説明

下層組成物および下層を像形成する方法

【課題】表面特性をリソグラフィ的に変え、その上の自己組織化層のパターン形成方法の提供。
【解決手段】酸分解可能基、アタッチメント基、および官能基を含む酸感受性コポリマーと光酸発生剤とを含む下層220aの部分を照射し、前記酸分解可能基は、下層の照射部分において光酸発生剤から生じた酸と反応して、下層220aの表面に極性領域を形成する。前記極性領域はパターンの形状および寸法を有している。下層220aの表面上に自己組織化層250bを形成する。前記自己組織化層250bはブロックコポリマーを含み、前記ブロックコポリマーは、極性領域に対して親和性を有し、極性領域に対して整列する第1のドメインを形成する第1のブロックと、前記第1のドメインの隣に整列する第2のドメインを形成する第2のブロックとを有している。次に第1のドメインもしくは第2のドメインのいずれかを除去して、下にある下層220aの部分を露出させる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
この出願は2010年10月4日に出願された米国仮出願第61/389,527号のノンプロビジョナルであり、その仮出願の内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
ブロックコポリマーはフォトリソグラフィプロセスを必要とせずにパターンを形成する誘導自己組織化(directed self−assembly)プロセスに使用されうる。ブロックコポリマーは中性および極性領域を有する中性またはパターン形成された表面上で組織化することによりパターンを形成することができる。このような中性もしくはパターン形成された表面はポリマーブラシ化層の使用によって利用可能にされうる。
【0003】
ポリマーブラシは、例えば、半導体材料から形成された基体の表面に固定されたポリマー鎖である。この表面は望まれる組成を有するポリマーブラシ前駆体を使用して、所望の厚さおよび表面エネルギーに反応的に改変される。ランダムコポリマー下層の組成は所望の中性表面を提供するように変えられる。
【0004】
(異なる重合メカニズムが必要とされる、またはブラシコポリマーの組成ではないなどの)各ブロックの繰り返し単位のランダムコポリマーを合成するのは実現不可能な、自己組織化が可能なブロックコポリマーについては、ブラシコポリマーにおける末端基官能化もしくは反応性基含有モノマーの組み込みが行われてきた(例えば、P.Mansky,Y.Liu,E.Huang,T.P.Russell,C.Hawker,”Controlling polymer surface interaction with random copolymer brushes(ランダムコポリマーブラシとのポリマー表面相互作用の制御)”、Science、275、1458(1997)を参照)。ブラシコポリマーへのこのような組成の改変はグラフト化のための官能性部位を提供するように設計される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】P.Mansky,Y.Liu,E.Huang,T.P.Russell,C.Hawker,”Controlling polymer surface interaction with random copolymer brushes(ランダムコポリマーブラシとのポリマー表面相互作用の制御)”、Science、275、1458(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、表面極性をリソグラフィ的に変え、よってその面上に自己組織化層が形成されうるパターン形成された面を形成するように、ブラシポリマー組成を調節することの当該技術分野における開示はない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態においては、酸分解可能基、アタッチメント基および官能基を含む酸感受性コポリマーと、光酸発生剤とを含む下層の一部分を照射する工程、前記アタッチメント基は基体の親水性表面に共有結合されているか、架橋されてポリマー間架橋を形成しているか、または基体の表面に共有結合されかつ架橋されてポリマー間架橋を形成しており、前記酸分解可能基は下層の照射部分で光酸発生剤から発生した酸と反応して下層の表面に極性領域を形成し、前記極性領域はパターンの形状および寸法を有する;
下層の表面上に自己組織化層を形成する工程、前記自己組織化層は極性領域に対する親和性を有する第1のブロックと、極性領域に対する親和性が第1のブロックよりも低い第2のブロックとを有するブロックコポリマーを含み、第1のブロックは極性領域に対して整列する第1のドメインを形成し、および第2のブロックは第1のドメインの隣に整列する第2のドメインを形成する;並びに
第1のもしくは第2のドメインのいずれかを除去して下にある下層の部分を露出させる工程;
ことを含むパターンを形成する方法の提供を通じて、先行技術の欠点は克服され、かつ追加の利点が提供される。
【0008】
別の実施形態においては、下層は酸分解可能基、アタッチメント基および官能基を含む酸感受性コポリマーと、光酸発生剤とを含み、前記アタッチメント基は基体の親水性表面に共有結合されているか、架橋されてポリマー間架橋を形成しているか、または基体の親水性表面に共有結合されかつ架橋されてポリマー間架橋を形成しており、前記酸分解可能基はエステル基、アセタール基、ケタール基、ピロカルボナート基または前記酸分解可能基の少なくとも1種を含む組み合わせである。
【0009】
別の実施形態においては、自己組織化多層膜は下層および自己組織化層を含み、前記下層は酸分解可能基、アタッチメント基および官能基を含む酸感受性コポリマーと、光酸発生剤とを含み、前記下層はアタッチメント基を介して、基体の親水性表面に配置および共有結合されているか、架橋されてポリマー間架橋を形成しているか、または基体の表面に共有結合されかつ架橋されてポリマー間架橋を形成しており、前記下層の表面の部分は分解した酸分解可能基を有し、下層のパターン形成された表面を形成しており、前記自己組織化層は下層のパターン形成された表面上に配置されており、前記自己組織化層は分解した酸分解可能基を有する下層の表面の部分に対する親和性を有する第1のブロックと、分解した酸分解可能基を有する下層の表面の部分に対する親和性が第1のブロックよりも低い第2のブロックとを有するブロックコポリマーを含み、第1のブロックは分解した酸分解可能基を有する下層の部分に整列した第1のドメインを形成しており、並びに第2のブロックは第1のドメインの隣に並んで整列した下層の表面上の第2のドメインを形成している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】図1A〜1Iは光酸発生剤を含む感光性下層において酸が発生している一実施形態における、下層上にパターンを形成する典型的な方法を示す。
【図1B】図1A〜1Iは光酸発生剤を含む感光性下層において酸が発生している一実施形態における、下層上にパターンを形成する典型的な方法を示す。
【図1C】図1A〜1Iは光酸発生剤を含む感光性下層において酸が発生している一実施形態における、下層上にパターンを形成する典型的な方法を示す。
【図1D】図1A〜1Iは光酸発生剤を含む感光性下層において酸が発生している一実施形態における、下層上にパターンを形成する典型的な方法を示す。
【図1E】図1A〜1Iは光酸発生剤を含む感光性下層において酸が発生している一実施形態における、下層上にパターンを形成する典型的な方法を示す。
【図1F】図1A〜1Iは光酸発生剤を含む感光性下層において酸が発生している一実施形態における、下層上にパターンを形成する典型的な方法を示す。
【図1G】図1A〜1Iは光酸発生剤を含む感光性下層において酸が発生している一実施形態における、下層上にパターンを形成する典型的な方法を示す。
【図1H】図1A〜1Iは光酸発生剤を含む感光性下層において酸が発生している一実施形態における、下層上にパターンを形成する典型的な方法を示す。
【図1I】図1A〜1Iは光酸発生剤を含む感光性下層において酸が発生している一実施形態における、下層上にパターンを形成する典型的な方法を示す。
【図2】図2は、円筒形ドメインを有するようにパターン形成された、PAGを含まないブラシ層およびPAGを含む像形成可能なマット層の双方における典型的なパターン形成された自己組織化ブロックコポリマー層の原子間力顕微鏡(AFM)像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の上述のおよび他の目的、特徴および利点は、添付の図面と共に示される以下の詳細な記載から明らかである。
【0012】
本明細書において開示されるのは新規のブラシ(brush)コポリマー下層であり、場合によっては本明細書において、ブロックコポリマーの誘導自己組織化のための、単に下層と称される。この下層は酸分解可能基、アタッチメント基および官能基を含むランダムコポリマーと光酸発生剤とを含む。下層の表面上に形成される自己組織化ブロックコポリマーのと適合するように表面エネルギーを調節するようにモノマーの比率は調節可能である。下層コポリマーは半導体基体、例えば、天然酸化物もしくは熱で生じた酸化物を伴うシリコン、二酸化チタン層などをはじめとする基体の親水性表面に結合されて下層を形成することができ、ポリマー間架橋で架橋されてマット(mat)層を形成することができ、または表面結合および架橋の双方を形成して、架橋した表面結合マット層を提供することができる。
【0013】
下層に光酸発生剤を含ませ、下層を直接照射して下層の照射領域に酸を発生させ、この酸が下層の酸感受性コポリマーと反応することにより下層にパターンが形成される。下層の露光パターンは接近した(密な、または半密な)間隔の線、破線もしくは点のフィーチャ、間隔の広い線、破線もしくは点のまばらなパターン、または照射されたフィーチャの組み合わせであり得る。
【0014】
本方法はパターン形成された下層をブロックコポリマーで上塗りし、ブロックコポリマーをアニールすることをさらに伴い、その結果、1つのブロック相は酸で分解された官能基を含む下層の脱保護部分上に整列するように分かれる。次いで、ブロックコポリマーのブロックは、例えば、熱、光化学、溶媒、もしくはプラズマ方法を用いて除かれて、パターンを形成する。
【0015】
下層は酸感受性コポリマーを含む。酸感受性コポリマーは構成部分として、酸分解可能基、アタッチメント基および官能基を含む。
【0016】
構成基の相対的比率は、表面エネルギーおよび濡れ性をはじめとするこれらの基の特性の望ましいバランスが脱保護前の酸感受性コポリマーについて、よって脱保護の前の下層について、または下層が脱保護されない領域において得られるように選択される。特に、酸感受性コポリマーが脱保護されていない場合には、酸感受性コポリマーを含む下層はブロックコポリマーに基づく自己組織化層に向かう中性表面エネルギーを有する。本明細書において使用される場合、「中性」とは、(脱保護前の、もしくは脱保護が起こらなかった領域における)下層の表面エネルギーがブロックコポリマーのと同等であることを意味する。さらに、構成基の割合は、脱保護前の下層の層中性度、および脱保護後の酸感受性コポリマーの領域の極性をはじめとする特性の望ましいバランスが達成され、その結果パターン形成された表面上に配置されたブロックコポリマーがその表面に対して整列したブロックによって相分離したドメインを形成するであろうように選択される。
【0017】
酸分解可能基は充分な活性の酸と接触することにより化学的に分解されうる基である。ある実施形態においては、酸分解可能基はエステル基、アセタール基、ケタール基、ピロカルボナート基もしくは前記酸分解可能基の少なくとも1種を含む組み合わせを含むC1−30酸分解可能基である。あるいは、酸分解可能基は架橋剤もしくは架橋可能基でありうる。
【0018】
特定の実施形態においては、酸分解可能基はC4−30ターシャリーアルキルエステルである。典型的には、C4−30ターシャリーアルキル基には、2−(2−メチル)プロピル(「t−ブチル」)、2−(2−メチル)ブチル、1−メチルシクロペンチル、1−エチルシクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−エチルシクロヘキシル、2−メチルアダマンチル、2−エチルアダマンチル、もしくは上述の少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられる。特定の実施形態においては、酸分解可能基はt−ブチル基もしくはエチルシクロペンチル基である。
【0019】
アタッチメント基は基体への結合を形成できる反応性官能基を含む基でありうる。この結合は基体へのイオン性、配位(例えば、金属−配位子結合による)または共有結合でありうる。好ましくは、この結合は共有結合である。アタッチメント基はヒドロキシ、チオール、第一級アミンもしくは第二級アミン置換された直鎖もしくは分岐C1−30アルキル、C3−30シクロアルキル、C6−30アリール、C7−30アルカリール、C7−30アルアルキル、C1−30ヘテロアルキル、C3−30ヘテロシクロアルキル、C6−30ヘテロアリール、C7−30ヘテロアルカリール、C7−30ヘテロアルアルキルまたはこれらの基の少なくとも1種を含む組み合わせでありうる。本明細書において使用される場合、接頭辞「ヘテロ」とは、他に特定されない限りは、炭素でなく水素でない原子、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ホウ素、酸素、窒素、ケイ素もしくはリンをいう。典型的なアタッチメント基には、3−アミノプロピル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピルまたは4−ヒドロキシフェニルが挙げられる。これらの官能基の代わりに、またはこれらの官能基に加えて、他の反応性官能基が含まれることができ、基体の表面への酸感受性コポリマーの結合を容易にすることができる。典型的なアタッチメント基には、モノ−、ジ−およびトリアルコキシシラン基、例えば、3−プロピルトリメトキシシラン(トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリラートと他のモノマーとの共重合により得られる)、グリシジル基(グリシジル(メタ)アクリラートとの共重合により得られる)または反応性ストレインド(strained)環、例えば、ベンゾシクロブタン(「BCB」、例えば、ビニルベンゾシクロブタンとの共重合によって得られる)が挙げられ、この反応性ストレインド環は開環して反応性ジエンを形成することができ、この反応性ジエンが基体の表面上のオレフィン基と反応でき、またはポリマー中の他の開環したBCB基と反応してダイマーを形成できる。本明細書において使用される場合、「(メタ)アクリラート」とはアクリラート、メタクリラートもしくはこれらの組み合わせをいう。
【0020】
酸感受性コポリマーの中性度を調節するために含まれる官能基は、直鎖もしくは分岐C1−30アルキル、C3−30シクロアルキル、C6−30アリール、C7−30アルカリール、C7−30アルアルキル、C1−30ヘテロアルキル、C3−30ヘテロシクロアルキル、C6−30ヘテロアリール、C7−30ヘテロアルカリール、C7−30ヘテロアルアルキル、またはこれらの基の少なくとも1種を含む組み合わせでありうる。官能基は非置換であってよく、またはハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素;ヒドロキシ基;構造−N(R’)(式中、各R’は独立してH、環式もしくは非環式C1−30アルキルもしくはC3−30アリール、または縮合C2−30アルキルもしくはC3−30アリールである)を有するアミノ基;シアノ基;チオール;スルフィド;ケイ素含有基、例えば、C1−30アルキルシランもしくはC6−30アリールシラン;カルボキシル含有基、例えば、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステルもしくはアミド;エーテル;または上述の少なくとも1種を含む組み合わせをはじめとするさらなる官能基で置換されていてもよい。典型的な実施形態においては、官能基はフェニル、4−メトキシフェニル、ヒドロキシフェニル、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、2−ブチル、イソブチル、もしくは上述の少なくとも1種を含む組み合わせであり得る。場合によっては、ペンダント光酸発生剤が酸感受性コポリマー組成物中の官能基としてさらに含まれていてもよい。酸分解可能基、アタッチメント基および官能基は対応する官能化スチレン、オレフィン、ビニルもしくは(メタ)アクリラートモノマーの共重合により組み込まれうると理解される。
【0021】
ある実施形態においては、酸感受性コポリマーは式(1):
【化1】

の構造を有し、式中、Rはターシャリーアルキルエステル基を含むC1−30酸分解可能基であり、Rはヒドロキシ基を含むC1−30アタッチメント基であり、RおよびRは独立して芳香族基もしくはエステル基を含むC1−30官能基であり、R、R、RおよびRは独立してHもしくはC1−10有機基であり、モル分率wおよびxは0.001〜0.999であり、モル分率yおよびzは0から0.9未満であり、モル分率w、x、yおよびzの合計は1である。特定の実施形態においては、モル分率xは0.05〜0.65であり、モル分率yは0.35〜0.95であり、モル分率zは0〜0.90であり、モル分率x、yおよびzの合計は1である。
【0022】
具体的な実施形態においては、酸感受性コポリマーは式(2):
【化2】

の構造を有し、式中、Rはターシャリーアルキルエステル基を含むC1−20酸分解可能基であり、R10はHもしくはC1−30アルキル基であり、R、R、およびRは独立してH、メチル、エチルもしくはフェニルであり、モル分率xは0.05〜0.65であり、モル分率yは0.35〜0.95であり、モル分率zは0〜0.9であり、モル分率x、yおよびzの合計は1である。
【0023】
典型的な実施形態においては、酸感受性コポリマーは式(3):
【化3】

を有し、式中、モル分率aは0.05〜0.65であり、モル分率bは0.35〜0.95であり、モル分率aおよびbの合計は1である。
【0024】
別の典型的な実施形態においては、酸感受性コポリマーは式(4):
【化4】

を有し、式中、モル分率aは0.05〜0.65であり、モル分率bは0.15〜0.75であり、モル分率cは0.20〜0.80であり、モル分率a、bおよびcの合計は1である。
【0025】
別の典型的な実施形態においては、酸感受性コポリマーは式(5):
【化5】

を有し、式中、モル分率aは0.05〜0.65であり、モル分率bは0.15〜0.75であり、モル分率cは0.20〜0.80であり、モル分率a、bおよびcの合計は1である。
【0026】
別の典型的な実施形態においては、酸感受性コポリマーは式(6):
【化6】

の構造を有し、式中、R11はターシャリーアルキルエステル基を含むC1−20酸分解可能基であり、R12はC1−30ヒドロキシ含有基であり、R13はH、C1−10アルキル、もしくはC1−10アルコキシであり、R、R、およびRは独立してH、メチル、エチルもしくはフェニルであり、モル分率xは0.05〜0.65であり、モル分率yは0.35〜0.95であり、モル分率zは0〜0.90であり、モル分率x、yおよびzの合計は1である。
【0027】
典型的な実施形態においては、酸感受性コポリマーは式(7):
【化7】

の構造を有し、式中、モル分率aは0.05〜0.65であり、モル分率bは0.15〜0.75であり、モル分率cは0.2〜0.8であり、モル分率a、bおよびcの合計は1である。
【0028】
別の典型的な実施形態においては、酸感受性コポリマーは式(8):
【化8】

の構造を有し、式中、モル分率aは0.05〜0.65であり、モル分率bは0.15〜0.75であり、モル分率cは0.2〜0.8であり、モル分率a、bおよびcの合計は1である。
【0029】
別の典型的な実施形態においては、酸感受性コポリマーは式(9):
【化9】

の構造を有し、式中、モル分率aは0.05〜0.65であり、モル分率bは0.15〜0.75であり、モル分率cは0.2〜0.8であり、モル分率dは0.1〜0.6であり、モル分率a、b、cおよびdの合計は1である。
【0030】
下層特性もしくはコーティング特性をはじめとするさらなる特性を与えもしくは増大させるための添加剤が酸感受性コポリマーの溶液中に含まれることができる。添加剤には、追加のポリマー、光酸発生剤、熱酸発生剤、界面活性剤、例えば、フッ素化界面活性剤、ポリアルキレンオキシ界面活性剤、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、およびこれらのコポリマー;可塑剤の溶解速度抑制剤(すなわち、水性塩基に不溶性の化合物);溶解速度向上剤(すなわち、水性塩基に可溶性の化合物);架橋剤;触媒;光硬化剤;接着促進剤;アミンクエンチャー添加剤(例えば、酸拡散を制限するため);または上記添加剤の少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられうる。
【0031】
ある実施形態においては、下層は酸感受性コポリマー組成物を基体表面上に直接配置して、基体への結合(例えば、イオン性、配位もしくは共有)をもたらすことにより形成されるブラシ層である。あるいは、下層は基体に共有結合されているかまたは共有結合されていないマット層である。このマット層は、酸感受性コポリマーに加えて、架橋性成分、および必要な場合には触媒を含むことができる。ある実施形態においては、架橋性成分は架橋剤であり得る。典型的な酸触媒架橋剤には、テトラメトキシメチルもしくはテトラブトキシメチルグリコールウリルのようなアルコキシメチルグリコールウリル架橋剤が挙げられる。架橋剤が酸触媒架橋剤である場合には、p−トルエンスルホン酸のような酸もしくはそのアンモニウム塩、または熱酸発生剤、例えば、p−トルエンスルホン酸のp−ニトロフェニルエステルが含まれうる。あるいは、酸感受性コポリマー自体がさらに、それ自体ともしくはそのポリマー中の別のモノマー上の別の官能基、例えば、ヒドロキシもしくはカルボン酸基と架橋を形成することができるモノマーを含むことができる。典型的なこのような架橋性モノマーには、エポキシ含有モノマー、例えば、上述のような、グリシジル(メタ)アクリラート、もしくはトリアルコキシシラン含有モノマー、例えば、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリラートが挙げられる。追加の成分を必要とするマット層が使用される場合には、酸感受性コポリマーは50〜100重量%、具体的には60〜99重量%、より具体的には70〜95重量%、さらにより具体的には70〜90重量%の量で存在することができる。マット層においても、架橋剤は0〜50重量%、具体的には1〜40重量%、より具体的には5〜30重量%、さらにより具体的には10〜30重量%の量で存在することができる。触媒は、使用される場合には、0.1〜5重量%の量で含まれうる。全ての量はマット層の全固形分量を基準にしている。
【0032】
ある実施形態においては、下層は光酸発生剤をさらに含む。下層は光酸発生剤を含む下層を基体上に配置し、下層にパターンの化学線を照射して露光領域に酸を発生させることによりパターン形成される。
【0033】
この方法においては、下層に化学線を直接照射することは酸感受性基の近くに酸を発生させる。次いで、下層中の酸感受性コポリマーの酸感受性基は、拡散した酸と反応して、パターンの形状および寸法を有する極性領域を下層の表面に形成する。
【0034】
感光層の露光部分で光酸発生剤により生じた酸は固有のpKaを有し、および処理条件下で拡散して下層の酸感受性基と反応して分解するのに充分な下層内での移動度を有する限りは、あらゆる好適な光酸発生剤が下層に含まれうる。
【0035】
よって、光酸発生剤の分解からの光発生酸は3以下、具体的には1以下、さらにより具体的には0以下のpKaを有することができる。光酸発生剤は250℃以下の温度で10分間以下の期間で熱的に安定でもなければならない。
【0036】
感光層に含まれる光酸発生剤は理論的に、副生成物を伴うことなく、好適な波長の光の量子の吸収の際に1当量の酸を発生させることができる。感光層に有用な光酸発生剤にはアリールベースのオニウム塩が挙げられ、例えば、モノ−、ジ−およびトリアリールホスホニウム塩、モノ−およびジアリールヨードニウム塩、スルホナートエステル、例えば、ナジミドスルホナート、芳香族ケトン、例えば、ベンゾイン誘導体、または上述の少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられる。ある実施形態においては、光酸発生剤が下層に含まれる場合には、(例えば、ナジミドスルホナートエステルと比べて)高い熱安定性を有するモノ−、ジ−もしくはトリアリールスルホニウム塩、またはモノ−もしくはジアリールヨードニウム塩のようなアリールベースのオニウム塩が使用される。典型的な光酸発生剤には、メタンスルホン酸、ベンジルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸(トリフル酸)、ペルフルオロブタンスルホン酸、ペルフルオロベンゼンスルホン酸、トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸、ペルフルオロエチルシクロヘキサンスルホン酸、シクロ(1,3−ペルフルオロプロパンジスルホニウム)イミドのような酸のトリフェニルスルホニウム、n−オクチルフェニル(ジフェニル)スルホニウム、およびジ−t−ブチルフェニルヨードニウム塩、もしくはナジミドスルホナートエステル、または上述の少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられる。具体的には、有用な光酸発生剤の非限定的な例には、トリフル酸トリフェニルスルホニウム、ペルフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、o−トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、ペルフルオロベンゼンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、シクロ(1,3−ペルフルオロプロパンジスルホニウム)イミド酸トリフェニルスルホニウム、トリフル酸ジ−t−ブチルフェニルヨードニウム、ペルフルオロブタンスルホン酸ジ−t−ブチルフェニルヨードニウム、o−トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸ジ−t−ブチルフェニルヨードニウム、ペルフルオロベンゼンスルホン酸ジ−t−ブチルフェニルヨードニウム、または上述の少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられる。
【0037】
光酸発生剤は下層中に、下層の全固形分を基準にして0.1〜10重量パーセント(重量%)、具体的には0.5〜8重量%、より具体的には1〜7重量%、およびさらにより具体的には1〜5重量%の量で存在できる。
【0038】
下層は酸感受性コポリマーおよび光酸発生剤を含む溶液を基体と接触させることにより形成される。接触はスピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティングもしくはドクターブレーディングによって行われうる。
【0039】
ある実施形態においては、基体は半導体基体であり、かつ接触はスピンコーティングによる。スピンコーティングは酸感受性ブラシコポリマーの溶液を回転する半導体基体の表面上に分配することを含む。酸感受性コポリマーは膜形成に有用な溶媒中に、スピンコーティングおよび膜形成に有用な濃度で溶解される。典型的な溶媒には、これに限定されないが、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸1−メトキシ−2−プロピル、乳酸エチル、アニソール、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ジアセトンアルコールもしくは上述の少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられうる。溶液中の酸感受性コポリマーの濃度は溶液の全重量を基準にして40重量%以下であることができ、ある実施形態においては、0.1〜30重量%、具体的には0.5〜20重量%、さらにより具体的には1〜10重量%であることができる。
【0040】
ある実施形態においては、下層はスピンコーティングによって適用される。使用される場合には、スピンコーティングのための条件は基体直径および他の要因、例えば、望まれる膜厚さに応じて変化し、望まれる膜厚さはコーティングされる配合物の固形分量および粘度に応じて変化する。スピンコーティングは500〜4000rpm、具体的には800〜3000rpm、より具体的には1000〜2500rpmの回転速度で行われうる。
【0041】
次いで、下層はホットプレート上でのベークによって加熱されて溶媒を除き、膜内の自由体積を低減させることにより膜を凝結させ、そして酸感受性ポリマーを基体に架橋および/または結合させる。膜のベークは50〜200℃、具体的には60〜175℃、より具体的には70〜150℃の温度で行われうる。ベークのための具体的な時間は30秒〜5分間、より具体的には30秒〜3分間、さらにより具体的には30秒〜2分間である。ブラシ層は100〜300℃、具体的には125〜275℃、より具体的には150〜250℃の温度でベークすることによってさらにアニールされうる。アニールのための具体的な時間は5分〜10時間、より具体的には10分〜8時間、さらにより具体的には15分〜6時間である。
【0042】
下層および具体的には酸感受性コポリマーは、加熱されるときに、アタッチメント基と基体との間に結合を形成することにより基体に結合しうる。例えば、酸感受性コポリマーは表面ヒドロキシ基を有する基体に、ヒドロキシ含有アタッチメント基を介して結合して、例えば、基体が二酸化ケイ素を(基体自体として、または熱で生じたもしくは天然の酸化物の層、もしくはスピンオンガラスなどとして)含む場合にはシリルアルコキシド結合を形成することができる。このように結合した下層を有する基体は、次いで、溶媒で洗浄されて、酸感受性コポリマーの残留物を除去する。あるいは、マット層が使用される場合には、酸感受性コポリマーは、直接のポリマー対ポリマー架橋によって、もしくは架橋剤の仲介によって架橋して、ポリマー間架橋を形成する。得られるマット層は基体に結合されていてもよいし、結合されていなくてもよい。
【0043】
光酸発生剤を含む下層はパターンの化学線で照射される。光酸発生剤による酸を生じさせるのに有用な化学線が使用され、下層中に使用される光酸発生剤は使用される放射線波長に対して感受性であることが理解されるであろう。化学線は、例えば、10〜400nmの波長を有する紫外(UV)光であることができ、その具体的な例は、365nmのi線放射線、248nm、193nm、157nmでの深紫外(DUV)放射線、および10〜15nmの極UV放射線;x線;または電子ビーム(e−ビーム)である。
【0044】
具体的な実施形態においては、感光層は光酸発生剤を含むフォトレジストである。フォトレジストは、それぞれ248nmもしくは193nmの波長で照射される、DUVフォトレジストまたは193nmフォトレジストである。
【0045】
感光層もしくは光酸発生剤を含む下層上に形成されるパターンは、密なピッチ、すなわち、ライン幅:スペース幅の比率1以上:1(例えば、1.1:1、1.2:1、1.5:1、2:1など)、1未満:1(例えば、1:1.5)の半密(semi−dense)ピッチ、または1以下:2(例えば、1:3、1:4など)のピッチを有するまばらなパターンを有する規則的なパターンを形成するフィーチャを有することができる。
【0046】
切れ目のない線を使用して得られるであろうような連続パターンを使用するのではなく、破線もしくは点のパターンのような低い解像技術を使用して、下層の中性表面上にまばらなパターンが形成されうる。これらのパターン上にドメインを形成する際に、このドメインは線に対してだけでなく、破線および/または点に対しても整列し、並びに断続的なパターン領域上に形成されるドメインに対してドメインがサイズおよび形状の規則性を伴って整列する能力のせいで、整列したドメインは連続パターン上に形成されるものと同等のパターンを形成することができる。
【0047】
有利なことに、高いラインエッジ粗さおよびライン幅粗さを有する線もしくは破線の使用はアニール中に「自己回復」メカニズムでのドメイン整列において、欠陥を修正することができる。さらに、電子ビームリソグラフィを伴う用途においては、破線および/または点線を描くことは、実線を描くよりもより少ない描画時間しか必要とせず(および/またはより少ないエネルギー量しか必要とせず)、よって、このような非連続線を伴うまばらな化学パターンを製造するためのコストおよび時間はそれぞれ有利に低減されうる。よって、ある実施形態においては、照射されるパターンは破線および/または点を含む非連続であることができる。この破線および/または点の間隔および配置は、非連続パターン上に形成されるドメインが組織化されて、欠陥の発生が最小限にされるドメインの連続パターンを形成しているものである。
【0048】
ある実施形態においては、光発生酸と下層の酸感受性基との間の反応をもたらすための熱処理はホットプレートによって、オーブン/炉によって、または他の加熱方法によって行われうる。ある実施形態においては、ウェハ処理およびコーティングトラックにおいてホットプレート上で加熱することにより熱処理が行われる。ホットプレートによる加熱は空気下で、もしくは不活性雰囲気中で、例えば、窒素もしくはヘリウム下で行われうる。熱処理は250℃以下の周囲温度で、温度および拡散要件に応じて数秒〜数時間の期間で行われることができる。
【0049】
次いで、露光領域において下層と接触している酸は酸感受性コポリマーの酸分解可能基を分解して、パターン形成される下層の極性領域を画定する極性基を形成する。光発生酸に曝露されないパターン形成される下層上の領域(すなわち、照射されずかつ光酸発生剤が分解されなかった下層の領域)は中性のままである。別の実施形態においては、露光領域において下層中で発生した酸は、例えば、架橋することによって中性領域の形成を触媒するように機能することができ、そして未露光領域は極性であってよく、その場合ドメインは未露光領域に整列しうる。
【0050】
次いで、パターン形成された下層の表面上に自己組織化層が形成される。自己組織化層は下層の極性領域に対する親和性を有する第1のブロック、および下層の極性領域に対する親和性を有しない第2の分散(「中性」とも称される)ブロックを有するブロックコポリマーを含む。本明細書において使用される場合、「に対する親和性を有する」とは第1のブロックが極性領域と適合した表面エネルギーであり、かつキャストおよびアニール中に移動性の第1のブロックが選択的に極性領域上に堆積しかつ極性領域に対して整列するように極性領域に引き付けられる。この方法においては、第1のブロックは下層上に第1のドメインを形成し、それは下層の極性領域に対して整列している(すなわち、酸分解可能基の分解によって形成されるパターンに整列している)。同様に、下層の極性領域に対する親和性がより低いブロックコポリマーの第2の分散ブロックは第1のドメインの隣に整列した下層上の第2のドメインを形成する。本明細書において使用される場合、「ドメイン」とは、ブロックコポリマーの対応するブロックによって形成されるコンパクトな結晶質もしくは半結晶質領域であって、この領域はラメラもしくは円筒形であってよく、かつ下層の表面の面に対して垂直で、かつ下にある下層の表面と少なくとも部分的に接触していることを意味する。ある実施形態においては、このドメインは1〜100nm、具体的には5〜75nm、さらにより具体的には10〜50nmの最も短い平均寸法を有しうる。
【0051】
このブロックは概して、あらゆる好適なドメイン形成性ブロックであることができ、このブロックに別の似ていないブロックが結合されうる。ブロックは様々な重合性モノマーから得られることができ、このブロックには、これに限定されないが、ポリオレフィン、例えば、ポリジエン、ポリエーテル、例えば、ポリ(アルキレンオキシド)、例えば、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(ブチレンオキシド)、またはこれらのランダムもしくはブロックコポリマー;ポリ((メタ)アクリラート)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノゲルマン、もしくはFe、Sn、AlもしくはTiをベースにした重合性有機金属モノマーから製造される有機金属ポリマー、例えば、ポリ(オルガノフェニルシリルフェロセン)が挙げられうる。
【0052】
ある実施形態においては、ブロックコポリマーのブロックはモノマーとして、C2−30オレフィンモノマー、C1−30アルコールから生じる(メタ)アクリラートモノマー、無機物含有モノマー、例えば、Fe、Si、Ge、Sn、Al、Tiまたは上述の少なくとも1種を含む組み合わせをベースにしたものを含む。具体的な実施形態においては、ブロックに使用するのに典型的なモノマーには、C2−30オレフィンモノマー、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1,3−ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、ジヒドロピラン、ノルボルネン、無水マレイン酸、スチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−メチルスチレン、もしくはα−メチルスチレンが挙げられることができ;並びに、(メタ)アクリラートモノマーとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、または(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルが挙げられうる。これらのモノマーの2種以上の組み合わせが使用されうる。
【0053】
ホモポリマーである典型的なブロックには、スチレンを用いて製造されたブロック(すなわち、ポリスチレンブロック)、もしくは(メタ)アクリラートホモポリマーブロック、例えば、ポリ(メチルメタクリラート)が挙げられることができ;典型的なランダムブロックには、例えば、ランダムに共重合されたスチレンおよびメタクリル酸メチルのブロック(例えば、ポリ(スチレン−co−メタクリル酸メチル))が挙げられ;並びに、典型的な交互コポリマーブロックには、大抵の条件下で無水マレイン酸が単独重合できないせいで、スチレン−無水マレイン酸2分子繰り返し構造を形成することが知られているスチレンおよび無水マレイン酸のブロック(例えば、ポリ(スチレン−alt−無水マレイン酸))が挙げられうる。このようなブロックは例示的なものであり、限定するものとして見なされるべきではないことが理解される。
【0054】
有用なブロックコポリマーは少なくとも2つのブロックを含み、別個のブロックを有するジブロック、トリブロック、テトラブロックなどのコポリマーであってよく、そのそれぞれのブロックはホモポリマー、またはランダムもしくは交互コポリマーであってよい。典型的なブロックコポリマーには、ポリスチレン−b−ポリビニルピリジン、ポリスチレン−b−ポリブタジエン、ポリスチレン−b−ポリイソプレン、ポリスチレン−b−ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン−b−ポリアルケニル芳香族、ポリイソプレン−b−ポリエチレンオキシド、ポリスチレン−b−ポリ(エチレン−プロピレン)、ポリエチレンオキシド−b−ポリカプロラクトン、ポリブタジエン−b−ポリエチレンオキシド、ポリスチレン−b−ポリ((メタ)アクリル酸t−ブチル)、ポリメタクリル酸メチル−b−ポリ(メタクリル酸t−ブチル)、ポリエチレンオキシド−b−ポリプロピレンオキシド、ポリスチレン−b−ポリテトラヒドロフラン、ポリスチレン−b−ポリイソプレン−b−ポリエチレンオキシド、ポリ(スチレン−b−ジメチルシロキサン)、ポリ(メタクリル酸メチル−b−ジメチルシロキサン)、ポリ((メタ)アクリル酸メチル−r−スチレン)−b−ポリメタクリル酸メチル、ポリ((メタ)アクリル酸メチル−r−スチレン)−b−ポリスチレン、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−r−スチレン)−b−ポリメタクリル酸メチル、ポリ(p−ヒドロキシスチレン−r−スチレン)−b−ポリエチレンオキシド、ポリイソプレン−b−ポリスチレン−b−ポリフェロセニルシラン、または上述のブロックコポリマーの少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられる。
【0055】
ブロックコポリマーは望ましくはさらなる処理を行いやすい全体分子量および多分散度を有する。ある実施形態においては、ブロックコポリマーは10,000〜200,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する。同様に、ブロックコポリマーは5,000〜200,000の数平均分子量(Mn)を有する。ブロックコポリマーは1.01〜6の多分散度(Mw/Mn)も有しうる。ある実施形態においては、ブロックコポリマーの多分散度は1.01〜1.5、具体的には1.01〜1.2、さらにより具体的には1.01〜1.1である。分子量は、MwおよびMnの両方とも、例えば、ユニバーサルキャリブレーション方法を用いたゲル浸透クロマトグラフィおよびポリスチレン標準に対する較正によって決定されうる。
【0056】
ある実施形態においては、ブロックコポリマーは溶液から下層のパターン形成された表面上にスピンキャストされて、下層のその表面上に自己組織化層を形成する。アニーリングプロセスにおいて、ブロックコポリマーは250℃以下の温度に10分以下で加熱されてドメインを形成する。このドメインは、第1のブロックが極性領域に整列した下層上の第1のドメインを形成し、かつ第2のブロックが第1のドメインの隣に整列した下層上の第2のドメインを形成する。下層の照射部分がまばらなパターンを形成し、よって第1および第2のドメインのインターバル間隔よりも大きなインターバルで極性領域の間隔が開けられる場合には、追加の第1のおよび第2のドメインが下層上に形成され、まばらなパターンのインターバル間隔を満たす。追加の第1のドメインは、整列の対象となる極性領域なしでも、その代わりにすでに形成されている第2の(分散)ドメインに対して整列し、かつ追加の第2のドメインは追加の第1のドメインに対して整列する。
【0057】
次いで、第1もしくは第2のドメインのいずれかを除去して、下にある下層の部分を露出させることによりレリーフパターンが形成される。ある実施形態においては、除去工程はウェットエッチング方法、現像もしくはプラズマを使用するドライエッチング方法によって達成される。
【0058】
ある実施形態の典型的な方法が図1A〜1Iに示される。以下に示される実施形態はブラシ層のものであるが、その代わりに、下層は酸感受性コポリマーと架橋剤とを含み、基体に結合されていてもされていなくてもよいマット層であってよいと理解される。図1Aは基体材料101に結合したヒドロキシ基102を有する未改変半導体基体100を示す。ある実施形態においては、ヒドロキシ基102はSi−OH基(この場合、基体はSiOを含む)もしくはTi−OH基(この場合、基体はTiOを含む)のような置換可能なヒドロキシ基である。
【0059】
次いで、ポリマーブラシ(すなわち、酸感受性コポリマー)が共有結合によって基体に結合される。マット層が使用される場合には(示されていない)、マット層は基体の表面に結合されていてよく、または結合されていなくてもよい。
【0060】
図1Bは改変半導体基体210を示し、ここでは、酸感受性基223を有し、かつアルコキシ結合を介して半導体材料211に結合することにより連結されて下層220を形成している酸感受性コポリマー222を含むように半導体材料211は改変されている。本明細書においては場合によって「PAG」と称される光酸発生剤225は下層220内に分配される。PAG225は酸感受性コポリマーと共に溶媒中に含まれ、この溶液が基体に適用される。PAG225は下層溶液中に共に溶解している別個の分子であってよく、または共有結合したもしくはイオン結合した基として酸感受性コポリマー構造中に組み込まれていてよい。
【0061】
下層の堆積は、例えば、酸感受性基223に加えて、ポリマー骨格の末端基として、もしくは酸感受性ポリマーの側鎖の末端基として、少なくとも1つのヒドロキシ基を有するアタッチメント基(示されていない)を含む酸感受性コポリマー(例えば、酸感受性コポリマーはヒドロキシスチレンモノマー、もしくはメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)モノマーをアタッチメント基として含む)の溶液をスピンキャストすることにより達成される。アタッチメント基を介して下層220を結合させるための加熱は、酸感受性ポリマー222を半導体材料211に結合するのに適するあらゆる温度および時間で行われうる。例えば、結合は、70〜250℃の温度で30秒〜2分間の時間でホットプレート上で行われうる。
【0062】
次いで、下層220は洗浄されて、結合していない酸感受性コポリマー222を除く。洗浄のための溶媒には、酸感受性基、アタッチメント基もしくは官能基を損傷しない溶媒が挙げられることができ、またはこれは結合した酸感受性コポリマー222の置き換えを望ましくなくもたらすであろう。典型的な溶媒には、トルエン、アニソール、PGMEA、シクロヘキサノンまたは残留している酸感受性コポリマーを除去できる溶媒が挙げられうる。残留している酸感受性コポリマーが表面上に留まる場合には、この残留している酸感受性コポリマーは後に適用される自己組織化層に取り込まれる場合があり、これは結果的に相分離したドメインの形成を失敗させる場合がある。
【0063】
PAG225は、下層コーティングされた基体(層210および220)が処理中にかけられる偶然のおよび累積的な加熱プロセスに耐えるのに充分な熱安定性を有するように選択される。PAG225としての使用に望ましい光酸発生剤には、アリールスルホニウム塩、例えば、モノ−、ジ−およびトリアリールスルホニウム塩、並びにジアリールヨードニウム塩、例えば、モノ−およびジアリールヨードニウム塩を挙げることができ、このような塩は、酸感受性コポリマー222を半導体材料に結合させるために使用される特に高温(100℃超)に耐えるのに充分に熱安定である。
【0064】
次いで、下層220は化学線(hν)の照射によってパターン形成される。図1Cに示されるように、下層220はレチクルもしくはマスク240を通して照射されて、PAG225の分解によって照射領域に酸226を形成して下層220に照射のパターンを形成する。図1C(および後の図1D〜1G)においても、dは、照射領域および未照射領域を含む照射パターンの繰り返し部分の照射面にわたるインターバル幅を表す。
【0065】
図1Cにおいては、照射下層220aは照射部分に酸226(H+)を含み、この酸は下層220aの照射部分において酸分解可能基223を分解する。図1Dは、反応した酸分解可能コポリマー222bにおける極性基224を含むパターン形成された下層220bの極性領域、並びに未反応の酸感受性コポリマー222aにおいて未分解の酸分解可能基223および未分解のPAG225を有するパターン形成された下層220bの中性領域を有する、得られたパターン形成された下層220bを示す。ポリマー領域中の極性基224は、図1Cに示されるように下層220の照射領域と対応する。
【0066】
PAG225から発生した酸の拡散は制限されて、パターンの過度の広がりを妨げ、よってパターン形成された下層220bについて選択される光酸発生剤は高い酸移動度を有する必要はない。例えば、ペルフルオロブタンスルホン酸またはo−トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸のような酸が使用されうる。極性領域を形成する下層220の表面の照射部分において表面エネルギーに影響するのに充分に、酸226は下層220の表面もしくは表面付近で酸感受性基と相互作用することのみを必要とすることも認識されるであろう。
【0067】
次いで、図1Eはパターン形成された下層220bの表面上での自己組織化層240の配置を示す。自己組織化層240は異なる表面エネルギーを有するブロックを有するブロックコポリマーを含むことができ、これらブロックは相分離し、かつ少なくとも1つのブロックはパターン、すなわち、パターン形成された下層220bの極性基224を有する領域に対して整列した離散したドメインを形成する。自己組織化層240は溶媒からのスピンキャスティングによって溶液として適用され、キャスティング後に加熱されて残留する溶媒を除去しかつ自己組織化層をコンパクトにしアニールする。ブロックコポリマーのブロックを秩序化するためのポリマー鎖の移動性を必要とするドメイン形成は、加熱中の可塑化溶媒の喪失と同時に起こり、個々のブロックの鎖の秩序化は秩序化された円筒形もしくはラメラ構造を形成すると考えられる。
【0068】
図1Fはパターン形成された下層220aの極性領域(極性基224を有する)に対して整列したドメイン241a、およびパターン形成された下層220aの中性領域(分解されていない酸分解可能基223を有する)に対しておよび極性ドメイン241aに対して整列した中性ドメイン242aを有する、ドメイン形成後の自己組織化層240aを示す。照射領域のインターバルは図1C〜図1Gにおいてdで示され、dは照射領域および未照射領域の双方を含む照射パターンの繰り返し部分の照射表面を横切るインターバル幅を表すことに留意されたい。図1Fは、ドメイン241aと242aとを合わせた幅に対応する示されるようなインターバルdを有するパターン形成された自己組織化層240aを例示し、パターンの他の実施形態においてはまばらなパターンが使用されうることが理解されるであろう。
【0069】
図1Gはパターンのインターバルが合わせたドメインの幅に等しい(d=w)パターンではなく、まばらなパターン、すなわち元の照射パターン幅dが極性ドメインおよび非極性ドメインを合わせた幅wよりも大きいパターン(例えば、1d=2wの場合には2倍大きく、1d=3wの場合には3倍大きいなど)上での自己組織化を示す。よって、インターバルdは合わせたドメインの幅wと一致していてよく、または幅wを超えていてもよい(例えば、図1Gは1d=2wの比率を示す)。
【0070】
図1Gにおいては、まばらなパターンが使用される場合には、自己組織化層240bの極性ドメイン241bはまばらにパターン形成された下層220bの極性領域(極性基224を有する)に対して整列しており、非極性ドメイン242bは極性ドメイン241bに対して整列する。第2の極性ドメイン243bは非極性ドメイン242bに対して整列し、そこではまばらにパターン形成された下層220bの不充分な極性領域が存在し、別の非極性ドメイン244bが第2の極性ドメイン243bに対して整列する。次いで、像形成される下層の表面にわたって、この配列のパターンが繰り返される。この方法においては、まばらなパターンは、自己組織化ブロックコポリマーのドメイン形成傾向と組み合わせて、ガイドとして使用され、下層に完全なパターンを照射および転写する必要なしにパターンを増やすことができる。密なライン/スペース解像を照射工程で得るのが困難な場合に、または照射工程が長期にわたりかつ時間を消費する工程である場合に、この方法は特に効果的である。
【0071】
図1Hにおいては、レリーフにおけるパターンの形成を示す。図1Fからの自己組織化層240aのドメイン242aは選択的に除去されて、ポジ型パターン領域251aおよびスペース252aを有するパターン層250aを提供する。同様に、図1Iにおいては、図1Fからのドメイン241aは選択的に除去されて、ポジ型パターン領域251bおよびスペース252bを有するパターン層250bを提供する。
【0072】
図1Hもしくは1Iにおける構造のいずれにおいても、ブラシコポリマー層220aの下層非極性領域(図1H)もしくは極性領域(図1J)は除去されることもできる(示されていない)。除去は湿式化学処理、例えば、ブロックの溶解、ウェットエッチング、または酸もしくは塩基現像剤を用いた現像によるものであってよく、または選択的ドライエッチングプロセスにより達成されうる。
【0073】
上記方法および構造は、シンクロナスダイナミックランダムアクセスメモリ(SDRAM)のような密なライン/スペースパターンまたはハードドライブにおけるようなデータ記憶のための密なフィーチャを必要とするメモリ素子をはじめとする半導体素子の製造に使用されうる。このような素子は例示であり、これに限定されると解釈されるべきではないことが理解される。
本発明は以下の実施例によってさらに例示される。
【実施例】
【0074】
Maruzen Corporationから得られた10,000〜25,000のMw、2未満の多分散度(Mw/Mn)を有するポリヒドロキシスチレン(PHS)以外は、下層として評価される全てのポリマー組成物は以下に記載されるように製造された。ポリマー組成物は、13C核磁気共鳴(NMR)分析によっておよびゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって特徴付けられた。NMRスペクトルは緩和剤として0.9%のアセチルアセトン酸クロム(III)を含むクロロホルム−dもしくはアセトン−d中に溶解したサンプルを使用して集められ、Hスペクトルデータは10秒のパルスディレイでの400MHz Varian INOVAスペクトロメーターを用いて得られ、13Cスペクトルデータはクリオプローブおよび5秒のパルスディレイを用いて300MHz Varian INOVAもしくは400MHz Bruker AVANCE 400NMRスペクトロメーターを用いて得られた。
【0075】
スチレン、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)およびアクリル酸tert−ブチル(tBA)のランダムコポリマーがテトラヒドロフラン(THF)中で30重量%固形分でフリーラジカル重合により合成された。全てのコポリマーは以下の手順を使用して製造された。モノマーはチャージされ、反応混合物は30分間脱ガスされ、次いで、50℃で平衡化された。平衡化の後で、ターゲットの1.50モル%のVAZO52開始剤の80%が添加された。反応は67℃で1時間加熱され、その後で開始剤の残りの20%が添加された。還流下で一晩温度が維持された。次いで、96:4(w/w)比のヘプタン/イソプロパノール(IPA)溶液中に沈殿させることによりポリマーが単離され、そのポリマーは濾過により集められ、重量が一定になるまで乾燥させられた。ポリマーのtBA含量が12モル%より多い場合には、ヘプタン/IPA混合物は沈殿前に少なくとも1時間ドライアイスで冷却された。
【0076】
ポリスチレン標準品で較正された架橋スチレン−ジビニルベンゼンカラムを用い、1mg/mlのサンプル濃度、溶離液としてTHFを1ml/分の流速で35℃で使用するゲル浸透クロマトグラフィによって、ポリマーの数平均分子量(M)および分子量分布(M/M)が決定された。
【0077】
自己組織化コポリマーとしての検討に使用されるポリスチレン−b−ポリ(メタクリル酸メチル)(PS−b−PMMA)コポリマーはアニオン重合によって以下のように合成された。オーブン乾燥された1リットル3つ口丸底フラスコが脱気、窒素パージされ、磁気攪拌バー、窒素/真空入口、サーモウェルおよび隔壁ポートを取り付けた。このフラスコに、乾燥THF(400mL)および精製スチレン(27.8g、0.27モル)をカニューレを介して添加し、この混合物を−70℃に冷却した。sec−ブチルリチウム(0.71gの0.47mモル/g溶液)をカニューレを介して素早く添加し、直ちに−40℃まで発熱した。反応混合物は橙/赤色になった。反応を30分間継続させて、次いで、5mLの乾燥THFに溶解したジフェニルエチレン(0.21g、1.22mモル)がこの反応物に添加され、その際に反応物は直ちに暗赤色に変わった。30分後、20mLの乾燥THF中のメタクリル酸メチル(12.79g、0.13モル)の溶液が−70℃の反応混合物に添加され、その後暗赤色から淡黄色への色の変化を伴って−62℃まで発熱した。30分後、2mLの無水メタノールが添加されて反応をクエンチした。ポリマー溶液は周囲温度まで温められ、反応混合物を1400mLの攪拌メタノールに注いだ。沈殿した固体が濾過により単離され、真空オーブンで60℃で16時間、重量が一定になるまで乾燥させられ、白色ポリマーとしてのポリマーを23g(57%収率)得た。
【0078】
ブラシ層としての評価のために、(メタ)アクリラートポリマーは2−ヘプタノンに溶解された(全溶液重量を基準にして2重量%)。マット層としての評価のために85重量%の酸分解可能(メタ)アクリラートポリマー、11重量%のテトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、1重量%のp−トルエンスルホン酸アンモニウムもしくはp−トルエンスルホン酸、および光酸発生剤として3重量%のペルフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウムの配合物が製造され、2−ヘプタノン中で全固形分2重量%(全固形分重量を基準にする)に希釈された。ブラシ層およびマット層配合物は双方とも、前処理されていない30cmシリコンウェハ上に、1500rpmで30秒間でキャストされ、次いで、150℃で60秒間ソフトベークされ、溶媒を除去し、膜を凝結させた。次いで、マット層はさらなる評価において直接使用されたが、一方でブラシ層はアニール工程において、ホットプレート上での160℃、4時間のベークによってさらに処理され、酸分解可能(メタ)アクリラートポリマーをシリコンウェハに共有結合させ、次いで、2−ヘプタノンで2回すすいで、結合していない酸分解可能(メタ)アクリラートポリマーを除去した。
【0079】
原子間力顕微鏡(AFM)による、生じた下層の厚さの測定は6〜7nmの膜厚さを示した。
【0080】
接触角はクラウス(KRUSS)DSA測定ツールで、Sessile Drop法によって水(18オームの脱イオン水)およびヨウ化メチレン(CH)の双方を用いて測定された。極性成分および分散成分の双方を含む表面エネルギーは、Fowkeの方法(Owens−Wendt法の変法)を用いてこれらの溶媒のそれぞれの接触角から計算された。表面エネルギーの結果はミリジュール/平方メートル(mJ/m)の単位で報告される。
【0081】
実施例1〜4のコポリマーおよび比較例3の比較コポリマーは、表1におけるモル比のスチレン、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチルおよび/またはアクリル酸t−ブチルから上記方法に従ってラジカル重合によって製造された。比較例1については市販のポリヒドロキシスチレン(PHS)が使用され、そして比較例2のポリ(スチレン−b−メタクリル酸メチル)ジブロックコポリマーは上述のアニオン重合方法によって製造されたことに留意されたい。
【0082】
【表1】

ポリ(スチレン−b−メタクリル酸メチル)コポリマー
【0083】
ブラシ層は表1におけるポリマーについて上述のように製造された。表1に認められるように、100%ポリヒドロキシスチレンの組成を有し、酸分解可能基を含まないポリマー(比較例1)は、自己組織化層に使用されるポリ(スチレン−b−メタクリル酸メチル)の典型的なジブロックコポリマー(比較例2)のと同等の極性比率(polarity ratio)、ならびに分散および極性表面エネルギーを示す。実施例1〜4はそれぞれ、酸分解可能基(アクリル酸t−ブチル、略してt−BA)、分散性官能基(スチレン、略してSTY)、ヒドロキシ官能化反応性基(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、略してHEMA)を含み、並びに実施例1および2はそれぞれフィラーモノマー(メタクリル酸メチル、略してMMA)をさらに含む。比較例3はSTY、HEMAおよびMMAを含むがt−BAを含まない。実施例1、2および4に認められうるように、より多くの量(10モル%以上)のHEMAを含むことは表面エネルギーの極性成分を増大させ、結果的に分散および極性表面エネルギー、並びに得られる極性比率について比較例2との緊密な適合からはずれるこれらのコポリマーを生じさせ、よって実施例1、2および4は非中性であり、対照の比較例2に対して非中性の表面を形成する。
【0084】
しかし、実施例3の組成は同じ分散表面エネルギー(36mJ/m)および類似の極性表面エネルギー(実施例3については7mJ/m、これに対して比較例2については6mJ/m)および極性比率(実施例3については0.16、これに対して比較例2については0.14)を有しており、よって比較例2と実施例3とは非常に適合し互いに中性である。
【0085】
下記構造:
【化10】

を有する実施例1のターポリマーを含み、2−ヘプタノン(全溶液重量を基準にして2重量%固形分)中に配合された上述のようなブラシ層およびマット層組成物が上述のようにコーティングされて、ブラシ層およびマット層を形成した。ブラシ層サンプルはフォトレジスト(EPIC商標2340フォトレジスト、ロームアンドハースエレクトロニックマテリアルズから入手可能)で180nmの膜厚さにコーティングされて、110℃で60秒間ベークされた。次いでウェハは、0、125および250ミリジュール/平方センチメートル(mJ/cm)で、6.6mm×6.6mmフィールドサイズにわたって360nmピッチで180nmのコンタクトホールのアレイからなるバイナリーレチクルを用いて、露光ツール(ASML PAS 5500/1100 193nmスキャナー、ASMLにより製造)について0.75の最大開口数(NA)での環状照明を用いて露光された。露光後、フォトレジストサンプルは120℃で60秒間露光後ベークされ、次いで0.26Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド中で60秒間で現像された。次いで、フォトレジストは2−ヘプタノンを用いて除去された。
【0086】
次いで、一般構造:
【化11】

を有する比較例2のブロックコポリマーが2−ヘプタノン(全溶液重量を基準にして2重量%)に溶解され、すでに実施例3のポリマーを含む下層でコーティングされ、上記方法によって像形成された30cmウェハ上に約100nmの厚さにスピンキャストされ、そして250℃で60分間ベークされ、自己組織化層をアニールし、円筒としての相分離ドメインを提供した。
【0087】
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、タッピングモードで0.5Hzの走査速度で、〜270Hzのドライブ周波数でPS−b−PMMAコポリマー構造が分析された。検出されたフィーチャのドメインサイズおよびピッチはパワースペクトル密度(PSD)プロファイルから決定された。
【0088】
サンプル上に円筒形ドメインを有するサンプルは、次いで、AFMによって画像化された。図2は、1μm×1μmスキャン領域におけるサンプルの一連のAFM像を示す。円筒形ドメインはそれぞれのサンプルについて図中に認められることができ、図についてのドメイン寸法は以下の表2にまとめられる。
【0089】
【表2】

【0090】
PS−b−PMMAコポリマーとほぼ同じ極性比率を有しおよびこれに対して中性であるように適合した酸感受性メタクリラートコポリマー組成物(実施例3)をそれぞれが有する下層(ブラシおよびマット)は両方とも、露光されたコンタクトホールパターンによって画定される極性領域に整列した相分離ドメインを提供できる。図2および表2においては、最も良好に画定されたフィーチャは、実施例1の(メタ)アクリラートコポリマーの脱保護のための酸がフォトレジストの露光領域からブラシ層に拡散されるブラシ層について(250mJ/m)よりも低い露光線量(125mJ/m)で得られることがさらに認められうる。ブラシおよびマット層の両方において、同等のフィーチャサイズ性能が得られる。有利なことに、マット層(または、好適な熱安定なPAGを含むブラシ層)は、下層についての酸ソースを脱保護する際にフォトレジストをコーティングおよび処理するために必要な追加の処理工程の必要なしに、直接像形成されうる。また、有利なことには、マット層は基体への結合を形成するための非常に長いアニーリングプロセス、または結合していないブラシ層ポリマーの除去のためのすすぎを必要とせず、さらにウェハあたりのプロセスサイクル時間を低減させる。
【0091】
本明細書において開示される全ての範囲は端点を含み、その端点は互いに独立に組み合わせ可能である。「場合によっては」とはその後に記載されている事項もしくは状況が起こってもよく、または起こらなくてもよく、そしてその記載はその事項が起こる事例とその事項が起こらない事例とを含む。本明細書において使用される場合、「組み合わせ」はブレンド、混合物、合金もしくは反応生成物を含む。全ての参考文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0092】
さらに、本明細書における用語「第1」、「第2」などは順序、品質もしくは重要性を示すものではなく、1つの要素を他のものと区別するために使用されることにさらに留意すべきである。
【符号の説明】
【0093】
101 基体材料
102 ヒドロキシ基
210 改変半導体基体
211 半導体材料
220 下層
220a 照射下層
220b パターン形成された下層
222 酸感受性コポリマー
222a 未反応の酸感受性コポリマー
223 酸感受性基
224 極性基
225 光酸発生剤
226 酸
240 レチクルもしくはマスク、自己組織化層
240a、b ドメイン形成後の自己組織化層
241a ドメイン
241b 極性ドメイン
242a 中性ドメイン
242b 非極性ドメイン
243b 極性ドメイン
244b 非極性ドメイン
250a、b パターン層
251a、b ポジ型パターン領域
252a、b スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸分解可能基、アタッチメント基および官能基を含む酸感受性コポリマーと、光酸発生剤とを含む下層の一部分を照射する工程、
前記アタッチメント基は基体の親水性表面に共有結合されているか、架橋されてポリマー間架橋を形成しているか、または基体の表面に共有結合されかつ架橋されてポリマー間架橋を形成しており、
前記酸分解可能基は下層の照射部分で光酸発生剤から発生した酸と反応して下層の表面に極性領域を形成しており、前記極性領域はパターンの形状および寸法を有している;
下層の表面上に自己組織化層を形成する工程、
前記自己組織化層は極性領域に対する親和性を有する第1のブロックと、極性領域に対する親和性が第1のブロックよりも低い第2のブロックとを有するブロックコポリマーを含み、第1のブロックは極性領域に対して整列する第1のドメインを形成し、および第2のブロックは第1のドメインの隣に整列する第2のドメインを形成する;並びに
第1のもしくは第2のドメインのいずれかを除去して下にある下層の部分を露出させる工程;
を含むパターンを形成する方法。
【請求項2】
酸感受性コポリマーおよび光酸発生剤の溶液をスピンコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、もしくはドクターブレーディングによって基体の表面に接触させる工程、
加熱して溶媒を除去し、かつ酸感受性コポリマーのアタッチメント基と親水性表面との間に共有結合を形成する工程、
下層の表面を溶媒で洗浄して、結合していないブラシコポリマーを除去する工程、
を含む工程により下層が形成される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
自己組織化層を形成する工程が、ブロックコポリマーの溶液をスピンコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、もしくはドクターブレーディングによって下層の表面に接触させる工程、およびアニールして溶媒を除去し、かつ第1のドメインおよび第2のドメインを形成する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
選択的な照射が、下層の一部分をレチクルを通した化学線に露光することによって、または下層の照射される部分上へのe−ビーム照射によるパターンの直接描画によって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
下層の照射される部分が、第1のドメインおよび第2のドメインのインターバル間隔よりも大きなインターバルで間隔を開けられたまばらなパターンを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記まばらなパターンのインターバル間隔を満たすように下層上に形成される追加の第1のドメインおよび第2のドメインであって、極性領域に対してではなく第2のドメインに対して整列する前記追加の第1のドメイン、および前記追加の第1のドメインに対して整列する前記追加の第2のドメインをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
光酸発生剤が酸感受性コポリマーとの混合物の状態にあるか、または光酸発生剤が酸感受性コポリマーに共有結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
酸分解可能基、アタッチメント基および官能基を含む酸感受性コポリマーと、光酸発生剤とを含み、
前記アタッチメント基はアルコキシド結合によって基体の親水性表面に共有結合されているか、架橋されてポリマー間架橋を形成しているか、または基体の親水性表面に共有結合されかつ架橋されてポリマー間架橋を形成しており、
前記酸分解可能基はエステル基、アセタール基、ケタール基、ピロカルボナート基または前記酸分解可能基の少なくとも1種を含む組み合わせである、
下層。
【請求項9】
酸感受性コポリマーが式:
【化1】

を有し、式中、Rはターシャリーアルキルエステル基を含むC1−30酸分解可能基であり、Rはヒドロキシ基を含むC1−30アタッチメント基であり、RおよびRは独立して芳香族基もしくはエステル基を含むC1−30官能基であり、R、R、RおよびRは独立してHもしくはC1−10有機基であり、モル分率wおよびxは0.001〜0.999であり、モル分率yおよびzは0〜0.9であり、モル分率w、x、yおよびzの合計は1である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
下層および自己組織化層を含む自己組織化多層膜であって、
下層は酸分解可能基、アタッチメント基および官能基を含む酸感受性コポリマーと、光酸発生剤とを含み、
下層はアタッチメント基を介して、基体の親水性表面に配置および共有結合されているか、架橋されてポリマー間架橋を形成しているか、または基体の表面に共有結合されかつ架橋されてポリマー間架橋を形成しており、
下層の表面の部分は分解した酸分解可能基を有し、下層のパターン形成された表面を形成しており、
自己組織化層は下層のパターン形成された表面上に配置されており、
自己組織化層は分解した酸分解可能基を有する下層の表面の部分に対する親和性を有する第1のブロックと、分解した酸分解可能基を有する下層の表面の部分に対する親和性が第1のブロックよりも低い第2のブロックとを有するブロックコポリマーを含み、
第1のブロックは分解した酸分解可能基を有する下層の部分に整列した第1のドメインを形成しており、並びに第2のブロックは第1のドメインの隣に並んで整列した下層の表面上の第2のドメインを形成している、
自己組織化多層膜。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図1E】
image rotate

【図1F】
image rotate

【図1G】
image rotate

【図1H】
image rotate

【図1I】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−78830(P2012−78830A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−213653(P2011−213653)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】