説明

三環系抗うつ薬誘導体およびイムノアッセイ

【課題】三環系抗うつ薬、その誘導体および代謝物に対する抗体の調製に使用する目的で、タンパク質またはポリペプチド抗原に共有結合させるために合成された三環系抗うつ薬誘導体を提供する。
【解決手段】次の構造:
【化1】


を有する化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、液体媒質中のアナライトを測定する分野に関し、より詳細には、生物試料中のアナライトの測定、特に三環系抗うつ薬の測定に有用なイムノアッセイおよび試薬に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の課題は、三環系抗うつ薬、その誘導体および代謝物に対する抗体の調製に使用する目的で、タンパク質またはポリペプチド抗原に共有結合させるために合成された新規の三環系抗うつ薬誘導体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、三環系抗うつ薬(tricyclic antidepressant: TCA)に対するポリクローナルおよびモノクローナル抗体の産生ために有用な新規TCA免疫原に関する。この新規免疫原は、分子(ジヒドロアミトリプチリン)のアミトリプチリン部分の飽和された二重結合によって特徴づけられる。また本発明は、イミプラミンのN-1位で誘導体化されたコンジュゲート、またはジヒドロ-アミトリプチリンのC-2位で誘導体化されたコンジュゲートのいずれかと共に、C-2位で誘導体化された構造Iの免疫原から作製された抗体を使用する、TCAイムノアッセイのためのトレーサーおよびコンジュゲートを調製するために有用な、TCA活性化ハプテン誘導体に関する。本発明のイムノアッセイは、三環系抗うつ薬群を1つのクラスとして広範に認識する、単一の、定性的または半定量的な毒物学的スクリーニングアッセイを包含する。
【0004】
本発明は下記の実施形態を含んでなる:
構造I:
【0005】
【化1】

[式中、R1は、0〜10個の炭素原子またはヘテロ原子からなる、飽和または不飽和で、置換または非置換の、直鎖または分岐鎖であり、Xは0〜2個の置換または非置換の芳香環からなるリンカー基であり、Yは活性化エステルまたはNH-Zであり、ここで、Zはポリ(アミノ酸)である]を有する化合物;
構造II:
【0006】
【化2】

[式中、Zはポリ(アミノ酸)である]を有する免疫原;
構造式IIの免疫原に応答して産生される抗体;
構造III:
【0007】
【化3】

を有する活性化ハプテン;
構造IV:
【0008】
【化4】

を有する活性化ハプテン;
構造V:
【0009】
【化5】

を有する活性化ハプテン;
構造VI:
【0010】
【化6】

を有する活性化ハプテン;
構造IIの免疫原から産生される抗体、および構造III、IV、VおよびVIから誘導された薬物コンジュゲートを使用する、三環系抗うつ薬のためのイムノアッセイ;
三環系抗うつ薬に特異的な抗体、および構造III、IV、VおよびVIから誘導された薬物コンジュゲートを使用する、三環系抗うつ薬のためのイムノアッセイ;および、
構造IIの免疫原から作製される抗体、および三環系抗うつ薬類似体を使用する、三環系抗うつ薬のためのイムノアッセイ。
【0011】
具体的には、本発明のイムノアッセイ法は以下の方法を含む:
(1) 三環系抗うつ薬、その誘導体および代謝物からなる群から選択されるアナライトを測定するためのイムノアッセイ法であって、(a)前記アナライトを含有すると推定される試料を、前記アナライトに特異的な抗体、および構造III、IV、VおよびVIからなる群から選択される構造を有する化合物から誘導されたアナライト類似体(ただし、前記類似体または前記抗体は検出可能な標識を含むものである)と、前記アナライトおよびアナライト類似体が前記抗体と結合して検出可能な複合体を形成するために適した条件の下で混合すること、および(b)前記の検出可能な複合体の存在または量を、前記試料中の前記アナライトの指標として測定すること、からなるステップを含んでなる上記方法;
(2) 三環系抗うつ薬、その誘導体および代謝物からなる群から選択されるアナライトを測定するためのイムノアッセイ法であって、(a) 前記アナライトを含有すると推定される試料を、構造IIを有する化合物である免疫原から作製された抗体、およびアナライト類似体(ただし、前記類似体または前記抗体は検出可能な標識を含むものである)と、前記アナライトおよびアナライト類似体が前記抗体と結合して検出可能な複合体を形成するために適した条件の下で混合すること、および(b) 前記の検出可能な複合体の存在または量を、前記試料中の前記アナライトの指標として測定すること、からなるステップを含んでなる上記方法;
(3) 三環系抗うつ薬、その誘導体および代謝物からなる群から選択されるアナライトを測定するためのイムノアッセイ法であって、(a)前記アナライトを含有すると推定される試料を、構造IIを有する化合物である免疫原から作製された抗体、および構造III、IV、VおよびVIからなる群から選択される構造を有する化合物から誘導されたアナライト類似体(ただし、前記類似体または前記抗体は検出可能な標識を含むものである)と、前記アナライトおよびアナライト類似体が前記抗体と結合して検出可能な複合体を形成するために適した条件の下で混合すること、および(b)前記の検出可能な複合体の存在または量を、前記試料中の前記アナライトの指標として測定すること、からなるステップを含んでなる上記方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明によるアッセイで検出可能な三環系抗うつ薬化合物は、式:
【0013】
【化7】

[式中、VはCH2またはCH=、WはCH2、Oまたは=CH、X1はNまたはC=、Y1はCH2または=CH-、ならびにRはHまたはCH3である]によって特徴づけられる、ジベンズアゼピン、ジベンゾシクロヘプタジエンおよびジベンズオキセピンの誘導体を包含する。このような三環系抗うつ薬化合物の例としては、イミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、トリミプラミン、クロミプラミンおよびドキセピンがある。
【0014】
薬物分子のような低分子アナライトの検出に際しては、イムノアッセイ、特に競合結合イムノアッセイが、とりわけ有利である。競合結合イムノアッセイでは、生物試料中のアナライトは、アナライトおよびアナライト類似体に特異的な抗体上の数の限られたレセプター結合部位に関して、標識試薬、もしくはアナライトの類似体、もしくはトレーサーと競合する。β-ガラクトシダーゼおよびペルオキシダーゼといった酵素、フルオレセイン化合物のような蛍光分子、125Iのような放射性化合物、および微粒子は、トレーサーとして使用される一般的な標識化物質である。試料中のアナライトの濃度によって、抗体に結合するアナライト類似体の量が決まる。結合するアナライト類似体の量は、試料中のアナライト濃度に反比例するが、これはアナライトおよびアナライト類似体の各々が、それぞれの濃度に比例して抗体に結合するためである。そこで、遊離の、または結合したアナライト類似体の量を、使用した特定の標識に適した方法で測定することができる。
【0015】
さまざまな種類のタンパク質を、ポリ(アミノ酸)抗原性物質として使用することができる。こうしたタンパク質の種類は、アルブミン、血清タンパク質(たとえばグロブリン)、眼球レンズタンパク質、リポタンパク質などを包含する。タンパク質の実例としては、ウシ血清アルブミン、スカシガイヘモシアニン、卵オボアルブミン、ウシγ-グロブリンなどが包含される。また、十分な数の利用可能なアミノ基、たとえばリシンを有する、アミノデキストランのようなアミノ-多糖、または合成ポリ(アミノ酸)を調製することも可能である。
【0016】
本発明の方法において、イミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、ノルトリプチリンまたは構造的に関連した薬物を含有すると推定される試料を、イミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、またはノルトリプチリンに対して特異性を有する抗体、ならびに抗体とそれに対応するアナライトとの結合に影響を及ぼす標識化されたアナライト類似体と混合し、単独でまたは組み合わせて、選択されたカットオフレベルでアナライトの存在を検出する。たとえば、比濁分析凝集アッセイ、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、蛍光偏光イムノアッセイまたはラテラルフロー(lateral flow)イムノクロマトグラフィーといった、どのような形式のイムノアッセイとともに、本発明を使用してもよい。本発明は、凝集反応によって引き起こされた変化を測定するための機器的方法に適用できる凝集測定様式とともに使用できる可能性がある。手動ならびに自動化装置の実験はいずれもこのような凝集測定アッセイへの使用に適している。一般的には、このような装置は、多数の試薬容器または貯留槽を利用して作動し、そうした容器から適量の各試薬をピペットで取り、試料に添加する。表題の凝集アッセイのようなイムノアッセイのために、通常、装置は、少なくとも2つのこのような容器を包含し、主として一方は抗体試薬用であり、他方は対応するリガンドと結合した微粒子用である。あるいはまた、一方の容器はリガンド-類似体コンジュゲート試薬を含んでなり、他方は抗体と結合した微粒子を含んでなる。さらにその他の容器または貯留槽の存在する装置もあり、これらは、試料を適当に処理するための希釈剤、バッファー、または他の添加物を含有する。
【0017】
臨床分析機はセットされた試薬および試料をピペットで取って1つのキュベットに入れ、そのキュベット内で競合的な凝集反応が起り、濁度の測定が行なわれる。たとえば、HITACHI 917アナライザー(Roche Diagnostics)およびABUSCREEN(登録商標)OnLine濫用薬物試薬キット(Roche Diagnostics)を用いて、尿サンプルを試料希釈剤とともにピペットでキュベットに入れ、次いで、直ちに適量の抗体試薬を入れて混合する。最初の分光光度計の読みを記録する。つぎに、適量の微粒子試薬をキュベットに移し、混合して反応させる。短時間のインキュベーションの後、最終的な濁度の測定を行なう。反応中の最初から最後までの濁度(吸光度)の変化が検量線と比較され、結果としてng/mlで報告される。
【0018】
マイクロウェルプレートを用いたELISA(酵素免疫測定法)は、確立された技術であって、さまざまなアナライトおよびタンパク質のためのエンザイムイムノアッセイを開発するために広く応用されてきた。競合ELISAは、薬物分子のような低分子アナライトのための高感度エンザイムイムノアッセイを開発するために応用されている。生物学的液体中のTCAを定量するための競合ELISAに、本発明を利用することができる。本発明の方法において、たとえばイミプラミンまたは構造的に関連した化合物を含有することが推定される試料を希釈し、本発明において開示されたTCAコンジュゲートのいずれかによってプレコートされたマイクロウェルプレートに添加した後、予め定量した抗TCA抗体を加える。インキュベーション後、ウェルをELISAの標準的な手順(適当な酵素で標識された第二の抗体、基質、中間の洗浄段階、および光学密度の測定)で処理することができる。光学密度を、検量標準として選択されたイミプラミンまたは構造的に関連したTCA化合物の最終濃度に対してプロットし、モル濃度として算出することができる。
【0019】
蛍光偏光イムノアッセイ法は、競合結合イムノアッセイにおいて生成したトレーサー−抗体コンジュゲートの量を測定するための定量法を与える。このような蛍光偏光法は、蛍光標識された化合物が平面偏光によって励起されると、その回転率に反比例した偏光度を有する蛍光を放射するという原理に基づく。したがって、蛍光標識を有するトレーサー−抗体コンンジュゲートが平面偏光によって励起されるとき、発蛍光団は、光が吸収されて放出されるまでの間、回転しないように強いられるため、放射される光は高度に偏光したままである。これに対して、結合していないトレーサーが平面偏光によって励起されるときは、その回転は、対応するトレーサー−抗体コンジュゲートよりも極めて速くなり、その分子はいっそうランダムに配向される。その結果、非結合トレーサー分子から放射される光は、偏光解消される。
【0020】
ラテラルフローイムノクロマトグラフィーは、定性的イムノアッセイのための迅速で機器を必要としないストリップアッセイを開発するために利用されている。イムノクロマトグラフィーストリップアッセイは、尿中の薬物が、金のゾルまたは染色されたラテックスなどの着色した微粒子上の特異的な抗体に対して、メンブランに浸透させた薬物コンジュゲートと競合するという、競合イムノアッセイの原理に基づく。薬物検出領域(薬物浸透領域)に着色したバーが現われたときは、陰性の結果を表す。尿試料中に、対応するアッセイついてのカットオフ濃度と同じかそれ以上の薬物が存在する場合、バンドは観察されない。本発明は、TCAのための毒物学的スクリーニングイムノアッセイとして役立つメンブランストリップ装置を開発するために有用である。
【0021】
三環系抗うつ薬(TCA)は、うつを治療するために一般的に使用される薬物の一群のうちのいずれかを意味するが、これらはすべて類似の化学構造、メチルアミノプロパン側鎖を有する三環構造を示す。こうした群の例としては、イミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、トリミプラミン、クロミプラミン、ドキセピン、ならびに生物学的に活性のある、もしくは治療上活性のある、これらの誘導体および代謝産物がある。
【0022】
アナライトは、液体媒質中でその存在またはその量を決定すべき物質または物質群を表し、あらゆる薬物もしくは薬物誘導体、ホルモン、タンパク質抗原、またはオリゴヌクレオチドを包含する。
【0023】
アナライト類似体は、アナライトに対する抗体の結合親和性に関して、基本的にアナライトと同等の挙動を示す、あらゆる物質または物質群を意味し、あらゆる三環系抗うつ薬、またはその誘導体および代謝産物ならびに異性体を包含する。
【0024】
抗体または受容体は、アナライトの特異的な結合パートナーを意味し、他の物質を除外してアナライトに対して特異的結合親和性を有する、あらゆる物質または物質群を包含することとする。この用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、および抗体フラグメントを包含する。
【0025】
ハプテンは、部分的な、または不完全な抗原である。これらはタンパク質を含まない物質、主として低分子量の物質であり、抗体の産生を刺激する能力はないが、抗体と反応する。抗体は、ハプテンを高分子量のキャリアーに結合し、この結合産物を人または動物に注入することによって産生される。ハプテンの例としては、ジゴキシンやテオフィリンのような治療薬、モルヒネやLSDのような濫用薬物、ゲンタマイシンやバンコマイシンのような抗生物質、エストロゲンやプロゲステロンのようなホルモン、ビタミンB12や葉酸のようなビタミン、チロキシン、ヒスタミン、セロトニン、アドレナリンなどがある。
【0026】
活性化ハプテンとは、たとえば誘導体コンジュゲートを合成するために連結基を付けることによって、反応に利用できる部位を備えたハプテン誘導体を表す。
【0027】
キャリアーは、本明細書で使用する場合、ハプテンと結合可能で、それによってハプテンが免疫応答を刺激できるようにする免疫原性物質、一般的にはタンパク質である。キャリアー物質は、異物と認識され、それによって宿主から免疫応答を引き出す、タンパク質、糖タンパク質、複合多糖および核酸を包含する。
【0028】
免疫原および免疫原性という用語は、本明細書で使用される場合、生物において免疫応答を生じる、または引き起こす能力を有する物質を表す。
【0029】
誘導体という用語は、親化合物または分子から1以上の化学反応によって作成される化合物または分子を表す。
【0030】
連結基は、薬物誘導体を活性化するために、すなわちハプテンを合成するために、薬物誘導体に利用可能な部位を与えるために使用される。連結基の使用は、特定のハプテンおよびキャリアーの組み合わせによっては、有利であり、もしくは必要である場合もあり、またはそうでない場合もある。リンカーという用語は、ハプテンをキャリアー、免疫原、標識、トレーサーまたは別のリンカーに結合する化学的部分を表す。リンカーは直鎖または分岐鎖で、飽和または不飽和の炭素鎖とすることができる。また、リンカーは、鎖の中に、または鎖の末端に、1以上のヘテロ原子を包含してもよい。ヘテロ原子は、炭素以外の原子を表し、酸素、窒素および硫黄からなる一群から選択される。
【0031】
本明細書で使用される場合、検知分子、標識またはトレーサーは同定のための標識であって、これをキャリアー物質または分子に付けておくと、アナライトを検出するために使用することができる。標識は、直接、または連結部分または橋かけ部分を用いて間接的に、そのキャリアー分子または抗体に付けることができる。標識の例は、β−ガラクトシダーゼおよびペルオキシダーゼのような酵素、ローダミンおよびフルオレセインイソチオシアネート(FITC)のような蛍光化合物、ジオキセタンおよびルシフェリンのような発光化合物、および125Iのような放射性同位体を包含する。
【0032】
アミド(ペプチド)結合による2以上のアミノ酸の連結によって形成される化合物はいずれもペプチドであって、通常はα−アミノ酸のポリマーである。α−アミノ酸のポリマーでは、各アミノ酸残基のα−アミノ基(NH2−末端を除く)が、直鎖状に、次の残基のα−カルボキシル基に結合している。ペプチド、ポリペプチドおよびポリ(アミノ酸)という用語は、本明細書においては同じ意味として使用され、分子量による制限なしに、このクラスの化合物を表す。このクラスを構成する最大の化合物は、タンパク質と称する。
【0033】
アナライト、すなわち三環系抗うつ薬を含有することが合理的に推測される試料は、いずれも、本発明の方法によって分析することができる。試料は、一般的にはホスト由来の体液などの水溶液、たとえば、尿、全血、血漿、血清、唾液、精液、便、脳脊髄液、涙、粘液などであるが、血漿または血清が好ましい。所望により試料を前処理してもよく、アッセイを妨害しないなんらかの好都合な媒質を用いて調製することができる。水性媒質が好ましい。
【0034】
検量用試料は、測定されるべきアナライトの既知量を含有する、あらゆる標準または基準物質を意味する。アナライトを含有すると推測される試料および検量用試料を同様の条件でアッセイする。つぎに、未知の試料について得られた結果と標品について得られた結果を比較してアナライト濃度を算出する。これは、一般に図6および7のような検量線を作製することによって実行される。
【0035】
本発明のアッセイにおいて、さまざまな補助的材料がしばしば使用される。たとえば、バッファーは通常アッセイ媒質中に含まれるが、アッセイ媒質のための安定化剤、およびアッセイ成分のための安定化剤も含有される。これらの添加物に加えて、さらにアルブミンのようなタンパク質、または界面活性剤、とくに非イオン系界面活性剤、などが含まれることもしばしばある。
【0036】
本発明の別の態様は、アナライトを測定するための本発明のアッセイ方法を手軽に行なうために有用なキットに関する。本発明の汎用性を高めるために、本発明の方法に有用な試薬を、組み合わせてパッケージし、同一または別々の容器で、液体または凍結乾燥された状態で、試薬の比率がこの方法およびアッセイを事実上最適化するように、提供することができる。試薬はそれぞれ別の容器に入れることができるが、あるいはさまざまな試薬を、試薬の交差反応性および安定性に応じて組み合わせて、1以上の容器に入れることもできる。
【0037】
本発明はまた、組み合わせてパッケージした、イミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリンまたはノルトリプチリンに対して特異的な抗体、標識部分を結合したTCA誘導体のリガンドを含んでなる複合体、を含んでなる試薬検査キットを包含するが、さらにこのキットは、場合により、イミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリンおよびノルトリプチリンからなる一群から選択される既知量の物質を含んでなる1以上の検量用試料を含んでもよい。このような検査キットは、イミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、ノルトリプチリンおよび構造的に関連した化合物に対して臨床上高感度のアッセイ用試薬を提供する。
【実施例】
【0038】
実施例1
3-(3-メトキシ−ベンジリデン)-3H-イソベンゾフラン-1-オン(化合物1)の調製
15g(89 mmol)のm−メトキシフェニル酢酸、13.2 g(89 mmol)の無水フタル酸および246 mg(2.9 mmol)の酢酸ナトリウムの混合物を6時間240℃に加熱し、連続的に反応物から水を除去した。冷却後、反応フラスコ内に固形物が生成した。これを無水エタノールで再結晶し、15.6 g(62 mmol、69%)の化合物1を黄色粉末として得た。
実施例2
2-[2-(3-メトキシ-フェニル)-エチル]-安息香酸(化合物2)の調製
15.6 gの化合物1(62 mmol)の300mlのTHF溶液に30 gの10%Pd-C、40 gのギ酸アンモニウムおよび17.2 mlのトリエチルアミンを加えた。この反応混合物を6時間70℃に加熱し、濾過した。濾液を濃縮し、500 mlの酢酸エチルに再溶解し、150 mlの3% HCl水溶液で2回、100 mlの食塩水で2回洗浄した。有機層を濃縮し、1:1酢酸エチル:ヘキサンとともに粉砕し、8 g(31.2 mmol、51%)の化合物2が得られた。
実施例3
2-メトキシ-10,11-ジヒドロ-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-5-オン(化合物3)の調製
5 gの五酸化リンに50 mlのメタンスルホン酸を添加した。この混合物を1時間80℃に加熱した。反応混合物を40℃に冷まし、3 g(11.7 mmol)の化合物2を固体の状態で添加した。この混合物を1時間40℃に加熱し、室温まで冷却した。反応混合物を300 mlの氷/水に注ぎ入れ、200 mlの酢酸エチルで抽出した。有機層を150 mlの水で2回、150 mlの飽和NaHCO3で2回、さらに100 mlの水で洗浄した。その結果得られた有機層を乾燥し(Na2SO4)、濃縮して、灰白色の粉末として2.6 g(11.7 mmol、94%)の化合物3を得た。
実施例4
5-(3-ジメチルアミノ-プロピル)-2-メトキシ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-5-オール(化合物4)の調製
30 gの削りくず状のマグネシウムに、直前に蒸留された100 mlのTHFおよび触媒量のヨウ素を添加した。この反応混合物を加熱して10分間還流した後、室温に冷却した。この反応混合物に3.5 g(29 mmol)の3-クロロ-N,N-ジメチルプロパンを加え、反応混合物を加熱して3時間還流した。反応混合物を室温に冷却し、2 gの化合物3(8.3 mmol)を新たに蒸留したTHF 20 mlに溶解した溶液を添加した。室温で2時間撹拌して反応させた後、濾過した。この濾液に10 mlの飽和塩化アンモニウム溶液を添加し、濃縮してTHFを除去した。これを100 mlの飽和塩化アンモニウム溶液で希釈し、酢酸エチルで抽出した(150 mlで3回)。有機層を合わせて、75 mlの飽和NaHCO3で2回、75 mlの水で2回、洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濃縮した。粗生成物を、ジクロロメタン中の10%メタノールを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、2.6 g(7.9 mmol, 95%)の化合物4を白色粉末として得た。
実施例5
10,11-ジヒドロ-2-メトキシ-N,N-ジメチル-5H-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-5-プロピルアミン(化合物5)の調製
65 mg(0.19 mmol)の化合物4に5 mlの氷酢酸を添加した。混合物を60℃に加熱し、混合物が均一になるまで撹拌しておいた。反応混合物を室温に冷却し、300 mgの10% Pd/Cを加え、続いて1 gのギ酸アンモニウムを添加した。この混合物を70℃に加熱し、その温度で4時間撹拌し続けた。反応混合物を室温に冷却し、濾過した。残渣を50 mlのジクロロメタンで洗浄した。濾液を合わせて濃縮した。残渣は100 mlのジクロロメタンに溶解し、50 mlの飽和NaHCO3で2回、つぎに50 mlの食塩水で2回洗浄した。有機部分を乾燥し(Na2SO4)、濃縮して50 mg(0.16 mmol, 82%)の化合物5が得られた。
実施例6
5-(3-ジメチルアミノプロピル)-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-2-オール臭化水素酸塩(化合物6)の調製
新たに蒸留したジクロロメタン35 mlに1.98 ml三臭化ホウ素を加えた。反応混合物を水浴中に配置した。この反応混合物に1.1 g(3.5 mmol)の化合物5の15 mlジクロロメタン溶液を滴下して加えた。混合物を室温(23〜26℃)で30分間撹拌し、50 gの氷/水に注ぎ入れた。50 mlの水を追加して加え、100 mlのクロロホルムで3回抽出した。有機層を合わせて、乾燥し(Na2SO4)、濃縮して1.2 g(3.18 mmol, 90%)の化合物6を、灰白色の固形物として得た。
実施例7
4-[5-(3-ジメチルアミノプロピル)-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-2-イルオキシ]-酪酸エチルエステル(化合物7)の調製
500mg(1.32 mmol)の化合物6に、新たに蒸留したアセトン(無水K2CO3上で蒸留)10 mlおよび無水DMF 10 mlを加えた。この反応混合物に、450 mg(3.0 mmol)のヨウ化ナトリウム、2 g の4Å モレキュラーシーブ、2 g(6.13 mmol)の炭酸セシウム、および触媒量の18−クラウン−6を添加した。この反応混合物に500μl(3.38 mmol)の4−ブロモ酪酸エチルを加え、その反応混合物をアルゴン雰囲気下で18時間、予め熱しておいた(90℃)オイルバスで加熱した。混合物を室温に冷却し、濾過した。残渣を30 mlのクロロホルムで洗浄した。濾液を合わせて減圧下で濃縮し、100 mlのジクロロメタンに再溶解した。これを100 mlの5% NaOHで2回、続いて100 mlの水で2回洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濃縮した。この残渣を、ジクロロメタン中の10%メタノールを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、450 mg(1.09 mmol, 83%)の化合物7を茶色がかった油状物として得た。
実施例8
4-[5-(3-ジメチルアミノ-プロピル)-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-2-イルオキシ]-酪酸(化合物8)の調製
875 mgの化合物7(2.1 mmol)を10 mlの新たに蒸留したTHFに溶解した溶液に、875 mgの水酸化リチウムを10 mlの水に溶解した溶液および5 mlのメタノールを添加した。反応混合物を室温で18時間撹拌し、濃縮してTHFおよびメタノールを除去した。水性残留物を6N HClでpH 6に調整した。これを100 mlのジクロロメタンで3回抽出した。水層のpHを1回目の抽出後にもう一度6に調整した。有機層を合わせて、乾燥(Na2SO4)、濃縮し、790 mg(2.0 mmol, 97%)の化合物8を白色非晶質固形物として得た。
実施例9
4-[5-(3-ジメチルアミノ-プロピル)-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-2-イルオキシ]-酪酸2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イル エステル(化合物9)の調製
200 mg(0.52 mmol)の化合物8を40 mlのジクロロメタン(水素化カルシウム上で蒸留した)に溶解した溶液に、92 mg(0.8 mmol)のN−ヒドロキシスクシンイミドおよび152 mg(0.8 mmol)の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を添加した。反応混合物を室温で48時間撹拌した。この反応混合物を50 mlのジクロロメタンで希釈し、50 mlの食塩水で洗浄し、50 mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液で2回、次に50 mlの食塩水で2回洗浄した。得られた溶液を乾燥し(Na2SO4)、濃縮して245 mg(0.51 mmol、98%)の化合物9が白色固形物として得られた。
実施例10
C-2位TCA免疫原(化合物10)の調製
50 mMリン酸カリウム(pH 7.5)の12 mlに溶解した738 mgのウシ チログロブリンを氷浴で冷却した。この溶液に37 mlジメチルスルホキシドを滴下して加え、反応温度は室温以下に維持した。このタンパク質溶液に、111 mg(0.23 mmol)の化合物9を溶解した1 mlのDMF溶液を滴下して加えた。混合物を室温で18時間撹拌した。得られたコンジュゲートを透析チューブ(50,000 MWカットオフ)に入れ、室温で、50mMリン酸カリウム中の70% DMSOの2L(pH7.5、少なくとも3時間ごとに3回替える)、50mMリン酸カリウム中の50% DMSOの2L(少なくとも3時間)、50mMリン酸カリウム中の30% DMSOの2L(少なくとも3時間)、50mMリン酸カリウム中の10% DMSOの2L(少なくとも3時間)に対して透析し、次に4℃で50mMリン酸カリウム(pH7.5)を6回替えて透析した(少なくとも6時間ずつ、それぞれ2L)。Biorad クーマシーブルータンパク質アッセイ(Bradford, M., Anal. Biochem. 72, 248, 1976)を用いてタンパク質濃度を測定したところ、3.9 mg/mlであった。全体として100mlのコンジュゲートが得られた。利用可能なリシン修飾の程度は、TNBS法(Habeeb AFSA, Anal. Biochem. 14, 328-34, 1988)によって70%であると判定された。
実施例11
C-2位TCA-BSA ELISAスクリーニングコンジュゲート(化合物11)の調製
1gのウシ血清アルブミン(BSA)を16 mlの50mMリン酸カリウム(pH7.5)に溶解した溶液を氷浴によって冷却した。その溶液に19 ml DMSOを滴下して加え、反応温度を室温以下に維持した。このタンパク質溶液に、18.1 mg(0.038 mmol)のC-2位TCA NHSエステル誘導体(化合物9)を1.5 mlの無水DMFに溶解した溶液を、滴下して加えた。反応混合物を室温で48時間撹拌した。得られたコンジュゲートを透析チューブ(10,000 MWカットオフ)に入れ、室温で、50mMリン酸カリウム中の60% DMSOの2L(少なくとも各回3時間、3回替える)、50mMリン酸カリウム中の50% DMSOの2L(少なくとも3時間)、50mMリン酸カリウム中の30% DMSOの2L(少なくとも3時間)、50mMリン酸カリウム中の10% DMSOの2L(少なくとも3時間)に対して透析し、次に4℃で50mMリン酸カリウム(pH7.5)を6回替えて透析した(少なくとも各回6時間、それぞれ2L)。全体として、70 mlのTCA−BSAコンジュゲートが得られた。タンパク質濃度はBioradクーマシーブルータンパク質アッセイを用いて、8.2 mg/mlであると測定された。総薬剤:BSA=2.5:1。
実施例12
4-[5-(3-ジメチルアミノ-プロピル)-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-2-イルオキシメチル]安息香酸メチルエステル(化合物12)の調製
アルゴン雰囲気下、100 mg(0.34 mmol)のヒドロキシTCA誘導体6を3mlのDMFに溶解した溶液を16 mg(0.4 mmol)のNaH(鉱油中60%分散液)で処理し、室温で15分間撹拌した。つぎに、混合物を85 mg(0.37 mmol)の4−(ブロモメチル) 安息香酸メチルで処理して、室温で4時間撹拌した。反応液をCH2Cl2で希釈し、50 mM KPO4、pH 7で洗浄した。水層をCH2Cl2で1回抽出した。CH2Cl2層を合わせ、Na2SO4上で乾燥し、油状物になるまで減圧下で濃縮した。これを、溶離液としてCH2Cl2中の3% メタノールを用いて20 gのシリカゲルクロマトグラフィーで分離し、46 mg(31%)の化合物12を淡黄色の油状物として得た。
実施例13
4-[5-(3-ジメチルアミノプロピル)-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-2-イルオキシメチル]安息香酸(化合物13)の調製
アルゴン雰囲気下、46 mg(0.104 mmol)化合物12を4.5 mlのメタノールおよび0.5 mlの水に溶解した溶液を、28 mg(0.202 mmol)のK2CO3で処理し、加熱して4時間還流した。反応液を減圧下で濃縮した。残渣を水に溶解し、pHを希塩酸で6.5に調整した。沈澱が生成した。これを10 mlのCH2Cl2で3回抽出し、Na2SO4上で乾燥し、減圧下で濃縮して、35 mg(79%)の化合物13を、灰白色の非晶質固形物として得た。
実施例14
4-[5-(3-ジメチルアミノプロピル)-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-2-イルオキシメチル]安息香酸2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル(化合物14)の調製
アルゴン下で、35 mg(0.082 mmol)の酸(化合物13)を5 mlのCH2Cl2に溶解した溶液を、25 mg(0.217 mmol)のN-ヒドロキシスクシンイミドおよび40 mg(0.209 mmol)の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHClで処理し、室温で一晩撹拌した。反応液を、水、飽和NaHCO3および食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、減圧濃縮して30 mg(70%)の化合物14を白色非晶質固形物として得た。
実施例15
4-({4-[5-(3-ジメチルアミノプロピル)-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-2-イルオキシ]ブチルアミノ}メチル)安息香酸(化合物15)の調製
32 mg(0.212 mmol)の4-(アミノメチル)安息香酸を2 mlのH2Oおよび4 mlのTHFに溶解した混合物を、約0.1 mlの2N NaOHで処理して、混合物のpHを約9とした。次にこれを4.5 mlのTHFに溶解した100 mg(0.209 mmol)のTCA NHSエステルの化合物9で処理した。pHを2N NaOHで約8.5-9.0に調整し、反応液を室温で15分間撹拌した。反応液を2N HClで中和してpH6とし、次にCH2Cl2で2回抽出した。CH2Cl2層を合わせて、無水Na2SO4上で乾燥し、減圧濃縮して87 mg(81%)の酸(化合物15)を淡黄色油状物として得た。これ以上の精製を行なわず、これを次のステップに使用した。
実施例16
4-({4-[5-(3-ジメチルアミノプロピル)-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン-2-イルオキシ]ブチルアミノ}メチル)安息香酸2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル(化合物16)の調製
87 mgの(0.169 mmol)酸(化合物15)を10 mlのCH2Cl2に溶解した溶液を、40 mg(0.348 mmol)N-ヒドロキシスクシンイミドおよび87 mg(0.454 mmol)の1-エチル-3(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHClで処理し、室温で一晩撹拌した。反応液を、水、飽和NaHCO3および食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、減圧濃縮した。残渣を、10%エーテル/CH2Cl2を溶離液として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、34 mg(33%)の化合物16を白色非晶質固形物として得た。
実施例17
3-{[3-(10,11-ジヒドロ-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル)-プロピル]-メチル-アミノ}-プロピオン酸エチルエステル(化合物17)の調製
6.02g(19.8 mmol)の塩酸デシプラミンの溶液を室温で5分間撹拌した。これを100 mlのクロロホルムで6回抽出した。有機層を合わせて、100 mlの水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮して、5.25 gのデシプラミン遊離塩基を得た。2.82 g(10.6 mmol)のデシプラミン遊離塩基を100 mlの無水アセトンに溶解した溶液を添加した。この反応混合物に2.03 ml(15.8 mmol)の3-ブロモプロピオン酸エチル、3.65 g(26.4 mmol)の無水炭酸カリウム、264 mg(1.76mmol)のヨウ化ナトリウム、5 mgの18-クラウン-6および0.7 mlの無水DMFを添加した。反応混合物をアルゴン下で一晩還流させた。その混合物を濾過し、残渣を20 mlのアセトンで洗浄した。濾液を合わせて濃縮し、4%メタノール/酢酸エチルを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、3.45 g(9.41 mmol、89%)のエチルエステル(化合物17)を、粘稠な油状物として得た。
実施例18
3-{[3-(10,11-ジヒドロ-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル)-プロピル]-メチル-アミノ}-プロピオン酸(化合物18)の調製
2.15 g(5.86 mmol)のエチルエステル(化合物17)に29.6 mlの新たに蒸留したTHFを加え、29.6 mlのメタノールおよび4.7 gの水酸化リチウムを63 mlの水に溶解した溶液を添加した。この混合物を室温で一晩撹拌し、濃縮してメタノールおよびTHFを除去した。水性溶液のpHを 6に調整した。これを100 mlのクロロホルムで6回抽出した。有機層を合わせて、100 mlの水で洗浄し、乾燥(無水Na2SO4)、濃縮し、1.97 g(5.82 mmol, 99%)の化合物18を白色非晶質固体として得た。
実施例19
4-[(3-{[3-(10,11-ジヒドロ-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル)-プロピル]-メチル-アミノ}-プロピオニルアミノ)-メチル]-安息香酸メチルエステル(化合物19)の調製
0.93 g(2.74 mmol)の化合物18を100 mlの無水ジクロロメタンに溶解した溶液に、446 mg(2.21 mmol)のアミノメチル安息香酸メチル塩酸塩(化合物20)を加え、次に1.05 g(5.47 mmol)の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドを加えた。この混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物に100 mlの水および20 mlのジクロロメタンを添加した。有機層を分離し、水層を75 mlのジクロロメタンで4回抽出した。有機層を合わせ、100mlの水で2回洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濃縮した。1.02 gの化合物18を用いて上記の反応を繰り返した。粗生成物を合わせて、30%クロロホルム/メタノールを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、1.2g(2.47 mmol、43%)のメチルエステル(化合物19)を得た。また、さらに少量の不純物を含有する760 mgの生成物が得られた。
実施例20
アミノメチル安息香酸メチル塩酸塩(化合物20)の調製
マグネティックスターラーで撹拌された、480 mlのメタノールに懸濁した6.05 g(40 mmol)のアミノメチル安息香酸の懸濁液を-20℃に冷却した。反応混合物に12.3 mlの塩化チオニルを10分間かけて添加した。反応混合物を4℃まで加温し、その温度で一晩撹拌しておいた。得られた溶液を濃縮し、固形物が得られた。NMR分析によって、反応が完了していないことが示された。これを再び上記の反応条件に供し、7.8 g(38 mmol、96%)の化合物20が灰白色固形物として得られた。
実施例21
4-[(3-{[3-(10,11-ジヒドロ-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル)-プロピル]-メチル-アミノ}-プロピオニルアミノ)-メチル]-安息香酸(化合物21)の調製
1.2 g(2.47 mmol)の化合物18に、16.5 mlのTHF、16.5 mlのメタノール、および38mlの水に2.63g水酸化リチウムを溶解した溶液を加えた。混合物を一晩室温で撹拌した。これを濃縮して、メタノールおよびTHFを除去した。溶液のpHを、85%リン酸を用いて6に調整した。得られた混合物を100 mlのクロロホルムで5回抽出した。有機層を合わせて100mlの水で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、濃縮した。7:3メタノール:酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、残渣を2回精製し、550 mg(1.16 mmol , 47%)の化合物21が得られた。
実施例22
4-[3-{[3-(10,11-ジヒドロ-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル)-プロピル]-メチル-アミノ}-メチル]-安息香酸2、5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル(化合物22)の調製
55 mg(1.16 mmol)の化合物21を30 mlのジクロロメタンに溶解した溶液を、アルゴン雰囲気下で、室温で撹拌しておいた。この反応混合物に575 mg(2.9 mmol)の1-エチル-3(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドおよび264 mg(2.29 mmol)のN-ヒドロキシスクシンイミドを添加した。この混合物を24時間撹拌しておき、15 mlのジクロロメタンで希釈した。有機層を分離し、50mlの水で4回、50mlの飽和NaHCO3溶液で3回、および50mlの水で3回洗浄した。ジクロロメタン層を乾燥し(Na2SO4)、濃縮し、480 mg(0.8 mmol、72%)の化合物22を白色粉末として得た。
実施例23
2-[3-(10,11-ジヒドロ-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル)-プロピルアミノ]-エチル]-カルバミン酸t-ブチルエステル(化合物23)の調製
6.02 gの塩酸デシプラミンに、150 mlの1N NaOHを添加した。混合物を10分間撹拌した。この水性混合物を100mlのクロロホルムで6回抽出した。クロロホルム層を合わせて、200mlの水で洗浄した。有機層を乾燥し(Na2SO4)、濃縮して5.25gのデシプラミン遊離塩基が得られた。
【0039】
3.25 g(12.04 mmol)のデシプラミン遊離塩基に、80 mlの無水アセトン、3.6 gの無水炭酸カリウム、3.0 g(13.45 mmol)の2-(BOC-アミノ)臭化エチル、3 mlの無水ジメチルホルムアミド、15 mgの18-クラウン-6および500 mgのヨウ化ナトリウムを加えた。混合物をアルゴン雰囲気下で18時間還流した。反応混合物を室温に冷却し、濾過した。残渣を10 mlのアセトンで洗浄した。濾液を濃縮し、残留物を、4%メタノール/酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、4.8 g(11.7 mmol、96%)の化合物23を粘稠な油状物として得た。
実施例24
N-[3-(10,11-ジヒドロ-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル)-N1-メチル-エタン-1,2-ジアミン(化合物24)の調製
1.0 g(2.44 mmol)の化合物23に、10 mlのCH2Cl2および10 mlのトリフルオロ酢酸を添加した。反応混合物を室温で撹拌し、濃縮した。残渣をCH2Cl2に溶解し、濃縮した。上記の手順を2回繰返し、残留物を60%クロロホルム/メタノールを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、1.02 g(2.40 mmol、99%)の化合物24を粘稠な油状物として得た。
実施例25
N-(2-{[3-(10,11-ジヒドロ-ジベンゾ[b,f]アゼピン-5-イル)-プロピル]-メチル-アミノ}-エチル)-テレフタルアミド酸2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イルエステル(化合物26)の調製
500 mg(1.18 mmol)のTCAアミン(化合物24)に、316μlのトリエチルアミンおよび30 mlのDMFを添加した。別のフラスコで、1.16 g(mmol)テレフタル酸ジ-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(化合物25)を30 mlの無水DMFと混合した。予め調製されたTCAアミン溶液をテレフタル酸ジ-N-ヒドロキシスクシンイミド溶液に滴下して加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、濃縮した。残渣を75 mlのジクロロメタンに溶解した。有機層を50 mlの水で2回、50 ml NaHCO3飽和溶液で2回さらに50 mlの水で洗浄し、乾燥して(Na2SO4)、濃縮した。残留物を、20%アセトン/酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色粉末として145 mg(0.026 mmol、22%)の化合物26を得た。
実施例26
N-1位TCA免疫原(化合物28)の調製
96 mgのTCA NHSエステル誘導体(化合物18)を1.5 mlの無水DMFに溶解した溶液を0℃に冷却した。反応混合物に74 mgのジシクロへキシル尿素(DCC)および48 mgのN-ヒドロキシスクシンイミドを添加した。その混合物を4℃で24時間撹拌しておいた。調製されたN-ヒドロキシスクシンイミドエステルがタンパク質のコンジュゲート形成にin situで使用された。
【0040】
700 mgのウシ チログロブリンの12 mlの50 mMリン酸カリウム(pH7.5)溶液を氷浴で冷却した。その溶液に、37 mlのジメチルスルホキシド(DMSO)を滴下して加え、反応温度を室温以下に維持した。このタンパク質溶液にin situで調製されたN-ヒドロキシスクシンイミドエステル溶液(上記)を滴下して加えた。混合物を室温で18時間撹拌しておいた。得られたコンジュゲートを透析チューブ(50,000 MWカットオフ)に入れ、2Lの70% DMSO/50 mMリン酸カリウム(pH7.5、3回交換、各回最低3時間)、2Lの50% DMSO/50 mMリン酸カリウム(最低3時間)、2Lの30% DMSO/50 mMリン酸カリウム(最低3時間)、10% DMSO/50 mMリン酸カリウム(最低3時間)の中で室温で透析し、次に4℃で、50 mMリン酸カリウム(pH7.5)を6回交換して透析した(各回2Lで最低6時間ずつ)。タンパク質濃度は、Bioradクーマシーブルータンパク質アッセイ(Bradford, M., Anal. Biochem. 72, 248(1976))を用いて、4.5 mg/mlと測定された。全体で90 mlのコンジュゲート(化合物28)が得られた。利用可能なリシン修飾は、TNBS法、Habeeb AFSA, Anal. Biochem. 14, 328-34 (1988)によって70%と判定された。注記:タンパク質コンジュゲートの調製に関する参考文献:Hubbardら、J. Pharm. Sc. 67, 1571-1578(1978)。
実施例27
C-2位TCA-BSA(芳香族リンカー)コンジュゲート(化合物29)の調製
550 mgのウシ血清アルブミン(BSA)を11 mlの50 mMリン酸カリウム(pH 7.5)に溶解した溶液を調製した。10 ml溶液をRBフラスコに移し、氷浴中で冷却した。その溶液に、10 mlのDMSOを滴下して加え、反応温度は室温以下に維持した。このタンパク質溶液に、48.2 mgのC-2位TCA NHSエステル誘導体(化合物16)を0.96 ml DMSOに溶解した溶液を、滴下して加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌しておいた。得られたコンジュゲートを透析チューブ(10,000 MWカットオフ)に入れ、500 mlの50% DMSO/50 mMリン酸カリウム(室温で最低3時間)、500 mlの30% DMSO/50 mMリン酸カリウム(室温で最低3時間)、500 mlの10% DMSO/50 mMリン酸カリウム(室温で最低3時間)、に対して透析し、続いて4℃で50 mMリン酸カリウム(pH 7.5)を4回交換して透析した(各回毎に2Lで最低3時間)。得られたコンジュゲートを0.45μmフィルターを透して濾過した。全体で37 mlのTCA-BSAコンジュゲートが得られた。タンパク質濃度は、Biorad クーマシーブルータンパク質アッセイを用いて、14.4 mg/mlと測定された。
実施例28
N-1位TCA-BSA(芳香族リンカー)コンジュゲート(化合物30)の調製
1 gのウシ血清アルブミン(BSA)を16 mlの50 mMリン酸カリウム(pH7.5)に溶解した溶液を氷浴中で冷却した。その溶液に、19 mlのDMSOを滴下して加え、反応温度は室温以下に維持した。このタンパク質溶液に、21 mgのTCA NHSエステル誘導体(化合物22)を1.5 mlの無水DMFに溶解した溶液を、滴下して加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌しておいた。得られたコンジュゲートを透析チューブ(10,000 MWカットオフ)に入れ、室温で、2Lの60% DMSO/50 mMリン酸カリウム(3回交換、各回最低3時間)、2Lの50% DMSO/50 mMリン酸カリウム(最低3時間)、2Lの30% DMSO/50 mMリン酸カリウム(最低3時間)、2Lの10% DMSO/50 mMリン酸カリウム(最低3時間)に対して透析し、続いて4℃で50 mMリン酸カリウム(pH 7.5)を6回交換して透析した(各回毎に2Lで最低6時間)。全体で75 mlのTCA-BSAコンジュゲートが得られた。タンパク質濃度は、Biorad クーマシーブルータンパク質アッセイを用いて、11.4 mg/mlと測定された。
実施例29
N-1位TCA-BSA(短いリンカー)コンジュゲート(化合物27)の調製
12.8 mgのTCA NHSエステル誘導体(化合物18)を1.5 mlの無水DMFに溶解した溶液を0℃に冷却した。この反応混合物に9.3 mgのジシクロヘキシル尿素(DCC)および5.24 mgのN-ヒドロキシスクシンイミドを添加した。混合物を4℃で24時間撹拌した。調製されたN-ヒドロキシスクシンイミドエステルはin situでタンパク質コンジュゲート形成のために使用した。
【0041】
1 gのウシ血清アルブミン(BSA)を16 mlの50 mMリン酸カリウム(pH7.5)に溶解した溶液を氷浴中で冷却した。その溶液に、19 mlのDMSOを滴下して加え、反応温度は室温以下に維持した。このタンパク質溶液に、in situで(上記のように)調製されたN-ヒドロキシスクシンイミドエステル溶液を、滴下して加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌しておいた。得られたコンジュゲートを透析チューブ(10,000 MWカットオフ)に入れ、室温で、2Lの60% DMSO/50 mMリン酸カリウム(3回交換、各回最低3時間)、2Lの50% DMSO/50 mMリン酸カリウム(最低3時間)、2Lの30% DMSO/50 mMリン酸カリウム(最低3時間)、2Lの10% DMSO/50 mMリン酸カリウム(最低3時間)に対して透析し、続いて4℃で50 mMリン酸カリウム(pH 7.5)を6回交換して透析した(各回毎に2Lで最低6時間)。全体で100 mlのTCA-BSAコンジュゲートが得られた。タンパク質濃度は、Biorad クーマシーブルータンパク質アッセイを用いて、7.2 mg/mlと測定された。
実施例30
C-2位免疫原に対するポリクローナル抗血清の開発
健康で、以前に免疫感作されていない雌雄のウサギがこの研究のために選択された。仕入先のIUACUC委員会によって承認されるように、ウサギを収容し、取り扱った。
1 mg/mlの濃度で完全フロイントアジュバントに懸濁した2-カルボキシプロピル-ジヒドロアミトリプチリン-BTGコンジュゲートを用いて一次免疫を行なった。各ウサギに投与された総投与量は、0.2 mlすなわち0.2 mgであり、背中全域の多数の部位に皮下注射によって投与された。4週間後、免疫感作を繰り返したが、アジュバントを不完全フロイントアジュバントに代えて、背中全域の異なる部位に、再度皮下注射によって行なった。次に4週間の間隔をおいて免疫感作を反復したが、総投与量0.1 mgを使用して、前記と同様の投与経路で、16週まで投与した。
耳静脈出血によって採取した試料のELISAによって、抗体応答を測定した。清澄化した血清の連続希釈物をC-2位およびN-1位テストタンパク質(BSA)コンジュゲートの両者について検査した。最大応答希釈物の50%として表される血清の抗体価は、使用したテストコンジュゲートについてほぼ類似し、約5 x 105であった。C-2位テストコンジュゲートに関して高い反応性を示す試料は、N-1位コンジュゲートについても、より高いこと、動物間の最高から最低までの反応性の順序はそれぞれのテストコンジュゲートに関して測定されたものについてほぼ同じであったことから、変動は、テストに使用したコンジュゲートとの関連よりも、動物個体との関連性が大きいと思われた。
実施例31
C-2免疫原によるマウスの免疫感作
C-2免疫原(化合物10)を、生理食塩水で0.2 mg/mlに希釈し、同量のフロイント完全アジュバント(Sigma Chemicals, St Louis, MO)に、2本のシリンジとダブルハブ25ゲージ針を用いて乳化して、マウスの一次免疫のために調製した。このエマルションを、それぞれの後ろ足および腹膜領域内でマウスに注射した。マウス当り0.1 mlの総投与量を注射した。フロイント不完全アジュバントを用いた同一処方を使用した2回目の注射を4週間後に同様の投与経路で注射した。3回目の注射は2回目と同様であり、2回目の注射の6週間後に投与された。
【0042】
血液試料は、2回目の注射の14日後に眼窩後部の出血によって採取された。血清を遠心分離し、1μ1の 10%チメロサール溶液を添加して保存した。血清の典型的な容量は10-20μlであった。
実施例32
ELISAアッセイ
血清の抗体含量を分析するために、異なるタンパク質(2-カルボキシプロピル-ジヒドロアミトリプチリン-BSA)に結合した同起源の抗原(化合物11)を用いたELISAアッセイを使用した。この抗原を0.1M炭酸バッファー、pH9.5を用いて、5μg/mlに希釈した。この抗原溶液の一定量、100μlをピペットで取り、ポリスチレン96-穴マイクロプレート(Costar, Cambridge, MA)のウェルに入れた。これをプラスチックバッグに入れて37℃で1時間インキュベートした。次に、溶液を吸引によって取り除き、ウェルをブロッキング溶液で満たした。この溶液の組成は、ゼラチン加水分解物が1%、ショ糖2%、Tris, 0.15M, pH7.4(試薬はすべてSigma Chemicals製)とした。これをプラスチックバッグ内で、室温で1時間放置して、プレートをブロックした。次に吸引してウェルを空にした。
【0043】
1 mlのリン酸緩衝塩類液を0.1% Tween 20とともに含有する(PBS-T)ガラス製試験管に血清1μlを移すことによって、希釈物を調製した。このような各血清の希釈物150μlを塩化ポリビニル製マイクロプレートのA列にあるウェルに入れた。他のすべてのウェルは100μlのPBS-Tで満たした。マルチチャネルマイクロピペッターを用いてA列からB列へ50μlを移すことによって連続3倍希釈物を調製した。ピペッティングを3回繰り返すことによって、完全に混合した。これをB列からC列へとウェルの各列へ次々と繰り返した。
【0044】
すべての希釈物が調製されたら、各95μlを、H列から始めて、コーティングされたプレートの同じ列に移し入れた。そのプレートを湿らせたペーパータオルとともにZiplocプラスチックバッグに入れ、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、PBS-Tの300μlアリコートで手作業でウェルを4回洗浄した。ヤギ抗-マウスIgG AM-HRPコンジュゲート(Kirkegaard & Perry, Gaithersburg, MD)の1:5000希釈物をPBS-Tを用いて調製した。次に、前記のうち100μlをピペットで各ウェルに入れ、プレートを再び上記のようにインキュベートした。そのプレートを今度は、300μlのPBS-Tで6回、手作業で洗浄し、100μlのK-Blue基質(Neogen, Lexington, KY)を各ウェルに添加した。これを、暗所で5分間放置して発色させた後、100μlの2Mリン酸溶液を添加して反応を止めた。ウェルの光学密度を、Molecular Devices TmaxプレートリーダーおよびMacintoshコンピューターを用いて読みとった。データから、すべてのマウスが免疫原に対して感作され、一部は他よりも高い反応性を示すことが示唆された。
実施例33
マウスハイブリドーマによるモノクローナル抗体の作製
免疫原に対してELISAで高い反応性を示すマウスを、使用のために選定した。融合を行なう4日前に、この動物は不完全フロイントアジュバントに懸濁した100μgの抗原の追加免疫を受けた。骨髄腫細胞系F0(ATCC, Manassas, VA)を融合に使用した。融合は、de St GrothおよびScheidegger, Journal of Immunol. Meth. 35, 1-21, 1980の方法によって行なった。10日後、ハイブリッド細胞培養物はスクリーニングに供された。これは上記のELISAと同様の方法によって、N-結合デシプラミン-BSAコンジュゲート(化合物27)でコーティングされたプレート、およびBSAのみでコーティングされたコントロールプレートを追加して、実施された。化合物11および化合物27の両方に結合するがBSAには結合できない抗体を示すハイブリッド細胞を、以下の操作のために選択した。これは、迅速な再クローニング、ならびに液体窒素による凍結のための、培養の増殖からなる。再クローニングは、細胞を40 mlの培地当り生細胞数60に希釈し、滅菌した96穴培養プレートの各ウェルに200μlずつ分注し、増殖が観察されるまで、加湿したCO2インキュベーター内でインキュベートすることによって、行なわれた。
【0045】
前記のスクリーニングアッセイによって、増殖を示す再クローニングプレートのウェルの、抗体発現をテストした。望ましい反応を示すクローンを増殖させて、液体窒素中に保存した。
【0046】
望ましいハイブリドーマを、細胞数を増やすために組織培養し、つぎにMiniperm(Hereaus, Germany)のような標準的な市販の培養装置に移すことによって、モノクローナル抗体を作製した。抗体は、保存された培養上清として、アッセイの開発のために使用された。
実施例34
モノクローナル抗体TCA 1.1を用いたイミプラミンのイムノアッセイ
ハイブリドーマクローンTCA 1.1を高密度培養し、上清を集めた。0.02%の濃度になるようにチメロサールを添加して、この標品を保存した。一定量の抗原コンジュゲートでコーティングしたマイクロプレートウェルにさまざまな希釈度の上清希釈物を入れる、力価実験によって、抗体含量を評価した。最大シグナルの約90%を与える希釈物を、イムノアッセイを立証するための以下の操作に使用した。
【0047】
イミプラミンイムノアッセイは、PBS-Tに溶解した薬物の1 mg/mlストック溶液からさまざまな希釈液を調製することによって立証された。50μlの上記希釈液をピペットで採り、予め最適化した濃度の化合物11のコンジュゲート、または化合物27のコンジュゲートのいずれかでコーティングされたマイクロプレートのウェルに入れ、つぎに上記で予め決定された希釈度の2分の1に希釈された50μlの抗体上清を入れた。この結果、上清の最終希釈度は予め決定された希釈度と等しくなり、薬物の最終濃度は上記の希釈液における薬物濃度の2分の1となった。37℃で1時間インキュベートした後、スクリーニングアッセイと同じ手順を行なった。光学密度を、モル(リットル当りグラム-分子量薬物)濃度として算出されたイミプラミンの最終濃度に対してプロットした。下記のデータを用いて標準曲線を作成した(図7参照):
【0048】
【表1】

【0049】
上記の結果に基づいて、化合物11のコンジュゲートを用いたアッセイによって検出可能な遊離薬物のもっとも少ない量は、1.3 x 10-6M、すなわち約0.36μg/mlであると推定される。化合物27のコンジュゲートを使用すると、より低い濃度の4 x10-7Mすなわち、約0.11μg/mlが検出可能であった。バックグラウンドレベルは極めて低く、再現性があるが、このことは、もっと長い展開時間を加えることによって、検出可能な濃度をより低くすることができる可能性があることを示唆する。
【0050】
さらに、他の三環系抗うつ薬も、化合物11および化合物27のコンジュゲートに対するTCA1.1の結合について交差反応性を示すことが明らかになった。これらのデータは、2-カルボキシプロピル-ジヒドロアミトリプチリン-BTGコンジュゲート(化合物10)を用いた免疫感作が三環系抗うつ薬の濃度を測定する目的に適した抗体の開発に有効であるという主張を支持する。
実施例35
抗体の微粒子への吸収
Seradyn製カルボキシル-修飾ブルーポリスチレン微粒子(0.3 ミクロン)を、最初に、1%固形分として、20 mM, pH6.1 MESバッファー(2-[N-モルフォリノ]エタンスルホン酸)中で遠心分離することにより3回洗浄した。洗浄した微粒子を次にMESにおいて5%固形分に調整し、指定された抗-TCA抗体を下記のように微粒子上に吸収させた。微粒子の溶液に、同量の3 mg/ml抗-TCA抗体を加え、16時間室温で撹拌しておいた。次にその微粒子を、室温で1時間BSAのMES溶液でブロックし、この混合物を、MES中1%固形分として遠心分離により3回洗浄した。最終洗浄後、微粒子溶液を再び10%固形分に調整した。使用前に、同量の上記ラテックスと35% w/vショ糖/MES溶液を混合した。
実施例36
メンブランストリップの調製
マイラー(Mylar)で裏打ちされた大孔径のニトロセルロース(5-20μm)を長さ15 cm、幅5 cmの小片に切り取った。いずれも50 mMリン酸カリウムバッファー、pH7.5に溶解した溶液であるTCA-BSA複合体(約5 mg/ml)および抗-TCAモノクローナル抗体(約2 mg/ml)を、IVEK Corp. Digispense 2000(登録商標)システムを用いて、1μl/cmの速度でニトロセルロース上に、15 cm側からそれぞれ2 cmおよび1 cmの距離をおいて、分配した。ニトロセルロースの切片を37℃で約20分間、放置して乾燥させ、つぎに20 mM TRIS、pH8に溶解したポリビニルアルコール(PVA, MW 13,000-23,000)溶液で、室温で30分間ブロックした。次にこの切片を水ですすぎ、乾燥した。
実施例37
ポリクローナル抗TCA(C-2)抗体を用いたイミプラミンのイムノクロマトグラフィーアッセイ
この実施例においても上記と同じニトロセルロースを微粒子のための分離用メンブランとして使用した(トップメンブラン)。米国特許第5,770,458号に詳細に記載されるように、2-メンブランストリップ構造の構築を行なった。簡単に述べると、トップメンブランをメインメンブランと同じ手順を用いてブロックし、洗浄した。Adhesive Research Inc.製の接着マイラーで、適当な量の微粒子を含有するトップメンブランをメインメンブランに重ねて積層板とした。この後、その切片を5 mm幅のストリップに切断し、サンプルパッドおよびシンクパッドをそれぞれストリップの開始および終末末端に配置した。BioRad Laboratories製セルロース(ゲルブロッター)をサンプル受けパッドおよびシンクパッドのいずれにも使用した。予め決定された量の薬物(TCA標準物質)を含有する約100μl溶液をこのメンブランストリップ上に供することによって、検量線が得られた。シグナル強度はつぎのように判定された:2.5から3.0 = ダークブルー、1.5から2.0 = ミディアムブルー、1.0 = ライトブルー、0.5 = ほとんど感知できない色、および0 = 無色。ストリップが無色であると読みとられた場合、完全な阻害が実現しており、試料は1000 ng/mlのTCA標準物質(たとえばイミプラミン)を含有することが示された。結果を下記の表2-5および図4に示す。
【0051】
表2に示すのは、化合物27、0.4μg/ストリップを、化合物10の免疫原から調製された抗体とともに使用した、TCAアッセイのためのラテラルフローイムノアッセイ標準曲線である(図8参照)。
【0052】
【表2】

【0053】
表3に示すのは、化合物30、0.1μg/ストリップを、化合物10の免疫原から調製された抗体とともに使用した、TCAアッセイのためのラテラルフローイムノアッセイ標準曲線である(図8参照)。
【0054】
【表3】

【0055】
表4に示すのは、化合物27、0.4μg/ストリップを、化合物28の免疫原から調製された抗体とともに使用した、TCAアッセイのためのラテラルフローイムノアッセイ標準曲線である(図9参照)。
【0056】
【表4】

【0057】
表5に示すのは、化合物30、0.1μg/ストリップを、化合物28の免疫原から調製された抗体とともに使用した、TCAアッセイのためのラテラルフローイムノアッセイ標準曲線である(図9参照)。
【0058】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1(a)】図1(a)は、本発明の2つのタンパク質コンジュゲート、化合物10および11(構造II)の合成の概要を示す図である。
【図1(b)】図1(b)は、本発明の2つのタンパク質コンジュゲート、化合物10および11(構造II)の合成の概要を示す図である。
【図1(c)】図1(c)は、本発明の2つのタンパク質コンジュゲート、化合物10および11(構造II)の合成の概要を示す図である。
【図2】図2は、化合物14(構造IV)の合成の概要を示す図である。
【図3】図3は、化合物16(構造III)の合成の概要を示す図である。
【図4(a)】図4(a)は、化合物22(構造V)の合成の概要を示す図である。
【図4(b)】図4(b)は、化合物22(構造V)の合成の概要を示す図である。
【図4(c)】図4(c)は、化合物22の合成に使用される4-アミノメチル安息香酸メチル塩酸塩(化合物20)の合成の概要を示す図である。
【図5】図5は、化合物26(構造VI)の合成の概要を示す図である。
【図6】図6は、化合物27、28、29および30の合成の概要を示す図である。
【図7】図7は、マイクロウェルプレートを用いたエンザイムイムノアッセイにおいて、本発明のコンジュゲートおよび抗体を使用して得られたデータから作成された標準(用量応答)曲線を示すグラフである。
【図8】図8は、ラテラルフローイムノアッセイにおいて、本発明のコンジュゲートおよび抗体を用いて得られたデータから作成された標準(用量応答)曲線を示すグラフである。
【図9】図9は、ラテラルフローイムノアッセイにおいて、本発明のコンジュゲートおよび抗体を用いて得られたデータから作成された標準(用量応答)曲線を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構造:
【化1】

を有する化合物。
【請求項2】
三環系抗うつ薬、その誘導体および代謝物からなる群から選択されるアナライトを測定するためのイムノアッセイ法であって、
(a) 前記アナライトを含有すると推定される試料を、前記アナライトに特異的な抗体、および下記の構造:
【化2】

を有する化合物から誘導されたアナライト類似体(ただし、前記類似体または前記抗体は検出可能な標識を含むものである)と、前記アナライトおよびアナライト類似体が前記抗体と結合して検出可能な複合体を形成するために適した条件の下で混合すること、および
(b) 前記の検出可能な複合体の存在または量を、前記試料中の前記アナライトの指標として測定すること、
からなるステップを含んでなる上記方法。
【請求項3】
三環系抗うつ薬、その誘導体および代謝物からなる群から選択されるアナライトを測定するためのイムノアッセイ法であって、
(a) 前記アナライトを含有すると推定される試料を、下記の構造:
【化3】

[式中、Zはポリ(アミノ酸)である]
の免疫原から作製された抗体、および下記の構造:
【化4】

を有する化合物から誘導されたアナライト類似体(ただし、前記類似体または前記抗体は検出可能な標識を含むものである)と、前記アナライトおよびアナライト類似体が前記抗体と結合して検出可能な複合体を形成するために適した条件の下で混合すること、および
(b) 前記の検出可能な複合体の存在または量を、前記試料中の前記アナライトの指標として測定すること、
からなるステップを含んでなる上記方法。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図1(c)】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−56030(P2007−56030A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273433(P2006−273433)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【分割の表示】特願2001−386768(P2001−386768)の分割
【原出願日】平成13年12月19日(2001.12.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Macintosh
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】