説明

下水処理システム

【課題】曝気槽で用いる曝気のための圧縮空気を低コストで供給できるようにした下水処理システムを提供する。
【解決手段】曝気槽7を有して下水汚泥10を分離する下水処理施設1と、下水処理施設1で分離した下水汚泥10を導入しガス化させて可燃性ガス13cを生成するガス化炉13と、ガス化炉13の可燃性ガス13cを燃焼させたガス20aで駆動される膨張タービン16によりコンプレッサ17を回転して圧縮空気21aを生成するガスタービン装置18とを備え、コンプレッサ17で生成した圧縮空気21aを曝気槽7に曝気用空気として供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、下水汚泥は増加の一途を辿っており、その処理が社会的な問題となっているが、下水汚泥の処理の主なものとしては、例えば、汚泥焼却炉による焼却処理が挙げられる。
【0003】
図2は従来の下水処理システムの一例を示すものであって、1は下水処理施設(下水処理場)、2は汚泥焼却炉、3は空気予熱器、4は冷却塔、5はバグフィルタ、6は排煙処理器である。
【0004】
前記下水処理施設1では、図示しない沈砂池等を経た下水が曝気槽7に供給されており、曝気槽7では汚水に活性汚泥を加えると共にコンプレッサ8によって生成した圧縮空気を曝気槽7内に吹込んで曝気(エアレーション)することにより活性汚泥による有機物の吸着・分離を行うようにしている。そして曝気槽7から出た汚水は濃縮槽9によって濃縮し、脱水機9aで脱水することにより、水分70〜80%の下水汚泥10となる。
【0005】
含有水分がおよそ70〜80%に脱水された下水汚泥10は汚泥焼却炉2に供給され、該汚泥焼却炉2において都市ガス、或いは灯油や重油等の助燃料11と一緒に下水汚泥10の混焼が行われ、その排ガスが空気予熱器3を通過する際に燃焼用空気と熱交換し、予熱された予熱空気は前記汚泥焼却炉2へ導入され、又、前記空気予熱器3を通過した排ガスは、冷却塔4において噴霧される水により冷却され、続いて、バグフィルタ5で焼却灰が分離除去された後、排煙処理器6において噴霧される水により前記バグフィルタ5で分離除去しきれなかった灰が除去され、クリーンなガスとして大気放出されるようになっている。
【0006】
又、図3は従来の下水処理システムの他の例を示すものであって、図中、図2と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、下水汚泥10を乾燥させて乾燥汚泥10aとして汚泥焼却炉2へ供給する乾燥機12を追加装備したものである。
【0007】
図3に示される下水処理システムにおいては、水分をおよそ70〜80%程度含有する下水汚泥10が乾燥機12で乾燥され、含有する水分がおよそ30〜50%程度まで低減された乾燥汚泥10aとなり、該乾燥汚泥10aは汚泥焼却炉2に供給され、該汚泥焼却炉2において乾燥汚泥10aの自燃が行われ、その排ガスが空気予熱器3を通過する際に燃焼用空気と熱交換し、予熱空気が前記汚泥焼却炉2へ導入される一方、前記汚泥焼却炉2から排出される排ガスの一部が前記乾燥機12へ導かれてその廃熱が下水汚泥10の乾燥に供され、前記空気予熱器3を通過した排ガスは、図2に示される例の場合と同様に、冷却塔4において噴霧される水により冷却され、続いて、バグフィルタ5で焼却灰が分離除去された後、排煙処理器6において噴霧される水により前記バグフィルタ5で分離除去しきれなかった灰が除去され、クリーンなガスとして大気放出されるようになっている。
【0008】
前記下水処理施設1においては、曝気槽7により曝気することによって汚水を処理しているが、この曝気処理には非常に大量の圧縮空気が必要であり、このために、従来では巨大なコンプレッサ8を設置することにより曝気槽7に大量の圧縮空気を供給して曝気を行っている。
【0009】
尚、下水処理システムにおいて、発電・電動機を備えたタービン装置により、夜間の余剰電力を利用して圧縮空気を蓄え、これを昼間に下水処理の曝気用空気とし利用するにあたり、予め上記圧縮空気を加熱してから減圧部としての膨張タービンに通し、電力を回収した後、減圧された圧縮空気として曝気槽に供給するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−116689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記図2、図3に示した従来の下水処理システムにおいては、曝気槽7での曝気処理のために巨大なコンプレッサ8を設置し、このコンプレッサ8で大量の圧縮空気を生成して曝気槽7に供給することにより曝気を行うようにしているために、前記コンプレッサを駆動するための消費電力が膨大となり、このために下水処理システムの処理コストが大幅に増大してしまうという問題を有していた。
【0011】
又、特許文献1では、夜間の余剰電力を利用して圧縮空気を蓄えることを記載しているが、圧縮空気を生成するのに電力を消費することに変わりはなく、又、圧縮空気を膨張タービンに通して電力を回収する場合にも、加熱炉で燃料を燃焼させて高温の圧縮空気として膨張タービンに供給する必要があるために、燃料が必要であり、よって大幅なコスト低減を図ることはできなかった。
【0012】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなしたもので、曝気槽で用いる曝気のための圧縮空気を低コストで供給できるようにした下水処理システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、曝気槽を有して下水汚泥を分離する下水処理施設と、該下水処理施設で分離した下水汚泥を導入しガス化させて可燃性ガスを生成するガス化炉と、該ガス化炉の可燃性ガスを燃焼させたガスで駆動される膨張タービンによりコンプレッサを回転して圧縮空気を生成するガスタービン装置とを備え、前記コンプレッサで生成した圧縮空気を前記曝気槽に曝気用空気として供給することを特徴とする下水処理システム、に係るものである。
【0014】
又、前記ガス化炉に廃棄物燃料を供給することは好ましい。
【0015】
又、前記可燃性ガスの燃焼時に補助燃料を一緒に燃焼させることは好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の下水処理システムによれば、下水汚泥を導入してガス化するガス化炉で生成した可燃性ガスを用いてガスタービン装置の膨張タービンを駆動し、同軸のコンプレッサで加圧した圧縮空気を曝気用空気として曝気槽に供給するようにしたので、従来曝気のための圧縮空気を生成するのに必要であった電力の消費を無くすことができ、よって下水処理システムの運転コストを大幅に低減できるという優れた効果を奏し得る。
【0017】
前記ガス化炉に廃棄物燃料を供給すると、安価な燃料でガス化炉内部の温度を高めて下水汚泥のガス化を促進することができる。
【0018】
前記燃焼器での可燃性ガスの燃焼時に補助燃料を一緒に燃焼させると、可燃性ガスの燃焼成分量が少ない場合でも曝気槽に対して圧縮空気を安定して供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明を実施する形態の一例であり、図2の汚泥焼却炉2に代えてガス化炉13を備えている。ガス化炉13は、炉内の下部に流動用空気14aを供給して砂等のベッド材をバブリングさせると共に燃料を供給して流動層13aを形成しており、ガス化炉13内の上部にはフリーボード13bが形成されている。前記下水処理施設1の濃縮槽9で濃縮し、脱水機9aで脱水することにより、含有水分がおよそ70〜80%程度の下水汚泥10は、前記ガス化炉13の上部から流動層13a上に供給するようにしている。
【0021】
前記ガス化炉13に供給する燃料としては、廃プラスチック、廃木材等の廃棄物燃料22を用いることができ、ガス化炉13内では、これらの廃棄物燃料22とベッド材とが一緒に流動用空気14aによりバブリングされてガス化すると同時に、この流動層13aの上に供給された下水汚泥10の流動乾燥が行われ、更に、フリーボード13bで下水汚泥10のガス化が行われるようになっている。又、ガス化炉13の流動層13aには必要に応じて蒸気を供給するようにしてもよい。
【0022】
ガス化炉13の下流側には空気予熱器14が備えてあり、該空気予熱器14では、フリーボード13bで下水汚泥10をガス化して生成された可燃性ガス13cの廃熱の一部によって空気を加熱し、予熱した流動用空気14aを流動層13aへ供給するようにしている。
【0023】
空気予熱器14の下流側にはスクラバ15を設けてあり、スクラバ15は、可燃性ガス13cに対して水を噴霧し、アンモニアやタールの処理並びに脱硫、脱硝、灰処理等を行うと共に、ガス化ガス中の蒸気を凝縮させ、COやH2等の可燃性ガス13cを含むドライなガスを得るようにしている。
【0024】
スクラバ15の下流側には、膨張タービン16とコンプレッサ17が同軸上に備えられたガスタービン装置18を設けている。前記ガスタービン装置18は、前記スクラバ15からの可燃性ガス13cに補助燃料19を混合して燃焼させる燃焼器20を有しており、該燃焼器20からの高温高圧のガス20aが膨張タービン16に導入されて該膨張タービン16を駆動することによりコンプレッサ17を回転し、コンプレッサ17は外気を吸引して圧縮する。コンプレッサ17で圧縮された圧縮空気21aは供給配管21により前記曝気槽7の下水中に吹込まれて下水の曝気を行うようになっている。又、前記コンプレッサ17で圧縮された圧縮空気21aの一部は前記燃焼器20に供給されて高温高圧のガス20aを生成するのに供される。
【0025】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0026】
ガス化炉13に廃棄物燃料22を供給する共に、ガス化炉13内に下部から流動用空気14aを供給して、砂等のベッド材を流動させることにより廃棄物燃料22が流動燃焼する流動層13aを形成した状態で、流動層13aの上部に含有水分がおよそ70〜80%の下水汚泥10をそのまま落下供給すると、下水汚泥10に含まれる水分が蒸発して蒸気が発生しつつ、下水汚泥10は乾燥される。
【0027】
下水汚泥10は、乾燥すると揮発性が高いため、揮発分が直に放出され、流動層13aで廃棄物燃料22を燃焼させることによって生じたCO2と、前記下水汚泥10から蒸発して発生した蒸気とがガス化剤として、流動層13a上方のフリーボード13bのガス化領域で揮発分と反応し、COやH2等を多く含む可燃性ガス13cが生成される。
【0028】
可燃性ガス13cは、空気予熱器14によりガス化炉13に送給する流動用空気14aを所定の温度に予熱した後、スクラバ15に導入されて水が噴霧され、アンモニアやタールの処理並びに脱硫、脱硝、灰処理等が行われると共に、ガス化ガス中の蒸気が凝縮され、COやH2等を多く含む可燃性ガス13cとなる。
【0029】
スクラバ15で生成された可燃性ガス13cは、ガスタービン装置18の燃焼器20で燃焼されて高温高圧のガス20aとなって膨張タービン16に導入されて該膨張タービン16を駆動することによりコンプレッサ17を回転し、コンプレッサ17は外気を吸引して圧縮する。コンプレッサ17で圧縮された圧縮空気21aは供給配管21により前記曝気槽7の下水中に吹込まれて下水の曝気を行う。
【0030】
図1の構成において、前記膨張タービン16から排出される排ガスは未だ高温を有しているので、この排ガスを利用して前記ガス化炉13に供給する流動用空気14aを予熱してもよい。
【0031】
上記したように、下水汚泥10を導入してガス化するガス化炉13で生成した可燃性ガス13cを用いてガスタービン装置18の膨張タービン16を駆動し、同軸のコンプレッサ17で加圧した圧縮空気21aを曝気用空気として曝気槽7に供給するようにしたので、従来曝気のための圧縮空気を生成するのに必要としていた電力の消費を全く無くすことができ、よって下水処理システムの運転コストを大幅に低減することができる。
【0032】
又、上記形態では、ガス化炉13に廃棄物燃料22を供給する場合について説明したが、ガス化炉13におけるコストを問題にしない場合には、一般のガスや液体或いは固体の燃料を用いて下水汚泥をガス化するようにしたガス化炉も適用できることは勿論である。又、前記燃焼器20での可燃性ガス13cの燃焼時に補助燃料19を一緒に燃焼させると、可燃性ガス13cの燃焼成分量が少ない場合でも曝気槽7に対して圧縮空気21aを安定して供給することができる。
【0033】
尚、本発明の下水処理システムは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を実施する形態の一例としての下水処理システムを示す全体概要構成図である。
【図2】従来の下水処理システムの一例を示す全体概要構成図である。
【図3】従来の下水処理システムの他の例を示す全体概要構成図である。
【符号の説明】
【0035】
1 下水処理施設
7 曝気槽
9 濃縮槽
10 下水汚泥
13 ガス化炉
13c 可燃性ガス
16 膨張タービン
17 コンプレッサ
18 ガスタービン装置
19 補助燃料
21 供給配管
20a 高温高圧のガス
21a 圧縮空気
22 廃棄物燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曝気槽を有して下水汚泥を分離する下水処理施設と、該下水処理施設で分離した下水汚泥を導入しガス化させて可燃性ガスを生成するガス化炉と、該ガス化炉の可燃性ガスを燃焼させたガスで駆動される膨張タービンによりコンプレッサを回転して圧縮空気を生成するガスタービン装置とを備え、前記コンプレッサで生成した圧縮空気を前記曝気槽に曝気用空気として供給することを特徴とする下水処理システム。
【請求項2】
前記ガス化炉に廃棄物燃料を供給することを特徴とする請求項1に記載の下水処理システム。
【請求項3】
前記可燃性ガスの燃焼時に補助燃料を一緒に燃焼させることを特徴とする請求項1又は2に記載の下水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−812(P2006−812A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182416(P2004−182416)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構 「国際共同研究提案公募事業 廃棄物の共ガス化による次世代環境調和型サーマルリサイクル発電技術開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】