説明

上下分割ドア

【課題】上ドア部と下ドア部とをずれやがたつき等を発生させず一体として開閉することができる上下分割ドアを提供する。
【解決手段】連結固定部7によって、上ドア部3及び下ドア部6を一体に連結する。連結固定部7は、上ドア部3に対して下ドア部6を引き寄せてこれらの間に押圧力を発生させた状態で連結させる機構である。これによって、下ドア部6が垂れ下がったり、ドア部同士が前後にぐらつかない。また、ドア部同士が同面で納まる。以上によって、通風を得るためにドアを開放しても、内部に視線を通さず、上ドア部3と下ドア部6との連結時には、ずれやがたつき等を発生させず、上ドア部3と下ドア部6とを一体とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上ドア部及び下ドア部を備える上下分割ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
建物において、風が入る窓と出る窓の大きさのバランスが悪い場合、自然通風の確保は困難なものとなる。多くの住宅では、南面に大きな窓を設ける等して風が入る側の窓はあるが、当該南面からの風に対する出る側の窓としては、一般に北側に設けられる部屋の窓が考えられるが、当該窓のみでは風の出る窓として十分とはいえない。その結果、多くの住居では風が思うように通り抜けず通風が悪い。一方で、当該北側に水廻り空間の洗面所や浴室が設けられる場合が多く、これら水廻り空間の小窓も風が抜ける側の窓として利用できれば、抜ける側の窓の総計は増えるので通風しやすくなる。そのためには、例えば洗面所のドア部が通風に用いられるが、当該ドアを開いた状態では中が見えることになり、常時開放し難い。
【0003】
かかる問題を解決すべく、ドアを閉じた状態において通風を確保する目的で、従来、ドアの上部に回転欄間をつけた構成が知られている。この欄間を開放することによって、通風、換気を取ることができる。しかし、このような構成では、風が天井付近の室内の上方空間を流れることとなり、居住者の身体に当たりにくい。また、この種の回転欄間はドア上部に付くので、マンション住戸の如く梁が天井から露出し、天井高さがとれないような住宅建物の場合、通風換気をとるのに十分な大きさの欄間は確保されない。また、トイレ・洗面所用のドアの下部には換気ガラリを設けた構成も知られているが、通風に要する開放面積が小さく、換気にはなるが通風には寄与しにくい。また、換気ガラリの桟やルーバーに埃が溜まってしまい、また、その埃も取り難いという問題もある。
【0004】
上述のような問題点の中、通風性を確保しうる建具として、例えば特許文献1に示すものが知られている。特許文献1には、上ドア部と下ドア部が設けられており、各ドア部が互いに独立して開閉可能な上下分割ドアが記載されており、一方のドアを開き、他方のドアを閉じることで、視認性に配慮しつつ、通性も確保することができるものとなっている。この上下分割ドアは、上ドア部の下端部と下ドア部の上端部とを突き合わせた状態で接続解除可能に接続する接続手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−314952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の上下分割ドアにおける接続手段は上ドア部から下ドア部に向けて出退可能なロックピンと、該ロックピンを受ける保持筒部をしたドア部に設けた構成である。すなわち、ロックピンを保持筒部に挿入することで、ドアの回転方向に対しては、上ドア部及び下ドア部同士を一応連結することができるが、垂直方向には何ら固定されない。このため、上ドア部と下ドア部の連結時に、特に下ドア部には、ヒンジ部の位置やドアの幅によってはヒンジ部と反対側の端部(自由端側)が自重により僅かに垂れ下がることが考えられる。これによって、上ドア部と下ドア部とを連結したとしても、当該連結部間にはヒンジ部側の端部から自由端側に向けて斜め状の隙間が形成されてしまい、上下ドア部を一体としているにもかかわらずこれらの隙間から光や隙間風が漏れてしまうことが考えられる。また、当該隙間が大なるものとなると、これによってロックピンの突出位置と保持部材の穴の位置がずれてしまい、上下ドア部を連結することができないおそれもある。
【0007】
また、上述の如きロックピン及び保持筒部による構造では、接触部の遊び(すなわち、保持筒部の内周とロックピンの外周との間の隙間)が大きく、上下ドア部を連結したとしても、ドアの回転の慣性力によって一方のドアを静止させたとしても他方のドア部はその静止に遅れて静止することとなり、これによってドアの開閉時にがたつきを生じてしまうという問題もある。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、上ドア部と下ドア部とをずれやがたつき等を発生させず一体として開閉することができる上下分割ドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る上下分割ドアは、上下方向に延びる軸芯を有する上ヒンジ部に支持される上ドア部と、上下方向に延びる軸芯を有する下ヒンジ部に支持される下ドア部と、を備える上下分割ドアであって、上ドア部と下ドア部との間には、上ドア部及び下ドア部を一体に連結する連結固定手段が設けられており、連結固定手段は、上ドア部に対して下ドア部を引き寄せた状態であって、且つ、上ドア部と下ドア部との間に押圧力を発生させた状態で、上ドア部及び下ドア部を一体に連結することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る上下分割ドアによれば、上ドア部は上ヒンジ部に支持され、下ドア部は下ヒンジ部に支持されるため、上ドア部と下ドア部は、それぞれが独立して開閉可能である。また、連結固定手段によって、上ドア部及び下ドア部を一体に連結することができる。通風要望は季節によってかわるので、その機能が不用のときは、上ドア部と下ドア部とが一体になり簡単に普通のドアになる。連結固定手段は、上ドア部に対して下ドア部を引き寄せてこれらの間に押圧力を発生させた状態で連結させる機構である。これによって、下ドア部が垂れ下がったり、ドア部同士が前後にぐらついたりせず、静止中はもちろん開閉中も両ドア部の一方の側面同士及び他側面の側面同士を常に一致させた状態に維持することができる。以上によって、通風を得るために一方のドアを開放することができ、且つ、上ドア部と下ドア部との連結時には、これらの間でずれやがたつき等を発生させず、上ドア部と下ドア部とを一体とすることができる。
【0011】
本発明に係る上下分割ドアにおいて、連結固定手段は、下ドア部に設けられた引掛け部と、上ドア部に設けられ、引掛け部に引っ掛かった第1の姿勢から引っ掛かりを解除した第2の姿勢まで可動するフック部と、を備え、該フック部には、第1の姿勢で引掛け部を上ドア部に向けて引き寄せる引寄せ機構が設けられていることが好ましい。このような構成により、フック部を引掛け部に係合させ、引き寄せ機構により引掛け部を引き寄せるだけで容易に下ドア部を上ドア部に引き寄せた状態で固定することができる。
【0012】
本発明に係る上下分割ドアにおいて、引寄せ機構は、フック部の基端部に連結されて上ドア部に枢支される回転中心部と、該回転中心部から突出して設けられて引掛け部に引っ掛かるアームと、を備え、アームは、第1の姿勢において引掛け部に対向又は当接する面に形成される円弧状の円弧面部を有し、円弧面部の先端部と回転中心部の回転中心軸線までの距離が当該回転中心軸線から引掛け部までの距離よりも大きく設定されると共に、円弧面部の基端部と回転中心軸線までの距離が、当該回転中心軸線から引掛け部までの距離よりも小さく設定され、且つ、先端部と基端部とを円弧状に連結することによって円弧面部が形成され、回転中心軸線からの前記円弧面部の回転半径は、アームの先端から基端に向かって徐々に小さくなることが好ましい。当該フック部を回転させることにより、フック部を引掛け部に引掛けた第1の姿勢と解除した第2の姿勢との間で容易に姿勢変更をすることができるものとなる。また、円弧面部の先端部と回転中心部の回転中心軸線までの距離が当該回転中心軸線から引掛け部までの距離よりも大きく設定されるため、アームがスムーズに引掛け部に引っ掛かる。一方、円弧面部の基端部と回転中心軸線までの距離が、当該回転中心軸線から引掛け部までの距離よりも小さく設定されるため、引掛け部を円弧面部の基端部側に当接させることで、円弧面部が引掛け部を持ち上げる状態となる。また、このように設定された先端部と基端部とを連結することによって円弧面部が形成されており、更に、円弧面部の回転中心軸線からの回転半径は、アームの先端から基端に向かって徐々に小さくなる。円弧面部がこのように構成されることにより、引掛け部にフック部を引掛けた状態でさらにフック部を引掛け方向に回転させると、円弧面部が引掛け部に当接することとなる。その後、さらにフック部を回転させることにより、円弧面部が引掛け部を持ち上げることとなる。これによって、引掛け部がフック部の回転中心部に引き寄せられ、ひいては下ドア部が上ドア部に引き寄せられることとなる。
【0013】
本発明に係る上下分割ドアにおいて、引掛け部には、円弧面部に対向/当接する位置に隆起部が設けられていることが好ましい。当該隆起部が円弧面部に接触するため、当該引掛け部と円弧面部との接触面積が増大することとなり、これにより、より容易に(小さな力で)円弧面部による引掛け部の持ち上げ状態を実現できることとなる。
【0014】
本発明に係る上下分割ドアにおいて、上ドア部の下端部と下ドア部の上端部のいずれか一方には、当該一方に係るドア部の厚さよりも小さい厚さを有する突出部が一側部から他側部に亘って設けられ、いずれか他方には、上ドア部及び下ドア部を一体とさせた状態で突出部を収容可能な欠込み部が一側部から他側部に亘って設けられており、上ドア部の下端面から下ドア部の上端面に亘って連結固定手段が設けられていることが好ましい。このような構成によって、上ドア部と下ドア部とを一体に連結した状態において、上ドア部と下ドア部の間の隙間がクランク状を呈することとなり、当該隙間から光の漏れが防止され、すきま風が著しく抑制される。また、突出部と欠込み部とが係合して上下のドア部は一体となるため、一方のドア部を当該欠込み部を超えて他方のドア部よりも向こう側へ回転させることができない。これによって、一方のドア部の回転具合を調整することで、他方のドア部の回転範囲を限定することができ、2つのドア部が全く無関係に全範囲に亘って回転することを防止することができる。
【0015】
本発明に係る上下分割ドアにおいて、上ドア部と下ドア部のいずれか一方には、上ドア部及び下ドア部を一体とさせた状態で、上ドア部の下端部と下ドア部の上端部との間の継ぎ目を覆うカバー部が設けられている。このような構成によって、上ドア部と下ドア部とを一体に固定した状態において、召し合わせ部の隙間から光、風などが漏れることを防止することができる。また、継ぎ目がカバー部で覆われた状態で上下のドア部は一体となるため、一方のドア部を当該カバー部を超えて他方のドア部よりも向こう側へ回転させることができない。これによって、一方のドア部の回転具合を調整することで、他方のドア部の回転範囲を限定することができ、2つのドア部が全く無関係に全範囲に亘って回転することを防止することができる。
【0016】
本発明に係る上下分割ドアにおいて、回転方向における上ドア部と下ドア部との位置を一致させることで、上ドア部と下ドア部とを連結可能とすると共に、上ドア部と下ドア部の何れか一方をいずれか他方に対して相対的に回転させることで連結状態を解除可能とする簡易係脱機構を更に備えることが好ましい。これら上下ドア部の一体状態と分離状態とを頻繁に変更する際には、いちいち上記連結固定手段を操作することが面倒となる。しかし、このような簡易係脱機構を併せて設けることにより、容易にこれらの一時的な上下一体状態/上下分離状態を実現することができる。例えば、下ドア部が開放状態のとき(かつ下ドア部が戸当たり等に固定されている時)、簡易係脱機構によって上ドア部を下ドア部に対して連結状態とすることで、当該簡易係脱機構は、上ドア部の開放状態の維持や固定のための戸当たりの役目を果たす。
【0017】
本発明に係る上下分割ドアにおいて、簡易係脱機構は、上ドア部の下端部と下ドア部の上端部のいずれか一方に設けられたマグネット部と、いずれか他方に設けられた金属製のマグネット受け部とを備えていることが好ましい。これによって、容易に簡易係脱機構を構成することができると共に、上下一体状態/上下分離状態の変更を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、(通風を得るためにドアを開放しても、内部に視線を通さず、)上ドア部と下ドア部との連結時には、ずれやがたつき等を発生させず、上ドア部と下ドア部とを一体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る上下分割ドアの正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る上下分割ドアの上面図である。
【図3】図1に示すIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図3に示すIV―IVに沿った断面図である。
【図5】図4からロックを解除した状態を示す図である。
【図6】図1に示すVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】第2実施形態に係る上下分割ドアの連結固定機構を示す断面図である。
【図8】第3実施形態に係る上下分割ドアの連結固定機構を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る上下分割ドア1の正面図である。図2は、本実施形態に係る上下分割ドア1の上面図である。図3は、図1に示すIII−III線に沿った断面図である。図1においては、上下分割ドア1を部屋(洗面所、浴室など)の内側から外側へ向かって見た状態を示している。図2においては、紙面右側が部屋の内側を示し、紙面左側が部屋の外側を示している。図1においては、上ドア部3及び下ドア部6が閉められた状態が示されている。ただし、下ドア部6のみが開けられた状態が仮想線で示されている(なお、理解を容易にするため完全に開いた状態を示しているが、図2のような戸当たりFがある場合は、それ以上開くことはできない)。図2においては、上ドア部3が閉められ、下ドア部6が開けられた状態が示されている。
【0022】
図1及び図2に示すように、上下分割ドア1は、上ヒンジ部2と、上ヒンジ部2に支持される上ドア部3と、下ヒンジ部4と、下ヒンジ部4に支持される下ドア部6と、上ドア部3と下ドア部6とを一体に連結する連結固定部(連結固定手段)7と、上ドア部3と下ドア部6とを簡易的に連結する簡易係脱機構8と、を備えている。
【0023】
上ドア部3及び下ドア部6は、開口部Hに備え付けられる開口枠を構成する一対の縦枠Ha,Hbのうち、縦枠Hbに上ヒンジ部2及び下ヒンジ部4を介して取り付けられる。上ヒンジ部2は、上ドア部3に対して上下一対設けられており、上ドア部3の一方の側部11a及び開口枠の縦枠Hbに固定される。上ヒンジ部2の軸芯は上下方向に延びている。下ヒンジ部4は、下ドア部6に対して上下一対設けられており、下ドア部6の一方の側部12a及び開口枠の縦枠Hbに固定される。下ヒンジ部4の軸芯は上下方向に延びており、本実施形態では、上ヒンジ部2と下ヒンジ部4の軸芯の位置は一致している。
【0024】
上ドア部3は、上ヒンジ部2の軸芯を中心として回転することによって、下ドア部6から独立して開閉可能に構成されている。下ドア部6は、下ヒンジ部4の軸芯を中心として回転することによって、上ドア部3から独立して開閉可能に構成されている。本実施形態では、上ドア部3及び下ドア部6は、部屋の内側へ向かって開放する。上ドア部3及び下ドア部6を開けた状態とすることにより、開口部Hの全体が開放される。上ドア部3及び下ドア部6を閉じた状態とすることにより、開口部Hの全体が塞がれる(図1に示す状態)。上ドア部3を開けた状態とし、下ドア部6を閉じた状態とすることにより、開口部Hのうち上ドア部3に対応する上側の部分が開放される。上ドア部3を閉じた状態とし、下ドア部6を開けた状態とすることにより、開口部Hのうち下ドア部6に対応する下側の部分が開放される(図2に示す状態)。
【0025】
図2に示すように、上ドア部3を閉じた状態とし、下ドア部6を開けた状態とすることで、下側で部屋の通風を図ると同時に、上側を閉じておくことで外側からの視線を防止することができる。下ドア部6は、ドアの固定機能つき戸当たりFによって動かないように固定されることが好ましい。
【0026】
下ドア部6の高さはおよそ400cm程度で外側からひざ下が見える程度とすることが好ましい。また、下ドア部6と上ドア部3の上下方向は、一定の比率に設定される。本実施形態では、「上ドア部3:下ドア部6=4:1」に設定されている。本実施形態では、下ドア部6は、正面視で縦方向より横方向を大きくして横長形状に形成されている。下ヒンジ部4に連結されて回転の基端側となる一方の端部から回転によって揺動する自由端側たる他方の端部側への下ドア部6の長さが長いほど下ヒンジ部4への過重負担は大きくなり、自由端側が垂れ下がってしまうことが考えられる。従って、下ドア部6のアスペクト比は、下ヒンジ部4への負荷を考慮して設定される。
【0027】
ラッチ13(及びドアノブ)は、上ドア部3にのみ取り付けられている。このラッチ13やドアノブの機構は、普通使用のドア(上ドア部3と下ドア部6が一体に連結した状態)になった場合のドア開閉に必要であるし、下ドア部6が開放状態のとき上ドア部3のみの開閉にも必要である。両ドア部3,6を一体とすると、これら両ドア部3,6の間には分割線DLが入るので、その分割線DLに更に横スリットSL1(図3参照)を入れることで、分割線DLを見えにくくしている。更に、下ドア部6の高さに合わせて上ドア部3にも複数の横スリットSL2を入れることによって、分割のためにできる必然的な横スリットSL1を意匠に利用し、一体化時のドア部3,6の分割を分かりにくくしている。また、上ドア部3には、目の高さ付近に開口部14が形成される。当該開口部14にすりガラスなどがセットされ、部屋の中の状態や照明点灯が外側から分かるように構成される。開口部14を上ドア部3にとめる押し縁の一部は横スリットSL2との意匠を施し、分割線を目立たせないための横スリットSL2の意匠にあわせ、水平方向のデザインを強調している。なお、当該上下分割ドア1を個室等のドアとして用いる場合には、開口部14を設けない構成を採用することができる。
【0028】
図3に示すように、上ドア部3の下端部16には、下方へ突出する突出部17が形成されている。突出部17は、下端部16の下端面16aにおける部屋の外側の縁部に形成されている。突出部17は、上ドア部3の厚さよりも小さい厚さを有する。下端部16の下端面16aの部屋の内側の縁部及び突出部17の部屋の外側の縁部には、前述の横スリットSL1が形成されている。下ドア部6の上端部18には、上ドア部3及び下ドア部6を一体とさせた状態において突出部17を収容可能な欠込み部19が形成されている。欠込み部19は、上端部18の部屋の外側の縁部において、突出部17に対応する形状及び大きさに形成されている。上ドア部3と下ドア部6のそれぞれの端部断面形状を雁行型とし、上ドア部3と下ドア部6とが対向する部分を相欠きとすることで、風や光漏れを防ぐ。風や光漏れを防ぐため、突出部17及び欠込み部19は上ドア部3及び下ドア部6の幅方向における略全体に渡って形成されていることが好ましい。すなわち、突出部17は上ドア部3の一方の側部11aから他方の側部11bに亘って設けられ、欠込み部19は下ドア部6の一方の側部12aから他方の側部12bに亘って設けられている。相欠きの垂直接触部分は、ドア部を閉めるときにぶつかるので補強されていることが好ましい。上ドア部3が召し合わせにぶつかっても召し合わせが破損しないように補強が入っていることが好ましい。なお、本実施形態では、部屋の外側の位置で上ドア部3から下方に突出している部分を「突出部」と捕らえ、それに対応する下ドア部6の形状を「欠込み部」と捕らえて説明している。ただし、部屋の内側の位置で下ドア部6から上方に突出している部分(連結固定部7が設けられている部分)を「突出部」と捕らえ、それに対応する上ドア部3の形状を「欠込み部」と捕らえてもよい。すなわち、上ドア部3と下ドア部6が相欠きとなっていればよい。
【0029】
図4は、図3に示すIV―IVに沿った断面図である。図5は、図4からロックを解除した状態を示す図である。連結固定部7は、上ドア部3に対して下ドア部6を引き寄せた状態であって、且つ、上ドア部3と下ドア部6との間に押圧力を発生させた状態で、上ドア部3及び下ドア部6を一体に連結する機能を有している。連結固定部7は、上ドア部3の下端面16aと下ドア部6の上端面18aに亘って設けられている。図3、図4及び図5に示すように、連結固定部7は、引掛け部21を有する下固定プレート22と、引掛け部21に引っ掛かるフック部23と、フック部23を収容する収容部24と、収容部24を固定する上固定プレート26と、フック部23の回転軸27に回転力を付与するハンドル28と、を備えている。下固定プレート22は、下ドア部6の上端部18に内装される。フック部23、収容部24、及び上固定プレート26は取付時は一つの部品として構成されており、上ドア部3の下端部16に内装される。上ドア部3及び下ドア部6を一体とした状態では、回転軸27の一部、及びハンドル28のみが外から見える状態となっている。
【0030】
下固定プレート22は、下ドア部6の幅方向に沿って延びる金具であり、上端部18の上端面18aから上面22aが露出するように、下ドア部6の上端部18に埋設される。下固定プレート22は、ボルトによって下ドア部6の上端面18aに固定される。下固定プレート22の中央位置には、下ドア部6の厚さ方向へ延びる引掛け部21が形成される。引掛け部21は、下固定プレート22に矩形状の貫通部31,32を形成することによって形成される。引掛け部21は、貫通部31と貫通部32との間に形成される。引掛け部21の下面は、後述のフック部23の円弧面部に対向/当接する位置となる。引掛け部21の当該位置には、下方へ向かって隆起する隆起部33が設けられる。この隆起部33によって、フック部23による締め付けの圧力が増し、上ドア部3と下ドア部6同士が強固に固定される。下ドア部6間には、下固定プレート22の引掛け部21及び貫通部31,32に対向する位置に空間部34が形成される。空間部34は、下ドア部6の上端部18に形成される円弧状の溝によって構成される。空間部34の円弧形状は、上ドア部3と下ドア部6とを一体とした状態において、フック部23の回転中心軸線CLを中心とすると共に、フック部23のアームの外周部よりも大きな半径を有するような形状に設定される。これによって、下ドア部6の加工を最小限に留めて、引掛け部21のアームが下ドア部6と接触することを防止できる。
【0031】
収容部24は、上ドア部3の下端部16に埋設されている。収容部24は、後述のフック部23の回転中心軸線CLを中心とした円形の下端部を切り欠いた形状をなしている。収容部24はフック部23を収容するための内部空間を有しており、フック部23のアーム39の出し入れができるように下端側に開口部24aを有している。収容部24は、フック部23を回転可能に支持する。これによって、フック部23は、収容部24を介して上ドア部3に枢支される。上固定プレート26は、上ドア部3の幅方向に沿って延びる金具であり、下端部16の下端面16aから下面26aが露出するように、上ドア部3の下端部16に埋設される。上固定プレート26は、ボルトによって上ドア部3の下端面16aに固定される。上固定プレート26は、上面26bに収容部24が固定されると共に、収容部24の開口部24aと対応する位置に貫通部26cが形成される。上固定プレート26は、上ドア部3及び下ドア部6を一体とした状態において、下固定プレート22と重なりあうように、同位置、同形状に構成される。
【0032】
フック部23は、引掛け部21に引っ掛かった第1の姿勢(図4に示す姿勢)から引っ掛かりを解除した第2の姿勢(図5に示す姿勢)まで可動する機能を有している。フック部23には、第1の姿勢で引掛け部21を上ドア部3に向けて引き寄せる引寄せ機構36が設けられている。フック部23は、基端部37と、フック部23の回転中心部として機能する回転軸27と、引掛け部21に引っ掛かるアーム39と、を備えている。フック部23は、金属プレートを勾玉状に形成することで各構成要素が一体となった金具に、回転軸27を固定することによって構成されている。フック部23は、上ドア部3の内部において、金属プレートの表面が上ドア部3の表面と平行となるような向きに配置される。本実施形態では、基端部37は略円形状の形状をなしているが、第1の姿勢と第2の姿勢の切替動作中に他の部材と接触しない形状であれば特に限定されない。引寄せ機構36は、少なくとも、回転軸27と、アーム39と、によって構成される。
【0033】
回転軸27は、基端部37に連結されて、上ドア部3に枢支される部分である。本実施形態では、フック部23の回転中心に六角形の貫通孔38が形成され、当該貫通孔38に六角レンチ状の回転軸27を挿入して固定した構成となっている。なお、回転軸27は、別部品ではなく基端部37と一体的に固定されていてもよい。回転軸27の回転中心軸線CLは、上ドア部3の厚さ方向に向かって延びる。従って、フック部23は、上ドア部3の表面と平行な平面上で回転する。回転軸27は、一端部が貫通孔38に固定され、部屋の内側へ向かって延び、他端部が上ドア部3から露出すると共にハンドル28が取り付けられている。フック部23は、図4に示す第1の姿勢から紙面時計回りに90°回転させ、図5に示す第2の姿勢となった状態で回転が規制され、図5に示す第2の姿勢から紙面反時計回りに90°回転させ、図4に示す第1の姿勢となった状態で回転が規制されることが好ましい。
【0034】
アーム39は、回転軸27及び基端部37から突出して設けられている。具体的に、アーム39は、基端部37の外周縁部37aの所定の位置から突出すると共に、基端部37の外周縁部37aと接触しないように回転中心軸線CLを取り囲むように延びている。アーム39は、図4に示す第1の姿勢において、引掛け部21に対向又は当接する面に形成される円弧状の円弧面部41を有する。円弧面部41は、基端部37の外周縁部37aから離間した状態で、当該外周縁部37aと対向している。図4に示す第1の姿勢において、アーム39は、下ドア部6の空間部34に配置され、円弧面部41は、引掛け部21の隆起部33と当接する。図5に示す第2の姿勢において、アーム39は、上ドア部3の収容部24内に配置される。アーム39の先端39aは、上ドア部3内に収容されるため、下ドア部6を開いても、アーム39は下ドア部6や下固定プレート22と接触しない。
【0035】
円弧面部41の先端部41aと回転中心軸線CLまでの距離(図5に示す回転半径R1)は、当該回転中心軸線CLから引掛け部21までの距離よりも大きく設定される。また、円弧面部41の基端部41bと回転中心軸線CLまでの距離(図5に示す回転半径R2)が、当該回転中心軸線CLから引掛け部21までの距離よりも小さく設定される。且つ、円弧面部41は、そのような大きさに設定されている先端部41aと基端部41bとを連結することによって形成されている。なお、ここでの回転中心軸線CLから引掛け部21までの距離とは、図5に示す第2の姿勢での、引掛け部21の中で最も回転中心軸線CLから離れている部分と、当該回転中心軸線CLとの間の距離である。本実施形態では、回転中心軸線CLから隆起部33の下面までの距離に該当する。
【0036】
円弧面部41の回転中心軸線CLからの回転半径は、アーム39の先端39aから基端39bに向かって徐々に小さくなる。すなわち、回転中心軸線CLと円弧面部41の所定箇所との間の距離を回転半径Rnとした場合、回転半径Rnは、先端39aから基端39bに向かうに従って徐々に小さくなる。例えば、先端39aにおける回転半径R1と基端39bにおける回転半径R2とを比較した場合、回転半径R2の方が小さい。また、前述のように、回転半径R1は、第2の姿勢での回転中心軸線CLから引掛け部21の隆起部33の下面までの距離より大きく、回転半径R2は、当該距離より小さい。
【0037】
ハンドル28は、円板に切欠部28aを形成することによって構成される。ハンドル28は、フック部23の回転中心軸線CLから偏心させた状態で、回転軸27に固定される。図4に示す第1の姿勢においては、ハンドル28は、下端部が召し合わせ部よりも上方に配置される。切欠部28aは、図5に示す第2の姿勢としたときに、下ドア部6と重なる部分を切欠くことによって形成される。これによって、第2の姿勢としたときも、ハンドル28が下ドア部6と接触することが防止される。
【0038】
ここで、図4及び図5を参照して、連結固定部7の動作について説明する。まず、上ドア部3及び下ドア部6が一体に連結される第1の姿勢(図4)から、連結を解除する第2の姿勢(図5)とする場合について説明する。利用者は、ハンドル28を紙面時計回りに回転させる。これによって、回転軸27に回転力が付与され、フック部23が回転する。当該回転に伴ってアーム39の円弧面部41と引掛け部21との当接が解除され、上ドア部3と下ドア部6との連結が解除される。更にハンドル28を回転することによって、図5に示すような第2の姿勢となり、アーム39は完全に下ドア部6の空間部34から引き上げられ、先端39aは上ドア部3の内部に収納される。
【0039】
次に、上ドア部3及び下ドア部6の連結が解除された第2の姿勢(図5)から、一体に連結される第1の姿勢(図4)とする場合について説明する。利用者は、ハンドル28を紙面反時計回りに回転させる。これによって、回転軸27に回転力が付与され、フック部23が回転する。当該回転に伴って、アーム39は下固定プレート22の貫通部31から空間部34へ入り込む。更に回転させることで、アーム39は、空間部34と引掛け部21との間に入り込む。このとき、円弧面部41の先端部41aと回転中心軸線CLまでの距離(回転半径R1)が、当該回転中心軸線CLから引掛け部21までの距離よりも大きく設定されているため、アーム39はスムーズに空間部34と引掛け部21との間に入り込むことができる。回転半径Rnは、先端39aから基端39bに向かうに従って徐々に小さくなる。従って、円弧面部41は、引掛け部21の下面と当接し、引掛け部21を徐々に上に押し上げる。更に、引掛け部21には隆起部33が形成されているため、円弧面部41と引掛け部21との接触面積が増大し、下ドア部6が持ち上げられ易くなる。これによって、下ドア部6は回転中心軸線CL側、すなわち上ドア部3へ引き寄せられる。以上によって、図4に示すような第1の姿勢となり、連結固定部7は、上ドア部3に対して下ドア部6を引き寄せた状態であって、上ドア部3と下ドア部6の間に押圧力を発生させ、当該状態が維持することができる。
【0040】
上ドア部3と下ドア部6との間に押圧力を発生させることによって、両ドア部3,6間の隙間を無くす効果と、両ドア部3,6間に摩擦力を発生させる効果を得ることができる。摩擦力を発生させることによって、両ドア部3,6間のがたつきを防止することができる。すなわち、通常使用時での開閉時のモーメントが作用する場合や、戸当り等に衝突することによって外力が作用する場合にあっても、摩擦力によって両ドア部3,6間のがたつきを防止することができる。なお、本実施形態において、連結固定部7が上ドア部3と下ドア部との回転方向D1への相対的な移動を規制する力(押圧力の大きさ、すなわち両ドア部3,6間に発生する摩擦力の大きさによって設定される)は、ある程度の回転力で(一体となった)上下分割ドア1を回転させた場合であっても上ドア部3と下ドア部6とが離間しない大きさに設定されることが好ましい。
【0041】
図1、図2及び図6を参照して、簡易係脱機構8について説明する。図6は、図1に示すVI−VI線に沿った断面図である。簡易係脱機構8は、回転方向D1における上ドア部3と下ドア部6との位置を一致させることで、上ドア部3と下ドア部6とを連結可能である。また、簡易係脱機構8は、上ドア部3及び下ドア部6の何れか一方をいずれか他方に対して相対的に回転させることで連結状態を解除可能である。簡易係脱機構8は、下ドア部6の上端部18に設けられたマグネット部51と、上ドア部3の下端部16に設けられた金属製のマグネット受け部52と、を備えている。
【0042】
マグネット部51は、マグネットローラー53と、マグネットローラー53を支持すると共に収容する収容部54と、を備えている。収容部54は、下ドア部6の上端部18に埋設されている。収容部54の上端側のフランジ部54aの上面は、下ドア部6の上端面18aから露出している。マグネット受け部52は、金属製のキャッチプレートによって構成されている。マグネット受け部52は、プレート部56と、マグネットローラー53を受けるように湾曲したキャッチ部57と、を備えている。プレート部56の下面は、上ドア部3の下端面16aから露出している。上ドア部3と下ドア部6とが回転方向D1において同じ位置となったとき、マグネットローラー53は、プレート部56の先端のガイド部56aにガイドされてキャッチ部57に入り込む。マグネットローラー53とキャッチ部57とが磁力によって連結される。これによって、上ドア部3と下ドア部6とが軟係止される。更に、上ドア部3に対して下ドア部6を相対的に回転させると、磁力が解放されてマグネットローラー53はキャッチ部57から容易に外れ、これによって上ドア部3と下ドア部6との連結状態が容易に解除される。
【0043】
簡易係脱機構8が上ドア部3と下ドア部との回転方向D1への相対的な移動を規制する力(マグネットにより生じる力の大きさ、すなわち両ドア部3,6間に発生する摩擦力の大きさによって設定される)は、ある程度の回転力で(一体となった)上下分割ドア1を回転させた場合に、上ドア部3と下ドア部6とが離間する大きさに設定されることが好ましい。連結固定部7が上ドア部3と下ドア部6を一体に固定することを目的としているのに対し、簡易係脱機構8は、下ドア部6を戸当たりFに固定し、上ドア部3のみを開閉可能な状態としたときに、上ドア部3の開放時に当該上ドア部3を下ドア部6に軟係止することを目的としているためである。ただし、上ドア部3と下ドア部6を連結固定部7で一体に固定しているときに、簡易係脱機構8は、引寄せ機構36による両ドア部3,6の連結の補助として作用することが可能である。
【0044】
次に、本実施形態に係る上下分割ドア1の作用・効果について説明する。
【0045】
本実施形態に係る上下分割ドア1によれば、上ドア部3は上ヒンジ部2に支持され、下ドア部6は下ヒンジ部4に支持されるため、上ドア部3と下ドア部6は、それぞれが独立して開閉可能である。すなわち、上ドア部3を閉めた状態にて、下ドア部6を開けた状態とすることができる。これによって、開けた状態の下ドア部6により床直上の通風が可能となると共に、閉じた状態の上ドア部3により視線を防止することができる。
【0046】
また、連結固定部7によって、上ドア部3及び下ドア部6を一体に連結することができる。通風要望は季節によってかわるので、その機能が不用のときは、上ドア部3と下ドア部6とが一体になり簡単に普通のドアになる。連結固定部7は、上ドア部3に対して下ドア部6を引き寄せてこれらの間に押圧力を発生させた状態で連結させる機構である。これによって、下ドア部6が垂れ下がったり、ドア部同士が前後にぐらつかない。また、ドア部同士が同面で納まる。以上によって、通風を得るためにドアを開放しても、内部に視線を通さず、上ドア部3と下ドア部6との連結時には、ずれやがたつき等を発生させず、上ドア部3と下ドア部6とを一体とすることができる。
【0047】
また、連結固定部7は、下ドア部6に設けられた引掛け部21と、上ドア部3に設けられ、引掛け部21に引っ掛かった第1の姿勢から引っ掛かりを解除した第2の姿勢まで可動するフック部23と、を備え、該フック部23には、第1の姿勢で引掛け部21を上ドア部3に向けて引き寄せる引寄せ機構36が設けられている。このような構成により、フック部23を引掛け部21に係合させ、引き寄せ機構36により引掛け部21を引き寄せるだけで容易に下ドア部6を上ドア部3に引き寄せた状態で固定することができる。
【0048】
また、引寄せ機構36は、フック部23の基端部37に連結されて上ドア部3に枢支される回転軸27と、該回転軸27及び基端部37から突出して設けられて引掛け部21に引っ掛かるアーム39と、を備えている。また、アーム39は、第1の姿勢において引掛け部21に対向又は当接する面に形成される円弧状の円弧面部41を有し、円弧面部41の回転中心軸線CLからの回転半径Rnは、アーム39の先端39aから基端39bに向かって小さくなっている。当該フック部23を回転させることにより、フック部23を引掛け部21に引掛けた第1の姿勢と解除した第2の姿勢との間で容易に姿勢変更をすることができるものとなる。また、円弧面部41の先端部41aと回転中心軸線CLまでの距離が当該回転中心軸線CLから引掛け部21までの距離よりも大きく設定されるため、アーム39がスムーズに引掛け部21に引っ掛かる。一方、円弧面部41の基端部41bと回転中心軸線CLまでの距離が、当該回転中心軸線CLから引掛け部21までの距離よりも小さく設定されるため、引掛け部21を円弧面部41の基端部41b側に当接させることで、円弧面部41が引掛け部21を持ち上げる状態となる。また、このように設定された先端部41aと基端部41bとを円弧状に連結することによって円弧面部41が形成されており、円弧面部41の回転中心軸線CLからの回転半径Rnは、アーム39の先端39aから基端39bに向かうにつれてR2からR1へとその大きさが徐々に小さくなっている。円弧面部41がこのように構成されることにより、引掛け部21にフック部23を引掛けた状態でさらにフック部23を引掛け方向に回転させると、円弧面部41が引掛け部21に当接することとなる。その後、さらにフック部23を回転させることにより、円弧面部41が引掛け部21を持ち上げることとなる。これによって、引掛け部21がフック部23の回転中心軸線CL側に引き寄せられ、ひいては下ドア部6が上ドア部3に引き寄せられることとなる。
【0049】
また、引掛け部21には、円弧面部41に対向/当接する位置に隆起部33が設けられている。当該隆起部33が円弧面部41に接触するため、当該引掛け部21と円弧面部41との接触面積が増大することとなり、これにより、より容易に(小さな力で)円弧面部41による引掛け部21の持ち上げ状態を実現できることとなる。
【0050】
また、上ドア部3の下端部16に突出部17が設けられ、下ドア部6の上端部18に欠込み部19が設けられている。このような構成によって、上ドア部3と下ドア部6とを一体に固定した状態において、上ドア部3と下ドア部6とが対向する部分の隙間から光、風などが漏れることを防止することができる。また、突出部17と欠込み部19とが係合して上下のドア部は一体となるため、上ドア部3は、当該欠込み部19を超えて回転することができない。これによって、上ドア部3の回転具合を調整することで、下ドア部6の回転範囲を限定することができ、2つのドア部が全く無関係に全範囲に亘って回転することを防止することができる。本実施形態では、図3に示すように、上ドア部3の部屋の外側の縁部から下方に向けて突出部17が形成され、下ドア部6の部屋の外側の縁部が切り欠かれることで欠込み部19が形成されている。このような位置関係によって、下ドア部6を戸当たりFに固定した際、上ドア部3の突出部17が欠込み部19に移動を妨げられないため、上ドア部3のみを開閉することができる。一方、上ドア部3が開いている際に下ドア部6のみを閉めようとした場合、下ドア部6の欠込み部19が上ドア部3の突出部17と干渉するため、下ドア部6のみを閉めることが出来ない構成となる。
【0051】
また、上下分割ドア1は、回転方向D1における上ドア部3と下ドア部6との位置を一致させることで、上ドア部3と下ドア部6とを連結可能とすると共に、上ドア部3に対して下ドア部6相対的に回転させることで連結状態を解除可能とする簡易係脱機構8を更に備えている。これら上ドア部3及び下ドア部6を頻繁に上下一体状態と上下分離状態を変更する際には、上記連結固定部7を操作することが面倒となる。しかし、簡易係脱機構8を併せて設けることにより、容易にこれら一時的な上下一体状態/上下分離状態を実現することができる。
【0052】
例えば、下ドア部6が開放状態であって戸当たりFに固定されている時、簡易係脱機構8によって上ドア部3を下ドア部6に対して連結状態とすることで、当該簡易係脱機構8は、上ドア部3の開放状態の維持や固定のための戸当たりの役目を果たす。上ドア部3は開放状態を継続的に保つことが出来、風によって上方子ドアが突然に閉まったりする危険を防止できる。更に、レバーハンドルを引けば、その機構は解除方向に働き、下ドア部6は動かないまま、簡単に上ドア部3のみを閉めることができる。
【0053】
また、簡易係脱機構8は、下ドア部6の上端部18に設けられたマグネット部51と、上ドア部3の下端部16に設けられた金属製のマグネット受け部52とを備えている。これによって、容易に簡易係脱機構8を構成することができると共に、上下一体状態/上下分離状態の変更を容易に行うことができる。
【0054】
[第2実施形態]
図7を用いて第2実施形態に係る上下分割ドアについて説明する。図7は、第2実施形態に係る上下分割ドアの連結固定機構100を示す断面図である。図7(a)は上ドア部3と下ドア部6の連結が解除された状態を示し、図7(b)は上ドア部3と下ドア部6とが一体に連結された状態を示す。連結固定機構100は、上ドア部3に形成される空間部101と、空間部101の上下に設けられた雌螺子部102,103と、下ドア部6に形成される雌螺子部104と、雌螺子部102,103,104に螺合される雄螺子部材106と、雄螺子部材106に固定された操作部107と、を備えている。上ドア部3と下ドア部6を連結する場合、操作部107を回転させて雄螺子部材106の下端を、下ドア部6の雌螺子部104に螺合する。螺合を進めていくと、下ドア部6は上ドア部3に引き寄せられ、上ドア部3と下ドア部6との間に押圧力が発生し、当該状態が維持される。
【0055】
また、上ドア部3には、上ドア部3及び下ドア部6を一体とさせた状態において、上ドア部3の下端部と下ドア部6の上端部との間の継ぎ目を覆うカバー部109が設けられている。このような構成によって、上ドア部3と下ドア部6とを一体に固定した状態において、召し合わせ部の隙間から光、風などが漏れることを防止することができる。また、継ぎ目がカバー部109で覆われた状態で上下のドア部は一体となるため、上ドア部3は、当該カバー部109を超えて下ドア部6を回転させることができない。これによって、上ドア部3の回転具合を調整することで、下ドア部6の回転範囲を限定することができ、2つのドア部が全く無関係に全範囲に亘って回転することを防止することができる。なお、カバー部109は、下ドア部6側に設けてもよい。
【0056】
[第3実施形態]
図8を用いて第3実施形態に係る上下分割ドアについて説明する。図8は、第3実施形態に係る上下分割ドアの連結固定機構300を示す断面図である。図8(a)は上ドア部3と下ドア部6とが一体に連結された状態を示す断面図であり、図8(b)はドア部の厚さ方向から見た図である。連結固定機構300は、ドア部の厚さ方向における一方側に設けられた留金機構301と、他方側に設けられた支持機構302と、を備えている。留金機構301は、例えば工具箱などに適用される留め金であり、下ドア部6に設けられる爪部303と、上ドア部3に設けられるフック機構304によって構成される。留金機構301は、下ドア部6を上ドア部3側に引き寄せることができる。支持機構302は、上ドア部3及び下ドア部6の連結時において、厚さ方向の移動を規制するものである。具体的に、支持機構302は、下ドア部6に設けられるハンドル部306と、上ドア部3に設けられる被押圧部307と、を備えている。ハンドル部306のハンドル308は、円板の一部に切欠部308aを形成することによって構成される。切欠部308aを下方に向けておくことで、被押圧部307がハンドル部306に押圧され、これによって、上ドア部3と下ドア部6とが厚さ方向に支持される。また、切欠部308aを上方に向けておくことで、被押圧部307の押圧が解除される。上ドア部3と下ドア部6を連結する場合、留金機構301及び支持機構302の両方をロックする。これによって、下ドア部6は上ドア部3に引き寄せられ、上ドア部3と下ドア部6との間に押圧力が発生する。また、ロックを解除することで、上ドア部3と下ドア部6の連結が解除される。
【0057】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0058】
例えば、上述の各実施形態における連結固定部について、上ドア部3に設けられる機構と下ドア部6に設けられる機構とを逆にしてもよい。例えば、第1実施形態において、上ドア部3に引掛け部を設け、下ドア部6にフック部を設けることによって、相対的に下ドア部6を上ドア部3に引き寄せてもよい。
【0059】
また、簡易連結機構について、下ドア部6にマグネット受け部52を設け、上ドア部3にマグネット部51を設けてもよい。また、簡易連結機構は、上ドア部3と下ドア部6を軟係止し、容易に連結及び解除できるものであれば特に限定されない。上述の実施形態ではマグネットローラーを用いたが、例えば、ローラー機構を有しないマグネット、マグネットを用いないローラーキャッチ、あるいはラッチなどを用いてもよい。
【0060】
また、上ドア部3と下ドア部6との召し合わせ部において、突出部、欠込み部、カバー部の形状や配置や大きさは特に限定されない。また、これらの構成が用いられておらず、上ドア部3の下端面及び下ドア部6の上端面が平面であってもよい。
【0061】
上ドア部3と下ドア部6とが一体に連結された状態において、上ドア部3の下端面と下ドア部6の上端面が互いに密着していてもよく、あるいは一部で密着していてもよい。例えば、第1実施形態において、下固定プレートと上固定プレートのみで密着しており、上ドア部3の下端面と下ドア部6の上端面が僅かに離間していてもよい。上ドア部3と下ドア部6が全体として密着している場合は、上ドア部3と下ドア部6の全体的に押圧力が発生する。一部で密着している場合は、当該部分で押圧力が発生する。いずれの場合においても、上ドア部3と下ドア部6との間のがたつきは防止される。
【0062】
上述の実施形態に対し、上ドア部と下ドア部を入れ替えた構成を採用してもよい。すなわち、下ドア部の方が上ドア部よりも大きい構成である。この場合、上ドア部が通風用のドアとして機能し、下ドア部が目隠し用のドアとして機能する。なお、上ドア部は、下端が目の高さより上になる位置とし、高さサイズを狭くしてもよい。また、この構成では、上ドア部を開放用とすることによって、チャイルドロックや、ペット侵入防止という効果をえることができる。
【0063】
また、ラッチやドアノブを上ドア部と下ドア部の両方に設けてもよい。下ドア部にラッチやドアノブある場合、チャイルド(ペット)防護柵として機能させることができる。
【符号の説明】
【0064】
1…上下分割ドア、2…上ヒンジ部、3…上ドア部、4…下ヒンジ部、6…下ドア部、7,100,300…連結固定部(連結固定手段)、8…簡易係脱機構、17…突出部、19…欠込み部、21…引掛け部、23…フック部、33…隆起部、36…引寄せ機構、27…回転軸(回転中心部)、39…アーム、41…円弧面部、51…マグネット部、52…マグネット受け部、109…カバー部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる軸芯を有する上ヒンジ部に支持される上ドア部と、
上下方向に延びる軸芯を有する下ヒンジ部に支持される下ドア部と、を備える上下分割ドアであって、
前記上ドア部と前記下ドア部との間には、前記上ドア部及び前記下ドア部を一体に連結する連結固定手段が設けられており、
前記連結固定手段は、前記上ドア部に対して前記下ドア部を引き寄せた状態であって、且つ、前記上ドア部と前記下ドア部との間に押圧力を発生させた状態で、前記上ドア部及び前記下ドア部を一体に連結することを特徴とする上下分割ドア。
【請求項2】
前記連結固定手段は、
前記下ドア部に設けられた引掛け部と、
前記上ドア部に設けられ、前記引掛け部に引っ掛かった第1の姿勢から引っ掛かりを解除した第2の姿勢まで可動するフック部と、を備え、
該フック部には、前記第1の姿勢で前記引掛け部を前記上ドア部に向けて引き寄せる引寄せ機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の上下分割ドア。
【請求項3】
前記引寄せ機構は、
前記フック部の基端部に連結されて前記上ドア部に枢支される回転中心部と、
該回転中心部から突出して設けられて前記引掛け部に引っ掛かるアームと、を備え、
前記アームは、前記第1の姿勢において前記引掛け部に対向又は当接する面に形成される円弧状の円弧面部を有し、
前記円弧面部の先端部と前記回転中心部の回転中心軸線までの距離が当該回転中心軸線から前記引掛け部までの距離よりも大きく設定されると共に、前記円弧面部の基端部と前記回転中心軸線までの距離が、当該回転中心軸線から前記引掛け部までの距離よりも小さく設定され、且つ、前記先端部と前記基端部とを円弧状に連結することによって前記円弧面部が形成され、
前記回転中心軸線からの前記円弧面部の回転半径は、前記アームの先端から基端に向かって徐々に小さくなることを特徴とする請求項2に記載の上下分割ドア。
【請求項4】
前記引掛け部には、前記円弧面部に対向/当接する位置に隆起部が設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の上下分割ドア。
【請求項5】
前記上ドア部の下端部と前記下ドア部の上端部のいずれか一方には、当該一方に係るドア部の厚さよりも小さい厚さを有する突出部が一側部から他側部に亘って設けられ、いずれか他方には、前記上ドア部及び前記下ドア部を一体とさせた状態で前記突出部を収容可能な欠込み部が一側部から他側部に亘って設けられており、
前記上ドア部の下端面から前記下ドア部の上端面に亘って前記連結固定手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の上下分割ドア。
【請求項6】
前記上ドア部と前記下ドア部のいずれか一方には、前記上ドア部及び前記下ドア部を一体とさせた状態で、前記上ドア部の下端部と前記下ドア部の上端部との間の継ぎ目を覆うカバー部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の上下分割ドア。
【請求項7】
回転方向における前記上ドア部と前記下ドア部との位置を一致させることで、前記上ドア部と前記下ドア部とを連結可能とすると共に、前記上ドア部と前記下ドア部の何れか一方をいずれか他方に対して相対的に回転させることで連結状態を解除可能とする簡易係脱機構を更に備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の上下分割ドア。
【請求項8】
前記簡易係脱機構は、前記上ドア部の下端部と前記下ドア部の上端部のいずれか一方に設けられたマグネット部と、いずれか他方に設けられた金属製のマグネット受け部と、を備えていることを特徴とする請求項7に記載の上下分割ドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−177248(P2012−177248A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40253(P2011−40253)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】