説明

下水汚泥の処理装置、並びに処理方法

【課題】 膨張軟化処理を施した未利用バイオマスを下水汚泥に添加して脱水処理する下水汚泥の処理装置、並びに処理方法を提供する。
【解決手段】 未利用バイオマスを膨張軟化処理する膨張軟化工程と、膨張軟化処理した膨張軟化バイオマスを下水汚泥と混和処理する混和工程と、混和処理した混和汚泥を脱水処理する脱水工程と、脱水処理した脱水ケーキを発酵処理する発酵工程と、を備えたので、従来の脱水ケーキの乾燥に必要な期間より格段に短期間で乾燥汚泥を得ることができ、得られた乾燥汚泥を有機燃料として再利用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張軟化処理を施した未利用バイオマスを下水汚泥に添加して脱水処理する下水汚泥の処理装置、並びに処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場等から発生する脱水ケーキは、大部分が埋立てや焼却処分され、一部がコンポストや燃料として利用されている。しかし、含水率が高いため、焼却のために多大なエネルギーが必要となる。また、産業活動で発生する残渣や、森林の間伐材等は、大部分が焼却処分されており、有効な利用方法が求められていた。
そこで、脱水ケーキに木質系チップを混和して発酵を促進することで乾燥し、発酵熱で乾燥させた汚泥をボイラー等の燃料に利用する方法が特許文献1において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−248077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
含水率を80〜90%に低減した脱水ケーキに木質系チップを混和する場合、均一に混和させるために十分な大きさの撹拌槽と、低含水率の脱水ケーキを撹拌するための大動力の撹拌装置が必要となる。
また、木質系チップには前処理を施していないので、脱水ケーキと混和させる際に馴染み難く、混和処理後の発酵は脱水ケーキや添加物(発酵菌、酵母菌等)に頼らざるを得ないという問題があった。
【0005】
本発明は従来の課題を解決するために、下水汚泥と膨張軟化処理を施した未利用バイオマスで混和汚泥を生成し、混和汚泥を脱水処理した脱水ケーキを短時間で所定の含水率に乾燥させる処理装置、並びに処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の下水汚泥の処理装置は、剪定材、籾殻、食品廃棄物などの未利用バイオマスを高圧下で所定時間保持した後、圧力を急激に開放させてバイオマスの細胞を破壊し、水溶性高分子の加水分解を進行させて、膨張軟化処理を施した膨張軟化バイオマスを、有機物を含有する下水汚泥に添加混合し、脱水機に移送して脱水ケーキとろ液に分離するので、バイオマスの細胞自体が破壊され、非常に親水性に富み、分散性に優れ、汚泥との混合が極めて容易となる。また、短期間で脱水ケーキを発酵乾燥させることができ、得られた乾燥汚泥を有機燃料として再利用することが可能である。
【0007】
本発明の下水汚泥の処理方法は、下水汚泥の脱水ケーキを発酵乾燥させて有機燃料を生成する方法であって、未利用バイオマスを膨張軟化処理する膨張軟化工程と、膨張軟化処理した膨張軟化バイオマスを下水汚泥と混和処理する混和工程と、混和処理した混和汚泥を脱水処理する脱水工程と、脱水処理した脱水ケーキを発酵処理する発酵工程と、を備えたので、脱水ケーキ内に均一に混和する膨張軟化バイオマスにより発酵処理が促進され、短時間で所定の含水率に乾燥でき、有機燃料を得ることができる。
【0008】
膨張軟化バイオマスを、粒径0.2〜5mmに粉砕して下水汚泥と混和すると、低動力でバイオマスを混合汚泥内に均一分散させ、膨張軟化バイオマスを核として凝集、調質できる。
また、下水汚泥に重量比30%以上の膨張軟化バイオマスを混和すると、後段での脱水ケーキの発酵処理が促進される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る下水汚泥の処理装置、並びに処理方法は、上記のように構成してあり、未利用バイオマスを膨張軟化処理することにより、細胞自体が破壊され、非常に親水性に富み、分散性に優れ、汚泥との混合が極めて容易となる。
下水汚泥とバイオマスを混和処理することにより、低動力でバイオマスを混合汚泥内に均一分散させ、バイオマスを核として凝集、調質できるので、高分子凝集剤の使用量を削減できる。
混合汚泥を脱水処理することにより、均一分散したバイオマスが脱水装置に偏荷重を与えることがなく、均一な含水率の脱水ケーキを生成できる。また、バイオマス中の粗繊維質が脱水助剤として機能するため、脱水ケーキの含水率を低減させることができる。
上記で生成した脱水ケーキを発酵処理するので、従来の脱水ケーキの乾燥に必要な期間より格段に短期間で乾燥汚泥を得ることができ、得られた乾燥汚泥を有機燃料として再利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を図1に基づいて詳細に説明する。符号1は下水汚泥、符号2は未利用バイオマスである。下水汚泥1に混合する前処理として、未利用バイオマス2には膨張軟化装置3により膨張軟化処理を施す。未利用バイオマス2としては、木質系の剪定材、竹チップ、籾殻等や、食品系の食物残渣、食品廃棄物、ビールかす等が有用である。
【0012】
膨張軟化処理とは、バイオマスを高圧下で所定時間保持した後、圧力を急激に開放させることにより、圧縮されていた流体及びバイオマスの細胞膜内に含まれていた水分などの流体が爆発的に膨張し、バイオマスの細胞膜を破砕する現象である。一方、粘結材として関与していた、生物体由来の水溶性高分子も加水分解が進行し、低粘度になり、粘結力も低下して、流動性が増加する。バイオマスのそれぞれの状態における特徴的な性質を利用して廃棄物を加水分解して低分子化する処理である。
【0013】
下水処理場で発生する有機性の下水汚泥1に、上記膨張軟化処理を施した膨張軟化バイオマス4を添加し、混和槽7において後段の脱水装置10で脱水し易いように混和処理される。添加する位置は、混和槽7前段の移送管6でも混和槽7内でもよい。添加量は汚泥性状や脱水装置10により異なるが、下水汚泥1に重量比30%以上の膨張軟化バイオマス4を添加することが望ましい。
【0014】
混和槽7では、例えば機械式の撹拌翼により下水汚泥1と膨張軟化バイオマス4が均一に混和処理される。膨張軟化バイオマス4は、細胞自体が破壊されているために非常に親水性に富み、分散性に優れ、下水汚泥1との混合が極めて容易である。含水率が高く粘度も低いため、混和槽7内での撹拌に必要な動力が低減できる。下水汚泥1と膨張軟化バイオマス2が密接に混和して下水汚泥1の臭気を低減できる。混和槽7内で下水汚泥1は膨張軟化バイオマス2を核として凝集、調質される。汚泥性状によっては高分子凝集剤8を添加してもよい。添加する膨張軟化バイオマス4の大きさは0.2〜5mm程度が好ましく、必要に応じて破砕装置5で破砕して添加する。
【0015】
混和槽7で凝集、調質された混合汚泥9は、後段の脱水装置10に移送されて脱水処理され、脱水ケーキ11とろ液12に分離される。従来、有機性の下水汚泥はコロイドを多く含み、脱水時に高価な高分子凝集剤を多量に必要とし、発酵後の脱水ケーキの含水率も高いという問題があった。しかし、膨張軟化バイオマス4を下水汚泥1に混和すると、膨張軟化バイオマス4中の粗繊維質が脱水助剤として機能するため、脱水ケーキ11の含水率を低減させることができる。脱水装置8としてはスクリュープレス、ベルトプレス等、周知の脱水装置を利用可能である。
【0016】
脱水処理して得られる脱水ケーキ11は、発酵槽13に集積され好気発酵処理される。
発酵とは、脱水ケーキの中に含まれている有機質をバクテリア分解し、堆肥化して均一成分の有機燃料に変えることである。その脱水ケーキを効率良く発酵させるための主要素としては、水分,酸素供給,温度等があり、完全発酵されるまでの脱水ケーキは、水分が調整され、温度管理される。そしてバクテリアの増殖に大量の酸素が必要とされるため、堆積した脱水ケーキを撹拌,切り返しし、酸素を充分に供給して発酵を促進させる作業が必要となる。
【0017】
発酵槽13では膨張軟化バイオマス4の固形分による通気抵抗の増大により、脱水ケーキ11の一次発酵が促進される。脱水ケーキ11内の膨張軟化バイオマス4は均一に混和しており、発酵槽13内で通気抵抗の濃淡が発生し難い。また、膨張軟化バイオマス4による通気抵抗の増大で、送り込む空気量を低減することができる。発酵に伴う発熱量、発酵中に失われる蒸発量と発酵槽13壁面からの放熱により、従来の脱水ケーキの乾燥に必要な期間より格段に短期間で乾燥汚泥14を得ることができる。
乾燥汚泥14は必要な大きさに選別し、有機燃料15として使用することができる。
また、発酵時に発生するメタンは回収してエネルギーとして利用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の下水汚泥の処理装置、並びに処理方法は、未利用バイオマス等の廃棄物を有効利用し、下水汚泥から得られる脱水ケーキを短時間で燃料として再利用するものであり、エネルギー使用量の削減を図るとともに、二酸化炭素発生量の削減も行うものである。
【符号の説明】
【0019】
1 下水汚泥
2 未利用バイオマス
3 膨張軟化装置
4 膨張軟化バイオマス
5 破砕装置
6 移送管
7 混和槽
8 高分子凝集剤
9 混和汚泥
10 脱水装置
11 脱水ケーキ
12 ろ液
13 発酵槽
14 乾燥汚泥
15 有機燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剪定材、籾殻、食品廃棄物などの未利用バイオマス(2)を高圧下で所定時間保持した後、圧力を急激に開放させてバイオマスの細胞を破壊し、水溶性高分子の加水分解を進行させて、膨張軟化処理を施した膨張軟化バイオマス(4)を、有機物を含有する下水汚泥(1)に添加混合し、脱水装置(10)に移送して脱水ケーキ(11)とろ液(12)に分離することを特徴とする下水汚泥の処理装置。
【請求項2】
下水汚泥の脱水ケーキを発酵乾燥させて有機燃料を生成する方法であって、
未利用バイオマス(2)を膨張軟化処理する膨張軟化工程と、
膨張軟化処理した膨張軟化バイオマス(4)を下水汚泥(1)と混和処理する混和工程と、
混和処理した混和汚泥(9)を脱水処理する脱水工程と、
脱水処理した脱水ケーキ(11)を発酵処理する発酵工程と、
を備えたことを特徴とする下水汚泥の処理方法。
【請求項3】
上記膨張軟化バイオマス(4)を、粒径0.2〜5mmに粉砕して下水汚泥(1)と混和処理することを特徴とする請求項2に記載の下水汚泥の処理方法。
【請求項4】
上記下水汚泥(1)に重量比30%以上の未利用バイオマス(2)を混和することを特徴とする請求項2または3に記載の下水汚泥の処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−115741(P2012−115741A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266186(P2010−266186)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000197746)株式会社石垣 (116)
【Fターム(参考)】