説明

上部テーブル付卓上丸鋸

【課題】作業者に不快感を与えず操作性を向上させた上部テーブル付卓上丸鋸を提供する。
【解決手段】被切断材が載置されるベースの上方に鋸刃を備えた本体を上下動可能に設け、本体に、本体の上下動に伴い、本体下側で鋸刃を覆うカバー位置と、本体前側で鋸刃の下縁を露出させる開放位置との間で回転動作する安全カバーを設け、ベース上面に本体の下降によって鋸刃の進入を許可するスリットを有する刃口板を備え、本体上部に、本体の所定の下降位置で鋸刃の上縁が貫通し、上面を被切断材が前後方向にスライド可能な上部テーブルを設けた上部テーブル付卓上丸鋸1において、ベース10(11)上面でスリット15の前方に、スリットと区画される切断屑流入口18を形成し、本体の所定の下降位置において上部テーブル36上で被切断材の切断を行う際に生じる切断屑を、開放位置の安全カバー31A、31B内を通過して切断屑流入口へ流入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋸刃を有する本体を下降させてベース上の被切断材を切断する卓上丸鋸盤としての使用に加えて、本体の上部に設けたテーブルによってテーブルソーとしての使用も可能な上部テーブル付卓上丸鋸に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、卓上丸鋸モードとテーブルソーモードとに使い分けができる上部テーブル付卓上丸鋸が開示されている。卓上丸鋸モードでは、回転駆動される鋸刃の下縁部を用い、ベース等のテーブル上に載置された被加工材を切断し、テーブルソーモードでは、前記丸鋸の上縁部を用い、前記テーブルの上方に位置する上部テーブル上に載置された被加工材を切断する。
【0003】
また、特許文献1の上部テーブル付卓上丸鋸では、上部テーブルの下面前方側に切断屑の排出ノズルを形成し、テーブルソーモードで発生する切断屑を排出ノズルを介して上部テーブルの前方側へ排出可能としている。さらに、排出ノズルに吸引ホースを介して集塵機を接続すれば、切断屑を吸引ホースを通じて集塵機に収集することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−169742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された例を始めとする上部テーブル付卓上丸鋸では、排出ノズルから上部テーブルの前方側に向けて切断屑を排出する。このため、被切断材を切断する際に前記前方側に位置する作業者に対し、切断屑が飛散することがあり、作業者に不快感を与えることがあった。
【0006】
また、排出ノズルに吸引ホースを接続した場合には、被切断材の切断作業の際に吸引ホースが邪魔になることがある。これに伴って、被切断材の切断作業に支障を来たし、上部テーブル付卓上丸鋸の操作がし辛いことがあった。
【0007】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、作業者に不快感を与えることを防ぐと共に操作性を向上させた上部テーブル付卓上丸鋸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係る上部テーブル付卓上丸鋸は、被切断材が載置されるベースの上方に、回転駆動する鋸刃を備えた本体を上下動可能に設けると共に、前記本体に、前記本体の上下動に伴い、該本体の下側にあって前記鋸刃を覆うカバー位置と、前記本体の前側にあって前記鋸刃の下縁を露出させる開放位置との間で回転動作する安全カバーを設け、前記ベースの上面に、前記本体の下降によって前記鋸刃の進入を許可するスリットを有する刃口板を備える一方、前記本体の上部に、前記本体の所定の下降位置で前記鋸刃の上縁が貫通し、上面を被切断材が前後方向にスライド可能な上部テーブルを設けた上部テーブル付卓上丸鋸において、前記ベースの上面で前記スリットの前方に、前記スリットと区画される切断屑流入口を形成して、前記本体の所定の下降位置において前記上部テーブル上で前記被切断材の切断を行った際に生じる切断屑を、前記開放位置の前記安全カバー内を通過して前記切断屑流入口へ流入させることを特徴とする。
請求項1の発明に係る上部テーブル付卓上丸鋸によれば、上部テーブル上で被切断材から生じる切断屑を、開放位置の安全カバー内を通過させて切断屑流入口へ誘導することができる。したがって、切断屑が作業者側に飛散せず、作業者に不快感を与えることがない。
さらに、切断屑を収集するために、上部テーブルの前面側に吸引ホースを配置する必要がない。したがって、吸引ホースによって被切断材の切断作業が邪魔されることがないため、上部テーブル付卓上丸鋸の操作性を向上させることができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記切断屑流入口の幅寸法を前記スリットの幅寸法以上の大きさとすることを特徴とする。
請求項2の発明によれば、切断屑流入口の幅寸法がスリットの幅寸法以上の大きさであるため、切断屑流入口へ切断屑を流入し易くすることができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記ベースに、該ベース上での前記被切断材の切断により生じた切断屑を前記ベースの後方へ案内する切断屑排出流路を形成して、前記切断屑流入口を前記切断屑排出流路に連通させたことを特徴とする。
請求項3の発明によれば、切断屑流入口を切断屑排出流路に連通させたことにより、切断屑流入口に流入した切断屑を、切断屑排出流路に沿って移動させることが可能になる。
このため、切断屑排出流路とは別個に切断屑を排出するための流路を設ける必要がない。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記刃口板は、前記ベースに対して左右に摺動自在に設けられた左刃口板及び右刃口板によって構成されており、前記左刃口板及び前記右刃口板の内のいずれか一方又は双方を前記左右に摺動させて該左刃口板と該右刃口板との間に前記スリットを形成し、前記左刃口板及び前記右刃口板の内のいずれか一方の刃口板に、他方の刃口板に掛け渡されて前記スリットと前記切断屑流入口とを区画する区画部材を固着したことを特徴とする。
請求項4の発明によれば、区画部材を、左右の刃口板の内のいずれか一方の刃口板に固着すると共にスリットの前端に掛け渡している。このため、左右の刃口板をベースに対して左右に摺動させてスリットの幅寸法を調整する場合であっても、区画部材を、前記左右に摺動可能とし、前記摺動に合わせてスリットの前端に掛け渡した状態を保つことができ、スリットの前方に、常に該スリットとは別個に切断屑流入口を形成することができる。
また、上述したように、スリットの幅寸法を調整した後においても切断屑流入口を形成することができるため、調整後の幅寸法に合わせた切断屑流入口を形成するために、ベースを加工する必要がない。
このため、費用をさほど増加させずに、スリットの幅寸法に合わせた切断屑流入口を形成することが可能になる。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記切断屑流入口の前端を、前記開放位置で前記ベースの上面と近接する前記安全カバーの下端開口の前端と同じ位置あるいは該前端よりも前方位置に設定したことを特徴とする。
請求項5の発明によれば、切断屑流入口の前端を、ベースの上面と近接する安全カバー下端開口の前端と同じ位置あるいは該前端よりも前方位置に設定したため、安全カバー内を通過した切断屑が移動する位置に切断屑流入口を配置することができる。
これにより、切断屑流入口に切断屑を効率良く誘導することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上部テーブル付卓上丸鋸によれば、上部テーブル上で被切断材から生じる切断屑を、開放位置の安全カバー内を通過させて切断屑流入口へ誘導することができる。したがって、切断屑が作業者側に飛散せず、作業者に不快感を与えることがない。
さらに、切断屑を収集するために、上部テーブルの前面側に吸引ホースを配置する必要がない。したがって、吸引ホースによって被切断材の切断作業が邪魔されることがないため、上部テーブル付卓上丸鋸の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の上部テーブル付卓上丸鋸の丸鋸本体を押し下げる前の状態を示す斜視図である。
【図2】同丸鋸本体を押し下げた状態の上部テーブル付卓上丸鋸の斜視図である。
【図3】同丸鋸本体を押し下げた状態の上部テーブル付卓上丸鋸の側面図である。
【図4】同上部テーブル付卓上丸鋸のターンテーブル付近の上面図である。
【図5】丸鋸本体を押し下げた状態の上部テーブル付卓上丸鋸の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
本発明の実施形態を、図1ないし図5を参照しつつ説明する。図示の上部テーブル付卓上丸鋸1は、ベース10と、本体支持部20と、丸鋸本体30とを備えている。
【0016】
ベース10は、ターンテーブル11と、フェンス12とを備えている。ターンテーブル11の上面には、例えば木材等の被切断材が載置される。ターンテーブル11の前方には、ハンドル11Aが設けられている。作業者がハンドル11Aを把持して操作することにより、ターンテーブル11は、水平動されて水平方向における所定の回転角度で固定される。ベース10の上方には、フェンス12が設けられている。フェンス12は、木材を突き当てて位置決めするために用いられる。
【0017】
ターンテーブル11の上面には、図4に示すように、左刃口板14A及び右刃口板14Bが、互いに離間して取り付けられている。左刃口板14Aと右刃口板14Bとの間には、スリット15が形成されている。各刃口板14A、14Bには、長孔16A、16Bがそれぞれ設けられている。ねじを各長孔16A、16Bに遊挿すると共に、該ねじをターンテーブル11のねじ孔に螺合させることにより、各刃口板14A、14Bは、ターンテーブル11にそれぞれ固定される。各刃口板14A、14Bのいずれか又は両刃口板14A、14Bを、ターンテーブル11に対して各長孔16A、16Bの長手方向(左右方向)に摺動させて、各刃口板14A、14Bをターンテーブル11に固定する位置を変化させることができる。
【0018】
スリット15は左刃口板14Aと右刃口板14Bとの間に形成されているため、各刃口板14A、14Bをターンテーブル11に固定する位置を変化させることより、スリット15の幅寸法W1も変化する。スリット15には、後述するように、鋸刃34の下縁部が進入する。
【0019】
図4に示すように、スリット15の前端には、区画部材17が設けられている。区画部材17は、左刃口板14Aの裏面に固着され、左刃口板14Aと右刃口板14Bとの間に掛け渡されている。このため、各刃口板14A、14Bを各長孔16A、16Bの長手方向に摺動させてスリット15の幅寸法W1が変化する場合であっても、区画部材17は、各刃口板14A、14Bが摺動する方向に合わせて移動し、スリット15に掛け渡された状態を保つ。
【0020】
区画部材17、左右の刃口板14A、14B及びターンテーブル11の上面の前端で囲まれた空間には、切断屑流入口18が形成されている。後述するように、切断屑流入口18には、上部テーブル36に載置された木材が切断された際に発生する切断屑が流入する。スリット15の前端に区画部材17を設けることにより、ターンテーブル11の上面では、スリット15と、該スリット15の前方に位置する切断屑流入口18との間が仕切られる。本実施形態では、切断屑流入口18の幅寸法W2をスリット15の幅寸法W1よりも大きくした。
【0021】
さらに、ターンテーブル11の内部には、図5に示すように、切断屑排出流路Rが形成されている。切断屑排出流路Rの入口は、スリット15によって、ターンテーブル11の上面に開口し、切断屑排出流路Rの出口は、排出筒19によって、ベース10の後方に開口する。切断屑排出流路Rは、スリット15から鋸刃34の外周に沿って下った後に登り傾斜状になってベース10の後方の排出筒19に至る。排出筒19には、集塵袋が接続されたり、吸引ホースを介して集塵機が接続されたりする。ターンテーブル11の上面に載置された木材が切断された際に発生する切断屑は、スリット15から切断屑排出流路Rに進入する。この切断屑は、切断屑排出流路Rによって、排出筒19に誘導される。図5に示すように、切断屑排出流路Rは、ターンテーブル11の内部において上記の切断屑流入口18と連通している。
【0022】
本体支持部20は、支持部材21と、上下動支持ピン22とを備えている。支持部材21の一端は、傾動ピン23(図5参照。)によって、ターンテーブル11に軸支されている。支持部材21は、前記傾動ピン23によって、傾動可能とされてターンテーブル11の上方に延びている。傾動ピン23の近傍には、固定レバー24が設けられている。固定レバー24によって、支持部材21は、所定の角度傾動させた状態で固定可能とされる。上下動支持ピン22によって、支持部材21の他端には、下記の丸鋸本体30が、上下方向へ揺動可能に取り付けられると共に、図示しないコンプレッションバネによって図1の上死点に付勢されている。
【0023】
丸鋸本体30は、安全カバー31A、31Bと、ブレードカバー32と、電動モータ33と、鋸刃34と、ハンドル35と、上部テーブル36、上部カバー37とを備えている。また、図中の符号39は、電動モータ33の駆動スイッチ、符号38は、電動モータ33の停止スイッチをそれぞれ示す。図1に示すように、丸鋸本体30を押し下げる前の状態では、ブレードカバー32が鋸刃34の側部を覆うと共に、安全カバー31Aが、丸鋸本体30の下側に位置し、鋸刃34の下縁部を覆い、安全カバー31Bが、鋸刃34の側部を覆う。なお、丸鋸本体30は本発明の本体の一例であり、図示した丸鋸本体30を押し下げる前の位置は、本発明のカバー位置の一例である。
【0024】
一方、ハンドル35を用い、作業者が丸鋸本体30を押し下げた状態では、リンクを用いた連動機構により、回転支持ピン31Cを回転中心として、安全カバー31A、31Bは上方へ回転する。これにより、図2、図3及び図5に示すように、安全カバー31A、31Bが、丸鋸本体30の前側に位置して略重なり、鋸刃34の下縁部は、安全カバー31A、31Bから露出する。このとき、図2及び図5に示すように、鋸刃34の下縁部は、スリット15に進入する。なお、図2、図3及び図5に示す丸鋸本体30を押し下げた位置は、本発明の開放位置の一例である。
【0025】
加えて、作業者が丸鋸本体30を押し下げた状態では、図5から理解できるように、安全カバー31Aの下端開口が、ターンテーブル11の上面と近接する。そして、切断屑流入口18の前端18Aを通る垂直線が、安全カバー31Aの下端開口の前端31Dを通る垂直線とほぼ一致する。これにより、上部テーブル付卓上丸鋸1を真上から見下ろしたときに、切断屑流入口18の前端18Aが、前記下端開口の前端31Dとほぼ同じ位置に設定される。
【0026】
丸鋸本体30の上部には、上部テーブル36が設けられている。上部テーブル36には、スリット36B(図2及び図5参照。)が貫設されている。図2及び図3の如く丸鋸本体30が押し下げられた場合には、図5に示すように、鋸刃34の上縁部が、前記スリット36Bを通じ、上部テーブル36の上面36Aから突出する。なお、図2及び図3に示す丸鋸本体30を押し下げた位置は、本発明の所定の下降位置の一例である。丸鋸本体30は、図示しないロック機構により、当該下降位置(前記押し下げた位置)で固定可能となっている。
【0027】
上面36Aから突出した鋸刃34の上縁部は、図5に示すように、上部カバー37によって覆われる。上部カバー37は、回転支持ピン37Aによって、支持部材37Bに、回転可能に取り付けられる。図5には、上部カバー37が上面36Aに当接した状態を示した。支持部材37Bは、図示するように、上面36Aを貫通し、ボルト37Cによって、丸鋸本体30に固定されている。上面36Aには、後述するように、木材が載置され、鋸刃34の上縁部によって、木材が切断される。
【0028】
次に、本実施形態の上部テーブル付卓上丸鋸1の動作を説明する。上部テーブル付卓上丸鋸1では、卓上丸鋸モードとテーブルソーモードとに使い分けができる。卓上丸鋸モードでは、駆動スイッチ39をオン状態にして丸鋸本体30を押し下げ、電動モータ33によって、図3及び図5中の実線矢印方向へ回転駆動させた鋸刃34の下縁部により、ターンテーブル11の上面に載置された木材を切断することができる。この木材を切断した際に発生する切断屑は、排出筒19を通って(丸鋸本体30が前記下降位置付近に位置する場合には、切断屑排出流路R及び排出筒19を通って)、集塵袋又は集塵機に収集される。
【0029】
これ対し、テーブルソーモードでは、以下に説明する方法により、上部テーブル36の上面36Aに載置された木材を切断した際に発生した切断屑を収集する。作業者は、丸鋸本体30を前記下降位置で固定した状態で木材を上面36Aに載せた後に、上面36Aの前方から該上面36Aの後方に位置する上部カバー37に向けて、上面36Aに沿って木材を滑らせる。木材を順次上部カバー37に向けて滑らせると、木材が、回転支持ピン37Aを回転中心として、上部カバー37を上方へ押し上げる。これにより、上部カバー37から鋸刃34の上縁部が露出する。電動モータ33によって回転駆動させた鋸刃34の上縁部により、上面36Aを滑らせた木材が切断される。
【0030】
鋸刃34の上縁部によって木材を切断する際に発生した切断屑(以下木屑と言う。)は、上部テーブル36に貫設されたスリット36Bに進入し、その後、図5中の二点鎖線矢印にて示すように、ブレードカバー32内及び安全カバー31A、31B内を通過して、該安全カバー31Aの下方へ飛散する。このとき、上述したように、前記下端開口の前端31Dは、切断屑流入口18の前端18Aとほぼ同じ位置に設定されているため、安全カバー31Aの下方へ飛散した木屑が、切断屑流入口18に誘導される。本実施形態では、切断屑流入口18の幅寸法W2をスリット15の幅寸法W1よりも大きくしたため、ターンテーブル11の上面においては、切断屑流入口18の開口幅が、スリット15の開口幅よりも大きくなる。これにより、木屑の大半が切断屑流入口18に流入する。
【0031】
上述したように、切断屑流入口18は、ターンテーブル11の内部において切断屑排出流路Rと連通しているため、木屑は、切断屑流入口18からベース10の内部に流入した後に、切断屑排出流路Rを通過して、ベース10の後方の排出筒19に案内される。その後、上記の吸引ホースを介し、木屑は、排気筒19から集塵機等へ収集される。
【0032】
<本実施形態の効果>
本実施形態の上部テーブル付卓上丸鋸1では、テーブルソーモードにおいて、安全カバー31Aの下端開口がターンテーブル11の上面と近接した状態で、木屑は安全カバー31Aの下方へ移動した後に切断屑流入口18に流入する。このため、木屑を切断屑流入口18に誘導して収集することができる。したがって、木屑が上部テーブル付卓上丸鋸1の前方に移動して作業者に飛散せず、作業者に不快感を与えることがない。
さらに、木屑を収集するために、上部テーブル36の前方側に吸引ホースを配置する必要がない。したがって、吸引ホースによって木材の切断作業が邪魔されることがないため、上部テーブル付卓上丸鋸1の操作性を向上させることができる。
【0033】
また、上述したように、ターンテーブル11の上面においては、切断屑流入口18の開口幅が、スリット15の開口幅よりも大きいため、テーブルソーモードでは、スリット15よりも切断屑流入口18へ木屑を流入し易くすることができる。
【0034】
さらに、切断屑流入口18は、ターンテーブル11の内部において切断屑排出流路Rと連通しているため、切断屑流入口18に流入した木屑が、切断屑排出流路Rを通過することが可能になる。このため、切断屑排出流路Rとは別個に木屑を排出するための流路を設ける必要がない。
【0035】
加えて、本実施形態では、区画部材17を、左刃口板14Aの裏面に固着すると共にスリット15の前端に掛け渡した。このため、各刃口板14A、14Bを、ターンテーブル11に対して各長孔16A、16Bの長手方向に摺動させてスリット15の幅寸法W1を変化させる場合であっても、区画部材17を、各刃口板14A、14Bが摺動する方向に合わせて移動させて、スリット15に掛け渡した状態を保つことができ、スリット15の前方に、常にスリット15とは別個に切断屑流入口18を形成することができる。
また、上記のように、スリット15の幅寸法W1を変化させて調整した後においても、切断屑流入口18を形成することができるため、調整後の幅寸法W1に合わせた切断屑流入口18を形成するために、ターンテーブル11やベース10を加工する必要がない。
このため、費用をさほど増加させずに、スリット15の幅寸法W1に合わせた切断屑流入口18を形成することが可能になる。
【0036】
さらに加えて、テーブルソーモードでは、切断屑流入口18の前端18Aが、安全カバー31Aの下端開口の前端31Dとほぼ同じ位置に設定可能であるため、安全カバー31Aの下方へ飛散した木屑が移動する位置に、切断屑流入口18を配置することができる。これにより、切断屑流入口18に木屑を効率良く誘導することができる。
【0037】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施することができる。上述した実施形態では、左刃口板14Aと右刃口板14Bとの間に区画部材17を掛け渡すために、該区画部材17を左刃口板14Aの裏面に固着したが、これに代えて、右刃口板14Bの裏面に区画部材17を固着してもよい。
【0038】
また、上述した実施形態では、切断屑流入口18の前端18Aは、安全カバー31Aの下端開口の前端31Dとほぼ同じ位置に設定されているが、これに代えて、上部テーブル付卓上丸鋸1を真上から見下ろしたときに、前記前端18Aを、前記31Dよりも前方に位置するように設定してもよい。これにより、上述した実施形態と同様に、安全カバー31Aの下方へ飛散した木屑が移動する位置に、切断屑流入口18を確実に配置することができる。
【0039】
さらに、上述した実施形態では、安全カバーを2つに分割したが、これに代えて、安全カバー31A、31Bを一体に形成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1・・上部テーブル付卓上丸鋸、10・・ベース、14A・・左刃口板、14B ・・右刃口板、15・・スリット、17・・区画部材、18・・切断屑流入口、18A・・切断屑流入口の前端、30・・丸鋸本体、31A、31B・・安全カバー、31D・・安全カバーの下端開口の前端、34・・鋸刃、36・・上部テーブル、36A・・上部テーブルの上面、R・・切断屑排出流路、W1・・スリットの幅寸法、W2・・切断屑流入口の幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断材が載置されるベースの上方に、回転駆動する鋸刃を備えた本体を上下動可能に設けると共に、前記本体に、前記本体の上下動に伴い、該本体の下側にあって前記鋸刃を覆うカバー位置と、前記本体の前側にあって前記鋸刃の下縁を露出させる開放位置との間で回転動作する安全カバーを設け、前記ベースの上面に、前記本体の下降によって前記鋸刃の進入を許可するスリットを有する刃口板を備える一方、
前記本体の上部に、前記本体の所定の下降位置で前記鋸刃の上縁が貫通し、上面を被切断材が前後方向にスライド可能な上部テーブルを設けた上部テーブル付卓上丸鋸において、
前記ベースの上面で前記スリットの前方に、前記スリットと区画される切断屑流入口を形成して、前記本体の所定の下降位置において前記上部テーブル上で前記被切断材の切断を行った際に生じる切断屑を、前記開放位置の前記安全カバー内を通過して前記切断屑流入口へ流入させることを特徴とする上部テーブル付卓上丸鋸。
【請求項2】
前記切断屑流入口の幅寸法を前記スリットの幅寸法以上の大きさとすることを特徴とする請求項1に記載の上部テーブル付卓上丸鋸。
【請求項3】
前記ベースに、該ベース上での前記被切断材の切断により生じた切断屑を前記ベースの後方へ案内する切断屑排出流路を形成して、前記切断屑流入口を前記切断屑排出流路に連通させたことを特徴とする請求項1又2に記載の上部テーブル付卓上丸鋸。
【請求項4】
前記刃口板は、前記ベースに対して左右に摺動自在に設けられた左刃口板及び右刃口板によって構成されており、前記左刃口板及び前記右刃口板の内のいずれか一方又は双方を前記左右に摺動させて該左刃口板と該右刃口板との間に前記スリットを形成し、
前記左刃口板及び前記右刃口板の内のいずれか一方の刃口板に、他方の刃口板に掛け渡されて前記スリットと前記切断屑流入口とを区画する区画部材を固着したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の上部テーブル付卓上丸鋸。
【請求項5】
前記切断屑流入口の前端を、前記開放位置で前記ベースの上面と近接する前記安全カバーの下端開口の前端と同じ位置あるいは該前端よりも前方位置に設定したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の上部テーブル付卓上丸鋸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−221389(P2010−221389A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74751(P2009−74751)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】