説明

上下分割ケーソン用目地構造およびその施工法

【課題】 護岸等の完成までの工事中、船舶の通過を可能とする上下に分割されたケーソンに対しても施工時のケーソンのずれや据え付け後のケーソンに変位が生じてもシール性を保持することができる上下分割ケーソン用目地構造およびその施工法を提供すること。
【解決手段】 上下に分割され隣接して配設されたケーソン2,2間の目地3に縦方向に、目地3の幅よりも広幅の板状の内側目地材11を配設し、この内側目地材11を覆うように外側面12aが平坦なコンクリート台座12を配設し、このコンクリート台座12の外側面12aに目地3を挟んで伸縮部13aを備える外側目地材13を配設して固定する。
これにより、目地3の前後を内側目地材11で塞いで、その上のコンクリート台座12を打設することで、分割されたケーソン2,2のずれを吸収するようにし、平坦なコンクリート台座12を介して外側に外側目地材13と取り付けることで、遮水性の確保および地震時等の変位への対応ができるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上下分割ケーソン用目地構造およびその施工法に関し、ケーソンの大型化にともなう工事期間の増大にかかわらず船舶の通行を可能とする上下に分割したケーソンの目地構造およびその施工法で、施工時のケーソンのずれや設置後のケーソンの変位が生じてもシール性を保持できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
海洋において埋立地等の造成のための護岸や防波堤などの構築のためコンクリート製や鋼製あるいはこれらを組合わせたケーソンを利用することが広く行われており、陸上において函体のケーソンを造り、海上の現場に運搬し、捨石基礎上に据え付けることが行われる。
【0003】
従来、ケーソンは、予め必要な高さまで陸上で造り、運搬して据え付けすることが行われているが、現場の水深の関係等でケーソンが大型化したり、護岸や防波堤の長さが長くなると、工事期間が長くなり、その間にあっても工事の内容によっては船舶の通過が必要な場合がある。
【0004】
このため、例えば、図6に示すように、護岸となる高さを備えた通常のケーソン1と上下に分割したケーソン2とを組み合せて用い、船舶を通過させる部分には、上下に分割したケーソン2の下段のケーソン2aを複数(図示例では3個)これまでと同様に通常のケーソン1と隣接して据え付けるようにし、船舶の通過の必要がなくなる護岸などの完成に合わせて上段のケーソン2bを下段のケーソン2a上に据え付けることが考えられており、通常のケーソン1と分割したケーソン2との間および分割したケーソン同士の間の縦方向の目地3を遮水しシールする必要がある。
【0005】
従来、ケーソンの縦方向の目地を遮水する目地材としては、ゴム・合成樹脂等弾性体の変形を利用する中実型の目地材やゴム・繊維製等の長筒状の袋の中にアスファルト、砂等の流動体を詰めて膨ませる型の目地材を、ケーソンの目地間に縦方向に配置してシールを行うタイプのもの(特許文献1、2等参照)と、ケーソンの目地の埋立側(陸側)より、ゴム・合成樹脂等からなるシート状または板状の目地材を目地の両側のケーソンに跨るように配置してシールを行うタイプのもの(特許文献3等参照)がある。
【特許文献1】特開平9−242045号公報
【特許文献2】特開平11−13041号公報
【特許文献3】特開2000−290965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような分割した上段のケーソン2bを下段のケーソン2a上に据え付けする場合には、船舶を通過させる航路の両側には、既設のケーソン1,1が位置することから目地を広く確保することが難しく、しかも上段のケーソン2bを運搬し据え付ける際に、図 7に示すように、下段のケーソン2a,2a間には、前後方向のずれxおよび上下方向のずれzが発生するとともに、上下段のケーソン2a,2b間には、前後方向のずれx´のほか、左右方向のずれyが発生し、これらの位置ずれのほか、据え付け後には、上下のケーソン2a,2bが地震時等にそれぞれ変位することが予想される。
【0007】
ところが、従来のケーソンの目地構造に用いられる目地材は、いずれのタイプも上下一体のケーソンを対象とする目地材であり、目地間に設置するタイプの目地材では、図8に示すように、左右方向のずれyや上下方向のずれzによって目地材4とケーソン2a、2bとの間に隙間5が生じてしまう虞がある。
また、ケーソンの陸側に目地の両側のケーソンに跨がるように設置するタイプの目地材では、前後方向のずれxによって隙間が生じてしまう虞がある。
【0008】
このように、従来のケーソン用の目地材をそのまま適用して目地構造を構成することができないことから、上下に分割したケーソンに対応できる目地構造の開発が望まれている。
【0009】
この発明は、かかる従来技術の問題と要望に鑑みてなされたものであって、上下に分割されたケーソンに対しても施工時のケーソンのずれや据え付け後のケーソンに変位が生じてもシール性を保持することができる上下分割ケーソン用目地構造およびその施工法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためこの発明の請求項1記載の上下分割ケーソン用目地構造は、上下に分割され隣接して配設されたケーソン間の目地に縦方向に配設され、該目地の幅よりも広幅の板状の内側目地材と、この内側目地材を覆うように配設され外側面が平坦なコンクリート台座と、このコンクリート台座の外側面に前記目地を挟んで配設固定され、伸縮部を備える外側目地材とからなることを特徴とするものである。
この上下分割ケーソン用目地構造によれば、上下に分割され隣接して配設されたケーソン間の目地に縦方向に、該目地の幅よりも広幅の板状の内側目地材を配設し、この内側目地材を覆うように外側面が平坦なコンクリート台座を配設し、このコンクリート台座の外側面に前記目地を挟んで伸縮部を備える外側目地材を配設して固定するようにしており、目地の前後を内側目地材で塞いで、その上にコンクリート台座を打設して外側を平坦にすることで、分割されたケーソンのずれを吸収するようにし、平坦なコンクリート台座を介して外側に外側目地材と取り付けて遮水性の確保および地震時等の変位への対応ができるようにしている。
【0011】
また、この発明の請求項2記載の上下分割ケーソン用目地構造は、請求項1記載の構成に加え、前記コンクリート台座には、変位時の割れを誘発する切込み部を形成してあることを特徴とするものである。
この上下分割ケーソン用目地構造によれば、前記コンクリート台座には、変位時の割れを誘発する切込み部を形成してあり、地震時等の大きな力が加わる場合には、切込み部によって割れを誘発することで、損傷を抑え、外側目地材でシール性を確保するようにしている。
【0012】
さらに、この発明の請求項3記載の上下分割ケーソン用目地構造は、請求項1または2記載の構成に加え、前記コンクリート台座には、外側目地材を固定するアンカーを、目地を挟んで埋設してなることを特徴とするものである。
この上下分割ケーソン用目地構造によれば、前記コンクリート台座には、外側目地材を固定するアンカーを、目地を挟んで埋設してあり、アンカーによって容易かつ強固に外側目地材をコンクリート台座に取り付けることができるようにしている。
【0013】
また、この発明の請求項4記載の上下分割ケーソン用目地構造は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記内側目地材および前記コンクリート台座は、海側では縦方向の目地およびフーチング全面を覆って設置して構成したことを特徴とするものである。
この上下分割ケーソン用目地構造によれば、海側では縦方向の目地およびフーチング全面を覆って目地構造を設置することで、完全な遮水性を確保できるようにしている。
【0014】
さらに、この発明の請求項5記載の上下分割ケーソン用目地構造は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記内側目地材および前記コンクリート台座は、陸側では縦方向の目地を覆って設置するとともに、これらに連結して陸側フーチング上に遮水工を設置して構成したことを特徴とするものである。
この上下分割ケーソン用目地構造によれば、陸側では内側目地材およびコンクリート台座を縦方向の目地部分に設置し、これに連結して陸側フーチング上に遮水工を施工することで、海水の遮水性だけでなく、埋め立てなどにともなう他の液体などの廃棄物のシール性を確保できるようになる。
【0015】
また、この発明の請求項6記載の上下分割ケーソン用目地構造の施工法は、上下に分割され隣接して配設されたケーソン間の縦方向の目地構造を施工するに際し、下段の隣接して配設されたケーソン間の目地に縦方向に、該目地の幅よりも広幅の板状の内側目地材を配設固定した後、この内側目地材を覆うように外側面が平坦なコンクリート台座を打設構築し、次いで、このコンクリート台座に前記目地を挟んで伸縮部を備える外側目地材を配設固定した後、下段のケーソン上に上段のケーソンを目地同士を略合わせて設置し、この上段の隣接するケーソン間の目地に縦方向に前記内側目地材に連結して目地の幅より広幅の板状の上段用の内側目地材を配設固定した後、この上段の内側目地材を覆うとともに、前記コンクリート台座と連続する外側面が平坦なコンクリート台座を上段に打設構築し、次いで、このコンクリート台座の上段の外側面に、前記外側目地材を伸ばして目地を挟んで配設固定するようにしたことを特徴とするものである。
この上下分割ケーソン用目地構造の施工法によれば、下段のケーソン間の縦方向の目地を内側目地材で塞ぎ、その上にコンクリート台座を打設し、その平坦な外側に外側目地材を設置して遮水状態とした後、上段のケーソンを設置し、内側目地材を連結して設置するとともに、コンクリート台座も連結して打設し、コンクリート台座の外側には、連続した外側目地材を伸ばして固定することで、分割されたケーソンのずれを吸収するように施工でき、平坦なコンクリート台座を介して外側に一体に連続した外側目地材を取り付けて遮水性の確保および地震時等の変位への対応ができるようになる。
【0016】
さらに、この発明の請求項7記載の上下分割ケーソン用目地構造の施工法は、請求項6記載の構成に加え、前記コンクリート台座には、変位時の割れを誘発する切込み部を形成して打設構築するようにしたことを特徴とするものである。
この上下分割ケーソン用目地構造の施工法によれば、前記コンクリート台座には、変位時の割れを誘発する切込み部を形成して打設構築するようにしており、地震時等の大きな力が加わる場合には、切込み部によって割れを誘発するように施工でき、損傷を抑え、外側目地材でシール性を確保できるようになる。
【0017】
また、この発明の請求項8記載の上下分割ケーソン用目地構造の施工法は、請求項6または7記載の構成に加え、前記下段の内側目地材および前記コンクリート台座は、海側では縦方向の目地およびフーチング全面を覆って設置するようにし、陸側では縦方向の目地を覆って設置するようにしたことを特徴とするものである。
この上下分割ケーソン用目地構造の施工法によれば、前記下段の内側目地材および前記コンクリート台座は、海側では縦方向の目地およびフーチング全面を覆って設置するようにし、陸側では縦方向の目地を覆って設置するようにしており、目地の海側および陸側の両方で中詰材の流出を防止し、遮水性を確保できるようになる。
【発明の効果】
【0018】
この発明の請求項1記載の上下分割ケーソン用目地構造によれば、上下に分割され隣接して配設されたケーソン間の目地に縦方向に、該目地の幅よりも広幅の板状の内側目地材を配設し、この内側目地材を覆うように外側面が平坦なコンクリート台座を配設し、このコンクリート台座の外側面に前記目地を挟んで伸縮部を備える外側目地材を配設して固定したので、目地の前後を内側目地材で塞いで、その上にコンクリート台座を打設して外側を平坦にすることで、分割されたケーソンのずれを吸収することができ、平坦なコンクリート台座を介して外側に外側目地材を取り付けることで、遮水性の確保および地震時等の変位への対応ができる。
【0019】
また、この発明の請求項2記載の上下分割ケーソン用目地構造によれば、前記コンクリート台座には、変位時の割れを誘発する切込み部を形成したので、地震時等の大きな力が加わる場合には、切込み部によってコンクリート台座の割れを誘発することで、損傷を抑えることができ、外側目地材でシール性を確保することができる。
【0020】
さらに、この発明の請求項3記載の上下分割ケーソン用目地構造によれば、前記コンクリート台座には、外側目地材を固定するアンカーを、目地を挟んで埋設したので、アンカーによって容易かつ強固に外側目地材をコンクリート台座に取り付けることができる。
【0021】
また、この発明の請求項4記載の上下分割ケーソン用目地構造によれば、前記内側目地材および前記コンクリート台座は、海側では縦方向の目地およびフーチング全面を覆って設置して構成したので、海側の完全な遮水性を確保することができる。
【0022】
さらに、この発明の請求項5記載の上下分割ケーソン用目地構造によれば、前記内側目地材および前記コンクリート台座は、陸側では縦方向の目地を覆って設置するとともに、これらに連結して陸側フーチング上に遮水工を設置して構成したので、陸側で海水の遮水性を確保するだけでなく、埋め立てなどにともなう他の液体などのシール性を確保することができる。
【0023】
また、この発明の請求項6記載の上下分割ケーソン用目地構造の施工法によれば、上下に分割され隣接して配設されたケーソン間の縦方向の目地構造を施工するに際し、下段の隣接して配設されたケーソン間の目地に縦方向に、該目地の幅よりも広幅の板状の内側目地材を配設固定した後、この内側目地材を覆うように外側面が平坦なコンクリート台座を打設構築し、次いで、このコンクリート台座に前記目地を挟んで伸縮部を備える外側目地材を配設固定した後、下段のケーソン上に上段のケーソンを目地同士を略合わせて設置し、この上段の隣接するケーソン間の目地に縦方向に前記内側目地材に連結して目地の幅より広幅の板状の上段用の内側目地材を配設固定した後、この上段の内側目地材を覆うとともに、前記コンクリート台座と連続する外側面が平坦なコンクリート台座を上段に打設構築し、次いで、このコンクリート台座の上段の外側面に、前記外側目地材を伸ばして目地を挟んで配設固定するようにしたので、下段のケーソン間の縦方向の目地を内側目地材で塞ぎ、その上にコンクリート台座を打設し、その平坦な外側に外側目地材を設置して遮水状態とした後、上段のケーソンを設置し、内側目地材を連結して設置するとともに、コンクリート台座も連結して打設し、コンクリート台座の外側に連続した外側目地材を伸ばして固定することで、分割されたケーソンのずれを吸収するように施工することができ、平坦なコンクリート台座を介して外側に一体に連続した外側目地材を取り付けて遮水性の確保および地震時等の変位への対応を可能に施工することができる。
【0024】
さらに、この発明の請求項7記載の上下分割ケーソン用目地構造の施工法によれば、前記コンクリート台座には、変位時の割れを誘発する切込み部を形成して打設構築するようにしたので、震時等の大きな力が加わる場合には、切込み部によって割れを誘発するように施工することができ、コンクリート台座の損傷を抑え、外側目地材でシール性を確保することができる。
【0025】
また、この発明の請求項8記載の上下分割ケーソン用目地構造の施工法によれば、前記下段の内側目地材および前記コンクリート台座は、海側では縦方向の目地およびフーチング全面を覆って設置するようにし、陸側では縦方向の目地を覆って設置するようにしたので、目地の海側および陸側の両方で中詰材の流出を防止し、遮水性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
図1〜図5はこの発明の上下分割ケーソン用目地構造およびその施工法の一実施の形態にかかり、図1は拡大横断面図、図2〜図5は一連の工程説明図であって図2および図3は下段のケーソンに対する各工程の概略斜視図、図4および図5は上段のケーソンに対する各工程の概略斜視図である。
【0027】
この上下分割ケーソン用目地構造(以下、単に目地構造とする)10では、図1に示すように、上下に分割され隣接して配設されたケーソン2,2間の目地3に縦方向に、この目地3の幅よりも広幅の板状の内側目地材11を配設し、この内側目地材11の外側を覆うように、外側面が平坦なコンクリート台座12を配設し、さらに,このコンクリート台座12の平坦な外側面12aに目地3を挟んでケーソン2、2に跨って伸縮部13aを備える外側目地材13を配設して固定することで、遮水しシールするものであり,目地3の前後両側である海側および陸側の両方に設け、内側目地材11、11で塞がれた目地3の間には、アスファルトマスチック等の充填材14を充填して構成される。
【0028】
この発明の目地構造10の適用対象である上下に分割され隣接して配置されるケーソン2、2では、既に図7で説明したように、その据え付けにあたってずれ(位置ずれ)が発生すること、および上段のケーソン2bを据え付ける場合には、航路とした下段のケーソン2aの両側に通常のケーソン1,1が据え付けてあるため目地間が狭いことから、これらケーソン2の位置ずれおよび狭い目地間を考慮する必要がある。
【0029】
そこで、この目地構造10では、ケーソン2、2の目地3の海側および陸側の両方に目地材を目地3を挟んで隣接するケーソン2,2を跨ぐように配設している。すなわち、この目地構造10では、例えば図1に示すように、ケーソン2、2の目地3に沿って両側にアンカーボルト15を一定間隔で取り付け、目地3より幅が広い内側目地材11を前後端(海側端および陸側端)の目地3を塞ぐパッキンとして機能するよう配置して帯状の押え板16を当てナット17で締付けて固定する。
【0030】
この目地3を塞ぐパッキンとなる内側目地材11は、ゴムや合成ゴム、合成樹脂等の弾性体からなる板状のもので、厚さ方向の中間部に合成繊維等による補強層が埋設されて構成してあり、目地3の幅より広幅とし、両側縁部をアンカーボルト15によってケーソン2、2に取り付け可能な幅としてある。
【0031】
このような内側目地材11を用いることで、左右、あるいは上下に据え付けられるケーソン2,2に位置ずれ(左右、前後の位置ずれ)があっても支障なく目地3の前後端を塞ぐことができる。
【0032】
この内側目地材11の外側には、コンクリート台座12が打設することで設けられ、外側面12aが平坦となるように形成され、ケーソン2、2の目地3の幅および内側目地材11の幅に比べて十分広幅に形成されるとともに、その外側面12aに外側目地材13を埋め込みアンカー18を介して取り付けることができる厚さに形成してある。これにより、内側面に左右、上下に据え付けられるケーソン2、2間の位置ずれが生じてもこれを吸収することができ、しかも平坦な外側面12aに簡単に外側目地材13を取り付けることができるようになる。
【0033】
また、このコンクリート台座12には、目地3と対応する位置に目地3に沿って外側面12aに開口する切込み部19が形成してあり、据え付け後のケーソン2、2に加わる変位に対してこの切込み部19から割れを誘発することで、大きな損傷が生じないようにしてある。
【0034】
このコンクリート台座12の平坦に形成された外側面12aには、ゴムや合成ゴム、合成樹脂等の弾性体からなる板状で、幅方向の端部に略U字状に突き出すように成形された伸縮部13aを備えるとともに、厚さ方向の中間部に合成繊維等による補強層が埋設されて構成した外側目地材13が取り付けられる。この外側目地材13は、内側目地材11に比べて広幅とされ、コンクリート台座12の切込み部19での割れ等が生じても支障なく目地3のシール性を確保できるようにしてある。そして、埋め込みアンカー18としてコンクリート台座12の打設時に高さの高い高ナットが用いられ、外側目地材13が押え板20を介してボルト21で取り付けてある。
【0035】
このような目地構造10によれば、目地3の前後を内側目地材11で塞いで、その上にコンクリート台座12を打設して外側面12aを平坦にすることで、分割されたケーソン2,2のずれを吸収することができ、平坦なコンクリート台座12の外側面12aを介して外側に外側目地材13を取り付けることで、遮水性の確保および地震時等の変位に対応することができる。
【0036】
また、コンクリート台座12には、変位時の割れを誘発する切込み部19を形成したので、地震時等の大きな力が加わる場合には、切込み部19によってコンクリート台座19の割れを誘発することで、コンクリート台座12の損傷を抑えることができ、外側目地材13で地震時等の大きな力が加わる場合のシール性を確保することができる。
【0037】
さらに、コンクリート台座12には、外側目地材13を固定する埋め込みアンカー18を、目地3を挟んで埋設したので、埋め込みアンカー18としての高ナットに押え板20を介してボルト21で取り付けることによって容易かつ強固に外側目地材13をコンクリート台座12に取り付けることができる。
【0038】
なお、この目地構造10では、後述するように、内側目地材11およびコンクリート台座12は、海側では縦方向の目地3およびケーソン2、2のフーチング2c,2cの全面を覆って設置するようにして、海側の完全な遮水性を確保する。
【0039】
さらに、この目地構造10では、後述するように、内側目地材11およびコンクリート台座12は、陸側では縦方向の目地3を覆って設置するとともに、これらに連結してケーソン2、2の陸側フーチング2c,2c上に遮水工22を設置するようにして、陸側で海水の遮水性を確保するだけでなく、埋め立てなどにともなう他の廃液などの液体のシール性を確保するようにする。
【0040】
次ぎに、この目地構造10の施工法について、図2〜図5に基づいて詳細に説明する。
この上下分割ケーソン用目地構造の施工法は、船舶を通過させる必要のある部分に上下に分割したケーソン2、2の下段のケーソン2a、2aを捨石基礎上に、図2(a)に示すように、目地3を介して順次設置する。捨石基礎上に遮水板およびアスファルトマットを敷設し、陸上で作った下段のケーソン2a,2aを海上輸送して設置する。この下段のケーソン2aの設置の際、隣接する下段のケーソン2a、2a間には、前後のずれxと上下のずれzや目地3の間隔のずれが生じることになることから、これらのずれ量が設計範囲内であることを計測して確認する。そして、進水用吊り金具を水中切断した後、ケーソン2a内に中詰砂や割石の投入を行う。
【0041】
この後、この目地構造10の施工法では、図2(b)に示すように、目地3の前後を塞いでパッキンとなる、目地3の幅より広幅のゴム板等で構成された内側目地材11をアンカーボルト15および帯状の押え板16を介してナット17で取り付ける。この内側目地材11は、海側では、隣接するケーソン2a、2aの縦方向の目地3に加え、フーチング2c、2cの表面全体を塞ぐように取り付けるとともに、陸側では縦方向の目地3を塞ぐように取り付ける。
【0042】
これにより、隣接するケーソン2a、2aに前後のずれxや上下のずれzがあっても目地3の前後をパッキンとなる内側目地材11で塞いでシール状態にすることができる。
【0043】
次ぎに、図3(a)に示すように、内側目地材11の外側を覆ってケーソン2a、2aのずれを吸収して外側面12aが平坦なコンクリート台座12を打設・構築するため、補強用の配筋および台座用型枠の設置を行うとともに、埋め込みアンカー18とする高ナットを設置し、コンクリートを打設する。また、このコンクリート台座12の打設の際、目地3に対応する外側面12aに切込み部19を形成するようにしておく。
【0044】
このコンクリート台座12も内側目地材11と同様に、海側では、隣接するケーソン2a、2aの縦方向の目地3に加え、フーチング2c、2cの表面全体を塞ぐように内側目地材11を覆うように取り付けるとともに、陸側では縦方向の目地3を塞ぐように内側目地材11を覆うように取り付ける(図3(a)参照)。
【0045】
これにより、隣接するケーソン2a、2aに前後のずれxや上下のずれzがあっても目地3の前後にコンクリート台座12の外側面12aによる平坦面を確保することができ、これまでの一体型のケーソン用目地材を適用して目地3をシールすることが可能となる。
【0046】
こうしてコンクリート台座12を打設・構築した後、図3(b)に示すように、コンクリート台座12の平坦な外側面12aに伸縮部13aを備えた外側目地材13で覆うようにし、目地3を挟む両側の端縁部を押え板20を介して埋め込みアンカー18とした高ナットにボルト21で取り付ける。この外側目地材13としては、これまでのケーソン用目地材と同様に、上下のケーソン2a、2bの目地の全長を覆うことができる長さのものを用い、上段のケーソン2b用の部分は巻き重ねた状態、又は下方へ伸ばした状態としておく。
【0047】
なお、この外側目地材13自体は、複数に分割成形したものを連結して必要な長さとしても、全長分を一体に成形したものの何れでも良い。
【0048】
さらに、陸側のケーソン2aのフーチング2c上には、コンクリート台座12に連続させて遮水工22を設置するとともに、継目部分にアスファルトマスチック23で覆ってシールする(図3(b)参照)。
【0049】
このような目地構造の施工法によれば、隣接する下段のケーソン2a、2a間の目地3の前後を内側目地材11で塞ぎ、外側面12aが平坦なコンクリート台座12を打設・構築し、このコンクリート台座12に予め埋め込んだ埋め込みアンカー18に外側目地材13を取り付けるようにしたので、下段のケーソン2a、2aの目地3部分にずれが生じてもこれを吸収してコンクリート台座12の外側面12aを平坦にすることで、埋め込みアンカー18を利用して簡単に外側目地材13を取り付けて遮水することができる。
【0050】
また、設置後、ケーソン2a、2aの変位によってコンクリート台座12が追従できずに割れ等が発生してもその外側に取り付けた外側目地材13が追従してシール性を保持することができる。
【0051】
こうして下段のケーソン2a、2aの据え付けを完了した後、ケーソンによる護岸等の完成に合わせて船舶の通過の必要がなくなると、上段のケーソン2b、2bの据え付けが行われる。
【0052】
上段のケーソン2bを据え付けるため、下段のケーソン2a内に複数の函内コンクリート型枠の設置や据え付けガイドの取り付けなどの準備を行った後、陸上で造った上段のケーソン2bを海上輸送し、図4(a)に示すように、下段のケーソン2a、2aの目地3と略一致するよう上段のケーソン2bを据え付ける。目地材11をケーソン両側(海側・廃棄物側)に取り付けることにより、アスファルトの流出を防ぎ、遮水工を形成する。
【0053】
一方、上段のケーソン2b、2bの外側では、図4(b)に示すように、下段の場合と同様に、下段の内側目地材11の端部に上段の内側目地材11の端部を重ねるように連結し、アンカーボルト15を打ち込んで押え板16を当ててナット17で締め付けて固定することで、目地3の前後を塞いだ状態とする。これにより、上段の隣接するケーソン2b、2b間に前後方向のずれxや上下方向のずれz、左右方向のずれyが生じてもこれを吸収した状態で目地3の前後を内側目地材11でパッキンのように塞ぐことができる。
【0054】
こうして目地3の前後を内側目地材11で塞いだ後、下段のコンクリート台座12と連続させ、平坦な外側面12aが連続するようにコンクリート台座12用の配筋、埋め込みアンカー18となる高ナットの設置などを行うとともに、型枠を設置し、図5 (a)に示すように、コンクリートを打設して上下段一体のコンクリート台座12を構築する。この上段の目地3に対応するコンクリート台座12にも切込み部19を形成する。
【0055】
この後、図5(b)に示すように、上段に位置するコンクリート台座12に下段のコンクリート台座12に取り付けて巻き重ねてある、又は下方へ伸ばしてある外側目地材13を巻き戻すようにしてコンクリート台座12を覆って目地3を挟む両側のケーソン2b、2bに跨るように配置し、埋め込みアンカー18としての高ナットに押え板20を当ててボルト21で締め付けて取り付ける。これにより、コンクリート台座12には、伸縮部13aを備えた外側目地材13が目地を挟んで取り付けられるので、簡単に外側目地材13を取り付けて目地3を遮水することができる。
【0056】
また、設置後、ケーソン2b、2bの変位によってコンクリート台座12が追従できずに切込み部19で誘発されて割れ等が発生してもその外側に取り付けた外側目地材13が追従してシール性を保持することができる。
【0057】
こうして外側目地材13をケーソン2、2の目地3の前後に取り付けた後、目地3には、アスファルトマスチックによる充填材14が注入されるとともに、上段のケーソン2b内には、中詰砂26が投入された後、進水用吊り金具が切断され、上端開口部が蓋コンクリート27の打設によって塞がれ、通常のケーソン1と上下分割ケーソン2による護岸が完成する。
【0058】
このような上下分割ケーソン用目地構造の施工法によれば、下段のケーソン2a,2a間の縦方向の目地3を内側目地材11で塞ぎ、その上にコンクリート台座12を打設し、その平坦な外側面12aに外側目地材13を設置して遮水状態とした後、上段のケーソン2bを設置し、内側目地材11を連結して設置するとともに、コンクリート台座12も連結して打設し、コンクリート台座12の外側の連続した外側面12aに外側目地材13を伸ばして固定することで、分割されたケーソン2,2のずれを吸収するように施工することができ、平坦な外側面12aのコンクリート台座12を介して外側に伸縮部13aを備え一体に連続した外側目地材13を取り付けて遮水性の確保および地震時等の変位への対応を可能に施工することができる。
【0059】
さらに、コンクリート台座12に変位時の割れを誘発する切込み部19を形成して打設構築するようにしたので、地震時等の大きな力が加わる場合には、切込み部19によって割れを誘発するように施工することができ、コンクリート台座12の損傷を抑え、外側目地材13でシール性を確保することができる。
【0060】
また、この上下分割ケーソン用目地構造の施工法によれば、下段の内側目地材11およびコンクリート台座12は、海側では縦方向の目地3およびフーチング2c,2cの全面を覆って設置するようにし、陸側では縦方向の目地3を覆って設置するようにしたので、目地3の海側および陸側の両方で海水の遮水性を確保して施工することができる。
【0061】
以上のように、この発明の上下分割ケーソン用目地構造およびその施工法によれば、上下に分割したケーソン2を用いることで、ケーソン1,2よる護岸の完成までの間、下段のケーソン2aだけを据え付けておくことで、船舶の通過を許容することができ、しかも上下に分割されたケーソン2に対しても施工時のケーソン2a,2bのずれや据え付け後のケーソン2a,2bに変位が生じても外側目地材13によってシール性を保持することができる。
【0062】
なお、内側目地材および外側目地材の形状については、上記各実施形態のものに限定されるものではなく、内側目地材は、ケーソン間の目地幅よりも広幅の変形可能な材料からなるものであれば良く、外側目地材は、伸縮部を備えてコンクリート台座に目地を挟む両側のケーソンに跨る幅のものであれば、他の形状のものでも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】この発明の上下分割ケーソン用目地構造およびその施工法の一実施の形態にかかる拡大横断面図である。
【図2】この発明の上下分割ケーソン用目地構造およびその施工法の一実施の形態にかかる一連の工程説明図であって、下段のケーソンに対する各工程の概略斜視図である。
【図3】この発明の上下分割ケーソン用目地構造およびその施工法の一実施の形態にかかる一連の工程説明図であって、下段のケーソンに対する各工程の概略斜視図である。
【図4】この発明の上下分割ケーソン用目地構造およびその施工法の一実施の形態にかかる一連の工程説明図であって、上段のケーソンに対する各工程の概略斜視図である。
【図5】この発明の上下分割ケーソン用目地構造およびその施工法の一実施の形態にかかる一連の工程説明図であって、上段のケーソンに対する各工程の概略斜視図である。
【図6】この発明が適用される上下分割ケーソンの概略斜視図である。
【図7】この発明が適用される上下分割ケーソンに生じるずれを説明する概略斜視図である。
【図8】この発明が適用される上下分割ケーソンに従来のケーソン用目地材を適用した場合の説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 通常のケーソン
2 上下割ケーソン
2a 下段のケーソン
2b 上段のケーソン
2c フーチング
3 目地
10 上下分割ケーソン用目地構造(目地構造)
11 内側目地材
12 コンクリート台座
12a 外側面
13 外側目地材
13a 伸縮部
14 充填材
15 アンカーボルト
16 押え板
17 ナット
18 埋め込みアンカー(高ナット)
19 切込み部
20 押え板
21 ボルト
22 遮水工
23 アスファルトマスチック
24 鉄骨型枠
25 アスファルトマスチック
26 中詰砂
27 蓋コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に分割され隣接して配設されたケーソン間の目地に縦方向に配設され、該目地の幅よりも広幅の板状の内側目地材と、
この内側目地材を覆うように配設され外側面が平坦なコンクリート台座と、
このコンクリート台座の外側面に前記目地を挟んで配設固定され、伸縮部を備える外側目地材とからなることを特徴とする上下分割ケーソン用目地構造。
【請求項2】
前記コンクリート台座には、変位時の割れを誘発する切込み部を形成してあることを特徴とする請求項1記載の上下分割ケーソン用目地構造。
【請求項3】
前記コンクリート台座には、外側目地材を固定するアンカーを、目地を挟んで埋設してなることを特徴とする請求項1または2記載の上下分割ケーソン用目地構造。
【請求項4】
前記内側目地材および前記コンクリート台座は、海側では縦方向の目地およびフーチング全面を覆って設置して構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の上下分割ケーソン用目地構造。
【請求項5】
前記内側目地材および前記コンクリート台座は、陸側では縦方向の目地を覆って設置するとともに、これらに連結して陸側フーチング上に遮水工を設置して構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の上下分割ケーソン用目地構造。
【請求項6】
上下に分割され隣接して配設されたケーソン間の縦方向の目地構造を施工するに際し、
下段の隣接して配設されたケーソン間の目地に縦方向に、該目地の幅よりも広幅の板状の内側目地材を配設固定した後、
この内側目地材を覆うように外側面が平坦なコンクリート台座を打設構築し、
次いで、このコンクリート台座に前記目地を挟んで伸縮部を備える外側目地材を配設固定した後、
下段のケーソン上に上段のケーソンを目地同士を略合わせて設置し、
この上段の隣接するケーソン間の目地に縦方向に前記内側目地材に連結して目地の幅より広幅の板状の上段用の内側目地材を配設固定した後、
この上段の内側目地材を覆うとともに、前記コンクリート台座と連続する外側面が平坦なコンクリート台座を上段に打設構築し、
次いで、このコンクリート台座の上段の外側面に、前記外側目地材を伸ばして目地を挟んで配設固定するようにしたことを特徴とする上下分割ケーソン用目地構造の施工法。
【請求項7】
前記コンクリート台座には、変位時の割れを誘発する切込み部を形成して打設構築するようにしたことを特徴とする請求項6記載の上下分割ケーソン用目地構造の施工法。
【請求項8】
前記下段の内側目地材および前記コンクリート台座は、海側では縦方向の目地およびフーチング全面を覆って設置するようにし、陸側では縦方向の目地を覆って設置するようにしたことを特徴とする請求項6または7記載の上下分割ケーソン用目地構造の施工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−174137(P2009−174137A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11568(P2008−11568)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000196624)西武ポリマ化成株式会社 (60)
【Fターム(参考)】