説明

下水圧送管路におけるピグ位置検出装置

【課題】下水圧送管路内に走行させて堆積物等を除去する洗浄用ピグの走行位置を検出する場合、管路途中でピグが停止した場合は、その位置を正確に検出することが出来なかった。
【解決手段】下水圧送管路1の内壁面に、管路内を走行する洗浄用ピグ7が接触するようにセンサ用光ファイバ2を配設し、光学式温度センサ本体3からセンサ用光ファイバ2にパルス光を入射させ、センサ用光ファイバから出射される後方散乱光を測定系に導いてセンサ用光ファイバの長手方向の温度を測定し、ディスプレイ装置5に測定した温度情報を監視画面6として表示する。走行する洗浄用ピグ7がセンサ用光ファイバ2に接触して生じる摩擦により発生した熱の温度を光学式温度センサ本体で測定することにより、洗浄用ピグ7の走行位置を監視する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下水圧送管路内に走行させて堆積物等を除去する洗浄用ピグの走行位置を検出するようにした下水圧送管路におけるピグ位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下水処理場と下水処理場間あるいは下水処理場と終末処理場間などに配管されている下水圧送管路には、種々の異物が流入して内周面に堆積物が付着し、管内の下水の流れを悪くしたり悪臭を招いたりする。そのため、定期的に圧送ポンプの吐出圧で、発泡樹脂製の洗浄用ピグを管路内で走行させることにより管路内の堆積物等を除去し、下水圧送管路を正常に維持管理するようにしている。
その作業において、洗浄用ピグに何らかのトラブルが発生して管路の途中で停止する場合もあり、洗浄用ピグの位置検出が重要である。
【0003】
その位置検出装置としては、図4に示すように、管路11内に突出する検出爪12にピグが当たると回転軸13が回転し、その回転軸と一体的に固着されたリミットプレート14が回転することにより、リミットスイッチが作動してピグの通過を検知する電気式の検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、別のものとして、管路内に突出するプランジャーにピグが当たると、プランジャーが押し上げられ、水平状態でフラッグを支えているレバーが外れ、フラッグの自重でフラッグが起立状態になり、そのフラッグを目視することによりピグの通過を検知する機械式の検出装置も知られている。
【0004】
また、光ファイバ等を用いて、温度、歪み、圧力の測定、或いは破断箇所の検知を行う光学式センサがあり、特に、光ファイバの後方散乱光を利用した光学式温度センサが知られている。
例えば、光ファイバ式分布形温度センサは、センサ用光ファイバのコアを20μm以下として感度を高め、その入射光源に誘導ラマン散乱の生じない、ピークパワーの小さい光源を用い、さらに光源及び測定系に擬似ランダムパルス方式を用いてピークパワーの小さい光源であってもS/N特性を改善するようにし、長尺線路のみならず接続箇所の多い線路であっても一般のスポット(1点形)温度センサと同程度の高い分解能をもつ温度分布測定を行うことができる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−104329号公報(図1)
【特許文献2】特開平1−267428号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の従来のピグ位置検出装置は、ピグの通過を確認したい箇所にピグ通過検出器を取り付ける必要があり、ピグ検出器間でピグが停止した場合は、その位置を正確に検出することが出来なかった。また、より正確に位置を検出するためには、ピグ検出器を数多く取り付けねばならず、手間と費用がかかるという問題点があった。
【0007】
また、特許文献2の光ファイバ式分布形温度センサは、長尺路の温度を検出するには有効であるものの、その利用は電力ケーブルの長手方向の温度分布を測定してケーブルの劣化を調べたり、各種プラントの生産ラインや設備の温度コントロールや、ビルやトンネル等の火災検知用に使用されるに過ぎなかった。即ち、測定温度領域は自ら温度または熱を発生する対象にしか利用されていなかった。
【0008】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、自ら温度または熱を発生しない下水圧送管路内のピグの位置を簡単な構成で、しかも正確に検出できるピグ位置検出装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るピグ位置検出装置は、下水圧送管路の内壁面に、下水圧送管路内を走行する洗浄用ピグが接触するように配設されたセンサ用光ファイバと、このセンサ用光ファイバに光源からのパルス光を入射させ、センサ用光ファイバから出射される後方散乱光を測定系に導いてセンサ用光ファイバの長手方向の温度を測定するようにした光学式温度センサ本体と、この光学式温度センサ本体からの温度情報を監視画面に表示するディスプレイ装置とを備え、下水圧送管路内を走行する洗浄用ピグがセンサ用光ファイバに接触して生じる摩擦によりセンサ用光ファイバに発生した熱の温度を光学式温度センサ本体で測定することにより、洗浄用ピグの走行位置を監視するようにしたものである。
【0010】
また、この発明に係るピグ位置検出装置は、下水圧送管路の内壁面に、下水圧送管路内を走行する洗浄用ピグが接触するように配設されたセンサ用光ファイバと、このセンサ用光ファイバに光源からのパルス光を入射させ、センサ用光ファイバから出射される後方散乱光を測定系に導いてセンサ用光ファイバの長手方向の歪みまたは圧力を測定するようにした光学式圧力センサ本体と、この光学式圧力センサ本体からの歪みまたは圧力情報を監視画面に表示するディスプレイ装置とを備え、下水圧送管路内を走行する洗浄用ピグがセンサ用光ファイバに接触して受けるセンサ用光ファイバの歪みまたは圧力を光学式圧力センサ本体で測定することにより、洗浄用ピグの走行位置を監視するようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、下水圧送管路内の洗浄用ピグの位置を正確に検出できるため、ピグに何らかのトラブルが発生して管路中で停止した場合でも、ピグの回収作業が効率的に行える。また、場合によっては、ピグの回収のため管路を掘削しなければならない場合もあるが、掘削の範囲を最小限に抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1を示す下水圧送管路におけるピグ位置検出装置の構成図である。
【図2】ピグ位置検出装置に使用される光学式温度センサ本体の構成図である。
【図3】この発明の実施の形態2を示す下水圧送管路におけるピグ位置検出装置の構成図である。
【図4】従来のピグ位置検出装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1に係る下水圧送管路におけるピグ位置検出装置について図1及び図2に基づいて説明する。図1はピグ位置検出装置の構成図、図2はピグ位置検出装置に使用される光学式温度センサ本体の構成図である。
【0014】
図1において、下水圧送管路1は短いもので数Km、長いもので数10Kmの円筒状の鋼鉄などで作られている。センサ用光ファイバ2は下水圧送管路1の内壁面に、後述する洗浄用ピグに接触するように取り付けられ、管路長手方向に沿って配設されている。このセンサ用光ファイバ2は、コア径を20μm以下とし、温度感度を高感度化して長距離の温度測定を可能にしている。
光学式温度センサ本体3は、センサ用光ファイバ2の一端に接続されて光源からのパルス光を入射させ、センサ用光ファイバ2から出射される後方散乱光を測定系に導いてセンサ用光ファイバ2の長手方向の温度分布を測定するようにしている。この光学式温度センサ本体3の内部構成は後述する図2に基づいて詳しく説明する。
【0015】
光学式温度センサ本体3で測定された温度情報は、監視画面に変換するための表示S/W手段4を介してディスプレイ装置5に送られる。ディスプレイ装置5は液晶表示装置などで構成され、監視画面例6に示すように、横軸に距離、縦軸に温度として、センサ用光ファイバ2に発生した温度を監視画面として表示する。
センサ用光ファイバ2自体はほとんど熱を発生しないものであるが、下水圧送管路1内を走行して管路内を洗浄する洗浄用ピグ7がセンサ用光ファイバ2に接触して生じる摩擦によりセンサ用光ファイバ2に熱を発生する。熱を発生したセンサ用光ファイバ2の温度を光学式温度センサ本体3で測定し、それをディスプレイ装置5に表示することにより、洗浄用ピグ7の下水圧送管路1内での走行位置を監視する。
【0016】
次に、光学式温度センサ本体3の構成を図2に基づいて説明する。この光学式温度センサ本体3は特許文献2に記載された光ファイバ式分布形温度センサと同じものである。
図2において、パルス光源31は半導体レーザを用いており、このレーザの駆動信号は疑似ランダム信号発生装置32により作っている。この疑似ランダム信号発生装置32からの基本パルス幅は10nsecであり、周期は約330μsである。この駆動信号によりパルス光源31が駆動されると、パルス光源31からはピークパワーの小さいパルス光を発射する。
【0017】
パルス光源31から出た光は、光ファイバ33a、光分岐器34を通してセンサ用光ファイバ2に導かれ、センサ用光ファイバ2中で発生した後方散乱光は、光分岐器34、光ファイバ33bを通じて光分岐器35に導かれる。この光分岐器35で2分された後方散乱光のうち、光ファイバ33cに導かれたものは中心波長λ1の光学フィルタ36a、受光器37a、平準化処理回路38aよりなるアンチストークス光の測定系30aにより、関数f1(t)を求めるものに用いられる。一方、光ファイバ33dに導かれたものは中心波長λ2の光学フィルタ36b、受光器37b、平準化処理回路38bよりなるストークス光の測定系30bにより、関数f2(t)を求めるものに用いられる。
【0018】
アンチストークス光の測定系30a及びストークス光の測定系30bでは、疑似ランダム信号発生装置32からの同期信号Sを平準化処理回路38a、38bで受け、これを同期して受信信号の平均化処理を行う。平均化処理の終わった受信信号は温度分布演算回路39に導かれ、温度分布演算回路39ではf1(t)/f2(t)の演算を行うことにより、センサ用光ファイバ2に沿った線状温度分布を測定する。
【0019】
次にこの発明のピグ位置検出装置の動作について説明する。
下水圧送管路1の端部などから下水圧送管路1の管路内に洗浄用ピグ7を配置し、ポンプの吐出圧で洗浄用ピグ7が発射されると、洗浄用ピグ7は下水圧送管路1の内壁面に取り付けられたセンサ用光ファイバ2に接触しながら走行する。そうすると、洗浄用ピグ7が走行している場所のセンサ用光ファイバ2が摩擦で熱を持つことになる。
【0020】
光学式温度センサ本体3は、計測用の光信号をセンサ用光ファイバ2に発信し、後方散乱光としてラマン散乱光を受信する。光学式温度センサ本体3は、センサ用光ファイバ2中の散乱光強度が温度により変化することを利用し、この変化を後方散乱光としてラマン散乱光を検知することにより、センサ用光ファイバ2の長手方向に沿った温度情報を得ることができる。光学式温度センサ本体3による温度測定方法については特許文献2に詳しく説明されているので、ここでは説明を省略する。
【0021】
光学式温度センサ本体3で得た温度情報は、表示S/W手段4で監視画面に変換され、ディスプレイ装置5に送られる。ディスプレイ装置5は監視画面例6のように、横軸に下水圧送管路1の長手方向に沿った距離、縦軸にセンサ用光ファイバ2の温度として、センサ用光ファイバ2に発生した温度を監視画面として表示する。このようにディスプレイ装置5に監視画面を表示することにより、温度の高い箇所が洗浄用ピグ7のある位置として洗浄用ピグ7の位置を監視することが可能となる。
【0022】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る下水圧送管路におけるピグ位置検出装置について図3に基づいて説明する。図3はピグ位置検出装置の構成図である。
実施の形態2の発明は、実施の形態1における光学式温度センサ本体3の代わりに、光学式圧力センサ本体を用いたもので、その他の構成は実施の形態1と同じであり、同じまたは相当する部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0023】
図3において、センサ用光ファイバ2には光学式圧力センサ本体8が接続されている。この光学式圧力センサ本体8は、光ファイバあるいは光導波路を用いた物理量測定として、歪及び(あるいは)圧力を測定するようにしたものである。
洗浄用ピグ7が走行している場所の下水圧送管路1の内壁面に取り付けられたセンサ用光ファイバ2が洗浄用ピグ7により歪み、圧力を受ける。この歪、圧力等を測定する場合には、光学式圧力センサ本体8は後方散乱光としてブリュアン散乱光を検出することにより歪、圧力測定が可能となる。
このような光学式圧力センサ本体8としては、例えば特開2000−283799号公報に記載された分布型光ファイバ歪み計などを使用することができる。
【0024】
光学式圧力センサ本体8で得た圧力情報は、表示S/W手段4で監視画面に変換され、ディスプレイ装置5に送られる。ディスプレイ装置5は監視画面例9のように、横軸に下水圧送管路1の長手方向に沿った距離、縦軸にセンサ用光ファイバ2が受けた圧力を監視画面として表示する。このようにディスプレイ装置5に監視画面を表示することにより、圧力の高い箇所が洗浄用ピグ7のある位置として洗浄用ピグ7の位置を監視することが可能となる。
【符号の説明】
【0025】
1:下水圧送管路、 2:センサ用光ファイバ、
3:光学式温度センサ本体、 4:表示S/W手段、
5:ディスプレイ装置、 6:監視画面例、
7:洗浄用ピグ、 8:光学式圧力センサ本体、
9:監視画面例。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水圧送管路の内壁面に、前記下水圧送管路内を走行する洗浄用ピグが接触するように配設されたセンサ用光ファイバと、このセンサ用光ファイバに光源からのパルス光を入射させ、前記センサ用光ファイバから出射される後方散乱光を測定系に導いて前記センサ用光ファイバの長手方向の温度を測定するようにした光学式温度センサ本体と、この光学式温度センサ本体からの温度情報を監視画面に表示するディスプレイ装置とを備え、前記下水圧送管路内を走行する洗浄用ピグが前記センサ用光ファイバに接触して生じる摩擦により前記センサ用光ファイバに発生した熱の温度を前記光学式温度センサ本体で測定することにより、前記洗浄用ピグの走行位置を監視するようにした下水圧送管路におけるピグ位置検出装置。
【請求項2】
下水圧送管路の内壁面に、前記下水圧送管路内を走行する洗浄用ピグが接触するように配設されたセンサ用光ファイバと、このセンサ用光ファイバに光源からのパルス光を入射させ、前記センサ用光ファイバから出射される後方散乱光を測定系に導いて前記センサ用光ファイバの長手方向の歪みまたは圧力を測定するようにした光学式圧力センサ本体と、この光学式圧力センサ本体からの歪みまたは圧力情報を監視画面に表示するディスプレイ装置とを備え、前記下水圧送管路内を走行する洗浄用ピグが前記センサ用光ファイバに接触して受ける前記センサ用光ファイバの歪みまたは圧力を前記光学式圧力センサ本体で測定することにより、前記洗浄用ピグの走行位置を監視するようにした下水圧送管路におけるピグ位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−113697(P2013−113697A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259780(P2011−259780)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】