説明

三足歩行ロボット

【課題】従来の歩行ロボットは、姿勢制御を行うためのソフトウェアが複雑であり、またその問題を解決する目的で三本以上の脚部を搭載する歩行ロボットを用いる場合にはアクチュエータの数が増え、結果としてその多数のアクチュエータを制御する制御回路も複雑なものとなり、この部分の製作や整備に多大な労力が必要であった。
【解決手段】中央の脚部、または左右の脚部を用いて重心の左右の変化を抑えて歩行を行うようにする。さらに左右の脚部を連動させる事により脚部一本分のアクチュエータで二本の脚部を動作させる事で、一度に制御する必要のあるアクチュエータの数を二足歩行ロボットと同程度に減らす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、趣味の分野で利用されている、また近い将来に労働を行う際に用いる可能性もある歩行ロボットの脚部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歩行ロボットは、脚部の関節を駆動させるためのアクチュエータと、それを制御する制御装置、加えて姿勢を維持するための様々な方法が取られて移動を実現させるものであった。
このうち、一般的に考えられているロボットの歩行方式は二本の脚部を用いた二足歩行、あるいは二足歩行を行う際に発生する問題を解決するために複数の脚部を用いる場合があるが、いずれについても以下に述べる問題が存在した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許公開2009−125838
【特許文献2】特許公開2009−56568
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術文献に記載されたような従来の技術によれば、まず二足歩行を行うロボットの問題として、ロボットを稼動させるためには特許文献1に記されているような様々な制御をプログラミングしつつ、これに加えて制御命令に対応できる性能を持つアクチュエータを用いる必要があり、あるいは特許文献2に記されているように、物理的に移動動作を安定させるための構造を考える必要があった。
この問題点の解決策のひとつとしては三本以上の脚部を搭載し、ひとつの足が接地されていない状態でもその他の足で姿勢を維持し歩行するという方法が考えられるが、この場合には二足歩行に比べてアクチュエータの数が多くなるため、その部分の製作や整備に多大な労力がかかり、加えてそのアクチュエータを制御する回路が複雑になり、この部分の製作や整備にも多大な労力を必要とする事になる。
そこで本発明では、アクチュエータの数を二足歩行ロボットと同程度に用いる事でアクチュエータ及び制御回路の製作や整備にかかる労力を減らし、かつ多足歩行ロボットの利点となりうる、複雑なプログラミングを用いずに歩行が可能である歩行ロボットを提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、第一発明は、中央に旋回能力を持つ独立した脚部を持ち、その左右には連動する二本の脚部が搭載された事を特徴とする歩行ロボットである。
【発明の効果】
【0006】
第一発明によれば、左右の脚部は連動し全く同じ動作をするため、必要なアクチュエータの数を脚部一本分に減らす事ができ、三速の歩行ロボットでありながらアクチュエータの製作や整備の労力を二足歩行ロボットと同程度にする事が出来、その結果として制御回路の複雑さも二足歩行ロボットと同程度になり、この制御回路に対する製作や整備の労力も二足歩行ロボットと同程度にする事が出来る。
また第一発明によれば、中央の足が地面に下りているときであっても、あるいは左右の足が地面に降りている時であっても、接地している脚部に対する歩行ロボットの重心の、進行方向に対する左右方向への変化が少なくなるため、姿勢制御のためのプログラミングの複雑さが大幅に軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の一実施形態及び、その進行方向を示す斜視図である。
【図2】この発明の一実施形態において、左方向へ向けた移動動作の手順を示す側面図である。
【図3】この発明の一実施形態において、左への旋回動作の手順を示すための側面図である。
【図4】この発明の一実施形態において、左右の脚部のみを接地させた状態を表す正面図である。
【図5】この発明の一実施形態において、中央の脚部のみを接地させた状態を表す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この発明の一実施形態を図1に示し、構造を説明する。
なお図1左側の黒い矢印は、この発明の一実施形態の進行方向を示しており、図1の状態で前進する場合は左下方向に向かって歩行する事を、予めここに記しておく。
まず、腰部に取り付けられる構造を説明する。
歩行ロボットの腰部1の中央にはアクチュエータ2を介して中央脚部股関節3が設置され、また腰部1の進行方向左側にはアクチュエータ4を介し左腿部5が接続され、さらに腰部1の進行方向右側にはアクチュエータを介さず、手で押せば可動する形で右腿部6が接続されている。
次に、中央脚部股関節3に取り付けられる構造を説明する。
中央脚部股関節3にはアクチュエータ7を介し中央腿部8が接続され、中央腿部8に取り付けられたアクチュエータ9を介して中央脛部10が接続され、中央脛部10に接続されたアクチュエータ11を介して中央脚部先端12の足首部に接続される。
次に、左腿部5に取り付けられる構造を説明する。
左腿部5にとりつけられたアクチュエータ13を介し左脛部14が接続され、左脛部14に接続されたアクチュエータ15を介し左脚部先端16が接続される。
次に、右腿部6に取り付けられる構造を説明する。
右腿部6には左腿部5と連動した動きをさせるために左右腿部連結棒17を介し左腿部5と連結し、また右腿部6には手で押せば可動する形で右脛部18が接続され、右脛部18には左脛部14と連動した動きをさせるために左右脛部連結棒19を介し左脛部14と連結し、また右脛部18には手で押せば可動する形で右脚部先端20が接続される。
右脚部先端20は左脚部先端16と連動した動きをさせるために左右脚部先端連結棒21を介し左脚部先端16と接続する。
次に、各脚部先端に関して求められる点を記す。
なお、中央脚部先端12は、単独で胴体を支えられるように前後の幅と左右の幅を適切に設計する必要があり、また左脚部先端16と右脚部先端20は、この二つの脚部のみで胴体を支えられるように前後方向の幅を適切に設計する必要があるが、この各脚部先端の幅の設計値は、歩行ロボットに求められる歩幅、一回の方向転換動作で求められる旋回可能角度、活動を行う場所で許される脚部の大きさ、また使用するアクチュエータの性能を総合して、適切な値を設定する必要がある。
本発明の一実施形態を用いた場合の歩行方法の説明を、図2を用いて次に記す。
なお図2の中の白い大きな矢印は動作手順について時間を追って説明しているものであり、黒い小さな矢印は腰部の移動方向を示すものである。
本発明の歩行方法を人間の行う動作に例え、できる限り分かりやすく形容すると「松葉杖で移動する人間」に似た要領で歩行動作を行うのであるが、この動作の詳細について図2を元に記すと、まず▲1▼の初期状態から、▲2▼中央の足を前上方向に伸ばして歩行ロボットの胴体を持ち上げ、なおかつ左右の足を前下方向に伸ばし、▲3▼中央の足の膝関節を曲げ胴体を前に移動させつつ左右の足を接地させ、▲4▼左右の脚部に支えられた状態で中央の脚部を持ち上げ、再び▲1▼の状態へ戻ると言う▲1▼〜▲4▼の動作を繰り返すことにより移動を行う事となる。
本発明の一実施形態を用いた場合の方向転換方法を、図3を用いて次に記す。
こちらでも図2と同様、図3の中の白い大きな矢印は動作手順について時間を追って説明しているものであり、黒い小さな矢印は腰部の移動方向を示すものである。
まず▲1▼は初期状態であり、▲2▼中央の脚部を接地させて歩行ロボット胴体を垂直に持ち上げ、▲3▼その状態で、左右脚部先端と中央脚部先端がどの部分においても重なり合わない範囲で脚部を旋回させる事により相対的に胴体を方向転換させ、▲4▼中央脚部を持ち上げる事により胴体を下ろして左右の脚部を接地させつつ、そのまま中央脚部を左右の脚部より高い位置へ持ち上げ、▲5▼中央の脚部の旋回角度を元の位置に戻し、再び▲1▼の状態へ戻ると言う▲1▼〜▲5▼の動作の繰り返しにより実現させる事とする。
【実施例】
【0009】
「実施形態の効果」
この実施形態によれば、左右の脚部のアクチュエータがまとめられるため、この部分に用いるアクチュエータは脚部一本分で済む事となり、その結果としてアクチュエータ及び制御回路の製作や整備の労力を二足歩行ロボットと同程度にする事ができる。
さらにこの実施形態によれば、図4のように左右の脚部が接地している場合でも、図5のように中央の脚部のみが接地している場合でも、脚部の重心が進行方向に対して左右に移動することがなくなり、加えて図1における中央脚部先端12と左脚部先端16と右脚部先端20の前後方向の幅を適切に設計する事により、重心変化に対する配慮を行わずに歩行動作が可能となるため二足歩行ロボットに比べ制御プログラムの大幅な簡略化が可能となる。
「他の実施形態」
図1の実施形態では、左脚部に集中してアクチュエータを取り付けているが、他の実施形態では、各アクチュエータの配置を左右逆にしても構わない。
また図1の実施形態では、左右の脚部を連動させるために連結棒を取り付けているが、他の実施形態では、例として脚部の可動範囲を大きく取るために連結棒を撤去し、アクチュエータの軸やリンク機構を用いて左右の脚部を連動させても構わない。
さらに図1の実施形態では、関節部に直接アクチュエータを取り付けているが、他の実施形態では、例としてアクチュエータの配置を図1に記されている場所とは違う場所に設置したい場合に、リンク機構を用いるなどして別の場所から動力を関節へ伝達させ駆動させても構わない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に旋回可能な脚部を持ち、左右には連動する二つの脚部を持つ事を特徴とする三足歩行ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−24983(P2011−24983A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188739(P2009−188739)
【出願日】平成21年7月26日(2009.7.26)
【出願人】(509113575)
【Fターム(参考)】