説明

上気道の疾患およびインフルエンザ症候群を治療するための組成物

本発明は、ベンゾフェナントリジンアルカロイド、Hippophae rhamnoidesの抽出物およびEchinacea angustifoliaの抽出物に基づく組成物であって、抗菌性、抗ウイルス性および抗炎症性活性を有すると共に上気道の細菌およびウイルス感染の治療およびインフルエンザの治療において有用である組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾフェナントリジンアルカロイド、Hippophae rhamnoides(ヒッポファエ・ラムノイデス:沙棘)の抽出物およびEchinacea angustifolia(エキナセア・アンガスティフォリア)の抽出物に基づく組成物であって、抗菌性、抗ウイルス性および抗炎症性活性を有すると共に上気道の細菌およびウイルス感染の治療およびインフルエンザの治療において有用である組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは、全世界において毎年数百万人の人々を侵し、就労時間を著しく損失し、衰弱患者、高齢者および小さな子供達において致命的となり得る重度の合併症を伴うので、この疾患の予防的および治癒的治療が重要な目的である。
【0003】
インフルエンザは、その合併症故に高齢患者において特に危険であり、とりわけ、老齢期に典型的な気道疾患を既に患っている場合は危険である。幼児において、同じ問題が生じ、インフルエンザは、継続的な風邪と再発の後遺症を残す。長年、予防ワクチン接種が、ウイルス性疾患に対処するための最も効果的な方法であると考えられていた。しかしながら、インフルエンザの場合、ウイルスの新しい耐性変異体の出現により引き起こされる異常な抗原突然変異のために、この手段の効能は限られている。
【0004】
この理由から、ウイルス感染の化学的治療および化学的予防が今日の標準である。インフルエンザの治療のために種々の生成物が存在し、1960年に導入された旧型のアダマンタンから最近のノイラミニダーゼ阻害剤まであるが、効能が低く、しばしば毒性の問題を呈し、ウイルス抵抗性を進行させる。これらの物質は、菌株AおよびBに与える影響が異なるので、感染型が先験的に知られていない場合は、両方の菌株を攻撃する物質が必須である。
【0005】
紅潮、炎症、および喉に細菌および/または真菌が感染してプラークを形成することは、一般的インフルエンザ、風邪および類似疾患に伴う共通の症状である。平均して1年に3回まで子供と成人の両方を侵す一般的風邪およびインフルエンザは、主に、ウイルス感染に付随するものであり、その40%がライノウイルスにより引き起こされ、10%がコロナウイルスにより引き起こされ、同様の割合がアデノウイルスおよびパラインフルエンザウイルスにより引き起こされる。これらの疾患のための特別の治療は無いが、抗ヒスタミン薬、うっ血除去薬および抗炎症薬が、浮腫の減少が疼痛を軽減し、炎症を構成する疾患の長さを短縮させるので、有用であると考えられる。
【0006】
これらの疾患は、二次的細菌感染の発現による合併症を含むことがある。何故なら、副鼻腔の出口がしばしば粘膜のうっ血により詰まり、そこで、病原性細菌が容易に増殖し、発熱および局所的疼痛を引き起こし得るからである。この場合、対症療法に加えて、抗生物質による治療が必要である。
【0007】
現在用いられている治療補助薬は、可能性のある合併症を除去することに基づき、抗生物質、抗炎症薬および解熱剤により代表される。しかしながら、市場で現在入手できるすべての製剤が、子供及び妊婦により使用可能であるわけではない。抗生物質は、特に幼児においては、生体防御を低下させ、再発につながることになる。これは、成人患者(妊婦を含む)および子供達の両方に極めて無害であると共に抵抗性ウイルスを発生させない抗ウイルス性製剤が必須であることを意味している。従って、完全に寛容されると共に全ての疾患に作用する生成物を組み合わせる可能性が、医療従事者に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ベンゾフェナントリジンアルカロイドが抗菌、抗真菌、抗ウイルスおよび抗血管新生活性を有することが文献に報告されている。これらの化合物の最も代表的なものはサンギナリンであり、プラークを抑制し歯肉を保護するのに有用であるその抗菌および抗炎症活性のために今まで主に歯科医療従事者において用いられてきた。ベンゾフェナントリジンアルカロイドは、
・炎症に含まれおよび感染に対する免疫反応に含まれる核因子であるNFkBの阻害;
・抗血管新生活性:血管新生プロセスは炎症に含まれ、VEGF(血管内皮増殖因子)に依存し、その効果はインビトロではHUVECの移動において、インビボでは異なるモデルにおける血管新生において示されている。インビトロでは、サンギナリンは、細胞の移動、発芽および生存の誘因を、投与量に依存する程度に著しく抑制する;
・5−および12−リポキシゲナーゼの阻害:
のようなナノモル濃度で奏される複数の活性を伴う抗炎症効果によっても特徴づけられる。
【0009】
これらのアルカロイドは、炎症プロセスに対しておよび細菌および真菌感染において強力な相乗作用を呈するが、ウイルス感染に対するそれらの活性は程度が低い。Hippophae rhamnoides抽出物は、抗ウイルス性および、穏やかな抗菌特性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
a)ベンゾフェナントリジンアルカロイド;
b)Hippophae rhamnoidesの抽出物;
c)Echinacea angustifoliaの親油性抽出物
に基づく組成物であって、抗菌性、抗ウイルス性および抗炎症性活性を有すると共にインフルエンザおよび上気道の疾患の治療において有用である組成物に関する。
【0011】
本発明の組成物は、抗菌作用と共にインフルエンザウイルスの大部分の一般的菌株に対する強力な抗ウイルス活性を発揮し、それがインフルエンザによりしばしば生じる上気道の感染および細菌プラークの形成を防止する。本発明の組成物は、特に、化膿性耳炎および一般的な口内感染に提供される。さらに、その抗炎症作用は、風邪およびインフルエンザに通常伴う発熱および炎症を治療するのに有用である。
【0012】
本発明の組成物は、驚くべきことに、別々に投与される種々の成分の合計よりも強い、極めて強力な抗ウイルス性、抗菌性および抗炎症性活性を有することが分かった。前記効果は、先験的に予測できない相乗作用機構によるものであり、それは、問題の組み合わせの種々の成分の間で起こるものである。
【0013】
本発明によれば、組成物は種々の成分を以下の量(単位投与当たりの重量)含む:
a)ベンゾフェナントリジンアルカロイド:1〜5;
b)Hippophae rhamnoidesの抽出物:10〜100;
c)Echinacea angustifoliaの親油性抽出物:0.2〜2。
【0014】
特定の好ましい局面によれば、問題の組成物は種々の成分を以下の量(単位投与当たりの重量)含む:
a)ベンゾフェナントリジンアルカロイド:2〜4;
b)Hippophae rhamnoidesの抽出物:15〜45;
c)Echinacea angustifoliaの親油性抽出物:0.5〜1。
【0015】
本発明の好ましい局面によれば、ベンゾフェナントリジンアルカロイドは、サンギナリン、ケレリトリンおよびケリドニンから選択される、またはそれらを含む抽出物として存在するが、それらの異性体形態も含まれる。前記抽出物の例は、サンギナリア・カナデンシス(Sanguinaria canadensis)、マクレアヤ・コルダータ(Macleaya cordata)またはマクレアヤ・ミクロカルパ(Macleaya microcarpa)、およびケリドニウム・マジュス(Chelidonium majus)の抽出物である。特定の好ましい局面によれば、ベンゾフェナントリジンアルカロイドは、アルカロイド量が75〜100%であるMacleaya cordataの精製抽出物の状態で存在する。
【0016】
好ましい局面によれば、ベンゾフェナントリジンアルカロイドは、ルテイン酸で塩化した状態で存在する。アルカロイドの硫酸塩または塩化物とルテイン酸のナトリウムまたはカリウム塩とを反応させ、続いて結晶化させることにより調製される前記塩は、本発明の目的に特に効果的であると分かった。
【0017】
本発明の好ましい局面によれば、Hippophae rhamnoidesの抽出物は、エラグ酸誘導体に富む地上部からの抽出により得られるHippophae rhamnoidesの抽出物として存在する。特に好ましい局面によれば、Hippophae rhamnoidesの抽出物はエラジタンニン量が90%である。
【0018】
Hippophae rhamnoidesの抽出物は、水で種々に希釈された1〜3個の炭素原子を有するアルコール、好ましくは、エタノール/水の50%v/v混合物を用いて地上部から抽出し、次に、水/エタノール抽出物を、有機溶媒が完全に除去されるまで濃縮し、得られる混濁懸濁液に、バイオマスの重量の2%までに達する所定量のポリビニルピロリドンを加えることにより調製される。濾過により得られる透明溶液をポリスチレン樹脂上に吸収し、その樹脂を、可用性物質が完全に除去されるまで洗う。本発明で用いられる抽出物を構成する有効成分は、樹脂を90%エタノールで洗い、エタノール溶出液を小さな体積まで濃縮し、残渣を50℃を超えない温度で減圧下に乾燥することにより回収される。
【0019】
Hippophae rhamnoides抽出物は、インフルエンザAおよびBの種々の菌株に、およびアデノウイルス、パラミクソウイルス、ヘルペス・カタラーリスウイルス、サイトメガロウイルスおよび呼吸器合胞体ウイルス(RSウイルス)に著しい抗ウイルス活性を示す。抽出物は抗菌活性も示し、これは、エラジタンニンがアルカロイドと複合化し、残留親水性部位を有する複合体をウイルスまたは細菌タンパクに固定し、それによりその増殖を防止すると共にその組み合わせの広範囲の毒性を低下させることにより高められる。
【0020】
インビトロ試験は、本発明の組成物が、インターフェロンの生成を誘発すると共に、細菌および真菌増殖ならびに炎症および疼痛反応を抑制することを示した。
【0021】
好ましい局面によれば、本発明の組成物は、Echinacea angustifoliaの精油、またはそれに含まれるイソブチルアミドも含み、これらはカンナビノイドCB1およびCB2の配位子であるので強力な抗炎症および鎮痛活性を有する。
【0022】
本発明の組成物は、口腔内でゆっくり溶解する錠剤または活性成分をゆっくり放出するチューインガム、うがい薬、口腔内で分散させるゲル、等として調製することが好都合である。前記組成物は、適当な賦形剤を用いて、“Remington's Pharmaceutical Handbook”,Mack Publishing Co.,N.Y.,USAに記載されているようなよく知られた従来法に従って調製することができる。
【0023】
本発明を、以下の実施例に詳細に説明する。
【実施例】
【0024】
実施例:以下の成分を含む1000mgチュアブルタブレット(咀嚼錠)
Hippophae rhamnoidesの抽出物 20mg
Echinacea angustifoliaの凍結乾燥抽出物 0.5mg
Macleaya cordataのアルコール性抽出物 2mg
大豆レシチン 30mg
無水クエン酸 5mg
L−システイン 5mg
ラクトース 200mg
マンニトール 567.5mg
メチルセルロース 40mg
パルミトステアリン酸グリセロール 50mg
軟果実香味料(soft fruit flavouring) 40mg
グリチルリチン酸カリウム 5mg
タルク 10mg
重炭酸ナトリウム 25mg

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ベンゾフェナントリジンアルカロイド;
b)ヒッポファエ・ラムノイデス(Hippophae rhamnoides)の抽出物;
c)エキナセア・アンガスティフォリア(Echinacea angustifolia)の親油性抽出物
に基づく組成物。
【請求項2】
a)サンギナリン、ケレリトリンおよびケリドニンから選択されるベンゾフェナントリジンアルカロイド;
b)エラグ酸の誘導体に富むHippophae rhamnoidesの抽出物;
c)Echinacea angustifoliaの親油性抽出物
に基づく請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
種々の成分が以下の量(単位投与当たりの重量)
a)ベンゾフェナントリジンアルカロイド:1〜5;
b)Hippophae rhamnoidesの抽出物:10〜100;
c)Echinacea angustifoliaの親油性抽出物:0.2〜2
で存在する請求項1および2に記載の組成物。
【請求項4】
ベンゾフェナントリジンアルカロイドであるサンギナリン、ケレリトリンおよびケリドニンが遊離または塩化状、例えば、実質的に純粋な状態あるいは、サンギナリア・カナデンシス(Sanguinaria canadensis)、マクレアヤ・コルダータ(Macleaya cordata)もしくはマクレアヤ・ミクロカルパ(Macleaya microcarpa)またはケリドニウム・マジュス(Chelidonium majus)の抽出物の状態である先の請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
ベンゾフェナントリジンアルカロイドが、ルテイン酸との塩化状で存在する請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
Hippophae rhamnoidesの抽出物が、エラグ酸誘導体に富む地上部からの抽出により得られるHippophae rhamnoidesの抽出物として存在する請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
Hippophae rhamnoidesの抽出物のエラジタンニン含量が90%である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
口腔内でゆっくり溶解する錠剤または活性成分をゆっくり放出するチューインガム、うがい薬、口腔内で分散させるゲル、等の状態である請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
上気道の細菌およびウイルス疾患の治療用の経口組成物を調製するための
a)ベンゾフェナントリジンアルカロイド;
b)Hippophae rhamnoidesの抽出物;
c)Echinacea angustifoliaの親油性抽出物
の使用。
【請求項10】
上気道の細菌およびウイルス疾患が、インフルエンザウイルスにより引き起こされる感染の続発症が原因である請求項9に記載の使用。

【公表番号】特表2011−521982(P2011−521982A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512001(P2011−512001)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003673
【国際公開番号】WO2009/146807
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(591092198)インデナ エッセ ピ ア (52)
【Fターム(参考)】