説明

下半身用衣類

【課題】パイルが出し易く蒸れ難い編み組織で、吸湿性に富み肌触りが良好で、糸種の割りに薄く軽くでき、細い糸でも透けず、冷え性対策に優れた下半身用衣類を提供する。
【解決手段】弾性糸を含む複合糸aで平編みした第1コース1と、吸放湿性に優れた紡績糸b1に嵩高加工糸b2を引き揃えた2本の糸bでタック編みした第2コース2と、弾性糸を含む複合糸cで平編みした第3コース3と、吸放湿性に優れた紡績糸d1に嵩高加工糸d2を引き揃えた2本の糸dでタック編みした第4コース4とを1サイクルとする編み組織を反復して編成された下半身用衣類Aの主要部Bを備え、第2コース2及び第4コース4は、2本の糸b、dを添え糸編み方式で給糸してタック編みし、そのタック編み部分では2本の糸b、dを1ウエール〜複数ウエール分だけコース方向にずらせて編成して前記紡績糸b1、d1を主要部Bの内面側にループ状に突出させて編成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷え性対策が施されたパンツ、タイツ、靴下、パンティストッキング等の下半身用衣類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性糸を芯にしたカバリング糸からなる地糸と、ウーリー加工糸からなる裏毛糸とを1コース置きに供給し、地糸で編成された地組織に裏毛糸を、3又は5ウエール置きに編み込み、それ以外のウエールでは裏毛糸を編地裏側に浮かせることにより裏毛パイルを形成した3×1又は5×1フロートパイル編地により、パンティ部からレッグ部のふくらはぎ下までを編成し、ふくらはぎ下からフート部までを地組織のみで編成した保温性に優れたパンティストッキングが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】登録実用新案第3020148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1のパンティストッキングでは、裏毛糸として、ウーリー加工糸だけを使用し、かつ、この裏毛糸をフロート編みすることによって裏毛パイルを形成させている。ところが、これであると、必要な保温性を確保するためには、大きいパイルを形成することが必要となり、大きいパイルを形成させるためには、地糸組織に対して裏毛糸を長くフロートさせる必要がある。そうすると、編地がコース方向(横方向)に裏毛糸のフロート長さ分(パイル形成分)だけ大きく縮められ、それだけ地厚となり、通気性が悪化し、蒸れ易いという問題点がある。しかも、この裏毛糸と地糸とを1コース置きに交互に供給して編成するものであるため、裏毛パイルの形成組織が過密となって、一層地厚となる問題点がある。また、裏毛パイルを構成する裏毛糸としてウーリー加工糸を使用しているだけであるため、吸湿性が乏しく乾燥速度も遅くなり、肌触りが悪いという問題点もある。
【0004】
本発明は、パイル形成糸の構成、及び、編み組織を改善し、従来技術の上記問題点を解消したもので、パイルが出し易く蒸れ難い編み組織とし、しかも、吸湿性に富み肌触りが良好で、糸種の割りに薄く軽くでき、細い糸でも透けず、冷え性対策に優れた下半身用衣類を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明の下半身用衣類は、弾性糸を含む複合糸で平編みした第1コースと、吸放湿性に優れた紡績糸に嵩高加工糸を引き揃えた2本の糸でタック編みした第2コースと、弾性糸を含む複合糸で平編みした第3コースと、吸放湿性に優れた紡績糸に嵩高加工糸を引き揃えた2本の糸、又は、嵩高加工糸同士を引き揃えた2本の糸でタック編みした第4コースとを1サイクルとする編み組織を反復して編成された主要部を備えており、前記第2コース及び第4コースは、前記2本の糸を添え糸編み方式で給糸してタック編みし、しかも、前記第2コース及び第4コースのタック編み部分では前記2本の糸を1ウエール〜複数ウエール分だけコース方向にずらせて編成、若しくは、ずらせることなく編成し、この編成と前記第2コース及び第4コースの2本の糸の伸縮量差により吸放湿性に優れた紡績糸を主要部の内面側にループ状に突出させて編成してある。なお、本発明において、下半身用衣類の主要部とは、パンツ、タイツ、パンティストッキングのようなパンティ部を有する衣類の場合では、少なくともパンティ部を含むものとし、靴下類の場合では、レッグ部だけ、或いは、全体を含むものとする。
【0006】
この構成によれば、第2コース及び第4コースにおけるタック編み部分では前記2本の糸を1ウエール〜複数ウエール分だけコース方向にずらせて編成することと、吸放湿性に優れた紡績糸(伸縮量小)と嵩高加工糸(伸縮量大)との伸縮量差を利用することとの併用によってパイルを形成させているため、これら2本の糸をコース方向にずらせる長さを少なくして比較的大きいパイルを形成することが可能となり、その分、地厚となることが軽減され、通気性の低下も防止でき、蒸れを少なくすることができる。しかも、パイルは、吸放湿性に優れた紡績糸で形成させているため、吸湿性に優れ、乾燥速度の向上も図れるため、べとつきをなくして、肌触りを良好とできる。さらに、前記第1コースから第4コースを1サイクルとする編み組織の反復で主要部が編成されているため、糸種の割りに薄く軽くでき、細い糸でも透けず、冷え性対策に優れた下半身用衣類を提供することができる。
【0007】
前記第2コースは、1×3タック編みで編成されており、また、前記第4コースは、1×1タック編み、又は、1×3タック編みで編成されていることが好ましい。
また、前記第1コース及び第3コースの複合糸は、ポリウレタン等の弾性糸にウーリーナイロン等の嵩高加工糸をカバリングした糸で構成されており、また、前記第2コース及び第4コースの吸放湿性に優れた紡績糸は、綿等の天然繊維、レーヨンやポリエステル等の人造繊維の単独又は複合紡績糸で構成されており、さらに、前記吸放湿性に優れた紡績糸に引き揃えられる嵩高加工糸は、ウーリーナイロン等の嵩高加工糸で構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パイル形成糸の構成、及び、編み組織を改善し、従来技術の上記問題点を解消したもので、パイルが出し易く蒸れ難い編み組織とし、しかも、吸湿性に富み肌触りが良好で、糸種の割りに薄く軽くでき、細い糸でも透けず、冷え性対策に優れた下半身用衣類を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の構成を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る下半身用衣類の主要部の編み組織図を示し、図2はパンツに適用した実施例図である。
本発明の下半身用衣類Aは、図1に示すように、弾性糸を含む複合糸aで平編みした第1コース1と、吸放湿性に優れた紡績糸b1に嵩高加工糸b2を引き揃えた2本の糸bでタック編みした第2コース2と、弾性糸を含む複合糸cで平編みした第3コース3と、吸放湿性に優れた紡績糸d1に嵩高加工糸d2を引き揃えた2本の糸d、又は、嵩高加工糸d2同士を引き揃えた2本の糸dでタック編みした第4コース4とを1サイクルとする編み組織を反復して編成された主要部Bを備えており、前記第2コース2及び第4コース4は、前記2本の糸b、dを添え糸編み方式で給糸してタック編みし、しかも、前記第2コース2及び第4コース4のタック編み部分では前記2本の糸b、dを1ウエール〜複数ウエール分だけコース方向にずらせて(又は、飛ばして)編成し、この編成と前記2本の糸b、dの伸縮量差により吸放湿性に優れた紡績糸b1、d1を主要部Bの内面側にループ状に突出させて編成してある。
【0010】
上記下半身用衣類Aの主要部Bとは、パンツ、タイツ、パンティストッキングのようなパンティ部を有する衣類の場合では、少なくともパンティ部を含むものとし、靴下類の場合では、レッグ部だけ、或いは、全体を含むものとする。
前記第2コース2は、図1の実施例では、1×3タック編みで編成されており、また、前記第4コース4は、1×1タック編みで編成されている。なお、第4コースは、1×3タック編みで編成してもよい。
前記第1コース1及び第3コース3の平編み組織の編成に使用されている複合糸a、cは、例えば、ポリウレタン等の弾性糸(17dtex)を芯糸とし、これにウーリーナイロン等の嵩高加工糸(50dtex)を巻き付けたシングルカバリング糸で構成されている。
【0011】
また、前記第2コース2又は第4コース4で使用されている吸放湿性に優れた紡績糸b1、d1は、例えば、綿等の天然繊維、レーヨンやポリエステル等の人造繊維の単独又は複合紡績糸(50番手)で構成されている。
さらに、前記吸放湿性に優れた紡績糸b1、d1と引き揃えて使用される嵩高加工糸b2、d2は、例えば、ウーリーナイロン等の嵩高加工糸(33dtex)で構成されている。なお、第4コース4において、嵩高加工糸d2同士で編成される場合では、(50dtex)と(33dtex)との引き揃えとするのが好ましい。
【0012】
図2は、靴下用丸編機(400本針)により図1の編み組織で主要部Bを含む下半身用衣類Aの全体を編成したパンツの実施例図であって、内面には、ループが突出してパイルCが形成されている。このパンツは、靴下用丸編機で右半身部分と左半身部分とを前記図1の編み組織によってそれぞれ円筒状に編成したものを、その一側において、履き口部分(上端部分)から股下部分まで切開し、この切開部分同士を縫合して製作されている。
本発明に係る下半身用衣類Aは、以上の構成からなり、次に、その作用効果を説明する。
【0013】
上記構成によれば、第2コース2及び第4コース4におけるタック編み部分では2本の糸b、dを1ウエール〜複数ウエール分だけコース方向にずらせて編成することと、吸放湿性に優れた紡績糸(伸縮量小)b1、d1と嵩高加工糸(伸縮量大)b2、d2との伸縮量差を利用することとの併用によってパイルCを形成させているため、これら2本の糸b、dをコース方向にずらせるウエール数を多くして比較的大きいパイルCを形成することが可能となる。
これによって、編地がコース方向に詰まることを少なくすることができ、その分、地厚となることが軽減され、通気性の低下も防止でき、蒸れを少なくすることができる。しかも、パイルCは、吸放湿性に優れた紡績糸b1、d1で形成させているため、吸湿性に優れ、乾燥速度の向上も図れるため、べとつきをなくして、肌触りを良好とできる。
【0014】
さらに、前記第1コース1から第4コース4を1サイクルとする編み組織の反復で主要部Bが編成されているため、糸種の割りに薄く軽くでき、細い糸でも透けず、冷え性対策に優れた下半身用衣類Aを提供することができる。なお、これを数サイクル分、例えば、2サイクル繰り返し、次の数サイクル、例えば、2サイクルを同組織とし、数ウエール分横にずらして編成するというようなパターンとしてもよい。
本発明に係る下半身用衣類Aの実施形態は、以上であるが、本発明は、この実施形態にのみ制約されるものではなく、種々変更して実施することができる。例えば、第2コース及び第4コースのタック編み部分では、2本の糸b、dをコース方向にずらせることなく編成してもよい。また、パンツの他、タイツ、パンティストッキング、靴下類、その他の下半身用衣類に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る下半身用衣類の主要部の編み組織図である。
【図2】パンツに適用した本発明の下半身用衣類の実施例図である。
【符号の説明】
【0016】
1 第1コース
2 第2コース
3 第3コース
4 第4コース
A 下半身用衣類
B 主要部
C パイル
a 第1コースの複合糸
b 第2コースの2本の糸
b1 吸放湿性に優れた紡績糸
b2 嵩高加工糸
c 第3コースの複合糸
d 第4コースの2本の糸
d1 吸放湿性に優れた紡績糸
d2 嵩高加工糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性糸を含む複合糸で平編みした第1コースと、吸放湿性に優れた紡績糸に嵩高加工糸を引き揃えた2本の糸でタック編みした第2コースと、弾性糸を含む複合糸で平編みした第3コースと、吸放湿性に優れた紡績糸に嵩高加工糸を引き揃えた2本の糸、又は、嵩高加工糸同士を引き揃えた2本の糸でタック編みした第4コースとを1サイクルとする編み組織を反復して編成された主要部を備えており、前記第2コース及び第4コースは、前記2本の糸を添え糸編み方式で給糸してタック編みし、しかも、前記第2コース及び第4コースのタック編み部分では前記2本の糸を1ウエール〜複数ウエール分だけコース方向にずらせて編成、若しくは、ずらせることなく編成し、この編成と前記第2コース及び第4コースの2本の糸の伸縮量差により吸放湿性に優れた紡績糸を主要部の内面側にループ状に突出させて編成してあることを特徴とする下半身用衣類。
【請求項2】
前記第2コースは、1×3タック編みで編成されており、また、前記第4コースは、1×1タック編み、又は、1×3タック編みで編成されていることを特徴とする請求項1に記載の下半身用衣類。
【請求項3】
前記第1コース及び第3コースの複合糸は、ポリウレタン等の弾性糸にウーリーナイロン等の嵩高加工糸をカバリングした糸で構成されており、また、前記第2コース及び第4コースの吸放湿性に優れた紡績糸は、綿等の天然繊維、レーヨンやポリエステル等の人造繊維の単独又は複合紡績糸で構成されており、さらに、前記吸放湿性に優れた紡績糸に引き揃えられる嵩高加工糸は、ウーリーナイロン等の嵩高加工糸で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の下半身用衣類。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−161868(P2009−161868A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340208(P2007−340208)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】