説明

上部体及びこれを備えた建設機械

【課題】キャブの下部からキャブ内に伝達される騒音を低減しつつ、接続部材のメンテナンスを容易に行うことができるキャブの支持構造及びこれを備えた建設機械を提供すること。
【解決手段】ベースフレーム18との間で隙間A1が形成されるようにベースフレーム18上に取り付けられたフロアプレート16と、フロアプレート16に形成された導出口16a〜16dと、ベースフレーム18を上下に貫通する貫通孔23、24と、貫通孔23、24を塞ぐことが可能なアンダーカバー24、25と、ベースフレーム18とフロアプレート16との間に設けられ、隙間A1を複数の室R1〜R3に区画するための隔壁20、21とを備え、室R1〜R3のうち、隔壁20、21同士の間に形成された連通室R2は、導出口16a〜16d及び貫通孔23、24にそれぞれ通じている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械の上部体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、油圧ショベル等の建設機械は、運転室が形成されたキャブと、このキャブを支持するためのベースフレームとを有する上部体を備えている。図9は、従来の建設機械の構造を説明するための概略断面図である。
【0003】
図9に示すように、ベースフレーム101には、複数のマウント102が立設されている。キャブの下面を構成するフロアプレート103は、各マウント102上に載置された状態で当該各マウント102に取り付けられている。図示は省略するが、キャブの運転室S1には、操作レバー、操作パネル及びエアコン等の室内機器が設けられている。
【0004】
この種の建設機械では、前記室内機器とキャブの外部に位置する機器(以下、室外機器と称す)とを接続するための部材104(以下、接続部材104と称す)を、フロアプレート103に形成された開口105を通して当該フロアプレート103とベースフレーム101との間の隙間に配索することが行われている。
【0005】
しかしながら、従来の建設機械では、キャブの下方で生じた騒音が開口105と接続部材104との間の隙間を通って運転室S1内に入り込み、運転室S1内のオペレータに不快感を与えていた。このような問題を解決すべく、例えば、特許文献1に係る作業機械では、以下の構成を採用している。図10は、特許文献1に係るキャブフロア構造を説明するための概略図である。
【0006】
特許文献1に係る作業機械において、運転室S1の下部に付設されたキャブフロア106は、上板106aと、下板106bとを有するボックス形状とされている。この作業機械では、キャブフロア106の収容室107内に接続部材104を収納することとしている。したがって、キャブの下方で生じた騒音がキャブフロア106の上板106aと下板106bとにおいて二重に遮音されることになるため、運転室S1内に伝達される騒音が抑制される。
【特許文献1】特開2006−123625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のキャブフロア構造では、接続部材104のメンテナンスが行い難いという問題があった。
【0008】
つまり、前記キャブフロア106は、図10に示すように、運転室S1側から収容室107内の接続部材104へのアクセスを可能とするための開口扉106cを備えているものの、運転室S1には、運転席や前記内部機器が設けられているため、作業を行うためのスペースを十分に確保することができなかった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、キャブの下部からキャブ内に伝達される騒音を低減しつつ、接続部材のメンテナンスを容易に行うことができる上部体及びこれを備えた建設機械を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、ベースフレームと、前記ベースフレーム上に設けられたキャブとを有する建設機械の上部体であって、前記ベースフレーム上に立設された複数の取付部と、前記キャブの底部を構成し、前記ベースフレームとの間に所定の隙間が形成されるように前記各取付部上に取り付けられたフロアプレートと、前記フロアプレートに形成され、前記キャブ内の機器に接続された接続部材を前記隙間に導出するための導出口と、前記ベースフレームを上下に貫通する貫通孔と、前記貫通孔を塞ぐこと、及び前記貫通孔を露出させることが可能な蓋部材と、前記ベースフレームと前記フロアプレートとの間に設けられ、前記隙間を水平方向に並ぶ複数の室に区画するための複数の隔壁とを備え、前記各隔壁により区画された複数の室のうち、前記各隔壁同士の間に形成された少なくとも一の室は、前記導出口及び貫通孔にそれぞれ通じた連通室とされていることを特徴とする建設機械のキャブ支持構造を提供する。
【0011】
本発明によれば、複数の隔壁同士の間に形成された連通室に導出口が通じているため、当該連通室を区画する各隔壁によって、連通室の外側で発生した騒音が導出口に伝達するのを抑制することが可能となる。したがって、本発明によれば、連通室の外側で発生した騒音がキャブの下方から導出口を介してキャブ内に侵入するのを抑制することができる。
【0012】
さらに、本発明では、連通室に貫通孔が通じているため、蓋部材により貫通孔を露出させることにより、当該貫通孔を通してベースフレームの下から連通室内の接続部材のメンテナンスを行うことができる。したがって、キャブの内部からフロアプレートを介して接続部材のメンテナンスを行う場合と異なり、ベースフレームの下の広いスペースを利用することができるので、接続部材のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0013】
以上のように、本発明によれば、キャブの下部からキャブ内に伝達される騒音を低減しつつ、接続部材のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0014】
前記キャブ支持構造において、前記連通室の内側面の少なくとも一部には、吸音部材が設けられていることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、連通室の内部に騒音が入り込んだ場合であっても、当該騒音を連通室の内側面に設けられた吸音部材によって減衰させることができる。したがって、連通室内に入り込んだ騒音が導出口に導かれるのを抑制することができる。
【0016】
前記キャブ支持構造において、前記ベースフレーム上で前記キャブの右側に設けられたエンジンをさらに備え、上から見て前記導出口とエンジンとの間には、前後方向に延びる少なくとも1つの隔壁が設けられていることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、上から見てエンジンと導出口との間に隔壁が設けられているため、当該隔壁によって、エンジンから生じた騒音が導出口に導かれるのを抑制することができる。
【0018】
前記キャブ支持構造において、前記貫通孔は、上から見て前記導出口を包含する範囲に形成されていることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、導出口の真下の位置で接続部材のメンテナンスを行うことが可能となるため、導出口から導出される接続部材が複数存在する場合に、当該複数の接続部材のメンテナンスをまとめて行うことができる。
【0020】
前記キャブ支持構造において、前記隔壁の上端部と前記フロアプレートの下面との間には隙間が形成され、前記隔壁とフロアプレートとの間には、前記隙間を埋めるための弾性部材が弾性変形可能な状態で設けられていることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、フロアプレートがベースフレームに対して振動した場合であっても、この振動に応じて弾性変形する弾性部材によって、フロアプレートと隔壁との隙間が塞がれた状態を維持することができる。
【0022】
また、本発明は、自走式の下部走行体と、前記下部走行体上に設けられたベースフレームと、前記ベースフレーム上に設けられたキャブと、上記キャブ支持構造とを備えていることを特徴とする建設機械を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、キャブの下部からキャブ内に伝達される騒音を低減しつつ、接続部材のメンテナンスを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係るキャブ支持構造を有する油圧ショベルを示す右側面図である。なお、以下の説明ではキャブ8内のオペレータから見た前後左右方向を用いて説明する。
【0026】
図1を参照して、建設機械の一例としての油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2と、この下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体(上部体)3とを備えている。
【0027】
下部走行体2は、ロワフレーム4と、このロワフレーム4の左右両側に設けられた一対のクローラ5(図1では1つ示している)とを備えている。各クローラ5は、駆動輪5aと、遊動輪5bと、これら両輪5a、5bに巻回されたクローラベルト5cとをそれぞれ備え、前記クローラベルト5cの循環動作に応じて走行するようになっている。
【0028】
上部旋回体3は、下部走行体2上に旋回可能に搭載された旋回フレーム6と、この旋回フレーム6に起伏可能に設けられた作業アタッチメント7と、この作業アタッチメント7の左側で、旋回フレーム6の前部に設けられたキャブ8と、前記旋回フレーム6上でキャブ8の右側かつ作業アタッチメント7の後方に設けられたエンジン(図示せず)とを備えている。
【0029】
作業アタッチメント7は、ブーム9と、このブーム9の先端部に揺動可能に軸支されたアーム10と、このアーム10の先端部に揺動可能に軸支されたバケット11とを備えている。ブーム9は、旋回フレーム6との間に設けられたブームシリンダ12の伸縮に応じて旋回フレーム6に対して起伏する。アーム10は、ブーム9との間に設けられたアームシリンダ14の伸縮に応じてブーム9に対して揺動する。バケット11は、アーム10との間に設けられたバケットシリンダ15の伸縮に応じてアーム10に対して揺動する。
【0030】
以下、油圧ショベル1が有するキャブ8の支持構造について、図2〜図6を参照して説明する。図2は、図1の油圧ショベル1のキャブ8と旋回フレーム6とを分解して示す斜視図である。図3は、図2のキャブ8のフロアプレート16を上から見た平面図である。図4は、図3のIV−IV線断面図である。図5は、図3のV−V線断面図である。図6は、図2の旋回フレーム6を分解して示す斜視図である。
【0031】
図2〜図6を参照して、キャブ8は、内部に運転室S1を有する箱状に形成され、その底面を構成するフロアプレート16を備えている。キャブ8の内部には、運転席の他に、油圧機器や電子機器等の内部機器(図示せず)が設けられている。フロアプレート16には、前記内部機器に接続された電気配線や油圧配管等の接続部材17をフロアプレート16の下に導出するために上下に貫通する導出口16a〜16dが設けられている。本実施形態では、図3に示すように、フロアプレート16の前部に1つの導出口16aが設けられ、残る3つの導出口16b〜16dがフロアプレート16の後部に設けられている。
【0032】
旋回フレーム6は、ベースフレーム18と、このベースフレーム18上にキャブ8を取り付けるための4つのマウント(取付部)19と、ベースフレーム18上に立設された左右一対の隔壁20、21(図3ではハッチング部分)と、ベースフレーム18を上下に貫通する前後一対の貫通孔22、23と、これら貫通孔22、23をそれぞれ塞ぐようにベースフレーム18の下面に取り付けられた前後一対のアンダーカバー(蓋体)24、25と、各隔壁20、21の相対向する側面にそれぞれ設けられた吸音部材26と、各隔壁20、21と前記フロアプレート16との間に設けられた弾性部材27とを備えている。
【0033】
ベースフレーム18の上面には、フロアプレート16の左右の前角の位置に対応して上に突出する一対の突出部18a、18bが形成されている。また、ベースフレーム18の上面には、フロアプレート16の後縁部に沿うように左右方向に延びるとともに上に突出する突出部18dが設けられている。各突出部18a、18b上にはそれぞれマウント19が設けられている。また、突出部18d上の左右両端部には、それぞれマウント19が設けられている。したがって、各マウント19上に取り付けられたフロアプレート16とベースフレーム18との間には、突出部18a、18b、18dと各マウント19との高さの和に相当する寸法D1の隙間A1(図4参照)が形成される。なお、ベースフレーム18の上面には、突出部18a、18bと突出部18dとの間で左右方向に延びるとともに、上に突出する突出部18cが設けられている。
【0034】
隔壁20は、前記突出部18c、18dに対応する位置に切欠部20a、20bが形成された金属板からなる。同様に、隔壁21は、前記突出部18c、18dに対応する位置に切欠部21a、21bが形成された金属板からなる。各隔壁20、21は、ベースフレーム18上に立てられた状態で、それぞれの下端部がベースフレーム18の上面に溶接等の手段によって固定されている。したがって、各隔壁20、21によって、ベースフレーム18とフロアプレート16との間の隙間A1は、左右方向に並ぶ3つの室R1〜R3(図4参照)に区画される。
【0035】
本実施形態において、各室R1〜R3のうち隔壁20、21同士の間に形成された室R2は、フロアプレート16の導出口16a〜16d及びベースフレーム18の貫通孔22、23に通じる連通室とされている。具体的には図3に示すように、連通室R2は、上から見て前記フロアプレート16の導出口16a〜16dを包含する範囲に設けられている。したがって、導出口16a〜16dから導出された接続部材17は、すべて連通室R2内に収納される。また、ベースフレーム18の貫通孔22、23は、上から見て連通室R2と重複する位置に設けられているとともに、連通室R2から左右にはみ出す大きさとされている。より具体的に、貫通孔22は、上から見て導出口16aを包含する範囲に設けられ、貫通孔23は、上から見て各導出口16b〜16dのそれぞれを包含する範囲に設けられている。
【0036】
図4に示すように、連通室R2の内側面となる隔壁20の左側面及び隔壁21の右側面には、吸音部材26がそれぞれ設けられている。これら吸音部材26は、例えば、ウレタンからなり、連通室R2内の騒音を減衰させるようになっている。なお、本実施形態では、各隔壁20、21にのみ吸音部材26を設ける構成について説明しているが、連通室R2の内側面を構成するベースフレーム18の上面、蓋部材24、25の上面若しくはフロアプレート16の下面、又はこれらの全てに吸音部材26を設けることもできる。
【0037】
図4及び図5に示すように、各隔壁20、21の上端部とフロアプレート16の下面との間には、隙間が形成されている。各隔壁20、21とフロアプレート16との間には、前記隙間を生めるための弾性部材27が弾性変形可能な状態で設けられている。したがって、ベースフレーム18に対してフロアプレート16が振動した場合であっても、この振動に応じて弾性部材27が弾性変形することにより、各隔壁20、21とフロアプレート16との間の隙間が塞がれた状態で維持される。そのため、連通室R2の左右外側で生じた騒音が連通室R2内に入り込むのを抑制することができる。
【0038】
アンダーカバー24は、貫通孔22を覆った状態でベースフレーム18の下面に着脱可能に取り付けられている。同様に、アンダーカバー25は、貫通孔23を覆った状態でベースフレーム18の下面に着脱可能に取り付けられている。換言すると、アンダーカバー24をベースフレーム18から脱着することにより貫通孔22を露出させることができる一方、アンダーカバー25をベースフレーム18から脱着することにより貫通孔23を露出させることができる。なお、本実施形態では、ベースフレーム18に対して着脱可能なアンダーカバー24、25について説明したが、ベースフレーム18に対して開閉動作可能に取り付けられたアンダーカバーを採用することもできる。また、ベースフレーム18とアンダーカバー24、25との間にウレタンゴム等からなる弾性部材を設けることにより、ベースフレーム18とアンダーカバー24、25との間をシールすることができる。
【0039】
以下、前記建設機械1における騒音伝達の抑制作用について説明する。本実施形態では、各隔壁20、21によってベースフレーム18とフロアプレート16との間に区画された連通室R2内に、導出口16a〜16dが通じている。したがって、各隔壁20、21、によって、連通室R2の外側で生じた騒音が導出口16a〜16dまで伝達するのを抑制することができる。したがって、連通室R2の外側で発生した騒音がキャブ8の下方から導出口16a〜16dを介してキャブ8内に侵入するのを抑制することができる。特に、キャブ8の右側には図外のエンジンが設けられているため、連通室R2の右側では比較的大きな騒音が生じることがあるものの、この騒音の導出口16a〜16dへの伝達は、右側の隔壁20によって有効に抑制される。また、ベースフレーム18の下ではクローラ5による走行時の騒音が生じるものの、この騒音の伝達は、ベースフレーム18及びアンダーカバー24、25によって有効に抑制される。
【0040】
以上説明したように、前記実施形態によれば、隔壁20、21同士の間に形成された連通室R2に導出口16a〜16dが通じているため、当該連通室R2を区画する隔壁20、21によって、連通室R2の外側で発生した騒音が導出口16a〜16dに伝達するのを抑制することが可能となる。したがって、前記実施形態によれば、連通室R2の外側で発生した騒音がキャブ8の下方から導出口16a〜16dを介してキャブ8内に侵入するのを抑制することができる。
【0041】
さらに、前記実施形態では、連通室R2に貫通孔22、23が通じているため、アンダーカバー24、25により貫通孔22、23を露出させることにより、当該貫通孔22、23を通してベースフレーム18の下から連通室R2内の接続部材17のメンテナンスを行うことができる。したがって、キャブ8の内部からフロアプレート16を介して接続部材17のメンテナンスを行う場合と異なり、ベースフレーム18の下の広いスペースを利用することができるので、接続部材17のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0042】
以上のように、前記実施形態によれば、キャブ8の下部からキャブ8内に伝達される騒音を低減しつつ、接続部材17のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0043】
なお、前記実施形態では、隔壁を2つ設けた構成について説明したが、隔壁を3つ以上設けた場合であっても、隔壁同士の間に形成された連通室内に前記導出口16a〜16d及び貫通孔22,23がそれぞれ通じた構成とすることにより、上記と同様の効果を奏することができる。
【0044】
前記実施形態のように、連通室R2の内側面の少なくとも一部に吸音部材26を設けた構成とすることにより、連通室R2の内部に騒音が入り込んだ場合であっても、当該騒音を吸音部材26によって減衰させることができる。したがって、連通室R2内に入り込んだ騒音が導出口16a〜16dを通ってキャブ8内に導かれるのを抑制することができる。
【0045】
前記実施形態のように、上から見てキャブ8の右側に設けられたエンジン(図示せず)と、導出口16a〜16dとの間に隔壁20を設けた構成によれば、当該隔壁20によって、エンジンから生じた騒音が導出口16a〜16dに導かれるのを抑制することができる。
【0046】
前記実施形態のように、貫通孔22が上から見て導出口16aを包含する範囲に、貫通孔23が上から見て導出口16b〜16dを包含する範囲に形成されている構成によれば、導出口16a〜16dの真下の位置で接続部材17のメンテナンスを行うことができるので、導出口16a〜16dから導出される接続部材17が複数存在する場合に、当該複数の接続部材17のメンテナンスをまとめて行うことができる。
【0047】
前記実施形態のように、各隔壁20、21の上端部とフロアプレート16の下面との間に形成された隙間に弾性部材27が弾性変形可能な状態で設けられた構成とすれば、フロアプレート16がベースフレーム18に対して振動した場合であっても、この振動に応じて弾性変形する弾性部材27によって、フロアプレート16と隔壁20、21との隙間が塞がれた状態を維持することができる。
【0048】
以下、本発明の別の実施形態について図7及び図8を参照して説明する。図7は、本発明の別の実施形態に係る図3相当図である。図8は、図7の実施形態に係る図2相当図である。
【0049】
図7及び図8を参照して、本実施形態に係る油圧ショベルにおいて、前記実施形態と異なるのは、隔壁を3枚有し、これら隔壁同士の間にT字型の連通室R5が形成されている点である。
【0050】
具体的に、本実施形態の油圧ショベルは、左右一対のL字型隔壁31、32と、真っ直ぐに形成された真直隔壁33とを備えている(図7ではハッチング部分)。
【0051】
L字型隔壁31は、ベースフレーム18の前部から後方へ延びるとともに、突出部18dと突出部18cとの間で右側に屈曲した形状とされている。反対に、L字型隔壁32は、ベースフレーム18の前部から後方へ延びるとともに、突出部18dと突出部18cとの間で左側に屈曲した形状とされている。真直隔壁33は、突出部18dの前に設けられている。
【0052】
前記各隔壁31〜33によって、ベースフレーム18とフロアプレート16との間の隙間A1(図4参照)は、室R4〜R7に区画される。室R4及び室R6は、キャブ8の左右の前角の下に配置される室である。各隔壁31〜33同士の間に形成された室R5は、T字型の連通室を構成する。室R7は、連通室R5の後の室である。
【0053】
連通室R5は、各導出口16a〜16dを包含する範囲に設けられている。本実施形態において、各導出口16a〜16dを通じて導出された接続部材17(図示せず)のうちの少なくとも一部がキャブ8の右位置でベースフレーム18上に立設された縦板34の挿通孔34aを通して右側に配索される。本実施形態では、連通室R5によって各導出口16a〜16dと挿通孔34aとが連通状態にあるため、上述した騒音伝達の抑制作用に加えて接続部材17の右側への配索を確実に行うことができる。
【0054】
なお、図7及び図8に示す実施形態においても、連通室R5の内側面に吸音部材26を設けることや、各隔壁31〜33の上端部とフロアプレート16の下面との間に弾性部材27を設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係るキャブ支持構造を有する油圧ショベルを示す右側面図である。
【図2】図1の油圧ショベルのキャブと旋回フレームとを分解して示す斜視図である。
【図3】図2のキャブのフロアプレートを上から見た平面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】図2の旋回フレーム6を分解して示す斜視図である。
【図7】本発明の別の実施形態に係る図3相当図である。
【図8】図7の実施形態に係る図2相当図である。
【図9】従来の建設機械の構造を説明するための概略断面図である。
【図10】特許文献1に係るキャブフロア構造を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0056】
A1 隙間
R1〜R7 室
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体(上部体)
16 フロアプレート
16a〜16d 導出口
17 接続部材
18 ベースフレーム
19 マウント(取付部)
20、21 隔壁
22、23 貫通孔
24、25 アンダーカバー(蓋部材)
26 吸音部材
27 弾性部材
31、32 L字型隔壁
33 真直隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフレームと、前記ベースフレーム上に設けられたキャブとを有する建設機械の上部体であって、
前記ベースフレーム上に立設された複数の取付部と、
前記キャブの底部を構成し、前記ベースフレームとの間に所定の隙間が形成されるように前記各取付部上に取り付けられたフロアプレートと、
前記フロアプレートに形成され、前記キャブ内の機器に接続された接続部材を前記隙間に導出するための導出口と、
前記ベースフレームを上下に貫通する貫通孔と、
前記貫通孔を塞ぐこと、及び前記貫通孔を露出させることが可能な蓋部材と、
前記ベースフレームと前記フロアプレートとの間に設けられ、前記隙間を水平方向に並ぶ複数の室に区画するための複数の隔壁とを備え、
前記各隔壁により区画された複数の室のうち、前記各隔壁同士の間に形成された少なくとも一の室は、前記導出口及び貫通孔にそれぞれ通じた連通室とされていることを特徴とする建設機械の上部体。
【請求項2】
前記連通室の内側面の少なくとも一部には、吸音部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械の上部体。
【請求項3】
前記ベースフレーム上で前記キャブの右側に設けられたエンジンをさらに備え、上から見て前記導出口とエンジンとの間には、前後方向に延びる少なくとも1つの隔壁が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建設機械の上部体。
【請求項4】
前記貫通孔は、上から見て前記導出口を包含する範囲に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の建設機械の上部体。
【請求項5】
前記隔壁の上端部と前記フロアプレートの下面との間には隙間が形成され、前記隔壁とフロアプレートとの間には、前記隙間を埋めるための弾性部材が弾性変形可能な状態で設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の建設機械の上部体。
【請求項6】
自走式の下部走行体と、
前記下部走行体上に設けられた請求項1〜5の何れか1項に記載の上部体とを備えていることを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−76659(P2010−76659A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248701(P2008−248701)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】