテトラヒドロフラン(5ml)溶液を滴下した。徐々に3時間で−68℃まで昇温して、その後、室温にて30分間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、ジクロロメタンにて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、ろ液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル)にて精製し、標題化合物(353mg)を油状物質として得た。
H−NMR(CDCl)δ:0.06(6H,s),0.89(9H,s),2.28(3H,s),4.07(3H,d,J=3.7Hz),4.75(2H,s),8.15(1H,d,J=3.7Hz).
ESI−MS m/z:286(M+H)
【0178】
(6)(5−フルオロ−4−メトキシ−3−メチルピリジン−2−イル)メタノール
【0179】
【化30】

【0180】
2−({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)−5−フルオロ−4−メトキシ−3−メチルピリジン(353mg)のテトラヒドロフラン(10ml)溶液に、氷水浴下、フッ化テトラブチルアンモニウム(1M溶液、1.49ml)を加えて、室温にて1時間撹拌した。反応液をジクロロメタンにて希釈して、水洗した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、ろ液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル)で精製し、標題化合物(150mg)を固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.08(3H,s),4.10(3H,d,J=4.1Hz),4.52(1H,s),4.61(2H,s),8.22(1H,d,J=4.1Hz).
ESI−MS m/z:172(M+H)
【0181】
(7)2−(クロロメチル)−5−フルオロ−4−メトキシ−3−メチルピリジン 塩酸塩
【0182】
【化31】

【0183】
(5−フルオロ−4−メトキシ−3−メチルピリジン−2−イル)メタノール(135mg)を用いて実施例1(20)と同様の方法で合成し、標題化合物(154mg)を固体として得た。
ESI−MS m/z:190(M+H)
【0184】
(8)2−{4−アミノ−2−[(5−フルオロ−4−メトキシ−3−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−メチルアセタミド
【0185】
【化32】

【0186】
2−(4−アミノ−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル)−N−メチルアセタミド トリフルオロ酢酸塩(60mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(5ml)溶液に、炭酸カリウム(85mg)および2−(クロロメチル)−5−フルオロ−4−メトキシ−3−メチルピリジン 塩酸塩(52mg)を加え、50℃にて3.5時間撹拌した。不溶物を濾別後、ろ液を濃縮して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール)にて精製し、標題化合物(30mg)を固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.27(3H,s),2.83(3H,d,J=4.6Hz),3.27(2H,s),3.78(2H,s),4.08(3H,d,J=4.6Hz),5.13(2H,s),5.49(2H,s),5.74(1H,br s),6.70(1H,s),8.19(1H,d,J=3.4Hz).
ESI−MS m/z:430(M+H)
元素分析値 C1920FNS・0.5HOとして
計算値:C,52.05;H,4.82;N,22.36;F,4.33;S,7.32.
実測値:C,52.27;H,4.79;N,22.10;F,4.44;S,7.05.
【0187】
(実施例3)
(1)3−ブロモ−2,5−ジメチル−4−ニトロピリジン 1−オキサイド
【0188】
【化33】

【0189】
市販の3−ブロモ−2,5−ジメチルピリジン 1−オキサイド(2.35g)を用いて実施例2(1)と同様の方法で合成し、標題化合物(1.08g)を固体として得た。
ESI−MS m/z:247(M+H)
【0190】
(2)3−ブロモ−4−メトキシ−2,5−ジメチルピリジン 1−オキサイド
【0191】
【化34】

【0192】
3−ブロモ−2,5−ジメチル−4−ニトロピリジン 1−オキサイド(1.08g)を用いて実施例2(2)と同様の方法で合成し、粗製の標題化合物(990mg)を固体として得た。
ESI−MS m/z:234(M+H)
【0193】
(3)(3−ブロモ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メタノール
【0194】
【化35】

【0195】
3−ブロモ−4−メトキシ−2,5−ジメチルピリジン 1−オキサイド(990mg)を用いて実施例2(3)と同様の方法で合成し、標題化合物(931mg)を固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.33(3H,s),3.90(3H,s),4.38(1H,br s),4.69(2H,s),8.28(1H,s).
ESI−MS m/z:234(M+H)
【0196】
(4)3−ブロモ−2−(クロロメチル)−4−メトキシ‐5−ピリジン 塩酸塩
【0197】
【化36】

【0198】
(3−ブロモ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メタノール(150mg)を用いて実施例1(20)と同様の方法で合成し、標題化合物(161mg)を固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.50(3H,s),4.21(3H,s),5.18(2H,s),8.47(1H,s).
ESI−MS m/z:250and252(M+H)
【0199】
(5)2−{4−アミノ−2−[(3−ブロモ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−メチルアセタミド
【0200】
【化37】

【0201】
2−(4−アミノ−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル)−N−メチルアセタミド トリフルオロ酢酸塩(150mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(5ml)溶液に、炭酸カリウム(160mg)および3−ブロモ−2−(クロロメチル)−4−メトキシ−5−ピリジン 塩酸塩(166mg)を加え、50℃にて一晩撹拌した。反応液をジクロロメタンで希釈して水洗した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、ろ液を濃縮して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール)にて精製し、標題化合物(105mg)を固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.27(3H,s),2.83(3H,d,J=4.6Hz),3.28(2H,s),3.81(2H,s),3.88(3H,s),5.08−5.14(2H,br m),5.66(2H,s),5.77(1H,br s),6.72(1H,s),8.17(1H,s).
ESI−MS m/z:492(M+H)
元素分析値 C1920BrNS・0.25HO・0.2ジオキサンとして
計算値:C,46.40;H,4.34;N,19.13;Br,15.59;S,6.45.
実測値:C,46.21;H,4.07;N,19.16;Br,15.70;S,6.27.
【0202】
(実施例4)
(1)tert−ブチル [8−(2−アミノ−2−オキソエチル)−2−(4−メトキシベンジル)−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−4−イル]カルバメート
【0203】
【化38】

【0204】
エチル {4−[ビス(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−(4−メトキシベンジル)−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}アセテート(600mg)のエタノール(5ml)溶液に、1N水酸化ナトリウム水溶液(3ml)加えて、室温にて一晩撹拌した。反応液に1N塩酸(3ml)を加えて、溶液を濃縮して、残渣にジクロロメタンを加えて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、ろ液を濃縮してカルボン酸(576mg)を得た。カルボン酸(576mg)をアセトニトリル(10ml)に溶解し、塩化アンモニウム(157mg)、トリエチルアミン(0.2ml)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド 塩酸塩(282mg)を加えて室温で3日間撹拌した。反応液をジクロロメタンにて希釈して、水を加え、分液操作をおこなった。有機層を飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール)にて精製し、標題化合物(252mg)を固体として得た。
ESI−MS m/z:483(M+H)
【0205】
(2)2−(4−アミノ−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル)アセタミド トリフルオロ酢酸塩
【0206】
【化39】

【0207】
tert−ブチル [8−(2−アミノ−2−オキソエチル)−2−(4−メトキシベンジル)−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−4−イル]カルバメート(256mg)を用いて実施例1(11)と同様の方法で合成し、標題化合物(162mg)を固体として得た。
ESI−MS m/z:263(M+H)
【0208】
(3)2−{4−アミノ−2−[(3−ブロモ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−yl}アセタミド メシル酸塩
【0209】
【化40】

【0210】
2−(4−アミノ−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル)アセタミド トリフルオロ酢酸塩(100mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(5ml)溶液に、炭酸カリウム(110mg)および3−ブロモ−2−(クロロメチル)−4−メトキシ−5−ピリジン 塩酸塩(114mg)を加え、50℃にて一晩撹拌した。反応液をジクロロメタンで希釈して水洗した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、ろ液を濃縮して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール)にて精製し、2−{4−アミノ−2−[(3−ブロモ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}アセタミド(90mg)を固体として得た。獲得した固体(27mg)をジオキサンに溶解し、氷水浴下、0.2Mメシル酸水溶液(0.283ml)を加え、凍結乾燥して、標題化合物(32mg)を固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.30(3H,s),2.84(3H,s),3.35(2H,d,J=0.9Hz),3.92(3H,s),3.95(2H,s),5.46(1H,br s),5.68(2H,s),5.97(1H,br s),6.75(1H,s),8.19(1H,s).
ESI−MS m/z:476and478(M+H)
【0211】
(実施例5)
(1)tert−ブチル [8−{2−[(2−フルオロエチル)アミノ]−2−オキソエチル}−2−(4−メトキシベンジル)−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−4−イル]カーバメート
【0212】
【化41】

【0213】
エチル {4−[ビス(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−(4−メトキシベンジル)−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}アセテート(526mg)のエタノール(10mL)溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液(2.7mL)を加え、一晩室温にて撹拌した。溶媒を留去して、カルボン酸のナトリウム塩を得た。このものをN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)に溶解し、氷水浴下、2−フルオロエチルアミン(171mg)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド 塩酸塩(247mg)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(10mg)を加えて室温で3日間撹拌した。反応液をジクロロメタンにて希釈して、水を加え、分液操作をおこなった。有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル)で精製し、標題化合物(419mg)を油状物質として得た。
ESI−MS m/z:529(M+H)
【0214】
(2)2−(4−アミノ−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル)−N−(2−フルオロエチル)アセタミド トリフルオロ酢酸塩
【0215】
【化42】

【0216】
2−[4−アミノ−2−(4−メトキシベンジル)−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル]−N−(2−フルオロエチル)アセタミド(418mg)を用いて実施例1(11)と同様の方法で合成し、粗製の標題化合物(247mg)を固体として得た。
ESI−MS m/z:309(M+H)
【0217】
(3)2−{4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−(2−フルオロエチル)アセタミド
【0218】
【化43】

【0219】
2−(4−アミノ−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル)−N−(2−フルオロエチル)アセタミド トリフルオロ酢酸塩(60mg)と3−クロロ−2−(クロロメチル)−4−メトキシ−5−ピリジン 塩酸塩(52mg)を用いて実施例3(5)と同様の方法で合成し、標題化合物(12mg)を固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.25(3H,s),3.31(2H,s),3.56(1H,dd,J=10.5,5.0Hz),3.63(1H,dd,J=10.5,5.0Hz),3.81(2H,s),3.91(3H,s),4.44(1H,t,J=4.8Hz),4.56(1H,t,J=4.8Hz),5.11(2H,s),5.65(2H,s),6.09(1H,br s),6.73(1H,s),8.17(1H,s).
ESI−MS m/z:478(M+H)
元素分析値 C2021ClFNS・0.75ジオキサンとして
計算値:C,50.80;H,5.00;N,18.02.
実測値:C,51.18;H,4.86;N,17.91.
【0220】
(実施例6)
(1)3−クロロ−4−メトキシ−2−メチルピリジン 1−オキシド
【0221】
【化44】

【0222】
Polish Journal of Chemistry,1986,59,10−12に記載の方法により製造した3−クロロ−2−メチル−4−ニトロピリジン−1−オキシド(1.00g)を0.5Mナトリウムメトキシド−メタノール溶液(15.9mL)に溶解し、室温で終夜撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、メタノールを減圧留去した後クロロホルムで3回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去して標題化合物(897mg)を固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.68(3H,s),3.96(3H,s),6.73(1H,d,J=7.3Hz),8.20(1H,d,J=7.3Hz).
ESI−MS m/z:174(M+H)
【0223】
(2)(3−クロロ−4−メトキシピリジン−2−イル)メチル アセテート
【0224】
【化45】

【0225】
3−クロロ−4−メトキシ−2−メチルピリジン−1−オキシド(890mg)を無水酢酸(12mL)に溶解し、30分加熱還流した。室温まで放冷後減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル)にて精製して標題化合物(576mg)を油状物質として得た。
H−NMR(CDCl)δ:2.17(3H,s),3.97(3H,s),5.33(2H,s),6.83(1H,d,J=5.6Hz),8.39(1H,d,J=5.6Hz).
ESI−MS m/z:216(M+H)
【0226】
(3)(3−クロロ−4−メトキシピリジン−2−イル)メタノール
【0227】
【化46】

【0228】
(3−クロロ−4−メトキシピリジン−2−イル)メチル アセテート(570mg)をメタノール(13mL)に溶解し、炭酸カリウム(731mg)を加えて50℃で30分撹拌した。メタノールを減圧留去し、残渣に水を加えてクロロホルムで3回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を減圧留去して標題化合物(437mg)を油状物質として得た。
H−NMR(CDCl)δ:3.98(3H,s),4.39(1H,t,J=4.4Hz),4.76(2H,d,J=4.4Hz),6.84(1H,d,J=5.6Hz),8.37(1H,d,J=5.6Hz).
ESI−MS m/z:174(M+H)
【0229】
(4)3−クロロ−4−メトキシ−2−(クロロメチル)ピリジン 塩酸塩
【0230】
【化47】

【0231】
(3−クロロ−4−メトキシピリジン−2−イル)メタノール(437mg)を用いて実施例1(20)と同様の方法で合成し、標題化合物(558mg)を固体として得た。
H−NMR(CDCl)δ:4.26(3H,s),5.17(2H,s),7.48(1H,d,J=6.8Hz),8.77(1H,d,J=6.8Hz).
ESI−MS m/z:192(M+H)
【0232】
(5)4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシピリジン−2−イル)メチル]−N−(2,2−ジフルオロエチル)−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−カルボキサミド
【0233】
【化48】

【0234】
4−アミノ−N−(2,2−ジフルオロエチル)−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−カルボキサミド トリフルオロ酢酸塩(50mg)と3−クロロ−2−(クロロメチル)−4−メトキシピリジン(35mg)を用いて、実施例2(8)と同様の方法で合成し、標題化合物(48mg)を固体として得た。
H−NMR(DMSO−D)δ:3.55−3.63(2H,m),3.96(3H,s),4.09(2H,s),5.60(2H,s),5.95−6.19(1H,m),7.06(2H,br s),7.16(1H,d,J=5.73Hz),7.49(1H,s),8.25(1H,d,J=5.73Hz),8.82(1H,t,J=5.73Hz).
ESI−MS m/z,468(M+H)
元素分析値 C1816ClFS・0.25HO・0.5ジオキサンとして
計算値:C,46.51;H,4.00;N,18.99;Cl,6.86;F,7.36;S,6.21.
実測値:C,46.40;H,3.72;N,19.10;Cl,6.93;F,7.29;S,6.19.
【0235】
(実施例7)
2−{4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−メチルアセトアミド 1臭化水素酸塩
2−{4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−メチルアセトアミド(250mg、0.561mmol)のアセトニトリル溶液(350ml)に、20%臭化水素酸エタノール溶液(204μl、0.505mmol)を室温で加えた。3時間攪拌した後、析出した固体をろ取した。得られた固体にエタノール(3ml)を加え、1日攪拌した後、固体をろ取した。その後、減圧下、室温で2日間乾燥し、表記化合物(128mg、0.243mmol)を得た。
元素分析値 C1921SClBr・0.4HOとして
計算値:C,42.91;H,4.01;O,7.13;N,18.57;Cl,6.68;Br,15.03;S,6.08.
実測値:C,42.73;H,4.11;O,7.19;N,18.36;Cl,6.64;Br,14.96;S,6.00.
【0236】
(実施例8)
2−{4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトアアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−メチルアセタミド 1塩酸塩
2−{4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトアアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−メチルアセタミド(527.52mg,1.183mmol)のエタノール(30ml)懸濁液に25℃で攪拌しながら、3規定塩酸(0.786ml,2.358mmol)を加え1時間攪拌した。析出固体を濾過し、エタノール(6ml)で洗浄後、減圧下40℃にて30分間乾燥し、表題化合物(531.09mg,1.101mmol)を得た。
元素分析値 C1921ClS として
計算値:C,47.31;H,4.39;N,20.33;O,6.63;Cl,14.70;S,6.65.
実測値:C,47.29;H,4.40;N,20.02;O,6.87;Cl,14.99;S,6.83.
【0237】
(実施例9)
2−{4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−メチルアセトアミド 1メタンスルホン酸塩
2−{4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−メチルアセトアミド (151mg、0.339mmol)のアセトニトリル溶液(150ml)に、メタンスルホン酸(32mg、0.302mmol)のジエチルエーテル溶液(50ml)を5℃で加え、25分間、5℃で攪拌した。その後、溶媒を減圧留去し、ジエチルエーテル適量を加え、固体をろ取した。得られた固体にエタノール(1ml)を加え、室温で約1日攪拌した後、固体をろ取した。その後、減圧下、室温で1日乾燥し、表記化合物(145mg、0.268mmol)を得た。
元素分析値 C2024Cl・0.3HOとして
計算値:C,44.71;H,4.69;O,15.45;N,17.81;Cl,6.54;S,11.56.
実測値:C,43.88;H,4.53;O,15.49;N,17.91;Cl,6.48;S,11.71.
【0238】
(実施例10)
2−{4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−メチルアセトアミド 1 エタン1,2−ジスルホン酸塩
2−{4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−メチルアセトアミド (164mg、0.368mmol)のアセトン溶液(50ml)に、エタン−1,2−ジスルホン酸塩(70mg、0.368mmol)のアセトン溶液(50ml)を5℃で加えた。20分間、5℃で攪拌した後、18時間5℃で静置し、その後室温で7時間攪拌した。析出した固体をろ取し、減圧下、室温で約1日乾燥し、表記化合物(119mg、0.187mmol)を得た。
元素分析値 C2126Cl・1.4HOとして
計算値:C,38.06;H,4.68;O,22.29;N,14.92;Cl,5.25;S,13.83.
実測値:C,38.14;H,4.39;O,22.74;N,14.83;Cl,5.36;S,14.55.
【0239】
(試験例1 Hsp90 ATPaseアッセイ)
組換え酵母Hsp90蛋白質(以下、rHsp90と称する)を用いてHsp90 ATPaseアッセイを行った。酵母Hsp90 DNAを、常法に従って、酵母ゲノムDNAライブラリーからクローニングした。クローニングした酵母Hsp90 DNAを、大腸菌発現用プラスミドに組込み、このプラスミドを大腸菌で発現させることによって、rHsp90を得た。
試験化合物をDMSOを用いて10mMになるように溶解した。溶解した溶液を、1mMおよび0.2mMの濃度にDMSOを用いて希釈した。アッセイバッファー(100mM Tris、pH7.4、20mM KCl、6mM MgCl)を用いてさらに10倍希釈した(各試験化合物溶液の濃度:100μMおよび20μM。DMSO濃度 10%)。
rHsp90をTEバッファー(20mM Tris、pH7.4、1mM EDTA)を用いて2.531mg/mLの濃度に溶解した。溶液を、アッセイバッファーを用いて125μg/mLに希釈し、96ウェルのアッセイプレートの各ウェルに40μLずつ分注した(終濃度100μg/mL)。
試験化合物溶液を各ウェルに5μLずつ分注し、次いで、各ウェルの溶液をプレートミキサーを用いて混和した。100mM ATP(Sigma、カタログ番号A−7699)を、アッセイバッファーを用いて1mMに希釈し、各ウェルに5μLずつ分注した(終濃度100μM)。各ウェルの溶液をプレートミキサーを用いて混和した後、アッセイプレートを37℃に設定したインキュベータ中で2時間静置した。
BIOMOL GREEN Reagent(BIOMOL、カタログ番号AK−111)を各ウェルに100μLずつ分注し、反応を停止させた。各ウェルの溶液をプレートミキサーを用いて混和し、次いで、34% クエン酸ナトリウムを各ウェルに10μLずつ分注した。各ウェルの溶液をプレートミキサーを用いて混和した後、アッセイプレートを室温に30分間放置した。各ウェルの650nmの吸光度をSpectramaxPLUS(Molecular Devices)を用いて測定した。
試験化合物およびrHsp90を添加したウェルの吸光度をAとし、rHsp90のみを添加したウェルの吸光度をBとし、試験化合物およびrHsp90のいずれも添加していないウェルの吸光度をCとし、以下の計算式により試験化合物添加群と試験化合物非添加群との比(T/C値)を求めた。計算は、Softmax Pro 4.6(Molecular Devices)を用いた。さらに、以下の計算式より阻害率(%)を算出した。
T/C=(A−C)/(B−C)
実施例1〜6の化合物は、2μMの濃度で50%以上のATPase阻害活性を示した。
【0240】
(試験例2 抗細胞試験)
2種類の細胞(ヒト乳癌由来細胞株SK−BR−3、ヒト肺癌由来細胞株NCI−H460)を用いて抗細胞試験を実施した。
各細胞を、それぞれ培地に懸濁し、96ウェルのマルチウェルプレートにSK−BR−3は2000細胞/150μL/ウェル、NCI−H460は500細胞/150μL/ウェルで播種した。試験化合物をDMSOに溶解後、培地で希釈して検体溶液とした(DMSO濃度 0.5%以下)。播種の翌日、試験化合物を添加していないDMSO入り培地(以下、DMSO希釈液と称する。DMSO濃度 0.5%以下)または検体溶液を、50μLずつさらに添加した。検体溶液またはDMSO希釈液を細胞に添加した直後と72時間後に、MTTアッセイを実施した。MTTアッセイは以下のように実施した。
5mg/mLのMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)溶液を各ウェルに20μLずつ添加した。その後、プレートを37℃、5% CO下で4時間培養した。プレートを1200rpmで5分間遠心した後、培養上清をディスペンサーにて吸引除去した。DMSOを各ウェルに150μLずつ添加し、生成されたフォルマザンを溶解した。プレートミキサーを用いてプレートを攪拌することにより、各ウェルの発色を均一にした。各ウェルの吸光度をOD 540nm、reference 660nmの条件下、プレートリーダーを用いて測定した。
検体溶液添加の直後に測定したOD値をSとし、検体溶液添加の72時間後に測定したOD値をTとし、DMSO希釈液添加の72時間後に測定したOD値をCとし、下記の計算式より各濃度におけるT/C(%)を求めて用量反応曲線を描き、50%増殖抑制濃度(GI50値)を算出した。
T/C(%)=(T−S)/(C−S)×100
以下に結果を示す。
【0241】
【表1】

【0242】
(試験例3 in vivo抗腫瘍試験)
NCI−H1975(ヒト非小細胞肺癌細胞株)を用いて抗腫瘍試験を実施した。
Day0に、1匹当たり4×10個の細胞を雄ヌードマウスの右側腹部皮下に移植した。
Day10に体重と腫瘍径を測定し、体重と推定腫瘍体積のいずれも群間に統計学的有意差がつかないように、ランダムに群分けした(推定腫瘍体積=腫瘍長径×腫瘍短径×腫瘍短径/2)。
Day11に腫瘍径を測定し、投与を開始した。
被験化合物を1.5mg/mLに調製し、15mg/10mL/kgで経口投与した。
投与はDay11からDay14に一日一回、腫瘍径の測定はDay11からDay14とDay17に行った。
Day17に腫瘍を摘出して、腫瘍湿重量を測定した。
Day11に測定した腫瘍体積から、比重1として開始腫瘍重量を算出した。
Day17に測定した腫瘍湿重量から開始腫瘍重量を差し引き、腫瘍増加重量を算出した。
コントロール群(溶媒投与群)の腫瘍増加重量(C)に対する被験化合物投与群の腫瘍増加重量(T)の比(T/C(%))から、それぞれ被験化合物の腫瘍増殖抑制率(GI%=100−T/C(%))を算出した。
コントロール群と被験化合物投与群との間の有意差検定はEXSAS ver.7.5.2.2 (Arm Corp)を用いて、Dunnett’s multiple comparison testで実施した。
実施例1〜6の化合物は、50%以上の有意な腫瘍増殖阻害活性を示した。
【0243】
(試験例4 ヒト肝ミクロソームによるCYP3A4阻害試験)
Midazolam(基質、和光純薬工業株式会社)、1’−Hydroxymidazolam(測定対象物、日本ベクトン・ディッキンソン社)、Ketoconazole(ポジティブコントロール、Sigma Chemical Co.)、NADPHリジェネレーションシステムは、ソリューションAおよびソリューションB(日本ベクトン・ディッキンソン社)を使用した。試験化合物、基質、測定対象物およびポジティブコントロールは適当量を秤量後、DMSOで溶解させ、必要に応じてアセトニトリルで希釈して用いた。
下記の(1)〜(5)を混合した反応溶液180μlをあらかじめ37℃にて10分間温めた。
(1)リン酸カリウム緩衝液(pH 7.4、終濃度50mM)
(2)精製水
(3)Midazolam(終濃度2.5μM)
(4)試験化合物(終濃度10μM、陰性コントロール:化合物なし、陽性コントロール:Ketoconazole 終濃度0.1μM)
(5)ヒト肝ミクロソーム(終濃度0.05mg−P/ml)
これにNADPHリジェネレーションシステム(ソリューションA/ソリューションB/精製水=5/1/4)20μlを添加し反応を開始させた。10分間インキュベートした後、この反応液50μlをサンプリングし、アセトニトリル200μlの中へ加えて反応を停止させ、さらに内部標準物質を含むアセトニトリル溶液50μlを加えた。
このサンプルの除タンパクのため、Captiva(登録商標)(GLサイエンス社)を用いて、96wellコレクションプレート(ウォーターズ社)へ移し、このサンプル溶液をLC−MS/MSによる定量用サンプルとした。
別途、1’−Hydroxymidazolam既知濃度(終濃度0〜5μM、計5点)のサンプルを調製して、定量用検量線を作成し、サンプル中の1’−Hydroxymidazolamの濃度を定量した。なお、反応はデュプリケートで行った。
陰性コントロールにおける1’−Hydroxymidazolam生成量を100%としたとき、各化合物添加での生成の割合を算出し、CYP3A4の阻害値を求めた。
化合物1は15%、化合物2は58%、化合物3は5%、化合物4は43%、化合物5は66%、化合物6は−18%の阻害率を示した。陽性対照であるKetoconazoleは82%の阻害率を示した。
【0244】
(試験例5 in vivo抗腫瘍試験)
NCI−H1650(ヒト非小細胞肺癌細胞株)を用いて抗腫瘍試験を実施する。
1匹当たり1×10個の細胞を雄ヌードマウスの右側腹部皮下に移植する。
39日後に腫瘍を摘出し、一辺が2−3mmの小片を作製し、雄ヌードマウスの右側腹部皮下に移植する(Day0)。
Day14に体重と腫瘍径を測定し、体重と推定腫瘍体積のいずれも群間に統計学的有意差がつかないように、ランダムに群分けする(推定腫瘍体積=腫瘍長径×腫瘍短径×腫瘍短径/2)。
Day14に投与を開始する。
被験化合物を0.65、0.9、1.3mg/mLに調製し、10mL/kgで経口投与する。
投与はDay14からDay31に一日一回、腫瘍径の測定はDay14、Day17、Day21、Day24、Day28とDay31に行う。
Day31に腫瘍を摘出して、腫瘍湿重量を測定する。
Day14に測定した腫瘍体積から、比重1として開始腫瘍重量を算出する。
Day31に測定した腫瘍湿重量から開始腫瘍重量を差し引き、腫瘍増加重量を算出する。
コントロール群(溶媒投与群)の腫瘍増加重量(C)に対する被験化合物投与群の腫瘍増加重量(T)の比(T/C(%))から、それぞれ被験化合物の腫瘍増殖抑制率(GI%=100−T/C(%))を算出する。
コントロール群と被験化合物投与群との間の有意差検定はEXSAS ver.7.5.2.2 (Arm Corp)を用いて、Dunnett’s multiple comparison testで実施する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】


[式(1)中、
は、1〜3個のハロゲン原子を置換基として有していてもよいC〜Cアルキル基または水素原子を示し、
は、ハロゲン原子を示し、
は、C〜Cアルキル基またはC〜Cアルコキシ基を示し、
は、1〜3個のハロゲン原子を置換基として有していてもよいC〜Cアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子または水素原子を示し、
Xは、単結合またはメチレン基を示す。]
で表される化合物またはその塩。
【請求項2】
2−{4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−メチルアセタミド。
【請求項3】
2−{4−アミノ−2−[(3−ブロモ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−メチルアセタミド。
【請求項4】
2−{4−アミノ−2−[(3−ブロモ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−yl}アセタミド。
【請求項5】
2−{4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシ−5−メチルピリジン−2−イル)メチル]−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−イル}−N−(2−フルオロエチル)アセタミド。
【請求項6】
4−アミノ−2−[(3−クロロ−4−メトキシピリジン−2−イル)メチル]−N−(2,2−ジフルオロエチル)−2,7−ジヒドロ−6−チア−1,2,3,5−テトラアザベンゾ[cd]アズレン−8−カルボキサミド。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載の化合物の臭化水素酸塩。
【請求項8】
請求項2から6のいずれか1項に記載の化合物の塩酸塩。
【請求項9】
請求項2から6のいずれか1項に記載の化合物のメタンスルホン酸塩。
【請求項10】
請求項2から6のいずれか1項に記載の化合物のエタン−1,2−ジスルホン酸塩。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含有するHSP90阻害剤。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含有するHSP90のATPase活性阻害剤。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含有するHSP90とATPの結合阻害剤。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を有効成分として含有する医薬。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を有効成分として含有する抗癌剤。
【請求項16】
請求項1から10のいずれか1項に記載の化合物またはその塩、および薬学的に許容し得る担体を含有する医薬組成物。
【請求項17】
請求項1から10のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を投与することを特徴とする癌の治療方法。
【請求項18】
請求項1から10のいずれか1項に記載の化合物またはその塩の、医薬製造のための使用。
【請求項19】
癌が、HSP90のクライアント蛋白質が過剰発現している癌である請求項15に記載の抗癌剤。
【請求項20】
癌が、HSP90のクライアント蛋白質が過剰発現している癌である請求項17に記載の癌の治療方法。
【請求項21】
癌が、HSP90のクライアント蛋白質の変異がみられる癌である請求項15に記載の抗癌剤。
【請求項22】
癌が、HSP90のクライアント蛋白質の変異がみられる癌である請求項17に記載の癌の治療方法。
【請求項23】
癌が、HSP90のクライアント蛋白質の活性化がみられる癌である請求項15に記載の抗癌剤。
【請求項24】
癌が、HSP90のクライアント蛋白質の活性化がみられる癌である請求項17に記載の癌の治療方法。
【請求項25】
癌が、HSP90のクライアント蛋白質が属する細胞内シグナル伝達経路の活性化がみられる癌である請求項15に記載の抗癌剤。
【請求項26】
癌が、HSP90のクライアント蛋白質が属する細胞内シグナル伝達経路の活性化がみられる癌である請求項17に記載の癌の治療方法。
【請求項27】
癌が、HSP90のクライアント蛋白質に依存している癌である請求項15に記載の抗癌剤。
【請求項28】
癌が、HSP90のクライアント蛋白質に依存している癌である請求項17に記載の癌の治療方法。



【公開番号】特開2012−67087(P2012−67087A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180465(P2011−180465)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(307010166)第一三共株式会社 (196)
【Fターム(参考)】