説明

下水処理システム

【課題】大気中への亜酸化窒素ガスの放出を抑制すること。
【解決手段】流入窒素負荷制御装置21は、負荷検出部19a〜19dから入力された無酸素槽12及び好気槽13a〜13cの各槽におけるアンモニア性窒素負荷の値に基づいて、各槽におけるアンモニア性窒素負荷が所定値未満になるようにバルブ22a〜22dの開度を制御して各槽に原水を供給する。これにより、好気槽13a〜13c内におけるアンモニア性窒素負荷の値を所定値未満に保ち、大気中への亜酸化窒素ガスの放出を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好気処理によって下水中に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素や硝酸性窒素に硝化する下水処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生活排水や工場排水などの下水中に含まれるアンモニア性窒素は、下水の放流先となる湖沼や内湾などの閉鎖性水域における溶存酸素の低下や富栄養化現象の原因になることが知られている。このため、下水処理設備では好気処理が行われている。好気処理とは、反応槽内の下水に投入した、若しくは、下水中に元々存在する硝化菌などの好気性微生物を利用して、アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素や硝酸性窒素に硝化する処理のことを意味する。
【0003】
このような好気処理では、微生物活動や反応槽の運転条件などの変化によって、反応副生成物として亜酸化窒素ガス(NO)が発生することが知られている。亜酸化窒素ガスは温室効果ガスであり、その温室効果は二酸化炭素ガスの約310倍と非常に高い。また、亜酸化窒素ガスは、フロンガスと同様、成層圏のオゾン層を破壊するオゾン層破壊ガスとしても問題視されている。このため、大気中への亜酸化窒素ガスの放出を抑制することが地球環境保護の観点から急務となっている。
【0004】
このような背景から、近年、大気中への亜酸化窒素ガスの放出を抑制するための発明が幾つか提案されている(特許文献1〜3参照)。特許文献1記載の発明は、亜酸化窒素ガスを溶解させた吸収液を無酸素槽に供給することにより、無酸素槽内の脱窒菌によって亜酸化窒素ガスを窒素ガスに還元するものである。特許文献2記載の発明は、亜酸化窒素ガスを含有する含有ガスを無酸素槽内に供給する前に、脱窒菌の反応を阻害する酸素を含有ガスから除去するものである。特許文献3記載の発明は、亜酸化窒素ガスを溶解させた吸収液を嫌気性条件下で処理することによって、亜酸化窒素ガスを窒素ガスに還元するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−128389号公報
【特許文献2】特開2000−246055号公報
【特許文献3】特開2002−204926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,3記載の発明によれば、吸収液を貯留するための吸収槽や吸収槽内で吸収液を循環させるための循環ポンプなどの付加的な装置を用意する必要がある。また、特許文献2記載の発明によれば、含有ガスから酸素を除去するための酸素除去装置を用意する必要がある。このため、特許文献1〜3記載の発明によれば、大気中への亜酸化窒素ガスの放出を抑制する下水処理システムを安価に構成することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、大気中への亜酸化窒素ガスの放出を安価に抑制可能な下水処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る下水処理システムは、原水供給路から供給された原水が流入する、嫌気条件下で該原水中に含まれる有機物を活性汚泥に取り込むと共に該活性汚泥中に含まれるリンを該原水に放出する嫌気槽と、前記嫌気槽から流出した処理原水が流入する、無酸素条件下で該処理原水中に含まれる亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素を窒素ガスに還元する無酸素槽と、前記無酸素槽から流出した処理原水が流入する、好気条件下で該処理原水中に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化すると共に該処理原水中に含まれるリンを活性汚泥中に取り込む、該処理原水の流れ方向に沿って配列された複数の好気槽と、前記好気槽から流出した処理原水が流入する、該処理原水に含まれる活性汚泥を沈殿させる沈殿槽と、前記沈殿槽内に堆積する活性汚泥を前記嫌気槽に返送する汚泥返送路と、最下流の前記好気槽内の硝化液を前記無酸素槽に循環する硝化液循環路と、前記複数の好気槽に各槽におけるアンモニア性窒素負荷を検出する負荷検出部と、前記窒素負荷検出部の検出結果に基づいて、前記原水供給路から供給された原水の一部を前記複数の好気槽及び前記無酸素槽に分配供給する原水ステップ流路と、を備える。
【0009】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第2の態様に係る下水処理システムは、原水供給路から供給された原水が流入する、嫌気条件下で該原水中に含まれる有機物を活性汚泥に取り込むと共に該活性汚泥中に含まれるリンを該原水に放出する嫌気槽と、前記嫌気槽から流出した処理原水が流入する、無酸素条件下で該処理原水中に含まれる亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素を窒素ガスに還元する無酸素槽と、前記無酸素槽から流出した処理原水が流入する、好気条件下で該処理原水中に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化すると共に該処理原水中に含まれるリンを活性汚泥中に取り込む、該処理原水の流れ方向に沿って配列された複数の好気槽と、前記好気槽から流出した処理原水が流入する、該処理原水に含まれる活性汚泥を沈殿させる沈殿槽と、前記沈殿槽内に堆積する活性汚泥を前記嫌気槽に返送する汚泥返送路と、最下流の前記好気槽内の硝化液を前記無酸素槽に循環する硝化液循環路と、前記沈殿槽内における前記活性汚泥の滞留時間を制御する滞留時間制御部と、を備える。
【0010】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第3の態様に係る下水処理システムは、原水供給路から供給された原水が流入する、嫌気条件下で該原水中に含まれる有機物を活性汚泥に取り込むと共に該活性汚泥中に含まれるリンを該原水に放出する嫌気槽と、前記嫌気槽から流出した処理原水が流入する、無酸素条件下で該処理原水中に含まれる亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素を窒素ガスに還元する無酸素槽と、前記無酸素槽から流出した処理原水が流入する、好気条件下で該処理原水中に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化すると共に該処理原水中に含まれるリンを活性汚泥中に取り込む、該処理原水の流れ方向に沿って配列された複数の好気槽と、前記好気槽から流出した処理原水が流入する、該処理原水に含まれる活性汚泥を沈殿させる沈殿槽と、前記沈殿槽内に堆積する活性汚泥を前記嫌気槽に返送する汚泥返送路と、最下流の前記好気槽内の硝化液を前記無酸素槽に循環する硝化液循環路と、前記複数の好気槽内で発生した亜酸化窒素ガスの濃度を検出する濃度検出部と、前記濃度検出部の検出結果に基づいて、前記複数の好気槽内に存在する前記亜酸化窒素ガスを含有する含有ガスを前記無酸素槽に供給するガス供給路と、を備える。
【0011】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第4の態様に係る下水処理システムは、原水供給路から供給された原水が流入する、嫌気条件下で該原水中に含まれる有機物を活性汚泥に取り込むと共に該活性汚泥中に含まれるリンを該原水に放出する嫌気槽と、前記嫌気槽から流出した処理原水が流入する、無酸素条件下で該処理原水中に含まれる亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素を窒素ガスに還元する無酸素槽と、前記無酸素槽から流出した処理原水が流入する、好気条件下で該処理原水中に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化すると共に該処理原水中に含まれるリンを活性汚泥中に取り込む、該処理原水の流れ方向に沿って配列された複数の好気槽と、前記好気槽から流出した処理原水が流入する、該処理原水に含まれる活性汚泥を沈殿させる沈殿槽と、前記沈殿槽内に堆積する活性汚泥を前記嫌気槽に返送する汚泥返送路と、最下流の前記好気槽内の硝化液を前記無酸素槽に循環する硝化液循環路と、前記複数の好気槽に各槽におけるアンモニア性窒素負荷を検出する負荷検出部と、前記窒素負荷検出部の検出結果に基づいて、前記原水供給路から供給された原水の一部を前記複数の好気槽及び前記無酸素槽に分配供給する原水ステップ流路と、前記沈殿槽内における前記活性汚泥の滞留時間を制御する滞留時間制御部と、前記複数の好気槽内で発生した亜酸化窒素ガスの濃度を検出する濃度検出部と、前記濃度検出部の検出結果に基づいて、前記複数の好気槽内に存在する前記亜酸化窒素ガスを含有する含有ガスを前記無酸素槽に供給するガス供給路と、を備える。
【0012】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第5の態様に係る下水処理システムは、原水供給路から供給された原水が流入する、好気条件下で該処理原水中に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化すると共に該処理原水中に含まれるリンを活性汚泥中に取り込む、該処理原水の流れ方向に沿って配列された複数の好気槽と、前記好気槽から流出した処理原水が流入する、該処理原水に含まれる活性汚泥を沈殿させる沈殿槽と、前記沈殿槽内に堆積する活性汚泥を1段目の前記好気槽に返送する汚泥返送路と、前記複数の好気槽のうち、2段目以後の各好気槽におけるアンモニア性窒素負荷を検出する負荷検出部と、前記窒素負荷検出部の検出結果に基づいて、前記原水供給路から供給された原水の一部を前記2段目以後の各好気槽に分配供給する原水ステップ流路と、を備える。
【0013】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第6の態様に係る下水処理システムは、原水供給路から供給された原水が流入する、好気条件下で該処理原水中に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化すると共に該処理原水中に含まれるリンを活性汚泥中に取り込む、該処理原水の流れ方向に沿って配列された複数の好気槽と、前記好気槽から流出した処理原水が流入する、該処理原水に含まれる活性汚泥を沈殿させる沈殿槽と、前記沈殿槽内に堆積する活性汚泥を1段目の前記好気槽に返送する汚泥返送路と、前記沈殿槽内における前記活性汚泥の滞留時間を制御する滞留時間制御部と、を備える。
【0014】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第7の態様に係る下水処理システムは、原水供給路から供給された原水が流入する、好気条件下で該処理原水中に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化すると共に該処理原水中に含まれるリンを活性汚泥中に取り込む、該処理原水の流れ方向に沿って配列された複数の好気槽と、前記好気槽から流出した処理原水が流入する、該処理原水に含まれる活性汚泥を沈殿させる沈殿槽と、前記沈殿槽内に堆積する活性汚泥を1段目の前記好気槽に返送する汚泥返送路と、前記複数の好気槽のうち、2段目以後の各好気槽内で発生した亜酸化窒素ガスの濃度を検出する濃度検出部と、前記濃度検出部の検出結果に基づいて、2段目以後の各好気槽内に存在する前記亜酸化窒素ガスを含有する含有ガスを1段目の前記好気槽に供給するガス供給路と、を備える。
【0015】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第8の態様に係る下水処理システムは、原水供給路から供給された原水が流入する、好気条件下で該処理原水中に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化すると共に該処理原水中に含まれるリンを活性汚泥中に取り込む、該処理原水の流れ方向に沿って配列された複数の好気槽と、前記好気槽から流出した処理原水が流入する、該処理原水に含まれる活性汚泥を沈殿させる沈殿槽と、前記沈殿槽内に堆積する活性汚泥を1段目の前記好気槽に返送する汚泥返送路と、前記複数の好気槽のうち、2段目以後の各好気槽におけるアンモニア性窒素負荷を検出する負荷検出部と、前記窒素負荷検出部の検出結果に基づいて、前記原水供給路から供給された原水の一部を前記2段目以後の各好気槽に分配供給する原水ステップ流路と、前記沈殿槽内における前記活性汚泥の滞留時間を制御する滞留時間制御部と、前記複数の好気槽のうち、2段目以後の各好気槽内で発生した亜酸化窒素ガスの濃度を検出する濃度検出部と、前記濃度検出部の検出結果に基づいて、2段目以後の各好気槽内に存在する前記亜酸化窒素ガスを含有する含有ガスを1段目の前記好気槽に供給するガス供給路と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る下水処理システムによれば、大気中への亜酸化窒素ガスの放出を安価に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態である下水処理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施形態である下水処理システムの構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の第3の実施形態である下水処理システムの構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、図1に示す下水処理システムの変形例の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、図2に示す下水処理システムの変形例の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、図3に示す下水処理システムの変形例の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の第1乃至第3の実施形態である下水処理システムの構成について説明する。
【0019】
〔第1の実施形態〕
始めに、図1を参照して、本発明の第1の実施形態である下水処理システムの構成について説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態である下水処理システムの構成を示す模式図である。図1に示すように、本発明の第1の実施形態である下水処理システム1は、嫌気槽11と、無酸素槽12と、複数の好気槽13a〜13cと、沈殿槽14と、汚泥返送路15と、硝化液循環路16と、を備える。
【0021】
嫌気槽11には、原水供給路17から供給された原水が流入する。嫌気槽11では、嫌気条件下で原水中に含まれる有機物が活性汚泥に取り込まれると共に、活性汚泥中に含まれるリンが原水中に放出される。
【0022】
無酸素槽12には、嫌気槽11から流出した処理原水が流入する。無酸素槽12では、無酸素条件下で処理原水中に含まれる亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素が窒素ガスに還元される。
【0023】
複数の好気槽13a〜13cは、処理原水の流れ方向に沿って直列に配列されている。複数の好気槽13a〜13cには、各好気槽の堰高を調整することによって、無酸素槽12から流出した処理原水がステップ流入する。各好気槽には、貯留される活性汚泥に対して散気を行うための図示しない散気装置が備えられている。複数の好気槽13a〜13cでは、好気条件下で処理原水中に含まれるアンモニア性窒素が亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化される共に処理原水中に含まれるリンが活性汚泥中に取り込まれる。
【0024】
沈殿槽14には、最下流の好気槽13cから流出した処理原水が流入する。沈殿槽14では、処理原水が分離液と活性汚泥18とに分離される。沈殿槽14の側壁には、図示しない配管が接続されており、図示しない配管を介して消毒処理された分離液を系外に排出できるように構成されている。また、沈殿槽14の底部には、汚泥返送路15が接続されており、沈殿槽14の底部に堆積した活性汚泥18を嫌気槽11に返送できるように構成されている。
【0025】
硝化液循環路16は、無酸素槽12と最下流の好気槽13cとを接続する配管であり、好気槽13c内の硝化液を無酸素槽12に循環する。
【0026】
本発明の第1の実施形態である下水処理システム1には、大気中への亜酸化窒素ガスの放出を抑制するために、負荷検出部19a〜19dと、原水ステップ流路20と、流入窒素負荷制御装置21と、が設けられている。
【0027】
負荷検出部19a〜19dはそれぞれ、無酸素槽12及び好気槽13a〜13cに設けられている。負荷検出部19a〜19dは、各槽におけるアンモニア性窒素負荷(例えば、アンモニア酸化細菌量、亜硝酸酸化細菌量、アンモニア性窒素濃度、亜硝酸性窒素濃度、硝酸性窒素濃度、酸素消費速度など)を検出する。負荷検出部19a〜19dは、検出されたアンモニア性窒素負荷の値を流入窒素負荷制御装置21に入力する。
【0028】
原水ステップ流路20は、原水供給路17から供給された原水の一部を無酸素槽12及び好気槽13a〜13cに供給するための配管である。原水供給路17から無酸素槽12及び好気槽13a〜13cの各槽への原水の供給量はそれぞれ、バルブ22a〜22dの開度を制御することによって調整される。
【0029】
流入窒素負荷制御装置21は、ワークステーションやパーソナルコンピュータなどの情報処理装置によって構成されている。流入窒素負荷制御装置21は、負荷検出部19a〜19dから入力された無酸素槽12及び好気槽13a〜13cの各槽におけるアンモニア性窒素負荷の値に基づいて、各槽におけるアンモニア性窒素負荷が所定値未満になるようにバルブ22a〜22dの開度を制御して各槽に原水を供給する。例えば、負荷検出部19dによって検出されたアンモニア性窒素負荷の値が所定値以上である場合、流入窒素負荷制御装置21は、バルブ22dを開くことによって好気槽13c内に原水を供給する。好気槽13a〜13c内における亜酸化窒素ガスの発生量は、アンモニア性窒素負荷の増加に応じて増加する。従って、このようにアンモニア性窒素負荷の値に応じて好気槽13a〜13cに原水を供給することにより、好気槽13a〜13c内におけるアンモニア性窒素負荷の値を所定値未満に保ち、大気中への亜酸化窒素ガスの放出を抑制することができる。
【0030】
〔第2の実施形態〕
次に、図2を参照して、本発明の第2の実施形態である下水処理システムの構成について説明する。
【0031】
図2は、本発明の第2の実施形態である下水処理システムの構成を示す模式図である。図2に示すように、本発明の第2の実施形態である下水処理システム2は、嫌気槽11と、無酸素槽12と、複数の好気槽13a〜13cと、沈殿槽14と、汚泥返送路15と、硝化液循環路16と、を備える。なお、これらの構成要素は、第1の実施形態である下水処理システム1における構成要素と同じであるので、以下ではその説明を省略する。
【0032】
本発明の第2の実施形態である下水処理システム2には、大気中への亜酸化窒素ガスの放出を抑制するために、滞留時間制御装置31が設けられている。滞留時間制御装置31は、ワークステーションやパーソナルコンピュータなどの情報処理装置によって構成されている。滞留時間制御装置31は、例えば沈殿槽14から汚泥返送路15への活性汚泥18の引き抜き回数や引き抜き量を制御することによって、沈殿槽14内における活性汚泥18の滞留時間を制御する。活性汚泥18内に含まれる亜酸化窒素ガスは、沈殿槽14内に滞留している間に活性汚泥18内で分解されていく。従って、活性汚泥18を速やかに汚泥返送路15へと引き抜くのではなく、所定時間以上滞留させるように活性汚泥18の滞留時間を制御することによって、大気中への亜酸化窒素ガスの放出を抑制することができる。
【0033】
〔第3の実施形態〕
最後に、図3を参照して、本発明の第3の実施形態である下水処理システムの構成について説明する。
【0034】
図3は、本発明の第3の実施形態である下水処理システムの構成を示す模式図である。図3に示すように、本発明の第3の実施形態である下水処理システム3は、嫌気槽11と、無酸素槽12と、複数の好気槽13a〜13cと、沈殿槽14と、汚泥返送路15と、硝化液循環路16と、を備える。なお、これらの構成要素は、第1及び第2の実施形態である下水処理システム1,2における構成要素と同じであるので、以下ではその説明を省略する。
【0035】
本発明の第3の実施形態である下水処理システム3には、大気中への亜酸化窒素ガスの放出を抑制するために、ガス検出部41a〜41cと、ガス供給路42と、ガス送り制御装置43と、が設けられている。
【0036】
ガス検出部41a〜41cはそれぞれ、好気槽13a〜13cに設けられている。ガス検出部41a〜41cは、亜酸化窒素ガスセンサによって構成され、各好気槽内における亜酸化窒素ガスの発生量を検出する。ガス検出部41a〜41cは、検出された亜酸化窒素ガスの発生量の値をガス送り制御装置43に入力する。
【0037】
ガス供給路42は、好気槽13a〜13c内で発生した亜酸化窒素ガスを無酸素槽12に供給するための配管である。各好気槽から無酸素槽12への亜酸化窒素ガスの供給量はそれぞれ、バルブ44a〜44cの開度を制御することによって調整される。
【0038】
ガス送り制御装置43は、ワークステーションやパーソナルコンピュータなどの情報処理装置によって構成されている。ガス送り制御装置43は、ガス検出部41a〜41cから入力された好気槽13a〜13c内における亜酸化窒素ガスの発生量の値に基づいて、好気槽13a〜13c内における亜酸化窒素ガスの発生量の値が所定値未満になるようにバルブ44a〜44cの開度を制御して好気槽13a〜13c内の亜酸化窒素ガスを無酸素槽12に供給する。例えば、ガス検出部41cによって検出された亜酸化窒素ガスの発生量の値が所定値以上である場合、ガス送り制御装置43は、バルブ44cを開くことによって好気槽13c内の亜酸化窒素ガスを無酸素槽12に供給する。無酸素槽12に供給された亜酸化窒素ガスは、脱窒処理によって無酸素槽12内で分解処理される。従って、このように亜酸化窒素ガスの発生量に応じて好気槽13a〜13c内の亜酸化窒素ガスを無酸素槽12に供給することにより、大気中への亜酸化窒素ガスの放出を抑制することができる。
【0039】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、第1乃至第3の実施形態である下水処理システムのうちの2つ以上を組み合わせて下水処理システムを構築してもよい。また、本実施形態は、A2O法を利用した下水処理システムに本発明を適用したものであるが、本発明は好気処理のみを行う標準法を利用した下水処理システムにも適用することができる。
【0040】
すなわち、図4に示すように処理原水の流れ方向に沿って直列に配列された複数の好気槽13a〜13eを備える下水処理システムにおいて、2段目以後の好気槽13b〜13eに対して負荷検出部19a〜19d及びバルブ22a〜22dを設け、流入窒素負荷制御装置21が、負荷検出部19a〜19dから入力された好気槽13b〜13eの各槽におけるアンモニア性窒素負荷の値に基づいて、各槽におけるアンモニア性窒素負荷が所定値未満になるようにバルブ22a〜22dの開度を制御して各槽に原水を供給するようにしてもよい。
【0041】
また、図5に示すように処理原水の流れ方向に沿って直列に配列された複数の好気槽13a〜13eを備える下水処理システムにおいて、滞留時間制御装置31が、例えば沈殿槽14から汚泥返送路15への活性汚泥18の引き抜き回数や引き抜き量を制御することによって、沈殿槽14内における活性汚泥18の滞留時間を制御するようにしてもよい。
【0042】
また、図6に示すように処理原水の流れ方向に沿って直列に配列された複数の好気槽13a〜13eを備える下水処理システムにおいて、2段目以後の好気槽13b〜13eに対してガス検出部41a〜41d及びバルブ44a〜44dを設け、ガス送り制御装置43が、ガス検出部41a〜41dから入力された好気槽13b〜13e内における亜酸化窒素ガスの発生量の値に基づいて、好気槽13b〜13e内における亜酸化窒素ガスの発生量の値が所定値未満になるようにバルブ44a〜44dの開度を制御して好気槽13b〜13e内の亜酸化窒素ガスを好気槽13aに供給するようにしてもよい。
【0043】
このように、本実施形態に基づいて当業者などによりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術などは全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1,2,3 下水処理システム
11 嫌気槽
12 無酸素槽
13a〜13c 好気槽
14 沈殿槽
15 汚泥返送路
16 硝化液循環路
17 原水供給路
18 活性汚泥
19a〜19d 負荷検出部
20 原水ステップ流路
21 流入窒素負荷制御装置
22a〜22d,44a〜44c バルブ
31 滞留時間制御装置
41a〜41c ガス検出部
42 ガス供給路
43 ガス送り制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水供給路から供給された原水が流入する、嫌気条件下で該原水中に含まれる有機物を活性汚泥に取り込むと共に該活性汚泥中に含まれるリンを該原水に放出する嫌気槽と、
前記嫌気槽から流出した処理原水が流入する、無酸素条件下で該処理原水中に含まれる亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素を窒素ガスに還元する無酸素槽と、
前記無酸素槽から流出した処理原水が流入する、好気条件下で該処理原水中に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化すると共に該処理原水中に含まれるリンを活性汚泥中に取り込む、該処理原水の流れ方向に沿って配列された複数の好気槽と、
前記好気槽から流出した処理原水が流入する、該処理原水に含まれる活性汚泥を沈殿させる沈殿槽と、
前記沈殿槽内に堆積する活性汚泥を前記嫌気槽に返送する汚泥返送路と、
最下流の前記好気槽内の硝化液を前記無酸素槽に循環する硝化液循環路と、
前記複数の好気槽に各槽におけるアンモニア性窒素負荷を検出する負荷検出部と、
前記窒素負荷検出部の検出結果に基づいて、前記原水供給路から供給された原水の一部を前記複数の好気槽及び前記無酸素槽に分配供給する原水ステップ流路と、
を備えることを特徴とする下水処理システム。
【請求項2】
原水供給路から供給された原水が流入する、嫌気条件下で該原水中に含まれる有機物を活性汚泥に取り込むと共に該活性汚泥中に含まれるリンを該原水に放出する嫌気槽と、
前記嫌気槽から流出した処理原水が流入する、無酸素条件下で該処理原水中に含まれる亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素を窒素ガスに還元する無酸素槽と、
前記無酸素槽から流出した処理原水が流入する、好気条件下で該処理原水中に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化すると共に該処理原水中に含まれるリンを活性汚泥中に取り込む、該処理原水の流れ方向に沿って配列された複数の好気槽と、
前記好気槽から流出した処理原水が流入する、該処理原水に含まれる活性汚泥を沈殿させる沈殿槽と、
前記沈殿槽内に堆積する活性汚泥を前記嫌気槽に返送する汚泥返送路と、
最下流の前記好気槽内の硝化液を前記無酸素槽に循環する硝化液循環路と、
前記沈殿槽内における前記活性汚泥の滞留時間を制御する滞留時間制御部と、
を備えることを特徴とする下水処理システム。
【請求項3】
原水供給路から供給された原水が流入する、嫌気条件下で該原水中に含まれる有機物を活性汚泥に取り込むと共に該活性汚泥中に含まれるリンを該原水に放出する嫌気槽と、
前記嫌気槽から流出した処理原水が流入する、無酸素条件下で該処理原水中に含まれる亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素を窒素ガスに還元する無酸素槽と、
前記無酸素槽から流出した処理原水が流入する、好気条件下で該処理原水中に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化すると共に該処理原水中に含まれるリンを活性汚泥中に取り込む、該処理原水の流れ方向に沿って配列された複数の好気槽と、
前記好気槽から流出した処理原水が流入する、該処理原水に含まれる活性汚泥を沈殿させる沈殿槽と、
前記沈殿槽内に堆積する活性汚泥を前記嫌気槽に返送する汚泥返送路と、
最下流の前記好気槽内の硝化液を前記無酸素槽に循環する硝化液循環路と、
前記複数の好気槽内で発生した亜酸化窒素ガスの濃度を検出する濃度検出部と、
前記濃度検出部の検出結果に基づいて、前記複数の好気槽内に存在する前記亜酸化窒素ガスを含有する含有ガスを前記無酸素槽に供給するガス供給路と、
を備えることを特徴とする下水処理システム。
【請求項4】
原水供給路から供給された原水が流入する、嫌気条件下で該原水中に含まれる有機物を活性汚泥に取り込むと共に該活性汚泥中に含まれるリンを該原水に放出する嫌気槽と、
前記嫌気槽から流出した処理原水が流入する、無酸素条件下で該処理原水中に含まれる亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素を窒素ガスに還元する無酸素槽と、
前記無酸素槽から流出した処理原水が流入する、好気条件下で該処理原水中に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化すると共に該処理原水中に含まれるリンを活性汚泥中に取り込む、該処理原水の流れ方向に沿って配列された複数の好気槽と、
前記好気槽から流出した処理原水が流入する、該処理原水に含まれる活性汚泥を沈殿させる沈殿槽と、
前記沈殿槽内に堆積する活性汚泥を前記嫌気槽に返送する汚泥返送路と、
最下流の前記好気槽内の硝化液を前記無酸素槽に循環する硝化液循環路と、
前記複数の好気槽に各槽におけるアンモニア性窒素負荷を検出する負荷検出部と、
前記窒素負荷検出部の検出結果に基づいて、前記原水供給路から供給された原水の一部を前記複数の好気槽及び前記無酸素槽に分配供給する原水ステップ流路と、
前記沈殿槽内における前記活性汚泥の滞留時間を制御する滞留時間制御部と、
前記複数の好気槽内で発生した亜酸化窒素ガスの濃度を検出する濃度検出部と、
前記濃度検出部の検出結果に基づいて、前記複数の好気槽内に存在する前記亜酸化窒素ガスを含有する含有ガスを前記無酸素槽に供給するガス供給路と、
を備えることを特徴とする下水処理システム。
【請求項5】
原水供給路から供給された原水が流入する、好気条件下で該処理原水中に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化すると共に該処理原水中に含まれるリンを活性汚泥中に取り込む、該処理原水の流れ方向に沿って配列された複数の好気槽と、
前記好気槽から流出した処理原水が流入する、該処理原水に含まれる活性汚泥を沈殿させる沈殿槽と、
前記沈殿槽内に堆積する活性汚泥を1段目の前記好気槽に返送する汚泥返送路と、
前記複数の好気槽のうち、2段目以後の各好気槽におけるアンモニア性窒素負荷を検出する負荷検出部と、
前記窒素負荷検出部の検出結果に基づいて、前記原水供給路から供給された原水の一部を前記2段目以後の各好気槽に分配供給する原水ステップ流路と、
を備えることを特徴とする下水処理システム。
【請求項6】
原水供給路から供給された原水が流入する、好気条件下で該処理原水中に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化すると共に該処理原水中に含まれるリンを活性汚泥中に取り込む、該処理原水の流れ方向に沿って配列された複数の好気槽と、
前記好気槽から流出した処理原水が流入する、該処理原水に含まれる活性汚泥を沈殿させる沈殿槽と、
前記沈殿槽内に堆積する活性汚泥を1段目の前記好気槽に返送する汚泥返送路と、
前記沈殿槽内における前記活性汚泥の滞留時間を制御する滞留時間制御部と、
を備えることを特徴とする下水処理システム。
【請求項7】
原水供給路から供給された原水が流入する、好気条件下で該処理原水中に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化すると共に該処理原水中に含まれるリンを活性汚泥中に取り込む、該処理原水の流れ方向に沿って配列された複数の好気槽と、
前記好気槽から流出した処理原水が流入する、該処理原水に含まれる活性汚泥を沈殿させる沈殿槽と、
前記沈殿槽内に堆積する活性汚泥を1段目の前記好気槽に返送する汚泥返送路と、
前記複数の好気槽のうち、2段目以後の各好気槽内で発生した亜酸化窒素ガスの濃度を検出する濃度検出部と、
前記濃度検出部の検出結果に基づいて、2段目以後の各好気槽内に存在する前記亜酸化窒素ガスを含有する含有ガスを1段目の前記好気槽に供給するガス供給路と、
を備えることを特徴とする下水処理システム。
【請求項8】
原水供給路から供給された原水が流入する、好気条件下で該処理原水中に含まれるアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化すると共に該処理原水中に含まれるリンを活性汚泥中に取り込む、該処理原水の流れ方向に沿って配列された複数の好気槽と、
前記好気槽から流出した処理原水が流入する、該処理原水に含まれる活性汚泥を沈殿させる沈殿槽と、
前記沈殿槽内に堆積する活性汚泥を1段目の前記好気槽に返送する汚泥返送路と、
前記複数の好気槽のうち、2段目以後の各好気槽におけるアンモニア性窒素負荷を検出する負荷検出部と、
前記窒素負荷検出部の検出結果に基づいて、前記原水供給路から供給された原水の一部を前記2段目以後の各好気槽に分配供給する原水ステップ流路と、
前記沈殿槽内における前記活性汚泥の滞留時間を制御する滞留時間制御部と、
前記複数の好気槽のうち、2段目以後の各好気槽内で発生した亜酸化窒素ガスの濃度を検出する濃度検出部と、
前記濃度検出部の検出結果に基づいて、2段目以後の各好気槽内に存在する前記亜酸化窒素ガスを含有する含有ガスを1段目の前記好気槽に供給するガス供給路と、
を備えることを特徴とする下水処理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−110807(P2012−110807A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260228(P2010−260228)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【出願人】(591043581)東京都 (107)
【Fターム(参考)】