説明

上下搬送機構および環境試験装置

【課題】搬送対象物を搬送路に沿って間欠的に搬送する際に、搬送対象物の各一時停止位置が温度によって変化することがない環境試験装置を提供すること。
【解決手段】環境試験装置1の上下搬送機構20は、垂直搬送路12内の各受け渡し位置21(1)〜21(8)でワークWを一時停止させながら上方に搬送する。垂直搬送路12に沿って延びるシャフト31には複数の第1支持爪33が設けられている。各受け渡し位置21(1)〜21(8)には、受け渡し位置21(1)〜21(8)に対して進退可能な第2支持爪35が設けられている。上下搬送機構20は、シャフト31を上下方向に往復移動させることにより、第2支持爪35によって各受け渡し位置21(1)〜21(7)で支持されているワークを、第1搬送爪33によって支持し、その後、次の受け渡し位置21(2)〜21(8)まで搬送し、しかる後に、第2支持爪35に受け渡す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験対象のワークを上下方向に搬送する上下搬送機構、および上下搬送機構を搭載する環境試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境試験装置では、温度槽内を延びる搬送路に沿って試験対象のワークを所定の搬送ピッチで間欠的に搬送する。搬送路は温度槽内に配置された試験位置を経由して延びており、ワークは試験位置に到達するまでの間に所定の温度状態とされる。試験位置に到達したワークには、通電試験などが施される。
【0003】
温度槽内の搬送路を水平方向に延ばすと温度槽が水平方向に大型化するので、環境試験装置の設置面積が大きくなるという問題がある。かかる問題に対して、温度槽内に上下方向に延びる搬送路を設けることにより水平方向の小型化を図った環境試験装置は、特許文献1に記載されている。特許文献1は上下方向に延びる搬送路に沿ってワークを搬送する上下搬送機構を備えており、この上下搬送機構は、搬送路の上方および下方に配置された一対のスプロケットと、これらのスプロケットの間に架け渡した金属製の無端チェーンと、無端チェーンに一定間隔で取り付けられた昇降レールと、スプロケットを回転駆動するためのモータを備えている。ワークはワーク搬送用パレットに搭載された状態で昇降レールに載せられ、スプロケットが回転駆動されて無端チェーンが回転すると、この回転に伴って昇降する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−85912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の上下搬送機構では、一対のスプロケットが搬送路の上方および下方に配置されているので、これらに架け渡された無端チェーンの全長は搬送路の2倍を超える。従って、環境試験装置の温度槽内が高温状態あるいは低温状態に調整されると、温度に起因した無端チェーンの伸縮によって、ワークを間欠搬送する際の搬送路上の各一時停止位置が予め定めた位置から変化してしまうことがある。ここで、ワークの一時停止位置が変化すると、例えば、上下方向に延びる搬送路の途中に試験位置を配置した場合には、ワークが試験位置に正確に停止しない可能性が生じる。また、垂直方向に延びる搬送路と水平方向に延びる搬送路との間でワークを移動させる場合などに、これらの間の受け渡しがスムーズに行なわれない可能性が生じる。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、搬送対象物を間欠的に搬送する際の各一時停止位置が温度によって変化することがない上下搬送機構、および、このような上下搬送機構を備える環境試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の上下搬送機構は、
上下方向に延びる搬送路と、
前記搬送路内の搬送方向で離れた複数個所に予め設定されている受け渡し位置と、
前記搬送路に沿って延びており、複数の第1支持爪が前記搬送方向に一定間隔で設けられている第1部材と、
前記複数の受け渡し位置のそれぞれに対応する位置に設けられている複数の第2支持爪と、
前記第1部材を前記搬送路に沿って往復移動させる第1駆動機構と、
前記第1支持爪が前記搬送路に突出する第1支持位置と前記第1支持爪が前記搬送路から退避する第1退避位置との間で前記第1部材を移動させる第2駆動機構と、
前記第1駆動機構および前記第2駆動機構の駆動を制御する駆動制御部とを有し、
前記第2支持爪は、前記第1支持爪と干渉しない状態で、前記受け渡し位置に対して進退可能となっており、
前記駆動制御部は、前記受け渡し位置において前記第2支持爪が支持している搬送対象物を、前記第1支持位置に配置した第1部材の前記第1支持爪によって支持した後に前記第1部材を前記搬送路に沿って移動させ、前記受け渡し位置の搬送方向の下流側に隣接している次の受け渡し位置において前記第2支持爪に受け渡し、しかる後に、前記第1部材を前記第1退避位置に配置して前記搬送路に沿って移動させて元の位置に戻す動作を行うことにより、前記搬送対象物を間欠的に搬送することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、搬送対象物を特定の受け渡し位置から搬送方向の下流側に隣接している次の受け渡し位置まで搬送する第1支持爪は、従来のように搬送路の上方および下方に配置されたスプロケットの間に架け渡した金属製の無端チェーンに設けられたものではなく、搬送路に沿って延びる第1部材に設けられている。ここで、搬送路に沿って延びる第1部材の温度変化による伸縮は、搬送路の2倍の長さを備える金属製の無端チェーンの温度変化による伸縮と比較して小さくすることが容易なので、第1部材に設けられた第1支持爪の位置が温度変化によって変化することを抑制できる。また、搬送路内に予め設定されている受け渡し位置には、受け渡し位置に対して進退可能な第2支持爪が設けられており、搬送対象物は各受け渡し位置において第1支持爪と第2支持爪との間で受け渡されながら間欠的に搬送される。従って、搬送対象物が搬送路に沿って間欠的に搬送される際に、搬送対象物の各一時停止位置が温度によって変化することがない。
【0009】
本発明において、搬送方向に沿って延びており、前記複数の第2支持爪が設けられている第2部材と、各第2支持爪が各受け渡し位置に突出する第2支持位置と各第2支持爪が各受け渡し位置から退避する第2退避位置との間で前記第2部材を移動させる第3駆動機構とを有し、前記第3駆動機構は、前記駆動制御部によって駆動制御され、前記駆動制御部は、前記第1支持爪から受け渡される前記搬送対象物を前記第2支持位置に配置した前記第2部材の前記第2支持爪によって一時的に支持し、前記第2支持爪が支持している前記搬送対象物が前記第1支持爪によって支持されると前記第2部材を前記第2退避位置に配置することが望ましい。このようにすれば、各受け渡し位置に対する各第2支持爪の進退を制御することが容易となる。
【0010】
本発明において、前記第1部材は、棒状であり、前記第1駆動機構は、前記第1部材をその軸線方向に移動させ、前記第2駆動機構は、前記第1部材をその軸線回りに回動させることにより、前記第1部材を前記第1支持位置と前記第1退避位置との間で移動させることが望ましい。このようにすれば、第1部材の往復移動と、第1支持爪の搬送路への突出および退避を簡易な構成で実現できる。
【0011】
本発明において、前記第3駆動機構は、前記第2部材を前記搬送路に対して接近する方向および離れる方向に移動させることにより、前記第2部材を第2支持位置と第2退避位置との間で移動させることが望ましい。このようにすれば、各第2支持爪の各受け渡し位置への進退を簡易な構成で実現できる。
【0012】
本発明において、前記搬送路は、搬送方向と直交する矩形断面を備えており、前記第1部材として、前記矩形断面の4隅部分の外側に配置された4本の第1部材を備えており、前記第2部材として、前記矩形断面の対向する2辺の外側に配置された一対の第2部材を備えていることが望ましい。このようにすれば、第1支持爪、或いは、第2支持爪によって搬送対象物をバランス良く支持することが容易となる。
【0013】
本発明において、搬送対象物を上方に搬送するためには、前記駆動制御部は、第1駆動機構、第2駆動機構および第3駆動機構を駆動制御して、以下の(1)〜(5)の動作をこの順番で行うことが望ましい。
(1)予め設定した初期位置に配置されている前記第1部材を第1支持位置に配置して前記第1支持爪を前記搬送路内に突出させる第1支持爪突出動作。
(2)前記第2支持位置に配置された前記第2部材の第2支持爪によって前記受け渡し位置で支持されている前記搬送対象物を前記第1支持爪によって支持する第1支持爪支持動作。
(3)前記第1部材を上方に移動させるとともに、前記第2部材を第2退避位置に移動させて前記第2支持爪を前記搬送路から退避させる搬送動作。
(4)前記第1支持爪に支持された前記搬送対象物が前記次の受け渡し位置に達した後に、前記第2部材を前記第2支持位置に移動させて前記第2支持爪を前記次の受け渡し位置に突出させるとともに、前記次の受け渡し位置において前記第1支持爪によって支持されている前記搬送対象物を前記第2支持爪によって支持する第2支持爪支持動作。
(5)前記第1部材を前記第1退避位置に配置して前記第1支持爪を前記搬送路から退避させるとともに、前記第1部材を下方に移動させて前記初期位置に戻す戻し動作。
【0014】
この場合において、前記搬送動作では、前記第1支持爪に支持された前記搬送対象物が前記次の受け渡し位置よりも上方の上方位置まで前記第1部材を移動させ、前記第2支持爪支持動作では、前記第1支持爪が前記次の受け渡し位置を下方に向かって通過するように前記第1部材を下方に移動させて、前記第1支持爪から前記第2支持爪に前記搬送対象物を受け渡すことが望ましい。このようにすれば、第1支持爪から第2支持爪に搬送対象物を受け渡す動作がスムーズなものとなる。
【0015】
また、この場合には、前記搬送動作では、前記第1支持爪に支持された前記搬送対象物が前記受け渡し位置と前記次の受け渡し位置の間の途中位置に達するまで前記第1部材を移動させ、その後、前記第2部材を前記第2退避位置に移動させ、しかる後に、前記第1部材を前記途中位置から前記上方位置に移動させることが望ましい。このようにすれば、第1部材を上方に移動させる際に、第1支持爪に支持されている搬送対象物が第2部材の第2支持爪と衝突することを確実に回避できる。
【0016】
本発明において、搬送対象物を下方に搬送するためには、前記駆動制御部は、第1駆動機構、第2駆動機構および第3駆動機構を駆動制御して、以下の(1)〜(5)の動作をこの順番で行うことが望ましい。
(1)予め設定した初期位置に配置されている前記第1部材を第1支持位置に配置して前記第1支持爪を前記搬送路内に突出させる第1支持爪突出動作。
(2)前記第2支持位置に配置された前記第2部材の第2支持爪によって前記受け渡し位置で支持されている前記搬送対象物を前記第1支持爪によって支持する第1支持爪支持動作。
(3)前記第2部材を第2退避位置に移動させて前記第2支持爪を前記搬送路から退避させるとともに、前記第1部材を下方に移動させる搬送動作。
(4)前記第1支持爪に支持された前記搬送対象物が前記受け渡し位置を通過した後に、前記第2部材を前記第2支持位置に移動させて前記第2支持爪を前記次の受け渡し位置に突出させるとともに、前記次の受け渡し位置において前記第1支持爪によって支持されている前記搬送対象物を前記第2支持爪によって支持する第2支持爪支持動作。
(5)前記第1部材を前記第1退避位置に配置して前記第1支持爪を前記搬送路から退避させるとともに、前記第1部材を上方に移動させて前記初期位置に戻す戻し動作。
【0017】
この場合において、前記第2支持爪支持動作では、前記第1支持爪が前記次の受け渡し位置を下方に向かって通過するように前記第1部材を下方に移動させることにより、前記第1支持爪から前記第2支持爪に前記搬送対象物を受け渡すことが望ましい。このようにすれば、第1支持爪から第2支持爪に搬送対象物を受け渡す動作がスムーズなものとなる。
【0018】
本発明において、前記第1支持爪支持動作では、前記第1支持爪が前記受け渡し位置を上方に向かって通過するように前記第1部材を上方に移動させることにより、前記第2支持爪から前記第1支持爪に前記搬送対象物を受け渡すことが望ましい。このようにすれば、第2支持爪から第1支持爪に搬送対象物を受け渡す動作がスムーズなものとなる。
【0019】
本発明において、搬送対象物を一定のピッチで間欠的に搬送するためには、前記受け渡し位置を前記搬送路上に一定のピッチで設け、前記第1支持爪が設けられている一定間隔を前記ピッチと同一にしておけばよい。
【0020】
次に、本発明の環境試験装置は、
槽内温度が所定の状態に調整される温度槽と、
前記温度槽内に配置した試験位置と、
前記試験位置を経由して上下方向に延びる搬送路と、
試験対象となるワークを前記搬送路に沿って搬送する上記の上下搬送機構とを有することを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、上下方向に延びる搬送路に沿って搬送対象物を間欠的に搬送する際に、搬送路上における搬送対象物の一時停止位置が温度によって変化することがない。従って、上下方向に延びる搬送路の途中の受け渡し位置を試験位置として設定した場合には、ワークはこの試験位置に正確に停止する。よって、環境試験を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、搬送対象物を上下方向に延びる搬送路に沿って間欠的に搬送する際に、搬送路上における搬送対象物の各一時停止位置が温度によって変化することがない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態に係る環境試験装置の概略縦断面図である。
【図2】上下搬送機構の主要部の側面図および平面図である。
【図3】ワークを上方に搬送するワーク搬送動作の説明図である。
【図4】ワークを下方に搬送するワーク搬送動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して本発明を適用した環境試験装置の実施の形態を説明する。
【0025】
(全体構成)
図1は本実施の形態に係る環境試験装置の概略縦断面図である。環境試験装置1は直方体形状の温度槽2を有している。温度槽2は断熱パネルによって形成されており、その内部は冷却器3、加熱器4および送風機5を備えた温度制御機構6によって所定の温度状態に保持されている。
【0026】
温度槽2の正面の下側部分には、電子基板などのワークWを温度槽2に投入するための投入口10が設けられている。温度槽2の正面の上側部分には、温度槽2内に配置された試験位置Eにおいて環境試験が行なわれたワークWを温度槽2から外に排出するための排出口11が設けられている。温度槽2内には、試験位置Eを経由して垂直方向に延びる垂直搬送路12と、投入口10と垂直搬送路12の下端部12aの間を水平に延びて接続している下側水平搬送路13と、垂直搬送路12の上端部12bと排出口11の間を水平に延びて接続している上側水平搬送路14が設けられている。なお、本例では、ワークWはワーク搬送用パレット15に載せられた状態で投入口10から温度槽2に逐次に投入される。
【0027】
投入口10から温度槽2に投入されたワークWは下側水平搬送路13に沿って伸びる一対の平行な下側水平レール(不図示)に載せられる。下側水平レールに載せられたワークWは、押し込み機構16によって下側水平レール上を投入口10から垂直搬送路12の下端部12aに向かって押し込まれる。押し込み機構16の駆動源17はエアシリンダであり、温度槽2の外側に配置されている。
【0028】
垂直搬送路12の下端部12aに押し込まれたワークWは、上下搬送機構20によって、一定の搬送ピッチで上方に間欠的に搬送される。より詳細には、垂直搬送路12内には、搬送方向に一定間隔で複数の受け渡し位置21(1)〜21(8)が設定されており、押し込み機構16によってワークWは下端の受け渡し位置21(1)に配置される。ワークWが受け渡し位置21(1)に配置されると、上下搬送機構20は、当該受け渡し位置21(1)から上方(搬送方向の下流側)に隣接する次の受け渡し位置21(2)までワークWを搬送する動作と、次の受け渡し位置21(2)においてワークWを一時的に停止させる動作を行う。また、上下搬送機構20は、受け渡し位置21(2)においてワークWを一時的に停止させた後に、当該受け渡し位置21(2)から上方に隣接する次の受け渡し位置21(3)までワークWを搬送する動作と、次の受け渡し位置21(3)においてワークWを一時的に停止させる動作を行う。上下搬送機構20は、これらの動作を繰り返し行ってワークWを上方(搬送方向の下流側)の受け渡し位置21(4)〜21(8)に逐次に搬送する。
【0029】
ここで、垂直搬送路12の途中の受け渡し位置21(4)は試験位置Eとなっており、ワークWはこれらの試験位置Eに到達するまでの間に所定に温度状態とされる。そして、試験位置Eに逐次に停止するワークWに対して環境試験が施される。本例では、環境試験は、試験装置22であるプローブユニットの通電用端子を装置前方からワークWに接触させて行う通電試験である。通電試験はワークWがワーク搬送用パレット15に載せられた状態のままで行なわれる。また、通電試験は、上下搬送機構20がワークWを受け渡し位置21(4)に一時的に停止させている動作の間に行なわれる。
【0030】
環境試験が終了したワークWは、上下搬送機構20によって、更に、上方に搬送される。ワークWが垂直搬送路12の上端部12bに到達すると、すなわち、上端の受け渡し位置21(8)に到達すると、ワークWは、引き出し機構23によって、垂直搬送路12の上端部12bから上側水平搬送路14に沿って伸びる一対の平行な上側水平レール(不図示)上に引き出される。また、引き出し機構23によって上側水平レール上を移動させられて、排出口11から排出される。引き出し機構23の駆動源24はエアシリンダであり、温度槽2の外側に配置されている。
【0031】
(上下搬送機構)
図2(a)は上下搬送機構20を構成するシャフトおよび枠部材を取り出して示す側面図であり、図2(b)は上下搬送機構20を上方から見た平面図である。図2(a)、(b)に示すように、上下搬送機構20は、垂直搬送路12の装置幅方向の外側で垂直搬送路12に沿って垂直方向に延びている4本のシャフト(第1部材)31と、垂直搬送路12の装置幅方向の外側で垂直搬送路12に沿って垂直方向に延びている一対の枠部材(第2部材)32を備えている。
【0032】
ここで、垂直搬送路12は、図2(b)に示すように、搬送方向と直交する矩形断面12cを備えており、4本のシャフト31のそれぞれは、この矩形断面12cの四隅部分の外側に配置されている。より詳細には、垂直搬送路12の矩形断面12cは装置幅方向が長く、装置前後方向が短い矩形であり、4本のシャフト31のそれぞれは、矩形断面12cの装置幅方向で対向している短辺の外側に配置されている。装置幅方向において垂直搬送路12の一方側に配置された2本のシャフト31は装置前後方向から見たときに重なっており、垂直搬送路12の他方側に配置された2本のシャフト31も装置前後方向から見たときに重なっている。
【0033】
一対の枠部材32は、装置幅方向において垂直搬送路12を両側から挟んでいる。装置幅方向において垂直搬送路12の一方側に配置された一方の枠部材32は、垂直搬送路12の一方側に配置された2本のシャフト31の間に配置されている。垂直搬送路12の他方側に配置された他方の枠部材32は、垂直搬送路12の他方側に配置された2本のシャフト31の間に配置されている。
【0034】
シャフト31のそれぞれには、複数の第1支持爪33が垂直方向(搬送方向)に一定間隔で設けられている。各シャフト31に設けられている各第1支持爪33は、その上端面がシャフト31の軸線Lと直交する方向に延びている。本例では、各第1支持爪33は上下方向に連結されて一つの第1爪部材34として構成されており、第1爪部材34は各シャフト31の側面に固定されている。搬送方向で隣接する第1支持爪33の間隔(上端面と上端面の間隔)は、図2(a)に示すように、垂直搬送路12上で隣接している受け渡し位置21(1)〜21(8)の間隔と同一である。
【0035】
4本のシャフト31の同じ高さ位置から突出する第1支持爪33を垂直搬送路12に突出させた状態では、図2(b)に示すように、ワークWを搭載したワーク搬送用パレット15を垂直搬送路12内において下方から支持することができる。なお、各第1支持爪33は、それぞれ独立した状態でシャフト31の側面に固定されていてもよい。また、各第1支持爪33は、シャフト31に対して軸線Lと直交するように取り付けられたピンから構成されていてもよい。
【0036】
一対の枠部材32のそれぞれには、各受け渡し位置21(1)〜21(8)のそれぞれに対応する位置に第2支持爪35が設けられている。搬送方向で隣接する第2支持爪35の間隔は、垂直搬送路12上で隣接する受け渡し位置21(1)〜21(8)の間隔と同一となっている。各枠部材32は、第2支持爪35として、各枠部材32の装置前端から受け渡し位置21(1)〜21(8)に向かって突出している前側支持爪36と、装置後端から受け渡し位置21(1)〜21(8)に向かって突出している後側支持爪37を備えている。前側支持爪36および後側支持爪37のそれぞれは、その上端面がシャフト31の軸線Lと直交する方向に延びている。本例では、各前側支持爪36は上下方向に連結されて一つの第2爪部材38として構成されており、各後側支持爪37は上下方向に連結されて一つの第2爪部材39として構成されている。第2爪部材38、39は、それぞれ各枠部材32の縦枠部分32aの側面に固定されている。
【0037】
一対の枠部材32の同じ高さ位置から突出する各第2支持爪35を各受け渡し位置21(1)〜21(8)に配置した状態では、図2(b)に示すように、ワークWを搭載したワーク搬送用パレット15を各受け渡し位置21(1)〜21(8)において下方から支持することできる。ここで、第2支持爪35は第1支持爪33と互いに干渉することがない位置に設けられている。なお、各第2支持爪35は、それぞれ独立した状態で枠部材32に固定されていてもよい。また、各第2支持爪35は、枠部材32の縦枠部分32aに、縦枠部分32aの軸線と直交するように取り付けられたピンから構成されていてもよい。
【0038】
次に、上下搬送機構20は、シャフト31を軸線L方向に往復移動させることにより、シャフト31を垂直搬送路12に沿って垂直方向に往復移動させる第1駆動機構41を備えている。また、上下搬送機構20は、シャフト31を軸線L回りに回動させることによって、第1支持爪33が垂直搬送路12に突出する第1支持位置31Aと第1支持爪33が垂直搬送路12から退避する第1退避位置31Bの間でシャフト31を移動させる第2駆動機構42を備えている。さらに、上下搬送機構20は、枠部材32を垂直搬送路12に対して接近する方向および離れる方向に移動させることにより、各第2支持爪35が各受け渡し位置21(1)〜21(8)に突出する第2支持位置32Aと、各第2支持爪35が各受け渡し位置21(1)〜21(8)から退避する第2退避位置32Bの間で枠部材32を移動させる第3駆動機構43を備えている。
【0039】
ここで、第1駆動機構41、第2駆動機構42および第3駆動機構43のそれぞれの駆動源44(1)〜44(3)はエアシリンダであり、温度槽2の下方に配置されている。また、駆動源44(1)の駆動力を各シャフト31に伝達する第1駆動機構41の駆動力伝達機構45(1)、駆動源44(2)の駆動力を各シャフト31に伝達する第2駆動機構42の駆動力伝達機構45(2)、および、駆動源44(3)の駆動力を一対の枠部材32に伝達する第3駆動機構43の駆動力伝達機構45(3)も温度槽2の下方に配置されている(図1参照)。
【0040】
また、上下搬送機構20は、図2(a)に示すように、第1駆動機構41、第2駆動機構42および第3駆動機構43の駆動を制御する駆動制御部46を備えている。駆動制御部46は、第1駆動機構41、第2駆動機構42および第3駆動機構43を駆動制御することによって、各受け渡し位置21(1)〜21(7)において第2支持爪35が支持しているワークWを、第1支持位置31Aに配置した各シャフト31の第1支持爪33によって支持した後にシャフト31を垂直搬送路12に沿って移動させて、各受け渡し位置21(1)〜21(7)の上方(搬送方向の下流側)に隣接している次の受け渡し位置21(2)〜21(8)において第2支持爪35に受け渡し、しかる後に、各シャフト31を第1退避位置31Bに配置して垂直搬送路12に沿って移動させて元の位置に戻す動作を行うことにより、ワークWを垂直搬送路12に沿って間欠的に上方に搬送する。
【0041】
なお、上下搬送機構20は、ワークWを垂直搬送路12に沿って搬送するために当該垂直搬送路12に沿って一定のピッチで形成された第1支持爪33を備えた送り機構(シャフト31、第1駆動機構41、第2駆動機構42および駆動制御部46)と、第1支持爪33によって移動させられたワークWを一時的に支持する第2支持爪35を備えた支持機構(枠部材32、第3駆動機構43および駆動制御部46)を有するものであると換言することができる。この場合、送り機構は、垂直搬送路12外に位置する第1支持爪33を垂直搬送路12内に移動させた後に垂直搬送路12に沿って移動させることにより、ワークWを搬送方向の下流側に1ピッチ分搬送し、その後、第1支持爪を垂直搬送路12外に退避させた後に垂直搬送路12に沿って移動させることにより元の位置に戻す動作を行う機構である。支持機構は、第2支持爪35を垂直搬送路12外の位置から垂直搬送路12内の位置に移動させて、第1搬送爪33によって1ピッチ分搬送されたワークWを一時的に保持し、その後、第1搬送爪33によってワークWが再び支持されると、第2支持爪35を垂直搬送路12外の位置に移動させる動作を行う機構である。
【0042】
(ワークを垂直搬送路に沿って上方に搬送する搬送動作)
図3は上下搬送機構20がワークWを垂直搬送路12に沿って上方に搬送する搬送動作の説明図である。図3(a)に示す状態は初期状態であり、垂直搬送路12の受け渡し位置21(1)にワークWが押し込まれた状態を示している。また、各受け渡し位置21(2)〜(7)において各ワークWが一時停止している状態を示している。各ワークWは、第2支持位置32Aに配置された枠部材32の第2支持爪35によって支持されている。シャフト31は予め設定した初期位置Iに配置されている。なお、以下の説明では、受け渡し位置21(1)に位置しているワークWの搬送動作を説明するが、他のワークWも同様に並行して搬送される。
【0043】
ワークWを上方に搬送する際には、まず、図3(a)に示すように、駆動制御部46は、シャフト31を第1支持位置31Aに配置して第1支持爪33を垂直搬送路12に突出させる(第1支持爪突出動作)。
【0044】
次に、図3(b)に示すように、第1支持爪33が受け渡し位置21(1)を上方に向かって通過するようにシャフト31を上方に移動させて、第2支持爪35によって受け渡し位置21(1)で支持されているワークWを第1支持爪33によって支持する(第1支持爪支持動作)。この結果、受け渡し位置21(1)において、第2支持爪35から第1支持爪33にワークWがスムーズに受け渡される。ここで、第1支持爪突出動作と第1支持爪支持動作の動作期間を部分的に重ねて駆動制御することもできるが、本例では、第1支持爪突出動作が完了した後に、第1支持爪支持動作を行っている。
【0045】
その後、図3(b)に示すように、更にシャフト31を上方に移動させるとともに、図3(c)に示すように、枠部材32を第2退避位置32Bに移動させて第2支持爪35を垂直搬送路12から退避させる(搬送動作)。
【0046】
本例では、搬送動作において、第1支持爪33に支持されたワークWが次の受け渡し位置21(2)よりも上方に位置する上方位置Jまでシャフト31を移動させる。また、搬送動作では、第1支持爪33に支持されたワークWが受け渡し位置21(1)と次の受け渡し位置21(2)の間の途中位置Kに達するまでシャフト31を移動させる第1搬送動作を行なった後に、枠部材32を第2退避位置32Bに移動させて第2支持爪35を垂直搬送路12から退避させる退避動作を行い、しかる後に、シャフト31を途中位置Kから上方位置Jに移動させる第2搬送動作を行なっている。これにより、第1支持爪33に支持されたワークWと第2支持爪35が衝突することを確実に回避できる。
【0047】
そして、図3(d)に示すように、第1支持爪33に支持されたワークWが次の受け渡し位置21(2)に達した後に、枠部材32を第2支持位置32Aに移動させて第2支持爪35を次の受け渡し位置21(2)に突出させるとともに、図3(e)に示すように、次の受け渡し位置21(2)において第1支持爪33によって支持されているワークWを第2支持爪35によって支持する(第2支持爪支持動作)。
【0048】
ここで、本例では、搬送動作において第1支持爪33に支持されたワークWが次の受け渡し位置21(2)よりも上方に位置する上方位置Jまでシャフト31を移動させているので(図3(c)参照)、第2支持爪支持動作では、第1支持爪33が次の受け渡し位置21(2)を下方に向かって通過するようにシャフト31を下方に移動させて、第1支持爪33から第2支持爪35にワークWを受け渡す。この結果、次の受け渡し位置21(2)において、第1支持爪33から第2支持爪35にワークWがスムーズに受け渡される。
【0049】
しかる後に、図3(f)に示すように、シャフト31を第1退避位置31Bに配置して第1支持爪33を垂直搬送路12から退避させるとともに、シャフト31を下方に移動させて初期位置Iに戻す(戻し動作)。すなわち、第2支持爪35に支持されたワークWと第1支持爪33が衝突することを回避しながら、シャフト31を初期位置Iに戻す。本例では、シャフト31を第1退避位置31Bに配置する動作が完了した後に、シャフト31を下方に移動させる。
【0050】
この後、初期位置Iにおいて、シャフト31を第1支持位置31Aに配置して第1支持爪33を垂直搬送路12に突出させる第1支持爪突出動作を行うと、図3(a)に示す初期状態と同様の状態が形成される。従って、図3(a)〜図3(f)に示す動作を繰り返すことによって、ワークWを上方に搬送することができる。
【0051】
(作用効果)
以上、本例によれば、ワークWを各受け渡し位置21(1)〜21(7)から搬送方向の下流側に隣接している次の受け渡し位置21(2)〜21(8)まで搬送する第1支持爪33は、従来のように垂直搬送路12の上方および下方に配置されたスプロケットの間に架け渡した無端チェーンに設けられたものではなく、垂直搬送路12に沿って延びるシャフト31に設けられている。ここで、垂直搬送路12に沿って延びるシャフト31の温度変化による伸縮は、垂直搬送路12の2倍以上の長さを備える金属製の無端チェーンの温度変化による伸縮と比較して小さくすることが容易なので、シャフト31に設けられた第1支持爪33の位置が温度変化によって変化することを抑制できる。また、垂直搬送路12内に予め設定されている受け渡し位置21(1)〜21(8)には、受け渡し位置21(1)〜21(8)に対して進退可能な第2支持爪35が設けられており、ワークWは、各受け渡し位置21(1)〜21(8)において第1支持爪33と第2支持爪35との間で受け渡されながら搬送される。従って、ワークWを垂直搬送路12に沿って間欠的に搬送する際に、垂直搬送路12上におけるワークWの各一時停止位置が温度によって変化することがない。
【0052】
また、本例では、第1支持爪33はシャフト31に設けられているので、シャフト31を軸線L方向に往復移動させることにより、第1支持爪33を垂直搬送路12に沿って移動させることができる。従って、第1駆動機構41を簡易な構成とすることができる。また、シャフト31を軸線L回りに回動させることにより、第1支持爪33の垂直搬送路12への進退を実現できる。従って、第2駆動機構42を簡易な構成とすることができる。さらに、本例では、複数の第2支持爪35は枠状の枠部材32に設けられているので、枠部材32を垂直搬送路12に対して接近する方向および離れる方向に移動させることにより、第2支持爪35の各受け渡し位置21(1)〜21(8)への進退を実現できる。従って、第3駆動機構43を簡易な構成とすることができる。
【0053】
次に、本例では、垂直搬送路12は搬送方向と直交する矩形断面12cを備えており、4本のシャフト31は、矩形断面12cの4隅部分の外側に配置されており、一対の枠部材32は、矩形断面12cの対向する2辺の外側に配置されている。従って、第1支持爪33、或いは、第2支持爪35によってワークW(ワーク搬送用パレット15)をバランス良く支持することができる。
【0054】
また、本例では、上下搬送機構20を構成している4本のシャフト31および一対の枠部材32は、垂直搬送路12に対して装置幅方向の外側に配置されており、垂直搬送路12の装置前後方向には配置されていない。従って、例えば、排出口11を温度槽2の背面の上側部分に設けるとともに、垂直搬送路12の上端部12bから排出口11に連続する上側水平搬送路を垂直搬送路12の装置後方に設け、垂直搬送路12の上端部12bに到達したワークWを排出口11に向かって押し出す押し出し機構を備えれば、上下搬送機構20の構成を変更することなく、温度槽2の前面の投入口10から投入したワークWを、温度槽2の背面の排出口11から排出することができる。
【0055】
さらに、本例では、搬送動作において、第1支持爪33に支持されたワークWが次の受け渡し位置21(2)よりも上方に位置する上方位置Jまでシャフト31を上方に移動させており、第2支持爪支持動作では、第1支持爪33が次の受け渡し位置21(2)を下方に向かって通過するようにシャフト31を下方に移動させて、第1支持爪33から第2支持爪35にワークWを受け渡している。従って、一定間隔で設けられている第2支持爪35の位置を、各受け渡し位置21(2)〜(8)から、シャフト31が上方位置Jに到達したときの第1支持爪33の高さ位置までの区間H1(図3(c)参照)で上方に移動させても、第1支持爪33から第2支持爪35にワークWを受け渡すことができる。従って、駆動制御部46による駆動制御方法を変更しなくても、垂直搬送路12の途中で搬送ピッチを変更できる。
【0056】
また、本例では、搬送動作において、第1支持爪33に支持されたワークWが受け渡し位置21(1)と次の受け渡し位置21(2)の間の途中位置Kに達するまでシャフト31を移動させる第1搬送動作を行なった後に、枠部材32を第2退避位置32Bに移動させて第2支持爪35を垂直搬送路12から退避させる退避動作を行い、しかる後に、シャフト31を途中位置Kから上方位置Jに移動させる第2搬送動作を行い、その後に、第1支持爪33が次の受け渡し位置21(2)を下方に向かって通過するようにシャフト31を下方に移動させて、第1支持爪33から第2支持爪35にワークWを受け渡している。従って、予め一定間隔で設けられている第2支持爪35の位置を、各受け渡し位置21(2)〜(8)から、シャフト31が途中位置Kに到達したときにワークWと第2支持爪35が干渉しない高さ位置までの区間H2(図3(c)参照)で下方に移動させても、第1支持爪33から第2支持爪35にワークWを受け渡すことができる。従って、駆動制御部46による駆動制御方法を変更しなくても、垂直搬送路12の途中で搬送ピッチを変更できる。
【0057】
(変形例)
なお、上記の例では、搬送動作において、シャフト31を上方位置Jまで移動させており、第2支持爪支持動作では、第1支持爪33が次の受け渡し位置21(2)を下方に向かって通過するようにシャフト31を下方に移動させて、第1支持爪33から第2支持爪35にワークWを受け渡しているが、第1支持爪33に支持されたワークWが次の受け渡し位置21(2)に達した時点でシャフト31の上方への移動を停止して、この後に枠部材32を第2支持位置32Aに移動させて第2支持爪35を次の受け渡し位置21(2)に突出させて、第1支持爪33によって支持されているワークWが第2支持爪35によって支持することもできる。この場合には、第2支持爪支持動作において、枠部材32を第2支持位置32Aに移動させて第2支持爪35を次の受け渡し位置21(2)に突出させると、第2支持爪35がワークW(ワーク搬送用パレット15)の下側に摺接するように突出してワークWを支持する。
【0058】
また、上記の例では、初期位置Iでは、図3(a)に示すように、第1支持爪33が第2支持爪35よりも下方に位置する状態となっているが、初期位置Iにおいて第1支持爪33と第2支持爪35が同じ高さ位置に配置されていてもよい。この場合には、第1支持爪突出動作において、シャフト31を第1支持位置31Aに配置して第1支持爪33を垂直搬送路12に突出させると、第1支持爪33がワークW(ワーク搬送用パレット15)の下側に摺接するように突出して、第2支持爪35によって支持されているワークWを第1支持爪33が支持する。すなわち、第1支持爪突出動作と、第1支持爪支持動作が同時に行なわれる。
【0059】
さらに、第2支持爪35を受け渡し位置21(2)〜21(8)に対して進退可能に構成し、付勢部材によって受け渡し位置21(2)〜21(8)に突出する状態に付勢しておくとともに、受け渡し位置21(2)〜21(8)を通過するワークW(ワーク搬送用パレット15)に当接することによって第2支持爪35が受け渡し位置21(2)〜21(8)から退避させられるように構成しておけば、第2支持爪35が設けられている枠部材32を第2支持位置32Aと第2退避位置32Bとの間で移動させなくても、ワークWを上方に向かって間欠的に搬送することができる。
【0060】
また、上記の例では、シャフト31を4本用いているが、例えば、装置幅方向における垂直搬送路12の両側と、垂直搬送路12の装置後側にシャフト31を配置すれば、3本のシャフト31によってワークW(ワーク搬送用パレット15)を搬送することができる。
【0061】
(ワークを垂直搬送路に沿って下方に搬送する搬送動作)
次に、上記の環境試験装置1に搭載されている上下搬送機構20を用いてワークWを垂直搬送路12に沿って下方に搬送する動作を説明する。図4は上下搬送機構20がワークWを垂直搬送路12に沿って下方に搬送する搬送動作の説明図である。
【0062】
図4(a)に示すように、本例では、初期状態において、垂直搬送路12の下端の受け渡し位置21(1)を除いた各受け渡し位置21(2)〜21(8)にワークWが搬送されているものとする。各ワークWは、第2支持位置32Aに配置された枠部材32の第2支持爪35によって各受け渡し位置21(2)〜21(8)に支持されている。シャフト31は予め設定した初期位置Mに配置されている。なお、以下の説明では、受け渡し位置21(2)に位置しているワークWの搬送を説明するが、他のワークWも同様にして並行に搬送される。
【0063】
ワークWを下方に搬送する際には、まず、図4(a)に示すように、駆動制御部46は、シャフト31を第1支持位置31Aに配置して、第1支持爪33を垂直搬送路12に突出させる(第1支持爪突出動作)。
【0064】
次に、図4(b)に示すように、第1支持爪33が受け渡し位置21(2)を上方に向かって通過するようにシャフト31を上方に移動させて、第2支持爪35によって受け渡し位置21(2)で支持されているワークWを第1支持爪33によって支持する(第1支持爪支持動作)。この結果、受け渡し位置21(2)において、第2支持爪35から第1支持爪33にワークWがスムーズに受け渡される。ここで、第1支持爪突出動作と第1支持爪支持動作の動作期間を部分的に重ねて駆動制御することもできるが、本例では、第1支持爪突出動作が完了した後に、第1支持爪支持動作を行う。
【0065】
その後、図4(c)に示すように、枠部材32を第2退避位置32Bに移動させて第2支持爪35を垂直搬送路12から退避させるとともに、シャフト31を下方に移動させる(搬送動作)。すなわち、第1支持爪33に支持されたワークWと第2支持爪35が衝突することを回避しながら、シャフト31を下方に移動させる。本例では、枠部材32を第2退避位置32Bに移動させる動作を完了した後に、シャフト31を下方に移動させる。
【0066】
そして、図4(d)に示すように、第1支持爪33に支持されたワークWが受け渡し位置21(2)を通過した後に、枠部材32を第2支持位置32Aに移動させて第2支持爪35を次の受け渡し位置21(1)に突出させるとともに、図4(e)に示すように、次の受け渡し位置21(1)において第1支持爪33によって支持されているワークWを第2支持爪35によって支持する(第2支持爪支持動作)。第2支持爪支持動作では、第1支持爪33が次の受け渡し位置21(1)を下方に向かって通過するようにシャフト31を下方に移動させて、第1支持爪33から第2支持爪35にワークWを受け渡す。この結果、次の受け渡し位置21(1)において、第1支持爪33から第2支持爪35にワークWがスムーズに受け渡される。
【0067】
しかる後に、図4(f)に示すように、シャフト31を第1退避位置31Bに配置して第1支持爪33を垂直搬送路12から退避させるとともに、シャフト31を上方に移動させて初期位置Mに戻す(戻し動作)。すなわち、第2支持爪35に支持されたワークWと第1支持爪33が衝突することを回避しながら、シャフト31を初期位置Mに戻す。本例では、シャフト31を第1退避位置31Bに配置する動作が完了した後に、シャフト31を上方に移動させる。
【0068】
この後、初期位置Mにおいてシャフト31を第1支持位置31Aに配置して、第1支持爪33を垂直搬送路12に突出させる第1支持爪突出動作を行うと、図4(a)に示す初期状態と同様の状態が形成される。従って、図4(a)〜図4(f)に示す動作を繰り返すことによって、ワークWを上方に搬送することができる。
【0069】
なお、上記の例では、初期位置Mにおいて、図4(a)に示すように、第1支持爪33が搬送方向で隣接する第2支持爪35の間に位置する状態となっているが、初期位置Mにおいて第1支持爪33と第2支持爪35が同じ高さ位置に配置されていてもよい。この場合には、第1支持爪突出動作においてシャフト31を第1支持位置31Aに配置して第1支持爪33を垂直搬送路12に突出させると、第1支持爪33がワークW(ワーク搬送用パレット15)の下側に摺接するように突出して、第2支持爪35によって支持されているワークWを第1支持爪33が支持する。すなわち、第1支持爪突出動作と、第1支持爪支持動作が同時に行なわれる。また、この場合には、第1支持爪突出動作と第1支持爪支持動作が同時に行なわれるので、第1支持爪支持動作において、第1支持爪33が受け渡し位置21(2)を上方に向かって通過するようにシャフト31を上方に移動させる必要がない。
【0070】
ここで、環境試験装置1において、ワークWを垂直搬送路12に沿って下方に間欠的に搬送しながら環境試験を行う場合には、投入口10と排出口11の位置を逆にして、温度槽2の前面の上側部分に投入口を設け、下側部分に排出口を設ける。また、投入口と垂直搬送路12の上端部12bの間に設けた上側水平搬送路にワークW(ワーク搬送用パレット15)を投入口から垂直搬送路12の上端部12bに押し込む押し込み機構を設け、排出口と垂直搬送路12の下端部12aの間に設けた下側水平搬送路にワークW(ワーク搬送用パレット15)を垂直搬送路12の下端部12aから排出口に引き出す引き出し機構を設ければよい。
【符号の説明】
【0071】
1・・・環境試験装置、2・・・温度槽、3・・・冷却器、4・・・加熱器、5・・・送風機、6・・・温度制御機構、10・・・投入口、11・・・排出口、12・・・垂直搬送路、12a・・・下端部、12b・・・上端部、12c・・・矩形断面、13・・・下側水平搬送路、14・・・上側水平搬送路、15・・・ワーク搬送用パレット、16・・・押し込み機構、17・・・駆動源、20・・・上下搬送機構、21・・・受け渡し位置、22・・・試験装置、23・・・引き出し機構、24・・・駆動源、31・・・シャフト(第1部材)、31A・・・支持位置、31B・・・退避位置、32・・・枠部材(第2部材)、32a・・・縦枠部分、32A・・・支持位置、32B・・・退避位置、33・・・第1支持爪、34・・・第1爪部材、35・・・第2支持爪、36・・・前側支持爪、37・・・後側支持爪、38・39・・・第2爪部材、41・・・第1駆動機構、42・・・第2駆動機構、43・・・第3駆動機構、44・・・駆動源、45・・・駆動力伝達機構、46・・・駆動制御部、I・・・初期位置、J・・・上方位置、K・・・途中位置、L・・・軸線、M・・・初期位置、W・・・ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる搬送路と、
前記搬送路内の搬送方向で離れた複数個所に予め設定されている受け渡し位置と、
前記搬送路に沿って延びており、複数の第1支持爪が前記搬送方向に一定間隔で設けられている第1部材と、
前記複数の受け渡し位置のそれぞれに対応する位置に設けられている複数の第2支持爪と、
前記第1部材を前記搬送路に沿って往復移動させる第1駆動機構と、
前記第1支持爪が前記搬送路に突出する第1支持位置と前記第1支持爪が前記搬送路から退避する第1退避位置との間で前記第1部材を移動させる第2駆動機構と、
前記第1駆動機構および前記第2駆動機構の駆動を制御する駆動制御部とを有し、
前記第2支持爪は、前記第1支持爪と干渉しない状態で、前記受け渡し位置に対して進退可能となっており、
前記駆動制御部は、前記受け渡し位置において前記第2支持爪が支持している搬送対象物を、前記第1支持位置に配置した第1部材の前記第1支持爪によって支持した後に前記第1部材を前記搬送路に沿って移動させ、前記受け渡し位置の搬送方向の下流側に隣接している次の受け渡し位置において前記第2支持爪に受け渡し、しかる後に、前記第1部材を前記第1退避位置に配置して前記搬送路に沿って移動させて元の位置に戻す動作を行うことにより、前記搬送対象物を間欠的に搬送することを特徴とする上下搬送機構。
【請求項2】
請求項1において、
搬送方向に沿って延びており、前記複数の第2支持爪が設けられている第2部材と、
各第2支持爪が各受け渡し位置に突出する第2支持位置と各第2支持爪が各受け渡し位置から退避する第2退避位置との間で前記第2部材を移動させる第3駆動機構とを有し、
前記第3駆動機構は、前記駆動制御部によって駆動制御され、
前記駆動制御部は、前記第1支持爪から受け渡される前記搬送対象物を前記第2支持位置に配置した前記第2部材の前記第2支持爪によって一時的に支持し、前記第2支持爪が支持している前記搬送対象物が前記第1支持爪によって支持されると前記第2部材を前記第2退避位置に配置することを特徴とする上下搬送機構。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1部材は、棒状であり、
前記第1駆動機構は、前記第1部材をその軸線方向に移動させ、
前記第2駆動機構は、前記第1部材をその軸線回りに回動させることにより、前記第1部材を前記第1支持位置と前記第1退避位置との間で移動させることを特徴とする上下搬送機構。
【請求項4】
請求項3において、
前記第3駆動機構は、前記第2部材を前記搬送路に対して接近する方向および離れる方向に移動させることにより、前記第2部材を第2支持位置と第2退避位置との間で移動させることを特徴とする上下搬送機構。
【請求項5】
請求項4において、
前記搬送路は、搬送方向と直交する矩形断面を備えており、
前記第1部材として、前記矩形断面の4隅部分の外側に配置された4本の第1部材を備えており、
前記第2部材として、前記矩形断面の対向する2辺の外側に配置された一対の第2部材を備えていることを特徴とする上下搬送機構。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記駆動制御部は、第1駆動機構、第2駆動機構および第3駆動機構を駆動制御して、以下の(1)〜(5)の動作をこの順番で行うことを特徴とする上下搬送機構。
(1)予め設定した初期位置に配置されている前記第1部材を第1支持位置に配置して前記第1支持爪を前記搬送路内に突出させる第1支持爪突出動作。
(2)前記第2支持位置に配置された前記第2部材の第2支持爪によって前記受け渡し位置で支持されている前記搬送対象物を前記第1支持爪によって支持する第1支持爪支持動作。
(3)前記第1部材を上方に移動させるとともに、前記第2部材を第2退避位置に移動させて前記第2支持爪を前記搬送路から退避させる搬送動作。
(4)前記第1支持爪に支持された前記搬送対象物が前記次の受け渡し位置に達した後に、前記第2部材を前記第2支持位置に移動させて前記第2支持爪を前記次の受け渡し位置に突出させるとともに、前記次の受け渡し位置において前記第1支持爪によって支持されている前記搬送対象物を前記第2支持爪によって支持する第2支持爪支持動作。
(5)前記第1部材を前記第1退避位置に配置して前記第1支持爪を前記搬送路から退避させるとともに、前記第1部材を下方に移動させて前記初期位置に戻す戻し動作。
【請求項7】
請求項6において、
前記搬送動作では、前記第1支持爪に支持された前記搬送対象物が前記次の受け渡し位置よりも上方の上方位置まで前記第1部材を移動させ、
前記第2支持爪支持動作では、前記第1支持爪が前記次の受け渡し位置を下方に向かって通過するように前記第1部材を下方に移動させて、前記第1支持爪から前記第2支持爪に前記搬送対象物を受け渡すことを特徴とする上下搬送機構。
【請求項8】
請求項7において、
前記搬送動作では、前記第1支持爪に支持された前記搬送対象物が前記受け渡し位置と前記次の受け渡し位置の間の途中位置に達するまで前記第1部材を移動させ、その後、前記第2部材を前記第2退避位置に移動させ、しかる後に、前記第1部材を前記途中位置から前記上方位置に移動させることを特徴とする上下搬送機構。
【請求項9】
請求項4または5において、
前記駆動制御部は、第1駆動機構、第2駆動機構および第3駆動機構を駆動制御して、以下の(1)〜(5)の動作をこの順番で行うことを特徴とする上下搬送機構。
(1)予め設定した初期位置に配置されている前記第1部材を第1支持位置に配置して前記第1支持爪を前記搬送路内に突出させる第1支持爪突出動作。
(2)前記第2支持位置に配置された前記第2部材の第2支持爪によって前記受け渡し位置で支持されている前記搬送対象物を前記第1支持爪によって支持する第1支持爪支持動作。
(3)前記第2部材を第2退避位置に移動させて前記第2支持爪を前記搬送路から退避させるとともに、前記第1部材を下方に移動させる搬送動作。
(4)前記第1支持爪に支持された前記搬送対象物が前記受け渡し位置を通過した後に、前記第2部材を前記第2支持位置に移動させて前記第2支持爪を前記次の受け渡し位置に突出させるとともに、前記次の受け渡し位置において前記第1支持爪によって支持されている前記搬送対象物を前記第2支持爪によって支持する第2支持爪支持動作。
(5)前記第1部材を前記第1退避位置に配置して前記第1支持爪を前記搬送路から退避させるとともに、前記第1部材を上方に移動させて前記初期位置に戻す戻し動作。
【請求項10】
請求項9において、
前記第2支持爪支持動作では、前記第1支持爪が前記次の受け渡し位置を下方に向かって通過するように前記第1部材を下方に移動させることにより、前記第1支持爪から前記第2支持爪に前記搬送対象物を受け渡すことを特徴とする上下搬送機構。
【請求項11】
請求項6ないし10のうちのいずれかの項において
前記第1支持爪支持動作では、前記第1支持爪が前記受け渡し位置を上方に向かって通過するように前記第1部材を上方に移動させることにより、前記第2支持爪から前記第1支持爪に前記搬送対象物を受け渡すことを特徴とする上下搬送機構。
【請求項12】
請求項1ないし11のうちのいずれかの項において、
前記受け渡し位置は、前記搬送路上に一定のピッチで設けられており、
前記第1支持爪が設けられている一定間隔は、前記ピッチと同一であることを特徴とする上下搬送機構。
【請求項13】
槽内温度が所定の状態に調整される温度槽と、
前記温度槽内に配置した試験位置と、
前記試験位置を経由して上下方向に延びる搬送路と、
試験対象となるワークを前記搬送路に沿って搬送する請求項1ないし12のうちのいずれかの項に記載の上下搬送機構とを有することを特徴とする環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−18608(P2013−18608A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153300(P2011−153300)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】