説明

上皮再生の促進

本発明は、上皮再生を促進するための、TGF−β3、またはTGF−β3活性を有する薬剤の使用に関する。薬物を製造する方法、および上皮再生を促進する方法が、ともに提供されている。特に、本発明の薬物および治療方法は、健康な患者および/または急性創傷における上皮再生の促進に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上皮再生促進のための薬物の製造に関する。本発明は、そのような促進を必要とする個体において、上皮再生を促進する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
身体は、多くの様々な種類の上皮、構造ならびにその位置、役割、および機能に応じて変化する複雑性を含む。
【0003】
最も基本的な上皮の形態は、単層の上皮細胞を含む単層上皮である。単層上皮の形態の例は、単層の扁平鱗状細胞を含む単層扁平上皮である。身体の単層扁平上皮の例として、中皮、内皮、および肺胞の内膜が挙げられる。
【0004】
上皮の別の一般的な形態は、重層上皮である。これは、一連の層を含み、異なる層の細胞は、大きさ、形状および機能を変えることができる。重層上皮は、その表面に位置する細胞の種類に関連してさらに特徴づけることができる。
【0005】
例として、重層扁平上皮は、その表面に位置する鱗状(扁平)細胞を有する。重層扁平上皮を含む細胞の形状は、上皮内の異なる位置によって変化することができる。上皮の上部表面に位置する細胞は、扁平鱗状構造を一般に有するが、上皮の底部近くの細胞は、多面体形を有する傾向があることがある。上皮細胞は、ケラチンの存在によって構造的に強化されることができ、存在するこの分子の量は、上皮内の高さの増加とともに増加する傾向がある。重層扁平上皮は、ケラチン含有細胞のいくつかの層を一般に含む。存在するケラチン分子の種類は、細胞層および身体部位の両方によって変化することができる。
【0006】
最も顕著な身体の上皮は、皮膚を覆う重層扁平上皮層である表皮である。表皮は、その位置のために、外部環境と最も頻繁に接触している組織であり、その結果、環境および他の損傷に最も頻繁に曝される組織である。
【0007】
重層上皮の別の例として、細胞の最上層が円柱形状であり、運動毛を供えている、重層円柱上皮、および重層線毛円柱上皮が挙げられる。
【0008】
全身の上皮は、多くの様々な形態の損傷を受けている。このような損傷は、損傷した上皮の機能を低下させるか、または完全に破壊する恐れがあり、このような損傷の転帰は、影響された上皮の性質および役割に依存する。したがって、上皮再生の促進は、多くの異なる状況において有利である。しかし、上皮再生の促進の望ましさにもかかわらず、そのような促進された再生を達成することのできる、さらなる、およびより有効な薬物および方法に対する要求が残っている。
【0009】
上皮再生を促進するために現在用いられている治療の範囲には、大きな差異がある。例えば、分層植皮ドナー部位の管理(非特許文献1に概説されているような)は、単に、移植ドナー部位を露出し、未処置で放置するものとすることができ、あるいは代わりに、包帯剤の適用(一般に、単独で用いるか、または様々な抗感染症剤、アルジネート、親水コロイド、合成複合膜、透明膜もしくはハチミツを含浸させることができる、ガーゼ包帯)、人工皮膚の適用(個体自体の表皮から生成できる)、同種移植の適用(一般に、ウシまたはブタ同種移植)、または軟膏の適用(一般に、抗感染症剤として銀ベース化合物を含有する軟膏)などの治療を用いることができる。
【0010】
単独の広く受け入れられた治療がないというこの事実は、上皮再生を促進することのできる新規な方法の必要性を示している。さらに、現在の治療に関係する多くの欠点および不都合が存在することがよく認識されている。
【0011】
現在の治療に関係する有害作用として、移植ドナー部位および/または移植レシピエント部位での治癒時間の遅延、最初に存在したものより粗く、および/または薄くなる恐れのある代替上皮(replacement epithelium)の発生、感染率の増加、浮腫および紅斑、治療部位周囲の肥厚性瘢痕、同種移植材料からのプリオンまたはウイルス感染のリスク、治療を起こすのにかかる時間の長さ(患者自体の細胞からの人工皮膚生成の場合)、およびドナー部位およびレシピエント部位の両方に関係する疼痛が挙げられる。
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 684 260号明細書
【非特許文献1】Rakel BA, Bermel MA, Abbott LI, Baumler SK, Burger MR, Dawson CJ, Heinle JA, Ocheltree IM. Split-thickness skin graft donor site care: a quantitative synthesis of the research. Appl Nurs Res. 1998 Nov; 11(4); 174-82
【非特許文献2】Tomlinson A, Ferguson MW. Wound healing: a model of dermal wound repair. Methods Mol Biol 2003; 225: 249-260
【非特許文献3】Davidson JM, Nanney LB, Broadley KN, Whitsett JS, Aquino AM, Beccaro M, Rastrelli A. Hyaluronate derivatives and their application to wound healing: preliminary observations. Clin Mater. 1991; 8(1-2): 171-7
【非特許文献4】Paddock HN, Schultz GS, Mast BA. Methods in reepithelialization. A porcine model of partial-thickness wounds. Methods Mol Med. 2003; 78: 17-36
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、従来技術に関係する少なくともいくつかの不都合を克服する、上皮再生促進のための新規な薬物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、上皮再生促進のための薬物の製造における、TGF−β活性を有する薬剤の使用が提供される。
【0015】
TGF−β活性を有する薬剤は、TGF−β、TGF−βの生物活性フラグメント、変異体および誘導体、ならびにTGF−βの生物活性を促進および/または模倣することのできる物質を含む群から選択できることが好ましい。
【0016】
本発明の脈絡内の上皮再生促進は、対照処置または未処置の上皮中に起こる再生と比較した、上皮再生速度の任意の増加を包含すると理解することができる。
【0017】
本発明による方法によって達成される上皮再生速度は、当分野で既知の任意の適当な上皮再生モデルを用いて、対照処置または未処置の上皮内で起こる速度と容易に比較することができる。例えば、既知の範囲を有する実験的な上皮損傷の部位が再生する速度は、非特許文献2、3および4に記載の、マウス、ラット、ウサギまたはブタにおける周知のin vivoモデルを用いて比較することができる。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、上皮再生を促進する方法であって、TGF−β活性を有する、治療上有効な量の薬剤を、そのような促進を必要とする対象に投与することを含む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のこの態様に関連して、「TGF−β活性を有する、治療上有効な量の薬剤」は、その量が投与される対象において、上皮再生を促進するのに十分である、TGF−β活性を有する薬剤の量である。
【0020】
上述したように、上皮、および特に表皮は、身体の他の任意の組織よりも、直接的、頻繁な、および損傷を与える、外部環境との遭遇を受ける。したがって、表皮などの上皮組織の修復および再生は、その最大の機能有効性を確実にするように影響を受けることができることが、非常に望ましい。実際に、本発明の方法および薬物は、すべての種類の上皮における上皮再生促進に適しており、試験をしたすべての上皮において有効であったが、表皮再生促進は、本発明の特に好ましい用途を構成する。本発明の他の好ましい実施形態には、扁平上皮再生促進、および/または角質化上皮再生促進が含まれる。本発明の方法および薬物は、頭皮を覆う表皮に利点となることができることが理解されよう。
【0021】
本発明による上皮再生促進は、以前に損傷した、または剥皮した範囲の上に、機能性上皮バリアを形成することができる。形成した上皮バリアは、バクテリア、菌類およびウイルスなどの病原体による、下層組織への移入および下層組織のコロニー形成を防止することができる。したがって、上皮再生促進により、上皮層が破られた部位での感染を、防止または低減することが望ましい状況において、利点をもたらすことができる。
【0022】
無傷の上皮層の存在は、体液の移動に対するバリアとしても作用し、したがって、下層組織の乾燥を防止することができる。したがって、上皮再生促進により、損傷した、またはさもなければ破れた上皮層全体の体液喪失の結果として生じる、組織の乾燥を防止または低減することができる。
【0023】
本発明は、上皮再生が、サイトカインTGF−β、またはTGF−βの特有の生物活性を共有する薬剤の供給によって刺激されることができるという、非常に驚くべき知見に基づく。TGF−β(哺乳動物の3種のアイソフォーム、TGF−β、TGF−β、TGF−βで存在する)は、以前は上皮再生を抑制すると考えられていた。
【0024】
上皮再生に対するTGF−βの抑制作用は、in vitroおよびin vivoアッセイの両方に基づいて報告されてきた。培養されたケラチノサイト(皮膚上皮細胞)へのTGF−βアイソフォームの作用の研究では、TGF−β処置により、遊走に関係するケラチノサイトのインテグリン発現は増加するが、表皮再生に必要なケラチノサイト増殖の速度は、相当に減少することが示された。上皮再生に必要な上皮細胞増殖のTGF−βに媒介された抑制も、in vivo研究を用いて報告されてきた。
【0025】
報告されたTGF−βの抑制作用は、すべてのアイソフォームによって示されているが、異なるアイソフォームの相対効力に差異がある。研究により、TGF−βは、ヒトケラチノサイトの初代培養でのDNA合成および増殖を抑制する能力において、最も強力なアイソフォームであり、TGF−βまたはTGF−βのいずれがもたらすよりも強い抑制をもたらすことが示された。
【0026】
培養された細胞を用いる研究に加えて、TGF−βシグナル経路を混乱させるために、特定化合物または遺伝子技術を利用する、いくつかのin vivo研究が最近行われてきた。これらの研究により、TGF−β、および特にTFG−βは、上皮再生を抑制することがさらに示された。
【0027】
以前に公表された報告と対照的に、本願の発明者らは、上皮組織への損傷前後に、TGF−β活性を有する薬剤をその組織に適用することにより、上皮層の再生が抑制されるのではなく、そのような再生を促進できることを、今や発見した。任意の仮説に制約されることを望むことなく、本発明者らは、上皮再生促進は、上皮細胞遊走のTGF−βに媒介された促進によって達成されると考えている。したがって、上皮細胞(その遊走が促進された)は、TGF−β活性を有する薬剤がない場合に起こるよりも、損傷した上皮を急速に再形成(re−populate)または再生することができる。
【0028】
本発明による上皮再生促進は、再上皮化応答が、損なわれている、抑制されている、遅延されている、またはさもなければ欠陥のある場合に、本発明が利点となることのできる状況において、有効な再上皮化を誘発するために用いることができることが理解されよう。しかし、上皮再生促進に用いられる本発明の方法および薬物は、上皮損傷を患っている患者において、正常な上皮再生応答速度を加速するためにもたらすこともできることが特に好ましい。
【0029】
身体の再上皮化応答が、欠陥的となる恐れのある多くの状況が存在する。例えば、皮膚における再上皮化の欠陥は、天疱瘡、ヘイリー−ヘイリー病(家族性良性天疱瘡)、中毒性表皮壊死症(TEN)/ライエル症候群、表皮水疱症、皮膚リーシュマニア症および光線性角化症などの状態に関係する。肺の再上皮化の欠陥は、特発性肺線維症(IPF)または間質性肺疾患に関係する場合がある。眼の再上皮化の欠陥は、部分角膜縁幹細胞欠乏症(partial limbal stem cell deficiency)または角膜びらんなどの状態に関係する場合がある。消化管または大腸の再上皮化の欠陥は、慢性裂肛(肛門の亀裂)、潰瘍性大腸炎またはクローン病、および他の炎症性腸疾患などの状態に関係する場合がある。
【0030】
皮膚損傷に応答した再上皮化の過程は、多くの個体において乱されることもあり得る。例えば、高齢者の皮膚損傷は、若年者の上皮再生を示すよりも活力の低い上皮再生を示すことがよく知られている。損傷に応答した、遅延されたまたはさもなければ損なわれた上皮再生に関係する多くの他の状態または疾患も存在する。例えば、糖尿病の患者、多剤併用の患者(例えば、高齢の結果として)、閉経後の女性、圧力損傷を受けやすい患者(例えば、対麻痺)、静脈疾患の患者、臨床的に肥満の患者、化学療法を受けている患者、放射線療法を受けている患者、ステロイド治療を受けている患者または免疫無防備状態の患者は、すべて上皮再生障害を患う恐れがある。多くのこのような場合において、適切な上皮再生応答の欠如は、創傷部位での感染の発症、潰瘍などの慢性創傷の形成を導く恐れのある正常な創傷治癒応答の遅延の一因となる。したがって、本発明の方法または薬物による上皮促進は、そのような患者にとって利益となることが理解されよう。
【0031】
上記から逸脱することなく、本発明による上皮再生促進は、進行中の再上皮化応答を増大させるために(即ち、促進なしで通常達成されると思われるよりも大きな最大の上皮再生応答を生じさせるために)行うことができることが一般に好ましい場合がある。よって、他の点では健康な対象に生じている上皮損傷部位は、より迅速に再生を誘導できることが理解されよう。
【0032】
再上皮化応答が損なわれている人々において、上皮再生を促進するために用いることのできる治療剤および技術の識別および開発に対して、多くの実験および研究努力が費やされてきた。しかし、再上皮化障害を患っていない患者群は、保健医療サービスによって保護されている全人口の多数、および労働大衆のはるかに高い割合を構成する。したがって、当業者は、これらの他の点では健康な患者の要求に対処することのできる、治療剤および技術の開発から、社会によって得られる大きな利益が存在することを直ちに理解するだろう。したがって、健康な患者における上皮再生促進は、本発明のすべての態様の好ましい実施形態である。急性創傷(慢性創傷の反対として)の再上皮化促進も、本発明のすべての態様の好ましい実施形態である。
【0033】
本発明の目的のために、慢性創傷は、適切な(従来の)治療処置を受けさせても、形成の8週間以内にまったく治癒傾向を示さない、任意の創傷として定義することができる。急性創傷は、慢性創傷以外の任意の創傷とすることができる。好ましい急性創傷は、切開創傷とすることができ、その中で外科的切開創傷は、特に好ましい群となることができる。
【0034】
表皮または角膜上皮などの上皮は、多くの様々な種類の傷害の結果として、損傷を受ける恐れがある。上皮は、例えば、かすり傷、擦傷、創傷(穿通創および非穿通創の両方)、外科的切開、および他の外科的処置(特に皮膚などの組織の部分層(partial thickness)移植)、「やけど」(これは、文脈が他を要求する場合を除き、高温または低温のいずれか、化学剤または放射線への暴露から生じる組織損傷を含むと考えることができる)、および他の形態の外傷を含む、物理的傷害または損傷の結果として損傷する恐れがある。
【0035】
本発明者らは、本発明の薬物および方法が、損傷に応答した上皮再生促進に特に有効であることを見出した。これらは実証され、表皮が損傷する、皮膚への損傷に特に有利である。しかし、本発明の方法は、呼吸上皮、または内部組織もしくは器官を包囲している上皮などの上皮への傷害、損傷または外傷を含めた他の種類の傷害および創傷にも適用できることが理解されよう。上皮再生のうちで促進されるのは、消化器上皮以外の上皮とすることができる。例えば、上皮は、腸上皮または消化管上皮以外とすることができる。
【0036】
やけどから生じる、上皮損傷および特に表皮損傷は、個体の大きな範囲にわたって広がり、非常に苦しめる恐れがある。結果として、やけど損傷は、機能性上皮層の欠如によって生じる感染症および乾燥などの合併症に特に罹患しやすい。したがって、やけど損傷に応答した上皮再生促進は、本発明の好ましい用途を代表する。
【0037】
例えば、皮膚損傷部位での上皮再生促進は、損傷範囲の美容外見に急速な改善をもたらす。美容上の考慮は、いくつかの臨床状況、特に上皮損傷が、顔、首および手などの身体の目立つ部位で起こる場合、重要である。したがって、損傷範囲の美容外見を改善することが望まれている部位での上皮再生促進は、本発明の好ましい実施形態を代表する。
【0038】
上皮への損傷は、病原体(バクテリア、菌類、またはウイルスなど)の作用、化学傷害(腐食剤によって、または化学療法で使用されるものなどの細胞毒性薬の作用を通じて生じた化学やけどなど)の結果として、あるいは日焼けで起こるものなどの放射線損傷(粒子放射線またはガンマ放射線、紫外放射線などの電磁放射線のいずれかを通じた)の結果としても生じる恐れがある。本発明の方法および薬物を用いる上皮再生促進は、上述したすべての状況において効果的に用いることができる。
【0039】
ヒトの上皮損傷に関して生じる多くの同じ問題点は、他の動物、特に獣医動物または家畜(例えば、ウマ、ウシ、イヌ、ネコなど)にも問題となることができる。したがって、本発明の方法は、非ヒト動物にも適用することができる。
【0040】
上皮移植術に関係する損傷に応答した上皮再生を促進するための、TGF−β活性を有する薬剤の使用は、本発明の好ましい実施形態を代表する。植皮の結果として起こる上皮損傷は、美容上の問題点に加えて、臨床的に問題となることがある。
【0041】
上皮再生は、それが機能性上皮層の回復を補助する上皮移植ドナー部位、およびまた再生が、移植された組織の組込みを改善および加速することのできる、レシピエント部位の両方において有利である。移植レシピエント部位での上皮再生も、皮膚、人工皮膚、または皮膚代替物を用いる移植の場合、有利である。
【0042】
上皮移植ドナー部位での上皮再生促進は、機能性上皮層を回復するのにかかる時間を減少させ、したがってドナー部位の感染症の可能性を低減する。上皮再生促進により、さもなければドナー部位において起こる恐れのある、水疱形成および組織破壊の発生率も減少する。
【0043】
上皮移植は、表皮(皮膚)移植であることが好ましい。本発明の方法および薬物は、全層および部分層植皮の両方の状況において、上皮再生を促進することに有用性を有する。このような植皮(即ち、全層または部分層植皮のいずれか)は、網状にするか、または網状でないものにしてもよい。
【0044】
本発明者らは、無傷の上皮層の存在または不在も、皮膚ドナー部位などの、上皮が損傷した、または除去された部位に関係する疼痛の程度を決定する要因であることを見出した。したがって、そのような部位で上皮再生を促進することによって、例えば、皮膚移植片を採取することに関係する疼痛を低減することが可能である。
【0045】
上皮ドナー部位での上皮再生促進の別の利点は、これにより、ドナー部位からの組織の再採取を行うことができるまでに必要な時間が減少することである。再採取は、以前に用いたドナー部位からさらなる上皮組織を、続いて取り出すことを意味する。これは、採取に利用できる皮膚が限られている、および/または採取されるのに必要な皮膚の面積が大きい状況において特に有利である。そのような状況の例として、小児および/または身体表面の大部分を覆うやけどを被っている患者から移植片を採取する必要のある場合が挙げられる。
【0046】
したがって、本発明の第3の態様では、再採取用の上皮移植部位を調製する方法であって、そのような調製の必要な上皮ドナー部位に、TGF−β活性を有する、治療上有効な量の薬剤を投与することを含む方法が提供される。本発明のこの態様の脈絡において、「治療上有効な量」は、ドナー部位からさらなる上皮移植片を採取できる程度に上皮再生を促進するのに十分な、TGF−β活性を有する薬剤の量である。ドナー部位が、再採取を可能にするほど十分に再生したかどうかの判定は、通常、有能な医師によって行われるものであり、そのような人物は、関連する文献および彼ら自身の経験の両方による、豊富な指針を利用できることによって、本発明による調製の利点なしで、そのような再採取を通常どのくらいかけて行うことができるかを示すだろうということが理解されよう。
【0047】
本発明者らは、TGF−β活性を有する薬剤によってもたらされる上皮再生促進は、TGF−β自体、TGF−βの生物活性フラグメント、変異体および誘導体、ならびにTGF−βの生物活性を促進または模倣することのできる物質を用いて行うことができることを見出した。適当な生物活性フラグメント、TGF−βの変異体および誘導体は、in vivoまたはin vitroでTGF−βの作用を複製する能力によって容易に同定することができる。TGF−β活性は、試験化合物で処置された上皮損傷範囲で起こる上皮再生の速度が、対照の上皮損傷範囲で起こる上皮再生の速度と比較することのできる、適当な動物モデルを用いて、in vivoで評価することができる。適当な動物モデルは、上皮層(皮膚の表皮など)を含有する組織の部分層または全層創傷を含むことができる。
【0048】
当業者は、上皮再生速度を評価する場合(例えば、再生が促進されたかどうかを識別するために)、考慮される関連パラメータは、達成された上皮の被覆の程度であることを理解するだろう。このような上皮の被覆を、創傷中に存在する肉芽組織(または血餅形成に関係する基質などの他の物質)の量などの他の要因から区別するために、注意を払う必要がある。この種類の肉芽組織は、創傷の空隙または創傷ベッドを満たすことによって創傷の閉鎖に寄与することができるが、肉芽組織は、本質的に非上皮細胞型からなるので、上皮再生には寄与しない。創傷(皮膚創傷など)を分析する場合、上皮細胞は、その扁平形態(「紡錘」形の線維芽細胞、または炎症反応の円形細胞と対抗して)によって一般に同定することができる。
【0049】
天然のヒトTGF−βのアミノ酸配列を、配列番号1として以下に提供する。
【0050】
【表1】

【0051】
従来技術には、本発明の方法および薬物に用いるのに適したTGF−βのいくつかの異型が含まれる。例えば、本発明によって用いるのに適した生物活性を有するTGF−βの修飾型を含むポリペプチド、ならびにそのポリペプチドをコードする核酸が特許文献1に記載されている。特許文献1の開示は、本発明による使用に好ましいポリペプチドおよび核酸を示す。
【0052】
本発明によって用いることのできるTGF−βの変異体として、上皮再生を促進する能力によって特徴づけられるTGF−βの生物活性を保持する、保存アミノ酸置換体を含有するタンパク質が挙げられる。保存置換体は、プロテアーゼ切断部位またはTGF−βの分解もしくはクリアランスに関与することのできる他のペプチド構造を除去するように設計された置換体とすることができることが好ましい。本発明の薬物および方法に使用できるTGF−βの変異体および誘導体についてのさらなる詳細を以下に提供する。
【0053】
TGF−βの適当な異型は、特定の天然アミノ酸が、置換するアミノ酸と類似の生物物理特性の側鎖を有するアミノ酸と置換されることによって、保存的変化を生じるものとすることができる。例えば、小さな非極性疎水性アミノ酸として、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、およびメチオニンが挙げられる。大きな非極性疎水性アミノ酸として、フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンが挙げられる。極性中性アミノ酸として、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。正に帯電した(塩基性)アミノ酸として、リジン、アルギニンおよびヒスチジンが挙げられる。負に帯電した(酸性)アミノ酸として、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。
【0054】
例えば、アセチル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、タンパク分解性切断もしくはリガンドへの結合による、翻訳中または翻訳後に起こるものなどの、タンパク質配列中の他の修飾は、本発明の薬物および方法に用いるのに適したTGF−βのさらなる異型を提供することができる。
【0055】
本発明の方法および薬物に用いるのに適したTGF−βの誘導体には、in vivoでTGF−βの半減期を増加させるか、または減少させる誘導体が含まれる。TGF−βの半減期を増加させることのできる誘導体の例として、TGF−βのペプトイド誘導体、TGF−βのD−アミノ酸誘導体およびペプチドペプトイドハイブリッドが挙げられる。
【0056】
TGF−βおよびそのフラグメント(ならびに多くの可能なその変異体および誘導体)は、タンパク質であるか、またはペプチジル成分を含有することができるので、それらは、いくつかの手段(生物系におけるプロテアーゼ活性など)によって分解を受けやすい場合のあることが理解されよう。このような分解により、ポリペプチドのバイオアベイラビリティが制限され、したがってポリペプチドの、その生体機能を実現する能力が制限される場合がある。生物学的状況において強化された安定性を有するペプチド誘導体を設計し、生成することのできる、確立した幅広い技術が存在する。このようなペプチド誘導体は、プロテアーゼ媒介による分解に対する耐性の増大の結果として、改善されたバイオアベイラビリティを有することができる。本発明によって用いるのに適したペプチド誘導体または類似体は、これが誘導されるペプチドよりもさらにプロテアーゼ耐性であることが好ましい。
【0057】
TGF−β、その変異体またはフラグメントは、Nおよび/またはC末端を保護することによって、よりプロテアーゼ耐性にすることができることが好ましい。例えば、N末端は、アセチル基によって保護することができる。C末端は、アミド基によって保護することができる。
【0058】
TGF−β誘導体のプロテアーゼ耐性は、従来技術で述べられた周知のタンパク質分解アッセイによって、TGF−β自体のプロテアーゼ耐性と比較することができる。
【0059】
TGF−βのペプトイド誘導体は、TGF−βの構造の知識から容易に設計することができる。確立した手順に従ってペプトイド誘導体を開発するために、市販のソフトウェアを用いることができる。
【0060】
レトロペプトイド(retropeptoid)、(すべてのアミノ酸が、逆の順序でペプトイド残基によって置換されている)も、TGF−βの上皮再生を促進する特性を模倣することができる。レトロペプトイドは、ペプチドまたは、1個のペプトイド残基を含有するペプトイド−ペプチドハイブリッドと比較して、リガンド結合溝内で反対方向に結合することが予期されている。その結果、ペプトイド残基の側鎖は、最初のペプチド内の側鎖と同じ方向を向くことができる。
【0061】
TGF−βのD−アミノ酸型は、本発明の方法および薬物によって用いるのに適したTGF−β誘導体の別の実施形態を構成する。この場合、誘導体を含むアミノ酸残基の順序は、最初のTGF−βと比較して反対になっている。L−アミノ酸ではなくD−アミノ酸を用いる誘導体の調製により、通常の代謝過程によるこのような薬剤の任意の不必要な分解が大きく減少し、投与するのに必要な薬剤の量を、その投与の頻度とともに減少させている。
【0062】
本発明の方法および薬物によって用いるのに適した、TGF−βの生物活性フラグメント、変異体または誘導体を構成するために、フラグメント、変異体または誘導体は、TGF−βの上皮再生を促進する活性を保持しなければならないことが理解されよう。
【0063】
TGF−β(またはその生物活性フラグメント、変異体もしくは誘導体)は、本発明の方法または薬物を用いるために、活性または不活性な形態で提供することができる。TGF−βは、いくつかの機構のいずれかによって、例えばカプセル化によって不活性化することができる。カプセルは、必要な際に活性薬剤を放出するために、外部刺激によって分解可能とすることができる。この方法に用いるのに適した外部刺激として、UV光、超音波、in vivo酵素または熱が挙げられる。
【0064】
TGF−βは、不活性前駆体としても提供することができ、これは、この前駆体をその活性形態に変換するのに必要な天然切断酵素を含有する組織に接触すると活性化されることができる。ヒトTGFβの天然に存在する前駆体のアミノ酸配列を、配列番号2として以下に提供する。
【0065】
【表2】

【0066】
不活性化は、代わりに、結合分子の分子添加によって実現することができる。結合分子は、UV光、超音波、in vivo酵素または熱などの外部刺激によって要求された場合に、脱離可能とすることができる。
【0067】
TGF−βは、多くの場合、潜在性TGF−βとして知られる不活性形態で細胞から分泌されるので、不活性なTGF−βの生成に用いるのに適したペプチドは、当分野で周知である。潜在性TGF−βは、N末端の潜在性関連ペプチド(Latency Associated Peptide)(LAP)およびTGF−βからなり、小潜在性複合体(Small Latent Complex)とも呼ばれる。さらに、小潜在性複合体は、潜在性TGF−β結合タンパク質(Latent TGF−β Binding Protein)(LTBP)と呼ばれる、大きさの変化する別のペプチド(異なる遺伝子から由来した)と結合することができ、この場合、全体の複合体は、大潜在性TGF−β複合体(Large Latent TGF−β Complex)として知られる。
【0068】
潜在性TGF−βは、TGF−βがLAPから解離させられたときに活性化する。この解離は、マンノース6リン酸/インスリン様成長因子II受容体(M6P−R)で調整され、プラスミンなどのプロテアーゼを伴うことができ、基質は、組織トランスグルタミナーゼによって細胞表面で結合している。フリーラジカルおよび活性酸素種も、LAPからの解離を生じさせることによって、TGF−βを活性化することができる。
【0069】
本発明は、上皮再生を促進する薬物の製造用の、TGF−βの生物活性を促進または模倣することのできる物質の使用も包含する。
【0070】
TGF−βの生物活性を促進または模倣することのできる物質は、いくつかの手段によってその作用を達成することができる。例えば、そのような物質は、TGF−βの発現を増大させることができるか、またはそれらは、例えば、TGF−βの代謝回転を減少させることによって、TGF−βの半減期を増加させることができる。TGF−βの生物活性を促進または模倣することのできる物質の例には、タンパク質性および非タンパク質性物質の両方が含まれる。例えば、TGF−βの生物活性を促進または模倣することのできる、このような物質として、TGF−β活性を調節している転写因子、TGF−βの生物活性を模倣することのできる活性化抗体、TGF−βの受容体結合作用を複製する小さな無機分子、ならびにTGF−βの受容体結合で生じたものの特性を保持する細胞内シグナルカスケードを誘発する物質が挙げられる。
【0071】
上皮再生促進により、対照処置または未処置の上皮で起こる再生よりも、少なくとも5%、10%、20%または30%大きい上皮再生速度を生じさせることができることが好ましい。上皮再生の促進により、対照処置または未処置の上皮で起こる再生よりも、少なくとも40%、50%または60%大きい上皮再生速度を生じさせることができることがより好ましい。上皮再生の促進により、対照処置または未処置の上皮で起こる再生よりも、少なくとも70%、80%または90%大きい上皮再生速度を生じさせることができることがさらにより好ましく、上皮再生の促進により、対照処置または未処置の上皮で起こる再生よりも、少なくとも100%大きい上皮再生速度を生じさせることができることが最も好ましい。
【0072】
上皮再生促進により、対照処置または未処置の上皮で起こる再上皮化時間よりも、1日、2日、または3日速く再上皮化する時間を生じさせることができることが好ましい。上皮再生の促進により、対照処置または未処置の上皮で起こる再上皮化時間よりも、少なくとも4日、5日または6日速い、再上皮化する時間を生じさせることができることがより好ましい。上皮再生の促進により、対照処置または未処置の上皮で起こる再上皮化時間よりも、少なくとも7日、8日または9日速い、再上皮化する時間を生じさせることができることがさらにより好ましく、上皮再生の促進により、対照処置または未処置の上皮で起こる再上皮化時間よりも、少なくとも10日以上速い、再上皮化する時間を生じさせることができることが最も好ましい。
【0073】
例えば、ドナー部位から分層植皮のために上皮を再採取するための時間に関して、上皮再生促進により、対照処置または未処置の上皮で起こる再採取までの時間よりも、1日、2日、または3日速い、再採取までの時間を生じさせることができることが好ましい。上皮再生の促進により、対照処置または未処置の上皮で起こる再採取までの時間よりも、少なくとも4日、5日または6日速い、再採取までの時間を生じさせることができることがより好ましい。上皮再生の促進により、対照処置または未処置の上皮で起こる再採取までの時間よりも、少なくとも7日、8日または9日速い、再採取までの時間を生じさせることができることがさらにより好ましく、上皮再生の促進により、対照処置または未処置の上皮で起こる再採取までの時間よりも、少なくとも10日以上速い、再採取までの時間を生じさせることができることが最も好ましい。
【0074】
本発明による薬物は、上皮再生を促進するのに適した、治療上有効な量の本発明による薬剤を提供することができる。本発明者らは、このような薬物が、上皮損傷する前、または以前そのような損傷がすでに発生した場合のいずれに投与しても、上皮再生を促進することができることを見出した。
【0075】
上皮再生を促進するための、本発明による薬剤の予防的使用は、本発明による使用の好ましい様式である。そのような使用は、予期される上皮損傷の時間および位置が分かっている、例えば、選択的な手続きの結果として起こる損傷の場合に最も適しているが、上皮損傷の可能性が生じている状況において、本発明による薬剤での前処置も考慮されていることが理解されよう。本発明者らは、より早い時間(例えば、上皮損傷する前の最大24または48時間)での投与も有効であるが、上皮損傷する直前に(即ち、損傷の発生前1時間で、または好ましくは30分で)、本発明による薬剤を投与すると非常に有効であることを見出した。本発明による使用、方法および薬物のうちの予防的使用は、本発明の好ましい実施形態であり、植皮ドナー部位および/またはレシピエント部位の調製において特に好ましい。
【0076】
本発明による薬剤は、上皮損傷が発生した後に投与される場合にも、上皮再生を促進することに有効である。このような投与は、損傷の発生後できるだけ早く行われるべきであることが好ましいが、本発明による薬剤は、損傷した上皮の完全な回復が起こるまで、任意の時期で上皮再生を促進することができる。本発明による薬剤を、上皮再生を促進することができるように有効に投与することのできる「時期」は、問題になっている上皮の性質(自然な修復速度を含めて)、生じた損傷の程度、および損傷範囲の大きさを含めて、いくつかの要因に依存することが理解されよう。したがって、上皮損傷の範囲が大きい場合、または必然的に再生するのが遅い上皮への損傷の場合、本発明による薬剤は、再生応答が比較的遅くても、依然として有効に投与することができる。本発明による薬剤は、例えば、上皮損傷が生じた後、最初の1時間から24時間以内に投与できることが好ましいが、損傷が発生して、最大10日以上後に投与しても、依然として有利な上皮再生促進を実現することができる。
【0077】
上皮再生促進は、上皮損傷部位での本発明による薬剤の反復投与によって実現することができる。例えば、損傷した上皮に治療上有効な量の本発明による薬剤を、完全な上皮再生が達成されるまで、必要に応じて投与することができる。例として、本発明による薬剤は、損傷の発生後少なくとも最初の3日間、上皮損傷部位に1日1回または1日2回投与することができる。
【0078】
本発明の薬剤は、上皮損傷発生前後の両方で投与されることが最も好ましい。本発明者らは、上皮損傷直前の本発明による薬剤の投与と、それに続く上皮損傷後3日間のそのような薬剤の連日投与が、上皮再生を促進することに特に有効であることを見出した。
【0079】
上皮損傷部位に適用される、本発明による薬剤の量は、薬剤の生物活性およびバイオアベイラビリティなどのいくつかの要因に依存し、これは、さらには投与様式および薬剤の物理化学的特性に依存することが理解されよう。他の要因として、
A)治療中の対象における薬剤の半減期
B)治療される特有の状態
C)対象の年齢
を挙げることができる。
【0080】
投与の頻度も、上述した要因、および特に、選択された本発明による薬剤の、治療中の対象内での半減期に影響されるだろう。
【0081】
一般に、本発明による薬剤を存在する上皮損傷部位に用いる場合、その薬剤は、上皮損傷が発生したら、または診断されたらすぐに投与されるべきである。本発明による薬剤での治療は、損傷した上皮が、臨床医が満足するように再生するまで継続すべきである。
【0082】
投与の頻度は、用いられる本発明による薬剤の生物学的半減期に依存するだろう。一般に、本発明による薬剤を含有するクリームまたは軟膏は、上皮損傷部位での薬剤の濃度が、治療効果を有するのに適した水準で維持されるように、標的組織に投与されるべきである。これには、1日1回またはさらに1日数回の投与が必要となる場合がある。
【0083】
治療上有効な量の本発明による薬剤は、例えば本発明による薬物の形態で、上皮再生を促進する所望の効果を達成することのできる任意の適当な経路によって投与することができるが、上皮損傷部位に局所的に投与できることが好ましい。
【0084】
本発明者らは、上皮再生は、上皮損傷部位において注射形態で、本発明による薬剤(特にTGF−β)を投与することによって有効に促進できることを見出した。例えば、表皮への損傷の場合、本発明による薬剤は、皮内注射によって投与することができる。したがって、本発明の好ましい組成物は、本発明による薬剤の注射溶液を含む(例えば、上皮損傷部位または損傷しそうな部位の縁部周辺の注射用)。本発明のこの実施形態に用いるのに適した製剤は、以下の補遺に検討されている。
【0085】
代わりに、またはさらに、本発明による薬剤は、上皮再生を促進するために、局所形態でも投与することができる。このような投与は、損傷範囲の初期および/または追加治療の一部として行うことができる。局所投与に適した製剤の詳細については、後で説明される。局所製剤は、創傷表面への注射によって、エアゾルスプレーによって、およびまた閉塞性または半閉塞性包帯剤、例えばOpsite、Bioclusive、Tegadermなどの下の創傷表面への施用によって適用することができる。
【0086】
本発明者らは、本発明による上皮再生促進は、本発明による薬剤の、損傷した上皮への(または予防的用途の場合、損傷される上皮への)局所適用によって特に改善することを見出している。
【0087】
本発明による薬剤を含有する組成物は、それらがさらに糖を含むように製剤されることが好ましい。この糖は、マルトース、マンノース、スクロースおよびグルコースを含む群から選択されることができることが好ましい。糖は、マルトースであることが特に好ましい。マルトースなどの糖は、組成物が投与される部位を考慮して、その組成物が実質的に等張性であるように十分な量で存在することができる。
【0088】
本発明者らは、製剤におけるマルトースなどの糖の使用により、TGF−βを含有する容器(例えば、プレフィルドシリンジ)から回収することのできる活性物質の量およびTGF−β分子の固有生物活性の両方に関して、著しくかつ驚くべき改善がもたらされることを見出した。TGF−β物質の回収に関して、マルトースでの製剤は、マンニトール系製剤と比較して、4倍の回収可能物質の増加(ELISAで測定して)をもたらした。TGF−βの固有生物活性に関して、マルトースでの製剤は、マンニトール製剤(30.104[±7.093]pg/mLのミンク肺上皮細胞アッセイでのIC50)と比較して、4倍の活性増加(7.309[±1.044]pg/mLのミンク肺上皮細胞アッセイでのIC50)をもたらした。
【0089】
本発明による薬剤が、マルトースなどの糖の存在下で製剤される組成物の使用は、その組成物が、注射によって投与される状況において特に好ましい。本発明者らは、そのような製剤中のマルトースなどの糖の使用により、他の張性緩衝剤(マンニトールなど)が用いられる製剤と比較して、組成物の注射を受ける者が経験する疼痛の程度の低減に関して顕著な利点がもたらされることを、驚くべきことに見出した。
【0090】
実際、本発明による活性薬剤およびマルトースなどの糖を含む組成物は、非常に有利であり、それらは、本発明の別の態様を構成する。したがって、本発明の第4の態様において、マルトース、マンノース、スクロースおよびグルコースを含む群から選択される糖の存在下で製剤された、TGF−β活性を有する薬剤を含む組成物が提供される。糖は、マルトースを含むことが好ましい。
【0091】
本発明の任意の上記態様による使用に適した組成物は、マルトースなどの糖の存在下で、0.1Mと0.4Mの間の糖の濃度で製剤された活性薬剤を含む。適した製剤は、0.25Mの糖の存在下で製剤された活性薬剤を含むことができることがより好ましい。
【0092】
本発明による活性薬剤を含む組成物は、特に、それらが用いられる様式に応じていくつかの異なる形態をとることができる。したがって、例えば、それらは、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、粉末またはエアロゾルの形態とすることができる。すべてのこのような組成物は、損傷した上皮への局所適用に適しており、これは、本発明による薬剤を、治療を必要とする対象(ヒトまたは動物)に投与することの好ましい手段である。
【0093】
好ましい実施形態では、局所非経口投与(例えば、皮内および皮下)に適した、本発明の薬剤の治療製剤は、薬剤(所望の純度を有する)を、任意選択の生理学的に許容可能な担体、賦形剤または安定剤と混合することにより、再構成のための凍結乾燥および非凍結乾燥粉末製剤、非水溶液および水溶液、エマルジョンおよび半固体製剤を含めた非水性および水性の分散系/懸濁液として調製することができる。賦形剤を含めた許容可能な担体は、使用される用量および濃度で、レシピエントに対して非毒性であり、リン酸、クエン酸および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含めた抗酸化剤;塩化ナトリウム、グルコース、グリセロールなどの張性調節剤(tonicity modifier);オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウムなどの保存剤;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム(benazalkonium chloride);塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルおよび/またはプロピルおよび/またはブチルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含めた他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、マルトース、トレハロースまたはソルビトールなどの他の糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン、金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);脂肪酸セッケン、アシルスルフェート、またはアシルスルホサクシネートなどの陰イオン界面活性剤;アルキル第一級、第二級、第三級または第四級アミンなどの陽イオン界面活性剤;非イオン界面活性剤、例えば、アシル酸のソルビタンエステルまたはポリエトキシ化エステル、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのコポリマーを含むが、それだけに限らない。
【0094】
活性薬剤に加えて、本発明の局所非経口投与用の滅菌溶液の製剤例は、任意選択でまたは追加として以下のものを含むことができる。
【0095】
0.01Mから0.1Mのリン酸緩衝液、および
最大0.9%w/vの塩化ナトリウム(血液と等張性を実現するため、290〜300mOsm/L)、
1〜10w/v%のマルトース(代替方法では、別の適当な糖を用いることができるが)、および
0.1mg/mlのポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(Tween(商標)80)。
【0096】
凍結乾燥(lyophilised(freeze−dried))粉末「ケーキ」は、上記の溶液に基づいて調整できることが、当業者によって容易に理解されるだろう。
【0097】
本発明の好ましい実施形態は、滅菌溶液、再構成に適した滅菌凍結乾燥(lyophilised(freeze−dried))粉末、滅菌懸濁液のいずれかのバイアル、アンプル、またはプレフィルドシリンジの形態、あるいは局所非経口薬物送達に適した、医薬として許容可能な任意の他の提供形態で提供することができる。
【0098】
本発明のさらに好ましい実施形態では、局所投与に適した、本発明の薬剤の治療製剤は、所望の純度を有する物質を、任意選択の、生理学的に許容可能な担体、賦形剤または安定剤と混合することにより、凍結乾燥および非凍結乾燥粉末製剤、非水溶液または水溶液、エマルジョンおよび半固体製剤を含めた非水性または水性の分散系/懸濁液として調製することができる。賦形剤を含めた許容可能な担体は、使用される用量および濃度で、レシピエントに対して非毒性であり、精製水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)リンガー溶液、乳酸リンガー溶液、デキストロース溶液、デキストロース/生理食塩水溶液、水アルコール溶液、グルコース、スクロース、デキストラン、マンノース、マンニトール、マルトース、ソルビトール、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール(PG)、ホスフェート、アセテート、ゼラチン、コラーゲン、Carbopol 934(商標)(BF Goodrich Corp.)、植物油および合成油、植物ワックスおよび合成ワックス、脂肪酸セッケン、アシルスルフェート、またはアシルスルホサクシネートなどの陰イオン界面活性剤、アルキル第一級、第二級、第三級または第四級アミンなどの陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、例えば、アシル酸のソルビタンエステルまたはポリエトキシ化エステル、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのコポリマーなどを含むが、それだけに限らない。さらに、適当な保存剤、安定剤、抗酸化剤、抗菌剤および緩衝剤、例えば、メチルおよび/またはプロピルおよび/またはブチルパラベン、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、クエン酸、アスコルビン酸などを含めることができる。製剤に有用なエマルジョン、クリームまたは軟膏の基剤として、水性クリームおよびエマルジョン(水中油)、油性クリームおよびエマルジョン(油中水)、軟膏(乳化および非乳化炭化水素)、ゲル、ヒドロゲルなどを挙げることができる。局所送達用の他の製剤として、エアロゾル、包帯、および他の創傷包帯剤を挙げることができる。あるいは、本発明の治療化合物を、適当なポリマー基質または膜中に混合するかまたは封入することができ、したがって治療される部位への配置または治療される部位付近への植込みに適した徐放送達装具を提供する。
【0099】
活性成分(複数も)に加えて、本発明の局所投与用の半固体ヒドロゲル製剤の製剤例は、以下のものを含むことができる。
【0100】
0.1%w/vから2.0%w/vのヒドロキシセルロース、および
0.1%w/vから1.0%w/vのCarbopol 934(商標)(BF Goodrich Corp.)、および
10から20%w/vのプロピレングリコール、および
0.005%w/vから0.020%w/vのメチルパラベン、および
0.005%w/vから0.020%w/vのプロピルパラベン、および
pH4〜10まで適量の水酸化ナトリウムまたは塩酸、
100%w/vまで適量の精製水。
【0101】
本発明による局所適用に適した組成物(本発明による活性薬剤が、マルトースの存在下で製剤される組成物を含めて)は、滅菌溶液、再構成に適した滅菌凍結乾燥(lyophilised(freeze−dried))粉末または滅菌非凍結乾燥粉末、滅菌分散系/懸濁液、滅菌半固体のいずれかのビン、ジャー、チューブ、スプレーの形態、あるいは局所薬物送達に適した、医薬として許容可能な任意の他の提供形態で提供することができる。
【0102】
本発明による薬剤は、治療される上皮損傷部位を覆うために用いることのできる、滅菌包帯剤またはパッチで提供することができる。
【0103】
本発明の薬剤を含む組成物のビヒクルは、患者によって十分に許容され、上皮損傷部位への薬剤の放出を可能にするものであるべきであることが理解されよう。このようなビヒクルは、生体適合性、生分解性、生体吸収性、生体溶解性(bioresolveable)および/または非炎症性であることが好ましい。
【0104】
本発明による薬剤を含む組成物は、いくつかの方法において用いることができる。したがって、例えば組成物は、上皮再生を調節するために上皮損傷部位中、および/または周囲に適用することができる。この組成物が、「存在する」上皮損傷部位に適用される場合なら、医薬として許容可能なビヒクルは、比較的「穏やかな」もの、即ち、生体適合性、生分解性、生体溶解性および非炎症性であるビヒクルとなろう。
【0105】
本発明による薬剤、またはそのような薬剤をコードする核酸は、徐放または遅延放出装具内に組み入れることができる。このような装具は、例えば、皮膚上に配置するかまたは皮膚下に挿入することができ、薬剤または核酸は、数日、数週間、またはさらに数カ月にわたって放出されることができる。このような装具は、長期の上皮再生促進を必要とする患者に特に有用となることができる。この装具は、頻回投与(例えば、他の経路による少なくとも1日1回の投与)を通常必要とすると思われる、薬剤および核酸の投与に用いられる場合、特に有利となることができる。
【0106】
本発明による薬剤の1日量は、単回投与(例えば、局所製剤の1日1回の投与または1日1回の注射)として提供することができる。あるいは、本発明による薬剤は、1日の間に2回以上の投与を必要とすることができる。さらに別の方法では、徐放装具は、本発明による薬剤の最適な用量を、反復投与する必要なく患者に提供するために用いることができる。
【0107】
一実施形態では、本発明による薬剤の投与用の医薬ビヒクルは、液体とすることができ、適当な医薬組成物は、溶液形態となるだろう。別の実施形態では、医薬として許容可能なビヒクルは、固体であり、適当な組成物は、粉末または錠剤の形態である。さらなる実施形態では、本発明による薬剤は、医薬として許容可能な経皮パッチの一部として製剤することができる。
【0108】
固体ビヒクルは、着香剤、潤滑剤、可溶化剤、懸濁剤、増量剤、流動促進剤、圧縮助剤、結合剤または錠剤崩壊剤としても作用することのできる、1種または複数種の物質を含むことができ、これは、封入材料にもなることができる。粉末では、ビヒクルは、微粉化した本発明による薬剤との混合物である、微粉化した固体である。錠剤では、本発明による薬剤は、適当な比率の必要な圧縮性を有するビヒクルと混合され、所望の形状および大きさに圧縮される。粉末および錠剤は、最大99%の本発明による薬剤を含有することが好ましい。適当な固体ビヒクルとして、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックスおよびイオン交換樹脂が挙げられる。
【0109】
液体ビヒクルは、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エリキシル剤および加圧組成物を調製することに用いることができる。本発明による薬剤は、水、有機溶媒、その両方の混合物、または医薬として許容可能な油もしくは脂肪などの医薬として許容可能な液体ビヒクル中に溶解させるか、または懸濁させることができる。液体ビヒクルは、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、甘味剤、着香剤、懸濁剤、増粘剤、染料、粘性調節剤、安定剤または浸透圧調節剤などの他の適当な医薬添加剤を含有することができる。経口および非経口投与に適した液体ビヒクルの例として、水(上述した添加剤、例えば、セルロース誘導体、好ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を部分的に含有する)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えばグリコールを含めて)およびその誘導体、ならびに油(例えば、ヤシ油およびラッカセイ油)が挙げられる。非経口投与については、ビヒクルは、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルとすることもできる。滅菌液体ビヒクルは、非経口投与用の滅菌液体形態組成物に有用である。加圧組成物用の液体ビヒクルは、ハロゲン化炭化水素または他の医薬として許容可能な噴霧剤とすることができる。
【0110】
滅菌溶液または懸濁液である液体の医薬組成物は、例えば、筋肉内、くも膜下腔内、硬膜外、腹腔内、皮内または皮下注射によって利用することができる。滅菌溶液は、エアロゾルスプレーまたは閉塞性または半閉塞性包帯剤の下への適用によって、静脈内に、局所的に投与することもできる。本発明による薬剤は、例えば、フリーズドライ、即ち凍結乾燥によって、滅菌水、生理食塩水、または他の適切な滅菌注射用媒質を用いて、投与時に溶解させるか、または懸濁させることのできる、滅菌固体組成物として調製することができる。ビヒクルは、必要で不活性な結合剤、懸濁剤、潤滑剤、着香剤(flavorant)、甘味剤、保存剤、染料、および被覆剤を含むように意図されている。
【0111】
本発明による薬剤を、経口摂取によって投与することが望まれている場合では、選択された薬剤は、分解に対する耐性の程度が高められた薬剤であることが好ましいことが理解されよう。例えば、本発明による薬剤は、好ましくはペプチドとすることができないか、またはペプチド成分を有することができない。
【0112】
本発明による薬剤の組成物は、角膜上皮(角膜の間質細胞の上に覆い被さっている細胞)への損傷を低減するか、または制御するために用いるのに適している。このような損傷は、偶発的な損傷(上記に考察したように)の結果として、または外科手術(例えば、角膜へのレーザー手術)の結果として生じる眼への外傷から生じる場合がある。この場合、本発明による組成物または薬物は、点眼剤の形態とすることができる。この組成物は、角膜に用いることができるが、本発明者らは、本発明の方法が、間質細胞のない、皮膚および頭皮などの組織に用いることができることが好ましいと考えている。
【0113】
本発明による薬剤は、様々な上皮損傷の「内部」部位(即ち、外部表面ではなく、体内に起こる上皮損傷部位)に用いることができる。したがって例えば、本発明による薬剤を含む薬物は、肺または他の呼吸上皮に生じる上皮損傷部位に用いるための吸入用に製剤することができる。
【0114】
製薬業界によって従来使用されているものなどの、既知の方法(例えば、in vivo実験法、臨床試験など)を用いることによって、本発明による薬剤を含む組成物の特定の製剤、およびそのような組成物の投与のための正確な治療制度(活性薬剤の1日量および投与頻度など)を確立することができる。
【0115】
一般に、本発明による薬剤を含む組成物は、上皮損傷部位に投与する場合、その部位で1cmまたは一次のcm(linear cm)当たり0.01nMと10mMの間の薬剤濃度が達成されるように製剤されるべきである。好ましくは、本発明による薬剤を含む組成物は、上皮損傷部位に投与する場合、その部位で1cmまたは一次のcm当たり0.1nMと1mMの間の薬剤濃度が達成されるように製剤されるべきである。より好ましくは、本発明による薬剤を含む組成物は、上皮損傷部位に投与する場合、その部位で1cmまたは一次のcm当たり0.1nMと400μMの間の薬剤濃度が達成されるように製剤されるべきである。
【0116】
単に例として、50ng/100μlと500ng/100μlの間の、本発明による薬剤(TGF−βなど)を含有する注射用溶液は、部分層表皮損傷部位への適用に適している。
【0117】
上皮再生を促進することのできる、本発明による薬剤の適当な1日量は、上述した要因ならびに治療される上皮損傷部位の大きさに依存する。一般に、上皮損傷部位の治療に必要とされる、本発明による薬剤の量は、いくつかの他の要因の中で、上皮損傷部位の面積に応じて、24時間当たり、1cmまたは一次のcm当たり0.01nMから10mMの薬剤の範囲内となろう。
【0118】
本発明による薬剤は、単剤治療(即ち、薬剤単独の使用)として、上皮再生を促進するために用いることができる。あるいは、本発明の使用、方法または薬物は、上皮再生を促進することのできる他の化合物または治療を組み合わせて用いることができる。例えば、本発明の使用、方法または薬物は、包帯剤(ガーゼ、合成複合膜および/または透明膜を挙げることができ、そのいずれも、抗感染症剤、アルジネート、親水コロイドまたはハチミツを、任意選択により含浸させることができる)、人工皮膚(個体自体の表皮から生成された人工皮膚、または市販の等価物など)、または軟膏(銀ベースの抗感染化合物を含むものなど)と組み合わせて用いることができる。本発明の方法、使用または薬物と組み合わせて用いるのに適した、市販の人工皮膚の2例は、Apligraf(Graftskin)およびDermagraftの名称で入手できる。
【0119】
本発明の使用、方法または薬物は、従来の、または開発的な他の治療と組み合わせて用いることにも適している。以下の節では、そのような治療の例を検討し、併用療法の使用が好ましい場合のある指標に言及する。
【0120】
創傷治癒(ならびに特に、やけどおよび皮膚潰瘍の治癒)の状況において上皮再生を促進する場合、本発明の使用、方法または薬物を、創傷清拭剤(debriding agent)と併用することが好ましい場合がある。そのような剤の適当な例として、コラゲナーゼ(Smith & Nephew)などの酵素剤、化学剤、外科/機械剤または生物剤、例えば蛆療法を挙げることができる。
【0121】
代わりに、またはさらに、創傷治癒において上皮再生を促進する場合、本発明の使用、方法または薬物を、サイトポリン(cytoporin)などの溶解性ペプチドと併用することが好ましい場合がある。これらのペプチドは、生体細胞膜中に組み入れ、それによって細胞を溶解させることができる。併用療法に用いるのに適したサイトポリンの例は、HB−107(Helix BioMedix,Inc.によって製造された)である。
【0122】
創傷治癒(特に糖尿病性の)、表皮水疱症および眼疾患(角膜の創傷治癒を含めて)における上皮再生は、本発明の使用、方法または薬物と組み合わせて、チモシンβ−4を用いることによって促進することができる。このような使用に適したチモシンβ−4の組換え型は、RegeneRx Biopharmaceuticals Inc.によって製造されている。
【0123】
創傷治癒および潰瘍などの皮膚疾患に関係した上皮再生促進のために、本発明の使用、方法または薬物とともに併用療法で用いるのに適した別の薬剤は、ピミルプロストである。この化合物は、プロスタグランジンI1の安定類似体であり、血小板凝集の阻害剤および血管拡張剤の両方としての生物活性を有する。特許請求した使用、方法および薬物と組み合わせて用いるのに適したピミルプロストは、Sumitomo Pharmaceuticals Co.Ltd.から入手することができる。
【0124】
例えば、創傷または口内潰瘍の治療において、口腔内の上皮再生は、本発明の使用、方法および薬物の、アンレキサノクス(Access Pharmaceuticals,Inc.から市販されている)などのマスト細胞脱顆粒阻害剤との組合せによって促進することができる。
【0125】
創傷治癒において、または糖尿病性合併症の結果として損傷した上皮の再生も、本発明による使用、方法および薬物の、熱ショックタンパク質−70(HSP−70)または熱ショックタンパク質誘発剤との組合せによって促進することができ、Biorex Research and Development Co.によって製造されている、Bimoclomalは、このような併用療法で用いるのに適したHSP誘発剤の好ましい例を代表する。
【0126】
胃の内膜(例えば、胃潰瘍の治癒を促進するための再上皮化の場合)、表皮、および角膜上皮などの組織における上皮再生を促進するために、本発明の使用、方法および薬物を、組織再生を加速することのできるメラノスタチン類似体と併用することが好ましい場合がある。この種類の適当な類似体の例は、Alaptidであり、これはVUFBから市販されている。
【0127】
本発明の使用、方法および薬物と組み合わせて有利に用いることのできる別の薬剤は、酵素ヘパリナーゼIIIである。このような組合せは、創傷治癒および外部潰瘍(特に、糖尿病性潰瘍)の治療に関係した上皮再生を促進するために用いることができることが好ましい。このような組合せに用いるのに適した形態のヘパリナーゼIIIは、IBT−9302の名称で、IBEX Technologies,Inc.によって製造されている。
【0128】
本発明の使用、方法および薬物は、Chrysalis BioTechnology,Inc.によって製造されている、合成トロンビンペプチド模倣剤Chrysalinと組み合わせて、さらにまたは代わりに用いることができる。このような組合せは、創傷治癒および糖尿病性潰瘍、特に糖尿病性足潰瘍に関係した上皮再生促進にとって好ましい場合がある。
【0129】
やけど損傷部位での上皮再生促進は、GroPep Ltd.によって製造されているPV−707と組み合わせた、本発明の使用、方法または薬物によって行うことができる。PV−707は、ペプチド成長因子アゴニストである。
【0130】
創傷、および特にやけどにおける上皮再生促進は、本発明の使用、方法および薬物と組み合わせて、合成デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)を用いることによって促進することができる。このような使用に適した形態の合成DHEASは、PB−005の名称で、Pharmadigm Inc.によって製造されている。
【0131】
皮膚病の治療および創傷治癒における上皮再生は、組換えラクトフェリンと組み合わせた、本発明の使用、方法または薬物によって促進することができる。適した形態の組換えヒトラクトフェリンは、Agennix Inc.によって製造されている。
【0132】
創傷治癒応答に関係した上皮再生促進に適した別の併用療法は、本発明による使用、方法または薬物の、遊離デオキシリボヌクレオシドの供給との組合せにある。このようなデオキシリボヌクレオシドの適当な原料は、PN−105によって提供され、これは、ゲル基剤中にこれらの分子の等重量混合物を含み、Wellstat Therapeutics Corp.によって製造されている。
【0133】
TGF−β以外の成長因子を利用する、上皮再生を改善するか、または増大させるように意図された様々な方法および組成物が存在する。本発明の使用、方法または薬物は、これらの現存する治療と組み合わせて用いることもできることが理解されよう。以下の節では、他の成長因子に基づいた治療と組み合わせて、本発明をどのように用いることができるかについてのさらなる指針を提供する。
【0134】
本発明の使用、方法および薬物は、線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリーのメンバーと組み合わせて用いることができる。例えば、本発明は、塩基性FGF(FGF−2)と組み合わせて用いることができる。本発明の使用、方法または薬物の、FGF−2とのこの組合せは、創傷損傷後の上皮再生促進に特に好ましい場合がある。このような組合せから恩恵を受けることのできる創傷部位の例として、やけど、移植ドナー部位、および潰瘍(糖尿病性潰瘍または褥瘡などの非治癒性潰瘍を含めて)などの慢性創傷が挙げられる。FGF−2は、好ましくは、組換えFGF−2(rFGF−2)とすることができ、より好ましくは、組換えヒトFGF−2(rhFGF−2)とすることができる。本発明のこの実施形態による使用に適した、rFGF−2の適当な例は、Scios Inc.またはChironによって製造されているものである。
【0135】
上皮再生を促進するために、本発明の使用、方法および薬物と組み合わせて用いることのできる、線維芽細胞成長因子ファミリーの別のメンバーは、創傷、皮膚治癒過程の合併症(皮膚潰瘍など)、口腔粘膜炎または潰瘍性大腸炎などの疾患、クローン病に起こるものなどの消化管上皮損傷の結果として損傷した上皮再生を促進するためのFGF−10(ケラチノサイト成長因子−2またはKGF−2としても知られている)である。本発明の使用、方法または薬物と組み合わせて用いるのに適した、適当な形態のFGF−10は、Repiferminの名称で、Human Genome Sciences,Inc.によって製造されている。
【0136】
本発明の使用、方法および薬物は、血小板由来成長因子(PDGF)ファミリーのメンバーと組み合わせて用いることもできる。例えば、本発明の使用、方法または薬物の、PDFG−Bとの組合せは、創傷治癒、および特にやけど創傷または糖尿病性足潰瘍の治癒において、上皮再生を促進することに用いることができる。このような組合せの好ましい一実施形態では、用いられるPDGF−Bは、アデノウイルスベクターによって送達できることが好ましい。Selective Genetics,Inc.は、このようなアデノウイルスベクターの適当な例を、AdPDGF−B/GAMの名称で製造している。
【0137】
別の適当な組合せでは、本発明の使用、方法または薬物が、PDGF−BBと組み合わせて利用される。このような組合せに用いることのできるPDGF−BBの例は、Regranexの名称で市販されている。
【0138】
本発明の使用、方法または薬物の、サイトカイン阻害剤との組合せも、上皮再生を促進するために用いることができる。このような組合せは、例えば、損傷に応答して、あるいは過敏性腸疾患(IBD)またはクローン病などの疾患の結果として起こる上皮損傷を治療するために、上皮再生を促進することに用いることができる。このような阻害剤の適当な例は、Picower Institute for Medical Researchによって製造されている、合成グアニルヒドラゾンMAPK阻害剤である、Semapimod(CNI−1493)である。
【0139】
本発明による薬剤は、プロテアーゼ活性を阻害することのできる化合物と組み合わせて、代わりにまたはさらに提供することができる。プロテアーゼ阻害剤は、広範囲にわたる阻害活性に基づいて、または上皮損傷部位に存在するプロテアーゼ(またはプロテアーゼファミリー)を選択的に阻害する能力に関して選択することができる。阻害されるプロテアーゼとして、好中球エラスターゼ、マトリックスメタロプロテイナーゼ、プラスミノーゲンアクチベーター(例えば、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーターまたは組織プラスミノーゲンアクチベーター)、プラスミン、カテプシン、フューリン、およびADAMまたはADAM−TSなどの「ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ」ファミリーのメンバーを挙げることができる。適当なプロテアーゼ阻害剤は、ペプチド、タンパク質、または小分子阻害剤を含むことができる。
【0140】
TGF−β、そのフラグメント、誘導体および変異体、ならびにTGF−βの生物活性を増大させることのできる薬剤は、そのような分子をコードする核酸配列の細胞発現を伴う技法によって投与される、好ましい薬剤を代表することができることが理解されよう。細胞発現のこのような方法は、ポリペプチド、誘導体および類似体の治療効果が、長期にわたって必要とされる、例えば、別の方法では不完全な上皮再生応答を、一定期間にわたって増大させることが望ましい状況における医療用途に特に適している。
【0141】
関連する損傷した上皮組織に、本発明による薬剤を投与する、多くの既知の方法は、多くの適当な薬剤が、in vivoで短い半減期を有する場合があるため、2〜3日にわたってさえも上皮損傷部位での薬剤のレベル維持を実現することが困難となり得る不都合を有する。薬剤の半減期は、
(i)プロテアーゼなどによる分解
(ii)結合タンパク質によるクリアランス
(iii)デコリンおよびフィブロネクチンなどの細胞外マトリックス分子による、薬剤活性の結合および阻害
を含む、いくつかの理由で短い場合がある。
【0142】
さらに、上皮損傷治癒部位を治療するために用いられる薬剤は、適当なビヒクルで投与される必要があり、多くの場合、活性薬剤およびビヒクルを含む組成物として提供される。以下にさらに述べるように、このようなビヒクルは、非炎症性、生体適合性、生体吸収性であることが好ましく、薬剤を分解または不活性化してはならない(保管中または使用中)。しかし、治療される組織に薬剤を送達するための良好なビヒクルを提供することは、多くの場合困難となり得る。
【0143】
これらの問題を、取り除くか、または緩和することのできる好都合な方法は、遺伝子治療によって、上皮損傷部位に、治療上有効な量の本発明による薬剤を提供することである。
【0144】
本発明の第5の態様によれば、遺伝子治療技術に用いるための送達系であって、前記送達系は、本発明による薬剤をコードするDNA分子を含み、前記DNA分子は、転写されることによって、選択された薬剤の発現をもたらすことのできる送達系が提供される。
【0145】
本発明の第6の態様によれば、上皮再生促進に用いるための薬物の製造に用いるための、前節で定義された送達系の使用が提供される。
【0146】
本発明の第7の態様によれば、上皮再生を促進する方法であって、治療を必要とする患者に、治療上有効な量の、本発明の第5の態様のために定義された送達系を投与することを含む方法が提供される。
【0147】
遺伝暗号の縮重のために、本発明による使用に適した薬剤をコードする核酸配列は、この核酸配列によってコードされる産物の配列に実質的に影響を及ぼすことなく変異または変化することによって、その機能変異体を提供することができることが明らかである。上述したように、本発明による使用に適した薬剤は、TGF−βの上皮再生を促進する活性を保持していなければならない。
【0148】
TGF−βの変異体をコードする適当なヌクレオチドには、配列内の同じアミノ酸をコードする、異なるコドンの置換によって変更された配列を有し、したがってサイレント変化を生じているものが含まれる。他の適当な変異体は、相同ヌクレオチド配列を有するが、置換するアミノ酸と類似の生物物理学的特性の側鎖を有するアミノ酸をコードする、異なるコドンの置換によって変更されて、保存的変化を生じる配列のすべて、または一部を含むものである。例えば、小さな非極性疎水性アミノ酸として、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、およびメチオニンが挙げられる。大きな非極性疎水性アミノ酸として、フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンが挙げられる。極性中性アミノ酸として、セリン、スレオニン、システイン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。正に帯電した(塩基性)アミノ酸として、リジン、アルギニンおよびヒスチジンが挙げられる。負に帯電した(酸性)アミノ酸として、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。
【0149】
本発明による送達系は、最も普通の送達系で可能であるよりも長い期間にわたって、上皮損傷部位での本発明による薬剤のレベル維持を実現することに非常に適している。上皮再生を促進することに適した本発明による薬剤は、上皮損傷部位において、本発明の第5の態様に開示されたDNA分子で形質転換された細胞から持続的に発現することができる。したがって、本発明による薬剤が、in vivoで短い半減期を有する場合、治療上有効な量の薬剤は、処置された組織から持続的に発現することができる。
【0150】
さらに、本発明の送達系は、上皮損傷部位と接触する軟膏またはクリームにおいて必要とされるものなどの従来の医薬ビヒクルを用いる必要なく、DNA分子(およびその結果、本発明による薬剤)を提供するために用いることができる。
【0151】
本発明の送達系は、上皮再生を促進するための活性を直接的にまたは間接的に有する、本発明による薬剤を生成するようにDNA分子が発現されることができる(送達系が患者に投与されるとき)ようになっている。「直接的に」によって、遺伝子発現の産物自体が、上皮再生を促進するために必要とされる活性を有することを意味する。「間接的に」によって、遺伝子発現の産物が、少なくとも1つのさらなる反応を受けるか、または媒介する(例えば、酵素として)ことによって、上皮再生を促進するのに有効な活性薬剤を提供することを意味する。
【0152】
DNA分子は、適当なベクター内に含まれることによって、組換えベクターを形成することができる。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミドまたはファージとすることができる。このような組換えベクターは、DNA分子で細胞を形質転換するために、本発明の送達系において非常に有用である。
【0153】
組換えベクターは、他の機能成分も含むことができる。例えば、組換えベクターは、ベクターが細胞の核内で自律的に複製するように設計することができる。この場合、DNA複製を誘発する成分が、組換えベクター内に必要とされる場合がある。あるいは、組換えベクターは、ベクターおよび組換えDNA分子を、細胞のゲノムに組み込むように設計することができる。この場合、標的組込みを促進する(例えば、相同組換えによって)DNA配列が望ましい。組換えベクターは、クローニングプロセスにおいて、選択可能マーカーとして用いることのできる遺伝子のためのDNAコードも有することができる。
【0154】
組換えベクターは、必要に応じて、遺伝子の発現を制御するためのプロモーターまたはレギュレーターもさらに含むことができる。
【0155】
DNA分子は、治療中の対象の細胞のDNAに取り込まれるものとすることができる(しかし、必ずではない)。未分化細胞は、安定に形質転換され、遺伝子改変娘細胞の産生をもたらすことができる。この場合、対象における発現制御が、例えば、特定の転写因子、遺伝子アクチベーターとともに、またはより好ましくは、上皮損傷部位で特異的に検出されたシグナルに応答して遺伝子を転写する誘導性プロモーターとともに必要とされる場合がある。あるいは、送達系は、治療中の対象において、分化細胞の不安定な、または一過性の形質転換を促進するように設計することができる。この場合、形質転換された細胞が死ぬか、またはタンパク質を発現することを停止するとき(理想的には、上皮損傷部位が有効に再生されたとき)、DNA分子の発現は停止することになるので、発現制御は、それほど重要ではない場合がある。
【0156】
送達系は、DNA分子を、それがベクター内に取り込まれることなく、対象に提供することができる。例えば、DNA分子は、リポソームまたはウイルス粒子内に取り込むことができる。あるいは、「裸の」DNA分子は、適当な手段、例えば直接のエンドサイトーシス取込みによって、対象の細胞中に挿入することができる。
【0157】
DNA分子は、トランスフェクション、感染、マイクロインジェクション、細胞融合、プロトプラスト融合または衝撃照射(ballistic bombardment)によって、治療される対象の細胞に転移することができる。例えば、転移は、被覆金粒子、DNA分子含有リポソーム、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス)での衝撃トランスフェクション(ballistic transfection)、およびプラスミドDNAの上皮損傷部位への局所的直接適用による、または注射による、直接DNA取込み(例えば、エンドサイトーシス)を提供することによるものとすることができる。
【0158】
DNA分子から発現する、本発明による薬剤は、TGF−βの発現および/または活性を直接的に、または間接的に上方制御し、それによって上皮再生を促進するものとすることができる。
【0159】
本発明の方法は、本発明による薬剤の細胞発現の増加を誘発することによって実現することができ、これは次いで上皮再生を促進することができる。本発明による薬剤のこのような治療発現は、薬剤の自然発生的な発現(例えば、TGF−βなどの、自然に発生する薬剤の自然発現)を増加させることによって、または薬剤の人為的発現(例えば、自然にはTGF−βを発現しない細胞による、TGF−β発現の誘発)、または薬剤の過剰発現を誘発することによって実現することができる。
【0160】
本発明による薬剤の細胞発現は、自然発現であっても、人為的発現であっても、上皮細胞によるものとすることができ、これは、損傷範囲の縁部に存在する上皮細胞とすることができるか、または代わりに損傷範囲に治療的に導入された上皮細胞(例えば、培養された、内因性または外因性上皮細胞)とすることができる。あるいは、本発明による薬剤の細胞発現は、促進される上皮再生に近接しているかまたは接触している細胞による薬剤の発現によって行うことができる。例えば、表皮再生を促進することが望まれている場合、本発明による薬剤は、損傷した上皮の下にあるか、または損傷した上皮を包囲している真皮中に位置する細胞によって発現することができる。
【0161】
上皮再生を促進するために治療上導入される細胞は、それらが、増加したレベルの本発明による薬剤を発現するようにex vivoで操作し、次いで損傷範囲中に導入することができることが理解されよう。上記のように、このような細胞は、それら自体上皮細胞とすることができるか、または細胞によって発現される薬剤が、所望の上皮再生を促進することができるほど、損傷した上皮に十分に接近して位置している細胞とすることができる。細胞は、人工皮膚または皮膚代替物の調製または製造に用いるために、ex vivoで培養された細胞とすることができることが好ましい。細胞は、自己細胞とすることができることがより好ましいが、任意の適当な細胞を用いることができることが理解されよう。
【0162】
したがって、本発明の第8の態様では、本発明による薬剤を発現するために誘発された、任意の関連する細胞型(例えば、上皮、マクロファージ、単球、線維芽細胞、内皮または幹細胞)を含む薬物が提供される。
【0163】
本発明による薬剤の細胞発現の誘発は、細胞に影響を及ぼす外部シグナルによって、または本発明の第4から第6の態様による薬剤の発現を生じさせる核酸の、細胞中への取込みによって行うことができる。
【実施例】
【0164】
本発明を、以下の限定されない実施例1および2でさらに説明する。実施例1では、ヒトの全層皮膚創傷のTGF−βによる上皮再生促進を例示し、実施例2では、TGF−βが、ヒトの部分層皮膚創傷において、上皮再生を促進することができることを例示する。
【0165】
実施例は添付の図を参照する。
【0166】
[実施例1]
ヒトの全層創傷の再上皮化に対するTGF−βの効果
地域Ethical Committeeの承認下で、表皮損傷の場合における、用量段階増加の初めてのヒト(first in man)(FIM)研究を含む、Phase I研究を行うことによって、皮内注射によって投与されるTGF−βの最大耐量(MTD)を決定した。この研究を、二重盲検、プラセボ(ビヒクル)および標準療法対照、無作為化、並行グループ研究として行うことによって、18〜45歳の健康な白人男性のボランティア対象者における、頻回、段階増加の皮内TGF−β濃度の臨床上の安全性、許容性、全身的薬物動態および局所薬力学を調査した(Study and Protocol Reference Number:RN1001−319−1001−001)。
【0167】
TGF−β(および完全に適合するプラセボ)の計画用量を、50ng/100μL、100ng/100μL、500ng/l00μL、1000ng/l00μL、10μg/100μLおよび100μg/l00μLにして、合計で72人の対象者をこの研究に計画した。
【0168】
この研究からのデータを、Regulatory準拠データベースに入力し、2003年12月8日にロックし、2003年12月19日にこの研究を非盲検とした(即ち、無作為化コードを解除した)。
【0169】
すべての研究対象者は、それらの2本の腕のそれぞれに2つの3mmの全層パンチ生検を受け、それらのすべての創傷に対して標準療法を受けた。標準療法では、すべての場合において、湿潤創傷治癒に対する最適な治療を提供した。各対象者の腕における1組の創傷に対する標準療法に加えて、創傷は、TGF−β対TGF−βプラセボ、TGF−β対無し(標準療法として示した)、またはTGF−βプラセボ対無し(標準療法)を受けた。研究の計画は、創傷に対する治療効果の比較が、対象者、即ち自分たちの対照として作用した個体内および個体間の両方でできるようにした。
【0170】
研究に用いたTGF−βバルク薬剤物質は、GMPに則って製造し、賦形剤として酸およびアルコールを含有していた。この材料は、連続希釈することによって、研究での皮内注射用の滅菌プレフィルドシリンジを提供した(再び、GMPに則って製造した)。酸とアルコールの賦形剤の濃度は、バルク薬剤物質から必要とされるTGF−βの注射用量までの連続希釈過程のために変化した。ヒトにおける、異なる濃度でのこれらの賦形剤の、安全性/許容性の両方に対する効果および治癒に対する効果が、分かっていなかったため、完全に適合したプラセボも、同じ方法でGMPに則って調製した(即ち、当量濃度で賦形剤を含有するが、TGF−βタンパク質ではないプラセボ)。これにより、賦形剤自体が、治癒に対して何らかの有害作用を有するかどうかを実証するための、標準療法単独に対する、完全に適合したプラセボの比較も可能になった。
【0171】
研究計画は、各用量グループの9人の対象者が、上述したように、TGF−β、プラセボまたは標準療法のいずれかで処置されたそれぞれの腕に、2つのパンチ生検を受けるようにした。各対象者の腕に対して、内側面上で2つの生検部位に印をつけ、局所麻酔下で、TGF−β、プラセボまたは無し(標準療法)を、その部位中に皮内注射した。次いで、それぞれの印をつけた部位から、3mmの全層パンチ生検を採取した。次いで創傷後のその日に、この部位を、局所麻酔下で、同じ処置、即ちTGF−β、プラセボまたは無し(標準療法)で、上述したように再び処置した。次いで、この創傷は、創傷後3日目または7日目のいずれかに、組織診断のために切除することによって、最初のパンチ生検後3および7日目における、創傷治癒に対する処置の効果の分析を可能にした。次いで対象者を、経過観察した。安全性および許容性のデータを、研究の間にわたって収集した。
【0172】
創傷を切除し、組織学的にパラフィンワックスのブロックに加工処理し、組織切片を切り取り、次いで画像解析を用いて再上皮化を解析した。各用量グループについて、合計16個の創傷をTGF−βで処置し、10個の創傷をプラセボで、および10個の創傷を標準療法で処置するように、合計36個の創傷をこの方法で生成した。これにより、組織学的解析のために、創傷後の2つの異なる時点で、1処置当たり以下の創傷数を得た。
【0173】
創傷後3日目に切除した、8個のTGF−β処置創傷、5個のプラセボ処置創傷および5個の標準療法処置創傷。
【0174】
創傷後7日目に切除した、8個のTGF−β処置創傷、5個のプラセボ処置創傷および5個の標準療法処置創傷。
【0175】
表皮損傷部位での再上皮化の割合を、以下の式に従って計算した。
【0176】
再上皮化(%)=(全創傷直径−非上皮化創傷直径)×100
全創傷直径
【0177】
結果
TGF−βによるヒトにおける全層創傷での再上皮化の加速
ヒトの全層創傷における表皮再生の進行を、図1に示し、これは、
iii)上皮再生中の全層創傷の巨視的外観を示している、創傷後3日目および7日目の時点で撮影した写真、ならびに
iv)上皮再生中の損傷部位の組織像を示している、同じ時点からの顕微鏡写真
を含む。
【0178】
組織切片の分析により、創傷後の両時点において、プラセボおよび標準療法対照で処置した創傷中で、損傷の等価な再上皮化が起こることが示され、そういうものとしてこれらのグループを合わせて、TGF−β処置損傷と比較した。
【0179】
図1から、全層皮膚損傷のTGF−β処置は、上皮再生を促進することができ、未処置またはプラセボ処置創傷の場合よりも早く表皮の再構成を導いていることを認識することができる。
【0180】
実施例1の結果を図2に示し、これは、損傷後3日目および7日目において、TGF−β処置および未処置/プラセボ処置創傷における上皮化の平均割合を比較している。
【0181】
図2は、対照の損傷で起こる再上皮化と比較した場合、50ng/100μLの濃度でのTGF−βを用いた処置により、創傷の再上皮化が有意に加速されることを明らかに示す。対照損傷に対する薬剤処置損傷での上皮再生の促進は、最大(500ng/100μL)でTGF−βを受ける個体でも観察された。
【0182】
[実施例2]
ヒトの部分層創傷/植皮ドナー部位の再上皮化に対するTGF−βの効果
試験的研究(非盲検)を、地域Ethical Committeeの承認下で行うことによって、2人の18〜45歳の健康な白人男性のボランティア対象者において、分層植皮ドナー部位に適用した場合の、TGF−βの皮内および局所適用の効果を調査した。用いたTGF−βの濃度は、50ng/100μLであり、達成した上皮再生速度を、当量濃度の完全に適合したTGF−βプラセボと比較した。TGF−βおよびプラセボの両方は、上述したようにGMPに則って調製した。
【0183】
最初にドナー部位を確認し、腰の正中の両側に、それぞれ1.5×2cmの大きさの印をつけ、次いで200000中1アドレナリンを含有する局所麻酔で湿潤させた。次いで各部位に、一方の側が、50ng/cmの用量でTGF−βを受け、他方の側が、完全に適合したプラセボを受けるように皮内注射した。次いで対象者を、腹臥位で30分間休ませた後、穏やかな圧力で止血しながら、印をつけた各部位から約0.55mmの厚さの分層皮膚移植片を採取した。移植片の採取直後に、各ドナー部位に、TGF−βまたはプラセボのいずれかを局所適用し、次いで創傷部を手当てし、対象者を解放した。対象者は翌日戻り、すべての段階で各創傷部が、同じ処置、即ち3回のTGF−βの適用または3回のプラセボの適用を受けるように、TGF−βまたはプラセボのいずれかのさらなる局所適用を受けた。次いで対象者を2週間毎日、および次いで21日目に検査し、引き続いて経過観察した。
【0184】
結果
TGF−βによるヒトにおける部分層創傷/植皮ドナー部位の再上皮化の加速
損傷部位の写真を用いて評価した、巨視的分析では、TGF−βは、表皮再生促進を顕著に加速し、創傷後8日目まで、プラセボ処置対照に生じる速度と比較して、部分層植皮ドナー部位での再上皮化速度を増加させることを示した。
【0185】
図3−1および図3−2は、損傷時から21日にわたる、部分層皮膚創傷における、巨視的外観およびそれによって上皮再生の進行を示している写真を示す。上皮再生促進を示している写真は、図3−2中にアステリスク()で印をつけてある。
【0186】
創傷後15日目および21日目において、TGF−β処置創傷と未処置/プラセボ処置創傷との間の差異が、巨視的にあまり明らかでないことを認めることができる。この影響は、TGF−β処置部位は8日目以前に完全に再上皮化されるが、プラセボ処置部位は、同じ程度の再上皮化に、せいぜい15日目付近で到達するという事実によって説明される。
【0187】
結論(実施例1&2)
上記に説明した結果は、TGF−βファミリーの特定のメンバーであるTGF−βは、上皮再生を促進することができることを、驚くほどに実証している。この知見は、以前の報告では、TGF−βファミリーのメンバーは、皮膚損傷における表皮再生を阻害し、TGF−βアイソフォームは、このプロセスの最も強力な阻害剤であることが示されてきたので、当業者が、従来技術を考慮して期待すると思われる知見と正反対である。TGF−βの処置によってもたらされる上皮再生促進は、全層創傷および部分層創傷(例えば、植皮ドナー部位となることができる)の両方で実現される。ヒトにおける治療効果は、最大500ng/100μLの活性薬剤の用量を利用するTGF−β処置において観察される。
【0188】
補遺
製剤
上皮再生を促進するTGF−β活性を有する薬剤の能力を証明するための臨床研究で用いた製剤の詳細を、以下の表題の下で提供する。
【0189】
研究で用いたTGF−β薬剤物質は、20mMの酢酸および20%のイソプロピルアルコール中に9.1mg/mLの濃度で供給した。この材料を連続希釈することによって、実施例のデータで述べた濃度でTGF−βを含有するシリンジを作製した。最終溶液を生成するために用いたさらなる希釈剤に関係なく、痕跡程度の酢酸およびイソプロピルアルコールが、連続希釈によって残るだろうということは、当業者によって理解されよう。
【0190】
A1.パンチ生検処置に用いた製剤(全層皮膚創傷)
パンチ生検/全層創傷研究のために、薬剤物質を5%w/vのマンニトールを含有するPBSで希釈し、酢酸を用いてpH3.8に調節した。この製剤は、上皮再生促進に有効であることが判明した。
【0191】
上述したマンニトール系製剤の代替として、マルトース系製剤(以下にさらに十分に説明する)も調製した。マルトースと組み合わせた本発明による薬剤のこの製剤は、組成物の注射に関係する疼痛を劇的に低減することが、驚いたことに判明した。本発明者らによって行われた研究により、パンチ生検研究におけるマンニトール系製剤の注射に関係する疼痛は、本発明による薬剤を、糖の存在下、特に等張濃度のマルトースの存在下で製剤すると軽減されることが臨床的に実証された。
【0192】
マルトース系およびマンニトール系製剤の効力についてのin vitro分析により、マルトースを組み合わせた本発明による活性薬剤を含む組成物の、さらなる驚くべき利点が明らかにされた。PBS/マンニトール製剤を0.25Mマルトース製剤と比較するための、ELISAアッセイおよびミンク肺上皮細胞アッセイを用いる調査により、マルトース製剤は、約4倍のTGF−β活性の増加をもたらすことが実証される。
【0193】
A2.分層植皮ドナー部位の処置に用いた製剤
この研究のために、TGF−βを、0.25Mのマルトース(即ち、1リットルの注射用水当たり90gのマルトース、注射用水中9%(w/v)のマルトースと等価)中で製剤した。
【0194】
この製剤を、皮内かつ局所的に適用することによって、上皮再生を促進した。
【0195】
参考文献:
非特許文献2
非特許文献3
非特許文献4
非特許文献1
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1−1】i)上皮再生中のヒトの全層創傷の巨視的外観を示している、創傷後3日目の時点で撮影した写真、ならびにii)上皮再生中の損傷部位の組織像を示している同じ時点からの顕微鏡写真であって、50ng/100μLのTGFβ3、プラセボまたは標準療法で処置した創傷の、巨視的および組織画像の例を示す図である。図中、パネルAおよびBは、創傷後3日目の、TGF−β3で処置した創傷の巨視的および微視的外観をそれぞれ示す。組織画像の解析により、54%の再上皮化が示されている。パネルCおよびDは、創傷後3日目の、プラセボで処置した創傷の巨視的および微視的外観をそれぞれ示す。組織画像の解析により、20%の再上皮化が示されている。パネルEおよびFは、創傷後3日目の、標準療法で処置した創傷の巨視的および微視的外観をそれぞれ示す。組織画像の解析により、19%の再上皮化が示されている。
【図1−2】i)上皮再生中のヒトの全層創傷の巨視的外観を示している、7日目の時点で撮影した写真、ならびにii)上皮再生中の損傷部位の組織像を示している同じ時点からの顕微鏡写真であって、50ng/100μLのTGFβ3、プラセボまたは標準療法で処置した創傷の、巨視的および組織画像の例を示す図である。図中、パネルGおよびHは、創傷後7日目の、TGF−β3で処置した創傷の巨視的および微視的外観をそれぞれ示す。組織画像の解析により、100%の再上皮化が示されている。パネルIおよびJは、創傷後7日目の、プラセボで処置した創傷の巨視的および微視的外観をそれぞれ示す。組織画像の解析により、100%の再上皮化が示されている。パネルKおよびLは、創傷後7日目の、標準療法で処置した創傷の巨視的および微視的外観をそれぞれ示す。組織画像の解析により、100%の再上皮化が示されている。
【図2】損傷後3日目および7日目において、TGF−β処置、未処置/プラセボ処置創傷で達成された、再上皮化の平均割合間の比較を示し、創傷後3日目および7日目における、50ng/100μLのTGFβ3、プラセボまたは標準療法で処置した創傷の再上皮化について示し、組織切片の画像解析によって得た図である。図中、は、対応のないt検定によって評価された有意な結果を示す(p=0.05)。
【図3−1】損傷時から21日にわたる、部分層皮膚損傷における、巨視的外観およびそれによって上皮再生の進行を示している写真を示す図である。図中のパネルAからEは、それぞれ0、1、2、3、4日目のプラセボで処置した損傷を示す。一方、パネルJからNは、それぞれ0、1、2、3、4日目のTGF−βで処置した損傷を示す。
【図3−2】損傷時から21日にわたる、部分層皮膚損傷における、巨視的外観およびそれによって上皮再生の進行を示している写真を示す図である。 図中のパネルFからIは、それぞれ7,8、15、21日目のプラセボで処置した損傷を示す。一方、パネルQからRは、それぞれ7,8、15、21日目のTGF−βで処置した損傷を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皮再生促進のための薬物の製造における、TGF−β活性を有する薬剤の使用。
【請求項2】
前記薬剤は、TGF−βであることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記薬剤は、TGF−βのフラグメント、誘導体または変異体であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記薬剤は、TGF−βの生物活性を促進および/または模倣することのできる物質であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記上皮再生は、急性損傷部位においてであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記上皮再生は、若年および/または健康な患者についてであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記上皮再生のうちで促進されるのは、重層扁平上皮であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記上皮は、表皮であることを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記上皮は、角膜上皮であることを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項10】
前記上皮は、呼吸上皮であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記上皮は、腹腔、胸腔または骨盤腔の内膜上皮であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記薬物は、損傷後の上皮再生促進用であることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記薬物は、手術後の上皮再生促進用であることを特徴とする請求項10に記載の使用。
【請求項14】
前記手術は、上皮移植を含むことを特徴とする請求項12に記載の使用。
【請求項15】
前記手術は、
i)上皮移植片の除去、
ii)任意選択により、前記上皮移植片の網状化、および
iii)前記移植片のレシピエント部位への適用
を含むことを特徴とする請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記薬物は、移植ドナー部位への投与用であることを特徴とする請求項14に記載の使用。
【請求項17】
前記薬物は、移植レシピエント部位への投与用であることを特徴とする請求項14に記載の使用。
【請求項18】
前記薬物は、移植片への投与用であることを特徴とする請求項14に記載の使用。
【請求項19】
前記手術は、植皮を含むことを特徴とする請求項12から18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記植皮は、全層植皮であることを特徴とする請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記植皮は、部分層植皮であることを特徴とする請求項19に記載の使用。
【請求項22】
前記薬物は、やけど損傷後の上皮再生促進用であることを特徴とする請求項1から21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記薬物は、局所適用用であることを特徴とする請求項1から22のいずれかに記載の使用。
【請求項24】
前記薬物は、局所注射用であることを特徴とする請求項1から23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
前記薬物は、クリームまたは軟膏であることを特徴とする請求項1から232のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
前記上皮再生促進は、予防的促進であることを特徴とする請求項1から25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
損なわれている、抑制されている、遅延されている、またはさもなければ欠陥のある上皮再生を促進するための薬物の調製用であることを特徴とする請求項1から5、または請求項7から26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
正常な上皮再生を加速するための薬物の調製用であることを特徴とする請求項1から26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項29】
高齢者における上皮再生を促進するための薬物の調製用であることを特徴とする請求項1から28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項30】
前記薬剤は、マルトースの存在下で製剤されることを特徴とする請求項1から29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
前記マルトースは、0.1Mから0.4Mのマルトース濃度で存在することを特徴とする請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記マルトースは、0.25Mのマルトース濃度で存在することを特徴とする請求項30に記載の使用。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【公表番号】特表2009−501201(P2009−501201A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520949(P2008−520949)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002577
【国際公開番号】WO2007/007098
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(500588178)レノボ・リミテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】RENOVO LTD.
【Fターム(参考)】