説明

下塗剤、コーティング方法および接着構造体

【課題】各種基材に対するコーティング剤の接着性を高める下塗剤およびコーティング方法を提供する。
【解決手段】コーティング剤を塗布する際の下塗剤であって、ヒドロキシカルボン酸を有効成分とする、プラスチック、金属、モルタル、コンクリート、紙、木などの基材の表面に塗布して基材に対するコーティング剤の接着性を高める下塗剤、ヒドロキシカルボン酸を有効成分とする下塗剤を基材表面に塗布した後に、コーティング剤を塗布、乾燥するコーティング方法およびその接着構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下塗剤、コーティング方法および接着構造体に関し、詳しくは、プラスチック、金属、モルタル、コンクリート、紙、木などの基材の表面に塗布して基材に対するコーティング剤の接着性を高める下塗剤、コーティング方法およびその接着構造体に関する。本発明の下塗剤は、積層体、多層構造体、塗装板、シール材、防水材などの接着構造体の製造に有用である。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種プラスチックフィルムの積層体、プラスチックフィルムとアルミ等の金属箔またはプラスチックベースの金属蒸着フィルムとの多層構造体、金属基材にコーティング層を設けた塗装板や金属缶などの製造の際には、各種の接着剤が使用されている。さらに、自動車のガラスとボディーを接着するダイレクトグレージング用シーリング材、建築用の塗料、コーティング剤、目地止めシーリング材、モルタルやコンクリート床上に設ける防水材などの使用の際にも、その機能に従い各種の接着剤が使用されている。
【0003】
上記の接着剤として、エステル結合を介して分子鎖中にカルボキシル基を有するポリオールとポリイソシアネート硬化剤から成る2液硬化型接着剤、ポリオールと数平均分子量200〜5000の特定のジヒドロキシカルボン酸とポリイソシアネート硬化剤とから成る2液型のドライラミネート用接着剤、ポリオールとピロメリット酸無水物の様な多塩基酸無水物とポリイソシアネート硬化剤とから成る複合ラミネート用接着剤が知られている。
【特許文献1】特開平3−281589号公報
【特許文献2】特開平8−183943号公報
【特許文献3】特開昭61−47775号公報
【0004】
しかしながら、上記の接着剤は、各成分の配合条件がシビアであったり、高温で処理しないと優れた接着性を得ることができないという問題がある。また、基材の種類によっては十分な接着性を発揮するとは言えず、使用用途が限られており、汎用性が乏しいものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、各種基材に対するコーティング剤の接着性を高める下塗剤およびコーティング方法を提供するものである。
【0006】
本発明の他の目的は、各種基材に対するコーティング剤の接着性が高められた接着構造体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討を重ねた結果、ヒドロキシカルボン酸を有効成分とする下塗剤を基材表面に塗布した後に、コーティング剤を塗布すると、基材に対するコーティング剤の接着性が格段に向上すると共に、安定した良好な接着性を得ることが出来るとの知見を得、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その第1の要旨は、コーティング剤を塗布する際の下塗剤であって、ヒドロキシカルボン酸を有効成分とする下塗剤に存する。
【0009】
本発明の第2の要旨は、ヒドロキシカルボン酸を有効成分とする下塗剤を基材表面に塗布した後に、コーティング剤を塗布、乾燥するコーティング方法に存する。
【0010】
本発明の第3の要旨は、ヒドロキシカルボン酸を有効成分とする下塗剤を基材表面に塗布し、次いで、コーティング剤を塗布、乾燥することにより得られる接着構造体に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各種基材に対するコーティング剤の接着性を高めると共に、安定した良好な接着性を有する接着構造体を形成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に係わるコーティング剤を塗布する際の下塗剤は、ヒドロキシカルボン酸を有効成分とし、溶媒として有機溶剤または水を含有する。そして、当該下塗剤は、任意成分として、造膜成分であるバインダーを含有してもよい。
【0013】
本発明において使用するヒドロキシカルボン酸としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸などのジメチロールアルカン酸類、グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン酸、2−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸、2−エチル−2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシプロパン酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、リンゴ酸などの化合物、これらの化合物にε-カプロラクトンなどのラクトン類を付加して得られる化合物、ポリカルボン酸無水物とポリオールとの反応物、ポリカルボン酸とポリオオールの脱水反応物などが挙げられる。
【0014】
これらの中で、工業製品の入手の容易さ及びコーティング剤の硬化剤としてポリイソシアネートを使用した際の反応性の点から、ジメチロールアルカン酸が好ましく、更に、樹脂や有機溶剤に対する溶解性の点から、ジメチロールブタン酸がより好ましい。なお、上記のジメチロールアルカン酸の製造方法は、特に限定されず、例えば、アルデヒド類をアルドール縮合と酸化反応することによって製造される。
【0015】
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、エタノール、イソプロピルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤、セロソルブ類、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、メチレンジクロライド等が挙げられる。これらの溶剤は、単独または2種以上混合して使用してもよい。
【0016】
また、有機溶剤として、フタル酸エステル系エステル、トリメリット酸系エステル、アジピン酸系エステル等の脂肪族二塩基酸エステル、クエン酸系エステル、マレイン酸系ポリエステル、リン酸系エステル、エポキシ系エステル、パラフィン系エステル等の可塑剤も使用できる。
【0017】
下塗剤中のヒドロキシカルボン酸の濃度は、各種基材に対するコーティング剤の接着性を高めることが出来れば特に限定されないが、通常0.0001〜50重量%である。
【0018】
バインダーとしては、後述する合成樹脂および/またはポリオール等が挙げられる。バインダーの配合割合は、バインダーとヒドロキシカルボン酸との合計固形分量において、通常0〜80重量%、好ましくは0〜70重量%である。
【0019】
本発明において使用されるコーティング剤としては、通常のコーティング剤に限定されず、コーティング操作が含まれる限り、例えば、接着剤、塗料、印刷用インキなどを包含する概念で、例えば、活性水素とポリイソシアネートとの反応を利用するウレタン系コーティング剤の他、全てのコーティング剤を包含する。
【0020】
コーティング剤に使用される合成樹脂は、塗料、接着剤の業界で一般的に使用される材料であれば限定されず、分子構造中に活性水素を有していても、有していなくてもよい。
【0021】
活性水素を有していてもよい合成樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、などの分子内に活性水素原子を有する合成樹脂が挙げられる。分子内に活性水素原子を有していない合成樹脂としては、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂などの合成樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂であってもよい。また、紫外線や電子線などによって硬化する樹脂も使用できる。これらの合成樹脂の中、ポリウレタン樹脂が好ましい。なお、活性水素を有していてもよい合成樹脂には、イソシアネート化合物が必ずしも必要ではない。例えば、エポキシ樹脂の場合は、エポキシ樹脂を硬化し得る1級、2級及び3級アミン化合物、酸無水物、カルボン酸化合物、アミド化合物などを使用して硬化した樹脂、アルキッド樹脂を含むポリエステル樹脂の場合は、メラミン樹脂などで硬化した樹脂、アクリル樹脂の場合は、酸無水物やエポキシ化合物で硬化した樹脂も使用できる。
【0022】
合成樹脂の数平均分子量は、通常100〜2,000,000、好ましくは500〜1,000,000である。数平均分子量が100未満の場合は、造膜性が悪く、硬化塗膜の強度などの物性が不十分である。また、数平均分子量が2,000,000を越える場合は、合成樹脂の有機溶剤への溶解性低下に伴い、ポリイソシアネート硬化剤との相溶性が悪くなり、良好な接着性を得るのが困難である。
【0023】
合成樹脂は、固体、無溶剤の液体、溶液、分散液、ゾル、粉体などの如何なる形態でも使用できる。溶液、分散液、ゾルの場合、樹脂の媒体は有機溶剤でも水でもよい。そして、好ましい形態は、塗膜形成の反応の際は、液状であることが必要であるため、溶液、分散液、ゾル、無溶剤液体樹脂などの液状である。合成樹脂の固形分含量は、通常10〜100重量%、好ましくは20〜90重量%である。
【0024】
合成樹脂としては、有機溶剤中または水中で原料を反応または重合した樹脂を使用する。また、バルク反応または重合した樹脂、または、水中で乳化重合、懸濁重合などにより得られた樹脂を無溶剤でまたは有機溶剤に溶解して使用する。
【0025】
合成樹脂としてのポリウレタン樹脂は、フォーム、注型用エラストマー、シール材、防水材、溶液型樹脂などの何れの形態のものであってもよい。中でも、有機溶剤に溶解した溶剤型ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0026】
溶剤型ポリウレタン樹脂を使用したウレタン系コーティング剤としては、通常、以下の1液型、2液型が挙げられる。
【0027】
1液型コーティング剤としては、次の2つのタイプがある。(1)活性水素を有していてもよい合成樹脂および/またはポリオールとブロック型ポリイソシアネート硬化剤を無溶剤でまたは有機溶剤に溶解して成るコーティング剤が挙げられる。当該1液型コーティング剤は、所定の温度、例えば、通常80〜200℃に加熱して使用する。(2)有機ポリイソシアネートとポリオールとの反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーから成るコーティング剤が挙げられる。当該1液型コーティング剤は、通常、常温以上の温度で湿気硬化させて使用される。
【0028】
2液型コーティング剤としては、活性水素を有していてもよい合成樹脂および/またはポリオールを無溶剤でまたは有機溶剤に溶解して成るA液とブロック型またはブロックされていないポリイソシアネート硬化剤を無溶剤でまたは有機溶剤に溶解して成るB液とから成るコーティング剤が挙げられる。当該2液型コーティング剤は、A液とB液とを混合して、常温〜200℃の温度で使用する。
【0029】
溶剤型ポリウレタン樹脂は、有機ポリイソシアネート、ポリオール、必要に応じ鎖延長剤および粘度調節剤から製造される。
【0030】
有機ポリイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4´-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、TDIの水素添加物などが挙げられる。これらは単独または2種以上混合して使用してもよい。
【0031】
ポリオールとしては、1分子中に水酸基を2個または2個以上有し、かつ、数平均分子量200〜10,000の化合物で、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。具体的に、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0032】
ポリエステルポリオールとしては、低分子量ジオールまたは低分子量トリオール等と二塩基酸との重縮合より得られる化合物、低分子量ジオールまたは多価アルコールを開始剤として、ポリε−カプロラクトン、ポリβ−メチル−δ−バレロラクトン等の開環反応により得られる化合物などが挙げられる。上記の低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられ、上記の低分子量トリオールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられ、上記の二塩基酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。
【0033】
ポリカーボネートポリオールとしては、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール系ポリカーボネートポリオール、炭素数4〜6の混合ジオール系ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。ポリブタジエンポリオールとしては、1,4−ポリブタジエンと1,2−ポリブタジエンからなるポリオールが挙げられる。水添ポリブタジエンポリオールとしては、ポリブタジエンポリオールを水素添加しパラフィン骨格を持った化合物が挙げられる。
【0034】
鎖延長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチルペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の短鎖ジオール、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジン等のジアミン、トリメチロールプロパン、グリセリン等のトリオール、水などが挙げられる。これらは単独または2種以上混合して使用してもよい。また、上記の分子量または粘度調節剤としては、モノアルコール、モノアミン、アルカノールアミンが挙げられる。
【0035】
ポリウレタン樹脂の製造は、有機ポリイソシアネートのNCO基とポリオールのOH基の比率を当量比で通常1.1:1〜15:1とし、NCO基とポリオールおよび鎖延長剤の合計したOH基の比率を当量比で通常1:1〜1:1.5として、有機溶剤中でジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の有機スズ化合物またはトリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン化合物などの触媒存在下または非存在下、20〜120℃の温度で行う。この様にして得られた溶剤型ポリウレタン樹脂の平均分子量は、通常5,000〜500,000であり、かつ、得られるポリウレタン樹脂溶液の固形分は、通常15〜60重量%である。
【0036】
イソシアネート基末端プレポリマーの製造は、有機ポリイソシアネートのNCO基とポリオールのOH基の比率を当量比で通常1.1:1〜15:1とし、有機溶剤存在下または非存在下、上記触媒存在下または非存在下、20〜120℃の温度で行う。この様にして得られたイソシアネート基末端プレポリマーの平均分子量は、通常200〜100,000であり、かつ、固形分は、通常15〜100重量%である。
【0037】
前記のブロック型ポリイソシアネート硬化剤としては、前記の有機ジイソシアネートと短鎖ジオールまたはトリオールとの末端イソシアネート基アダクト体、有機ジイソシアネートの二量体または三量体、有機ジイソシアネートのビュレット体、または、それらの末端イソシアネート基をオキシム化合物またはフェノール化合物でブロックした化合物などの無溶剤型、有機溶剤溶液または可塑剤溶液としたものが挙げられる。
【0038】
また、1液型、2液型コーティング剤にはヒドロキシカルボン酸を含有させてもよい。その場合、ヒドロキシカルボン酸の配合割合は、合成樹脂および/またはポリオールの固形分に対して、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。ヒドロキシカルボン酸の量が0.1重量%未満の場合は、接着性の付与効果が不十分であり、20重量%を越える場合は、有機溶剤に対する溶解性、合成樹脂および/またはポリオールとの相溶性が悪くなる。また、必要に応じヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基を前記3級アミン等で中和することも出来る。ポリイソシアネート硬化剤の配合割合は、合成樹脂および/またはポリオールが含有する活性水素基を水酸基として、合成樹脂および/またはポリオール及びヒドロキシカルボン酸が有する全水酸基量に対し、固形分当たりの当量比として、通常NCO/OH=0.5/1〜20/1、好ましくは1/1〜10/1である。
【0039】
コーティング剤は、必要により、各種顔料、着色剤、酸化防止剤、光安定剤、硬化促進触媒などの添加剤を含有してもよい。
【0040】
上記の下塗剤が適用される基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン及びその表面処理物、ポリエステル及びその表面処理物、ポリスチレン、塩化ビニル、ナイロン、ABS、ポリカーボネート、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂などのプラスチック及び金属蒸着プラスチックが挙げられる。また、鋼およびその表面処理物、銅、アルミニウム等の金属、プレコートメタル、電着塗装板、ガラス、セラミックス、モルタル、コンクリート、紙、木などが挙げられる。
【0041】
本発明のコーティング方法は、ヒドロキシカルボン酸を有効成分とする下塗剤を基材表面に塗布した後に、コーティング剤を塗布、乾燥する方法である。そして、ヒドロキシカルボン酸を有効成分とする下塗剤を基材表面に塗布する方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
【0042】
(1)ヒドロキシカルボン酸を有機溶剤または水に溶解した下塗剤を基材表面に塗布する。(2)ヒドロキシカルボン酸を造膜成分である合成樹脂および/またはポリオールのバインダー成分と共に、有機溶剤または水に溶解した下塗剤を基材表面に塗布する。
【0043】
ヒドロキシカルボン酸の基材表面への塗布量は、1m当り通常0.001〜100gであり、塗布量が1m当り0.001g未満の場合は、十分な接着性向上の効果が得られない。他方、塗布量が1m当り100gを超える場合は、接着界面の強度が低下し好ましくない。
【0044】
下塗剤の塗布方法としては、従来公知の各種の方法を適宜採用することが出来る。例えば、刷毛塗り、ロール塗り、ブレード類、バーコーター、流し塗り、スプレー塗装、浸漬法などが挙げられる。また、ヒドロキシカルボン酸溶液が塗布された基材の乾燥条件は、固形分や溶剤の種類によって異なるが、通常は20〜150℃の温度で5秒〜48時間処理する。
【0045】
次いで、下塗剤が塗布された基材にコーティング剤を塗布して乾燥する。コーティング剤の塗布方法としては、上述の各種の方法を採用することが出来る。コーティング剤の塗布量は、樹脂固形分として、通常0.5〜200g/m2である。コーティング剤が塗布された基材の乾燥条件は、樹脂固形分や溶剤の種類によって異なるが、通常20〜170℃の温度で5秒〜48時間処理する。
【0046】
本発明の接着構造体は、基材表面にヒドロキシカルボン酸を主成分とする下塗剤を塗布した上に、コーティング剤を塗布し、乾燥して得られる。得られた乾燥塗膜は、塗膜の表面に指を触れてもべとつきがない、所謂、タックフリー(指触乾燥)または半硬化の状態の塗膜から完全に硬化した塗膜である。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下、「部」とは「重量部」、「%」とは「重量%」を示す。
【0048】
実施例1:
ジメチロールブタン酸1部をテトラヒドロフラン100部に溶解させて均一な下塗剤を得た。200μmのドクターブレードを使用して幅70mm、長さ70mm、厚さ20mmのモルタル基材に塗布量として2g/mの割合で得られた下塗剤を塗布し、20℃で1時間乾燥した後、デスモフェン1700(住化バイエルウレタン社製、ポリエステルポリオール、平均分子量2538、当量1269g/OH)100部をメチルエチルケトン42.9部に均一に溶解したA液と、B液としてのマイテック(商品名)GP105A(三菱化学社製、TDI/トリメチロ−ルプロパンアダクト体ポリイソシアネート硬化剤、固形分75%、酢酸エチル溶液、当量321g/NCO)25.3部とを混合した2液型コーティング剤(NCO/OH=1/1当量比)を200μmの厚さとなる様に塗布し、80℃で1時間乾燥した後、ナイロン不織布(ユニチカ社製、ナイエースP0703WTO、厚さ0.38mm)を貼り合わせ24時間硬化した。次いで、20℃、50%RHの環境に1日放置した後、不織布を25mm幅に切断し、引張試験機(オリエンテック社製、テンシロンRTM-500)を使用して基材との接着性を剥離試験(50mm/分)で評価した。その結果、剥離強度は2.5Kg/25mmであり、接着性は良好であった。
【0049】
比較例1:
ジメチロールブタンから成る下塗剤を基材に塗布せず、基材に直接2液型コーティング剤を塗布した以外は、実施例1と同様に塗布し、接着試験片を作成し、接着性を評価した。その結果、剥離強度が0.8Kg/25mmであり、接着性は低かった。
【0050】
実施例2:
基材としてナイロン6フィルム(厚さ0.3mm)を使用し、70mm×150mmに切断した。ジメチロールブタン酸1部をテトラヒドロフラン100部に溶解させて均一な下塗剤を得た。200μmのドクターブレードを使用して基材に塗布量として2g/mの割合で得られた下塗剤を塗布し、20℃で1時間乾燥した後、PTMG2000(三菱化学社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、平均分子量2000、当量1000g/OH)100部をメチルエチルケトン25.0部に均一に溶解したA液と、B液としてのマイテック(商品名)NY215A(三菱化学社製、イソホロンジイソシアネート/トリメチロ−ルプロパンアダクト体ポリイソシアネート硬化剤、固形分75%、酢酸エチル溶液、当量412g/NCO)41.2部とを混合した2液型コーティング剤(NCO/OH=1/1当量比)を実施例1と同様に塗布し、接着試験片を作成し、接着性を評価した。その結果、剥離強度は3.3Kg/25mmであり、接着性は良好であった。
【0051】
比較例2:
下塗剤を基材に塗布せず、基材に直接2液型コーティング剤を塗布した以外は、実施例2と同様に塗布し、接着試験片を作成し、接着性を評価した。その結果、剥離強度が1.2Kg/25mmであり、接着性は低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング剤を塗布する際の下塗剤であって、ヒドロキシカルボン酸を有効成分とすることを特徴とする下塗剤。
【請求項2】
ヒドロキシカルボン酸がジメチロールアルカン酸である請求項1に記載の下塗剤。
【請求項3】
ジメチロールアルカン酸がジメチロールブタン酸である請求項2に記載の下塗剤。
【請求項4】
ヒドロキシカルボン酸を有効成分とする下塗剤を基材表面に塗布した後に、コーティング剤を塗布、乾燥することを特徴とするコーティング方法。
【請求項5】
ヒドロキシカルボン酸がジメチロールアルカン酸である請求項4に記載のコーティング方法。
【請求項6】
ジメチロールアルカン酸がジメチロールブタン酸である請求項5に記載のコーティング方法。
【請求項7】
ヒドロキシカルボン酸を有効成分とする下塗剤を基材表面に塗布し、次いで、コーティング剤を塗布、乾燥してなることを特徴とする接着構造体。
【請求項8】
ヒドロキシカルボン酸がジメチロールアルカン酸である請求項7に記載の接着構造体。
【請求項9】
ジメチロールアルカン酸がジメチロールブタン酸である請求項8に記載の接着構造体。

【公開番号】特開2006−2037(P2006−2037A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179977(P2004−179977)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000230652)日本化成株式会社 (85)
【Fターム(参考)】