説明

下半身用支持具

【課題】下半身全体の血行を良くし、エコノミークラス症候群の発症を効果的に予防することも可能な下半身用支持具を提供する。
【解決手段】下半身用支持具を、着用者の足裏を載せて突っ張った際にその荷重が上体の背面側に掛かるように足裏から両膝の前面又は側面を経て上体の背面側にループ状に掛け回すための縦ベルト10と、縦ベルト10における着用者の左膝に重なる左膝重合部と右膝に重なる右膝重合部とが離反しないように縦ベルト10における左膝重合部と右膝重合部にループ状に掛け回すための横ベルト20とで構成した。縦ベルト10には、その長さを調節するための縦ベルト長調節手段14と、縦ベルト10をスライド可能な状態で挿入するための足載せ用スライドパイプ15とを設けると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着席した際に下半身を楽な状態で支持するだけでなく、エコノミークラス症候群の発症を予防することも可能な下半身用支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行機での移動は、座席に長時間着席しなければならず、とても疲労しやすい。長時間同じ姿勢で着席したままの状態でいると、下半身の血行が悪くなって静脈血栓症を患うおそれがある。このときできた静脈血栓が血流に乗って肺へ移動し、肺動脈が詰まると、肺動脈血栓塞栓症を併発し、最悪の場合には死に至る可能性もある。このような症状は、エコノミークラスの乗客が発症することが多かったため、「エコノミークラス症候群」とも呼ばれている。エコノミークラス症候群を防ぐためには、下半身を楽な状態に保つことはもちろん、下半身に刺激を与えたり、下半身を動かしたりするなどして、下半身の血行を良くすることが推奨されており、これらの予防を行うことができるようにした携帯型の器具も提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、伸縮性を有するループ状のベルトに球体を保持させたマッサージ用具が記載されている。このマッサージ用具を足裏と膝上とに掛け回した状態で足を動かすことで、前記球体で足裏を刺激しながら足を動かすことができるとされている。また、特許文献2には、座席のランチテーブルや、前の座席の背もたれなどから吊り下げることができるようにした携帯型の足載せベルト具が記載されている。この足載せベルト具に足を載せることにより、膝裏の血管が圧迫されないようにして血行を良くすることができるとされている。特許文献1のマッサージ用具や、特許文献2の足載せベルト具は、エコノミークラス症候群の発症を予防することについて、一定の効果は期待できるものではあったが、下半身全体を支持又は刺激できるものとはなっておらず、その予防効果は限定的であると考えられる。
【0004】
このような実状に鑑みてか、これまでには、足を固定するための左足用及び右足用のフットレストと、着用者の腰に巻きつけられる腰部ベルトと、腰部ベルトの左側と左足用のフットレストを接続するための左側の接続ベルトと、腰部ベルトの右側と右足用のフットレストを接続するための右側の接続ベルトとで構成された器具が記載されている(特許文献3)。この器具を着用し、フットレストに載せた足を前方に伸ばして突っ張ると、腰部ベルトで腰の後側を押圧してマッサージすることができるようになっている。ところが、フットレストを床面に置いた状態で足を前方に伸ばしたとしても、腰部ベルトは、前方(腹側)ではなく下方(尻側)へ移動しようとするため、腰部を効果的にマッサージできるものとはなっていなかった。腰部ベルトで腰の後側を前方へ押圧しようとすると、足を水平に近い状態に保ちながら伸ばす必要があり、苦しい姿勢を強いられるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−246008号公報(特許請求の範囲、段落0018〜0021、図3)
【特許文献2】実登第3113346号公報(実用新案登録請求の範囲、段落0005、図1)
【特許文献3】特開2008−154711号公報(特許請求の範囲、段落0011,0030、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、着席した際に下半身を楽な状態に支持することは勿論のこと、着用者の足裏を押圧してマッサージするだけでなく、着用者の腰などを前方に押圧してマッサージすることもでき、下半身全体の血行を良くし、エコノミークラス症候群の発症を効果的に予防することも可能な下半身用支持具を提供するものである。また、その使用態様によっては、肩や首や背中など、腰以外の部分も押圧してマッサージすることも可能な下半身用支持具を提供することも本発明の目的である。さらに、バッグの中などにコンパクトに収納することが可能で、軽量であり、携帯が容易で、飛行機内などにも容易に持ち込むことができる下半身用支持具を提供することも本発明の目的である。さらにまた、着用が容易で、狭い場所でも簡単に着用することのできる下半身用支持具を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、椅子に着席した際に下半身に着用するための下半身用支持具であって、着用者の足裏を載せて突っ張った際にその荷重が着用者の上体(着用者の身体における腰よりも上側の部分。腰を含む。以下同じ。)の背面側(後側)に掛かるように足裏から両膝の前面又は側面を経て上体の背面側にループ状に掛け回すための縦ベルトと、縦ベルトにおける着用者の左膝に重なる左膝重合部と右膝に重なる右膝重合部とが離反しないように縦ベルトにおける左膝重合部と右膝重合部にループ状に掛け回すための横ベルトとで構成されたことを特徴とする下半身用支持具を提供することによって解決される。縦ベルトを掛け回す上体の部位は、特に限定されない。縦ベルトは、その長さを調節することにより、腰から首までの部位のいずれにも掛け回すことができる。例えば、縦ベルトを短めにすると、腰に掛け回すことができ、長めにすると、肩若しくは首の背面側、又は背中に掛け回すことができる。
【0008】
本発明の下半身用支持具では、足裏と上体の背面側との間に掛け回したループ状の縦ベルトの一端(前端)における内周部を足裏で前方へ蹴って(押して)縦ベルトを突っ張らせることにより、縦ベルトの他端(後端)における内周部で着用者の上体の背面を前方へ押圧することができるようになる。したがって、足裏だけでなく、腰や肩や背中や首や背中などもマッサージすることが可能になり、下半身全体の血行をさらに良くして、上述したエコノミークラス症候群の発生を抑えるだけでなく、上体の血行を良くすることもできる。また、横ベルトにより、両膝を固定することができるので、椅子に着席した際に下半身を楽な姿勢に保つことも可能になる。
【0009】
本発明の下半身用支持具において、縦ベルトの長さを調節するための縦ベルト長調節手段を縦ベルトに設けると好ましい。これにより、着用者の体格に応じて、下半身用支持具における縦ベルトの長さを調節することが可能になる。ただし、この場合には、縦ベルトの長さを変更した場合に、縦ベルトにおける足裏を載せるべき場所も変化するため、どこに足裏を載せたらよいのかが分かりにくくなるという問題が生じる。また、足裏のマッサージ効果を増大するために、縦ベルトにおける足裏を載せる部分を硬い素材(硬質樹脂製や金属製や木製の棒材など)で構成できなくなるという問題も生じる。したがって、縦ベルトをスライド可能な状態で挿入するための足載せ用スライドパイプを縦ベルトに設けると好ましい。これにより、縦ベルトの長さを調節した際に、足載せ用スライドパイプを縦ベルトに沿って移動させ、縦ベルトにおける足裏を載せる場所を調節することが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によって、着席した際に下半身を楽な状態に支持することは勿論のこと、着用者の足裏を押圧してマッサージするだけでなく、着用者の腰などを前方に押圧してマッサージすることもでき、下半身全体の血行を良くし、エコノミークラス症候群の発症を効果的に予防することも可能な下半身用支持具を提供することが可能になる。また、その使用態様によって、肩や首や背中など、腰以外の部分も押圧してマッサージすることも可能な下半身用支持具を提供することも可能になる。さらに、バッグの中などにコンパクトに収納することが可能で、軽量であり、携帯が容易で、飛行機内などにも容易に持ち込むことができる下半身用支持具を提供することも可能になる。さらにまた、着用が容易で、狭い場所でも簡単に着用することのできる下半身用支持具を提供することも本発明の目的である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の下半身用支持具の好適な実施態様を示した斜視図である。
【図2】図1に示す下半身用支持具を腰の背面側に掛け回した状態に着用して座席に着席した状態を示した斜視図である。
【図3】図1に示す下半身用支持具を図2に示したのとは別の方法で着用して座席に着席した状態を示した斜視図である。
【図4】図1に示す下半身用支持具を片方の肩の背面側に掛け回した状態に着用して座席に着席した状態を示した斜視図である。
【図5】図1に示す下半身用支持具を両方の肩の背面側に掛け回した状態に着用して座席に着席した状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1]下半身用支持具の概要
本発明の下半身用支持具の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。図1は、本発明の下半身用支持具の好適な実施態様を示した斜視図である。図2は、図1に示す下半身用支持具を腰の背面側に掛け回した状態に着用して座席に着席した状態を示した斜視図である。図3は、図1に示す下半身用支持具を図2に示したのとは別の方法で着用して座席に着席した状態を示した斜視図である。図4は、図1に示す下半身用支持具を片方の肩の背面側に掛け回した状態に着用して座席に着席した状態を示した斜視図である。図5は、図1に示す下半身用支持具を両方の肩の背面側に掛け回した状態に着用して座席に着席した状態を示した斜視図である。本発明の下半身用支持具は、図2〜5に示すように、椅子に着席した際に着用するためのものとなっている。この下半身用支持具は、着用者の足裏から両膝の前面又は側面を経て上体の背面側にループ状に掛け回すための縦ベルト10と、縦ベルト10における左膝重合部11f(着用者の左膝に重なる部分)と右膝重合部11e(着用者の右膝に重なる部分)とが離反しないように左膝重合部11fと右膝重合部11eにループ状に掛け回すための横ベルト20とで構成されている。この下半身用支持具を着用して、縦ベルト10の一端(前端)に着用者の足裏を載せ、縦ベルト10の一端を足で前方へ押して突っ張ることで、着用者の腰や肩などの背面側が、縦ベルト10の他端(後端)によって前方に押されるようになる。したがって、足裏だけでなく、腰や肩などの上体をマッサージすることもできるようになっている。
【0013】
[2]縦ベルト
縦ベルト10は、図1に示すように、ベルト本体11と、ベルト本体11の一方の端部11aに固定された連結具12と、ベルト本体11の他方の端部11bに固定された連結具13と、縦ベルト10の長さを調節するための縦ベルト長調節手段14と、ベルト本体11がスライド可能な状態で挿入された足載せ用スライドパイプ15とで構成されている。以下、縦ベルト10の各部について、より詳しく説明する。
【0014】
ベルト本体11の素材は、折り畳むことが可能な程度の可撓性、あるいは巻き取ることが可能な程度の柔軟性を有し、かつ足で突っ張っても切れない引っ張り強度を有するものであれば特に限定されない。例えば、シートベルト用のウェビングとして使用される生地を好適に使用することができる。廃シートベルトをベルト本体11として再利用すれば、資源を有効利用することも可能になる。ただし、廃シートベルトを再利用する方法であると、ベルト本体11の色や太さなどが制限されるため、これらに変化を持たせたい場合(例えば、本体ベルト11に色や模様を付けて下半身用支持具を着用する際に目印にできるようにする場合や、本体ベルト11の太さを場所によって変えてマッサージ効果と軽量化を両立させる場合など)には、シートベルト用のウェビングと同様の生地をベルト本体11のために新たに作製するとよい。シートベルト用のウェビングとしては、ポリエステル繊維などの強靭な合成繊維を経糸や緯糸として織り込んだ生地などが例示される。
【0015】
ベルト本体11の全長(折り返し部11cを含めた長さ)は、着用者の体型や、縦ベルト10の長さの調節しろをどの程度確保するかなどによっても異なり、特に限定されない。下半身用支持具を、一般的な成人が腰に掛け回した状態に着用するのに適したものとするためには、ベルト本体11の全長は、150cm以上は必要である。ベルト本体11の全長は、200cm以上であると好ましく、250cm以上であるとより好ましい。ベルト本体11を、着用者の腰だけでなく、肩や首などにも掛け回すことができるようにする場合には、ベルト本体11の全長はさらに長くする必要がある。この場合、ベルト本体11の全長は、280cm以上とすると好ましく、300cm以上とするとより好ましく、320cm以上とするとさらに好ましい。ベルト本体11は、長めに設定しておけば、その長さを調節することにより、図2〜5のいずれの使用態様でも使用することができるようになる。ただし、ベルト本体11の全長を長くしすぎると、着用時にベルト本体11がかなり余るようになってしまい、その部分が邪魔になる。このため、ベルト本体11は、通常、400cm以下とする。下半身用支持具を腰に掛け回すことのみを目的としたものとする場合には、ベルト本体11の全長は、350cm以下とすると好ましく、300cm以下とするとより好ましい。下半身用支持具を、腰に掛け回すことのみを目的としたものとする場合には、ベルト本体11の全長を280cm程度とすると最適であり、下半身用支持具を、肩や首などの上体の上部に掛け回すことも想定したものとする場合には、ベルト本体11の全長を350cm程度とすると最適である。
【0016】
ベルト本体11の幅も、特に限定されない。しかし、ベルト本体11が細すぎると、ベルト本体11が破断するおそれがある。このため、ベルト本体11の幅は、通常、1cm以上とされる。ベルト本体11の幅は、2cm以上であると好ましく、3cm以上であるとより好ましい。一方、ベルト本体11が太すぎると、下半身用支持具がコンパクトに収納できなくなるだけでなく、その軽量化が困難になり、下半身用支持具が携帯するのに適さないものとなってしまう。このため、ベルト本体11の幅は、通常、10cm以下とされる。ベルト本体11の幅は、9cm以下であると好ましく、8cm以下であるとより好ましい。本実施態様の下半身用支持具において、ベルト本体11の幅は5cmとなっている。
【0017】
本実施態様の下半身用支持具において、連結具12と連結具13とを連結した状態にあっては、図1に示すように、ベルト本体11は、単純なループ状となっているが、ベルト本体11の左膝重合部11f(着用者の左膝に重なる部分)と右膝重合部11e(着用者の右膝に重なる部分)とを互いに固着して、ベルト本体11を「8」の字型のループ状としてもよい。これにより、縦ベルト10を容易に図3に示す状態とすることができる。ベルト本体11における左膝重合部11fと右膝重合部11eを固着する場合には、縫着や接着などで完全に固定してもよいが、面ファスナやボタンなどで着脱自在にすることもできる。図2に示す例では、横ベルト20自体が、左膝重合部11fと右膝重合部11eを接近した状態に締結するための機能を発揮している。
【0018】
連結具12と連結具13は、図1に示すように、互いに係合することにより、ベルト本体11の端部11aと端部11bとを互いに連結し、ベルト本体11をループ状にするものとなっている。縦ベルト10は、座席の座面上から床面にかけてループ状に置かれたベルト本体11の中に腰を下ろしてベルト本体11の後側を持ち上げることで、あるいはループ状のベルト本体11を頭から被ることで上体に掛け回した状態に着用することができるため、連結具12と連結具13で連結できる構造(ベルト本体11のループを開くことができる構造)としておく必要は特にない。しかし、ベルト本体11のループを開くことができるようにしておくことで、狭い座席に着席したままの状態であっても、ベルト本体11を着用者の足裏と上体の背面側に掛け回し、下半身用支持具をさらに容易に着用することができるようになる。
【0019】
連結具12と連結具13は、互いに係合できる構造のものであれば特に限定されない。本実施態様の下半身用支持具において、連結具12は、図1に示すように、複数の係合用舌片を有するタンプレートとなっており、連結具13は、タンプレートにおける係合用舌片が挿入されて係合されるバックルプレートとなっている。このような構造の連結具12,13は、シートベルトなどでも採用されている通り、強固に連結されるため、縦ベルト10におけるベルト本体11を連結するものとして適している。タンプレートとバックルプレートは、逆にしても(連結具12をバックルプレートとして、連結具13をタンプレートとしても)よい。本実施態様の下半身用支持具において、ベルト本体11の端部11aは、連結具12bに通されて折り返された状態となっている(図1における折返部11c)。
【0020】
縦ベルト長調節手段14は、縦ベルト10の長さ、換言すると縦ベルト10で形成されるループの大きさを調節するためのものとなっている。この縦ベルト長調節手段14によって、図2〜5に示すいずれの態様でも下半身用支持具を使用することが可能になる。本実施態様の下半身用支持具においては、図1に示すように、縦ベルト長調節手段14として角カンを使用している。この縦ベルト長調節手段(角カン)14は、ベルト本体11の端部11aに対する角カンの固定位置(挟持位置)を変化させることにより、折返部11cの長さを調節し、縦ベルト10の長さを調節するものとなっている。このように、縦ベルト長調節手段14として角カンを使用することで、簡素な構造でありながら、縦ベルト10の長さを無段階で調節してしっかりと固定することが可能になる。縦ベルト調節手段14は、角カンの他にも、例えば、面ファスナやボタンなどの固定手段における固定部に対する被固定部の固定位置を変化させることにより縦ベルト10の長さを調節するものなど、各種のものを採用することができる。
【0021】
足載せ用スライドパイプ15は、図2,3に示すように両足を載せることができる程度の硬さと長さとを有し、ベルト本体11の長さ方向にスライドさせることができる構造のものであれば特に限定されない。本実施態様の下半身用支持具においては、図1に示すように、足載せ用スライドパイプ15の長さは、両足を載せることができるのであれば特に限定されない。足載せ用スライドパイプ15の長さは、通常、20〜50cmとされ、好ましくは、25〜35cmとされる。本実施態様の下半身用支持具において、足載せ用スライドパイプの長さは約30cmとなっている。
【0022】
足載せ用スライドパイプ15の内径(足載せ用スライドパイプ15におけるベルト本体11を通す孔の直径)は、ベルト本体11の幅や素材などによっても異なり、特に限定されない。しかし、ベルト本体11の幅に対して足載せ用スライドパイプ15の内径を小さくしすぎると、ベルト本体11に対して足載せ用スライドパイプ15をスライドさせにくくなるおそれがある。一方、ベルト本体11の幅に対して足載せ用スライドパイプ15の内径を大きくしすぎて、足載せ用スライドパイプ15をベルト本体11に対してほぼ無抵抗の状態でスライドできるようにしても落ち着かない。ベルト本体11の幅を上記のような範囲とした場合には、足載せ用スライドパイプ15の内径は、通常、1〜7cmとされ、好ましくは、2〜5cm、より好ましくは3〜4cmとされる。
【0023】
[3]横ベルト
横ベルト20は、図1に示すように、ベルト本体21と、ベルト本体21の一方の端部21aに固定された連結具22と、ベルト本体22の他方の端部21bに固定された連結具23と、横ベルト20の長さを調節するための横ベルト長調節手段24とで構成されている。横ベルト20における連結具22及び連結具23は、縦ベルト10における連結具12及び連結具13と同様であるため、説明を割愛する。また、横ベルト20における横ベルト長調節手段24は、縦ベルト10における縦ベルト長調節手段14と同様であるため、説明を割愛する。以下においては、主に、横ベルト20における、縦ベルト10とは異なる部分について説明する。
【0024】
図2,3に示すように、横ベルト20は、縦ベルト10における左膝重合部11fと右膝重合部11eにループ状に掛け回す(図2に示すように、着用者の左膝及び右膝の外周に掛け回さない状態で縦ベルト10における左膝重合部11f及び右膝重合部11eに掛け回す場合だけでなく、図3に示すように、着用者の左膝及び右膝の外周に掛け回した状態で縦ベルト10における左膝重合部11f及び右膝重合部11eに掛け回す場合をも含む。)ものであるため、そのベルト本体21の長さは、通常、着用者の足裏から腰の後側に掛け回される縦ベルト10のベルト本体11よりも短く設定される。ベルト本体21の全長(折り返し部21c(図1を参照)を含めた長さ)は、横ベルト20の長さの調節しろをどの程度確保するか、あるいは図2と図3のどちらの方法で着用するかなどによっても異なり、特に限定されない。しかし、図2に示す方法で下半身用支持具を着用する場合には、通常、10〜120cmとされる。ベルト本体21の全長は、30〜100cmであると好ましい。50〜70cm程度であると最適である。また、図3に示す方法で下半身用支持具を着用する場合には、通常、70〜150cmとされる。ベルト本体21の全長は、80〜130cmであると好ましい。100cm前後であると最適である。
【0025】
また、本実施態様の下半身用支持具において、横ベルト20におけるベルト本体21の幅は、縦ベルト10におけるベルト本体11の幅と同じにしているが、ベルト本体21にはベルト本体11ほどの強度が要求されないことに加えて、ベルト本体21の幅はベルト本体11の幅ほど下半身用支持具の着用感に影響を及ぼさないため、ベルト本体21の幅は、ベルト本体11よりも細くしてもよい。さらに、本実施態様の下半身用支持具において、ベルト本体21の素材は、縦ベルト10におけるベルト本体11の素材と同じものを採用しているが、ベルト本体21にはベルト本体11ほどの強度が要求されないことに加えて、ベルト本体21の素材はベルト本体11の素材ほど下半身用支持具の着用感に影響を及ぼさないため、ベルト本体21の素材は、ベルト本体11の素材よりも安価なものを採用してもよい。
【0026】
ところで、本実施態様の下半身用支持具において、横ベルト20は、縦ベルト10から完全に分離しているが、縦ベルト20から分離できない構造としてもよい。これにより、横ベルト20の紛失を防ぐことが可能になる。この構成は、図2に示す方法で下半身用支持具を着用する場合に好適である。横ベルト20を縦ベルト10から分離できない構造とするためには、例えば、横ベルト20におけるベルト本体21を縦ベルト10におけるベルト本体11に対して縫着や接着することなどにより固定する方法が挙げられる。また、横ベルト20におけるベルト本体21に、ベルト通し穴(図示省略)を設け、該ベルト通し穴に縦ベルト10におけるベルト本体11を通す方法も挙げられる。前記ベルト通し穴は、ベルト本体21に切込みを形成したり、バンドなどをベルト本体21に対してループ状に固定することなどにより設けることができる。これにより、横ベルト20を縦ベルト10から分離できない構造としながらも、縦ベルト10に対して横ベルト20を縦方向にスライドさせることも可能になり、着用者の膝の位置に応じて横ベルト20の位置を調節することが可能になる。
【0027】
[4]下半身用支持具の使用方法
上述した下半身用支持具の使用方法について、図2〜5を参照しながら説明する。図2,3に示すように、下半身用支持具を腰の背面側に掛け回した状態に着用するには、まず、椅子に着席し、腰の回りに縦ベルト10を巻き掛ける。腰の回りに縦ベルト10を巻き掛ける作業は、連結具12と連結具13とを連結して縦ベルト10をループ状とした後に行ってもよいし、その前に行ってもよい。また、椅子に置いた状態の縦ベルト10の中に座ることにより行ってもよいし、椅子に着席した後に縦ベルト10を腰のまわりに配することにより行ってもよい。これらの手順は、椅子の広さや状況などに応じて適宜変更するとよい。このとき、縦ベルト10のベルト本体11における後端部11gの内周面が、着用者の腰の背面側(後側)に掛った状態となっている。また、縦ベルト10における前端部11dに配された足載せ用スライドパイプ15は、床面に置かれた状態となっている。一方、図4,5に示すように、下半身用支持具を肩に掛け回した状態に着用するには、まず、縦ベルト11をループ状とし、この縦ベルト11を肩に掛けることにより着用すると簡単である。図4に示すように、縦ベルト11を片方の肩にのみ掛け回す場合には、縦ベルト11をたすき掛けし、図5に示すように、縦ベルト11を両方の肩に掛け回す場合には、まず、縦ベルト11を首の後側に掛け回してから、旨の前にある縦ベルト11を手で掴むなどしてそれぞれの肩の後側に掛けるようにすると簡単である。
【0028】
次に、足載せ用スライドパイプに足裏を載せて足を伸ばし、縦ベルト10を突っ張った状態とする。足を伸ばしたにもかかわらず、縦ベルト10が突っ張った状態とならない場合には、縦ベルト長調節手段14を操作して縦ベルト10を短く調節する。逆に、足が窮屈であり、拘束感が大きいようであれば、縦ベルト長調節手段14を操作して縦ベルト10を長く調節する。縦ベルト10は、足を軽く伸ばして縦ベルト10を突っ張った状態とした際に、下半身が楽な姿勢となり、足裏と上体の背面側に適度な力が加わる長さに調節するとよい。縦ベルト10の長さを調節したことにより、足載せ用スライドパイプ15の位置が真ん中からずれた場合には、足載せ用スライドパイプ15に足裏を載せた足を伸ばしただけで、足載せ用スライドパイプ15を適切な位置へと移動させることができる。このとき、図3に示すように、縦ベルト10のベルト本体11における左膝重合部11fを左膝の内側に掛け、右膝重合部11eを右膝の内側に掛けると、縦ベルト10を「8」の字状として、より楽な姿勢を実現することができる。
【0029】
続いて、図2に示すように、縦ベルト10における中間部分(図1における左膝重合部11fと右膝重合部11e)に横ベルト20を巻き、連結具22と連結具23とを連結して横ベルト20をループ状とする。この後、横ベルト長調節手段24を操作して、横ベルト20の長さを調節し、横ベルト20を締め付ける。横ベルト20の締め付けは、着用者が両膝や足などに強い拘束感を感じない程度とする。このように横ベルト20で縦ベルト10の中間部分を固定して縦ベルト10を「8」の字状とすることで、下半身をより楽な姿勢に保つことが可能となる。以上により、下半身用支持具の着用が完了する。
【0030】
また、図3に示すように、着用者の左膝と右膝の外周に横ベルト20を巻き、連結具22と連結具23とを連結して横ベルト20をループ状とする着用方法もある。この場合には、横ベルト長調節手段24を操作して、横ベルト20の長さを調節し、着用者の左膝と右膝が離反しないように横ベルト20を締め付ける。横ベルト20の締め付けは、着用者が両膝に強い拘束感を感じない程度とする。このように横ベルト20で両膝を固定することで、下半身をより楽な姿勢に保つことが可能となる。以上により、下半身用支持具の着用が完了する。図4,5では、横ベルト20は、横ベルト20を着用者の左膝と右膝の外周に巻いた状態に描いていないが、下半身用支持具を肩に掛け回す場合にも、横ベルト20を着用者の左膝と右膝の外周に巻くことができる。
【0031】
この下半身用支持具を図2〜5に示す方法で着用して、足裏を足載せ用スライドパイプ15に載せ、縦ベルト10を突っ張った状態とすると、オットマンに両足を載せたかのように、下半身を楽な姿勢に保つことができる。また、足裏と上体の背面側に適度な押圧力を加えてマッサージをすることもできる。足裏に加える力に強弱を付けると、マッサージ効果はより高まる。トイレなどで席を外す場合には、横ベルト20を外して立ち上がるだけでよい。また、椅子に着席しているときであっても、下半身用支持具を使用したくないときには、足載せ用スライドパイプ15から足裏を下ろすだけでよい。本実施態様の下半身用支持具は、着用と、使用と、取り外しの全てを簡単な操作で行うことができるものとなっている。
【0032】
[5]用途
本発明の下半身用支持具は、様々な場面で使用することができる。具体的には、飛行機やバスや電車などの座席で使用することができる。乗り物を利用して長時間移動する場合は、狭い座席で同じ姿勢を長時間強いられるため、上述した「エコノミークラス症候群」を発症するおそれがあるが、本発明の下半身用支持具を着用することで、下半身を楽な姿勢に保ちながら、足裏や上体をマッサージすることができるので、「エコノミークラス症候群」の発症を抑えることが可能となる。本発明の下半身用支持具は、コンパクトに収容することができるため、これらの乗り物内にも容易に持ち込むことができる。このほか、本発明の下半身用支持具は、職場や自宅などで椅子に着席して作業を行う場合などにも使用することができる。また、映画館や劇場などでも好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 縦ベルト
11 ベルト本体
11a 端部
11b 端部
11c 折返部
11d 前端部
11e 右膝重合部
11f 左膝重合部
11g 後端部(腰重合部)
12 連結具(タンプレート)
13 連結具(バックルプレート)
14 縦ベルト長調節手段(角カン)
15 足載せ用スライドパイプ
20 横ベルト
21 ベルト本体
21a 端部
21b 端部
21c 折返部
22 連結具(タンプレート)
23 連結具(バックルプレート)
24 横ベルト長調節手段(角カン)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子に着席した際に下半身に着用するための下半身用支持具であって、
着用者の足裏を載せて突っ張った際にその荷重が着用者の上体の背面側に掛かるように足裏から両膝の前面又は側面を経て上体の背面側にループ状に掛け回すための縦ベルトと、
縦ベルトにおける着用者の左膝に重なる左膝重合部と右膝に重なる右膝重合部とが離反しないように縦ベルトにおける左膝重合部と右膝重合部にループ状に掛け回すための横ベルトとで構成されたことを特徴とする下半身用支持具。
【請求項2】
縦ベルトが、着用者の足裏を載せて突っ張った際にその荷重が着用者の腰の背面側に掛かるように足裏から両膝の前面又は側面を経て腰の背中側にループ状に掛け回すためのものである請求項1記載の下半身用支持具。
【請求項3】
縦ベルトが、着用者の足裏を載せて突っ張った際にその荷重が着用者の肩若しくは首の背面側又は背中に掛かるように足裏から両膝の前面又は側面を経て肩若しくは首の背面側又は背中にループ状に掛け回すためのものである請求項1記載の下半身用支持具。
【請求項4】
縦ベルトの長さを調節するための縦ベルト長調節手段と、縦ベルトをスライド可能な状態で挿入するための足載せ用スライドパイプとが縦ベルトに設けられた請求項1〜3いずれか記載の下半身用支持具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−161600(P2012−161600A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−8097(P2012−8097)
【出願日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(511017210)株式会社セコ (1)
【Fターム(参考)】