説明

上皮性卵巣癌の診断又は予後診断方法

本発明は、上皮性卵巣癌(EOC)のイメージング、診断、又は予後診断のための、Sox11タンパク質及び/又はmRNAに選択的に結合する結合部分を提供する。場合によって、前記部分は、抗体又はその抗原結合断片である。有利には、前記部分は、容易に検出可能な部分も含む。本発明は、EOC細胞のイメージング方法及び個体におけるEOCの診断又は予後診断方法も提供する。本発明の更なる態様は、試験する細胞サンプルにおける遺伝子発現パターンを分析する工程、及びそれを既知のリンパ腫細胞のサンプルの遺伝子発現パターンと比較する工程を含む、EOCと関連する細胞を同定する方法を提供する。好ましくは、試験する細胞は、Sox11発現が正常なB細胞と比較して上方制御されている場合には、EOC細胞と同定される。好ましくは、EOC細胞は、Sox11発現が非癌性上皮性卵巣細胞と比較して上方制御されている場合には、改善した無再発生存率に関連するものであると同定される。好ましくは、EOC細胞は、Sox11発現が、非癌性上皮性卵巣細胞と比較して類似しているか又は下方制御される場合には、減少した無再発生存率と関連するものとして同定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上皮性卵巣癌(EOC)の診断、予後診断、及びイメージングのための新規薬剤並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
上皮性卵巣癌(EOC)は、婦人科悪性腫瘍による死亡の主要な原因であり、女性の死亡に関連する癌の5番目に最も一般的な原因である。2008年には、21650人の新しい卵巣癌のケースが米国において診断され、15520人が前記疾患で死亡していると見積もられている(Jemal A, Siegel R, Ward E, et al. Cancer statistics, 2008. CA: a cancer journal for clinicians 2008;58:71-96)。EOCの発生率に対する生存の乏しい比率は、進行した段階において診断されるケースの割合が高いこと、及び進行した難治性疾患について効果的な治療方法が存在しないことに関連する。手術技術における改善及びベバシズマブなどのより標的化された治療法の出現にもかかわらず、EOC患者の生存率は、5年で45%である(Jemal A, Siegel R, Ward E, et al. Cancer statistics, 2008. CA: a cancer journal for clinicians 2008;58:71-96)。その様な芳しくない予後統計は、より良好な予後診断及び診断アッセイを開発し、新規治療標的を同定するように、EOCの分子機構の理解を改善することが緊急に必要とされていることを示す。
【0003】
上皮性卵巣癌は、3つの主要な組織学的サプタイプ:漿液、粘液、及び類内膜を含む。漿液EOCは、漿液嚢腫、漿液良性嚢胞腺腫、上皮細胞の増殖活性及び核異常を有するが浸潤性破壊的増殖(低悪性度又は境界悪性)を有しない漿液嚢胞腺腫、並びに漿液嚢胞腺癌を含む。粘液EOCは、粘液嚢腫、粘液良性嚢胞腺腫、上皮細胞の増殖活性及び核異常を有するが浸潤性破壊的増殖(低悪性度又は境界悪性)を有しない粘液嚢胞腺腫、並びに粘液嚢胞腺癌を含む。類内膜EOCは、類内膜腫瘍(類内膜における腺癌に類似)、類内膜良性嚢胞、上皮細胞の増殖活性及び核異常を有するが浸潤性破壊的増殖(低悪性度又は境界悪性)を有しない類内膜腫瘍、並びに類内膜腺癌を含む。
【0004】
2種のさらなる有病率の低い組織学的サブタイプも存在し、それらは明細胞及び未分化である。
【0005】
加えて、EOCは、卵巣を越えて広がる程度に依存する、「ステージ」によって分類され得る。かくして、ステージIは、1つ又は双方の卵巣に限定される卵巣癌として定義される。ステージIIは、骨盤内器官(例えば、子宮、卵管)に広がっているが、腹部器官には広がっていない卵巣癌として定義される。ステージIIIは、腹部器官又はリンパ系(例えば、骨盤内又は腹部リンパ節、肝臓のリンパ節、腸のリンパ節)に広がった卵巣癌として定義される。最後に、ステージIVは、離れた部位(例えば、肺、肝臓内部、脳、首のリンパ節)に広がった卵巣癌として定義される。
【0006】
EOCは、癌細胞の外観によっても悪性度を決定し得る。低い悪性度(又はグレード1)は、癌細胞が卵巣の正常細胞に非常に類似していることを意味する。それらは、通常、ゆっくりと増殖し、広がる可能性が低い。中程度の悪性度(又はグレード2)は、細胞が低い悪性度の細胞よりも異常に見えることを意味する。高い悪性度(又はグレード3)は、細胞が非常に異常に見えることを意味する。それらは、より速く増殖し、広がる可能性が高い。
【0007】
かくして、大半の他の癌と同様に、EOCは、複雑な異種疾患であり、多くの悪性表現型をもたらす多数の遺伝的及びエピジェネティックな変化に影響を受けて制御される(Martin L and Schilder R. Novel approaches in advancing the treatment of epithelial ovarian cancer: the role of angiogenesis inhibition. Journal of clinical oncology 2007;25:2894-901; Naora H and Montell DJ. Ovarian cancer metastasis: integrating insights from disparate model organisms. Nature reviews 2005;5:355-66)。個々の腫瘍の特徴及びその一生は、経時的に得られる多数の体細胞変異(例えば、TP53、PTEN、RAS)及び環境要因(例えば、エストロゲン又はタバコに対する曝露)に対する宿主反応の継続的発展に由来することが現在よく認識されている(West M, Ginsburg G, Huang A, and Nevins J. Embracing the complexity of genomic data for personalized medicine. Genome Res 2006;16:559-66)。あるケースにおいては、これらの体細胞変異が、遺伝的な生殖細胞系の変異(例えば、BRCA1/2)に存在する(West M, Ginsburg G, Huang A, and Nevins J. Embracing the complexity of genomic data for personalized medicine. Genome Res 2006;16:559-66; Prat J, Ribe A, and Gallardo A. Hereditary ovarian cancer. Human pathology 2005;36:861-70)。治療的観点から、EOCは、腫瘍表現型、疾患転帰、及び治療に対する応答における広範な天然の不均一性によって表わされる、複雑な相互に関係する疾患の集まりであると解するのが最もよい。EOCの不均一性を正確に説明することができる診断及び予後診断用バイオマーカーを同定及び徹底的に評価することは、大きな課題である。加えて、正確な予測バイオマーカーは、現在の治療プロトコールを導き、新たな標的化治療法の開発及び適用を導くことが必要とされる。
【0008】
DNAマイクロアレイ、質量分析器に基づくプロテオミクス、及びメタボロミクスなどの技術は、腫瘍形成の分子的及び遺伝的基礎の理解を改善する助けとなり、臨床腫瘍学の実践に新たな手法を加える機会を与えることによって、最近十年間にわたって翻訳研究に役立ってきた。「オミックテクノロジー」の基本的前提は、ゲノム(DNA)、トランスクリプトーム(RNA)、プロテオーム(タンパク質)、又はメタボローム(代謝産物)における変化の包括的な試験が、現在利用可能なものよりも優れた診断試験及び治療効果を提供することによって、疾患の生理及び機構の理解を与え得ることである(Brennan DJ, Kelly C, Rexhepaj E, et al. Contribution of DNA and Tissue Microarray Technology to the Identification and Validation of Biomarkers and Personalised Medicine in Breast Cancer. Cancer Genomics and Proteomics 2007;4:3-16)。癌生物学に対するDNAマイクロアレイの適用は、特に、腫瘍の病態生理学的経路及び相互作用の複雑性の理解を増え続けさせるという結果をもたらした(Duffy MJ, Kelly ZD, Culhane AC, O'Brien S, and Gallagher WM. DNA microarray-based gene expression profiling in cancer: aiding cancer diagnosis, assessing prognosis and predicting response to therapy. Current Pharmacogenomics 2005;3:289-304; Brennan DJ, O'Brien SL, Fagan A, et al. Application of DNA microarray technology in determining breast cancer prognosis and therapeutic response. Expert Opin Biol Ther 2005;5:1069-83)。癌などの疾患状態及び正常状態の双方における遺伝子の機能分類を解明する目的で、トランスクリプトミクス評価によって、遺伝子型−表現型の相関関係の研究が促進された(Brennan D, O'Brien S, Fagan A, et al. Application of DNA microarray technology in determining breast cancer prognosis and therapeutic response. Expert Opin Biol Ther 2005;5:1069-83)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Jemal A, Siegel R, Ward E, et al. Cancer statistics, 2008. CA: a cancer journal for clinicians 2008;58:71-96
【非特許文献2】Martin L and Schilder R. Novel approaches in advancing the treatment of epithelial ovarian cancer: the role of angiogenesis inhibition. Journal of clinical oncology 2007;25:2894-901
【非特許文献3】Naora H and Montell DJ. Ovarian cancer metastasis: integrating insights from disparate model organisms. Nature reviews 2005;5:355-66
【非特許文献4】West M, Ginsburg G, Huang A, and Nevins J. Embracing the complexity of genomic data for personalized medicine. Genome Res 2006;16:559-66
【非特許文献5】Prat J, Ribe A, and Gallardo A. Hereditary ovarian cancer. Human pathology 2005;36:861-70
【非特許文献6】Brennan DJ, Kelly C, Rexhepaj E, et al. Contribution of DNA and Tissue Microarray Technology to the Identification and Validation of Biomarkers and Personalised Medicine in Breast Cancer. Cancer Genomics and Proteomics 2007;4:3-16
【非特許文献7】Duffy MJ, Kelly ZD, Culhane AC, O’Brien S, and Gallagher WM. DNA microarray-based gene expression profiling in cancer: aiding cancer diagnosis, assessing prognosis and predicting response to therapy. Current Pharmacogenomics 2005;3:289-304
【非特許文献8】Brennan DJ, O'Brien SL, Fagan A, et al. Application of DNA microarray technology in determining breast cancer prognosis and therapeutic response. Expert Opin Biol Ther 2005;5:1069-83
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、EOCの診断及び予後診断のための薬剤及び方法を改善する必要が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の態様は、上皮性卵巣癌(EOC)の診断又は予後診断に使用するための、Sox11タンパク質又はそれをコードする核酸分子に選択的に結合することができる結合部分を提供することである。
【0012】
本発明は、上皮性卵巣癌(EOC)の診断又は予後診断剤の調製における、Sox11タンパク質又はそれをコードする核酸分子に選択的に結合することができる結合部分の使用も提供すると解されるであろう。
【0013】
「Sox11タンパク質」は、本明細書に添付した図4に示すヒトSox11並びにその天然のホモログのアミノ酸配列を含む。
【0014】
かくして、データベース登録番号BAA88122、AAH25789、AAB08518、AAH25789、及びP35716によって特定されるSox11タンパク質も含む。
【0015】
本発明者は、驚くべきことに、免疫組織化学分析を使用して、EOCの新規診断/予後診断用抗原としてSox11を同定した。これは、EOC細胞におけるSox11の過剰発現だけでなく、低リスクのEOC群に対する高リスクのEOC群におけるSox11の異なる発現を示す最初の報告である。かくして、Sox11は、EOC患者を診断するための有益なマーカーを提供し、この進行した悪性度の正確な診断及び/又は予後診断に役立つ。
【0016】
「診断」は、個体が罹患している可能性がある癌の存在及び/又はタイプを同定するための行為又は方法を含む。かくして、1つの実施態様では、診断は、1つ又は複数の他の癌からの特定の癌のタイプ、すなわち、EOCの区別も含む。代替的な実施態様では、本発明の結合部分は、全生存率及び/又は癌特異的生存率に基づく臨床的に関連する群にEOC患者を分類するのに使用するためのものである。
【0017】
「予後診断」は、起こり得る癌の経過及び結果を予測する、例えば、生存確率及び/又は無再発生存(RFS)確率を決定する行為又は方法を含む。
【0018】
「結合部分」は、Sox11タンパク質又はそれをコードするmRNAに結合することができる分子又は存在を意味する。
【0019】
本発明の結合部分は、任意の組織学的サブタイプ(例えば、漿液、粘液、類内膜、明細胞、未分化又は分類不可能)のEOCの診断又は予後診断のために使用され得ると当業者に理解されるであろう。
【0020】
1つの実施態様では、前記結合部分は、特定の組織学的サブタイプに属するEOCを診断又は予後診断するのに使用するためのものである。かくして、EOCは、漿液、粘液、類内膜、明細胞、及び未分化又は分類不可能からなる群から選択される組織学的サブタイプに属するものであり得る。
【0021】
同様に、前記結合部分は、特定の悪性度(例えば、高い悪性度)の細胞に関連するEOCを診断又は予後診断するのに使用するためのものであり得る。
【0022】
本発明の結合部分はインビボ又はインビトロで使用され得るとも解されるであろう。
【0023】
1つの実施態様では、本発明の結合部分は、上皮性卵巣癌(EOC)のための唯一のバイオマーカーとしてSox11発現の検出に使用するためのものである。例えば、Sox11発現は、1つ又は複数の他の癌からEOCを区別するための唯一のバイオマーカーとして使用され得る。
【0024】
代替的に、本発明の結合部分は、上皮性卵巣癌(EOC)のための1つ又は複数の追加のバイオマーカーを検出する1つ又は複数の追加の結合部分と組み合わせて使用するためのものであり得る。かくして、前記結合部分は、20未満の追加の結合部分、例えば、15、10、8、6、5、4、3、若しくは2未満又は1の追加の結合部分と組み合わせて使用するためのものであり得る。
【0025】
1つの特定の実施態様では、本発明の結合部分は、Sox11の核及び/又は細胞質発現を検出するためのものである。
【0026】
「選択的に結合する」は、他のポリペプチド又は核酸よりもSox11に強力に、好ましくは少なくとも10倍強力に、より好ましくは少なくとも50倍強力に、さらに好ましくは少なくとも100倍強力に結合する結合部分を含む。好ましくは、前記結合部分は、Sox11ポリペプチド又は核酸にのみ結合する。
【0027】
本明細書で使用する用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合を介して共に結合している複数のアミノ酸を意味する。用語「ペプチド」は用語「ポリペプチド」と互換的に使用され得るが、ペプチドは2以上のポリペプチドからなってよい。
【0028】
本明細書で使用する用語「アミノ酸」は、標準的な20の遺伝子にコードされるアミノ酸、並びに「D」体(天然の「L」体に対して)の対応する立体異性体、オメガアミノ酸、他の天然アミノ酸、特殊なアミノ酸(例えば、α,α−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸など)、及び化学的に誘導体化したアミノ酸を含む。
【0029】
アミノ酸が具体的に、例えば、「アラニン」又は「Ala」又は「A」と列挙される際は、そうではないと明示されていない限り、その用語はL−アラニン及びD−アラニンの双方を示す。他の特殊なアミノ酸も、所望の機能特性がポリペプチドによって保持される限り、本発明のポリペプチドに適切な成分であり得る。示されるペプチドについて、各々のコードされるアミノ酸残基は、適当な場合には、従来のアミノ酸の慣用名に対応する一文字表記によって表わされる。
【0030】
本発明の核酸に基づく結合部分は、好ましくはDNAであるが、RNA又はPNAなどの人工核酸であり得る。
【0031】
本発明の第二の態様は、サンプル中の上皮性卵巣癌(EOC)細胞の検出に使用するための、Sox11タンパク質又はそれをコードする核酸に選択的に結合することができる結合部分を提供する。
【0032】
1つの実施態様では、前記結合部分は、特定の組織学的サブタイプ(例えば、漿液、粘液、類内膜、明細胞、及び未分化又は分類不可能)に属するEOCの検出に使用するためのものである。
【0033】
同様に、前記結合部分は、特定の悪性度(例えば、高い悪性度)の細胞に関連するEOCの検出に使用するためのものであり得る。
【0034】
本発明の1つの実施態様は、Sox11タンパク質に選択的に結合することができる第一又は第二の態様の結合部分を提供することである。好ましくは、Sox11タンパク質はヒトタンパク質である。
【0035】
好都合には、前記結合部分は、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド(図4参照のこと)及び/又はその天然のバリアントに選択的に結合することができる。
【0036】
「天然のバリアント」は、天然で認められるSox11タンパク質、例えば、対立遺伝子バリアントを含む。
【0037】
ポリペプチドのバリアントは、既知のアミノ酸配列に対して少なくとも60%の同一性、好ましくは前記配列に対して少なくとも70%又は80%又は85%又は90%の同一性、より好ましくは配列番号1の前記アミノ酸配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する配列を含むポリペプチドを含む、
【0038】
同一性の割合は、例えばパラメータとしてグローバルアラインメントオプション(global alignment option)、スコアリングマトリックス(scoring matrix) BLOSUM62、オープニングギャップペナルティー(opening gap penalty)−14、エクステンディングギャップぺナルティー(extending gap penalty)−4を使うエクスパシーファシリティーサイト(http://www.ch.embnet.org/software/LALIGN_form.html)のLALIGNプログラム(Huang and Miller, Adv. Appl. Math. (1991) 12:337-357)によって決定することができる。代替的には、2つのポリペプチド間の配列同一性の割合は、適切なコンピュータプログラム、例えば、ウィスコンシン大学ジェネティックコンピューティンググループ(the University of Wisconsin Genetic Computing Group)のGAPプログラムを使用して決定してよく、同一性の割合は、その配列を至適に整列させたポリペプチドに対して算出されると解されるであろう。
【0039】
好ましくは、前記結合部分は、ポリペプチドを含むか又はからなる。
【0040】
ポリペプチドの結合部分は、スクリーニングによって同定することができる。標的タンパク質又はポリペプチドに選択的に結合するペプチド又は他の分子を同定するための適切な方法又はスクリーニングは、結合が生じる条件下において標的タンパク質又はポリペプチドを試験ペプチド又は他の分子と接触させ、次いで、試験分子又はペプチドが標的タンパク質又はペプチドに結合するか否かを測定する工程を含み得る。
【0041】
2つの部分の間の結合を検出する方法は、生化学の技術分野でよく知られている。好ましくは、ファージディスプレイといった既知の技術を使用して、結合部分として使用するのに適切なペプチド又は他のリガンド分子を同定する。代替的な方法には、酵母ツーハイブリッドシステムが含まれる。
【0042】
より好ましくは、前記結合部位は、抗体、抗原結合断片、又はそれらのバリアントを含むか又はそれらからなる。
【0043】
「抗体」は、実質的に完全な抗体分子、並びにキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体(天然のヒト抗体に対して少なくとも1つのアミノ酸が変異している)、単鎖抗体、二特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖及び/又は軽鎖のホモ二量体及びヘテロ二量体、及び抗原結合断片、並びにそれらのバリアントを含む。
【0044】
「抗原結合断片」は、Sox11タンパク質に結合することができる抗体の機能的断片を意味する。
【0045】
好ましくは、前記抗源結合断片は、Fv断片(例えば、単鎖Fv及びジスルフィド結合したFv)、Fab様断片(例えば、Fab断片、Fab’断片、及びF(ab)断片)、単鎖可変ドメイン(例えば、V及びVドメイン)、及びドメイン抗体(dAb、シングルフォーマット及びデュアルフォーマット[すなわち、dAb−リンカー−dAb]を含む)からなる群から選択される。
【0046】
抗体全体ではなく、抗体断片を使用する利点は数倍ある。より小さなサイズの断片は、固形組織に良好に浸透するなどの改善された薬理学的特性をもたらし得る。さらに、Fab、Fv、ScFv、及びdAb抗体断片などの抗原結合断片は、大腸菌(E.Coli)で発現及び分泌させ、前記断片の容易な大量生産が可能である。
【0047】
修飾された態様の抗体及びその抗原結合断片、例えば、ポリエチレングリコール又は他の適切なポリマーの共有結合によって修飾されたものも本発明の範囲内である。
【0048】
抗体及び抗体断片を産生する方法は、当該技術分野においてよく知られている。例えば、抗体は、抗体分子のインビボ生産の誘導、免疫グロブリンライブラリーのスクリーニング(Orlandi. et al, 1989. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:3833-3837; Winter et al., 1991, Nature 349:293-299))、又は培養細胞株によるモノクローナル抗体分子の産生を利用する幾つかの方法のいずれか1つによって産生し得る。これらは、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、及びエプスタイン−バーウイルス(EBV)ハイブリドーマ技術(Kohler et al., 1975. Nature 256:4950497; Kozbor et al., 1985. J. Immunol. Methods 81:31-42; Cote et al., 1983. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030; Cole et al., 1984. Mol. Cell. Biol. 62:109-120)を含むが、それらに限らない。
【0049】
選択した抗原に対する適切なモノクローナル抗体は、既知の技術、例えば、“Monoclonal Antibodies: A manual of techniques”, H Zola (CRC Press, 1988)及び“Monoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Applications”, J G R Hurrell (CRC Press, 1982)に開示されているものによって調製され得る。
【0050】
抗体断片は、当該技術分野でよく知られた方法を使用して得ることができる(例えば、Harlow & Lane, 1988, “Antibodies: A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Laboratory, New Yorkを参照のこと)。例えば、本発明に係る抗体断片は、抗体のタンパク質分解性の加水分解又は断片をコードするDNAの大腸菌又は哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物又は他のタンパク質発現系)による発現によって調製することができる。代替的に、抗体断片は、従来の方法による全抗体のペプシン又はパパイン消化によって得ることができる。
【0051】
ヒトの治療法又は診断方法にヒト化抗体が好ましく使用されると、当業者に解されるであろう。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、好ましくは非ヒト抗体由来の最小部分を有する遺伝子操作したキメラ抗体又は抗体断片である。ヒト化抗体は、ヒト抗体(受容者抗体)の相補性決定領域が所望の機能性を有するマウス、ラット、又はウサギなどの非ヒトの種(ドナー抗体)の相補性決定領域由来の残基に置き換えられた抗体を含む。ある場合においては、ヒト抗体のFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒト化抗体は、受容者抗体及び取り込んだ相補性決定領域又はフレームワーク配列のいずれにも認められない残基も含み得る。一般的には、ヒト化抗体は、相補性決定領域の全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、フレームワーク領域の全て又は実質的に全てが関連するヒト共通配列のものに対応する、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの全てを実質的に含むであろう。ヒト化抗体は、最適には、典型的にはヒト抗体に由来する、Fc領域などの抗体定常領域の少なくとも一部も含む(例えば、Jones et al., 1986. Nature 321:522-525; Riechmann et al., 1988, Nature 332:323-329; Presta, 1992, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596を参照のこと)。
【0052】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当該技術分野でよく知られている。一般的には、ヒト化抗体は、非ヒトの供給源から導入された1つ又は複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、導入残基と称される場合が多く、導入された可変ドメインから典型的に受け継がれる。ヒト化は、本質的には、対応するげっ歯類相補性決定領域でヒト相補性決定領域を置換することによって、開示されているように実施することができる(例えば、Jones et al., 1986, Nature 321:522-525; Reichmann et al., 1988. Nature 332:323-327; Verhoeyen et al., 1988, Science 239:1534-1536l; US 4,816,567を参照のこと)。したがって、その様なヒト化抗体は、実質的には完全ではないヒト可変ドメインが非ヒトの種由来の対応する配列に置換されている、キメラ抗体である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、幾つかの相補性決定領域残基及びおそらく幾つかのフレームワーク残基がげっ歯類抗体の類似領域に由来する残基によって置換されている、ヒト抗体であり得る。
【0053】
ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリー(例えば、Hoogenboom & Winter, 1991, J. Mol. Biol. 227:381; Marks et al., 1991, J. Mol. Biol. 222:581; Cole et al., 1985, In: Monoclonal antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, pp. 77; Boerner et al., 1991. J. Immunol. 147:86-95を参照のこと)を含む、当該技術分野で既知の各種の技術を使用して同定することもできる。
【0054】
適切な抗体が得られたら、例えばELISAによって、活性を試験し得る。
【0055】
本発明の更なる実施態様は、Sox11タンパク質をコードする核酸分子に選択的に結合することができる結合部分を提供することである。
【0056】
好ましくは、前記結合部分は、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド及び/又はその天然のバリアントをコードする核酸分子に選択的に結合することができる。
【0057】
より好ましくは、前記結合部分は、核酸分子を含むか又はからなる。更に好ましくは、前記結合部分は、DNA分子を含むか又はからなる。有利には、前記結合部分は、配列番号2(図5参照のこと)の核酸配列の断片、又はその相補的配列若しくはその断片、又はバリアントを含むか又はからなる。好都合には、前記核酸分子は、5から100ヌクレオチド長である。より好都合には、前記核酸分子は、15から35ヌクレオチド長である。
【0058】
好ましくは、結合部分は検出可能な部分を含む。
【0059】
「検出可能な部分」は、患者への本発明の化合物の投与後に標的部位に位置する際に、典型的には体外から非侵襲的に、位置する標的部位において、検出され得る部分という意味を含む。かくして、本発明の当該実施態様の化合物は、イメージング及び診断に有用である。
【0060】
典型的には、前記検出可能な部分は、イメージングに有用である放射性原子であるか又はそれを含む。適切な放射性原子は、シンチグラフ検査のための99mTc及び123Iを含む。他の容易に検出可能な部分は、例えば、123I、131I、111In、19F、13C、15N、17O、ガドリニウム、マンガン、又は鉄などの磁気共鳴映像法(MRI)のためのスピン標識を含む。明らかに、本発明の化合物は、分子が容易に検出可能となるために十分な適当な同位体原子を有する必要がある。
【0061】
放射性又は他の標識は、既知の方法で本発明の化合物に取り込まれ得る。例えば、結合部分がポリペプチドである場合は、生体合成されるか、又は、水素の代わりに例えばフッ素−19を含む適切なアミノ酸前駆体を使用する化学的なアミノ酸合成によって合成され得る。99mTc、123I、186Rh、188Rh、及び111Inなどの標識は、例えば、結合部分のシステイン残基を介して結合し得る。イットリウム−90は、リジン残基を介して結合し得る。IODOGEN法(Fraker et al., 1978, Biochem. Biophys. Res. Comm. 80:49-57)を使用して、123Iを取り込ませることができる。参考文献(“Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy”, J-F Chatal, CRC Press, 1989)は、他の方法を詳細に開示している。
【0062】
かくして、本発明の更なる実施態様では、放射性原子は、テクネチウム−99m、ヨウ素−123、ヨウ素−125、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、リン−32、硫黄−35、重水素、三重水素、レニウム−186、レニウム−188、及びイットリウム−90からなる群から選択される。
【0063】
本発明の第三の態様は、個体における上皮性卵巣癌(EOC)の診断方法であって、
(a)個体由来の上皮性卵巣細胞のサンプルを準備する工程;及び
(b)細胞サンプル中のSox11タンパク質及び/又はmRNAの量を測定する工程
を含み、Sox11タンパク質及び/又はmRNAのレベルが上皮性卵巣癌(EOC)を有する個体の指標である、方法を提供することである。
【0064】
特に、Sox11タンパク質及び/又はmRNAの高いレベルは、上皮性卵巣癌(EOC)を有する個体の指標である。
【0065】
1つの実施態様では、前記方法は、特定の組織学的サブタイプ(例えば、漿液、粘液、類内膜、明細胞、及び未分化又は分類不可能)に属するEOCを診断するためのものである。
【0066】
同様に、前記方法は、特定の悪性度(例えば、高い悪性度)の細胞と関連するEOCを診断するためのものであり得る。
【0067】
1つの実施態様では、前記方法は、前記診断を確認するために、上皮性卵巣細胞に対してEOCについての1つ又は複数の追加の診断試験を実施する工程をさらに含む。
【0068】
本発明の第四の態様は、個体の上皮性卵巣癌(EOC)の予後診断方法であって、
(a)個体由来の上皮性卵巣癌細胞のサンプルを準備する工程;及び
(b)細胞サンプル中のSox11タンパク質及び/又はmRNAの量を測定する工程
を含み、Sox11タンパク質及び/又はmRNAのレベルが個体の無再発生存率の指標である、方法を提供することである。
【0069】
1つの実施態様では、前記方法は、特定の組織学的サブタイプ(例えば、漿液、粘液、類内膜、明細胞、及び未分化又は分類不可能)に属するEOCを予後診断するためのものである。
【0070】
同様に、前記方法は、特定の悪性度(例えば、高い悪性度)の細胞に関連するEOCを予後診断するためのものであり得る。
【0071】
「無再発生存率」は、一年、二年、三年、五年、十年、又はそれ以上などの所定の期間にわたって生存する個体の可能性を意味する。
【0072】
1つの実施態様では、高いレベルのSox11タンパク質及び/又はmRNAが、改善された無再発生存率(RFS)を有する個体の指標である。
【0073】
「改善された無再発生存率」は、上皮性卵巣細胞(EOC)患者の平均集団と比較した際に、無再発生存率がより高いことを意味し、例えば、無再発生存率が少なくとも0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、又はそれ以上増大し得る。
【0074】
代替的な実施態様では、低いレベルのSox11タンパク質及び/又はmRNAが、減少した無再発生存率(RFS)を有する個体の指標である。
【0075】
「減少した無再発生存率」は、上皮性卵巣癌(EOC)患者の平均集団と比較した際に、無再発生存率がより低いことを意味し、例えば、無再発生存率が少なくとも0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、又はそれ以上減少し得る。
【0076】
本発明の第五の態様は、個体の上皮性卵巣癌(EOC)を検出する方法であって、
(a)個体由来の細胞のサンプルを準備する工程;及び
(b)細胞サンプル中のSox11タンパク質及び/又はmRNAの量を測定する工程
を含み、Sox11タンパク質及び/又はmRNAのレベルが上皮性卵巣癌(EOC)細胞を有する個体の指標である、方法を提供することである。
【0077】
1つの実施態様では、前記方法は、特定の組織学的サブタイプ(例えば、漿液、粘液、類内膜、明細胞、及び未分化又は分類不可能)に属するEOCの細胞を検出するためのものである。
【0078】
同様に、前記方法は、特定の悪性度(例えば、高い悪性度)の細胞と関連するEOCの細胞を検出するためのものであり得る。
【0079】
特に、高いレベルのSox11及び/又はmRNAは、上皮性卵巣癌(EOC)を有する個体の指標である。
【0080】
「高いレベルのSox11及び/又はmRNA」は、非癌性(例えば、健康な)上皮性卵巣細胞よりも少なくとも10%大きい、例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、1500%、2000%、3000%、4000%、5000%、10000%又はそれ以上に大きいSox11タンパク質及び/又はmRNAの量を意味する。
【0081】
「低いレベルのSox11タンパク質及び/又はmRNA」は、Sox11タンパク質及び/又はmRNAの量が、非癌性上皮性卵巣細胞のものとは統計的に異なることを意味する。
【0082】
本発明の方法は、インビボ又はインビトロで実施され得ると当業者に解されるであろう。
【0083】
1つの実施態様では、前記方法は、上皮性卵巣癌(EOC)の診断又は予後診断のための唯一のバイオマーカーとしてのSox11発現の検出を含む(上述)。
【0084】
代替的に、本発明の結合部分は、EOCの診断又は予後診断のための1つ又は複数の追加のバイオマーカーを検出するための1つ又は複数の結合部分と組み合わせて使用し得る。かくして、前記結合部分は、20未満の追加の結合部分、例えば、15、10、8、6、5、4、3、若しくは2未満、又は1の追加の結合部分と組み合わせて使用し得る。
【0085】
1つの実施態様では、前記方法は、Sox11の核及び/又は細胞質発現を検出する工程を含む。
【0086】
好ましくは、試験する細胞サンプルは、組織サンプルの形態にある。
【0087】
好都合には、本発明の第一又は第二の態様に係る結合部分を使用して、サンプル中のSox11タンパク質及び/又はmRNAの量を測定する。
【0088】
本発明の方法の更なる実施態様は、試験する細胞サンプル中のSox11タンパク質及び/又はmRNAの量を、対照サンプル中のSox11タンパク質及び/又はmRNAの量と比較することを含む。
【0089】
有利には、前記対照サンプルは、非癌性上皮性卵巣細胞を含むか又はそれからなる陰性対照サンプルである。
【0090】
代替的に又は追加的に、前記対照サンプルは、上皮性卵巣癌細胞を含むか又はそれからなる陽性対照サンプルである。前記卵巣上皮細胞は、高い無再発生存率(RFS)に関連するEOC細胞又は低い無再発生存率(RFS)に関連するEOC細胞であり得る。
【0091】
典型的には、本発明の方法の工程(b)は、マクロアレイ、マイクロアレイ(組織マイクロアレイを含む)、ナノアレイ、逆転写PCR、リアルタイムPCR、又はインサイチュPCRからなる群から選択される方法を使用して実施する。
【0092】
本発明の第三又は第四の態様の更なる実施態様は、p53、エストロゲン受容体、及び/又はプロゲステロン受容体などの、試験細胞サンプル中の追加のEOCバイオマーカータンパク質及び/又はmRNAのレベルを測定することを含む。
【0093】
本発明の第六の態様は、本発明の第一又は第二の態様に係る結合部分の有効量を個体に投与する工程を含む、個体の身体内の上皮性卵巣癌(EOC)細胞のイメージング方法を低要することである。
【0094】
1つの実施態様では、前記方法は、特定の組織学的サブタイプ(例えば、漿液、粘液、類内膜、明細胞、及び未分化又は分類不可能)に属するEOCの細胞をイメージングするためのものである。
【0095】
同様に、前記方法は、特定の悪性度(例えば、高い悪性度)の細胞と関連するEOCの細胞をイメージングするためのものであり得る。
【0096】
本明細書で使用する用語「有効量」は、所定の投与計画に関して、十分に検出可能なシグナルを提供する量を示す。これは、必要とされる添加剤及び希釈剤、すなわち、担体又は投与媒体と関連して所望のシグナル強度を生じるように計算された活性物質の所定量である。当業者に理解されるように、化合物の量は、その特定の活性に依存して変化し得る。適切な投与量は、必要とされる希釈剤と関連して所望のシグナル強度を生じるように計算された活性組成物の所定量を含み得る。本発明の組成物の製造のための方法又は使用において、有効量の活性成分が提供される。有効量は、当該技術分野において知られているような、年齢、体重、性別、状態、合併症、他の疾患などの患者の特徴に基づいて、通常の知識を有する医学又は獣医学従事者によって決定され得る。
【0097】
典型的には、本発明の第六の態様は、個体における結合部分の位置を検出する工程を含む。好ましくは、Sox11タンパク質及び/又はそれをコードするmRNAは、上皮性卵巣癌(EOC)細胞のためのマーカーとして使用される。
【0098】
本発明の第七の態様は、上皮性卵巣癌(EOC)の診断又は予後診断のための医薬の調製における上述の結合部分の使用を提供することである。
【0099】
本発明は、さらに、上皮性卵巣癌(EOC)細胞のためのバイオマーカーとして、Sox11タンパク質及び/又はそれをコードするmRNAの使用を第八の態様として提供する。
【0100】
1つの実施態様では、Sox11タンパク質及び/又はそれをコードするmRNAは、特定の組織学的サブタイプ(例えば、漿液、粘液、類内膜、明細胞、及び未分化又は分類不可能)に属するEOCのためのバイオマーカーとして使用するためのものである。
【0101】
同様に、Sox11タンパク質及び/又はそれをコードするmRNAは、特定の悪性度(例えば、高い悪性度)に属するEOCのためのバイオマーカーとして使用するためのものであり得る。
【0102】
Sox11は、上皮性卵巣癌(EOC)のための唯一のバイオマーカーとして使用され得ると解されるであろう。
【0103】
代替的に、Sox11は、1又は複数の追加のバイオマーカーと組み合わせて使用し得る。しかしながら、好ましくは、Sox11は、20未満の追加のバイオマーカー、例えば、15、10、8、6、5、4、3、若しくは2未満、又は1の追加のバイオマーカーと組み合わせて使用する。
【0104】
本発明の第九の態様は、上皮性卵巣癌(EOC)の診断及び/又は予後診断に効力を有する分子のスクリーニング方法であって、
(a)Sox11タンパク質及び/又はそれをコードするmRNA(又は前記タンパク質若しくはmRNAの断片)と試験する分子を接触させる工程;及び
(b)前記タンパク質及び/又はmRNA(又はその断片)及び試験する分子を含む複合体の存在を検出する工程
を含む、方法を提供する。
【0105】
1つの実施態様では、前記方法は、特定の組織学的サブタイプ(例えば、漿液、粘液、類内膜)に属するEOCの診断及び/又は予後診断に効力を有する分子のスクリーニングのためのものである。
【0106】
同様に、前記方法は、特定の悪性度(例えば、高い悪性度)の細胞と関連するEOCの診断及び/又は予後診断に効力を有する分子のスクリーニングのためのものであり得る。
【0107】
タンパク質及び/又は核酸の濃度の検出及び/又は測定の方法は、当業者によく知られている。例えば、Sambrook and Russell(上記)を参照のこと。
【0108】
タンパク質の検出及び/又は測定のための好ましい方法は、ウエスタンブロット、ノースウエスタンブロット、免疫溶媒アッセイ(ELISA)、抗体マイクロアレイ、組織マイクロアレイ(TMA)、免疫沈降、インサイチュハイブリダイゼーション、及び他の免疫組織化学技術、放射免疫測定(RIA)、免疫免疫放射定量測定法(IRMA)、及び免疫酵素アッセイ(IEMA)、例えば、モノクローナル及び/又はポリクローナル抗体を使用するサンドイッチアッセイを含む。例示のサンドイッチアッセイは、参照によって本明細書に取り込む米国特許第4,376,110号及び第4,486,530号においてDavidらによって開示されている。スライド上における細胞の抗体染色は、当業者によく知られているような、細胞学研究所の診断試験においてよく知られた方法で使用され得る。
【0109】
典型的には、ELISAは、通常は固相アッセイにおいて、着色した反応産物を与える酵素の使用を伴う。セイヨウワサビペルオキシダーゼ及びホスファターゼなどの酵素が広く使用されている。ホスファターゼ反応の増幅方法は、NADPを基質として使用して、第二の酵素系で補酵素として働くNADを産生することである。大腸菌(Escherichia coli)由来のピロホスファターゼは、組織中に存在せず、安定で、良好な呈色反応を与えるため、良好な接合体を与える。ルシフェラーゼなどの酵素に基づく化学ルミネセンス系を使用することもできる。
【0110】
酵素に結合したアビジン又はストレプトアビジン(ビオチンが大きな特異性及び親和性で結合する)との反応によって容易に検出することができるため、ビタミンであるビオチンとの接合体は頻繁に使用される。
【0111】
核酸(例えば、mRNA)の検出及び/又は測定のための好ましい方法は、サザンブロット、ノーザンブロット、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT−PCR)、定量リアルタイムPCR(qRT−PCR)、ナノアレイ、マクロアレイ、オートラジオグラフィ、及びインサイチュハイブリダイゼーションを含む。
【0112】
典型的な実施態様では、上皮性卵巣癌(EOC)細胞の存在が、細胞の核及び/又は細胞質におけるSox11タンパク質及び/又は核酸の検出によって検出される。好ましくは、リンパ腫細胞の核/細胞質は、例えばインサイチュハイブリダイゼーション分析の間の核の明るい染色によって示される、相対的に大量のSox11タンパク質及び/又は核酸を発現する。
【0113】
ここで、本発明の所定の態様を具体化する好ましい非制限的な実施例を、添付の図面と共に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】卵巣癌におけるSox11の発現を示す。Sox11の免疫組織化学的染色によって、細胞質のみの発現(A)並びに細胞質及び核の発現(B)を示す。デコンボリューションアルゴリズムの対応するマークアップした図は、青で間質、黄色及びオレンジ色で細胞質染色、並びに赤で核発現を示す。
【図2】卵巣癌におけるSox11タンパク質発現及び生存率を示す。Sox11発現は、ヒストグラムに基づいて、低、中、高に分類した(A)。RFSのKaplan Meier予測は3つのSox11群に基づく(B)。RFSのKaplan Meier予測は、低レベルのSox11に対する高及び中レベルのSox11の比較に基づく(C)。
【図3】ホモサピエンスSox11タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【図4】ホモサピエンスSOX11mRNAの核酸配列を示す。
【図5】類内膜卵巣癌の全生存率(25年)を示す。10%超又は未満のSox11陽性腫瘍細胞を有する患者の25年全生存率を比較する。患者が打ち切られる(死亡以外の理由で試験から除かれる)際は、線上においてチェックマークで示す。
【図6】類内膜卵巣癌の全生存率(5年)を示す。10%超又は未満のSox11陽性腫瘍細胞を有する患者の5年全生存率を比較する。患者が打ち切られる(死亡以外の理由で試験から除かれる)際は、線上においてチェックマークで示す。
【図7】類内膜卵巣癌における癌特異的生存率(5年)を示す。10%超又は未満のSox11陽性腫瘍細胞を有する患者の5年癌特異的生存率を比較する。患者が打ち切られる(死亡以外の理由で試験から除かれる)際は、線上においてチェックマークで示す。
【図8】高い悪性度のEOCについての全生存率(25年)を示す。10%超又は未満のSox11陽性腫瘍細胞を有する高悪性度の患者の25年全生存率を比較する。患者が打ち切られる(死亡以外の理由で試験から除かれる)際は、線上においてチェックマークで示す。
【図9】高い悪性度のEOCについての癌特異的生存率(25年)を示す。10%超又は未満のSox11陽性腫瘍細胞を有する高悪性度の患者の25年癌特異的生存率を比較する。患者が打ち切られる(死亡以外の理由で試験から除かれる)際は、線上においてチェックマークで示す。
【実施例】
【0115】
(実施例A)
イントロダクション
転写因子Sox11は、Sox遺伝子ファミリーの一員であり、染色体2p25.3にマップされている(Azuma T, Ao S, Saito Y, et al. Human SOX11, an upregulated gene during the neural differentiation, has a long 3' untranslated region. DNA research 1999;6:357-60)。Soxタンパク質は、雄性の性別決定遺伝子であるSryのHMGドメインと高いアミノ酸ホモロジー(通常、>50%)を有する、DNA結合高移動度群(HMG)ドメインを含むタンパク質として同定されている(Wegner M. From head to toes: the multiple facets of Sox proteins. Nucleic acids research 1999;27:1409-20)。20超のオーソロガスSox遺伝子がヒト及びマウスゲノムで同定され、ファミリーメンバーが、HMGドメインの内部及び外部のホモロジーの程度にしたがって8つのサブグループに分けられている(Schepers GE, Teasdale RD, and Koopman P. Twenty pairs of sox: extent, homology, and nomenclature of the mouse and human sox transcription factor gene families. Developmental cell 2002;3:167-70)。Soxタンパク質は、DNAのマイナーグルーブに結合し、DNAを鋭く曲げさせて、転写エンハンサー複合体のアセンブルにおける重要な構造因子としての役割を担わせることによって転写因子として働く(Dy P, Penzo-Mendez A, Wang H, et al. The three SoxC proteins Sox4, Sox11 and Sox12 exhibit overlapping expression patterns and molecular properties. Nucleic acids research 2008;36:3101-17; van de Wetering M and Clevers H. Sequence-specific interaction of the HMG box proteins TCF-1 and SRY occurs within the minor groove of a Watson-Crick double helix. The EMBO journal 1992;11:3039-44)。タンパク質−DNA相互作用に加えて、Soxタンパク質は、各種の他の転写因子と相互作用して、それらの作用の効率及び特異性を増大させる(Dy P, Penzo-Mendez A, Wang H, et al. The three SoxC proteins Sox4, Sox11 and Sox12 exhibit overlapping expression patterns and molecular properties. Nucleic acids research 2008;36:3101-17)。
【0116】
Sox11は、Sox4及びSox12とともにCサブグループに属し(Schepers GE, Teasdale RD, and Koopman P. Twenty pairs of sox: extent, homology, and nomenclature of the mouse and human sox transcription factor gene families. Developmental cell 2002;3:167 70)、3つのタンパク質全てが、C末端トランス活性化ドメイン及びHMGドメインの双方に高度のホモロジーを示す(Dy P, Penzo-Mendez A, Wang H, et al. The three SoxC proteins Sox4, Sox11 and Sox12 exhibit overlapping expression patterns and molecular properties. Nucleic acids research 2008;36:3101-17; Jay P, Goze C, Marsollier C, et al. The human SOX11 gene: cloning, chromosomal assignment and tissue expression. Genomics 1995;29:541-5)。Sox11及びSox4は、心臓、神経、及び他の主要な胚期プロセスにおいて主要な役割を担うが、Sox12についてはあまり知られていない(Dy P, Penzo-Mendez A, Wang H, et al. The three SoxC proteins Sox4, Sox11 and Sox12 exhibit overlapping expression patterns and molecular properties. Nucleic acids research 2008;36:3101-17)。
【0117】
本発明者は、核のSox11が、マントル細胞リンパ腫(MCL)において特異的に上方制御され、他のB細胞リンパ腫からMCLを区別することを示した(Ek S, Dictor M, Jerkeman M, Jirstrom K, and Borrebaeck CA. Nuclear expression of the non B cell lineage Sox11 transcription factor identifies mantle cell lymphoma. Blood 2008;111:800-5)。Sox4は、B細胞及びT細胞系統のリンパ球の代表的な転写因子であり(Wegner M. From head to toes: the multiple facets of Sox proteins. Nucleic acids research 1999;27:1409-20; van de Wetering M, Oosterwegel M, van Norren K, and Clevers H. Sox-4, an Sry-like HMG box protein, is a transcriptional activator in lymphocytes. The EMBO journal 1993;12:3847-54)、B細胞において重要であるが(Smith E and Sigvardsson M. The roles of transcription factors in B lymphocyte commitment, development, and transformation. Journal of leukocyte biology 2004;75:973-81)、Sox11は既知のリンパ球新生機能は有さず、B細胞では発現しない(Ek S, Dictor M, Jerkeman M, Jirstrom K, and Borrebaeck CA. Nuclear expression of the non B-cell lineage Sox11 transcription factor identifies mantle cell lymphoma. Blood 2008;111:800-5)。Sox4とSox11の双方が、髄芽腫で発現し(Lee CJ, Appleby VJ, Orme AT, Chan WI, and Scotting PJ. Differential expression of SOX4 and SOX11 in medulloblastoma. Journal of neuro-oncology 2002;57:201-14)、Sox11は悪性の神経膠腫でも過剰発現する(Weigle B, Ebner R, Temme A, et al. Highly specific overexpression of the transcription factor SOX11 in human malignant gliomas. Oncology reports 2005;13:139-44)。加えて、Sox4は膀胱癌で発現し、発現レベルの増大は改善した患者の結果と関連する(Aaboe M, Birkenkamp-Demtroder K, Wiuf C, et al. SOX4 expression in bladder carcinoma: clinical aspects and in vitro functional characterization. Cancer research 2006;66:3434-42)。
【0118】
この試験は、多数の正常な組織及び腫瘍におけるSox11mRNAの発現の概要を説明するものであり、Sox11mRNAが多数の悪性腫瘍で過剰発現することを明らかにする。加えて、本発明者は、特に、EOCにおけるSox11タンパク質発現を試験し、Sox11タンパク質のレベルの増大が、画像分析によって決定されたとおり、無再発生存率(RFS)の改善と関連することを実証した。
【0119】
材料及び方法
転写プロファイリング
多くのヒト組織のSOX11遺伝子mRNA発現レベルを、アフィメトリックス遺伝子発現マイクロアレイを使用して分析した14,095サンプルのメタ分析に由来するデータを含むインシリコトランスクリプトミクス(IST)データベースから得た。
【0120】
患者及び腫瘍サンプル
本試験で使用するTMAは、4.3年の中央値の追跡を行ったダブリンのNational Maternity Hospitalにおいて原発侵襲性上皮性卵巣癌と診断された76人の患者の治療継続群から構成された。その患者群を表1にまとめている。標準的な手術法は、腹式子宮全摘出、両側卵管卵巣摘除術、及び腹水又は流出液の細胞学的評価を用いた大網切除であった。残存疾患は、可能性がある部位を2cm未満まで切除した。残存疾患のステージ及び容量(残存疾患なし、2cm超又は未満の残存疾患)は、全てのケースで記録した。アジュバント化学療法は、1992年以前はシスプラチン又はカルボプラチンからなり、1992年から2002年はパクリタキセルと組み合わせた。いずれの患者も新補助化学療法は受けていなかった。良性又は境界卵巣癌、非上皮性卵巣癌、及び続発性卵巣癌に典型的な組織学的特徴を有するケースは試験から除外した。アイルランドのダブリンのNational Maternity Hospitalにおいて、診断用検体は全て、ホルマリンで固定化し、パラフィンに埋め込んだ。全ての組織ブロックは、TMAの製造前に当該部門に保存した。ダブリンのNational Maternity Hospitalの倫理委員会から、全ての倫理的な認証を得た。
【0121】
組織マイクロアレイ及び免疫組織化学
76のパラフィンに埋め込んだ腫瘍検体を、組織マイクロアレイ(TMA)作製に使用した。侵襲性の癌を代表する領域を、ヘマトキシリン・エオシン染色スライド上で標識して、手動組織アレイヤー(MTA−1,Beecher Inc,WI)を使用してTMAを作製した。前記アレイは、一人の患者ごとに4つのコアからなる。2つの1.0mmコアを各ドナーブロックから取り出して、受容ブロックに取り付けた。受容ブロックは各々約100のコアに制限した。一般的には、腫瘍が非常に明確な境界を有する場合には、腫瘍の辺縁部位からコアを回収した。より拡散して増殖した腫瘍では、最も高い腫瘍細胞密度を有する領域を主に標的とした。壊死組織は避けた。
【0122】
TMA切片(4μm)を乾燥させ、パラフィンを除去し、再水和して、下降する濃度のエタノールに通した。pH9.0においてBORGdecloaker(Biocare,Concord,CA,USA)で熱媒介抗原回復を実施し、次いで、切片を一次ウサギ抗ヒトSox11抗体(1:100)で室温において25分間にわたって染色した。この特異的な抗体は、以前に開示されているように作製した(Ek S, Dictor M, Jerkeman M, Jirstrom K, and Borrebaeck CA. Nuclear expression of the non B-cell lineage Sox11 transcription factor identifies mantle cell lymphoma. Blood 2008; 111:800 5)。当該抗体は、以下のタンパク質配列:
FMVWSKIERRKIMEQSPDMHNAEISKRLGKRWKMLKDSEKIPFIREAERLRLKHMADYPDYKYRPRKKPKMDPSAKPSASQSPEKSAAGGGGGSAGGGAGGAKTSKGSSKK
[配列番号3]
を標的とする。
【0123】
二次ビオチン化ヤギ抗ウサギ/マウス抗体、ストレプトアビジン/セイヨウワサビペルオキシダーゼ複合体、及び3,3’−ジアミノベンジジンを含むDako REAL検出系を使用して、製造業者のプロトコールにしたがって、シグナルを検出した。スライドをMayersヘマトキシリン(Sigma−Aldrich,St Louis,MO)を使用して対比染色した。
【0124】
画像獲得、管理、及び自動分析
Aperio ScanScope XT Slide Scanner(Aperio Technologies,Vista,CA)システムを使用して、20×対物レンズで全てのスライドデジタル画像を得た。スライドをアレイから取り外して、TMA Lab(Aperio)を使用して各コアを可視化した。カラーデコンボリューションアルゴリズム(Aperio)を使用して、Sox11発現の定量スコアリングを開発した。
【0125】
統計分析
スピアマンのRho相関を使用して、個々の腫瘍に由来するコア間の関係を推定し、高い及び低いSox11発現を有するサンプル間の臨床データの分布及び腫瘍の特徴における相違(下述)は、χ試験を使用して評価した。Kaplan−Meier分析及びログランク試験を使用して、RFSの間の相違を示した。Cox回帰比例ハザードモデルを使用して、RFS及びSox11、ステージ及び悪性度の関係を推定した。SPSS version11.0(SPSS Inc,Chicago,IL)を使用して、全ての計算を実施した。0.05未満のP値は統計的に有意であると解した。
【0126】
結果
正常及び腫瘍組織におけるSox11mRNA発現
アフィメトリックス遺伝子発現マイクロアレイを使用して分析した14,095サンプルにおいて、Sox11mRNA発現レベルのメタ分析を実施した。
【0127】
Sox11mRNA発現レベルの増大は、上皮性卵巣癌サンプルにおいて明らかであった(データ示さず)。
【0128】
卵巣癌におけるSox11タンパク質発現
上皮性卵巣癌細胞において過剰発現する遺伝子としてSox11を同定したので、図1に示すとおり、EOCにおいてIHCを使用してSox11タンパク質発現を試験した。Sox11発現は腫瘍上皮においてのみ認められ、IHCシグナルは核及び細胞質の双方で明らかであった。Sox11の核発現は、細胞質シグナルを伴う際にのみ存在していたが、所定の割合(49%)の腫瘍は、核シグナルの不在下で細胞質発現を示した(図1)。
【0129】
画像分析によって決定されるSox11発現の定量測定
次いで、画像分析法を使用して、特に、市販のカラーデコンボリューションアルゴリズム(Aperio)によって、Sox11発現の定量測定を実施した。アルゴリズム結果としてプソイドカラー「メイクアップ」画像を作成し、かくして、アルゴリズムが正確に上皮及び間質のピクセルを同定することを確認できるようにした(図1)。アルゴリズムの全内容は最近公開された(Brennan DJ, Rexhepaj E, O'Brien SL, et al. Altered Cytoplasmic-to-Nuclear Ratio of Survivin Is a Prognostic Indicator in Breast Cancer. Clinical cancer research 2008;14:2681-9)。
【0130】
前記アルゴリズムを使用して、各コアのSox11について全強度(TI)を算出した。TIについて個々の腫瘍からの4つのコアの間の強力な相関関係があり(スピアマンのRho=0.858、p<0.001)、Sox11が卵巣癌において一様の発現パターンを有し、TMAに基づく分析に適していることが示された。腫瘍を四つ組で配列したため、各腫瘍の中央値をさらなる分析に使用した。前記アルゴリズムは、組織病理学者によって確認されたとおり、全てのコアにおける核及び細胞質染色の間の正確に区別した。
【0131】
群全体についてのSox11画像分析データのヒストグラムを図2aに示す。このヒストグラムを使用して、画像分析によって決定されるとおりに、腫瘍を3つの分類、すなわち、高、中、及び低レベルのSox11発現に分けた。画像分析による分類に基づいて、画像分析によって決定されるとおりに、20%(n=17)の腫瘍を高レベルであると分類し、43%(n=35)を中レベルとし、29%(n=24)は低/ネガティブレベルのSox11発現に分類した。高発現の群の全てにおける腫瘍は、核及び細胞質のSox11発現を示したが、中レベルの群における腫瘍は一般的には細胞質のSox11のみを示した。Sox11発現及び年齢、疾患の悪性度又はステージの間に関係は認められなかった。
【0132】
自動画像分析によって決定されるSox11発現と生存率との間の関係
Sox11発現に基づくRFSのKaplan Meier分析は、高、中、及び低レベルの群の間のRFSにおける段階的な減少を明らかにした(p=0.033)(図2b)。更なるサブセットの分析は、高及び中レベルのSox11発現と比較した画像分析によって決定されるとおりに、低レベルのSox11発現を有する患者におけるRFSの顕著な低減を明らかにした(p=0.02)(図2c)。本発明者は、RFSの多変数Cox回帰分析の実施を進めて、Sox11発現が、悪性度及びグレードと比較した際のRFSの独立した予測因子であることを明らかにした(HR=0.56、95% Cl=0.319−0.997、p=0.049)。
【0133】
ディスカッション
本試験において、本発明者は、トランスクリプトミクスデータのメタ分析、TMA、及び自動画像分析を組み合わせて、上皮性卵巣癌(EOC)の予後診断用バイオマーカーとしてSox11を同定及び評価した。本試験は、EOCにおけるSox11発現と予後との間の関係を初めて開示するものである。MCLの新規診断用マーカーとしてSox11が既に同定されていたため(Ek S, Dictor M, Jerkeman M, Jirstrom K, and Borrebaeck CA. Nuclear expression of the non B-cell lineage Sox11 transcription factor identifies mantle cell lymphoma. Blood 2008;111:800-5)、本発明者は、アフィメトリックス遺伝子発現マイクロアレイを使用して分析した14,095のサンプルのメタ分析に由来するデータを含むISTデータベースを使用して、EOC細胞中のSox11mRNAの発現のプロファイルを進めた。
【0134】
次いで、本発明者は、TMA及びIHCの定量自動化分析を使用して、無再発生存率に関して、EOCにおけるSox11タンパク質発現を評価することを進めた。これにより、核及び細胞質の区画の双方における上皮特異的Sox11発現が明らかになった。Sox11、特に核のSox11のレベルの増大がRFSの増大と関連しており、Cox回帰多変数分析によって、Sox11が、悪性度及びグレードを考えて調整を行う際にRFSの独立した予測因子であることが明らかになった(表2参照のこと)。
【0135】
Sox11は、胚形成及び組織リモデリングにおいて重要な役割を担い、そのため、胚の原腸形成及び早期原腸形成後発生の間に存在する(Hargrave M, Wright E, Kun J, et al. Expression of the Sox11 gene in mouse embryos suggests roles in neuronal maturation and epithelio-mesenchymal induction. Developmental dynamics 1997;210:79-86; Sock E, Rettig SD, Enderich J, et al. Gene targeting reveals a widespread role for the high-mobility-group transcription factor Sox11 in tissue remodeling. Molecular and cellular biology 2004;24:6635-44)。発生後期において、Sox11は、神経系の発生時及び上皮間葉相互作用が生じている胚の多くの部位において顕著に発現する(Hargrave M, Wright E, Kun J, et al. Expression of the Sox11 gene in mouse embryos suggests roles in neuronal maturation and epithelio-mesenchymal induction. Developmental dynamics 1997;210:79-86)。上皮間葉相互作用の部位において、Sox11は、間葉又は上皮の区画において認められ、誘導リモデリングに関与すると仮定されている(Hargrave M, et al., 1997)。大半の組織におけるSox11発現は、一過性のものであり、その結果として、胚形成の間において広く発現しているのとは対照的に、Sox11発現は最終的に分化した成体組織では殆ど認められない(Sock E, Rettig SD, Enderich J, et al. Gene targeting reveals a widespread role for the high-mobility-group transcription factor Sox11 in tissue remodeling. Molecular and cellular biology 2004;24:6635-44)。本発明者の発見は、Sox11発現が正常組織には存在しなかったという、これらのデータと相補的なものである。
【0136】
腫瘍形成におけるSox11の役割は完全には理解されていないままである。既に言及したとおり、Sox11mRNAの顕著な上方制御は、EOC細胞において明らかであった。成体組織におけるSox11の正確な機能的役割は完全には理解されていないが、Soxタンパク質は(i)DNA結合及び(ii)転写パートナー選択(特定の遺伝子に個々のSoxタンパク質を選択的にリクルートさせ得る)という2つの役割を担うようである(Ek S, Dictor M, Jerkeman M, Jirstrom K, and Borrebaeck CA. Nuclear expression of the non B-cell lineage Sox11 transcription factor identifies mantle cell lymphoma. Blood 2008;111:800-5)。多数の試験によって神経膠腫(Weigle B, Ebner R, Temme A, et al. Highly specific overexpression of the transcription factor SOX11 in human malignant gliomas. Oncology reports 2005;13:139-44)、神経芽細胞腫(Lee CJ, Appleby VJ, Orme AT, Chan WI, and Scotting PJ. Differential expression of SOX4 and SOX11 in medulloblastoma. Journal of neuro-oncology 2002;57:201-14)、及びMCL(Ek S, Dictor M, Jerkeman M, Jirstrom K, and Borrebaeck CA. Nuclear expression of the non B-cell lineage Sox11 transcription factor identifies mantle cell lymphoma. Blood 2008;111:800-5)におけるSox11発現が開示されているが、これらの腫瘍における機能的役割は完全には理解されていない。
【0137】
要するに、本願は、EOCにおけるSox11の差別的な発現を初めて開示するものである。本発明者の発見によって、Sox11がECOにおけるRFSの改善の独立した予測因子であることが示される。
【0138】
【表1】

【0139】
【表2】

【0140】
(実施例B)
イントロダクション
上皮性卵巣癌(EOC)は、3つの主な組織学的サブタイプ(漿液、粘液、及び類内膜)を含み、ステージ及び悪性度に基づいてもサブグループに分けることができる。類内膜腫瘍は、全ての卵巣腫瘍の約2から4%を占め、それらの多く(約80%)は悪性であり、卵巣癌の10から20%を占める。
【0141】
材料及び方法
高い悪性度のECO及び類内膜EOCの切片を、Sox11について染色し、上述のように分析した(Brennan et al., 2009, European Journal of Cancer, 45(8):1510-1517)。
【0142】
結果及びディスカッション
図5、6、及び7に示すとおり、全生存率及び癌特異的生存率を、類内膜EOCについてSox11を使用して予測することができる。また、図8及び9に示すとおり、全生存率及び癌特異的生存率を、高い悪性度のEOCについてSox11を使用して予測することができる。
【0143】
癌特異的生存率を算出する際は、全生存率を算出する際とは対照的に、癌に関連する死亡のデータのみを使用する。
【0144】
これらのデータは、Sox11を、全生存率及び癌特異的生存率に基づいて臨床的に関連する群に患者を分類するために高い悪性度のEOC及び類内膜卵巣癌の双方において使用することができることを示す。
【0145】
結論として、Sox11は、一群としてのEOCの有用なバイオマーカーであるだけでなく、異なる臨床的及び/又は組織学的特徴を有する患者のサブグループに使用することもできる。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皮性卵巣癌(EOC)の診断及び/又は予後診断に使用するための、Sox11タンパク質又はSox11タンパク質をコードする核酸分子に選択的に結合することができる結合部分。
【請求項2】
上皮性卵巣癌(EOC)細胞を検出するための、Sox11タンパク質又はSox11タンパク質をコードする核酸分子に選択的に結合することができる結合部分。
【請求項3】
上皮性卵巣癌(EOC)の診断のための、請求項1に記載の結合部分。
【請求項4】
上皮性卵巣癌(EOC)の予後診断のための、請求項1に記載の結合部分。
【請求項5】
前記EOCが、漿液、粘液、類内膜、明細胞、及び未分化又は分類不可能からなる群から選択される組織学的サブタイプに属する、請求項1から4のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項6】
前記EOCが漿液EOCである、請求項5に記載の結合部分。
【請求項7】
前記EOCが粘液EOCである、請求項5に記載の結合部分。
【請求項8】
前記EOCが類内膜EOCである、請求項5に記載の結合部分。
【請求項9】
前記EOCが明細胞EOCである、請求項5に記載の結合部分。
【請求項10】
前記EOCが未分化又は分類不可能なEOCである、請求項5に記載の結合部分。
【請求項11】
インビボで使用するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項12】
インビトロで使用するための、請求項1から11のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項13】
上皮性卵巣癌(EOC)の診断又は予後診断のための唯一のバイオマーカーとしてSox11発現の検出に使用するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項14】
上皮性卵巣癌(EOC)の診断又は予後診断のための1つ又は複数の追加のバイオマーカーを検出するための1つ又は複数の追加の結合部分と組み合わせて使用するための、請求項1から13のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項15】
20未満の追加の結合部分、例えば、15、10、8,6、5、4、3、若しくは2未満、又は1の追加の結合部分と組み合わせて使用するための、請求項14に記載の結合部分。
【請求項16】
Sox11の核及び/又は細胞質の発現を検出するための、請求項1から15のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項17】
Sox11タンパク質に選択的に結合することができる、請求項1から16のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項18】
配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド及び/又はその天然のバリアントに選択的に結合することができる、請求項17に記載の結合部分。
【請求項19】
ポリペプチドを含むか又はからなる、請求項1から18のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項20】
抗体又はその抗原結合断片若しくはバリアントを含むか又はからなる、請求項19に記載の結合部分。
【請求項21】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項20に記載の結合部分。
【請求項22】
前記抗体又はその抗原結合断片若しくはバリアントが、Fv断片、Fab様断片、単一可変ドメイン、及びドメイン抗体からなる群から選択される、請求項20又は21に記載の結合部分。
【請求項23】
前記抗体又はその抗原結合断片若しくはバリアントがヒト化されている、請求項20から22のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項24】
Sox11タンパク質をコードする核酸分子に選択的に結合することができる、請求項1から16のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項25】
配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド及び/又はその天然のバリアントをコードする核酸分子に選択的に結合することができる、請求項24に記載の結合部分。
【請求項26】
核酸分子を含むか又はからなる、請求項24又は25に記載の結合部分。
【請求項27】
DNA分子を含むか又はからなる、請求項24に記載の結合部分。
【請求項28】
配列番号2のヌクレオチド配列の断片、その相補的配列、又はそのバリアントを含むか又はからなる、請求項24から27のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項29】
前記核酸分子が5から100ヌクレオチド長である、請求項26から28のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項30】
前記核酸分子が15から35ヌクレオチド長である、請求項29に記載の結合部分。
【請求項31】
検出可能な部分を含む、請求項1から30のいずれか一項に記載の結合部分。
【請求項32】
前記検出可能な部分が放射性原子を含むか又はからなる、請求項31に記載の結合部分。
【請求項33】
前記放射性原子が、テクネチウム−99m、ヨウ素−123、ヨウ素−125、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、リン−32、硫黄−35、重水素、三重水素、レニウム−186、レニウム−188、及びイットリウム−90からなる群から選択される、請求項32に記載の結合部分。
【請求項34】
個体の上皮性卵巣癌(EOC)を診断する方法であって、
(a)個体由来の上皮性卵巣細胞のサンプルを準備する工程;及び
(b)細胞サンプル中のSox11タンパク質及び/又はmRNAの量を測定する工程
を含み、Sox11タンパク質及び/又はmRNAのレベルが、上皮性卵巣癌(EOC)を有する個体の指標である、方法。
【請求項35】
高レベルのSox11タンパク質及び/又はmRNAが、上皮性卵巣癌(EOC)を有する個体の指標である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記EOCが、漿液、粘液、類内膜、明細胞、及び未分化又は分類不可能からなる群から選択される組織学的サブタイプに属する、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
前記EOCが漿液EOCである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記EOCが粘液EOCである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記EOCが類内膜EOCである、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記EOCが明細胞EOCである、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記EOCが未分化又は分類不可能EOCである、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
個体の上皮性卵巣癌(EOC)の予後診断をする方法であって、
(a)個体由来の上皮性卵巣癌細胞のサンプルを準備する工程;及び
(b)細胞サンプル中のSox11タンパク質及び/又はmRNAの量を測定する工程
を含み、Sox11タンパク質及び/又はmRNAのレベルが無再発生存率(RFS)の改善した個体の指標である、方法。
【請求項43】
前記EOCが、漿液、粘液、類内膜、明細胞、及び未分化又は分類不可能からなる群から選択される組織学的サブタイプに属する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記EOCが漿液EOCである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記EOCが粘液EOCである、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記EOCが類内膜EOCである、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記EOCが明細胞EOCである、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記EOCが未分化又は分類不可能EOCである、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
高レベルのSox11タンパク質及び/又はmRNAが、無再発生存率(RFS)の改善した個体の指標である、請求項42から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
低レベルのSox11タンパク質及び/又はmRNAが、無再発生存率(RFS)が低下した個体の指標である、請求項42から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
個体の上皮性卵巣癌(EOC)細胞を検出する方法であって、
(a)個体由来の上皮性卵巣細胞のサンプルを準備する工程;及び
(b)細胞サンプル中のSox11タンパク質及び/又はmRNAの量を測定する工程
を含み、Sox11タンパク質及び/又はmRNAのレベルが上皮性卵巣癌(EOC)細胞を有する個体の指標である、方法。
【請求項52】
高レベルのSox11タンパク質及び/又はmRNAが、上皮性卵巣癌(EOC)細胞を有する細胞の指標である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記EOCが、漿液、粘液、類内膜、明細胞、及び未分化又は分類不可能からなる群から選択される組織学的サブタイプに属する、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項54】
前記EOCが漿液EOCである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記EOCが粘液EOCである、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記EOCが類内膜EOCである、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記EOCが明細胞EOCである、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記EOCが未分化又は分類不可能EOCである、請求項53に記載の方法。
【請求項59】
インビボで実施される、請求項34から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
インビトロで実施される、請求項34から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
Sox11が唯一のバイオマーカーとして使用される、請求項34から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
Sox11がEOCを診断又は予後診断するための1又は複数の追加のバイオマーカーと組み合わせて使用される、請求項34から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
20未満の追加のバイオマーカー、例えば、15、10、8、6、5、4、3、若しくは2未満、又は1の追加のバイオマーカーを使用する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
Sox11の核及び/又は細胞質の発現を検出する工程を含む、請求項34から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
試験する前記細胞サンプルが組織サンプルの形態にある、請求項34から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記サンプル中のSox11タンパク質及び/又はmRNAの量を測定する工程が、請求項1から31のいずれか一項に記載の結合部分を使用して実施される、請求項34から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
試験する細胞サンプル中のSox11タンパク質及び/又はmRNAの量を、対照サンプル中のSox11タンパク質及び/又はmRNAの量と比較する工程をさらに含む、請求項34から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記対照サンプルが、非癌性上皮性卵巣細胞を含むか又はからなる陰性対照サンプルである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記対照サンプルが、上皮性卵巣癌(EOC)細胞を含むか又はからなる陽性対照サンプルである、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記上皮性卵巣癌(EOC)細胞が、高い無再発生存率(RFS)に関連するEOC細胞である、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記上皮性卵巣癌(EOC)細胞が、低い無再発生存率(RFS)に関連するEOC細胞である、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
マクロアレイスクリーニング、マイクロアレイスクリーニング、ナノアレイスクリーニング、逆転写PCR、リアルタイムPCR、又はインサイチュPCRからなる群から選択される方法を使用して工程(b)が実施される、請求項34から71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
請求項1から33のいずれか一項に記載の結合部分の有効量を個体に投与する工程を含む、個体の身体内における上皮性卵巣癌(EOC)細胞をイメージングする方法。
【請求項74】
個体における前記結合部分の位置を検出する工程をさらに含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
上皮性卵巣癌(EOC)を診断するための医薬の調製における、請求項1から33のいずれか一項に記載の結合部分の使用。
【請求項76】
上皮性卵巣癌(EOC)を予後診断するための医薬の調製における、請求項1から33のいずれか一項に記載の結合部分の使用。
【請求項77】
上皮性卵巣癌(EOC)細胞を診断するためのバイオマーカーとしての、Sox11タンパク質及び/又はSox11タンパク質をコードするmRNAの使用。
【請求項78】
上皮性卵巣癌(EOC)細胞を予後診断するためのバイオマーカーとしての、Sox11タンパク質及び/又はSox11タンパク質をコードするmRNAの使用。
【請求項79】
前記EOCが、漿液、粘液、類内膜、明細胞、及び未分化又は分類不可能からなる群から選択される組織学的サブタイプに属する、請求項75から78のいずれか一項に記載の使用。
【請求項80】
前記EOCが漿液EOCである、請求項79に記載の使用。
【請求項81】
前記EOCが粘液EOCである、請求項79に記載の使用。
【請求項82】
前記EOCが類内膜EOCである、請求項79に記載の使用。
【請求項83】
前記EOCが明細胞EOCである、請求項79に記載の使用。
【請求項84】
前記EOCが未分化又は分類不可能EOCである、請求項79に記載の使用。
【請求項85】
Sox11が唯一のバイオマーカーとして使用される、請求項77から84のいずれか一項に記載の使用。
【請求項86】
Sox11が1つ又は複数の追加のバイオマーカーと組み合わせて使用される、請求項77から84のいずれか一項に記載の使用。
【請求項87】
20未満の追加のバイオマーカー、例えば、15、10、8、6、5、4、3、若しくは2未満、又は1の追加のバイオマーカーを使用する、請求項86に記載の使用。
【請求項88】
上皮性卵巣癌(EOC)の診断及び/又は予後診断における有効性を有する分子のスクリーニング方法であって、
(a)Sox11タンパク質及び/又はSox11タンパク質をコードするmRNA(又は前記タンパク質若しくはmRNAの断片)と試験する分子を接触させる工程;及び
(b)前記タンパク質及び/又はmRNA(又はそれらの断片)及び試験する分子を含む複合体の存在を検出する工程
を含む、方法。
【請求項89】
前記EOCが、漿液、粘液、類内膜、明細胞、及び未分化又は分類不可能からなる群から選択される組織学的サブタイプに属する、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記EOCが漿液EOCである、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記EOCが粘液EOCである、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
前記EOCが類内膜EOCである、請求項89に記載の方法。
【請求項93】
前記EOCが明細胞EOCである、請求項89に記載の方法。
【請求項94】
前記EOCが未分化又は分類不可能EOCである、請求項89に記載の方法。
【請求項95】
本明細書に実質的に開示されている、上皮性卵巣癌(EOC)の診断又は予後診断のための結合部分。
【請求項96】
本明細書に実質的に開示されている、上皮性卵巣癌(EOC)細胞の検出のための結合部分。
【請求項97】
本明細書に実質的に開示されている、個体の上皮性卵巣癌(EOC)の診断又は予後診断方法。
【請求項98】
本明細書に実質的に開示されている、個体の身体における上皮性卵巣癌(EOC)細胞のイメージング方法。
【請求項99】
本明細書に実質的に開示されている、上皮性卵巣癌(EOC)の診断又は予後診断のための医薬の調製における結合部分の使用。
【請求項100】
本明細書に実質的に開示されている、上皮性卵巣癌(EOC)細胞のマーカーとしての、Sox11タンパク質及び/又はSox11タンパク質をコードするmRNAの使用。
【請求項101】
本明細書に実質的に開示されている、上皮性卵巣癌(EOC)の診断、予後診断、及び/又は治療における有効性を有する分子のスクリーニング方法。

【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図4−5】
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【図4−6】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−501318(P2012−501318A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524451(P2011−524451)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002098
【国際公開番号】WO2010/023458
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(509267188)イミュノヴィア・アーベー (3)
【Fターム(参考)】