説明

上顎平面状態の計測装置

【課題】本発明は、取付部材のマウスピースに設けた上顎(被検出部材)の平面状態を慣性計測装置で計測することを目的とする。
【解決手段】本発明による上顎平面状態の計測装置は、平面板(1)の中央位置(1A)に慣性計測装置(13)と取付部材(11)を設け、この取付部材(11)に設けたマウスピース(12)に設けた上顎(被検出部材)の平面状態を前記慣性計測装置(13)で計測するようにした構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上顎平面状態の計測装置に関し、特に、この上顎平面状態の計測装置の取付部材のマウスピースに位置した上顎(被検出部材)の平面状態(重力基準で水平面からの傾斜状態をみる)を慣性計測装置によって計測することができるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の平面の平面状態(傾斜状態)を検出する手段としては、例えば、特許文献1の光ファイバジャイロ、特許文献2のジンバル機構、非特許文献1のMEMSジャイロ及び加速度計を用いた周知の慣性計測装置を用いて、移動体、飛翔体等の位置及び姿勢計測に用いられていることは周知である。
また、医学分野、例えば、歯科領域においては、人体姿勢支持組織としての歯牙の役割が極めて重要で、歯牙の正常又は不良な状態が健康の度合い(全身状態の健全性)に関係してくることが最近認識され始めており、特に、上顎平面の状態(重力基準で水平面からの傾斜状態をみる)と人体姿勢全体の維持との関連性が臨床的、解剖学的にも強く示唆され始めている。
【0003】
そのため、例えば、人体姿勢の矯正の手段として、上顎平面の状態(重力基準の水平面からの傾斜状態を見る)を定量的に評価する必要があり、従来は主として歯科医師が目視によって判断することが多かった。
また、他の関連方法として、特許文献3の顎運動の測定方法、特許文献4の人体情報抽出装置、特許文献5のバイトブロックを利用した頭蓋位置決め基準平面検出方法が開示されている。
前述の特許文献3〜5の方法においては、X,Y,Z軸をループコイルで検出、座標系の断面画像による咬合平面の検出、有歯顎用のバイトブロックを用いた基準平面の検出が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−63565号公報
【特許文献2】特開平10−213438号公報
【特許文献3】特開2010−187709号公報
【特許文献4】特開2008−253808号公報
【特許文献5】特開2004−357914号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】2002年1月20日(株)工業調査会より発行の「ジャイロ活用技術入門」の126頁から134頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の顎等の平面状態の計測装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、医師によって、上顎平面の状態が、水平であるか又は傾斜しているかを外観から間接的に推測するものであったため、上顎平面の状態を正確に検出することは困難であった。すなわち、重力基準で水平面からの傾斜状態を見る方法ではなかった。
また、前述の特許文献3〜5に記載された顎等の動作等を検出する装置は、何れも大型化しており、より小型で可搬型の構成を得ることは不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による上顎平面状態の計測装置は、平面板の中央位置に設けられた慣性計測装置と、前記中央位置に設けられ全体形状がU字型をなす取付部材と、前記取付部材に設けられたマウスピースと、からなり、前記マウスピースに位置した被検出部材の平面状態(重力基準の水平面からの傾斜状態)を前記慣性計測装置で計測するようにした構成であり、また、前記平面板は、互いに前記平面板に一体形成されると共に互いに離間した一対の第1、第2突出板を有し、前記取付部材は前記平面板に一体形成されると共に互いに離間した一対の第1、第2突出片を有している構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明による上顎平面状態の計測装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、平面板の中央位置に設けられた慣性計測装置と、前記中央位置に設けられ全体形状がU字型をなす取付部材と、前記取付部材に設けられたマウスピースと、からなり、前記マウスピースに位置した被検出部材の平面状態(重力基準の水平面からの傾斜状態)を前記慣性計測装置で計測するように構成したことにより、被検出部材としての上の歯をマウスピースに載せて噛むだけで、前記慣性計測装置によって直接上顎平面の状態(重力基準の水平面からの傾斜状態)を検出することができ、歯科、整形外科、理学療法(リハビリテーション)、整体療術、柔道整復等人体の姿勢矯正時の計測および診断に寄与することができる。
また、平面板は、互いに前記平面板に一体形成されると共に互いに離間した一対の第1、第2突出板を有し、前記取付部材は前記平面板に一体形成されると共に互いに離間した一対の第1、第2突出片を有し、この第1、第2突出片にマウスピースが設けられているため、装置の全体形状を小型で可搬型とすることができ、安価な上顎平面状態の計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による上顎平面状態の計測装置の完成製品を示す平面図である。
【図2】図1の上顎平面状態の計測装置のマウスピースを取外した状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、取付部材のマウスピースに位置した上顎の平面状態(すなわち、重力基準で水平面からの傾斜状態をみること)を慣性計測装置によって直接計測するようにした上顎平面状態の計測装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0011】
以下、図面と共に本発明による上顎平面状態の計測装置の好適な実施の形態について説明する。
図1において、符号1で示されるものは、平面でみて全体形状がU字型又は単なる平板からなる平面板であり、この平面板1は、金属材をプレス加工した金属板の構成、又は、樹脂成形による樹脂板、又は後述の慣性計測装置13を搭載したプリント基板で構成されている。
【0012】
前記平面板1の両側には、一例として、平面でみて八の字型を形成するように、一対の第1、第2突出板2,3が一体状に形成されており、前記平面板1の中央位置1Aには、前記第1、第2突出板2,3の内側に位置すると共に、前記第1、第2突出板2,3と同様に平面でみて八の字型をなす第1、第2突出片4,5が前記平面板1と一体に形成されている。
【0013】
前記第1、第2突出片4,5の平面形状は、前記第1、第2突出板2,3の平面形状よりも十分に小さい形状で形成されていると共に、前記第1、第2突出板2,3と同様に平面でみてU字型を形成している。
尚、前記第1、第2突出板2,3は、図1の上顎平面状態の計測装置10を操作する時あるいは使用時等に使用される取手あるいは保持部材としての作用を有している。但し、前述の各突出板2,3は、図示していないが、省略されて単なる四角形、長方形等の平面板1とすることもできるが、本形態では、第1、第2突出板2,3が形成されている場合について説明する。
【0014】
従って、前記第1、第2突出片4,5により平面でみてU字型をなす取付部材11を形成し、この取付部材11上にはU字型をなすマウスピース12が固定して設けられている。尚、このマウスピース12は、被検者毎に型取りを行って個人毎に形成するものである。
【0015】
前記平面板1の中央位置1Aには、前記取付部材11が位置すると共に、周知の例えば、ジンパル機構、MEMSジャイロ、加速度計等からなる慣性センサを用いた慣性計測装置13が設けられている。
前記慣性計測装置13は、平面板1上において重力基準の水平面で軸調整されており、例えば、図1のように、NED座標において慣性計測諸元(姿勢・方位角(ロール角X、ピッチ角Y、ヨー角Z)、角速度、加速度、位置)を出力するように構成され、軸定義はNEDに限らず、重力基準の水平面を基準とする任意の座標系を設定することもできる。
また、前記マウスピース12は、予め各被検者(患者)の歯形を取得しておいて製作しておき、そのマウスピース12を被検者の歯に直接取り付けることができるように構成されている。尚、図2は前記マウスピース12を図1の取付部材11から取り外した状態を平面で示している。
【0016】
従って、実際の計測時には、被検者の上の歯が作る平面と前記平面板1の平面とを互いに一致させることができ、上顎平面の状態を直接計測することができる。
【0017】
前記第1、第2突出片4,5の第1、第2外側部4A,5Aと前記第1、第2突出板2,3の第1、第2内側部2A,3Aとの間には、平面でみて八の字型をなす第1、第2空間部14,15が形成されており、この各空間部14,15には,上の歯でマウスピース12を噛んだ時(すなわち、マウスピース12に上顎からなる被検出部材を位置させた時)に、顔の頬が入り込む。
【0018】
次に、前述の構成において、本発明による上顎平面状態の計測装置10を用いて被検者の上顎の平面状態(重力基準で水平面からの傾斜状態をみる)を計測する場合について述べる。
まず、各被検者毎の上歯に合わせて予め製作されたマウスピース12を前記取付部材11上に装着した後、被検者が各突出板2,3の間に顔を挿入する状態で上歯でマウスピース12を噛む、すなわち、マウスピース12に上歯が位置すると、これにより、被検者の上歯が作る平面と平面板1の平面が互いに一致した状態となる。
【0019】
前述のようにして、上顎平面状態の計測装置10によって上顎の平面状態(すなわち、重力基準で水平面からの傾斜状態をみる)が慣性計測装置13によって計測されると、この計測結果が被検者の人体姿勢全体の維持の関係に適用され、その結果、上顎平面の状態と人体姿勢全体の維持の関係が実証され、歯科、整形外科、理学療法(リハビリテーション)、整体療術、柔道整復等の人体の姿勢矯正に関連する医療、療術分野での診断及び治療の基準として応用が進むことでQOL(quality of life)の向上につながるものである。
尚、被検出部材としては、人体の上顎に限らず、動物の上顎の計測も可能である。尚、前述の場合、平面板1に各突出板2,3が形成された場合について述べたが、各突出板2,3を有しない単なる平面板1とした場合には、四角状又は長方形の平面板1の角部を手でもって操作することにより、前述と同様の上顎の計測を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明による上顎平面状態の計測装置は、上顎平面状態の計測装置の取付部材のマウスピースに設けた上顎の平面状態を慣性計測装置によって計測することにより、人体の姿勢矯正に関連する医療等に寄与することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 平面板
1A 中央位置
2 第1突出板
2A 第1内側部
3 第2突出板
3A 第2内側部
4 第1突出片
4A 第1外側部
5 第2突出片
5A 第2外側部
10 上顎平面状態の計測装置
11 取付部材
12 マウスピース
13 慣性計測装置
14 第1空間部
15 第2空間部
X ロール角
Y ピッチ角
Z ヨー角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面板(1)の中央位置(1A)に設けられた慣性計測装置(13)と、前記中央位置(1A)に設けられ全体形状がU字型をなす取付部材(11)と、前記取付部材(11)に設けられたマウスピース(12)と、からなり、
前記マウスピース(12)に位置した被検出部材の平面状態(重力基準の水平面からの傾斜状態)を前記慣性計測装置(13)で計測するように構成したことを特徴とする上顎平面状態の計測装置。
【請求項2】
前記平面板(1)は、互いに前記平面板(1)に一体形成されると共に互いに離間した一対の第1、第2突出板(2,3)を有し、前記取付部材(11)は前記平面板(1)に一体形成されると共に互いに離間した一対の第1、第2突出片(4,5)を有していることを特徴とする請求項1記載の上顎平面状態の計測装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−111194(P2013−111194A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259321(P2011−259321)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】