説明

上皮再形成式創傷用医薬材料およびシステム

創傷治療の一態様として上皮再形成を促進する方法、装置、およびシステムが提示される。減圧を用いる上皮再形成用医療材料は、湿性組織界面層と、マニホルド部材と、密閉部材とを具える。湿性組織界面層は複数の孔を具える。湿性組織界面層は創傷に隣接は位置され、水分バランスを提供する(すなわち、創傷の乾燥時には水分を提供し、創傷がかなり湿っているときには水分を除去する)。減圧、孔、および湿性組織界面層は、液体管理を補助し、そうでなくても上皮再形成を促進する。他のシステム、装置、および方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、2009年8月27日提出の米国暫定出願整理番号61/237,486、名称「Re-Epitherliazation Wound Dressings and Systems」の35USC§119(e)の利益を主張するものであり、これは参照によりすべての目的において組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般に医療システムを開示するものであり、より具体的には、ただし限定しないが、上皮再形成式創傷用医療材料およびシステムを開示する。
【0003】
創傷治癒の生理学上のプロセスは、同時あるいは連続的に生じる異なるフェーズを含む。本書において、「または」は相互に排他的である必要はない。創傷治癒プロセスの2つのフェーズは、顆粒化(増殖)と、上皮再形成を含む。
【発明の概要】
【0004】
創傷ケアの医療材料、方法、およびシステムの特定の態様における改良は、本書に多様な説明的で非限定的な実施例について図示され記述される。説明的で非限定的な実施例によると、減圧とともに用いられる上皮再形成医療材料において、湿性の組織界面層は、組織の水分バランスを提供するように適合し、複数の孔を有して形成される。マニホルドは、密閉部材と湿性組織界面層の間に配置され、減圧を分配しうる。
【0005】
別の説明的で非限定的な実施例によると、創傷の上皮再形成を促すシステムは、上皮再形成式創傷用医療材料を含む。この上皮再形成式創傷用医療材料は、湿性の組織界面層と、マニホルド部材と、密閉部材とを具える.。湿性の組織界面層は、組織の水分バランスを提供するように適合し、複数の孔を有して形成される。マニホルドは、密閉部材と湿性組織界面層の間に配置され、減圧を分配しうる。システムはさらに、減圧を上皮再形成創傷式創傷用医療材料に減圧を提供するための、減圧コネクタと、減圧送達導管と、減圧源とを具える。減圧送達導管は、減圧源と減圧コネクタを流体結合しうる。
【0006】
別の説明的で非限定的な実施例によると、創傷の上皮再形成を促進する方法が、創傷の近くに上皮再形成用医療材料を展開するステップと、前記上皮再形成用医療材料を減圧供給導管に流体結合するステップと、当該減圧送達導管に減圧をかけるステップとを具える。この上皮再形成用医療材料は、水分バランスを提供する湿性の組織界面層を具える。湿性の組織界面層は、第1の面と、第2の組織対向面とを具え、複数の孔が形成されている。上皮再形成用医療材料はさらに、減圧を分配するマニホルド部材を具える。このマニホルド部材は第1の面と、第2の組織対向面とを具える。上皮再形成用医療材料はまた、第1の面と第2の組織対向面とを具える密閉部材を具える。マニア掘る度部材は、前記密閉部材と湿性の組織界面層との間に配置される。
【0007】
実施例の他の特徴と利点は、以下の図面と詳細な説明より明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、創傷治療システムの例示的かつ非限定的な実施例の一部が断面となった概略図である。
【図2】図2は、減圧をかけていない状態の、図1の創傷治療システムの例示的かつ非限定的な実施例の部分概略図である。
【図3】図3は、減圧をかけた状態の、図1の創傷治療システムの例示的かつ非限定的な実施例の部分概略図である。
【図4】図4は、吸収層を追加した、図1の創傷治療システムの例示的かつ非限定的な実施例の部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
例示的かつ非限定的な実施例の以下の詳細な説明において、その一部を形成する添付図面を参照する。これらの実施例は、当業者が本発明を実施できるのに十分なように説明されており、他の実施例も利用可能であると解され、論理的、構造的、機械的、電気的、および化学的な変更を本発明の範囲を逸脱することなく施すことができる。当業者が本書に記載された実施例を実施するのに不要な詳細を避けるべく、当業者にとって周知な特定の情報を省略することがある。このため、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解されてはならず、例示的な実施例の範囲は添付のクレームによってのみ規定される。
【0010】
最初に図1を参照すると、上皮再形成用医療材料102を具える創傷治療システム100の例示的かつ非限定的な実施例が示されている。上皮再形成用医療材料102は、組織部位104、特に創傷106、または創傷部位の治療のために展開されている。創傷106は、表皮108を通って皮下組織110へと延在する。組織部位104は、ヒト、動物の体細胞、または、骨組織、脂肪組織、筋肉組織、皮膚組織、血管組織、関節組織、軟骨、健、靱帯を含む他の器官、もしくは他の様々な組織である。上皮再形成用医療材料102を有する創傷治療システム100は、創傷106の上皮再形成を促し、創傷縁部112の移動(migration)を促進する。
【0011】
深刻な創傷治療の上皮再形成、または上皮形成フェーズは、創傷106の露出(resurfacing)と、創傷縁部112の変化を含む。これらのプロセスは患者の身体を外部有機体による侵略から保護するものであり、制限されていない場合に他のフェーズと同時に生じうる。
【0012】
とりわけ、真皮および表皮層からのケラチン生成細胞がある。ケラチン生成細胞は毛包の膨らんだ領域に位置する表皮の幹細胞から派生し、その位置から表皮の基底層へと移動する。このケラチン生成細胞は増殖し分化して表皮を生成し、これにより表皮を補充する。ケラチン生成細胞は空間を再び表面処理するシート上を前進して、、創傷の滲出液といった成長因子から放出されるシグナルに応答する。この移動により、湿性の創傷環境が創傷縁部112からケラチン生成細胞の移動を互いに向かって早めるか、そうでなくとも促進する。創傷治療システム100は、この上皮再形成フェーズまたはプロセスを促進する。
【0013】
創傷治療システム100は、上皮再形成用医療材料102に付随して、上皮再形成用医療材料102の少なくとも一部に減圧を提供する減圧コネクタ114を具える。減圧送達導管116がこの減圧コネクタ114の第1の端部118に流体結合され、第2の端部122で減圧源120に流体結合する。1またはそれ以上の装置124が減圧コネクタ114と減圧源120の間の、例えば減圧送達導管116に流体結合されてもよい。
【0014】
減圧送達導管116に流体結合される装置124は、例えば、限定しないが、流体リザーバ(または滲出液や他の除去される流体を保持する回収部材)、圧力フィードバック装置、容量検出システム、血液検出システム、感染掲出システム、流量モニタシステム、温度監視システム、または他の装置を含む。
【0015】
減圧源120は、創傷治療システム100の一部として、減圧を提供する。本書で「減圧」の用語は、治療される組織部位104の雰囲気圧より低い圧力をいう。多くの場合、減圧は患者が位置する場所の大気圧より低い。あるいは、減圧は、組織部位104の組織の静水圧より低い。用語「真空」や「負圧」を組織部位に適用される圧力に関して用いられてもよいが、組織部位にかけられる実際の圧力は、完全真空に関して通常いわれる圧力よりかなり高い。他に明記しない限り、本書で述べる圧力はゲージ圧である。
【0016】
減圧源120が送達する減圧は、一定であっても変化(パターン化またはランダム)してもよく、連続的でも間欠的に供給されてもよい。患者の可動性と容易さを最大限とするために、減圧源120は電池駆動式の減圧発生器である。これにより、手術室での適用を促進し、リハビリフェーズにおける患者の可動性および利便性を提供する。他の減圧源を用いてもよく、これには例えばテキサス州サンアントニオのKCIから入手可能なV.A.C.(登録商標)治療ユニットの壁吸引式または機械ユニットなどがある。
【0017】
減圧源120が生成する減圧は、減圧送達導管116または医療用導管または配管を通り、減圧コネクタ114に供給される。減圧送達導管116と減圧源120の間に疎水性膜フィルタが挿入されてもよい。別の例示的で非限定的な実施例では(図示せず)、減圧源が上皮再形成用医療材料102内に組み込まれた例えばマイクロポンプである。
【0018】
最初に図1及び図2を参照すると、上皮再形成用医療材料は、複数の層または材料を具える。例えば、上皮再形成用医療材料102は、湿性の組織界面層126と、支持層128と、マニホルド部材130と、密閉部材132とを具える。この密閉部材132は、減圧コネクタ114の少なくとも一部が通るコネクタ開口部134を設けて形成されている。図1の例示的で非限定的な実施例では、減圧コネクタ114の一部が、密閉部材132とマニホルド部材130の間に配置され、一部がコネクタ開口部134を通って延在している。上皮再形成用医療材料102は、さらなる層を有しても少ない層を有してもよく、これらの層はいくつかの実施例で異なる組み合わせで配置されてもよい。
【0019】
湿性の組織界面層126は、第1の面136と、第2の組織対向面138とを具える。湿性の組織界面層126は、第1の複数の孔140を設けて形成され、これは様々な形であってよい。第1の複数の孔140は、湿性の組織界面層126を貫通する。第1の複数の孔140は、レーザ、パンチ、ドリル、またはキャスティング、または他の様々な技術で形成することができる。第1の複数の孔140は、均一パターンでもランダムに形成されてよいし、均一あるいは異なる直径を有してもよい。
【0020】
例示的で非限定的な実施例において、第1の複数の孔140は均一パターンで形成され、孔の中心141は、近接する孔の中心141から距離142離れている。いくつかの例示的で非限定的な実施例では、この距離142は約2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、またはそれ以上である。距離142は、湿性の組織界面層126が所望の液体移動となるよう選択される。第1の複数の孔140の直径もまた、減圧がかけられ飽和が生じたとき(少なくとも一部の実施例で)、第1の複数の孔140が硬く崩壊して閉塞しないが、第1の複数の孔140を液体が通過するが気体をほぼ通過させないように制限するよう選択される。別の実施例では、第1の複数の孔140は、減圧の影響下では当該第1の複数の孔140が完全かつ硬く閉じるようなサイズとされる。
【0021】
湿性の組織界面層126は、多数の材料から製造しうる。この湿性の組織界面層126は、例えば、ヒドロゲルや親水コロイドなど水ベースの材料でなってもよい。湿性の組織界面層126を構成する材料は、所望の湿度条件に対する流体バランスまたは平衡を提供する。したがって、例えば、この材料は必要なときに水分を提供し(すなわち、組織部位104の乾燥時)、必要なときに水分を吸収する(すなわち、組織部位104に余分な水分が存在する場合や、組織部位104が実質的にぬれている場合)。第2の組織対向面138は、連続気泡発泡体などの微少ストレイン誘導材料(micro-strain inducing material)と比べると比較的平滑な表面を有する。第2の組織対向面138の比較的平滑な面は、細胞の移動を促進する(または、少なくとも妨げない)。第2の組織対向面138の比較的平滑な面は、局所的な微少ストレインの発生が少ないか全くない。湿性の組織界面層126による水分環境、第1の複数の孔140の流体管理、および、第2の組織対向面138の比較的平滑な面は、創傷106の上皮再形成を促進する。
【0022】
別の例示的で非限定的な実施例では、湿性の組織界面層126に別の材料を用いることができ、例えば非常に密集した親水性フォーム(例えば親水性独立気泡フォーム)、フィルムコートされた多孔性不織材料、ヒドロゲル浸漬発泡体、水活性型医療材料(hydroactive dressing material)、または他の材料を用いることができる。ヒドロゲル浸漬発泡体は、特に深部創傷または複雑な形に適している。湿性の組織界面層126は、穿孔されるか複数部分にカットされ、湿性の組織界面層126の1またはそれ以上の部分を除去して組織部位104の一部に減圧を提供することができる。除去された部分に生じた開口部は、創傷106の領域内に設計される場合、滲出が多い創傷を補助するか、粒状化を促進する。
【0023】
利用時、湿性の組織界面層126は減圧下で流体を受けると、湿性の組織界面層126が通常膨張する。十分な流体により湿性の組織界面層126は飽和する。図3に示すように、第1の複数の孔140は、図2の開位置または状態と比べて、制限された位置または状態に膨張している。この制限された位置は、湿性の組織界面層126ががほぼ飽和した場合に生じる。この制限位置では、第1の複数の孔140は、組織部位104から第1の複数の孔140を通すが、第1の複数の孔140を通して減圧をほぼ連絡しない。上皮再形成用医療材料102の他の部分は、湿性の組織界面層126が飽和したり、ほぼ飽和したら、湿式の組織界面層126の第1の面136から流体を除去する。滲出液などの幾らかの液体または水分が創傷106に残り、シグナルを提供することにより治癒プロセスを補助する場合がある。
【0024】
上皮再形成用医療材料102は、任意の支持層128を具えてもよい。この支持層128は、第1の面144と、第2の組織対向面146とを具える。この第2の組織対向面146は、湿性の組織界面層126の第1の面136の近くに配置される。湿性の組織界面層126および支持層128は、結合されてもよい。本書において「結合」とは、個別の物体を介した結合と、直接結合の双方を含む。「結合」の語は、2またはそれ以上の要素が互いに連続しており、各要素が材料の同じピースでなる場合を含む。また、「結合」の語は、化学接合といった化学的なもの、機械的、熱的、または電気的な結合を含む。この語「結合」は、様々な既知の技術を含み、限定しないが、溶接(超音波またはRF溶接)、接着、粘着、セメント、または他の技術や装置を含む。流体結合手段は、流体が所望の部品または位置の間で連絡するという意味である。
【0025】
支持層128は任意であるが、湿性の組織界面層126に支持を提供するために追加される。図2及び図3を比較すると分かるように、支持層128は第1の複数の孔140の第1の端部148を開位置または設定された直径に保持しつつ、他の部分は制限状態の一部としてさらに制限されている。支持層128は、閉塞性のフィルム材料など、様々な材料で構成することができる。この支持層128は、例えば、ポリウレタン層、ポリエチレン層、または他の支持材料である。支持層128は、直接的な流体フローを促進し、上述したように、特に第1の複数の孔140に支持を提供する。支持層128は、第2の複数の孔150を設けて構成される。第2の複数の孔150は、第1の複数の孔140と整列し、かつ対応している。第2の複数の孔150は、第1の複数の孔140と同一または類似の方法で形成することができる。
【0026】
上皮再形成用医療材料102は、マニホルド部材130を具える。このマニホルド部材130は、第1の面152と、第2の組織対向面154とを具える。マニホルド部材130は、減圧を含む流体を分配する様々な材料で構成することができる。「マニホルド」の語は、一般に組織部位104に減圧をかけ、流体を送達し、または流体を除去するのを補助する実体または構造をいう。マニホルド部材130は一般に、マニホルド部材130周りの組織部位104に流体を提供および除去する複数の流路または経路を具える。例示的で非限定的な一実施例では、流路または経路は、相互接続され、組織部位104に提供あるいはここから除去される流体の分配を向上する。
【0027】
マニホルド部材130は、限定しないが、例えば流路を形成するよう構成された構造要素を有するデバイスを備え、これには例えば流路を具えるか養生により流路が形成される細胞性発泡体、連続気泡発泡体、多孔性組織集合体、液体、ゲル、発泡体が含まれる。マニホルド部材130は多孔性であってもよく、発泡体、ガーゼ、フェルトマット、または生体適用に特に適した他の材料である。例示的で非限定的な実施例では、マニホルド部材130は多孔性発泡体であり、複数の相互接続された細胞または孔を具え、これらが流路として作用する。この多孔性発泡体はポリウレタンの、連続気泡性の、網状発泡体であり、例えばテキサス州サンアントニオのKinetic Concepts,Incorporated社が製造するGranuFoam(登録商標)である。他の実施例は、「独立気泡」を具えてもよい。非限定的な例示では、マニホルド部材130は不織材料でなり、例えばベルギーのLiveltexBVBA社から入手可能な不織材料である。マニホルド部材130の第2の組織対向面154は、例示的で非限定的な一実施例では支持層128の第1の面144に近接配置され、あるいは、別の例示的で非限定的な実施例では湿性の組織界面層126の第1の面136に隣接している。
【0028】
上皮再形成用医療材料102は、密閉部材132を具える。この密閉部材132は、第1の面158と、第2の組織対向面160とを具える。密閉部材132は、組織部位104または創傷106の上に閉塞空間を形成する。第2の組織対向面160は、マニホルド部材130の第1の面152または他の層に近接配置され結合される。密閉部材132は、液密を提供する様々な材料で構成することができる。「液密」または「閉塞」とは、特定の減圧源またはサブシステムを用いた場合に所望の部位で減圧を維持するのに適した密閉をいう。密閉部材は、例えば、不透過性または半透過性のエラストマー材料である。「エラストマー」とは、エラストマー特性を有することをいう。エラストマーとは、一般にラバー状特性を有するポリマ材料である。より具体的には、大部分のエラストマーは、100%より大きい究極伸長度と、かなりの弾性量を有する。材料の弾性度は、材料の弾性変形からの復活能力をいう。エラストマーの例は、限定しないが、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー、クロロスルホン酸ポリエチレン、多硫化物ゴム、ポリウレタン、EVAフィルム、コポリエステル、およびシリコーンを含む。密閉部材のさらなる例は、シリコーンドレープ、3M Tegaderm(登録商標)ドレープ、Avery Dennisonから入手可能なアクリルドレープ、または切り込み入りドレープを含む。
【0029】
図4を参照すると、上皮再形成用医療材料102は、密閉部材132とマニホルド部材130または他の層の間に配置された任意の吸収層162または吸収剤を具える。この吸収層162は、第1の面164と、第2の組織対向面166とを具える。第1の面164は、密閉部材132の第2の組織対向面160に結合され、吸収層162の第2の組織対向面166はマニホルド部材130の第1の面152に結合される。吸収層162は、主に流体を保存または保持すべく機能する。吸収層162は、超吸収ポリマ(SAP)又は上皮再形成用医療剤路湯102内に流体を保持するのに適した他の材料である。吸収層162を構成する材料および厚さは、保持すべき流体の量に基づいて選択される。吸収層162は、1またはそれ以上の組成層で構成されてもよい。
【0030】
運用時、例示的で非限定的な実施例によると、組織部位104および特に創傷106は、上皮再形成用医療材料102を展開することにより創傷治療システム100で治療される。上皮再形成用医療材料102が創傷106および患者の無傷の表皮108に近接配置される。組み入れられてなければ、減圧コネクタ114が減圧を提供すべく上皮再形成用医療剤路湯102に流体結合され、もし展開されていなければ、密閉部材132が上皮再形成用医療材料102の他の部分の上に展開される。湿性の組織界面層126の第2の組織対向面138は、このようにして図1に示すように創傷106と無傷の表皮108の一部に近接配置される。第2の組織対向面138は、創傷106および創傷縁部112に湿性の平滑面を向ける。
【0031】
組み入れられてなければ、減圧送達導管116が減圧コネクタ114および減圧源120に流体結合される。減圧源120が作動され、これにより減圧が上皮再形成用医療材料102に供給される。減圧は上皮再形成用医療材料102をその場に保持するのを補助し、上皮再形成用医療材料102からいかなる流体の漏れもないようにし、感染の予防を補助し、流体管理を補助する。
【0032】
一般に、減圧は、上皮再形成用医療材料102に−10乃至−100mmHgの範囲で、より具体的には−25乃至−75mmHgの範囲でかけられる。減圧は、流体流を生じるのに適しているが、組織部位104に微少ストレインを実質的に生じさせるほど高くはない。別の例示的で非限定的な実施例では、減圧は−10mmHg乃至−200mmHgの範囲である。別の例示的で非限定的な実施例では、減圧は最初の期間で−100乃至−200mmHgであり、次の期間で−25乃至100mmHgである。必要に応じて他の変形例も可能である。
【0033】
上皮再形成用医療材料102に減圧がかけられると、第1の複数の孔140は即座あるいは時間をかけて、開位置(図2)から制限位置または状態(図3)へと飽和する。この制限状態では、第1の複数の孔140は液体を通すが、気体(および気体圧力)を通さなくなる。上皮再形成用医療材料102はこれにより、空気圧を連絡させることなく組織部位104に力をかけることができる。もし含まれる場合、支持層128が第1の複数の孔140の第1の端部148を実質的に開くか一定の直径に維持する。
【0034】
上皮再形成用医療材料102に送達される減圧は、組織部位104から余分な液体を除去するのを補助し、湿性の組織界面層126がほぼ飽和したときに湿性の組織界面層126から液体を除去するのを補助する。湿性の組織界面層126の流体バランスまたは平衡も、組織部位104が乾燥しているときに湿性の組織界面層126が液体を提供し、組織部位104が濡れているときに流体を吸収するのを補助する。湿性の組織界面層126の流体除去は遅く、滲出液が幾らか組織部位104に残るようにして(滲出液を注ぐわけではない)治療プロセスを促進する。滲出液は、前述のようにケラチン生成細胞を活性化するシグナルを出す(すなわち成長因子から)。
【0035】
湿性の組織界面層126はまた、組織部位104に対して比較的平滑な面を提供し、細胞移動を促進する(または、少なくとも妨げない)。比較的平滑な湿性面を提供するのに加え、湿性の組織界面層126は、成長における粒状化、感染、または頻繁な医療材料の交換を行うことなく、組織部位104に面して長い期間残されてもよい。
【0036】
本発明とその利点を特定の例示的で非限定的な実施例について開示したが、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更、置換、入れ替え、および代替を行うことができると理解されたい。一の実施例に関して説明された特徴は、他の様々な実施例にも適用可能であることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷部位を治療すべく減圧を用いる上皮再形成用医療材料において、
前記創傷部位に近接配置される湿性の組織界面層であって、第1の面と、第2の組織対向面とを具え、当該湿性の組織界面層を通して複数の孔が形成されており、水分バランスを提供する湿性の組織界面層と、
第1の面と第2の組織対向面とを具え、減圧を分配するマニホルド部材と、
第1の面と第2の組織対向面とを具える密閉部材とを具え、
前記マニホルド部材が前記密閉部材と前記湿性の組織界面層との間に配置されていることを特徴とする上皮再形成用医療材料。
【請求項2】
請求項1に記載の上皮再形成用医療材料において、
前記複数の孔が、水分が増加していくと、開位置から制限位置へと移行し、
前記制限位置では、前記複数の孔は液体を通すが気体の通過を制限することを特徴とする上皮再形成用医療材料。
【請求項3】
請求項1に記載の上皮再形成用医療材料において、
前記湿性の組織界面層が、ヒドロゲル層を含むことを特徴とする上皮再形成用医療材料。
【請求項4】
請求項1に記載の上皮再形成用医療材料において、
前記湿性の組織界面層が、浸水コロイド層を含むことを特徴とする上皮再形成用医療材料。
【請求項5】
請求項1に記載の上皮再形成用医療材料において、
前記湿性の組織界面層が、ヒドロゲル浸漬発泡体層を含むことを特徴とする上皮再形成用医療材料。
【請求項6】
請求項1に記載の上皮再形成用医療材料において、
さらに、第1の面と第2の組織対向面とを具える支持層を具え、当該支持層の第2の組織対向面が、前記湿性の組織界面層の第1の面に近接配置されることを特徴とする上皮再形成用医療材料。
【請求項7】
請求項1に記載の上皮再形成用医療材料において、
さらに、第1の面と第2の組織対向面とを具える支持層を具え、当該支持層の第2の組織対向面が、前記湿性の組織界面層の第1の面に結合されていることを特徴とする上皮再形成用医療材料。
【請求項8】
請求項1に記載の上皮再形成用医療材料において、
さらに、前記マニホルド部材と密閉部材の間に配置された吸収層を具えることを特徴とする上皮再形成用医療材料。
【請求項9】
請求項1に記載の上皮再形成用医療材料において、
さらに、第1の面と第2の組織対向面とを具える支持層であって、前記第2の組織対向面が、前記湿性の組織界面層の第1の面に近接配置されている支持層と、
前記マニホルド部材の第1の面と、前記密閉部材の第2の組織対向面との間に配置された吸収層を具えることを特徴とする上皮再形成用医療材料。
【請求項10】
請求項1に記載の上皮再形成用医療材料において、
前記湿性の組織界面層の第2の組織対向面が前記創傷に近接配置され、
前記マニホルドの第2の組織対向面が、前記湿性の組織明き面相の第1の面に近接配置され、
前記密閉部材の第2の組織対向面が、前記マニホルド部材の第1の面に近接配置され、 前記湿性の組織界面層の複数の孔は、中央が少なくとも1mm離れていることを特徴とする上皮再形成用医療材料。
【請求項11】
創傷の上皮再形成を促進するためのシステムにおいて、当該システムが、創傷の上皮再形成用医療材料を具え、当該創傷の上皮再形成用医療材料が、
前記創傷に近接配置される湿性の組織界面層であって、第1の面と、第2の組織対向面とを具え、当該湿性の組織界面層を通して複数の孔が形成されており、水分バランスを提供する湿性の組織界面層と、
第1の面と第2の組織対向面とを具え、減圧を分配するマニホルド部材と、
第1の面と第2の組織対向面とを具える密閉部材とを具え、
前記マニホルド部材が前記密閉部材と前記湿性の組織界面層との間に配置されており、
前記マニホルド部材に流体結合された減圧源を具えることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記複数の孔が、水分が増加していくと、開位置から制限位置へと移行し、
前記制限位置では、前記複数の孔は液体を通すが気体の通過を制限することを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記湿性の組織界面層が、ヒドロゲル層を含むことを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記湿性の組織界面層が、浸水コロイド層を含むことを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項11に記載のシステムにおいて、
前記湿性の組織界面層が、ヒドロゲル浸漬発泡体層を含むことを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項11に記載のシステムにおいて、
さらに、第1の面と第2の組織対向面とを具える支持層を具え、当該支持層の第2の組織対向面が、前記湿性の組織界面層の第1の面に近接配置されることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項11に記載のシステムにおいて、
さらに、第1の面と第2の組織対向面とを具える支持層を具え、当該支持層の第2の組織対向面が、前記湿性の組織界面層の第1の面に結合されていることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項11に記載のシステムにおいて、
さらに、前記マニホルド部材と密閉部材の間に配置された吸収層を具えることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項11に記載のシステムにおいて、
さらに、第1の面と第2の組織対向面とを具える支持層であって、前記第2の組織対向面が、前記湿性の組織界面層の第1の面に近接配置されている支持層と、
前記マニホルド部材の第1の面と、前記密閉部材の第2の組織対向面との間に配置された吸収層を具えることを特徴とするシステム。
【請求項20】
創傷の上皮再形成を促進する方法であって、当該方法が、
前記創傷に近接して上皮再形成用医療材料を展開するステップであって、前記上皮再形成用医療材料は、
前記創傷部位に近接配置される湿性の組織界面層であって、第1の面と、第2の組織対向面とを具え、当該湿性の組織界面層を通して複数の孔が形成されており、水分バランスを提供する湿性の組織界面層と、
第1の面と第2の組織対向面とを具え、減圧を分配するマニホルド部材と、
第1の面と第2の組織対向面とを具える密閉部材とを具え、
前記マニホルド部材が前記密閉部材と前記湿性の組織界面層との間に配置されている、ステップと、
減圧源を密閉された空間に流体結合するステップと、
前記減圧送達導管に減圧をかけるステップとを具えることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の創傷の上皮再形成を促進する方法において、
前記複数の孔が、水分が増加していくと、開位置から制限位置へと移行し、
前記制限位置では、前記複数の孔は液体を通すが気体の通過を制限することを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20に記載の創傷の上皮再形成を促進する方法において、
前記減圧源を密閉された空間に流体結合するステップが、
前記密閉部材に減圧コネクタを結合するステップと、前記減圧送達導管を前記減圧コネクタに流体結合するステップとを具えることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項20に記載の創傷の上皮再形成を促進する方法において、
前記湿性の組織界面層が、ヒドロゲル層を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項20に記載の創傷の上皮再形成を促進する方法において、
前記湿性の組織界面層が、浸水コロイド層を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項20に記載の創傷の上皮再形成を促進する方法において、
前記湿性の組織界面層が、ヒドロゲル浸漬発泡体層を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項20に記載の創傷の上皮再形成を促進する方法において、
前記上皮再形成用医療材料がさらに、第1の面と第2の組織対向面とを具える支持層を具え、当該支持層の第2の組織対向面が、前記湿性の組織界面層の第1の面に近接配置されることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項20に記載の創傷の上皮再形成を促進する方法において、
前記上皮再形成用医療材料がさらに、第1の面と第2の組織対向面とを具える支持層を具え、当該支持層の第2の組織対向面が、前記湿性の組織界面層の第1の面に結合されていることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項20に記載の創傷の上皮再形成を促進する方法において、
前記上皮再形成用医療材料がさらに、前記マニホルド部材と密閉部材の間に配置された吸収層を具えることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項20に記載の創傷の上皮再形成を促進する方法において、
前記上皮再形成用医療材料がさらに、第1の面と第2の組織対向面とを具える支持層であって、前記第2の組織対向面が、前記湿性の組織界面層の第1の面に近接配置されている支持層と、
前記マニホルド部材の第1の面と、前記密閉部材の第2の組織対向面との間に配置された吸収層を具えることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−502983(P2013−502983A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526840(P2012−526840)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/045735
【国際公開番号】WO2011/028407
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(508268713)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】