説明

三量体大環状置換アミノイソフタル酸−ハロゲン−ベンゼン誘導体

一般式I[式中、Halは臭素またはヨウ素を表し、かつA1およびA2は異なったものを表す]は造影剤として適切である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲において特徴付けられている対象、つまり新規の三量体大環状置換三ヨウ化もしくは三臭化ベンゼン誘導体、その製造およびX線診断ならびにMRT診断における造影剤としての使用に関する。
【0002】
この数十年の間に、造影による診断において感動的な進歩が達成された。造影技術、たとえばDAS、CTおよびMRTは診断およびインターベンショナルラジオロジーにおいて標準的な、かつ断念することができない手段へと開発され、かつ今日では1mmよりも小さい空間の解像度を提供している。この技術の応用の可能性はさらに、造影剤の使用により決定的に高められた。X線診断における造影剤のこの今日の広い普及および認容は、80年代の非イオン性単量体三ヨウ化芳香族の導入ならびに90年代に導入された等浸透性の二量体ヨウ化芳香族に起因する。これらの両方の化合物群により造影剤に起因する副作用の頻度は2〜4%に低減した(Bush W.H.、Swanson D.P.:Acute reactions to intravascular contrast media:Types,risk factors,recognition and specific treatment.AJR 157、1153〜1161、1991、Rydberg J.、Charles J.、Aspelin P:Frequency of late allergy−like adverse reactions following injection of intravascular non−ionic contrast media.Acta Radiologica 39、219〜222、1998)。造影剤と現代の造影技術とを組み合わせた応用は今日、腫瘍の検出から高解像度の血管の視覚化、生理学的な要因、たとえば器官の透過性もしくは潅流の定量的な測定までに至る。造影および検出感度のために重要なことは、X線造影剤(この場合にはヨウ素原子)の濃度である。技術の更なる発展にもかかわらず、医学的な診断のための必要とされる濃度もしくは適用すべき用量を低減することができなかった。たとえば古典的なCT試験では患者あたり物質100g以上が注入される。
【0003】
X線造影剤の相容性は非イオン性三ヨウ化ベンゼンの導入により改善されたものの、副作用は未だに高い。従ってX線診断において年間数百万という極めて高い試験数に基づいて数万人の患者が該当する。これらの造影剤に起因する副作用は軽い反応、たとえば吐き気、めまい、嘔吐、じんま疹から、気管支痙攣、腎不全のような重い反応、ショックのような反応あるいは死亡にまで至る。幸いなことにこれらの重度のケースは極めてまれであり、かつ1/200000の頻度で観察される(Morcos S.K.、Thomsen H.S.:Adverse reactions to iodinated contrast media.Eur Radiol 11、1267〜1275、2001)。
【0004】
しかしこれらの、あるいはまた偽アレルギー性の造影剤に起因する観察される副作用の頻度はアトピー患者の場合、約3倍となり、かつ造影剤に起因する副作用の前歴を有する患者の場合には5倍に高まる。喘息は重度の造影剤に起因する副作用の危険を、非イオン性造影剤の場合には6倍高める(Thomsen H.S.、Morcos S.K.:Radiographic contrast media.BJU 86(Suppl1)、1〜10、2000、Thomsen H.S.、Dorph S.:High−osmolar and low−osmolar contrast media.An update on frequency of adverse drug reactions.Acta Radiol 34、205〜209、1993、Katayama H、Yamaguchi K、Kozuka T.、Takashima T.、Seez P.、Matsuura K.:Adverse reactions to ionic and nonionic contrast media.Radiology 175、621〜628、1990、Thomson H.S.、Bush Jr.W.H.:Adverse effects on contrast media.Incidence, prevention and management.Drug Safety 19:313〜324、1998)。これらの状況でコンピュータ・トモグラフィにおいて、あるいはまたインターベンショナルラジオロジーならびにDSAにおいて試験者はX線診断のために近年は古典的な三ヨウ化芳香族の代わりにますますヨウ素を含有していないGd−キレートを使用するようになった(Gierada D.S.、Bae K.T.:Gadolinium as CTcontrast agent:Assessment in a porcine model.Radiology 210、829〜834、1999、Spinosa D.J.Matsumoto A.H.、Hagspiel K.D.、Angle J.F.、Hartwell G.D.:Gadolinium−based contrast agents in angiography and interventional radiology、AJR 173、1403〜1409、1999、Spinosa D.J.、Kaufmann J.A.、Hartwell G.D.:Gadolinium chelates in angiography and interventional radiology:A useful alternative to iodinated contrast media for angiography、Radiology 223、319〜325、2002)。これは一方ではMRTにおいて使用される金属キレートの極めて良好な相容性により説明されるが、しかしランタニドは同様にX線を通さないという公知の事実によっても説明される。ガドリニウムおよびその他のランタニドはヨウ素に対して特にX線照射の高い電圧/エネルギーにおいてヨウ素よりも大きな吸収を示すので、これらは原則としてX線診断のための造影元素として適切である(Schmitz S.、Wagner S.、Schuhmann−Giampieri G.、Wolf K.J.:Evaluation of gadobutrol in an rabbit model as a new lanthanide contrast agent for computer tomography.Invest.Radiol.30(11):644〜649、1995)。
【0005】
前記の本来MRTで使用されていたGd含有キレート化合物は同様に水溶性が良好であり、かつ良好な相容性により優れている。イオン含有/非イオン性造影剤に対して、軽い偽アレルギー反応の頻度は著しく低減し、致命的な反応の頻度は極めてまれであり、1/1000000となる(Runge V.M.:Safety of approved MR contrast media for intravenous injection.J.Magn Reson Imaging 12、205〜213、2000)。偽アレルギー反応はその他の造影剤に起因する副作用、たとえば腎臓の相容性と比較して、むしろ投与量に無関係である。従って最小の投与量もすでに偽アレルギー反応を引き起こす可能性がある。
【0006】
化学的に全く異なった両方の化合物群の利点が合わさった物質が所望されている。
【0007】
金属キレートの極めて高い親水性はわずかな非相容性を示唆している。ヨウ化芳香族化合物は金属キレートよりも100〜200倍高い親油性を有する(ブタノール/水間の分布係数がより大きい)。
【0008】
少ない物質濃度および全分子における像を生じる金属の少ない比率に基づいて、従来公知の金属キレートはX線診断にとって最適ではない(Albrecht T.、Dawson P.:Gadolinium−DTPA as X−ray contrast medium in clinical studies.BJR 73、878〜882、2000)。この問題を解決するための比較的最近の手がかりは、開鎖状もしくは大環状の金属錯体に三ヨウ化芳香族が共有結合している金属錯体共役化合物の製造を記載している(US5,324,503、US5,403,576、WO93/16375、WO00/75141、WO97/01359、WO00/71526、US5,660,814)。しかしこれらの化合物はその親水性が低く、かつ粘度が高いために十分な濃度および是認できる量で適用することができない。
【0009】
Gdキレートに匹敵する十分な親水性を有し、かつさらに像を生じる元素の高い濃度を有する化合物を製造することが目標である。約25%(g/g)で存在する金属キレートよりも明らかに高い値が望ましい。より高い濃度でさらに、極めて良好な水溶性が与えられていなくてはならない。高濃度溶液はその良好な薬理学的な特性以外に同様に実用的な粘度および低い浸透圧を有していなくてはならない。
【0010】
上記課題は本発明により解決される。
【0011】
1.本発明による一般式I
【化1】

[式中、
Halは、臭素またはヨウ素を表し、
1は、基
−CONH−(CH22−NH−CO−CH(CH3)−K
を表し、
2は、基
−N(CH3)−CO−CH2−NH−CO−CH(CH3)−K
を表し、
Kは、式IA
【化2】

(式中、Xは、水素原子または原子番号20〜29、39、42、44または57〜83の金属イオン等価物を表すが、ただしその際、少なくとも2個のXは、金属イオン等価物を表し、かつ場合により存在する遊離のカルボキシ基は、場合により有機および/または無機塩基またはアミノ酸またはアミノ酸アミドの塩として存在している)の大環状構造を表す]の金属錯体は、極めて良好な溶解度を有し、かつGdキレートに匹敵する分布係数を有する。さらにこの新規の化合物は像を生じる元素の高い比率、低い粘度および浸透圧を有し、ひいては良好な認容性/相容性を有するので、X線およびMR造影のための造影剤として極めて好適である。
【0012】
本発明による一般式Iの化合物は、一般式II
【化3】

の三ヨウ化もしくは三臭化芳香族を、公知の方法で一般式III
【化4】

[式中、
Wは、保護基を表し、A1′
−CO−NH−(CH22−NH2
を表し、かつA2′
−N(CH3)−CO−CH2−NH2
を表す]の大環式化合物と反応させ、かつ引き続き保護基Wを除去し、かつ基CH2COOXを自体公知の方法で導入し、かつ引き続き自体公知の方法で原子番号20〜29、39、42、44または57〜83の元素の金属酸化物または金属塩と反応させることにより、当業者に公知の方法で製造することができる。
【0013】
アミノ保護基Wとして、当業者に周知のベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、トリフルオロアセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ベンジル基、ホルミル基、4−メトキシベンジル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、フタロイル基、1,2−オキサゾリン基、トシル基、ジチアスクシノイル基、アリルオキシカルボニル基、スルフェート基、ペント−4−エンカルボニル基、2−クロロアセトキシメチル(もしくは−エチル)ベンゾイル基、テトラクロロフタロイル基、アルキルオキシカルボニル基が挙げられる[Th.W.Greene、P.G.M.Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第2版、John Wiley and Sons(1991)、第309〜385頁、E.Meinjohanns等、J.Chem.Soc.Pekin Trans 1、1995、405、U.Ellensik等、Carbohydrat Research 280、1996、251、R.Madsen等、J.Org.Chem.60、1995、7920、R.R.Schmidt、Tetrahedron Letters 1995、5343]。
【0014】
保護基の分離は当業者に公知の方法で、たとえば加水分解、水素分解、水性−アルコール性溶液中、0℃〜50℃の温度でアルカリを用いたエステルのアルカリ性けん化、鉱酸を用いた、もしくはBoc基の場合にはトリフルオロ酢酸を用いた酸性のけん化により行う(たとえばE.Wuensch、Methoden der Org.Chemie、Houben−Weyl、第XV/1巻、第4版、1974、第315頁を参照のこと)。
【0015】
所望の金属イオンの導入は、特許文献EP71564、EP130934およびDE3401051A1に開示されているような方法で行うことができる。このために所望の元素の金属酸化物または金属塩(たとえば塩化物、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩または硫酸塩)を水および/または低級アルコール(たとえばメタノール、エタノールまたはイソプロパノール)中に溶解または懸濁し、かつ錯化剤の当量の溶液または懸濁液と反応させる。
【0016】
場合によりなお存在する遊離のカルボキシ基の中和は、たとえばナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウムまたはカルシウムの無機塩基(たとえば水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩)および/または有機塩基、特に第一、第二および第三アミン、たとえばエタノールアミン、モルホリン、グルカミン、N−メチル−およびN,N−ジメチルグルカミン、ならびに塩基性のアミノ酸、たとえばリジン、アルギニンおよびオルニチンまたは本来中性もしくは酸性のアミノ酸のアミドにより行う。
【0017】
中性の錯化合物を製造するためにたとえば水溶液または水性の懸濁液中の酸性の錯塩に、中和点に達する量の所望の塩基を添加する。得られる溶液を引き続き真空下で濃縮乾固する。しばしば、形成される中性塩を水と混和性の溶剤、たとえば低級アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、低級ケトン(アセトン等)、極性のエーテル(テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等)の添加により沈殿させ、かつこうして容易に単離することができ、かつ良好に精製することができる結晶を得ることは有利である。所望の塩基をすでに錯化の間に反応混合物に添加して、これにより方法工程を節約することが特に有利であることが判明した。
【0018】
こうして得られた錯体の精製は、場合により酸または塩基の添加によりpH6〜8、有利には約7にpH値を調整した後で、有利には適切な孔径を有する膜(たとえばAmicon(R)YM1、Amicon(R)YM3)を用いた限外濾過、たとえば適切なSephadex(R)ゲルを用いたゲル濾過により、またはシリカゲルもしくは逆相材料を用いたHPLCにより行う。
【0019】
精製は溶剤、たとえばメタノール、エタノール、i−プロパノール、アセトンまたはこれらと水との混合物からの結晶化によっても行うことができる。
【0020】
中性の錯化合物の場合、イオン性の成分を分離するために、オリゴマー錯体をアニオン交換体、たとえばIRA67(OH-型)により、および場合によりさらにカチオン交換体、たとえばIRC50(H+型)により処理することがしばしば有利である。
【0021】
本発明による一般式Iの化合物の製造は上記のとおりに行うことができる:
一般式IIの三ヨウ化もしくは三臭化芳香族と、一般式IIIの化合物との反応は当業者に公知のアミド形成の方法で行う。
【0022】
この場合、水を分離する試薬、たとえばジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、EDC、EEDQ、TBTU、HATUを用いて非プロトン性溶剤、たとえばDMF、DMA、THF、ジオキサン、トルエン、クロロホルムまたは塩化メチレン中、0℃〜50℃の温度でIIIの遊離酸をIIの遊離アミンと直接カップリングすることができるか、あるいはまた、一般式IIIの化合物中の酸基をまず活性エステルに変換し、次いで該エステルを溶剤、たとえばDMF、DMA、THF、ジオキサン、ジクロロメタン、i−ProOH、トルエン中で、場合により有機もしくは無機塩基、たとえばNEt3、ピリジン、DMAP、ヒューニッヒ塩基、Na2CO3、CaCO3を添加しながら−10℃〜+70℃の温度で一般式IIのアミンと反応させることにより活性化することができる。
【0023】
活性化されたカルボキシル基とは、アミンとの反応を容易にするように誘導された前記のカルボキシル基であると理解する。どの基を活性化のために使用することができるかは公知であり、かつたとえばM.およびA.Bodanszkyの"The Practice of Peptide Synthesis"、Springerverlag 1984を参照することができる。その例はカルボン酸とカルボジイミドまたは活性化されたエステル、たとえばヒドロキシベンゾトリアゾールエステル、酸塩化物、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、
【化5】

有利には4−ニトロフェニルエステルおよびN−ヒドロキシスクシニミドエステルとの付加物である。
【0024】
前記の化合物の活性化されたエステルは当業者に公知の方法で製造することができる。N−ヒドロキシスクシンイミド、たとえば
【化6】

(Hal=ハロゲン)から誘導された相応するエステルとの反応も可能である。
【0025】
一般にこの目的のために、従来技術において公知の全ての通例のカルボン酸のための活性化法を使用することができる。カルボン酸の活性化は通例の方法により行う。適切な活性化反応試薬の例は、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド−ヒドロクロリド(EDC)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)およびO−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、有利にはDCCである。O−求核性触媒、たとえばN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)またはN−ヒドロキシベンゾトリアゾールの添加もまた可能である。
【0026】
脱離基として有利には次の基を使用する:
F、Cl、Br、I、−OTs、−OMs、OH、
【化7】

【0027】
化合物IIの製造は実施例に記載されている。
【0028】
相応する三臭化化合物の製造はEP0073715に記載されている方法と同様に行う。
【0029】
一般式IIIの化合物はたとえばWO97/02051、WO99/16757に記載されているか、または文献から公知の方法により、トリ−boc環構造、たとえばトリ−Z−環構造から容易に製造することができる。
【0030】
本発明による化合物はX線診断においてもMR診断においても使用することができる。
【0031】
ハロゲン化X線造影剤の良好な水溶性と対になっている高いX線密度は、分子中での金属キレートの顕著な親水性および内在する良好な相容性と一緒になっている。新規化合物の極めて高い親水性は、副作用のプロフィールが、MR造影に使用される極めて良好な相容性のGd化合物に相応することにつながる。従ってこの特性は、ヨウ化化合物に対するアレルギーが証明されている患者において、またはアトピーが存在する場合に使用するために特に適切である。特に重度の副作用、たとえば気管支痙攣およびショックまたは死亡の発生率はMR造影剤の低いレベルに低下する。
【0032】
調製物のわずかな重量モル浸透圧濃度は一般に新規化合物の極めて良好な相容性の指標である。従って該化合物は特に血管内(非経口)適用のために適切である。
【0033】
医薬調製物に応じて、造影剤はX線診断のみのため(反磁性金属を含有する三ハロゲン化錯体)、あるいはまた同時にX線およびMRT診断のため(常磁性原子を有する三ハロゲン化錯体)に使用することもできる。極めて有利には該化合物を尿路造影法、コンピュータ・トモグラフィ、血管造影法、胃運動描写、マンモグラフィ、心拍記録法および神経放射線学において使用することができる。放射線治療においても使用される錯体は有利である。該化合物は全ての潅流測定のために適切である。血液が良好に供給される領域および虚血領域の区別は血管内注射により可能である。これらの化合物はごく一般的に、通例の造影剤をX線もしくはMR診断において使用している全ての適用において使用することができる。
【0034】
新規の造影剤はさらに、その化学的な構造の中に移動可能なプロトンを有してるのであれば、磁気転写技術(たとえばJourn.Chem.Phys.39(11)、2892(1963)、ならびにWO03/013616を参照のこと)のために使用することができる。
【0035】
診断法上、特に貴重であるのは脳梗塞および肝臓の腫瘍、または肝臓中で空間を必要とするプロセスの、ならびに腹部(腎臓を含む)および筋肉−骨格系の腫瘍の造影である。浸透圧が低いことに基づいて、特に有利には血管を動脈内および静脈内注入により表示することができる。
【0036】
本発明による化合物をMR診断における適用のために使用する場合、信号を与える基の金属イオンは常磁性でなくてはならない。これらは特に原子番号21〜29、42、44および58〜70の元素の二価および三価のイオンである。適切なイオンはたとえばクロム(III)イオン、鉄(II)イオン、コバルト(II)イオン、ニッケル(II)イオン、銅(II)イオン、プラセオジム(III)イオン、ネオジム(III)イオン、サマリウム(III)イオンおよびイッテルビウム(III)イオンである。その強い磁気モーメントに基づいて有利であるのはガドリニウム(III)イオン、テルビウム(III)イオン、ジスプロシウム(III)イオン、ホルミウム(III)イオン、エルビウム(III)イオン、鉄(III)イオンおよびマンガン(II)イオンであり、特に有利であるのはガドリニウム(III)イオンおよびマンガン(II)イオンである。
【0037】
本発明による化合物をX線診断において使用する場合には、X線の十分な吸収を達成するために、金属イオンは有利には高い原子番号の元素から誘導する。この目的のために、原子番号25、26および39ならびに57〜83の元素の金属イオンを有する生理学的に認容性の錯塩が適切であることが判明した。
【0038】
有利であるのはマンガン(II)イオン、鉄(II)イオン、鉄(III)イオン、プラセオジム(III)イオン、ネオジム(III)イオン、サマリウム(III)イオン、ガドリニウム(III)イオン、イッテルビウム(III)イオンまたはビスマス(III)イオン、特にジスプロシウム(III)イオンおよびイットリウム(III)イオンである。
【0039】
本発明による医薬品の製造は、本発明による錯化合物を、場合により製薬のために通例の添加剤を添加して水性媒体中に懸濁または溶解し、かつ引き続き懸濁液または溶液を場合により滅菌することにより自体公知の方法で行う。適切な添加剤はたとえば生理学的に懸念のない緩衝剤(たとえばトロメタミン)、錯化剤の添加剤または弱い錯体(たとえばジエチレントリアミン五酢酸または本発明による金属錯体に相応するCa錯体)または必要であれば電解質、たとえば塩化ナトリウムまたは必要であれば酸化防止剤、たとえばアスコルビン酸である。
【0040】
経口または非経口投与のために、またはその他の目的のために本発明による薬剤の水または生理食塩水中の懸濁液または溶液が所望される場合には、本発明による化合物を1もしくは複数の製薬において通例の助剤[たとえばメチル−セルロース、ラクトース、マンニット]および/または界面活性剤[たとえばレシチン、Tween(R)、Myji(R)]および/または矯味改善のために香料[たとえばエーテル油]と混合する。
【0041】
原則として本発明による医薬品を錯体の単離を行うことなく製造することが可能である。いずれの場合でも特に、本発明による錯体が実質的に錯化してない毒性の金属イオンを含有していないようにキレート形成を行うことに注意しなくてはならない。
【0042】
これはたとえば指示薬、たとえばキシレンオレンジを用いて製造工程においてコントロール滴定することにより保証することができる。従って本発明は錯化合物およびその塩の製造方法にも関する。最終的な安全性として単離した錯体の精製が残る。
【0043】
本発明による薬剤をインビボ適用する場合、該薬剤を適切なキャリア、たとえば血清または生理食塩水と一緒に、およびその他のタンパク質、たとえばヒト血清アルブミン(HSA)と一緒に投与することができる。
【0044】
本発明による薬剤は通常、非経口、有利には静脈内投与する。本発明による薬剤は、血管/器官を選択的に造影すべきか(たとえば動脈内注入による冠動脈の表示)、または組織もしくは病理(たとえば静脈内投与による脳腫瘍の診断)を表示すべきかどうかに応じて動脈内または間質投与/皮内投与することもできる。
【0045】
本発明による医薬品は有利には前記の化合物を0.001〜1モル/g含有し、かつ通常、0.001〜5mモル/kgの量で投与される。
【0046】
本発明による薬剤は核磁気共鳴トモグラフィのための造影剤としての適性に関する種々の前提条件を満足する。たとえば該薬剤は、経口もしくは非経口投与後に信号強度を高めることによってMRトモグラフィを用いて得られる画像をその解像度において改善するために好適である。さらに該薬剤は、体に対してできる限り少ない量の異物による負荷のために必要な高い効果、および検査の非観血的特性を補助するために必要な良好な相容性を有している。核磁気共鳴トモグラフィにおける使用にとって大きな利点は、本発明による常磁性化合物の高い効果(リラクシビティー)である。たとえばガドリニウム含有化合物のリラクシビティー(L/ミリモル-1・sec-1)は通常、従来のGd錯体(たとえばガドブトロール)のものよりも2〜4倍大きい。
【0047】
本発明による薬剤の良好な水溶性およびわずかな浸透圧により、高濃度の溶液を製造することができ、これにより循環の体積負荷率を代表的な限界値に維持し、かつ体液による希釈を相殺することができる。さらに本発明による薬剤はインビトロで高い安定性を有するのみでなく、意外なことにインビボでも高い安定性を有しているので、錯体中に結合している、自体毒性のイオンの放出または交換は、新しい造影剤が完全に再び排出される時間内では極めて緩慢に行われるにすぎない。
【0048】
一般に本発明による薬剤はMRT診断薬としての適用のために、0.001〜5mモルGd/kg、有利には0.005〜0.5mモル/kgの量で投与する。
【0049】
本発明による薬剤はX線造影剤として好適であり、その際、ヨウ素含有造影剤から公知のアナフィラキシー様の反応の徴候は、生化学的−薬理学的な試験では該薬剤により認識することができなかったことが特に強調すべきである。強いX線吸収の場合、該薬剤は比較的高い管内電圧の範囲で特に有効である(たとえばCTおよびDSA)。
【0050】
一般に本発明による薬剤はX線造影剤としての適用のためにたとえばメグルミン−ジアトリゾエートと同様に、0.01〜5mモル物質/kg、有利には0.02〜1mモル物質/kgの量で投与され、これはたとえばヨウ素−Dy化合物の場合には0.06〜6mモル(I+Dy)/kgに相応する。診断対象に応じて、X線ならびにMR診断において使用することができる調製物を選択することができる。両方の撮像様式のために最適な結果を達成するために、常磁性イオンの割合が減少している調製物を選択することが有利な場合がある。というのも、MR診断の多くの適用にとって、常磁性イオンが高すぎると、その他の利益がもたらされないからである。
【0051】
二つの用途のためには、常磁性物質(たとえばGd)のパーセンテージが0.05〜50、有利には2〜20%に低減している調製物を使用することができる。例として心臓診断における適用が挙げられる。試験のために、たとえば0.25モル/Lの全濃度での本発明による物質からなる調製物を使用する。Gdを含有する錯体の割合は20%であり、金属の残りの80%は、たとえばDy原子である。動脈内または静脈内投与によるX線環状血管造影法の場合、たとえば50mLを使用する、つまり体重70kgの患者の場合に体重1kgあたり物質0.18mモルを使用する。冠状の動静脈のX線撮影を行った直後に、引き続き心臓のMR診断を行って、生体で心筋領域の壊死を区別することができる。試験のためにあらかじめ適用した約110μモルGd/kgの量はこのために最適である。
【0052】
特許実施例
例1
a)2,4,6−トリヨード−5−{メチル[2−(2,2,2−トリフルオロアセチルアミノ)アセチル]アミノ}イソフタル酸ジクロリド
塩化チオニル14.5ml(200ミリモル)を0℃で1時間以内に、ジメチルアセトアミド200ml中のグリシントリフルオロアセテート34.2g(200ミリモル)の溶液に滴加する。引き続き0℃で5−アミノ−2,4,6−トリヨードイソフタル酸ジクロリド(EP0033426、Sovak、1/80US)24.4g(40ミリモル)を添加し、かつ室温で4日間攪拌する。反応混合物を氷水5リットルに添加し、かつ沈殿する固体を濾別する。さらなる後処理のために濾過残滓を酢酸エチル1000ml中に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液と共に2回振とうし、有機相を硫酸ナトリウムにより乾燥させ、かつ溶剤を真空下で蒸発させる。
収率:無色の固体28.7g(理論値の94%)
元素分析:
計算値:C20.47 H0.79 N3.67
測定値:C20.52 H0.77 N3.71。
【0053】
b)5−[(2−アミノアセチル)メチルアミノ]−N,N−ビス−(2−アミノエチル)−2,4,6−トリヨードイソフタル酸−アミド
テトラヒドロフラン100ml中の2,4,6−トリヨード−5−{メチル−[2−(2,2,2−トリフルオロアセチルアミノ)−アセチル]アミノ}イソフタル酸ジクロリド10g(13.1ミリモル)の溶液を室温で1時間にわたりエチレンジアミン26.7ml(399ミリモル)に滴加し、かつ14時間、後攪拌する。沈殿する固体を濾別し、エタノールで後洗浄し、水100ml中にとり、かつ1Mの水酸化リチウム溶液で8.0のpH値を調整する。真空下で蒸発させた後、エタノールから再結晶する。
収率:無色の固体7.3g(理論値の78%)
元素分析:
計算値:C25.23 H2.96 N11.77 I53.31
測定値:C25.44 H2.98 N11.81 I53.09。
【0054】
c)1,4,7−トリス−(ベンジルオキシカルボニル)−10−(1−エトキシカルボニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロ−ドデカン
1,4,7−トリス−(ベンジルオキシカルボニル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン50.1g(87.0ミリモル)(Delaney等、J.Chem.Soc.Perkin Trans.1991、3329)をアセトニトリル500mlに溶解し、かつ炭酸ナトリウム55.5g(400ミリモル)を添加する。引き続き強力な撹拌下に1−ブロモプロピオン酸エチルエステル54.3g(300ミリモル)を添加し、かつ60℃で20時間加熱する。不溶性の成分を濾別し、濃縮乾固させ、かつシリカゲルを用いてクロマトグラフィー処理する(溶離剤として酢酸エチル/ヘキサン20:1)。生成物を含有する画分を合し、かつ蒸発させる。
収率:無色の油状物46g(理論値の78%)
元素分析:
計算値:C65.86 H6.87 N8.30
測定値:C65.99 H6.88 N8.23。
【0055】
d)1,4,7−トリス−(ベンジルオキシカルボニル)−10−(1−カルボキシエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン
1,4,7−トリス−(ベンジルオキシカルボニル)−10−(1−エトキシカルボニルエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン33.7g(50ミリモル)をジオキサン300ml中に溶解し、かつ5パーセントのNaOH水溶液140mlを添加し、かつ室温で24時間攪拌する。濃HClで中和した後に濃縮乾固させる。残留物を酢酸エチル250ml中にとり、かつそのつど1NのHCl溶液250mlで抽出する。有機相を硫酸ナトリウムにより乾燥させ、溶剤を濃縮乾固させる。
収率:無色の固体28.2g(理論値の87%)
元素分析:
計算値:C65.00 H6.55 N8.66
測定値:C65.22 H6.59 N8.60。
【0056】
e)2,4,6−トリヨード−5−(3−アザ−5−メチル−1,4−ジオキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(ベンジルオキシカルボニル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})メチルアミノイソフタル酸−N,N−ビス−(3−アザ−5−メチル−4−オキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(ベンジルオキシカルボニル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})アミド
DMF1000ml中の5−[(2−アミノアセチル)メチルアミノ]−N,N−ビス−(2−アミノエチル)−2,4,6−トリヨードイソフタル酸アミド40.0g(56.0ミリモル)の懸濁液に、1,4,7−トリス−(ベンジルオキシカルボニル)−10−(1−カルボキシエチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン109g(168.5ミリモル)、トリエチルアミン50ml(390ミリモル)、ジシクロヘキシルカルボジイミド34.9g(168.4ミリモル)およびN−ヒドロキシスクシンイミド19.4g(168.4ミリモル)を添加し、かつ室温で20時間攪拌する。不溶性の成分を濾別し、かつ濃縮乾固する。残留物を酢酸エチル1000mlにとり、かつそのつど水500mlで2回抽出する。有機相を硫酸ナトリウムにより乾燥させ、溶剤を濃縮乾固させ、かつ残留物をシリカゲルによりクロマトグラフィー処理する(溶離剤としてジクロロメタン/メタノール20:1)。生成物を含有する画分を合し、かつ蒸発させる。
収率:無色の固体80.2g(理論値の55%)。
元素分析:
計算値:C54.43 H5.47 N9.70 I14.64
測定値:C54.67 H5.42 N9.69 I14.59。
【0057】
f)2,4,6−トリヨード−5−(3−アザ−5−メチル−1,4−ジオキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})メチルアミノイソフタル酸−N,N−ビス−(3−アザ−5−メチル−4−オキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})アミド
2,4,6−トリヨード−5−(3−アザ−5−メチル−1,4−ジオキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(ベンジルオキシカルボニル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})メチルアミノイソフタル酸−N,N−ビス−(3−アザ−5−メチル−4−オキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(ベンジルオキシカルボニル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})アミド78g(30ミリモル)に、0〜5℃で慎重にHBr/AcOH(33%)500mlを添加し、かつ室温で3時間攪拌する。引き続き反応混合物をジエチルエーテル2500ml中に注ぎ、その際に生じる固体を吸引濾過し、かつジエチルエーテルで数回、後洗浄する。残留物を強力な撹拌下で水300mlおよびジクロロメタン300ml中に溶解し、10のpH値が調整されるまで32パーセントのNaOH溶液を添加する。有機相を分離し、水相をそのつどジクロロメタン150mlで3回抽出し、合した有機相を硫酸マグネシウムにより乾燥させ、かつ濃縮乾固させる。
収率:無色の固体40.5g(理論値の97%)
元素分析:
計算値:C41.39 H6.30 N18.10 I27.33
測定値:C40.50 H6.31 N18.07 I27.22。
【0058】
g)2,4,6−トリヨード−5−(3−アザ−5−メチル−1,4−ジオキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})メチルアミノイソフタル酸−N,N−ビス−(3−アザ−5−メチル−4−オキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})アミド
2,4,6−トリヨード−5−(3−アザ−5−メチル−1,4−ジオキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})メチルアミノイソフタル酸−N,N−ビス−(3−アザ−5−メチル−4−オキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})アミド40g(28.7ミリモル)を水200ml中に溶解し、クロロ酢酸41.5g(439.8ミリモル)を添加し、かつ60℃で32%のNaOHを用いて9.5のpH値を調整する。70℃で10時間加熱し、その際、反応混合物のpH値を連続的に9.5に後調整する。室温に冷却した後で濃HClにより1のpH値を調整し、かつ溶液を真空下で蒸発させる。残留物をメタノール500ml中で攪拌し、不溶性の成分から濾別し、かつ濾液を蒸発させる。残留物を水200mlに溶解し、かつイオン交換体カラム(1200ml、IR120、H+型)に添加する。引き続き水5lで洗浄し、かつ酸性の溶出液を蒸発させる。残留物をメタノール150ml中に溶解し、かつジエチルエーテル2500ml中に滴加し、その際に生じる固体を吸引濾過し、ジエチルエーテルにより数回洗浄し、かつ真空下で乾燥させる。
収率:無色の固体38g(理論値の69%)
元素分析:
計算値:C41.39 H5.53 N13.16 I19.88
測定値:C41.62 H5.57 N13.08 I19.65。
【0059】
h)2,4,6−トリヨード−5−(3−アザ−5−メチル−1,4−ジオキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシラトメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル,Gd−錯体]})メチルアミノイソフタル酸−N,N−ビス−(3−アザ−5−メチル−4−オキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシラトメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル,Gd−錯体]})アミド
2,4,6−トリヨード−5−(3−アザ−5−メチル−1,4−ジオキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})メチルアミノイソフタル酸−N,N−ビス−(3−アザ−5−メチル−4−オキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})アミド13.2g(6.9ミリモル)を水100ml中に溶解し、かつ酢酸3mlの添加により酸性にする。酸化ガドリニウム3.7g(10.4ミリモル)を添加し、かつ還流で6時間加熱する。錯化が終了した後でアンモニアによりpH7.4に調整し、かつシリカゲルを用いてクロマトグラフィー処理する(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/アンモニア:10/10/1)。生成物を含有する画分を精製し、かつイオン交換体(IR267H型)10gと共に2時間攪拌し、かつ濾別し、次いでイオン交換体(IRA67 OH型)10gと共に2時間攪拌し、濾別し、活性炭2gを添加し、60℃で2時間加熱し、濾別し、かつ凍結乾燥する。
収率:無色の固体9.9g(理論値の56%)
含水率(カール・フィッシャー):7.1%
元素分析(無水の物質に対する):
計算値:C33.34 H4.07 N10.60 I16.01 Gd19.84
測定値:C33.51 H4.11 N10.65 I15.99 Gd19.73。
【0060】
例2
2,4,6−トリヨード−5−(3−アザ−5−メチル−1,4−ジオキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシラトメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル,Dy−錯体]})メチルアミノイソフタル酸−N,N−ビス−(3−アザ−5−メチル−4−オキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシラトメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル,Dy−錯体]})アミド
2,4,6−トリヨード−5−(3−アザ−5−メチル−1,4−ジオキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})メチルアミノイソフタル酸−N,N−ビス−(3−アザ−5−メチル−4−オキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})アミド(表題化合物1g)13.2g(6.9ミリモル)を水100ml中に溶解し、かつ酢酸3mlの添加により酸性にする。酸化ジスプロシウム3.9g(10.4ミリモル)を添加し、かつ還流で6時間加熱する。錯化が終了した後で、アンモニアによりpH7.4を調整し、かつシリカゲルを用いてクロマトグラフィー処理する(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/アンモニア:10/10/1)。生成物を含有する画分を合し、かつイオン交換体(IR267H型)10gと共に2時間攪拌し、かつ濾別し、次いでイオン交換体(IRA67 OH型)10gと共に2時間攪拌し、濾別し、活性炭2gを添加し、60℃で2時間加熱し、濾別し、かつ凍結乾燥する。
収率:無色の固体9.4g(理論値の53%)
含水率(カール・フィッシャー):6.7%
元素分析(無水の物質に対する):
計算値:C33.12 H4.04 N10.53 I15.90 Dy20.36
測定値:C33.26 H4.08 N10.55 I15.87 Dy20.27。
【0061】
例3
2,4,6−トリヨード−5−(3−アザ−5−メチル−1,4−ジオキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシラトメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル,Yb−錯体]})メチルアミノイソフタル酸−N,N−ビス−(3−アザ−5−メチル−4−オキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシラトメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル,Yb−錯体]})アミド
2,4,6−トリヨード−5−(3−アザ−5−メチル−1,4−ジオキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})メチルアミノイソフタル酸−N,N−ビス−(3−アザ−5−メチル−4−オキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})アミド(表題化合物1g)13.2g(6.9ミリモル)を水100ml中に溶解し、かつ酢酸3mlの添加により酸性にする。酸化イッテルビウム4.1g(10.4ミリモル)を添加し、かつ還流で6時間加熱する。錯化が終了した後で、アンモニアによりpH7.4に調整し、かつシリカゲルを用いてクロマトグラフィー処理する(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/アンモニア:10/10/1)。生成物を含有する画分を合し、かつイオン交換体(IR267H型)10gと共に2時間攪拌し、かつ濾別し、次いでイオン交換体(IRA67 OH型)10gと共に2時間攪拌し、濾別し、活性炭2gを添加し、60℃で2時間加熱し、濾別し、かつ凍結乾燥する。
収率:無色の固体11.1g(理論値の62%)
含水率(カール・フィッシャー):6.5%
元素分析(無水の物質に対する):
計算値:C32.68 H3.99 N10.39 I15.70 Yb21.40
測定値:C32.81 H4.00 N10.36 I15.64 Yb21.27。
【0062】
例4
2,4,6−トリヨード−5−(3−アザ−5−メチル−1,4−ジオキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシラトメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル,Y−錯体]})メチルアミノイソフタル酸−N,N−ビス−(3−アザ−5−メチル−4−オキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシラトメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル,Y−錯体]})アミド
2,4,6−トリヨード−5−(3−アザ−5−メチル−1,4−ジオキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})メチルアミノイソフタル酸−N,N−ビス−(3−アザ−5−メチル−4−オキソペンタン−1,5−ジイル−{10−[1,4,7−トリス−(カルボキシメチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル]})アミド(表題化合物1g)13.2g(6.9ミリモル)を水100ml中に溶解し、かつ酢酸3mlの添加により酸性にする。酸化イットリウム2.35g(10.4ミリモル)を添加し、かつ還流で6時間加熱する。錯化が終了した後で、アンモニアによりpH7.4に調整し、かつシリカゲルを用いてクロマトグラフィー処理する(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール/アンモニア:10/10/1)。生成物を含有する画分を合し、かつイオン交換体(IR267H型)10gと共に2時間攪拌し、かつ濾別し、次いでイオン交換体(IRA67 OH型)10gと共に2時間攪拌し、濾別し、活性炭2gを添加し、60℃で2時間加熱し、濾別し、かつ凍結乾燥する。
収率:無色の固体9.4g(理論値の58%)
含水率(カール・フィッシャー):7.9%
元素分析(無水の物質に対する):
計算値:C36.48 H4.45 N11.60 I17.52 Y12.27
測定値:C36.61 H4.52 N11.65 I17.44 Y12.19。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】

[式中、
Halは、臭素またはヨウ素を表し、
1は、基
−CONH−(CH22−NH−CO−CH(CH3)−K
を表し、
2は、基
−N(CH3)−CO−CH2−NH−CO−CH(CH3)−K
を表し、
Kは、式IA
【化2】

(式中、Xは、水素原子または原子番号20〜29、39、42、44または57〜83の金属イオン等価物を表すが、ただしその際、少なくとも2個のXは、金属イオン等価物を表し、かつ場合により存在する遊離のカルボキシ基は、場合により有機および/または無機塩基またはアミノ酸またはアミノ酸アミドの塩として存在している)の大環状構造を表す]の金属錯体。
【請求項2】
Xが、原子番号21〜29、42、44、58〜70の金属イオン等価物を表すことを特徴とする、請求項1記載の金属錯体。
【請求項3】
Xが、イオンのガドリニウム(III)、ジスプロシウム(III)、ユーロピウム(III)、鉄(III)またはマンガン(II)の金属イオン等価物を表すことを特徴とする、請求項4記載の金属錯体。
【請求項4】
少なくとも1の請求項1記載の一般式Iの金属錯体を含有し、場合により製薬において通例の添加剤を含有する医薬品。
【請求項5】
X線診断のための薬剤を製造するための少なくとも1の請求項1記載の金属錯体の使用。
【請求項6】
MRT診断のための薬剤を製造するための少なくとも1の請求項4記載の金属錯体の使用。
【請求項7】
モル比2000:1〜1:1、有利には49:1〜4:1での請求項1または4記載の金属錯体をそれぞれ含有する医薬品。
【請求項8】
水中および/または生理食塩水中に溶解または懸濁した金属錯体が0.001〜1モル/lの濃度で存在することを特徴とする、請求項6記載の医薬品。
【請求項9】
動脈内または静脈内注入による、脳梗塞および肝臓腫瘍の、または肝臓中で空間を必要とするプロセスの、ならびに腹部(腎臓を含む)および筋肉−骨格系の腫瘍のX線診断およびMR診断のための、および血管を視覚化するための薬剤を製造するための、少なくとも1の請求項1記載の金属錯体の使用。
【請求項10】
請求項1記載の一般式Iの金属錯体の製造方法において、一般式II
【化3】

の三ヨウ化もしくは三臭化芳香族を、自体公知の方法で一般式III
【化4】

[式中、
Wは、保護基を表し、A1′
−CO−NH−(CH22−NH2
を表し、かつA2′
−N(CH3)−CO−CH2−NH2
を表す]の大環状構造と反応させ、かつ引き続き保護基Wを除去し、かつ基CH2COOXを自体公知の方法で導入し、かつ引き続き自体公知の方法で原子番号20〜29、39、42、44または57〜83の元素の金属酸化物または金属塩と反応させることを特徴とする、請求項1記載の一般式Iの金属錯体の製造方法。
【請求項11】
請求項4記載の医薬品の製造方法において、水中または生理食塩水中に溶解または懸濁した錯化合物を、場合により製薬において通例の添加剤と共に、腸内投与または非経口投与のために適切な形にすることを特徴とする、請求項4記載の医薬品の製造方法。

【公表番号】特表2008−500293(P2008−500293A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513721(P2007−513721)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004493
【国際公開番号】WO2005/115997
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(390014166)シエーリング アクチエンゲゼルシヤフト (12)
【氏名又は名称原語表記】Schering Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−13353 Berlin, Germany
【Fターム(参考)】